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特許7525924向上した蒸着効率を持つOVD工程による合成石英ガラスの製造方法
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  • 特許-向上した蒸着効率を持つOVD工程による合成石英ガラスの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】向上した蒸着効率を持つOVD工程による合成石英ガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 8/04 20060101AFI20240724BHJP
   C03B 37/018 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
C03B8/04 C
C03B8/04 E
C03B37/018 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022137313
(22)【出願日】2022-08-30
(65)【公開番号】P2023078066
(43)【公開日】2023-06-06
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】10-2021-0164480
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522220496
【氏名又は名称】ビーシーエンシー カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BCnC Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】25, Maso-ro 57beon-gil, Sindun-myeon, Icheon-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ソル、チャンウク
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-509469(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102009022559(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 8/04,37/018
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向ないし横方向の軸を中心に回転するマンドレル(Mandrel)の円筒の外面上に二酸化ケイ素(SiO)粒子を蒸着させて多孔性中空シリンダ状のスート体を形成した後、焼結させて合成石英ガラスを製造するが、
前記蒸着工程間の二酸化ケイ素粒子蒸着のためのソース源としてオクタメチルシクロテトラシロキサン([(CHSiO])を使用し、前記ソース源の分解を促進するためにハロゲン族元素を含むガスをさらに使用し、
前記オクタメチルシクロテトラシロキサンは、高圧のキャリア(carrier)ガスを通じて液滴(droplet)状で噴射されて蒸着バーナーに供給され、蒸着バーナーによって気化されることを特徴とする、合成石英ガラスの製造方法。
【請求項2】
前記キャリアガスは、1~20SLM(Standard Liter per Minute)圧力範囲を有することを特徴とする、請求項1に記載の合成石英ガラスの製造方法。
【請求項3】
前記ハロゲン族元素は、塩素(Cl)を含むガスであり、
前記塩素を含むガスを前記オクタメチルシクロテトラシロキサン100重量部に対して0.1~10重量部の割合で供給することを特徴とする、請求項1に記載の合成石英ガラスの製造方法。
【請求項4】
前記塩素(Cl)を含むガスは、塩化水素(HCl)または塩素(Cl)ガスであることを特徴とする、請求項3に記載合成石英ガラスの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法が適用される合成石英ガラス製造装置であって、
二酸化ケイ素(SiO)が蒸着されるマンドレル蒸着面の上部には温度測定装置が備えられ、マンドレル蒸着面の側面にはプレヒーティング用バーナーが備えられ、マンドレル蒸着面の下部には蒸着用バーナーが備えられ、
前記温度測定装置、プレヒーティング用バーナー及び蒸着用バーナーの中から選ばれる少なくとも1つの構成は所定間隔をおいて移動するが、各構成は位置に対する独立制御が可能であり、マンドレル蒸着面の温度を均一に制御し、
前記蒸着用バーナーには、二酸化ケイ素供給源としてオクタメチルシクロテトラシロキサン([(CHSiO])を液滴状で供給するためのラインミキシングコンソール(Line Mixing Console)が備えられることを特徴とする、合成石英ガラス製造装置。
【請求項6】
前記温度測定装置及びプレヒーティング用バーナーの位置は、蒸着面の直径、マンドレル回転速度、蒸着用バーナーの移動速度のうち少なくとも一つの要因を考慮して所定間隔移動するように調整されることにより、蒸着面の温度を均一に制御する、請求項5に記載の合成石英ガラス製造装置。
【請求項7】
前記プレヒーティング用バーナーは、温度測定装置から測定された温度値が入力されて予め設定された目標値との差を計算して燃焼ガスの流量を制御することにより、蒸着面の温度を均一に制御する、請求項5に記載の合成石英ガラス製造装置。
【請求項8】
前記マンドレルは、ステンレススチール(SUS)、チタン、ニッケル、及びこれらの組み合わせの中から選ばれる1種以上の材質を有する、請求項1に記載の合成石英ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、向上した蒸着効率を持つOVD工程による合成石英ガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学、半導体、化学産業などで広く利用されている石英ガラス(silica glass or quartz glass)は、純粋なSiOのみからなるガラスであり、不純物の含量が数百ppm以下である程度をいう。SiOは、シリカ(Silica)と呼ばれ、結晶形態によって様々な種類に分けられるが、天然状態で存在する代表的な種類が石英(quartz)であるため、高純度のSiOガラスを石英ガラスと呼ぶ。
【0003】
石英ガラスは製造方法によって溶融石英ガラス(fused quartz glass)と合成石英ガラス(synthetic quartz glass)に分類しうる。溶融石英ガラスは、天然石英や珪砂を高温で溶融して製造するのに対し、合成石英ガラスは、高純度の塩化ケイ素(SiCl)などのSiを含む気体や液体状態の化合物を原料物質として用いて化学気相蒸着法、アルコキシド法などで製造する。合成石英ガラスは、石英や珪砂を用いる場合に比べて不純物の含量が低く、その応用範囲がさらに広い。
【0004】
一方、合成石英ガラスの製造方法としては、VAD(vapor phase axial deposition)、OVD(outside vapor phase deposition)、またはPOD(plasma outside deposition)などが知られており、具体的に合成石英ガラスの製造は高純度の塩化ケイ素(SiCl)などを用いて中空状多孔質石英ガラス母材(スート体)を製造し、これを焼結透明化する方法により行う。一方、OVDなどの方法によれば、楕円において最も長い直径を中心に回転するマンドレルの外表面にケイ素含有原料を火炎加水分解、または熱分解して微細なSiO粒子を堆積することによりスート体を製造することになる。このように製造されたスート体は、脱水/焼結過程を経て合成石英ガラスとして製造される。
【0005】
一方、従来石英ガラスを製造するためのソース源として使用されていた塩化ケイ素(SiCl)の場合、分子内のケイ素(Si)の含量が低くて効率が低く、多量の塩素(Cl)及び塩素を含むガスを発生させて工程に困難性があり、これを処理するための複雑な処理施設が必要となるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、OVD方式などで中空シリンダ状の合成石英ガラス製品の製造時、従来技術に比べて塩素を少なく使用し、環境にやさしく、別途の処理施設が要求されないオクタメチルシクロテトラシロキサン([(CH2SiO])を二酸化ケイ素粒子蒸着のためのソース源として使用する合成石英ガラスの製造方法を提供する。
【0007】
また、オクタメチルシクロテトラシロキサン([(CH32SiO])を二酸化ケイ素粒子蒸着のためのソース源として使用時に要求される高温加熱及び遅い分解速度を効果的に解決できるようにハロゲン族元素を含むガスを原料ガスとともに噴射するか、または蒸着チャンバー内に噴射する合成石英ガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した技術的課題に制限されず、言及されていないさらに他の技術的課題は、下記の記載から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が明確に理解できるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書では、縦方向ないし横方向の軸を中心に回転するマンドレル(Mandrel)の円筒の外面上に二酸化ケイ素(SiO)粒子を蒸着させて多孔性中空シリンダ状のスート体を形成した後、焼結させて合成石英ガラスを製造するが、前記蒸着工程間の二酸化ケイ素粒子蒸着のためのソース源としてオクタメチルシクロテトラシロキサン([(CHSiO])を使用し、前記ソース源の分解を促進するためにハロゲン族元素を含むガスをさらに使用することを特徴とする、合成石英ガラスの製造方法が提供される。
【0010】
一例として、前記オクタメチルシクロテトラシロキサンは、高圧のキャリア(carrier)ガスを通じて液滴(droplet)状で噴射されて蒸着バーナーに供給され、蒸着バーナーによって気化されるものであってもよい。
【0011】
一例として、前記キャリアガスは、1~20SLM(Standard Liter per Minute)圧力範囲を有するものであってもよい。
【0012】
一例として、前記ハロゲン族元素は、塩素(Cl)を含むガスであり、前記塩素を含むガスを前記オクタメチルシクロテトラシロキサン100重量部に対して0.1~10重量部の割合で供給するものであってもよい。
【0013】
一例として、前記塩素(Cl)を含むガスは、塩化水素(HCl)または塩素(Cl)ガスであってもよい。
【0014】
また、本明細書では、前記方法が適用される合成石英ガラス製造装置であって、二酸化ケイ素(SiO)が蒸着されるマンドレル蒸着面の上部には温度測定装置が備えられ、マンドレル蒸着面の側面にはプレヒーティング用バーナーが備えられ、マンドレル蒸着面の下部には蒸着用バーナーが備えられ、前記温度測定装置、プレヒーティング用バーナー及び蒸着用バーナーの中から選ばれる少なくとも1つの構成は、所定間隔をおいて移動するが、各構成は、位置に対する独立制御が可能で、マンドレル蒸着面の温度を均一に制御し、前記蒸着用バーナーには二酸化ケイ素供給源としてオクタメチルシクロテトラシロキサン([(CH32SiO])を液滴状で供給するためのラインミキシングコンソール(Line Mixing Console)が備えられることを特徴とする、合成石英ガラス製造装置が提供される。
【0015】
一例として、前記温度測定装置及びプレヒーティング用バーナーの位置は、蒸着面の直径、マンドレル回転速度、蒸着用バーナーの移動速度のうち少なくとも一つの要因を考慮して所定間隔移動するように調整されることにより、蒸着面の温度を均一に制御するものであってもよい。
【0016】
一例として、前記プレヒーティング用バーナーは、温度測定装置から測定された温度値が入力されて予め設定された目標値との差を計算して燃焼ガスの流量を制御することにより、蒸着面の温度を均一に制御するものであってもよい。
【0017】
一例として、前記マンドレルは、ステンレススチール(SUS)、チタン、ニッケル、インコネル、ハステロイ及びこれらの組み合わせの中から選ばれる1種以上の材質を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、OVD方式などで中空シリンダ状の合成石英ガラス製品の製造時、従来技術により塩化ケイ素(SiCl)を用いる方式に比べて、塩素を少なく使用するという点で環境にやさしく、別途の処理施設が要求されないので、経済的である。
【0019】
また、オクタメチルシクロテトラシロキサンをハロゲン族元素を含むガスとともに供給するか、またはハロゲン族元素を含む雰囲気で蒸着するか、または高圧キャリアガスとともに液滴状で噴射して蒸着バーナーに供給し、蒸着バーナーにより気化を行う方式により、オクタメチルシクロテトラシロキサン([(CHSiO])を二酸化ケイ素粒子蒸着のためのソース源として使用時に要求される高温加熱及び遅い分解速度を効果的に解決しうる。
【0020】
一方、前記方法が適用される合成石英ガラス製造装置の構成として、温度測定装置、プレヒーティング用バーナー及び蒸着用バーナーの中から選ばれる少なくとも1つの構成は、所定間隔をおいて移動可能な構造で備えられ、各構成は、位置に対する独立制御が可能となるように備えられることにより、マンドレル蒸着面の温度を均一に制御できるようになり、均一な密度の蒸着物(スート体)を製造できるようになるので、最終的に製造される製品の不良率を著しく減少させることができる。
【0021】
また、本発明によれば、合成石英ガラスの製造時の蒸着工程では、SiO2蒸着温度である800~1,400℃の温度範囲で使用可能であり、熱衝撃に強く、破損せず半永久的に使用が可能な、ステンレススチールなどの材質の金属マンドレルを使用することにより、マンドレルとスート体間の結合及びマンドレルとスート体間の熱膨張係数の差による応力により一定厚さ以上のスート体にクラック(Crack)が発生する問題をより効果的に解決する一方、蒸着物の脱離時に蒸着物に損傷が発生することを防止しうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施例による合成石英ガラス製造のための合成石英ガラス製造装置を概略的に示したものである。
図2図1の合成石英ガラス製造装置を側面から見た図である。
図3】本発明の一実施例による合成石英ガラスの製造方法において、オクタメチルシクロテトラシロキサンが供給される蒸着用バーナー及びここにキャリアガスとオクタメチルシクロテトラシロキサンを液滴状で投入する流れ(左)及び塩素を含むガス(例えば、塩化水素(HCl))をさらに投入する場合の流れ(右)を概略的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例について、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で具現されてもよく、以下に開示する実施例に限定されない。また、図面において本発明を明確に開示するため、本発明と関係のない部分は省略し、図面において同一又は類似の符号は、同一又は類似の構成要素を示す。
【0024】
本発明の目的及び効果は、下記の説明によって自然に理解されるか、またはより明らかになり、下記の記載だけで本発明の目的及び効果が制限されるものではない。また、本発明の説明において、本発明に関連した公知技術に対する具体的な説明が、本発明の要旨を不必要に曇らせることができると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。以下、添付図面を参照して本発明による実施例を詳細に説明する。
【0025】
本発明の一実施例による合成石英ガラスの製造方法は、縦方向ないし横方向の軸を中心に回転するマンドレル(Mandrel)の円筒の外面上に二酸化ケイ素(SiO)粒子を蒸着させて多孔性中空シリンダ形状のスート体を形成した後、焼結させて合成石英ガラスを製造するが、前記蒸着工程間の二酸化ケイ素粒子の蒸着のためのソース源としてオクタメチルシクロテトラシロキサン([(CHSiO])を使用し、前記ソース源の分解を促進するためにハロゲン族元素を含むガスをさらに使用することを特徴とするものであってもよい。
【0026】
一方、前記方法が適用される本発明の一実施例による合成石英ガラス製造装置は、二酸化ケイ素(SiO)が蒸着されるマンドレル蒸着面の上部には温度測定装置が備えられ、マンドレル蒸着面の側面には、蒸着面の温度を均一に制御するためのプレヒーティング(Pre-Heating)用バーナー(Burner)が備えられ、マンドレル蒸着面の下部には二酸化ケイ素粒子蒸着のための蒸着用バーナーが備えられるものであってもよい(図1及び図2参照)。
【0027】
また、前記温度測定装置、プレヒーティング用バーナー及び蒸着用バーナーの中から選ばれる少なくとも1つの構成は、所定間隔をおいて移動するが、各構成は位置に対する独立制御が可能であり、マンドレル蒸着面の温度を均一に制御し、前記蒸着用バーナーには、二酸化ケイ素供給源としてオクタメチルシクロテトラシロキサン([(CH32SiO])を液滴状で供給するためのラインミキシングコンソール(Line Mixing Console)が備えられるものであってもよい(図3参照)。
【0028】
また、オクタメチルシクロテトラシロキサンの分解を促進するためにハロゲン元素を含むガスとともに噴射するか、またはハロゲン元素を含むガスが含まれた雰囲気で蒸着するものであってもよい。
【0029】
具体的に、本発明による合成石英ガラス製造装置は、るつぼ内に備えられるものであってもよく、縦方向ないし横方向の軸を中心に回転するマンドレル(Mandrel)と、前記マンドレルの蒸着面の上部に備えられる温度測定装置、マンドレル蒸着面の側面に備えられるプレヒーティング(Pre-Heating)用バーナー(Burner)、前記マンドレル蒸着面の下部に備えられる蒸着用バーナーを含んでもよい。
【0030】
マンドレルは、外表面である蒸着面に二酸化ケイ素原料を蒸着させて中空シリンダ状のスート体を形成できるようにする装置構成であって、軸を中心に一側に360°回転可能に備えられるものであってもよい。一方、本発明の一実施例によるマンドレルは、ステンレススチール(SUS)、チタン、ニッケル、インコネル及びこれらの組み合わせの中から選ばれる1種以上の材質を有するものであってもよく、詳細には、ステンレススチール材質であってもよい。
【0031】
従来技術によれば、前記のようなOVDなどの方法により合成石英ガラス製造時の蒸着工程において酸化抵抗性を持つアルミナや炭化ケイ素などのセラミック材質のマンドレルを使用したが、アルミナ及び炭化ケイ素などは、相対的に高価なセラミック素材であって、熱衝撃に非常に脆弱であり、特に火炎を用いた工程時に熱衝撃による破損のおそれがあった。また、離型性の問題により、蒸着工程の完了後、マンドレルと蒸着物を分離時にマンドレルないし蒸着物の破損のおそれがあった。
【0032】
一方、本発明のようにマンドレルの材質をステンレススチール(SUS)、チタン、ニッケル、インコネル及びこれらの組み合わせの中から選ばれる1種以上の材質、詳細には、ステンレススチールで構成する場合、SiO蒸着温度である800~1,400℃の温度範囲で使用可能で、熱衝撃に強く、破損のおそれが少なく、冷却中の熱膨張係数の差により自然にマンドレルが蒸着物と分離可能であり、特定の材質の離型層によりマンドレルと蒸着物間の物理的接着が効果的に防止されて分離時のマンドレルないし蒸着物の破損が効果的に防止される。
【0033】
一方、温度測定装置は、二酸化ケイ素(SiO)が蒸着されるマンドレル蒸着面の上部に備えられてもよく、温度を感知及び数値化してこれをプレヒーティング用バーナーに伝達できる構成であってもよい。一方、前記温度測定装置は、蒸着面の直径、マンドレル回転速度、蒸着用バーナーの移動速度のうち少なくとも1つの要因を考慮して所定間隔移動するように調整されるものであってもよく、また、位置に対する独立制御が可能となるように備えられることにより、蒸着面の温度を均一に制御する役割を果たすことができる。
【0034】
一方、プレヒーティング用バーナーは、マンドレル蒸着面の側面に備えられて蒸着面の温度を均一に制御するために備えられるものであってもよく、必要に応じて1つ以上備えられるものであってもよい。一方、前記プレヒーティング用バーナーは、温度測定装置と同様に蒸着面の直径、マンドレル回転速度、蒸着用バーナーの移動速度のうち少なくとも一つの要因を考慮して所定間隔移動するように調整されるものであってもよく、また位置に対する独立制御が可能となるように備えられることにより、蒸着面の温度を均一に制御する役割を果たすことができる。
【0035】
詳細には、前記プレヒーティング用バーナーは、温度測定装置から測定された温度値が入力されて、予め設定された目標値との差を計算して燃焼ガスの流量を制御することにより、蒸着面の温度を均一に制御する構成であってもよい。
【0036】
一方、蒸着用バーナーは、マンドレル蒸着面の下部に備えられて二酸化ケイ素粒子の蒸着を円滑に行うように備えられる構成であってもよく、所定間隔をおいて移動が可能な構造で備えられてもよく、位置に対する独立制御が可能となるように備えられてもよい。
【0037】
一方、本発明による製造装置では、蒸着用バーナーが所定距離移動する場合、これに比例して温度測定装置及びプレヒーティング用バーナーも同様に移動するように制御されてもよい。
【0038】
具体的に、合成石英ガラス内に気孔が含まれる場合、該当部分は不良処理されて使用が不可能であり、製造時の気孔の発生を極力抑制する必要がある。気孔は、様々な原因によって発生できるが、密度が不均一に蒸着される場合、気孔の発生が著しく増加することから、蒸着時の密度を効果的に制御することが気孔抑制に重要であると考えられる。一方、密度は、蒸着時の温度と密接な関係を持っているので、蒸着面の温度を均一に維持する必要がある。
【0039】
蒸着初期に直径が小さいときは、火炎との接触時間が長く蒸着面の温度を均一に維持しやすいが、直径が次第に増加するにつれて全体の面積に対して火炎との接触時間はますます短くなるので、温度を均一に維持しにくい。これを解決するために本発明では、蒸着面に対する温度測定が可能な温度測定装置を備え、蒸着面を加熱するためのプレヒーティング用バーナーをさらに備えてもよい。
【0040】
一方、前記温度測定装置により測定された温度値を基準として、プレヒーティング用バーナーの熱源、例えば、燃焼ガスの流量を増加させるか、または減少させることにより、蒸着面の温度を一定に保つことができ、これにより均一な密度を確保し、気孔の形成を最小化できる。
【0041】
本発明の一実施例による合成石英ガラスの製造方法は、上述した製造装置を用いて縦方向ないし横方向軸を中心に回転するマンドレル(Mandrel)の円筒の外面上に二酸化ケイ素(SiO)粒子を蒸着させて多孔性中空シリンダ状のスート体を形成した後、焼結させて合成石英ガラスを製造するが、前記蒸着及び焼結過程は、前記製造装置の構成として、温度測定装置、プレヒーティング用バーナー及び蒸着用バーナーの中から選ばれる少なくとも1つの構成を所定の間隔をおいて移動させるが、各構成を位置に対する独立制御が可能となるようににし、マンドレル蒸着面の温度を均一に制御することにより行われてもよい。
【0042】
一方、従来技術によれば、前記のようなOVDなどの方法により合成石英ガラス製造時にソース源(前駆体)として塩化ケイ素(SiCl)を用いることが一般的であった。しかし、塩化ケイ素(SiCl)をソースとして用いる場合、分子内のSi含量が低くて効率が低く、多量の塩素(Cl)及び塩素(Cl)を含むガスを発生させ、複雑な処理施設が必要となる問題があった。一方、本発明ではオクタメチルシクロテトラシロキサン([(CHSiO])をソース源として使用することにより、より環境に優しく、複雑な処理施設が不要であるという長所がある。
【0043】
ただし、オクタメチルシクロテトラシロキサン([(CHSiO])は、気化温度が高く、高温で気化が必要であり、原子構造が複雑で、高温で長時間維持時、Si系ポリマーを形成して原料の効率が低下するという問題があり、高価な気化器が必要であり、移送ラインを約180℃でヒーティング(heating)して凝縮を防止する必要がある。また、蒸着時にヒーティングバーナーがトラバース(Traverse)上で左右に移送するため、高温に耐えながら柔軟な(Flexible)素材が必要であるが、これに適した素材がないという問題があった。
【0044】
そこで、本発明では、オクタメチルシクロテトラシロキサンを高圧キャリアガスとともに液滴(droplet)状で噴射して蒸着バーナーに供給し、蒸着バーナーにより気化を行う方式でオクタメチルシクロテトラシロキサンの使用による従来技術の問題を効果的に解決することになった。
【0045】
本発明の一実施例によれば、前記オクタメチルシクロテトラシロキサンは、高圧のキャリア(carrier)ガスを通じて液滴(droplet)状で噴射されて蒸着バーナーに供給され、蒸着バーナーによって気化される方式を通じて、別途の気化器を含まずに設備構造を簡素化させることができ、ラインヒーティングが不要で、原料損失を最小化できるという長所を有する。
【0046】
具体的には、本発明の一実施例によるオクタメチルシクロテトラシロキサンは、高圧のキャリア(carrier)ガスを通じて液滴(droplet)状で噴射されて蒸着バーナーに供給され、蒸着バーナーにより気化されるものであってもよく、前記キャリアガスは、1~20SLM(Standard Liter per Minute)圧力範囲、詳細には1~15SLM(Standard Liter per Minute)の圧力範囲を有するものであってもよい。
【0047】
一方、本発明の一実施例によれば、前記蒸着工程間のオクタメチルシクロテトラシロキサン([(CHSiO])分解効率を向上させるためにハロゲン族元素、例えば塩素(Cl)を含むガスを前記オクタメチルシクロテトラシロキサン100重量部に対して0.1~10重量部の割合で供給してもよい。一方、前記塩素(Cl)を含むガスは、塩化水素(HCl)または塩素(Cl)ガスであってもよく、より詳細には、塩化水素(HCl)であってもよい。この場合、オクタメチルシクロテトラシロキサン([(CH32SiO])分解効率を増加するために不可避に塩素ガスを用いるが、従来のソース源(前駆体)として塩化ケイ素(SiCl)を用いる方式と対比すると、塩素の使用量が著しく少なく、環境にやさしい。
【0048】
以上で説明した本発明の製造装置及び製造方法によれば、OVD方式などで中空シリンダ形状の合成石英ガラス製品の製造時、従来技術により塩化ケイ素(SiCl)を用いる方式に対して、塩素を含まないという点で環境にやさしく、別途の処理施設が要求されず経済的である。
【0049】
また、オクタメチルシクロテトラシロキサンを高圧キャリアガスとともに液滴状で噴射して蒸着バーナーに供給し、蒸着バーナーにより気化を行う方式により、オクタメチルシクロテトラシロキサン([(CHSiO])を二酸化ケイ素粒子蒸着のためのソース源として使用時に要求される高温加熱及び遅い分解速度を効果的に解決しうる。
【0050】
一方、前記方法が適用される合成石英ガラス製造装置の構成として、温度測定装置、プレヒーティング用バーナー及び蒸着用バーナーの中から選ばれる少なくとも1つの構成は、所定間隔をおいて移動可能な構造で備えられ、各構成は、位置に対する独立制御が可能となるように備えられることにより、マンドレル蒸着面の温度を均一に制御できるようになり、均一な密度の蒸着物(スート体)を製造できるようになるので、最終的に製造される製品の不良率を著しく減少させることができる。
【0051】
また、本発明によれば、合成石英ガラス製造時の蒸着工程では、SiO2蒸着温度である800~1,400℃の温度範囲で使用可能であり、熱衝撃に強く、破損せず半永久的に使用が可能な、ステンレススチールなどの材質の金属マンドレルを使用することにより、マンドレルとスート体間の結合及びマンドレルとスート体間の熱膨張係数の差による応力により一定厚さ以上のスート体にクラック(Crack)が発生する問題をより効果的に解決するとともに、蒸着物の脱離時に蒸着物に損傷が発生することを防止しうる。
【0052】
以上、本発明の特定の実施例が説明されるとともに、図示されたが、本発明は記載された実施例に限定されるものではなく、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく様々に修正及び変形できることは、この技術の分野で通常の知識を持つ者に自明なことである。したがって、そのような修正例または変形例は、本発明の技術的思想や観点から個別に理解されるべきではなく、変形された実施例は、本発明の特許請求の範囲に属するべきである。
図1
図2
図3