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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】把持装置及びロボットアーム
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
B25J15/08 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022132475
(22)【出願日】2022-08-23
(62)【分割の表示】P 2018170260の分割
【原出願日】2018-09-12
(65)【公開番号】P2022164742
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2022-09-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)平成30年1月17日~19日に、「第2回ロボデックス」の展示会場にて発表 (2)平成30年6月2日に、「ロボティクス・メカトロニクス講演会2018」のDVDにて発表 (3)平成30年6月3日に、「ロボティクス・メカトロニクス講演会2018」にてポスター展示により発表
(73)【特許権者】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100134728
【弁理士】
【氏名又は名称】奥川 勝利
(72)【発明者】
【氏名】江上 正
(72)【発明者】
【氏名】吉川 智康
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-251828(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0357062(US,A1)
【文献】国際公開第1994/014573(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0148909(US,A1)
【文献】米国特許第04454657(US,A)
【文献】特開2001-105374(JP,A)
【文献】特開平10-099008(JP,A)
【文献】特開2017-132032(JP,A)
【文献】国際公開第2006/040852(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0271990(US,A1)
【文献】特表2007-525275(JP,A)
【文献】特開2016-175355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00 - 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の可動部材が移動することで、該複数の可動部材の外端部が放射方向へ移動して被把持物の内壁面に当接し、該被把持物を把持する把持装置であって、
複数の可動部材は、互いに隣接するように環状配置され、
隣り合う可動部材間の隣接面同士を、前記放射方向の中心軸の軸方向への相対的な変位が規制されるようにお互いに係合させた状態で、該隣接面に沿って該軸方向に対して直交する方向に相対移動させることで、該複数の可動部材の外端部が放射方向へ移動して前記被把持物の内壁面に当接し、該被把持物を把持することを特徴とする把持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の把持装置において、
隣り合う可動部材間で互いに対向する2つの隣接面のうちの一方の隣接面に形成される第一係合形状部は、該2つの隣接面のうちの他方の隣接面に形成される第二係合形状部に対し、前記2つの隣接面の相対移動方向に対して直交する方向であって該隣接面に平行な方向に沿った一方向又は双方向の前記相対的な変位が規制されるように係合することを特徴とする把持装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の把持装置において、
前記複数の可動部材は、平板状部材であり、
前記複数の可動部材における一方の平板面に対向し、該複数の可動部材の移動方向を規制する規制部を備えた固定部材と、
前記平板状部材における他方の平板面に対向し、前記複数の可動部材に前記移動方向の移動力を伝達する移動力伝達部材とを備えることを特徴とする把持装置。
【請求項4】
請求項3に記載の把持装置において、
前記移動力伝達部材を移動させる駆動力を付与する駆動手段を有し、
前記移動力伝達部材の移動に連動して、前記複数の可動部材に前記移動方向の移動力が伝達されることを特徴とする把持装置。
【請求項5】
請求項4に記載の把持装置において、
前記駆動手段の出力トルクに基づいて該駆動手段の駆動制御を行うトルク制御手段を有することを特徴とする把持装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の把持装置において、
前記可動部材上に設置され、該可動部材又は前記被把持物の情報を取得する情報取得手段を有することを特徴とする把持装置。
【請求項7】
請求項6に記載の把持装置において、
前記情報取得手段は、前記被把持物との当接圧を検知する当接圧検知手段であり、
前記当接圧検知手段の検知結果に基づいて該駆動手段の駆動制御を行う当接圧制御手段を有することを特徴とする把持装置。
【請求項8】
被把持物を把持する把持装置を備えたロボットアームであって、
前記把持装置として、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の把持装置を用いたことを特徴とするロボットアーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被把持物を把持する把持装置及びこれを備えたロボットアームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の把持装置の中には、例えばロボットアームのエンドエフェクタとして用いられるものとして、互いに対向配置される2つの棒状部材の一端側を駆動し、当該2つの棒状部材の間に被把持物を把持するグリッパーが知られている。
【0003】
また、特許文献1には、ボルトやナットをはめ込む開口を拡縮可能なメガネレンチが開示されている。このメガネレンチは、互いに隣接するように環状配置される6個のスライド体(可動部材)が、隣り合うスライド体間のスライド面(隣接面)同士を互いに相対移動させて移動する。これにより、当該6個のスライド体のスライド面によって囲まれて形成される正六角形の拡縮開口(把持空間の開口)を拡縮して、ボルトやナットのサイズに合わせることを可能にしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したグリッパーのような把持装置では、例えば、多数の線状物(ワイヤー等)あるいは棒状物が被把持物であるような場合、2つの棒状部材を閉じる間に2つの棒状部材の他端側(自由端側)から被把持物が押し出されてしまい、当該被把持物を適切に把持できない。また、上述したグリッパーのような把持装置では、被把持物をグリッパー上のどの位置で把持するかによって、把持された被把持物の位置にバラツキが出てしまう。
【0005】
本発明者らは、前記特許文献1に開示のメガネレンチにおける拡縮開口を拡縮させる機構を利用した把持装置であれば、これらの問題点を解決することが可能であることを見出した。すなわち、拡縮開口内の把持空間に多数の線状物等の被把持物を入れた状態で当該把持空間を縮小して当該被把持物を把持空間で把持することにより、把持力を受けた被把持部に逃げ場がなくなり、多数の線状物等の被把持物であっても、これを適切に把持することが可能である。また、縮小する把持空間に把持される被把持物は、把持空間の中心位置に寄せられて最終的に把持されるため、被把持物は、常に、その中心位置が把持空間の中心位置に合わせられて把持され、把持位置の精度が高い。
【0006】
しかしながら、本発明者らの研究の結果、このような把持装置においては、次のような課題が発生することが判明した。
すなわち、このような把持装置においては、把持した被把持物(多数の線状物等の被把持物に限らない。)を把持空間の軸線方向(把持空間の開口面に対して直交する方向)に沿って移動させる場合、把持空間を形成するスライド体等の可動部材に対し、当該方向(把持空間の軸線方向)の外力が加わる。このような外力が加わると、可動部材が当該方向へ位置ずれしたり姿勢が変化したりするおそれがある。その結果、可動部材間における隣接面同士の適切な相対移動ができなくなって、把持空間の拡縮に支障をきたし、適切な把持が困難となるという課題が生じる。
【0007】
なお、把持空間で把持したボルトやナット(被把持物)を締めたり緩めたりする前記特許文献1に開示のメガネレンチのような把持装置では、通常、把持空間の開口に直交する方向(開口の軸線方向)に沿って被把持物を移動させる用途に使用されない。そのため、上述した課題は、このような把持装置からは想起できないものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、互いに隣接するように環状配置される複数の可動部材が、隣り合う可動部材間の隣接面同士を互いに対向させて移動することで、該複数の可動部材によって囲まれて形成される把持空間が縮小し、該把持空間に被把持物を把持する把持装置であって、隣り合う可動部材間で互いに対向する2つの隣接面のうち前記把持空間の壁面になる第一隣接面に形成される第一係合形状部は、該2つの隣接面のうち前記把持空間の壁面にはならない第二隣接面に形成される第二係合形状部に対し、前記2つの隣接面の相対移動方向に対して直交する方向であって該隣接面に平行な方向に沿った一方向又は双方向の相対的な変位が規制されるように係合することを特徴とするものである。
この把持装置において、隣り合う可動部材間で互いに対向する2つの隣接面は、それぞれに形成された第一係合形状部と第二係合形状部とが互いに係合することで、当該2つの隣接面が相対移動する相対移動方向に対して直交する方向であって該隣接面に平行な方向(以下「相対移動直交方向」という。)への相対的な変位が規制されつつ、当該相対移動方向へ相対移動することができる。これにより、当該複数の可動部材によって囲まれて形成される把持空間で被把持物を把持して把持空間の軸線方向(相対移動直交方向)に沿って被把持物を移動させる際、可動部材に対して荷重(相対移動直交方向の外力)が加わっても、可動部材が相対移動直交方向へ位置ずれしたり姿勢が変化したりしにくくなる。よって、把持空間の軸線方向(相対移動直交方向)に沿って被把持物を移動させる場合でも、隣接面同士の適切な相対移動を確保でき、把持空間の拡縮(可動部材の移動)に支障をきたす事態の発生を抑制できる。
しかも、把持空間の壁面になる第一隣接面に形成される第一係合形状部は、その形状のエッジ部分が被把持物に引っ掛かるなどして、把持空間の軸線方向(相対移動直交方向)における被把持物の滑り止め機能を果たすことができる。よって、把持空間の軸線方向(相対移動直交方向)に沿って被把持物を移動させる場合等において、把持空間で把持した被把持物を滑らせずに把持することができる。
【0009】
また、本発明は、前記把持装置において、前記第一係合形状部は、前記第二係合形状部に対し、前記2つの隣接面が互いに離間する方向への相対的な変位も規制されるように係合することを特徴とするものである。
可動部材等の製造誤差や組付誤差が大きいと、可動部材の移動中に、隣り合う可動部材間で互いに相対移動する2つの隣接面が互いに離間したり傾斜したりして、当該2つの隣接面が適切に相対移動できず、把持空間の拡縮動作を適切に行うことができなくなるおそれがある。
本把持装置によれば、第一係合形状部と第二係合形状部とが、当該2つの隣接面が互いに離間する方向への相対的な変位も規制されるように係合するため、可動部材の移動中に、当該2つの隣接面が互いに離間したり傾斜したりすることが規制される。よって、可動部材等の製造誤差や組付誤差が多少大きい場合でも、当該2つの隣接面の相対移動を安定して確保でき、把持空間の適切な拡縮動作を維持することができる。
【0010】
また、本発明は、前記把持装置において、前記第一係合形状部は、前記相対移動方向に延びる溝形状であり、前記第二係合形状部は、前記溝形状に係合する凸形状であることを特徴とするものである。
互いに対向する2つの隣接面のうち、前記把持空間の壁面になる第一隣接面に形成される第一係合形状部が凸形状を含む場合、把持空間を縮小していったときに当該第一隣接面上の凸形状が干渉して、それ以上は把持空間を縮小できないものとなり得る。
本把持装置では、前記把持空間の壁面になる第一隣接面に形成される第一係合形状部は溝形状とし、前記把持空間の壁面にはならない第二隣接面に形成される第二係合形状部は当該溝形状に係合する凸形状としている。これによれば、把持空間を縮小していっても上述のような干渉は生じないため、把持空間をより小さく縮小させることができ、把持空間を完全に閉じることも可能であるため、より小サイズの被把持物を把持することが可能である。
【0011】
また、本発明は、前記把持装置において、前記第一隣接面は、前記相対移動方向に対して直交する方向であって前記隣接面に平行な方向の摩擦力を高めた高摩擦面であることを特徴とするものである。
この把持装置においては、被把持物に当接することになる第一隣接面を高摩擦面としたことで、被把持物の滑り止め効果をさらに高めることができる。よって、把持空間の軸線方向に沿って被把持物を移動させる場合等において、把持空間で把持した被把持物をより滑らせずに把持することができる。
なお、前記高摩擦面は、例えば、第一隣接面を加工処理(溝加工や粗面加工など)して高摩擦面としたものであってもよいし、可動部材の基材よりも摩擦力の高い高摩擦材を取り付けて高摩擦面としたものであってもよい。
【0012】
また、本発明は、複数の可動部材が移動することで、該複数の可動部材の外端部が放射方向へ移動して被把持物の内壁面に当接し、該被把持物を把持する把持装置であって、複数の可動部材は、互いに隣接するように環状配置され、隣り合う可動部材間の隣接面同士を互いに対向させて移動することで、該複数の可動部材の外端部が放射方向へ移動することを特徴とするものである。
本発明によれば、隣り合う可動部材間の隣接面同士を互いに対向させて移動することで、複数の可動部材の外端部が放射方向へ移動するので、単一の駆動源によって複数の可動部材を連動させながら各可動部材の外端部が放射方向へ移動させることができる。
【0013】
また、本発明は、前記把持装置において、隣り合う可動部材間で互いに対向する2つの隣接面のうちの一方の隣接面に形成される第一係合形状部は、該2つの隣接面のうちの他方の隣接面に形成される第二係合形状部に対し、前記2つの隣接面の相対移動方向に対して直交する方向であって該隣接面に平行な方向に沿った一方向又は双方向の相対的な変位が規制されるように係合することを特徴とするものである。
この把持装置において、隣り合う可動部材間で互いに対向する2つの隣接面は、それぞれに形成された第一係合形状部と第二係合形状部とが互いに係合することで、相対移動直交方向への相対的な変位が規制されつつ、当該相対移動方向へ相対移動することができる。これにより、当該複数の可動部材の外端部で被把持物を把持して相対移動直交方向に沿って被把持物を移動させる際、可動部材に対して荷重(相対移動直交方向の外力)が加わっても、可動部材が相対移動直交方向へ位置ずれしたり姿勢が変化したりしにくくなる。よって、相対移動直交方向に沿って被把持物を移動させる場合でも、隣接面同士の適切な相対移動を確保でき、可動部材の外端部の動作に支障をきたすような事態を回避することができる。
【0014】
また、本発明は、前記把持装置において、前記複数の可動部材は、平板状部材であり、前記複数の可動部材における一方の平板面に対向し、該複数の可動部材の移動方向を規制する規制部を備えた固定部材と、前記平板状部材における他方の平板面に対向し、前記複数の可動部材に前記移動方向の移動力を伝達する移動力伝達部材とを備えることを特徴とするものである。
これによれば、上述した複数の可動部材の構成を比較的簡易な構成で実現することができる。
【0015】
また、本発明は、前記把持装置において、前記移動力伝達部材を移動させる駆動力を付与する駆動手段を有し、前記移動力伝達部材の移動に連動して、前記複数の可動部材に前記移動方向の移動力が伝達されることを特徴とするものである。
これによれば、駆動手段の制御により可動部材を移動させることが可能となる。
【0016】
また、本発明は、前記把持装置において、前記駆動手段の出力トルクに基づいて該駆動手段の駆動制御を行うトルク制御手段を有することを特徴とするものである。
これによれば、所望の把持力を安定して得ることができる。
【0017】
また、本発明は、前記把持装置において、前記可動部材上に設置され、該可動部材又は前記被把持物の情報を取得する情報取得手段を有することを特徴とするものである。
これによれば、情報取得手段によって取得した可動部材や被把持物の情報を利用した制御や処理を実現できる。
【0018】
また、本発明は、前記把持装置において、前記情報取得手段は、前記被把持物との当接圧を検知する当接圧検知手段であり、前記当接圧検知手段の検知結果に基づいて該駆動手段の駆動制御を行う当接圧制御手段を有することを特徴とするものである。
これによれば、所望の把持力を安定して得ることができる。
【0019】
また、本発明は、被把持物を把持する把持装置を備えたロボットアームであって、前記把持装置として、前記把持装置を用いたことを特徴とするものである。
このロボットアームによれば、前記把持装置における相対移動直交方向に沿って被把持物を移動させる場合でも、隣接面同士の適切な相対移動を確保でき、可動部材の移動に支障をきたす事態の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、把持装置における把持空間の軸線方向に沿って被把持物を移動させる場合でも、把持空間の拡縮に支障をきたす事態の発生を抑制でき、しかも把持空間で把持した被把持物を滑らせずに把持できるので、適切な把持が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1参考例における部品組立システムの概要を示す説明図。
図2】部品組立システムにおけるロボットアームを斜め上方から見た外観斜視図。
図3】同ロボットアームのエンドエフェクタとして用いられるアイリスグリッパーの主要構成を示す斜視図。
図4】同アイリスグリッパーを構成する6枚の可動ブレードのうちの1つを、固定円盤と対面する側から見たときの斜視図。
図5】同アイリスグリッパーを構成する可動円盤を示す平面図。
図6】同アイリスグリッパーを構成する固定円盤を示す平面図。
図7】(a)は、6枚の可動ブレードによって囲まれて形成される把持空間が拡大した状態(開いた状態)を示す平面図。(b)は、同把持空間が縮小した状態(閉じた状態)を示す平面図。
図8】6枚の可動ブレードのうちの1つの可動ブレードの移動方向を示す説明図。
図9】同アイリスグリッパーを構成する可動円盤の他の例を示す平面図。
図10】同アイリスグリッパーの開閉制御に関わるブロック図。
図11】構成例1に係る可動ブレードの隣接面に形成される係合形状部を示す断面図。
図12】構成例2に係る可動ブレードの隣接面に形成される係合形状部を示す断面図。
図13】構成例2における係合形状部の他の例を示す断面図。
図14】構成例3に係る可動ブレードの隣接面に形成される係合形状部を示す断面図。
図15】構成例4に係る可動ブレードの隣接面に形成される係合形状部を示す断面図。
図16】構成例5に係る可動ブレードの隣接面に形成される係合形状部を示す断面図。
図17】構成例5における係合形状部の他の例を示す断面図。
図18】実施形態におけるアイリスグリッパーの主要構成を示す斜視図。
図19】同アイリスグリッパーを構成する6枚の可動ブレードを、可動円盤と対面する側から見たときの平面図。
図20】同アイリスグリッパーを構成する可動円盤を示す平面図。
図21】同アイリスグリッパーを構成する固定円盤を示す平面図。
図22】同アイリスグリッパーを構成する固定環を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔参考例
以下、本発明に係る把持装置を、ロボットアームのエンドエフェクタとして適用した参考例について説明する。
なお、本参考例は、部品の組み立てを行う組み立て工場において、被把持物である部品が積載された運搬ケースから、ロボットアームを用いて部品をピックアップし、これを組み立てラインの部品搬送コンベア上の所定位置に配置する。ただし、本発明に係る把持装置について、このようなロボットアームに適用されるものは一例にすぎず、他のシステムに用いられるロボットアームに適用してもよいし、ロボットアーム以外の把持装置として用いられるものであってもよい。
【0023】
図1は、本参考例における部品組立システムの概要を示す説明図である。
本参考例の部品組立システム1は、部品取出位置2aに置かれた運搬ケース50内の部品をロボットアーム10により部品組立システムの搬送コンベア45上の所定位置に配置し、この搬送コンベア45で搬送された部品を後段の組み立て工程での組み立てに用いるものである。なお、空になった運搬ケース50は、ケース回収位置2bへ移される。
【0024】
図2は、ロボットアーム10を斜め上方から見た外観斜視図である。
ロボットアーム10は、土台部11、腕支持部12、腕部13、手部14、手先部15などを有している。土台部11は、架台にボルト止めで固定されるようになっている。
【0025】
腕支持部12は、土台部11の中心を通る鉛直軸を中心にして、図中矢印Aで示す方向に360[°]回転が可能なように土台部11に支持されている。また、腕部13は、上腕部13aと前腕部13bとを有している。上腕部13aの根本側端部は、水平方向に延在する第一軸13cを中心にして、図中矢印Bで示す方向に回転可能なように腕支持部12に支持されている。また、前腕部13bの根本側端部は、水平方向に延在する第二軸13dを中心にして、図中矢印Cで示す方向に回転可能なように上腕部13aの先端側端部に支持されている。
【0026】
手部14の根本側端部は、前腕部13bの長手方向に延びる中心軸線14aを中心にして、図中矢印Dで示す方向に回転可能なように前腕部13bの先端側端部に支持されている。また、手先部15は、水平方向に延在する第三軸15aを中心にして、図中矢印Eで示す方向に回転可能なように手部14の先端側端部に支持されている。手先部15には、様々な種類のエンドエフェクタを着脱することが可能であり、本参考例では、後述のアイリスグリッパーが取り付けられる。
【0027】
図3は、ロボットアーム10のエンドエフェクタとして用いられるアイリスグリッパー20の主要構成を示す斜視図である。
図4は、アイリスグリッパー20を構成する6枚の可動ブレード21A,21B,21C,21D,21E,21Fのうちの1つを、固定円盤と対面する側から見たときの斜視図である。
図5は、アイリスグリッパー20を構成する可動円盤22を示す平面図である。
図6は、アイリスグリッパー20を構成する固定円盤23を示す平面図である。
【0028】
本参考例のアイリスグリッパー20は、互いに隣接するように環状配置される複数の可動部材として、6枚の平板状の可動ブレード21A,21B,21C,21D,21E,21Fを備えている。本参考例の可動ブレード21A~21Fは、いずれも同一の部材であり、6枚の可動ブレード21A~21Fによって囲まれて形成される把持空間30は、正六角形の開口を有するものとなる。なお、異なる形状の可動部材を組み合わせて構成することも可能である。
【0029】
本参考例のアイリスグリッパー20は、6枚の可動ブレード21A~21Fを同一平面上に環状配置しており、この点で、互いに重なり合うように配置される複数の可動部材で構成された一般的なアイリス機構(カメラの絞り等に適用されるアイリス機構)とは異なっている。本参考例のアイリスグリッパー20では、隣り合う可動ブレード間の隣接面(可動ブレードの側面)21e,21f同士を互いに相対移動させながら、6枚の可動ブレード21A~21Fが、前記同一平面の面内で移動する。この移動により、図7(a)に示すように6枚の可動ブレード21A~21Fによって囲まれて形成される把持空間30が拡大した状態(開いた状態)と、図7(b)に示すように当該把持空間30が縮小した状態(閉じた状態)とに切り替えることができる。
【0030】
本参考例のアイリスグリッパー20では、上述したように同一平面上に環状配置された6枚の可動ブレード21A~21Fをその平板面両側から挟み込むように、移動力伝達部材としての可動円盤22と固定部材としての固定円盤23とが配置されている。アイリスグリッパー20は、固定円盤23を介して手先部15に取り付けられる。
【0031】
固定円盤23には、図6に示すように、各可動ブレード21A~21Fの移動方向を規制する規制部としてのガイド長孔23a~23fが形成されている。これらのガイド長孔23a~23fには、各可動ブレード21A~21Fのガイド突起21a(図4参照)が入り込む。これにより、各可動ブレード21A~21Fに移動力が付与されたとき、各可動ブレード21A~21Fは、それぞれのガイド突起21aが各ガイド長孔23a~23fに沿って案内されて、所定の移動方向へ移動する。
【0032】
本参考例では、ガイド長孔23a~23fが直線状であり、ガイド突起21aがガイド長孔23a~23fに沿って長尺な形状であることから、固定円盤23のガイド長孔23a~23fに案内されて移動する可動ブレード21A~21Fは、それぞれ、ガイド長孔23a~23fの長手方向へ平行移動することになる。
【0033】
可動円盤22は、把持空間30の軸線方向(図5の紙面に直交する方向)に延び、かつ、その把持空間30の中心(当該可動円盤22の円盤中心)を通る回転軸Oの回りで、回転移動可能な構成となっている。具体的には、可動円盤22の外側の盤面上には、図3に示すように、伝達ギヤ部材24が固定されている。伝達ギヤ部材24は、可動円盤22のネジ穴22gにネジ締結されることで、可動円盤22の外側盤面上に固定される。この伝達ギヤ部材24は、可動円盤22の外周に沿うように延在するギヤ24aが備わっている。
【0034】
伝達ギヤ部材24のギヤ24aには、図3に示すように、固定円盤23のネジ穴23gにネジ締結された駆動手段としての駆動モータ26のモータギヤ25が噛み合っている。この駆動モータ26は、正逆回転可能なものである。駆動モータ26が駆動されると、モータギヤ25を介して、伝達ギヤ部材24のギヤ24aに駆動力が伝達され、伝達ギヤ部材24が固定されている可動円盤22に、回転軸Oの回りで回転移動するための移動力が付与される。このとき、固定円盤23に固定されている回転規制枠27が可動円盤22の周面に沿って配置されているので、可動円盤22は、回転軸Oの回りで回転移動するように、可動円盤22の周面が回転規制枠27にガイドされる。
【0035】
可動円盤22には、図3図5に示すように、各可動ブレード21A~21Fに移動力を伝達するための伝達長孔22a~22fが形成されている。これらの伝達長孔22a~22fには、各可動ブレード21A~21Fの被伝達突起21bが入り込む。これにより、駆動モータ26の駆動力によって可動円盤22が回転軸Oの回りで回転移動すると、可動円盤22の伝達長孔22a~22fの内壁面に押されて、各可動ブレード21A~21Fの被伝達突起21bに移動力が付与される。これにより、各可動ブレード21A~21Fには、所定の移動方向への移動力が付与され、各可動ブレード21A~21Fが所定の移動方向へ移動する。
【0036】
なお、本参考例では、1つの回転入力で6枚の可動ブレード21A~21Fを移動させる構成であるが、2つ以上の回転入力で6枚の可動ブレード21A~21Fを移動させる構成であってもよい。
【0037】
図8は、6枚の可動ブレード21A~21Fのうちの1つの可動ブレード21Aの移動方向を示す説明図である。なお、他の可動ブレード21B~21Fの移動方向も同様である。
この図8は、可動ブレード21Aの頂点のうち、図7(b)に示すように把持空間30を閉じたときに把持空間30の中心(回転軸O)に位置する頂点が移動する方向をX方向として図示したものである。可動ブレード21AについてのX方向は、図7(a)にも図示されている。
【0038】
駆動モータ26の駆動力によって可動円盤22が図7中時計回り方向へ回転移動すると、各可動ブレード21A~21Fは、固定円盤23の各ガイド長孔23a~23fに沿って案内されて、各可動ブレード21A~21Fの頂点が把持空間30の中心(回転軸O)に向けて進むように、平行移動する。これにより、6枚の可動ブレード21A~21Fによって囲まれて形成される把持空間30は縮小していく。そして、把持空間30に被把持物(部品)が存在しない場合には、図7(b)に示すように、把持空間30が完全に閉じた状態になる。
【0039】
一方、駆動モータ26の駆動力によって可動円盤22が図7中反時計回り方向へ回転移動すると、各可動ブレード21A~21Fの頂点がそれぞれのX方向に沿って把持空間30の中心(回転軸O)から離れる向きに進むように、各可動ブレード21A~21Fが平行移動する。これにより、把持空間30は拡大していき、図7(a)に示すように、把持空間30が開いた状態になる。
【0040】
可動円盤22は、図5に示すように、把持空間30と対向する部分に開口部22hを有する円環形状である。これにより、被把持物を把持空間30で把持される際に、被把持物が可動円盤22に干渉しない。同様に、固定円盤23も、図6に示すように、把持空間30と対向する部分に開口部23hを有する円環形状である。これにより、被把持物を把持空間30で把持される際に、被把持物が固定円盤23に干渉しない。
【0041】
ロボットアーム10により運搬ケース50内の部品を把持する場合、図7(a)に示すように把持空間30が開いた状態のアイリスグリッパー20を、ロボットアーム10の各軸の回転を制御して、運搬ケース50内の部品を把持できる位置まで移動させる。これにより、アイリスグリッパー20の把持空間30内には、運搬ケース50内の部品が入り込んだ状態になる。この状態で、駆動モータ26を駆動して可動円盤22を図7中時計回り方向へ回転移動させ、把持空間30を縮小していくと、当該部品の側面に6枚の可動ブレード21A~21Fにおける第一隣接面21eが当接し、当該部品が把持空間30で把持される。
【0042】
ここで、この種のロボットアームに用いられる従来のグリッパーとしては、互いに対向配置される2つの棒状部材の一端側を駆動し、当該2つの棒状部材の間に被把持物を把持する構成のものがある。このような従来のグリッパーでは、グリッパー上での被把持物の把持位置にバラツキがあり、被把持物をグリッパー上のどの位置で把持するかによって、把持された被把持物の位置にバラツキが出てしまう。その結果、本部品組立システムにおいて従来のグリッパーを用いると、運搬ケース50からピックアップした部品を部品搬送コンベア45上に置く際、部品搬送コンベア45上の当該部品を置くべき目標位置からズレた位置に当該部品が置かれてしまい、その後の組み立て工程に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0043】
また、仮に、被把持物が、多数の線状物(ワイヤー等)あるいは棒状物であるような場合、従来のグリッパーでは、2つの棒状部材を閉じる間に当該2つの棒状部材の自由端側から被把持物が押し出されてしまい、当該被把持物を適切に把持できないという問題もある。
【0044】
本参考例に係るアイリスグリッパー20によれば、縮小する把持空間30で把持される部品(被把持物)は、6枚の可動ブレード21A~21Fの第一隣接面21eに当接することで把持空間30の中心(回転軸O)に寄せられ、最終的には、部品の中心位置が把持空間30の中心(回転軸O)に合わせられて把持される。したがって、アイリスグリッパー上での部品の把持位置にバラツキがなく、把持位置の精度が高い。よって、運搬ケース50からピックアップした部品を部品搬送コンベア45上に置く際、部品搬送コンベア45上の目標位置に当該部品を精度よく置くことができる。
【0045】
また、本参考例に係るアイリスグリッパー20によれば、仮に、被把持物が、多数の線状物(ワイヤー等)あるいは棒状物であるような場合でも、6枚の可動ブレード21A~21Fの第一隣接面21eが被把持物の側面に対して全方向から囲い込むことになる。よって、被把持物には逃げ場がなく、多数の線状物等の被把持物であっても、これを適切に把持することができる。
【0046】
しかしながら、このようなアイリスグリッパー20において、把持した被把持物を把持空間30の軸線方向(把持空間の開口面に対して直交する方向)に沿って移動させる場合(例えば、被把持物を上方へ持ち上げたり何かに押し込んだりする場合)、把持空間30を形成する6枚の可動ブレード21A~21Fには、当該方向の外力が加わる。このような外力が加わると、可動ブレード21A~21Fが当該方向(把持空間30の軸線方向)へ位置ずれしたり、可動ブレード21A~21Fの姿勢が変化したりするおそれがある。その結果、隣り合う可動ブレード間における隣接面21e,21f同士の適切な相対移動ができなくなって、把持空間30の拡縮に支障をきたすおそれがある。
【0047】
そこで、本参考例のアイリスグリッパー20における各可動ブレード21A~21Fには、図4に示すように、隣り合う可動ブレード間で互いに対向する2つの隣接面21e,21fのうち、第二隣接面21f上に第二係合形状部としての凸形状21dを形成し、第一隣接面21eに第一係合形状部としての溝形状21cを形成してある。第一隣接面21eの溝形状21cは、可動ブレード21A~21Fの平板面方向、すなわち、当該2つの隣接面21e,21fが相対移動する相対移動方向に延びている。各可動ブレード21A~21Fは、自らの第一隣接面21eに形成されている溝形状21cに、隣接する可動ブレードの第二隣接面21f上の凸形状21dが入り込むことで互いに係合し、環状配置されている。これにより、隣り合う可動ブレード間における2つの隣接面21e,21fは、相対移動方向に対して直交する相対移動直交方向への相対的な変位が凸形状21dと溝形状21cとの係合によって規制された状態で、当該相対移動方向へ相対移動することができる。
【0048】
本参考例においては、把持空間30で部品を把持して把持空間30の軸線方向に沿って部品を持ち上げる際、6枚の可動ブレード21A~21Fに対して当該方向の荷重(外力)が加わる。しかしながら、このような外力(相対移動直交方向の外力)が加わっても、互いに対向する2つの隣接面21e,21fが凸形状21dと溝形状21cとで係合し、相対移動直交方向への相対的な変位が規制されているため、可動ブレード21A~21Fが当該方向へ位置ずれしたり姿勢が変化したりしにくい。したがって、把持空間30で部品を把持して持ち上げる際に可動ブレード21A~21Fに対して当該方向の荷重(外力)が加わっても、可動ブレード間の隣接面21e,21f同士の適切な相対移動を確保することができ、把持空間30の拡縮に支障をきたすような事態を回避することができる。
【0049】
また、互いに対向する2つの隣接面21e,21fのうち、仮に、把持空間30の壁面となる第一隣接面21eに凸形状21dを形成した場合、把持空間30を縮小していったときに、当該第一隣接面21e上の凸形状21dが干渉して、それ以上は把持空間30を縮小できないものとなる。そのため、本参考例のアイリスグリッパー20では、当該2つの隣接面21e,21fのうち、把持空間30の壁面となる第一隣接面21e側に、溝形状21cを形成している。これによれば、把持空間30を縮小していっても上述のような干渉は生じないため、把持空間30をより小さく縮小させることができ、図7(b)に示すように把持空間30を完全に閉じることも可能であるため、より小サイズの被把持物を把持することが可能である。
【0050】
さらに、本参考例においては、把持空間の壁面となる第一隣接面21eに溝形状21cを形成することで、当該溝形状21cのエッジ部に被把持物が引っ掛かり、第一隣接面21eと被把持物との間に作用する把持空間30の軸線方向における摩擦力が高まる。すなわち、当該溝形状21cが被把持物の滑り止め機能を果たすことができる。よって、把持空間30の軸線方向に沿って被把持物を移動させる場合等において、把持した被把持物を滑らせずに把持することができる。
【0051】
また、本参考例における6枚の可動ブレード21A~21Fは、各頂点が60°となる正三角形を基本形状とし、把持空間30の形成に寄与しない部分に係る2つの頂点を除去することで、図4に示すように五角形状となるように構成されている。これにより、可動円盤22及び固定円盤23と可動ブレード21A~21Fとの接触面積が低減して、把持空間30のスムーズな拡縮動作が実現されている。また、把持空間30を開いたときに可動ブレード21A~21Fの外方へ突出する部分が削減される結果、アイリスグリッパー20の小型化が実現できる。
【0052】
なお、本参考例における可動円盤22の伝達長孔22a~22fの構成や固定円盤23のガイド長孔23a~23fの構成は、本参考例のものに限られない。例えば、可動円盤22の伝達長孔22a~22fの構成については、例えば、図9に示すように、伝達長孔22a~22fの形成が容易になるように、回転軸Oから放射方向に長尺な形状であってもよい。ただし、可動円盤22の伝達長孔22a~22f及び固定円盤23のガイド長孔23a~23fの構成については、固定円盤23の各ガイド長孔23a~23fに沿って移動する各可動ブレード21A~21Fに対し、回転移動する可動円盤22の伝達長孔22a~22fから、なるべく低負荷で、各可動ブレード21A~21Fの被伝達突起21bへ移動力を伝達することを考慮することが好ましい。この点では、図5に示した構成の方が、図9に示す構成よりも好ましい。
【0053】
次に、アイリスグリッパー20の開閉制御について説明する。
図10は、アイリスグリッパー20の開閉制御に関わるブロック図である。
把持空間30を開閉するために可動ブレード21A~21Fに移動力を付与する駆動モータ26は、制御装置31によって駆動制御される。制御装置31は、上位制御部からの制御命令に従って把持空間30を開閉させるように駆動信号を駆動モータ26へ送る。駆動モータ26は、駆動信号に従って駆動し、可動ブレード21A~21Fに移動力を付与する。これにより、把持空間30が制御命令に従った開閉動作を行う。
【0054】
本参考例の制御装置31は、トルク制御手段として機能し、駆動モータ26の出力トルクのフィードバックを受けることで駆動信号を調整し、把持空間30内で被把持物(部品)を把持する把持力をフィードバック制御する。これにより、制御命令に従った所望の把持力を安定して得ることができる。
【0055】
また、本参考例において、被把持物(部品)に当接する各可動ブレード21A~21Fの第一隣接面21eには、被把持物(部品)の当接圧を検知するための情報取得手段としての当接圧検知手段である圧力センサ32A~32Fが設けられている。圧力センサ32A~32Fで検知された当接圧の情報は、制御装置31へ送られる。本参考例の制御装置31は、当接圧制御手段として機能し、圧力センサ32A~32Fからの当接圧の情報に応じて駆動信号を調整し、把持空間30内で被把持物(部品)を把持する把持力を直接的にフィードバック制御する。これにより、制御命令に従った所望の把持力を安定して得ることができる。
【0056】
また、本参考例においては、圧力センサ32A~32F以外でも、可動ブレード21A~21Fや被把持物(部品)の情報を取得する種々の情報取得手段を、可動ブレード21A~21F上に設置してもよい。本参考例では、情報取得手段の一例として、図10に示すように、被把持物(部品)に当接する各可動ブレード21A~21Fの第一隣接面21eに、温度センサ33A~33Fを設けている。本参考例の制御装置31は、温度センサ33A~33Fからの温度の情報を受けると、これを上位制御部へ送信する。これにより、上位制御部では、把持空間30内に把持される被把持物(部品)の温度を把握することが可能となる。
【0057】
また、情報取得手段の他の例として、例えば、可動ブレード21A~21Fの上面や下面に設置され、把持空間30内に把持される被把持物(部品)を撮像する撮像センサ(撮像手段)が挙げられる。これにより、撮像画像から被把持物(部品)の物体認識を行うことが可能となる。
【0058】
次に、隣り合う可動ブレード間で互いに対向する2つの隣接面21e,21fの構成例について説明する。
【0059】
〔構成例1〕
図11は、構成例1に係る可動ブレード21A~21Fの隣接面21e,21fに形成される係合形状部(凸形状21d及び溝形状21c)を示す断面図である。
本構成例1の凸形状21dは、図11に示すように、第二隣接面21fから法線方向へ延びた直方形状の凸部であり、第二隣接面21fの相対移動方向にわたって連続的に又は断続的に形成されている。一方、本構成例1の溝形状21cは、図11に示すように、第一隣接面21eから法線方向へ延びた直方形状の凹部であり、第二隣接面21fの相対移動方向にわたって連続的に形成されている。
【0060】
本構成例1において、隣り合う一方の可動ブレードの第二隣接面21fの凸形状21dが他方の可動ブレードの第一隣接面21eの溝形状21cに入り込むことで、凸形状21dと溝形状21cとが互いに係合する。これにより、当該2つの隣接面21e,21fの相対移動直交方向(図中上下方向)に沿ったいずれの向き(双方向)についても、当該2つの隣接面21e,21fの相対的な変位が規制される。したがって、可動ブレード21A~21Fによって囲まれて形成される把持空間30で被把持物を把持して把持空間30の軸線方向(相対移動直交方向)に沿って被把持物をいずれの向きに移動させる場合でも、可動ブレード21A~21Fが相対移動直交方向へ位置ずれしたり姿勢が変化したりしにくく、把持空間30の拡縮に支障をきたす事態の発生が抑制される。
【0061】
〔構成例2〕
図12は、構成例2に係る可動ブレード21A~21Fの隣接面21e,21fに形成される係合形状部(凸形状21d及び溝形状21c)を示す断面図である。
本構成例2の凸形状21dは、図12に示すように、第二隣接面21fから法線方向へ延びた基部の先端が相対移動直交方向(図中上下方向)に拡大した形状の凸部であり、第二隣接面21fの相対移動方向にわたって連続的に又は断続的に形成されている。一方、本構成例2の溝形状21cは、図12に示すように、前記凸形状21dの形状に倣った形状の凹部であり、第二隣接面21fの相対移動方向にわたって連続的に形成されている。
【0062】
本構成例2において、隣り合う一方の可動ブレードの第二隣接面21fの凸形状21dが他方の可動ブレードの第一隣接面21eの溝形状21cに入り込むことで、凸形状21dと溝形状21cとが互いに係合する。本構成例2も、上述した構成例1と同様、当該2つの隣接面21e,21fの相対移動直交方向(図中上下方向)に沿ったいずれの向き(双方向)についても、当該2つの隣接面21e,21fの相対的な変位が規制される。したがって、可動ブレード21A~21Fによって囲まれて形成される把持空間30で被把持物を把持して把持空間30の軸線方向(相対移動直交方向)に沿って被把持物をいずれの向きに移動させる場合でも、可動ブレード21A~21Fが相対移動直交方向へ位置ずれしたり姿勢が変化したりしにくく、把持空間30の拡縮に支障をきたす事態の発生が抑制される。
【0063】
また、本構成例2においては、凸形状21dと溝形状21cとが互いに係合することで、当該2つの隣接面21e,21fが互いに離間する方向(当該2つの隣接面が図中左右方向に沿って離れる方向)への相対的な変位も規制される。可動ブレード21A~21F等の製造誤差や組付誤差が大きいと、可動ブレード21A~21Fの移動中に、当該2つの隣接面21e,21fが互いに離間したり傾斜したりして、当該2つの隣接面が適切に相対移動できず、把持空間30の拡縮動作を適切に行うことができなくなるおそれがある。本構成例2によれば、当該2つの隣接面21e,21fが互いに離間する方向への相対的な変位も規制される結果、可動ブレードの移動中に、当該2つの隣接面21e,21fが互いに離間したり傾斜したりしにくくなる。よって、可動ブレード等の製造誤差や組付誤差が多少大きい場合でも、当該2つの隣接面21e,21fの相対移動を安定して確保でき、把持空間30の適切な拡縮動作を維持することができる。
【0064】
なお、図13に示すように、凸形状21dや溝形状21cに丸みをもたせるなどして、両者の接触面積を減らし、摺動抵抗を低減するような構成を採用してもよい。このような丸みをもたせる構成は、本構成例2に限らず、他の構成例においても採用できる。
【0065】
〔構成例3〕
図14は、構成例3に係る可動ブレード21A~21Fの隣接面21e,21fに形成される係合形状部(凸形状21d及び溝形状21c)を示す断面図である。
本構成例3は、第一隣接面21eが、相対移動直交方向の摩擦力を高めた高摩擦面(可動ブレード21A~21Fの基材面よりも高い摩擦力を発揮できる面)となるように構成したものである。具体的には、可動ブレード21A~21Fの基材面よりも高い摩擦力を発揮できるゴム材等の高摩擦材28を取り付けて高摩擦面としている。把持空間30で被把持物を把持する際、高摩擦面である第一隣接面21eが被把持物に当接して把持するので、被把持物の滑り止め効果を高めることができる。
【0066】
ここで、本構成例3のように第一隣接面21eを高摩擦面とする場合、この第一隣接面21eが第二隣接面21fに接触すると、これらの隣接面21e,21fの相対移動時に摺動負荷が高くて適切な相対移動ができなくなるおそれがある。そのため、本構成例3では、図14に示すように、高摩擦面である第一隣接面21eと第二隣接面21fとの離間距離を十分にとって、可動ブレード21A~21Fの姿勢が多少傾いても、第一隣接面21eと第二隣接面21fとが接触しないように構成している。これにより、第一隣接面21eを高摩擦面とした場合でも、隣接面同士の適切な相対移動を確保でき、把持空間30の適切な拡縮動作を維持することができる。
【0067】
なお、本構成例3の凸形状21d及び溝形状21cの構成は、上述した構成例2と同様であるが、他の構成例における凸形状21d及び溝形状21cの構成であってもよい。
また、高摩擦面は、例えば、第一隣接面21eを加工処理(溝加工や粗面加工など)して高摩擦面としたものであってもよい。
【0068】
〔構成例4〕
図15は、構成例4に係る可動ブレード21A~21Fの隣接面21e,21fに形成される係合形状部(凸形状21d及び溝形状21c)を示す断面図である。
本構成例4は、隣り合う可動ブレード間で互いに対向する2つの隣接面21e,21fに形成される凸形状21dと溝形状21cとの係合箇所が2箇所設けられている。このような構成であれば、把持空間30で被把持物を把持して把持空間30の軸線方向(相対移動直交方向)に沿って移動させる場合に可動ブレード21A~21Fに対して加わる当該方向の荷重(外力)に対し、可動ブレード21A~21Fが相対移動直交方向へ相対的に変位することを、より強力に規制することができる。よって、より大きな荷重(外力)に対しても、可動ブレード間の隣接面21e,21f同士の適切な相対移動を確保することができ、把持空間30の拡縮に支障をきたすような事態を回避することができる。
【0069】
なお、本構成例4の凸形状21d及び溝形状21cの構成は、上述した構成例2と同様であるが、他の構成例における凸形状21d及び溝形状21cの構成であってもよい。
また、係合箇所の数は、3以上であってもよい。
【0070】
〔構成例5〕
図16は、構成例5に係る可動ブレード21A~21Fの隣接面21e,21fに形成される係合形状部(鉤型形状)を示す断面図である。
本構成例5の係合形状部は、図16に示すように、第一隣接面21eに形成される第一係合形状部も、第二隣接面21fに形成される第二係合形状部も、いずれも同じ鉤型形状21g,21hであり、相対移動方向にわたって連続的に形成されている。
【0071】
本構成例5において、隣り合う一方の可動ブレードの第二隣接面21fの鉤型形状21hと他方の可動ブレードの第一隣接面21eの鉤型形状21gとが互いに嵌り合うことで、互いに係合する。ここで、把持空間30の壁面になる第一隣接面21eについては、当該2つの隣接面21e,21fの相対移動直交方向(図中上下方向)に沿った一方向(図中下方向)への相対的な変位が、第二隣接面21fの鉤型形状21hによって規制される。したがって、可動ブレード21A~21Fによって囲まれて形成される把持空間30で被把持物を把持して把持空間30の軸線方向(相対移動直交方向)に沿って被把持物を当該一方向に移動させる場合、可動ブレード21A~21Fが相対移動直交方向へ位置ずれしたり姿勢が変化したりしにくく、把持空間30の拡縮に支障をきたす事態の発生が抑制される。
【0072】
本構成例5は、隣り合う一方の可動ブレードの鉤型形状21h同士を係合させる作業が容易であるため、アイリスグリッパー20の製造工程を簡単化できるというメリットがある。
なお、第一隣接面21eが当該一方向とは逆方向(図中上方向)への相対的な変位が規制されてないため、把持空間30の軸線方向(相対移動直交方向)に沿って被把持物を当該一方向とは逆方向に移動させるような場合には、可動ブレード21A~21Fが相対移動直交方向へ位置ずれしたり姿勢が変化したりしやすい。しかしながら、本構成例5のアイリスグリッパー20の用途が、被把持物を当該一方向とは逆方向に移動させることがない用途であれば、十分に対応することができる。
【0073】
また、本構成例5のような鉤型形状21g,21hの係合形状部を採用する場合でも、図17に示すように、その鉤型形状21g,21hの先端に更に鉤型形状21i,21jを形成すれば、第一隣接面21eが当該一方向とは逆方向(図中上方向)についても相対的な変位を規制できる。したがって、可動ブレード21A~21Fによって囲まれて形成される把持空間30で被把持物を把持して把持空間30の軸線方向(相対移動直交方向)に沿って被把持物をいずれの向きに移動させる場合でも、可動ブレード21A~21Fが相対移動直交方向へ位置ずれしたり姿勢が変化したりしにくく、把持空間30の拡縮に支障をきたす事態の発生が抑制される。
【0074】
〔実施形態〕
次に、本発明に係る把持装置を、ロボットアームのエンドエフェクタとして適用した一実施形態について説明する。
なお、上述した参考例のエンドエフェクタは、可動ブレード21A~21Fが、隣り合う可動ブレード間の隣接面同士を互いに対向させて移動することで、可動ブレード21A~21Fによって囲まれて形成される把持空間30を縮小させることにより、被把持物の外周面に可動ブレード21A~21Fを当接させて把持するアイリスグリッパー20であった。これに対し、本実施形態のエンドエフェクタは、互いに隣接するように環状配置される複数の可動部材が、隣り合う可動部材間の隣接面同士を互いに対向させて放射方向へ移動することで、該複数の可動部材の放射方向外端部が被把持物の内壁面に当接し、該被把持物を把持するものである。以下の説明においては、上述した参考例とは異なる点を中心に説明し、上述した参考例と同様の点については説明を省略する。
【0075】
図18は、ロボットアーム10のエンドエフェクタとして用いられる被把持物の内壁面把持用のアイリスグリッパー120の主要構成を示す斜視図である。
図19は、アイリスグリッパー120を構成する6枚の可動ブレード121A,121B,121C,121D,121E,121Fを、可動円盤と対面する側から見たときの平面図である。
図20は、アイリスグリッパー120を構成する可動円盤122を示す平面図である。
図21は、アイリスグリッパー120を構成する固定円盤123を示す平面図である。
図22は、アイリスグリッパー120を構成する固定環129を示す平面図である。
【0076】
本実施形態のアイリスグリッパー120は、互いに隣接するように環状配置される複数の可動部材として、上述した参考例と同様に、6枚の平板状の可動ブレード121A,121B,121C,121D,121E,121Fを備えている。本実施形態の可動ブレード121A~121Fは、いずれも同一の部材であり、ブレード外周部にはアーム部121kが設けられている。アーム部121kは、被把持物を把持する際、可動ブレード121A~121Fの移動に伴って放射方向へ移動し、被把持物の内壁面に当接する。
【0077】
本実施形態のアイリスグリッパー120は、上述した参考例と同様、6枚の可動ブレード121A~121Fを同一平面上に環状配置している。また、本実施形態のアイリスグリッパー120も、上述した参考例と同様、隣り合う可動ブレード間の隣接面(可動ブレードの側面)同士を互いに相対移動させながら、6枚の可動ブレード121A~121Fが、前記同一平面の面内で移動する。この移動により、6枚の可動ブレード121A~121Fの各アーム部121kの外端部が可動円盤122及び固定円盤123の盤面内に収まる収容状態と、図18に示すように各アーム部121kの外端部が可動円盤122及び固定円盤123の盤面外に突出する突出状態とに切り替えることができる。なお、本実施形態において、可動ブレード121A~121Fが収容状態をとるときは、可動ブレード121A~121Fによって囲まれて形成される空間130が閉じた状態となり、可動ブレード121A~121Fが突出状態をとるときは、可動ブレード121A~121Fによって囲まれて形成される空間130が開いた状態となる。
【0078】
また、本実施形態のアイリスグリッパー120でも、上述したように同一平面上に環状配置された6枚の可動ブレード121A~121Fをその平板面両側から挟み込むように、移動力伝達部材としての可動円盤122と固定部材としての固定円盤123とが配置されている。アイリスグリッパー120は、固定円盤123を介して手先部15に取り付けられる。また、本実施形態では、更に、可動円盤122を固定円盤123との間に保持するための固定環129が配置されている。
【0079】
固定円盤123には、図21に示すように、各可動ブレード121A~121Fの移動方向を規制する規制部としてのガイド長孔123a~123fが形成されている。本実施形態の可動ブレード121A~121Fも、上述した参考例のガイド突起21aと同様のガイド突起が形成されており、これらのガイド長孔123a~123fに、各可動ブレード121A~121Fのガイド突起が入り込む。これにより、各可動ブレード121A~121Fに移動力が付与されたとき、各可動ブレード121A~121Fは、それぞれのガイド突起が各ガイド長孔123a~123fに沿って案内されて、所定の移動方向へ移動する。
【0080】
本実施形態でも、ガイド長孔123a~123fが直線状であり、各可動ブレード121A~121Fのガイド突起がガイド長孔123a~123fに沿って長尺な形状であることから、固定円盤123のガイド長孔123a~123fに案内されて移動する可動ブレード121A~121Fは、それぞれ、ガイド長孔123a~123fの長手方向へ平行移動することになる。
【0081】
可動円盤122は、上述した参考例と同様に回転移動可能な構成となっている。なお、図18には、駆動系の図示が省略されているが、固定円盤123に固定された駆動手段としての駆動モータからの駆動力を受けて可動円盤122が回転移動する。可動円盤122には、図20に示すように、各可動ブレード121A~121Fに移動力を伝達するための伝達長孔122a~122fが形成されている。これらの伝達長孔122a~122fには、各可動ブレード121A~121Fの被伝達突起121bが入り込む。これにより、駆動モータの駆動力によって可動円盤122が回転移動すると、可動円盤122の伝達長孔122a~122fの内壁面に押されて、各可動ブレード121A~121Fの被伝達突起121bに移動力が付与される。これにより、各可動ブレード121A~121Fには、所定の移動方向への移動力が付与され、各可動ブレード121A~121Fが所定の移動方向へ移動する。
【0082】
なお、本実施形態では、1つの回転入力で6枚の可動ブレード121A~121Fを移動させる構成であるが、2つ以上の回転入力で6枚の可動ブレード121A~121Fを移動させる構成であってもよい。また、可動ブレード121A~121Fの制御については、上述した参考例におけるアイリスグリッパー20の開閉制御と同様である。
【0083】
駆動モータの駆動力によって可動円盤122が図18中反時計回り方向へ回転移動すると、各可動ブレード121A~121Fは、固定円盤123の各ガイド長孔123a~123fに沿って案内されて平行移動する。これにより、6枚の可動ブレード21A~21Fのアーム部121kの外端部が放射方向外側へ移動していく。そして、アーム部121kの外端部が被把持物の内壁面に当接することで、当該被把持物を把持することができる。一方、駆動モータの駆動力によって可動円盤122が図18中時計回り方向へ回転移動すると、各可動ブレード21A~21Fが平行移動し、6枚の可動ブレード21A~21Fのアーム部121kの外端部が放射方向内側へ移動していく。そして、6枚の可動ブレード121A~121Fの各アーム部121kの外端部が可動円盤122及び固定円盤123の盤面内に収まる収容状態になる。
【0084】
溝や孔が形成された被把持物(ここでは、中空円筒状の被把持物とする。)をロボットアーム10により把持する場合、収容状態のアイリスグリッパー120を、ロボットアーム10の各軸の回転を制御して、被把持物の円筒状内部にアイリスグリッパー120が入り込んだ状態にする。この状態で、駆動モータを駆動して可動円盤122を図18中反時計回り方向へ回転移動させ、可動ブレード21A~21Fのアーム部121kの外端部を放射方向外側へ移動させると、当該被把持物の内壁面に当該アーム部121kの外端部が当接し、当該被把持物が把持される。
【0085】
本実施形態に係るアイリスグリッパー120によれば、放射方向外側へ移動するアーム部121kの外端部で把持される被把持物は、当該アーム部121kの外端部に当接することで、各外端部を頂点とする六角形状の中心位置(すなわち、可動円盤122の回転軸)に寄せられ、最終的には、被把持物の中心位置が当該中心位置に合わせられて把持される。したがって、アイリスグリッパー上での被把持物の把持位置にバラツキがなく、把持位置の精度が高い。
【0086】
また、本実施形態のアイリスグリッパー120における各可動ブレード21A~21Fには、上述した参考例と同様に、隣り合う可動ブレード間で互いに対向する2つの隣接面のうち、第二隣接面上に第二係合形状部としての凸形状を形成し、第一隣接面に第一係合形状部としての溝形状を形成してある。各可動ブレード121A~121Fは、自らの第一隣接面に形成されている溝形状に、隣接する可動ブレードの第二隣接面上の凸形状が入り込むことで互いに係合し、環状配置されている。
【0087】
したがって、本実施形態においても、アーム部121kの外端部で被把持物を把持して可動円盤122の回転軸方向に沿って被把持物を持ち上げる場合等において、6枚の可動ブレード121A~121Fに対して当該方向の荷重(外力)が加わっても、互いに対向する2つの隣接面が凸形状と溝形状とで係合し、相対移動直交方向への相対的な変位が規制されている。そのため、可動ブレード121A~121Fが当該方向へ位置ずれしたり姿勢が変化したりしにくい。したがって、可動ブレード121A~121Fに対して当該方向の荷重(外力)が加わっても、可動ブレード間の隣接面同士の適切な相対移動を確保することができ、アーム部121kの外端部の突出、収容動作に支障をきたすような事態を回避することができる。
【0088】
本実施形態における各可動ブレード121A~121Fの第一係合形状部や第二係合形状部の構成は、上述した参考例における各構成例1~5の構成、あるいは、その他の構成を適宜採用することができる。
【0089】
なお、本実施形態のアイリスグリッパー120は、上述した参考例と同様に、各可動ブレード121A~121Fの第一係合形状部と第二係合形状部とが互いに係合することで、相対移動直交方向への相対的な変位が規制される構成を採用しているが、この構成は必須ではない。すなわち、可動ブレード121A~121Fが、互いに隣接するように環状配置され、隣り合う可動ブレード間の隣接面同士を互いに対向させて移動することで、各可動ブレード121A~121Fの外端部が放射方向へ移動する構成であれば、相対移動直交方向への相対的な変位が規制される構成が採用されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 :部品組立システム
10 :ロボットアーム
11 :土台部
12 :腕支持部
13 :腕部
14 :手部
15 :手先部
20,120:アイリスグリッパー
21A~21F,121A~121F:可動ブレード
21a :ガイド突起
21b,121b:被伝達突起
21c :溝形状
21d :凸形状
21e :第一隣接面
21f :第二隣接面
21g~21j:鉤型形状
22,122:可動円盤
22a~22f,122a~122f:伝達長孔
23,123:固定円盤
23a~23f,123a~123f:ガイド長孔
24 :伝達ギヤ部材
25 :モータギヤ
26 :駆動モータ
27 :回転規制枠
28 :高摩擦材
30 :把持空間
121k :アーム部
129 :固定環
130 :空間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0091】
【文献】特開2017-132032号公報
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