IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フェムトセカンド リサーチ センター カンパニー、リミテッドの特許一覧

特許7525938マルチモード信号収集装置及び方法、レーザー画像システム
<>
  • 特許-マルチモード信号収集装置及び方法、レーザー画像システム 図1
  • 特許-マルチモード信号収集装置及び方法、レーザー画像システム 図2
  • 特許-マルチモード信号収集装置及び方法、レーザー画像システム 図3
  • 特許-マルチモード信号収集装置及び方法、レーザー画像システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】マルチモード信号収集装置及び方法、レーザー画像システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20240724BHJP
   G02B 21/06 20060101ALN20240724BHJP
   G02B 21/36 20060101ALN20240724BHJP
【FI】
G01N21/64 F
G01N21/64 Z
G02B21/06
G02B21/36
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022570364
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 CN2021117247
(87)【国際公開番号】W WO2022057711
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】202010977384.8
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520097319
【氏名又は名称】フェムトセカンド リサーチ センター カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FEMTOSECOND RESEARCH CENTER CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】XU, Bingwei Unit 616-618, Zone A, Guangzhou High-TechInnovation Center, No. 80 Lanyue Road, Huangpu District Guangzhou, Guangdong 510000 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】朱 欣
(72)【発明者】
【氏名】徐 炳蔚
(72)【発明者】
【氏名】鐘 華
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101650299(CN,A)
【文献】特表2017-504019(JP,A)
【文献】特表2016-512345(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0196246(US,A1)
【文献】特開2004-341204(JP,A)
【文献】特開2020-020791(JP,A)
【文献】特表2020-514775(JP,A)
【文献】GNANATHEEPAM EINSTEIN ET AL.,Live cell metabolic imaging of cancer cell lines using multiphoton fluorescence polarization,PROGRESS IN BIOMEDICAL OPTICS AND IMAGING,2020年02月14日,Vol.11244,pp.1-,DOI: 10.1117/12.2545847
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62-21/74
G01J 3/00-3/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチモード信号収集装置であって、レーザーパルスをサンプルに照射することによって生成されるマルチモード信号を収集することに用いられ、互いに接続される独立チャネル収集モジュール及びスペクトル信号処理装置を備え、
前記独立チャネル収集モジュール内に複数の独立したスペクトル信号収集チャネルが設けられ、各スペクトル信号収集チャネルはそれぞれマルチモード信号中の特定バンドのスペクトル信号に対応し、前記マルチモード信号は、FAD分子及びNADH分子によって生成された蛍光スペクトル信号を含み、前記スペクトル信号収集チャネルは、FAD信号収集チャネル及びNADH信号収集チャネルを含み、
特定バンドのレーザーパルスをサンプルに照射することによってマルチモード信号を生成した後、各前記スペクトル信号収集チャネルはそれぞれ前記マルチモード信号を収集し、前記マルチモード信号から対応する特定バンドのスペクトル信号のみを取り出し、該スペクトル信号を前記スペクトル信号処理装置に送信し、
前記スペクトル信号処理装置は、それぞれ各スペクトル信号収集チャネルによって収集されたスペクトル信号を受信し、前記NADH信号収集チャネルによって収集されたスペクトル信号に対してデコンボリューション分離処理を行わない一方、前記FAD信号収集チャネルによって収集されたスペクトル信号に対してデコンボリューション分離処理を行い、FAD蛍光信号とNADH蛍光信号のスペクトル信号強度を分離し、FAD蛍光信号中のNADH蛍光信号干渉を除去し、純粋なFAD蛍光信号を得、それぞれ各スペクトル信号に対してイメージング及び重ね合わせ出力を行い、
前記スペクトル信号処理装置によるデコンボリューション分離処理は以下の式
FAD =H FAD -a×H NADH
を含み、
式中、T FAD はFAD信号収集チャネルにおける純粋なFAD蛍光信号であり、H FAD はFAD信号収集チャネルのトータル信号であり、aは設定された係数であり、H NADH はNADH信号収集チャネルのトータル信号であることを特徴とするマルチモード信号収集装置。
【請求項2】
前記独立チャネル収集モジュールは並列に設けられる複数組の光学デバイスを備え、各光学デバイスは1つの独立したスペクトル信号収集チャネルに対応し、前記光学デバイスはビームスプリッタ又はフィルタを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチモード信号収集装置。
【請求項3】
前記マルチモード信号は、レーザーパルスの調波信号をさらに含み、前記スペクトル信号収集チャネルは、調波信号収集チャネルを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチモード信号収集装置。
【請求項4】
マルチモード信号収集方法であって、レーザーパルスをサンプルに照射することによって生成されるマルチモード信号を収集することに用いられ、
複数の独立したスペクトル信号収集チャネルを用いて前記マルチモード信号をそれぞれ収集し、前記マルチモード信号は、FAD分子及びNADH分子によって生成された蛍光スペクトル信号を含み、前記スペクトル信号収集チャネルは、FAD信号収集チャネル及びNADH信号収集チャネルを含むことと、
前記マルチモード信号から対応する特定バンドのスペクトル信号のみを取り出すことであって、各スペクトル信号収集チャネルはそれぞれマルチモード信号中の1種の特定バンドのスペクトル信号に対応することと、
各スペクトル信号収集チャネルによって収集されたスペクトル信号をそれぞれ取得し、前記NADH信号収集チャネルによって収集されたスペクトル信号に対してデコンボリューション分離処理を行わない一方、前記FAD信号収集チャネルによって収集されたスペクトル信号に対してデコンボリューション分離処理を行い、FAD蛍光信号とNADH蛍光信号のスペクトル信号強度を分離し、FAD蛍光信号中のNADH蛍光信号干渉を除去し、純粋なFAD蛍光信号を得、各スペクトル信号に対してそれぞれイメージング及び重ね合わせ出力を行うことと、を含み、
デコンボリューション分離処理は以下の式
FAD =H FAD -a×H NADH
を含み、
式中、T FAD はFAD信号収集チャネルにおける純粋なFAD蛍光信号であり、H FAD はFAD信号収集チャネルのトータル信号であり、aは設定された係数であり、H NADH はNADH信号収集チャネルのトータル信号であることを特徴とするマルチモード信号収集方法。
【請求項5】
レーザーパルスに対してスペクトル調整を行い、レーザーパルスのスペクトル信号のバンド範囲を調整することによって、レーザーパルスが前記サンプルと相互作用して生成した調波信号がサンプルの蛍光分子のスペクトル範囲と重ならないことをさらに含む、ことを特徴とする請求項に記載のマルチモード信号収集方法。
【請求項6】
レーザー画像システムであって、レーザー光源、スペクトル調整モジュール及び、請求項1~のいずれか一項に記載のマルチモード信号収集装置を備え、
前記レーザー光源は、レーザーパルスを生成することに用いられ、
前記スペクトル調整モジュールは、前記レーザーパルスのスペクトル範囲を調整して複数のバンドを含むレーザーパルスを得て、レーザーパルスをサンプルに照射することによってバンドが重ならないマルチモード信号を生成することに用いられ、
前記マルチモード信号収集装置は、独立した複数のスペクトル信号収集チャネルによって前記マルチモード信号をそれぞれ収集し、特定バンドのスペクトル信号のみを取り出してイメージング処理を行うことに用いられる、ことを特徴とするレーザー画像システム。
【請求項7】
前記スペクトル調整モジュールはさらに、前記レーザーパルスから各種のバンドのスペクトル信号を分離し、前記スペクトル信号のバンドに対してスペクトル調整を行うことによって、前記レーザーパルスが前記サンプルと相互作用してバンドが重ならないマルチモード信号を生成することに用いられる、ことを特徴とする請求項に記載のレーザー画像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はレーザーの技術分野に関し、特にマルチモード信号収集装置及び方法、レーザー画像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発明者は、レーザー非線形顕微鏡技術では、特別なスペクトルのレーザー光源が使用されることに気づき、例えば、中国特許出願第201710916860.3号では、フェムト秒レーザーパルスとしてレーザー光源が使用され、光学ユニットによってフェムト秒レーザーパルスをサンプルに照射し、レーザー信号とサンプルが作用してマルチモード信号を形成し、その後、信号収集装置によってマルチモード信号を収集し、複数種の非線形分子画像モードを得る。
【0003】
しかしながら、一般的な技術的手段では、マルチモード信号には、レーザーパルスの調波及び蛍光信号を含む複数種のバンドのスペクトルが含まれ、収集装置がこれらのスペクトル信号を収集する際に、異なるバンドのスペクトル情報は重なり、分離が困難であり、一方、モード別に順次収集するという技術的手段を採用する場合、キャリブレーション偏差が導入されることが多く、イメージング効果を損なってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願は、上記技術的欠陥の1つ、特にイメージングキャリブレーション偏差及びイメージング効果を損なう欠陥を解決し、マルチモード信号収集装置及び方法、レーザー画像システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
マルチモード信号収集装置であって、レーザーパルスをサンプルに照射することによって生成されるマルチモード信号を収集することに用いられ、互いに接続される独立チャネル収集モジュール及びスペクトル信号処理装置を備え、
前記独立チャネル収集モジュール内に複数の独立したスペクトル信号収集チャネルが設けられ、各スペクトル信号収集チャネルはそれぞれマルチモード信号中の特定バンドのスペクトル信号に対応し、前記マルチモード信号は、FAD分子及びNADH分子によって生成された蛍光スペクトル信号を含み、前記スペクトル信号収集チャネルは、FAD信号収集チャネル及びNADH信号収集チャネルを含み、
特定バンドのレーザーパルスをサンプルに照射することによってマルチモード信号を生成した後、各前記スペクトル信号収集チャネルはそれぞれ前記マルチモード信号を収集し、前記マルチモード信号から対応する特定バンドのスペクトル信号のみを取り出し、該スペクトル信号を前記スペクトル信号処理装置に送信し、
前記スペクトル信号処理装置は、それぞれ各スペクトル信号収集チャネルによって収集されたスペクトル信号を受信し、前記NADH信号収集チャネルによって収集されたスペクトル信号に対してデコンボリューション分離処理を行わない一方、前記FAD信号収集チャネルによって収集されたスペクトル信号に対してデコンボリューション分離処理を行い、FAD蛍光信号とNADH蛍光信号のスペクトル信号強度を分離し、FAD蛍光信号中のNADH蛍光信号干渉を除去し、純粋なFAD蛍光信号を得、それぞれ各スペクトル信号に対してイメージング及び重ね合わせ出力を行い、
前記スペクトル信号処理装置によるデコンボリューション分離処理は以下の式
FAD =H FAD -a×H NADH
を含み、
式中、T FAD はFAD信号収集チャネルにおける純粋なFAD蛍光信号であり、H FAD はFAD信号収集チャネルのトータル信号であり、aは設定された係数であり、H NADH はNADH信号収集チャネルのトータル信号である
【0006】
一実施例では、前記独立チャネル収集モジュールは並列に設けられる複数組の光学デバイスを備え、各光学デバイスは1つの独立したスペクトル信号収集チャネルに対応し、前記光学デバイスはビームスプリッタ又はフィルタを含む。
【0007】
一実施例では、前記マルチモード信号は、レーザーパルスの調波信号、FAD分子及びNADH分子によって生成された蛍光スペクトル信号を含み、前記スペクトル信号収集チャネルはそれぞれ対応して調波信号収集チャネル、FAD信号収集チャネル及びNADH信号収集チャネルである。
【0008】
一実施例では、前記スペクトル信号処理装置はさらに、FAD分子蛍光収集チャネルによって収集されたスペクトル信号に対してデコンボリューション分離処理を行い、FAD蛍光信号とNADH蛍光信号のスペクトル信号強度を分離し、FAD蛍光信号中のNADH蛍光信号干渉を除去し、純粋なFAD蛍光信号を得る。
【0009】
一実施例では、前記スペクトル信号処理装置によるデコンボリューション分離処理は、以下の式
FAD=HFAD-a×HNADH
を含む。
式中、TFADはFAD信号収集チャネルにおける純粋なFAD蛍光信号であり、HFADはFAD信号収集チャネルのトータル信号であり、aは設定された係数であり、HNADHはNADH信号収集チャネルのトータル信号である。
【0010】
マルチモード信号収集方法であって、レーザーパルスをサンプルに照射することによって生成されるマルチモード信号を収集することに用いられ、
複数の独立したスペクトル信号収集チャネルを用いて前記マルチモード信号をそれぞれ収集し、前記マルチモード信号は、FAD分子及びNADH分子によって生成された蛍光スペクトル信号を含み、前記スペクトル信号収集チャネルは、FAD信号収集チャネル及びNADH信号収集チャネルを含むことと、
前記マルチモード信号から対応する特定バンドのスペクトル信号のみを取り出すことであって、各スペクトル信号収集チャネルはそれぞれマルチモード信号中の1種の特定バンドのスペクトル信号に対応することと、
各スペクトル信号収集チャネルによって収集されたスペクトル信号をそれぞれ取得し、前記NADH信号収集チャネルによって収集されたスペクトル信号に対してデコンボリューション分離処理を行わない一方、前記FAD信号収集チャネルによって収集されたスペクトル信号に対してデコンボリューション分離処理を行い、FAD蛍光信号とNADH蛍光信号のスペクトル信号強度を分離し、FAD蛍光信号中のNADH蛍光信号干渉を除去し、純粋なFAD蛍光信号を得、各スペクトル信号に対してそれぞれイメージング及び重ね合わせ出力を行うことと、を含み、
デコンボリューション分離処理は以下の式
FAD =H FAD -a×H NADH
を含み、
式中、T FAD はFAD信号収集チャネルにおける純粋なFAD蛍光信号であり、H FAD はFAD信号収集チャネルのトータル信号であり、aは設定された係数であり、H NADH はNADH信号収集チャネルのトータル信号である
【0011】
一実施例では、レーザーパルスをサンプルに照射する前に、
複数種の異なるバンドを含むレーザーパルスをサンプルに照射することによって、前記レーザーパルスが前記サンプルと相互作用してバンドが重ならないマルチモード信号を生成することをさらに含む。
【0012】
一実施例では、前記マルチモード信号収集方法は、
レーザーパルスに対してスペクトル調整を行い、レーザーパルスのスペクトル信号のバンド範囲を調整することによって、レーザーパルスが前記サンプルと相互作用して生成した調波信号がサンプルの蛍光分子のスペクトル範囲と重ならないことをさらに含む。
【0013】
レーザー画像システムであって、レーザー光源、スペクトル調整モジュール及び前記マルチモード信号収集装置を備え、
前記レーザー光源は、レーザーパルスを生成することに用いられ、
前記スペクトル調整モジュールは、前記レーザーパルスのスペクトル範囲を調整して複数のバンドを含むレーザーパルスを得て、レーザーパルスをサンプルに照射することによってバンドが重ならないマルチモード信号を生成することに用いられ、
前記マルチモード信号収集装置は、独立した複数のスペクトル信号収集チャネルによって前記マルチモード信号をそれぞれ収集し、特定バンドのスペクトル信号をフィルタアウトしてイメージング処理を行うことに用いられ、
前記マルチモード信号収集装置はさらに、レーザーパルスをサンプルに照射することによって生成されるマルチモード信号を収集することに用いられ、互いに接続される独立チャネル収集モジュール及びスペクトル信号処理装置を備え、
前記独立チャネル収集モジュール内に複数の独立したスペクトル信号収集チャネルが設けられ、各スペクトル信号収集チャネルはそれぞれマルチモード信号中の特定バンドのスペクトル信号に対応し、
特定バンドのレーザーパルスをサンプルに照射することによってマルチモード信号を生成した後、各前記スペクトル信号収集チャネルはそれぞれ前記マルチモード信号を収集し、前記マルチモード信号から対応する特定バンドのスペクトル信号のみ取り出して該スペクトル信号を前記スペクトル信号処理装置に送信し、
前記スペクトル信号処理装置はそれぞれ各スペクトル信号収集チャネルによって収集されたスペクトル信号を受信し、それぞれ各スペクトル信号に対してイメージング及び重ね合わせ出力を行う。
【0014】
一実施例では、前記スペクトル調整モジュールはさらに、前記レーザーパルスから各種のバンドのスペクトル信号を分離し、前記スペクトル信号のバンドに対してスペクトル調整を行うことによって、前記レーザーパルスが前記サンプルと相互作用してバンドが重ならないマルチモード信号を生成することに用いられる。
【0015】
上記マルチモード信号収集装置及び方法、レーザー画像システムの技術的手段によれば、レーザー光源を制御して特定バンドのレーザーパルスをサンプルに照射することによって複数種の異なるバンドを含むマルチモード信号を生成し、対応する独立スペクトルチャネルを設けてこれらのマルチモード信号を収集し、それによって異なるモードでのスペクトル信号を同時に収集でき、各モードで収集したスペクトル信号を効果的に分離し、イメージング中のキャリブレーション偏差を回避し、各モードスペクトル信号に対応する分子又は構造情報を画像上で直交させ、後続のイメージングシステムのイメージング効果を向上させる。
【0016】
また、レーザーパルスを使用する前に、レーザー光源が出力するレーザーパルスに対してスペクトル調整を行うことによって複数種の異なるバンドのスペクトル信号を生成し、レーザーパルスのバンド範囲によってレーザーパルスが前記サンプルと相互作用して生成した調波信号がサンプルの蛍光分子のスペクトル範囲と重ならないことを確保し、励起レーザーパルスのスペクトル信号のバランスが取れ、蛍光分子を効果的かつ効率的に積分して蛍光信号を生成することを実現したうえで、様々なモードでのスペクトル信号の効果的な分離を確保する。
【0017】
なお、FAD及びNADHについて、FAD信号収集チャネルとNADH信号収集チャネルを用いてFAD蛍光信号とNADH蛍光信号を収集し、FAD分子蛍光収集チャネルによって収集されたスペクトル信号に対してデコンボリューション分離処理を行い、簡単な演算方式だけでFAD蛍光信号中のNADH蛍光信号干渉を除去して純粋なFAD蛍光信号を得ることができ、収集した信号の処理速度を高め、イメージング効率を向上させる。
【0018】
本願の付加的態様及び利点は以下の説明において部分的に記載されており、これらは以下の説明から明らかになるか、又は本願の実践によって把握される。
【0019】
本願の上記及び/又は付加的な態様及び利点は図面を参照する以下の実施例の説明から明らかになり、理解されやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本願の一実施例に係るマルチモード信号収集装置の構造模式図である。
図2】本願の一実施例に係る独立チャネル収集モジュールの構造模式図である。
図3】本願の一実施例に係るマルチモード信号収集方法のフローチャートである。
図4】本願の一実施例に係るレーザー画像システムの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本願の実施例を詳細に説明し、前記実施例の例示は図面に示され、全明細書を通して同じ又は類似する符号は同じ又は類似する素子、或いは同じ又は類似する機能を有する素子を示す。以下、図面を参照しながら説明される実施例は例示的であり、単に本願を解釈することに用いられるが、本願を限定するものではないと解釈すべきである。
【0022】
当業者が理解できるように、特に断らない限り、ここで使用される単数形「一」、「1つ」、「前記」及び「該」は複数形を含んでもよい。さらに理解すべきであるように、本願の明細書に使用される用語「含む」とは、前記特徴、整数、ステップ、操作が存在するが、1つ又は複数のほかの特徴、整数、ステップ、操作が存在する又は追加されることを除外しないことである。
【0023】
図1に示すように、図1は本願におけるマルチモード信号収集装置の構造模式図であり、該マルチモード信号収集装置は、レーザーパルスをサンプルに照射することによって生成されるマルチモード信号を収集することに用いられ、例えば、フェムト秒レーザーパルスを用いてサンプルを検出するシーンでは、主として、互いに接続される独立チャネル収集モジュール及びスペクトル信号処理装置を備える。図1に示すように、該収集シーンでは、レーザー光源でフェムト秒レーザーパルスを生成し、フェムト秒レーザーパルスを対応する光学デバイスで導出してサンプルプラットフォームにおけるサンプルに照射し、該フェムト秒レーザーパルスはサンプルの分子と相互作用してバンドが重ならない又は部分的に重なるマルチモード信号を生成し、一般的には、マルチモード信号は調波及び特定分子の蛍光信号を含み、調波は、2次調波、3次調波さらには4次調波以上に分けられてもよく、各チャネルの調波のバンドは重ならず、特定分子の蛍光信号の場合、分子の特性により部分的に重なる可能性がある。
【0024】
独立チャネル収集モジュールによってこれらのマルチモード信号を収集し、独立チャネル収集モジュール内には、図1におけるチャネル1-N(N≧2)のような複数の独立したスペクトル信号収集チャネルが設けられ、各スペクトル信号収集チャネルはそれぞれマルチモード信号中の特定バンドのスペクトル信号に対応する。
【0025】
動作過程では、レーザー光源は複数種の特定バンドを含むレーザーパルスをサンプルに照射し、レーザーパルスはサンプルと相互作用して複数種の異なるバンドを含むマルチモード信号を生成し、各スペクトル信号収集チャネルはそれぞれマルチモード信号を収集し、マルチモード信号から対応する特定バンドのスペクトル信号をフィルタアウトし、該スペクトル信号をスペクトル信号処理装置に送信し、スペクトル信号処理装置は各スペクトル信号収集チャネルによって収集されたスペクトル信号をそれぞれ受信し、各スペクトル信号に対してそれぞれイメージング及び重ね合わせ出力を行う。
【0026】
上記実施例の手段によれば、レーザー光源を制御して特定バンドのレーザーパルスをサンプルに照射することによって複数種の異なるバンドを含むマルチモード信号を生成し、対応する独立スペクトルチャネルを設けてこれらのマルチモード信号を収集し、それによって異なるモードでのスペクトル信号を同時に収集でき、各モードで収集したスペクトル信号を効果的に分離し、各モードスペクトル信号に対応する分子又は構造情報を画像上で直交させ、後続のイメージングシステムのイメージング効果を向上させる。
【0027】
以下、図面を参照しながら本願の技術的手段のより多くの実施例を説明する。
【0028】
一実施例では、図2に示すように、図2は独立チャネル収集モジュールの構造模式図であり、該独立チャネル収集モジュールは並列に設けられる複数組の光学デバイスを含み、各光学デバイスは1つの独立したスペクトル信号収集チャネルに対応し、前記光学デバイスはビームスプリッタ又はフィルタを含む。
【0029】
具体的には、各独立チャネルにスペクトル信号を行う1つの光学デバイスが設けられ、例えば、ビームスプリッタ、フィルタ等が挙げられ、各光学デバイスはいずれも特定バンドのスペクトル信号をフィルタアウトし、ほかのバンドのスペクトル信号を除去し、図2に示すように、5組の並列するビームスプリッタ1~5が設けられ、5つの収集チャネルに対応し、5つの重ならないバンドのスペクトル信号を独立して収集することができる。
【0030】
一実施例では、本願はさらにFAD(Flavin adenine dinucleotide、フラビンアデニンジヌクレオチド)信号及びNADH(Nicotinamide adenine dinucleotide、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)信号に対する収集手段を設計している。通常、FAD及びNADH分子の観察は異なる光学プロセスを使用し、例えば、それぞれ2光子及び3光子蛍光物理プロセスを使用して励起した後に信号を収集し、本願は同じ物理プロセスを使用することで、中間プロセスの偏差や変数を回避し、従って、これをもとに、信号比例関係に応じて、収集したスペクトル信号に対してデコンボリューション分離を行い、アルゴリズムからFADとNADHのスペクトル信号強度を分離する方法を提供することができる。
【0031】
具体的には、非線形スペクトル信号のバンドのため、一部は組織分子自体の特性に関連し、例えば自己蛍光分子が発する蛍光バンドは蛍光分子自体の分子式及び構造に関連するが、残りの部分は励起されたレーザー光源のバンドに関連し、例えばレーザーパルスの調波信号のバンドはレーザーパルスのバンドと倍数関係を有する。
【0032】
上述したように、本願におけるマルチモード信号は以下を含んでもよい。
【0033】
本実施例では、マルチモード信号は、レーザーパルスの調波信号、FAD分子及びNADH分子によって生成される蛍光スペクトル信号等を含んでもよい。これに対応して、スペクトル信号収集チャネルは、それぞれ対応して、調波信号(2次調波、3次調波さらには4次調波以上)収集チャネル、FAD信号収集チャネル及びNADH信号収集チャネルである。重ならない調波信号は独立したチャネルによって収集され、部分的に重なるFAD及びNADH蛍光信号はほかの手段によって処理される。
【0034】
具体的には、細胞のエネルギー代謝に直接関連する補酵素分子は、大きな臨床的意義を有する可能性があり、実際の収集手段では、独立した収集チャネルによって各チャネルのスペクトル信号間の相互影響を回避でき、分子自体の特性の影響によって、FAD分子とNADH分子の蛍光スペクトルは部分的に重なるが、FAD信号とNADH信号の具体的な収集バンドは既知であり、従って、既知のバンドでは両者の光学信号に関数関係があり、これをもとに、FAD分子とNADH分子に対応する収集チャネルのスペクトル信号に対して分離処理を行うことによって相互影響を回避する。
【0035】
FAD蛍光信号及びNADH蛍光信号の研究によると、NADH収集チャネル内にFAD蛍光信号はないが、FAD収集チャネル内にNADH蛍光信号があるため、FAD信号からNADH蛍光信号の干渉を除去するようにFAD収集チャネル内のスペクトル信号を分離する必要がある。
【0036】
これに基づいて、スペクトル信号処理装置は対応するアルゴリズムによって、FAD分子蛍光収集チャネルで収集されたスペクトル信号に対してデコンボリューション分離処理を行い、FAD蛍光信号とNADH蛍光信号のスペクトル信号強度を分離し、FAD蛍光信号中のNADH蛍光信号干渉を除去し、純粋なFAD蛍光信号を得る。
【0037】
具体的には、スペクトル信号処理装置によるデコンボリューション分離処理は以下の式
FAD=HFAD-a×HNADH
を含んでもよい。
式中、TFADはFAD信号収集チャネルにおける純粋なFAD蛍光信号であり、HFADはFAD信号収集チャネルのトータル信号であり、aは設定された係数であり、HNADHはNADH信号収集チャネルのトータル信号である。
【0038】
上記のようにレーザーパルスの異なるバンドのスペクトル信号を調整することによって、各収集チャネルのスペクトル信号間の相互影響を大まかに回避できるが、蛍光スペクトルが分子自体の特性によって決められるため、検出を行ったところ、FADとNADHの2種の分子の蛍光スペクトルは依然として部分的に重なっている。
【0039】
そして、選択したNADHの収集チャネルのスペクトル範囲内にFADの蛍光信号はないが、FAD収集チャネルのスペクトル範囲内にNADHの蛍光信号の干渉がある。本願の技術的手段は、FAD収集チャネル内で収集したスペクトル信号に対してデコンボリューション分離を行うことによって、アルゴリズムからFADとNADHのスペクトル信号強度を分離する。
【0040】
本願の手段は、実測においてNADH収集チャネルとFAD収集チャネル内のNADH信号に存在する比例関係を利用する。上記スペクトル信号に対するバンド調整によって、FAD収集チャネル内で収集されたFAD信号及びNADH信号がいずれもレーザーピーク電力のn(n≧2)乗に比例することを確保する場合、FAD信号及びNADH信号が加算の意味を有することを確保することができ、即ち、上記計算式によってFADチャネル内のFAD及びNADH混合信号に対してデコンボリューションを行い、純粋なFAD信号を分離することができる。
【0041】
以下、本願におけるマルチモード信号収集方法の実施例を説明する。
【0042】
図3に示すように、図3は本願におけるマルチモード信号収集方法のフローチャートであり、レーザーパルスをサンプルに照射することによって生成されるマルチモード信号を収集することに用いられ、主として、
S101、複数の独立したスペクトル信号収集チャネルを用いて前記マルチモード信号をそれぞれ収集することと、
S102、前記マルチモード信号から対応する特定バンドのスペクトル信号をフィルタアウトすることであって、各スペクトル信号収集チャネルはそれぞれマルチモード信号中の1種の特定バンドのスペクトル信号に対応することと、
S103、各スペクトル信号収集チャネルによって収集されたスペクトル信号をそれぞれ取得し、各スペクトル信号に対してそれぞれイメージング及び重ね合わせ出力を行うことと、を含む。
【0043】
上記実施例の手段によれば、レーザー光源を制御して特定バンドのレーザーパルスをサンプルに照射することによって、複数種の異なるバンドを含み且つバンドが重ならない又は部分的に重なるマルチモード信号を生成し、独立スペクトルチャネルを設けてこれらのマルチモード信号を収集し、それによって異なるモードでのスペクトル信号を同時に収集でき、各モードで収集したスペクトル信号を効果的に分離し、イメージング中のキャリブレーション偏差を回避し、各モードスペクトル信号に対応する分子又は構造情報を画像上で直交させ、後続のイメージングシステムのイメージング効果を向上させる。
【0044】
一実施例では、レーザーパルスを照射する時、複数種の異なるバンドを含むレーザーパルスをサンプルに照射することによってマルチモード信号を生成するようにしてもよい。さらに、レーザーパルス生成過程では、レーザーパルスをサンプルに照射する前に、レーザー光源が出力するレーザーパルスに対してスペクトル調整を行うことによって、複数種の異なるバンドを含むスペクトル信号を生成するようにしてもよく、レーザーパルスのバンド範囲を調整することによって、レーザーパルスが前記サンプルと相互作用して生成する調波信号はサンプルの蛍光分子のスペクトル範囲と重ならない。
【0045】
さらに、マルチモード信号収集方法はさらに対応するアルゴリズムによって、FAD分子蛍光収集チャネルで収集されたスペクトル信号に対してデコンボリューション分離処理を行い、FAD蛍光信号とNADH蛍光信号のスペクトル信号強度を分離し、FAD蛍光信号中のNADH蛍光信号干渉を除去し、純粋なFAD蛍光信号を得るようにしてもよい。
【0046】
具体的には、スペクトル信号処理装置によるデコンボリューション分離処理は以下の式
FAD=HFAD-a×HNADH
を含んでもよい。
式中、TFADはFAD信号収集チャネルにおける純粋なFAD蛍光信号であり、HFADはFAD信号収集チャネルのトータル信号であり、aは設定された係数であり、HNADHはNADH信号収集チャネルのトータル信号である。
【0047】
FAD蛍光信号及びNADH蛍光信号の収集手段について、上記マルチモード信号収集装置の実施例の手段と同じであり、ここでは重複説明を省略する。
【0048】
以下、本願におけるレーザー画像システムの実施例を説明する。
【0049】
図4に示すように、図4は本願におけるレーザー画像システムの構造模式図であり、本願におけるレーザー画像システムは、レーザー光源、スペクトル調整モジュール、及び上記いずれかの実施例におけるマルチモード信号収集装置を備え、前記マルチモード信号収集装置は主として独立チャネル収集モジュール及びスペクトル信号処理装置を備える。
【0050】
システムの動作中、レーザー光源はレーザーパルスを生成することに用いられ、スペクトル調整モジュールは前記レーザーパルスのスペクトル範囲を調整して複数の特定バンドを含むレーザーパルスを得て、レーザーパルスをサンプルに照射することによってバンドが重ならないマルチモード信号を生成することに用いられ、信号収集装置は、独立した複数のスペクトル信号収集チャネルによって前記マルチモード信号をそれぞれ収集し、特定バンドのスペクトル信号をフィルタアウトしてイメージング処理を行うことに用いられ、独立チャネル収集モジュールは、マルチモード信号を収集し、その中から対応する特定バンドのスペクトル信号をフィルタアウトし、スペクトル信号処理装置は各スペクトル信号に対してイメージング及び重ね合わせ出力を行う。
【0051】
スペクトル調整モジュールはさらに、レーザーパルスから各種のバンドのスペクトル信号を分離し、前記スペクトル信号のバンドに対してスペクトル調整を行うことによって、前記レーザーパルスが前記サンプルと相互作用してバンドが重ならないマルチモード信号を生成することに用いられてもよい。具体的には、液晶空間光変調器を備えたパルス整形器を用いてスペクトル調整を行い、レーザーパルスのスペクトル強度又は/及びスペクトル位相を制御することによってバンドの選択を実現するようにしてもよい。
【0052】
本実施例の技術的手段によれば、レーザーパルスを用いてマルチモード信号を生成する時、まず、スペクトル調整モジュールを使用してレーザー光源によって生成されたレーザーパルスに対してスペクトル調整を行い、1つ又は複数の特定バンドを含むレーザーパルスを生成し、これらの特定バンドのレーザーパルスをサンプルに集束し、レーザーパルスが前記サンプルと相互作用してマルチモード信号を生成し、その後、マルチモード信号を収集する時、独立した複数のスペクトル信号収集チャネルを使用して対応するバンドのスペクトル信号を収集し、それによって異なるモードでのスペクトル信号を同時に収集でき、各モードで収集したスペクトル信号を効果的に分離し、各モードスペクトル信号に対応する分子又は構造情報を画像上で直交させ、良好なイメージング効果を示す。
【0053】
また、本願の上記実施例に係るマルチモード信号収集装置を使用することによって、さらに簡単な計算プロセスによってFAD分子蛍光収集チャネルで収集されたスペクトル信号に対してデコンボリューション分離処理を行い、FAD蛍光信号とNADH蛍光信号のスペクトル信号強度を分離し、FAD蛍光信号中のNADH蛍光信号干渉を除去し、純粋なFAD蛍光信号を得ることができる。
【0054】
本願に係るレーザー画像システムでは、マルチモード信号は、スペクトル範囲が570ナノメートル~630ナノメートルの2次調波信号、スペクトル範囲が343ナノメートル~405ナノメートルの3次調波信号、スペクトル範囲が510ナノメートル~565ナノメートルの蛍光スペクトル信号、スペクトル範囲が410ナノメートル~490ナノメートルの蛍光スペクトル信号、及びスペクトル範囲が640ナノメートル~723ナノメートルの非線形ラマン信号を含む。
【0055】
当業者が理解できるように、別途定義されない限り、ここで使用されるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、当業者の一般的な理解と同じ意味を有する。さらに理解すべきであるように、例えば、汎用辞書で定義されたそれらの用語は、従来技術の文脈における意味と同じ意味を有すると理解されるべきであり、且つ、本明細書のように特に定義されない限り、理想的又は過度に公式な意味で解釈されることがない。
【0056】
上記は単に本願の一部の実施形態であり、ただし、当業者であれば本願の原理を逸脱せずに種々の改良や修飾を行うことができ、これらの改良や修飾も本願の保護範囲に属すると見なされるべきである。
図1
図2
図3
図4