(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】吸着剤再生方法および吸着剤再生システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20240724BHJP
B01D 53/047 20060101ALI20240724BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
B01D53/04 230
B01D53/047 ZAB
B01D53/96
(21)【出願番号】P 2023100802
(22)【出願日】2023-06-20
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】391061646
【氏名又は名称】株式会社流機エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 章
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-084417(JP,A)
【文献】特開2021-084096(JP,A)
【文献】特開2011-251250(JP,A)
【文献】特開2007-245039(JP,A)
【文献】特開2005-066503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34 - 53/73
B01D 53/74 - 53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
B01D 53/02 - 53/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染空気の浄化に用いた使用済みの吸着剤を再生する方法であって、
再生装置の内部のフィルタに添着した使用済みの前記吸着剤に蒸気を当てて前記吸着剤を加熱し、前記吸着剤が吸着していた前記汚染物質を放出させる加熱工程と、
前記フィルタが格納された再生装置の内部を真空状態にして、加熱後の前記吸着剤が有する前記汚染物質の残部および水分を除去する真空工程と、
を有することを特徴とする吸着剤再生方法。
【請求項2】
複数台の前記再生装置を備えた吸着剤再生システムに用いられる吸着剤再生方法であって、
前記加熱工程の前に、
前記再生装置の内部の前記フィルタに添着した使用済みの前記吸着剤を蒸気で予熱し、前記吸着剤の品温を上げる予熱工程を有し、
前記予熱に用いる蒸気として、同時期に前記加熱工程を行う他の再生装置から排気される使用済みの蒸気を用いる、請求項1記載の吸着剤再生方法。
【請求項3】
前記予熱工程の前に、
使用済みの前記吸着剤を前記再生装置の内部の前記フィルタに添着させる添着工程を有し、
前記真空工程の後に、
前記汚染物質を放出することによって吸着能力を回復した前記吸着剤を前記フィルタから剥離する剥離工程を有し、
複数台の前記再生装置ごとに、前記添着工程、前記予熱工程、前記加熱工程、前記真空工程および前記剥離工程から選ばれる異なる工程が同時期に行われ、
各再生装置においてそれぞれ同時期に次工程に移行する、請求項2記載の吸着剤再生方法。
【請求項4】
前記予熱工程の前に、
使用済みの前記吸着剤を前記再生装置の内部の前記フィルタに添着させる添着工程を有し、
前記真空工程の後に、
前記汚染物質を放出することによって吸着能力を回復した前記吸着剤を前記フィルタから剥離する剥離工程を有し、
前記剥離工程と前記添着工程は一体の剥離・添着工程とされ、
複数台の前記再生装置ごとに、前記予熱工程、前記加熱工程、前記真空工程および前記剥離・添着工程から選ばれる異なる工程が同時期に行われ、
各再生装置においてそれぞれ同時期に次工程に移行する、請求項2記載の吸着剤再生方法。
【請求項5】
使用済みの吸着剤が添着するフィルタを内部に備え、蒸気を用いて前記吸着剤を加熱して前記吸着剤が吸着していた前記汚染物質を放出させ、前記吸着剤の吸着能力を回復させる再生装置と、
前記フィルタが格納された前記再生装置の内部を真空状態にして、加熱後の前記吸着剤が有する前記汚染物質の残部および水分を除去する真空装置と、
を有する吸着剤再生システム。
【請求項6】
前記再生装置を複数台有し、
一部の前記再生装置で前記吸着剤の加熱に用いられた使用済みの蒸気を、別の前記再生装置に送るための蒸気再利用ラインを有し、
前記蒸気再利用ラインを通じて別の前記再生装置に送られた使用済みの蒸気を、別の前記再生装置の内部の前記吸着剤の予熱に用いる構成とした、請求項5記載の吸着剤再生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工場や事業場などで発生する汚染空気の浄化に用いた吸着剤の吸着性能を再生する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場や事業場などの事業活動によって発生する汚染空気には、揮発性有機化合物(VOC。Volatile Organic Compoundsの略称)、窒素酸化物(NOX)、硫黄酸化物(SOX)などの汚染物質が含まれている場合がある。これらの物質はPM2.5の原因となる物質であり、大気中への排出規制が行われている。そして、これらの規制は年を追うごとに強化される傾向があり、汚染空気からこれらの物質を除去するシステムの開発が重要性を増している。
【0003】
汚染空気から前記汚染物質を除去する方法として、吸着剤を担持したフィルタに汚染空気を流し、汚染空気に含まれる汚染物質をその吸着剤に吸着させることによって、汚染空気を浄化するというものがある。この方法では、濾過時間が経過するにつれて吸着剤が汚染物質を吸着する能力が低下してしまうため、ある程度の時間が経過した後に吸着剤の吸着能力を回復させる必要がある。
【0004】
例えば、下記の特許文献1に開示されたVOC除去装置では、吸着塔の内部にゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタが設置されている。吸着工程では、VOCを含む空気が当該フィルタへ送られ、VOCが当該フィルタに担持されたゼオライトの作用によって吸着除去される。そして、VOCが除去された清浄空気がVOC除去装置から排出される。次に、脱着工程を行い、ゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタを加熱し、吸着剤に吸着したVOCを脱着させる。
【0005】
この特許文献1によれば、次のような効果があるとされている。すなわち、従来のVOC除去方法は、脱着時の風量がかなり少ないため、VOCが脱着する温度まで吸着ロータもしくは吸着剤を温めるのに時間がかかってしまう、または、吸着ロータもしくは吸着剤が温まらず、脱着が十分に行われないという課題があったところ、特許文献1のVOC除去装置によれば、吸着したVOCを効率良く脱着回収または/および分解することができるとされている。
【0006】
また、下記特許文献2に開示された排ガス処理装置は、吸着剤が付着した濾過フィルタに排ガスを流して排ガス中の微小粒子状物質をその吸着剤に吸着させ、所定の段階でその吸着剤を剥離し、新たな吸着剤を付着させる装置である。フィルタから剥離された吸着剤を吸着剤再生装置で加熱して再生し、再生し吸着剤を再び濾過フィルタに付着する構成となっている。このような剥離工程、再生工程、付着工程を行うことで、吸着剤の再利用を図ることができるとされている。
【0007】
また、下記特許文献3に開示されたバグフィルタおよびそれを用いたガス除去システムは、プリーツ型フィルタの一面に予めプレコート剤でプレコート層を形成させ、汚染空気中に含まれる特殊ガスなどの除去を行うものである。このプレコート剤はプレコート再生装置によって再利用できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-245039号公報
【文献】特開2021-084095号公報
【文献】特開2011-041934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、吸着剤は汚染物質を吸着するにつれて吸着力が低下するため、吸着剤の吸着能力を回復させる必要がある。その方法として、前記特許文献1~3のように、吸着能力が低下した吸着剤を加熱して、吸着剤から汚染物質を放出させ、吸着剤の吸着能力を回復させるというものがある。
【0010】
しかし、フィルタに吸着剤が添着した状態で、当該フィルタに加熱気体を送って前記吸着剤を加熱し、吸着剤が吸着した汚染物質をほぼ完全に放出させ、吸着剤の吸着能力を回復させるまでには長時間を有するという問題があった。例えば、本発明者らの実験によると、トルエン(汚染物質)を吸着した活性炭(吸着剤)を約180℃以下の熱風で加熱した場合、活性炭が吸着していたトルエンをほぼ完全に放出するまでに3時間程度の時間がかかった。
【0011】
他方、熱風の温度を230℃程度まで上げることによって、吸着剤が吸着していた汚染物質をほぼ完全に放出するまでの時間を80分程度にまで短縮することができた。しかし、230℃程度という高温の熱風によってフィルタがダメージを受けてしまうという問題があった。すなわち、フィルタの材質がポリテトラフルオロエチレン(別名「テフロン」(登録商標))などの樹脂からなる場合、当該フィルタに高温の熱風を当てるとフィルタの一部分が変形して閉塞してしまうという問題があった。
【0012】
前記特許文献1のようにメタルフィルタを用いる場合は、高温で加熱したとしても問題にならないが、前述の樹脂のように耐熱性がそれほど高くない素材からなるフィルタを用いる場合は、高温で加熱することが難しいという問題がある。
【0013】
また前記特許文献2などのように、吸着剤をフィルタから剥離した後に、外部の装置(例えば特許文献2に例示された加熱キルンタイプの再生装置)を用いて吸着剤を加熱するシステムにした場合は、前述のような加熱温度の制約を受けない利点がある。しかし、一般的に加熱キルンタイプの再生装置は大型であるため、イニシャルコストが高く、必要なフットプリントが広いという問題がある。また、大型の回転筒を回転させるために必要な電力も多く、ランニングコストが高いという問題もある。
【0014】
また特許文献3にはプレコート再生装置を設ける旨が述べられているが、このプレコート再生装置が加熱分級装置を内蔵していること以外に何ら開示がなく、具体的な構造等が明らかにされていない。
【0015】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、汚染空気の浄化処理に用いた吸着剤の吸着性能を、加熱した空気や加熱した不活性ガス(N2など)を用いて吸着剤を加熱する場合よりも短時間で再生することができる再生方法および再生システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
【0017】
(第1の態様)
汚染空気の浄化に用いた使用済みの吸着剤を再生する方法であって、
再生装置の内部のフィルタに添着した使用済みの前記吸着剤に蒸気を当てて前記吸着剤を加熱し、前記吸着剤が吸着していた前記汚染物質を放出させる加熱工程と、
前記フィルタが格納された再生装置の内部を真空状態にして、加熱後の前記吸着剤が有する前記汚染物質の残部および水分を除去する真空工程と、
を有することを特徴とする吸着剤再生方法。
【0018】
(作用効果)
本態様では、フィルタに添着した吸着剤を蒸気によって加熱して吸着剤の品温を上げ、吸着剤から汚染物質を放出させる。加熱した空気や加熱した不活性ガス(N2など)を用いて吸着剤を加熱する場合、吸着剤が汚染物質を放出し終えるまでに長い時間がかかる。その時間を短縮させるために高温(例えば300度以上)の空気や不活性ガスを用いるようにすると、高温の空気や不活性ガスを作り出すために多くの燃料が必要になり、ランニングコストがかかるという問題がある。
【0019】
そこで本発明者は使用済みの吸着剤を加熱するために蒸気を用いる方法を創作した。蒸気を用いると、蒸気の凝縮熱伝達(蒸気が液体に戻る際に放出される潜熱を用いた熱伝達)によって吸着剤の品温を速やかに上げることができるという利点がある。また、高温の空気や不活性ガスを用いないことにより、ランニングコストを低減できるという利点がある。
【0020】
また、本態様では加熱工程によって吸着剤が吸着していた汚染物質を放出させた後に、真空工程で再生装置の内部を真空状態にする。再生装置の内部を真空状態にすると、加熱工程を経た後で吸着剤にまだ残っていた僅かな汚染物質を吸着剤から放出させることができるため、吸着剤の吸着性能を十分に回復させることができる。
【0021】
また、前述のように加熱工程で吸着剤の加熱に蒸気を用いると、その蒸気が液体に戻ることによって生じる水分が吸着剤に付着した状態となる。吸着剤に水分が多く含まれた状態のままでは、吸着力が低いという不都合がある。
【0022】
本態様では、真空工程で再生装置の内部を真空状態にすることで、吸着剤に含まれる水分を除去することができるため、前記不都合の発生を回避することができる。
【0023】
また、前記加熱工程によって吸着剤が加熱されると、吸着剤の品温が高い状態になる。品温が高い吸着剤は汚染物質の吸着性能が低いため、加熱工程によって汚染物質が吸着剤から放出された後、吸着剤に十分な吸着性能を持たせるために吸着剤の品温を低くしなければならない。
【0024】
本態様のように加熱工程の後に真空工程を設け、再生装置の内部を真空状態にすることにより、吸着剤の冷却をすることができる。そのため、加熱工程の後に吸着剤の品温が自然に低下して所望の値になるまで待つ場合と比べて、吸着剤の品温を早く低下させることができ、吸着剤をより早く再利用することが可能になる。
【0025】
以上のように、本態様によれば、汚染空気の浄化処理に用いた吸着剤の吸着性能を、加熱した空気や加熱した不活性ガス(N2など)を用いて吸着剤を加熱する場合よりも短時間で再生することができる。しかも、吸着剤の吸着性能を十分に回復させることができる。
【0026】
(第2の態様)
複数台の前記再生装置を備えた吸着剤再生システムに用いられる吸着剤再生方法であって、
前記加熱工程の前に、
前記再生装置の内部の前記フィルタに添着した使用済みの前記吸着剤を蒸気で予熱し、前記吸着剤の品温を上げる予熱工程を有し、
前記予熱に用いる蒸気として、同時期に前記加熱工程を行う他の再生装置から排気される使用済みの蒸気を用いる、前記第1の態様の吸着剤再生方法。
【0027】
(作用効果)
吸着剤を加熱する前に予め吸着剤を予熱しておくことで、吸着剤から汚染物質が放出されやすくなる。その結果、予熱を行わない場合と比べて、加熱工程の時間を短縮することができる。
【0028】
なお、吸着剤を予熱するための蒸気として、別の再生装置の加熱工程で用いた使用済みの蒸気を用いることが好ましい。このように使用済みの蒸気を再利用することで、予熱に用いる蒸気を新たに生成しなくても良く、電力消費量の削減等を図ることができる。
【0029】
(第3の態様)
前記予熱工程の前に、
使用済みの前記吸着剤を前記再生装置の内部の前記フィルタに添着させる添着工程を有し、
前記真空工程の後に、
前記汚染物質を放出することによって吸着能力を回復した前記吸着剤を前記フィルタから剥離する剥離工程を有し、
複数台の前記再生装置ごとに、前記添着工程、前記予熱工程、前記加熱工程、前記真空工程および前記剥離工程から選ばれる異なる工程が同時期に行われ、
各再生装置においてそれぞれ同時期に次工程に移行する、前記第2の態様の吸着剤再生方法。
【0030】
(作用効果)
本態様のように、複数台の再生装置ごとに、添着工程、予熱工程、加熱工程、真空工程および剥離工程の各工程を同時期に行い、次工程に移行するタイミングも同時期にすることが好ましい。
【0031】
例えば、吸着能力が低下した吸着剤を再生させるまでの時間を25分にしたい場合、添着工程、予熱工程、加熱工程、真空工程および剥離工程の各工程に必要な時間を各工程5分に設定することができる。すなわち、前記各工程にかかる時間をほぼ均等に分けることができる。
【0032】
そして、例えば再生装置Aで行う予熱工程と再生装置Bで行う加熱工程を同時期に5分間行い、同時期に次工程に移行し、再生装置Aで行う加熱工程と再生装置Bで行う真空工程を5分間行う・・・というように進行させる。このような方法によって得られる利点は次の通りである。
【0033】
例えば、複数台の再生装置で吸着剤の再生処理を行う場合、同時に加熱処理を行うと大量の蒸気が必要になるため、大量の蒸気を生成するために大型の蒸気生成装置や多くの電力が必要である。このような不都合が生じないようにするため、再生装置Aで加熱工程を行った後で、再生装置Bで加熱工程を行うというように、順番に加熱処理を行うことが好ましい。
【0034】
本態様とは異なり、例えば予熱工程や真空工程を行わずに加熱工程だけを行うようなプロセスの場合、加熱工程が終わるまでに少なくとも15分以上の時間が必要になる。そのため、再生装置Aで加熱工程を行っている15分の間は、再生装置Bで加熱工程を開始することができない。すなわち、再生装置Bで加熱工程を開始するまでに15分の待ち時間が生じることになる。
【0035】
他方、本態様のように使用済み吸着剤の再生工程を前述の5工程(添着工程、予熱工程、加熱工程、真空工程、剥離工程)に分割することで、前述のように例えば各工程にかかる時間を5分程度にすることができる。そうすると、再生装置Aで加熱工程を行う時間が約5分にすぎないため、再生装置Bで加熱工程を開始するまでの待ち時間が約5分に短縮される。しかも、再生装置Aで加熱工程を行っている5分間の間、再生装置Bでは、再生装置Aから排気される使用済みの蒸気を用いて再生装置B内の吸着剤を予熱する予熱工程を行うこともできるため、再生装置Bが加熱工程を始めるまでの待ち時間も有効利用できる。
【0036】
その結果、本態様によれば、複数台の再生装置において、使用済みの吸着剤の吸着能力を再生させる時間を著しく短縮することができる。
【0037】
(第4の態様)
前記予熱工程の前に、
使用済みの前記吸着剤を前記再生装置の内部の前記フィルタに添着させる添着工程を有し、
前記真空工程の後に、
前記汚染物質を放出することによって吸着能力を回復した前記吸着剤を前記フィルタから剥離する剥離工程を有し、
前記剥離工程と前記添着工程は一体の剥離・添着工程とされ、
複数台の前記再生装置ごとに、前記予熱工程、前記加熱工程、前記真空工程および前記剥離・添着工程から選ばれる異なる工程が同時期に行われ、
各再生装置においてそれぞれ同時期に次工程に移行する、前記第2の態様の吸着剤再生方法。
【0038】
(作用効果)
予熱工程、加熱工程および真空工程の各工程にかかる時間に比べて、添着工程および剥離工程の各工程にかかる時間が短くなる場合がある。例えば、予熱工程に約5分、加熱工程に約5分、真空工程に約5分かかる場合において、添着工程に約2分30秒、剥離工程に約2分30秒しかかからない場合がある。例えば、添着工程において使用済み活性炭を添着させるために用いる風の送風量が多い場合や、剥離工程において再生済みの活性炭をフィルタから剥離するために用いる風の送風量が多い場合は、添着工程や剥離工程に必要な時間が短くなる。
【0039】
このような場合、第3の態様のように、添着工程、予熱工程、加熱工程、真空工程、剥離工程に必要な各時間が全て均しいものであることを前提とすると、実際には添着工程や剥離工程においてそれぞれ約2分30秒ずつの待ち時間が生じるため、添着工程から剥離工程までに必要な合計時間が長くなる。
【0040】
そこで、このような場合は、剥離工程と添着工程を一体化させて剥離・添着工程とすることが好ましい。例えば、再生装置Aで予熱工程を5分、再生装置Bで加熱工程を5分、再生装置Cで真空工程を5分実施している間、再生装置Dにおいて再生済みの活性炭を剥離する剥離工程を2分30秒行い、その後すぐに新たな使用済み活性炭をフィルタに添着させる添着工程を2分30秒行うようにする。このような態様にすることで、再生装置Aで予熱工程を5分間、再生装置Bで加熱工程を5分間、再生装置Cで真空工程を5分間行っている間に、再生装置Dでは剥離工程と添着工程の両方を終了させることができる。
【0041】
その結果、剥離工程や添着工程で生じる前記待ち時間がなくなり、添着工程から剥離工程までの一連の工程に必要な合計時間を例えば約20分(その内訳は添着工程が約2分30秒、予熱工程が約5分、加熱工程が約5分、真空工程が約5分、剥離工程が約2分30秒である)に短縮することができる。すなわち、前記第3の態様よりもさらに使用済み吸着剤の再生効率を上げることができる。
【0042】
(第5の態様)
使用済みの吸着剤が添着するフィルタを内部に備え、蒸気を用いて前記吸着剤を加熱して前記吸着剤が吸着していた前記汚染物質を放出させ、前記吸着剤の吸着能力を回復させる再生装置と、
前記フィルタが格納された前記再生装置の内部を真空状態にして、加熱後の前記吸着剤が有する前記汚染物質の残部および水分を除去する真空装置と、
を有する吸着剤再生システム。
【0043】
(作用効果)
吸着剤再生システムとして、前記第1の態様と同様の作用効果を奏する。
【0044】
(第6の態様)
前記再生装置を複数台有し、
一部の前記再生装置で前記吸着剤の加熱に用いられた使用済みの蒸気を、別の前記再生装置に送るための蒸気再利用ラインを有し、
前記蒸気再利用ラインを通じて別の前記再生装置に送られた使用済みの蒸気を、別の前記再生装置の内部の前記吸着剤の予熱に用いる構成とした、前記第5の態様の吸着剤再生システム。
【0045】
(作用効果)
吸着剤再生システムとして、前記第2の態様と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、汚染空気の浄化処理に用いた吸着剤の吸着性能を、加熱した空気や加熱した不活性ガス(N2など)を用いて吸着剤を加熱する場合よりも短時間で再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明に係る吸着剤再生システムの全体構成図である。
【
図2】再生装置と再生装置周辺部を示す概略断面図である。添着工程、予熱工程、加熱工程、真空工程における蒸気や空気の流れを矢印で示す。
【
図3】再生装置と再生装置周辺部を示す概略断面図である。剥離工程中の逆洗気体の流れを矢印で示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下の説明及び図面は、本発明の一実施形態を示したものにすぎず、本発明の内容をこの実施形態に限定して解釈すべきでない。
【0049】
(吸着剤再生システム1)
吸着剤再生システム1は、浄化装置40で用いた使用済みの吸着剤N1の吸着能力を再生させるものである。第一実施形態に係る吸着剤再生システム1の全体構成図を
図1に示した。この吸着剤再生システム1は、並列に配置した5塔の再生装置2を有する。吸着剤再生システム1はさらに、浄化装置40から排出される使用済みの吸着剤N1とその吸着剤N1の移送に用いる気体とを分離する固気分離装置4と、固気分離装置4で分離した使用済み吸着剤N1を貯留する使用済み吸着剤貯留タンク3と、再生装置2に送る蒸気を生成する蒸気生成装置9と、再生装置2の内部を真空状態にする真空装置6と、再生装置2内に設けられたフィルタ10から再生済みの吸着剤を剥離する剥離装置7などを有する。
【0050】
(浄化装置40)
次に、吸着剤再生システム1に供給される使用済み吸着剤N1が生じる過程を説明する。
【0051】
使用済み吸着剤N1は例えば浄化装置40の運転によって生じる。浄化装置40の種類は特に限定されないが、例えば工場や事業場などで発生する汚染空気を浄化して、浄化した空気を外部に排気する装置を挙げることができる。このような汚染空気中には前述のVOC、NOX、SOXなどの汚染物質が含まれている場合が多い。
【0052】
これらの汚染物質を浄化するために、例えば、浄化装置40の内部にフィルタ41を設け、このフィルタ41の表面(例えば外面)に汚染物質を吸着する能力のある吸着剤Nを吸着させ、フィルタの表面に吸着剤層を形成させる。その後、フィルタ41に汚染空気を通すことによって、汚染空気に含まれる汚染物質が吸着剤Nに接触し、ファンデルワールス力によって吸着剤に引き寄せられ、吸着剤N粒子が有する細孔に吸着されて捕捉される。
【0053】
汚染空気の浄化処理を続け、吸着剤Nが汚染物質を吸着するにつれて吸着剤Nの吸着能力が次第に低下していく。この吸着剤Nの吸着能力の低下度合いは様々な方法で検出できる。例えば、浄化された空気の通路に浄化空気中の汚染物質濃度を検出する濃度計を設け、その濃度計によって浄化空気に含まれる汚染物質の濃度を計測することにより、吸着剤の吸着能力の低下度合いを検知することができる。
【0054】
一定時間の経過後、浄化装置40から排出される浄化空気中に含まれる汚染物質の濃度が予め設定した許容値を超えるようになった段階で、または汚染物質の濃度が許容値に近づいた段階で、浄化処理を停止し、吸着剤Nの吸着能力の再生処理を行う。
【0055】
具体的には、浄化装置40内のフィルタ41から吸着剤Nを剥離し、剥離した吸着剤Nを吸着剤再生システム1に送り、吸着剤再生システム1によってこの吸着剤Nの吸着能力を回復させる。
【0056】
吸着剤Nの使用によって吸着能力が低下し、吸着剤再生システム1に送られる吸着剤Nを使用済み吸着剤N1という。この使用済み吸着剤N1の種類としては、例えば活性炭、ゼオライト、消石灰、活性化二酸化マンガン、鉄、アミン、シリカゲルなどを挙げることができる。
【0057】
なお、吸着剤Nの種類は汚染空気中に含まれる汚染物質の種類によって適宜決定される。汚染空気中に多く含まれる汚染物質を特定し、その汚染物質の吸着能力の高い吸着剤Nが用いることが多い。
【0058】
(再生装置2)
第一実施形態に係る吸着剤再生システム1では5塔の再生装置2が並列に配置されている。以下の説明では図面左側から右側に向かって順番に第1再生装置2A~第5再生装置2Eという。
【0059】
図2、
図3に示すように、各再生装置2の内部にフィルタ10が設けられている。このフィルタ10は、側壁に空気や蒸気の透過孔を備えた膜が形成され、中心部に空気や蒸気の通路12rが形成されている。このフィルタ10の形状は特に限定されないが、例えばハニカム状の膜を備えた円筒形のフィルタ10を用いることができる。そしてこのフィルタ10は、例えばその中心軸が再生装置2の上下方向HDに沿う姿勢で配置することができる。また、
図2、
図3に示す実施形態では、フィルタ10の下面全体を覆うように底板16が設けられており、空気や蒸気が膜を通らずに(ショートカットして)、通路12r内に入り込むことがないようにしている。また、
図2、
図3に示す実施形態では、フィルタ10の通路12rの上部が開放されており、膜を通り抜けた空気や蒸気を再生装置2の外に排出できるようになっている。
【0060】
フィルタ10を構成する膜の素材は特に限定されないが、高温の蒸気が通過することを考慮すると、耐熱性に優れ、加水分解が生じにくい素材を用いることが好ましい。具体的には、セラミック、ステンレスなどを用いることが好ましい。
【0061】
フィルタ10を構成する膜の外面には、膜の外面全体を覆うように多数の使用済み吸着剤N1が添着される。
【0062】
なお、
図2、
図3に示すように、フィルタ10の上面は上板11に取り付けられており、この上板11によって再生装置2内にフィルタ11が支持されている。上板11の周縁部は再生装置2の容器18の内面に取り付けられており、上板11の中心部には貫通孔27が設けられている。通路12rを上方USへ流れた空気や蒸気はこの貫通孔27を通って上部通路19へと流れ出る。また貫通孔27の中心部には逆洗気体を噴出するノズル13が設けられている。
【0063】
(使用済み吸着剤N1の吸着能力の再生)
次に、使用済み吸着剤N1の吸着能力を再生させる工程について述べる。この再生工程は、使用済み吸着剤N1が添着されたフィルタ10に蒸気を送り、この蒸気によって使用済み吸着剤N1を加熱し、使用済み吸着剤N1が吸着していた汚染物質を放出させる加熱工程と、この加熱工程の後の工程として、フィルタ10が格納された再生装置2の内部の気体(例えば空気)を再生装置2から排気して再生装置2の内部を真空状態とし、使用済み吸着剤N1が吸着していた残りの汚染物質を放出させる真空工程とを有する。
【0064】
また、再生工程は、加熱工程の前の工程として予熱工程を有することが好ましい。この予熱工程は、予熱工程を行う再生装置2とは別の再生装置2で同時期に加熱工程を行い、当該加熱工程を行う再生装置2から排気された使用済みの蒸気を、予熱工程を行う再生装置2の使用済み吸着剤N1が添着されたフィルタ10に送って当該使用済み吸着剤N1を予熱し、前記使用済み吸着剤N1の品温を上昇させるものである。このような予熱工程を設け、使用済み吸着剤N1を加熱する前に予め使用済み吸着剤N1を予熱しておくことにより、加熱工程で使用済み吸着剤N1から汚染物質が放出されやすくなる。その結果、予熱を行わない場合と比べて、使用済み吸着剤N1の再生時間を短縮することができる。
【0065】
さらに、再生工程は、加熱工程の前の工程として(予熱工程を行う場合は予熱工程の前の工程として)、使用済み吸着剤N1をフィルタ10に添着させる添着工程と、真空工程の後の工程として、再生済み吸着剤N2をフィルタ10から剥離する剥離工程と、を有する。
【0066】
そこで以下の説明では、添着工程、予熱工程、加熱工程、真空工程、剥離工程の順に各工程を詳述する。
【0067】
(添着工程)
再生装置40から排出された使用済みの吸着剤N1は、使用済み吸着剤吸引ブロワ20によって吸引されて固気分離装置4に導かれる。そして、固気分離装置4の内部に配置されたフィルタ4aによって、使用済み吸着剤N1と空気に分離される。
【0068】
なお、前記空気とは、浄化装置40と固気分離装置4の間の配管内の空気をいい、この空気は使用済み吸着剤吸引ブロワ20によって使用済み吸着剤N1とともに固気分離装置4に導かれる。
【0069】
フィルタ4aの外面に添着した使用済み吸着剤N1は、所定のタイミングで逆洗気体によってフィルタ4aから剥離される。フィルタ4aから剥離された使用済み吸着剤N1は、使用済み吸着剤N1を貯留する使用済み吸着剤貯留タンク3内に貯留される。
【0070】
添着工程では、使用済み吸着剤貯留タンク3内の使用済み吸着剤N1の一部(または全部)が再生装置2に送られる。
【0071】
詳しくは、添着工程を行う際は、使用済み吸着剤投入バルブd、運搬気体排気バルブf、吸着剤供給バルブjを開き、その他の各バルブを閉じる。
【0072】
その後、使用済み吸着剤輸送ブロワ21を作動させる。そうすると、使用済み吸着剤輸送ブロワ21は使用済み吸着剤供給装置3から排出された使用済み吸着剤N1を再生装置2に送る。使用済み吸着剤N1を再生装置2に送るときに、使用済み吸着剤N1とともに空気も再生装置2に送られる。この空気は使用済み吸着剤N1を再生装置2に運搬する作用を奏するものであり、以下の説明ではこの空気のことを運搬空気という。再生装置2に供給された運搬空気(使用済み吸着剤N1を含む)は、フィルタ10の外側から内側に流れた後で通路12r内に入り、その通路12rを上方USに流れた後で、貫通孔27、上部通路19を通って、再生装置2の外に排気される。運搬空気がフィルタ10を通過する際、運搬空気に含まれていた使用済み吸着剤N1がフィルタ10の外表面に添着し、フィルタ10の外表面に吸着剤層を形成する。そして、例えばフィルタ10の外表面の大部分に吸着剤層を形成させた段階で添着工程を終了させる。
【0073】
(予熱工程)
添着工程を終えた後は、再生装置2内のフィルタ10に添着した使用済み吸着剤N1を予熱する予熱工程を行うことが好ましい。この予熱工程を行う際は、まず、予熱蒸気供給バルブb、高濃度蒸気排気バルブgを開き、その他のバルブを閉じる。なお、加熱工程を行っている他の再生装置2から排出された使用済みの蒸気を、予熱工程を行う再生装置2に供給する場合、他の再生装置2の蒸気供給バルブaは開いておく。
【0074】
その後、同時期に加熱工程を行っている他の再生装置2から排出された使用済みの蒸気を、予熱工程を行う再生装置2に供給する。例えば、
図1に示す吸着剤再生システム1において、再生装置2Aで予熱工程を行うとともに、同時に再生装置2Bで加熱工程を行う場合、再生装置2Bから排出される使用済みの蒸気を再生装置2Aに送り、その蒸気を再生装置2A内の使用済み吸着剤N1の予熱に用いることが好ましい。このように使用済みの蒸気を再利用することにより、予熱に用いる蒸気を新たに生成しなくても良くなるため、電力消費量の削減などを図ることができる。
【0075】
再生装置2内に供給された予熱を行うための蒸気(「予熱蒸気」という。例えば加熱工程を行っている他の再生装置2から排出された使用済みの蒸気)は、外面に吸着剤層が形成されたフィルタ10を外側から内側へ向かって流れる。予熱蒸気がフィルタ10を通過する過程で、予熱蒸気が有する熱によって前記使用済み吸着剤N1の品温を上げる。そして、フィルタ10を通過することで、温度が低下した予熱蒸気は、フィルタ10の内部に入り、通路12rを上方USに流れた後で、貫通孔27、上部通路19を通って、再生装置2の外に排気される。
【0076】
予熱蒸気の温度は特に限定されないが、フィルタ10を傷めない程度の温度であって、かつ使用済み吸着剤N1を十分に予熱できる温度であることが好ましい。具体的には、170~60℃の予熱蒸気を用いることが好ましく、150~80℃の予熱蒸気を用いることがより好ましい。
【0077】
なお、予熱蒸気として使用済みの加熱蒸気(同時期に加熱工程を行っている他の再生装置2から排出された使用済みの蒸気)を用いる場合、再生装置2に供給される予熱蒸気には高濃度の汚染物質が含まれている。予熱工程中の再生装置2内の使用済み吸着剤N1には汚染物質を吸着する能力がほとんど残っていないため、予熱蒸気が吸着剤層を通過したとしても、予熱蒸気に含まれる汚染物質はほとんど使用済み吸着剤N1に吸着されることなく、吸着剤層を通り抜けて再生装置2から排出される。そのため、再生装置2から排出される予熱蒸気中には高濃度の汚染物質が含まれていることになる。
【0078】
そこで、再生装置2の後段に触媒燃焼装置8を設け、この触媒燃焼装置8によって予熱蒸気の排ガス中に含まれる汚染物質を酸化させることが好ましい。触媒燃焼装置8は、直接燃焼装置に比べて、汚染物質を低温で酸化することができるため、燃焼コストを低減することができる利点がある。また、燃焼に伴って発生する窒素酸化物の生成量も少なくすることができる。
【0079】
なお、予熱工程を設けることにより、(1)添着工程、(2)予熱工程、(3)加熱工程、(4)真空工程、(5)剥離工程における全体のタクトタイムを合わせることができるという利点がある。例えば、
図1に示すように再生装置2を5台設け、同時期に、再生装置2ごとにそれぞれ異なる工程を行い、所定時間が経過した後に各工程を順次変更しながら運転する場合において、その運転効率を上げることができる。
【0080】
具体的には、(1)添着工程、(2)予熱工程、(3)加熱工程、(4)真空工程、(5)剥離工程の各工程にそれぞれ約5分かかる場合、5分ごとに次の工程に移行することができるが、(2)の予熱工程がない場合、(3)の加熱工程の時間が長くなるという不都合がある。例えば(3)の加熱工程の時間が10分かかるようになったとすると、タクトタイムを最も長い時間に合わせる必要が生じるため、(1)添着工程、(4)真空工程、(5)剥離工程の各時間も10分にする必要が生じる。そうすると、前記(1)、(3)~(5)の各工程の時間を合わせた合計時間が長くなる。その結果、使用済み吸着剤N1の吸着能力を回復させるまでに長い時間がかかる。すなわち、使用済み吸着剤N1の吸着能力を回復させ、吸着能力を回復させた再生済み吸着剤N2を再び浄化装置40の浄化処理に利用できるようになるまでに長い時間がかかるという不都合がある。(2)の予熱工程を設けることで、このような不都合の発生を抑止することができる。
【0081】
(加熱工程)
予熱工程を終えた後(予熱工程を行わない場合は添着工程の後)、再生装置2内のフィルタ10に添着した使用済み吸着剤N1を加熱する加熱工程を行う。この加熱工程を行う際は、蒸気供給バルブaと高濃度蒸気排気バルブgを開き、その他の各バルブを閉じる。
【0082】
なお、他の再生装置2において、使用済み蒸気を予熱に利用する場合は、加熱工程を行う再生装置2の高濃度蒸気排気バルブgを閉じ、予熱工程を行う再生装置2の予熱蒸気供給バルブbと高濃度蒸気排気バルブgを開くようにするとよい。
【0083】
次に、蒸気輸送ブロワ22を起動して、蒸気生成装置9で生成した蒸気を再生装置2に送る。この蒸気輸送ブロワ22の種類は特に限定されないが、例えばターボブロワ、ルーツブロワなどを用いることができる。また蒸気生成装置9は使用済み吸着剤N1を加熱する蒸気(加熱蒸気)を生成する装置であり、その種類は特に限定されないが、例えば電熱ボイラ、高周波加熱器などを用いることができる。
【0084】
蒸気生成装置9で生成される蒸気の温度は特に限定されないが、フィルタ10を傷めないようにしつつ、使用済み吸着剤N1が汚染物質を放出しやすい温度にすることが好ましい。
【0085】
具体的には、蒸気の温度を105℃以上にすることが好ましく、170℃以上にすることがより好ましい。蒸気の温度が105℃よりも低いと、使用済み吸着剤N1が汚染物質を放出しづらいため、加熱工程の時間が長くなるという不都合がある。
【0086】
他方、前記蒸気の温度の上限値は、フィルタ10の種類によって変えることが好ましい。例えば、フィルタ10がステンレス、ニッケル、黄銅などの金属素材からなる場合は耐熱温度が高い。そのため、フィルタ10が金属素材からなる場合は、蒸気の温度を350℃以下にすることが好ましく、300℃以下にすることがより好ましい。
【0087】
蒸気生成装置9で生成された蒸気は、前記ブロワによって再生装置2に供給され、フィルタ10の外面に添着した使用済み吸着剤N1を加熱する。加熱された使用済み吸着剤N1は徐々に吸着していた汚染物質を放出する。蒸気は使用済み吸着剤N1が放出した汚染物質を伴って、フィルタ10を通過して通路12rに入り、この通路12rを上方USに流れた後で、貫通孔27、上部通路19を通って、再生装置2の外に排気される。
【0088】
排気された蒸気には高濃度の汚染物質が含まれているため、前述のように触媒燃焼装置8によって蒸気中に含まれる汚染物質を酸化させることが好ましい。なお、予熱工程を行う他の再生装置2に使用済みの蒸気を送り、使用済み蒸気が有している熱を余すところなく再利用することが好ましい。
【0089】
以上のようにして加熱工程を行い、加熱工程を終えた段階で、前記ブロワと蒸気生成装置9の運転を停止する。
【0090】
なお、前述のように、使用済み吸着剤N1を加熱するために蒸気を用いると、蒸気の凝縮熱伝達によって使用済み吸着剤N1の品温を速やかに上げることができるという利点がある。すなわち、使用済み吸着剤N1を加熱するために蒸気を用いることにより、加熱した空気や加熱した不活性ガス(N2など)を用いて使用済み吸着剤N1を加熱する場合よりも、加熱時間を短くすることができる。
【0091】
また、使用済み吸着剤N1を加熱するための蒸気として、例えば飽和蒸気や過熱蒸気を用いることができる。使用済み吸着剤N1を短時間で加熱することを考慮すると、特に過熱蒸気を用いることが好ましい。
【0092】
(真空工程)
加熱工程を終えた後は、再生装置2の内部を真空状態にする真空工程を行う。この真空工程を行う際は、押出空気供給バルブe、再生装置内空気排気バルブhを開き、その他の各バルブを閉じる。
【0093】
次に真空装置6の一例としての吸引ブロワを稼働させ、再生装置2内の空気を吸引して再生装置2内を真空状態にする。なお、
図1の実施形態では、前記吸引ブロワによって、僅かな量の外気を押出空気供給バルブeを介して再生装置2の内部に吸引している。このように再生装置2の内部に僅かな量の外気を取り込むことで、再生装置2内の空気を再生装置2の外に排気することができる。
【0094】
以上のように再生装置2内を真空状態にすることにより、加熱工程を経ても尚且つ使用済み吸着剤N1に残っていた汚染物質の放出を促進することができる。
【0095】
また、加熱工程で蒸気を用いることにより、加熱工程後の使用済み吸着剤N1の水分含有率が高い状態になっている。そこで、加熱工程の後に真空工程を実施することで、加熱工程後の使用済み吸着剤N1に含まれていた水分を当該吸着剤N1から取り除くことができる。その結果、加熱工程後の使用済み吸着剤N1の水分含有率を低い状態にすることができる。
【0096】
また、加熱工程で高温の蒸気を用いることにより、加熱工程後の使用済み吸着剤N1の品温が高い状態になっている。そこで、加熱工程の後に真空工程を実施することで、加熱工程後の使用済み吸着剤N1の品温を下げることもできる。
【0097】
以上のようにして、真空工程で使用済み吸着剤N1から放出された汚染物質は、再生装置2内の空気とともにフィルタ10を通過してその内部に入り、通路12rを上方USに流れた後で、再生装置2の外に排出される。再生装置2から排出された空気には低濃度の汚染物質が含まれているため、再生装置2の後段にフィルタ(図示しない)などを設け、そのフィルタなどによって汚染物質を除去し、清浄な空気を吸着剤再生システム1の外に放出する。
【0098】
このようにして真空工程を行い、真空工程を終えた段階で、吸引ブロワの運転を停止する。真空工程を終了するか否かの判断は、例えば再生装置2から排出される空気中に含まれる汚染物質の濃度を計測する濃度計(図示しない)を吸引ブロワの前段または後段に設置し、汚染物質の濃度が予め定めた許容濃度よりも低くなったことを確認した時点で、真空工程を終了とする。
【0099】
(剥離工程)
前記真空工程を経て使用済み吸着剤N1の吸着能力を十分に回復させた後は、フィルタ10の外面に形成された吸着剤層を剥離する剥離工程を行う。剥離工程を行う際は、吸着剤排出バルブc、逆洗気体供給バルブiを開き、その他の各バルブを閉じる。
【0100】
次に剥離装置7を作動させ、当該装置7から逆洗気体を再生装置2内に噴き込む。再生装置2内に噴き込まれた逆洗気体は、ノズル13から噴射され、通路12rを下方DSへ流れ、フィルタ10を内側から外側に通り抜ける。逆洗気体がフィルタ10を通り抜けることで、フィルタ10の外面に形成された吸着剤層が剥離される。剥離された吸着剤層には、汚染物質の吸着能力が回復した吸着剤N2(「再生済み吸着剤」という)が多数含まれている。
【0101】
再生装置2から排出された再生済み吸着剤N2は、再生済み吸着剤貯留タンク45へと運ばれる。再生済み吸着剤貯留タンク45の内部にはフィルタ46が配置されており、このフィルタ46によって逆洗気体と再生済み吸着剤N2が分離される。再生済み吸着剤N2はフィルタ46の外面に添着し、所定のタイミングでフィルタ46から剥離され、再生済み吸着剤貯留タンク45の下部に堆積する。
【0102】
再生済み吸着剤貯留タンク45の下部に堆積した再生済み吸着剤N2は、所定のタイミングで浄化装置40へ送られ、浄化装置40内の浄化処理に再利用される。
【0103】
(各種バルブ)
以上の説明では、添着工程、予熱工程、加熱工程、真空工程、剥離工程という各工程における各種バルブの開閉について説明した。この説明における各種バルブの開閉については、添着、予熱、加熱、真空、剥離という各処理を行う再生装置2に直接作用するバルブに限定して言及したものである。例えば、
図1に示す吸着剤再生システム1のように複数台の再生装置2が存在する場合、それらの周囲には同種のバルブが複数存在する。具体的には、
図1の吸着剤再生システム1では、蒸気供給バルブaだけで、5つのバルブa1~a5が存在する。このよう吸着剤再生システム1において、再生装置2Aの加熱処理を行い、再生装置2B~2Eの加熱処理を行わない場合は、再生装置2Aの加熱処理に直接作用する再生装置2Aの周囲に存在する蒸気供給バルブa1だけを開き、再生装置2Aの加熱処理とは関係がない他の加熱気体供給a2~a5は閉じることになる。他の各バルブについても同様のことがいえる。
【0104】
(再生装置2A~2E間のローテーション)
次に、
図1に示す吸着剤再生システム1と表1を参照しながら、再生装置2A~2E間のローテーションについて説明する。
【0105】
図1に示す吸着剤再生システム1では5台の再生装置2A~2Eを用いて、前述の(1)添着工程、(2)予熱工程、(3)加熱工程、(4)真空工程、(5)剥離工程をローテーションさせるように運転している。このローテーションは例えば表1のように行うことができる。
【0106】
【0107】
すなわち、第一段階として、再生装置2Aで添着工程を、再生装置2Bで予熱工程を、再生装置2Cで加熱工程を、再生装置2Dで真空工程を、再生装置2Eで剥離工程を行う。所定時間(例えば5分)経過後に第二段階に移行する。すなわち、第二段階では、再生装置2Aで剥離工程を、再生装置2Bで添着工程を、再生装置2Cで予熱工程を、再生装置2Dで加熱工程を、再生装置2Eで真空工程を行う。
【0108】
このように所定時間(例えば5分)経過する度に、次々と段階を移行していく。具体的には、第三段階では、再生装置2Aで真空工程を、再生装置2Bで剥離工程を、再生装置2Cで添着工程を、再生装置2Dで予熱工程を、再生装置2Eで加熱工程を行う。第四段階では、再生装置2Aで加熱工程を、再生装置2Bで真空工程を、再生装置2Cで剥離工程を、再生装置2Dで添着工程を、再生装置2Eで予熱工程を行う。第五段階では、再生装置2Aで予熱工程を、再生装置2Bで加熱工程を、再生装置2Cで真空工程を、再生装置2Dで剥離工程を、再生装置2Eで添着工程を行う。そして、第五段階が終了した後は、再び第一段階に戻るようにすればよい。
【0109】
なお、各段階の各再生装置2A~2Eにおける各バルブa~iの開閉操作は表1の通りに行えばよい。
【0110】
また、各種装置(蒸気生成装置9、各ブロワなど)を停止させることなく連続運転することができるため、運転効率を高めることができ、省電力化等を図ることもできる。
【0111】
(剥離・添着工程)
上記の説明においては、剥離工程の後に添着工程を行う場合について解説した。しかし、このような態様に限られるものではなく、前記第4の態様のように、剥離工程と添着工程を一体化させて、剥離・添着工程としても良い。このような場合は、前述の工程よりも工程が1つ少なくなり、(1)予熱工程、(2)加熱工程、(3)真空工程、(4)剥離・添着工程、という順序の4工程になる。
【0112】
(他の実施形態)
図1に示す実施形態では、再生装置2Bで用いた使用済み蒸気を再生装置2Aの予熱に用い、再生装置2Cで用いた使用済み蒸気を再生装置2Bの予熱に用い、再生装置2Dで用いた使用済み蒸気を再生装置2Cの予熱に用い、再生装置2Eで用いた使用済み蒸気を再生装置2Dの予熱に用い、再生装置2Aで用いた使用済み蒸気を再生装置2Eの予熱に用いることができるように、配管を配置している。しかし、配管の配置はこのような形態に限られるものではない。例えば、再生装置2Bで用いた使用済み蒸気を再生装置2A以外の任意の再生装置(再生装置2C、2D、2E)の予熱に用いることができるように配管を配置してもよい。このことは、再生装置2A、2C、2D、2Eで用いた使用済み蒸気を他の再生装置で用いる場合についても同様であり、使用済み蒸気の送り先は
図1に示す再生装置に限られるものではない。
【符号の説明】
【0113】
1…吸着剤再生システム、2…再生装置、3…使用済み吸着剤貯留タンク、4…固気分離装置、4a…(固気分離装置の)フィルタ、5…再生吸着剤貯留タンク、6…真空装置、7…剥離装置、8…触媒燃焼装置、9…蒸気生成装置、10…(再生装置の)フィルタ、11…上板、12r…通路、13…ノズル、16…底板、18…(再生装置の)容器、19…上部通路、20…使用済み吸着剤吸引ブロワ、21…使用済み吸着剤輸送ブロワ、22…蒸気輸送ブロワ、27…貫通孔、40…浄化装置、41…(浄化装置の)フィルタ、45…再生済み吸着剤貯留タンク、46…(再生済み吸着剤貯留タンクの)フィルタ、HD…高さ方向、US…上方、DS…下方、a…蒸気供給バルブ、b…予熱蒸気供給バルブ、c…吸着剤排出バルブ、d…使用済み吸着剤投入バルブ、e…押出空気供給バルブ、f…運搬気体排気バルブ、g…高濃度蒸気排気バルブ、h…再生装置内空気排気バルブ、i…逆洗気体供給バルブ、j…使用済み吸着剤供給バルブ、k…固気分離後使用済み吸着剤輸送バルブ、m…使用済み吸着剤輸送バルブ、n…再生済み吸着剤供給バルブ、N…吸着剤、N1…使用済み吸着剤、N2…再生済み吸着剤
【要約】
【課題】汚染空気の浄化処理に用いた吸着剤の吸着性能を短時間で再生する再生方法および再生システムを提供すること。
【解決手段】前記課題を解決する吸着剤再生方法は、再生装置2の内部のフィルタ10に添着した使用済みの吸着剤N1に蒸気を当てて前記吸着剤N1を加熱し、前記吸着剤N1が吸着していた前記汚染物質を放出させる加熱工程と、 前記フィルタ10が格納された再生装置2の内部を真空状態にして、加熱後の前記吸着剤N1が有する前記汚染物質の残部および水分を除去する真空工程と、を有する。
【選択図】
図1