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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】医療デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
A61B1/00 650
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022512374
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 NO2019050180
(87)【国際公開番号】W WO2021049944
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】522068094
【氏名又は名称】メディバイス エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ノード,ダグ
(72)【発明者】
【氏名】ブラックマン,スティーヴン アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ワルド-ジェンセン,ラース ペター
(72)【発明者】
【氏名】ロセス,アーン
(72)【発明者】
【氏名】ヒャレウム,プレベン レネ
(72)【発明者】
【氏名】ピーターセン,エリック パヴェルス
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-108180(JP,A)
【文献】特開2005-318927(JP,A)
【文献】特開平09-140663(JP,A)
【文献】特開2003-265406(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0277333(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療器具(202)を体の中に給送するため、または前記医療器具を体から引き抜くために、内視鏡システムで使用する器具給送デバイス(201)であって、
前記器具給送デバイス(201)をモータ(203)に接続するための、接触部(302)と、
前記モータによって回転されるよう配置され、前記医療器具(202)の一方の側に位
置付けられた、駆動ホイール(303)と、
前記駆動ホイール(303)に対して、前記医療器具の反対側に位置付けられた、遊動
ホイール(310)と、
前記遊動ホイール(310)を、前記医療器具(202)に対して押し込むよう適応さ
れ、それによって前記医療器具(202)を前記駆動ホイール(303)に対して押し込
み、前記遊動ホイール(310)を前記医療器具(202)に対して起動位置に保持し、
そして前記起動位置から前記遊動ホイールを解除する、クラッチ機構と、を備え、
ここで、
前記モータ(203)は、前記器具給送デバイス(201)を通して前記医療器具(202)を動かすためのものであって、
前記クラッチ機構は、スピンドルに接続された回転ボタン(1012)を含み、前記ス
ピンドルは、主部分(1111b)、及び前記主部分を通る中心線に対してずらして配置
された偏心部分(1111a)を含み、前記遊動ホイールは、前記スピンドルの前記偏心
部分に回転可能に取り付けられることを特徴とする、前記器具給送デバイス(201)であって、
前記回転ボタン(1012)はステム部(1214)を含み、前記ステム部(1214
)は中空であり、かつ前記スピンドルの前記主部分(1111b)の上に摺動可能に取り
付けられ、前記ステム部(1214)は、前記スピンドルの前記主部分における対応した
リブ(1523)と係合するノッチ(1417)を含み、前記回転ボタンが前記スピンド
ルを回すのを可能にし、前記ステム部のノブ(1213)は、前記器具給送デバイス(201)を取り囲んだ壁のテーパーが付いた突起(1522)に係合し、ばね(1215)は前記ノブを、前記突起(1522)に対して力をかける、器具給送デバイス。
【請求項2】
前記テーパーが付いた突起(1522)は、その最端部において縁部を含み、前記縁部は、前記ノブ(1213)が前記縁部を越えて通過するときに前記ノブ(1213)を保持する、請求項1に記載の器具給送デバイス。
【請求項3】
前記駆動ホイール及び前記遊動ホイールは、硬質プラスチックのコア、及び軟質ゴムの
外側層を含み、前記軟質ゴムの外側層は、前記硬質プラスチックのコアにぴったりと合わ
せられる、請求項1または2に記載の器具給送デバイス。
【請求項4】
前記軟質ゴムの外側層は、その外周がヘリンボーンまたはトラクターパターン化される
、請求項3に記載の器具給送デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の器具チャネルの中に、医療デバイスを挿入及び抜き取るためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
結腸内視鏡検査、胃内視鏡検査、及び小腸内視鏡検査を含んだ内視鏡検査は、炎症、感染、前癌状態の変化、虚血、または腫瘍など、消化管において病気が存在するかを判断するために実施される医療処置である。内視鏡診断は、消化管が検査され、組織(すなわち生体)または流体(すなわち細胞)がサンプリングされる処置である。この処置は、人体または動物体のいずれかで実施され得る。組織または流体サンプルの分析は、状況の診断を可能にする。例えば、胃炎、クローン病、潰瘍、及び悪性腫瘍などの疾病を、診断することができる。診断検査に使用されることに加えて、内視鏡処置は、ポリープの除去、止血、及びデバイス(例えば拡張ステント)の設置など、治療処置も含む。
【0003】
内視鏡処置は、医師にとって重要なツールであり、胃腸科専門医によって日常的に実施される。内視鏡診断及び内視鏡治療処置のために必要とされる医療器具は、器具チャネルを介して体の中に挿入され、チャネルに沿って、意図された使用箇所に達するまで押し込まれる。医師が医療器具の他方の端部を保持して、チャネルを通して医療器具を押し込む間、医療器具の一方の端部を保持する人によって補助されることが、内視鏡検査を実施する医師にとって必要である。医療器具は1.2~1.6mの長さである場合があり、医療器具を挿入するプロセスは、複雑で時間を浪費する。
【0004】
欧州特許出願公開第1769722号明細書、及び欧州特許出願公開第3155953号明細書の特許文献において、医療器具を器具チャネルの中及び外に給送するための、電気操作された駆動ユニットを含んだ、公知の内視鏡システムが存在する。このような装置は、医療器具を挿入するための補助を有する要件を緩和し得るが、器具の使用における医師の操作的な自由度を制限し得る。
【0005】
米国特許第8114032号明細書は、駆動シャフトを介して駆動モータに接続されるよう適応された、内視鏡システムのための給送デバイスを記載している。その給送デバイスは、いくつかの駆動ホイールを含み、それらは駆動シャフトの回転に応答して回転する。この給送デバイスは、1つまたは複数の駆動ホイールと、係合された場合の内視鏡ケーブルとの間に安定した接触をもたらすよう適応された、クラッチ機構をさらに備える。そのクラッチは、ラチェット機構と係合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許出願公開第1769722号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3155953号明細書
【文献】米国特許第8114032号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目標は、医療器具を体の中に給送するために、内視鏡システムで使用するための器具給送デバイスを提供することであり、医師は、このデバイスによって邪魔されることなく、デバイスを操作し得る。別の目標は、内視鏡システムが容易に殺菌され得る、器具の給送デバイスを得ることである。さらに別の目標は、低コストで器具給送デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目標は、添付の特許請求の範囲による器具給送デバイスで実現される。
【0009】
本発明の別の利点及び特徴は、以下の「発明を実施するための形態」及び図面から明確になろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】内視鏡システム(先行技術)の概略図である。
図2】器具給送デバイスの第1の実施形態が、いかにして図1のシステムに組み込まれ得るかを示す概略図である。
図3】給送デバイスの外観図である。
図4】給送デバイスの内部動作を示す図である。
図5】給送デバイスを貫いた部分断面図である。
図6a】本発明の別の実施形態を示す図である。
図6b】本発明の別の実施形態を示す図である。
図7図6に示された実施形態に含まれた、構成要素の概略図である。
図8a】この実施形態における別の構成要素を示す図である。
図8b】この実施形態における別の構成要素を示す図である。
図8c】この実施形態における別の構成要素を示す図である。
図9a図8に示された構成要素の詳細図である。
図9b図8に示された構成要素の詳細図である。
図10】給送デバイスの、さらに別の実施形態の外観図である。
図11】この実施形態の内部斜視図である。
図12図6に示される実施形態の断面図である。
図13】この実施形態の、図7のデバイスに対して垂直方向の別の断面図である。
図14】この実施形態に使用された構成要素の斜視図である。
図15図14の構成要素が、いかにして本発明の給送デバイスに設定されるかを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、先行技術による内視鏡101を示す。内視鏡101は、例えば胃内視鏡または結腸内視鏡であってよい。
【0012】
器具チャネル102(図1において生体チャネルと称される)を備えた挿入管103は、患者の体の中に挿入される。図1に示されるように、器具チャネル102の第1の端部は、医療器具を器具チャネル102の中に挿入できるよう、開口部を有する。体の中に挿入される挿入管103の端部である、器具チャネル102の第2の端部は、開口部を有する。それを通して、器具チャネル102における第1の端部の中に挿入された医療器具は通過できる。使用中、医療器具は、器具チャネル102における第1の端部の中に挿入され、器具チャネル102における第2の端部を抜けて現れるまで、器具チャネル102を通過する。次に医療器具は、診断または治療処置を実施するための使用箇所に到達するまで、体の中にさらに押し込まれ得る。
【0013】
器具チャネル102の中に挿入された医療器具は、器具部分及び細長い部分を備える。器具部分は、例えば組織のサンプルを得るための鋏を備え得る。細長い部分は、1本もしくは複数本のワイヤまたは管を備え、器具部分を支持し、それによって両方をチャネルに沿って体の中の使用箇所まで動かすこと、及び使用箇所において操作すること、ができる。
【0014】
医療器具は、例えば生体鉗子、ポリープスネア、ゴムバンド結紮デバイス、回収バスケットのいずれか、ならびに他の医療器具とし得る。内視鏡101は、体の中における医療器具の通過をもたらすための、任意の可撓性の内視鏡器具とし得る。内視鏡101は、好ましくは胃内視鏡、結腸内視鏡、または小腸内視鏡である。
【0015】
公知の技術によると、医療器具は、器具チャネル102における第1の端部の中に挿入される。この挿入は、一般的に助手と共に、処置を実施する医師によって実施される。医師は、医療器具を器具チャネル102に通して、手動で押し込む。医療器具は1.2~1.6mの長さである場合があり、医療器具を挿入するプロセスは遅い。医療器具の挿入及び抜き取りも、医師に負担を強いる。なぜなら、医師が1日に器具チャネル102を通して押し込み、引張るために必要とされ得る医療器具の有効長は、100mになり得るからである。
【0016】
図2は、器具給送デバイス201、モータ203、駆動シャフト、モータ203の電力源、及び器具給送デバイス201を貫通する医療器具202、を備えた本発明によるシステムを示す。
【0017】
医療器具202の細長い部分は、器具給送デバイス201を通過する。器具給送デバイス201は、いくつかのホイールを備え、それらは器具給送デバイス201において医療器具202に接触する。ホイールの回転は、医療器具202を器具給送デバイス201に強制的に通す。器具給送デバイス201は、駆動シャフトの端部に接続するためのコネクタも備える。駆動シャフトへのコネクタは、器具給送デバイス201においてホイールから物理的に離隔され、それによって、清潔ではない駆動シャフトの接続及び使用は、器具給送デバイス201を通過する清潔な医療器具202を汚染せず、かつ器具給送デバイス201を通した清潔ではない医療器具202の通過は、清潔な駆動シャフトを汚染しない。コネクタ及びホイールの物理的な離隔は、駆動シャフト及びホイールを互いから分離させることになる任意の構成であってよく、それによってそれらは互いを汚染しない。器具給送デバイス201は、接続された駆動シャフト及び医療器具202が互いを汚染しないよう保証するための、1つまたは複数のシールドを備え得る。
【0018】
駆動シャフトは、モータ203のトルクを器具給送デバイス201に伝達できる、任意のタイプのシャフトまたはケーブルとし得る。例えば駆動シャフトは、可撓性のボーデン(速度計)ケーブルとし得る。駆動シャフトは、代替として非可撓性のシャフトとし得る。駆動シャフトは、代替として水力タービンまたは小型の電気サーボエンジンに交換され得る。
【0019】
代替の実施形態において、モータは、メインの内視鏡ユニットに一体化され得る。次に給送デバイスは、介在するいかなる駆動シャフトもなく、モータに直接接続し得る。さらに別の実施形態において、モータ及びモータに電力を供給するバッテリは、給送デバイスに一体化され得る。次に全体ユニットは、使用後に廃棄され得る。
【0020】
器具給送デバイス201は、医療器具202を器具給送デバイス201に強制的に通す1つまたは複数のホイールの回転方向が、モータの回転方向に依存するよう構成される。したがって器具給送デバイス201の動作は、器具を体の中に押し込むことから、モータの回転方向を逆にすることによって器具を体から引き抜くことまで、変化させることができる。
【0021】
有利には、器具給送デバイス201は、遠隔モータ203によって駆動される。器具給送デバイス201はモータ203を備えず、それは器具給送デバイス201のコストを下げる。
【0022】
器具給送デバイス201を使用した後、器具給送デバイス201を、モータ/駆動シャフトから接続解除して処理することができる。新しい器具給送デバイス201を、同じモータ/駆動シャフトに接続して、他の生体操作を迅速かつ容易に実施することができる。
【0023】
図3は、本発明における給送デバイスの外観図である。このデバイスは、医療器具のためのインプットポート301aと、器具チャネルの挿入プラグを形成するアウトプットポート301bとを伴う、外側ハウジングを含む。さらに、駆動シャフトまたは外部のモータ203からのボーデンケーブルを接続するため、またはモータに直接接続するための、接触部302と、器具給送デバイス201を医療器具202に係合させるための内部クラッチ機構を操作する、押ボタン312と、給送デバイス及び医療器具の間の係合を解除するための、解除ポタン313と、が存在する。図に示される実施形態において、接触部302は六角形タイプである。しかし、例えばスプラインタイプ、プレードタイプの接触部など、任意のタイプの好適な接触部が使用され得る。
【0024】
内視鏡システムを使用するとき、給送デバイス201は、挿入プラグ301bを内視鏡システムの中に差し込むことによって、内視鏡システムに接続される。内視鏡101に装着する場合に特に好ましい箇所は、器具チャネル102の端部である。この装着は、医療器具202が器具給送デバイス201を通して動く間に、器具給送デバイス201が効果的に静止を保つのを保証する。代替として、器具給送デバイス201は、医師によって保持され得る。次に医療器具は、給送デバイスに通される。押ボタンは、給送デバイスの駆動機構を医療デバイスに係合させるために、押し下げられる。そのとき外部の駆動ユニットは、例えばフットペダルすなわちスイッチを用いて、医療器具を内視鏡システムの器具チャネルの中に給送するために、起動され得る。医療器具は、チャネルの端部から約5cmまで、器具チャネルの中に給送される。器具が、器具チャネルの端部近くで所望の箇所に位置付けられたとき、解除ボタンが押し下げられ、給送デバイスと医療器具との間の係合を解除する。次に、医師は、給送デバイスから完全に離れた医療器具を操作して、患者の体の中にさらに手動で送る。これは、医療器具が患者に損傷を与えないことを確認するための、安全な手段である。
【0025】
図4は、器具給送デバイス201の内部部品を示す図である。この器具給送デバイスは、その両側に2つのポート301a、301bを伴うハウジングを含み、それらを通して医療器具202は通過する。医療器具202は、器具給送デバイス201に通して両方向に通過し得る。器具給送デバイスを通して医療器具を動かす駆動機構は、好ましくはカプセルの内側に2つの上部駆動ホイール303a及び303bを含み、各駆動ホイールは、医療器具202に接触するよう適応される。
【0026】
駆動ホイールは、中実のコア部分と、ゴムなどの軟性材料で作られた外側部分とを有する。中実のコア部分は、プラスチックで作られ、その上に軟質の外側部分はぴったりと合わせられ、2つの部品間の接続をしっかりと固定して、それらの間のいかなる滑りも防止する。各ホイールの軟質の外側部分は、医療器具との良好な摩擦接触を提供する。それは器具を動かすために必要である。しかし、各ホイールにおけるゴム製の外側部分は、適切な厚さを有することが望ましい。これは、駆動ホイール及び遊動ホイールが互いに近付くときに、医療器具がゴムによって完全に埋め込まれるか、または取り囲まれるほどのゴム部分の厚さは、堅い内部コアが十分な圧力及び把持力を医療器具に加えるのを妨げるので、望ましくないことを意味する。
【0027】
ホイールの外周は、ホイールと医療器具との間の摩擦をさらに増加させるために、(ヘリンボーンまたはトラクターパターンで)示されるように、パターン化され得る。なぜなら、医療器具は極めて滑りやすい場合があるためである。
【0028】
各駆動ホイールは、それぞれはめ歯歯車305a、305bに接続される。各駆動ホイール、及び関連付けられたはめ歯歯車は、当然ながら単一のユニットとして作られ得る。はめ歯歯車305a、305bは、共通の転換はめ歯歯車306と み合う。転換はめ歯歯車306は、短い軸307を介してウォームギア308、309に接続され得る。ウォームギアは、ウォームねじ309と み合う、ギアはめ歯歯車308を含む。ウォームねじの端部は、外部のモータ203から回転力を提供する駆動シャフトに係合するために、カプセルを通して突出し、接触部302で終端する。
【0029】
これは、医療器具を前後に駆動する機構である。しかし、駆動機構と医療器具202とにおける、駆動ホイール303a、303b間の適切な係合を提供するために、器具給送デバイス201にクラッチ機構が装備される。このクラッチ機構は、遊動ホイール310を備える。遊動ホイール310は、医療器具202の下側に対して押圧され、医療器具202を、上方の2つの駆動ホイール303a、303bに向けて押圧し得る。遊動ホイール310には、軟質の外側部分311も設けられ得る。遊動ホイールは、押ボタン312によって医療デバイスに向けて押圧され得る。遊動ホイールを係合位置に保持するよう適応された、ラチェット機構が存在する。ラチェット機構を係合解除するための解除ボタン313も存在し、それによってホイールの係合を解除する。このように、この装置はクラッチとして働き、器具給送デバイスが医療器具を位置付けるよう動かし、次に、デバイスと器具との間の係合を解除することを可能にし、器具を操作するために、医師に完全な自由を提供する。
【0030】
図4に示されるウォームギアは、給送デバイスが停止されたときに、医療器具が給送デバイスを通して強制的に後退する可能性を防止する制動機能を有し得る点で、有利となり得る。しかし、ウォームギアは省かれ、駆動ケーブルまたはモータが、筐体の側部における好適な接触を介して、ホイールの1つに直接接続され得る。このモータは、給送デバイスを好適な回転速度で駆動できなければならず、そのためギア機構を含み得る。
【0031】
2つの駆動ホイール、及びこれらの駆動ホイールに面した単一の遊動ホイールを伴うこの実施形態は、医療器具がホイールを通過するときに僅かに湾曲する点で、有利である。これは、接触面を増加させ、かつホイールと器具との間の摩擦を増加させる。しかし、単一の駆動ホイール、及び2つの遊動ホイールを伴う反対の構成、または単一の駆動ホイール、及び駆動ホイールに対向した単一の遊動ホイールを伴う構成、または各々の遊動ホイールが直接駆動ホイールに面した、2つの駆動ホイール及び2つの遊動ホイールなど、代替の実施形態が考慮され得る。
【0032】
図5は、図4による器具給送デバイスを貫いた断面図である。ウォームギア及び遊動ホイールは取り外され、遊動ホイールを医療器具に向けて保持するラチェット機構を示している。この機構は、筐体壁と同一面の押ボタン312を含む。このボタンは、ヒンジ式シャフト401、バネ部分402、及び突出したラチェット部分406を含む。押ボタンは、押ボタンにおける一方の端部のヒンジ式シャフト401において、筐体壁にヒンジ式に留められる。ばね部分402は、ヒンジ式シャフトから突出し、押ボタンを図5に示される位置に向けて押し込むよう促す。さらに、この機構はキー403を含む。キー403は、ラチェット部分406の歯が付いた経路に係合する箇所405を含む。押ボタンが押し下げられたとき、遊動ホイールは、医療器具に対して押圧されることになり、さらに医療器具を駆動ホイールに対して押圧する。同時に、このキーは歯が付いた部分に沿って摺動して、ラチェット部分に係止されることになる。それによって、オペレータが押ボタンにかかる圧力を解除したときに、遊動ホイールが戻るのを防止する。この位置において、オペレータは、例えばフットペダルを使用してモータを操作し、医療器具を位置付ける。器具が適切に位置付けられたとき、クラッチ機構は解除され得る。これは、解除ボタン313を押し下げることによって成される。このボタンは図に示されないが、十字形状の突起407に取り付けられる。このボタンを押し下げることによって、ラチェット部分は曲げられてキーとの係合から外れる。次に、遊動ホイールを伴う押ボタン、及びキーは、当初位置に嵌まり込み、かつ医療器具の把持を解除する。
【0033】
重要な要件は、体の中に挿入されるとき、医療器具は当初清潔であることである。清潔な医療器具を体の中に給送するとき、医療器具に接触する器具給送デバイスの全ての部品も清潔でなければならず、そうでなければその接触は、医療器具の清潔な特性を失わせることになり、すなわち医療器具は汚染されることになる。したがって、内視鏡処置の開始において、関わる全ての部品は、清潔であるかまたは洗浄しなければならない。処置が終了したとき、医療器具及び給送デバイスの両方は汚染されることになる。器具は洗浄され得る。しかしその後に、清潔ではない器具給送デバイスを洗浄することは困難かつ高価である。
【0034】
この課題を回避するために、本発明の器具給送デバイスは、好ましくは使い捨てのデバイスである。器具給送デバイスは、以前に決して使用されていない清潔な状況で、使用する箇所に提供される。使用後、器具給送デバイスは一般的に廃棄され、未使用の器具給送デバイスが、次の内視鏡処置に使用される。有利には、使用後に各器具給送デバイスを殺菌する必要はない。
【0035】
各器具給送デバイスは、1回の使用後に処理されるので、好ましくは器具給送デバイスの製造コストが下げられる。したがって、実施形態による器具給送デバイスは、好ましくは低コストの構成要素から成る。
【0036】
図6aは、システムのコストを下げるよう設計された、本発明の実施形態を示す。この目的のため、器具給送デバイスは、2つの部品、すなわちギア部分604及び分離した給送カセット605を含む。給送カセットのみが、各検査サイクルの後に処理される。ギア部分604は、駆動機構と、押ボタン313及び開示ボタン312を伴うクラッチ機構と、を含む。駆動は、駆動ケーブル601(またはモータからの別のシャフト)を介して送られ、2つのアウトプットシャフト602及び603を介して給送カセット605に伝達される。このカセットは、医療器具、及びこの器具を通して給送するための駆動ホイールを受け入れるための、インプットポート及びアウトプットポート301a、301bを含む。図6bは、ギア部分に取り付けられたカセットを示す。
【0037】
図7は、給送カセットの内部構成要素を示す図である。この実施形態は、前の実施形態と同じ構成の、1つのみの駆動ホイール704及び1つのみの遊動ホイール703を使用し、各々は、アウトプットシャフト602及び603に係合するよう適応された、軸707及び706を伴う。上部の軸は、各端部で楕円形の穴705に支持され、遊動ホイールが穴に沿って動かされるのを可能にする。
【0038】
図8aは、ギア部分を貫いた断面図である。上部軸がその上部位置にあり、それは給送カセットが医療器具と係合しないことを意味する。押ボタン312は、上部のアウトプットシャフト602におけるスロットと係合する突出部分を含む。解除ボタン313はキー802を含む。キー802は、ラチェット803を押ボタン312の突出部分に係合するよう、適応される。
【0039】
図8bは、押ボタン312が押し下げられた、ギア部分を示す。このボタンは、ヒンジ部804においてカプセルにヒンジ式に留められ、突出部分は、上部シャフト602を強制的に下げ、その一方でキー802はラチェットに係合して、押ボタンをその押し下げ位置に係止する。
【0040】
図8cにおいて、解除ボタンがヒンジ部801においてカプセルにヒンジ式に留められているので、解除ボタン313は押し下げられ、キー802をラチェットの係合から外す。次に上部シャフト602は、その当初位置に戻る。
【0041】
図9a、図9bは、いかにして押ボタン312が上部シャフト602に係合して、シャフトのスロットに入るかを示す。
【0042】
しかし、2つの駆動ホイール及び1つまたは2つの遊動ホイールを伴うバージョンも、分離した給送カセットを使用して設計され得る。
【0043】
新しい給送デバイスの開発中に、図2図9に示される実施形態は、いくつかの長所及び短所を有することが判った。第1に、パターン化された外側層を伴う軟質の駆動ホイールは、十分な把持力を器具ケーブルに提供し、3つのホイール設計を省くのを可能にし、すなわち遊動ホイールに直接対向して配置された単一の駆動ホイールは、医療デバイスに十分な牽引力を提供する。特別な状況においてのみ、2つの駆動ホイール及び1つの遊動ホイール、または2つの遊動ホイール及び単一の駆動ホイールを伴う反対の構成の使用が、必要となり得る。別の代替は、2つの駆動ホイール及び2つの遊動ホイールを、このような状況において使用することである。第2に、クラッチのためのラチャット機構は、十分な信頼性を証明しなかった。したがって、図10図15に例示されるような、給送デバイスの第3の実施形態が開発された。
【0044】
図10は、新しいデバイスの外観図である。それは、医療器具のためのインプットポート1001aと、内視鏡システムの器具チャネルの中に挿入されることが意図されたアウトプットポート1001bと、を伴う外部ハウジングを含む。この給送デバイスは、図示しないが駆動シャフトの接触部、及びクラッチを操作するための回転ボタン1012も含む。必要に応じて、このボタンは当然ながらレバーと交換され得る。
【0045】
図11は、給送デバイスの内部を示す図である。この駆動機構は、ギアはめ歯歯車1108と み合う、ウォームねじ1109を含む。ウォームねじは、駆動モータに装着するための六角ソケット1102を含む。はめ歯歯車1108は、駆動ホイール1103を駆動するシャフト1107に接続される。駆動ホイール1103に対向して、遊動ホイール1110が存在する。遊動ホイールは、スピンドル1111上を自由に回転する。このスピンドルは、回転補端1012によって操作され、遊動ホイールを駆動ホイールに向けてずらし、これらホイール間を通過する医療デバイスに係合し、クラッチとして作用する。
【0046】
図12は、クラッチ機構の配置を示す、給送デバイスを貫いた断面図である。回転ボタン1012は、スピンドル1111と係合する中空のステム部1214を含む。このボタンは、ボタンを強制的に上に向ける第1のばね1215に対して、スピンドル上で上下に摺動し得る。このボタンは、スピンドル上の対応したリブに係合するいくつかのノッチ1417(図14)を介して、スピンドルを回すよう適応される。このボタンは、丸みを帯びたノブ1213を含む。丸みを帯びたノブ1213は、回転したときに、ハウジングの上部分におけるテーパーが付いた突起に対して摺動し、ボタン1012及びステム部1214を、ばね1215の力に対抗して強制的に下方に向ける。ボタンが時計回りに完全に回されたとき、ノブ1213は、テーパーが付いた突起の縁部を越えて通り、スナップバックする。したがって、ボタンは突起によって止められ、ボタンが再び押し下げられてノブが縁部を越えて通るのを可能にするまで、ボタンが戻るのを防止する。この保持機構は、より詳細に図15に示される。スピンドル1111は、平バネ1216の力に対抗して、ボタン1012によって回される。このばねはスピンドルに係合する。
【0047】
図13は、給送デバイスを貫いた、対応した断面である。この断面は、図12に示される断面に対して垂直方向である。駆動ホイール1103と遊動ホイール1010との間において、医療器具が通過する入口ゲート1001a及び出口ゲート1001bと一致した、空間1316が存在する。スピンドル1111の下部分1111aは偏心しており、すなわちスピンドルの主部分1111bの中心線からずらして取り付けられ、デバイスのハウジングを横断した壁1320において、弓状の凹部または切欠き部1319の中に進むことに留意されたい。
【0048】
図14は、回転ボタン1012を詳細に示す。中空のステム部1214において、いくつかのノッチ1417が存在する。このステム部は、丸みを帯びたノブ1213も含む。
【0049】
図15は、給送デバイスに設定された回転ボタンを示す図である。ノブ1213は、丸みを帯びた部分1521を有し、それは、ハウジングの内側のテーパーが付いた突起1522に対して摺動するよう適応される。図は、スピンドル1111におけるリブ1523も示す。それは、回転ボタン1012のステム部分1214における対応したノッチ1417(図14)と係合する。
【0050】
他の全ての点において、図10図15に示される給送デバイスの実施形態は、図2図5に示される第1の実施形態と同じ方法で設計される。とりわけ、これは駆動ホイール及び遊動ホイールの設計、及びいかしにてデバイスが操作されるか、に関する。さらに、図6図9に示されるカセットのソリューションは、この実施形態にも含まれ得る。図10図15に示される実施形態が、関連した遊動ホイールを伴う1つの駆動ホイールのみを含む一方で、2対以上の駆動ホイール及び遊動ホイールを伴う他のバージョンが、実現され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8a
図8b
図8c
図9a
図9b
図10
図11
図12
図13
図14
図15