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  • 特許-太陽電池パネル用の固定部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】太陽電池パネル用の固定部材
(51)【国際特許分類】
   H02S 20/23 20140101AFI20240724BHJP
   E04D 13/18 20180101ALI20240724BHJP
【FI】
H02S20/23 B
E04D13/18 ETD
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022053279
(22)【出願日】2022-03-29
(65)【公開番号】P2023146204
(43)【公開日】2023-10-12
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】391013162
【氏名又は名称】株式会社屋根技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】山中 孝悦
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3191254(JP,U)
【文献】米国特許第10749459(US,B1)
【文献】特開2000-303638(JP,A)
【文献】特開2007-146881(JP,A)
【文献】米国特許第09422957(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/18
H02S 20/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接して架台に載置されている二つの太陽電池パネルのそれぞれの端辺を上方から前記架台へ押圧して固定するための太陽電池パネル用の固定部材であり、
互いに平行に延出している一対の第一端辺を有する平面視が四角形の本体部と、
該本体部の中央において貫通しており、前記第一端辺と直交する方向へ長い長孔と、
前記本体部における一対の前記第一端辺それぞれと前記長孔との間の部位からそれぞれ上方へ延出している一対の立壁部と、
一対の該立壁部のそれぞれの上端から前記長孔と前記立壁部との間の上方の部位までそれぞれ延出している一対の係止部と
を具備していることを特徴とする太陽電池パネル用の固定部材。
【請求項2】
前記本体部における一対の前記第一端辺の間の中央から下方に向かって該第一端辺と平行に突出している下突出部を、
更に具備していることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池パネル用の固定部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接して架台に載置されている二つの太陽電池パネルを固定するための太陽電池パネル用の固定部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋根上などに複数の太陽電池パネル100を固定する固定構造として、例えば、図4(a)に示すような構造が提案されている(特許文献1を参照)。この固定構造は、上面に開口101aが形成されていると共に開口101aを間にして二つの太陽電池パネル100が載置されている長尺の架台101と、上下方向へ延びた軸芯周りに回転不能な状態で架台101の内部に挿入されているナット102と、二つの太陽電池パネル100を跨いでそれぞれの上面に当接している平板状の固定部材103と、固定部材103を上方から貫通して下端がナット102に螺合されているボルト104と、を備えている。なお、架台101は、単一の断面形状で図4の紙面と垂直な方向へ延出している。
【0003】
特許文献1の技術では、二つの太陽電池パネル100を架台101に固定する前に、頭部を上にしたボルト104を上方から固定部材103に挿通させた上で、ボルト104の下端にナット102を螺合させて仮組した状態にする。そして、架台101に一つの太陽電池パネル100が載置されている状態で、架台101の長手方向の端部から、開口101aにボルト104を通すと共に、架台101の内部にナット102を挿入し、ボルト104の頭部及び固定部材103を架台101上の太陽電池パネル100の上面よりも高くした状態にする。この状態で、固定部材103をボルト104及びナット102と一緒に所望の固定位置まで架台101の長手方向へスライドさせる。その後、架台101と固定部材103との間に挿入されるように、他方の太陽電池パネル100を架台101に載置してボルト104を締め付けることにより、隣接している二つの太陽電池パネル100を架台101に固定するようにしている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、上記のような手順で太陽電池パネル100を固定する際に、以下のような問題があった。詳述すると、所望の固定位置までのスライドは、作業者が固定部材103を手で掴んで行うこととなる。その際、他方の太陽電池パネル100を架台101に載置するために、固定部材103から手を放すと、固定部材103がボルト104に沿って落下し、固定部材103の一方の端辺側が、架台101上の太陽電池パネル100の上面に当接する。これに伴い、固定部材103の反対側の端辺が、次に架台101に載せようとしている太陽電池パネル100の上面の高さよりも下方に位置するように、固定部材103が傾斜した状態となる(図4(b)を参照)。これにより、次に架台101に載せようとしている太陽電池パネル100を、固定部材103と架台101との間の隙間に挿入することが困難となる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-80486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、架台への複数の太陽電池パネルの固定作業を容易にすることが可能な太陽電池パネル用の固定部材の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る太陽電池パネル用の固定部材は、
「隣接して架台に載置されている二つの太陽電池パネルのそれぞれの端辺を上方から前記架台へ押圧して固定するための太陽電池パネル用の固定部材であり、
互いに平行に延出している一対の第一端辺を有する平面視が四角形の本体部と、
該本体部の中央において貫通しており、前記第一端辺と直交する方向へ長い長孔と、
前記本体部における一対の前記第一端辺それぞれと前記長孔との間の部位からそれぞれ上方へ延出している一対の立壁部と、
一対の該立壁部のそれぞれの上端から前記長孔と前記立壁部との間の上方の部位までそれぞれ延出している一対の係止部と
を具備している」ことを特徴とする。
【0008】
本構成における固定部材の「上下」は、固定部材によって太陽電池パネルを固定している状態における上下を指している。
【0009】
本構成の太陽電池パネル用の固定部材によれば、固定部材を水平にした状態で、頭部を上にしたボルトの雄ネジ部を上方から固定部材の長孔に挿通し、ボルトの頭部を一対の係止部の間を通して本体部の上面に当接させる。そして、ボルトを長孔に沿ってスライドさせて、頭部の一部を一対の係止部の内の一方の係止部と本体部との間に挿入する。この状態で、固定部材を自由な状態にすると、一方の係止部がボルトの頭部に引っ掛かり、固定部材がボルトに沿って落下することはない。また、この状態では、ボルトの頭部に係止された係止部に近い第一端辺が、反対側の第一端辺よりも上方に位置するように固定部材が傾斜した状態となる。つまり、ボルトの頭部を本体部と係止部との間に挿入することで、ボルトの頭部に係止させた係止部に近い第一端辺が高くなるように傾斜した状態で、固定部材をボルトに保持させることができる。
【0010】
従って、従来のような手順で二つの太陽電池パネルを架台に固定する際に、一つの太陽電池パネルを先に架台に載置しておき、固定部材における一つの第一端辺のみを、既に架台に載置済の太陽電池パネルの上方に位置させた状態で、その太陽電池パネルから遠い係止部と本体部との間にボルトの頭部が挿入されるように、固定部材を長孔に沿ってスライドさせてボルトの頭部に当該係止部を係止させる。これにより、固定部材を、載置済みの太陽電池パネルから遠ざかるほど高くなるように傾斜した状態にすることができると共に、架台と固定部材との間の隙間を、太陽電池パネルの高さよりも高くすることができる。従って、ボルトを間にして次に架台に載置させる太陽電池パネルの側では、架台と固定部材との間の隙間に次の太陽電池パネルの端辺を容易に挿入させることができ、太陽電池パネルの固定作業を容易なものとすることができる。
【0011】
また、本発明に係る太陽電池パネル用の固定部材は、上記の構成に加えて、
「前記本体部における一対の前記第一端辺の間の中央から下方に向かって該第一端辺と平行に突出している下突出部を、
更に具備している」ことを特徴としても良い。
【0012】
本構成によれば、上記のように、固定部材を傾斜させて、架台と固定部材との間に次の太陽電池パネルの端辺を挿入した後に、係止部をボルトの頭部から外して固定部材の一対の第一端辺側を、架台に載置されている二つの太陽電池パネルのそれぞれの上面に当接させると、本体部から下方へ突出している下突出部が二つの太陽電池パネルの間に挿入された状態となる。この状態で、締め付けるためにボルトの頭部を回転させると、固定部材が頭部と一緒に回転しようとするが、下突出部が太陽電池パネルの側面に当接することにより、固定部材の回転を阻止することができる。
【0013】
また、下突出部を、一対の第一端辺の間の中央から下方へ突出させているため、下突出部が二つの太陽電池パネルの間に挿入されることで、固定部材の中央を二つの太陽電池パネルの間の中央に接近させることが可能となる。つまり、固定部材において、ボルトの雄ネジ部が挿通される孔が長孔であっても、長孔の中央を二つの太陽電池パネルの間の中央に近付けることができる。これにより、固定部材をそれぞれの太陽電池パネルに対して均等に当接させることができ、二つの太陽電池パネルを偏りなく架台へ押圧させることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の効果として、架台への複数の太陽電池パネルの固定作業を容易にすることが可能な太陽電池パネル用の固定部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は本発明の一実施形態である太陽電池パネル用の固定部材の平面図であり、(b)は同じ太陽電池パネル用の固定部材の正面図であり、(c)は同じ太陽電池パネル用の固定部材の底面図であり、(d)は同じ太陽電池パネル用の固定部材の右側面図であり、(e)は同じ太陽電池パネル用の固定部材の斜視図である。
図2】(a)は図1の太陽電池パネル用の固定部材とボルトとスライド部材とを仮組した状態で示す斜視図であり、(b)は太陽電池パネル用の固定部材の係止部にボルトの頭部を係止させることで固定部材が傾いている状態を断面で示す説明図である。
図3】(a)は図1の太陽電池パネル用の固定部材を使用した太陽電池パネルの固定作業において、架台に一つの太陽電池パネルが載置されていると共に、その載置済みの太陽電池パネルよりも上方に位置させている固定部材において、載置済みの太陽電池パネルの上方にある第一端辺よりも反対側の第一端辺の方が高くなるように、ボルトの頭部に係止部が係止されて傾斜している状態を断面で示す説明図であり、(b)は固定部材により二つの太陽電池パネルを架台に固定している状態を断面で示す説明図である。
図4】(a)は従来の固定部材を使用した太陽電池パネルの固定構造を断面で示す説明図であり、(b)は(a)の固定構造を構築する際に、固定部材が傾斜することによって次の太陽電池パネルの固定が困難となる状態を断面で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態である太陽電池パネル用の固定部材10(以下では、単に固定部材10と称する)について、図1図3を参照して詳細に説明する。固定部材10は、隣接して架台1に載置されている二つの太陽電池パネル2のそれぞれの端辺を上方から架台1へ押圧して固定するためのものである。
【0017】
固定部材10は、互いに平行に延出している一対の第一端辺11aを有する平板状の本体部11と、本体部11の中央において貫通しており、第一端辺11aと直交する方向へ長い長孔12と、一対の第一端辺11aそれぞれと長孔12との間の部位からそれぞれ上方へ延出している一対の立壁部13と、一対の立壁部13のそれぞれの上端から互いに接近する方向に向かって延出している一対の係止部14と、を具備している。それぞれの係止部14は、長孔12の直上までは至らない長さである。
【0018】
本体部11は、一対の第一端辺11aと直交し、第一端辺よりも長さが短い一対の第二端辺11bを有しており、平面視が四角形である。本体部11は、第一端辺11aと立壁部13との間で、上面が第一端辺11aへ向かって低くなるように傾斜している。一対の立壁部13と一対の係止部14とのそれぞれの境界部分は、上方へ向かうほど窄まるように傾斜している。これら本体部11上面の傾斜と、立壁部13と係止部14との境部部分の傾斜とにより、固定部材10の影が太陽電池パネル2の上面に落ち難いものとなっている。
【0019】
更に、固定部材10は、本体部11における一対の第一端辺11aの間の中央から下方に向かって第一端辺11aと平行に突出している下突出部15を、具備している。下突出部15は、第一端辺11aと直交する方向の長さ(幅)が、長孔12の短軸方向(第一端辺11aと平行な方向)の長さよりも小さい。下突出部15は、一対の第二端辺11bそれぞれに達する長さであるが、長孔12よりも幅が狭いことから、当然に長孔12部分には下突出部15はない。
【0020】
下突出部15は、下部において下方へ向かって窄まるように傾斜しているガイド部15aと、下面から上方へ向かって凹んでいる肉抜凹部15bと、を有している。なお、本実施形態の下突出部15は、第一端辺11aと直交する方向の幅が、後述するボルト3の雄ネジ部3bの直径よりも若干小さい。
【0021】
固定部材10は、一対の第一端辺11aの間の中央を通り上下方向に延びる仮想の平面に対して対称に形成されている。また、固定部材10は、第一端辺11aが延びている方向へ単一の断面形状で延出している部材に、長孔12を貫設したものである。
【0022】
この固定部材10は、頭部3aの高さが本体部11と係止部14との間の高さよりも低い低頭のボルト3と組み合わせることにより、ボルト3の軸芯に対して傾斜させた状態でボルト3の頭部3aに保持させることが可能である。
【0023】
詳述すると、固定部材10を水平にした状態で、頭部3aを上にしたボルト3の雄ネジ部3bを上方から固定部材10の長孔12に挿通し、ボルト3の頭部3aを一対の係止部14の間を通して本体部11の上面に当接させる。そして、ボルト3を長孔12に沿ってスライドさせて、頭部3aの一部を一対の係止部14の内の一方の係止部14と本体部11との間に挿入する。この状態で、固定部材10を自由な状態にすると、一方の係止部14がボルト3の頭部3aに引っ掛かり、固定部材10がボルト3に沿って落下することはないと共に、頭部3aに係止している係止部14に近い第一端辺11aよりも、反対側の第一端辺11aが下方に位置するように固定部材10が傾斜した状態となる(図2(b)を参照)。つまり、ボルト3の頭部3aを本体部11と係止部14との間に挿入することで、ボルト3の頭部3aに係止させた係止部14に近い第一端辺11aが高くなるように傾斜した状態で、固定部材10をボルト3に保持させることができる。
【0024】
本実施形態の固定部材10は、アルミニウムのような金属を押出成形した長尺材を、所望の長さに切断したものとすることができる。因みに、固定部材10は、第一端辺11aの長さが50mm~100mmであり、第二端辺11bの長さが25mm~50mmである。長孔12は、幅が8.5mm、長さが12mmであり、M8のボルトに対応させている。本体部11と係止部14との間の高さは、1.5mm~3mmである。
【0025】
次に、本実施形態の固定部材10を使用した太陽電池パネル2の固定構造、及び、太陽電池パネル2の固定方法について、主に図2及び図3を参照して説明する。固定部材10を使用した太陽電池パネル2の固定構造は、架台1と、架台1に隣接して載置されている二つの太陽電池パネル2と、二つの太陽電池パネル2のそれぞれの端辺に上方から当接している固定部材10と、頭部3aを上にして雄ネジ部3bが上方から固定部材10に挿通されているボルト3と、ボルト3の雄ネジ部3bが螺合されている雌ネジ孔4aを有し架台1に保持されているスライド部材4と、架台1と二つの太陽電池パネル2の端辺との間に挟まれているアース金具5と、を備え、ボルト3の締め付けにより固定部材10が二つの太陽電池パネル2のそれぞれの端辺を架台1に押圧して固定することにより構築されている。
【0026】
架台1は、一定の断面形状で延出している長尺状の桟材である。架台1は、上面に長手方向へ長い開口1aと、開口1aよりも下方でスライド部材4を長手方向へスライド可能に保持するための一対の保持溝1bと、を有している。開口1aは、ボルト3の雄ネジ部3bが通過可能な幅に形成されている。この架台1は、図示は省略するが、例えば、長手方向を屋根の傾斜方向へ向けた状態で、屋根上に取付けられている。
【0027】
太陽電池パネル2は、複数の太陽電池セルを有する平板状のパネル本体2aと、パネル本体2aの端辺を支持している枠体2bと、を有している。
【0028】
ボルト3は、図2に示すように、頭部3aと、頭部3aから延出しており外周面に雄ネジが形成されている雄ネジ部3bと、を有している。ボルト3は、頭部3aの高さが固定部材10における本体部11と係止部14との間の高さよりも低い。本実施形態のボルト3は、一般的なボルトと比較して頭部3aの高さが低い低頭の六角穴付きボルトである。
【0029】
スライド部材4は、図2(a)に示すように、平面視が長方形の平板状で中央にボルト3の雄ネジ部3bが螺合される雌ネジ孔4aが形成されている。スライド部材4は、一対の短辺側を架台1の長手方向へ向けた状態で、架台1の長手方向の端部から、一対の長辺側を架台1の一対の保持溝1bにそれぞれ挿入することで、架台1の長手方向へスライド可能に保持されると共に、雌ネジ孔4aの軸芯周りに回転不能に保持される。
【0030】
アース金具5は、薄い平板状に形成されている。アース金具5は、上面及び下面から突出しており先端が尖っている複数の突片5aを有している。また、アース金具5は、中央において貫通しており、ボルト3の雄ネジ部3bが挿通される挿通孔5bを、有している。アース金具5は、薄いステンレス鋼板をプレス成形したものである。
【0031】
続いて、固定部材10を使用した太陽電池パネル2の固定方法について説明する。まず、図2(a)に示すように、固定部材10とボルト3とスライド部材4とアース金具5とを仮組して仮組体6を形成する。なお、図2(a)では、アース金具5を省略して示している。具体的には、頭部3aを上にしたボルト3の雄ネジ部3bを、上方から固定部材10の長孔12、アース金具5の挿通孔5b、の順に挿通させた上で、スライド部材4の雌ネジ孔4aに螺合させることで、仮組体6とすることができる。
【0032】
そして、二つの太陽電池パネル2の内、一方の太陽電池パネル2が架台1に載置されている状態で、架台1の長手方向の端部に外方から、仮組体6を接近させ、開口1aにボルト3の雄ネジ部3bを通すと共に、一対の保持溝1bにスライド部材4の一対の長辺側を挿入する。その際に、ボルト3の頭部3aが太陽電池パネル2によりも上方まで突出するようにしておく。また、固定部材10及びアース金具5を、架台1よりも上方へ位置させておく。
【0033】
この状態で、仮組体6を架台1に沿って、架台1に載置されている載置済みの太陽電池パネル2の方向へスライドさせ、その太陽電池パネル2の枠体2bの側面にボルト3の雄ネジ部3bを当接させる。この際に、固定部材10を載置済みの太陽電池パネル2よりも上方に位置させると共に、アース金具5の一部を架台1とその太陽電池パネル2の枠体2bとの間に挿入させる。
【0034】
次に、固定部材10の一つの第一端辺11aのみを載置済みの太陽電池パネル2の上方に位置させた上で、固定部材10を長孔12に沿って載置済みの太陽電池パネル2側へスライドさせて、ボルト3の頭部3aの一部を載置済みの太陽電池パネル2から遠い係止部14と本体部11との間に挿入させる。その後、固定部材10を自由な状態とすると、載置済みの太陽電池パネル2から遠い係止部14が頭部3aに係止され、固定部材10がボルト3に沿って落下することはないと共に、頭部3aに係止させた係止部14に近い第一端辺11aが、反対側の第一端辺11aよりも上方に位置するように固定部材10が傾斜した状態となる(図3(a)を参照)。
【0035】
この状態で、次の太陽電池パネル2を反対側から、架台1と固定部材10との間に挿入する。この際に、挿入しようとしている太陽電池パネル2側では、架台1と固定部材10との間の距離が大きくなるように固定部材10が傾斜しているため、架台1と固定部材10との間に、その太陽電池パネル2の端辺を容易に挿入することができる。
【0036】
そして、その太陽電池パネル2を架台1に載置すると共に、その太陽電池パネル2の枠体2bの側面をボルト3の雄ネジ部3bに当接させたら、固定部材10を長孔に沿って後から載置した太陽電池パネル2側へスライドさせてボルト3の頭部3aから係止部14を外し、本体部11の底面を二つの太陽電池パネル2のそれぞれの上面に当接させる。この際に、本体部11からは下突出部15が下方へ突出しており、その下端に傾斜したガイド部15aが設けられているため、ガイド部15aが太陽電池パネル2の上端縁に接触しつつ案内されて、下突出部15が二つの太陽電池パネル2の間に挿入された状態となる。
【0037】
その後、ボルト3を回転させて雌ネジ孔4aに締め付けると、ボルト3の頭部3aを介して固定部材10が二つの太陽電池パネル2の端辺(枠体2b)を上方から架台1へ押圧し、二つの太陽電池パネル2が架台1に固定された状態となる(図3(b)を参照)。この際に、アース金具5から上下に突出している複数の突片5aが、架台1の上面と、二つの太陽電池パネル2のそれぞれの枠体2bの下面とに突き刺さる。これにより、アース金具5によって、架台1と二つの太陽電池パネル2とが電気的に接続された状態となる。
【0038】
このように、本実施形態の固定部材10によれば、ボルト3の頭部3aを本体部11と係止部14との間に挿入することで、ボルト3の頭部3aに係止させた係止部14に近い第一端辺11aが反対側の第一端辺11aよりも高くなるように傾斜した状態で、固定部材10をボルト3に保持させることができる。従って、上記のような手順で二つの太陽電池パネル2を架台1に固定する際に、固定部材10の一つの第一端辺11aのみを、既に架台1に載置済みの太陽電池パネル2の上方に位置させた状態で、その太陽電池パネル2から遠い係止部14をボルト3の頭部3aに係止させると、固定部材10が載置済みの太陽電池パネル2から遠ざかるほど高くなるように傾斜した状態になる。これにより、ボルト3を間にして次に架台1に載置させる太陽電池パネル2の側では、架台1と固定部材10との間の隙間に次の太陽電池パネル2の端辺を容易に挿入させることができ、太陽電池パネル2の固定作業を容易なものとすることができる。
【0039】
また、本実施形態の固定部材10によれば、上述したように、架台1と固定部材10との間の隙間を太陽電池パネル2の高さよりも高くすることができるため、アース金具5の突片5aが当該隙間に突出していても邪魔になることはなく、当該隙間に太陽電池パネル2の端辺を挿入させることができる。
【0040】
更に、本実施形態の固定部材10によれば、本体部11から下方に向かって突出している下突出部15を有しているため、二つの太陽電池パネル2を固定する際に、固定部材10の底面を、架台1に載置されている二つの太陽電池パネル2のそれぞれの上面に当接させると、下突出部15が二つの太陽電池パネル2の間に挿入された状態となる。これにより、締め付けるためにボルト3の頭部3aを回転させると、固定部材10が頭部3aと一緒に回転しようとするが、下突出部15が太陽電池パネル2の枠体2bの側面に当接することにより、固定部材10の回転を阻止することができる。
【0041】
また、本実施形態の固定部材10では、一対の第一端辺11aの間の中央から下突出部15を下方に突出させており、且つ、一対の第一端辺11aの間の中心線に対して固定部材10を対称な構成としているため、下突出部15が二つの太陽電池パネル2の間に挿入されることで、固定部材10の中央線を二つの太陽電池パネル2の間の中央に接近させることが可能となる。つまり、固定部材10において、ボルト3の雄ネジ部3bが挿通される孔が長孔12であっても、長孔12の中央を二つの太陽電池パネル2の間の中央に近付けることができる。これにより、固定部材10をそれぞれの太陽電池パネル2に対して均等に当接させることができ、二つの太陽電池パネル2を偏りなく架台1へ押圧させることができる。
【0042】
更に、本実施形態の固定部材10によれば、立壁部13及び係止部14をそれぞれ一対ずつ備えているため、ボルト3の頭部3bを係止させる際に、固定部材10の向きを気にする必要はない。
【0043】
また、本実施形態の固定部材10によれば、下突出部15の幅をボルト3の雄ネジ部3bの直径よりも小さくしているため、二つの太陽電池パネル2の間の距離を雄ネジ部3bの直径と同じにすることができる。
【0044】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0045】
例えば、上記の実施形態では、架台1として、複数の太陽電池パネル2を載置可能な長尺のものを示したが、これに限定するものではなく、隣接している二つの太陽電池パネル2のそれぞれの枠体2bを載置可能な短い長さのものであっても良い。このような長さが短い架台の場合、屋根面に間隔をあけて取付ける。
【0046】
また、上記の実施形態では、架台1として、傾斜方向へ長く延出するように取付けられているものを示したが、これに限定するものではなく、傾斜方向に対して直交する方向へ長く延出するように取付けられていても良い。
【符号の説明】
【0047】
1 架台
2 太陽電池パネル
2a パネル本体
2b 枠体
3 ボルト
3a 頭部
3b 雄ネジ部
4 スライド部材
10 太陽電池パネル用の固定部材
11 本体部
11a 第一端辺
12 長孔
13 立壁部
14 係止部
15 下突出部
図1
図2
図3
図4