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特許7525953ヘリンボーンパターンを有するフォイル空気軸受
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】ヘリンボーンパターンを有するフォイル空気軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 27/02 20060101AFI20240724BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
F16C27/02 A
F16C17/02 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023517995
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 KR2021013995
(87)【国際公開番号】W WO2022080807
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】10-2020-0133722
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518398925
【氏名又は名称】株式会社ティーエヌイーコリア
【氏名又は名称原語表記】TNE KOREA CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、キョンス
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-193833(JP,A)
【文献】実開昭61-099721(JP,U)
【文献】特表2018-504566(JP,A)
【文献】特開昭60-136615(JP,A)
【文献】特開2005-030460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 27/00-27/08
F16C 17/00-17/26
F16C 33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心線を中心に既定の回転方向に回転する回転部の荷重を支持するためのフォイル空気軸受であって、
複数個のトップフォイルであって、前記回転部の表面と対向するように配置される上部トップフォイルと、前記上部トップフォイルの下方に配置される中間トップフォイルと、前記中間トップフォイルの下方に配置される下部トップフォイルとを含む、該複数個のトップフォイルと
弾性変形が可能な部材であって、前記下部トップフォイルの下方に配置されるバンプフォイルと、
前記中間トップフォイルの上面から下面まで貫通されている孔であって、前記回転部の回転方向と既定の角度をなす長手方向に沿って延びている複数個のスロットと、を備え、
前記上部トップフォイルは、前記回転部の回転によって発生する空気圧によって、前記スロットに対応する位置で下方に凹状に変形されることにより、ヘリンボーンパターンが形成され
前記複数個のトップフォイル及び前記バンプフォイルは、エッチングまたは溶接工程を使用せず、プレス加工によって自動的に切開及び折り曲げられることで、量産可能な形状を備えることを特徴とする、フォイル空気軸受。
【請求項2】
前記複数個のスロットは、既定の間隔ほど互いに離隔された状態で配置されており、前記回転方向と平行な仮想の対称線を中心に対称的に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のフォイル空気軸受。
【請求項3】
前記中間トップフォイルの下面と前記下部トップフォイルの上面は、互いに分離可能な状態で積層されていることを特徴とする、請求項1に記載のフォイル空気軸受。
【請求項4】
前記回転部が回転軸の形態に設けられるジャーナルフォイル空気軸受であって、
前記バンプフォイルを取り囲むように配置されるベースフォイルを含み、
前記複数個のトップフォイルの一端部と前記バンプフォイルの一端部と前記ベースフォイルの両端部を互いに結合させる結合部を含むことを特徴とする、請求項1に記載のフォイル空気軸受。
【請求項5】
前記回転部が回転軸の形態に設けられるジャーナルフォイル空気軸受であって、
前記回転部が回転する状態で、前記回転部と前記上部トップフォイルとの距離が近い位置で、前記スロットの間隔が他の部位よりさらに稠密に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のフォイル空気軸受。
【請求項6】
前記回転部が回転板の形態に設けられるスラストフォイル空気軸受であって、
前記中間トップフォイルは、円板状に設けられ、前記スロットは、前記中心線を円の中心とする仮想の円に沿って羅列されていることを特徴とする、請求項1に記載のフォイル空気軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォイル空気軸受に係り、特に、エッチングまたは溶接工程を使用せず、プレス加工によるスロット形成が可能であるところ、設計要求条件を満たすヘリンボーンパターンを形成しやすく、全体としての製造コストを減少させうるフォイル空気軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
空気軸受(air bearing)は、回転部と軸受との間で圧縮された空気の圧力で回転部を浮かべて荷重を支持する軸受である。
【0003】
このような空気軸受は、空気のように粘性を有する気体が動く面と共に移動していて停止されている面に出合いつつ、気体が圧縮されれば、動く面と停止されている面との間にとじこめられた空気の圧力が上昇しながら動く面を持ち上げる原理を利用する。
【0004】
空気軸受には、回転部の長手方向に沿って加えられる荷重を支持するためのスラスト空気軸受(thrust air bearing)と、回転部の半径方向に沿って加えられる荷重を支持するためのジャーナル空気軸受(journal air bearing)がある。
【0005】
ジャーナル空気軸受の一種として、圧力形成をさらに有利にし、高速での動的安定性を高めるために、薄肉素材のフォイル(foil)を使用するジャーナルフォイル空気軸受(journal foil air bearing)がある。
【0006】
図12には、そのようなジャーナルフォイル空気軸受1の一例が図示されているが、ジャーナルフォイル空気軸受1は、既定の回転方向Wに回転する円形回転軸形状の回転部Fの外周面と対向するように配置され、回転部Fを取り囲むトップフォイル2と、弾性変形が可能な波形部材であって、トップフォイル2を取り囲むように配置されるバンプフォイル3を備え、トップフォイル2とバンプフォイル3の一端部は、軸受ハウジングSの内面の溶接部4に溶接されている。
【0007】
一方、従来のスラストフォイル空気軸受1aは、図15に図示されたように、停止部Sに結合される板状部材である下板2aと、下板2aの上面に配置され、弾性変形が可能なバンプフォイル3a;バンプフォイル3aの上側に配置されて円形回転板の形状を有する回転部Rと接触可能なトップフォイル4aを備える。ここで、回転部Rは、中心線Cを中心に既定の回転方向Wに回転する円形回転軸形状の回転部Fに結合されている。
【0008】
そのような空気軸受1、1aは、回転部Fないし回転部Rの回転速度によって軸受内部に圧力が形成されることにより、非接触方式で軸受が回転部F、Rを浮上させるが、この際、軸受内部に形成された圧力は、図13に図示されたように、軸受の両側面に流出流動Uが発生することで、その値が減少する。ここで、図13は、ジャーナルフォイル空気軸受1のトップフォイル2を回転方向Wに展開したときの展開図である。
【0009】
そのような圧力漏れは、図14に図示されたように、軸受の端(x=0、x=L)で発生し、軸受内部の圧力も減少させることになり、結果として、軸受の荷重支持力及び性能低下の問題点を発生させる。ここで、図14は、ジャーナルフォイル空気軸受1のトップフォイル2を回転方向Wに展開したとき、トップフォイル2の幅方向(x方向)の位置による軸受の内部空気圧力分布を示すグラフである。
【0010】
上記の問題点を解消させるために、従来の米国公開特許(公開番号20150362012、公開日2015年12月17日)は、トップフォイルとバンプフォイルとの間に追加フォイルを挿入し、その追加フォイルの上面をエッチングや機械加工を通じて有底溝(groove)を有し、図6に図示されたように、トップフォイルの上面を空気圧によって変形させ、いわゆる、ヘリンボーンパターン(herringbone pattern)を形成することで、図7に図示されたように、トップフォイルの上面に流入流動Uを発生させるヘリンボーン効果(herringbone effect)を有するフォイル空気軸受を開示している。
【0011】
しかし、従来のフォイル空気軸受は、追加フォイルの上面に溝(groove)を形成するエッチング工程や加工工程が技術的に非常に困難であるために、全体としての製造コストが上昇し、依然として製品の品質が低下する問題点がある。
【0012】
また、従来のフォイル空気軸受は、追加フォイルに有底溝(groove)が形成されるので、溝の深さが十分ではない場合には、溝の底がトップフォイルの変形を妨害し、ヘリンボーンパターン(herringbone pattern)が設計要求条件を満たすように形成され得ない問題点もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の問題を解決するために案出されたものであって、その目的は、エッチングまたは溶接工程を使用せず、プレス加工によってスロットを形成することができるところ、設計要求条件を満たすヘリンボーンパターンを形成しやすく、全体としての製造コストを減少させうるように、構造が改善されたフォイル空気軸受を提供するためである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために本発明によるフォイル空気軸受は、中心線を中心に既定の回転方向に回転する回転部の荷重を支持するためのフォイル空気軸受であって、回転部の表面と対向するように配置される上部トップフォイル;上部トップフォイルの下方に配置される中間トップフォイル;中間トップフォイルの下方に配置される下部トップフォイル;弾性変形が可能な部材であって、下部トップフォイルの下方に配置されるバンプフォイル;中間トップフォイルの上面から下面まで貫通されている孔であって、回転部の回転方向と既定の角度をなす長手方向に沿って延びている複数個のスロット;を備え、上部トップフォイルは、回転部の回転によって発生する空気圧によって、スロットに対応する位置で下方に凹状に変形されることで、ヘリンボーンパターンが形成されることを特徴とする。
【0015】
ここで、複数個のスロットは、既定の間隔ほど互いに離隔された状態で配置されており、回転方向と平行な仮想の対称線を中心に対称的に配置されていることが望ましい。
【0016】
ここで、トップフォイルとバンプフォイルは、エッチングまたは溶接工程を使用せず、プレス加工によって自動的に切開及び折り曲げられることで、量産可能な形状を備えることが望ましい。
【0017】
ここで、中間トップフォイルの下面と下部トップフォイルの上面は、互いに分離可能な状態で積層されていることが望ましい。
【0018】
ここで、回転部が回転軸の形態に設けられるジャーナルフォイル空気軸受であって、バンプフォイルを取り囲むように配置されるベースフォイルを含み、複数個のトップフォイルの一端部とバンプフォイルの一端部とベースフォイルの両端部を互いに結合させる結合部を含むことが望ましい。
【0019】
ここで、回転部が回転軸の形態に設けられるジャーナルフォイル空気軸受であって、回転部が回転する状態で、回転部と上部トップフォイルの距離が近い位置において、スロットの間隔が他の部位よりさらに稠密に形成されるものでもある。
【0020】
ここで、回転部が回転板の形態に設けられるスラストフォイル空気軸受であって、中間トップフォイルは、円板状に設けられ、スロットは、中心線を円の中心とする仮想の円に沿って羅列されるものでもある。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、中心線を中心に既定の回転方向に回転する回転部の荷重を支持するためのフォイル空気軸受であって、回転部の表面と対向するように配置される上部トップフォイル;上部トップフォイルの下方に配置される中間トップフォイル;中間トップフォイルの下方に配置される下部トップフォイル;弾性変形が可能な部材であって、下部トップフォイルの下方に配置されるバンプフォイル;中間トップフォイルの上面から下面まで貫通されている孔であって、回転部の回転方向と既定の角度をなす長手方向に沿って延びている複数個のスロット;を備え、上部トップフォイルは、回転部の回転によって発生する空気圧によって、スロットに対応する位置で下方に凹状に変形されることで、ヘリンボーンパターンが形成されるので、エッチングまたは溶接工程を使用せず、プレス加工によってスロットを形成することができるところ、設計要求条件を満たすヘリンボーンパターンを形成しやすく、全体としての製造コストを減少させうる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施例であるジャーナルフォイル空気軸受の断面図である。
図2図1に図示されたジャーナルフォイル空気軸受の分解斜視図である。
図3図1に図示されたA部分拡大図である。
図4図2に図示された中間トップフォイルの展開図である。
図5図1に図示されたジャーナルフォイル空気軸受の展開図である。
図6図5に図示されたVI-VI線の断面図である。
図7図1に図示されたジャーナルフォイル空気軸受のトップフォイルに流入流動が発生してヘリンボーン効果(herringbone effect)が発生する状態を示す展開図である。
図8】多様な形態の中間トップフォイルを示す図面である。
図9】本発明の他の実施例であるスラストフォイル空気軸受の分解斜視図である。
図10図9に図示されたスラストフォイル空気軸受の平面図である。
図11図10に図示されたXI-XI線断面図の一部である。
図12】従来のジャーナルフォイル空気軸受の断面図である。
図13図12に図示されたジャーナルフォイル空気軸受のトップフォイルから両側面に流出流動Uが発生して空気圧が減少する状態を説明するための展開図である。
図14図12に図示されたジャーナルフォイル空気軸受の内部空気圧力分布を示すグラフである。
図15】従来のスラストフォイル空気軸受の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施例であるジャーナルフォイル空気軸受の断面図であり、図2は、図1に図示されたジャーナルフォイル空気軸受の分解斜視図である。図3は、図1に図示されたA部分拡大図である。
【0025】
図1ないし図3を参照すれば、本発明の望ましい実施例によるジャーナルフォイル空気軸受100は、図12に図示されたように円形断面を有する回転軸F形態の回転部に、回転軸Fの半径方向に沿って加えられる荷重を支持するためのジャーナルフォイル空気軸受(journal foil air bearing)であって、ベースフォイル10、バンプフォイル20、上部トップフォイル30、中間トップフォイル40、下部トップフォイル50、及び結合部60を含んで構成される。以下、回転部が、図1に図示された中心線Cを中心に既定の回転方向Wに回転することを前提とする。
【0026】
ベースフォイル10は、図2に図示されたように、柔軟かつ弾力性のある金属薄板をプレス加工して製造される円形パイプ形態の部材である。
【0027】
本実施例において、ベースフォイル10は、プレス加工された長方形の金属薄板を中心線Cを中心に丸く巻き取ってC字状断面のパイプ状に形成される。
【0028】
ベースフォイル10は、中心線Cに沿って既定の長さほど延びている円形パイプ部材であって、内部には、中心線Cを円の中心にする中空Hが形成されている。
【0029】
ベースフォイル10は、後述するバンプフォイル20を取り囲むように配置されることで、ベースフォイル10の中空Hにバンプフォイル20が収容される。
【0030】
ベースフォイル10の両端部は、結合部60に結合されるように、図3に図示されたようにL字状に折り曲げられて上方に突出するように形成されている。
【0031】
バンプフォイル20は、図2に図示されたように、柔軟かつ弾力性のある金属薄板をプレス加工して製造される円形パイプ部材である。
【0032】
バンプフォイル20は、中心線Cに沿って既定の長さほど延びている円形パイプ部材であって、内部には、中心線Cを円の中心とする中空Hが形成されている。
【0033】
本実施例において、バンプフォイル20は、プレス加工された長方形の金属薄板を中心線Cを中心に丸く巻き取ってC字状断面のパイプ形態に形成される。
【0034】
バンプフォイル20は、ベースフォイル10の中空Hに収容された状態で、下部トップフォイル50を取り囲むように配置される。
【0035】
バンプフォイル20は、中心線Cの半径方向に弾性変形可能なように、多数の山と谷とが交互に連結された波状(wave)の部分を含む。
【0036】
バンプフォイル20の右端部は、結合部60に結合されるように、図3に図示されたようにL字状に折り曲げられて上方に突出するように形成されている。
【0037】
バンプフォイル20の左端部は、図1に図示されたように運動自在な自由端(free end)である。
【0038】
本実施例において、バンプフォイル20は、一対が設けられており、図3に図示されたように互いに積層されている。
【0039】
上部トップフォイル30は、図2に図示されたように、柔軟かつ弾力性のある金属薄板をプレス加工して製造される円形パイプ部材であって、図3に図示されたように回転軸Fの外周面と対向するように最も内側に配置されている。
【0040】
上部トップフォイル30は、中心線Cに沿って既定の長さほど延びている円形パイプ部材であって、内部には、中心線Cを円の中心とする中空Hが形成されている。
【0041】
本実施例において、上部トップフォイル30、中間トップフォイル40と下部トップフォイル50は、プレス加工された長方形の金属薄板を、中心線Cを中心に丸く巻き取ってC字状断面のパイプ形態に形成される。
【0042】
上部トップフォイル30は、バンプフォイル20の中空Hに収容された状態で、回転軸Fを取り囲むように配置される。
【0043】
上部トップフォイル30の左端部には、「∩」字状に折り曲げられた形状に設けられている結合部60が設けられている。
【0044】
上部トップフォイル30の右端部は、図3に図示されたように運動自在な自由端(free end)である。
【0045】
上部トップフォイル30は、回転軸Fの外周面と対向する表面に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むコーティング材(図示せず)がコーティングされている。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、テフロン(登録商標)とも呼ばれる。
【0046】
上部トップフォイル30は、回転軸Fの回転によって発生する空気圧によって、図6に図示されたようにスロット41に対応する位置で下方に凹状に変形されることで、図5に図示されたように複数個の空気誘導溝Mを有するヘリンボーンパターン(herringbone pattern)が形成されうる材質と厚さを有する。
【0047】
もし、上部トップフォイル30の厚さが過度に大きい値を有すれば、ヘリンボーンパターン(herringbone pattern)が十分な深さに形成され得ない。
【0048】
中間トップフォイル40は、上部トップフォイル30と同様に、中心線Cに沿って既定の長さほど延びている円形パイプ部材であって、内部には、中心線Cを円の中心とする中空Hが形成されている。
【0049】
中間トップフォイル40は、後述する下部トップフォイル50の中空Hに収容された状態で、上部トップフォイル30を取り囲むように配置される。
【0050】
中間トップフォイル40の右端部は、結合部60に結合されうるように、図3に図示されたようにL字状に折り曲げられて上方に突出するように形成されている。
【0051】
中間トップフォイル40の左端部は、図3に図示されたように運動自在な自由端(free end)である。
【0052】
中間トップフォイル40には、図4に図示されたように複数個のスロット41が形成されている。
【0053】
スロット41は、中間トップフォイル40の上面から下面まで貫通されている孔であって、図4に図示されたように回転軸Fの回転方向Wと平行な仮想の対称線Yを中心に左右対称的に配置されている。
【0054】
スロット41は、図4に図示されたように平行四辺形平面形状を有し、図5に図示されたように一定の幅dを有し、長手方向に沿って延びた帯状の孔である。
【0055】
スロット41は、回転軸Fの回転方向Wと平行な対称線Yと既定の角度(θ)をなす長手方向に沿って延びている。
【0056】
角度(θ)は、90°以下の鋭角を有し、その値は、必要によって変更され、本実施例では、45°を有する。
【0057】
複数個のスロット41は、対称線Yに沿って既定の間隔ほど互いに離隔された状態で配置されている。
【0058】
結局、中間トップフォイル40は、スロット41によって、図4に図示されたようにヘリンボーンパターン(herringbone pattern)を有することになる。
【0059】
ここで、ヘリンボーン(herringbone)は、本来「ニシンの骨」という意味を有する単語であって、ヘリンボーンパターン(herringbone pattern)は、魚の骨状あるいは矢はずのような形状をいくつか組み合わせたパターンやそのような形状を意味する。
【0060】
中間トップフォイル40は、ワイヤーカット工法、パンチング工法、またはウォータージェット(water jet)工法で加工することができる。
【0061】
本実施例において、中間トップフォイル40は、厚さが0.2mm以下に形成されている。
【0062】
一方、図8には、多様な形態のヘリンボーンパターン(herringbone pattern)を有する中間トップフォイル40a~40eが羅列されている。
【0063】
中間トップフォイル40a、40bは、スロット41の末端部が閉鎖されている形態であり、中間トップフォイル40c、40d、40eは、スロット41の末端部が開放されている形態である。
【0064】
特に、中間トップフォイル40cは、特定の部分でスロット41の幅dが他のスロット41の幅dよりさらに細くなり、特定の部分でスロット41間の間隔が、他のスロット41間の間隔よりさらに細くなる形態を有する。
【0065】
一般にジャーナルフォイル空気軸受100は、回転軸Fが回転する状態において、図12に図示されたように回転軸Fと上部トップフォイル30との距離が各位置で異なる。すなわち、回転軸Fの下端部は、上部トップフォイル30との距離が非常に近く、回転軸Fの上端部は、上部トップフォイル30との距離が非常に遠い。
【0066】
したがって、中間トップフォイル40cを使用するようになれば、回転軸Fと上部トップフォイル30の距離が比較的近くの位置、すなわち、図8の中間トップフォイル40cの中間部において、スロット41の幅dとスロット41との間隔を他の部位よりさらに稠密に形成させうる。これにより、回転軸Fの下端部での空気流入流動Uを増加させることで、潤滑効果を相対的にさらに増加させうる。
【0067】
本実施例では、中間トップフォイル40は、図8に図示された中間トップフォイル40dと類似した形態を有する。
【0068】
スロット41は、図4に図示されたように中間トップフォイル40の全長にわたる領域に形成され、図8の中間トップフォイル40c、40dのように一部の長さにわたる領域のみにも形成される。
【0069】
下部トップフォイル50は、上部トップフォイル30と同様に、中心線Cに沿って既定の長さほど延びている円形パイプ部材であって、内部には、中心線Cを円の中心とする中空Hが形成されている。
【0070】
下部トップフォイル50は、バンプフォイル20の中空Hに収容された状態で、中間トップフォイル40を取り囲むように配置される。
【0071】
下部トップフォイル50の左端部は、結合部60に結合されるように、図3に図示されたように、L字状に折り曲げられて上方に突出するように形成されている。
【0072】
下部トップフォイル50の右端部は、図3に図示されたように、運動自在な自由端(free end)である。
【0073】
下部トップフォイル50の厚さは、中間トップフォイル40の厚さよりさらに大きな値を有することが望ましい。これは、下部トップフォイル50は、中間トップフォイル40を支持する役割を遂行するからである。
【0074】
本実施例において中間トップフォイル40の下面と下部トップフォイル50の上面は、溶接などによって結合されておらず、互いに分離可能な状態に単純に積層されている。
【0075】
したがって、図6に図示されたジャーナルフォイル空気軸受100の展開図では、上部トップフォイル30の下に中間トップフォイル40が配置され、中間トップフォイル40の下に下部トップフォイル50が配置され、下部トップフォイル50の下にバンプフォイル20が配置され、バンプフォイル20の下にベースフォイル10が配置される積層構造が形成される。
【0076】
ベースフォイル10とバンプフォイル20とトップフォイル30、40、50は、同じ材質の金属薄板によって製造され、それぞれの厚さは、互いに異なってもいる。
【0077】
本実施例において、トップフォイル30、40、50とバンプフォイル20及びベースフォイル10は、エッチングまたは溶接工程を使用せず、プレス加工によって自動的に切開及び折り曲げられることで量産可能な形状を備えている。
【0078】
結合部60は、図3に図示されたように、複数個のトップフォイル30、40、50の一端部と、バンプフォイル20の一端部と、ベースフォイル10の両端部を互いに結合させるための部分である。
【0079】
結合部60は、詳細に図示していないが、図3に図示されたように、ベースフォイル10の両端部と、バンプフォイル20と、トップフォイル30、40、50の一端部に形成された結合孔(図示せず)と、その結合孔(図示せず)を貫通して固定される結合部材(図示せず)を含む。
【0080】
本実施例において結合部材(図示せず)は、「コ」状の薄板部材であって、結合孔(図示せず)に挿入された後、両端部が折り曲げられて塑性変形されることで、トップフォイル30、40、50と、バンプフォイル20と、ベースフォイル10を互いに固定させる部材である。
【0081】
以下、上述した構成のジャーナルフォイル空気軸受100の作動原理の一例を説明する。
【0082】
まず、回転軸Fが回転を開始すれば、回転軸Fの回転によって発生する空気圧によって、図6に図示されたように、上部トップフォイル30の一部領域が下方に凹状に変形されることで、図5に図示されたように、複数個の空気誘導溝Mを有するヘリンボーンパターン(herringbone pattern)が上部トップフォイル30の上面に形成される。
【0083】
このように空気誘導溝Mが形成されれば、図7に図示されたように、上部トップフォイル30の上面には、上部トップフォイル30の両側面から中央部にある対称線Yに向かって斜めに流入される空気流入流動Uが発生し、図14に図示されたような軸受両側面の圧力漏れを防止するヘリンボーン効果(herringbone effect)が発生する。
【0084】
上述した構成のジャーナルフォイル空気軸受100は、中心線Cを中心に既定の回転方向に回転する回転部Fの荷重を支持するためのフォイル空気軸受であって、回転部Fの表面と対向するように配置される上部トップフォイル30;上部トップフォイル30の下方に配置される中間トップフォイル40;中間トップフォイル40の下方に配置される下部トップフォイル50;弾性変形可能な部材であって、下部トップフォイル50の下方に配置されるバンプフォイル20;中間トップフォイル40の上面から下面まで貫通されている孔であって、回転部Fの回転方向Wと既定の角度(θ)をなす長手方向に沿って延びている複数個のスロット41;を備え、上部トップフォイル30は、回転部Fの回転によって発生する空気圧によって、スロット41に対応する位置で下方に凹状に変形されることで、ヘリンボーンパターンが形成されるので、エッチングまたは溶接工程を使用せず、プレス加工によってスロット41を形成可能であるところ、設計要求条件を満たすヘリンボーンパターン(herringbone pattern)を形成しやすく、全体的な製造コストを減少させうる長所がある。
【0085】
そして、ジャーナルフォイル空気軸受100は、複数個のスロット41が、既定の間隔ほど互いに離隔された状態で配置されており、回転方向Wと平行な仮想の対称線Yを中心に対称的に配置されているので、軸受の両側縁部での圧力漏れを減少させ、軸受の荷重支持力及び性能を増加させうる長所がある。
【0086】
また、ジャーナルフォイル空気軸受100は、トップフォイル30、40、50とバンプフォイル20は、エッチングまたは溶接工程を使用せず、プレス加工によって自動的に切開及び折り曲げられることで、量産可能な形状を備えるので、全体的な製造コスト及び製造時間を減少させうる長所がある。
【0087】
そして、ジャーナルフォイル空気軸受100は、中間トップフォイル40の下面と下部トップフォイル50の上面は、互いに分離可能な状態で積層されているので、有底溝(groove)を備えた従来のジャーナルフォイル空気軸受とは異なり、長期間使用後、中間トップフォイル40のみを修理するか、交換可能であるという長所がある。
【0088】
また、ジャーナルフォイル空気軸受100は、複数個のトップフォイル30、40、50の一端部と、バンプフォイル20の一端部と、ベースフォイル10の両端部とを互いに結合させる結合部60を含むので、「モジュール化」(modularizing)された軸受として設けられることができ、軸受ハウジングに簡便に挿着可能な長所がある。
【0089】
本実施例では、結合部60が、「コ」状の薄板部材である結合部材(図示せず)と、ベースフォイル10の両端部とバンプフォイル20とトップフォイル30、40、50の一端部に形成された結合孔(図示せず)を含んでいるが、任意の結合装置を含むこともできるということは言うまでもない。
【0090】
一方、図9には、本発明の他の実施例であるスラストフォイル空気軸受200が図示されている。スラストフォイル空気軸受200は、図15に図示されたように中心線Cに沿って回転する回転部が円形の回転板Rの形態に設けられるスラストフォイル空気軸受であって、ベースフォイル210、バンプフォイル220、上部トップフォイル230、中間トップフォイル240、及び下部トップフォイル250を含んで構成される。
【0091】
スラストフォイル空気軸受200、及びジャーナルフォイル空気軸受100の構成、及び効果は、ほぼ同一であるので、以下では、両者間の相違点のみを説明する。
【0092】
スラストフォイル空気軸受200は、フォイル210、220、230、240、250が中空を有する円板状に設けられているという点で、ジャーナルフォイル空気軸受100と異なる。
【0093】
また、スラストフォイル空気軸受200は、中間トップフォイル240が円板状からなり、スロット41は、中心線Cを円の中心とする仮想の丸(Y)に沿って羅列されている点で、ジャーナルフォイル空気軸受100と異なる。
【0094】
しかし、図11に図示されたようにスラストフォイル空気軸受200の断面構造は、図6に図示されたジャーナルフォイル空気軸受100の断面構造とほぼ同一である。
【0095】
したがって、スラストフォイル空気軸受200は、上部トップフォイル230は、回転板Rの回転によって発生する空気圧によって、図11に図示されたように、スロット41に対応する位置で下方に凹状に変形されることで、複数個の空気誘導溝Mを有するヘリンボーンパターン(herringbone pattern)が形成されうる。
【0096】
以上、本発明を説明したが、本発明の技術的範囲が上述した実施例に記載された内容に限定されるものではなく、当該技術分野の通常の知識を有する者によって修正または変更された等価の構成が、本発明の技術的思想の範囲を外れるものではないということは明白である。
図1
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