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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】レーザ処理装置及びレーザ光モニタ方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/268 20060101AFI20240724BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
H01L21/268 T
H01L21/268 J
H01L21/20
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019165811
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021044412
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】521476506
【氏名又は名称】JSWアクティナシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】大森 賢一
(72)【発明者】
【氏名】鄭 石煥
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮介
(72)【発明者】
【氏名】太田 佑三郎
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-049606(JP,A)
【文献】特開2001-156016(JP,A)
【文献】特開平11-283933(JP,A)
【文献】特開2001-338892(JP,A)
【文献】国際公開第2004/040628(WO,A1)
【文献】特開2012-028569(JP,A)
【文献】特開2003-258349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/268
H01L 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体に照射するためのレーザ光を発生させるレーザ発生装置と、
前記レーザ光に含まれる第1の部分光及び第2の部分光を検出する光検出装置と、
前記第1の部分光の検出結果と前記第2の部分光の検出結果とを比較するモニタ部と、を備え、
前記レーザ光は、基板上を走査し、前記基板上の非結晶膜を結晶化して結晶化膜を形成するためのラインビームであって、前記走査方向と直交する方向に延びるラインビームを含み、
前記第1の部分光及び第2の部分光は、前記ラインビームの断面における短手方向に並ぶ第1の部分及び第2の部分の光を含
前記光検出装置は、
前記第1の部分光を検出する第1の光検出器と、
前記第2の部分光を検出する第2の光検出器と、を備え、
前記モニタ部は、前記第1の光検出器により検出した前記第1の部分光の波形と前記第2の光検出器が検出した前記第2の部分光の波形とを比較する、
レーザ処理装置。
【請求項2】
前記レーザ光は、ガスレーザ光である請求項1に記載のレーザ処理装置。
【請求項3】
前記レーザ光は、エキシマレーザ光である請求項2に記載のレーザ処理装置。
【請求項4】
前記レーザ光を複数の分割ビームに分割する光学系をさらに備え、
前記光検出装置は、前記第1及び第2の部分光として、前記複数の分割ビームに含まれる第1の分割ビーム及び第2の分割ビームを検出する請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【請求項5】
前記光検出装置は、前記第1及び第2の部分光として、前記複数の分割ビームに含まれる第1の分割ビーム群及び第2の分割ビーム群を検出する請求項4に記載のレーザ処理装置。
【請求項6】
前記光検出装置は、
前記第1の部分光を第1の光検出器に集光する第1の集光レンズと、
前記第2の部分光を第2の光検出器に集光する第1の集光レンズとを備える請求項1~5のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【請求項7】
前記光検出装置は、前記第1の部分光及び前記第2の部分光を透過するスリットをさらに備える請求項1~6のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【請求項8】
前記モニタ部は、前記波形の評価パラメータの差を求める請求項1~7のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【請求項9】
前記評価パラメータは、前記波形のピーク値又はエネルギーを含む請求項に記載のレーザ処理装置。
【請求項10】
前記モニタ部は、前記波形の評価パラメータの統計値の差を求める請求項又はに記載のレーザ処理装置。
【請求項11】
前記統計値は、分散値、平均値、最小値、又は最大値を含む請求項10に記載のレーザ処理装置。
【請求項12】
前記比較した結果に基づいて、前記レーザ発生装置における前記レーザ光の発生条件を制御する制御部をさらに備える請求項1~11のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記レーザ発生装置が有する共振器ミラーの角度を制御する請求項12に記載のレーザ処理装置。
【請求項14】
(A)被処理体に照射するためのレーザ光を発生させるステップと、
(B)前記レーザ光に含まれる第1の部分光及び第2の部分光を検出するステップと、
(C)前記第1の部分光の検出結果と前記第2の部分光の検出結果とを比較するステップと、を備え、
前記レーザ光は、基板上を走査し、前記基板上の非結晶膜を結晶化して結晶化膜を形成するためのラインビームであって、前記走査方向と直交する方向に延びるラインビームを含み、
前記第1の部分光及び第2の部分光は、前記ラインビームの断面における短手方向に並ぶ第1の部分及び第2の部分の光を含
前記(B)では、
第1の光検出器により前記第1の部分光を検出し、
第2の光検出器により前記第2の部分光を検出し、
前記(C)では、前記第1の光検出器により検出した前記第1の部分光の波形と前記第2の光検出器が検出した前記第2の部分光の波形とを比較する、
レーザ光モニタ方法。
【請求項15】
(D)前記比較した結果に基づいて、前記レーザ光の発生条件を制御するステップをさらに備える請求項14に記載のレーザ光モニタ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ処理装置及びレーザ光モニタ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板やガラス基板などに形成された非晶質膜にレーザ光を照射することにより、非晶質膜を結晶化させて結晶化膜を形成するレーザアニール装置が知られている。例えば、特許文献1に、関連するレーザアニール装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5829575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザアニール装置のようなレーザ処理装置では、被処理体に対して適切なレーザ光を照射し、高品質な半導体膜を形成することが望まれている。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態によれば、レーザ処理装置は、被処理体に照射するためのレーザ光を発生させるレーザ発生装置と、前記レーザ光に含まれる第1の部分光及び第2の部分光を検出する光検出装置と、前記第1の部分光の検出結果と前記第2の部分光の検出結果とを比較するモニタ部と、を備えている。
【0007】
一実施の形態によれば、レーザ光モニタ方法は、(A)被処理体に照射するためのレーザ光を発生させるステップと、(B)前記レーザ光に含まれる第1の部分光及び第2の部分光を検出するステップと、(C)前記第1の部分光の検出結果と前記第2の部分光の検出結果とを比較するステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
前記一実施の形態によれば、高品質な半導体膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係るレーザアニール装置の構成例を示す図である。
図2】実施の形態1に係るレーザアニール装置の他の構成例を示す図である。
図3】レーザアニール装置により形成される結晶化膜の状態を模式的に示す図である。
図4】レーザアニール装置におけるレーザ光の関係を説明するための図である。
図5】比較例のパルス計測器の概略構成を示す側面図である。
図6】比較例のパルス計測器の概略構成を示す斜視図である。
図7】実施の形態1に係るパルス計測器の概略構成を示す側面図である。
図8】実施の形態1に係るパルス計測器の概略構成を示す斜視図である。
図9】実施の形態1に係るパルス波形モニタ方法を示すフローチャートである。
図10】実施の形態1に係るパルス波形モニタ方法でモニタされるパルス波形の一例を示す図である。
図11】パルス波形の計測結果を示すグラフである。
図12】パルス波形の評価結果を示すグラフである。
図13】パルス波形の評価結果を示すグラフである。
図14】実施の形態2に係るパルス計測器の概略構成を示す側面図である。
図15】実施の形態2に係るパルス計測器の概略構成を示す斜視図である。
図16】実施の形態2に係るパルス計測器で使用されるスリットの概略構成を示す正面図である。
図17】実施の形態2に係るパルス計測器の概略構成を示す側面図である。
図18】実施の形態2に係るパルス計測器の概略構成を示す側面図である。
図19】変形例に係るパルス計測器の概略構成を示す側面図である。
図20】実施の形態3に係るパルス計測器の概略構成を示す側面図である。
図21】実施の形態3に係るパルス計測器の概略構成を示す斜視図である。
図22】実施の形態3に係るパルス計測器で使用されるスリットの概略構成を示す正面図である。
図23】その他の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図24】その他の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図25】その他の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図26】その他の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図27】その他の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0011】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1に係るレーザ処理装置及びレーザ光モニタ方法について説明する。実施の形態1に係るレーザ処理装置は、例えば、低温ポリシリコン(LTPS:Low Temperature Poly-Silicon)膜を形成するエキシマレーザアニール(ELA:Excimer laser Anneal)装置である。
【0012】
<ELA装置の構成>
図1を用いて、本実施の形態に係るELA装置1の構成について説明する。図1は、ELA装置1の構成を示す図である。ELA装置1は、レーザ光L3を基板200上に形成されたシリコン膜201に照射する。これにより、非晶質のシリコン膜(アモルファスシリコン膜:a-Si膜)201を多結晶のシリコン膜(ポリシリコン膜:p-Si膜)201に変換することができる。基板200は、例えば、ガラス基板などの透明基板である。
【0013】
なお、図1で示されるXYZ三次元直交座標系において、Z方向は、鉛直方向となり、基板200に垂直な方向である。XY平面は、基板200のシリコン膜201が形成された面と平行な平面である。例えば、X方向は、矩形状の基板200の長手方向となり、Y方向は基板200の短手方向となる。なお、Z軸を中心に0°から90°に回転可能なΘ軸ステージを使用する場合、X方向は基板200の短手方向となり、Y方向は基板200の長手方向となりうる。
【0014】
図1に示すように、ELA装置1は、アニール光学系2、レーザ照射室50、パルス計測器100、モニタ装置60、及び制御装置70を備えている。なお、図1の構成は一例であり、例えば、図2に示すように、ELA装置1は、本実施の形態に係るモニタ方法を実施するため、少なくとも、レーザ発振器10、パルス計測器100、及びモニタ装置60を備えていてもよい。
【0015】
レーザ照射室50は、ベース52と、ベース52上に配置されたステージ51とを収容する。ELA装置1では、ステージ51により基板200を+X方向に搬送しながら、シリコン膜201にレーザ光L3が照射される。図1では、シリコン膜201において、レーザ光L3の照射前のシリコン膜201をアモルファスシリコン膜201aと示し、レーザ光L3の照射後のシリコン膜201はポリシリコン膜201bと示している。
【0016】
アニール光学系2は、アモルファスシリコン膜201aを結晶化するためのレーザ光を生成し、シリコン膜201に照射するための光学系である。具体的には、アニール光学系2は、レーザ発振器10、入力光学系20、ビーム整形器30、及び落射ミラー40を備えている。
【0017】
レーザ発振器10は、アモルファスシリコン膜201a(被処理体)に照射するためのレーザ光として、パルスレーザ光を発生させるレーザ発生装置である。発生させるレーザ光は、基板上の非結晶膜を結晶化して結晶化膜を形成するためのレーザ光であり、例えば、ガスレーザ光である。本実施の形態では、ガスレーザ光の一例として、中心波長308nmのエキシマレーザ光を用いる。なお、エキシマレーザに限らず、Co2レーザなど、その他のガスレーザでもよい。レーザ発振器10には、チャンバ内に塩素等のガスが封入されると共に、2枚の共振器ミラー11及び12がガスを挟んで対向するように配置されている。共振器ミラー11は、全ての光を反射する全反射ミラーであり、共振器ミラー12は、一部の光を透過する部分反射ミラーである。ガスによって励起されたガス光L0が共振器ミラー11及び12の間で反射を繰り返し、増幅された光が共振器ミラー12からレーザ光L1として放出される。例えば、レーザ発振器10は、パルス状のレーザ光L1を、500Hz~600Hzの周期で繰り返し放出する。レーザ発振器10は、レーザ光L1を入力光学系20に向けて出射する。
【0018】
入力光学系20は、レーザ発振器10が生成したレーザ光L1をビーム整形器30へ伝搬する。入力光学系20は、例えば、反射ミラー21及び22を備えている。反射ミラー21及び22は、全反射ミラーでもよいし、部分反射ミラーでもよい。レーザ発振器10から入射されたレーザ光L1は、反射ミラー21、反射ミラー22の順に反射した後、ビーム整形器30に出射する。
【0019】
ビーム整形器30は、入力光学系20を介して入射されたレーザ光L1を整形して、シリコン膜201への照射に適したビーム形状のレーザ光L2を生成する。ビーム整形器30は、Y方向に沿ったライン状のラインビームを生成し、さらに、ラインビームをZ方向に複数のビーム(部分光)に分割する。すなわち、レーザ光L2は、Z方向に並んだ複数のラインビームを含んでいる。ビーム整形器30は、レーザ光L1をラインビームに整形する光学系であり、また、レーザ光L1を複数のビーム(分割ビーム)に分割する光学系でもある。複数のラインビームの生成は、レーザ光L1からラインビームを生成した後にラインビームを分割してもよいし、レーザ光L1を分割した後に分割光からラインビームを生成してもよい。ビーム整形器30は、例えば、複数のシリンドリカルレンズを介することによって、レーザ光L1をY方向に拡大しラインビームに変換する。また、ビーム整形器30は、例えば、レンズアレイから構成されるホモジナイザによって、1つのビームを複数のビームに分割する。複数のビームに分割することによって、照射するレーザ光のビーム形状におけるスティープネス幅を急峻にすることができる。一例として、レーザ光L1を11個のビームに分割する。ビーム整形器30は、生成したレーザ光L2を落射ミラー40に出射する。
【0020】
落射ミラー40は、Y方向に延びる矩形状の反射ミラーであり、ビーム整形器30が生成した複数のラインビームであるレーザ光L2を反射する。落射ミラー40は、例えば、ダイクロイックミラーであり、一部の光を透過する部分反射ミラーである。すなわち、落射ミラー40は、レーザ光L2を反射させてレーザ光L3を生成するとともに、レーザ光L2の一部を透過させてレーザ光L4を生成する。落射ミラー40は、反射光であるレーザ光L3を基板200上のシリコン膜201に照射し、また、透過光であるレーザ光L4をパルス計測器100へ出射する。
【0021】
図3は、レーザ光L3の照射により結晶化されるシリコン膜201を模式的に示している。レーザ光L3は、上記のように複数のラインビームを含み、基板200上において、Y方向にライン状の照射領域を形成している。つまり、基板200上に照射されたレーザ光L3は、Y方向を長手方向(長軸方向)とし、X方向を短手方向(短軸方向)とするライン状の照射領域を形成している。また、ステージ51により+X方向に基板200を搬送しながら、レーザ光L3がシリコン膜201に照射される。これにより、Y方向における照射領域の長さを幅とする帯状の領域にレーザ光L3を照射することができる。このレーザ光L3の照射によって、アモルファスシリコン膜201aが結晶化する。基板200に対するレーザ光L3の照射位置を変えながら、レーザ光L3をシリコン膜201に照射する。ステージ51により基板200を+X方向に搬送することで、基板200上のレーザ光L3が照射された領域から順にポリシリコン膜201bが形成される。
【0022】
ここで、形成されるポリシリコン膜201bの状態は、製造する半導体装置の性能に大きく影響する。このため、図3(a)に示すように、ポリシリコン膜201bの結晶状態にムラが無い、すなわち、結晶状態のばらつきが小さく均一であることが要求される。図3(b)に示すように、ポリシリコン膜201bの結晶状態にムラが有る、すなわち、結晶状態のばらつきが大きく不均一である場合、その半導体装置は不良品となる。例えば、ポリシリコン膜201bのムラとして、ポリシリコン膜201bにラインビームの照射領域に沿った明暗の縞(ショットムラという)ができることがある。このようなムラは、レーザ光の空間分布におけるばらつき、すなわち、ビームの断面における光のばらつき(空間的ばらつきという)により生じ得る。そこで、本実施の形態では、レーザ光の空間的ばらつきをモニタすることで、形成するポリシリコン膜201bにムラが生じることを抑制する。
【0023】
なお、固体レーザでは、コヒーレンスが高く、空間的ばらつきが生じ難いのに対し、ガスレーザでは、コヒーレンスが低いため、空間的ばらつきが生じ易い。このため、本実施の形態は、ガスレーザ、特にエキシマレーザに好適である。
【0024】
図1におけるパルス計測器100、モニタ装置60、及び制御装置70は、レーザ光の空間的ばらつきをモニタし、モニタした空間的ばらつきを制御するための構成である。なお、パルス計測器100及びモニタ装置60を、レーザ光のパルス波形を計測する計測部としてもよい。また、モニタ装置60及び制御装置70を、両者の機能を有する処理装置としてもよい。
【0025】
パルス計測器100は、基板200に照射されるレーザ光のパルス波形を計測(検出)する計測装置(光検出装置)である。この例では、パルス計測器100は、落射ミラー40から透過したレーザ光L4を計測する。パルス計測器100は、レーザ光L4に含まれる複数のビーム(例えば第1の部分光及び第2の部分光)の強度を計測し、計測結果をモニタ装置60へ出力する。なお、基板200に照射されるレーザ光の空間的ばらつきを計測できればよいため、パルス計測器100は、アニール光学系2におけるその他の箇所でレーザ光を計測してもよい。例えば、反射ミラー21や反射ミラー22を透過したレーザ光を計測してもよい。
【0026】
モニタ装置60及び制御装置70は、ELA装置1に専用の装置であってもよいし、パーソナルコンピュータやサーバコンピュータ等の汎用的なコンピュータ装置でもよい。そのような装置において、記憶部に記憶された所定のプログラムをCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより実行することで、モニタ装置60及び制御装置70の各機能が実現される。モニタ装置60及び制御装置70は、それぞれ1つの装置で実現してもよいし、ネットワーク上の複数の装置で実現してもよい。
【0027】
モニタ装置60は、パルス計測器100及び制御装置70と各種の情報や信号が入出力可能に接続されている。モニタ装置(モニタ部)60は、入力されるパルス計測器100の計測結果を比較することで、レーザ光(この例ではレーザ光L4)の空間的ばらつきをモニタする。モニタ装置60は、パルス計測器100が計測したレーザ光L4の強度から、レーザ光L4のパルス波形を生成する。モニタ装置60は、レーザ光L4に含まれる複数のビームのパルス波形を生成し、パルス波形を評価するための評価パラメータを算出する。モニタ装置60は、レーザ光L4における複数のビームのパルス波形や評価パラメータを比較し、それらの差を求める。モニタ装置60は、ディスプレイ等の表示部を備えており、レーザ光L4のパルス波形や強度等を表示部に表示する。モニタ装置60は、パルス波形の比較結果に基づいて、レーザ光L4の空間的ばらつきの有無を判断し、判断結果を制御装置70へ出力する。
【0028】
制御装置(制御部)70は、モニタ装置60及びレーザ発振器10と各種の情報や信号が入出力可能に接続されている。制御装置70は、入力されるモニタ装置60の判断結果に基づいて、レーザ発振器10にフィードバック制御を行う。制御装置70は、レーザ光の空間的ばらつきを抑えるよう、レーザ光の発生条件を制御する。例えば、制御装置70は、レーザ発振器10における共振器ミラー12を駆動するサーボモータを制御することで、共振器ミラー12の角度を調整し、レーザ光L1の空間分布の強度を制御する。なお、制御装置70は、モニタ装置60の判断結果に応じて共振器ミラー12を自動的に制御してもよいし、操作者の操作に応じて共振器ミラー12を制御してもよい。
【0029】
図4は、レーザ発振器10の共振器ミラー12から出射されるレーザ光L1と、落射ミラー40に入射されるレーザ光L2との空間分布(ビーム形状)の関係を示している。図4(a)に示すように、レーザ光L1は、共振器ミラー12と同様の形状、すなわち、Z方向を長手方向とする略長方形の空間分布を有している。また、図4(b)に示すように、レーザ光L2は、落射ミラー40と同様の形状、すなわち、Y方向を長手方向とする略長方形の空間分布を有している。つまり、レーザ光L2は、レーザ光L1に対し光軸を中心に90°回転したビーム形状となっている。図4(a)のレーザ光L1における+Z側の位置ZA1から-Z側の位置ZB1の光が合成されて、図4(b)のレーザ光L2における+Y側の位置YA1から-Y側の位置YB1の光(ラインビーム)が生成されている。同様に、図4(a)のレーザ光L1における位置ZA2から位置ZB2の光が合成されて、図4(b)のレーザ光L2における位置YA2から位置YB2の光が生成されている。ポリシリコン膜201bに生じるムラ、すなわち、Y方向に沿ったショットムラは、レーザ光L2におけるZ方向のばらつきが一つの要因となる。このため、本実施の形態では、レーザ光L2(L2の透過光であるL4)におけるZ方向のばらつきをモニタする。さらに、レーザ光L2のZ方向の空間に対応するレーザ光L1のY方向の光の強度を調整するため、共振器ミラー12に対しY方向の中心Y0を軸として回転させてその角度を制御する。
【0030】
<比較例のパルス計測器>
ここで、本実施の形態の理解を深めるため、図5及び図6を用いて、本実施の形態適用前の比較例のパルス計測器900の構成について説明する。図5は、パルス計測器900の概略構成を示す側面図であり、図6は、パルス計測器900の概略構成を示す斜視図である。図5及び図6に示すようにパルス計測器900は、光検出器901と集光レンズ902とを備えている。
【0031】
例えば、集光レンズ902及び光検出器901は、落射ミラー40のY方向の中央付近に配置されている。集光レンズ902は、落射ミラー40を透過したレーザ光L4を光検出器901の受光部に集光する。光検出器901は、集光レンズ902によって集光されたレーザ光L4の強度を検出する。
【0032】
このように、比較例のパルス計測器900では、1つの光検出器901により、レーザ光L4の全てのビームをまとめて検出する。この例では、レーザ光L2及びL4はビームB1~B11を含んでおり、光検出器901は集光されたレーザ光L4の全てのビームB1~B11を検出する。しかしながら、比較例のパルス計測器900のように、1つの検出器によりレーザ光の全体を検出すると、ビームごとにばらつきがあったとしても、そのばらつきが平均化されてしまうため、空間的ばらつきを検出することができない。
【0033】
<実施の形態1のパルス計測器>
図7及び図8を用いて、本実施の形態に係るパルス計測器100の構成について説明する。図7は、パルス計測器100の概略構成を示す側面図であり、図8は、パルス計測器100の概略構成を示す斜視図である。図7及び図8に示すようにパルス計測器100は、複数の光検出器101と複数の集光レンズ102とを備えている。例えば、光検出器101は、バイプラナ管やフォトダイオードであり、集光レンズ102は、シリンドリカルレンズである。
【0034】
この例では、光検出器101として、3つの光検出器、すなわち、光検出器101a(第1の光検出器)、光検出器101b(第2の光検出器)、及び光検出器101c(第3の光検出器)を備え、また、集光レンズ102として、3つの集光レンズ、すなわち、集光レンズ102a(第1の集光レンズ)、集光レンズ102b(第2の集光レンズ)、及び集光レンズ102c(第3の集光レンズ)を備えている。例えば、集光レンズ102a~102c及び光検出器101a~101cは、落射ミラー40のY方向の中央付近に配置され、Z方向に沿って一列に並んでいる。なお、集光レンズ102a~102c及び光検出器101a~101cは、Z方向の複数個所で光を検出できればよいため、落射ミラー40のY方向の中央以外に配置されていてもよいし、Z方向に斜めに並んでいてもよい。
【0035】
集光レンズ102a~102cは、落射ミラー40を透過したレーザ光L4の各ビーム群を光検出器101a~101cの受光部にそれぞれ集光する。光検出器101a~101cは、集光レンズ102a~102cによって集光されたレーザ光L4の各ビーム群の強度を検出する。集光レンズによりビーム群に含まれるビームを集光することで、ビーム群ごとにビームを検出することができる。
【0036】
この例では、ビームB1~B11を3つのビーム群BG1~BG3に分け、上側(+Z側)の4つのビームB1~B4をビーム群BG1(第1のビーム群)、中央の3つのビームB5~B7をビーム群BG2(第2のビーム群)、下側(-Z側)の4つのビームB8~B11をビーム群BG3(第3のビーム群)とする。ビーム群BG1のビームB1~B4を集光レンズ102aにより集光し、集光された光を光検出器101aにより検出する。同様に、ビーム群BG2のビームB5~B7を集光レンズ102bにより集光し、集光された光を光検出器101bにより検出し、ビーム群BG3のビームB8~B11を集光レンズ102cにより集光し、集光された光を光検出器101cにより検出する。複数の光検出器により、複数のビーム群を同時に検出することができる。
【0037】
このように、本実施の形態に係るパルス計測器100では、複数の光検出器101a~101cにより、レーザ光L4に含まれる複数のビームを分けて検出する。レーザ光L4に含まれるビーム(群)ごとに強度を検出するにより、レーザ光L4の空間的ばらつきを確実に検出することができる。例えば、3つのビーム群ごとに検出することで、レーザ光L4における上部、中央、下部の空間的ばらつきを検出することができる。なお、検出するビーム群は、3つに限らず、任意の数のビーム群としてよいし、各ビーム群に含まれるビームの数も任意に設定してよい。また、ビーム群を設けずに、各ビーム(第1のビーム~第11のビーム)を個別に検出してもよい。光検出器による検出数を多くすることで、空間的ばらつきの検出精度を向上することができる。
【0038】
<実施の形態1のパルス波形モニタ方法>
図9を用いて、本実施の形態に係るELA装置1で実施されるパルス波形モニタ方法について説明する。図9は、本実施の形態に係るパルス波形モニタ方法を示すフローチャートである。例えば、このパルス波形モニタ方法は、ELA装置1における半導体装置の製造工程とは別に実施される。半導体装置の製造工程は、複数の半導体装置を1セットとして、セットごとに繰り返し実施される。一つ前のセットの製造工程と次のセットの製造工程との間において、ELA装置1を計測モードとして、本実施の形態に係るパルス波形モニタ方法を実施する。これにより、半導体装置の製造工程において半導体膜にムラが生じる前に、レーザ光の空間的ばらつきを検出することができるため、事前に半導体膜のムラの発生を抑えることができる。
【0039】
図9に示すように、まず、ELA装置1は、レーザ光の照射を開始する(S101)。すなわち、制御装置70は、操作者の操作に応じて、レーザ発振器10に発振の開始を指示する。レーザ発振器10は、制御装置70の指示に従い発振を開始し、レーザ光L1を出射する。出射されたレーザ光L1は、入力光学系20を介してビーム整形器30により複数のラインビームに整形される。整形されたレーザ光L2は、落射ミラー40で反射され、反射されたレーザ光L3は、基板200上に照射される。なお、このパルス波形モニタ方法は、半導体装置の製造工程とは別に実施されるため、ステージ51上に基板200が配置されていなくてもよい。
【0040】
続いて、ELA装置1は、照射が開始されたレーザ光を計測する(S102)。すなわち、パルス計測器100は、落射ミラー40を透過したレーザ光L4の強度を検出する。本実施の形態では、パルス計測器100における光検出器101a~101cは、レーザ光L4のビームB1~B11を3つのビーム群BG1~BG3に分けて、ビーム群ごとに強度を検出し、その検出結果をモニタ装置60へ出力する。
【0041】
続いて、ELA装置1は、計測されたレーザ光のパルス波形を生成する(S103)。すなわち、モニタ装置60は、パルス計測器100からビーム群BG1~BG3の強度を取得し、取得した強度に基づいてビーム群BG1~BG3ごとにパルス波形を生成する。例えば、パルス幅を20ns~100nsとし、そのパルス幅の周期でパルス波形を生成する。
【0042】
図10は、生成されるパルス波形の一例を示している。本実施の形態におけるレーザ光はエキシマレーザ光であるため、図10に示すように、第1のピークP1及び第2のピークP2が連続して現れ、最初に現れたピークP1よりも2番目に現れたピークP2の方が強度の低い波形となる。パルス波形の面積A1は、パルスのエネルギーを示している。
【0043】
モニタ装置60は、パルスの評価パラメータとして、第1のピークP1、第2のピークP2、及び面積A1(エネルギー)を算出する。なお、パルス幅や第1のピークP1までの立ち上がり時間等、その他の評価パラメータを算出してもよい。また、モニタ装置60は、所定期間に生成されたパルス波形から、評価パラメータの分散値(σ)や平均値、最小値、最大値等の統計値を求める。
【0044】
続いて、ELA装置1は、パルス波形の空間的ばらつきの有無を判定する(S104)。すなわち、モニタ装置60は、ビーム群BG1~BG3のパルス波形に基づいて、空間的ばらつきを評価する。モニタ装置60は、ビーム群BG1のパルス波形、ビーム群BG2のパルス波形、及びビーム群BG3のパルス波形を比較する。例えば、パルス波形の評価パラメータである第1のピークP1、第2のピークP2、及び面積A1の分散値や平均値、最小値、最大値等の差分を求める。なお、特定のタイミングにおけるパルス波形の評価パラメータの差分を求めてもよい。複数のパルス波形による分散値等の差分を求めることにより、ばらつきを精度よく評価することができる。モニタ装置60は、例えば、評価パラメータの分散値の差分が、所定の閾値よりも大きい場合、空間的ばらつき有りと判断し、所定の閾値以下の場合、空間的ばらつき無しと判断する。
【0045】
S104において、空間的ばらつき無しと判断された場合、本モニタ方法を終了し、ELA装置1は、次のセットの半導体装置の製造工程を実施する。一方、空間的ばらつき有りと判断された場合、ELA装置1は、レーザ光を調整する(S105)。すなわち、モニタ装置60が空間的ばらつき有りと判断すると、制御装置70は、レーザ発振器10の共振器ミラー12の角度を制御し、レーザ光L1の空間分布の強度を調整する。制御装置70は、共振器ミラー12の傾きを所定の角度で変化させ、さらに、S102~S103においてレーザ光の計測を行う。評価パラメータの分散値の差分が収束し、空間的ばらつき無しと判断されるまで、レーザ光の調整を繰り返す。なお、空間的ばらつきの大きさ等によって、共振器ミラー12を調整する角度を変えてもよい。
【0046】
<計測結果>
図11図13を用いて、比較例のパルス計測器900を用いた場合と本実施の形態に係るパルス計測器100を用いた場合の計測結果について説明する。図11図13は、パルス繰り返し周波数50Hz、300Hz、500Hzの計測結果である。図11は、各周波数におけるパルス波形を示し、図12は、パルス波形の第1のピークP1の分散値(σ)を示し、図13は、パルス波形の面積A1(エネルギー)の分散値(σ)を示している。
【0047】
図11に示すように、比較例のパルス計測器900により計測されたパルス波形は、50Hz~500Hzのいずれの周波数においても、ほぼ理想的な(例えば図10のような)形状となっている。比較例では、安定したパルス波形しか計測できないため、空間的ばらつきを把握することはできない。一方、本実施の形態に係るパルス計測器100により計測されたパルス波形は、いずれの周波数においても、ビーム群BG1~BG3で明らかに形状が異なっている。このため、ビーム群BG1~BG3の波形を比較することで、空間的ばらつきを把握することが可能である。
【0048】
図11において、50Hzの周波数では、ビーム群BG3のパルス波形は、比較例と同様に理想的なパルス波形に近い。ビーム群BG1~BG3のパルス波形を比べると、ビーム群BG1及びBG2のパルス波形は、ビーム群BG3のパルス波形よりも第1のピークP1及び第2のピークP2が低く、第1のピークP1の凸部の形状がなまっている。
【0049】
また、300Hzの周波数では、ビーム群BG2及びBG3のパルス波形は、比較例と同様に理想的なパルス波形に近い。ビーム群BG1~BG3のパルス波形を比べると、ビーム群BG1のパルス波形は、ビーム群BG2及びBG3のパルス波形よりも第1のピークP1及び第2のピークP2が低く、第1のピークP1の凸部の形状がなまっている。
【0050】
さらに、500Hzの周波数では、ビーム群BG1~BG3のパルス波形は、いずれも理想的なパルス波形とは異なっている。ビーム群BG1~BG3のパルス波形を比べると、ビーム群BG1及びBG3のパルス波形は、ビーム群BG2のパルス波形よりも第1のピークP1及び第2のピークP2が低い。また、ビーム群BG1のパルス波形は、ビーム群BG2及びBG3のパルス波形よりも第1のピークP1の凸部の形状がなまっている。
【0051】
図12に示すように、比較例のパルス計測器900により計測されたパルス波形の第1のピークP1の分散値は、50Hz~500Hzの周波数において変化は小さい。比較例では、安定したパルス波形の第1のピークP1しか計測できないため、空間的ばらつきを把握することはできない。一方、本実施の形態に係るパルス計測器100による計測結果は、いずれの周波数においても、ビーム群BG1~BG3で差が生じている。このため、ビーム群BG1~BG3の第1のピークP1を比較することで、空間的ばらつきを把握することが可能である。特に、500Hzの周波数では、ビーム群BG2とビーム群BG3との差が大きいため、本実施の形態では空間的ばらつき有りと判断することができる。
【0052】
図12において、50Hzでは、ビーム群B1の値が1.1、ビーム群B2の値が0.9、ビーム群B3の値が0.5となっている。300Hzでは、ビーム群B1の値が1.1、ビーム群B2の値が1.0、ビーム群B3の値が0.6となっている。つまり、50Hz及び300Hzでは、ビーム群B1及びB2とビーム群B3とに0.5程度の差がある。また、500Hzでは、ビーム群B1の値が2.9、ビーム群B2の値が1.5、ビーム群B3の値が4.1となっている。つまり、500Hzでは、ビーム群B1とビーム群B2とに1.4の差があり、ビーム群B2とビーム群B3とに2.6の差があることから、空間的ばらつきが大きい。
【0053】
図13に示すように、比較例のパルス計測器900により計測されたパルス波形の面積A1の分散値は、50~500Hzの周波数において変化は小さい。比較例では、第1のピークP1と同様、安定したパルス波形の面積A1しか計測できないため、空間的ばらつきを把握することはできない。一方、本実施の形態に係るパルス計測器100による計測結果は、いずれの周波数においても、ビーム群BG1~BG3で差が生じている。このため、ビーム群BG1~BG3の面積A1を比較することで、空間的ばらつきを把握することが可能である。図12の第1のピークP1と同様に、500Hzの周波数では、ビーム群BG2とビーム群BG3との差が大きいため、本実施の形態では空間的ばらつき有りと判断することができる。
【0054】
図13において、50Hzでは、ビーム群B1の値が0.9、ビーム群B2の値が0.8、ビーム群B3の値が0.4となっている。つまり、50Hzでは、ビーム群B1及びB2とビーム群B3とに0.5程度の差がある。また、300Hzでは、ビーム群B1の値が1.3、ビーム群B2の値が1.4、ビーム群B3の値が0.6となっている。つまり、300Hzでは、ビーム群B1及びB2とビーム群B3とに0.8程度の差がある。さらに、500Hzでは、ビーム群B1の値が2.3、ビーム群B2の値が0.9、ビーム群B3の値が7.0となっている。つまり、500Hzでは、ビーム群B1とビーム群B2とに1.4の差があり、ビーム群B2とビーム群B3とに6.1の差があることから、空間的ばらつきが大きい。
【0055】
<実施の形態1の効果>
以上のように、本実施の形態では、レーザアニール装置において、被処理体に照射するレーザ光の空間的ばらつきをモニタし、空間的ばらつきに応じてレーザ光を制御するようにした。これにより、形成される半導体膜のムラと相関し得るレーザ光を検出することができ、半導体膜にムラが生じることを抑えることができる。また、レーザ発振器の個体差に応じて、照射するレーザ光を最適化することができる。さらに、パルス計測器において、レーザ光に含まれる複数のビーム群(もしくはビーム)ごとの強度を検出することにより、確実に空間的ばらつきを検出することができる。例えば、複数の光検出器を備えることにより、複数のビーム群の強度を同時に検出することができる。
【0056】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。本実施の形態では、実施の形態1と比べてELA装置に備えられたパルス計測器の構成のみが異なる。本実施の形態に係るパルス計測器は、スリットにより選択されたビームを1つの光検出器により計測する。その他については、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0057】
<実施の形態2のパルス計測器>
図14図18を用いて、本実施の形態に係るパルス計測器100の構成について説明する。図14は、パルス計測器100の概略構成を示す側面図であり、図15は、パルス計測器100の概略構成を示す斜視図であり、図16は、パルス計測器100におけるスリットの正面図である。図17及び図18は、パルス計測器100において、他のスリットの状態を示す側面図である。
【0058】
図14及び図15に示すように、本実施の形態に係るパルス計測器100は、光検出器101と集光レンズ102を備えている。光検出器101及び集光レンズ102は、図5及び図6の比較例と同様の構成である。すなわち、集光レンズ102及び光検出器101は、落射ミラー40の中央付近に配置されており、集光レンズ102はレーザ光L4のビームを集約し、光検出器101は集約されたビームを検出する。
【0059】
また、パルス計測器100は、落射ミラー40と集光レンズ102との間に配置されたスリット103を備えている。スリット103は、レーザ光L4の一部のビームを選択して透過させるビーム選択部である。すなわち、集光レンズ102は、スリット103により選択されたレーザ光L4のビームを集光する。
【0060】
図16に示すように、スリット103は、Y方向に沿って平行に配置された矩形状の遮光板103a及び遮光板103bを備えている。上側の遮光板103aはレーザ光L4の上側のビームを遮光し、下側の遮光板103bはレーザ光L4の下側のビームを遮光し、遮光板103aと遮光板103bとの間の開口部103cからレーザ光L4の一部のビームを透過する。
【0061】
また、図14に示すように、スリット103は、エアーシリンダー104によりZ方向に駆動可能な可動式スリットである。例えば、エアーシリンダー104は、2段式エアーシリンダーであり、スリット103を2段階の位置(図14の位置Z1~Z4の間)で停止するように駆動することで、ビーム群BG1~BG3のいずれかを選択する。エアーシリンダー104は、遮光板103aを駆動する駆動部104aと、遮光板103bを駆動する駆動部104bとを備える。駆動部104a及び駆動部104bにより、遮光板103a及び遮光板103bを連動して駆動し、開口部103cをZ方向に上下に移動させることで、透過するレーザ光L4のビームを選択する。駆動部104bは、下側の遮光板103bの上端部を位置Z1から位置Z2まで駆動し、さらに位置Z2から位置Z3まで駆動する。駆動部104aは、上側の遮光板103aの下端部を位置Z4から位置Z3まで駆動し、さらに位置Z3から位置Z2まで駆動する。駆動部104a及び駆動部104bの駆動は、例えばモニタ装置60から制御される。
【0062】
図14図17、及び図18は、スリット103の3つの状態を示している。図14は、スリット103が、ビームB1~B11のうち下部の4つのビームB8~B11を含むビーム群BG3を透過させた状態を示している。すなわち、駆動部104bにより下側の遮光板103bの上端部を位置Z1(第1の位置)とし、駆動部104aにより上側の遮光板103aの下端部を位置Z2(第2の位置)とする。これにより、位置Z1と位置Z2との間の開口部103cから、ビームB8~B11を透過させる。
【0063】
図17は、スリット103が、ビームB1~B11のうち中央部の3つのビームB5~B7を含むビーム群BG2を透過させた状態を示している。すなわち、駆動部104bにより下側の遮光板103bの上端部を位置Z2(第2の位置)とし、駆動部104aにより上側の遮光板103aの下端部を位置Z3(第3の位置)とする。これにより、位置Z2と位置Z3との間の開口部103cから、ビームB5~B7を透過させる。
【0064】
図18は、スリット103が、ビームB1~B11のうち上部の4つのビームB1~B4を含むビーム群BG1を透過させた状態を示している。すなわち、駆動部104bにより下側の遮光板103bの上端部を位置Z3(第3の位置)とし、駆動部104aにより上側の遮光板103aの下端部を位置Z4(第4の位置)とする。これにより、位置Z3と位置Z4との間の開口部103cから、ビームB1~B4を透過させる。
【0065】
なお、スリット103の開口部103cの位置は、予め設定してもよいし、自動的に検出してもよい。例えば、遮光板103a及び遮光板103bのうち、一方の遮光板の位置を固定しておき、他方の遮光板の位置を徐々にZ方向に移動させながら透過する光の強度を検出する。そうすると、光の強度の累積値がビームに合わせてステップ状に変化するため、光の強度が大きく変化する位置から、選択するビームのZ方向の位置を検出することができる。
【0066】
<変形例のパルス計測器>
なお、本実施の形態では、実施の形態1と同様にレーザ光を分割したビームを光検出器により検出してもよいし、スリットを介して、分割していない(もしくは分割前の)レーザ光を検出してもよい。図19は、分割していないレーザ光(Raw beam)を計測する変形例のパルス計測器100の構成を示している。図19に示すように、変形例のパルス計測器100は、図14で示した本実施の形態のパルス計測器100と同じ構成である。
【0067】
この例では、分割していないレーザ光L5は、落射ミラー40により反射してレーザ光L6となり、また一部の光が透過してレーザ光L7となる。図14と同様に、スリット103は、レーザ光L7の一部の光を選択して透過させ、集光レンズ102は、スリット103により選択されたレーザ光L7の一部の光を集約し。光検出器101は集約された光を検出する。
【0068】
<実施の形態2の効果>
以上のように、本実施の形態では、ELA装置のパルス計測器において、計測する光を選択するスリットを備えることとした。これにより、実施の形態1と同様に、レーザ光の空間的ばらつきをモニタすることができる。例えば、可動式のスリットを使用することで、計測する光を任意に選択することができるため、1つの検出器により複数の空間における光を検出することができる。配置する光検出器の数に制約がある場合でも、確実にレーザ光の空間的ばらつきをモニタすることが可能である。
【0069】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。本実施の形態では、実施の形態1及び2と比べてELA装置に備えられたパルス計測器の構成のみが異なる。本実施の形態に係るパルス計測器は、スリットにより選択されたビームを複数の光検出器により計測する。その他については、実施の形態1及び2と同様であるため説明を省略する。
【0070】
<実施の形態3のパルス計測器>
図20図22を用いて、本実施の形態に係るパルス計測器100の構成について説明する。図20は、パルス計測器100の概略構成を示す側面図であり、図21は、パルス計測器100の概略構成を示す斜視図であり、図22は、パルス計測器100におけるスリットの正面図である。
【0071】
図20及び図21に示すように、本実施の形態に係るパルス計測器100は、複数の光検出器101と複数の集光レンズ102を備えている。パルス計測器100は、例えば、実施の形態1の図7及び図8と同様に、3つの光検出器101a~101cと3つの集光レンズ102a~102cとを備えている。すなわち、ビーム群BG1のビームB1~B4を、集光レンズ102aを介して、光検出器101aにより検出する。同様に、ビーム群BG2のビームB5~B7を、集光レンズ102bを介して、光検出器101bにより検出し、ビーム群BG3のビームB8~B11を、集光レンズ102cを介して、光検出器101cにより検出する。
【0072】
また、パルス計測器100は、実施の形態2と同様に、落射ミラー40と集光レンズ102との間に配置されたスリット103を備えている。図22に示すように、スリット103は、矩形状の遮光板103dであり、遮光板103dに矩形状の開口部103e~103gを有している。開口部103e~103gは、透過するレーザ光L4のビームの位置に対応して、Z方向に斜めに並んで形成されている。開口部103e~103gを透過した各ビームが、集光レンズ102a~102cによってそれぞれ集光される。開口部103e~103gとそれぞれ対向する位置に光検出器101a~101cが配置されている。例えば、遮光板103dにおいて、Z方向に重ならない位置に開口部103e~103gを形成することにより、各開口部で任意のビームを選択し透過することができる。この例では、開口部103eは、遮光板103dの入射側の面から見て左上に形成されており、ビームB1~B4を含むビーム群BG1を透過させる。開口部103fは、遮光板103dの入射側の面から見て中央に形成されており、ビームB5~B7を含むビーム群BG2を透過させる。開口部103gは、遮光板103dの入射側の面から見て右下に形成されており、ビームB8~B11を含むビーム群BG3を透過させる。なお、開口部103eを遮光板103dの右上、開口部103fを遮光板103dの中央、開口部103gを遮光板103dの左下に形成してもよい。
【0073】
<実施の形態3の効果>
以上のように、本実施の形態では、ELA装置のパルス計測器において、実施の形態2と同様に計測する光を選択するスリットを備えることとした。これにより、実施の形態1及び2と同様に、レーザ光の空間的ばらつきをモニタすることができる。例えば、固定式のスリットに、計測する複数の光にそれぞれ対応した開口部を設けることにより、スリットを駆動させる駆動機構を備えることなく、複数の空間の光を検出することができる。また、実施の形態1と同様に複数の光検出器を備えることより、レーザ光の複数の光を同時に検出することができる。なお、本実施の形態のパルス計測器は、変形例の図19と同様に、分割していないレーザ光を計測することも可能である。
【0074】
(その他の実施の形態)
次に、その他の実施の形態として、上記実施の形態に係るELA装置を用いた半導体装置の製造方法について説明する。以下の半導体装置の製造方法のうち、非晶質の半導体膜を結晶化させる工程において、実施の形態1~実施の形態3に係るELA装置を用いたアニール処理を実施している。
【0075】
半導体装置は、TFT(Thin Film Transistor)を備える半導体装置であり、この場合は、アモルファスシリコン膜にレーザ光を照射して結晶化し、ポリシリコン膜を形成することができる。ポリシリコン膜は、TFTのソース領域、チャネル領域、ドレイン領域を有する半導体層として用いられる。
【0076】
<その他の実施の形態の半導体装置の製造方法>
図23から図27は、半導体装置の製造方法の一例を説明するための断面図である。上記で説明した実施の形態に係るELA装置は、TFTアレイ基板の製造に好適である。以下、TFTを有する半導体装置の製造方法について説明する。
【0077】
まず、図23に示すように、ガラス基板91(上記の基板200に相当)の上に、ゲート電極92を形成する。ゲート電極92は、例えば、アルミニウムなどを含む金属薄膜を用いることができる。次に、図24に示すように、ゲート電極92の上に、ゲート絶縁膜93を形成する。ゲート絶縁膜93は、ゲート電極92を覆うように形成される。その後、図25に示すように、ゲート絶縁膜93の上に、アモルファスシリコン膜94(上記のアモルファスシリコン膜201aに相当)を形成する。アモルファスシリコン膜94は、ゲート絶縁膜93を介して、ゲート電極92と重複するように配置されている。
【0078】
ゲート絶縁膜93は、窒化シリコン膜(SiN)、酸化シリコン膜(SiO膜)、又はこれらの積層膜等などである。具体的には、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、ゲート絶縁膜93とアモルファスシリコン膜94とを連続成膜する。アモルファスシリコン膜94付のガラス基板91がレーザ処理装置における半導体膜となる。
【0079】
そして、図26に示すように、上記で説明したELA装置を用いてアモルファスシリコン膜94にレーザ光L3を照射してアモルファスシリコン膜94を結晶化させて、ポリシリコン膜95(上記のポリシリコン膜201bに相当)を形成する。これにより、シリコンが結晶化したポリシリコン膜95がゲート絶縁膜93上に形成される。この工程の前に、上記で説明したELA装置を用いたパルス波形モニタ方法を実施することで、ポリシリコン膜95にムラが生じることを抑えることができる。
【0080】
その後、図27に示すように、ポリシリコン膜95の上に層間絶縁膜96、ソース電極97a、及びドレイン電極97bを形成する。層間絶縁膜96、ソース電極97a、及びドレイン電極97bは、一般的なフォトリソグラフィー法や成膜法を用いて形成することができる。これ以降の製造工程については、最終的に製造するデバイスによって異なるので説明を省略する。
【0081】
上記で説明した半導体装置の製造方法を用いることで、多結晶半導体膜を含むTFTを備える半導体装置を製造することができる。このような半導体装置は、有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイなどの高精細ディスプレイの制御用に好適である。上記のようにポリシリコン膜のムラを抑制することで、表示特性の優れた表示装置を高い生産性で製造することができる。
【0082】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、レーザアニール装置において、アモルファスシリコン膜にレーザ光を照射してポリシリコン膜を形成する例に限らず、アモルファスシリコン膜にレーザ光を照射してマイクロクリスタルシリコン膜を形成してもよい。また、シリコン膜以外の非晶質膜にレーザ光を照射して、結晶化膜を形成してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 ELA装置
2 アニール光学系
10 レーザ発振器
11、12 共振器ミラー
20 入力光学系
21、22 反射ミラー
30 ビーム整形器
40 落射ミラー
50 レーザ照射室
51 ステージ
52 ベース
60 モニタ装置
70 制御装置
91 ガラス基板
92 ゲート電極
93 ゲート絶縁膜
94 アモルファスシリコン膜
95 ポリシリコン膜
96 層間絶縁膜
97a ソース電極
97b ドレイン電極
100 パルス計測器
101、101a、101b、101c 光検出器
102、102a、102b、102c 集光レンズ
103 スリット
103a、103b、103d 遮光板
103c、103e、103f、103g 開口部
104 エアーシリンダー
104a、104b 駆動部
200 基板
201 シリコン膜
201a アモルファスシリコン膜
201b ポリシリコン膜
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