(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】高温炉
(51)【国際特許分類】
C21D 1/00 20060101AFI20240724BHJP
C21D 1/34 20060101ALI20240724BHJP
F27B 9/36 20060101ALI20240724BHJP
F27B 9/04 20060101ALI20240724BHJP
F27B 9/06 20060101ALI20240724BHJP
F27B 9/10 20060101ALI20240724BHJP
F27D 7/04 20060101ALI20240724BHJP
F27D 7/02 20060101ALI20240724BHJP
F27D 11/02 20060101ALI20240724BHJP
F27D 19/00 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
C21D1/00 B
C21D1/34 K
C21D1/34 L
C21D1/34 U
C21D1/00 C
C21D1/00 112K
F27B9/36
F27B9/04
F27B9/06 E
F27B9/10
F27D7/04
F27D7/02 A
F27D11/02 A
F27D19/00 A
(21)【出願番号】P 2023145917
(22)【出願日】2023-09-08
【審査請求日】2023-09-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591107230
【氏名又は名称】株式会社デンケン
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100215267
【氏名又は名称】古屋 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100215555
【氏名又は名称】今井 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】河野 敬治
(72)【発明者】
【氏名】藤田 元気
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮
(72)【発明者】
【氏名】比永 一成
(72)【発明者】
【氏名】中西 成夢
(72)【発明者】
【氏名】松広 幸紀子
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴之
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 愛美
(72)【発明者】
【氏名】松本 文明
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特公昭53-011483(JP,B2)
【文献】特開2005-207692(JP,A)
【文献】特開2023-067637(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111059895(CN,A)
【文献】特開2001-241855(JP,A)
【文献】特公昭45-010610(JP,B1)
【文献】特公昭60-027736(JP,B2)
【文献】実開昭54-125832(JP,U)
【文献】特開2005-249248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 1/34
C21D 1/00
F27B 9/00-9/39
F27D 7/02
F27D 7/04
F27D 11/00-11/02
F27D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内雰囲気を加熱循環させるための熱風生成器と、
ディスク状の金属製ワークの搬送経路を共有し、前記ワークを載置させながら移動させる複数のステーションと、
前記ワークが載置される台座および該ワークの中心の開口を通る支柱を有する治具と、
を備え、
前記ステーションがそれぞれ、
前記ワークを左右から加熱する第1ヒータと、
前記ワークを上下から加熱する第2ヒータとを含み、
前記第2ヒータにより、前記治具を介して
前記ワークを内側からも加熱する、高温炉。
【請求項2】
前記第2ヒータのうちの一つが、
前記ワークに接触して加熱する、請求項1記載の高温炉。
【請求項3】
前記第2ヒータは、
前記ワークに上下から接触して加熱する、請求項1記載の高温炉。
【請求項4】
前記第1ヒータはセラミックヒータであり、前記第2ヒータはカートリッジヒータである、請求項1~3のいずれか一項に記載の高温炉。
【請求項5】
前記ステーションは載置部を含み、
前記載置部は
前記ワークを前方に移動させて前記各ステーションにおける移動のサイクル動作を可能にする、請求項1記載の高温炉。
【請求項6】
前記高温炉の動作制御を行う第1制御部と、
前記高温炉の温度制御を行う第2制御部と、
をさらに備えた、請求項1記載の高温炉。
【請求項7】
前記第2制御部がPLCであり、複数の温度センサと、複数の前記第1ヒータおよび複数の前記第2ヒータとの様々な組み合わせによる集中温調制御を可能にするものである、請求項6記載の高温炉。
【請求項8】
電流センサにより前記第1ヒータまたは前記第2ヒータの動力線の断線を検知すると、前記第2制御部は前記第1ヒータおよび前記第2ヒータを停止する、請求項6記載の高温炉。
【請求項9】
前記サイクル動作を実施できないと判断されたときに、
前記ワークを保温する保温モードに設定される、請求項5記載の高温炉。
【請求項10】
前記第2ヒータが搭載されるエアシリンダをさらに備え、
前記エアシリンダにより、
前記ワークが上下に移動する、請求項1記載の高温炉。
【請求項11】
前記ワークの移動する軌道を変えるシフタをさらに備えた、請求項1記載の高温炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高温炉に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを熱処理する連続炉として特許文献1に記載のようなハイブリッド型の連続焼戻し用熱処理機が知られている。特許文献1の熱処理機は、金属のワークを搬送する搬送経路と、ワークを所定の目標温度まで昇温させる遠赤外線照射装置および外気温よりも高い温度の温風を吹付ける温風吹出し装置を含む昇温ゾーンと、ワークに外気温よりも高い温度の温風を吹付ける温風吹出し装置を含み、昇温されたワークを目標温度に維持する保温ゾーンとを備え、昇温ゾーンにおいて、温風吹出し装置及び遠赤外線照射装置は、互いに搬送経路を挟んで配置されている。このような熱処理機を含む熱処理ラインでは、ワークに対する焼入、焼戻、冷却などの一連の処理が連続的に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、特許文献1に記載のようなワークに対して熱処理を行う加熱炉では、ヒータをワークに直接接触させて加熱しない。また、連続炉においてワークはコンベアで搬送されていくが、製造ライン全体が異常時などに一時的に停止することがある。その際、ワークは冷え過ぎてもいけないし、温められ過ぎてもいけない。このようなワークは廃棄されてしまうこともある。通常製造ラインは大気雰囲気であるため、真空炉とは違い、雰囲気温度を短時間だけ保持することは難しい。電磁鋼板などの繊細なワークの場合、炉を止めて、再度火を入れることが望ましい。しかし、炉の再立ち上げには時間とコストがかかるという課題がある。また、電装部品が多数ある製造ラインにおいては、できるかぎり熱影響を受けたくないという課題がある。
【0005】
本開示はこのような点を考慮してなされたものであり、新規な高温炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の高温炉は、
炉内雰囲気を加熱循環させるための熱風生成器と、
ワークを載置させながら移動させる複数のステーションと、
を備え、
前記ステーションがそれぞれ、ワークを左右から加熱する第1ヒータと、ワークを上下から加熱する第2ヒータとを含むことを特徴とする。
【0007】
本開示の高温炉において、
前記第2ヒータのうちの一つが、ワークに接触して加熱してもよい。また、前記第2ヒータは、ワークに上下から接触して加熱してもよい。
【0008】
本開示の高温炉において、
前記第1ヒータはセラミックヒータであり、前記第2ヒータはカートリッジヒータであってもよい。
【0009】
本開示の高温炉は、
前記ステーションは載置部を含み、
前記載置部はワークを前方に移動させて前記各ステーションにおける移動のサイクル動作を可能にするものでもよい。
【0010】
本開示の高温炉は、
前記高温炉の動作制御を行う第1制御部と、
前記高温炉の温度制御を行う第2制御部と、
をさらに備えてもよい。
【0011】
本開示の高温炉において、
前記第2制御部がPLCであり、複数の温度センサと、複数の前記第1ヒータおよび複数の前記第2ヒータとの様々な組み合わせによる集中温調制御を可能にするものであってもよい。
【0012】
本開示の高温炉において、
電流センサにより前記第1ヒータまたは前記第2ヒータの動力線の断線を検知すると、前記第2制御部は前記第1ヒータおよび前記第2ヒータを停止させてもよい。
【0013】
本開示の高温炉において、
前記サイクル動作を実施できないと判断されたときに、ワークを保温する保温モードに設定されてもよい。
【0014】
本開示の高温炉は、
前記第2ヒータが搭載されるエアシリンダをさらに備え、
前記エアシリンダにより、ワークが上下に移動してもよい。
【0015】
本開示の高温炉は、
ワークの移動する軌道を変えるシフタをさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、新規な高温炉を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示に係る高温炉の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1の高温炉からカバーを取り除いた状態を示す斜視図である。
【
図3】高温炉に含まれるステーションの内部構成を示す断面図である。
【
図4】ステーションにおけるワークの移動の例を示す図である。
【
図5】ステーションにおけるワークの移動の別の例を示す図である。
【
図6】高温炉の第1制御部および第2制御部がそれぞれの制御を行うために接続される構成部材の例を示す図である。
【
図7】温度制御における、従来の温度センサとヒータとの対応関係(
図7(A))、および本開示の高温炉における対応関係(
図7(B))を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、「ワーク」とは通常の意味で用いられる(被)工作(加工)物を含む用語であり、特に限定されない。ワークは金属製のワーク、例えばSUS板、SPCC板、電磁鋼板であってもよく、用途、寸法等も限定されない。なお、ワークの前方とは、特段の記載のない限り、ワークの搬送方向や進行方向をいう。
【0019】
[高温炉1の構成]
まず、本開示に係る高温炉の構成を説明する。
図1は、本開示に係る高温炉1の外観を示す斜視図であり、
図2は、
図1の高温炉1からカバー2aを取り除いた状態を示す斜視図である。
図1、
図2に示すように、本開示の高温炉1は、炉内雰囲気を加熱循環させるための熱風生成器3と、ワークWを載置させながら移動させる複数のステーション4とを備えている。連続するステーション4により、ワークWの搬送経路を共有する連続炉が1つ形成されることになる。熱風生成器3により高温炉1内の雰囲気を加熱循環させつつ、ワークWを各ステーション4内に順次搬送し加熱を繰り返すことによって(以下、サイクル動作ともいう)、ワークWに対する効率的な加熱を実現できる。
【0020】
なお、
図1に示す例では、高温炉1は、作業場における作業員の安全のために、カバー2aを備えている。カバー2aは蓋に相当する天井部も有してよく、給気排気用のファンや給気排気口をカバー2aの天井部や側面に設けてもよい。また、高温炉1内の搬送経路の出口と入口には、外気混入を抑制したり、保温のためのシャッタ(扉)2bを設けてもよい。カバー2aとシャッタ2bは高温炉1を外部から画定する役割を有する。
【0021】
(熱風生成器3)
熱風生成器3は、熱風を生成して高温炉1内の雰囲気を加熱して循環させる。熱風生成器3は、高温炉1内で対流する熱風を生成する。後述する保温モードにおいて、第1ヒータ5および第2ヒータ6が停止するよう制御したとしても、熱風生成器3のみによって高温炉1を加熱してワークWを保温してもよい。このような作用を有するものであれば、熱風生成器3は特に限定されない。熱風の種類や設定温度も限定されず、ワークWの加熱目標温度等に応じて適宜変更できる。
【0022】
図1、
図2に示す例では、ワークWの搬送経路の往路、復路をそれぞれ加熱する熱風生成器3が2つ示されているが、熱風生成器3の数は限定されず、1つでもよい。当業者であれば、熱風生成器3からの熱風を導く配管や、熱風の対流を促進させるファン等を高温炉1内に適宜設置できる。
【0023】
(ステーション4)
図3に示すように、各ステーション4は、ワークWを左右から加熱する第1ヒータ5と、ワークWを上下から加熱する第2ヒータ6(6a、6b)とを含む。これらにより、ステーション4では上下左右からの加熱によりワークWを均一にかつ短時間で加熱することができる。なお、
図3に示す例では、第1ヒータ5や第2ヒータ6、エアシリンダ10の周りに断熱材16が設けられており、この断熱材16により外気との温度遮断を図っている。
【0024】
ある搬送手段として、複数のステーション4間のワークWの移動は、ベルトコンベアにワークWを載置して各ステーション4内を連続的に通過させてもよい。このようなベルトコンベア式であれば、ワークWを一定の高さにすることができ、高温炉1の簡素化が可能である。
【0025】
さらに別の搬送手段として各ステーション4は載置部7を含み、ワークWがステーション4に入る際に(
図3参照)、ワークWを載置部7に載置させステーション4内を通過させてもよい。載置部7はワークWを前方に移動させて各ステーション4における移動のサイクル動作を可能なものにできる。こうして、複数のステーション4で、ワークWの加熱と移動が繰り返され(サイクル動作)、間欠的な加熱処理により加熱の度合いのばらつきを抑制できる(枚葉式)。また、ワークWを上下に移動可能な機構を更に設ければ(例えば、直動アクチュエータや、後述するエアシリンダ10等)、上側の第2ヒータ6aに向けてワークWを持ち上げることで、接触加熱と、載置部7からのワーク受け渡し動作とが実現できる。なお、載置部7は耐熱性の材料から形成されることが好ましい。ワークWを載置させるための、載置部7の形状や構造は特に限定されない。例えば、載置部7は、天面と底面のない中空のボックス状の構造を有し、その内部を通って下側の第2ヒータ6bが上下に移動可能になっていてもよい。また、載置部7は、ワークWの対向する端部を支持するような構造を有してもよい(例えば、2枚の平行する板状部材を有し、その間を第2ヒータ6bが上下に移動可能な構造)。
【0026】
図4、
図5を参照して、上記枚葉式におけるステーション4におけるワークWの上下前方への移動の一例について説明する。なお、白抜きの矢印はワークWや第2ヒータ6a、6b等の移動を示し、黒塗りの矢印は加熱していることを示している。まず、
図4(a)は、後述するような治具8に支持されたワークWが載置部7(複数の送り爪を備えている)に乗り、高温炉1の外部から高温炉1の内部(ステーション4)に入る直前の状態を示している。なお、ワークWの移動の説明のため、ステーション4の第1ヒータ5等の部材は省略している。次に、ワークWは載置部7により高温炉1(ステーション4)内に送られる(
図4(b))。
図4(b)に示すように、この状態のワークWは上下の第2ヒータ6a、6bに接触していない(隙間がある)。次に、
図4(b)の状態から、下側第2ヒータ6bが上昇し上側第2ヒータ6aが下降する(
図4(c))。この結果、ワークWは持ち上がり、載置部7から外れた状態となる。また、上下の第2ヒータ6a、6bがワークWに接触する。それから、ワークWは加熱される。次に、上下の第2ヒータ6a、6bがワークWに接触している
図4(c)の状態で、載置部7の送り爪が1ピッチ分戻る、すなわち、後方に移動する(
図4(d))。次に、上側第2ヒータ6aが上昇し下側第2ヒータ6bが下降する(
図4(e))。この結果、ワークWは再び載置部7に残る。また、
図4(e)に示すように、別のワークWが戻った送り爪(載置部7)にセットされる。このようにして、サイクル動作が繰り返される。
【0027】
図5は、枚葉式におけるステーション4におけるワークWの移動の別の態様を示す。この例では、上側第2ヒータ6aは固定され、下側第2ヒータ6bのみが上下動する。
図5(a)、(b)は
図4(a)、(b)と同じ状態であるため説明は省略する。
図5(b)の状態から、下側第2ヒータ6bのみが上昇する(
図5(c))。この結果、ワークWは持ち上がり、載置部7から外れた状態となり、ワークWは下側第2ヒータ6bにも上側第2ヒータ6aにも接触する。それから、ワークWは加熱される。次に、上下の第2ヒータ6a、6bがワークWに接触している
図5(c)の状態で、載置部7の送り爪が1ピッチ分戻る、すなわち、後方に移動する(
図5(d))。次に、下側第2ヒータ6bが下降する(
図5(e))。この結果、ワークWと上下の第2ヒータ6a、6bとの接触が外れ、ワークWは再び載置部7に残る。また、
図5(e)に示すように、別のワークWが戻った送り爪(載置部7)にセットされる。このようにして、サイクル動作が繰り返されてもよい。この場合、間欠的な加熱処理により加熱の度合いのばらつきを抑制できることに加えて、第2ヒータ6aの位置が固定されることにより高温炉1の構造の簡素化を図れる。また、高温炉1のサイズもコンパクトとなり、省スペース化が図れる。
【0028】
あるいは、搬送手段としてベルトコンベア式でワークWを搬送しつつ、各ステーション4内で上下の第2ヒータ6a、6bの一方または両方を上昇下降させてからワークWを加熱してもよい(ベルトコンベア式と枚葉式のハイブリッド型)。
図3の例でいえば、載置部7に代えてベルトコンベアを設けて第2ヒータ6aのみを移動させるか、第2ヒータ6bの上下動を妨害しないベルトコンベアを設けることになる。このようなハイブリッド型であれば、高温炉1の簡素化を図れると共に、放熱による加熱度合いのばらつきも抑制できる。
【0029】
ある実施形態において、
図2、
図3に示すようなワークWが載置される金属製の治具8を用いてもよい。
図3に示す例では、治具8は、ワークWが載置される台座と、この台座に接続され、ディスク状のワークWを固定する支柱とを有する。ワークWの加熱に際し、このような治具8も加熱されることにより、治具8を介してワークWは内側からも加熱され、ワークWをより均一に加熱することができる。
【0030】
各ステーション4の寸法も、特に限定されるものではなく、ワークWの形状、サイズ、材質などに合わせて適宜設計変更でき、ワークWの品質維持を実現させることができる。
【0031】
ステーション4の数は特に限定されないが、ステーション4からの排出サイクルを増やし、ステーション4毎の加熱時間の短縮化を図るためにはステーション4の数は多いほど良いが、加熱のための消費電力を考慮すると、ステーション4の数は10~20であることが好ましい。
【0032】
(第1ヒータ5)
第1ヒータ5は、ステーション4内でワークWを左右から加熱する。第1ヒータ5としては特に限定されないが、輻射熱によりワークWを加熱できるセラミックヒータが好ましい。
図3に示す例では、第1ヒータ5はワークWに接触せず、ステーション4に固定されている。
【0033】
(第2ヒータ6)
第2ヒータ6は、ステーション4内でワークWを上下から加熱する。このように上下からもワークWの中心に向かって加熱することにより、均一に熱を伝えることができる。第2ヒータ6の種類は、特に限定されないが、カートリッジヒータが好ましい。ステーション4内の上部および下部のそれぞれにおける第2ヒータ6の数も限定されず、ステーション4のサイズによって適宜変化させることができる。
【0034】
第2ヒータ6はワークWに上下から接触してワークWを加熱することもできる。第2ヒータ6のうち少なくとも一つ(例えば、
図3の第2ヒータ6a)がワークWに接触してワークWを加熱することにより、加熱の効率化・時短、温度の安定化につながる。
図3に示す例では、上下の第2ヒータ6(6a、6b)と接するヒータープレート9が設けられており、ヒータープレート9は、治具8の支柱に嵌合する凹部を有し、第2ヒータ6aからの熱が、ヒータープレート9と治具8を介してワークWに上部および内部から伝わるようになっている。また、第2ヒータ6bからの熱も、ヒータープレート9と治具8を介して下部および内部からワークWに伝わる。ヒータープレート9の厚さや長さは上下で異なっていてもよい。第2ヒータ6aからの熱量は、第2ヒータ6bからの熱量と同じでも異なっていてもよく、加熱するワークWの高さ、体積などに応じて適宜変更できる。
【0035】
高温炉1は、第2ヒータ6を搭載するエアシリンダ10をさらに備えてもよい。エアシリンダ10を上下に存在させ、第2ヒータ6aを押し当てるものと、第2ヒータ6bを持ち上げるものを設けてもよい。これらのエアシリンダ10により、第2ヒータ6a、6bを介してワークWを上下に移動させることができる。また、例えば、1kgのワークWの保持、移動に適した圧力を、第2ヒータ6の自重や上側のエアシリンダ10の推力により発生させることもできる。
【0036】
[制御系]
高温炉1は、高温炉1の動作制御を行う第1制御部11と、高温炉1の温度制御を行う第2制御部12と、をさらに備えることができる。第1制御部11と第2制御部12は各々、CPUおよび半導体メモリを含むマイクロコンピュータなどで構成することができる。特に、第2制御部12の例としてはPLC(Programmable Logic Controller)が挙げられる。なお、
図6は、第1制御部11および第2制御部12がそれぞれの制御を行うために接続される高温炉1の構成部材の例を示す図である。このように、異なる制御を行う2つの制御部を設けることにより、温度管理を集中して行うことができる。
【0037】
温度制御において、1つのヒータにつき1つの温度センサを対応させることが一般的であるが(
図7(A)上部の例では3チャンネルに固定)、例えば、第2制御部12としてPLCを使用すると、ヒータと温度センサの組み合わせの幅が広がる(
図7(B)、(C))。すなわち、
図7(C)に示すように、1つの温度センサ(例えば、熱電対13)が複数のヒータ(第1ヒータ5、第2ヒータ6)に対応することが可能で、かつ、複数の温度センサが1つのヒータに対応することも可能となる。ここで、1つの温度センサを、例えば、同種のヒータのみ、1つのステーション4内のヒータのみ、あるいは複数のステーション4内のヒータに対応させてもよい。また、例えば、40個のヒータに11個のセンサで対応させることもPLC制御によって可能となる。こうして、ヒータと温度センサは1:1やn:1の関係に縛られず、複数の温度センサと複数のヒータとの様々な組み合わせによる集中温調制御を可能にするn:n制御がPLCにより実現でき、昇温時間の短縮化、安定化も図れる(立ち上げ時・投入時・排出時)。なお、熱電対13の種類は、ワークWの加熱温度に応じて適宜選択できる。
【0038】
高温炉1は、電流センサ14をさらに備えてもよく、電流センサ14が第1ヒータ5または第2ヒータ6の動力線の断線を検知すると、第2制御部12は第1ヒータ5および第2ヒータ6を停止してもよい。電流センサ14によりいずれかの動力線が断線したと第2制御部12が判断すると、第2制御部12はワークWの過昇温を防止するため第1ヒータ5および第2ヒータ6を停止してもよい。また、第1制御部11により、ステーション4の動作や搬送手段を停止させることもできる。なお、電流センサ14の種類は特に限定されず、同様の機能を有するものを用いてもよい。
【0039】
また、上記したサイクル動作を実施できないと判断されたときに、高温炉1において、保温モードに設定される。この保温モードへの切り替えは、第1制御部11が自動で行ってもよく、緊急時の対応手段の一つとして手動で行われてもよい。保温モードでは、熱風生成器3のみを稼働させてワークWを保温できる。すなわち、左右の第1ヒータ5および上下の第2ヒータ6を停止し、熱風生成器3からの熱風の対流だけで炉内温度(ワーク温度)を制御することになる。あるいは、全てのヒータを稼働させ、第2ヒータ6をワークから離れる態様を取ってもよい。他の保温モードの態様として、第1ヒータ5のみを停止にすることもできる。保温モードを設定する理由は、ワークWが停滞した状態で第1ヒータ5や第2ヒータ6が稼働し続けると高温炉1内の温度は上昇する傾向にあるためである。こうして、製造ラインでトラブルが発生しても、加熱処理を中断するのではなく、継続することができる。また、特別な保温材を用いる必要もない。
【0040】
また、高温炉1は、第2制御部12に接続するセーフティPLCを備えてもよく、第2制御部12から正常信号がセーフティPLCに送られていれば、第1ヒータ5および第2ヒータ6は正常に出力を行い、第2制御部12が故障した場合または正常制御できない場合に、セーフティPLCによって第1ヒータ5および第2ヒータ6の動力を遮断するように設計してもよい。この場合、熱風生成器3の運転も停止するが、高温炉1の安全性を担保することができる。
【0041】
(その他)
高温炉1は、Uターンなど、ワークWの移動する軌道を変えるシフタ15を備えてもよい。シフタ15により、
図1、
図2のように高温炉1を直線ではなくコの字状にすることにより、搬送距離を稼ぐことが可能になる(作業場の省スペース化)。シフタ15の構造は、ワークWを保持しつつ軌道を変えられるものであれば特に限定されない。シフタ15が設けられる箇所にもカートリッジヒータ等の加熱手段を設置してよい。
【0042】
さらに、高温炉1に必要な制御管理を行うために、制御プログラムを保存する記憶部、各箇所の温度や断線等を表示出力する表示部(出力部)、各部材を操作するための操作部(入力部)等も設けることができる(
図1参照)。
【0043】
[高温炉1の製法、用途]
ワークWの材質や寸法、目標加熱温度等によって、各ステーション4の寸法や第1ヒータ5等の種類などを調整する。また、高温炉1の各部材の大きさや位置関係は、ワークWやステーション4の大きさに合わせて適宜調節すべきであることは言うまでもない。
【0044】
本開示の高温炉1は、ワークWを加熱するために用いることができる。高温炉1は、熱風生成器3、第1ヒータ5、第2ヒータ6を用いて、ワークWを所望の温度に加熱することができる。なお、本開示の高温炉1によれば、後工程の前にワークWを、例えば200℃に加熱したい場合、170℃~230℃の範囲内に、好ましくは190℃~210℃の範囲内にワークWを加熱(保温)することができる。
【0045】
また、高温炉1で焼き戻し等の熱処理を行うことを目的として、加熱(保温)温度を設定することもできる。
【0046】
[動作]
(通常モード)
ワークWを加熱するために、上記のように、第1制御部11により高温炉1の動作制御を行い、第2制御部12により高温炉1の温度制御を行う。より具体的には、第1制御部11は、例えば、ワークWが複数のステーション4を通過するために搬送手段を制御する。第2制御部12は、ワークWが所望の温度に加熱されるように熱風生成器3、第1ヒータ5、第2ヒータ6等を制御する。
【0047】
第1制御部11は、ワークWの搬送速度(搬送間隔)も制御できる。上述したように、高温炉1では、3種類のヒータによって効率よくワークWを加熱できるため、高温炉1内の搬送速度を上げる、加熱時間を短くすることができる。
【0048】
ワークWが所望の温度に達したか否かは、高温炉1のどの箇所(ステーション4、シフタ15、等)でも確認してもよい。温度確認の容易さから、搬送経路の折り返し地点(シフタ15)で行うのが好ましい。高温炉1からのワークWの排出箇所以前でまだワークWが所望の温度に達していなければ、熱風生成器3等の加熱温度を上げればよい。また、ワークWが高温である時間が長いと、ワークWが熱影響(熱硬化、ひずみ、酸化、変色)を受けるため、高温炉1からの排出箇所で加熱の目標温度に到達させることが好ましい。
【0049】
(保温モード)
前述したように、本開示の高温炉1はワークWの加熱のために用いられ、一連の製造ラインに組み込むことができる。そこで、高温炉1以外の製造ラインの前後のいずれかが原因で高温炉1(ステーション4)が停止させられることが考えられる。この場合にも、高温炉1では、第1制御部11により搬送手段等は停止状態になり、保温モードに設定される。また、シャッタ2bが閉じられた後に、第2制御部12は高温炉1内の温度を、空間温度とプレート温度を基に熱風生成器3により維持することができる。なお、保温モードにおいて、空間温度とプレート温度を基づき、すべてのワークWがステーション4内に移動するよう設定されてもよい(ワークWをシフタ15に残さない)。
【0050】
以上のような構成からなる本実施形態の高温炉1によれば、高温炉1内の雰囲気を加熱循環させるための熱風生成器3と、ワークWを載置させながら移動させる複数のステーション4と、が設けられている。ステーション4はそれぞれ、ワークWを左右から加熱する第1ヒータ5と、ワークWを上下から加熱する第2ヒータ6とを含む。
【0051】
このような本実施形態の高温炉1によれば、3種類のヒータを用いることにより、高温炉1全体の均熱性を実現でき、また加熱処理の短縮化を図れるという利点がある。さらに、上述のようなステーション4内で加熱することにより、単なるベルトコンベア上の加熱処理に比べて熱を逃がさないという利点もある。
【0052】
また、本実施形態の高温炉1によれば、第1ヒータ5はセラミックヒータであり、第2ヒータ6はカートリッジヒータであってもよい。従来より、連続炉において、加熱対象物であるワークWを熱風や輻射熱により加熱することが一般的である。カートリッジヒータにより加熱対象物を例えば600℃に加熱することも可能であるが、炉とは、金属なら300℃以上、ガラスなら700℃、セラミックスなら1000~2,000℃以上の高温に温めることを目的とするものであり、その能力からカートリッジヒータが採用されることはほとんど見受けられない。これに対し、本実施形態の高温炉1によれば、熱風生成器3の他に、カートリッジヒータ6およびセラミックヒータ5を用いて上下左右からの加熱を行うことによりワークWを均一に加熱することが可能であり、緻密な加熱処理が求められる場合に特に好適である。
【0053】
また、本実施形態の高温炉1によれば、上述したように、第2ヒータ6(6a、6b)のうちの一つが、ワークWに接触して加熱してもよい。さらに、第2ヒータ6(6a、6b)は、ワークWに上下から接触して加熱してもよい。こうして、より効率的な伝熱が可能となり、加熱の効率化・時短、温度の安定化につながる。なお、例えば、第2ヒータ6aを単独でワークWに接触させて加熱する場合には、ワークWの搬送手段として用いられるベルトコンベアにも適用可能である。すなわち、ベルトコンベアによりステーション4に搬送されたワークWの真上に第2ヒータ6aを下降させ接触した状態で加熱することにより、ステーション4内で間欠的な加熱が可能となり、加熱のばらつきを抑制できる。
【0054】
また、本実施形態の高温炉1によれば、ステーション4は載置部7を含み、載置部7はワークWを前方に移動させて各ステーション4における移動のサイクル動作を可能にするものでもよい。加熱と移動が繰り返されるサイクル動作により、間欠的な加熱が可能となり、加熱のばらつきを抑制できる。
【0055】
また、本実施形態の高温炉1は、高温炉1の動作制御を行う第1制御部11と、高温炉1の温度制御を行う第2制御部12と、をさらに備えてもよい。異なる制御を行う2つの制御部を設けることにより、温度管理を集中して行うことができる。
【0056】
特に、第2制御部12として上述したようなPLCを用いることにより、複数の温度センサと、複数の第1ヒータ5、複数の第2ヒータ6とを様々に組み合わせることにより集中温調制御(n:n制御)を実現できる。例えば、複数の温度センサの値を見て1つのヒータを制御することが可能であることから、個々のステーション4ないし個々のヒータの位置における温度制御を精緻に行うことができる。温度制御の温度検知手段として、熱電対13を好適に用いることができる。
【0057】
また、本実施形態の高温炉1によれば、電流センサ14により第1ヒータ5または第2ヒータ6の動力線の断線を検知すると、第2制御部12は第1ヒータ5および第2ヒータ6を停止してもよい。このように、高温炉1の安全性を担保することができる。
【0058】
また、本実施形態の高温炉1によれば、サイクル動作を実施できないと判断されたときに、ワークWを保温する保温モードに設定されてもよい。こうして、製造ラインでトラブルが発生しても、特別な保温材を用いることなく、加熱を継続することができる。上述したように、保温モードとして様々なものを予め設定できる。
【0059】
また、本実施形態の高温炉1は、第2ヒータ6が搭載されるエアシリンダ10をさらに備え、エアシリンダ10によりワークWが上下に移動するように構成されていてもよい。例えば、エアシリンダ10の推力により第2ヒータ6(6a、6b)を移動させることによって、加熱するワークWの厚さ、体積等が変化しても対応可能である(すなわち、ワークWの厚さ、体積等にかかわらずワークWに接触したり、均一な加熱が可能となる)。また、第2ヒータ6がワークWを加圧し過ぎない、かつ均一に接触させることが可能となる。特に、加熱するワークサイズが大きいと、外側だけ温まりすぎる可能性もあるが、本開示の高温炉1にチラーのような冷却システムがない場合であっても、上下の第2ヒータ6a、6bをワークWに接触させたり、回避させたりすることにより、ワークWの加熱冷却(温度調整)が可能になる。
【0060】
また、本実施形態の高温炉1は、ワークWの移動する軌道を変えるシフタ15をさらに備えてもよい。このように、高温炉1やワークWの搬送経路は直線形状に限定されず、
図1、
図2の例のようなコの字状に設計することや、工場等の作業場の面積や設置位置に合わせて適宜様々な形状に設計することもできる。
【0061】
なお、本実施形態による高温炉1は、上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
【0062】
従来、積層状態のワークを加熱する際、ワーク間には空気層が介在するため熱伝導が悪く、温度ムラが出てくるという課題があった。これに対し、本開示の高温炉1によれば、3種類のヒータを用い、かつ、各ステーション4内で間欠的な加熱により、積層状態のワークWであっても加熱のばらつきを抑制することが可能である。また、本開示の高温炉1によれば、1つのワークを加熱することもできる。この場合、上述のように、ワークWの高さに合わせてエアシリンダ10により第2ヒータ6の高さを調節して加熱することができる。また、例えば、上側第2ヒータ6aが固定されその高さの調節ができない場合であっても、下側第2ヒータ6bにより、ワークWの位置を第1ヒータ5に合わせて調整することも可能である。例えば、ワークWの中心位置が第1ヒータ5のホットスポット(例えば、
図3における第1ヒータ5の中心部分で最も熱量が高くなる箇所)の位置に合わせることも可能である。このように、本開示の高温炉1が適用可能なワークの形状、サイズ、材質(例えば、ガラス、セラミック)などは特に限定されない。
【0063】
また、
図3に示す例では、ステーション4は熱風生成器3からの熱風も進入可能な半密閉状態であるが、さらに開閉可能な断熱性の部材を用いて各ステーション4を密閉状態にしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 高温炉
2a カバー
2b シャッタ
3 熱風生成器
4 ステーション
5(5a、b) 第1ヒータ
6(6a、b) 第2ヒータ
7 載置部
8 治具
9 ヒータープレート
10 エアシリンダ
11 第1制御部
12 第2制御部
13 熱電対
14 電流センサ
15 シフタ
16 断熱材
W ワーク
【要約】
【課題】新規な高温炉1を提供する。
【解決手段】高温炉1内の雰囲気を加熱循環させるための熱風生成器3と、ワークWを載置させながら移動させる複数のステーション4と、が設けられている。ステーション4はそれぞれ、ワークWを左右から加熱する第1ヒータ5と、ワークWを上下から加熱する第2ヒータ6とを含む。
【選択図】
図3