(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】クランプ
(51)【国際特許分類】
B66C 1/36 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
B66C1/36 A
(21)【出願番号】P 2024055868
(22)【出願日】2024-03-29
(62)【分割の表示】P 2023189665の分割
【原出願日】2023-11-06
【審査請求日】2024-04-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520291135
【氏名又は名称】大栄産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 和昭
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-042441(JP,A)
【文献】実開昭58-190784(JP,U)
【文献】特開2017-132614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/36 A
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面部と下面部と直角に隣り合う面に構成された両側面部とからなり一部に敷鉄板の角部が遊挿される開口部を有する収納空間部が形成された支持筐体と、該支持筐体上に装着される吊上げレバーとが備えられ、
前記支持筐体の前記収納空間部の前記開口部より見て奥側箇所は2個の両前記側面部の長手方向端部同士が直角に交じり合う奥側交じり合部とし、前記吊上げレバーは、長手方向の中心箇所を揺動中心部として垂直面上を揺動自在とし、
前記揺動中心部より見て長手方向の一端側は前記支持筐体内に出没する押圧端部とし、前記上面部には前記押圧端部が出没する出没孔が形成され、前記揺動中心部より見て長手方向他端側を吊上げ端部とし、前記吊上げレバーの吊上げ端部の吊上げ状態で前記押圧端部は前記出没孔を介して前記支持筐体内に突出できるようにし、前記支持筐体の前記下面部で且つ前記奥側交じり合部の隅角部付近には排出孔が形成されてなることを特徴とするクランプ。
【請求項2】
請求項1に記載のクランプにおいて、前記排出孔は、前記奥側交じり合部の隅角部における両前記側面部に沿う二辺を有する三角形状に形成されてなることを特徴とするクランプ。
【請求項3】
請求項1に記載のクランプにおいて、前記排出孔は、前記下面部の前記奥側交じり合部の隅角部付近を除いた形状とすることにより形成されてなることを特徴とするクランプ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のクランプにおいて、前記支持筐体の前記上面部と前記下面部は三角形状とし、前記支持筐体は平面より見て三角形状の筐体とし、その長辺側に前記開口部が設けられてなることを特徴とするクランプ。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のクランプにおいて、前記支持筐体の前記上面部と前記下面部は四角形状とし、前記支持筐体は平面より見て四角形状の筐体とし、任意の隣接する両辺に亘って前記開口部が設けられてなることを特徴とするクランプ。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のクランプにおいて、前記吊上げレバーの前記押圧端部には、粗面としてなることを特徴とするクランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に敷鉄板を水平状態にして、安全を確保しながら吊上げることができ、且つ敷鉄板の4つの角部に簡易に装着できるクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場,土木現場或いは建築解体現場で、軟弱な地盤が多く、このような地盤上では建築・土木作業が安全に行い難くなり、また建設用車両も走行し難いものとなる。そのため、地盤上に敷鉄板を敷き詰めて、作業現場の地盤を簡易的に補強することが多い。この種の敷鉄板のサイズは、一般的に1524mm×3048mm×22mmであり、その重量は約802kgとなる。
【0003】
このような敷鉄板が、建築・土木現場に搬送され、所定の地盤に設置したり、或いは設置位置を変更したり、撤去する場合には当然、クレーンが使用されて敷鉄板が吊上げられる作業が行われる。この敷鉄板吊上げ作業で、現在では吊上げ用のクランプが使用されることが一般的である。この吊上げ用のクランプには、多くの種類の物が存在している。
【0004】
従来タイプのクランプ(吊上げ具,吊下げ具,吊具とも言う)は、特許文献1(特開平9
-71384号公報)に開示されているように、支持筐体(ワーク)の両面を挟持するよう
に掴むタイプのものが多く存在している。特許文献1では、敷鉄板を水平状に吊上げる場合には、具体的には、4個のクランプが用意され、クランプの回動自在のカムと固定状態の受面とにより敷鉄板の任意の4箇所が挟持される。
【0005】
そして、それぞれのクランプに連結されたワイヤ或いはチェーンを持ち上げることで、4個のクランプのそれぞれのカムが受面に対して回動し、カムと受面による敷鉄板に対する挟持圧が大きくなり、強固な挟持状態で敷鉄板を水平状に持ち上げることができる。また、特許文献2(特開2011-42441号公報)は、敷鉄板の角部を挿入できる方形環状の保持枠体部が備えられたタイプのクランプで、敷鉄板を略水平状に持ち上げることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-71384号公報
【文献】特開2011-42441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、建築現場において敷鉄板を搬入し、軟弱な地盤に設置する作業は、現場にトラック等にて搬送された敷鉄板をクランプで掴み、このクランプにチェーン又はワイヤ等を装着し、さらにチェーン又はワイヤをクレーンのフックに連結して、吊上げたり、降ろしたりして敷鉄板を地面に設置する。
【0008】
従来のクランプは、長方形状の敷鉄板の対向する長辺同士又は対向する短辺同士の何れかのそれぞれの両側箇所、つまり敷鉄板の4箇所のそれぞれにクランプを取り付け、敷鉄板を水平状に吊上げたり、降ろしたりして、現場に搬送された敷鉄板を現場の地面上に設置するものである。
【0009】
なお、従来において敷鉄板の一つの長辺又は一つの短辺のそれぞれの両側の2箇所にクランプを取り付けて吊上げることは、つまり2個のクランプで敷鉄板を吊上げることは、敷鉄板が水平状に吊上げられず、垂直状につり上げられることになってしまうので、掴みタイプのクランプでは、掴みが完全でなく、掴みによる挟持力が弱い場合では敷鉄板が落下してしまう可能性もあり、作業に危険が伴い、事故に繋がり易くなるので、このような作業は極力避けられている。
【0010】
特許文献1は、掴みタイプのクランプの一般的なものとして開示したものである。これは、基台の底部と、クランプ部(特許文献1における名称)とでワーク(敷鉄板)の両面を挟持状態に掴み、ワイヤを上方に引くことでクランプ部が動作し、ワークの両面に対する挟持力が増し、ワークを吊上げることができる。次に、特許文献2は、敷鉄板の4つの角部を略包持状に支持する保持枠体を備えたもので、長方形状の敷鉄板の4つの角部を保持枠体に差し込み、その4つの保持枠体に連結されたチェーンを上方に引くことで、敷鉄板を水平状に吊上げることができる。
【0011】
ところで、敷鉄板が設置される地面は、通常、土や泥等で覆われた軟弱な地盤であり、この地面上に敷鉄板がそのまま設置されることが多い。つまり、地面に直置き、一般的にベタ置と称する設置がなされるものである。そして、このような敷鉄板のベタ置きは、設置することが容易であるが、ベタ置きのため、敷鉄板の下面側は地面に接触する状態となる。或いは、敷鉄板は極めて重量のあるもの(約800kg)であるため、敷鉄板が自重によって軟弱な面に沈むように僅かに埋まるようになることもある。
【0012】
そのため、地面にベタ置きされた敷鉄板の所定箇所にクランプを取り付ける場合には、特許文献1及び特許文献2に開示されたタイプのクランプでは、敷鉄板を地面から多少上方に持ち上げて敷鉄板の裏面と地面との間にスペースを設け、そのスペースのクランプの一部を差し込むようにしなければ、敷鉄板の両面を挟持状に掴んだり、保持したりすることはできない。
【0013】
また、特許文献2の包持タイプの保持枠体を有するクランプに敷鉄板の角部に挿入させることが記載されているが、前記保持枠体における敷鉄板の角部を挿入させるスペースの上下方向寸法は、角部の厚さと略同等であるように見受けられ、したがって、角部を保持枠体に挿入するには保持枠体にかなりの力を加えなければならない。しかし、特許文献2に開示されている保持枠体に外部からを力を加えるに適した部分が見当たらず、敷鉄板の角部に保持枠体を装着させることは極めて困難であると思われる。そこで、本発明が解決しようとする技術的課題は、敷鉄板の角部に取り付け易く、極めて安全に水平状に吊上げ及び吊り降ろしができ、地面にベタ置きされた敷鉄板の回収を容易にできるクランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、発明者は、前記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、上面部と下面部と直角に隣り合う面に構成された両側面部とからなり一部に敷鉄板の角部が遊挿される開口部を有する収納空間部が形成された支持筐体と、該支持筐体上に装着される吊上げレバーとが備えられ、前記支持筐体の前記収納空間部の前記開口部より見て奥側箇所は2個の両前記側面部の長手方向端部同士が直角に交じり合う奥側交じり合部とし、前記吊上げレバーは、長手方向の中心箇所を揺動中心部として垂直面上を揺動自在とし、前記揺動中心部より見て長手方向の一端側は前記支持筐体内に出没する押圧端部とし、前記上面部には前記押圧端部が出没する出没孔が形成され、前記揺動中心部より見て長手方向他端側を吊上げ端部とし、前記吊上げレバーの吊上げ端部の吊上げ状態で前記押圧端部は前記出没孔を介して前記支持筐体内に突出できるようにし、前記支持筐体の前記下面部で且つ前記奥側交じり合部の隅角部付近には排出孔が形成されてなることを特徴とするクランプとしたことにより、上記課題を解決した。
【0015】
請求項2の発明を、請求項1に記載のクランプにおいて、前記排出孔は、前記奥側交じり合部の隅角部における両前記側面部に沿う二辺を有する三角形状に形成されてなることを特徴とするクランプとしたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1に記載のクランプにおいて、前記排出孔は、前記下面部の前記奥側交じり合部の隅角部付近を除いた形状とすることにより形成されてなることを特徴とするクランプとしたことにより、上記課題を解決した。
【0016】
請求項4の発明を、請求項1又は2に記載のクランプにおいて、前記支持筐体の前記上面部と前記下面部は三角形状とし、前記支持筐体は平面より見て三角形状の筐体とし、その長辺側に前記開口部が設けられてなることを特徴とするクランプとしたことにより、上記課題を解決した。請求項5の発明を、請求項1又は2に記載のクランプにおいて、前記支持筐体の前記上面部と前記下面部は四角形状とし、前記支持筐体は平面より見て四角形状の筐体とし、任意の隣接する両辺に亘って前記開口部が設けられてなることを特徴とするクランプとしたことにより、上記課題を解決した。
【0017】
請求項6の発明を、請求項1又は2に記載のクランプにおいて、前記吊上げレバーの前記押圧端部には、粗面としてなることを特徴とするクランプとしたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明では、クランプは、一部に敷鉄板の角部が遊挿される開口部を有する収納空間部が形成された支持筐体を有しており、クランプを4個、備えることにより、長方形の敷鉄板の4つの角部が遊挿されるようにすることで、敷鉄板をクレーンにより吊上げるときには、敷鉄板を極めて安定した状態で水平状に吊上げることができる。
【0019】
さらに、クランプに吊上げレバーが備えられており、該吊上げレバーは、吊上げ端部の吊上げ状態で押圧端部は出没孔を介して支持筐体内に突出できるようにしており、吊上げ作業時には支持筐体に遊挿した敷鉄板の角部を強固に固定することができる。さらに、敷鉄板の4つの角部がクランプにて支持されて吊上げられる状態では、4個のクランプは吊上げのケーブル材を介して敷鉄板の平面中央箇所に向かって必然的に力が掛かり、より一層強固に敷鉄板を支持することができ、敷鉄板の落下を防止し、安全な吊上げ作業ができる。
【0020】
さらに、請求項1の発明では、支持筐体の下面部で且つ奥側交じり合部の隅角部付近に形成された排出孔により、支持筐体内に入り込んだ土や泥を排出孔から排出することができる。支持筐体内に入り込んだ土や泥の排出孔からの排出は、支持筐体内に敷鉄板の角部を遊挿させる作業と共に行うことができる。つまり、角部が支持筐体内に遊挿する過程で、角部が土や泥を支持筐体内で排出孔に向かって押し付け、これによって、土や泥を排出孔から支持筐体外部に押し出すことができるものである。
【0021】
本発明のクランプでは、奥側交じり合部の閉鎖領域部と排出孔とを有しており、支持筐体内に敷鉄板の角部を遊挿させるときには、奥側交じり合部の閉鎖領域部を押圧することで、角部の支持筐体内への相対的な遊挿ができる。また、この遊挿作業過程において、支持筐体内に土や泥が入り込んだとしても、角部が支持筐体内に遊挿する過程で、土や泥を排出孔から支持筐体の外部に排出することができ、土や泥によって、角部の支持筐体への遊挿動作が妨げられることなく、角部の正確な遊挿配置ができる。
【0022】
請求項2の発明では、排出孔は、下面部に三角形状に形成されるので、排出孔を形成することにより、強度の低下を最小限に抑えることができる。請求項3の発明では、支持筐体に極めて簡単に排出孔を形成することができる。請求項4の発明では、クランプのサイズをコンパクトにまとめることができる。請求項5の発明では、支持筐体による敷鉄板の角部の支持をさらに良好にできる。請求項6の発明では、クランプによる敷鉄板の角部の支持をより一層強固にできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】(A)は本発明のクランプの斜視図、(B)はクランプの平面図、(C)は(A)のX1-X1矢視断面図、(D)は(B)のX2-X2矢視断面図である。
【
図2】(A)は吊上げレバー機構部を除いた支持筐体のみの斜視図、(B)は上面部を除いた支持筐体の斜視図、(C)は(B)の(α)部拡大図、(D)は(B)の(α)部の別の実施形態とした拡大図、(E)は上面部を除いた別の実施形態とした支持筐体の斜視図である。
【
図3】(A)は本発明のクランプにて敷鉄板を吊上げた状態の斜視図、(B)は(A)の(β)部拡大図、(C)は(A)の(β)部の別の実施形態とした拡大図。
【
図4】(A)は本発明のクランプにて敷鉄板を吊上げた状態の一部切除した要部拡大斜視図、(B)は(A)の(γ)部拡大図、(C)はA)の(γ)部においてクランプと敷鉄板の角部とを分離した拡大図である。
【
図5】(A)は本発明のクランプにて敷鉄板を吊上げた状態の平面図、(B)は本発明のクランプにて敷鉄板を吊上げた状態の側面図である。
【
図6】(A)~(C)は本発明のクランプで敷鉄板の角部を吊上げる過程を示す縦断側面図である。
【
図7】(A)は地面にベタ置きされた敷鉄板に本発明のクランプを装着する過程を示す略示図、(B)は地面にベタ置きされた敷鉄板に本発明のクランプを装着する過程を示す斜視図である。
【
図8】(A)~(E)は地面にベタ置きされた敷鉄板に本発明のクランプを装着する過程を示す縦断側面図である。
【
図9】(A)は本発明のクランプの別の実施形態の斜視図、(B)は本発明のクランプの別の実施形態の平面図、(C)及び(D)は吊上げレバーの押圧端部の粗面の形状の実施形態を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ここで、本発明の名称はクランプであるが、一般にクランプは、吊上げ具(器),吊下げ具(器),吊具(吊り具)等と称されることもあり、このようなものもクランプの概念に含まれるものとする。本発明のクランプは、支持筐Aと吊上げレバー機構部Bとを有する(
図1参照)。支持筐体Aは、上面部1と下面部2と直角状(又はコーナー状)に構成された2個の側面部3とからなり、これらは全て金属板材からなる(
図1,
図2参照)。本発明では、上面部1,下面部2及び両側面部3は、板厚が約6mm程度のものが使用されているが、この寸法に限定されるものではなく、使用状況に応じて適宜板厚が変更されても構わない。
【0025】
そして、上面部1と下面部2とを上下方向に所定間隔をおいて平行に配置され、上面部1と下面部2との間で、且つ上面部1と下面部2の外周に沿って2つの側面部3が配置され、これらが溶接等の固着手段にて相互に固着される。これによって、一部に開口部42を設けた収納空間部4が存在する筐体が構成されるものであり、この筐体が支持筐体Aとなる。支持筐体Aの収納空間部4に敷鉄板9の角部91が遊挿されるようになっている(
図6参照)。
【0026】
ここで遊挿とは、余裕を有して挿入することができる状態のことを言うものであり、具体的には収納空間部4において、敷鉄板9の角部91の周囲に遊び空間が生じるようにして挿入できるものである。ただし、敷鉄板9の角部91が完全に収納されたときには、該角部91の周囲と、支持筐体Aの側面部3とは当接する状態となり、後述する吊上げレバーBの作動により、敷鉄板9の角部91は支持筐体Aとの間に隙間なく、強固に固定されることになる。
【0027】
支持筐体Aの開口部42から収納空間部4に敷鉄板9の角部91が遊挿できるために、開口部42の上下方向の寸法は、敷鉄板9の角部91の板厚寸法よりも一回り大きく形成される。つまり、支持筐体Aの上面部1と下面部2との間隔は、敷鉄板9の角部91の板厚寸法よりも余裕を有して大きく設定される。具体的には、敷鉄板9の板厚が約22mm程度であり、支持筐体Aの上面部1と下面部2との間隔は約40mm程度としている。したがって、支持筐体Aの上面部1と下面部2との間隔は、つまり開口部42の上下方向寸法は敷鉄板9の角部91の板厚の約1.3~約2倍程度である(
図6参照)。
【0028】
支持筐体Aの収納空間部4の開口部42より見て奥側には奥側箇所は2つの側面部3,3同士が直角に隣り合う面同士となる隅角部4aが形成されている(
図2参照)。収納空間部4の奥側箇所は、上面部1,下面部2と隅角部4aを中心としてその両側に壁面を構成する両側面部3,3とで囲まれた閉鎖状の空間であり、隅角部4aを中心とし、該隅角部4a及びその周囲で、且つ閉鎖された空間を閉鎖領域部41と称する。
【0029】
ただし、該閉鎖領域部41には、後述する排出孔21が存在し、該排出孔21を除いた部分が閉鎖された空間となる。支持筐体Aの収納空間部4に、その開口部42から遊挿される敷鉄板9の角部91は、支持筐体Aの奥側の閉鎖領域部41の隅角部4a及び両側面部3,3に当接し、支持筐体Aの閉鎖領域部41に包持されるようになっている。また、前記隅角部4aは、2個の側面部3の長手方向端部同士が直角に交じり合う部分である。
【0030】
そして、2個の側面部3の端部同士の交じり合いの構成は、両側面部3,3の端部がそれぞれ長手方向に直交する平坦面同士となり、一方の側面部3の端面が、他方の側面部3に当接して、溶接等にて固着されるものである〔
図2(C)参照〕。また、2個の側面部3の端部同士の別の交じり合いの構成は、両側面部3,3の端面が角度45°の傾斜面として形成され、傾斜した端面同士が当接し、溶接等にて固着される〔
図2(E)参照〕。
【0031】
支持筐体Aは、平面より見て三角形状の筐体である。支持筐体Aが三角形状であるために、前記上面部1と前記下面部2とは、共に同等の三角形状としており、具体的には、直角三角形としている〔
図1(A),(B),
図2(A)参照〕。そして、直角三角形とした上面部1と下面部2のそれぞれの長辺側が対応するように配置され、両長辺間に亘って開口部42が設けられる〔
図1(A),(C),(D),
図2(A)参照〕。支持筐体Aの上面部1には、出没孔11が形成される〔
図1(D),
図2(A)参照〕。該出没孔11は、略長方形状の長孔として形成され、後述する吊上げレバー機構部Bの吊上げレバー5の押圧端部52が出没する部位となる。
【0032】
支持筐体Aの下面部2で且つ前記隅角部4a付近には排出孔21が形成される〔
図1(C),(D),
図2(B),(C)参照〕。該排出孔21は、支持筐体Aの収納空間部4に地面の土や砂等の異物が入り込んでしまったときに、該異物を収納空間部4への敷鉄板9の遊挿によって支持筐体Aの外部に排出孔21から排出する役目をなすものである。排出孔21は、前述したように、隅角部4a付近に設けられるものであり、排出孔21は、三角形状で、具体的には隅角部4aにおける両側面部3,3に沿う二辺を有する直角三角形状に形成される。排出孔21の大きさ(例えば面積)は、異物の排出量を予想して決定されるが、異物に混入する砂利の大きさに合わせて決定される。
【0033】
また、排出孔21は、支持筐体Aの下面部2の隅角部4a付近を除いた形状とすることにより形成される実施形態も存在する〔
図2(E)参照〕。具体的には、下面部2の形状を台形状とし、短い上辺の部分と直角に隣り合う両側面部3,3との間にできる開口を排出孔21として使用されるものである。この実施形態による排出孔21によって、下面部2に予め排出孔21のための貫通孔を穿孔する工程を省くことができるという利点がある。
【0034】
次に、吊上げレバー機構部Bは、吊上げレバー5と揺動支持部6とを備えている(
図1参照)。吊上げレバー5は、略天秤状の動作を行うものであり、吊上げレバー5は、長手方向において中心箇所に揺動中心部51が形成され、該揺動中心部51から見て長手方向一端側は押圧端部52とし、他端側は吊上げ端部53としている。前記揺動中心部51は、実際には貫通孔であり、後述する揺動支持部6を構成するボルト部62aの軸部分が挿通する部位である。
【0035】
押圧端部52は前記上面部1の出没孔11から収納空間部4に出没し、吊上げ時には、押圧端部52によって収納空間部4に遊挿配置された敷鉄板9の角部91を押し付けて押圧状態とする部位となる。吊上げ端部53は、本発明のクランプをクレーンにて吊上げるときに、チェーン又はワイヤ等のケーブル材8と連結する部位であり、連結用孔53aが形成されている。揺動支持部6は、揺動基台61と、揺動軸部62から構成されている(
図1参照)。
【0036】
揺動基台61は、上面部1の外面に配置され揺動軸部62を介して吊上げレバー5を揺動自在に支持する。揺動軸部62は、ボルト部62a,ナット部62b,座金62cからなる。そして、2つの揺動基台61が上面部1の出没孔11の幅方向を挟むようにして所定間隔をおいて平行に配置され、上面部1上に溶接等の固着手段によって固着される。両揺動基台61には、ボルト部62aの軸部分が挿通する軸孔61aが形成されている。
【0037】
両揺動基台61の間に吊上げレバー5が配置され、揺動基台61の軸孔61aと、吊上げレバー5の揺動中心部51の孔とをボルト部62aを貫通させ、該ボルト部62aに座金62c及びナット部62bを締め付ける。これによって吊上げレバー5は、上面部1上で、垂直面上で揺動動作を行い、押圧端部52は出没孔11を介して、支持筐体Aの収納空間部4に突出できるように出没する構成となる。また、吊上げ端部53の連結用孔53aには、チェーン又はワイヤ等のケーブル材8が連結される。
【0038】
そして、吊上げレバー5は、その吊上げ端部53のケーブル材8によって引き上げられた吊上げ状態で押圧端部52は出没孔11を介して支持筐体A内に突出できるようにしている。さらに、具体的には、無負荷状態で吊上げレバー5の押圧端部52は、上面部1の外方に位置し、吊上げレバー5の吊上げ端部53がケーブル材8によって引き上げられたときに、押圧端部52は、上面部1の出没孔11から支持筐体A内の収納空間部4に入り込んで突出する〔
図6(B)参照〕。
【0039】
次に、本発明のクランプにて敷鉄板9を吊上げる工程について説明する。まず、本発明のクランプを全部で4個、用意される〔
図3(A),
図4(A)参照〕。そして、敷鉄板9の4つの角部91をクランプの支持筐体Aの開口部42から収納空間部4に遊挿する〔
図4(C),
図6(A)参照〕。このとき、吊上げレバー5の押圧端部52は、敷鉄板9の角部91を押圧する状態とはなっていない。
【0040】
敷鉄板9の4つの角部91にクランプが装着されると、次にクレーンにより、吊上げレバー5の吊上げ端部53に連結されたチェーン,ワイヤ等のケーブル材8によって吊上げレバー5の吊上げ端部53を上方に持ち上げると、吊上げレバー5の揺動中心部51を揺動中心として揺動し、押圧端部52が下方に下がり〔
図4(B),
図6(B)参照〕、さらに、押圧端部52が出没孔11から収納空間部4に突出し、収納空間部4に収納されている敷鉄板9の角部91を、押圧力Pを有して押圧し、該角部91を押圧端部52と下面部2とで挟持押圧する状態となる〔
図6(C)参照〕。なお、押圧端部52の敷鉄板9の角部91に対する押圧力Pは、敷鉄板9の重量が大きくなるにつれて、大きくなる。
【0041】
そして、クレーンにてケーブル材8と共に4個の数クランプを同時に吊上げることで、敷鉄板9は水平状に吊上げることができる〔
図3(A)参照〕。そしてこのとき、敷鉄板9の4つの角部91に装着された4個のクランプは、それぞれのケーブル材8が上方にてクレーンのフック等に収束状態で連結されているので〔
図3(B),(C),
図4等参照〕、4個のクランプは敷鉄板9の中央に向かう力Fが生じる〔
図5,
図6(C)参照〕。この4個のクランプにそれぞれかかる4つの力Fは、敷鉄板9の4つの角部91に対して等しく働くものであり、しかも、角部91は支持筐体Aの収納空間部4に包持状態で収納されるため、極めて安定且つ強力な保持状態にて吊上げ搬送できるものでる〔
図4(A)参照〕。また、ケーブル材8とクレーンのフックとの間にシャックルを設けることもあり、4本のケーブル材8の上端のリングが1つのシャックルにまとめて連結されることもある〔
図3(C)参照〕。
【0042】
次に、地面Gに設置された敷鉄板9を回収する工程を
図7,
図8に基づいて説明する。まず、工事現場の地面Gは、一般的に土等による地盤で、軟弱な面であり、降雨等によって泥地となることもある。また、敷鉄板9は極めて重量物であるため、地面Gの表面と密接状態にある。つまり、敷鉄板9と地面Gとの間に空間はほとんど存在しないものである〔
図7(A)の(I),
図8(A)参照〕。
【0043】
このような場合、敷鉄板9を回収する目的で、吊上げる場合、従来品のクランプでは、バール等の工具を梃子替わりに利用して敷鉄板9を部分的に地面Gから持ち上げて、敷鉄板9と地面Gとの間に空間を設け、この空間を利用して従来タイプのクランプを装着している。さらに、この敷鉄板9と地面Gとの空間を維持するために、垂木等を用意しなければならない。
【0044】
本発明のクランプでは、敷鉄板9が敷設された地面Gで且つ敷鉄板9の角部91の周囲の地面Gを作業員が浅く掘削して窪みkを形成する。この窪みkの深さは、極めて僅か深さで良く、下面部2の板厚程度でよい。さらに、地面Gは前述したように軟弱面であり、作業員の手持ちのショベル又はスコップで容易に掘ることができる。このようにして、掘削した窪みkに本発明のクランプを配置し、開口部42を角部91に対向するようにする〔
図7(A)の(II),(III),
図8(B)参照〕。そして、作業員は、ハンマー等の打撃工具Tにて〔
図7(A)の(IV)参照〕、クランプの支持筐体Aの両側面部3,3が直交する箇所、つまり隅角部4aの外部側より打撃し、支持筐体Aに敷鉄板9の角部91が遊挿するように装着する。
【0045】
このとき、支持筐体Aの収納空間部4に地面Gの土や泥が入り込んでしまうことがある〔
図8(C)参照〕。しかし、角部91が収納空間部4に遊挿する過程で、土や泥を隅角部4a側に押しながら〔
図8(D)参照〕、下面部2に設けた排出孔21から土や泥を排出することができる〔
図8(E)参照〕。また、支持筐体Aの収納空間部4内に溜まってしまった土や泥は、作業員に手で排除できるが、さらに水道のホースから開口部42に放水するのみで、水圧によって、溜まった土や泥を排出孔21から支持筐体Aの外部に簡単且つ瞬時に排出できる。
【0046】
これによって、敷鉄板9の角部91全体が、支持筐体Aの収納空間部4に入り込み、隅角部4a及び両側面部3に当接する状態となり、クランプの確実なる角部91への装着ができる〔
図7(B)参照〕。また、支持筐体Aは開口部42より見て奥側が閉鎖領域部41であり、両側面部3が隣り合う部分となっているため、作業員は、ハンマー等の打撃工具Tにより打ち込みに好適な形状となっている〔
図7(A)の(IV),(B)参照〕。
【0047】
本発明の第2実施形態として、支持筐体Aの上面部1と下面部2は四角形状とし、支持筐体Aは平面より見て四角形状の筐体とし、任意の隣接する両辺に亘って開口部42が設けられることもある〔
図9(A),(B)参照〕。この実施形態では、上面部1と下面部2において隣接する2辺と直接両側面部3,3とが当接する部位が閉鎖領域部41となる。
【0048】
そして、上面部1と下面部2との両側面部3,3と当接しない部分は、上面部1と下面部2の一部となり、開口部42から水平方向に突出した部位となる。この上面部1及び下面部2の開口部42から突出した部分は上補助支持板1a及び下補助支持板2aとすることによって、第2実施形態における支持筐体Aは敷鉄板9の角部91をより一層強固に支持することができる。
【0049】
また、吊上げレバー5の押圧端部52には、粗面52aとすることもある。該粗面52aは、鋸歯状としたり〔
図9(C)参照〕、凹凸が繰り返されるローレット状面とすることがある〔
図9(D)参照〕。押圧端部52に粗面52aを設けることで、支持筐体A内に収納された敷鉄板9の角部91を吊上げレバー5によって強固に固定することができる。
【符号の説明】
【0050】
A…支持筐体、1…上面部、11…出没孔、2…下面部、21…排出孔、
3…側面部、4…収納空間部、4a…隅角部、41…閉鎖領域部、42…開口部、
B…吊上げレバー機構部、5…吊上げレバー、51…揺動中心部、52…押圧端部、
53…吊上げ端部、6…揺動支持部、9…敷鉄板、91…角部。
【要約】 (修正有)
【課題】特に敷鉄板を水平状態にして、安全を確保しながら吊上げることができ、鉄板の4つの角部に簡易に装着できるクランプを提供する。
【解決手段】上面部1と下面部2と直角に隣り合う面に構成された両側面部3とからなり一部に敷鉄板9の角部91が遊挿される開口部42を有する収納空間部4が形成された支持筐体Aと、支持筐体A上に装着される吊上げレバー5とを備える。支持筐体Aの収納空間部4に隅角部が形成された閉鎖領域部41とし、吊上げレバー5は、長手方向の中心箇所を揺動中心部51として垂直面上を揺動自在とし、揺動中心部51より見て長手方向の一端側は支持筐体A内に出没する押圧端部52とし、上面部1には押圧端部52が出没する出没孔11が形成され、揺動中心部51より見て長手方向他端側を吊上げ端部53とし、吊上げレバー5の吊上げ端部53の吊上げ状態で押圧端部52は出没孔11を介して支持筐体A内に突出する。
【選択図】
図1