(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】多機能出没式筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 24/10 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
B43K24/10
(21)【出願番号】P 2019213055
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-10-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】月岡 之博
(72)【発明者】
【氏名】山脇 巧
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-260892(JP,A)
【文献】特開2017-013432(JP,A)
【文献】特開2009-184199(JP,A)
【文献】特開2012-091521(JP,A)
【文献】特開2008-126595(JP,A)
【文献】特開2009-113300(JP,A)
【文献】特開2018-144421(JP,A)
【文献】特開2013-043365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 24/00
B43K 21/00
B43K 3/00
B43K 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、前記軸筒の前端側に接続された先口と、前記先口よりも後側で前記軸筒の外周部に一体的に成形されたグリップ部と、前記軸筒内に収納され前記先口から出没する複数のリフィールとを備えた多機能出没式筆記具であって、
前記軸筒の外周部における前記グリップ部よりも前側に、雄ネジ部が設けられ、
前記先口は、先細状の傾斜内面を有するとともに、前記傾斜内面よりも後側の内周面に、前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を有し、
前記軸筒の前端を、前記先口における傾斜内面に当接し、
前記傾斜内面を覆う弾性被覆部を設け、この弾性被覆部の後端が、前記軸筒の前端に接していることを特徴とする多機能出没式筆記具。
【請求項2】
軸筒と、前記軸筒の前端側に接続された先口と、前記先口よりも後側で前記軸筒の外周部に一体的に成形されたグリップ部と、前記軸筒内に収納され前記先口から出没する複数のリフィールとを備えた多機能出没式筆記具であって、
前記軸筒の外周部における前記グリップ部よりも前側に、雄ネジ部が設けられ、
前記先口は、先細状の傾斜内面を有するとともに、前記傾斜内面よりも後側の内周面に、前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を有し、
前記先口における傾斜内面に段部を設け、前記軸筒の前端を、前記段部に当接
し、
前記傾斜内面を覆う弾性被覆部を設け、この弾性被覆部の後端が、前記軸筒の前端に接していることを特徴とする多機能出没式筆記具。
【請求項3】
前記弾性被覆部が、前記先口の前端開口部の内周面を覆っていることを特徴とする請求項1又は
2記載の多機能出没式筆記具。
多機能出没式筆記具。
【請求項4】
前記先口の後端が、前記グリップ部の前端に接していることを特徴とする請求項1~
3何れか1項記載の多機能出没式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先口から複数のリフィールを選択的に出没するようにした多機能出没式筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるように、内部に複数のリフィールを収納する軸筒と、この軸筒の外周面に二次成形されたグリップ部と、軸筒の前端側に接続された金属製の口金とを備えた筆記具がある。
この筆記具では、前記軸筒前端側に雌ネジを有する受入部を形成し、前記口金の後端には雄ネジを有する挿入部を形成し、これら受入部と挿入部を螺合することで、軸筒に口金を接続するようにしている。そして、特許文献1には、この筆記具の構造により、軸筒の径を小さくできることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術によれば、口金と軸筒の接続箇所において、口金の挿入部と、軸筒の受入部と、グリップ部との三つが径方向に重なり合うため、複数のリフィールを収納するように内径を確保すると、一番外周側となるグリップ部の外形が比較的大きくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
軸筒と、前記軸筒の前端側に接続された先口と、前記先口よりも後側で前記軸筒の外周部に一体的に成形されたグリップ部と、前記軸筒内に収納され前記先口から出没する複数のリフィールとを備えた多機能出没式筆記具であって、前記軸筒の外周部における前記グリップ部よりも前側に、雄ネジ部が設けられ、前記先口は、先細状の傾斜内面を有するとともに、前記傾斜内面よりも後側の内周面に、前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を有し、前記軸筒の前端を、前記先口における傾斜内面に当接し、前記傾斜内面を覆う弾性被覆部を設け、この弾性被覆部の後端が、前記軸筒の前端に接していることを特徴とする多機能出没式筆記具。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、グリップ部を有する軸筒に先口を接続するようにした多機能出没式筆記具において、その軸径を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る多機能出没式筆記具の一例を示す側面図であり、要部を切欠して示している。
【
図2】先口と前軸の分解状態を示す半断面図である。
【
図3】前軸の前端側と先口との接続部分を示しており、中心線に沿う切断端面図である。
【
図4】本発明に係る多機能出没式筆記具の他例における前軸の前端側と先口との接続部分を示しており、中心線に沿う切断端面図である。
【
図5】本発明に係る多機能出没式筆記具の他例における前軸と先口との接続部分を示しており、中心線に沿う切断端面図である。
【
図6】本発明に係る多機能出没式筆記具の他例における前軸と先口との接続部分を示しており、中心線に沿う切断端面図である。
【
図7】本発明に係る多機能出没式筆記具の他例における前軸と先口との接続部分を示しており、中心線に沿う切断端面図である。
【
図8】本発明に係る多機能出没式筆記具の他例における前軸と先口との接続部分を示しており、中心線に沿う切断端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、軸筒と、前記軸筒の前端側に接続された先口と、前記先口よりも後側で前記軸筒の外周部に一体的に成形されたグリップ部と、前記軸筒内に収納され前記先口から出没する複数のリフィールとを備えた多機能出没式筆記具であって、前記軸筒の外周部における前記グリップ部よりも前側に、雄ネジ部が設けられ、前記先口は、先細状の傾斜内面を有するとともに、前記傾斜内面よりも後側の内周面に、前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を有する(
図1~
図8参照)。
【0009】
第2の特徴は、前記先口の後端が、前記グリップ部の前端に接している(
図1,
図3~
図8参照)。
【0010】
第3の特徴は、前記軸筒の前端を、前記先口における傾斜内面に当接した(
図4参照)。
【0011】
第4の特徴は、前記先口における傾斜内面に段部を設け、前記軸筒の前端を、前記段部に当接した(
図5参照)。
【0012】
第5の特徴は、前記傾斜内面を覆う弾性被覆部を設け、この弾性被覆部の後端が、前記軸筒の前端に接している(
図6~
図8参照)。
【0013】
第6の特徴は、前記弾性被覆部が、前記先口の前端開口部の内周面を覆っている(
図8参照)。
【0014】
<第1の実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本明細書中、軸方向とは、軸筒10の中心線の延びる方向を意味する。また、「前」とは、前記軸方向の一方側であってリフィール41,42の先方向を意味する。また、「後」とは、前記一方側に対する逆方向側を意味する。
【0015】
図1~3に示す多機能出没式筆記具1は、軸筒10と、軸筒10の前端側に接続された先口20と、先口20よりも後側で軸筒10に一体的に二色成形された筒状のグリップ部30と、軸筒10内に収納され先口20から出没する複数のリフィール41,42と、軸筒10内後側の図示しないリフィール進退機構とを備える。
【0016】
軸筒10は、筒状の前軸11と、該前軸11の後端側に着脱可能に接続された中間軸12と、中間軸12の後端側に接続された出没操作軸13とを具備している。
【0017】
前軸11は、硬質合成樹脂材料により長尺円筒状に形成され、グリップ部30よりも前側に位置する外周部に、グリップ部30よりも外径の小さい雄ネジ部11aを有する。
【0018】
中間軸12は、前軸11の後端側に螺合接続される。この接続部分は、リフィール41,42交換等の際に外される。
【0019】
出没操作軸13は、中間軸12の後端側に、回転可能かつ進退不能に接続された円筒状の部材である。出没操作軸13の内部には、当該出没操作軸13に対する回転操作により、リフィール41,42を選択的に進退させて先口20前端から出没させるリフィール進退機構(図示せず)が設けられる。
なお、前記リフィール進退機構は、スライド駒を進退させる操作によりリフィール41,42を選択的に進退させる機構等、図示例以外の機構を用いることが可能である。
【0020】
先口20は、先細円錐状の傾斜内面21を有するとともに、傾斜内面21よりも後側に、円筒状の接続部22を有し、この接続部22の内周面に、前軸11の雄ネジ部11aに螺合する雌ネジ部22aを有する。
この先口20は、本実施の形態の一例によれば、硬質金属材料から形成されるが、金属以外の材料等から形成することも可能である。
この先口20は、その後端をグリップ部30の前端に接するようにして、前軸11前端側の雄ネジ部11aに螺合される。このため、先口20と前軸11の接続箇所は、安易に緩むようなことがない。
【0021】
先口20の接続部22の外径は、グリップ部30の外径と略同等に設定される。換言すれば、接続部22の外周面は、グリップ部30の外周面に対し、略面一に接続されている。
なお、他例としては、グリップ部30の外周面を接続部22の外径よりも拡径した態様にすることも可能である。
【0022】
グリップ部30は、エラストマー樹脂等の弾性合成樹脂材料から円筒状に形成される。このグリップ部30は、前軸11における雄ネジ部11aよりも後側の外周面に、二色成形によって一体に成形されている。
【0023】
複数のリフィールのうち、符号41で示すリフィールは、ボールペン用のリフィールであり、符号42で示すリフィールは、シャープペンシル用リフィールである。
これらリフィール41,42は、その後端側が、出没操作軸13内の図示しないリフィール進退機構に対し、着脱可能に接続されている。
【0024】
次に、上記構成の多機能出没式筆記具1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
上記構成によれば、グリップ部30を一体に有する軸筒10の前端側に、質感の異なる先口20を装着でき、意匠性に優れている上、先口20が安易に外れてしまうようなことを防止できる。
しかも、軸筒10と先口20との接続部分は、雄ネジ部11aの外周に、グリップ部30が重なり合うことなく、接続部22のみが重なり合うようにしているため、この接続部22を含む周壁全部の肉厚を比較的薄くすることができ、ひいては、軸筒10の外径を小さくして、スリムなイメージの多機能出没式筆記具1を得ることができる。
【0025】
<第2の実施態様>
次に、本発明に係る他の実施態様について説明する。
なお、以下に示す実施態様は、上記多機能出没式筆記具1について、その一部を変更したものであるため、主にその変更部分について詳述し、重複する詳細説明を省略する。
【0026】
第2の実施態様の多機能出没式筆記具は、
図4に示すように、上記多機能出没式筆記具1に対し、前軸11を前軸11’に置換したものである。
【0027】
前軸11’は、雄ネジ部11aを有する筒状部分の前端を、先口20における傾斜内面21に当接している。
【0028】
よって、
図4に示す第2の実施態様によれば、上記多機能出没式筆記具1と同様に、軸筒10の外径を小さくできるのに加えて、前軸11’の前端と、先口20の傾斜内面21との間に形成される凹部sを比較的小さくすることができ、ひいては、リフィール41,42の筆記先端部が、進退時に前記凹部に干渉するようなことを軽減し、リフィール41,42の動作性を向上することができる。
【0029】
<第3の実施態様>
第3の実施態様の多機能出没式筆記具は、
図5に示すように、上記多機能出没式筆記具1に対し、前軸11を前軸11’に置換し、先口20を先口20’に置換したものである。
【0030】
先口20’は、傾斜内面21に、全周にわたる環状の段部21aを設けている。段部21aには、軸筒10の前端が当接するようになっている。
【0031】
よって、
図5に示す第3の実施態様によれば、上記多機能出没式筆記具1と同様に、軸筒10の外径を小さくできるのに加えて、先口20’の傾斜内面21と、前軸11’前端との間に、凹部が形成されるのを防ぐことができる。このため、リフィール41,42が前記凹部等に干渉するのを軽減し、リフィール41,42の動作性をいっそう向上することができる。
【0032】
<第4の実施態様>
第4の実施態様の多機能出没式筆記具は、
図6に示すように、上記多機能出没式筆記具1に対し、
先口20の傾斜内面21を覆う弾性被覆部50を設け、この弾性被覆部50の後端を、軸筒10の前端に接したものである。
【0033】
弾性被覆部50は、エラストマー樹脂や合成ゴム等の弾性材料から傾斜内面21に沿う略円錐状に形成される。
弾性被覆部50の前端部の内面は、先口20の前端開口の内面と略面一に形成される。すなわち、弾性被覆部50の前端部分の内径d1と、先口20の前端開口部の内径d0とは、略同径である。
【0034】
そして、弾性被覆部50は、傾斜内面21に対し接着や嵌合等によって固定され、その後端部を、軸筒10の前端部に圧接している。
なお、他例としては、先口20を合成樹脂から形成するとともに、弾性被覆部50を二色成形によって先口20と一体に形成することも可能である。
【0035】
よって、
図6に示す第4の実施態様によれば、上記多機能出没式筆記具1と同様に、軸筒10の外径を小さくできるのに加えて、リフィール41,42が、先口20に直接当接することによる衝撃音や振動等を、弾性被覆部50によって軽減することができる。
しかも、弾性被覆部50の後端を軸筒10の前端に接するようにしたため、この接触部分の摩擦により、軸筒10と先口20の螺合箇所が緩むのを防ぐことができる。
【0036】
<第5の実施態様>
第5の実施態様の多機能出没式筆記具は、
図7に示すように、第4の実施態様の多機能出没式筆記具1に対し、弾性被覆部50を弾性被覆部50’に置換したものである。
【0037】
弾性被覆部50’は、先端部分の内径d1を、先口20の前端開口部の内径d0よりも小さくしたものである。
【0038】
よって、
図7に示す第5の実施態様によれば、上記多機能出没式筆記具1と同様に軸筒10の外径を小さくできるのに加えて、リフィール41,42が、先口20の傾斜内面21や先端開口部の内周面に直接当接して衝撃音や振動等が生じるのを、弾性被覆部50’によって効果的に低減することができる。
【0039】
<第6の実施態様>
第6の実施態様の多機能出没式筆記具は、
図8に示すように、第4の実施態様の多機能出没式筆記具1に対し、弾性被覆部50を弾性被覆部50”に置換したものである。
【0040】
弾性被覆部50”は、その前端側の最小径部分54の内径d1を、先口20の前端開口部(内面23)の内径d0よりも小さくするとともに、最小径部分54によって、先口20の前端開口部(内径d0)の内周面を覆っている。
【0041】
よって、
図8に示す第6の実施態様によれば、上記多機能出没式筆記具1と同様に軸筒10の外径を小さくできるのに加えて、リフィール41,42が、先口20の傾斜内面21や先端開口部の内周面に直接当接して、衝撃音や振動等が生じるのを、弾性被覆部50”によっていっそう効果的に低減することができる。
【0042】
なお、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0043】
1:多機能出没式筆記具
10:軸筒
11a:雄ネジ部
20,20’:先口
21:傾斜内面
21a:段部
22:接続部
22a:雌ネジ部
30:グリップ部
41,42:リフィール
50,50’,50”:弾性被覆部