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特許7525963診療支援システム、表示装置、及び診療支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】診療支援システム、表示装置、及び診療支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/60 20180101AFI20240724BHJP
【FI】
G16H10/60
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024014168
(22)【出願日】2024-02-01
【審査請求日】2024-02-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524044706
【氏名又は名称】株式会社MOTOCLE
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(72)【発明者】
【氏名】青木 基樹
(72)【発明者】
【氏名】梅本 こころ
【審査官】原 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-026640(JP,A)
【文献】特許第7385320(JP,B2)
【文献】特開2017-111190(JP,A)
【文献】特開2023-048799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療従事者、及び診療対象となる被検体を含む対象者の間で交わされる会話の音声情報を記憶する音声情報記憶部と、
前記音声情報をテキストデータに変換するテキストデータ変換部と、
医療従事者向けの診療記録、該診療記録に対応する対象者向けの要約書、及び診療内容に基づく診療明細の少なくとも一つを含む診療支援情報を作成するための大規模言語モデルに対する指示内容を含む所定のテンプレートが記憶されたテンプレート記憶部と、
前記テキストデータ、及び前記テンプレートを入力パラメータとして、前記大規模言語デルに基づいて前記診療支援情報を作成する診療支援情報作成部と、を備える診療支援システムにおいて、
前記テキストデータ変換部は、
音声認識が困難と判断される所定の単音を含む薬品名又は医学用語を記憶する辞書記憶部と、
前記音声情報から得られたテキストデータの中から前記単音を含む所定の語句を抽出する語句抽出部と、
該語句抽出部により抽出された前記語句を含む一文の文脈から、該語句が薬品名又は医学用語であるか否かを判定し、薬品名又は医学用語であると判定された場合には該語句が前記辞書記憶部に記憶された所定の単音を含む薬品名又は医学用語であるか否かを判定する語句判定部と、
該語句判定部により前記語句が前記辞書記憶部に記憶された薬品名又は医学用語でないと判定された場合に、該語句を前記辞書記憶部に記憶された、前記単音を含む所定の薬品名又は医学用語に変換する語句変換部と、を有する
診療支援システム。
【請求項2】
前記診療支援情報の前記診療記録の入力項目として、主訴、診断内容、治療計画、治療内容、処方箋、検査結果の説明の少なくとも一つ以上の入力項目を含み、
前記診療支援情報作成部は、前記大規模言語モデルに基づいて前記診療記録の各入力項目への入力情報を作成する
請求項1に記載の診療支援システム。
【請求項3】
前記診療支援情報の前記要約書の入力項目として、被検体への処方薬の投与方法、被検体の食事管理、被検体の容態の監視、被検体の生活環境の管理、及び被検体の次回の診療予定日の少なくとも一つ以上の入力項目を含み、
前記診療支援情報作成部は、前記大規模言語モデルに基づいて前記要約書の各入力項目への入力情報を作成する
請求項1または請求項2に記載の診療支援システム。
【請求項4】
診療品目に対応する診療報酬を対応付けた料金記憶部を有し、
前記診療支援情報作成部は、前記大規模言語モデルに基づいて抽出された診療品目に対応する診療報酬を前記料金記憶部から呼び出し、前記診療明細の入力項目への入力情報を作成する
請求項1または請求項2に記載の診療支援システム。
【請求項5】
前記診療支援情報作成部で作成された前記診療支援情報を記憶する診療支援情報記憶部を有し、
次回の被検体の診療時には、前記診療支援情報記憶部に記憶された診療支援情報から、被検体の基本情報を取得する
請求項1または請求項2に記載の診療支援システム。
【請求項6】
前記音声情報記憶部に記憶された前記音声情報には、所定の改ざん防止処理が施された
請求項1または請求項2に記載の診療支援システム。
【請求項7】
医療従事者、及び診療対象となる被検体を含む対象者の間で交わされる会話の音声情報に基づいて、発話者毎の時系列の対話形式のテキストデータを作成し、該テキストデータを表示する第1の表示部と、
大規模言語モデルに基づいて前記テキストデータから得られた診療支援情報であって、医療従事者向けの診療記録、該診療記録に対応する対象者向けの要約書、及び診療内容に基づく診療明細を含む診療支援情報の少なくとも一つを表示し、前記第1の表示部と並列表示される第2の表示部と、
前記診療支援情報のうち、前記第2の表示部に表示させる一の診療支援情報を選択する選択部と、
該選択部で選択された一の診療支援情報を、前記第2の表示部に切替表示させる表示制御部と、を備える
表示装置。
【請求項8】
前記第2の表示部に表示される前記診療記録は、前記大規模言語モデルに基づいて作成された主訴、診断内容、治療計画、治療内容、処方箋、検査結果の説明の少なくとも一つ以上の項目が含まれる
請求項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記第2の表示部に表示される前記要約書は、前記大規模言語モデルに基づいて作成された被検体への処方薬の投与方法、被検体の食事管理、被検体の容態の監視、被検体の生活環境の管理、及び被検体の次回の診療予定日の少なくとも一つ以上の項目が含まれる
請求項または請求項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第2の表示部に表示される前記診療明細は、前記大規模言語モデルに基づいて抽出された診療品目に対応する診療報酬である
請求項または請求項に記載の表示装置。
【請求項11】
医療従事者、及び診療対象となる被検体を含む対象者の間で交わされる会話の音声情報を取得するステップと、
前記音声情報をテキストデータに変換するステップと、
医療従事者向けの診療記録、該診療記録に対応する対象者向けの要約書、及び診療内容に基づく診療明細の少なくとも一つを含む診療支援情報を作成するための大規模言語モデルに対する指示内容を含むテンプレートを選択するステップと、
前記テキストデータ、及び前記テンプレートを入力パラメータとして前記大規模言語モデルに入力するステップと、
前記入力パラメータが入力された前記大規模言語モデルに基づいて、前記テキストデータから前記診療支援情報を作成するステップと、をコンピュータに実行させるための診療支援プログラムにおいて、
前記音声情報をテキストデータに変換するステップは、
前記音声情報から得られたテキストデータの中から音声認識が困難と判断される所定の単音を含む語句を抽出するステップと、
抽出した前記語句を含む一文の文脈から、該語句が薬品名又は医学用語であるか否かを判定するステップと、
前記語句が薬品名又は医学用語であると判定された場合に、該語句が予め記憶された所定の単音を含む薬品名又は医学用語であるか否かを判定するステップと、
前記語句が予め記憶された所定の単音を含む薬品名又は医学用語でないと判定された場合に、前記語句を予め記憶された所定の単音を含む薬品名又は医学用語に変換するステップと、を有する
診療支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診療支援システム、表示装置、及び診療支援プログラムに関する。詳しくは、動物医療において、獣医師と飼い主との会話情報に基づいて品質の高い診療記録を作成し、動物医療の効率化を図ることができる診療支援システム、表示装置、及び診療支援プログラムに係るものである。
【背景技術】
【0002】
犬や猫をはじめとするペットは、人間にとってかけがえのない存在であり、飼い主の日常生活に喜びをもたらし、時には精神的なサポートさえも提供する。そして、近年では飼い主のペットの健康に対する関心の高まりから、質の高い動物医療の需要が拡大している。
【0003】
ところで、動物医療は国の健康保険制度の範囲外であるため、ペットの傷病に対する治療費は人間の医療費と比較して高額になる傾向がある。また、動物医療では、人間の医療と同様、或いは類似の診断・治療方法が用いらるが、ペットは自身の状態や治療要望を獣医師に直接伝えることができないため、病態を特定するために積極的な検査が必要となる。さらに、飼い主が自宅でも忘れずに治療計画に従い継続した投薬や経過観察を適切に行う必要があり、治療に対する飼い主の理解の度合いが動物医療の品質に影響しやすいものとなる。
【0004】
そのため、動物医療の現場においては、獣医師から飼い主に対して、治療や検査に関する提案や確認事項、さらには治療費等について十分な説明を行い、飼い主はその説明を十分に理解した上で治療方法等に合意する、所謂インフォームドコンセントが重要となり、これらの合意形成が動物医療の品質向上において重要視されている。
【0005】
獣医師と飼い主との間の合意形成には、ペットの治療に関する情報をまとめたカルテをはじめとする診療記録を作成し、診療内容を記録する手法が一般的に用いられている。特に近年では、医療業務の効率化、及び情報共有による診療精度の向上を図るため、人間の医療と同様に動物医療の現場でも電子カルテの導入が進められている。
【0006】
一方、動物医療の現場では、通常、診療時には診察台に乗せた対象患者の動物を看護師が保定し、その間に獣医師が飼い主に対する問診や治療方針の説明を行う必要がある。そのため、診察と同時に診療記録を作成することは人員的、物理的な制約から困難である。特に、診療待ちの次の飼い主がいる場合、顧客である飼い主の待ち時間を短縮化させる営業努力が求められており、時間的プレッシャーも加わり、一定の品質を保った診療記録の作成がより一層困難となる。
【0007】
このような課題に対して、例えば特許文献1には、医療従事者と患者との会話の音声情報を記憶するとともに、該音声情報を発話者ごとにテキストデータに変換し、変換したテキストデータを発話者による対話形式に並べて文章データとして記憶する会話記録システムが開示されている。これにより、医療従事者は、患者との問診や治療方針の説明に注力し、患者に対する説明の後に、文章データを確認しながら患者カルテを作成することができるため、品質の高い診療記録を作成することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-206055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記した特許文献1に開示の会話記録システムは、単に発話者の音声情報をテキストデータとして記憶するのみであるため、診療記録は獣医師自らが作成する必要がある。そのため、特許文献1の会話記録システムであっても、獣医師を含む医療従事者は、依然として診療記録をはじめとする書類作成に忙殺されてしまい、長時間労働から脱却ができないという問題がある。
【0010】
また、獣医師は、限られた時間の中で自らの判断で診療記録を作成しており、業界内における記入内容の標準化が進まず、記入漏れや入力ミスによるチーム医療の際の情報共有が不足することで、医療事故を誘発する原因となっている。
【0011】
さらに、獣医師からの説明は、必ずしも飼い主にとって容易に理解できる内容であるとは限らず、治療方針や治療費をめぐる飼い主とのトラブルを未然に防止するためにも、診療記録をより分かりやすく要約した飼い主向けの要約書の作成が診療サービスの一つとして求められている。
【0012】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、動物医療において、獣医師と動物の飼い主との会話情報に基づいて品質の高い診療記録を作成し、動物医療の効率化を図ることができる診療支援システム、表示装置、及び診療支援プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するために、本発明の診療支援システムは、医療従事者、及び診療対象となる被検体を含む対象者の間で交わされる会話の音声情報を記憶する音声情報記憶部と、前記音声情報をテキストデータに変換するテキストデータ変換部と、医療従事者向けの診療記録、該診療記録に対応する対象者向けの要約書、及び診療内容に基づく診療明細の少なくとも一つを含む診療支援情報を作成するための大規模言語モデルに対する指示内容を含む所定のテンプレートが記憶されたテンプレート記憶部と、前記テキストデータ、及び前記テンプレートを入力パラメータとして、前記大規模言語デルに基づいて前記診療支援情報を作成する診療支援情報作成部とを備える。
【0014】
ここで、医療従事者、及び診療対象となる被検体を含む対象者の間で交わされる会話の音声情報を記憶する音声情報記憶部を備えることにより、記憶された音声情報はその後の演算処理のためのデータとして使用することができる。さらに音声情報を証拠記録として保存することで、対象者との間で治療方針や治療費をめぐるトラブルを回避することができる。
【0015】
また、音声情報をテキストデータに変換するテキストデータ変換部を備えることにより、音声情報をテキストデータに変換することができる。
【0016】
また、医療従事者向けの診療記録、診療記録に対応する対象者向けの要約書、及び診療内容に基づく診療明細の少なくとも一つを含む診療支援情報を作成するための大規模言語モデルに対する指示内容を含む所定のテンプレートが記憶されたテンプレート記憶部を備えることにより、ユーザー(ここでは医療従事者)によって大規模言語モデルに対する指示内容が異なることを防止し、大規模言語モデルのアウトプットの品質を一定に保つことができる。
【0017】
また、テキストデータ、及びテンプレートを入力パラメータとして、大規模言語モデルに基づいて診療支援情報を作成する診療支援情報作成部を備えることにより、診療中の会話内容から自動的に診療支援情報の各入力項目への入力情報を作成することができる。従って、ユーザーは、自ら診療支援情報を作成する必要が無いため、被検体に対する診察や治療に専念することができるとともに、診療業務の効率化を図ることができる。
【0018】
また、診療支援情報の診療記録の入力項目として、主訴、診断内容、治療計画、治療内容、処方箋、検査結果の説明の少なくとも一つ以上の入力項目を含み、診療支援情報作成部は、大規模言語モデルに基づいて診療記録の各入力項目への入力情報を作成する場合には、予め準備された診療記録の入力項目に従って、大規模言語モデルに基づいて診療記録を自動的に作成することができる。
【0019】
また、診療支援情報の要約書の入力項目として、被検体への処方薬の投与方法、被検体の食事管理、被検体の容態の監視、被検体の生活環境の管理、及び被検体の次回の診療予定日の少なくとも一つ以上の入力項目を含み、診療支援情報作成部は、大規模言語モデルに基づいて要約書の各入力項目への入力情報を作成する場合には、予め準備された対象者に対する要約書の入力項目に従って、大規模言語モデルに基づいて要約書を自動的に作成することができる。
【0020】
また、診療品目に対応する診療報酬を対応付けた料金記憶部を有し、診療支援情報作成部は、大規模言語モデルに基づいて抽出された診療品目に対応する診療報酬を料金記憶部から呼び出し、診療明細の入力項目への入力情報を作成する場合には、テキストデータから大規模言語モデルが抽出した診療品目に沿って診療明細を自動的に作成することができる。
【0021】
また、テキストデータ変換部は、音声情報から得られたテキストデータの中から所定の基準に基づいて指定された語句を抽出する語句抽出部と、語句抽出部により抽出された語句を含む一文の文脈から、語句が正しいか否かを判定する語句判定部と、語句判定部により語句が正しくないと判定された場合に、語句を含む一文の文脈に基づいて正しい語句に変換する語句変換部とを有する場合には、音声情報をテキストデータに変換する際の誤変換を防止することで、より品質の高い診療支援情報を作成することができる。
【0022】
また、診療支援情報作成部で作成された診療支援情報を記憶する診療支援情報記憶部を有し、次回の被検体の診療時には、診療支援情報記憶部に記憶された診療支援情報から、被検体の基本情報を取得する場合には、被検体の体重・体温をはじめ、過去の診療内容や処方内容等の何れかの情報を含む基本情報を、今回の診療で作成する診療支援情報に反映することができる。従って、今回の診療支援情報を作成する際に、被検体の基本情報を入力する必要がなく、また前回の診療内容を反映した診療支援情報を作成することができるため、診療支援情報の作成に際しての演算負荷を低減するとともに、より品質の高い診療支援情報を作成することができる。
【0023】
また、音声情報記憶部に記憶された音声情報には、所定の改ざん防止処理が施されている場合には、音声情報の証拠能力を高めることができる。
【0024】
前記の目的を達成するために、本発明の表示装置は、医療従事者、及び診療対象となる被検体を含む対象者の間で交わされる会話の音声情報に基づいて、発話者毎の時系列の対話形式のテキストデータを作成し、該テキストデータを表示する第1の表示部と、大規模言語モデルに基づいて前記テキストデータから得られた診療支援情報であって、医療従事者向けの診療記録、該診療記録に対応する対象者向けの要約書、及び診療内容に基づく診療明細を含む診療支援情報の少なくとも一つを表示する第2の表示部と、前記診療支援情報のうち、前記第2の表示部に表示させる一の診療支援情報を選択する選択部と、該選択部で選択された一の診療支援情報を、前記第2の表示部に表示させる表示制御部とを備える。
【0025】
ここで、医療従事者、及び診療対象となる被検体を含む対象者の間で交わされる会話の音声情報に基づいて、発話者毎の時系列の対話形式のテキストデータを作成し、テキストデータを表示する第1の表示部を備えることにより、医療従事者と対象者との会話内容が時系列に沿って表示されるため、過去に遡って発話者の特定と会話内容を確認することができる。さらに、テキストデータのキーワード検索により、任意の会話部分を容易に特定することができる。
【0026】
また、大規模言語モデルに基づいてテキストデータから得られた診療支援情報であって、医療従事者向けの診療記録、診療記録に対応する対象者向けの要約書、及び診療内容に基づく診療明細を含む診療支援情報の少なくとも一つを表示する第2の表示部を備えることにより、ユーザーは、大規模言語モデルにより作成された診療支援情報の内容を確認することができる。
【0027】
また、診療支援情報のうち、第2の表示部に表示させる一の診療支援情報を選択する選択部、及び選択部で選択された一の診療支援情報を、第2の表示部に表示させる表示制御部を備えることにより、ユーザーが選択した任意の診療支援情報を第2の表示部に表示させることができる。
【0028】
また、第2の表示部に表示される診療記録は、大規模言語モデルに基づいて作成された主訴、診断内容、治療計画、治療内容、処方箋、検査結果の説明の少なくとも一つ以上の項目が含まれる場合には、これら第2の表示部に表示された診療記録の内容に基づいて、ユーザーは診療内容を確認することができる。
【0029】
また、第2の表示部に表示される要約書は、大規模言語モデルに基づいて作成された被検体への処方薬の投与方法、被検体の食事管理、被検体の容態の監視、被検体の生活環境の管理、及び被検体の次回の診療予定日の少なくとも一つ以上の項目が含まれる場合には、これら第2の表示部に表示された要約書に基づいて、ユーザーは対象者に対して診療内容を詳細かつ分かりやすく説明を行うことができる。
【0030】
また、第2の表示部に表示される診療明細は、大規模言語モデルに基づいて抽出された診療品目に対応する診療報酬である場合には、第2の表示部に表示された診療明細に基づいて、ユーザーは対象者に対して治療費等の根拠を診療明細に基づいて詳細かつ分かりやすく説明を行うことができる。
【0031】
前記の目的を達成するために、本発明の診療支援プログラムは、医療従事者、及び診療対象となる被検体を含む対象者の間で交わされる会話の音声情報を取得するステップと、前記音声情報をテキストデータに変換するステップと、医療従事者向けの診療記録、該診療記録に対応する対象者向けの要約書、及び診療内容に基づく診療明細の少なくとも一つを含む診療支援情報を作成するための大規模言語モデルに対する指示内容を含むテンプレートを選択するステップと、前記テキストデータ、及び前記テンプレートを入力パラメータとして前記大規模言語モデルに入力するステップと、前記入力パラメータが入力された前記大規模言語モデルに基づいて、前記テキストデータから前記診療支援情報を作成するステップとを備える。
【0032】
ここで、医療従事者、及び診療対象となる被検体を含む対象者の間で交わされる会話の音声情報を取得するステップを備えることにより、取得された音声情報はその後の演算処理のためのデータとして使用することができる。さらに音声情報を証拠記録として保存することで、対象者との間での治療方針や治療費をめぐるトラブルを回避することができる。
【0033】
また、音声情報をテキストデータに変換するステップを備えることにより、音声情報をテキストデータに変換することができる。
【0034】
また、医療従事者向けの診療記録、診療記録に対応する対象者向けの要約書、及び診療内容に基づく診療明細の少なくとも一つを含む診療支援情報を作成するための大規模言語モデルに対する指示内容を含むテンプレートを選択するステップを備えることにより、ユーザーによって大規模言語モデルに対する指示内容が異なることを防止し、大規模言語モデルのアウトプットの品質を一定に保つことができる。
【0035】
また、入力パラメータが入力された大規模言語モデルに基づいて、テキストデータから診療支援情報を作成するステップを備えることにより、診療中の会話記録から、診療支援情報が自動的に作成されるため、ユーザーは、自ら診療支援情報を作成する必要が無いため、被検体に対する診察や治療に専念することができるとともに、診療業務の効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る診療支援システム、表示装置、及び診療支援プログラムは、動物医療において、獣医師と飼い主との会話情報に基づいて品質の高い診療記録を作成し、動物医療の効率化を図ることができるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の実施形態に係る診療支援システムと端末装置とがインターネット回線を介して接続された状態を示す図である。
図2】診療支援システムの内部構成を示すブロック図である。
図3】テキストデータ変換部の内部構成を示すブロック図である。
図4】辞書記憶部に記憶された誤変換リストの一例を示す図である。
図5】テンプレート記憶部に記憶されているデータ内容の一例を示す図である。
図6】料金記憶部に記憶されているデータ内容の一例を示す図である。
図7】表示装置の内部構成を示すブロック図である。
図8】診療支援情報のうち、診療記録をモニタに表示した状態の表示画面の一例を示す図である。
図9】診療支援情報のうち、要約書をモニタに表示した状態の表示画面の一例を示す図である。
図10】診療支援情報のうち、診療明細をモニタに表示した状態の表示画面の一例を示す図である。
図11】本発明の実施形態に係る診療支援プログラムの演算フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、診療支援システム、表示装置、及び診療支援プログラムに関する本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0039】
まず、本発明の実施形態に係る診療支援システム1を含むネットワーク構成全体の概略について図1を用いて説明する。本発明の実施形態に係る診療支援システム1は、診療支援プログラムを動作させるためのコンピュータであり、例えば診療サービスを提供する施設(本発明の実施形態においては、診療対象である被検体(以下、「ペット」という。)に対する診療サービスを提供する動物病院(以下、「病院」という。)に設置されたサーバー、或いは診療支援プログラムがインストールされたレンタルサーバー(クラウドサーバ)とすることができる。
【0040】
端末装置2は、診療時に医療従事者(本発明の実施形態では「獣医師」)が使用するパーソナルコンピュータであり、端末装置2と診療支援システム1とはインターネット回線4を介して互いに通信可能に接続されている。なお、診療支援システム1をクラウドサーバー或いはオンプレミスサーバーとする場合には、診療支援システム1に対して、複数の端末装置2が同時に診療支援システム1にインターネット回線4を介してアクセスすることが可能となる。
【0041】
ここで、必ずしも、診療支援システム1と端末装置2とはインターネット回線4を介して互いに接続されている必要はなく、いかなる通信手段により接続されていてもよい。また、端末装置2は、パーソナルコンピュータ以外にも、携帯端末、タブレット型端末等、通信機能を有する情報端末であれば特に限定されるものではない。
【0042】
以下、診療支援システム1の各構成について図2に基づいて詳細に説明する。診療支援システム1は、主に獣医師と対象者(本発明の実施形態ではペットの飼い主)との間で交わされる会話内容を音声情報として記録し、テキストデータに変換処理する音声情報システム部10と、音声情報システム部10で処理されたテキストデータに基づいて診療記録をはじめとする診療支援情報を作成する診療支援情報システム部20と、会話内容のテキストデータや診療支援情報を端末装置2のモニタ3に表示する表示装置30とから構成されている。
【0043】
1.音声情報システム部
まず、音声情報システム部10の主な構成について、以下、説明する。
【0044】
[音声入力部]
音声入力部101は、獣医師と飼い主との診療中の会話をマイク(図示しない)で集音し、集音した音声の入力を受け付けて音声情報を取得する機能を有している。音声入力部101で取得された音声情報は、音声情報送受信部102を介して音声情報記憶部103に記憶される。
【0045】
[音声入力制御部]
音声入力制御部104は、音声入力部101に対する音声の入力開始や一時停止を制御するとともに、音声入力部101に入力された音声情報を解析して所定の制御を行う機能を有している。
【0046】
例えば、音声入力制御部104は、獣医師による「開始」の言葉が発せられたことを検知すると、音声入力部101に対して音声情報の取得の開始を指示する。また、獣医師による「停止」の言葉が発せられたことを検知すると、音声入力制御部104は音声入力部101に対して、音声情報の取得の停止を指示する。このように、端末装置2の操作を行うことなく、獣医師からの音声指示に基づいて、音声情報の取得の開始と停止の制御を行うことができる。
【0047】
ここで、音声情報の取得の開始と停止の制御の実行に使用する言葉としては、「開始」や「停止」に限定されるものではなく、特定の言葉を事前に登録しておき、登録した言語に基づいて、音声情報の取得の開始、又は停止の制御を行うようにしてもよい。
【0048】
また、端末装置2のモニタ3に表示された「開始」ボタンや「停止」ボタンを操作することで、音声情報の取得の開始と停止の制御を行うことも可能である。但し、獣医師からの音声指示に基づいて音声入力部101に対する指示を行うことで、機器の操作のために手を止めて診察を中断する必要がなく、診療業務の効率化を図ることができる。
【0049】
また、音声入力制御部104は、音声入力部101で受け付けた音声情報を解析し、会話で使用されている言語や会話の中心となる発話者の人数を特定したり、音声情報の音量が小さい場合、或いは通信環境の悪化により音声情報が途切れていると判断した場合には、エラーコードを生成し、音声情報に不備があり正しく音声入力がされていないことを獣医師に報知することができる。ここでの報知手段としては特に限定されるものではないが、例えば端末装置2のモニタ3にその旨を警告画面として表示したり、或いは警告音を報知するようにしてもよい。
【0050】
さらに、音声入力制御部104は、音声入力部101に一定時間(例えば2~3秒)の音声入力が検出されない沈黙時間を検出した場合には、沈黙時間の前後の会話を一文節として認識する。なお、文節の検出は、音声入力部101に入力されるリアルタイムの音声情報に基づいて検出してもよく、或いは会話の開始から終了までの全会話の音声情報を取得した後に、文節の検出を行うようにしてもよい。
【0051】
[改ざん防止部]
改ざん防止部105は、音声情報記憶部103に記憶された音声情報の改ざんを防止するための改ざん防止処理を施す機能を有している。改ざん防止処理としては、例えば音声情報が音声情報記憶部103に格納される際、まずその内容から暗号化ハッシュ関数を用いてハッシュコードを生成する。次に、このハッシュコードに対して、作成者の秘密鍵を用いてデジタル署名を行い、タイムスタンプを付与する。これにより、音声ファイルの改ざんを効果的に検出できる。このハッシュコードは暗号化ハッシュ関数を用いて生成され、本発明の実施形態で用いられるハッシュ関数はSHA-256である。
【0052】
なお、本発明の実施形態においては、強固なセキュリティ特性と、広範な分野での採用実績に基づいて、ハッシュ関数はSHA-256を採用するが、必ずしもこれに限定されるものではなく、一般的に使用されるハッシュ関数から任意に選択することができるものとする。例えばSHA-3やその他の業界標準に準じたハッシュ関数も適用可能である。
【0053】
ここで、必ずしも、音声情報記憶部103に記憶された音声情報に対して改ざん防止処理が施されている必要はない。但し、改ざん防止処理を施すことにより、音声情報の証拠能力を高めることができるため、例えば獣医師と飼い主との間で治療方針や金銭のトラブルが発生した際に、音声情報を状況証拠としてトラブルを未然に解決することができる。
【0054】
[テキストデータ変換部]
テキストデータ変換部106は、音声入力部101から入力された音声情報を、学習済みの機械学習モデルを用いた人工知能を利用して文字起こしのうえ、テキストデータに変換する機能を有している。
【0055】
図3にテキストデータ変換部106の内部構成のブロック図を示す。図3に示すように、テキストデータ変換部106は、機械学習モデル120、及び文字起こしの際に同音異義語をはじめとする誤変換を防止する誤変換防止部130とから構成されている。そして、誤変換防止部130による処理結果は機械学習モデル120にフィードバックされて追加学習が行われ、機械学習モデル120のアルゴリズムが最適化される。
【0056】
誤変換防止部130は、語句抽出部131、語句判定部132、及び語句変換部133から主に構成され、さらに医療分野の専門用語で起こり得る可能性の高い誤変換リスト(図4参照)が予め記憶され辞書記憶部134を有している。
【0057】
例えば、音声情報に誤変換リストとして登録された「しゅよう」の単語が含まれていることが検知されると、語句抽出部131により単語「しゅよう」が抽出される。そして、語句判定部132は、単語「しゅよう」を含む一文の前後の文脈から、「しゅよう」を変換1の「主要」と変換2の「腫瘍」の何れの単語に変換すべきかを判定する。判定の結果、変換2の「腫瘍」が正しいと判定されると、語句変換部133により「しゅよう」の音声情報は「腫瘍」のテキストデータに変換される。
【0058】
また、辞書記憶部134には、同音異義語からなる誤変換リストだけではなく、難解な薬剤名や医学用語、或いは聴別しにくい単語や語句を事前に登録をしておくことで、音声情報からでは判別しにくい単語や語句の誤変換を防止することができる。
【0059】
例えば、獣医師が薬品名として「ドキシサイクリン」と発音したのに、音声情報として語頭の「ド」を「ト」として認識され、「トキシサイクリン」と誤ってテキストデータに変換がされるケースが考えられる。この場合でも、語句抽出部131は「トキシサイクリン」の単語を抽出したうえで、語句判定部132により、前後の文脈から獣医師は薬品の説明をしていると判定すると、「トキシサイクリン」は「ドキシサイクリン」に変換すべきものと判定し、語句変換部133によりテキストデータに変換される。
【0060】
なお、誤変換リストにはない同音異義語や専門用語の追加が必要な場合には、診療支援システム1の管理者(本発明の実施形態では獣医師)により単語や語句の追加が行われ、その都度、機械学習モデル120に学習させることで、テキストデータの変換精度を高めることが可能である。
【0061】
以上のように、音声情報から変換されたテキストデータは、テキストデータ送受信部107からテキストデータ記憶部108に送信されて記憶される。そして、テキストデータ記憶部108に記憶されたテキストデータは、後記する表示装置30を通じて、端末装置2のモニタ3に表示される。
【0062】
2.診療支援情報システム部
診療支援情報システム部20では音声情報システム部10で処理されたテキストデータに基づいて、診療記録をはじめとする診療支援情報の作成が実行される。以下、診療支援情報システム部20の主な構成について説明する。
【0063】
[テンプレート記憶部]
テンプレート記憶部201は、診療支援情報を作成するための人工知能である大規模言語モデル205に対する指示内容が予めテンプレートとして記憶されている。診療支援情報としては、電子カルテとしての役割である診療記録、飼い主に対して提示する診療内容を簡潔にまとめた要約書、診療内容に基づいて計算された診療明細の各種書類である(診療支援情報の一例としては図8図10を参照)。
【0064】
ここで、診療記録の項目としては、「主訴」、「オーナーの不安」、「類症鑑別・疑われる傷病名・診断」、「検査の方向性・検査名・検査結果・処置内容」、「治療方針・治療計画」、「処方箋」、「次回来院」、「その他(例えば検査結果の説明)」等が設けられている。
【0065】
また、要約書の項目としては、例えば「薬物治療の遵守」、「食事管理」、「定期的な健康チェック」、「発作の監視」、「環境管理」等の項目が設けられている。
【0066】
また、診療明細の項目としては、例えば「商品名」、「商品コード」、「数量」、「標準価格」等の項目が設けられている。
【0067】
ここで、必ずしも、診療支援情報としては前記した診療記録、要約書、診療明細に限定されるものではない。診療支援情報としては診療記録、要約書、診療明細の何れか一つ、または二つ以上の組み合わせから構成されていてもよく、或いは診療に関するその他の情報を含む書類を診療支援情報として適宜追加してもよい。
【0068】
図5には、テンプレート記憶部201に記憶されているデータ内容の一例を示す。テンプレート記憶部201は、メインテーブルとサブテーブルとから構成されており、メインテーブルには、図5(a)に示すように、テンプレートの名称と診療支援情報のカテゴリーが個別IDで管理されている。また、図5(b)に示すように、サブテーブルには診療支援情報の入力項目に対する具体的な指示内容(プロンプト)と、それに紐付く親テーブルのIDが個別IDで管理されている。
【0069】
サブテーブルに登録されているプロンプトは、例えば診療情報の「主訴」の入力項目に対しては、「<飼い主の主訴>を中心に会話を要約してください。今日の診察の目的を飼い主の目線で記載してください。」のように、各入力項目に対して大規模言語モデル205に対する具体的な指示内容が登録されている。その他の指示内容としては、例えば「敬体を使用しない」、「推測せず、会話の内容から明らかな事実のみ回答する。」、「ペットの名前を記録し、人の名前は<飼い主>や<獣医師>として記載する。」等、診療支援情報を作成するに際して様々なプロンプトを含むテンプレートが登録されている。
【0070】
ここで、大規模言語モデル205によるアウトプットの精度を高めるためにも、前記したテンプレートのように、より具体的な指示内容を登録することが好ましいが、図5は一例であり、必ずしも係るテンプレートの内容に限定されるものではない。サブテーブルに登録するテンプレートの内容は、作成する診療支援情報の種類や内容に応じて獣医師により適宜修正可能である。
【0071】
また、必ずしも、テンプレート記憶部201のデータ構造としては、メインテーブルとサブテーブルとから構成されている必要はない。例えば、メインテーブルとサブテーブルとを統合して一つのテーブルデータとして記憶してもよく、或いはテーブルデータ以外のデータ形式で記憶してもよい。
【0072】
[診療分析部]
診療分析部202は、テキストデータ化された会話内容に基づいて、ペットの診療内容に応じて適切と思われるテンプレートを特定し、特定したテンプレートをテンプレート記憶部201から呼び出す機能を有している。
【0073】
なお、テンプレート記憶部201からのテンプレートの呼び出しは、必ずしも診療分析部202を介して呼び出す必要はなく、例えば獣医師により選択した任意のテンプレートを呼び出すようにしてもよい。
【0074】
[診療情報取得部]
診療情報取得部203は、音声情報システム部10で作成されたテキストデータや診療分析部202で呼び出されたテンプレート、及び診療対象となるペットが再診の場合には後記する診療支援情報記憶部209に記憶されている過去のカルテ情報をはじめとする各種データを取得する。そして、取得したこれらデータを大規模言語モデル205に対する入力パラメータとして整理する。
【0075】
ここで、カルテ情報としては、ペットの基本情報(名前、体重、体温等)、前回の診療日、前回の診断内容と治療内容等の各種情報が取得され、今回の診療に際して作成する診療支援情報に反映される。なお、診療対象であるペットが初診の場合で、過去の診療経歴が無い場合には、ペットの基本情報については獣医師による手入力等の所定の入力手段により入力してもよい。
【0076】
また、必ずしも、診療情報取得部203は有している必要はなく、各種データからなる入力パラメータは、後記する診療支援情報作成部204に直接入力のうえ入力パラメータとして整理したうえで、大規模言語モデル205に出力するように構成してもよい。
【0077】
[診療支援情報作成部]
診療支援情報作成部204では、診療情報取得部203で取得した各種データを入力パラメータとして、人工知能である大規模言語モデル205に基づいて診療支援情報の作成が実行される。大規模言語モデル205は、例えばインターネット上の記事、書籍、及びウェブサイトなどの大量のデータを学習させた言語モデルである。そして、前記したテンプレートが入力されると、音声情報システム部10で生成されたテキストデータを解析し、診療支援情報の各入力項目への入力情報を自動的に生成する機能を有している。
【0078】
[人工知能制御部]
人工知能制御部206は、大規模言語モデル205に対してリクエストを送る際の処理をタスク化し、送信されたリクエストが適切に処理されるように、プロセス完了までのタスクの管理を行う機能を有している。例えば、診療支援情報の作成に要する予測時間を通知したり、複数のリクエストの処理順序の管理、或いは入力情報の生成中の情報にエラーが発生してた場合の対処方法などの管理を行うことで、大規模言語モデルによる生成プロセスの品質を維持する役割を担う。
【0079】
[料金記憶部]
料金記憶部207は、図6に示すように、診療項目に対する料金が対応付けて登録されている。料金記憶部207に登録される診療項目は獣医師により適宜追加や削除が可能であり、また診療項目に対する料金についても、料金改定に応じて適宜修正が可能である。
【0080】
[料金明細解析部]
診療明細解析部208は、大規模言語モデル205による解析の結果、テキストデータに含まれる診療項目を抽出し、抽出した診療項目を料金記憶部207に記憶されている料金情報を参照のうえ、診療費を計算して診療明細を作成する機能を有している。
【0081】
具体的には、料金明細解析部208は、テキストデータ中に「血液検査」、「腹部エコー」、「尿検査」などの診療項目に関する単語を検出すると、これら単語に対応する料金を料金記憶部207から参照する。そして、その参照結果に基づいて、今回の診療の会計情報としての診療明細を作成する。
【0082】
また、料金明細解析部208では、前記したように、テキストデータ中の単語と料金記憶部207に記憶されている単語が完全一致する項目だけを診療明細として抽出する場合に限らず、部分一致する単語も含めて診療項目を抽出することができる。例えば、テキストデータ中に「血液の検査」という単語を検出した場合には、「血液」に関する検査項目として、「血液検査」や「血液生化学検査」も診療項目の候補として抽出することもできる。なお、部分一致する単語も含めて診療項目を抽出すると、不要な診療項目も診療明細に反映される可能性はあるが、その場合には、獣医師により不要な診療項目を適宜削除することができる。
【0083】
以上のように、大規模言語モデル205により作成された診療支援情報は、診療支援情報記憶部209に記憶される。診療支援情報記憶部209は、診療記録記憶部209a、要約書記憶部209b、及び診療明細記憶部209cから構成され、診療支援情報は各記憶部にそれぞれ記憶される。
【0084】
3.表示装置
表示装置30は、診療支援情報システム部20からの入力信号に基づいて、診療支援情報システム部20で作成された診療支援情報を端末装置2のモニタ3に表示する機能を有している。
【0085】
図7は、表示装置30のブロック図を示す。獣医師からの操作信号を表示受信部301で受信すると、表示制御部302はモニタ3に表示する表示内容を選択して表示出力部303に送信する。そして、表示出力部303からの出力信号に基づいて、表示内容がモニタ3に表示される。
【0086】
図8図10は、診療支援情報をモニタ3に表示した状態の表示画面の一例を示す図である。モニタ3には、第1の表示部31と第2の表示部32の大きく2つの表示部を有し、その周囲には獣医師名、飼い主名、ペット名などの基本情報を表示するとともに、所定の操作を行うための操作ボタンがレイアウトされている。
【0087】
まず、第1の表示部31には、音声情報システム部10で作成さた会話内容を示すテキストデータが表示される。このとき、第1の表示部31に表示される会話内容を示すテキストデータは、前記した音声入力制御部104により特定された発話者別に、会話の文節に区切って時系列で表示される。
【0088】
第1の表示部31に表示された各会話内容のテキストデータを、例えばマウス、或いは画面上を指で押下すると、押下した各会話の音声情報が再生される。また、第1の表示部31の下方にある「全体音声再生」ボタンを、同じくマウスや画面上を指で押下すると、会話全体の音声情報が再生される。従って獣医師は、音声情報とあわせてテキストデータの内容を確認することができる。
【0089】
次に、第2の表示部32には、診療支援情報システム部20で作成された診療支援情報が表示される。第2の表示部32の上方には、第2の表示部32に表示させる診療記録情報を選択する選択部33が設けられており、獣医師は選択部33に表示された「診療記録」、「要約書」、「診療明細」の各選択ボタンを入力すると、その入力信号が表示受信部301で受信され、選択された診療記録情報を診療支援情報記憶部209から呼び出し、表示出力部303からモニタ3に出力される。
【0090】
ここで、図8は選択部33において「診療記録」を選択した画面、図9は選択部33において「要約書」を選択した画面、図10は選択部33において「診療明細」を選択した画面をそれぞれ示している。
【0091】
そして、診療支援情報のうち、診療記録は獣医師をはじめとする医療従事者が確認する電子カルテとして使用され、要約書は必要に応じてプリントアウトのうえ診療の終了時に飼い主に提供される。また、診療明細については、病院の会計システムと連携のうえ診療終了時の会計時に使用される。
【0092】
なお、獣医師は、モニタ3に表示された診療支援情報のテキストデータを確認して、誤変換の修正、或いは表現の修正がさらに必要と判断した場合には、端末装置2の管理者権限に基づいてテキストデータを適宜修正し、修正された診療支援情報は元データの上書、或いは別ファイルとして診療支援情報記憶部209に記憶される。
【0093】
以上が本発明の実施形態に係る診療支援システム1、及び表示装置30の構成である。次に、診療支援システム1で実行される診療支援プログラムについて、図11のフロー図に基づいて説明する。
【0094】
まず、音声入力部101により、診療中の獣医師と飼い主の会話の音声情報が取得され、取得した音声情報は音声情報記憶部103に記憶される(STEP1)。
【0095】
次に、音声情報記憶部103に記憶された音声情報は、テキストデータ変換部106によりテキストデータに変換される(STEP2)。
【0096】
次に、テンプレート記憶部201に記憶されているテンプレートから、大規模言語モデル205に対する作成する指示内容のテンプレートが選択される(STEP3)。
【0097】
次に、診療支援情報作成部204の大規模言語モデル205に対して、テキストデータ、及びテンプレートを入力パラメータとして入力される(STEP4)。
【0098】
そして、STEP4の入力値に基づいて、大規模言語モデル205に基づいて、テキストデータから診療支援情報が作成される(STE5)。
【0099】
STEP1~STEP5の演算を繰り返すことによって、獣医師と飼い主との会話の音声情報に基づいて、診療支援情報を自動で作成することができる。
【0100】
以上が本発明の実施形態に係る診療支援システム、表示装置、及び診療支援プログラムである。なお、以上の説明においては、動物病院における獣医師とペットの飼い主との会話に基づいて診療支援情報を作成する実施形態について説明をしたが、本発明はそれ以外の実施形態にも適用が可能である。例えば本発明を人間の医療に適用する場合には、医師と患者との会話に基づいて診療支援情報を作成することが可能である。
【0101】
以上、本発明に係る診療支援システム、表示装置、及び診療支援プログラムは、動物医療において、獣医師と飼い主との会話情報に基づいて品質の高い診療記録を作成し、動物医療の効率化を図ることができるものとなっている。
【符号の説明】
【0102】
1 診療支援システム
10 音声情報システム部
101 音声入力部
102 音声情報送受信部
103 音声情報記憶部
104 音声入力制御部
105 改ざん防止部
106 テキストデータ変換部
107 テキストデータ送受信部
108 テキストデータ記憶部
20 診療支援情報システム部
201 テンプレート記憶部
202 診療分析部
203 診療情報取得部
204 診療支援情報作成部
205 大規模言語モデル
206 人工知能制御部
207 料金記憶部
208 診療明細解析部
209 診療支援情報記憶部
30 表示装置
301 表示受信部
302 表示制御部
303 表示出力部
2 端末装置
3 モニタ
4 インターネット回線
【要約】
【課題】動物医療において、獣医師と飼い主との会話情報に基づいて品質の高い診療記録を作成し、動物医療の効率化を図ることができる診療支援システム、表示装置、及び診療支援プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】診療支援システム1は、獣医師とペットの飼い主との会話の音声情報をテキストデータ変換部106でテキストデータに変換する。テキストデータ、及び大規模言語モデル205に対する指示内容であるテンプレートを入力パラメータとして診療支援情報作成部204に入力され、大規模言語モデル205に基づいて、テキストデータから診療支援情報が自動的に作成される。そして、作成された診療支援情報は表示装置30によりモニタ3に表示される。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11