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特許7525908ナノチュープセレクタを用いて血液等の流体から特定の不純物を除去するためのシステムおよび方法
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  • 特許-ナノチュープセレクタを用いて血液等の流体から特定の不純物を除去するためのシステムおよび方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】ナノチュープセレクタを用いて血液等の流体から特定の不純物を除去するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/34 20060101AFI20240724BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20240724BHJP
   B01D 61/24 20060101ALI20240724BHJP
   B01D 61/28 20060101ALI20240724BHJP
   B01D 61/42 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
A61M1/34 100
A61M1/36 119
B01D61/24
B01D61/28
B01D61/42
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021568737
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-19
(86)【国際出願番号】 US2020031884
(87)【国際公開番号】W WO2020236433
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】16/415,678
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521502528
【氏名又は名称】ヘルシュマン ツヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヘルシュマン ツヴィ
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/014633(WO,A1)
【文献】特表2009-505825(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102366713(CN,A)
【文献】米国特許第03697410(US,A)
【文献】特表2014-521367(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101947417(CN,A)
【文献】特開2009-291777(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0318843(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00-1/38
A61M 60/00-60/90
B01D 61/00-71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中の不純物を分離するためのナノチューブセレクタであって、
前記流体が入っている第1の空間を第2の空間から分離する囲いの少なくとも一部を形成する支持材料であって、該支持材料は前記流体中の前記不純物を通さない、支持材料と、
それぞれが第1の端部と第2の端部とを備え、第1の端部が第1の空間にあり、第2の端部が第2の空間内にあるように前記支持材料によって支持された複数の中空ナノチューブであって、不純物がそれらの中空内部を通って前記第1の空間から前記第2の空間へと運ばれ、前記流体から分離されるように寸法決めされた内部径を有する複数の中空ナノチューブと、
第1および第2の導電材料であって、電圧源に接続された際に前記複数の中空ナノチューブの近傍に電界を発生させて前記複数の中空ナノチューブを通る前記不純物の運搬を容易にするように構成された第1および第2の導電材料と、を備える、
ナノチューブセレクタ。
【請求項2】
前記支持材料の両側に配置された1つまたは複数の絶縁材料をさらに備え、前記1つまたは複数の絶縁材料は前記流体および不純物を通す、請求項1に記載のナノチューブセレクタ。
【請求項3】
前記1つまたは複数の絶縁材料はファブリックである、請求項2に記載のナノチューブセレクタ。
【請求項4】
前記第1の導電材料は前記支持材料に隣接する前記第1の空間に配置され、前記第2の導電材料は前記支持材料に隣接する前記第2の空間に配置される、請求項1に記載のナノチューブセレクタ。
【請求項5】
前記第1および第2の導電材料は金属メッシュである、請求項4に記載のナノチューブセレクタ。
【請求項6】
請求項1に記載のナノチューブセレクタであって、
前記支持材料は、円筒状の囲いの形に形成され、前記円筒状の囲いの外側の、流体が入っている前記第1の空間を、前記円筒状の囲いの内側の前記第2の空間から分離する、ナノチューブセレクタ。
【請求項7】
前記支持材料の両側に、1つまたは複数の電気を絶縁し流体を透過させる材料をさらに備える、請求項6に記載のナノチューブセレクタ。
【請求項8】
前記1つまたは複数の電気を絶縁し流体を透過させる材料は、多孔性ファブリックである、請求項7に記載のナノチューブセレクタ。
【請求項9】
前記第1および第2の導電材料は前記流体および不純物を通す、請求項6に記載のナノチューブセレクタ。
【請求項10】
請求項1に記載の複数のナノチューブセレクタであって、第1の空間内の不純物を含有する流体が前記複数のナノチューブセレクタのそれぞれを通って並行して運ばれるよう配置され、前記複数のナノチューブセレクタは、前記複数の中空ナノチューブを流れてきた流体および不純物を集めるための共通の第2の空間を有する、複数のナノチューブセレクタ。
【請求項11】
流体中の不純物を分離するためのナノチューブセレクタを有するシステムの使用方法であって、該方法は、人間の手術、治療、または診断を目的とする方法を除き、不純物を含む流体を浄化する方法であって、
支持材料中で支持された複数の中空ナノチューブが、前記複数の中空ナノチューブの第1の端部が前記流体が入っている第1の空間に開口し、前記複数の中空ナノチューブの第2の端部が第2の空間に開口するように、複数の中空ナノチューブを提供するステップであって、前記複数の中空ナノチューブは不純物がその中を通って運ばれるように寸法決めされた内部径を有している、複数の中空ナノチューブを提供するステップと、
前記複数の中空ナノチューブにかかる電界を発生させ、前記複数の中空ナノチューブを通る不純物の運搬を容易にするステップと、
前記第1の空間内の前記流体を前記複数の中空ナノチューブを通って前記第2の空間に運ぶステップであって、前記第2の空間へと運ばれた前記流体中の不純物は、集められて前記第1の空間内の前記流体から分離され得る、前記第1の空間内の前記流体を前記複数の中空ナノチューブを介して前記第2の空間に運ぶステップと、を備える方法。
【請求項12】
前記第1の空間内の流体を複数回再循環させて、複数回浄化させる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記流体は血液(ヒトの血液を除く)である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の中空ナノチューブは、前記血液の成分が通過するのを阻止するように、しかし、より小さいサイズの不純物を通過させるように寸法決めされている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の中空ナノチューブは前記血液の凝固を抑制するように官能基化される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願]
本出願は、米国特許第9,220,929号および第10,117,737号の主題に関連し、その全内容を本出願に参照により援用する。
【0002】
[技術分野]
米国特許第9,220,929号および第10,117,737号には、血液等の体液を含む流体から、選択された不純物を選択的に除去するための新しいシステムおよび方法が本願発明者によって開示されている。このようなシステムおよび方法では、不純物はナノチューブの側壁に形成された適切な大きさの細孔を通って、ナノチューブのアレイの中空状の内部へと運ばれ得る。このようにナノチューブのアレイの内部に運ばれた不純物は、その後廃棄流として除去され得る。血液の浄化に使用される場合、側壁の細孔は、血液中の特定の不純物(通常は小~中程度の大きさの分子)がナノチューブ壁の側壁の細孔を通って運ばれ、その一方、不純物ではないより大きな血液の必須成分、例えば赤血球、がブロックされるような大きさになっている。本明細書中に開示されるように、このような不純物の運搬は、選択された不純物が側壁の細孔を通ってナノチューブの中空状の内部に拡散するのを促すような向きに配置され得るナノチューブの近傍に、電界を印加することによって促進されてもよい。
【0003】
これらの従来技術に基づいて、本願では、流体(例えば、血液)中に存在する特定のサイズの不純物を、アレイ状に配置された中空ナノチューブの内部へと選択的に運び、不純物を流体から容易に分離し、それによって残りの流体を浄化された状態にすることが可能な、さらなるシステムおよび方法が開示されている。
【0004】
したがって本開示は、規則的に整列したナノチューブ、例えばカーボンナノチューブの特有の特性を用いて、流体、例えば血液、から望ましくない不純物を除去するためのさらなる新たなシステムおよび方法を提供する。
【0005】
[背景技術]
本明細書に開示されるシステムおよび方法は、様々な流体を浄化するために使用され得るが、このようなシステムおよび方法の具体的な利益および適用は、血液の浄化が可能な人工腎臓における使用である。
【0006】
健康な人間および動物において、腎臓は、過剰の水分、塩分、毒素を、血液中を循環する分解物質および(例えば、代謝によって生成される)老廃物と同様に効果的に除去して、血液を浄化するように機能する。
【0007】
しかしながら、種々の疾患を含む様々な理由により、腎臓が効果的に機能しない場合がある。腎不全に罹患している個体においては、腎臓は適切に機能せず、血流中に見られる自然に生成された老廃物は効果的に除去されない。その結果、米国では約600,000人、世界中で何百万人もの人が腎不全に苦しんでいる。この数は、年間約9%の割合で増加していると推定されている。
【0008】
一般的には、このような患者を完全な健康状態に近いところまで回復させるためには、腎臓移植が必要である。しかし、腎臓移植の需要は限られたドナー臓器の供給を大きく上回っている。例えば、2017年には、米国で約100,000人の患者が腎臓移植のウェイティングリストにおり、その一方、その年に行われた腎臓移植は20,000件未満であった。
【0009】
腎臓移植をしても、宿主の拒絶反応といった合併症や、拒絶反応を防ぐために生涯服用しなければならない場合もある免疫抑制薬による合併症は珍しいことではない。加えて、移植片対宿主病および移植された感染性の疾患も発症し得る。その結果、腎臓機能を喪失した(例えば、腎不全)数多くの患者の体内では、腎臓によって行われる通常の洗浄プロセスが、例えば透析、通常では血液透析または腹膜透析のいずれか、等の外部処理によって人工的に行われる必要がある。
【0010】
血液透析において、患者の血液は、通常体外で、様々なサイズの細孔を有し実質的に小さく半透性の多数のプラスチック膜を備える、使い捨てカートリッジを使用して血液を濾過する透析器に送られる。血液が透析カートリッジの毛管系を通って拡散すると、新鮮な透析液の向流とともに患者の血液から汚染物質が除去される。血液中の毒素(例えば、塩および種々の不要な低分子量分子)は、流れによって生じたまたは浸透圧の差の結果としてこれらの膜の中で優先的に拡散し、それによって血液中の毒素の濃度を下げる。浄化された血液は、その後、通常は腕の静脈および/または挿入されたカテーテルの管腔を通って、患者の体に戻される。
【0011】
しかしながら、この種の透析手順には多くの欠点がある。透析を受けるには、患者は大型かつ高価な機械にかなりの時間つながれていなければならない。患者は、通常、少なくとも週に3~4回、1回につき約3~5時間の透析治療を受けなくてはならない場合がある。このような大がかりで頻繁な治療であっても、透析機械は、完全に機能する腎臓のわずか13%ほどの効果しかない場合がある。残念ながら、透析患者の5年生存率は、わずか33~35%と推定されている。
【0012】
さらに、単に膜の中に拡散させることによって中分子量分子と呼ばれる大きな分子量の分子を除去する透析治療の能力は、非常に非効率的である。透析を用いる場合、定められた透析時間中に、そのような大きな分子は約10~40%しか除去できない場合がある。これにより、患者の血液内に大きなサイズの毒素が蓄積され得る。その結果、これらの毒素は除去されることなく異常に高い濃度レベルに達し、時間とともに身体を損傷させ得る。これらの毒素の非効率的な除去は、現在の腎透析技術には相当な限界があるということを示していると推測している人もいる。
【0013】
これらの毒素を十分に除去するために、メーカーや腎臓専門医は透析膜の表面積を大きくしたり、また透析治療時間を延ばしたりすることを試みた。しかし、透析膜の表面積を大きくすることは現実的に限界がある。加えて、透析治療時間を増やすことは、患者の生活の質を低下させ、腎臓機能の喪失に苦しんでいる人々の治療費を増やし、有害な透析の物理的及び社会的副作用を増大させる。
【0014】
これらの欠点を克服するために、本発明は、ナノチューブ製造技術の進歩に基づいて、血液のような流体中に存在し得る、前述した毒素を含む望ましくない不純物を除去するための、新規かつ効率的なアプローチを提供する。
【0015】
背景として、近年、カーボンナノチューブは、多くの用途において有用な特有の物理的・化学的性質を有するため、その製造が広く研究されている。様々な種類のナノチューブやナノチューブアレイを効率的に製造する技術が開発されてきた。例えば、現在では、他の技術の中でも種々の化学蒸着(CVD)製造法を用いて、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブの両方を製造することが可能である。重要なことは、プロセスパラメータおよび成長環境を制御することによって、垂直に整列した「森」またはカーボンナノチューブのアレイを基板上に成長させ、様々な用途および装置で用いることが可能であるということである。
【0016】
このような垂直に整列したカーボンナノチューブアレイを成長させるための適切な成長条件および技術は、様々な刊行物に記載されている。例として、それに限定されないが、このような刊行物には、以下のものが含まれる。(1)’’Nickel Overlayers Modify Precursor Gases To Pattern Forests of carbon nanotubes,’’J.Phys.Chem.C 2017.121:11765~11772,R.Yemini,A.Itzhak,Y.Gofer,T.Sharabani,M.Drela,G.D.Nessim、(2)’’Differential preheating of hydrocarbon decomposition and water vapor formation shows that single ring aromatic hydrocarbons enhance vertically aligned carbon nanotubes growth,’’Carbon,109(2016)727~736,E.Teblum,A.Itzhak,E.Shawat Avraham,M.Muallem,R.Yemini,G.D.Nessim、(3)’’Patterning of Forests of carbon nanotubes (CNTs) Using Copper Overlayers as Iron Catalyst Deactivators,’’J.Phys.Chem.C.120 (2016) 12242~12248,R.Yemini,M.Muallem,T.Sharabani,E.Teblum,Y.Gofer,G.D.Nessim、(4)’’Millimeter-Tall Carpets of Vertically Aligned Crystalline carbon nanotubes Synthesized on Copper Substrates for Electrical Applications,’’J.Phys.Chem.C.118 (2014) 19345~19355,E.Teblum,M.Noked,J.Grinblat,A.Kremen,M.Muallem,Y.Fleger,et al.、および(5)’’Properties、synthesis、and growth mechanisms of carbon nanotubes with special focus on thermal chemical vapor deposition,’’Nanoscale.2 (2010) 1306~1323,Gilbert D.Nessim。これらの刊行物の内容も、参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本開示の特徴および利点は、添付の図面とあわせて以下の説明を参照することにより、より詳しく理解されるであろう。
図1図1は、円筒状のカーボンナノチューブセレクタの例示的な実施形態の組立図を例示的に示す。
図2図2は、図1の実施形態の断面図であって、シリンダの中心を通る断面図を例示的に示す。
図3A図3Aは、ハウジング内にどのように配置され得るかという一例を示した、カーボンナノチューブセレクタの分解図を示す。
図3B図3Bは、組立後の図3Aの配置を示す。
図4A図4Aは、複数のカーボンナノチューブセレクタの組み立てを示す、第2の実施形態の分解図を示す。
図4B図4Bは、図4Aの第2の実施形態が組み立てられたものの切り欠き図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[発明の詳細な説明]
以下の詳細な説明は、流体から特定の不純物を選択的に除去するように配置された整列した中空ナノチューブ、例えばカーボンナノチューブ、のアレイを使用することによって、例えば血液のような流体から不純物を除去するための新たなシステムおよび方法に関する。
【0019】
具体的には、ナノチューブは、流体のより大きなサイズの成分が通過することを阻止する一方、より小さな寸法の不純物を選択的に通過させるように寸法決めされた中空状の内部を有するように製造されていてもよい。このようにサイズに基づいて不純物を選択的に除去することは、血液を浄化するために非常に有用である。これは、例えば従来の透析技術によって除去される不純物は、通常、赤血球等の血液の主要成分よりも小さいからである。
【0020】
本明細書に記載されるように、カーボンまたは他の材料から製造され得る整列したナノチューブアレイを使用して、このようなナノチューブセレクタを製造するためのいくつかの新たなアプローチおよび構成が開示されている。
【0021】
例示的な実施形態では、ナノチューブセレクタ内のナノチューブの内径は、約1nm(例えば、単層半透過性ナノチューブの場合)から約数ナノメートル(例えば、多層半透過性ナノチューブの場合)の範囲とすることができる。例えば、現在入手可能な典型的な多層中空ナノチューブの内径は、約2~6ナノメートル(nm)の範囲である。このような直径は、大多数の単一分子の大きさと同じ程度の大きさである。比較すると、1つの赤血球は約7,000nmの直径を有し、典型的なウイルスは直径約100nmしかない。
【0022】
例示的な実施形態では、ナノチューブは、アスペクト比(例えば、長さ対直径比)が10,000を上回る、数ミクロンから1ミリメートルまたはそれ以上の長さであり得る略円筒形を有する。
【0023】
本明細書で特定され、当該技術分野において知られている前述の文献に記載されているように、垂直に整列したナノチューブ、例えばカーボンナノチューブ、のアレイは、一般的には、それらチューブの中空状の内部を通る流体の流れを遮断する平坦かつ非多孔質の基板上にて成長する。よって、浄化中の流体が垂直に整列したナノチューブアレイの中空状の内部を通過できるように、垂直に整列したナノチューブアレイを成長後に前記基板から取り外し、一つの基板上に支持して、流体の流れが中空ナノチューブ内部を通過可能となるようにする。
【0024】
例えば、整列したナノチューブが成長した後に、当該ナノチューブは流体不透過性の支持材料に移されるか、あるいは支持されて、それらの端部が流体の移動に対して開放されていてもよい。1つの製造例として、ナノチューブ間の空間は、例えば、空間の間にポリマー材料を浸透させて、整列したナノチューブを支持し維持する流体不透過性のポリマー支持マトリックスを形成することによって、封止されていてもよい。
【0025】
その後、プラズマ酸化または他のエッチング工程を用いて垂直に整列したナノチューブが成長した元の基板を取り除き、当該基板に元々付着していた中空ナノチューブの開放端を露出させてもよい。この処理が完了すると、ナノチューブは支持材料中で支持されるが、ナノチューブの端部は開放され、不純物等を含む流体が中空ナノチューブを通って支持材料の一方から他方へと移動可能となる。
【0026】
垂直に整列したナノチューブアレイを支持するために、可撓性ポリマーマトリックスのような材料を使用することによって得られる構造は、図1において参照番号200にて概略的に示されている円筒構造に包まれていてもよい。そこから分かるように、成長工程中に基板に対してほぼ一直線に並べられたナノチューブアレイ200は、円筒状に巻かれると、ナノチューブが円筒の中心に対して概ね半径方向の向きに配置される。このことは、矢印で示された拡散方向が、図2の右側にあるシリンダの中心に向かって径方向内向きにある、図2の断面図で示されている。
【0027】
図1に戻り、この時点でほぼ半径方向に整列した中空ナノチューブの円筒状アレイをさらに構造的に支持するため、層200は、内側ファブリック層210と外側ファブリック層220との間に挟まれていてもよい。これらの層は両方とも電気的に絶縁性であり、かつ、筒状アセンブリの外側の第1の空間を循環する流体中に存在し得る不純物が、ファブリック層210,220を容易に通過し、層200のナノチューブの中空状の内部を通って円筒形アセンブリの内側の第2の空間へと流れるように、十分に多孔性を有するものであってもよい。
【0028】
円筒状ナノチューブ層200に多孔性の支持体を提供することに加え、電気絶縁体である内側および外側ファブリック層210,220を組み込むことによって、これらの層210,220が、ナノチューブ層200を電気的に絶縁するように機能してもよい。ナノチューブ層200は、カーボン系ナノチューブ製である場合には、導電性である。
【0029】
例として、それに限定されないが、多くの適切な絶縁性で多孔性のファブリックが用いられてもよく、例えばグラスファイバー断熱布またはPTFEファブリック(テフロン(登録商標))が挙げられるが、これらはいくつかの例にすぎない。
【0030】
図1の例示的な実施形態にさらに示されるように、円筒状の内側金属メッシュ240は、円筒状の内側ファブリック層210の半径方向内側に配置され、外側金属メッシュ230は、外側ファブリック層220を囲むように配置されている。これらの金属メッシュ230,240は、介在する層210,200,220のためのさらなる支持部材として機能し、ファブリック層210,220によってナノチューブから電気的に絶縁された導電性の表面を提供している。
【0031】
したがって、内側メッシュ230と外側メッシュ240との間に電圧を印加して、それらの間に、ナノチューブが円筒軸に対して垂直な半径方向にほぼ整列している、ナノチューブ層200の中空状の内部を通る不純物の運搬を促進可能な電界を発生させてもよい。
【0032】
当該電界は、金属メッシュ230,240が導電リード(例えば、図3Aに示され、以下に説明されるリード380,390)によって接続される、適切な電圧源によって生成されてもよい。
【0033】
図2には、図1の円筒状のナノチューブセレクタアセンブリの部分断面図が、当該セレクタアセンブリの円筒の外側が図2の左側に表示されるように示されている。図1の実施例の断面図である図2に示されるように、ナノチューブアレイ200は、支持構造体204に支持された複数のナノチューブ202を備え、ナノチューブの端部が、円筒状のナノチューブセレクタを囲む第1の外部空間を循環し得る不純物を含む流体を受け取るように開放され、不純物が中空ナノチューブを通って、中空シリンダの内側部分によって少なくとも部分的に形成された第2の内部空間へと運ばれるようになっている。第2の空間では、不純物が除去を目的として集められ得る。
【0034】
よって、図2では、ナノチューブセレクタアセンブリの外側を囲む第1の空間に案内された流体中に存在する不純物は、ナノチューブおよびナノチューブセレクタの様々な層を通って、円筒状のナノチューブセレクタの内部によって少なくとも部分的に形成された第2の空間へと(図2の矢印で示す拡散方向に)拡散する。
【0035】
動作時に、不純物を含む流体は、外側メッシュ230を通り、ファブリック220の比較的大きな孔を通って内側に流れてもよい。中空ナノチューブの内部寸法よりも小さな流体中の不純物は、ナノチューブ層200内のナノチューブの中空状の内部へと流れ、拡散し続ける。例えば、浄化される流体が血液である場合、中空ナノチューブの内径は、水および他の不純物を通過させ、その一方でナノチューブの内部を通過するには大きすぎる赤血球および血液の他の成分は除外されるように、製造の際に寸法決めすることが可能である。
【0036】
図2の例示的な実施形態では、中空ナノチューブ内部を通過できるほどの小さな不純物を含む流体は、ナノチューブ層200を出ると、内側ファブリック210を通り、内側メッシュ240を通って、ナノチューブセレクタアセンブリの内部空間へと拡散し続け、そこで除去を目的として集められて廃棄流を形成してもよい。
【0037】
図2に示すように、導電リード380,390は、それぞれ外側金属メッシュ230および内側金属メッシュ240に接続されていてもよい。電圧源(図示なし)をリード380,390に印加し、ナノチューブセレクタアセンブリに電界を発生させて、帯電した不純物を選択的にさらに拡散させることが可能である。
【0038】
図1に戻り、ナノチューブセレクタアセンブリを完成するために、キャップ250が、シリンダの内部を覆うようにシリンダの一端に配置されてもよい。キャップ250は、外部空間内の流体がシリンダの内部空間に直接進入することを抑制し、それによって確実に中空ナノチューブを通って運ばれる不純物を含む流体だけが内部空間に入るようにする。加えて、不純物を含む流体が内部空間内に入ると、キャップ250は、そのような流体がシリンダの頂部から流出することを抑制して、流体を廃棄流中に集めおよび/または除去することができる。
【0039】
この例示的な実施形態によれば、シリンダの内部空間に入った流体は、ナノチューブ層200内のナノチューブの中空状の内部を通過した不純物を含む流体である。このような流体は、収集システム、例えば円筒状ナノチューブセレクタの内部空間の底部に配置されたレセプタクルを備えるシステム、によって集められるか、または、廃棄物排出口を備え、流体を廃棄流として集める収集システムにさらに送られてもよい。
【0040】
例えば、ナノチューブセレクタアセンブリを埋め込み可能な人工腎臓システムの一部として使用して血液を浄化する場合、米国特許第9,220,929号に概要が述べられ図示されているように、不純物を含む流体は、外科的に製作された構造体を通って排泄するために身体の尿管を通過する廃棄流へと送られ得る。
【0041】
当業者には明らかなように、不純物がナノチューブセレクタの内部空間へと運ばれると、流体の流れおよびナノチューブセレクタの近傍で発生され得る電界によって、そのような不純物が拡散して反対方向に戻る可能性が低くなり、その結果、流体中の不純物が分離される。
【0042】
上述のナノチューブセレクタアセンブリは、図3Aの分解図に示されるように、ハウジング内に組み立てられてもよい。図3Aでは、同様の構成要素には図1で使われたものと同じ参照番号が付してある。図3Aに示されるように、ナノチューブセレクタの構成要素は組み立てられて、流体排出口310を有する円筒部分と、流体注入口330を有する頂部320と、ナノチューブセレクタを通過した不純物が収集され得る底部350と、を有するハウジングで囲まれていてもよい。図3Bは、完全に組み立てられた図を示しており、図では、動作中には電圧源に接続される電極ワイヤ380,390が、外側および内側の金属メッシュ230,240にそれぞれ接続されるように、ハウジングを貫通するように配置されている。
【0043】
図3Bに示すように組み立てられると、浄化される流体は、流体注入口330を通って上部の容器に入り、排出口310を通って出ていってもよい。明らかなように、排出口310から流れ出る流体を、流体注入口330に戻して再循環させて複数回通過させ、セレクタを通過する度にさらに浄化させてもよい。このように通過する度に、ナノチューブ層内の放射状に配置された中空のナノチューブを通り、セレクタの中心へと流れる不純物を含んだ流体は、ハウジングの底部350に集められてもよいし、または廃棄流とされてもよい。
【0044】
不純物の分離および除去の効率を高めるために、図4A,Bの実施形態に示すように、複数のナノチューブセレクタを並行して稼働させてもよい。図4Aは分解図を示し、図4Bは組立図を示している。
【0045】
図4Aを参照して、複数のナノチューブセレクタ405a,405b,405cを共通のハウジングの中に組み立ててもよい。なお、例示的な図4A,Bの実施形態では、3つのナノチューブセレクタ405a,405b,405cは、ドーム状のキャップを有するように示されているが、あるいはそれぞれ図1に示すものと実質的に同様に構成されていてもよい。3つのセレクタが示されているが、多数のそのようなセレクタが、並行して稼働するように配置することも考えられる。
【0046】
図4Aにさらに示すように、各円筒状ナノチューブセレクタは、ナノチューブセレクタを通りその内部空間に入った不純物を含む流体のみを通過させて、容器407等の収集システムと連通する、取り付けインターフェース部406に取り付けられている。
【0047】
図1に関して上述したように、ナノチューブセレクタ405a,405b,405cはそれぞれ、流体および十分に小さな不純物が、ナノチューブの中空の内部を通ってナノチューブセレクタの円筒状の内部空間へと流れるのを可能にしている、放射状に配置された中空ナノチューブのアレイを備えている。不純物を含んだ流体は、当該内部空間から容器407のような収集システムに入るようになっていてもよい。
【0048】
図4A,Bに示すように、浄化される流体が注入口401を通って共通の囲い402に入るようになっていてもよい。流体は排出口408を通って排出される。
ナノチューブセレクタ405a,405b,405cのそれぞれにおける中空ナノチューブアレイを通る不純物を含む流体のみが、共通の収集システム、例えば容器407、に入る。不純物を含む流体は、当該共通の収集システムから除去されてもよい。
【0049】
図4A,Bの例示的な実施形態は、共通の収集容器407に集められた不純物を含む流体を示しているが、共通の容器は、廃棄物排出口を備え、そこから不純物を含む流体が廃棄流として除去され得るように構成され得る、収集システムの一部であってもよい。
【0050】
さらに、排出口408から流れ出る流体を、再び注入口401へと戻すための適切な配管および付属器具を経由して再循環させて、流体がナノチューブセレクタを複数回通過して再循環するにつれて、流体をさらに浄化させるということも考えられる。流体を再循環させることによって、かなり多くの数回の浄化を行うことは容易に実現可能であるので、1回通過するごとに、少量の不純物を除去することのみが求められてもよい。
【0051】
ナノチューブセレクタアセンブリを人工腎臓として使用する場合には、浄化プロセスに続いて、浄化された血液および血液に含まれる血漿を別の経路に送るおよび/または患者に戻すことが可能である。
【0052】
図1の実施形態と同様に、ナノチューブセレクタはそれぞれ、内側および外側の金属メッシュと電圧源とに取り付けられた電極(図4A,Bでは図示なし)を備えていてもよく、ナノチューブセレクタに電界を発生させて、不純物がナノチューブセレクタを通ってさらに拡散されるようにしてもよい。
【0053】
開示されたシステムおよび方法は、帯電した不純物を含む不純物を例えば、それに限定されないが、水、水溶液、非水溶液、貴重な物質の回収システム、廃水処理、血液、脳脊髄液、胆汁、および体液のような任意の種類の流体から、分離および除去、そして濾過するために使用され得ることが当業者には理解されるであろう。
【0054】
好ましい実施形態では、濾過および/または浄化される流体は血液であるが、前述の説明は、開示されたシステムおよび方法を用いて浄化することができる流体の種類を限定するものではない。
【0055】
さらに、人工腎臓系として使用する場合には、ナノチューブおよび/または他の材料は、その表面に接触する血液の凝固または凝塊を抑制するために特に選択された界面活性剤および/または抗凝固剤で官能基化されてもよい。
【0056】
本明細書では、「官能基化」(またはその形を少し変えたものすべて)は、特定の原子・分子基を付着させて、本明細書に記載されたナノチューブまたは構造の特定の性質を変え得るような、表面処理を意味する。
【0057】
官能基化は、一般的には、湿式化学、または蒸気、ガス、および/またはプラズマ化学のような種々の表面改質技術と、マイクロ波アシスト化学技術とによって行われるが、これらは数例にすぎない。これらの技術は、表面化学を利用して、所望の材料をカーボンナノチューブの表面に結合させる。
【0058】
例示的な実施形態が人工腎臓系で使用される場合、ポリマー、抗凝固剤、および/または他の選択された分子を、ナノチューブおよび/またはアセンブリの他の部分の表面に付着させてもよい。
【0059】
このような既知の技術を用いて、抗凝固剤分子(例えば、ヘパリンまたはヒルジンと同様のもの)をナノチューブに共有結合させてもよい。これらの抗凝固剤分子をこのようにして付着させると、血液の凝塊を実質的に抑制するのに役立つ。
【0060】
さらに、例示的な実施形態では、ナノチューブセレクタアセンブリを、特定の不純物の存在を検出するように設計されたセンサを利用するように適合させることが可能である。これにより、例えば、入ってくる血液中および/または既に浄化された血液中および/または廃棄流中において、または所望される場合はこれらの位置の任意の組み合わせから、選択した電荷種の濃度を測定することが可能になる。このようなセンサとしては、例えば、不純物を対象としたセンサ、イオンを対象とした電気化学センサ、分光式センサが含まれていてもよく、これらのセンサは、適当なマイクロコントローラと信号をやりとりすることが可能である。
【0061】
このようなセンサは、入ってくる流体(濾過前)および/または出ていく流体(濾過後)のいずれかにおいて、選択した荷電種の濃度を測定することが可能である。適当なフィードバック機構につなぐと、この情報によって、ナノチューブセレクタに印加する電位を調整することが可能となる。
【0062】
例として、利用可能な一般的な種類のセンサには、限定はされないがNa+(水性)およびK+(水性)のような複数の種を迅速に検出することが可能なセンサが含まれていてもよいが、限定はされない。
【0063】
さらに、当該センサは、評価および対応を目的としてそれらの情報をマイクロプロセッサとやりとりするように設計することが可能である。例えば、ナノチューブセレクタアセンブリは、このようなセンサ、マイクロプロセッサ、および/または他のデバイスを利用して、例えばペースメーカーや脊髄刺激装置で使用されるものと同様の技術を利用して、制御および/またはフィードバックの提供を行うことが可能である。
【0064】
カーボン系ナノチューブは今日まで広く研究されており、様々な形態で入手可能であるが、前述のシステムおよび方法は、他の材料で形成されたナノチューブアレイを使用してもよく、カーボン系ナノチューブアレイに限定されるものであると理解されるべきではない、と考えられている。
【0065】
本開示の例示的な実施形態が詳細に示され説明されてきたが、それらの種々の変更点および改良点は、当業者には容易に明らかになるであろう。それらのすべては、以下の請求の範囲の範囲内のものである。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B