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特許7525949DC大電流用ノーマルモードインダクタ及びノイズフィルタ
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  • 特許-DC大電流用ノーマルモードインダクタ及びノイズフィルタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】DC大電流用ノーマルモードインダクタ及びノイズフィルタ
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/06 20060101AFI20240724BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20240724BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20240724BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20240724BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
H01F17/06 D
H01F17/06 A
H01F27/00 S
H01F27/00 R
H01F37/00 C
H01F37/00 N
H01F37/00 K
H01F17/06 F
H01F37/00 A
H01F27/28 K
H01F27/28 195
H05K9/00 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023148609
(22)【出願日】2023-09-13
【審査請求日】2024-03-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595104574
【氏名又は名称】株式会社オータマ
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 大
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-119611(JP,A)
【文献】特表2021-509224(JP,A)
【文献】特開平07-066041(JP,A)
【文献】実開平06-011331(JP,U)
【文献】特開2002-158113(JP,A)
【文献】特開2023-126149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00- 7/02
H01B 7/38- 7/40
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26-27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 38/42
H03H 1/00- 3/00
H03H 5/00- 7/13
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの入力端子と一つの出力端子を有するノイズフィルタ用インダクタであって、両端子間で導電体が複数導線に分かれ、分かれた複数導線が、それぞれ磁性体コアを貫通しており、前記入力端子と出力端子間を複数導線を介して流れる電流の総和が、1つのコアを貫通すると磁気飽和を生じるが、複数導線の分割された電流のそれぞれがそれぞれのコアを貫通しても磁気飽和しないように前記コアおよび前記複数導線が構成されている、前記ノイズフィルタ用インダクタ。
【請求項2】
磁性体コアを貫通する導線が、コアに1回または複数回巻回している、請求項1に記載の、インダクタ。
【請求項3】
1つのコアに巻き付ける導線が、さらに複数の導線に分割されている、請求項1に記載の、インダクタ。
【請求項4】
複数の、請求項1~に記載のインダクタに、線間および対地間コンデンサを接続して、ノーマルモードおよび/またはコモンモードのノイズを除去するノイズフィルタ。
【請求項5】
請求項に記載のノイズフィルタであって、インダクタは偶数個有し、それに加えて前記複数導線の電流方向が反対の組が貫通するコモンモード巻きコアをさらに有してコモンモードノイズ用コアとする、ノイズフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電流が流れる回路において、ノイズを有効に遮断できる、大電流用ノーマルモードインダクタ及びノイズフィルタに関する。
より詳しくは、スイッチング方式の大電流が流れる回路におけるノイズフィルタとして、ノーマルモードインダクタの磁気飽和の影響を回避して有効なノイズフィルタ作用を実現した、ノイズフィルタ用インダクタ装置およびノイズフィルタリング手法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車、電動航空機等の動力用モーター用インバータや高電圧DC/DCコンバータは、10kHz~200kHzのスイッチングを行うことが多いが、この高調波がノイズ干渉問題を引き起こすことがある。
例えば電気自動車のインバータとバッテリ間のハーネスからスイッチングの高調波ノイズが輻射して、AMラジオや無線、車内通信等に影響を及ぼしている。
また、電気自動車の開発用テストベンチや太陽光発電で使用されるDC/DCコンバータからもスイッチングノイズの高調波が漏れてEMC問題が生じている。
一般に動力用電気回路において、ノーマルモードノイズとコモンモードノイズは混在しているが、大電流の回路において、ノーマルモードノイズを対象とするリングコアを用いたインダクタによるノイズフィルタは、大電流が原因の磁気飽和の発生の故に、実現できなかった。
そのため、従来技術において、大電流が流れる回路においてはノイズを遮断するノーマルモードコアを用いたインダクタは使えず、コアを使用したフィルタはコモンモードコアを有するコモンモード用のものが一般的であった。
一般に、ノイズ対策はいわゆる弱電分野の電圧・電流を扱うレベルにおいてのもので開発が多くおこなわれ、本願の発明の分野である、極めて大きい電流が流れる回路におけるノイズ対策というものは、手薄であった。すなわち、大電流が流れる電気自動車やハイブリッド車においては、シールドワイヤによってノイズの放射を封じ込める方式がもっぱらであった。 しかしながら、シールドワイヤを用いたワイヤハーネスは構造が複雑でコストが上がるため、ノイズそのものを減少させる大電流用のノイズ減少手段が望まれていた。
【0003】
なお、ここで、磁気飽和とは、透磁率が大きい材料であっても、印加される磁場が非常に大きいと、透磁率が減少して、結局比透磁率=1に近づいて行ってしまう、すなわち、真空の透磁率μ&#8320;に近づいていく現象である。
従って、ノイズキラーとしての例えばフェライトコアの使用においては、強磁場すなわち大電流が流れる電線に対してノイズキラーとしてフェライトコアを使用した場合、大電流による強い磁場の作用によってインダクタンスが減少してしまい、ノイズキラーとして使用できないものとなっていた。
透磁率が非常に大きい磁性体である強磁性体であっても、透磁率すなわち、B―H曲線におけるヒステリシス曲線は、その上辺、下辺において、傾きがゼロすなわち、比透磁率1となってしまう磁気飽和を起こす。
この磁気飽和は、磁場Hが印加されると、磁性体の場合はスピンが揃っていくが、全部のスピンがこれ以上揃わない状態になると、磁場をいくら増加させても、スピンの整列による磁束密度の増加は頭打ちとなる。
【0004】
よって、磁場をそれ以上増加させても磁束密度は増えないという磁気飽和が発生する。磁気飽和状態になると、後述する、磁性体コアの磁気モーメントの反転によるエネルギー消費によるノイズ遮断効果も無くなり、比透磁率も1となって、インダクタンスによるノイズ電流阻止効果も減少してしまう。
そのため、従来技術において、大電流を流す電線を伝播するノーマルモードノイズを抑える手段として、磁気コアは採用されていなかった。
【0005】
特許文献1には、「分割された磁性体コアを有し、その磁性体コアでバスバーの周囲を取り囲むことにより、バスバーを伝搬するノイズを減衰させるように構成されたノイズフィルタが知られている(例えば、特許文献1参照)。バスバーのように大電流が流される配線の場合、特にディファレンシャルモードノイズフィルタでは、磁性体コアの磁気飽和を抑制することが重要である。下記特許文献1に記載のノイズフィルタの場合、一方のコア部材と他方のコア部材との間に挟み込まれるギャップスペーサ部が設けられ、これにより、一方のコア部材と他方のコア部材との間にギャップを形成して、磁気飽和を抑制している」(段落番号0002)と開示し、特許文献1として特開2005-93536を紹介している。
しかしながら、ギャップを設けるだけでは、電気自動車等のレベルの大電流が流れる回路のノーマルモードノイズの有効な遮断をおこなおうとすると不十分である。
【0006】
特許文献2には、「EMCフィルターとしてインバータ装置に搭載する先記フィルターユニットのフェライトコアは、そのインピーダンス特性,高周波特性をノイズ電流の大きさ,周波数、およびインバータのキャリア周波数などに対応して適正なものに選定する必要があり、実際には定格の異なる各種インバータ装置の機種ごとに選定したEMCフィルターを実装して検証を行い、そのノイズ低減効果の評価を確認して決定するようにしている。例えば発生するノイズ電流量が大きい場合には、フェライトコアの磁気飽和を避けるために図8に示したリングコア形のフェライトコア1の数を増やして同軸上に複数個並べ、このフェライトコアにケーブル2を一括巻回してフィルターユニット3を構成するなどの選択変更が必要となる」(段落番号0007)ことが開示されている。
しかしながら、同軸上に複数個フェライトコアを並べたものであっても、その複数個のコアを磁気飽和させてしまう電流が流れる回路には使用できないものであった。
【0007】
特許文献3には、「信号ライン特に電源ラインに挿入する場合、問題となるのは、前述のコア材の磁気飽和が有効電流値の限界を与えてしまう点である」(段落番号0039)、
「そこで、本発明の実施形態に係るラインノイズ減衰器は、1つのコア材における巻線数が所望信号電流値で磁気飽和する限界ターン数に止めることとし、このインダクタ1に抵抗2を並列に組み合わせた素子を単位素子とすることとし、電源ライン等の所望電流に耐えるノイズ減衰器の実用化を図っている。
なお、磁気飽和する限界ターン数は、導体ラインに流れる電流値によって決まるものであり、一義的に決定されるものではなく、前記電流値に応じて調整を行うこととなる」(段落番号0040)との旨が開示されている。
すなわち、フィルタコアに巻回する導線のターン数を磁気飽和しないレベルにとどめる発明であるが、この従来技術は通信機器等の電源ラインの電流程度であり、はるかに大きい電流が流れる回路におけるノイズフィルタに用いることはできないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-125426号公報
【文献】特開2011-192825号公報
【文献】特開2010-130368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願の発明の課題は従って、従来にない極めて大きな電流、すなわち、数百アンペアから千アンペアを超える電流が流れる回路におけるノイズ対策に用いても磁気飽和せず、ノーマルモードノイズを有効にフィルタリングできる、磁気コアを用いた、取り扱いの簡便な、インダクタおよびそれを用いたノイズフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の態様を含む。
[1] 一つの入力端子と一つの出力端子を有するノイズフィルタ用インダクタであって、両端子間で導電体が複数導線に分かれ、分かれた複数導線が、それぞれ磁性体コアを貫通している、前記ノイズフィルタ用インダクタ
[2] 磁性体コアを貫通する導線が、コアに1回または複数回巻回している、[1]に記載の、インダクタ。
[3] 前記入力端子と出力端子間を複数導線を介して流れる電流の総和が、1つのコアを貫通すると磁気飽和を生じるが、複数導線の分割された電流のそれぞれがそれぞれのコアを貫通しても磁気飽和しないように前記コアおよび前記複数導線が構成されている、[1]に記載の、インダクタ。
[4] 1つのコアに巻き付ける導線が、さらに複数の導線に分割されている、[1]に記載の、インダクタ。
[5] 複数の、[1]~[4]に記載のインダクタに、線間および対地間コンデンサを接続して、ノーマルモードおよび/またはコモンモードのノイズを除去するノイズフィルタ。
[6] [5]に記載のノイズフィルタであって、インダクタは偶数個有し、それに加えて前記複数導線の電流方向が反対の組が貫通するコモンモード巻きコアをさらに有してコモンモードノイズ用コアとする、ノイズフィルタ。
【0011】
本願の発明者は、ノーマルモードノイズを有効に遮断するためには、磁気飽和をさせずに必要なインダクタンスを維持することが必要であることを認識して、以下の構成に到達した。
【0012】
大電流のノーマルモードインダクタはギャップ入りコアを並列に分けて分流することで飽和を防ぐが、コアを並列接続したりギャップを入れた場合はインダクタンスが低下してしまう。しかし、コアに線材を巻きつけると巻き数の2乗でインダクタンス値を増加することが可能となり、大電流であっても必要なインダクタンスをノーマルモードで維持することが可能である。
すなわち、本発明のインダクタを通って流れる電流の総和はひとつのコアを磁気飽和させるほどの大電流であっても、この電流を複数の導体に分けて流し、それぞれの導体について、インダクタの環状コアを設ければ、個々の環状コアの穴を貫通する電流はそれぞれの環状コアの磁気飽和に達しない程度の電流におさえることができ、低下した合成インダクタンスを補うために導体を環状コアに複数回巻回させることで、磁気飽和は起こさないのでコアによるノイズフィルタ効果を妨げることはなくなり、そして複数の導体を流れる電流の総和は、所望の大電流であるので、大電流の流れる導線においても、ノーマルモードノイズを環状コアのノイズ遮断効果によって、有効にノイズフィルタの役を果たす、という構成を有するものである。
【0013】
また、コアは、その材質、形状、寸法、コアにギャップを設けるかどうか、ギャップを設けた場合のコアの総磁気抵抗値、コアの総合透磁率によって、そのノイズフィルタとしての特性が変わるものであるので、本発明のインダクタが、全体として発揮する性能の要求に従って、最適なものを起用することにより、所望の特性を有するノイズフィルタ用インダクタが構成可能である。
【0014】
環状コアの穴を通る導線に流れるノイズの遮断作用は、コアと導線とがインダクタを形成し、そのインダクタのインピーダンスの、リアクタンス成分とレジスタンス成分によって、ノイズ高周波がリアクタンスによるノイズ電流制限と、コアを構成する磁性体の磁気モーメントの反転動作によるエネルギー消費効果によるノイズ電流制限とがあり、それぞれ周波数特性が異なる。
【0015】
また、コアにギャップを設けると、コアの穴を通る導線に流れる電流により発生する起磁力に応じて生じる磁束密度が、磁気回路の磁気抵抗の増加によって減少するので、磁気飽和がおきる飽和電流値を大きくすることが出来る。しかしながらその分磁気損失が減るのでエネルギー消費効果によるノイズ電流制限効果は減少することとなる。
【0016】
またコアにギャップを入れることにより磁気飽和を生じないようにした場合、大電流に使用される線材やバスバーは大きな断面積を必要とするが、コアに容易に巻き付ける事が出来ない。そこで、線材やバスバーを断面積の小さい仕様に分割して使用することによって、必要な断面積を得ることが出来る。
【0017】
また、コアに導体を巻回する構造では、通過する導体が、巻回なしにコアを通過するもの以外に、コアに1巻きだけ巻いて通過する構成、2巻きさせる構成、3巻させる・・・、という様に複数回コアに巻きつけたうえでインダクタの両端子に接続する構成とするものも可能である。
このように巻き付けを行うと、インダクタンス値の調整の幅がより広がり、所望の特性のものの製造が容易となる。
【0018】
ノーマルモードコアに加えてコンデンサやコモンモードコアを追加した回路を構成して、ノイズ状況に対応したフィルタを生成することもできる。これらの追加方法でノイズフィルタの特性を変化させる事が可能である。例えばコンデンサを線間および対地間に入れる。或いは、コアとコアの間に入れる等の多種多様な構成が可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電気自動車や大電流用電源等のDC大電流、すなわち、従来のコアを用いたノイズフィルタでは磁気飽和によって使用できなかったような大電流が流れる回路においても、ノーマルモードコアを用いたノイズフィルタが使用可能になるような、新規な構成のノイズフィルタを提供することが可能になる。
本発明のノイズフィルタ用インダクタは、接続端子としては2つであり、その端子間に大電流が流れる状態で、本発明のインダクタは、所望のノイズ遮断動作をおこなうノイズフィルタとして動作するので、ノイズ遮断されたその先の回路から、ノイズに由来する電磁放射を有効に阻止することができ、従来の様な複雑で重いシールドケーブル、シールドコネクター、リチウムイオンバッテリーのシールド化等の使用を避けることが出来る。
また、本発明のインダクタにおいては、ノイズ遮断をおこなうコアの構造、材質、導線の配置および巻回の有無ならびに回数、といったコアならびにインダクタ全体の構造を最適化することによって、フィルタ特性を所望のものに調整することが可能である。
【0020】
なお、本発明においては、インダクタの名称を用いてはいるが、これはインピーダンスのインダクタンス成分を利用することのみを意味するのではなく、ノイズという高周波を遮断するローパスフィルタ的であることからこの名称を使用しているにすぎない。磁気飽和に着目していることからも、インピーダンスの抵抗成分を重視したものであることは言うまでもなく、また実際の回路における使用では抵抗、誘導、容量の各要素はすべて考慮の対象となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、1-Aが磁気飽和を起こす従来の構成、1-Bが本発明の磁気飽和を起こさない構成であることを説明する模式図である。
図2図2は、本発明の一実施例である、導電体が、コアを複数回巻回するインダクタの模式図である。
図3図3は、本発明の一実施例である、ノーマルモードノイズ用のインダクタの模式図である。
図4図4は、本発明の一実施例である、ノーマルモードノイズ用フィルタの模式図である。
図5図5は、本発明の一実施例であるノイズフィルタであって、コモンモード用コアを有するものの模式図である。
【0022】
第1図に本発明の基本原理を示す。1-Aに示す従来の構成においては大電流が流れる導電体1は、入力電極3から出力電極4へ流れる大電流を通し、コア2の穴を貫通している。
1-Bに示す本発明においては、この導電体が複数の導線に分かれており、図の例においては3つの導線1a、1b、1cに分かれ、それぞれが、コア2a、2b、2cの穴を貫通している。3本の導電体には、ほぼ等しい値の電流が流れるように構成されており、ノイズ遮断効果を高めるためには、複数の導線の状態は出来る限り同一に保つことが、ノイズフィルタの特性を向上させるうえで重要である。
【0023】
図1-Aの場合、このコアの材質は、30Aがコアの穴を通過すると、その電流によって磁気飽和が起きるものであり、これを、1-Bの本発明では10Aが流れる導電体3本 すなわち1a、b、1cを、同じ材質のコア3個すなわち2a、2b、2cのそれぞれの穴に通して構成する。入出力電極3および4は、導電体が1本の1-Aと同様に1-Bにおいてもそれぞれ1個設ける。本発明の場合、1-Bの3つのコア2a、2b、2cが、30Aで飽和した1-Aのコア2と同一の寸法である場合、もちろん10Aでは飽和しないが、より小さい寸法であっても、10Aまで電流が減少しているので、10Aでも飽和しない程度の寸法とすれば足りる。
【0024】
本発明のインダクタはコンデンサを併用したノイズフィルタとして、必要なシールドや接地をおこなうことによって、ノイズ遮断効果を高めるようにしてもよいことは言うまでもない。
図2に示すように、コアを通過する導電体16a、16b、16cが、コア2a1、2b1、2c1を複数回巻回されるようにしてもよい。図2では1回のみ巻いた例を示す。
巻く回数が増えると、インダクタンスは増加するが磁気飽和も起き易くなるので、適切な巻き数を選択することによって、インダクタ全体としての所望の特性を得ることが、より多様かつ容易となる。
【0025】
図3に示すように、ノーマルモード用コアを、複数の導電体のそれぞれが複数巻で貫通する構造とすることによって、本発明のインダクタは、上述したように巻き数によるインダクタンスの調節と複数導電体への分割による飽和回避の両立が可能となり、複数のコアとすることによる全体形状の自由度の増加も得られる。
例えばモーターの駆動電流である、電源からモーターへ流れる大電流Iaは、入力電極3aから出力電極4aに流れ、モーターからの戻りの電流Ibが、入力電極3bから出力電極4bに流れる。
ノーマルモードノイズの電流は、は、ノーマルモードノイズ電流であるから、3aから4aの方向に流れ、3bから4bの方向に流れる、またはその反対の方向に、と交番する高周波電流である。
【0026】
図4に示すように、インダクタの線間および接地との間にコンデンサCab、Cag、Cbgを設けることによって、ノイズフィルタとして使用することができる。
【0027】
図5に示すように、図4のノーマルモード用のコアに加えて、コモンモード用のコア7を設けることによって、コモンモードとノーマルモードの両者のノイズを減少させるフィルタとして使用することも可能である。
【符号の説明】
【0028】
1: 導電体
1a、1b、1c :複数の導電体
2: ノーマルモード用コア
2a2、2b2、2c2: 導電体巻回なしのコア
2a1、2b1、2c1 :導電体を巻回したコア
3、3a、3b : 入力電極
4、4a、4b : 出力電極
7 : コモンモード用コア
Cab、Cag、Cbg : コンデンサ
【要約】
【課題】
大電流が流れる回路において、磁気飽和を起こさずに磁気コアによるノイズフィルタを実現する。
【解決手段】
大電流を複数の導電体に分けて、複数の導電体のそれぞれに磁気コアによるノイズフィルタを設ける。
磁気コアは、複数の異なった磁気コアを一つの導電体が通る構成とし、複数のコアの特性を異ならせることにより、周波数帯域を広げることが出来る。
ノーマルモードノイズの遮断に加えて、コモンモードノイズにも対応可能なコア式のノイズフィルタを提供することもできる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5