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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】排気アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F01N 1/00 20060101AFI20240724BHJP
   F01N 1/10 20060101ALI20240724BHJP
   G10K 11/22 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
F01N1/00 E
F01N1/10 E
G10K11/22
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021538865
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 AU2019000108
(87)【国際公開番号】W WO2020051623
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】2018903441
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】521106175
【氏名又は名称】ジ ユニヴァーシティ オブ アデレード
【氏名又は名称原語表記】The University of Adelaide
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】カッツォラット, ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ハワード, カール クエンティン
(72)【発明者】
【氏名】リーヴ, オードッム
(72)【発明者】
【氏名】ターンブル, クリス
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-017906(JP,U)
【文献】特表2011-513613(JP,A)
【文献】米国特許第03685614(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00- 1/24
F01N 5/00- 5/04
F01N 13/00-99/00
G10K 11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼領域から発生する排ガスを大気中にまで搬送するための排気ダクトのアセンブリであって、
排ガスを大気中に排出するための排ガス排気口と、
前記排ガス排気口の上流側に位置する音響ダクト部であって前記排ガス排気口から下方に延びる貫通路を画定する周壁を有し、前記周壁は、音響的に透過性の構造を有していて通過する音の大気中への伝播を促進させるが前記音響ダクト部の内側にガスの流れを拘束するように配置及び構成されている、音響ダクト部と、
を備え
前記音響ダクト部が、流れ方向で、前記貫通路の平均水力直径(D )の少なくとも50%の長さ(L)を有し、
使用中において、前記通過する音の大気中への伝搬により、前記排ガス排気口から風下の位置での屈折された音が低減されるようにした、排気ダクトのアセンブリ。
【請求項2】
前記音響ダクト部が、前記流れ方向で、前記貫通路の前記平均水力直径(D の少なくとも100%の長さ(L)を有する、請求項に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記音響ダクト部が、前記流れ方向で、前記貫通路の前記平均水力直径(D の少なくとも200%の長さ(L)を有する、請求項に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記音響ダクト部が穴のあいたシートを含む、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記音響ダクト部がスチールメッシュを含む、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記スチールメッシュの前記音響ダクト部が織布である、請求項に記載のアセンブリ。
【請求項7】
空気吸入部を含む、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記空気吸入部が前記音響ダクト部を含む、請求項に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記音響ダクト部の前記周壁が構造部分と非構造部分を有し、前記構造部分は前記音響ダクト部の形状を維持するように構成され、前記非構造部分は前記構造部分に隣接して配置されて少なくとも低周波領域の音が通過できるように構成されている、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記音響ダクト部の前記非構造部分が、音響的に非反射性の構造体から作られている、請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記構造部分が、当該構造部分を通って延びる複数の穴を有する、請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記非構造部分が穴のあいたシートを含む、請求項11に記載のアセンブリ。
【請求項13】
燃焼領域と、排気ダクトと、排ガスを大気中に排出するための排ガス排気口とを備え、前記排気ダクトが、請求項1に記載の排気ダクトのアセンブリを有する、設備。
【請求項14】
ガスタービンと、排気ダクトと、排ガスを大気中に排出するための排ガス排気口とを備え、前記排気ダクトが、請求項1に記載の排気ダクトのアセンブリを有する、発電所。
【請求項15】
燃焼領域から発生する排ガスを大気中にまで搬送するための排気ダクトのアセンブリであって、
排ガスを大気中に排出するための排ガス排気口と、
前記排ガス排気口の上流側に位置し、構造部分と非構造部分を有する音響ダクト壁を有する音響ダクト部であって、前記構造部分は、前記音響ダクト部の形状を維持するするように構成されて貫通路を画定し当該構造部分を通って延びる複数の穴を有し、前記非構造部分は前記構造部分に隣接して配置されて少なくとも低周波領域の音が大気にまで通過できるように構成された、音響ダクト部と、
を備え、
前記音響ダクト部が、流れ方向で、前記貫通路の平均水力直径(D )の少なくとも50%の長さ(L)を有し、
使用中において、前記通過する音の大気中への伝搬により、前記排ガス排気口から風下の位置での屈折された音が低減されるようにした、アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、「排ガスアセンブリ(AN EXHAUST GAS ASSEMBLY)」と題され2018年9月13日に出願された豪州仮特許出願第2018903441号の優先権を主張し、参照によりその全体をここに組み入れる。
【0002】
本願は、騒音抑制に関する。特に、本願は高温排気システムから発生する騒音の抑制に関する。
【背景技術】
【0003】
高温ガスを排出する排気システム、特に燃焼機関のための排気システムは、通常、サイレンサーを有する。サイレンサーは一般に低周波では強い騒音低減をもたらさず、ある用途においては低周波の騒音が問題となり得る。
【0004】
従来のサイレンサーは、音の波長がサイレンサー内の吸収材の厚さと同等である場合においてのみ、良い騒音低減をもたらす。例えば、22Hzの下限周波数を有する31.5Hzのオクターブ帯域や、63Hzのオクターブ帯域のような低周波で、高温排ガス中の音速が約500m/sである状態では、その音の波長は23mくらいになり得る。ガス火力発電所で使用されるような大きな排気システムに対しては、工業サイレンサーが使用される。そのようなサイレンサーには、通常約0.5mの厚さ(波長のおよそ1/45しかない)である吸音材が並べられており、そのため低周波では良い音響減衰が得られない。これは、うるさい「轟音」又は発電所から遠く離れた場所で知覚される他の低周波の効果音につながる。
【0005】
高温排気システムから発生する騒音を抑制することの更なる課題は、高温ガスは粘度が低下していて音の吸収がより難しくなることである。
【0006】
高温排気システムから発生する騒音を抑制することの別の更なる課題は、高温ガスは流速が速くなり、これが自己雑音(排気システムを通る高速なガスの流れによって発生する音)に大きな影響を与えることである。
【0007】
風が変わりやすい外部環境では、低周波での音圧レベル(SPLs)は、排ガス騒音源から離れる方向で距離が2倍になるごとに必ずしも6dB低下するわけではない。風が排ガスと干渉する場合には特にそうである。ある大気条件が、長距離にわたる音波屈折を生じさせるか又はそれに寄与する可能性がある。結果として、高温排気システムから放出される騒音を適切に抑制することについて課題が生じる。
【0008】
上述のような問題のある騒音抑制状況の例として、ガス火力発電所、特に単一サイクル発電所がある。なぜなら、単一サイクル発電所でのより高い排気温度(550-600℃、複合サイクルでは80-200℃)が、従来のサイレンサーの効率を低下させるからである。これが音響抑制における課題をもたらす。
【0009】
問題のある騒音抑制状況の別の例として、商業発電のために使用される内燃機関式発電機、及びセメント生産において使用されるか焼炉がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願の目的は、上述の問題のうちの少なくともいくつかに対処すること、又は少なくとも有効な選択肢を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の第1形態に従って、
燃焼領域から発生する排ガスを大気中にまで搬送するための排気ダクトのアセンブリであって、
排ガスを大気中に排出するための排ガス排気口と、
前記排ガス排気口の上流側に位置し、通過する音の伝播を促進させるように配置及び構成された貫通路を画定する周壁を有する音響ダクト部と、
を備える、排気ダクトのアセンブリ、を提供する。
【0012】
一形態においては、前記音響ダクト部が、流れ方向で、前記貫通路の平均水力直径の少なくとも50%の長さを有する。
【0013】
一形態においては、前記音響ダクト部が、前記流れ方向で、前記貫通路の前記平均水力直径の少なくとも100%の長さを有する。
【0014】
一形態においては、前記音響ダクト部が、前記流れ方向で、前記貫通路の前記平均水力直径の少なくとも200%の長さを有する。
【0015】
一形態においては、前記音響ダクト部が穴のあいたシートを含む。
【0016】
一形態においては、前記音響ダクト部がスチールメッシュを含む。
【0017】
一形態においては、前記スチールメッシュの前記音響ダクト部が織布である。
【0018】
一形態においては、前記アセンブリが空気吸入部を含む。
【0019】
一形態においては、前記空気吸入部が前記音響ダクト部を含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本開示の実施形態が、添付の図面を参照して説明されている。
【0021】
図1】本開示の第1の実施形態に係る排気ダクトのアセンブリの正面図である。
【0022】
図2A図1に示された排気ダクトのアセンブリの上側部分の断面図である。
【0023】
図2B図1に示された排気ダクトのアセンブリの上側部分を一般化した図である。
【0024】
図3】本開示の第2の実施形態に係る排気ダクトのアセンブリの正面図である。
【0025】
図4】排気ダクトのアセンブリが設置された場所を示す断面図であり、風の影響及び離れた場所への音の伝播を示している図である。
【0026】
図5】本開示の第3の実施形態に係る排気ダクトのアセンブリの正面図である。
【0027】
図6A図5に示された排気ダクトのアセンブリの上側部分の断面図である。
【0028】
図6B図6Aに示された本開示の第2の一般化された実施形態に係る排気ダクトのアセンブリの上側部分の概略図である。
【0029】
図7】本開示の第4の実施形態に係る排気ダクトのアセンブリの正面図である。
【0030】
図8】本開示の第5の実施形態に係る排気ダクトのアセンブリの正面図である。
【0031】
図9】本開示の第1の実施形態の音響ダクト部の周壁の一部の詳細な正面図である。
図10】本開示の第1の実施形態の音響ダクト部の周壁の一部の詳細な断面図である。
【0032】
図11】穏やかな横風にさらされたときの従来の排気システムからの音線の伝播を示す図である。
図12】流れを通さない音響的に透過性のノズルを用いていないときの、高温排気プルームとの音響相互作用を概略的に示す図である。
【0033】
図13】流れを通さない音響的に透過性のノズルを用いたときの、高温排気プルームとの音響相互作用を概略的に示す図である。
【0034】
図14】左から右への流れがある状態での、本開示に係る音響ダクト部の小規模バージョンでの風洞内での試験結果を示す音の指向性プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1を参照すると、本開示の第1の実施形態に係る、燃焼領域から発生する排ガスを大気中にまで搬送するための排気ダクトのアセンブリが、正面図に図式的に示されている。アセンブリ100は、排ガスを大気中に排出するための排ガス排気口190と、排ガス排気口190の上流側に位置する音響ダクト部200とを有する。音響ダクト部200は、図2Aの断面図においてより明確に見られる、周壁240を有する。周壁240は、通過する音の伝播を促進させるように配置及び構成された貫通路を画定する。
【0036】
図1及び2Aに示された本開示の実施形態では、図1に図式的に示されるように、排気ダクトのアセンブリ100が接続されるガスタービン10を利用した設備がある。ガスタービン10内は燃焼領域12である。排気拡散管14がタービン10をサイレンサー16に連結している。高温の排ガスは、燃焼領域12から排ガス拡散器14を通り、さらにサイレンサー16を通って流れ、その後にこの場合にはさらに中間管150によって連結されている上述の音響ダクト部200に入る。
【0037】
図2Bには、図2Aに示された排気ダクトのアセンブリの一般化された概略図が示されている。図2Aの排気ダクトのアセンブリと同様に、図2Bの排気ダクトのアセンブリは、排ガスを大気中に排出するための排ガス排気口190と、排ガス排気口190の上流側に位置する音響ダクト部200とを有する。音響ダクト部200は、通過する音の伝播を促進させるように配置及び構成された貫通路を画定する周壁を有する。これは、半球状音波300を示す破線の半円の線で示されている。図2Aに示された排気ダクトのアセンブリは、どのような高温排気システムにも適用し得る。
【0038】
図2A及び2Bにおいて、音響ダクト部240は流れ方向での長さ「L」を有する。音響ダクト部200の内径は「D」である。L/Dの比が大きい音響ダクト部200は、L/Dの比が小さい音響ダクト部200に比べて、図4に示す風下位置8のような設備から遠く離れた場所でのより大きな騒音低減効果をもたらすであろう。ある範囲のL/Dが使用されるが、図示の実施形態では、音響ダクト部は流れ方向での長さLを有し、それは貫通路の平均水力直径Dの400%である。すなわち換言すると、比L:Dはおよそ4:1である。
【0039】
図2Bには、音波300が示されている。長さLで、音波300は次の表面積を有する:
2πL
【0040】
L=4Dである図2Bに示す実施形態では、これは次のようになる:
2π(4D=32πD

音響ダクト部200への吸入口159は、断面積=πD /4である。水力直径Dを有する音響ダクト部200の長さLの、音に対して透過的でない硬質のダクトに対する、音響強度の比は、次の通りである。
これは、音響強度の21dBの減少に相当する。透過性の音響ダクト部200が長いほど、音響ダクト部200の排気口190での音響強度の減少が大きくなり、これにより高温プルーム195と干渉する音の量が減少して、(交差する風の)下流での音波屈折が減少する。
【0041】
図2Aにおいて、排ガスダクト150は、防音部材155を有するものとして示されている。特に、排ガスダクトがガスタービンを利用した設備のために使用されている場合、その直径は、例えば、3から7メートルの範囲とすることができる。防音部材は約1メートルの厚さとすることができ、内側のバッフルサイレンサーを設けることができる。バッフルサイレンサーは、音響ダクト部200を補うことができ、また多くの用途において役に立つであろう。
【0042】
これまでに説明した図1から2Bに示す実施形態では、ダクトは円形断面を有する。そのような場合には、内径Dの測定は容易であり、概してダクトの水力直径であるDに等しくなる。図示しない他の実施形態においては、楕円又は四角形の断面を有するダクトを使用することができる。そのようなダクトに対しては、Dを計算することができ、比L/Dの大きい音響ダクト部200がより大きな騒音低減効果をもたらすという同じ原理が適用される。
【0043】
図1及び2Aに示された全体的な配置が、排気ダクトのアセンブリ100が設置された場所を示す断面図である図4にも示されている。図4は、風の影響と離れた場所への音の伝播を示している。図4は、横風によって向きを変えられている高温の排ガスプルーム195を示している。これについては後でより詳細に説明する。図1及び2A、特に図2Aに戻って、音響ダクト部200は排ガスダクト150と排ガス排気口190との間に配置されている。音響ダクト部200は、構造部分と非構造部分を有する音響ダクト壁240を含む。構造部分は、この実施形態では穴のあいた金属ダクトであり、重力の荷重、風、排気の流れ、熱膨張、及びその他に対して、音響ダクト部200の形状を維持するように配置及び構成されている。概して、構造部分は風荷重に対抗するようにも配置されている。音響ダクト壁240はまた、少なくとも低周波領域の音が通過できるように配置及び構成された非構造部分を有している。さまざまな材料を使用することができるが、本開示の図示の実施形態では、非構造部分は、薄いシート、ワイヤーメッシュ、穴が開けられたシート及び/又は織布又はガラス/鉱物繊維のバット(batt)を含む、音響的に非反射性の構造体から作られている。
【0044】
図9及び10は、音響ダクト壁240の構造をより詳細に示している。特に図9は、複数の開口部255を画定する構造壁部分250の一部を示している。図10は、構造壁部分250とその開口部255を示しているが、ワイヤーメッシュの形式の非構造壁部分260も示している。
【0045】
ここで図3を参照すると、図3に示された排気ダクトのアセンブリ100は、図1に示された本開示の第1の実施形態と類似している。しかしながら、本開示の第2の実施形態では、末端ダクト部分180が音響ダクト部200の後に設けられている。末端ダクト部分180には、地面に固定されている支線185が取り付けられており、排気ダクトのアセンブリ100にさらなる横方向の安定性がもたらされるようになっている。
【0046】
ここで図5を参照すると、本開示の第3の実施形態が示されている。この実施形態は、空気吸入部を備えている。本開示のこの実施形態では、排ガスダクト150は音響ダクト部200の口295の中で終端している。音響ダクト部200は、矢印Aで示されているように、排ガスプルームの中へ空気を吸引又は引き込むように形作られている。排ガスプルームの中への空気の引き込みにより、その温度が下がる。これは、プルーム195が音を屈折させる性質を低下させるのに役立つ。図6Aに示された音響ダクト壁240は、図9及び10を参照して上述したのと同様に構成されている。代わりに、別の構造を使用することもできる。
【0047】
図6Bには、図6Aに示したものと類似した排気ダクトのアセンブリの一般化された概略図が示されている。図6Aの排気ダクトのアセンブリと同様に、図6Bの排気ダクトのアセンブリは、排ガスを大気中に排出するための排ガス排気口190と、排ガス排気口190の上流側に配置された音響ダクト部200とを備える。また、音響ダクト部200は、そこを通る音の伝播が促進されるように配置及び構成された貫通路を画定する周壁を有する。音響ダクト部200の形状及び排ガス吸入口150に対するその配置は、周囲の空気が矢印Aで示されるように排ガスプルームの中へと吸引又は引き込まれるようなものとなっている。
【0048】
図6Aと6Bに示された音響ダクト部200はともに、流れ方向での長さ「N」を有する。音響性能により関連する長さは、流れ方向で測定される「L]である。ある範囲のL/Dが使用されるが、図示の実施形態では、音響ダクト部は流れ方向での長さLを有し、それは貫通路の平均水力直径Dの400%である。すなわち換言すると、比L:Dはおよそ4:1である。
【0049】
図7は、本開示の第4の実施形態を示す。この本開示の第4の実施形態は本開示の上記3つの実施形態と類似しているが、上記の音響ダクト部200が排気ダクトのアセンブリ100の終端部で垂直に向けられているか又はそこに向かって垂直に向けられていたのに対して、この実施形態では、音響ダクト部200は水平に向けられている。他の点では、本開示のこの実施形態は同様である。例えば、音響ダクト壁240は、図1、2、3、5、9及び10に示された本開示の実施形態の音響ダクト部200と同じ構成を有することができる。他方で、この配置では、音響ダクト壁240に対してかなりの構造部分を有する必要性はほとんどないかも知れない。音響ダクト部200は、例えば風荷重にさらされないように、配置及び支持されるようにできる。
【0050】
図7に示された実施形態の変形形態においては、(図示のダクト部200だけではなく)サイレンサー16の下流側のダクトの全体が音響的に透過性である。
【0051】
本開示の第5の実施形態が図8に示されている。本開示のこの実施形態では、音響ダクト部は、内燃機関を有する発電機内の燃焼領域12の下流側にある。
【0052】
本開示の上述の実施形態は、内壁が音響的に非反射性である(壁が音響的に透過性であるか又は吸収性であることを示唆する)排気筒であり、それは音が容易にその中に入るか又は通過するが、硬い壁のパイプと同様に又は少なくとも幾らかはそれと同様にガスの流れを依然として拘束することを意味する。そのようにすることで、音は、排気プルームから分離されてそれから離れるように放射されることが可能となり、それにより、音はほとんど屈折されない(曲げられない)。望ましくは、音響的に透過性の排気ダクト部は、ガスの分散及びタービンの性能にとって重要である流れ特性又背圧を、変えないか又は少なくとも実質的に変えない。そのような実施形態は、(音が容易に通過できる程度には十分に低いが、ガスの流れが排気ダクトに沿って排気口に至るまで流れる程度には十分に高い)適当な流れ抵抗を有する様々な材料を使用して構成することができる。そのような材料の例には、限定するわけではないが、薄いシート、ワイヤーメッシュ、あけられた穴を有するシート及び/又は織布、又は穴のあいたシートのような構造要素の間に挟まれた(ガラスや鉱物面のような)吸収材を備える吸収性サイレンサーにおいてよく見られる構造体が含まれる。例えば、いくつかの用途では、50、000mak rayl/mの流れ抵抗性を有し、~5,000mks rayls(Pa/m/s)の流れ抵抗を与えるロックウールが適している。より一般的には、ロックウール又は他の適した材料は、2,000mks rayls(Pa/m/s)から50、000mks rayls(Pa/m/s)の範囲の流れ抵抗をもたらすような大きさ及び配置とすることができる。
【0053】
本開示の実施形態が使用可能である特定の用途の一例は、より高温の排気温度(550-600℃)が生じる単一サイクルのガス火力発電所におけるものである。そのような単一サイクルのガス火力発電所からの排気プルームは、高温の排気の流れによって強く反射される(下方に曲げられる)、高い排気音圧レベルをもたらす。これが穏やかな横風と合わさったときに、図11に示すように、地表面で下流側の音圧レベルが増加する結果となる。
【0054】
図11は、公差流の速度Rに対する排気の速度の比が減少すると、高温プルームがより高い角度で放出されるが、音線はやはり地面にまで反射される(曲げられる)ことを示している。これは、近隣地域に大きな影響を与え得る。これは、図4に図式的に示されており、190は設備5の排ガス排気口であり、8は設備5から離れた風下の場所である。音は、プルーム195内で反射され、場所8に向かって下方に向けられる。設備からのSPLが騒音条例の規制を超える結果となっている多くの確認された事例がある。
【0055】
図12及び13は、(図1、2A、及び2Bに示された音響ダクト部200のような)流れを通さない音響的に透過性のダクト部又はノズルを備えない場合(図12)と備える場合(図13)の、高温排気プルームとの音響相互作用を概略的に示している。直線状部分のノズル200は、流れをノズル200の内側に拘束して、流体がより高い垂直高さでダクトから出るようにしている。音響的に透過性のノズル又はダクト200は、ダクトの音響中心が変わらないようにできる。これにより、音響エネルギー(又は少なくともかなり大きな割合の音響エネルギー)が、突出した垂直な排気筒から早い段階で「解放される」又は「漏れる」ようにできる。したがって、ほとんどの音は、冷たい横風によって曲げられた高温プルームと干渉しない。高温プルームとの音の干渉を低減することによって、プルームによって屈折される音の量が低減され、最終的には、排気筒の風下で確認される最大SPLが低減される。
【0056】
上述の通り、本開示の実施形態は、高温排気プルームとの音の干渉の仕方を制御し、最終的には地面に向かって屈折される(曲げられる)音の量を低減する。提案した開示は、背圧を過度に変えず、したがってガスタービンの性能を変えず、またガスの分散特性が実質的に変わらないように元々のガス放出速度を維持する。
【0057】
図14は、本開示に係る音響ダクト部の小規模バージョンでの風洞内での試験結果を示す音の指向性プロットである。示された結果は、(ガス火力発電所の典型的な規模である)100倍にスケールアップしたシステムでの50Hzに相当する、5000Hzの3分の1オクターブ帯域に対するものである。「ノズルあり」のプロットは、3.38m/sの横風の速度及びおよそ50m/sの排気速度に対するものである。音響ダクト(又は「ノズル」)は、右側の極大部分のピークレベルを3-6dBだけ低下させている。図14に示した測定は、28の直径で行なわれた。この距離は、100倍スケールでの、排気筒から約150mに相当する。回折は、この距離を優に超えて続く。
【0058】
本開示は、単一サイクルのガス火力発電所のような高温の排気の流れを発生させる設備の近くの地域における高い騒音レベルの問題に対処するのに役立つ。本開示の実施形態は、既存の又は新規の設備に設置することができる。多くの用途において、従来のサイレンサーは依然として使用されていくであろうが、それらは、ここに説明した音響ダクト部の実施形態が地面の下流側での音圧レベルを大きく減少させるので、少なくなっていくであろう。より一般的には、この開示は、全てではないとしても多くの高温排気システムに関連した騒音問題に対処するのに役立つ。
【0059】
本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、別段の要求がない限り、用語「備える」及び「含む」並びに「備えている」及び「含んでいる」のような変形は、記載された整数又は整数の群を包含することを示唆しているが、他の整数又は整数の群を排除することを示唆するものではないことが理解されるであろう。
【0060】
この明細書中での如何なる従来技術の参照も、そのような従来技術が通常の一般的知識の一部を形成していることの如何なる形での提言の承認としては見なされず、またそのように見なされるべきではない。
【0061】
本開示は説明された特定の用途への使用に限定されないことは、当業者には理解されるであろう。本開示は、ここに説明又は示された特定の要素及び/又は特徴に関して、好ましい実施形態に限定されない。本開示は記載された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲に既定及び定義されている開示の範囲から逸脱すること無く、多くの再構成、改良、及び置き換えが可能である。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
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図10
図11
図12
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図14