(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】ニトロフェニルボロン酸組成物によって安定化したナノ粒子
(51)【国際特許分類】
A61K 9/14 20060101AFI20240724BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20240724BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240724BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240724BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20240724BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20240724BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240724BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20240724BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K31/4745
A61K31/7105
A61K47/34
A61K47/62
A61K47/69
A61P35/00
A61K39/395
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019038673
(22)【出願日】2019-03-04
(62)【分割の表示】P 2017225589の分割
【原出願日】2013-03-01
【審査請求日】2019-04-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】598128421
【氏名又は名称】カリフォルニア インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス マーク イー.
(72)【発明者】
【氏名】ハン ハン
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】井上 千弥子
【審判官】岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-517393(JP,A)
【文献】特表2012-500208(JP,A)
【文献】国際公開第2012/158622(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/119255(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K31/00-31/80
A61K33/00-33/44
A61K47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAPlus・REGISTRY・MEDLINE・BIOSIS・EMBASE・WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)~(c)を構成成分として含むナノ粒子であって、
(a)疎水性ポリマーブロックを含むよう修飾されたムチン酸ポリマー(MAP)を含む修飾ミセル、
(b)下記構造
【化1】
を有し、前記ムチン酸ポリマーが結合体化したニトロフェニルボロン酸含有ポリマーであって、
ここで、sは20~300であり、
*は標的リガンドであり、
(c)化学的または生物学的活性を示す薬物であって、前記薬物は前記修飾ミセル内に含まれ
、
ここで、前記ニトロフェニルボロン酸含有ポリマーは、前記ナノ粒子が前記ニトロフェニルボロン酸含有ポリマーを前記ナノ粒子の外部環境に存在するよう構成されるようにボロン酸とMAPジオールとの間の可逆的共有結合によって前記ムチン酸ポリマーに結合される
前記ナノ粒子。
【請求項2】
前記
修飾されたムチン酸ポリマーが
、ペンタエリスリトール、エチレングリコールまたはグリセリン
のポリマー単位を
さらに含む、請求項
1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記
修飾されたムチン酸ポリマーがポリエステル、ポリエーテルまたは多糖類
の単位をさらに含む、請求項
1または2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記ポリエステルが少なくとも1つのヒドロキシル末端基で終結するポリカーボネート、ポリブチレートまたはポリエチレンテレフタレートである、請求項
3に記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記ポリエーテルがHO-(CH
2CH
2O)
p-H(p≧1)である、請求項
3に記載のナノ粒子。
【請求項6】
前記ポリエーテルがポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールである、請求項
5に記載のナノ粒子。
【請求項7】
前記多糖類がシクロデキストリン、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチンまたはβ-グリカンである、請求項
3に記載のナノ粒子。
【請求項8】
前記化学的または生物学的活性を示す薬物が治療剤である、請求項1~
7のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項9】
前記治療剤が化学療法剤である、請求項
8に記載のナノ粒子。
【請求項10】
前記治療剤が低分子化学療法剤またはポリヌクレオチドである、請求項
8に記載のナノ粒子。
【請求項11】
前記治療剤がカンプトテシン、エポチロンまたはタキサンである、請求項
8に記載のナノ粒子。
【請求項12】
前記治療剤がDNA、RNAまたは干渉RNAである、請求項
8に記載のナノ粒子。
【請求項13】
前記標的リガンドが、タンパク質、タンパク質断片、ペプチド、アプタマーまたは抗体である、請求項
1に記載のナノ粒子。
【請求項14】
前記標的リガンドが、抗体であり、前記ニトロフェニルボロン酸含有ポリマーの末端部分に結合体化される、請求項
1に記載のナノ粒子。
【請求項15】
前記標的リガンドが、トランスフェリンである、請求項
1に記載のナノ粒子。
【請求項16】
請求項1~
15のいずれか1項に記載のナノ粒子並びに好適な溶媒、キャリア、結合剤、賦形剤および/または希釈剤を含む、組成物。
【請求項17】
前記組成物が製薬組成物であり、好適な溶媒、キャリア、結合剤、賦形剤および/または希釈剤が製薬的に許容可能な溶媒、キャリア、結合剤、賦形剤および/または希釈剤である、請求項
16に記載の組成物。
【請求項18】
化学的または生物学的活性を示す薬物での治療を必要とする状態を有する被験体を治療する方法における使用のための請求項1~
15のいずれか1項に記載のナノ粒子または請求項
16に記載の組成物であって、前記方法は、前記ナノ粒子または前記組成物を前記被験体に投与することを含む、前記ナノ粒子または前記組成物。
【請求項19】
前記状態が疾患であり、前記化学的または生物学的活性を示す薬物が前記疾患の治療に有効なものである、請求項
18に記載のナノ粒子または組成物。
【請求項20】
前記状態が癌であり、前記化学的または生物学的活性を示す薬物が化学療法化合物である、請求項
18に記載のナノ粒子または組成物。
【請求項21】
前記化学療法化合物が、カンプトテシン、エポチロンまたはタキサンである、請求項
20に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府の権利)
本発明は、国立がん研究所に与えられた助成金CA 119347の下での政府の支持により行われた。政府は、本発明における一定の権利を有する。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、キャリアナノ粒子、特に、目的の化合物を送達するために好適なナノ粒子、並びに関連する組成物、方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
細胞、組織、器官および生物への目的の化合物の効果的な送達は、生体医学分野、画像化分野並びに種々の大きさおよび寸法の分子所定の標的への送達が所望される他の分野において、挑戦されている。
【0004】
病理検査、治療処置、又は生物学基礎研究のいずれかのために、代表的には目的の生物活性および/又は化学活性を伴う種々のクラスの生体材料並びに生物分子を送達するために、幾つかの方法が公知であり、使用されている。
【0005】
化学薬剤又は生物薬剤(例えば、薬物、生物製剤、治療薬剤又は画像化薬剤)として使用されるために好適な分子の数が増えるに従い、種々の複雑性、寸法および化学的性質の化合物と共に使用されるために好適な送達システムの開発は、特に困難であることが証明されている。
【0006】
ナノ粒子は、送達の種々の方法による薬剤の送達のためのキャリアとして有用な構造である。薬剤を梱包し、輸送し、そして特定の標的に送達するための、数々の異なる戦略を用いる、幾つかのナノ粒子送達システムが、存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中で、ナノ粒子並びに関連の組成物、方法およびシステムが提供され、これは、目的の化合物の有効且つ特異的な送達のための、多機能型ツールを提供する。詳細には、幾つかの実施形態において、本明細書中で記載されるナノ粒子は、種々の大きさ、寸法および所定の標的に対する化学的性質の、広範な分子の運搬および送達のための柔軟なシステムとして使用され得る。
【0008】
1つの局面に従い、ポリオール含有ポリマーおよびニトロフェニルボロン酸含有ポリマーを含むナノ粒子が、記載される。このナノ粒子において、ボロン酸含有ポリマーは、ポリオール含有ポリマーとカップリングし、そしてこのナノ粒子は、ボロン酸含有ポリマーがこのナノ粒子の外部環境に存在するように構成される。1つ以上の目的の化合物は、ポリオール含有ポリマーおよび/又はボロン酸含有ポリマーの一部として又はこれに結合して、ナノ粒子によって運ばれることができる。
【0009】
別の局面に従い、組成物が記載される。この組成物は、本明細書中で記載されるナノ粒子および好適なビヒクル並びに/又は賦形剤を含む。
【0010】
別の局面に従い、標的に化合物を送達する方法が、記載される。この方法は、標的を本明細書中で記載されるナノ粒子と接触させることを含み、ここで、この化合物は、本明細書中で記載されるナノ粒子のポリオール含有ポリマー又はボロン酸含有ポリマーの中に含まれる。
【0011】
別の局面に従い、標的に化合物を送達するシステムが、記載される。このシステムは、可逆的共有結合を介して相互結合可能であり、化合物を含む本明細書中で記載されるナノ粒子中に集められる、少なくともポリオール含有ポリマーとボロン酸含有ポリマーとを含む。
【0012】
別の局面に従い、個体に化合物を投与する方法が、記載される。この方法は、有効量の本明細書中で記載されるナノ粒子をこの個体に投与することを含み、ここで、この化合物は、ポリオール含有ポリマーおよび/又はボロン酸含有ポリマーの中に含まれる。
【0013】
別の局面に従い、個体に化合物を投与するシステムが、記載される。このシステムは、可逆的共有結合を介して相互結合可能であり、本明細書中で記載される方法に従って個体に投与される化合物を結合した本明細書中で記載されるナノ粒子中に集められる、少なくともポリオール含有ポリマーとボロン酸含有ポリマーとを含む。
【0014】
別の局面に従い、ポリオール含有ポリマーおよびニトロフェニルボロン酸含有ポリマーを含むナノ粒子を調製する方法が、記載される。この方法は、ポリオール含有ポリマーとボロン酸含有ポリマーとのカップリングを可能にする時間および条件下で、ポリオール含有ポリマーをボロン酸含有ポリマーと接触させることを含む。
【0015】
別の局面に従い、幾つかのボロン酸含有ポリマーが記載され、これらは、本開示の以下の節において詳細に説明される。
【0016】
別の局面に従い、幾つかのポリオール含有ポリマーが記載され、これらは、本開示の以下の節において詳細に説明される。
【0017】
ニトロフェニルボロン酸基を有するポリマーに結合体化したポリオール含有ポリマーを有するナノ粒子が、本明細書中で記載され、これは、ナノ粒子のpKaを低下させて、その安定性を増大させる。
【0018】
本開示の別の局面は、標的にされたナノ粒子の記載を提供する。これは、幾つかの実施形態において、1つの単一標的リガンドのみを有し得る。これは、このナノ粒子の特定の標的、例えばこの粒子の標的リガンドについての結合パートナーを提示する細胞への、送達を促進することができる。この類の標的にされたナノ粒子は、複数の標的リガンドを有するナノ粒子を凌ぐ利点、例えば、より少ない表面リガンドを有することによって全体のサイズがより小さいことなどの利点を有し、並びに、アビディティベースの相互作用を介すると、親和性ベースの相互作用よりも、非特異的結合を媒介するリガンドが少ない。従って、治療薬剤を含有するか又は運搬するナノ粒子は、1つの標的リガンドのみを用いて、目的の配置(例えば、細胞又は組織)を首尾よく標的にすることができ、治療薬剤を、非常に高い標的リガンド対治療剤比で標的に送達することができる。記載のナノ粒子のこの局面は、このような治療剤を製造する効率を有意に高め、同時に、標的化を媒介する高価な抗体を多数使用する必要をも低下させる。
【0019】
本明細書中で記載されるナノ粒子および関連の組成物、方法およびシステムは、種々の大きさ、寸法および化学的性質の化合物を運搬するために好適な柔軟な分子構造として、幾つかの実施形態において使用され得る。
【0020】
本明細書中で記載されるナノ粒子および関連の組成物、方法およびシステムは、幾つかの実施形態において、分解、免疫系による認識、および血清タンパク質もしくは血球との結合による損失からの、運搬する化合物の保護を提供することができる送達システムとして使用され得る。
【0021】
本明細書中で記載されるナノ粒子および関連の組成物、方法およびシステムは、幾つかの実施形態において、立体安定性によって、並びに特定の標的、例えば組織、組織内の特定の細胞種、および特定の細胞種の中での特定の細胞間の配置にすら、化合物を送達する能力によって特徴づけられる、送達システムとして使用され得る。
【0022】
本明細書中で記載されるナノ粒子および関連の組成物、方法およびシステムは、幾つかの実施形態において、同じナノ粒子内での、複数の化合物の異なる速度および/又は時点での制御放出を含む、制御可能な様式での、運搬された化合物の放出のために、設計され得る。
【0023】
本明細書中で記載されるナノ粒子および関連の組成物、方法およびシステムは、幾つかの実施形態において、標的化の間に増大した特異性および/又は選択性をもって、並びに/又は当該分野の特定のシステムと比較して増大した化合物の標的による認識をもって、化合物を送達するために使用され得る。
【0024】
本明細書中で記載されるナノ粒子および関連の組成物、方法およびシステムは、幾つかの実施形態において、目的の化合物の制御された送達が望ましい用途(治療用途、診断用途および臨床用途などの医学的用途を含むが、これらに限らない)と組み合わせて使用され得る。さらなる用途は、生物学的分析、獣医学用途、および目的の化合物の動物以外の器官、特に植物器官への送達を含む。
【0025】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の詳細な説明および実施例において示される。他の特徴、目的および利点が、詳細な説明、実施例および図面から、並びに添付の請求の範囲から、明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本明細書に組み込まれ、且つその一部を構成する添付の図面は、本開示の1つ以上の実施形態を説明し、詳細な説明および実施例と共に、本開示の原則および実施を説明するために寄与する。
【
図1】ナノ粒子および化合物を含むボロン酸の非存在下での関連の形成のための関連方法の概略図を示す。パネルAは、本明細書中で記載される実施形態に従うポリオール含有ポリマー(MAP,4)および目的の化合物(核酸)の概略図を示す。パネルBは、パネルAにおいて示されるポリオールおよび化合物を含むポリマーの集合によって形成されるナノ粒子を示す。
【
図2】本開示の実施形態に従うナノ粒子および関連の製造方法の概略図を示す。パネルAは、本開示の実施形態に従うポリオール(MAP,4)含有ポリマーおよびボロン酸(BA-PEG,6)含有ポリマーを、目的の分子(核酸)と共に示す。パネルBは、パネルAにおいて示されるポリマーおよび化合物の集合によって形成されるBA-ペグ化安定化ナノ粒子を示す。
【
図3】本明細書中で記載される実施形態に従うポリオール含有ポリマーおよび目的の化合物を含む複合体の形成を示す。詳細には、
図3は、本開示の実施形態に従うプラスミドDNAを用いたMAPゲルシフトアッセイの結果を示す。DNAラダーは、レーン1にローディングされる。レーン2~8は、電荷比を漸増的に増加させたMAPと組み合わせたプラスミドDNAを示す。電荷比は、核酸の負電荷の量で除算したMAP上の正電荷の量として定義される。
【
図4】本明細書中で記載される実施形態に従うポリオール含有ポリマーおよび目的の化合物を含む複合体の形成を示す。詳細には、
図4は、本開示の実施形態に従うsiRNAを用いたMAPゲルシフトアッセイの結果を示す。DNAラダーは、レーン1にローディングされる。レーン2~8は、電荷比を漸増的に増加させたMAPと組み合わせたsiRNAを示す。
【
図5】本明細書中で記載される幾つかの実施形態に従うナノ粒子の特性を示す。詳細には、
図5は、本開示の実施形態に従う、粒子サイズ(動的光散乱(DLS)測定)対電荷比並びにゼータ電位(ナノ粒子の表面電荷に関する性質)対MAP-プラスミドナノ粒子についての電荷比のプロットを説明する図を示す。
【
図6】本明細書中で記載される幾つかの実施形態に従うナノ粒子の特性を示す。詳細には、
図6は、本開示の実施形態に従う、粒子サイズ(DLS)対電荷比並びにゼータ電位対BA-ペグ化MAP-プラスミドナノ粒子についての電荷比のプロットを説明する図を示す。
【
図7】本開示の実施形態に従う、BA-ペグ化MAP-プラスミドナノ粒子の塩安定性を示す。プロットA:5:1 BA-PEG+np+1X PBS 5分後;プロットB:5:1 BA-PEG+np,透析3X w/100kDa+1X PBS 5分後;プロットC:5:1事前ペグ化w/BA-PEG+1X PBS 5分後;プロットD:5:1事前ペグ化w/BA-PEG,透析3X w/100kDa+PBS 5分後。
【
図8】本明細書中で記載される実施形態に従うナノ粒子を用いたインビトロでのヒト細胞への薬剤の送達を示す。詳細には、
図8は、本開示の実施形態に従う、HeLa細胞内へのMAP/pGL3トランスフェクションについての、pGL3から発現されたルシフェラーゼタンパク質の量の測定値である相対的光ユニット(RLU)対電荷比のプロットを、説明する図を示す。
【
図9】本明細書中で記載される実施形態に従うナノ粒子を用いた、標的への薬剤の送達を示す。詳細には、
図9は、本開示の実施形態に従う、MAP/pGL3トランスフェクション後の、細胞生存対電荷比のプロットを、説明する図を示す。生存データは、
図8に示される実験のためのものである。
【
図10】本明細書中で記載される実施形態に従うナノ粒子を用いた、標的への複数の化合物の送達を示す。詳細には、
図10は、本明細書中で記載される実施形態に従う、5+/-の電荷比におけるHeLa細胞内へのpGL3およびsiGL3を含有するMAP粒子の同時トランスフェクションについての、相対的光ユニット(RLU)対粒子種のプロットを、説明する図を示す。siCONの語は、対照配列を有するsiRNAを示す。
【
図11】本明細書中で記載される実施形態に従うナノ粒子を用いた、標的への化合物の送達を示す。詳細には、
図11は、本明細書中で記載される実施形態に従う、5+/-の電荷比におけるHeLa-Luc細胞内へのMAP/siGL3の送達についての、相対的光ユニット(RLU)対siGL3濃度のプロットを、説明する図を示す。
【
図12】本開示の幾つかの実施形態に従う標的リガンドを提示するボロン酸含有ポリマーの合成の概略図を示す。詳細には、
図12は、本開示の実施形態に従うボロン酸-ペグジスルフィド-トランスフェリンの合成のための模式図を示す。
【
図13】本明細書中で記載される幾つかの実施形態に従うナノ粒子の合成の概略図を示す。詳細には、
図13は、本開示の実施形態に従う、水中でのカンポテシン(Campothecin)ムチン酸ポリマー(CPT-ムチン酸ポリマー)を用いるナノ粒子の形成のための模式図を示す。
【
図14】本開示の実施形態に従って調製された、水中で結合体化されたCPT-ムチン酸ポリマーから形成されたナノ粒子の粒子サイズおよびゼータ電位をまとめた表を示す。
【
図15】本明細書中で記載される幾つかの実施形態に従うナノ粒子の合成の概略図を示す。詳細には、
図15は、本開示の実施形態に従う、水中でのCPT-ムチン酸ポリマーおよびボロン酸-ジスルフィド-PEG
5000を用いるボロン酸-ペグ化ナノ粒子の形成を示す。
【
図16】ペグなし、ニトロペグ-PEGおよび0.25mol%ハーセプチン-PEG-ニトロPBAによって安定化されたMAP-4/siRNAの塩安定性を示す。電荷比3(+/-)において調製され、得られた溶液が1x PBSにおけるものであるように、10x PBSを5分の時点で添加した。
【
図17】AおよびBは、(A)BT-474においてHerceptin(登録商標)-PEG-ニトロPBA対ナノ粒子の増大した比における標的化MAP-CPTナノ粒子の、中型MAP-CPTナノ粒子又は標的化MAP-CPTナノ粒子の、細胞内取り込みを示す。(B)BT-474細胞株(塗りつぶしバー)およびMCF-7細胞株(白いバー)における遊離のHerceptin(登録商標)(10mg/ml)を含有又は非含有の、中型MAP-CPTナノ粒子又は標的化MAP-CPTナノ粒子の、細胞内取り込みを示す。
【
図18】AおよびBは、10mg CPT/kg注射でのBALB/cマウスにおける、短型、中型および長型MAP-CPTナノ粒子および標的化MAP-CPTナノ粒子の血漿薬物動態学を示す。10mg/kgでCD2F1マウス内に注射された遊離のCPTを、比較として示す。(A)時間の関数としてのポリマー結合CPTの血漿濃度。(B)時間の関数としての非結合体化CPTの血漿濃度。
【
図19A】処置の4時間後および24時間後の、MAP-CPT(5mg CPT/kg)および標的化MAP-CPT(5mg CPT/kg,29mg Herceptin(登録商標)/kg)ナノ粒子の生体分布を示す。腫瘍、心臓、肝臓、脾臓、腎臓又は肺の1グラムあたりの全CPTの注射した用量(ID)百分率。
【
図19B】処置の4時間後および24時間後の、MAP-CPT(5mg CPT/kg)および標的化MAP-CPT(5mg CPT/kg,29mg Herceptin(登録商標)/kg)ナノ粒子の生体分布を示す。腫瘍、心臓、肝臓、脾臓、腎臓および肺における、各器官において結合体化されていない全CPT百分率。
【
図19C】処置の4時間後および24時間後の、MAP-CPT(5mg CPT/kg)および標的化MAP-CPT(5mg CPT/kg,29mg Herceptin(登録商標)/kg)ナノ粒子の生体分布を示す。血漿中のCPTの全濃度。
【
図19D】処置の4時間後および24時間後の、MAP-CPT(5mg CPT/kg)および標的化MAP-CPT(5mg CPT/kg,29mg Herceptin(登録商標)/kg)ナノ粒子の生体分布を示す。血漿中で結合体化されていない全CPTの百分率。
【
図20】(A)4時間でのMAP-CPT(5mg CPT/kg)(B)24時間でのMAP-CPT(5mg CPT/kg)(C)4時間での標的化MAP-CPT(5mg CPT/kg,29mg Herceptin(登録商標)/kg)(D)24時間での標的化MAP-CPT(5mg CPT/kg,29mg Herceptin(登録商標)/kg)によって処理されたNCrヌードマウスから採取したBT-474腫瘍切片の共焦点免疫蛍光顕微鏡写真を図示する。左パネルは発光440nm(CPT,ピンク)、中央左パネルは発光519nm(MAP,緑)、中央右パネルは発光647nm(Herceptin(登録商標),青)、右パネルは画像のオーバーレイ。
【
図21】BT-474異種移植片腫瘍を有するNCrヌードマウスにおける抗腫瘍効力を示す。時間の関数としての平均腫瘍体積、2週間に1度受けたハーセプチンの投薬を含む群、全ての他の群は3週間に1度投薬を受けた。
【
図22】(A)5.9mg Herceptin(登録商標)/kgおよび(B)標的化MAP-CPTナノ粒子(5.9mg Herceptin(登録商標)/kgおよび1mg CPT/kg)によって処置したNCrヌードマウスについての、抗腫瘍効力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ナノ粒子に含まれる化合物を送達するための、ナノ粒子、並びに関連して使用され得る組成物、方法およびシステム、記載のナノ粒子を製造する方法、記載のナノ粒子を用いる処置方法、並びに記載のナノ粒子を集めるためのキットが、本明細書中で提供される。
【0028】
用語「ナノ粒子」は、本明細書中で使用される場合、ナノスケールの寸法の複合構造物を示す。詳細には、ナノ粒子は、代表的には、約1~約1000nmの範囲のサイズの粒子であり、通常は球形であるが、ナノ粒子組成物によって異なる形態学が可能である。ナノ粒子の外部環境に接触するナノ粒子の部分は、一般に、ナノ粒子の表面と定義される。本明中で記載されるナノ粒子において、サイズの制限は、2次元で限定され、したがって、本明細書中で記載されるナノ粒子は、約1~約1000nmの径を有する複合構造物を含み、ここで、この特定の径は、ナノ粒子組成物および実験設計に従うナノ粒子の用途に依存する。例えば、幾つかの治療用途に使用されるナノ粒子は、代表的に、約200nm以下のサイズを有し、そして詳細には、癌処置に関連する送達のために使用されるものは、代表的に、約1~約100nmの径を有する。用語「標的化ナノ粒子」は、標的薬剤又は標的リガンドに結合体化されたナノ粒子をいう。
【0029】
ナノ粒子のさらなる望ましい特性、例えば表面電荷および立体安定化は、目的の特定の用途の観点で変動してもよい。癌処置などの臨床用途において望ましい場合がある特性の例の幾つかは、科学文献において記載されている。さらなる特性は、本開示を読むことにより、当業者によって理解される。ナノ粒子の寸法および特性は、当該分野で公知の技術によって検出され得る。粒子の寸法を検出する技術の例としては、動的光拡散(DLS)並びに透過電子顕微鏡検査(TEM)および原子力顕微鏡検査(AFM)などの種々の顕微鏡検査が挙げられるが、これらに限定されない。粒子形態を検出するための技術の例としては、TEMおよびAFMが挙げられるが、これらに限定されない。表面電荷を検出するための技術の例としては、ゼータ電位ゼータ電位法が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる技術は、1H、11B、13C並びに19F NMR、UV/可視光および赤外線/ラマン顕微鏡検査並びに蛍光顕微鏡検査(ナノ粒子が蛍光標識と組み合わせて使用される場合)並びに当業者によって理解されるさらなる技術によって含められる他の化学特性を検出するために好適である。
【0030】
本明細書中で記載されるナノ粒子および関連の組成物、方法およびシステムは、目的の化合物および詳細には薬剤を、所定の標的に対し送達するために使用され得る。
【0031】
用語「送達する」および「送達」は、本明細書中で記載される場合、化合物の空間的配置に影響を及ぼす、詳細にはこのような配置を制御する活性を示す。従って、本開示の意味における化合物の送達は、特定の時間、特定の一連の条件下で、化合物の位置決めおよび動きに影響を及ぼし、その結果、これらの条件下でのこの化合物の位置決めおよび動きが、さもなければこの化合物が有する位置決めおよび動きに対し変えられる能力を示す。
【0032】
詳細には、参照エンドポイントに関して、化合物の送達は、化合物の位置決めおよび動きを制御することにより、この化合物が最終的に選択された参照エンドポイントに配置される能力を、示す。インビトロシステムにおいて、化合物の送達は、通常、この化合物の化学的および/又は生物学的検出可能特性および活性の対応する改変を伴う。インビトロシステムにおいて、化合物の送達はまた、代表的に、この化合物の薬物動態学の改変を伴い、薬力学の改変を伴う場合もある。
【0033】
化合物の薬物動態学は、この化合物の吸収、分布、代謝およびシステムからの代表的には個体の身体によってもたらされる排出を、示す。詳細には、用語「吸収」は、物質が身体に入る過程を示し、用語「分布」は、身体の体液および組織を通した物質の分散又は播種を示し、用語「代謝」は、親化合物から娘代謝物への不可逆的変換を示し、並びに用語「排出」は、身体からの物質の排除を示す。この化合物が処方物中である場合、薬物動態学は、この処方物からのこの化合物の遊離をも含み、これは、この化合物、代表的には薬物の、この処方物からの放出の過程を示す。用語「薬力学」は、身体上又は微生物上又は身体内又は体上の寄生生物における化合物の物理学的効果、薬物作用のメカニズムおよび薬物濃度と効果との間の関係性を示す。当業者は、目的の化合物および詳細には目的の薬剤、例えば薬物の、薬物動態学および薬力学的特徴並びに特性に好適である技術および手順を同定することができる。
【0034】
用語「薬剤」は、本明細書中で使用される場合、標的に関連する化学的又は生物学的活性を示すことが可能な化合物を示す。用語「化学活性」は、本明細書中で使用される場合、化学反応を行う分子の能力を示す。用語「生物学活性」は、本明細書中で使用される場合、生物に影響を及ぼす分子の能力を示す。薬剤の化学活性の例は、共有結合の形成又は静電相互作用を含む。薬剤の生物学的活性の例は、内因性分子の産生および分泌、内因性分子又は外因性分子の吸収および代謝、並びに目的の遺伝子の転写および翻訳を含む遺伝子発現の活性化又は不活化を含む。
【0035】
用語「標的」は、本明細書中で使用される場合、単細胞生物又は多細胞生物又はそれらの任意の部分を含み、並びにインビトロ又はインビボの生物学的システム又はその任意の部分を含む、目的の生物学的システムを含む。
【0036】
本明細書中で記載されるナノ粒子、ポリオール含有ポリマーに結合したボロン酸含有ポリマーは、ナノ粒子の環境的外部に提示されるようにナノ粒子において配置される。
【0037】
用語「ポリマー」は、本明細書中で使用される場合、代表的には共有化学結合によって結合した反復する構造単位から構成される大型分子を示す。好適なポリマーは、直鎖および/又は分枝鎖状であってもよく、且つホモポリマーの形態をとっても、又はコポリマーの形態をとってもよい。コポリマーが使用される場合、このコポリマーは、ランダムコポリマーであっても、分枝鎖状コポリマーであってもよい。ポリマーの例は、水分散性ポリマー、および詳細には、水溶性ポリマーを含む。例えば、好適なポリマーとしては、多糖類、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。治療的および/又は製薬的使用並びに用途のために、このポリマーは、低毒性プロフィール、詳細には、低い毒性又は細胞毒性を有さなければならない。好適なポリマーとしては、約500,000以下の分子量を有するポリマーが挙げられる。詳細には、好適なポリマーは、約100,000以下の分子量を有し得る。
【0038】
用語「ポリオール含有ポリマー」又は「ポリオールポリマー」は、本明細書中で使用される場合、多数のヒドロキシル官能基を提示するポリマーを示す。詳細には、本明細書中で記載されるナノ粒子を形成するために好適なポリオール含有ポリマーは、ボロン酸含有ポリマーの少なくとも1つのボロン酸とカップリング相互作用のために、ヒドロキシル官能基の少なくとも一部を提示するポリマーを含む。
【0039】
用語「提示する」は、化合物又は官能基に対して本明細書中で使用される場合、結合した化合物又は官能基の化学反応性を維持するために行われる結合を示す。従って、表面上に提示される官能基は、適切な条件下で、官能基を化学的に特徴づける1つ以上の化学反応を行うことができる。
【0040】
ポリマーを形成する構造単位は、ポリオールモノマー、例えばペンタエリスリトール、エチレングリコールおよびグリセリンを含む。ポリオールを含むポリマーの例は、ポリエステル、ポリエーテルおよび多糖類を含む。好適なポリエステルの例としては、ジオール、および詳細には、p≧1を有する一般式HO-(CH2CH2O)p-Hのジオール、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールが挙げられるが、これらに限定されない。好適な多糖類の例としては、シクロデキストリン、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチンおよびβ-グルカンが挙げられ、これらに限定されない。好適なポリエステルの例としては、ポリカーボネート、ポリブチレートおよびポリエチレンテレフタレート、ヒドロキシル末端基で終結する全てが挙げられるが、これらに限定されない。ポリオール含有ポリマーの例は、約500,000以下の分子量、詳細には約300~約100,000の分子量のポリマーを含む。
【0041】
幾つかのポリオール含有ポリマーは、市販されており、および/又は当業者によって同定され得る技術および手順を用いて産生され得る。ポリオールポリマーの例の合成のための手順の例は、科学文献において以前に記載されており、他は実施例1~4において説明される。ポリオール含有ポリマーを製造するためのさらなる手順は、本開示を考慮し、当業者によって同定され得る。
【0042】
用語「ボロン酸含有ポリマー」又は「BAポリマー」は、本明細書中で使用される場合、ポリオール含有ポリマーのヒドロキシル基に結合するために提示された少なくとも1つのボロン酸基を含むポリマーを示す。詳細には、本明細書中で記載されるナノ粒子のボロン酸含有ポリマーとしては、炭素とボロンとの化学結合を含むアルキル又はアリール置換ボロン酸の少なくとも1つの構造単位を含むポリマーが挙げられる。好適なBAポリマーは、ボロン酸が末端構造単位又は任意の他の好適な部分に存在し、生じたポリマーに親水性の特性を与えるポリマーを含む。ポリオール含有ポリマーの例は、約40,000以下の分子量、詳細には約20,000~約10,000の分子量のポリマーを含む。
【0043】
幾つかのボロン酸含有ポリマーは、市販されており、および/又は当業者によって同定され得る技術および手順を用いて産生され得る。ポリオールポリマーの例の合成のための手順の例は、科学文献において以前に記載されており、他は実施例5~8において説明される。BAポリマーを製造するためのさらなる手順は、本開示を考慮し、当業者によって同定され得る。
【0044】
本明細書中で記載されるナノ粒子において、ポリオールポリマーは、BAポリマーとカップリングされる。用語「カップリングされた」又は「カップリング」は、2つの分子間の結合に関して本明細書中で使用される場合、可逆的共有結合を形成する相互作用を示す。詳細には、好適な培地の存在下で、BAポリマー上に提示されるボロン酸は、迅速かつ可逆的な対合の共有結合相互作用を介してポリオールのヒドロキシル基と相互作用し、好適な培地中でボロン酸エステルを形成する。好適な培地としては、水および幾つかの水溶液並びに当業者によって同定され得るさらなる有機培地が挙げられる。詳細には、水性培地中で接触した場合、BAポリマーおよびポリオールは反応し、水を副産物として生じる。このボロン酸ポリオール相互作用は、一般に、水溶液中がより好ましいが、有機培地中でも進行することが公知である。さらに、1,2ジオールおよび1,3ジオールによって形成された環状エステルは、一般に、その非環状エステル対応物よりもより安定性である。
【0045】
従って、本明細書中で記載されるナノ粒子において、少なくともボロン酸含有ポリマーのボロン酸は、ポリオール含有ポリマーのヒドロキシル基に、可逆的共有結合によって結合される。BAポリマーとポリオールポリマーとの間のボロン酸エステルは、例えば、ナノ粒子を構成するボロン酸およびポリオールの特定の化学的性質および特性に依存して、ボロン-11核磁気共鳴(11B NMR)、電位滴定、選択したUV/可視光および蛍光検出技術などの当業者によって同定される方法および美術によって、検出され得る。
【0046】
本明細書中で記載されるBAポリマーの本明細書中で記載されるポリオールポリマーとのカップリング相互作用から生じたナノ粒子は、粒子の表面上にBAポリマーを提示する。幾つかの実施形態において、ナノ粒子は、約1~約1000nmの径および球形の形態を有し得るが、粒子の寸法および形態は、ナノ粒子を形成するために用いられたBAポリマーおよびポリオールポリマーによって、並びに本開示に従ってナノ粒子において運ばれた化合物によって、主に決定される。
【0047】
幾つかの実施形態において、ナノ粒子によって運ばれる目的の化合物は、BAポリマーおよび/又はポリオールポリマーの一部を形成する。このような実施形態の例は、ポリマーの1つ以上の原子が特定の同位体、例えば詳細には、19Fおよび10Bによって置き換えられており、従って標的の画像化のためか、および/又は標的に放射線処置を提供するための薬剤として好適である、ナノ粒子によって提供される。
【0048】
幾つかの実施形態において、ナノ粒子に運ばれる目的の化合物は、ポリマー、代表的にはポリオールポリマーに、共有結合又は非共有結合を介して結合される。このような実施形態の例は、化合物ポリオールポリマーおよびBAポリマーのうち少なくとも1つにおける1つ以上の部分が1つ以上の目的に結合するナノ粒子によって、提供される。
【0049】
用語「結合する」「結合した」又は「結合」は。本明細書中で使用される場合、2つ以上の構成要素を互いに保つための、結合、連結、力又は結びつきによる、接続もしくは統合をいい、これは、直接的又は間接的な結合を含むので、例えば、第1化合物が第2化合物に直接的に結合する場合、並びに、1つ以上の中間体化合物、詳細には中間分子が、第1化合物と第2化合物との間に置かれる実施形態を含む。
【0050】
詳細には、幾つかの実施形態において、化合物は、ポリオールポリマー又はBAポリマーに、このポリマーの好適な部分へのこの化合物の共有結合を介して結合し得る。共有結合の例は、薬物カンプトテシンのムチン酸ポリマーへの結合が、生分解性エステル結合連結を介して行われる実施例19、並びに、トランスフェリンのBA-PEG5000への結合がトランスフェリンのペグ化を介して行われる実施例9において、説明される。
【0051】
幾つかの実施形態において、このポリマーは、目的の特定の化合物の結合を可能にするように、(例えば、目的の化合物上の対応する官能基に特異的に結合できる1つ以上の官能基の付加によって)設計され得るか、又は改変され得る。例えば、幾つかの実施形態において、ナノ粒子をBA-PEG-Xによってペグ化することが可能であり、ここで、Xは、チオールと特異的に反応するか又はアミンと非特異的に反応する、マレイミド基又はヨードアセチル基又は遊離の遊離基であってもよい。結合される化合物は、次いでチオール官能基を発現する改変の後に、マレイミド基又はヨードアセチル基と反応し得る。結合される化合物はまた、アルデヒド又はケトン基によって改変されてもよく、そしてこれらは、ポリオール上のジオールによる縮合反応を介して反応し得、アセタール又はケタールを生じ得る。
【0052】
幾つかの実施形態において、目的の化合物は、結合される化合物とポリマーの好適な部分との間の非共有結合、例えばイオン結合および分子間相互作用を介して、ポリオールポリマー又はBAポリマーに結合され得る。非共有結合の例は、実施例10において説明される。
【0053】
目的の化合物は、ナノ粒子の形成の前、形成の際、又は形成の後に、例えば、ポリマーの改変および/又は粒子混成物における任意の結合した化合物の改変を介して、ナノ粒子に結合され得る。ナノ粒子における化合物の結合を行う手順の例は、実施例の節において説明される。BAポリマー、ポリオールポリマー又は本明細書中で記載されるナノ粒子の他の構成要素(例えば、予め導入された目的の化合物)に化合物が結合するさらなる手順は、本開示を読むことにより、当業者によって同定され得る。
【0054】
幾つかの実施形態において、本明細書中で記載されるナノ粒子上に提示されたBAポリマーに結合した少なくとも1つの目的の化合物は、標的リガンドとして使用され得る薬剤である。詳細には、幾つかの実施形態において、このナノ粒子は、標的リガンドとして使用される1つ以上の薬剤とBAポリマー上で結合し、そして選択された標的に送達される1つ以上の薬剤とポリオールポリマーおよび/又はBAポリマー上で結合する。
【0055】
用語「標的リガンド」又は「標的薬剤」は、本開示において使用される場合、特定の標的に契合する目的のため、並びに詳細には、例えばナノ粒子の細胞レセプター結合を可能にすることによる特定の細胞認識の目的のために、ナノ粒子の表面上に提示され得る任意の分子を示す。好適なリガンドの例としては、ビタミン(例えば、葉酸)、タンパク質(例えば、トランスフェリンおよびモノクローナル抗体)、ペプチドおよび多糖類が挙げられるが、これらに限定されない。詳細には、標的リガンドは、特定の表面細胞レセプター、例えば抗VEGF、葉酸などの低分子、並びに他のタンパク質、例えばホロ-トランスフェリンなどに対する、抗体であってもよい。
【0056】
選択したリガンドは、当業者の理解するものであり、所望の送達の種類に依存して変動し得る。別の例として、このリガンドは、膜透過処理薬剤又は膜透過性薬剤、例えばHIV-1由来のTATタンパク質であってもよい。TATタンパク質は、ウイルス転写活性化であり、活発に細胞核内に入り込む。Torchilin,V.P.et al,PNAS.98,8786 8791,(2001)。BAポリマーに結合した好適な標的リガンドは、代表的に、その末端にボロン酸が結合したポリ(エチレンオキシド)などの柔軟なスペーサーを含む(実施例9を参照されたい)。
【0057】
幾つかの実施形態において、ポリオールポリマーおよび/又はBAポリマー(標的リガンドを含む)の少なくとも1つの化合物は、化学的又は生物学的活性、例えば治療活性が発揮される標的、例えば個体に送達される薬剤、詳細には薬物であってもよい。
【0058】
本明細書中で記載されるナノ粒子を形成するためのポリオールポリマーおよびBAポリマーの節は、目的の化合物および標的の観点で実施され得る。詳細には、本明細書中で記載されるナノ粒子を形成するために好適なポリオール含有ポリマーおよび好適なBAポリマーの節は、候補ポリオールポリマーおよびBAポリマーを提供し、本開示を考慮したカップリング相互作用を形成することができるポリオールポリマーおよびBAポリマーを選択することによって実施され得、ここで、選択されたBAポリマーおよびポリオールポリマーは、ポリオールポリマーおよび/又はBAポリマーに含まれるか又は結合する目的の化合物および標的リガンドの観点で、ポリオールポリマーがBAポリマーよりも親水性であるような化学的組成を有する。表面ナノ粒子上でのBAポリマーおよびナノ粒子に対し外部の環境における関連の提示の検出は、実施例12に説明されるように、ナノ粒子の表面の改変を実施し得るゼータ電位の検出によって実施され得る。(
図6を参照されたい。)粒子の表面電荷および塩溶液中での粒子の安定性を検出するためのさらなる手順としては、実施例12において例示されたもの(詳細には
図7を参照されたい)などの粒子サイズの電荷の検出、並びに、当業者によって同定され得るさらなる手順が挙げられる。
【0059】
幾つかの実施形態において、ポリオール含有ポリマーは、以下の構造単位の少なくとも1つ以上を含み:
【0060】
【0061】
【化2】
ここで、
R
1およびR
2は、約10kDa以下の分子量を有する任意の炭素ベースの基又は有機基から独立して選択され;
Xは、-H、-F、-C、-N又は-Oの1つ以上を含む脂肪族基から選択され;且つ
Yは、-OHであるか、又はヒドロキシル(-OH)基を有する有機部分(-CH
2OH、-CH
2CH
2OH、-CF
2OH、-CF
2CF
2OHおよびC(R
1G
1)(RG
2)(R
1G
3)OHが挙げられるがこれらに限定されず、ここでR
1G
1、R
1G
2およびR
1G
3は、独立して有機ベースの官能基である)から独立して選択され、
且つ
Bは、第1のA部分のR
1およびR
2の1つを第2のA部分のR
1およびR
2の1つに連結する有機部分である。
【0062】
用語「部分」は、本明細書中で使用される場合、より大きな分子又は分子種の部分を構成する一連の原子を示す。詳細には、部分は、反復するポリマー構造単位の構成成分をいう。例示的な部分としては、酸又は塩基の種、糖、炭水化物、アルキル基、アリール基およびポリマー構造単位を形成するために有用な任意の他の分子構成成分が挙げられる。
【0063】
用語「有機部分」は、本明細書中で使用される場合、炭素原子を含む部分を示す。詳細には、有機部分としては、天然および合成の化合物、並びにヘテロ原子を含む化合物が挙げられる。例示的な天然有機部分としては、殆どの糖、幾つかのアルカロイドおよびテルペノイド、炭水化物、脂質および脂肪酸、核酸、タンパク質、ペプチドおよびアミノ酸、ビタミン並びに脂肪および油が挙げられるが、これらに限定されない。合成有機基は、他の化合物との反応によって調製される化合物をいう。
【0064】
幾つかの実施形態において、1つ以上の目的の化合物は、(A)、(B)又は(A)および(B)に結合され得る。
【0065】
幾つかの実施形態において、R1およびR2は、独立して以下の式を有し:
【0066】
【化3】
式中、
dは、0~100であり;
eは、0~100であり;
fは、0~100であり;
Zは、1つの有機部分を別の有機部分、詳細には、本明細書中で規定される部分A又は部分Bに連結する共有結合であり、そして
Z
1は、-NH
2、-OH、-SHおよび-COOHから独立して選択される。
【0067】
幾つかの実施形態において、Zは、-NH-、-C(=O)NH-、-NH-C(=O)、-SS-、-C(=O)O-、-NH(=NH2
+)-又は-O-C(=O)-から独立して選択される。
【0068】
ポリオール含有ポリマーの構造単位Aが式(IV)を有する幾つかの実施形態において、Xは、CvH2v+1であってもよく、ここで、v=0~5であり、且つYは、-OHである。
【0069】
幾つかの実施形態において、R1および/又はR2は、式(V)を有し、ここで、Zは、-NH(=NH2
+)-であり、且つ/又はZ1は、NH2である。
【0070】
幾つかの実施形態において、本明細書中記載される粒子のポリオール含有ポリマー(A)は、以下の式:
【0071】
【化4】
から独立して選択され、
式中、
スペーサーは、任意の有機部分(詳細には、必要に応じてヘテロ原子、例えば硫黄、窒素、酸素又はフッ素を含むアルキル基、フェニル基又はアルコキシ基が挙げられ得る)から独立して選択され、
アミノ酸は、遊離のアミン基および遊離のカルボン酸基を有する任意の有機基から選択され;
nは、1~20であり;且つ
Z
1は、-NH
2、-OH、-SHおよび-COOHから独立して選択される。
【0072】
幾つかの実施形態において、Z1およびNH2および/又は糖は、グルコース、フルクトース、マンニトール、スクロース、ガラクトース、ソルビトール、キシロース又はガラクトースなどの任意の単糖類であり得る。
【0073】
幾つかの実施形態において、本明細書中記載される粒子のポリオール含有ポリマーの1つ以上の構造単位(A)は、以下の式:
【0074】
【0075】
幾つかの実施形態において、(B)は、官能基を介して2つの(A)部分を連結する、任意の直鎖状、分枝鎖状、対称又は非対称の化合物によって、形成され得る。
【0076】
幾つかの実施形態において、(B)は、少なくとも2つの架橋可能な基が2つの(A)部分を連結する化合物によって形成され得る。
【0077】
幾つかの実施形態において、(B)は、中性、カチオン性又はアニオン性の有機基を含み、その性質および組成は、共有結合的に又は非共有結合的に繋がれる化合物の化学的性質に依存する。
【0078】
アニオン性カーゴと一緒の使用のための(B)のカチオン性部分の例としては、アミジン基、第4級アンモニウム、第1級アミン基、第3級アミン基(そのpKa未満にプロトン化した)第3級アミン基、およびイミダゾリウムを有する有機基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
カチオン性カーゴと一緒の使用のための(B)に含まれるアニオン性部分の例としては、式のスルホネート、式のニトレート、式のカルボキシレート、およびホスホネートを有する有機基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
詳細には、それぞれアニオン性カーゴおよびカチオン性カーゴと一緒の使用のための(B)の1つ以上のカチオン性又はアニオン性の部分は、独立して、以下の一般式を有し得る:
【0081】
【化6】
式中、R
5は、Aが求核生基を含む場合Aに共有結合し得る求電子性基である。この場合におけるR
5としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
他の幾つかの中でもとりわけ、-C(=O)OH、-C(=O)Cl、-C(=O)NHS、-C(=NH
2
+)OMe、-S(=O)OCl-、-CH
2Br、アルキルおよび芳香族エステル、末端アルキン、トシレート、およびメシレート。部分Aが求電子末端基を含む場合、R
5は、-NH
2(第1級アミン)、-OH、-SH、N
3および第2級アインなどの求核性基を有する。
【0082】
詳細には、部分(B)がアニオン性カーゴと一緒に用いられるカチオン性部分(B)である場合、「有機基」は、m≧1であるCmH2mおよび他のヘテロ原子から成る一般式を有する骨格を有し得、且つ以下を含む官能基の少なくとも1つを含まなければならない:式(XIII)のアミジン、式(XIV)の第4級アンモニウム、式(XV)の第1級アミン基、式(XVI)の第2級アミン基、式(XVII)の第3級アミン基(そのpKa未満にプロトン化されている)、並びに式(XVIII)のイミダゾリウム。
【0083】
【0084】
部分(B)がカチオン性カーゴと一緒に用いられるアニオン性部分(B)である実施形態において、「有機基」は、m≧1であるCmH2mおよび他のヘテロ原子から成る一般式を有する骨格を有し得、且つ以下を含む官能基の少なくとも1つを含まなければならない:式(XIX)のスルホネート、式(XX)のニトレート、式(XXI)のカルボキシレート、並びに式(XXII)のホスホネート。
【0085】
【0086】
(B)がカルボキシレート(XXI)によって構成される場合の実施形態において、第1級アミン又はヒドロキシル基を含む化合物もまた、ペプチド結合又はエステル結合の形成を介して結合され得る。
【0087】
(B)が式(XV)の第1級アミン基および/又は式(XVI)の第2級アミン基から構成される場合の実施形態において、カルボン酸基を具組む化合物は、ペプチド結合の形成を介して結合され得る。
【0088】
幾つかの実施形態において、部分(B)は、独立して以下から選択される:
【0089】
【化9】
ここで、
qは、1~20であり;且つ詳細には、5であってもよく、
pは、20~200であり;且つ
Lは、脱離基である。
【0090】
用語「脱離基」は、本明細書中で使用される場合、異方性結合解列において一対の電子を分離する分子断片を示す。詳細には、脱離基は、アニオン又は中性の分子であり、脱離基が分離する能力は、共役酸のpKaに相関し、低いpKaが、よりよい脱離基能力に関連する。アニオン性化合物の例としては、Cl-、Br-およびI-などのハロゲン化物およびスルホネートエステル、例えば、パラ-トルエンスルホネート又は「トシレート」(TsO-)が挙げられる。中性分子脱離基の例は、水(H2O)、アンモニア(NH3)およびアルコール(ROH)である。
【0091】
詳細には、幾つかの実施形態において、Lは、塩素(Cl)、メトキシ(OMe)、tブトキシ(OtBU)又はNスクシンイミド(NHS)であってもよい。
【0092】
幾つかの実施形態において、式(I)の構造単位は、以下の式を有し得る:
【0093】
【0094】
幾つかの実施形態において、式(II)の構造単位は、以下の式を有し得る:
【0095】
【0096】
幾つかの実施形態において、式(III)の構造単位は、以下の式を有し得る:
【0097】
【化12】
の有機部分であり、ここで、
nは、1~20であり;且つ詳細には、1~4である。
【0098】
幾つかの実施形態において、ポリオール含有ポリマーは、以下の式を有し得る:
【0099】
【0100】
幾つかの実施形態において、ボロン酸含有ポリマーは、少なくとも1つの末端ボロン酸基を含み、以下の構造を有する:
【0101】
【化14】
式中、
R
3およびR
4は、任意の親水性有機ポリマーから独立して選択され、詳細には、独立して任意のポリ(エチレンオキシド)および双性イオン性ポリマーであってもよく、
X
1は、-CH、-N又は-Bの1つ以上を含有する有機部分であり、
Y
1は、場合によりオレフィン基又はアルキニル基、又は芳香族基(例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル又はアントラセニル)を含むm≧1である式-C
mH
2m-を有するアルキル基であってもよく、
rは、1~1000であり;
aは、0~3であり;且つ
bは、0~3であり;
且つ式中、官能基1および官能基2は、同一であるか又は異なっており、標的リガンドに結合可能であり、詳細には、タンパク質、抗体又はペプチド、又は-OH、-OCH
3又は-(X
1)-(Y
1)-B(OH)
2-などの末端基である。
【0102】
幾つかの実施形態において、R3およびR4は、(CH2CH2O)tであり、ここで、tは、2~2000であり、詳細には、100~300である。
【0103】
幾つかの実施形態において、X1は、-NH-C(=O)-、-S-S-、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-又は-C(=O)-O-であり、且つ/又はY1はフェニフェニル基である。
【0104】
幾つかの実施形態において、rは1であってもよく、aは0であってもよく、且つbは1であってもよい。
【0105】
幾つかの実施形態において、官能基1および官能基2は、同一であるか又は異なっており独立して、以下から選択される:-B(OH)2、-OCH3、-OH。
【0106】
詳細には、式(XXXI)の官能基1および/又は2は、カーゴに結合可能な官能基であってもよく、詳細には、標的リガンド、例えば、タンパク質、抗体又はペプチドであってもよく、又は、-OH、-OCH3又は-(X)-(Y)-B(OH)2などの末端基であってもよい。
【0107】
用語「官能基」は、本明細書中で使用される場合、分子構造又はその一部の特徴的化学反応を担う、分子構造内又はその一部の原子の特定の群を示す。官能基の例としては、炭化水素、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基並びにリンおよび硫黄含有基が挙げられ、全ては当業者によって同定され得る。詳細には、本開示の意味における官能基としては、カルボン酸、アミン、トリアリールホスフィン、アジド、アセチレン、スルホニルアジド、チオアジドおよびアルデヒドが挙げられる。詳細には、例えば、標的リガンドにおける対応する官能基に結合可能な官能基は、以下の結合パートナーを含むように選択され得る:カルボン酸基およびアミン基、アジドおよびアセチレン基、アジドおよびトリアリールホスフィン基、スルホニルアジドおよびチオアジド、並びにアルデヒドおよび第1級アミン。さらなる官能基は、本開示を読むことにより、当業者によって理解され得る。本明細書中で使用される場合、用語「対応する官能基」とは、別の官能基と反応し得る官能基をいう。従って、互いに反応し得る官能基は、対応する官能基ということができる。
【0108】
末端基は、マイクロ分子又はオリゴマー分子の末端である構造単位を示す。例えば、PETポリエステルの末端基は、アルコール基又はカルボン酸基であり得る。末端基は、モル質量を決定するために使用され得る。末端基の例は、以下を含む:-OH、-COOH、NH2およびOCH3。
【0109】
幾つかの実施形態において、ボロン酸含有ポリマーは、以下の式を有し得る:
【0110】
【0111】
本開示のナノ粒子に結合可能な薬剤および標的リガンドの例は、有機分子又は無機分子を含み、これらとしては、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド、アプタマー、ポリペプチド、タンパク質、多糖類、マクロ分子複合体(タンパク質とポリヌクレオチド、糖類および/又は多糖類との混合物、ウイルス、放射性同位体を有する分子、抗体又は抗体断片が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる。
【0112】
用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書中で使用される場合、ヌクレオチド、ヌクレオシド又はそれらのアナログを含む2つ以上のモノマーから成る有機ポリマーを示す。用語「ヌクレオチド」は、プリン塩基又はピリミジン塩基、並びにリン酸基に結合したリボース糖又はデオキシリボース糖から成る幾つかの化合物のいずれかをいい、核酸の基本的構造単位である。用語「ヌクレオシド」は、デオキシリボース又はリボースと合わさったプリン塩基又はピリミジン塩基から成る化合物(例えば、グアノシン又はアデノシン)をいい、特に核酸において見出される。用語「ヌクレオチドアナログ」又は「ヌクレオシドアナログ」は、1つ以上の個々の原子が異なる原子又は異なる官能基と置き換えられているヌクレオチド又はヌクレオシドを、それぞれいう。従って、用語「ポリヌクレオチド」としては、任意の長さの核酸、詳細には、DNA、RNA、それらのアナログおよび断片が、挙げられる。3つ以上のヌクレオチドのポリヌクレオチドはまた、「ヌクレオチドオリゴマー」又は「オリゴヌクレオチド」ともいう。
【0113】
用語「アプタマー」は、本明細書中で使用される場合、特定の標的に結合するオリゴ核酸又はペプチド分子を示す。詳細には、ムチン酸アプタマーは、例えば、インビトロ選択の繰り返し、すなわち、SELEX(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)を通して、種々の分子標的(例えば低分子、タンパク質、核酸、並びにさらに細胞、組織および生物ですら)に結合するよう操作されている核酸種を含み得る。アプタマーは、抗体のそれと競合する分子認識特性を提供するので、バイオテクノロジー用途および治療用途において有用である。ペプチドアプタマーは、細胞の内側のタンパク質-タンパク質相互作用に特異的に結合し且つこれらに干渉するように設計されているペプチドである。詳細には、ペプチドアプタマーは、例えば、酵母ツーハイブリッド(Y2H)システムに由来する選択戦略に従って、引き出され得る。詳細には、この戦略に従い、転写因子結合ドメインに結合する可変ペプチドアプタマーループが、転写因子活性化ドメインに結合した標的タンパク質に対してスクリーニングされる。ペプチドアプタマーのその標的へのこの選択戦略を介したインビボ結合は、下流酵母マーカー遺伝子の発現として検出される。
【0114】
用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書中で使用される場合、2つ以上のアミノ酸モノマーおよび/又はそのアナログから構成される有機の直鎖状、環状又は分枝鎖状のポリマーを示す。兵庫「ポリペプチド」は、完全長のタンパク質およびペプチド、並びにそれらのアナログおよび断片を含む、任意の長さのアミノ酸ポリマーを含む。3以上のアミノ酸のポリペプチドもまた、タンパク質オリゴマー、ペプチド又はオリゴペプチドと呼ばれる。詳細には、用語「ペプチド」および「オリゴペプチド」は、通常、50未満のアミノ酸モノマーを有するポリペプチドを示す。本明細書中で使用される場合、用語「アミノ酸」、「アミノ酸モノマー」又は「アミノ酸残基」は、20の天然に存在するアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸、および人工アミノ酸のいずれかをいい、DおよびLの光学異性体の両方を含む。詳細には、天然に存在しないアミノ酸として、天然に存在するアミノ酸のD立体異性体が挙げられる。(これらは、有用なリガンド構築ブロックを含む。何故なら、酵素分解を受けにくいからである。)用語「人工アミノ酸」は、標準的アミノ酸カップリング科学を用いて容易にカップリングされ得るが、天然に存在するアミノ酸に似ていない分子構造を有する分子を示す。用語「アミノ酸アナログ」は、1つ以上の個々の原子が、異なる原子、同位体又は異なる官能基のいずれかと置換されているが、それ以外ではこのアナログが由来する元のアミノ酸と同一であるアミノ酸をいう。これらの全てのアミノ酸は、標準的アミノ酸カップリング化学を用いて、ペプチド又はポリペプチド内に合成的に組み込まれ得る。用語「ポリペプチド」は、本明細書中で使用される場合、1つ以上のモノマー又はアミノ酸モノマー以外の構築ブロックを含むポリマーを含む。モノマー、サブユニット、又は構築ブロックの用語は、適切な条件下で同じ又は異なる化学的性質の別のモノマーと化学的に結合してポリマーを形成できる化学化合物を示す。用語「ポリペプチド」は、1つ以上の構築ブロックが、アミド結合又はペプチド結合以外の化学的結合により互いに共有結合するポリマーを含むようさらに企図される。
【0115】
用語「タンパク質」は、本明細書中で使用される場合、他のタンパク質、DNA、RNA、脂質、代謝物、ホルモン、ケモカインおよび低分子を含む他の生物分子との相互作用に参加できる、特定の二次構造および三次構造を有するポリペプチドを示すが、これらに限定されない。本明細書中で記載されるタンパク質の例は、抗体である。
【0116】
用語「抗体」は、本明細書中で使用される場合、抗原による刺激の後に活性型B細胞によって産生され、抗原に特異的に結合して生物学的システムにおける免疫応答を促進できる種類のタンパク質をいう。完全抗体は、代表的に、2つの重鎖および2つの軽鎖を含む4つのサブユニットから成る。用語抗体は、天然および合成の抗体を含み、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体又はそれらの断片を含むが、これらに限定されない。抗体の例としては、IgA、IgD、IgG1、IgG2、IgG3、IgMなどが挙げられる。断片の例としては、Fab Fv、Fab’F(ab’)2等が挙げられる。モノクローナル抗体は、「エピトープ」と呼ばれる別の生物分子の1つの特定の空間的および極性の機構に対し特異的に結合可能であり、従って、相補的であると定義される抗体である。幾つかの形態において、モノクローナル抗体はまた、同じ構造を有してもよい。ポリクローナル抗体は、異なるモノクローナル抗体の混合物をいう。幾つかの形態において、ポリクローナル抗体は、少なくとも2つのモノクローナル抗体が異なる抗原性エピトープに結合する、モノクローナル抗体の混合物であってもよい。異なる抗原性エピトープは、同じ標的、異なる標的又は組み合わせに対するものであってもよい。抗体は、宿主の免疫化および血清の収集(ポリクローナル)、又は継続的ハイブリドーマ細胞株の調製および分泌タンパク質の収集(モノクローナル)などの当該分野で周知の技術によって、調製され得る。
【0117】
幾つかの実施形態において、ポリオールポリマーは、
図1および2の図解に従って、1つ以上の送達される目的の化合物との非共有結合複合体を形成するか又は連結を形成する。
【0118】
幾つかの実施形態において、ナノ粒子構造は、薬剤およびポリオール含有ポリマーを含み、この薬剤は、共有結合によってポリオールポリマーに連結される。薬剤と結合体化したポリオールポリマーの例は、実施例16~21に詳細に説明される。これらの実施形態において、薬剤に結合体化したポリオールポリマー(本明細書中で「ポリオールポリマー-薬剤複合体」と呼ぶ)は、ナノ粒子を形成し、この構造は、その表面上に、BA分子との相互作用のために部位を提示する。
【0119】
幾つかの実施形態において、このナノ粒子は、立体安定性および/又はナノ粒子の標的官能性を提供するように形成されたBAポリマーをさらに含む。詳細には、これらの実施形態において、BAポリマーの付加は、自己凝集および他のナノ粒子との望まぬ相互作用の最小化を可能にし、従って、塩安定性および血清安定性の向上を提供する。例えば、立体安定性は、本明細書中で、実施例12において記載されるナノ粒子の例によって説明されるように、PEGを有するBAポリマーによって提供される。
【0120】
このような実施形態において、このナノ粒子の構造は、先行技術の薬剤送達方法を凌ぐ幾つかの利点、例えば、1つ以上の薬剤の制御放出を提供する能力を提供する。この特徴は、例えば、薬剤とポリオールポリマーとの間の生分解性エステル結合の使用によって、提供され得る。当業者は、この目的のために好適な、他の連結の可能性を理解する。これらの実施形態において、別の利点は、BAポリマー部分を介した薬剤の特異的標的を提供することである。
【0121】
幾つかの実施形態において、BAポリマーは、MRI又は他の類似の技術において画像化剤として使用され得るフッ化ボロン酸(実施例7)又はフッ化開裂可能ボロン酸(実施例8)を含み得る。このような画像化剤は、ナノ粒子によって送達される薬剤の薬物動態学もしくは薬力学を追跡するために通用であり得る。
【0122】
幾つかの実施形態において、ナノ粒子構造は、薬剤およびポリオールポリマーを含み、ここで、このナノ粒子は、改変型リポソームである。これらの実施形態において、この改変型リポソームは、共有結合を介してポリオールポリマーと結合体化した脂質を含み、それによって、このリポソームの表面は、ポリオールポリマーを提示する。これらの実施形態において、薬剤を送達させるように形成された改変型リポソームは、リポソームナノ粒子内に含まれる。
【0123】
用語「リポソーム」は、本明細書中で使用される場合、脂質から構成される小胞性構造を示す。脂質は、代表的に、長い炭化水素鎖および親水性の頭部基を含む尾部基を有する。脂質は、内部が送達される薬剤を含むのに好適な水性環境である、脂質二重層を形成するように配置される。このようなリポソームは、好適な標的リガンド又は細胞表面レセプター又は他の目的の標的による特異的認識のための分子を含み得る外表面を提示する。
【0124】
用語「結合体化した」は、本明細書中で使用される場合、1つの分子が、第2の分子との共有結合を形成し、一重および多重(例えば、二重)結合(例えば、C=C-C=C-C)を含んで互いに影響し合い、電子非局在化をもたらすことを示す。
【0125】
本開示のなお他の実施形態において、ナノ粒子構造は、薬剤およびポリオールを含み、ここで、このナノ粒子は、改変型ミセルである。これらの実施形態において、改変型ミセルは、疎水性ポリマーブロックを含むように改変されたポリオールポリマーを含む。
【0126】
用語「疎水性ポリマーブロック」は、本開示において使用される場合、それ自体が疎水性であるポリマーのセグメントを示す。
【0127】
用語「ミセル」は、本明細書中で使用される場合、脂質中に分散した分子の凝集体をいう。水溶液中の代表的なミセルは、周囲溶媒と接触する領域における親水性「頭部」領域を有する凝集体を形成し、疎水性の一重尾部領域を、ミセル中心において隔離する。本開示において、頭部領域は、例えば、ポリオールポリマーの表面領域であってもよく、他方で、尾部領域は、例えば、ポリオールポリマーの疎水性ポリマーブロック領域であってもよい。
【0128】
これらの実施形態において、疎水性ポリマーブロックを有するポリオールポリマーは、送達される薬剤と混合した際、ナノ粒子内に送達される薬剤を有する改変型ミセルであるナノ粒子を形成するように配置する。このようなナノ粒子実施形態は、BAポリマーと相互作用するために好適なポリオールポリマーをその表面上に提示する。このBAポリマーは、前の実施形態に従う標的官能性を有するか又は有さない。これらの実施形態において、その目的のために使用可能なBAポリマーとしては、式(I)又は(II)において、親水性のAおよび疎水性のBを有するものが挙げられる。この相互作用は、上述の他のナノ粒子実施形態について提供された利点と同様又は類似の利点を提供する。
【0129】
幾つかの実施形態において、ナノ粒子又は関連の構成要素は、許容可能なビヒクルと一緒に、組成物中に含められてもよい。用語「ビヒクル」は、本明細書中で使用される場合、通常、活性成分として組成物中に含められるナノ粒子についての溶媒、キャリア、結合剤、賦形剤又は希釈剤として作用する種々の培地のいずれかを示す。
【0130】
この組成物が個体に投与される幾つかの実施形態において、この組成物は、製薬組成物であってもよく、許容可能なビヒクルは、製薬的に許容可能なビヒクルであってもよい。
【0131】
幾つかの実施形態において、ナノ粒子は、製薬組成物中に、賦形剤又は希釈剤と一緒に含まれてもよい。詳細には、幾つかの実施形態において、製薬組成物は、ナノ粒子を、1つ以上の適合性且つ製薬的に許容可能なビヒクル、詳細には製薬的に許容可能な希釈剤又は賦形剤と組み合わせて含むことが、開示される。
【0132】
用語「賦形剤」は、本明細書中で使用される場合、医薬の活性成分のためのキャリアとして使用される不活性物質を示す。本明細書中で開示される製薬組成物のために好適な賦形剤は、このナノ粒子を吸収する個体の身体の能力を増強する、任意の物質を含む。好適な賦形剤はまた、ナノ粒子を含む処方物を、簡便且つ正確な投薬を可能にするよう嵩増しするために使用され得る任意の物質を含む。単回用量におけるその使用に加え、賦形剤は、ナノ粒子の操作を助けるために、製造手順において使用されてもよい。投与の経路および医薬の形態に依存し、異なる賦形剤が、使用され得る。賦形剤の例としては、粘着防止剤、結合剤、コーティング崩壊剤、フィラー、矯味矯臭剤(例えば、甘味料)および着色剤、滑剤、滑沢剤、保存料、吸着剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
用語「希釈剤」は、本明細書中で使用される場合、組成物の活性成分を希釈するか又は運搬するために供される希釈する薬剤を示す。好適な希釈剤としては、医薬調製物の粘度を下げることができる任意の物質を含む。
【0134】
特定の実施形態において、組成物、詳細には、製薬組成物は、非経口投与、より詳細には静脈内投与、皮内投与および筋肉内投与を含む全身的投与のために処方され得る。
【0135】
非経口投与のための組成物の例としては、滅菌水溶液、注射可能な溶液又はナノ粒子を含む懸濁液が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、非経口投与のための組成物は、使用の際に、フリーズドライ凍結乾燥形態に予め調製された粉末状組成物を、生物学的に適合性の水性液体(蒸留水、生理学的溶液又は他の水溶液)に溶解することよって調製されてもよい。
【0136】
用語「凍結乾燥」(フリーズドライ又は低温乾燥)は、代表的には、腐敗し易い物質を保存するか又はその物質をより輸送し易くするために使用される、脱水プロセスを示す。フリーズドライは、物質を凍結させ、次いで、周囲圧を減圧させ、物質内の凍結した水が固相から気体へ直接消化するために充分な充分な熱を加えることによって成される。
【0137】
製薬用途において、フリーズドライは、しばしば、ワクチンおよび他の注射用薬剤などの製品の使用期限を延ばすために使用される。物質から水を除去し、この物質をバイアル中に密封することによって、この物質は、容易に保存、輸送および注射のためにその元の形態に再構築可能である。
【0138】
幾つかの実施形態において、本明細書中で記載されるナノ粒子は、所定の標的に送達される。幾つかの実施形態において、この標的は、インビトロの生物システムであり、この方法は、標的を本明細書中で記載されるナノ粒子に接触されることを含む。
【0139】
幾つかの実施形態において、この方法は、個体への薬剤の送達のために提供され、ここで、この方法は、種々の本開示の実施形態に従って好適なナノ粒子を処方することを含む。このナノ粒子はまた、本開示の幾つかの実施形態に従って、製薬的に許容可能な組成物に処方されてもよい。この方法は、被検体にナノ粒子を送達することを含む。ナノ粒子を個体に送達するため、ナノ粒子又はナノ粒子処方物は、経口で与えられても、非経口で与えられても、局所的に与えられても、又は直腸的に与えられてもよい。これらは、各投与経路に好適な形態で送達される。例えば、ナノ粒子組成物は、丸剤又はカプセルの形態で投与されても、注射、吸入、目薬、軟膏、坐剤、点滴によって投与されても、坐剤によって直腸的に投与されてもよい。
【0140】
用語「個体」は、本明細書中で使用される場合、1つの生物を含み、これらとしては、植物又は動物が挙げられ、詳細には、より高等な動物が挙げられ、詳細には、脊椎動物、例えば哺乳動物が挙げられ、詳細には、ヒトが挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
語句「非経口投与」および「非経口的に投与される」は、本明細書中で使用される場合、経腸投与および局所投与以外の、通常、注射による投与の様式を意味し、非限定で、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内(intradennal)、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内および胸骨内(intrastemal)の、注射および点滴が挙げられる。
【0142】
語句「全身的投与」、「全身的に投与した」、「末梢投与」および「末梢に投与した」は、本明細書中で使用される場合、ナノ粒子又はその組成物を、中枢神経系内に直接投与する以外で投与することにより、それが個体のシステムに入り、従って、代謝などのプロセスを受ける投与、例えば皮下投与を意味する。
【0143】
本明細書中で記載される製薬組成物中の活性成分又は薬剤の実際の投薬レベルは、特定の個体、組成物および投与の様式について、この個体に毒となることなく所望の治療応答を達成するために有効な活性薬剤の量を得るために、変動し得る。
【0144】
これらの治療用ポリマー結合体は、ヒトおよび他の動物に、経口投与、スプレーによるなどの鼻投与、直腸投与、膣内投与、非経口投与、大槽内投与並びに粉末、軟膏又は滴剤などによる頬内および舌下を含む局所投与を含む、任意の好適な投与の経路によって、療法のために投与され得る。
【0145】
選択した投与の経路に関わりなく、好適な水和形態および/又は本発明の製薬の形態で使用され得る治療用ポリマー結合体は、陶業者に公知の従来方法により、製薬的に許容可能な投薬形態で処方され得る。
【0146】
詳細には、幾つかの実施形態において、送達される化合物は、個体の症状を処置するか又は予防するための薬物である。
【0147】
「薬物」又は「治療剤」は、個体における症状の処置、予防又は診断において使用され得るか、又はさもなければ、個体の物理的又は精神的に良好な状態を増強するために使用され得る、活性薬剤を示す。
【0148】
用語「症状」は、本明細書中で使用される場合、通常、完全な、物理的、精神的およびおそらく社会的に良好な状態に伴う、全体としてもしくは1つ以上のその部分の、個体の物理的状態と適合しない、全体としてもしくは1つ以上のその部分の、個体の身体の物理的状態を示す。本明細書中で記載される症状としては、障害および疾患が挙げられるがこれらに限定されない。ここで、用語「障害」は、身体もしくはその何らかの一部の機能異常を伴う生きている個体の症状を示し、並びに用語「疾患」は、身体もしくはその何らかの一部の正常機能が損なわれていて、代表的には、識別兆候又は症候によって顕在化する、生きている個体の症状を示す。症状の例としては、傷害、機能不全、障害(精神障害および身体障害を含む)、症候群、感染、個体の異常行動、並びに個体の身体又はその一部の構造および機能の異常変化が挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
「処置」は、本明細書中で使用される場合、症状に対する、薬学的又は外科的な、医学的手当ての一部である任意の活動を示す。
【0150】
用語「予防」は、本明細書中で使用される場合、個体の症状からの死亡率又は罹患率の負担を低減する、任意の活動を示す。これは、以下の一次、二次および三次の予防レベルで起こる:(a)一次予防は、疾患の発症を避ける;(b)二次予防は、初期疾患処置を目指し、それにより、疾患の進行および症候の出現を予防する介入の機会を増やす;並びに(c)三次予防は、機能の回復および疾患関連の合併症を軽減することによって、既に発症した疾患の悪影響を軽減する。
【0151】
本明細書中で記載されるナノ粒子によって送達され、薬物として好適である化合物の例は、電磁放射(例えば10B同位体)を発し、放射線処置において用いられることができる化合物(例えば、ホウ素中性子補足)を含む。さらなる治療剤は、任意の親油性又は親水性の、合成又は天然に存在する、生物学的に活性な治療剤(当該分野で公知のものを含む)を含む。The Merck Index,An Encyclopedia of Chemicals,Drugs,and Biologicals,13th Edition,2001,Merck and Co.,Inc.,Whitehouse Station,N.J.このような治療剤の例としては、低分子医薬品、抗生物質、ステロイド、ポリヌクレオチド(例えば、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ウイルスおよびキメラポリヌクレオチド)、プラスミド、ペプチド、ペプチド断片、低分子(例えば、ドキソルビシン)、キレート剤(例えば、デフェロキサミン(DESFERAL))、エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、天然産物(例えば、タキソール、アンホテリシン)、並びに他の生物学的に活性な高分子、例えば、タンパク質および酵素などが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で記載されたナノ粒子と共に治療剤として使用され得る活性剤(治療剤)を列挙した米国特許第6,048,736号もまた、参考にされたい。低分子治療剤は、混成粒子中の治療剤であるのみでなく、さらなる実施形態においては、混成物中のポリマーに共有結合し得る。幾つかの実施形態において、共有結合は、可逆的なであり(例えば、プロドラッグ形態又はジスルフィド結合などの生分解性連結を通す)、治療剤を送達する別の方法を提供する。幾つかの実施形態において、本明細書中で記載されるナノ粒子によって送達され得る治療剤としては、化学療法剤、例えばエポチロン、カンプトテシンベースの薬物、タキソール、又はプラスミド、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドアプタマーなどの核酸又はこれらの組み合わせ、並びに本開示を読んだ当業者によって同定され得る他の薬物が、挙げられる。
【0152】
幾つかの実施形態において、送達される化合物は、個体の細胞又は組織を画像化するために好適である。本明細書中で記載されるナノ粒子によって送達され得、且つ画像化のために好適な化合物の例は、例えばMR画像化のための19F同位体、PET画像化のための18F又は64Cuなどの同位体を含む化合物を含む。
【0153】
詳細には、本明細書中で記載されるナノ粒子は、19F含有BAポリマーを含むように作られ得る。例えば、19F原子は、開裂不能又は開裂可能なBAポリマー化合物内に組み込まれ得る。19F原子が存在し得る他の位置は、BAポリマー構成要素上、ポリオールポリマー構成要素上、又は送達される薬剤上である。これらおよび他の改変は、当業者に明らかである。
【0154】
幾つかの実施形態において、本明細書中で記載されるナノ粒子は、農産業において使用される化学物質を送達するために使用され得る。本発明の別の実施形態において、本明細書中で記載されるナノ粒子によって送達される薬剤は、微生物学および農業の有用性を有する、生物学的に活性な化合物である。これらの生物学的に活性な化合物としては、当該分野で公知のものが挙げられる。例えば、好適な農業的生物学的活性化合物としては、肥料、殺真菌剤、除草剤、殺昆虫剤および殺うどんこ病菌剤が挙げられるが、これらに限定されない。殺微生物剤はまた、都市用水および産業用水(例えば冷却水、製紙における白水系)のシステムを処理するためにも使用され得る。微生物の攻撃又は分解を受けやすい水性系はまた、革産業、織物産業、およびコーティング又は塗料産業においても見出される。このような殺微生物剤の例およびその使用は、個々に、および組み合わせて、米国特許第5,693,631号、同第6,034,081号、および同第6,060,466号に記載され、これらは、本明細書中で参考とし組み込まれる。上で記載されたものなどの活性薬剤を含む組成物は、活性成分事態が公知であるように、同じ様式で使用され得る。とりわけ、このような使用は製薬的な使用ではないので、混成物のポリマーは、製薬的使用において必要とされる毒性プロフィールに適合する必要はない。
【0155】
特定の実施形態において、ポリオールポリマーとBAポリマーとを含むナノ粒子はまた、示された化合物、詳細にはナノ粒子を用いる薬剤のいずれかを送達するために好適なシステムに、含まれてもよい。このシステムの幾つかの実施形態において、ナノ粒子は、個体への投与のためのナノ粒子を調製するために好適な構成要素を提供する。
【0156】
本明細書中で記載されるシステムは、部分のキットの形態で提供されてもよい。例えば、ポリオールポリマーおよび/又はBAポリマーは、分子のみで含まれても、又は好適な賦形剤、ビヒクル又は希釈剤の存在下で含まれてもよい。
【0157】
部分のキットにおいて、ポリオールポリマー、BAポリマーおよび/又は送達される薬剤は、独立して、おそらくは好適なビヒクルキャリア又は補助薬剤と一緒に組成物中含まれて、キット中に含められる。例えば、ポリオールポリマーおよび/又はBAポリマーは、1つ以上の組成物のみに含まれてもよく、および/又は好適なベクターに含まれてもよい。また、送達される薬剤は、好適なビヒクルキャリア又は補助剤と共に、組成物中に含まれてもよい。あるいは、この薬剤は、末端使用者によって与えられ、部分のキットに含まれなくてもよい。さらに、ポリオールポリマー、BAポリマーおよび/又は薬剤は、ナノ粒子中への適切な組み込みに好適な種々の形態で含まれ得る。
【0158】
さらなる構成要素はまた、微小流体チップ、参照標準、緩衝液、および本開示を読んで当業者によって同定され得るさらなる構成要素に含まれ、これを構成し得る。
【0159】
本明細書中で開示される部分のキットにおいて、キットの構成要素は、好適な相互作用および本明細書中で開示される方法を実施するために必須の他の試薬と共に提供されてもよい。幾つかの実施形態において、個のキットは、別個の容器中に組成物を含んでもよい。アッセイを行うための指示書、例えば書かれたか又はオーディオの、紙上又は電子支持体(例えば、テープ又はCD-ROM)上の指示書もまた、キット中に含まれてもよい。このキットはまた、使用される特定の方法に依存して、他の包装の試薬および材料(例えば洗浄緩衝液など)を含んでもよい。
【0160】
組成物の好適なキャリア薬剤又は補助薬剤、および一般的にキットの製造および包装に関するさらなる詳細は、本開示を読んだ当業者によって同定され得る。
【0161】
幾つかの実施形態において、ナノ粒子は、ナノ粒子の個々の構成要素を調製し、その後、所望の混成ナノ粒子構造に到達するように、この構成要素を種々の順番で混合することによって、調製され得る。構成要素の調製および混合は、当業者に公知の好適な溶液において実施される。
【0162】
用語「混合」は、本明細書中で使用される場合、目的の分子を含む1つの溶液と別の目的の分子を含む別の溶液との添加を示す。例えば、本開示の文脈において、ポリオールポリマーの水溶液が、BAポリマーの水溶液と、混合され得る。
【0163】
用語「溶液」は、本明細書中で使用される場合、目的の分子を含む任意の液相サンプルを示す。例えば、ポリオールポリマーの水溶液は、水中又は任意の緩衝溶液、詳細には水溶液中に希釈されたポリオールポリマーを含み得る。
【0164】
幾つかの実施形態において、ナノ粒子は、ポリオールポリマーを、送達される薬剤(
図1および2)と混合し、ポリオールポリマー-薬剤ナノ粒子を形成することによって、調製され得る。他の実施形態において、ナノ粒子は、BAポリマーをこのポリオールポリマー-薬剤ナノ粒子とさらに混合することによって、調製され得る。他の実施形態において、ナノ粒子は、ポリオールポリマーとBAポリマーとを混合し、その後、送達される薬剤を混合することによって、調製され得る。なお他の実施形態において、ナノ粒子は、ポリオールポリマーとBAポリマーと、送達される薬剤とを同時に混合することによって、調製され得る。
【0165】
幾つかの実施形態において、ナノ粒子は、本開示の種々の実施形態に従ってポリオールポリマー-薬剤結合体を形成することによって、ポリオールポリマー-薬剤結合体から構成されるナノ粒子を調製することよって、調製される。他の実施形態において、ポリオールポリマー-薬剤結合体から構成されるナノ粒子は、このナノ粒子を好適な水溶液中に溶解することによって、調製され得る。なおさらなる実施形態において、ポリオールポリマー-薬剤結合体から構成されるナノ粒子は、ポリオールポリマー-薬剤結合体を、標的リガンドを提供するか又は提供しないBAポリマーと混合することによって、調製され得る。
【0166】
幾つかの実施形態において、ナノ粒子は、ポリオールポリマーを送達される薬剤を有する疎水性ポリマーブロックと混合することにより、本開示の実施形態に従う改変型ミセルを調製することによって、調製され得る。他の実施形態において、ナノ粒子は、この改変型ミセルをBAポリマーとさらに混合することによって、調製され得る。なお他の実施形態において、ナノ粒子は、ポリオールポリマーとBAポリマーとを混合し、その後、送達される薬剤を混合することにより、改変型ミセルであるナノ粒子を調製することによって、調製され得る。
【0167】
本開示の幾つかの実施形態において、ナノ粒子は、ポリオールポリマーに結合体化した脂質をBAポリマーとおよび/又は送達される薬剤と混合し、改変型リポソームを調製することによって、調製され得る。種々の実施形態において、ナノ粒子は、ポリオールポリマーと結合体化した脂質をBAポリマーとを混合し、その後、送達される薬剤を混合することによって、調製され得る。他の実施形態において、ナノ粒子は、ポリオールポリマーと結合体化した脂質を送達される薬剤を混合することによって、調製され得る。他の実施形態において、ナノ粒子は、ポリオールポリマーと結合体化した脂質を送達される薬剤と混合し、その後、BAポリマーと混合して、改変型リポソームであるナノ粒子を調製することによって、調製され得る。
【0168】
本開示の幾つかの実施形態に従うナノ粒子の形成は、当業者に公知の技術および手順によって、分析され得る。例えば、幾つかの実施形態において、ゲルシフト法が、ナノ粒子内への核酸薬剤の取り込みをモニタリングして測定するために、使用される(実施例10)。幾つかの実施形態において、好適なナノ粒子サイズおよび/又はゼータ電位が、公知の方法を用いて選択され得る(実施例11)。
【0169】
組成物の好適なキャリア薬剤又は補助薬剤、および一般的にキットの製造および包装に関するさらなる詳細は、本開示を読んだ当業者によって同定され得る。
【0170】
ニトロフェニルボロン酸を有するポリマーを有するナノ粒子
ニトロフェニルボロン酸含有ポリマーに結合体化したポリオール含有ポリマーを有するナノ粒子が、本明細書中で記載される。記載される標的されたナノ粒子のポリオールナノ粒子部分を含むポリマーが、以下の構造単位の任意の1つの1つ以上を有し得る:
【0171】
【0172】
【化17】
ここで、R
1およびR
2は、約10kDa以下の分子量を有する任意の炭素ベースの基又は有機基のいずれかから独立して選択され;Xは、-H、-F、-C、-N又は-Oの1つ以上を含む脂肪族基から選択され;且つYは、-OH又は-OHを提示する有機部分から独立して選択され、且つBは、第1部分AのR
1およびR
2の1つに連結する有機部分であり、第2部分AのR
1およびR
2をポリマー中に有する。幾つかの実施形態において、Xは、C
nH
2n+1であってもよく、ここで、nは、0~5の任意の1つの数であり、Yは、-OHである。幾つかの実施形態において、Aは、以下のいずれか1つであり得る:
【0173】
【化18】
ここで、スペーサーは、任意の有機基から独立して選択され;アミノ酸は、遊離のアミンおよび遊離のカルボン酸基を有する有機基から選択され;nは、1~20の任意の単一番号であり;且つZ
1は、-NH
2,-OH、-SHおよび-COOHから独立して選択され;R
1およびR
2は、独立して以下の式を有し得:
【0174】
【化19】
式中、dは、0~100の任意の単一番号であり、eは、0~100の任意の単一番号であり、fは、0~100の任意の単一番号であり、Zは、1つの有機部分を別の有機部分に連結する共有結合であり、且つZ
1は、-NH
2、-OH、-SHおよび-COOHから独立して選択され;Bは、以下のいずれか1つであってもよく:
【0175】
【化20】
ここで、qは、1~20の任意の単一番号であり;pは、20~200の任意の単一番号であり;且つLは、遊離基であり、これらのBサブユニットは、上述のAサブユニットのいずれか1つと対合される。より詳細な実施形態において、式(I)の構造単位に示される標的化ナノ粒子のポリオールナノ粒子セグメントを含有するポリマーは、以下:
【0176】
【化21】
より詳細な実施形態において、式(II)の構造単位に示される標的化ナノ粒子のポリオールナノ粒子セグメントを含有するポリマーは、以下:
【0177】
【化22】
であり、そして
式(III)の構造単位に示される標的化ナノ粒子のポリオールナノ粒子セグメントを含有するポリマーは、以下:
【0178】
【化23】
であり、
ここで、nは、1~20の任意の単一番号である。記載の標的化ナノ粒子の幾つかの実施形態において、ポリオール含有ポリマーは、以下である:
【0179】
【0180】
まとめると、下位部分Aについての式(式VI、VII又はVIII)のいずれかは、下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれかと組み合わされて、記載のナノ粒子のポリオール含有ポリマーを形成し得る。本明細書中で記載される特定の局面において、ナノ粒子は、下位部分Aについての式(IX、X又はXI)のいずれか1つと下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つの組み合わせから形成されるポリオール含有ポリマーを有し得る。
【0181】
幾つかの実施形態において、ニトロフェニルボロン酸含有ポリマーは、ニトロフェニルボロン酸基を含み、以下の一般式を有する:
【0182】
【化25】
ここで、R
3およびR
4は、独立して親水性有機ポリマーであり、X
1は、-C、-N又は-Bの1つ以上を含む有機部分であり、Y
1は、mが≧1である式-C
mH
2m-のアルキル基又は芳香族基であり、rは、1~1000の任意の単一番号であり、aは、0~3の任意の単一番号であり、且つbは、0~3の任意の単一番号であり、且つ官能基1および官能基2は、同一であるか又は異なっており、-B(OH)
2、-OCH
3又は-OHのいずれか1つから独立して選択され得る。幾つかの実施形態において、記載のニトロフェニルボロン酸含有ポリマーのこれらの可変の下位部分は、以下から選択され得る:R
3およびR
4は、(CH
2CH
2O)
tであり得、ここで、tは、2~2000の任意の単一番号であり;X
1は、-NH-C(=O)-、-S-S-、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-又は-C(=O)-O-のいずれか1つであり、且つY
1は、ニトロフェニル基である。幾つかの実施形態において、記載のニトロフェニルボロン酸含有ポリマーのこれらの可変の下位部分は、以下から選択され得る:R
3およびR
4は、(CH
2CH
2O)
tであり、ここで、tは、2~2000の任意の単一番号であり;X
1は、-NH-C(=O)-、-S-S-、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-又は-C(=O)-O-のいずれか1つであり、且つY
1は、ニトロフェニル基であり、且つrは、1の値を有し得、aは、0の値を有し得、且つbは、1の値を有し得る。ニトロフェニルボロン酸含有ポリマーの実施形態のそれぞれにおいて、ニトロ基は、オルト位、メタ位、又はパラ位のいずれであってもよい。なおさらなる実施形態において、ニトロフェニルボロン酸含有ポリマーは、フェニル環上に存在する、メチル基などのさらなる基を有し得る。詳細な実施形態において、本明細書中で記載される標的化ナノ粒子は、以下の式のいずれか1つを有するニトロフェニルボロン酸含有ポリマーを含み得る:
【0183】
【化26】
ここで、sは、20~300の任意の単一番号である。式XXXIII、XXXIVおよびXXXVのポリマーは、フェニル環上のPEGの位置を、ボロン酸基に関連してオルト位、メタ位、又はパラ位に変えるようにさらに改変され得る。
【0184】
まとめると、下位部分Aについての式(式VI、VII又はVIII)のいずれか1つは、下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つと組み合わされて、記載のナノ粒子のポリオール含有ポリマーナノ粒子セグメントを形成し得、得られたポリオール含有ポリマーは、次いで、ニトロフェニルボロン酸含有ポリマーとカップリングされ得る。幾つかの実施形態において、記載のポリオール含有ポリマーと記載のニトロフェニルボロン酸含有ポリマーとの間の結合体化は、ボロン酸基の少なくとも1つのヒドロキシル基によって媒介される。本明細書中で記載される特定の局面において、ナノ粒子は、下位部分Aについての式(IX、X又はXI)のいずれか1つと下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つとの組み合わせから形成されるポリオール含有ポリマーを有し得、これは、次いで、式XXXを有するボロン酸含有ポリマーとカップリングされ得る。本明細書中で記載される幾つかの実施形態において、ナノ粒子は、下位部分Aについての式(IX、X又はXI)のいずれか1つと下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つとの組み合わせから形成されるポリオール含有ポリマーを有し得、これは、次いで、式XXXIII、XXXIV、又はXXXVのいずれか1つに対応するボロン酸含有ポリマーとカップリングされ得る。
【0185】
本明細書中で記載されるナノ粒子は、さらに、化合物を含み得る。幾つかの実施形態において、この化合物は、1つ以上の治療剤、例えば低分子化学療法剤又はポリヌクレオチドであってもよい。幾つかの実施形態において、このポリヌクレオチドは、DNA、RNA又は干渉RNA(例えばshRNA、siRNA又はmiRNA)のいずれか1つ以上であってもよい。幾つかの実施形態において、低分子化学療法剤は、カンプトテシン、エポチロン又はタキサンの1つ以上であってもよい。本明細書中で記載されるナノ粒子は、ポリヌクレオチドと1つ以上の低分子との組み合わせを含んでもよい。この点に関して、下位部分Aのポリマー(式VI、VII又はVIII)のいずれか1つは、下位部分Bのポリマー(式XXIII又はXIV)のいずれか1つと組み合わされて、記載のナノ粒子のポリオール含有ポリマーナノ粒子セグメントを形成し得、得られたポリオール含有ポリマーは、次いで、ニトロフェニルボロン酸含有ポリマーとカップリングされ得る。下位部分Aのポリマー、下位部分Bのポリマー又はニトロフェニルボロン酸を有するポリマーは、1つ以上の治療剤、例えば低分子化学療法剤又はポリヌクレオチドと共に形成され得る。幾つかの実施形態において、下位部分Aのポリマー(式VI、VII又はVIII)は、下位部分Bのポリマー(式XXIII又はXIV)のいずれか1つと組み合わされて、記載のナノ粒子のポリオール含有ポリマーナノ粒子セグメントを形成し得、得られたポリオール含有ポリマーは、次いで、ニトロフェニルボロン酸含有ポリマーとカップリングされ得る。下位部分Aのポリマー、下位部分Bのポリマー又はニトロフェニルボロン酸を有するポリマーは、1つ以上のDNA、RNA又は干渉RNA(例えば、shRNA、siRNA又はmiRNA)と共に形成され得る。幾つかの実施形態において、下位部分Aのポリマー(式VI、VII又はVIII)は、下位部分Bのポリマー(式XXIII又はXIV)のいずれか1つと組み合わされて、記載のナノ粒子のポリオール含有ポリマーナノ粒子セグメントを形成し得、得られたポリオール含有ポリマーは、次いで、ニトロフェニルボロン酸含有ポリマーとカップリングされ得る。下位部分Aのポリマー、下位部分Bのポリマー又はニトロフェニルボロン酸を有するポリマーは、1つ以上の化学療法剤と共に形成され得る。幾つかの実施形態において、下位部分Aのポリマー(式VI、VII又はVIII)は、下位部分Bのポリマー(式XXIII又はXIV)のいずれか1つと組み合わされて、記載のナノ粒子のポリオール含有ポリマーナノ粒子セグメントを形成し得、得られたポリオール含有ポリマーは、次いで、ニトロフェニルボロン酸含有ポリマーとカップリングされ得る。下位部分Aのポリマー、下位部分Bのポリマー又はニトロフェニルボロン酸を有するポリマーは、1つ以上のDNA、RNA又は干渉RNA(例えば、shRNA、siRNA又はmiRNA)と共に形成され得る。幾つかの実施形態において、記載のポリオール含有ポリマーと記載のニトロフェニルボロン酸含有ポリマーとの間の結合体化は、ニトロフェニルボロン酸基の少なくとも1つのヒドロキシル基によって媒介される。本明細書中で記載される幾つかの実施形態において、標的化ナノ粒子は、下位部分Aについての式(IX、X又はXI)のいずれか1つと下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つとの組み合わせから形成されるポリオール含有ポリマーを有し得、これは、次いで、式XXXIII、XXXIV、又はXXXVのいずれか1つに対応するニトロフェニルボロン酸含有ポリマーとカップリングされ得る。
【0186】
標的化ナノ粒子
任意の5、4、3、2又は1の標的リガンドに結合体化したポリオール含有ポリマーを有する標的化ナノ粒子が、本明細書中で記載される。記載される標的されたナノ粒子のポリオールナノ粒子部分を含むポリマーが、以下の構造単位の任意の1つの1つ以上を有し得る:
【0187】
【0188】
【化28】
ここで、R
1およびR
2は、約10kDa以下の分子量を有する任意の炭素ベースの基又は有機基のいずれかから独立して選択され;Xは、-H、-F、-C、-N又は-Oの1つ以上を含む脂肪族基から選択され;且つYは、-OH又は-OHを提示する有機部分から独立して選択され、且つBは、第1部分AのR
1およびR
2の1つに連結する有機部分であり、第2部分AのR
1およびR
2をポリマー中に有する。幾つかの実施形態において、Xは、C
nH
2n+1であってもよく、ここで、nは、0~5の任意の1つの数であり、Yは、-OHである。幾つかの実施形態において、Aは、以下のいずれか1つであり得る:
【0189】
【化29】
ここで、スペーサーは、任意の有機基から独立して選択され;アミノ酸は、遊離のアミンおよび遊離のカルボン酸基を有する有機基から選択され;nは、1~20の任意の単一番号であり;且つZ
1は、-NH
2,-OH、-SHおよび-COOHから独立して選択され;R
1およびR
2は、独立して以下の式を有し得:
【0190】
【化30】
式中、dは、0~100の任意の単一番号であり、eは、0~100の任意の単一番号であり、fは、0~100の任意の単一番号であり、Zは、1つの有機部分を別の有機部分に連結する共有結合であり、且つZ
1は、-NH
2、-OH、-SHおよび-COOHから独立して選択され;Bは、以下のいずれか1つであってもよく:
【0191】
【化31】
ここで、qは、1~20の任意の単一番号であり;pは、20~200の任意の単一番号であり;且つLは、遊離基であり、これらのBサブユニットは、上述のAサブユニットのいずれか1つと対合される。より詳細な実施形態において、式(I)の構造単位に示される標的化ナノ粒子のポリオールナノ粒子セグメントを含有するポリマーは、以下:
【0192】
【化32】
より詳細な実施形態において、式(II)の構造単位に示される標的化ナノ粒子のポリオールナノ粒子セグメントを含有するポリマーは、以下:
【0193】
【化33】
式(III)の構造単位に示される標的化ナノ粒子のポリオールナノ粒子セグメントを含有するポリマーは、以下:
【0194】
【化34】
であり、
ここで、nは、1~20の任意の単一番号である。記載の標的化ナノ粒子の幾つかの実施形態において、ポリオール含有ポリマーは、以下である:
【0195】
【0196】
まとめると、下位部分Aについての式(式VI、VII又はVIII)のいずれかは、下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれかと組み合わされて、記載の標的化ナノ粒子のポリオール含有ポリマーを形成し得る。本明細書中で記載される特定の局面において、標的化ナノ粒子は、下位部分Aについての式(IX、X又はXI)のいずれか1つと下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つの組み合わせから形成されるポリオール含有ポリマーを有し得る。
【0197】
所望の標的化ナノ粒子はまた、ポリオール含有ポリマーに可逆的共有結合でカップリングしたボロン酸含有ポリマーをも有し得る。幾つかの実施形態において、このナノ粒子は、ボロン酸含有ポリマーがナノ粒子の外部の環境に存在するように構成される。なおさらなる実施形態において、ボロン酸含有ポリマーは、ナノ粒子と反対のその末端において、標的リガンドに結合体化される。幾つかの実施形態において、ボロン酸含有ポリマーは、少なくとも1つの末端ボロン酸基を含み、以下の一般式を有する:
【0198】
【化36】
ここで、R
3およびR
4は、独立して親水性有機ポリマーであり、X
1は、-C、-N又は-Bの1つ以上を含む有機部分であり、Y
1は、mが≧1である式-C
mH
2m-のアルキル基又は芳香族基であり、rは、1~1000の任意の単一番号であり、aは、0~3の任意の単一番号であり、且つbは、0~3の任意の単一番号であり、且つ官能基1および官能基2は、同一であるか又は異なっており、-B(OH)
2、-OCH
3又は-OHのいずれか1つから独立して選択され得る。幾つかの実施形態において、記載のボロン酸含有ポリマーのこれらの可変の下位部分は、以下から選択され得る:R
3およびR
4は、(CH
2CH
2O)
tであり、ここで、tは、2~2000の任意の単一番号であり;X
1は、-NH-C(=O)-、-S-S-、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-又は-C(=O)-O-のいずれか1つであり、且つY
1は、フェニル基である。幾つかの実施形態において、記載のボロン酸含有ポリマーのこれらの可変の下位部分は、以下から選択され得る:R
3およびR
4は、(CH
2CH
2O)
tであり、ここで、tは、2~2000の任意の単一番号であり;X
1は、-NH-C(=O)-、-S-S-、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-又は-C(=O)-O-のいずれか1つであり、且つY
1は、フェニル基であり、且つrは、1の値を有し得、aは、0の値を有し得、且つbは、1の値を有し得る。詳細な実施形態において、本明細書中で記載される標的化ナノ粒子は、以下の式を有するボロン酸含有ポリマーを含み得る:
【0199】
【化37】
ここで、sは、20~300の任意の単一番号である。
【0200】
幾つかの実施形態において、ボロン酸含有ポリマーは、ニトロフェニルボロン酸を有する。幾つかの実施形態において、ニトロフェニルボロン酸含有ポリマーは、ニトロフェニルボロン酸基を含み、以下の一般式を有する:
【0201】
【化38】
ここで、R
3およびR
4は、独立して親水性有機ポリマーであり、X
1は、-C、-N又は-Bの1つ以上を含む有機部分であり、Y
1は、mが≧1である式-C
mH
2m-のアルキル基又は芳香族基であり、rは、1~1000の任意の単一番号であり、aは、0~3の任意の単一番号であり、且つbは、0~3の任意の単一番号であり、且つ官能基1および官能基2は、同一であるか又は異なっており、-B(OH)
2、-OCH
3又は-OHのいずれか1つから独立して選択され得る。幾つかの実施形態において、記載のボロン酸含有ポリマーのこれらの可変の下位部分は、以下から選択され得る:R
3およびR
4は、(CH
2CH
2O)
tであり得、ここで、tは、2~2000の任意の単一番号であり;X
1は、-NH-C(=O)-、-S-S-、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-又は-C(=O)-O-のいずれか1つであり、且つY
1は、ニトロフェニル基である。幾つかの実施形態において、記載のニトロフェニルボロン酸含有ポリマーのこれらの可変の下位部分は、以下から選択され得る:R
3およびR
4は、(CH
2CH
2O)
tであり、ここで、tは、2~2000の任意の単一番号であり;X
1は、-NH-C(=O)-、-S-S-、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-又は-C(=O)-O-のいずれか1つであり、且つY
1は、ニトロフェニル基であり、且つrは、1の値を有し得、aは、0の値を有し得、且つbは、1の値を有し得る。ニトロフェニルボロン酸含有ポリマーの実施形態のそれぞれにおいて、ニトロ基は、オルト位、メタ位、又はパラ位のいずれであってもよい。なおさらなる実施形態において、ニトロフェニルボロン酸含有ポリマーは、フェニル環上に存在する、メチル基などのさらなる基を有し得る。詳細な実施形態において、本明細書中で記載される標的化ナノ粒子は、以下の式のいずれか1つを有するボロン酸含有ポリマーを含み得る:
【0202】
【化39】
ここで、sは、20~300の任意の単一番号である。式XXXIII、XXXIVおよびXXXVのポリマーは、フェニル環上のPEGの位置を、ボロン酸基に関連してオルト位、メタ位、又はパラ位に変えるようにさらに改変され得る。
【0203】
まとめると、下位部分Aについての式(式VI、VII又はVIII)のいずれか1つは、下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つと組み合わされて、記載の標的化ナノ粒子のポリオールナノ粒子セグメントを含有するポリマーを形成し得、得られたポリオール含有ポリマーは、次いで、ボロン酸含有ポリマーとカップリングされ得、ここで、このボロン酸含有ポリマーは、フェニルボロン酸又はニトロフェニルボロン酸のいずれかである。幾つかの実施形態において、記載のポリオール含有ポリマーと記載のボロン酸含有ポリマーとの間の結合体化は、ボロン酸基の少なくとも1つのヒドロキシル基によって媒介される。本明細書中で記載される特定の局面において、標的化ナノ粒子は、下位部分Aについての式(IX、X又はXI)のいずれか1つと下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つとの組み合わせから形成されるポリオール含有ポリマーを有し得、これは、次いで、式XXXを有するボロン酸含有ポリマーとカップリングされ得る。本明細書中で記載される幾つかの実施形態において、標的化ナノ粒子は、下位部分Aについての式(IX、X又はXI)のいずれか1つと下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つとの組み合わせから形成されるポリオール含有ポリマーを有し得、これは、次いで、式XXXI、XXXIII、XXXIV、又はXXXVのいずれか1つに対応するボロン酸含有ポリマーとカップリングされ得る。
【0204】
本明細書中で記載される幾つかの局面において、本明細書中で記載されるポリオール含有ポリマーナノ粒子セグメント又はポリオール含有ポリマーナノ粒子セグメントとボロン酸含有ポリマーとの組み合わせのいずれかから形成されるナノ粒子は、標的リガンドと結合体化して、標的リガンド対ナノ粒子の比が3:1である標的化ナノ粒子を形成する。本明細書中で記載される幾つかの局面において、本明細書中で記載されるポリオール含有ポリマーナノ粒子セグメント又はポリオール含有ポリマーナノ粒子セグメントとボロン酸含有ポリマーとの組み合わせのいずれかから形成されるナノ粒子は、標的リガンドと結合体化して、標的リガンド対ナノ粒子の比が1:1である標的化ナノ粒子を形成する。本明細書中で記載される幾つかの局面において、本明細書中で記載されるポリオール含有ポリマーナノ粒子セグメント又はポリオール含有ポリマーナノ粒子セグメントとボロン酸含有ポリマーとの組み合わせのいずれかから形成されるナノ粒子は、1つの単一標的リガンドと結合体化して、標的化ナノ粒子を形成する。幾つかの局面において、記載の標的リガンドは、ボロン酸含有ポリマーに、ボロン酸と反対の末端において結合体化する。記載の標的化ナノ粒子に結合体化した標的リガンドは、タンパク質、タンパク質断片、アミノ酸ペプチド、又はアミノ酸又はポリヌクレオチドのいずれかに由来するアプタマー、又は目的の標的に結合することが公知である他の高親和性分子のいずれか1つであってもよい。幾つかの実施形態において、タンパク質又はタンパク質断片である標的リガンドは、抗体、細胞性レセプター、細胞性レセプターについてのリガンド(例えば、トランスフェリン)、あるいはその一部を有するタンパク質又はキメラタンパク質のいずれか1つであってもよい。標的リガンドが抗体である場合、この抗体は、ヒト、マウス、ウサギ、非ヒト霊長類、イヌ、又はげっ歯類の抗体であるか。これらの抗体の任意の2つから成るキメラであってもよい。さらに、この抗体は、CDRセグメント又はCDRセグメントを含む可変領域の小さな一部のみが非ヒト抗体であり、抗体の残りはヒト抗体であるように、ヒト化されていてもよい。本明細書中で記載される抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、IgY又は哺乳類によって産生されることがわかっている別の型のイソ型などの、任意のイソ型のものであってもよい。幾つかの実施形態において、標的リガンドは、その標的への結合を担う抗体、細胞性レセプター、細胞性レセプターについてのリガンド由来のアミノ酸ペプチドのみを含んでもよい。
【0205】
幾つかの局面において、下位部分Aについての式(VI、VII又はVIII)のいずれか1つから形成されたナノ粒子は、下位部部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つと合わせられて、記載の標的化ナノ粒子のポリオール含有ポリマーセグメントを形成し、さらに、5、4、3、2又は1のいずれかの、標的リガンドと結合体化したボロン酸、例えばフェニルボロン酸又はニトロフェニルボロン酸含有ポリマーにカップリングした。
【0206】
幾つかの局面において、下位部分Aについての式(VI、VII又はVIII)のいずれか1つから形成されたナノ粒子は、下位部部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つと合わせられて、記載の標的化ナノ粒子のポリオール含有ポリマーセグメントを形成し、さらに標的リガンドと結合体化した単一のボロン酸、例えばフェニルボロン酸又はニトロフェニルボロン酸含有ポリマーにカップリングした。
【0207】
本明細書中で記載される特定の局面において、標的化ナノ粒子は、下位部分Aについての式(IX、X又はXI)のいずれか1つと下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つとの組み合わせから形成されるポリオール含有ポリマーを有し得、これは、5、4、3、2又は1のいずれかの、ボロン酸の反対の末端にて標的リガンドとカップリングした式XXXのボロン酸含有ポリマーにカップリングされ得る。
【0208】
本明細書中で記載される特定の局面において、標的化ナノ粒子は、下位部分Aについての式(IX、X又はXI)のいずれか1つと下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つとの組み合わせから形成されるポリオール含有ポリマーを有し、ボロン酸の反対の末端にて標的リガンドとカップリングした式XXXのボロン酸含有ポリマーにカップリングされ得る。
【0209】
幾つかの局面において、下位部分Aについての式(VI、VII又はVIII)のいずれか1つから形成されたナノ粒子は、下位部部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つと合わせられて、記載の標的化ナノ粒子のポリオール含有ポリマーセグメントを形成し、さらに5、4、3、2又は1のボロン酸含有ポリマー、例えば標的リガンドと結合体したフェニルボロン酸又はニトロフェニルボロン酸にカップリングした。ここで、得られた標的化ナノ粒子は、単一の標的リガンドとのみ結合体化する。
【0210】
幾つかの局面において、下位部分Aについての式(VI、VII又はVIII)のいずれか1つから形成されたナノ粒子は、下位部部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つと合わせられて、記載の標的化ナノ粒子のポリオール含有ポリマーセグメントを形成し、さらに標的リガンドと結合体化した単一のボロン酸含有ポリマー、例えばフェニルボロン酸又はニトロフェニルボロン酸にカップリングした。ここで、得られた標的化ナノ粒子は、単一の標的リガンドとのみ結合体化する。
【0211】
本明細書中で記載される特定の局面において、標的化ナノ粒子は、下位部分Aについての式(IX、X又はXI)のいずれか1つと下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つとの組み合わせから形成されるポリオール含有ポリマーを有し得、これは、ボロン酸の反対の末端にて標的リガンドとカップリングした、5、4、3、2又は1のいずれかの式XXXを有するボロン酸含有ポリマーにカップリングされ得る。ここで、得られた標的化ナノ粒子は、単一の標的リガンドとのみ結合体化する。
【0212】
本明細書中で記載される特定の局面において、標的化ナノ粒子は、下位部分Aについての式(IX、X又はXI)のいずれか1つと下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つとの組み合わせから形成されるポリオール含有ポリマーを有し得、これは、ボロン酸の反対の末端にて標的リガンドとカップリングした式XXXを有するボロン酸含有ポリマーとカップリングされ得る。ここで、得られた標的化ナノ粒子は、単一の標的リガンドとのみ結合体化する。
【0213】
幾つかの実施形態において、本明細書中で記載される標的化ナノ粒子は、任意の標的リガンドに結合体化する。幾つかの実施形態において、本明細書中で記載される標的化ナノ粒子は、単一の標的リガンドに結合体化する。本明細書中で記載される幾つかの実施形態において、標的化ナノ粒子は、下位部分Aについての式(IX、X又はXI)のいずれか1つと下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つとの組み合わせから形成されるポリオール含有ポリマーを有し得、これは、次いで、式XXXI、XXXIII、XXXIV、又はXXXVのいずれか1つに対応する、5、4、3、2又は1のいずれかのボロン酸含有ポリマーとカップリングされ得る。これは、さらに、タンパク質、タンパク質断片、アミノ酸ペプチド又はアプタマーの1つ以上から選択される標的リガンドに結合体化する。
【0214】
幾つかの実施形態において、本明細書中で記載される標的化ナノ粒子は、単一の標的リガンドに結合体化する。本明細書中で記載される幾つかの実施形態において、標的化ナノ粒子は、下位部分Aについての式(IX、X又はXI)のいずれか1つと下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つとの組み合わせから形成されるポリオール含有ポリマーを有し得、これは、次いで、式XXXI、XXXIII、XXXIV、又はXXXVのいずれか1つに対応するボロン酸含有ポリマーとカップリングされ得る。これは、さらに、タンパク質、タンパク質断片、アミノ酸ペプチド又はアプタマーから選択される単一の標的リガンドに結合体化する。
【0215】
幾つかの実施形態において、本明細書中で記載される標的化ナノ粒子は、単一の標的リガンドに結合体化する。本明細書中で記載される幾つかの実施形態において、標的化ナノ粒子は、下位部分Aについての式(IX、X又はXI)のいずれか1つと下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つとの組み合わせから形成されるポリオール含有ポリマーを有し得、これは、次いで、式XXXI、XXXIII、XXXIV、又はXXXVのいずれか1つに対応する、任意の5、4、3、2又は1のボロン酸含有ポリマーとカップリングされ得る。これはさらに、抗体、細胞性レセプター、細胞性レセプターについてのリガンド、又はタンパク質又はその一部を有するキメラタンパク質に結合体化される。
【0216】
本明細書中で記載される幾つかの実施形態において、標的化ナノ粒子は、下位部分Aについての式(IX、X又はXI)のいずれか1つと下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つとの組み合わせから形成されるポリオール含有ポリマーを有し得、これは、次いで、式XXXI、XXXIII、XXXIV、又はXXXVのいずれか1つに対応するボロン酸含有ポリマーとカップリングされ得る。これはさらに、単一の抗体、細胞性レセプター、細胞性レセプターのリガンド、又はタンパク質もしくはその一部を有するキメラタンパク質に結合体化される。
【0217】
幾つかの実施形態において、本明細書中で記載される標的化ナノ粒子は、単一の標的リガンドに結合体化する。本明細書中で記載される幾つかの実施形態において、標的化ナノ粒子は、下位部分Aについての式(IX、X又はXI)のいずれか1つと下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つとの組み合わせから形成されるポリオール含有ポリマーを有し得、これは、次いで、式XXXI、XXXIII、XXXIV、又はXXXVのいずれか1つに対応するボロン酸含有ポリマーとカップリングされ得る。これはさらに、タンパク質、タンパク質断片、アミノ酸ペプチド又はアプタマーから選択される単一の標的リガンドに結合体化され、ここで、得られた標的化ナノ粒子は、単一の標的リガンドのみにしか結合体化されない。
【0218】
幾つかの実施形態において、本明細書中で記載される標的化ナノ粒子は、単一の標的リガンドに結合体化される。本明細書中で記載される幾つかの実施形態において、標的化ナノ粒子は、下位部分Aについての式(IX、X又はXI)のいずれか1つと下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つとの組み合わせから形成されるポリオール含有ポリマーを有し得、これは、次いで、式XXXI、XXXIII、XXXIV、又はXXXVのいずれか1つに対応する、任意の5、4、3、2又は1のボロン酸含有ポリマーとカップリングされ得る。これはさらに、抗体、細胞性レセプター、細胞性レセプターのリガンド、又はタンパク質又はその一部を有するキメラタンパク質に結合体化される。ここで、得られた標的化ナノ粒子は、単一の標的リガンドのみにしか結合体化されない。
【0219】
本明細書中で記載される幾つかの実施形態において、標的化ナノ粒子は、下位部分Aについての式(IX、X又はXI)のいずれか1つと下位部分Bについての式(式XXIII又はXIV)のいずれか1つとの組み合わせから形成されるポリオール含有ポリマーを有し得、これは、次いで、式XXXI、XXXIII、XXXIV、又はXXXVのいずれか1つに対応するボロン酸含有ポリマーとカップリングされ得る。これはさらに、単一の抗体、細胞性レセプター、細胞性レセプターのリガンド、又はタンパク質又はその一部を有するキメラタンパク質に結合体化され、ここで、得られた標的化ナノ粒子は、単一の標的リガンドにのみ結合体化される。
【0220】
本明細書中で記載される標的化ナノ粒子は、さらに、化合物を含み得る。幾つかの実施形態において、この化合物は、1つ以上の治療剤、例えば低分子化学療法剤もしくはポリヌクレオチドであってもよい。幾つかの実施形態において、このポリヌクレオチドは、DNA、RNA又は干渉RNA(例えばshRNA、siRNA又はmiRNA)のいずれか1つ以上であってもよい。幾つかの実施形態において、低分子化学療法剤は、カンプトテシン、エポチロン又はタキサンの1つ以上であってもよい。本明細書中で記載される標的化ナノ粒子は、ポリヌクレオチドと1つ以上の低分子化学療法剤との組み合わせを含んでもよい。
【0221】
本明細書中で記載される構成要素を用いて産生され得る種々の型のナノ粒子および標的化ナノ粒子を考察してきたが、以下の詳細な実施形態が、産生され得る。1つの実施形態において、記載の標的化ナノ粒子は、ムチン酸含有ポリマー、カンプトテシン、エポチロン、タキサン又は干渉RNA配列から選択される治療剤、可逆的共有結合にてムチン酸ポリマーとカップリンされた式XXXI、XXXIII、XXXIV又はXXXVを有するフェニルボロン酸含有ポリマーを有する。この標的化ナノ粒子は、フェニルボロン酸含有ポリマーをナノ粒子の外部環境に提示するように構成され、ここで、このフェニルボロン酸含有ポリマーは、ナノ粒子と反対の末端において標的リガンドに結合体化し、ここで、この標的化ナノ粒子は、1つの単一標的リガンドを含む。
【0222】
1つの実施形態において、記載の標的化ナノ粒子は、ムチン酸含有ポリマー、カンプトテシン、エポチロン、タキサン又は干渉RNA配列から選択される治療剤、可逆的共有結合にてムチン酸ポリマーとカップリンされた式XXXI、XXXIII、XXXIV又はXXXVを有するフェニルボロン酸含有ポリマーを有する。この標的化ナノ粒子は、フェニルボロン酸含有ポリマーをナノ粒子の外部環境に提示するように構成され、ここで、このフェニルボロン酸含有ポリマーは、ナノ粒子と反対の末端において標的リガンドに結合体化し、ここで、この標的化ナノ粒子は、1つの単一抗体を含む。
【0223】
1つの実施形態において、記載の標的化ナノ粒子は、ムチン酸含有ポリマー、カンプトテシン、エポチロン、タキサン又は干渉RNA配列から選択される治療剤、可逆的共有結合にてムチン酸ポリマーとカップリンされた式XXXI、XXXIII、XXXIV又はXXXVを有するフェニルボロン酸含有ポリマーを有する。この標的化ナノ粒子は、フェニルボロン酸含有ポリマーをナノ粒子の外部環境に提示するように構成され、ここで、このフェニルボロン酸含有ポリマーは、ナノ粒子と反対の末端において、ヒト抗体、マウス抗体、ウサギ抗体、非ヒト霊長類抗体、イヌ抗体、又はげっ歯類抗体、又はこれらの任意の2つの抗体から成るキメラ抗体(ここで、抗体は、IgG,IgD,IgM,IgE,IgA又はIgYのイソ型のいずれか1つである)のいずれか1つに結合体化し、ここで、この標的化ナノ粒子は、1つの単一抗体を含む。
【0224】
1つの実施形態において、記載の標的化ナノ粒子は、ムチン酸含有ポリマー、カンプトテシン、エポチロン、タキサン又は干渉RNA配列から選択される治療剤、可逆的共有結合にてムチン酸ポリマーとカップリンされた式XXXI、XXXIII、XXXIV又はXXXVを有するフェニルボロン酸含有ポリマーを有する。この標的化ナノ粒子は、フェニルボロン酸含有ポリマーをナノ粒子の外部環境に提示するように構成され、ここで、このフェニルボロン酸含有ポリマーは、ナノ粒子と反対の末端において細胞性レセプターに結合体化し、ここで、この標的化ナノ粒子は、1つの単一の細胞性レセプターを含む。
【0225】
1つの実施形態において、記載の標的化ナノ粒子は、ムチン酸含有ポリマー、カンプトテシン、エポチロン、タキサン又は干渉RNA配列から選択される治療剤、可逆的共有結合にてムチン酸ポリマーとカップリンされた式XXXI、XXXIII、XXXIV又はXXXVを有するフェニルボロン酸含有ポリマーを有する。この標的化ナノ粒子は、フェニルボロン酸含有ポリマーをナノ粒子の外部環境に提示するように構成され、ここで、このフェニルボロン酸含有ポリマーは、ナノ粒子と反対の末端においてレセプターリガンドに結合体化し、ここで、この標的化ナノ粒子は、1つの単一レセプターリガンドを含む。
【実施例】
【0226】
本明細書中で記載される方法システムは、以下の実施例においてさらに説明される。これは、説明のために提供されるが、限定を企図しない。当業者は、核酸検出および他の標的、例えばタンパク質、抗原、真核生物細胞又は原核生物細胞などの検出の方法について詳細に記載される、特徴の適応性を理解する。
【0227】
全ての化学試薬は、商業的供給者から得られ、さらなる精製なしに入手したままに使用された。ポリマーサンプルを、示差屈折率(RI)検出器、示差粘度計および低角光散乱検出器から成るTDA 302三重検出器アレイを備えたViscotek GPC Systemにおいて分析した。7.5%酢酸溶液を、流速1mL/分にて、溶離液として用いた。
【0228】
ホタルルシフェラーゼ遺伝子を含むプラスミドであるpGL3を、pGL3を発現する細菌から抽出し、精製した。siGL3を、Integrated DNA Technologies(配列を以下に提供する)から購入した。siCON1(配列を以下に提供する)を、Dharmaconから購入した。HeLa細胞を使用し、カチオン性ムチン酸ジアミン-DMSポリマーにより、pDNA又はsiRNA送達の有効性を決定した。
【0229】
【0230】
実施例1:ムチン酸ジメチルエステルの合成、(1)
5g(22.8mmol)のムチン酸(Aldrich)を、120mLのメタノールおよび0.4mLの濃硫酸を含む500mL丸底フラスコに加えた。この混合物を85℃にて一晩、絶え間ない撹拌の下で還流させた。この混合物を、その後濾過し、メタノールで洗浄し、次いで、80mLメタノールおよび0.5mLトリエチルアミンの混合物から再結晶化させた。真空下で一晩の乾燥の後、8.0g(33.6mmol,71%)のムチン酸ジメチルエステルを得た。1H NMR((CD3)2SO)δ 4.88~4.91(d,2H),4.78~4.81(m,2H),4.28~4.31(d,2H),3.77~3.78(d,2H),3.63(s,6H).ESI/MS(m/z):261.0[M+Na]+
【0231】
【0232】
実施例2:N-BOC-保護ムチン酸ジアミン、(2)
8g(33.6mmol)のムチン酸ジメチルエステル(1;実施例1)、12.4mL(88.6mmol)のトリエチルアミンおよび160mLのメタノールの混合物を、絶え間なく撹拌した500mLの丸底フラスコ内で還流下で85℃にて、0.5時間にわたって加熱し、その後、メタノール(32mL)中に溶解した14.2g(88.6mmol)N-BOCジアミン(Fluka)を加えた。この反応懸濁液を、次いで、還流に戻した。一晩の還流の後、この混合物を濾過し、メタノールで洗浄し、メタノールから再結晶させ、真空下で乾燥させて、9.4g(19mmol,57%)のN-BOC-保護ムチン酸ジアミンを得た。1H NMR((CD3)2SO)δ 7.66(m,2H),6.79(m,2H),5.13~5.15(d,2H),4.35~4.38(d,2H),4.08~4.11(m,2H),3.78~3.80(d,2H),2.95~3.15(m,8H),1.38(s,18).ESI/MS(m/z):517.1[M+Na]+
【0233】
【0234】
実施例3:ムチン酸ジアミンの合成、(3)
8g(16.2mmol)のN-BOC-保護ムチン酸ジアミン(2;実施例2)を、メタノール(160mL)中の3M HClを含む500mL丸底フラスコに移し、一晩85℃にて、絶え間なく撹拌したがら還流させた。その後、沈殿物を濾過し、メタノールで洗浄して一晩真空下で乾燥させ、5.7g(15.6mmol,96%)のムチン酸ジアミンを得た。1H NMR((CD3)2SO)δ 7.97(m,8H),5.35~5.38(m,2H),4.18~4.20(m,2H),3.82(m,2H),3.35~3.42(m,8H),2.82~2.90(m,4H).ESI/MS(m/z):294.3[M]+,317.1[M+Na]+,333.0[M+K]+
【0235】
【0236】
実施例4:ムチン酸ジアミン-DMSコポリマー(MAP)、(4)
1.5mLエッペンドルフ管に、0.8mLの0.1M NaHCO3中の実施例3の85.5mg(0.233mmol)のビス(ヒドロクロリド)塩を、入れた。ジメチルスベリミデート・2HCl(DMS,Pierce Chemical Co.,63.6mg,0.233mmol)を添加し、この溶液をボルテックスし、遠心分離して、構成要素を溶解させた。得られた混合物を、室温にて15時間にわたって撹拌した。次いで、この混合物を、8mLの水で希釈し、1N HClの添加によって、pHを4にした。次いで、この溶液を、3500MWCO透析膜(Pierce pleated dialysis tubing)を用いて、ddH2Oにおいて24時間にわたって透析した。透析溶液を、乾燥するまで凍結乾燥させ、49mgの白いふわふわした粉末を得た。1H NMR(500MHz,dDMSO)δ 9.15(bs),7.92(bs),5.43(bs),4.58(bs),4.17(bs),3.82(bs),3.37(bs),3.28(bs),2.82(bs),2.41(bs),1.61(bs),1.28(bs).13C NMR(126MHz,dDMSO)δ 174.88(s,1H),168.38(s,1H),71.45(s,4H),71.22(s,3H),42.34(s,2H),36.96(s,3H),32.74(s,3H),28.09(s,4H),26.90(s,4H).Mw[GPC]=2520,Mw/Mn=1.15.
【0237】
【0238】
ポリマー4は、カチオン性A-B型(反復構造は、ABABAB...である)ポリオール含有ポリマーの例である。
【0239】
実施例5:ボロン酸-アミド-PEG5000,(5)
実施例4のポリマーは、核酸、例えばsiRNAと共に集められ、ナノ粒子を形成する。これらのナノ粒子は、哺乳動物において使用される立体安定性を有する必要があり、必要に応じて、これらは、含まれる標的薬剤を有し得た。これらの2つの機能を行うために、このナノ粒子は、立体安静性およびPEG-標的リガンドのために、PEGで装飾されてもよい。このようにするために、ボロン酸を含有するPEG化合物が、調製される。例えば、ボロン酸含有PEGは、以下の実施例に従って、合成され得る。
【0240】
332mgの4-カルボキシフェニルボロン酸(2mmol)を、8mLのSOCl2中に溶かした。これに、数滴のDMFを加え、この混合物を、アルゴン下で2時間還流した。過剰なSOCl2を減圧下で除去し、得られた個体を、10mLの無水ジクロロメタン中に溶かした。この溶液に、500mgのPEG5000-NH2(2mmol)および418μLの5mLのジクロロメタン中に溶かしたトリエチルアミン(60mmol)を、0℃にてアルゴン下で溶解した。この混合物を、室温まで加温し、撹拌を一晩つづけた。ジクロロメタン中に溶かした溶媒を、減圧下で除去し、そして得られた液体を、20mLのジエチルエーテルで析出させた。沈殿物を、濾過し、乾燥させ、そしてddH2O中で再溶解させた。次いで、この水溶液を、0.45μmフィルターで濾過し、3500MWCO透析膜(Pierce pleated dialysis tubing)で、ddH2O中に24時間にわたって透析した。透析した溶液を、乾燥するまで凍結乾燥した。1H NMR(300MHz,dDMSO)δ 7.92-7.77(m),4.44(d),4.37(t),3.49(m),2.97(s)。
【0241】
【0242】
実施例6:ボロン酸-ジスルフィド-PEG5000,(6)
実施例5のPEG化合物の(還元条件下で)開裂可能なバージョンもまた、以下のように合成され得る。
【0243】
250mgのPEG5000-SH(0.05mmol,LaySanBio Inc.)を、スターラーを備えたガラスバイアルに加えた。これに、4mLのメタノール中に溶解した110mgのアルドリチオール-2(0.5mmol,Aldrich)を、加えた。この溶液を、1mLのメタノール中の77mgのメルカプトフェニルボロン酸(0.5mmol,Aldrich)を加えたのち、室温にて2時間にわたって撹拌した。得られた溶液を、さらに2時間、室温にて撹拌した。メタノールを、真空下で除去し、そして残渣を、2mLのジクロロメタン中に溶かした。18mLのジエチルエーテルを、ジクロロメタン溶液に加え、この混合物を、1時間にわたって静置した。生じた析出物を、遠心分離を介して収集し、ジエチルエーテルで数回洗浄して、乾燥させた。この乾燥個体を水中に再溶解し、0.45μmフィルターで濾過し、3500MWCO透析膜(Pierce pleated dialysis tubing)で、ddH2O中に15時間にわたって透析した。透析した溶液を、乾燥するまで凍結乾燥した。1H NMR(300MHz,dDMSO)δ 8.12-8.00(m),7.83-7.72(m),7.72-7.61(m),7.61-7.43(m),3.72(d,J=5.4),3.68-3.15(m),3.01-2.83(m)。
【0244】
【0245】
実施例7:(2,3,5,6)-テトラフルオロフェニルボロン酸-PEG5000の合成、(7)
実施例5のボロン酸含有PEG化合物のフッ化バージョンを、合成し得、治療用ナノ粒子を有する画像化剤として使用できる。画像化のためのフッ素原子は、以下に記載され説明されるように、組み込まれ得る。
【0246】
(2,3,5,6)-フルオロカルボキシフェニルボロン酸を、過剰なSOCl2(約100等量)中に溶解し、これに、数滴のDMFを加えた。この混合物を、アルゴン下で2時間にわたって還流した。過剰なSOCl2を、減圧下で除去し、得られた残渣を、無水ジクロロメタン中に溶かした。この溶液に、ジクロロメタン中に溶かしたPEG5000-NH2(1等量)およびトリエチルアミン(30等量)を、0℃にてアルゴン下で加えた。得られた混合物を、室温まで加温し、撹拌を一晩つづけた。ジクロロメタン溶媒を、減圧下で除去し、そして得られた液体を、ジエチルエーテルで析出させた。沈殿物を、濾過し、乾燥させ、そしてddH2O中で再溶解させた。次いで、この水溶液を、0.45μmフィルターで濾過し、3500MWCO透析膜(Pierce pleated dialysis tubing)で、ddH2O中に24時間にわたって透析した。透析した溶液を、乾燥するまで凍結乾燥した。
【0247】
【0248】
フッ素含有化合物は、ナノ粒子中に19Fを提供するために有用である。19Fは、標準患者MRIを用いて磁気共鳴分光学によって検出され得る。19Fの添加は、ナノ粒子の画像化を可能にする(単なる画像化のためにされても、治療剤の添加により画像化および治療を可能にしてもよい)。
【0249】
実施例8:(2,3,5,6)-テトラフルオロフェニルボロン酸-ジスルフィド-PEG5000の合成、(8)
実施例5のボロン酸含有開裂可能PEG化合物のフッ化バージョンを、合成し得、治療用ナノ粒子を有する画像化剤として使用できる。画像化のためのフッ素原子は、以下に記載され説明されるように、組み込まれ得る。
【0250】
250mgのPEG5000-SH(0.05mmol,LaySanBio Inc.)を、スターラーを備えたガラスバイアルに加える。これに、4mLのメタノール中に溶解した110mgのアルドリチオール-2(0.5mmol,Aldrich)を、加える。この溶液を、1mLのメタノール中の77mgの(2,3,5,6)-フルオロ-4-メルカプトフェニルボロン酸(0.5mmol)を加えたのち、室温にて2時間にわたって撹拌する。得られた溶液を、さらに2時間、室温にて撹拌する。メタノールを、真空下で除去し、そして残渣を、2mLのジクロロメタン中に溶かした。18mLのジエチルエーテルを、ジクロロメタン溶液に加え、この混合物を、1時間にわたって静置する。生じた析出物を、遠心分離を介して収集し、ジエチルエーテルで数回洗浄して、乾燥させる。この乾燥個体を水中に再溶解し、0.45μmフィルターで濾過し、3500MWCO透析膜(Pierce pleated dialysis tubing)で、ddH2O中に15時間にわたって透析する。透析した溶液を、乾燥するまで凍結乾燥する。
【0251】
【0252】
実施例9:ボロン酸-PEG
5000-トランスフェリンの合成、(9)
標的薬剤は、例えば、トランスフェリン付加を参照する、
図12に図解されるアプローチに従って、実施例5~8の化合物におけるボロン酸由来のPEGの他の末端に置かれてもよい。
【0253】
従って、核酸を治療剤として含むシステムの構成要素は、(標的リガンドは、トランスフェリン(
図12)、抗体、又は抗体断片の様なタンパク質、RGD又はLHRHの様なペプチド、葉酸又はガラクトースの様な低分子、などであってもよい)であってもよい。ボロン酸ペグ化標的薬剤は、以下のように合成され得る。
【0254】
詳細には、
図12において図解されるアプローチに従って、ボロン酸PEG
5000-トランスフェリンを合成するために、以下の手順を実施した。10mg(0.13μmol)ノヒトホロ-トランスフェリン(鉄リッチ)(Sigma Aldrich)の、1mLの0.1M PBS緩衝液(p.H.7.2)中溶液を、3.2mgのOPSS-PEG
5000-SVA(5等量,0.64μmol,LaysanBio Inc.)に添加した。得られた溶液を、室温で2時間にわたって撹拌した。ペグ化トランスフェリンを、未反応のOPSS-PEG
5000-SVAから、Ultracel 50,000MWCO(Amicon Ultra-4,Millipore)を用いて、並びに未反応のトランスフェリンから、ゲル濾過カラムG3000SWxl(Tosoh Biosep)を用いて精製した(HPLCおよびMALDI-TOF分析によって確認した)。次いで、100μL中100μgのOPSS-PEG
5000ペグ化トランスフェリンを、室温で、20μLの4-メルカプトフェニルボロン酸(1μg/μL,20μg,100等量)と共に、1時間にわたって室温でインキュベートした。インキュベーションの後、この溶液を、YM-30,000NMWIデバイス(Millipore)で2回透析し、過剰な4-メルカプトフェニルボロン酸およびピリジル-2-チオン副産物を除去した。
【0255】
実施例10:MAP-核酸粒子の処方-ゲルシフトアッセイ
図1において図示されるように、DNA分解酵素およびRNA分解酵素非含有水中の1μgのプラスミドDNA又はsiRNA(0.1μg/μL,10μL)を、10μLのMAPと、DNA分解酵素およびRNA分解酵素非含有水中の種々の濃度で混合し、0.5、1、1.5、2、2.5および5の電荷比(ポリマー上の「+」電荷対核酸上の「-」電荷)を得た。得られた混合物を、室温にて30分間にわたってインキュベートした。
図3および4に示されるように、20μLの溶液の10μLを、1%アガロースゲル上に、3.5μLのローディング緩衝液と共にローディングし、ゲルを、80Vにて45分間にわたって電気泳動した。ナノ粒子中に含まれない核酸は、ゲル上を移動する。これらの結果は、ナノ粒子内の核酸含有物について必須の電荷比についての誘導を与える。
【0256】
実施例11:MAP-核酸粒子の粒子サイズおよびゼータ電位
DNA分解酵素およびRNA分解酵素非含有水中1μgのプラスミドDNA(0.1μg/μL,10μL)を、10μLのMAPと、DNA分解酵素およびRNA分解酵素非含有水中の種々の濃度で混合し、0.5、1、1.5、2、2.5および5の電荷比を得た。得られた混合物を、室温にて30分間にわたってインキュベートした。次いで、20μLの混合物を、粒子サイズ測定のために、DNA分解酵素およびRNA分解酵素非含有水で、70μLまで希釈した。次いで、この70μL溶液を、ゼータ電位測定のために、1mM KClで1400μLまで希釈した。粒子サイズおよびゼータ電位の測定を、ZetaPals動的光拡散(DLS)装置(Brookhaven Instruments)を用いて、行った。結果を
図5に示す。
【0257】
実施例12:ボロン酸PEG
5kを用いたペグ化による粒子サイズ安定化
図2において図示されるように、DNA分解酵素およびRNA分解酵素非含有水中の2μgのプラスミドDNA(0.45μg/μL,4.4μL)を、DNA分解酵素およびRNA分解酵素非含有水中80μLに、希釈した。このプラスミド溶液を、4.89μgのMAP(0.5μg/μL,9.8μL)と混合し、また、DNA分解酵素およびRNA分解酵素非含有水中80μLに希釈して、3+/-の電荷比および0.0125μg/μLの最終プラスミド濃度を得た。得られた混合物を、室温にて30分間にわたってインキュベートした。この溶液に、480μgのボロン酸PEG
5K(化合物6;実施例6)、(20μg/μL,24μL)を加えた。次いで、この混合物を、さらに30分間インキュベートし、DNA分解酵素およびRNA分解酵素非含有水中で、0.5mL 100,000MWCO膜(BIOMAX,Millipore Corporation)を用いて2回透析し、DNA分解酵素およびRNA分解酵素非含有水160μL中で再構築した。この溶液の半分を、ゼータ電位測定のために、1.4mLの1mM KClで希釈した(
図6)。BA含有ナノ粒子のゼータ電位は、これを含まないナノ粒子よりも低いゼータ電位を示したことに、留意されたい。これらの結果は、BA含有ナノ粒子は、ナノ粒子の外側にBAを局在させるという結論を、支持する。もう半分を、粒子サイズを測定するために用いた。粒子サイズを、10.2μLの10X PBSを添加して最終的に1X PBS中90.2μLの溶液を得た後の5分間について、毎分測定した。次いで、
図7に示されるように、粒子サイズを、別の10分間にわたって、毎分測定した。非粒子構成要素から(濾過によって)分離されたBA含有ナノ粒子は、PBS中で安定であるが、BAを有さない粒子は、安定ではない。これらの結果は、BA含有ナノ粒子は、PBS中で凝集に対し安定的であるので、その外側に局在するBAを有するという結論を、支持する。
【0258】
実施例13:MAP/pDNA粒子のHeLa細胞内へのトランスフェクション
HeLa細胞を、トランスフェクションの48時間前に、ウェルあたり20,000個の細胞で、24ウェルプレート内にまき、10% FBSを補充した培地中で成長させた。MAP粒子を、1μgのpGL3を200μLのOpti-MEM I中に、種々のポリマー対pDNAの電荷比で含むように処方した(実施例9を参照されたい)。成長培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、そして粒子処方物を加えた。その後、細胞を、37℃、5% CO
2にて5時間インキュベートした後、800μLの10% FBSを補充した成長培地を加えた。48時間のインキュベーションの後、細胞の画分を、MTSアッセイを用いた細胞生存率について分析した。残った細胞を、100μLの1Xルシフェラーゼ培養細胞溶解試薬中で溶解した。ルシフェラーゼ活性を、10ulの細胞溶解物に100μLのルシフェラーゼアッセイ試薬を加えることによって決定し、生物蛍光を、Monolight luminometerを用いて定量した。その後、ルシフェラーゼ活性を、10,000個の細胞あたりの相対光単位(RLU)として報告する。結果を、
図8および
図9に示す。
【0259】
実施例14:MAP/pDNA粒子および/又はsiRNA粒子のHeLa細胞内への同時トランスフェクション
HeLa細胞を、トランスフェクションの48時間前に、ウェルあたり20,000個の細胞で、24ウェルプレート内にまき、10% FBSを補充した培地中で成長させた。MAP粒子を、1μgのpGL3および50nMのsiGL3を、5+/-の電荷比で200μLのOpti-MEM I中に含むように処方した。pGL3又はpGL3およびsiCONのみを含む粒子を、対照として使用した。成長培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、そして粒子処方物を加えた。その後、細胞を、37℃、5% CO
2にて5時間インキュベートした後、800μLの10% FBSを補充した成長培地を加えた。48時間のインキュベーション後、細胞を、ルシフェラーゼ活性および細胞生存率について、実施例12に記載したようにアッセイした。結果は
図10に示される。RLUは、siGL3(正しい配列)によるトランスフェクションにおいてより低く、siGL3およびpGL3の両方が、同時送達されなければならない。
【0260】
実施例15:MAP/siGL3のHeLa細胞内へのトランスフェクション
HeLa細胞を、トランスフェクションの48時間前に、ウェルあたり20,000個の細胞で、24ウェルプレート内にまき、10% FBSを補充した培地中で成長させた。MAP粒子を、50および100nMのsiGL3を、5+/-の電荷比で200μLのOpti-MEM I中に含むように処方した。成長培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、そして粒子処方物を加えた。その後、細胞を、37℃、5% CO
2にて5時間インキュベートした後、800μLの10% FBSを補充した成長培地を加えた。48時間のインキュベーション後、細胞を、ルシフェラーゼ活性および細胞生存率について、実施例12に記載したようにアッセイした。結果は
図11に示される。RLUは、siGL3の濃度の上昇に伴って低下するので、これらのデータは、内在性遺伝子の疎外が起こり得ることを示唆する。
【0261】
実施例16:ムチン酸ジヨージドの合成、(10)
1g(2.7mmol)のムチン酸ジアミン(実施例3)を、3.8mL(27.4mmol)のトリエチルアミンおよび50mLの無水DMFと混合し、その後、1.2mL(13.7mmol)ヨードアセチルクロリドの滴下を、250mL丸底フラスコにおいて行った。この混合物を、絶え間なく撹拌しながら、室温で一晩反応させた。その後、この溶媒を、バキュームポンプによって除去し、生成物を濾過し、メタノールで洗浄し、真空下で乾燥させて、0.8g(1.3mmol,46%)のムチン酸ジヨージドを得た。1H NMR((CD3)2SO)δ 8.20(s 2H),2H),7.77(s,2H),4.11(m,2H),4.03(m,2H),3.79(m,2H),3.11-3.17(m,2H),1.78(d,2H).ESI/MS(m/z):652.8[M+Na]+
【0262】
【0263】
実施例17:ムチン酸ジシステインの合成、(11)
7mLの0.1M脱気炭酸ナトリウムを、17mgのL-システインおよび0.4gのムチン酸ジヨージドに加えた。得られた懸濁液を、150℃で5時間にわたり、溶液が透明になるまで還流させた。次いで、この混合物を、室温まで冷やし、1N HClでpH 3に調整した。次いで、アセトンのゆっくりした添加を、生成物の析出のために行った。濾過、アセトンによる洗浄、およびバキューム乾燥の後、60mgの粗生成物を得た。
【0264】
【0265】
実施例17:ムチン酸ジシステインの合成、(11)
20mLの、pH 7.5における50mL丸底フラスコ中の0.1M脱気リン酸ナトリウム緩衝液を、0.38gのL-システイン(3.2mmol)および0.40g(0.6mmol)のムチン酸ジヨージドに加えた。得られた懸濁液を、75℃にて一晩還流させ、室温まで冷やして、凍結乾燥させた。その後、80mLのDMFを、この凍結乾燥した明るい茶色の粉末に加え、不溶性の過剰な試薬およびリン酸塩の可溶の生成物からの分離を、濾過によって達成した。DMFを、減圧下で除去し、そしてこの生成物をバキューム乾燥して、12mg(0.02mmol,3%)のムチン酸ジシステインを得た。
【0266】
【0267】
実施例18:ポリマー合成、(ポリ(ムチン酸-DiCys-PEG))(12)
12mg(21.7μmol)のムチン酸ジシステインおよび74mg(21.7μmol)のPEG-DiSPA 3400を、真空下で乾燥させ、その後、0.6mLの無水DMSOを、アルゴン下で、2首10mL丸底フラスコにおいて加えた。10分間の撹拌の後、9μL(65.1μmol)の無水DIEAを、アルゴン下で反応容器に移した。この混合物を、アルゴン下で一晩撹拌した。次いで、このポリマー含有溶液を、10kDa膜遠心分離機を用いて透析し、そして凍結乾燥して、47mg(58%)のポリ(ムチン酸-DiCys-PEG)を得た。
【0268】
【0269】
このポリオール含有ポリマーは、アニオン性ABポリマーである。
【0270】
実施例19:薬物(カンプトテシン、CPT)ムチン酸ポリマーへの共有結合、(13)
10mg(2.7μmolの反復単位)のポリ(ムチン酸-DiCys-PEG)を、ガラス瓶内の1.5mLの無水DMSO中に溶解した。10分間の撹拌の後、1.1μLのDIEA(6.3μmol)、3.3mg(6.3μmol)のTFA-Gly-CPT、1.6mg(8.1μmol)のEDCおよび0.7mg(5.9μmol)のNHSを、反応混合物に加えた。8時間にわたる撹拌の後、1.5mLのエタノールを加え、溶媒を減圧下で除去した。析出物を、水中に溶解し、そして不要な物質を、0.2μmフィルターを通した濾過によって除去した。次いで、ポリマー溶液を、10kDa膜を介して水に対して透析し、その後、凍結乾燥して、ポリ(ムチン酸-DiCys-PEG)-CPT結合体を得た。
【0271】
【0272】
実施例20:CPT-ムチン酸ポリマー(13)を有するナノ粒子の水中における処方(20)
ポリ(ムチン酸-DiCys-PEG)およびポリ(ムチン酸-DiCys-PEG)-CPT結合体の有効な径を、このポリマーを再蒸留水中に処方し(0.1~10mg/mL)、ZetaPALS(Brookhaven Instrument Co)装置を用いた動的光拡散(DLS)を介して評価した。各1分間の連続3回のランを、その後記録し、平均化した。両化合物のゼータ電位を、1.1mM KCl溶液中で、ZetaPALS(Brookhaven Instrument Co)装置を用いて測定した。次いで、0.012の標的残余における連続10回の自動化したランを行い、結果を平均化した(
図4)。詳細には、これらの2つの分布を、ポリ(ムチン酸-DiCys-PEG)-CPT結合体について測定し、主要な分布は、57nm(全粒子集団の60%)であった。2番目に少ない分布もまた、233nmにおいて測定される。
【0273】
実施例21:CPT-ムチン酸ポリマーを有するボロン酸-ペグ化ナノ粒子(13)ボロン酸-ジスルフィド-PEG5000(6)の水中における処方
ボロン酸ペグ化ポリ(ムチン酸-DiCys-PEG)-CPTナノ粒子を、このポリマーを再蒸留水中に0.1mg/mLの濃度に溶解し、その後、やはり水中のポリマー6(BA-PEG)を添加して、ポリ(ムチン酸-DiCys-PEG)-CPT結合体におけるムチン酸糖上のPBA-PEG対ジオールの比を1:1にする。この混合物を、30分間にわたってインキュベートし、その後、有効な径およびゼータ電位を、ZetaPALS(Brookhaven Instrument Co)装置を用いて測定する。
【0274】
実施例22:マウスにおけるpDNA送達のための標的化ナノ粒子
プラスミドpApoE-HCRLucは、ルシフェラーゼを発現する遺伝子を含み、肝臓特異的プロモーターの制御下にある。ポリマー(MAP)4(0.73mg)、ポリマー6(73mg)およびポリマー9(0.073mg)を、5mLの水中で合わせ、次いで、1.2mLのpApoE-HCRLucプラスミド含有水を、添加した(+3のポリマー4対プラスミドの電荷比を得る)。この粒子を、連続的スピン濾過およびその後のD5Wの添加によって、D5W(水中5%グルコース)中に置いた(水中にある開始処方物から始める)。ヌードマウスに、Hepa-1-6肝癌細胞を移植し、腫瘍を、約200mm3の大きさになるまで増殖させた。標的化ナノ粒子の注射を、5mg/プラスミドkgマウスに等しい量で、尾静脈においてi.v.で行った。マウスを、注射の24時間後に画像化した。マウスは、毒性の兆候を示さず、腫瘍の領域においてルシフェラーゼ発現が検出され、肝臓の領域では検出されなかった。
【0275】
実施例23:PBA-PEGおよびニトロPBA-PEGの合成およびpKaの測定
安定化した標的化ナノ粒子を調製するため、ボロン酸とMAPとの間の可逆的共有結合特性を用いた。フェニルボロン酸(PBA)のpKaは、8.8の高さである。pKaを低下させるため、フェニル環において電子吸引性基を有するPBAを、ホウ素原子の酸性度を増すために使用した。市販の3-カルボキシPBAおよび3-カルボキシ5-ニトロPBAを、塩化オキサリルを用いて塩化アシルに変換した。次いで、これらの塩化アシル種を、NH2-PEGと反応させて、PBA-PEGおよびニトロPBA-PEGをそれぞれ形成した。DMFおよびDIPEAの塩基の付加は、合成反応を進めるために必要であった。しかし、これらの塩基の存在は、酸性のPBAによって四面体付加物形成を生じた。これらの付加物を除くため、0.5N HClにおける作業およびその後の水に対する透析による中性pHへの平衡化を、行った。
【0276】
PBA-PEG 200mg(1.21mM)の合成のために、5mLの無水テトラヒドロフラン中に溶解した3-カルボキシフェニルボロン酸を、アルゴン下で、18.7μl(0.24mM)の無水ジメチルホルムアミドに加えた。反応容器を、氷浴に移し、195μl(2.89mM)の塩化オキサリルを、アルゴン下でゆっくりと加えた。反応を、ベント下で、絶え間ない撹拌と共に、室温で2時間進めた。溶媒および過剰な試薬を、真空下で除去した。37mg(0.2mM)の絵れれた乾燥塩化アシル化合物を、15mlの無水ジクロロメタン中に、アルゴン下で溶かした。次いで、500mg(0.1mM)のNH2-PEG5kDa-CO2Hおよび52μl(0.3mM)の乾燥DIPEAを、アルゴン下で加えた。絶え間ない撹拌の下での一晩の反応の後、溶媒を、真空下で除去し、乾燥した生成物を、0.5N HCl中で再構築した。この溶液を、0.2μmフィルター(Acrodisc(登録商標))を通し、一定のpHを獲得するまで、3kDa MWCO膜フィルターデバイス(Amicon(商標))を用いて、水に対して透析した。次いで、上清を、0.2μmフィルター(Acrodisc(登録商標))を用いて濾過し、凍結乾燥して、377mg(73%)の PBA-PEG-CO2Hを得た。1H NMR((CD3)2SO)δ 12.52(s,1H),8.39(t,1H),8.22(s,1H),8.14(s,2H),7.88(d,1H),7.82(d,1H),7.39(t,1H),3.99(s,2H),3.35-3.62(PEGピーク).MALDI-TOF(m/z):5600g/mol(NH2-PEG5kDa-CO2H,5400g/mol)。
【0277】
【0278】
ニトロPBA-PEG-CO2Hの合成を、PBA-PEG-CO2Hについて、開始物質が3-カルボキシ5-ニトロフェニルボロン酸であるほかは、同じように実施した。この反応は、393mg(76%)のニトロPBA-PEG-CO2Hを生じた。1H NMR((CD3)2SO)δ 12.52(s,1H),8.89(t,1H),8.72(s,1H),8.68(s,1H),8.64(s,1H),8.61(s,2H),3.99(s,2H),3.35-3.62(PEGピーク).MALDI-TOF(m/z):5600g/mol(NH2-PEG5kDa-CO2H,5400g/mol)。
【0279】
【0280】
合成したPBA化合物のpKaは、三方晶立体構造(pHが低い)から四面体立体構造(pHが高い)に変換されたPBAの吸光度における変化の測定によって見出された。0.1M PBS中10~3M PBAの溶液に対し、pH 7.4を、1N NaOHを用いて滴定した。pHを記録し、そして対応するサンプルを、268nmにおける吸光度測定のために採取した。
【0281】
【0282】
実施例24:ニトロPBA-PEGに対する抗体結合体化
ニトロPBA-PEGの生成後、得られた化合物を、抗体に結合体化させた。結合体化のために、36mg(6.4μM)のニトロPBA-PEG-CO2H,12.3mg(64μM)の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)および11.1mg(96μM)のNHSを、2.4mlの0.1M MES緩衝液、pH 6.0中に溶かした。この混合物を、15分間にわたって、室温にてロータリーシェイカー上で反応させた。過剰な反応物を、3kDa分子量カットオフ膜フィルターデバイス(Amicon(商標))によって透析して除いた。この活性型カルボン酸PEG化合物を、0.1M PBS,pH 7.2中20mg(0.14mM)のヒトIgG1抗体(Herceptin(登録商標))に添加した。反応を、回転シェイカー上で、室温で2時間行い、次いで、50kDa分子量カットオフ膜フィルターデバイス(Amicon(商標))を用いて1x PBSに対してpH 7.4にて4回透析した。質量分析による(MALDI-TOF)は、1つの抗体あたり平均1~2個のニトロPBA-PEG化合物の結合体を示した。
【0283】
実施例26:標的化MAPナノ粒子の処方および性質決定
ナノ粒子処方および安定性におけるPBA-PEGおよびニトロPBA-PEGの効果を、試験した。PBA-PEGの溶液を、MAPの溶液に、3+/-の電荷比(siRNA由来の負電荷あたりのMAP由来の正電荷)にて、pH 7.4のリン酸緩衝液中で加えた。この混合物を、PBA-PEGとジオール含有MAPとの錯体形成のために、室温に10分間にわたって静置した。次いで、これを、等容量の水中siRNAに加え、ピペッティングにより混合した。10分間後、試験および性質決定を行った。粒子の処方物を、ニトロPBA-PEGにて安定化し、異なる電荷比を同じ様式で行った。PBA-PEGの複合体形成は、150~300nmの大きさのMAP/siRNA粒子を形成した。MAP-4(電荷中心(アミジン)と結合部位(ポリオール)との間の4つのメチレン単位を示す)は、MAP-2が使用された場合よりも小さなナノ粒子をもたらした。しかし、塩の添加の際、凝集した全ての粒子が、PBA-PEGがナノ粒子に充分な安定性を与えられないことを示した。ニトロPBA-PEGを使用した場合、試験した全ての電荷比、1および3(+/-)において、粒子は、安定化したナノ粒子を実証した。PBA-PEGとニトロPBA-PEGとによって付与された粒子安定性における相違は、ペグ化ボロン酸化合物をポリオールに対するより強い結合を有するよう改変することの重要性を示す。
【0284】
安定化剤PEGの非存在下でMAP-4と縮合したsiRNAについて、+32mVの高いゼータ電位での640nmの粒子サイズを観察した。ニトロPBA-PEGを添加して粒子を安定化させた場合、径は、130nmに減少し、-4mVの負の表面電荷を有した。負電荷は、ボロン酸とジオールとの間の結合の結果である。ニトロPBA-PEGと結合体化した0.25mol% IgG(Herceptin(登録商標))を導入した場合、興味深いことに、粒子サイズはさらに82nmにまで減少し、このとき、ゼータ電位は同様のままであった。
【0285】
種々のPEG基が結合したMAP-4/siRNAナノ粒子についての塩安定性を、評価した。粒子サイズを、ゼータ電位分析器(DLS ZetaPALS instrument,Brookhaven Instruments,Holtsville,NY)を用いて、1分にての5回のランについて、記録した。測定を停止し、10x PBS溶液を添加して粒子を処方したので、得られた粒子は1x PBSを含んだ。その後測定を再開し、各1分間の10回の連続したランを記録して、粒子安定性に対する塩添加の効果を研究した。
図16において示されるように、安定化剤PEGの非存在下で、粒子が凝集した。ニトロPBA-PEGが存在した場合、粒子は、塩条件下でも安定したままであった。
【0286】
実施例27:標的化MAP-CPTナノ粒子の処方および性質決定
標的化MAP-CPTナノ粒子を調製するため、ボロン酸とMAP(ジオール含有)との間の可逆的共有結合特性を用いた。PBAとMAPとの間の結合定数は、約20M-1の低さである。結合定数を増大させるため、フェニル環において電子吸引性基を有するPBAを、ホウ素原子の酸性度を増し、MAPの結合定数を評価するために使用した。市販の3-カルボキシPBAおよび3-カルボキシ5-ニトロPBAを、塩化オキサリルを用いて塩化アシルに変換した。次いで、これらの塩化アシル種を、NH2-PEG-CO2Hと反応させて、PBA-PEG-CO2HおよびニトロPBA-PEG-CO2Hをそれぞれ形成した。DMFおよびDIPEAの塩基の付加は、合成反応を進めるために必要であった。しかし、これらの塩基の存在は、酸性のPBAによって四面体付加物形成を生じた。これらの付加物を除くため、0.5N HClにおける作業およびその後の水に対する透析による中性pHへの平衡化を、行った。
【0287】
改変PBAのpKa値を、pHの上昇を伴うPBAの三方晶から四面体形態への立体構造変化に起因する吸光度変化によって決定した(表2)。求電子基を有するPBAは、低いpKaをもたらし、最も低い6.8のpKaを有するニトロPBA-PEG-CO2Hをもたらした。従って、生理学的pHにおいて、PBAの殆どは、反応性のアニオン性四面体形態で存在する。PBAとMAPとの間の結合定数は、0.1M PBS、pH 7.4中でのAlizarin Red Sとの競合的結合によって見出された。ニトロPBA-PEG-CO2Hについて観察したMAPの、低いpKa値および高い結合定数ゆえに、これを、IgG(Herceptin(登録商標))とMAP-CPTナノ粒子との間のリンカーとして選択した。
【0288】
IgG(Herceptin(登録商標))とニトロPBA-PEG-CO2Hとの間の結合体化反応を、EDCカップリング(上述)を介して進めた。IgG(Herceptin(登録商標))抗体1つあたり、平均1~2のPEGが結合した。
【0289】
【表3】
aムチン酸ジ(Asp-アミン)あたり等量のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を加えた。
bMW、(Mw+Mn)/2として決定した分子量;Mw,重量平均分子量;Mn,数平均分子量。
cMw/Mnとして決定した多分散性。
【0290】
約40nmの平均サイズが、標的化MAP-CPTナノ粒子について、DLSおよびcryo-EM(表3)によって観察された。非標的化ナノ粒子からの約10nmの増大は、IgG(Herceptin(登録商標))のナノ粒子への結合を示す(量は、ナノ粒子1つあたり約1のHerceptin(登録商標)であった)。実際、cryo-EM画像から、標的化ナノ粒子は、球形ではなく、抗体の結合を示す突出を有することがわかった。標的化MAP-CPTナノ粒子の表面電荷は、MAP-CPTナノ粒子よりも、pH 7.4におけるハーセプチンの正電荷の存在に起因して、わずかに高かった(Herceptin(登録商標)のpI,9.2)。
【0291】
実施例28:細胞取り込み研究
HER2を過剰発現するヒト乳癌細胞株(BT-474)を、Herceptin(登録商標)標的化MAP-CPTナノ粒子対非標的化ナノ絵融資の細胞取り込みを試験するために使用した。HER2ネガティブな乳癌細胞株(MCF-7)を、ネガティブ対照として使用した。これらの研究のために、24ウェルプレートに、それぞれBT-474(10%ウシ胎仔血清を補ったRPMI-1640培地中)又はMCF-7(10%ウシ胎仔血清を補ったダルベッコ改変イーグル培地)(Cellgro,Manassas,VA)を、ウェルあたり20,000個の細胞でまき、5% CO2を有する湿潤化オーブン内で37℃に保った。40時間後、培地を、0.3mlの新鮮な培地と入れ替えた。培地はそれぞれ、培地MAP-CPT(40μg CPT/ml)、遊離のHerceptin(登録商標)を10mg/mlで含む培地MAP-CPT、種々の標的密度での標的化MAP-CPT(40μg CPT/ml)又は遊離のHerceptin(登録商標)を10mg/mlで含む標的化MAP-CPT含んだ。トランスフェクションを、30分間にわたって37℃にて実施した。処次いで、処方物を除去し、細胞を冷PBSで2回洗浄した。細胞の脱着および溶解のために、1ウェルあたり200μlのRIPA緩衝液を加えた。次いで、溶解した細胞を、4℃にて15分間にわたってインキュベートし、14,000gにて10分間にわたり4℃にて遠心分離した。上清の一部を、BCAアッセイによるタンパク質定量のために用いた。別のタンパク質に、等量の0.1N NaOHを加え、室温で一晩インキュベートして、蛍光を370/440nmにて、既知の濃度のMAP-CPTを標準として用いて測定した。
【0292】
BT-474細胞株において、非標的化ナノ粒子と比較して約70%高い取り込みを達成するために、ナノ粒子あたり1つのHerceptin(登録商標)-PEG-ニトロPBAが充分であることを、観察した(
図17A)。標的化MAP-CPTのBT-474細胞における取り込みは、遊離のHerceptin(登録商標)の存在下での疎外を示した(
図17B)。対照的に、MAP-CPTナノ粒子のMCF-7における取り込みは、遊離のHerceptin(登録商標)の存在下で、標的化への依存を示さなかった(
図2B)。これらのデータは、BT-474細胞において、標的化MAP-CPTナノ粒子による、HER2レセプターの結合を介する、レセプター媒介型取り込みが存在することを示す。標的化および非標的化MAP-CPTナノ粒子の両方の細胞取り込みはまた、非特異的液相エンドサイトーシスを介しても起こった。
【0293】
実施例29:インビトロ放出研究
短型、中型、長型MAP-CPTナノ粒子および標的化MAP-CPTナノ粒子からのCPTの放出を評価する実験を行った。これらの研究を、1x PBS中0.32mg CPT/ml(pH 6.5,7又は7.4);3mg/mlの低密度リポタンパク質(LDL)を含むBALB/cマウス血漿、ヒト血漿、および1x PBS(pH 7.4)、又は100単位/mlのブチリルコリンエステラーゼ(BCHE)又はLDLとBCHEとの組み合わせを用いて行った。
【0294】
平衡化のために、96ウェルプレートにピペット分配した培地を、37℃にて、湿潤化オーブン内で、2時間にわたってインキュベートした。処方物を、対応する培地中に混合し、オーブン内に戻した。サンプルを、所定の時点で取り出し、分析の時点まで、-80℃で直ちに凍結した。BALB/cマウス血漿およびヒト血漿中の放出について、インキュベーションを、湿潤化オーブン内で、37℃にて5% CO2を(生理的pHレベルにて血漿中での主要なpH緩衝系である炭酸/二酸化炭素緩衝系を維持するために)用いて行った。
【0295】
未結合体化CPTの量を、まず、10μlのサンプルを10μlの0.1N HClと混合し、室温で30分間インキュベートした。次いで、80μlのメタノールを添加し、この混合物を、タンパク質沈殿のために、室温で3時間にわたってインキュベートした。この混合物を、14,000gにて10分間にわたって4℃にて遠心分離し、上清を、0.45μmフィルター(Millex-LH)で濾過し、メタノールで20倍に希釈し、そして得られた溶液の10μlを、HPLCに注入した。溶出したCPT(7.8分にて)のピーク面積を、対照のそれと比較した。CPTの全量を測定するため、10μlのサンプルを、6.5μlの0.1N NaOHと混合した。この溶液を、室温で1時間にわたってインキュベートし、CPTを親ポリマーから放出させた。次いで、10μlの0.1N HClを添加し、カルボキシレートCPT形態をラクテート状態に変換した。その後、73.5μlのメタノールを添加し、そして混合物を、3時間にわたって室温でインキュベートした。次いで、サンプルを遠心分離し、上のように処理した。ポリマー結合CPT濃度を、全CPT濃度と未結合体化CPT濃度との差から決定した。
【0296】
CPTの短型、中型および長型MAP-CPTナノ粒子からの放出は、全て、一次速度論を示した。CPTの短型、中型および長型MAP-CPTナノ粒子からの放出半減期は、試験した全ての条件において類似していた。他方で、標的化MAP-CPTについては、より長い半減期を観察した(表4)。放出速度とpHとの強い依存性を観察した。pHが6.5から7.4に上昇するに伴い、放出半減期は、短型、中型および長型MAP-CPTナノ粒子について、338時間から58時間に短縮した。これらのデータは、加水分解が、CPTの放出において重要な役割を果たすことを示す。短型、中型および長型MAP-CPTナノ粒子について、59時間の放出半減期を、BALB/cマウス血漿中で観察し、他方で、著しく短い38時間の半減期を、ヒト血漿中で観察した。マウス血漿は、ヒト血漿よりも高いエステラーゼ活性を有し、他方、ヒト血漿は、マウス血漿よりも「高脂肪」であることが公知である。従って、ヒト血漿とマウス血漿との間の放出速度の相違を知るために、エステラーゼおよび脂肪のCPT放出速度に対する寄与を、個別に試験した。ブチリルコリンエステラーゼ(BCHE)は、マウス血漿およびヒト血漿の両方に存在し、これを、放出速度に対するエステラーゼの寄与を試験するために使用した。低密度リポタンパク質(LDL)を、「脂肪」の放出速度に対する寄与を紙面するために、選択した。これらの構成要素を、PBS(pH 7.4)中に含めた。BCHEの存在は、放出速度に影響しないことが見出された(短型、中型および長MAP-CPTナノ粒子ナノ粒子についての、PBS中pH 7.4における58時間と比較して、61時間の半減期だった)。しかし、LDLの添加は、放出速度を劇的に伸ばした。この効果は、おそらく、競合的疎水性相互作用によるナノ粒子破壊に起因する。従って、「脂肪」の存在によるナノ粒子破壊およびその後の加水分解によるCPT開裂は、MAP-CPTナノ粒子からのCPT放出の主なメカニズムとは異なると考えられる。Herceptin(登録商標)標的化MAP-CPTナノ粒子からの放出は、非標的化バージョンよりも長い半減期を示す。9.2のpIを有するHerceptin(登録商標)の存在は、静電相互作用により、およびそれによって競合する疎水性相互作用の幾つかからナノ粒子を保護するので、負に帯電したナノ粒子の安定性を増大することができる。
【0297】
【0298】
略語:PBS、リン酸緩衝化生理食塩水;LDL,低密度リポタンパク質;BCHE,ブチリルコリンエステラーゼaPBS,pH 7.4,3mg/ml LDL含有bPBS,pH 7.4,100単位/ml BCHE含有cPBS,pH 7.4,3mg/ml LDLおよび100単位/ml BCHE含有
【0299】
実施例30:細胞毒性アッセイ
中型MAP、ニトロPBA-PEG、CPT、中型MAP-CPTナノ粒子、標的化MAP-CPTナノ粒子およびHerceptin(登録商標)のインビトロ細胞毒性を、2つのHER2+乳癌細胞株(BT-474,SKBR-3)および2つのHER2-乳癌細胞株(MCF-7,MDA-MB-231)において評価した(表5)。これらの研究のために、5% CO2を有する湿潤化オーブン内で、細胞を37℃に保った。BT-474、MCF-7、SKBR-3およびMDA-MB-231細胞株を、RPMI-1640培地、ダルベッコ改変イーグル培地、McCoy’s 5A改変培地、並びにダルベッコ改変イーグル培地において、それぞれインキュベートした(全て、10%ウシ胎仔血清を補った)。ウェルあたり3,000この細胞を、96ウェルプレートにプレート培養した。24時間後、培地を除去し、種々の濃度の中型MAP、ニトロPBA-PEG、CPT、中型MAP-CPTナノ粒子、標的化MAP-CPTナノ粒子又はHerceptin(登録商標)新鮮な培地と置き換えた。72時間のインキュベーション後、処方物を、新鮮な培地と置き換え、20μlのCellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution細胞増殖アッセイ(Promega)を、ウェルあたりに加えた。これを、2時間にわたって37℃にて5% CO2の湿潤化オーブン内でインキュベートし、その後、490nmにて吸光度の測定を行った。未処理細胞を含むウェルを、対照として用いた。
【0300】
中型MAPおよびニトロPBA-PEGは、それぞれ500μMおよび1000μM(試験した最も高い濃度)のIC50値を与え、これは、最小の細胞毒性を示す。CPT、中型MAP-CPTナノ粒子および標的化MAP-CPTナノ粒子のIC50濃度は、CPTの含量に基づく。CPTは、中型MAP-CPTナノ粒子および標的化MAP-CPTナノ粒子から、徐々に放出されたことに留意されたい(インビトロ放出研究を参照されたい)。さらに、細胞によるナノ粒子取り込みは、エンドソームの酸性の性質に起因して、長い放出時間をもたらした。これらの因子は、中型MAP-CPTナノ粒子および標的化MAP-CPTナノ粒子について観察した、CPTよりIC50値に寄与する(表5)。HER2+細胞株において、標的化MAP-CPTナノ粒子は、MAP-CPT単独と比較して低いIC50値をもたらした。他方、HER2-細胞株は、標的化はIC50に影響を及ぼさなかった。BT-474は、CPTに対し、従って中型MAP-CPTナノ粒子に対し、最も耐性の細胞株であった。ハーセプチンの、0.001~0.5μMの濃度での、BT-474細胞又はSKBR-3細胞への添加は、未処理対照と比較して、約60%の一定の細胞生存率をもたらした。これらの細胞株についてのこの濃度範囲にわたる真のIC50値の欠如は、これまでに観察されている(Phillips,et al.,Cancer Res.68,9280~9290(2008))。0.5μMまでのハーセプチン濃度において、HER2-細胞株は、何ら効果が観察されなかった。
【0301】
【表5】
ano value、0.001~0.5μMの濃度範囲にわたり、IC
50値が得られなかった。
【0302】
実施例31:薬物動態学研究
短型、中型および長型のMAP-CPTナノ粒子および標的化MAP-CPTナノ粒子の、10mg/kg(CPTに基づく)注射における血漿薬物動態学研究を、雌BALB/cマウスにおいて行った(
図18)。これらの研究のために、0.9wt% NaCl(非標的化ナノ粒子)又はPBS(標的化MAP-CPTナノ粒子)中に処方されたナノ粒子を、ボーラス尾静脈注射を介して、12~16週齢の雌BALB/cマウスに投与した。所定の時点で、伏在静脈を介して血液採集管(Microvette CB 300 EDTA,Sarstedt)で血液を採集した。直ちに、サンプルを、10,000g、4℃で、15分間にわたって遠心分離し、上清を取り出し、分析の時点まで-80℃で保存した。未結合体化およびポリマー結合CPTの分析は、以下であった。未結合体化CPTの量を、まず、10μlのサンプルを10μlの0.1N HClと混合し、室温で30分間インキュベートした。次いで、80μlのメタノールを添加し、この混合物を、タンパク質沈殿のために、室温で3時間にわたってインキュベートした。この混合物を、14,000gにて10分間にわたって4℃にて遠心分離し、上清を、0.45μmフィルター(Millex-LH)で濾過し、メタノールで20倍に希釈し、そして得られた溶液の10μlを、HPLCに注入した。溶出したCPT(7.8分にて)のピーク面積を、対照のそれと比較した。CPTの全量を測定するため、10μlのサンプルを、6.5μlの0.1N NaOHと混合した。この溶液を、室温で1時間にわたってインキュベートし、CPTを親ポリマーから放出させた。次いで、10μlの0.1N HClを添加し、カルボキシレートCPT形態をラクテート状態に変換した。その後、73.5μlのメタノールを添加し、そして混合物を、3時間にわたって室温でインキュベートした。次いで、サンプルを遠心分離し、上のように処理した。ポリマー結合CPT濃度を、全CPT濃度と未結合体化CPT濃度との差から決定した。Summit Research Services(Montrose,CO)によるNon-compartmentalモデリングソフトウェアPK Solutions 2.0を、薬物動態学データ分析のために使用した。全ての動物を、National Institute of Health Guidelines for Animal Careによって処理し、California Institute of Technology Institutional Animal Care and Use Committeeによる認可を得た。
【0303】
全てのナノ粒子についてのポリマー結合CPTは、迅速な再分布相(α)および長い消去相(β)を有する二相性プロフィールを示した(
図18A)。中型および長型のMAP-CPTナノ粒子の消去相は、特に、半減期をそれぞれ16.6時間および17.6時間に延長し、それぞれ2298および3636μg×時間/mlの高い曲線化面積(AUC)値を与えた。さらに、これらは、低容量の分布率およびクリアランス率を示した。注射の24時間後、中型MAP-CPTナノ粒子の注射用量の11.3%および長型MAP-CPTナノ粒子の20.5%が、ポリマー結合CPTとして、なおも血漿中の循環に残っていた。対照的に、CPTのみを10mg/kgで注射されたマウスは、たったの1.6μg×時間/mlのAUCおよび8時間後に循環中に残存する用量0.01%である、迅速なクリアランスを示した。中型MAP-CPTナノ粒子の標的化は、再分布相を増大し、消去相を21.2時間まで延長し、2766μg×時間/mlの高いAUC値を伴って、薬物動態学に影響を及ぼした。全てのナノ粒子についての血漿中の未結合CPTの量は、全ての時点において、低かった(
図18B)。
【0304】
実施例32:ヌードマウスにおける最大許容用量(MTD)の決定
MTD値を、雌Ncrヌードマウスにおいて決定し、15%未満の体重減少を伴い且つ処置関連の死をもたらさない最高の用量として規定した。これらの実験において、12週齢の雌NCrヌードマウスを、無作為に、各郡5匹を含む13の群に分けた。処方物中型MAP又はニトロPBA-PEGを200mg/kg、短型MAP-CPTナノ粒子を10、15又は20mg/kg(CPTに基づく)、中型MAP-CPTナノ粒子を8、10又は15mg/kg(CPTに基づく)、長型MAP-CPTナノ粒子を5、8又は10mg/kg(CPTに基づく)および標的化MAP-CPTナノ粒子を8又は10mg/kg(CPTに基づく)、0日目および7日目に、尾静脈の静脈内注射を介して投与した。標的化MAP-CPTを除く全ての注射を、0.9w/v%生理食塩水中に処方し、標的化MAP-CPTを、PBS,pH 7.4中に処方した。処置の開始から2週間にわたり、マウスの体重および健康を記録し、モニタリングした。MTDを、15%未満の体重減少を伴い且つ処置関連の死をもたらさない最高の用量として規定した。動物を、MTDについての基準を超えたか、又は研究の最後に、CO2窒息によって安楽死させた。
【0305】
中型MAP、ニトロPBA-PEG、短型、中型および長型MAP-CPT並びに標的化MAP-CPTで処置されたマウスを、0日目および7日目に、週2回、体重測定し、そして健康についてモニタリングした(表6)。マウスの体重および健康は、高用量の中型MAP又はニトロPBA-PEGでの処置によって影響を受けず、このことは、これらのポリマー構成要素について毒性が最小限であることを示す。CPTを含む群について、最大の体重減少が、各処置の3~5日目に見られた。殆どの群が、減少した体重を取り戻した。体重減少が続き、平均15%を超えた場合、研究をやめた。中型MAP-CPTを15mg/kgおよび長型MAP-CPTを10mg/kgで処置した幾匹かのマウスは、下痢を示し、弱って見えた。他のマウスは全て、健康に見えた。MTD値は、短型、中型、長型MAP-CPTおよび標的化MAP-CPTについて、それぞれ20、10、8および8mg/kg(CPTに基づく)であると見出された(表6)。
【0306】
【表6】
aMAP-CPTを含む全ての群は、mg CPT/kgに基づく。
b最大体重減少百分率。
c15%を超える体重減少のために処分した動物。
【0307】
実施例33:ヌードマウスにおける生体分布
マウスおいて標的化ナノ粒子の生体分布を評価するために、7週齢のNCrヌードマウスに、17β-エストラジオールペレットを皮下移植した。2日後、RPMI-1640培地中に浮遊させたBT-474癌種細胞を、右前脇腹に、1000万細胞/動物で皮下注射した。処置を、腫瘍が260mm3の平均サイズに達した後に開始した。動物を、各群6匹の2つの群に無作為化し、尾静脈に静脈内注射によって、5mg CPT/kgのMAP-CPTナノ粒子(PBS中,pH 7.4)又は5mg CPT/kgの標的化MAP-CPTナノ粒子および29mgのHerceptin(登録商標)/kg(PBS中,pH 7.4)で処置した。4時間後および24時間後、各群のこれらの動物から、伏在静脈出血を介して血液を採集した。次いで、動物をCO2窒素によって安楽死させ、PBSに浸した。腫瘍、肺、心臓、脾臓、腎臓および肝臓を回収し、2つの同じ大きさの片に切り分けた。1片を、Tissue-Tek(登録商標)OCT(Sakura)中に包埋し、他をエッペンドルフ管に収集し、その両方を、直ちに-80℃にて、処理の時点まで凍らせた。
【0308】
器官を、重量測定し、各100mgを、0.64cm(1/4インチ)セラミック球(MP Biomedicals,Solon,Ohio)を加えたLysing Matrix Aホモジナイザー管内に置いた。1mlのRIPA溶解緩衝液(Thermo Scientific)を加え、そして組織を、FastPrep(登録商標)-24ホモジナイザー(MP Biomedicals,Solon,Ohio)を用いて6m/秒にて30秒間にわたってホモジナイズした。これを、各回の間の1分間の氷上での冷却と共に3回繰り返した。次いで、サンプルを、14,000gにて15分間にわたり、4℃で遠心分離した。未結合体化CPTの量を、まず、10μlの上清を10μlの0.1N HClと混合し、室温で30分間にわたってインキュベートし、次いで、80μlのメタノールを加えて、タンパク質沈殿のために室温で3時間にわたってインキュベートすることによって、測定した。この混合物を、14,000gにて10分間4℃で遠心分離し、上清を、0.45μm フィルター(Millex-LH)で濾過し、10μlの得られた混合物を、HPLCに注入した。溶出したCPT(7.8分にて)のピーク面積を、対照のそれと比較した。CPTの全量を測定するため、10μlのサンプルを、6.5μlの0.1N NaOHと混合した。この溶液を、室温で1時間にわたってインキュベートし、CPTを親ポリマーから放出させた。次いで、10μlの0.1N HClを加え、カルボキシレートCPT形態からラクトン形態に変換させた。その後、73.5μlのメタノールを添加し、そして混合物を、3時間にわたって室温でインキュベートした。次いで、サンプルを遠心分離し、上のように処理した。
【0309】
腫瘍、心臓、肝臓、脾臓、腎臓および肺の1グラムあたりの全CPTの平均百分率注射用量(ID)を、
図19Aに示す。投薬の4時間後、全CPTの5.3および5.2% IDが、それぞれ、MAP-CPTナノ粒子および標的化MAP-CPTナノ粒子で処置したマウス腫瘍の1グラムあたりで存在した。処置の24時間後、全CPTの2.6% IDが、MAP-CPTナノ粒子で処置されたマウスの腫瘍の1グラムあたりに存在し、他方、全CPTの3.2% IDが、標的化MAP-CPTナノ粒子を受けたマウスの腫瘍1グラムあたりで存在した。これらのデータは、非標的化バージョンと実質的に同じサイズおよび表面電荷の標的化ナノ粒子が、非標的化バージョンの腫瘍局在よりも腫瘍局在を増大することなく、他の報告された観察と一致したことを示す。MAP-CPTナノ粒子および標的化MAP-CPTナノ粒子で処置されたマウスは、心臓、肝臓、腎臓および肺において同様のCPT分布をもたらした。しかし、脾臓において、標的化MAP^CPT対非標的化についての比較的高い量の全CPT蓄積が、24時間時点であった。この効果は、マウスにおけるヒト化抗体について、以前に観察されている。
【0310】
図19Bは、腫瘍、心臓、肝臓、脾臓、腎臓および肺のそれぞれの器官における未結合体化CPTの平均百分律を示す。心臓、肝臓、脾臓、腎臓および肺における未結合体化CPTの百分率は、4時間および24時間の両時点において低かった。このことは、これらの器官からの遊離のCPTの迅速なクリアランスを示す。24時間時点の腫瘍において、4時間時点と比較して、MAP-CPTナノ粒子および標的化MAP-CPTナノ粒子の両方について有意に高い未結合体化CPTの百分率があった。腫瘍内における遊離のCPTの保有率は、CPTの細胞性蓄積を示唆する。標的化ナノ粒子は、4時間および24時間の両時点で、マウスの腫瘍において非標的化ナノ粒子よりも未結合体化CPTのわずかに高い百分率を示す。
【0311】
血漿におけるCPTの全濃度および血漿中で全未結合体化であるCPTの百分率は、MAP-CPTナノ粒子および標的化MAP-CPTナノ粒子の両方について、同様であった(
図19C)。4時間後、17および20μg/mlの全CPTが、それぞれMAP-CPTナノ粒子および標的化MAP-CPTナノ粒子についての血漿中に残留していた。24時間後、血漿中に残留する全CPTの量は、MAP-CPTナノ粒子および標的化MAP-CPTナノ粒子の両方について同じであり、12μg/mlであった。血漿中で未結合体化である全CPTの百分率は、全ての条件について3%未満であった。このことは、血漿からの未結合体化CPTのわずかな放出および迅速なクリアランスを示す(
図19D)。
【0312】
実施例33:標的化ナノ粒子による腫瘍の処置
BT-474腫瘍保有Ncrヌードマウスを、MAP-CPT(5mg CPT/kg)又は標的化MAP-CPT(5mg CPT/kg,29mgハーセプチン/kg)のいずれかによって処置した。4時間および24時間後、マウスを安楽死させ、そして腫瘍を切除し、クライオスタットを用いて、20~30μm厚の切片にした。腫瘍切片を、Superfrost Plusスライドガラス(Fisher Scientific,Hampton,NH)上に置き、-80℃にて処理の時点まで保存した。スライドガラスを解凍し、組織切片を、スライドガラス上で、10%ホルマリン溶液で15分間にわたり直接固定した。次いで、このスライドガラスを、PBSで各5分間3回洗浄し、5%ヤギ血清ブロッキング緩衝液中で1時間にわたりブロックした。CPTは、440nmにおける発光で、天然に蛍光を発する。MAPの位置を同定するため、MAP内のPEGを、内部PEG単位を認識するラット抗PEG一次抗体で14μg/mlにて染色し、4℃で一晩インキュベートした。この後、3回のPBS洗浄および2μg/mlのAlexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗ラットIgM二次抗体と共に1時間のインキュベーションを行った。次いで、このスライドガラスを、PBSで3回洗浄し、2μg/mlのAlexa Fluor(登録商標)633ヤギ抗ヒトIgG二次抗体と共に1時間にわたってインキュベートして、Herceptin(登録商標)を可視化した。このスライドガラスを、PBSでさらに3回洗浄し、Prolong Gold Antifade試薬でマウントして、画像化まで4℃で保存した。画像を、Zeiss LSM 510 Meta共焦点顕微鏡(Carl Zeiss,Germany)で、63x Plan-Neofluar oil対物レンズを用いて撮影した。720nmにおける2-光子励起(発光フィルターBP 390-465nm)を用い、CPTを検出した。488nmにおける励起(発光フィルターLP 530)および633nm(発光フィルターBP 645-700nm)を用いて、それぞれPEGおよびハーセプチンを検出した。全てのレーザーおよび獲得設定を、画像化の最初に設定し、変更しなかった。画像分析を、Zeiss lsm画像ブラウザにおいて行った。
【0313】
図20Aは、MAP-CPTナノ粒子で処置した4時間後のマウスの腫瘍切片を示す。CPTシグナルが、散在していた。CPTおよびMAPについてのシグナルが、重ねた画像において共に局在しているように見えた。注射の24時間後、CPTシグナルの蓄積が、点状に存在した(
図20B)。重ねた画像は、CPTとMAPとの一緒の局在を示唆した。標的化MAP-CPTナノ粒子で処置したマウスについて、CPT蓄積を示す点が、処置の4時間後および24時間後の両方で観察された(
図20Cおよび20D)。重ねた画像において、CPTシグナルとMAPシグナルとの一緒の局在が存在した。標的化MAP-CPTナノ粒子におけるハーセプチンの存在は、非標的化バージョンにおける弱いバックグラウンドシグナルと比較して、ハーセプチンチャネルにおける強い青色のシグナルによって示される。
【0314】
実施例33:ヌードマウスにおける抗腫瘍効力研究
BT-474は、カンプトテシンを含む抗癌剤に対し最も抵抗性の乳癌の1つである。ヌードマウスにおける腫瘍増殖を促進するために、17β-エストラジオールペレットを、7週齢のNcrヌードマウスに移植し、2日後にBT-474腫瘍細胞移植を行った。0日目(移植の5日後)、各群の腫瘍サイズは、平均250mmであった。処置を、1日目に開始した。動物を、各群6~8匹ずつ9つの群に無作為化し、以下のいずれかで処置した:MAP-CPTナノ粒子、1mg又は8mg/kg(CPTに基づく、PBS中、pH 7.4);CPT、8mg/kg(20% DMSO,20% PEG 400,30%エタノールおよび30% 10mM pH 3.5リン酸中に溶解);イリノテカン、80mg/kg(5w/v%デキストロース溶液,D5W中);Herceptin(登録商標)、2.9又は5.9mg/kg(PBS中,pH 7.4);標的化MAP-CPTナノ粒子、CPT/kgおよび2.9mg Herceptin(登録商標)/kg、又は1mg CPT/kgおよび5.9mg Herceptin(登録商標)/kg(PBS中,pH 7.4);又は生理食塩水。全ての処置を、新鮮に調製し、尾静脈の静脈内注射を介して与えた。注射を、マウスの体重20gあたり150μlにて正規化した。Herceptin(登録商標)を含む処置を、1週間に1度2週間与え、全ての他の群を、1週間に1度3週間与えた。腫瘍サイズを、ノギス測定(長さ×幅
2/2)を用いて週に3回記録し、動物の健康を、連続的にモニタリングした。動物を、腫瘍体積が1000mm
3を超えたときに安楽死させた。処置の開始から6週間後、動物を、CO
2窒息によって安楽死させた。この研究の結果を、
図21および表7に示す。
【0315】
生理食塩水を投与した対照群の動物の腫瘍は、迅速に成長した(
図21)。28日後、8匹のうち5匹のマウスが、1000mm
3のサイズ限界を超える腫瘍を有した。この群の全ての動物を、この時点で安楽死させた。
【0316】
CPT(8mg/kg)で処置した群は、対照群と比較して、何ら腫瘍阻害をもたらさなかった(P>0.05)。1および3の処置関連死が、それぞれ9日目および16日目に記録され、並びに、28日目に、腫瘍のサイズ制限を超えたことによる4例の安楽死が記録された。研究の最終日まで生存した動物はなかった。
【0317】
イリノテカン80mg/kgで処置されたマウスは、対照群と比較して有意でない腫瘍阻害を示した(P>0.05)。1例の腫瘍関連死が、11日目に起きた。研究の最終日に、腫瘍サイズは平均で575mm3に達した。
【0318】
MAP-CPTナノ粒子を8mg CPT/kgで受けた動物は、対照群の腫瘍阻害と比較して、非常に有意な腫瘍阻害を示した(P<0.01)。研究の最終日に、平均腫瘍サイズは、63mm3に達し、8匹のうち3匹は、腫瘍サイズが0にまで縮小した。MAP-CPT、8mg CPT/kgで処置した非腫瘍保有NCrヌードマウスを用いたMTD研究において、死亡は発生しなかったが、研究の21日目に、体重減少に起因する1例の死が起きた。このことは、この研究において腫瘍負荷を加えたことおよび/又はこの研究に使用したマウスが7週齢であり、他方で、MTD研究においては、12週齢のマウスが使用されたことによる可能性がある。
【0319】
Herceptin(登録商標)5.9mg/kgで処置された動物は、対照群と比較して非常に有意な腫瘍阻害を示した(P<0.01)。処置の11日目に、処置した8匹の動物のうち7匹が、0にまで縮小した腫瘍を有した。しかし、研究の最終日に、縮小した腫瘍のうちの2つは再発し、0容積の腫瘍を有する全部で5匹の動物を生じ、群平均腫瘍体積は60mm
3であった(
図22)。MAP-CPTナノ粒子で1mg CPT/kgにて処置したマウスを、抗腫瘍効果が観察されなかったことにより、早く処分した。それにもかかわらず、Herceptin(登録商標)、5.9mg/kgを、MAP-CPTナノ粒子に対し、ニトロPBA-BAリンカーを介して、標的薬剤として、1mg/kgの低容量で加えた場合(標的化MAP-CPTナノ粒子、5.9mgHerceptin(登録商標)/kgおよび1mg CPT/kg)、全ての腫瘍は、処置の9日目に0に縮小し、研究の最終日までそのままであった(
図22)。1例の非腫瘍関連死が、37日目に起きた。この結果は、対照群と比較して非常に有意である(P<0.01)。これらの3つの群について観察された結果の組み合わせは、Herceptin(登録商標)の本来の活性に加えて、Herceptin(登録商標)標的薬剤を加えることにより、効力の改善があったことを示す。
【0320】
Herceptin(登録商標)2.9mg/kgで処置された動物は、研究の最終日までに、0まで縮小した腫瘍を有する2匹の動物を生じた。しかし、平均腫瘍サイズは、研究の開始から、278mm3にまで増大した。この結果は、対照群と比較して有意である(0.01≦P≦0.05)。動物が、0.5mg CPT/kgおよび2.9mg Herceptin(登録商標)/kgを含む標的化MAP-CPTナノ粒子で処置された場合、2つの腫瘍が、0にまで縮小した。研究の最終日に、腫瘍サイズは平均で141mm3に縮小した。この結果は、対照群と比較して非常に有意である(P<0.01)。これらの結果は、さらに、腫瘍阻害の標的化の利益を示唆する。
【0321】
17β-エストラジオールペレット移植の5週間後、処置群に関係なく数匹のマウスが、膨張した膀胱および腹部膨満を有することが観察された。これは、無胸腺ヌードマウスにおいて水腎症および閉尿を生じる17β-エストラジオールペレットを使用したことに起因する可能性が高い。処置の6週間後、症状は悪化し、多くのマウスが、膨張した膀胱および腹部膨満の発症を観察され、それにより、安楽死させて、研究を終了した。
【0322】
【表7】
aN
開始は、研究開始時の動物の数であり、N
終了は、研究の最後に生存していた動物の数である。
bN
TRDは、処置関連死の数、N
NTRDは、非処置関連死の数、N
euthanは、腫瘍サイズ制限の1000mm
3を超えたことによって安楽死させた動物の数である。
cN
0まで縮小は、研究の最終日に腫瘍が0まで縮小した動物の数である。
【0323】
上に示した実施例は、当業者に完全な開示および本開示の粒子、組成物、システムおよび方法の実施形態を作製および使用する方法を与えるために提供され、本開示に関して本発明者らが考える範囲を限定することを企図しない当業者に明らかな、本開示を実施する上述様式の改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内であることが企図される。本明細書中で言及された全ての特許および刊行物は、本開示が属する分野の当業者のレベルを示す。本開示に挙げられた全ての参考文献は、各参考文献の全体が個々に参考として組み込まれるのと同程度に、参考として組み込まれる。
【0324】
背景技術、概要、詳細な説明および実施例において挙げられた文献(特許、特許出願、雑誌、記事、研究所マニュアル、書籍又は他の開示を含む)の開示全体は、本明細書によって、参考として組み込まれる。
【0325】
本開示は、特定の組成物又は生物学的システムに限定されず、無論、変動し得ることが、理解される。本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明する目的のみのために用いられており、制限的な意図ではないということもまた理解されねばならない。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。用語「複数の」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、2以上の対象を含む。他で規定されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0326】
本明細書中で起債されたものと類似又は同等である任意の方法および材料が、本明細書中で記載される適切な材料および方法の特定の例を試験するために、実際に使用されてもよい。
【0327】
本開示の多くの実施形態が、記載されている。しかし、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、種々の改変が行われ得ることが、理解される。従って、他の実施形態が、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【配列表】