(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】漏れ検出のための装置、方法、使用及び対応するコンピュータプログラム記憶手段
(51)【国際特許分類】
G01M 3/32 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
G01M3/32 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019088118
(22)【出願日】2019-05-08
【審査請求日】2021-12-10
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518046602
【氏名又は名称】アテック
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(72)【発明者】
【氏名】ジャン‐リュック・ルジェフ
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-072491(JP,A)
【文献】特表平06-503175(JP,A)
【文献】特開2015-170468(JP,A)
【文献】特開平06-011406(JP,A)
【文献】特開平07-012674(JP,A)
【文献】特開2009-044344(JP,A)
【文献】国際公開第2012/005199(WO,A1)
【文献】特表2002-500764(JP,A)
【文献】米国特許第06640615(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00~ 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体と液体の選択的透過性を有する壁(1)に適用可能な、試験用液体回路(5)を用いた漏れ検出装置であって、
前記壁(1)は2つの試験室(10、11)の間に挟まれて封止され、
前記壁(1)の上流に形成され、前記試験用液体回路に設けられた試験用液体の注入及び加圧手段(61、51、54;62、56)に接続される第1の注入室(10)と、
前記壁(1)の下流に形成された第2の試験室(11)であって、当該試験室の下流にある真空生成手段(3)に接続される第2の試験室(11)と
を備え、
前記第2の試験室は、前記第2の試験室内で気化した液体を検出する手段に接続され、当該手段により、前記第2の試験室内の液体蒸気の量と、前記量の変化と、液体蒸気流との少なくともいずれかに関連する少なくとも1つのパラメータについて検出及び測定のいずれか又は両方が行われ、前記パラメータは前記壁からの漏れ状況を示すか、表すか、又は示しかつ表すものである、
漏れ検出装置。
【請求項2】
試験用液体の蒸気の量と液体蒸気の量の変化との少なくとも一方に関連する前記パラメータは、
気化した液体の存在を検出するパラメータと、
液体蒸気の流速を示すパラメータと、
気化した液体の存在に関連する圧力変化を示すパラメータと、
前記壁を通る液体の存在と前記液体の漏れ流速との少なくともいずれかに関連する圧力変化の速度を示すパラメータと
を含む群に属する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記パラメータは圧力変化の測定値からなり、前記第2の試験室(11)内の液体蒸気の検出及び測定手段は、前記第2の試験室(11)内の圧力及び圧力変化の少なくとも一方を測定する手段(4)から構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記パラメータが流速の測定値からなり、前記第2の試験室(11)内の液体蒸気の検出及び測定手段は、前記第2の試験室(11)から生じる液体蒸気の流速を測定する手段(4)から構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記注入室は、封止された流路(50)を通じて試験用液体供給回路(5)と連通し、
前記試験用液体供給回路は液体供給リザーバ(51)を備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記液体供給回路は、前記液体供給リザーバ(51)と前記注入室(10)との間に置かれたフィルタ(53)をも備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記壁(1)が封止された格納容器(2)の下流に配置される液体循環回路(5)の一部は、真空ポンプと液体放出リザーバ(52)とを備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記真空生成手段(3)は、前記試験室(11)内の圧力を、試験用温度で使用される液体蒸気の分圧よりも低い圧力(P2)へ低下させる、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記加圧手段(61、62)は、前記注入室(10)の前記試験用液体を、大気圧を上回る圧力(P1)まで加圧し、
前記真空生成手段(3)は、前記試験室(11)の圧力を、2絶対kPaを下回る圧力(P2)へと低下させる、
請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
試験方法における連続的なステップを制御及び試験するためのユニットを備え、複数の液体流(F)調節バルブ(54、55、56)が制御される、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記試験用液体が水である、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
気体と液体の選択的透過性を有する壁(1)の漏れを検出する方法であって、
格納容器(2)の内部に形成された2つの試験室、すなわち第1の注入室(10)と第2の試験室(11)との間に挟まれるように前記壁(1)を封止するステップと、
前記壁(1)の上流にある前記注入室(10)を、試験用液体加圧手段(61、62)により或る圧力(P1)とされた或る体積(F)の試験用液体で満たすステップと、
前記試験室(11)に圧力レベル(P2)をかけるステップであって、前記注入室(10)の圧力(P1)は前記試験室(11)の圧力(P2)を上回り、前記注入室(10)から前記試験室(11)へと液体が漏れると、漏れた液体が前記試験室(11)内で蒸発する、ステップと、
前記注入室(10)から前記試験室(11)への液体蒸気の存在を、前記第2の試験室内の液体蒸気の量と、前記液体蒸気の量の変化と、前記格納容器(2)から加圧デバイス(P2)に対する液体蒸気流との少なくともいずれかに関連する少なくとも1つのパラメータについて検出及び測定のいずれか又は両方を行うことにより見いだすステップであって、前記パラメータは前記壁からの漏れ状況を示すか、表すか、又は示しかつ表すものである、ステップと
を含む方法。
【請求項13】
前記壁(1)が中空部品であり、
前記試験室(11)を形成する格納容器(2)内に設けられた前記注入室(10)を形成する前記中空部品(1)を封止するステップと、
前記注入室(10)を、前記圧力(P1)に加圧された体積(F)の液体で満たすステップと、
前記格納容器(2)内で圧力レベル(P2)を生じさせるステップであって、前記中空部品(1)の内側の圧力(P1)は前記格納容器(2)内の圧力(P2)を上回り、前記中空部品(1)から前記格納容器(2)へ液体が漏れると、漏れた液体が前記格納容器(2)内で蒸発する、ステップと
前記中空部品(1)から前記格納容器(2)に生じる液体蒸気の存在を、前記第2の試験室内の液体蒸気の量と、前記液体蒸気の量の変化と、前記
格納容器(2)から圧力P2を生成する加圧デバイス(3)への液体蒸気流との少なくともいずれかに関連する少なくとも1つのパラメータについて検出及び測定の少なくともいずれかを行うことにより見いだすステップであって、前記パラメータは、前記壁を通る漏れ状況を示すか、表すか、又は示しかつ表すものである、ステップと
を含む、請求項12に記載の漏れを検出する方法。
【請求項14】
前記第1の注入室(10)への試験用液体の注入及び加圧ステップと、
前記第2の試験室(11)における真空生成ステップと、
必要に応じて行われる安定化ステップと、
前記パラメータに関する検出及び測定の少なくともいずれかによって、前記試験室内の液体蒸気の増加を見いだすステップと、
試験用液体の圧力減少及び排出ステップと
を含む請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の注入室(10)への液体の注入及び加圧を含む試験ステップの前に、
放出ステップと、
校正ステップと
の少なくとも一方をも含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の注入室における試験用液体の注入及び加圧ステップは、
概して0.2相対バール未満である第1の低注入圧となるように試験用液体回路を満たし、該回路内の空気を排出する第1のステップと、
概して大気圧を上回る第2の試験用圧力への、第2の試験用液体加圧ステップと
の2つのステップからなる、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の試験室(11)内の真空生成ステップは、前記試験室内の圧力を、試験温度で使用される液体蒸気の分圧未満の圧力(P2)へ低下させることからなる、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記液体蒸気の増加を見いだすステップは、
前記試験室(11)内の圧力変化(P2)を測定するサブステップと、
前記格納容器(2)から、圧力をP2へ上昇させるデバイス(3)へ向かう液体蒸気流を測定するサブステップと
を含む群におけるサブステップを含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記試験用液体が水である、請求項12~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項12~19のいずれか一項に記載の方法を実施するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
請求項14又は15に記載の複数のステップのうち、少なくとも一部のステップを選択的に行う試験サイクルを制御する手段を備える請求項20に記載の装置。
【請求項22】
選択的な透過性を有する膜によって閉じられる少なくとも1つのオリフィスを備える壁の試験のための、請求項14~21のいずれか一項に記載の方法、又は請求項1~11、20及び21のいずれか一項に記載の装置の使用。
【請求項23】
選択的な透過性を有する前記膜が、GoreTex又はePTFEにより構成される、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
試験手順の前に別の予備的なステップにおいて前記試験用液体の注入及び加圧ステップが行われ、前記試験手順の前に前記中空部品が液体で満たされて封止される、請求項13~19のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項25】
コンピュータによって読み取り可能であり、非一時的であって、請求項12~19のいずれか一項に記載の方法を実施するためにコンピュータ又はプロセッサによって実行可能な一組の命令を含むコンピュータプログラムを記憶する記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[1.発明の分野]
本発明は、工業用又は家庭用の物品のケース、箱又はその他の部品若しくは要素などの、耐漏れ性が試験されなければならない壁及び/又は中空部品における漏れの検出に関する。なお、上記の例示は網羅的なものではない。
【0002】
本発明は、より具体的には、選択的な耐漏れ性を有する壁及び/又は部品、典型的には特定の条件下で(例えば、少なくとも所定の水圧まで)水などの液体に対しては耐漏れ性を有していなければならないものの、空気などの気体に対しては透過性を有する壁及び/又は部品における漏れの検出に関する。
【0003】
本発明の適用例は特に、例えば、特定状況下で水に沈むなど、湿潤な又は水性の媒体中で機能するように設計される耐漏れ性部品の製造における品質制御を含む。
【0004】
典型例は、ダイバー用腕時計の事例である。これには、内部の結露又は使用サイクルに応じた他の現象を回避又は抑制するためにガス交換が可能である一方、特定条件下で完全な水密性が求められる。
【0005】
別の例は、携帯電話機の事例、又はその他のタイプの持ち運び可能な電子的物品(カメラ等)である。これらは、水密性でなければならず、特に雨天時の使用に耐性を有し、水たまりに落下した電話機などの、特定条件下では耐水性でなければならない。
【背景技術】
【0006】
[2.従来技術]
選択的な耐漏れ性を有し、特に潜水用腕時計に適用可能である壁又はケースの耐漏れ性試験という点でいくつかの手法が知られており、その場合のケースは、例えば水が腕時計に侵入して内部機構を劣化させるのを防ぐための外部水密性のある壁が設けられる開口部を有する。このような壁は、この問題に関する精密な特徴により定められるある一定の深度まで水密性でなければならない(例えば、潜水用腕時計に関する非特許文献1を参照)。
【0007】
これらの潜水用腕時計はまた、空気と水の選択的な透過性を有する耐漏れ性の外部壁、換言すると、水密性でありつつ空気に対しては透過性を有する耐漏れ性の外部壁を有する。
【0008】
選択的な透過性を有するこのタイプの膜は、ある物質の粒子は通過させる一方、その他のものの通過を妨げる。例えば、選択は粒子のサイズに作用することができ(例えば顕微鏡レベルの篩のように)、又は物理的及び/もしくは化学的な引力もしくは斥力、又は分子の形状による。膜は、気体分子を通過させる程度に十分大きな孔を有するが、この孔は、液体の表面張力を上回るための圧力には小さすぎる(典型的には数ナノメートルの直径)。
【0009】
選択的な耐漏れ性を有する壁の耐漏れ性を試験するための知られている手法には、例えば、(手袋などの衣類の不透過性を試験するための)特許文献1に記載のものが含まれる。試験対象の手袋は、所定の内圧に達するまで空気を手袋内部に送り込む空気ポンプに接続される。所定の圧力に達すれば、手袋は水密性であり、適格とされる。さもなければ、その手袋は不適格である。
【0010】
しかし、精密ではない性質を有する膨張可能かつ変形可能な布製品には適用可能な、この試験のタイプは結局大まかなものであり、非常に小さな漏れの測定を行うため、さらにはそれを検出するためには使用することができない。
【0011】
知られている別の方法は、空気に対して孔質の要素を閉塞させることと、その集合体及び製品の他の要素の耐漏れ性を単に確認することからなる。
【0012】
しかし、このシステムの欠点は、この事例では孔質の要素それ自身を除いてすべての要素が試験されることである。
【0013】
腕時計の事例では、よく使用される耐漏れ性試験は、加圧した水中で所与の時間、腕時計のケースを保持することと、次いでそれを水中から取り出し、腕時計のガラスに冷水滴を塗布し、ガラスの裏に結露が現れるかどうかを観察することとからなる「冷水滴」(cold water drop)試験である。ガラスの裏に結露が発生した場合、その腕時計には耐漏れ性の点で問題がある。
【0014】
このような手法は、特定の作業条件を仮定し、2値の結果を得るために、換言すると、耐漏れ性の程度やその測定値についてのあらゆるさらなる情報を得ることなく、腕時計が耐漏れ性かどうかを判断するために、単純化がなされており、それによって選択的な耐漏れ性の測定の多くの事例に利用できない。
【0015】
さらには、このような手法はガラスが透明であることを必要とするが、常にそうであるとは限らない。
【0016】
また、特許文献2は、水に対する腕時計の不透過性を試験するための機器及び方法を記載したものとして知られている。記載の方法を使用して、劣化のリスクを防ぐために液体に浸す代わりに、ケースの内側と外側を異なる圧力にして腕時計のケースを気体雰囲気に曝す様々な方法を使用して腕時計の耐漏れ性を試験することができる。
【0017】
まず試験対象のケースを収容する格納部に接続され、次にケースの内部に接続され、2つのリザーバを備えた回路から構成されるデバイスを使用して、気体雰囲気中(差圧の瞬時検出又は遅延検出)又は水が存在する中のいずれかで、いくつかのタイプの試験を実施することができるが、ケースに非常に限定的な水の侵入しかできない予防的な加圧サイクルを作ることにより、微量の水を肉眼で確認し、あらゆる漏れの位置を特定することができる。
【0018】
しかし、この手法は精密な漏れ測定を行うために使用することができない。
【0019】
携帯電話機ケースの音響インターフェース(マイクロフォン及び/又はラウドスピーカ)の水密性の試験に適用可能な、特許文献3に説明されるような、水密性試験デバイスも知られている。このタイプのケースに必要とされる耐漏れ性は、選択的な耐漏れ性を有する膜を使用することで得られる。水密性試験は、測定された空気流と、基準となる物体で測定された対応する現実の水密性との対応表を使用して、空気の漏れ流速を測定することにより、空気の流れに対する緊密性を確認することによって行われる。空気の漏れ速度が所定の閾値よりも小さい場合、水密性が推定される。
【0020】
しかし、この試験システムは結局のところ精密ではなく、問題を生じやすく、空気の漏れ閾値を校正するために使用される基準となる物体が、試験対象の壁と類似の性質を有することを前提としており、信頼できる実務上の仮説ではなく、多くの状況に適用可能なものではない。
【0021】
さらには、いかなる現実の直接的又は間接的でも、水密性の測定を可能にするものではない。
【0022】
少量の漏れ検出の分野において、特に検出ならびに位置決め及び/又は測定のためのトレーサ気体による、様々な、知られている手法がある。
【0023】
したがって、特定の、非常に少量の漏れを、試験される部分の中に非常に高い真空を作り、次いでその部分に浸透できたトレーサ気体の分子を検出することにより、どのように検出するかが知られている。
【0024】
いくつかの手法は、試験対象の部品を封止(又はシール)し、それを格納容器の中に置き、その部分を加圧し、その格納容器を大気圧下で放置し、次いで、もしあればこの気体に感応性のある検出器を使用して、トレーサ気体の存在を検出するのに十分長い時間待つことからなる。
【0025】
蓄積手法であると言われているそのような手法は、試験対象の部品の製造スピードに見合わない可能性がある、実施するのに長い時間がかかるという欠点を有している。さもなければ、蓄積後のトレーサ気体の濃度が、市販の検出器で検出するのには低すぎる可能性がある。
【0026】
さらには、試験対象の壁がこのタイプの気体に対して透過性である場合、この気体は必然的に、可能性として非常に速く壁を通って漏れ、試験は信頼性がなく、完全に適切ではないこともある。
【0027】
それゆえ、少量の液体漏れの迅速かつ信頼性のある検出のために、改善された漏れ検出方法、又は先行技術とは異なる方法の必要性があり、それは、特定条件下で、水(又は他の液体)に対して選択的な透過性を有するが、必ずしも空気及び/又は他の気体に対してそうではない壁又は中空部品の漏れ試験の事例に使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【文献】米国特許第7131316号
【文献】米国特許3355932号
【文献】米国特許出願第2009164148号
【非特許文献】
【0029】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
[3.発明の目的]
本発明の目的は、先行技術の欠点のいくつかを克服することである。
【0031】
本発明の目的の1つは、ある使用条件下で水に対する良好な不透過性が必須である、壁及び中空部品における少量の水の漏れを検出及び測定することである。
【0032】
本発明の別の目的は、選択的な耐漏れ性を有し、換言すると、空気及び/又は気体に対して透過性であり水及び/又は液体に対しては不透過性である壁及び中空部品に適用可能なデバイス及び方法を提供することである。
【0033】
本発明の別の目的は、さらにごく少量の耐漏れ性の問題が検出できるような良好な測定精度を可能にする漏れ検出のデバイス及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
[4.発明の提示]
これらの目的、及び以下の説明から明らかとなる他の目的は、壁が2つの試験室の間で挟まれるように封止される試験用液体回路を使用して、気体と液体の選択的透過性を有する壁に適用可能な漏れ検出装置であって、
前記壁の上流に形成される第1の注入室であって、前記第1の注入室は前記試験用液体回路に設置されて試験用液体の注入及び加圧手段に接続される第1の注入室と、
前記壁の下流に形成される第2の試験室であって、前記第2の試験室は前記試験室の下流の真空生成手段に接続される、第2の試験室と
を備え、前記第2の試験室は前記第2の試験室内で気化した液体の検出手段に接続され、前記手段を使用して前記第2の試験室内の液体蒸気(liquid vapour)の量及び/もしくは液体蒸気の量の変化ならびに/又は液体蒸気流に関連する少なくとも1つのパラメータを検出及び/又は測定し、前記パラメータは前記壁を通る漏れ状況を示し、及び/又は表すものである、漏れ検出装置によって実現される。
【0035】
最も単純で最も頻度の高い本発明の使用において、試験用液体は水である。
【0036】
有利には、試験用液体蒸気の量、及び/又は液体蒸気の量の変化に関連するパラメータは、
気化した液体の存在を検出するパラメータと、
液体蒸気の流速を示すパラメータと、
気化した液体の存在と関連付けられる圧力変化を示すパラメータと、
壁を通る液体の存在及び/又は漏れ流速と関連付けられる圧力変化の速度を示すパラメータと
からなる群に属する。
【0037】
好ましい一実施形態において、前記パラメータは圧力変化の測定値からなり、前記第2の試験室内の前記液体蒸気の検出及び測定手段は、前記第2の試験室内の圧力及び/又は圧力変化を測定する手段から構成される。
【0038】
本発明の別の好ましい実施形態において、前記パラメータは流速の測定値からなり、前記第2の試験室内の前記液体蒸気の検出及び測定手段は、前記第2の試験室から生じる液体蒸気の流速を測定する手段から構成される。
【0039】
本発明の第1の実施形態において、前記壁は中空部品の外部壁であり、前記注入室は前記中空部品の内側によって形成され、前記試験室は前記中空部品が封止された格納容器の内部によって形成される。
【0040】
第2の実施形態において、前記壁は中空部品の外部壁であり、前記注入室は前記中空部品の内側によって形成され、前記注入室は前記中空部品が封止された格納容器の内部によって形成される。
【0041】
本発明による装置は、有利には
注入室は、封止された流路を通して試験用液体供給回路と連通し、前記試験液体供給回路は液体供給リザーバを備え、
前記液体供給回路は、前記液体供給リザーバと前記注入室との間に置かれるフィルタを備え、
前記格納容器の下流に配置される前記液体循環回路の部分は、真空ポンプと、液体放出リザーバとを備え、
前記真空生成手段は、試験室の圧力を、試験温度での使用される液体蒸気の分圧より低い圧力P2まで低下させ、
前記加圧手段は、注入室において試験用液体を大気圧、好ましくは4相対バール(bar)を上回る圧力P1まで加圧し、前記真空生成手段は、試験室の圧力を、2絶対kPaより低く、好ましくは1kPaよりも低い圧力P2まで低下させ、
本装置は試験手順において連続的なステップを制御及び試験するためのユニットを備え、複数の液体流調節バルブが制御される
という特徴を有する。
【0042】
本発明は、気体と液体の選択的透過性を有する壁の漏れを検出する方法に関する。本方法は、
格納部の内部に形成される2つの試験室、すなわち第1の注入室と第2の試験室との間に挟まれるように壁を封止するステップと、
前記壁の上流に形成される注入室を、前記試験用液体加圧手段によって圧力P1とされた、ある体積の試験用液体で満たすステップと、
前記注入室の圧力P1が前記試験室の圧力P2を上回るように、そして前記注入室から前記試験室へ液体が漏れるとその漏れた液体が前記試験室内で蒸発するように、前記試験室で圧力レベルP2を生成するステップと、
前記注入室から前記試験室に生じる液体蒸気の存在を、前記第2の試験室内の液体蒸気の量及び/もしくは液体蒸気の量の変化、ならびに/又は前記格納部から加圧デバイスP2への液体蒸気流に関連する少なくとも1つのパラメータを検出及び/又は測定することにより見いだすステップであって、前記パラメータが前記壁を通る漏れ状況を示し、及び/又は表現するものである、ステップと
を含む。
【0043】
壁が中空部品の枠を形成する場合、本発明による方法は、好ましくは、
前記試験室を形成する格納容器内に作成された前記注入室を形成する前記中空部品を封止するステップと、
前記注入室を、圧力P1まで加圧された体積Fの液体で満たすステップと、
前記中空部品内の圧力P1が前記格納容器内の圧力P2を上回るように、そして前記中空部品から前記格納部へ液体が漏れるとその漏れた液体が前記格納容器内で蒸発するように、前記格納容器内で圧力レベルP2を生成するステップと、
前記中空部品から前記室に生じる液体蒸気の存在を、前記第2の試験室内の液体蒸気の量及び/もしくは液体蒸気の量の変化、ならびに/又は前記格納部から加圧デバイスP2への液体蒸気流に関連する少なくとも1つのパラメータを検出及び/又は測定することにより見いだすステップであって、前記パラメータは前記壁を通る漏れ状況を示し、及び/又は表すものである、ステップと
を含む。
【0044】
両方の事例において、本方法は
前記第1の注入室への前記試験液体注入及び加圧フェーズ(又はステップ)と、
前記第2の試験室内の真空生成フェーズと、
必要に応じて行われる安定化フェーズと、
前記パラメータの検出及び/又は測定によって、試験室内の液体蒸気の増加を探索するフェーズと、
試験液体圧力減少及び排気フェーズと
のうちすべて又はいくつかを含む。
【0045】
有利には、本発明による方法はまた、前記第1の注入室内の試験液体の注入及び加圧フェーズの前に、放出フェーズ及び/又は校正フェーズを含む。
【0046】
本発明による方法の特定の一実施形態において、前記第1の注入室内の前記試験用液体注入及び加圧フェーズは2つのステップ、すなわち
概して0.2相対バール未満であり、好ましくは0.05相対バールである第1の低注入圧まで試験用液体回路を満たし、満たされた回路内の空気を排気する第1のステップと
概して大気圧を上回り、好ましくは4相対バールに等しい第2の試験圧力までの第2の試験用液体加圧ステップと
からなる。
【0047】
有利には、前記第2の試験室内の真空生成フェーズは、試験室の圧力を、試験温度での使用される液体蒸気の分圧未満であり、典型的には2kPa未満であり、好ましくは1kPa未満である圧力P2まで低下させることからなる。
【0048】
好ましくは、液体蒸気の増加を見いだすフェーズは、
前記試験室内の圧力変化P2を測定するサブステップと
前記格納容器から、圧力をP2まで上昇させるデバイスへと向かう液体蒸気流を測定するサブステップと
のいずれかを含む。
【0049】
有利には、本発明による方法は試験用液体として水を使用する。
【0050】
本発明はまた、本発明による方法の特徴のうちすべて又はいくつかを利用する装置を包含することを目的としており、場合によっては前記方法のフェーズのうちすべて又はいくつかを選択的に作動させる試験サイクル制御手段を備える。
【0051】
本発明の別の目的は、問題の方法及び/又は装置の異なる特定の使用、すなわち、選択的な透過性を有する膜、典型的にはGoreTexから構成される膜、ePTFEから作られる膜、又は同等の物質によって閉じられる少なくとも1つのオリフィスを備える壁の試験に対する方法及び/又は装置の特定の適用からなる。
【0052】
間接的な一変形例において、本発明の原理は、試験手順の前に試験液体注入及び加圧フェーズが別の予備的なステップにて実施され、試験手順の前に中空部品が液体で満たされて封止されるような事例への、かかる適用からなることができる。
【0053】
最終的に、本発明の別の目的は、コンピュータによって読みとることが可能で、非一時的であり、本発明の方法を実施するためにコンピュータ又はプロセッサによって実行することができる一組の命令を含むコンピュータプログラムを記憶する記憶媒体である。
【0054】
[5.図面のリスト]
本発明及びその様々な利点は、図示的及び非限定的な本発明の実施形態及び添付の図面の以下の説明を読むことにより、より容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】本発明の一実施形態による装置の簡略化した説明図である。
【
図2】
図1の実施形態による装置の全体的な説明図である。
【
図3】校正フェーズの間の
図1の実施形態による装置の説明図である。
【
図5】本発明の装置で実施する一連の校正試験を表すグラフである。
【
図6】本発明の装置及び方法を使用する、一組の中空部品に行われる一連の典型的な漏れ検出及び測定試験を表すグラフである。
【
図7】本発明の試験方法の実行における連続的なフェーズの間の、
図2による装置の主なバルブの連続的な構成を例示する表である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
[6.本発明による装置及び方法の一実施形態の詳細な説明]
本発明の一実施形態及び考えられる変形例を、
図1から
図5を参照して説明する。
【0057】
説明される実施形態において、説明対象の壁は、空気と水の選択的な透過性を有する壁である。
【0058】
しかし、本発明は、選択的な空気と水の透過性を有する壁に限定されず、選択的な気体と水の透過性を有する他の壁に適用することができる。
【0059】
絶対圧力とは、真空における圧力ゼロに対する圧力を意味することにもまた留意されたい。相対圧力とは、そのときの周囲の気圧に対する圧力を意味し、この事例では大気圧である。
【0060】
[6.1 本発明による漏れ検出方法の好ましい実施形態の説明]
図1及び
図2に、選択的な空気・水の透過性を有する壁1の漏れ検出のための装置の簡略化した実施形態を示す。
【0061】
壁1が中空部品である場合、注入室10は中空部品の内側に形成され、試験室11は中空部品が封止されている格納容器2内に形成される。
【0062】
しかし、試験室が中空部品の内側に形成され、中空部品が封止された格納容器2内に注入室が形成される実施形態も想定できる。
【0063】
壁1は好ましくは選択的な空気・水の透過性を有する壁であり、水に対して不透過性であるが、空気に対しては透過性である。したがって、通常操作の間、このような壁は水を通過させず、又は中空部品の事例の場合、この部分の要素が劣化することを回避するために水を中空部品の内部に入らせない。また、この壁は結露現象を回避するために、中空部品の内部の空気を逃がす。
【0064】
例えば、潜水用腕時計の事例では、腕時計のケースはその機構の損傷を回避するために、少なくとも所与の深度まで(したがって、所与の圧力まで)水密性でなければならない。しかし、腕時計のケースは、腕時計のケースの内側と外側で空気の温度、圧力及び成分状態を調和させるため、例えば、腕時計のガラスに結露が発生するのを防ぐため、空気が入り、及び/又は逃げさせる必要がある。
【0065】
第1の注入室10は壁1の上流に形成され、第2の試験室11はこの壁1の下流に形成される。
【0066】
結果的に、試験対象の壁1は、その壁が内部に置かれている格納部容器を、上流にある第1の注入室と、下流にある第2の試験室11との2つに分けるものである。
【0067】
本装置は、第2の試験室11内の気化した水を検出する手段をも備える。
【0068】
この手段は、第2の試験室内の水蒸気の量及び/又は水蒸気の量の変化に関連する少なくとも1つのパラメータを検出及び/又は測定することができる。
【0069】
このパラメータは、壁を通る漏れ状況を示し、及び/又は表すため、壁1が透過的かどうかについて指標を与える。
【0070】
異なる実施形態によると、試験の水蒸気の量及び/又は水蒸気の量の変化に関連するこのパラメータは、
気化した水の存在を検出するパラメータと、
気化した水の存在に関連付けられる圧力変化を示すパラメータと、
気化した水の流速を示すパラメータと、
壁を通る水の漏れの存在に関連付けられる圧力変化の速度を示すパラメータと
の群のパラメータのうちの1つであり得る。
【0071】
例示した実施形態において、このパラメータは試験室11内の圧力変化の測定値から構成される。
【0072】
壁1について漏れ検出方法を使用する場合、壁1は、格納容器2内に形成される2つの試験室、すなわち第1の注入室10と第2の試験室11との間で封止される。
【0073】
壁1が中空部品である場合、第1の注入室10を形成する中空部品1は、封止されており、第2の試験室11を形成する格納容器2内に置かれる。
【0074】
そして、壁1の上流に形成された注入室10は、試験水加圧手段61、62により圧力P1とされた体積Fの試験水で満たされる。
【0075】
加圧手段61(この例においては0.1バールの圧力導管である)は、水回路の初期化のため、及び回路内の残留空気を流し出すために使用される。
【0076】
この導管は、バルブ57を介して水回路に接続される。このバルブが開いているか閉じているかによって、この導管を回路に接続又は回路から切り離すことができる。
【0077】
第1の注入室10は、格納容器2を通過し第1の注入室10の場所で開口している漏れ止め流路50を介して水供給回路5と連通しており、体積Fの試験水が第1の注入室へもたらされる。
【0078】
試験対象の壁が中空部品であるとすると、漏れ止め流路は格納部2を通過して中空部品1の場所で開口する。
【0079】
図2に具体的に示すように、水供給回路は水供給リザーバ51をも備える。水供給リザーバ51は、試験水を第1の注入室10内部に運ぶ。
【0080】
この水供給回路は、水放出リザーバ52をも備える。水放出リザーバ52は、開始時と試験終了後の装置からの液排出時とにおいて、第1の注入室10を出て残っている水を回路から水回路出口を通じて回収する。
【0081】
本明細書で使用される試験水は、試験対象となる壁の物理的な性質を劣化させるべきではなく、またこれらの壁に目詰まりを起こしてはならない。
【0082】
例えば、蒸留水、又は少なくとも蓄積、堆積、及び/又は一時的な閉塞現象により漏れの測定の効果が最小になることを防ぐために、少なくともいくらかのミネラル分又は有機物が除去された水を使用することができる。
【0083】
水供給回路は、水供給リザーバ51と注入室10の間に置かれたフィルタ53をも備える。これにより、試験水には試験を妨げる可能性のあるあらゆる不純物が含まれない。
【0084】
最後に、この実施形態において、水供給回路を通って循環する水の流れFが調節できるように、回路は水供給リザーバ、水放出リザーバ、及び空気入り口の近くに置かれるいくつかのバルブ54、55、56、57を備える。回路はバルブ30をも備える。
【0085】
バルブ55はバルブ後方において水が検出されるとすぐに閉じられる。特に加圧手段62により水を加圧するバルブ56が開いている間も、バルブ5は閉じられる。
【0086】
したがって、試験水は、これらの注入手段により注入室10に向かって運ばれ、加圧手段62によって加圧される。加圧手段62は、1相対バールを上回る圧力へ、好ましくは4相対バールを上回る圧力へと、圧力を上昇させる。
【0087】
水の漏れが大きい事例において排出される水の体積は、回路内の水の体積が小さい場合は、小さくなるということに留意すべきである。結果的に、試験サイクルができる短くなるように、特に機器が製造ライン又は試験ラインで物体を試験するように設計される場合、水回路内には最小体積の水を有することが好ましい。
【0088】
第1の注入室10内の圧力P1が第2の試験室11内の圧力P2を上回るものとなるような圧力P2が、第2の試験室11内で生じる。そして、注入室10から試験室11への水漏れがあると、手段3により、漏れた水は試験室11内で蒸発する。この手段3は、第2の試験室11の下流において水が全部蒸発することを保証するのに十分な高真空を生成する。
【0089】
例示した実施形態によると、これらの真空生成手段は、空気真空ポンプ3の形態である。
【0090】
この空気真空ポンプ3は試験室11内に2絶対kPa未満、好ましくは1kPa未満の圧力P2を生成できる(これらの指標値は、周囲温度が約20℃の時についての試験条件で与えられる)。高真空に対応するそのような圧力は、以下で分かるように試験室内の水の存在をより良く検出することを可能にする。
【0091】
本発明の原理によると、第1の注入室10内の圧力P1は真空に近い格納部2内の圧力P2を非常に大きく上回るため、漏れた水はその部分から逃げ、第1の注入室10から壁1を通って第2の注入室11へ通過する際に真空に近い圧力によってこの逃げる水が蒸発する。
【0092】
漏れた水の蒸発は、第2の試験室11が典型的には1kPa未満の高真空下(この圧力が、水の蒸気圧以下となる温度条件下で)にあることの直接的な結果である。
【0093】
水が全部蒸発することを保証するのに十分な高真空についての概念は、温度と圧力に応じた水の状態図を示す
図4を参照して説明する。
【0094】
試験液体の物理的な蒸発現象は、試験温度での使用される液体蒸気の分圧に直接的に関連している(すなわち換言すると、その試験温度で液体が気体相であるような真空圧力)。
【0095】
図4から分かるように、摂氏20度の温度では、水の蒸気圧は約20hPa、つまり2kPaである。
【0096】
水が全部蒸発することを保証するために、およそ15hPa、つまり1.5kPaに等しい真空圧力を生成することによって蒸気圧から「セーフティマージン」を設けることも可能であろう。
【0097】
次のステップは、第2の試験室11内の水蒸気を検出及び/又は測定することによって第2の試験室11における水の存在を見いだすことからなる。
【0098】
図面で例示する実施形態において、水蒸気の探索は第2の試験室11内の圧力P2の変化を測定することによって行われる。
【0099】
第2の試験室11内の圧力P2の変化についてのこの測定は、圧力測定手段4によって行われる。例えば、ATEQ F28LPV(登録商標)という機器を圧力測定に使用することができる。
【0100】
この圧力測定の間、圧力変化の精密な測定ができるように試験室11が閉じられている(バルブ30)ことが好ましいということに留意するべきである。
【0101】
しかし、例えば、流量計など、試験室内の水蒸気の増加を測定する他の手段を使用することも可能であろう。
【0102】
したがって、本発明による装置のこの幾つかの実施形態において、第2の試験室11における水蒸気の存在を検出及び測定する上記手段は、手段4からなる。この手段4は、第2の試験室11を出て、試験室11内の圧力を圧力P2とするように設計されている真空ポンプへと向かう水蒸気の流れを測定する。この場合、試験室11は閉じられておらず、真空生成システムとつながったままである。圧力はこれまでに述べたようには上昇せず、維持され、したがって到来する水蒸気は圧力上昇ではなく抽出される流れとなる。
【0103】
測定機器であるATEQ F28LPV(登録商標)は、1/10Pascalの分解能を有する。
【0104】
この圧力測定手段はまた、PCを使用して圧力測定値及び圧力測定値の変化についての様々な情報を入手できるように、リモートユーザインターフェースを有している。
【0105】
そのような特性により、数十Pascalのオーダーの圧力変化を精密に測定できる能力のおかげで非常に小さな漏れであっても、水漏れの検出の感度を大きく改善することができる。
【0106】
例えば、数Pascalのオーダーの、圧力における小さな変化は、壁1における非常に小さな漏れを表す。
【0107】
これを例示するために、1molの水を蒸発させ、24標準L(標準リットル、すなわち標準大気圧でのリットル)の水蒸気を得る。結果的に、300μg/分の流れの水漏れは、0.4sccm(standard cubic centimetres per minute)の蒸気漏れを表す。したがって、10ccの体積に対する試験では、これは毎秒67Pascalに等しい圧力変化を表す。
【0108】
したがって、圧力P2の変化を測定することによる第2の試験室11内の相対湿度の測定は、Pascal単位で測定されるこの圧力P2の変化する小さい変化を検出でき、ひいては水の毎分数十マイクログラムを超えない漏れの検出に基づいて壁1が耐漏れ性かどうかを判定することができる。
【0109】
1モル当たりの、グラム単位での水のモル質量の値をXとすると、時間dt当たりに漏れ出るモル速度dnは
【数1】
であることが分かっている。ただし、dmは時間dtの間に漏れ出た水の質量に対応する。
【0110】
水蒸気が理想気体であるとすると、理想気体の法則を適用できる。したがって、これは
【数2】
である圧力上昇dPに対応する。ただし、Rは、8.314kg・m
2・s
-2・K
-1・mol
-1であって理想気体定数であり、Xは水1モルの質量のグラム単位の値であり、すなわち18g・mol
-1である。
【0111】
摂氏25度の基準温度について、以下の結果が得られる。
【数3】
ただし、Vは格納容器の自由容積(単位:cm
3)であり、言い換えれば、格納容器の全容積から中空部品1が占める体積を引いたものである。
【0112】
したがって、試験室11内の所与の容積について、第2の試験室11内の圧力差と待機時間中に追加された水の質量との間には直接的な関連性があり、漏れにより壁1を通過した水の質量に対応する。
【0113】
実際の試験に装置を使用する前に、装置の校正フェーズを実施することが有用である。
【0114】
この校正フェーズについて、手順は例えば壁を通過する漏れの検出のものと同じであってもよいが、試験水の代わりに空気を注入することによるものである。
【0115】
図3に、校正ステップにおける装置の具体的なセットアップを示す。
【0116】
この校正ステップでは、試験対象の壁の代わりに「ダミー」の試験片を使用する。
【0117】
そのような「ダミー」部品は例えば標準的なオリフィスを有する、又は有していない、機械加工されたダミー部品であってもよい。
【0118】
「ダミー」部品を、試験室を形成する試験格納部内に置き、タップ58を開けて試験水の代わりに空気を注入室に入れる。バルブ56、30及び圧力測定機器4もまた装置を校正するために開けられる。
【0119】
したがって、入り口での空気圧を制御し、出口での圧力上昇を測定することによって、流速は標準オリフィスの校正証明書により知り、装置の試験容積を推測できる。
【0120】
このように校正された容積は、次いで以下に説明する水の漏れを測定するための式において使用される。
【数4】
【0121】
したがって、第2の試験室内の圧力変化を測定することによって、上記の実施形態の説明によって例示されるように、本発明による装置を使用して、第1の注入室から生じる第2の室内の水蒸気の存在を検出し、それにより試験された壁及び/又は部品を通る潜在的な漏れの検出及び測定ができる。結果的に本発明を使用して壁の水に対する不透過性を試験することができる。
【0122】
本発明を使用して水以外の液体の、気体・水以外の選択的な透過性を有する壁についての漏れを検出することもできる。この事例では、漏れを検出及び測定するそのような方法は第2の試験室内の水蒸気の量を測定するステップは含まないことがあるが、むしろ壁が透過性でなければならない流体に関連する気体の量を測定するステップであることもあり、そのような検出はまた第2の試験室内の圧力変化を測定することにより可能である。
【0123】
したがって、本発明による方法及び装置を選択的な透過性を有する膜により閉じられた少なくとも1つのオリフィスを備える壁を試験する適用例において、使用することができる。
【0124】
好ましい一実施形態によると、選択的な透過性を有する壁は、GoreTex、ePTFE又は同等の物質から構成される。
【0125】
間接的な一変形例において、本発明を、空気又は他の気体に対してさえも緊密でなければならない壁を備える製品の緊密性(耐漏れ性)の試験に適用することもできることに留意されたい。この事例では、試験室内の液体蒸気の増加の検出及び/又は測定は、試験される壁の全体的な耐漏れ性を表している。このタイプの使用を、例えば、壁の耐漏れ性が試験される液体で満たされた部分の事例に適合することができる。
【0126】
[6.2 試験方法の機能的なサイクルの好ましい実施形態の説明]
次に試験方法の好ましい機能的なサイクルを、
図7を参照して提示する。
【0127】
図7の表は、試験手順の異なるステップでの、試験回路の異なる構成要素(タップ、バルブ、測定機器)の状態を提示している。文字「O」はタップ又はバルブが開いていること(又は機器が機能していること)を意味しており、また文字「F」はタップ又はバルブが閉じていること(又は機器が使用されていないこと)を意味している。
【0128】
上述のように、漏れ検出方法は有利には、
試験水の前記第1の注入室10への注入及び加圧フェーズと、
前記第2の試験室11内の真空生成フェーズと、
安定化フェーズと、
前記圧力上昇パラメータの検出及び/又は測定により、試験室内の水蒸気の存在又は増加を探索するためのフェーズと、
試験水の圧力減少及び排気フェーズと
のうちすべて又はいくつかを含む。
【0129】
第1の漏れ検出試験についての注入及び加圧フェーズの前に、上述のように装置を適切に校正するために、校正フェーズを利用することが必要なこともある。
【0130】
試験サイクルは、試験水の第1の注入室10への注入及び加圧フェーズを含む。
【0131】
この試験水の第1の注入室への注入及び加圧フェーズは、2つのステップ、すなわち
第1の注入圧力で試験水を注入し、空気を排気する第1のステップと、
第2の試験圧力で第2の水を加圧するステップと
からなる。
【0132】
第1の試験水注入ステップの間、タップ57、58及び試験水回路5への清浄水入り口バルブ54、ならびにバルブ55は、放出リザーバを介して空気を排気できるようにしており、開位置にある。バルブ30、56及び測定機器4は閉じている。
【0133】
次いで本方法は、試験格納部が真空状態に置かれるフェーズを含む。真空生成手段3が第2の試験室11を加圧できるようにバルブ30は開いている。目標の圧力に達することができない場合、大きな水の漏れがあるはずであり、システムは水を直接排出する最後のフェーズへ移る。
【0134】
試験格納部内に真空を生成するこのフェーズは、第1の試験水注入ステップの前に実行することができるということに留意すべきである。
【0135】
次いで、第2の試験圧力まで第2の水を加圧するフェーズが行われ、これはまた第1の注入室10の加圧に対応する。この第2のステップの間、タップ57及びバルブ54は清浄水を供給回路5へ入れるようにし、注入室の加圧のためのバルブ56が開いている間、抜きバルブ55は閉じられる。
【0136】
次に、安定化フェーズを実施してもよい。このフェーズの間、装置の様々な要素は結局先行するフェーズと同じである。安定化フェーズでは、システムは平衡状態になることができ、漏れは定常状態に入ることができ、それによって、圧力変化速度ひいては漏れの「大きさ」の信頼できる測定が可能となる(以下を参照)。
【0137】
ついでながら、実際の試験フェーズの間、試験液体は気体相に変化するので冷却され、試験媒体の温度を周囲温度より低下させるが、測定操作にはこれを考慮すべきかもしれない、ということに留意すべきである。
【0138】
次いで、試験は第2の試験室11内の圧力変化の測定により、水蒸気の変化速度を測定するフェーズを含む。このフェーズにおいては、異なる要求される圧力が達成されるため、測定手段4が作動している間は、真空生成手段3を回路に接続するバルブ30は作動を停止する。例示した実施形態において説明したように、測定ステップが行われる。
【0139】
最後に、水蒸気の変化速度の測定するためのフェーズが停止すると、試験サイクルは、圧力測定を終了し、試験水回路5を排水するフェーズを開始する。注入室から出ていく水を放出リザーバ52に排出することができるように、バルブ55が開けられ、真空ポンプ3へのアクセスバルブ30が開けられる。タップ58及びバルブ56も開いたままである。
【0140】
大量の液体をもたらす大きな漏れの事例では、バルブ55は液体を排水するために使用するべきであり、次いですべてのバルブを閉めなければならないことに留意されたい。次いで、回路が適切に乾燥されており、すべてのものが次の試験に準備できていれば、要求される真空レベルに達するまで真空を生成し続ける必要がある。
【0141】
本発明の一実施形態によると、試験液体注入及び加圧フェーズは、別個の後のステップの間、試験手順の前に、実施することもできることに留意すべきである。この事例では、中空部品が液体で満たされ、試験手順の前に封止される。
【0142】
換言すると、本発明に含まれるが例示したものに代替的な実施形態は、部品が試験場所とは離れた場所で、試験される部品の製造ラインにおける試験場所の前に、液体で満たされ封止され、試験液体の注入及び加圧についての別個の予備的なステップを含むことができる。
【0143】
[6.3 検出方法の試験の結果]
上述の試験方法を使用する上述のような装置を使用して得られた典型的な試験結果を
図3、及び
図4を参照して以下に説明する。
【0144】
上述の装置校正フェーズは試験室内の変化を測定することによる漏れ測定を開始する前に行われる。
【0145】
図3は、前述の校正条件下で15cm
3に等しい試験室について、膜を有していない、ダミーの漏れのない校正部品について得られた典型的な試験結果を、測定された圧力変化と対応する水の漏れを毎分の質量に計算したものとの関係を与える図の形式で表す。
【0146】
漏れのないこの図では、測定された値が2Pascalのオーダーでの圧力差について20μg/分に近くなり得、これは測定システムの安定限界に対応することができる残余値に等価であることが分かる。
【0147】
図4は一組の部品に実施された試験の典型的な結果を示しており、そのうちのいくつかには実際に漏れがある。
【0148】
特に、この図で例示するように、試験番号14,22、及び26を含む第1のシリーズの壁についての結果は、>500μg/分、305μg/分、及び310μg/分に等しい分単位の水の漏れの測定された値を示している。結果的に、これらの壁は著しい水の漏れを含むことが分かる。
【0149】
他の試験については、40~50μg/分に等しい分単位の水の漏れの測定された値を示している。この値は壁を通って逃げる水蒸気の分圧に対応する。
【0150】
第1のシリーズと他の試験の間の差は有意であり、本発明により定量化可能、作業者によって決定される閾値に関連付けられて、水密性である部分とそうでない部分を区別する。
【0151】
この点において、
図4を参照して上で議論した「部分的な蒸気圧(Partial vapour pressure)」の概念に関連して、膜の漏れがなくても、試験室では常に蒸気が観察され、測定値はゼロにはならない。
【0152】
結果としては、行われた測定において「オフセット」を考慮する必要があるということである。
例)真空レベル=1絶対kPa
部分的な蒸気圧=2絶対kPa
【0153】
[漏れのない膜の場合]
2-1=1kPaであるΔPでの蒸気2kPaが、膜の性質に依存するある一定の流速で膜を通過する。この蒸気の流れが測定され、オフセットに対応する。
【0154】
[漏れのある膜の場合]
前述の流れに追加で、1kPaの真空で所与の水の流れが膜の他方の側へ逃げ、完全に蒸発して測定され、したがって前述のオフセットに追加される。
【0155】
したがって、良好な部分と漏れのある部分との間の区別閾値の選択は、このオフセットを考慮しなければならない。