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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H10K 39/10 20230101AFI20240724BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20240724BHJP
   H10K 30/88 20230101ALI20240724BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20240724BHJP
【FI】
H10K39/10
H10K30/40
H10K30/88
H01L31/04 560
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024044424
(22)【出願日】2024-03-21
【審査請求日】2024-04-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松木 克則
(72)【発明者】
【氏名】松本 健治
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-051118(JP,A)
【文献】特開2013-038321(JP,A)
【文献】特開2001-244486(JP,A)
【文献】特開平11-135813(JP,A)
【文献】特表2008-533720(JP,A)
【文献】特開2004-088043(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2023/0034714(US,A1)
【文献】特開2019-102391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078
H01L 31/18-31/20
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
H10K 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する太陽光発電層と、前記太陽光発電層の受光側に積層して設けられ可撓性を有する受光側板体層とを有する太陽電池体を複数備えた可撓性を有する太陽電池であって、
前記太陽電池体と前記太陽電池体とは、間隔を空けた隙間部を備えて配置されるとともに、その厚み方向両側は可撓性を有する保護層で封止されており、
前記受光側板体層は、前記隙間部を覆わないように且つ前記太陽光発電層の受光側全体を覆うように積層して設けられ、その板厚が0.1mm以下のガラス板であることを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
請求項1において、
前記太陽光発電層と前記受光側板体層との間に生じる層間隙間及び前記隙間部は、透明で弾性を有するエラストマーによって封止されていることを特徴とする太陽電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記太陽光発電層の設置面側に積層される設置側板体層は、板厚が0.1mm以下のガラス板であることを特徴とする太陽電池。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、
前記太陽光発電層の設置面側に積層される設置側板体層は、可撓性を有する樹脂製板材であることを特徴とする太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有する太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の太陽電池において、可撓性・意匠性を備えたものとするため、下記特許文献1には、太陽電池素子に積層される第一封止層として所定の貯蔵弾性率を有した樹脂フィルムを用いることが開示されている。また下記特許文献2には、太陽電池モジュールの封止材として用いることができる樹脂シートとガラス層とを有する積層体が開示されており、透明性の向上を図るため、樹脂シートにエチレンアイオノマーを主成分とする樹脂組成物からなるものを使うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-189466号公報
【文献】特開2016-188158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年は、上記特許文献1に開示されているような曲面にも設置できるフレキシブルな太陽電池が求められているが、この場合は太陽電池素子を樹脂フィルムで封止するため、樹脂フィルムの酸素透過率、水蒸気透過率を如何にして低くするかが課題となる。すなわち、太陽電池の発電効率を向上させるためには、酸素や水蒸気の透過を完全に遮断することが理想であるが、ガラス板並みの透過率を樹脂フィルムに求めることは非常に困難である。上記特許文献2には、太陽電池モジュールの封止材としてではガラス層を用いることが開示されているが、可撓性を備えたものではなく、封止材としてガラス板を用いる場合、非常に薄いガラス板であっても曲げるとクラックが生じてしまう点が課題となる。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、ガラス板を用い高い発電効率を図ったものでありながら、可撓性を備えた太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の太陽電池は、可撓性を有する太陽光発電層と、前記太陽光発電層の受光側に積層して設けられ可撓性を有する受光側板体層とを有する太陽電池体を複数備えた可撓性を有する太陽電池であって、前記太陽電池体と前記太陽電池体とは、間隔を空けた隙間部を備えて配置されるとともに、その厚み方向両側は可撓性を有する保護層で封止されており、前記受光側板体層は、前記隙間部を覆わないように且つ前記太陽光発電層の受光側全体を覆うように積層して設けられ、その板厚が0.1mm以下のガラス板であることを特徴とする。
【0007】
上記構成において、前記太陽光発電層と前記受光側板体層との間に生じる層間隙間及び前記隙間部は、透明で弾性を有するエラストマーによって封止されていてもよい。また上記構成において、前記太陽光発電層の設置面側に積層される設置側板体層は、板厚が0.1mm以下のガラス板であってもよい。さらに上記構成において、前記太陽光発電層の設置面側に積層される設置側板体層は、アクリル板であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の太陽電池は前述した構成とされているため、ガラス板を用い高い発電効率を図ったものでありながら、可撓性を備えたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池を模式的に示した縦断面図である。
図2】(a)は同太陽電池の一例を模式的に示した平面図、(b)は同太陽電池を曲げた状態を模式的に示したX1-X1線断面図である。
図3】(a)~(c)は同太陽電池を構成する太陽電池体の例を説明するため、層構造を模式的に示した図である。
図4】(a)~(c)は、発明者が行った曲げ評価試験を説明するための図であり、(a)は試験用のシート体の平面図、(b)は(a)のX2―X2線断面図、(c)は曲げ試験の状況を説明するための図である。(d)は評価試験の結果を説明するための表である。
図5】(a)~(c)は、発明者が行った曲げ評価試験を説明するための図であり、(a)は試験用のシート体の平面図、(b)は(a)のX3―X3線断面図、(c)は曲げ試験の状況を説明するための図である。(d)は評価試験の試験結果を説明するための表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
本実施形態に係る太陽電池1(モジュール)は、太陽光発電層12と、太陽光発電層12の受光側に積層して設けられる受光側板体層11aとを有する太陽電池体10(セル)を複数備えた可撓性を有するものである。太陽電池体10と太陽電池体10とは、間隔を空けた隙間部15を備えて配置されるとともに、その厚み方向両側は保護層13で封止されており、受光側板体層11aは、板厚が0.1mm以下のガラス板が用いられる。以下、詳しく説明する。
【0011】
太陽電池1は、光エネルギーを電力に変換する機器であり、図1図2(a)等に示すように太陽光発電層12を有する太陽電池体10を複数備え、積層構造で構成されている。ここで用いられる太陽光発電層12としては、可撓性があればよく、シリコン系、化合物系、有機系等、特に限定されない。具体的には例えばアモルファスシリコン太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、ペロブスカイト太陽電池に適用することができる。このうち、ペロブスカイト型の太陽光発電層12とすれば、太陽電池体10を薄く軽量に構成できるため、好適である。ペロブスカイト型とは、ペロブスカイト構造という独特の結晶構造を有する有機物よりなるペロブスカイト層を太陽光発電層12とするものであり、太陽光発電層12をきわめて薄い10μm以下で構成することができる。太陽光発電層12の少なくとも一方の面は光を受けるための受光面とされ、添付の各図面では上方側を受光側、下方側を設置側として説明する。
【0012】
太陽電池1は、図2(a)に示すように、複数の太陽電池体10を平面視で桝目状に並べて配置し、その厚み方向両側のそれぞれの面は保護層13で被覆され密封状態に固着されている。太陽電池体10は、1つずつ分離されており、相隣接する太陽電池体10間は、間隔を空けた隙間部15を備えて配置されている。
【0013】
太陽電池体10を構成する受光側板体層11a、太陽光発電層12及び設置側板体層11bは、それぞれ略方形状とされ、太陽光発電層12は、受光側板体層11a及び設置側板体層11bよりも一回り小さく構成されている。設置側板体層11bの上には、太陽光発電層12が載置され、その上には受光側板体層11aが重ねて積層され、太陽光発電層12の周囲に形成される層間隙間14は、エラストマー20で封止されている(図1拡大図参照)。また太陽電池体10と太陽電池体10との間は、上述のとおり、間隔を空けた隙間部15が設けられ、太陽電池体10の両面は、保護層13で覆われるため、保護層13と保護層13との間の隙間部15には、エラストマー20が設けられている(図1拡大図参照)。さらに保護層13と受光側板体層11aとの間、受光側板体層11aと太陽光発電層12との間、太陽光発電層12と設置側板体層11bとの間、設置側板体層11bと保護層13との間は、それぞれ、接着剤(不図示)で固着されている。
【0014】
受光側板体層11aとしては、可撓性を有する板厚0.1mm以下のガラス板が用いられ、具体的には、受光側板体層11aを構成するガラス板の板厚は、20μm~100μmが好適である。ガラス板の特性は、特に限定されないが、例えばオーバーフロー成形によりフィルム化されたものを用いてもよく、光を通す高い透過率、太陽光を浴びる屋外で耐えられる耐熱性、寸法安定性(低熱膨張性、低熱収縮性)を有するものが好適である。
【0015】
太陽光発電層12と受光側板体層11aとの間に生じる層間隙間14及び隙間部15を封止するエラストマー20としては、アクリル系、シリコーン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、エチレン酢酸ビニルなど、接着性、熱膨張吸収性、衝撃緩和性がいずれもがすぐれたものを用いることが望ましい。本実施形態におけるエラストマー20は、封止材としても接着剤としても機能しさらに太陽電池1としての可撓性を阻害しない弾性を有するものが好適である。また太陽光発電層12の受光側板体層11aとの間に生じる層間隙間14を封止するエラストマー20や保護層13と受光側板体層11aとの間、受光側板体層11aと太陽光発電層12との間を接着する接着剤には光の透過を阻害しない透明性が求められる。なお、ポリウレタン系の接着剤の水蒸気透過度は、約37g/m2・dayである。また太陽光発電層12と設置側板体層11bとの間、設置側板体層11bと保護層13との間を固着するための接着剤には、透明性は不要であるが、受光側と同じ接着剤を用いてもよいことは言うまでもない。さらにエラストマー20と各層を固着する接着剤とは、異なるものであってもよいし、同じものを用いてもよい。
【0016】
隙間部15の寸法D1及び寸法D2は、図2(a)に示すようにいずれの方向にも等間隔とし、どちらの方向にも曲げ易い構成としてもよい(図2(b)参照)。また太陽電池体10と太陽電池体10との間に設けられる隙間部15には、太陽電池体10が設けられておらず、エラストマー20だけが配されているので、図5(c)に示すような極端に折り曲げられる可撓性を備えたものにできる。よって、太陽電池1を設置する設置面の立体的な形状に合わせて、曲げたい位置に隙間部15を設けるようにしてもよい。隙間部15の寸法D1は、太陽電池体10の一方の端部と、これに隣接して配される太陽電池体10の対向する端部、言い換えると受光側板体層11aの一方の端部と、これに隣接して配される受光側板体層11aの対向する端部との間の寸法である。この隙間部15の寸法D1は、太陽電池体10のサイズ、太陽電池1のサイズ、また太陽電池1が設置される場所の曲率半径に応じて設定可能である。
【0017】
保護層13は、太陽電池1の最外層に太陽電池体10全体を覆うように設けられ、太陽電池体10を保護し、ガラス板からなる受光側板体層11aの割れ・飛散を防止する。図2(a)の一部平面図に示すように保護層13の平面形状、寸法は上下で互いに同一であり、平面的なずれはない。受光側に配される保護層13は、光を透過し効率よく電気に変えるための透明性と、太陽光発電層12との熱膨張差を吸収して層間の密着性を保持し耐衝撃性とを備えた素材が用いられる。保護層13としては、例えば透明で可撓性を有する合成樹脂材料からなるフィルムが用いられ、具体的には、合成樹脂材料の具体的な種類としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィンポリマー(COP)、弾性を有するフッ素フィルムやウレタンフィルムなどを好適な材料として挙げることができる。また保護層13の厚みは、特に限定されないが、例えば20μm~500μmが好適である。保護層13の外周縁は、接着剤もしくは、劣化による剥がれを防止するため、ヒートシールによって溶着してもよい。
【0018】
上記構成によれば、太陽光発電層12の受光側に酸素・水蒸気がほとんど透過しない0.1mm以下の薄いガラス板が積層されているので、光電効率の高い太陽電池1とすることができる。特にペロブスカイト型の太陽光発電層12は、酸素・湿度によって光電効果が著しく低下することが課題になっているが、本実施形態に係る太陽光発電層12としてペロブスカイト型を用いれば、長期にガスバリア性を保つことができ、薄型化、可撓性も実現でき、好適である。太陽電池10全体の厚み寸法は特に限定されないが、本実施形態の構成によれば、0.01mm~1mmの薄さを実現することができる。また太陽電池体10と太陽電池体10との間に隙間部15を備えているので、ガラス板を備えたものであっても可撓性を有する太陽電池1とすることができる。さらに太陽電池体10は保護層13で封止されているので、ガラス板の傷つき、割れ等を防止し、受光側板体層11aを保護することができる。例えば100μm以下の30μm~50μmのガラス板になると、曲げることはできても、衝撃が加わるとクラック(ひび割れ)が生じやすく弱い傾向があるが、受光側板体層11aであるガラス板が保護層13で覆われているので、衝撃にも耐えられる太陽電池体10を構成することができる。
【0019】
また太陽光発電層12と受光側板体層11aとの間に生じる層間隙間14及び隙間部15は、透明で弾性を有するエラストマー20によって封止されているものとすれば、光電効率に影響を与えないものとしながらも、フレキシビリティな太陽電池1とすることができる。
【0020】
次に図3を参照しながら、太陽電池1を構成する太陽電池体10の例を説明する。まず図3(a)は、受光側板体層11aと設置側板体層11bの双方をガラス板とした例である。この場合、受光側板体層11a及び設置側板体層11bは、同じ板厚0.1mm以下のものが用いられる。ガラス板は、水蒸気透過度、酸素透過度がほぼゼロであり、ガスバリア性が高いため、受光側及び設置側に配される保護層13は、水蒸気透過度や酸素透過度等のガスバリア性を考慮しなくてよい。よって、保護層13になにを用いるか、材料選択の幅が広がるメリットがあり、受光を効率よく行うためには、受光側に配する保護層13には透明度の高い材料を用いることが望ましい。なお、もちろん両方の保護層13に透明度の高いものを用いてもよい。
【0021】
図3(b)は、受光側板体層11aは板厚0.1mm以下のガラス板で、設置側板体層11bがなく、太陽光発電層12の設置側の面をガスバリア性が高い保護層13を配した例である。この場合、受光側に配される保護層13は水蒸気透過度、酸素透過度、ガスバリア性を考慮しなくてよい点は図3(a)の例と同様であり、設置側板体層11bを備えていないため、より一層、太陽電池1の薄板化を図ることができる。この場合、設置側の保護層13は、水蒸気透過度及び酸素透過度が低いガスバリア性の高いものが好適である。
【0022】
図3(c)は、図3(a)もしくは図3(b)の変形例といえる例である。ここに示す例は、受光側板体層11a、上下両面(厚み方向両側)の保護層13は同様であるが、設置側板体層11bとして可撓性を有する樹脂製板材を備えている点で上記の例と異なる。樹脂製板材としては、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、共重合ポリエステル(PETG)、ポリ塩化ビニル(PVC)、環状オレフィンポリマー(COC, COP)、ポリエチレン(PE)等が挙げられる。設置側板体層11bの板厚は、設置場所に応じて選定されるものとしてもよいし、特に限定されないが、薄状とすれば、太陽電池1の薄板化を図ることができる。
【0023】
次に図4及び図5を参照しながら、発明者によって行われたガラス板の曲げ評価試験について説明する。この評価試験では、太陽電池を模したシート体100,100Aを用意して行った。シート体100,100Aは、いずれも同じ積層構造からなり、いずれも同じ厚みのガラス板やフィルムを使って、隙間部150の有無によってガラス板の曲げ性にどのような違い・影響があるかと評価した。曲げ性は、シート体100,100Aの略中央部位を折り曲げ、その状態を保持する一対の挟み板300,300で曲げた状態を維持し、解放後にガラス板にクラックの有無を確認することで評価を行った。シート体100,100Aの曲げ隙間L(図4(c)及び図5(c)参照)は、50mm,40mm,30mm,20mm,10mm,5mmと変えて評価を行った。シート体100,100Aの略中央部位を折り曲げていくスピードがほぼ一定になるように配慮して行った。
【0024】
シート体100,100Aは、いずれも、一辺20cm程度の略方形状をなし、シート体100,100Aの厚み方向両側の最も外面層には保護層13に相当するものとして150μmのポリエチレンテレフタレート製の保護フィルム130を配した。また50μmのガラス板層110の厚み方向両側に38μmのポリエチレンテレフタレート製のフィルム120を配してなるガラス層101を構成し、太陽電池体10に相当するものを形成した。保護フィルム130とフィルム120との間は接着剤200で固着されている。接着剤200は、熱を加えると透明になるEVA(エチレン酢酸ビニル)接着剤を用いた。またガラス板層110としては、日本電気硝子株式会社製薄板ガラスG-Leaf(登録商標)を用いた。
【0025】
シート体100は、略方形状の保護フィルム130よりも少し小さく形成された一枚のガラス層101を備える一方、シート体100Aは、略方形状の一対の保護フィルム130内に2枚のガラス層101を備え、ガラス層101とガラス層101の間は、10mmの隙間部D3(図5(b)参照)を備えるものとした。
【0026】
シート体100で、曲げ評価試験を行ったところ、図4(d)の表に示すとおり、曲げ隙間Lが50mm~20mmの間では、ガラス層101にクラックは確認されなかった。しかし曲げ隙間Lを10mmにしたところ、クラックが確認されたので、20mmから1mm単位で曲げ隙間Lを確認したところ、曲げ隙間Lが13mmでクラックが発生することがわかった。このときのシート体100の曲率半径はR6.5mmであった。一方、シート体100Aで、曲げ評価試験を行ったところ、図5(d)の表に示すとおり、曲げ隙間Lが50mm~5mmの間でガラス層101にクラックは確認されなかった。この評価試験により、隙間部150を10mmとすれば、曲げ隙間Lが5mm(曲率半径R2.5mm)まで曲げてもクラックが生じないことがわかった。
【0027】
以上によれば、50μmのガラス板を上述のように保護フィルムで保護すれば、曲げ隙間Lが20mm(曲率半径R10mm)としてもクラックが生じない可撓性を保持できることがわかった。これに加えてガラス板とガラス板との間に隙間部150を備えたものとすれば、曲げ隙間Lが5mmであってもクラックが生じないことがわかったため、この構造を太陽電池モジュールに適用した場合、十分な可撓性を備えたものとすることができることが実証できた。
【0028】
上記実施形態に係る太陽電池1、太陽電池体10の構成・構造は上記に限定されるものではない。保護層13は複数層が積層されて構成されたものであってもよいし、受光側板体層11aとして、ガラス板に加えてフィルム層が構成されていてもよい。太陽電池1を構成するモジュールや太陽電池体10を構成する太陽光発電層12の構成も図2(a)に示す形状や個数に限定されない。
【符号の説明】
【0029】
1 太陽電池
10 太陽電池体
11a 受光側板体層
11b 設置側板体層
12 太陽光発電層
13 保護層
14 層間隙間
15 隙間部
20 エラストマー
【要約】
【課題】ガラス板を用い高い発電効率を図ったものでありながら、可撓性を備えた太陽電池を提供する。
【解決手段】 太陽光発電層12と、前記太陽光発電層の受光側に積層して設けられる受光側板体層11aとを有する太陽電池体10を複数備えた可撓性を有する太陽電池1であって、前記太陽電池体と前記太陽電池体とは、間隔を空けた隙間部15を備えて配置されるとともに、その厚み方向両側は保護層13で封止されており、前記受光側板体層は、板厚が0.1mm以下のガラス板である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5