(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサおよびセラミック原料粉末
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240724BHJP
C04B 35/468 20060101ALI20240724BHJP
H01B 3/10 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
H01G4/30 515
C04B35/468 200
H01B3/10
H01G4/30 201L
(21)【出願番号】P 2022174380
(22)【出願日】2022-10-31
(62)【分割の表示】P 2018220281の分割
【原出願日】2018-11-26
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2018039972
(32)【優先日】2018-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 克哉
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 剛
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-154620(JP,A)
【文献】国際公開第2008/050863(WO,A1)
【文献】特開2013-151380(JP,A)
【文献】特開2017-028225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/00-4/224
H01G 4/255-4/40
H01G 13/00-13/06
H01B 3/10
C04B 35/468
C04B 35/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と内部電極層とが交互に積層された積層体を備え、
前記誘電体層の主成分は、一般式ABO
3で表されるペロブスカイト構造を主相とし、Bサイトにドナーとして機能する元素を含み、AサイトおよびBサイトのいずれも希土類元素を含むセラミック材料であり、
前記Aサイトに固溶される希土類元素の固溶量(Aサイト固溶量)と前記Bサイトに固溶される希土類元素の固溶量(Bサイト固溶量)との比は、0.75≦(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)≦1.25を満たし、
Bサイトにおいて、ドナーとして機能する元素が、Bサイトの主成分元素を100atm%とした場合に、0.05atm%以上0.3atm%以下置換固溶して
おり、
前記ペロブスカイト構造は、BaTiO
3
、CaZrO
3
、CaTiO
3
、SrTiO
3
、又はBa
1-x-y
Ca
x
Sr
y
Ti
1-z
Zr
z
O
3
(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)のうちのいずれか1つであることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
一般式ABO
3で表されるペロブスカイト構造を主相とし、Bサイトにドナーとして機能する元素を含み、AサイトおよびBサイトのいずれも希土類元素を含み、
前記Aサイトに固溶される希土類元素の固溶量(Aサイト固溶量)と前記Bサイトに固溶される希土類元素の固溶量(Bサイト固溶量)との比は、0.75≦(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)≦1.25を満たし、
Bサイトにおいて、ドナーとして機能する元素が、Bサイトの主成分元素を100atm%とした場合に、0.05atm%以上0.3atm%以下置換固溶して
おり、
前記ペロブスカイト構造は、BaTiO
3
、CaZrO
3
、CaTiO
3
、SrTiO
3
、又はBa
1-x-y
Ca
x
Sr
y
Ti
1-z
Zr
z
O
3
(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)のうちのいずれか1つであることを特徴とするセラミック原料粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサおよびセラミック原料粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体層の厚みが小さい積層セラミックコンデンサにおいて、十分な信頼性特性が得られる誘電体材料が求められている。例えば、原料粉末に予め特定の元素を固溶させておく手法が有効であることが判明している。特許文献1は、寿命特性の向上を目的として、ドナー元素を添加する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、誘電体層の厚みが小さく積層数も増加している近年においては、更なる寿命特性の向上が求められている。また、絶縁特性の向上も求められている。したがって、ドナー元素によって酸素欠陥量を低減させる手法のみでは、更なる高信頼性を実現することは困難である。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、高信頼性を実現することができる積層セラミックコンデンサおよびセラミック原料粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る積層セラミックコンデンサは、誘電体層と内部電極層とが交互に積層された積層体を備え、前記誘電体層の主成分は、一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を主相とし、Bサイトにドナーとして機能する元素を含み、AサイトおよびBサイトのいずれも希土類元素を含むセラミック材料であり、前記Aサイトに固溶される希土類元素の固溶量(Aサイト固溶量)と前記Bサイトに固溶される希土類元素の固溶量(Bサイト固溶量)との比は、0.75≦(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)≦1.25を満たし、Bサイトにおいて、ドナーとして機能する元素が、Bサイトの主成分元素を100atm%とした場合に、0.05atm%以上0.3atm%以下置換固溶しており、前記ペロブスカイト構造は、BaTiO
3
、CaZrO
3
、CaTiO
3
、SrTiO
3
、又はBa
1-x-y
Ca
x
Sr
y
Ti
1-z
Zr
z
O
3
(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)のうちのいずれか1つであることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るセラミック原料粉末は、一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を主相とし、Bサイトにドナーとして機能する元素を含み、AサイトおよびBサイトのいずれも希土類元素を含み、前記Aサイトに固溶される希土類元素の固溶量(Aサイト固溶量)と前記Bサイトに固溶される希土類元素の固溶量(Bサイト固溶量)との比は、0.75≦(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)≦1.25を満たし、Bサイトにおいて、ドナーとして機能する元素が、Bサイトの主成分元素を100atm%とした場合に、0.05atm%以上0.3atm%以下置換固溶しており、前記ペロブスカイト構造は、BaTiO
3
、CaZrO
3
、CaTiO
3
、SrTiO
3
、又はBa
1-x-y
Ca
x
Sr
y
Ti
1-z
Zr
z
O
3
(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)のうちのいずれか1つであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高信頼性を実現することができる積層セラミックコンデンサおよびセラミック原料粉末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図である。
【
図2】積層セラミックコンデンサの製造方法のフローを例示する図である。
【
図3】実施例および比較例の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0011】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の部分断面斜視図である。
図1で例示するように、積層セラミックコンデンサ100は、略直方体形状を有する積層チップ10と、積層チップ10のいずれかの対向する2端面に設けられた外部電極20a,20bとを備える。なお、積層チップ10の当該2端面以外の4面のうち、積層方向の上面および下面以外の2面を側面と称する。外部電極20a,20bは、積層チップ10の積層方向の上面、下面および2側面に延在している。ただし、外部電極20a,20bは、互いに離間している。
【0012】
積層チップ10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層11と、卑金属材料を含む内部電極層12とが、交互に積層された積層体の構成を有する。各内部電極層12の端縁は、積層チップ10の外部電極20aが設けられた端面と、外部電極20bが設けられた端面とに、交互に露出している。それにより、各内部電極層12は、外部電極20aと外部電極20bとに、交互に導通している。その結果、積層セラミックコンデンサ100は、複数の誘電体層11が内部電極層12を介して積層された構成を有する。また、誘電体層11と内部電極層12との積層体において、積層方向の最外層には内部電極層12が配置され、当該積層体の上面および下面は、カバー層13によって覆われている。カバー層13は、セラミック材料を主成分とする。例えば、カバー層13の材料は、誘電体層11とセラミック材料の主成分が同じである。
【0013】
積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ0.2mm、幅0.125mm、高さ0.125mmであり、または長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.2mm、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmであり、または長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mmであり、または長さ4.5mm、幅3.2mm、高さ2.5mmであるが、これらのサイズに限定されるものではない。
【0014】
内部電極層12は、Ni(ニッケル),Cu(銅),Sn(スズ)等の卑金属を主成分とする。内部電極層12として、Pt(白金),Pd(パラジウム),Ag(銀),Au(金)などの貴金属やこれらを含む合金を用いてもよい。
【0015】
誘電体層11は、例えば、一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を主相とするセラミック材料を主成分とする。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。例えば、当該セラミック材料として、BaTiO3(チタン酸バリウム)、CaZrO3(ジルコン酸カルシウム)、CaTiO3(チタン酸カルシウム)、SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)、ペロブスカイト構造を形成するBa1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)等を用いることができる。
【0016】
積層セラミックコンデンサ100を小型大容量化するためには、誘電体層11を薄膜化することが望まれる。しかしながら、誘電体層11を薄膜化しようとすると、絶縁破壊等に起因して寿命特性が劣化し、信頼性が低下するおそれがある。
【0017】
ここで、信頼性低下について説明する。誘電体層11は、例えば、一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を主相とするセラミック原料粉末を用いたセラミック材料を主成分とするため、焼成の際に還元雰囲気にさらされることにより、ABO3に酸素欠陥が生じる。積層セラミックコンデンサ100の使用時には誘電体層11に電圧が繰り返し印加されることになる。この際に酸素欠陥が移動することによって、障壁が破壊される。すなわち、ペロブスカイト構造中の酸素欠陥が、誘電体層11の信頼性低下の要因となっている。
【0018】
そこで、本実施形態においては、ドナーとして機能する元素がペロブスカイト構造のBサイトに含まれている(置換固溶している)。例えば、ドナーとして機能する元素として、Mo(モリブデン)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、W(タングステン)などが挙げられる。ドナーとして機能する元素がBサイトに置換固溶することによって、ペロブスカイト構造中の酸素欠陥が抑制される。それにより、誘電体層11が長寿命化し、信頼性を向上させることができる。
【0019】
Bサイトにおいて、ドナーとして機能する元素が少なすぎると、十分に酸素欠陥を抑制できないおそれがある。そこで、Bサイトにおいて、ドナーとして機能する元素の置換固溶量に下限を設けることが好ましい。例えば、Bサイトにおいて、ドナーとして機能する元素が、Bサイトの主成分元素を100atm%とした場合に、0.05atm%以上置換固溶していることが好ましく、0.1atm%以上置換固溶していることがより好ましい。
【0020】
一方、Bサイトにおいて、ドナーとして機能する元素が多すぎると、絶縁性が低下するといった不具合が生じるおそれがある。そこで、Bサイトにおいて、ドナーとして機能する元素の置換固溶量に上限を設けることが好ましい。例えば、Bサイトにおいて、ドナーとして機能する元素が0.3atm%以下置換固溶していることが好ましく、0.25atm%以下置換固溶していることがより好ましい。
【0021】
次に、還元雰囲気でペロブスカイト構造を主相とするセラミック原料粉末を用いたセラミック材料を主成分とする誘電体層11を焼成した後に、再酸化することで、酸素欠陥をさらに抑制することができる。再酸化の際にAサイトおよびBサイトの両方に希土類元素が含まれていると(置換固溶していると)、焼成後の酸素欠陥量が抑制される。それにより、絶縁(IR:Insulation Resistance)特性を維持したまま長寿命特性を実現することができる。その結果、高い信頼性を実現することができる。そこで、本実施形態においては、AサイトおよびBサイトの両方に、希土類元素が置換固溶している。
【0022】
希土類元素のAサイトへの置換固溶量(Aサイト固溶量)が、希土類元素のBサイトへの置換固溶量(Bサイト固溶量)に対して多すぎると、ペロブスカイトへのドナー添加過剰の状態となるおそれがある。この場合、絶縁特性が劣化するおそれがある。一方、Bサイト固溶量がAサイト固溶量に対して多すぎると、ペロブスカイトへのアクセプタ添加過剰の状態となるおそれがある。この場合、酸素欠陥量が増大して寿命特性が劣化するおそれがある。そこで、Aサイト固溶量とBサイト固溶量との比を1の近傍とすることにより、焼成後の酸素欠陥量が抑制され、絶縁特性と寿命特性とのバランスに優れた高信頼性が得られるようになる。具体的には、0.75≦(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)≦1.25とする。なお、ドナー添加過剰の状態をより抑制する観点から、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)≦1.20であることが好ましく、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)≦1.10であることがより好ましく、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)≦1.05であることがさらに好ましい。アクセプタ添加過剰の状態をより抑制する観点から、0.90≦(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)であることが好ましく、0.95≦(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)であることがより好ましい。
【0023】
なお、AサイトおよびBサイトにおいて、希土類元素が少なすぎると、焼成後の酸素欠陥量を十分に抑制することができないおそれがある。そこで、AサイトおよびBサイトにおいて、希土類元素の置換固溶量の合計に下限を設けることが好ましい。例えば、AサイトおよびBサイトにおいて、希土類元素の置換固溶量の合計が0.2atm%以上であることが好ましく、0.3atm%以上であることがより好ましい。ここでのatm%は、セラミック原料粉末のABO3のBサイト元素を100atm%とした場合の濃度のことを意味する。
【0024】
一方、AサイトおよびBサイトにおいて、希土類元素が多すぎると、結晶粒子の正方晶性が低下し、誘電率が低下するといった不具合が生じるおそれがある。そこで、AサイトおよびBサイトにおいて、希土類元素の置換固溶量の合計に上限を設けることが好ましい。例えば、AサイトおよびBサイトにおいて、希土類元素の置換固溶量の合計が1.0atm%以下であることが好ましく、0.9atm%以下であることがより好ましい。
【0025】
希土類元素として、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)、Nd(ネオジム)、Pm(プロメチウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユウロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホロミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)などを用いることができる。なお、Aサイトのイオン半径とBサイトのイオン半径とは異なっている。AサイトおよびBサイトにバランス良く希土類元素を置換固溶するためには、希土類元素のイオン半径がAサイトのイオン半径とBサイトのイオン半径との間であることが好ましい。例えば、表1からすれば、ペロブスカイトとしてBaTiO
3を用いる場合には、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Er、Tm、Ybなどを置換固溶させることが好ましい。なお、表1の出典は、「R.D.Shannon,Acta Crystallogr.,A32,751(1976)」である。
【表1】
【0026】
なお、イオン半径が比較的大きいLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gdなどは、Aサイトに置換固溶される傾向にある。一方、イオン半径が比較的小さいEr、Tm、Ybなどは、Bサイトに置換固溶される傾向にある。そこで、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gdなどを置換固溶させる場合には、Er、Tm、Ybなども併せて置換固溶させることが好ましい。
【0027】
また、Bサイトにドナーとして機能する元素が置換固溶し、AサイトおよびBサイトの両方に希土類元素が置換固溶した状態のペロブスカイト(AmBO3)において、「m」の値が小さすぎると、絶縁性が低下するといった不具合が生じる。そこで、「m」の値に下限を設けることが好ましい。具体的には、m≧1.002であることが好ましい。一方「m」の値が大きすぎると、焼結性が悪化するといった不具合が生じる。そこで、「m」の値に上限を設けることが好ましい。具体的には、m≦1.010であることが好ましい。
【0028】
また、誘電体層11における主成分セラミックの平均結晶粒径は、80nm~300nmであることが好ましく、80nm~200nmであることがより好ましい。主成分セラミックの平均結晶粒径が小さいと誘電率が低くなり、所望の静電容量が得られないおそれがあり、一方で、平均結晶粒径が大きいと、誘電体層11が1.0μm以下の厚みとなるような場合において、酸素欠陥の移動障壁として作用する粒界面積が減少することで、寿命特性が低下するおそれがあるためである。
【0029】
なお、誘電体層11を厚膜化することによっても、高信頼性を得ることができる。しかしながら、この場合、積層セラミックコンデンサ100が大型化してしまう。したがって、本実施形態は、小型の積層セラミックコンデンサ100に対して特に効果を発揮する。例えば、本実施形態は、誘電体層11の厚みが1.0μm以下の薄層の積層セラミックコンデンサにおいて特に効果的である。さらに、誘電体層11の厚さを0.4μm以下とすれば、より小型で高信頼性の積層セラミックコンデンサとすることができる。また、誘電体層11の厚さは、絶縁抵抗値を低下させないように0.2μm以上であることがより好ましい。
【0030】
続いて、積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。
図2は、積層セラミックコンデンサ100の製造方法のフローを例示する図である。
【0031】
(原料粉末作製工程)
まず、一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を主相とし、Bサイトにドナーとして機能する元素が置換固溶し、AサイトおよびBサイトの両方に希土類元素が置換固溶したセラミック原料粉末を用意する。当該セラミック原料粉末を用いたセラミック材料は、誘電体層11の主成分である。当該セラミック原料粉末の合成方法としては、従来種々の方法が知られており、例えば固相合成法、ゾル-ゲル合成法、水熱合成法等が知られている。なお、希土類元素のAサイトへの置換固溶量をAサイト固溶量とし、希土類元素のBサイトへの置換固溶量をBサイト固溶量とした場合に、0.75≦(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)≦1.25とする。一例として、固相合成法について説明する。まずTiO2粉末とBaCO3粉末を純水等の溶媒および分散剤などと混合してスラリーを作製する。次に酢酸に希土類を溶解した溶液を中和処理したものをこのスラリーに加えて混練・分散処理を行う。なおスラリーにはさらにモリブデン化合物の粉末を添加して当該モリブデンがイオン化もしくは錯体化した状態で混練・分散処理を行ってもよい。混練・分散はビーズミル等を用いて20時間~30時間行う。次いで、このスラリーを乾燥して生材を得る。この生材を800℃~1150℃で第1回目の仮焼をおこない、セラミック原料粉末を得る。
【0032】
得られたセラミック原料粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、Mg(マグネシウム),Mn(マンガン),V(バナジウム),Cr(クロム)の酸化物、並びに、Co(コバルト),Ni,Li(リチウム),B(ホウ素),Na(ナトリウム),K(カリウム)およびSi(シリコン)の酸化物もしくはガラスが挙げられる。
【0033】
例えば、セラミック原料粉末に添加化合物を含む化合物を混合して820~1150℃で第2回目の仮焼を行う。続いて、湿式混合し、乾燥および粉砕してセラミック材料を調製する。例えば、セラミック材料の平均粒子径は、誘電体層11の薄層化の観点から、好ましくは50~150nmである。例えば、上記のようにして得られたセラミック材料について、必要に応じて粉砕処理して粒径を調節し、あるいは分級処理と組み合わせることで粒径を整えてもよい。以上の工程により、誘電体層の主成分となるセラミック材料が得られる。
【0034】
(積層工程)
次に、得られたセラミック材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に例えば厚み3μm~10μmの帯状の誘電体グリーンシートを塗工して乾燥させる。
【0035】
次に、誘電体グリーンシートの表面に、有機バインダを含む内部電極形成用の金属導電ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等により印刷することで、極性の異なる一対の外部電極に交互に引き出される内部電極層パターンを配置する。金属導電ペーストには、共材としてセラミック粒子を添加する。セラミック粒子の主成分は、特に限定するものではないが、誘電体層11の主成分セラミックと同じであることが好ましい。例えば、平均粒子径が50nm以下のBaTiO3を均一に分散させてもよい。
【0036】
その後、内部電極層パターンが印刷された誘電体グリーンシートを所定の大きさに打ち抜いて、打ち抜かれた誘電体グリーンシートを、基材を剥離した状態で、内部電極層12と誘電体層11とが互い違いになるように、かつ内部電極層12が誘電体層11の長さ方向両端面に端縁が交互に露出して極性の異なる一対の外部電極20a,20bに交互に引き出されるように、所定層数(例えば100~500層)だけ積層する。積層した誘電体グリーンシートの上下に、カバー層13を形成するためのカバーシートを圧着させ、所定チップ寸法(例えば1.0mm×0.5mm)にカットする。
【0037】
得られたセラミック積層体をN2雰囲気中で脱バインダした後に、セラミック積層体の両端面から各側面にかけて、外部電極20a,20bの主成分金属を含む金属フィラー、共材、バインダ、溶剤などを含み、外部電極20a,20bの下地層となる金属ペーストを塗布し、乾燥させる。
【0038】
(焼成工程)
このようにして得られた成型体を、250~500℃のN2雰囲気中で脱バインダ処理した後に、酸素分圧10-5~10-8atmの還元雰囲気中で1100~1300℃で10分~2時間焼成することで、成型体中の粒子が焼結して粒成長する。このようにして、焼結体が得られる。
【0039】
(再酸化処理工程)
その後、N2ガス雰囲気中で600℃~1000℃で再酸化処理を行う。この工程により、酸素欠陥が抑制される。
【0040】
(外部電極形成工程)
その後、外部電極20a,20bの下地層上に、めっき処理により、Cu,Ni,Sn等の金属コーティングを行う。
【0041】
本実施形態に係る製造方法によれば、原料粉末作製工程で用いるセラミック原料粉末において、ドナーとして機能する元素がペロブスカイト構造のBサイトに置換固溶していることから、焼成工程においてペロブスカイト構造中の酸素欠陥が抑制される。それにより、誘電体層11が長寿命化し、信頼性を向上させることができる。また、AサイトおよびBサイトに希土類元素が置換固溶していることから、焼成後の酸素欠陥量が抑制される。それにより、絶縁特性を維持したまま長寿命特性を実現することができる。その結果、高い信頼性を実現することができる。また、0.75≦(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)≦1.25とすることで、焼成後の酸素欠陥量が抑制され、絶縁特性と寿命特性とのバランスに優れた高信頼性が得られるようになる。
【0042】
なお、ドナー添加過剰の状態をより抑制する観点から、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)≦1.20であることが好ましく、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)≦1.10であることがより好ましく、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)≦1.05であることがさらに好ましい。アクセプタ添加過剰の状態をより抑制する観点から、0.90≦(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)であることが好ましく、0.95≦(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)であることがより好ましい。
【0043】
Bサイトにおいて、ドナーとして機能する元素が少なすぎると、十分に酸素欠陥を抑制できないおそれがある。そこで、Bサイトにおいて、ドナーとして機能する元素の置換固溶量に下限を設けることが好ましい。例えば、Bサイトにおいて、ドナーとして機能する元素が、Bサイトの主成分元素を100atm%とした場合に、0.05atm%以上置換固溶していることが好ましく、0.1atm%以上置換固溶していることがより好ましい。
【0044】
一方、Bサイトにおいて、ドナーとして機能する元素が多すぎると、絶縁性の低下といった不具合が生じるおそれがある。そこで、Bサイトにおいて、ドナーとして機能する元素の置換固溶量に上限を設けることが好ましい。例えば、Bサイトにおいて、ドナーとして機能する元素が0.3atm%以下置換固溶していることが好ましく、0.25atm%以下置換固溶していることがより好ましい。
【0045】
なお、AサイトおよびBサイトにおいて、希土類元素が少なすぎると、焼成後の酸素欠陥量を十分に抑制することができないおそれがある。そこで、AサイトおよびBサイトにおいて、希土類元素の置換固溶量の合計に下限を設けることが好ましい。例えば、AサイトおよびBサイトにおいて、希土類元素の置換固溶量の合計が0.2atm%以上であることが好ましく、0.3atm%以上であることがより好ましい。ここでのatm%は、セラミック原料粉末のABO3のBサイト元素を100atm%とした場合の濃度を意味する。
【0046】
一方、AサイトおよびBサイトにおいて、希土類元素が多すぎると、結晶粒子の正方晶性が低下して、誘電率が低下するといった不具合が生じるおそれがある。そこで、AサイトおよびBサイトにおいて、希土類元素の置換固溶量の合計に上限を設けることが好ましい。例えば、AサイトおよびBサイトにおいて、希土類元素の置換固溶量の合計が1.0atm%以下であることが好ましく、0.9atm%以下であることがより好ましい。
【0047】
希土類元素として、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybなどを用いることができる。なお、Aサイトのイオン半径とBサイトのイオン半径とは異なっている。AサイトおよびBサイトにバランス良く希土類元素を置換固溶するためには、希土類元素のイオン半径がAサイトのイオン半径とBサイトのイオン半径との間であることが好ましい。例えば、表1からすれば、ペロブスカイトとしてBaTiO3を用いる場合には、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Er、Tm、Ybなどを置換固溶させることが好ましい。
【0048】
なお、イオン半径が比較的大きいLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gdなどは、Aサイトに置換固溶される傾向にある。一方、イオン半径が比較的小さいEr、Tm、Ybなどは、Bサイトに置換固溶される傾向にある。そこで、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gdなどを置換固溶させる場合には、Er、Tm、Ybなども併せて置換固溶させることが好ましい。
【0049】
また、Bサイトにドナーとして機能する元素が置換固溶し、AサイトおよびBサイトの両方に希土類元素が置換固溶した状態のペロブスカイト(AmBO3)において、「m」の値が小さすぎると、絶縁性が低下するといった不具合が生じる。そこで、「m」の値に下限を設けることが好ましい。具体的には、m≧1.002であることが好ましい。一方「m」の値が大きすぎると、焼結性が悪化するといった不具合が生じる。そこで、「m」の値に上限を設けることが好ましい。具体的には、m≦1.010であることが好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、実施形態に係る積層セラミックコンデンサを作製し、特性について調べた。
【0051】
まず、Bサイトにドナーとして機能する元素が置換固溶し、AサイトおよびBサイトの両方に希土類元素が置換固溶したBaTiO3のセラミック原料粉末を用意した。平均粒径は、150nmである。実施例1~11および比較例1~9のいずれにおいても、Bサイトに、Tiが100atm%とした場合に、Moを0.2atm%置換固溶させた。
【0052】
実施例1~2では、0.2atm%のHoを希土類元素として置換固溶させたセラミック原料粉末を用い、その後に0.8atm%相当のHoをHo2O3として添加した。実施例3~7では、0.5atm%のHoを希土類元素として置換固溶させたセラミック原料粉末を用い、その後に0.5atm%相当のHoをHo2O3として添加した。実施例8では、それぞれ0.25atm%のGdおよびYbを希土類元素として置換固溶させたセラミック原料粉末を用い、その後に0.25atm%相当のGdをGd2O3として添加し、0.25atm%相当のYbをYb2O3として添加した。実施例9~11では、1.0atm%のHoを希土類元素として置換固溶させたセラミック原料粉末を用いた。比較例1では、セラミック原料粉末に希土類元素を置換固溶させず、1.0atm%相当のHoをHo2O3として添加した。比較例2では、0.2atm%のHoを置換固溶させたセラミック原料粉末を用い、その後に0.8atm%相当のHoをHo2O3として添加した。比較例3~5では、0.5atm%のHoを置換固溶させたセラミック原料粉末を用い、その後に0.5atm%相当のHoをHo2O3として添加した。比較例6では、それぞれ0.2atm%および0.3atm%のGdおよびYbを希土類元素として置換固溶させたセラミック原料粉末を用い、その後に0.2atm%相当のGdをGd2O3として添加し、0.3atm%相当のYbをYb2O3として添加した。比較例7では、それぞれ0.3atm%および0.2atm%のGdおよびYbを希土類元素として置換固溶させたセラミック原料粉末を用い、その後に、0.3atm%相当のGdをGd2O3として添加し、0.2atm%相当のYbをYb2O3として添加した。比較例8~9では、1.0atm%のHoを希土類元素として置換固溶させたセラミック原料粉末を用いた。この段落でのatm%は、セラミック原料粉末のABO3のBサイトを100atm%とした場合の濃度を意味する。
【0053】
実施例1では、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が0.95であった。実施例2では、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が1.10であった。実施例3では、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が0.75であった。実施例4では、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が0.95であった。実施例5では、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が1.00であった。実施例6では、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が1.05であった。実施例7では、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が1.25であった。実施例8では、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が1.10であった。実施例9では、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が0.75であった。実施例10では、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が1.03であった。実施例11では、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が1.20であった。比較例2では、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が1.32であった。比較例3では、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が0.50であった。比較例4では、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が1.35であった。比較例5では、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が1.50であった。比較例6では、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が0.70であった。比較例7では、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が1.50であった。比較例8では、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が0.66であった。実施例9では、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が1.30であった。
【0054】
なお、置換固溶量については、セラミック原料粉末をArイオンにて半球状にエッチング加工した試料を,透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、エネルギー分散型蛍光X線分析法(EDS)にて測定した。(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)については、同加工した試料を高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡法(HADDF-STEM)で測定した。
【0055】
なお、実施例1~11および比較例1~9のいずれにおいても、BサイトにMoが置換固溶し、AサイトおよびBサイトの両方に希土類元素が置換固溶した状態のAmBO3において、「m」の値を1.002とした。
【0056】
セラミック原料粉末にMgOを添加剤として1.0mol%添加し、MnOおよびV2O5を添加剤としてそれぞれ0.05mol%ずつ添加し、SiO2およびBaCO3を焼結助剤としてそれぞれ1.0mol%ずつ添加した。なお、この場合の「mol%」は、セラミック原料粉末のABO3を100mol%とした場合の数値である。
【0057】
添加剤および焼結助剤を添加したセラミック原料粉末をボールミルで十分に湿式混合粉砕してセラミック材料を得た。セラミック材料に有機バインダおよび溶剤を加えてドクターブレード法にて誘電体グリーンシートを作製した。誘電体グリーンシートの塗工厚みを0.8μmとし、有機バインダとしてポリビニルブチラール(PVB)等を用い、溶剤としてエタノール、トルエン酸等を加えた。その他、可塑剤などを加えた。次に、内部電極層12の主成分金属(Ni)の粉末と、共材(チタン酸バリウム)と、バインダ(エチルセルロース)と、溶剤と、必要に応じてその他助剤とを含んでいる内部電極形成用導電ペーストを遊星ボールミルで作製した。
【0058】
誘電体シートに内部電極形成用導電ペーストをスクリーン印刷した。内部電極形成用導電ペーストを印刷したシートを250枚重ね、その上下にカバーシートをそれぞれ積層した。その後、熱圧着によりセラミック積層体を得て、所定の形状に切断した。得られたセラミック積層体をN2雰囲気中で脱バインダした後に、セラミック積層体の両端面から各側面にかけて、Niを主成分とする金属フィラー、共材、バインダ、溶剤などを含み、外部電極20a,20bの下地層となる金属ペーストを塗布し、乾燥させた。その後、還元雰囲気中で1100℃~1300℃で10分~2時間、金属ペーストをセラミック積層体と同時に焼成して焼結体を得た。
【0059】
得られた焼結体の形状寸法は、長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであった。焼結体をN2雰囲気下800℃の条件で再酸化処理を行った後、メッキ処理して外部電極20a,20bの下地層の表面にCuめっき層、Niめっき層およびSnめっき層を形成することで外部電極20a,20bを形成し、積層セラミックコンデンサ100を得た。
【0060】
(分析)
実施例1~11および比較例1~9について、それぞれ20個のサンプルを作製した。各サンプルについて寿命特性試験を行い、平均寿命を測定した。なお、寿命特性試験においては、125℃において、10Vの直流電圧印加にて実施し、電流計にて漏れ電流値を測定し、絶縁破壊に至った時間を寿命値とした。また、各サンプルについて絶縁抵抗試験を行い、平均絶縁抵抗を測定した。なお、絶縁抵抗試験においては、室温にて10Vの直流電圧印加にて実施し、60秒後の電流値から抵抗を測定した。
【0061】
平均寿命が100min以下となった場合には、寿命特性が不合格「×」と判定した。絶縁抵抗が10MΩ以下となった場合には、絶縁特性が不合格「×」と判定した。寿命特性および絶縁特性のいずれか一方が不合格と判定された場合に、信頼性が「不合格」と判定した。結果を
図3に示す。
【0062】
比較例1では、寿命特性も絶縁特性も不合格と判定された。これは、希土類元素を置換固溶させなかったセラミック原料粉末を用いたために十分に置換固溶させることができなかったからであると考えられる。比較例2,4,5,7,9では、寿命特性は合格と判定された一方で、絶縁特性は不合格と判定された。これは、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が1.25を上回ったからであると考えられる。比較例3,6,8では、絶縁特性は合格と判定された一方で、寿命特性は不合格と判定された。これは、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が0.75を下回ったからであると考えられる。
【0063】
これらに対して、実施例1~11のいずれにおいても、寿命特性および絶縁特性の両方が合格と判定された。これは、Bサイトにドナーとして機能する元素を置換固溶させ、AサイトおよびBサイトの両方において希土類元素を置換固溶させ、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が0.75以上1.25以下の範囲に入ったからであると考えられる。
【0064】
なお、実施例4,5では、実施例3と比較して絶縁抵抗および寿命特性がさらに良好となっている。これは、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が0.95以上となったからであると考えられる。実施例2では、実施例7と比較して絶縁抵抗および寿命特性が良好となっている。これは、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が1.10以下となったからであると考えられる。実施例5,6では、実施例2と比較して絶縁抵抗および寿命特性がさらに良好となっている。これは、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が1.05以下となったからであると考えられる。実施例10では、実施例9と比較して寿命特性がさらに良好となっている。これは、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が0.95以上となったからであると考えられる。また、実施例10では、実施例11と比較して寿命特性がさらに良好となっている。これは、(Aサイト固溶量/Bサイト固溶量)が1.05以下となったからであると考えられる。
【0065】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 積層チップ
11 誘電体層
12 内部電極層
13 カバー層
20a,20b 外部電極
100 積層セラミックコンデンサ