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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】加飾繊維シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/30 20060101AFI20240724BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20240724BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20240724BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20240724BHJP
   B32B 15/14 20060101ALI20240724BHJP
   D06M 11/83 20060101ALI20240724BHJP
   D06Q 1/04 20060101ALI20240724BHJP
   D06Q 1/08 20060101ALI20240724BHJP
   D06Q 1/10 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
B32B3/30
B32B5/02 Z
B32B9/00 A
B32B15/04 Z
B32B15/14
D06M11/83
D06Q1/04
D06Q1/08
D06Q1/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020021844
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2020131710
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2019023290
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 守雄
(72)【発明者】
【氏名】木野 正明
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-128882(JP,A)
【文献】特開平05-156575(JP,A)
【文献】特開平06-116881(JP,A)
【文献】特開平06-123069(JP,A)
【文献】特開昭62-257487(JP,A)
【文献】特開2013-216105(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0355537(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B、D06Q、D06M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅30~200μmの線状の凹みを有する繊維基材と、該繊維基材上に配置されている色調調整層とを有し
記色調調整層が、金属元素又は半金属元素から構成される金属、半金属若しくは合金、金属元素又は半金属元素を含む化合物、またはこれらの混合物から構成される層であり、且つ
任意の3cm×3cmの領域において、幅30~200μmの線状の凹みを有する繊維基材と、該繊維基材上に配置されている半金属層からなる色調調整層とを有する、加飾繊維シート。
【請求項2】
前記繊維基材の線状の凹みが並行に2本以上配置されており、平均周期が200~600μmである、請求項1記載の加飾繊維シート。
【請求項3】
前記繊維基材の任意の3cm×3cmの領域において、平行に2本以上配置された線状の凹みが2組以上あり、且つ1組以上がその他と異なった方向性を有する、請求項1又は2に記載の加飾繊維シート。
【請求項4】
前記色調調整層が、MO(Mはn価の金属又は半金属を表し、かつxは0以上n/2未満の数を表す。)、MN(Mはn価の金属又は半金属を表し、かつyは0以上n/3以下の数を表す)又は、MC(Mはn価の金属又は半金属を表し、かつzは0以上n/4以下の数を表す)を含む層を有する、請求項1~3のいずれかに記載の加飾繊維シート。
【請求項5】
前記MOにおけるM、前記MNにおけるM及び前記MCにおけるMが、ケイ素、ゲルマニウム、ガリウム、亜鉛、銀、金、チタン、アルミニウム、モリブデン、ニオブ、又はインジウムである、請求項4に記載の加飾繊維シート。
【請求項6】
少なくとも繊維基材、金属層、半金属層を有し、これらがこの順に積層されている、請求項1~5のいずれかに記載の加飾繊維シート。
【請求項7】
前記半金属層に最も多く含まれる金属元素が、ケイ素、又はゲルマニウムであり、且つ前記金属層に最も多く含まれる金属元素が、ガリウム、亜鉛、銀、金、チタン、アルミニウム、スズ、銅、鉄、モリブデン、ニオブ、又はインジウムである、請求項6に記載の加飾繊維シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾繊維シート等に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維基材は、意匠性が要求される各種分野において利用されている。例えば、炭素繊維基材は、樹脂と共に複合材料(炭素繊維強化プラスチック等)を構成し、航空機のボディー等の比較的大型のものから、スポーツ用品、車の内外装材、衣服等の比較的小型の身近なものまで、幅広く利用されている。このため、繊維基材は、その意匠性を高めるために着色されることがある。また、その際に、その独特の意匠性から、光沢性を付与することがある。
【0003】
従来、これらの基材の着色は、染料や顔料等を含む塗料を塗布することにより行うことが一般的であった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開第2010-229587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、研究を進める中で、繊維基材上に半金層を配置することにより、繊維基材の風合いを残しつつ、色彩及び金属光沢を付与できることを見出し、意匠性をより高められることを見出した。
【0006】
本発明者は、さらなる意匠性の向上を図るために、光沢感の違いにより表現される模様に着目し、これを付与することを検討した。しかし、検討を進める中で、付与した模様の鮮明さが不十分であることを見出した。
【0007】
そこで、本発明は、色彩及び金属光沢を付与でき、且つ模様を鮮明に付与することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題に鑑みて研究を進める中で、半金属層を積層させる前の繊維基材において線状の凹みを付与することにより模様を付与することに着目した。さらに研究を進め、この幅を調整することにより、模様の鮮明性を調整できることを見出した。
【0009】
本発明者は、これらの知見に基づいて鋭意研究を進めた結果、幅30~200μmの線状の凹みを有する繊維基材と、該繊維基材上に配置されている色調調整層とを有する、加飾繊維シート、であれば、上記課題を解決できることを見出した。本発明者はこの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0011】
項1. 幅30~200μmの線状の凹みを有する繊維基材と、該繊維基材上に配置されている色調調整層とを有する、加飾繊維シート。
【0012】
項2. 前記繊維基材の線状の凹みが並行に2本以上配置されており、平均周期が200~600μmである、項1記載の加飾繊維シート。
【0013】
項3. 前記繊維基材の任意の3cm×3cmの領域において、平行に2本以上配置された線状の凹みが2組以上あり、且つ1組以上がその他と異なった方向性を有する、項1又は2に記載の加飾繊維シート。
【0014】
項4. 前記色調調整層が、MO(Mはn価の金属又は半金属を表し、かつxは0以上n/2未満の数を表す。)、MN(Mはn価の金属又は半金属を表し、かつyは0以上n/3以下の数を表す)又は、MC(Mはn価の金属又は半金属を表し、かつzは0以上n/4以下の数を表す)を含む層を有する、項1~3のいずれかに記載の加飾繊維シート。
【0015】
項5. 前記MOにおけるM、前記MNにおけるM及びMCにおけるMが、ケイ素、ゲルマニウム、ガリウム、亜鉛、銀、金、チタン、アルミニウム、モリブデン、ニオブ、又はインジウムである、項4に記載の加飾繊維シート。
【0016】
項6. 少なくとも繊維基材、金属層、半金属層を有し、これらがこの順に積層されている、項1~5のいずれかに記載の加飾繊維シート。
【0017】
項7. 前記半金属層に最も多く含まれる金属元素が、ケイ素、又はゲルマニウムであり、且つ前記金属層に最も多く含まれる金属元素が、ガリウム、亜鉛、銀、金、チタン、アルミニウム、スズ、銅、鉄、モリブデン、ニオブ、又はインジウムである、項6に記載の加飾繊維シート。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、色彩及び金属光沢を有し、且つ鮮明な模様を有する加飾繊維シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0020】
1.加飾繊維シート
本発明は、その一態様において、幅30~200μmの線状の凹みを有する繊維基材と、該繊維基材上に配置されている色調調整層とを有する、加飾繊維シート(本明細書において、「本発明の加飾繊維シート」と示すこともある。)、に関する。以下に、これについて説明する。
【0021】
<1-1.繊維基材>
繊維基材は、繊維又は繊維束を素材として含む基材であって、幅30~200μmの線状の凹みを有するシート状のものである限り、特に制限されない。この範囲の幅の線状の凹みが形成されていることによって、鮮明な模様を発現させることができる。
【0022】
線状の凹みの幅は、模様の鮮明さ・視認性の観点等から、好ましくは40~180μm、より好ましくは50~150μmである。
【0023】
凹み線の幅は、以下の方法により測定することができる:
凹み線の幅は、デジタルマイクロスコープ観察により求める。具体的には、デジタルマイクロスコープ(ライカマイクロシステムズ社製デジタルマイクロスコープ DVM6 又は、その同等品)にて観察および計測する。倍率は300倍とし、凹み線の幅手方向における一方の端部から他方の端部までの距離を、任意の5箇所で計測し、その平均値を凹み線の幅とする。
【0024】
凹み線の深さは、特に制限されるものではないが、例えば1~200μmである。該深さは、繊維基材の耐久性と模様の鮮明性の観点等から、好ましくは5~150μm、より好ましくは10~100μmである。
【0025】
凹み線の深さは、以下の方法により測定することができる:
凹み線の深さは、レーザー顕微鏡観察により求める。具体的には、レーザー顕微鏡(キーエンス社製レーザー顕微鏡(VK-8710又は、その同等品)にて観察および計測する。対物レンズは20倍とし、凹み線の幅手方向における中心位置と、幅手方向の端部(凹み線の外縁)との高さの差を計測する。任意の5箇所で計測し、その平均値を凹み線の深さとする。
【0026】
凹み線の長さは、特に制限されるものではないが、例えば1~1000000μmである。該長さは、意匠性・模様の鮮明性の観点等から、好ましくは5~100000μm、より好ましくは10~30000μmである。
【0027】
凹み線の形状は、特に制限されないが、通常、直線状領域を含む形状である。なお、「直線状」とは、完全に直線である場合のみを意味するものではない。直線状とは、例えば、凹み線の長手方向における2つの端部それぞれにおける任意の点を繋ぐ直線が、凹み線の幅の範囲内に収まることを表すが、これに限定されるものではない。凹み線の長さ100%に対する直線状領域の割合は、例えば30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは95%以上である。
【0028】
本発明の好ましい一態様においては、繊維基材の線状の凹みが平行に2本以上配置されている。ここで、「平行」とは、完全に平行である場合のみを意味するものではない。平行とは、例えば、任意の一本の凹み線と他の凹み線とが成す鋭角の角度が2度未満であることを表す。
【0029】
この好ましい態様において、さらに好ましくは平均周期が200~600μmである。すなわち、凹み線の間隔が200~600μmであることが好ましい。これにより、模様をより明確に判別できるようになる。該範囲は、より好ましくは250~550μm、さらに好ましくは300~500μmである。
【0030】
凹み線の平均周期は、以下の方法により測定することができる:
凹み線の平均周期は、デジタルマイクロスコープ観察により求める。具体的には、デジタルマイクロスコープ(ライカマイクロシステムズ社製デジタルマイクロスコープ DVM6 又は、その同等品)にて観察および計測する。倍率は300倍とし、隣接する2本以上の凹み線の距離を計測する。より具体的には、基準とする凹み線を基準線とし、その一方の凹み線外縁における任意の計測開始点を基準点とする。基準点と、基準点から基準線の幅手方向に伸ばした直線と隣接する凹み線との交点との距離を計測する。なお交点は、隣接する凹み線外縁の、基準点と同じ側における交点を用いる。
基準点は任意の5箇所にとり、それぞれ基準点と交点との距離を計測し、その平均値を凹み線の平均周期とする。
【0031】
この好ましい態様において、加飾繊維シートの任意の3cm×3cmの領域内に、平行に配置された線状の凹みは2本以上存在することが好ましく、40本以上存在することがより好ましく、50本以上存在することがさらに好ましい。該本数の上限は特に制限されないが模様の視認性の観点から、例えば1000本以下、好ましくは300本以下、より好ましくは200本以下、更により好ましくは130本以下である。
【0032】
本発明の好ましい一態様においては、繊維基材の任意の3cm×3cmの領域において、平行に2本以上配置された線状の凹みが2組以上あり、且つ1組以上がその他と異なった方向性を有する。これにより、視認する角度によって強調度合いの異なる2領域が生じ、意匠性がより高まる。ここで、「異なった方向」とは、特に制限されないが、例えば任意の一組の凹み線と他の組の凹み線とが成す鋭角の角度が2度以上であることを意味する。該角度は、意匠性の観点から、好ましくは10度以上、より好ましくは30度以上である。該角度の上限は特に制限されないが、通常90度以下である。
【0033】
それぞれの領域における線状の凹みは、線幅及び/又は平均周期が異なることが好ましい。線幅及び/又は平均周期が異なることで、光沢感が異なる意匠性を得ることができる。さらに、それぞれの領域の方向性が異なることで、見る方向により強調される領域が異なり、かつ、それぞれの領域で光沢感が異なった意匠性を得ることができる。
【0034】
繊維基材は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、繊維及び繊維束以外の成分が含まれていてもよい。その場合、繊維基材中の繊維及び繊維束の合計量は、例えば80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であり、通常100質量%未満である。繊維基材としては、例えば、織物(例えば、平織、綾織(斜文織)、繻子織等)、編物、不織布、紙等が挙げられる。これらの中でも、繊維表面に形成する凹み線が平坦で光の反射率が比較的高く、本発明の加飾繊維シートの意匠性がより高くなるという観点から、好ましくは織物、編物等が挙げられ、より好ましくは織物が挙げられる。繊維基材は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、エンボス処理やカレンダー処理をしてもよい。繊維基材として、平滑性がより高いものを採用することにより、本発明の加飾繊維シートのメタリック感をより高めることができる。また、繊維基材の凹み線の平坦性を高くすることで、本発明の加飾繊維シートの意匠性がより高くなる。
【0035】
繊維基材の層構成は特に制限されない。繊維基材は、1種単独の繊維基材から構成されるものであってもよいし、2種以上の繊維基材が複数組み合わされたものであってもよい。
【0036】
繊維基材を構成する繊維としては、特に制限されず、例えば合成繊維(例えばナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリウレタン繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリロニトリル繊維等)、再生繊維(例えばレーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル、アセテート等)、植物繊維(例えば綿繊維、麻繊維、亜麻繊維、レーヨン繊維、ポリノジック繊維、キュプラ繊維、リヨセル繊維、アセテート繊維等)、動物繊維(例えば羊毛、絹、天蚕糸、モヘヤ、カシミア、キャメル、ラマ、アルパカ、ビキューナ、アンゴラ、蜘蛛糸等)等の有機繊維; 炭素繊維(例えばPAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、カーボンナノチューブ等)、ガラス繊維(例えばグラスウール、グラスファイバー等)、鉱物繊維(例えば温石綿、白石綿、青石綿、茶石綿、直閃石綿、透角閃石綿、陽起石綿等)、人造鉱物繊維(例えばロックウール、セラミックファイバー等)、金属繊維(例えば、ステンレス繊維、アルミニウム繊維、鉄繊維、ニッケル繊維、銅繊維等)等の無機繊維等を広く用いることができる。
【0037】
繊維の形態は、連続長繊維や連続長繊維をカットした短繊維、粉末状に粉砕したミルド糸等、いずれでもよい。
【0038】
繊維は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0039】
繊維束は、複数の繊維からなるものである限り、特に制限されない。繊維束を構成する繊維の本数は、例えば5以上、10以上、20以上、50以上、であり、一方で例えば50000以下、20000以下、15000以下、2000以下である。これらの上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0040】
繊維基材の厚みは、繊維の種類に応じて異なり得るものであり、特に制限されない。繊維基材の厚みは、例えば3~500μm、好ましくは10~50μmである。
【0041】
上記繊維基材は、難燃剤、吸水剤、撥水剤、柔軟剤、蓄熱剤、紫外線遮蔽剤、制電剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、防蚊剤、蓄光剤、再帰反射剤等の、公知の仕上げ剤が付着してもよい。
【0042】
上述の凹み線を有する繊維基材は、様々な方法により製造することができる。一例として、繊維として熱可塑性樹脂繊維を使用する場合、熱可塑性樹脂繊維から成る繊維布帛に、エンボスロールとヒートロールからなるエンボス加工装置でエンボス加工を行うことにより、製造することができる。以下に、この製造方法について詳述する。
【0043】
本発明における熱可塑性樹脂繊維としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル等の合成繊維を好適に使用することができる。また、布帛としては、編布、織布、不織布、タフト(刺繍)布、電着布等いずれでもよい。また、パイルを有していてもよいし、パイルを有さなくてもよい。
【0044】
本発明に好適なエンボスロールとヒートロールは、表面がメッキ等のコーティングされた金属製で、両者ともロール内部から加熱する形式のもので、直径としては150mm~600mmが好ましい。加熱する温度は、100~250℃が好ましく、布帛にエンボスを施すには、布帛は、まずヒートロールによって加熱され、1/2~3/4回転進んだところで加熱したエンボスロールとの間で加圧されてエンボスされる。ともに金属製であるので、模様の固定化が容易で、シャープな型押し模様を付与することができる。模様の鮮明性の観点、加飾繊維シートの風合いの観点等から、エンボスロールとヒートロールの加熱温度は、100~250℃であることが好ましい。
【0045】
また、エンボスロールとヒートロールとの間隔は、生地の厚さ、密度によって適宜調整するが、模様のムラを抑制する観点から、0.05mm~2mmの間隔でエンボスロールとヒートロールが平行に保たれていることが好ましい。
【0046】
また、適宜の間隔に配置したエンボスロールとヒートロールとの間を、加工スピード0.3m/分~10m/分で押圧された状態で布帛を通過させることにより、布帛が十分に加熱されて、耐久性に優れた模様が付与される。
【0047】
本発明におけるエンボスロールの表面の型押部は、分散状態に配置されることが好ましく、型押部の高さは布帛の厚みによるが、0.1mm~10mmが好ましい。型押部が布帛の押圧部に相当し、模様のデザインにもよるが、型押部の合計面積は、エンボスロールの表面積の20~60%で、分散して配置されるのが好ましい。
【0048】
<1-2.色調調整層>
色調調整層は、繊維基材上に配置されている層である。色調調整層は、繊維基材上に、直接又は他の層(例えば、後述の金属層)を介して配置される。
【0049】
色調調整層は、金属元素又は半金属元素を素材として含む層であることが好ましい。色調調整層は、金属元素及び半金属元素以外の成分が含まれていてもよい。その場合、色調調整層中の金属元素及び半金属元素の含有量は、例えば30質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上、非常に好ましくは99質量%以上であり、通常100質量%未満である。
【0050】
色調調整層を構成する金属又は半金属としては、特に制限されず、金属としては、例えばガリウム、亜鉛、銀、金、チタン、アルミニウム、スズ、銅、鉄、モリブデン、ニオブ、又はインジウム等が、半金属としては例えばケイ素、ゲルマニウム、アンチモン、ホウ素、リン、ビスマス等が挙げられる。これらの中でも、付与可能な色彩の選択幅の広さ、加飾繊維シートの耐久性の観点等から、好ましくはケイ素、ゲルマニウム等が挙げられ、より好ましくはケイ素等が挙げられる。
【0051】
金属元素及び半金属元素は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0052】
色調調整層は、金属元素又は半金属元素から構成される金属、半金属若しくは合金から構成されてもよく、金属元素又は半金属元素を含む化合物から構成されてもよく、またはこれらの混合物から構成されてもよい。金属元素又は半金属元素を含む化合物としては、例えば酸化物、窒化物、炭化物、及び窒化酸化物等が挙げられる。
【0053】
上記酸化物としては、例えばMO[式中、Xは式:n/100)≦X<n/2(nは半金属の価数である)を満たす数であり、Mは半金属元素である。]で表される化合物が挙げられる。
【0054】
上記窒化物としては、例えばMN[式中、Yは式:n/100≦Y≦n/3(nは半金属の価数である)を満たす数であり、Mは半金属元素である。]で表される化合物が挙げられる。
【0055】
上記炭化物としては、例えばMC[式中、Zは式:n/100≦Z≦n/4(nは半金属の価数である)を満たす数であり、Mは半金属元素である。]で表される化合物が挙げられる。
【0056】
上記窒化酸化物としては、例えばMO[式中、XとYは、n/100≦X、n/100≦Y、かつ、X+Y<n/2(nは半金属の価数である)であり、Mは半金属元素である。]で表される化合物が挙げられる。
【0057】
上記酸化物又は窒化酸化物の酸化数Xに関しては、例えばMO又はMOを含む層の断面を、FE-TEM-EDX(例えば、日本電子社製「JEM-ARM200F」)により元素分析し、MO又はMOを含む層の断面の面積当たりのMとOとの元素比率からXを算出することにより、酸素原子の価数を算出することができる。
【0058】
上記窒化物又は窒化酸化物の窒素化数Yに関しては、例えばMN又はMOを含む層の断面を、FE-TEM-EDX(例えば、日本電子社製「JEM-ARM200F」)により元素分析し、MN又はMOを含む層の断面の面積当たりのMとNとの元素比率からYを算出することにより、窒素原子の価数を算出することができる。
【0059】
上記炭化物の炭素化数Zに関しては、例えばMCz含む層の断面を、FE-TEM-EDX(例えば、日本電子社製「JEM-ARM200F」)により元素分析し、MCを含む層の断面の面積当たりのMとCとの元素比率からZを算出することにより、炭素原子の価数を算出することができる。
【0060】
色調調整層は、MOx(Mはn価の半金属を表し、かつxは0以上n/2未満の数を表す。)、MNy(Mはn価の半金属を表し、かつyは0以上n/3以下の数を表す)又はMCz(Mはn価の金属又は半金属を表し、かつzは0以上n/4以下の数を表す)を含む層を有することが好ましい。この場合において、Mは、それぞれ、ケイ素、ゲルマニウム、ガリウム、亜鉛、銀、金、チタン、アルミニウム、モリブデン、ニオブ、又はインジウムであることが好ましい。これらの中でも、色彩の彩度を大きくする観点等から、好ましくはケイ素、ゲルマニウム、チタン等が挙げられ、より好ましくはケイ素、ゲルマニウム等が挙げられる。
【0061】
色彩の彩度をより大きくする観点等から、MO中のMがケイ素である場合、Xは、1未満の数を表すことが好ましく、0.5未満の数を表すことがより好ましい。MN中のMがケイ素である場合、Yは、4/3以下の数を表すことが好ましい。MC中のMがケイ素である場合、Zは、1以下の数を表すことが好ましい。
【0062】
色調調整層は、半金属元素を含有することが好ましく、半金属が主成分(例えば80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上)である層であることがより好ましい。色調調整層に最も多く含まれる半金属元素は、ケイ素、又はゲルマニウムであることが好ましい。
【0063】
色調調整層の厚みは、特に制限されないが、例えば1~200nmである。該厚みは、金属光沢感の観点、色彩の明度・彩度を大きくする観点等から、好ましくは3~140nm、より好ましくは4~140nmである。
【0064】
色調調整層の層構成は特に制限されない。色調調整層は、1層からなる単層であってもよいし、同一又は異なる組成を有する複数の層であってもよい。色調調整層は、その2つの主面の一方或いは両方において、表面が酸化皮膜等の皮膜で構成されていてもよい。
【0065】
<1-3.金属層>
本発明の加飾繊維シートは金属層を有することが好ましい。金属層は、繊維基材上に配置される。金属層を有する場合、本発明の加飾繊維シートは、その好ましい一態様において、少なくとも繊維基材、金属層、色調調整層(好ましくは半金属層)を有し、これらがこの順に積層されている、という構成を有する。金属層により、光沢感、耐変色性、色彩の鮮やかさ等をより向上させることができる。金属層は、光学干渉や光の反射により、主に色彩における明度を調整することができる。金属層と繊維基材との間には、他の層が備えられていてもよい。
【0066】
金属層は、金属を素材として含む層である限り、特に制限されない。金属層は、金属以外の成分が含まれていてもよい。その場合、金属層中の金属量は、例えば80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であり、通常100質量%未満である。
【0067】
金属層を構成する金属としては、特に制限されず、例えばガリウム、亜鉛、銀、金、チタン、アルミニウム、スズ、銅、鉄、モリブデン、ニオブ、インジウム、クロム、ニッケル、タングステン、タンタル、ステンレス、ニッケルクロム合金、ニッケル銅合金等が挙げられる。これらの中でも、光沢感、色彩の彩度及び明度の観点、耐変色性等の耐久性の観点等から、好ましくはガリウム、亜鉛、銀、金、チタン、アルミニウム、スズ、銅、鉄、モリブデン、ニオブ、インジウム等が挙げられる。また、衣料用途等においては、金属アレルギー反応の軽減や検針機による誤検出防止に優れる観点から、チタンが好適に用いられる。
【0068】
本発明の加飾繊維シートが色調調整層に金属元素を含む場合、金属光沢感の観点、色彩の明度、彩度を大きくする観点等から、色調調整層に最も多く含まれる金属元素と、金属層に最も多く含まれる金属元素とが異なることが好ましい。
【0069】
金属層に最も多く含まれる金属元素は、ガリウム、亜鉛、銀、金、チタン、アルミニウム、スズ、銅、鉄、モリブデン、ニオブ、又はインジウムであることが好ましい。
【0070】
金属は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0071】
金属層の厚みは、特に制限されず、例えば1~200nmである。該厚みは、色彩の明度・彩度を大きくする観点等から、好ましくは5~100nm、より好ましくは10~80nmである。
【0072】
金属層の層構成は特に制限されない。金属層は、1層からなる単層であってもよいし、同一又は異なる組成を有する複数の層であってもよい。また、金属層は、その2つの主面の一方或いは両方において、表面が酸化皮膜等の皮膜で構成されていてもよい。
【0073】
<1-4.酸化物層>
本発明の加飾繊維シートは、金属層又は色調調整層層の繊維基材とは反対側の表面上に、酸化物層を有することが好ましい。酸化物層により、耐変色性等の耐久性をより向上させることができる。
【0074】
酸化物層は、金属または半金属の酸化物を素材として含む層である限り、特に制限されない。酸化物層は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、該酸化物以外の成分が含まれていてもよい。その場合、酸化物層中の該酸化物量は、例えば80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であり、通常100質量%未満である。
【0075】
酸化物層を構成する半金属酸化物としては、特に制限されず、例えばケイ素、ゲルマニウム、アンチモン、ビスマス、等の半金属(好ましくはケイ素)の酸化物が挙げられる。より具体的には、半金属酸化物としては、AO[式中、Xは式:n/2.5≦X≦n/2(nは半金属の価数である)を満たす数であり、Aはケイ素、ゲルマニウム、アンチモン、ビスマス、及びからなる群から選択される半金属である。]で表される化合物が挙げられる。上記式中のAが半金属元素である場合、繊維シートの色調を良好に調整できる観点から、Aはケイ素が好ましく、半金属酸化物がSiOであることがより好ましい。半金属酸化物は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0076】
酸化物層を構成する金属酸化物としては、特に制限されず、例えばチタン、亜鉛、アルミニウム、ニオブ、コバルト、ニッケル等の金属(好ましくはチタン、亜鉛、及び、アルミニウム)の酸化物が挙げられる。より具体的には、金属酸化物としては、AO[式中、Xは式:n/2.5≦X≦n/2(nは金属の価数である)を満たす数であり、Aはチタン、アルミニウム、ニオブ、コバルト、及び、ニッケルからなる群から選択される金属である。]で表される化合物が挙げられる。上記式中のAが金属元素である場合、繊維シートの色調を良好に調整できる観点から、Aはチタン及びアルミニウムが好ましく、金属酸化物はTiO、ZnO及びAlであることがより好ましい。金属酸化物は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0077】
耐変色性等の耐久性、透明性、及び色彩の調整を容易にする観点から、上記式中のXは、好ましくはn/2.4以上n/2以下、より好ましくはn/2.3以上n/2以下、さらに好ましくはn/2.2以上n/2以下、特に好ましくはn/2.1以上n/2以下である。
【0078】
酸化物層の厚みは、特に制限されず、例えば1~50nmである。該厚みは、耐変色性等の耐久性及び透明性の向上、並びに色彩の容易な調整を同時に達成する観点から、好ましくは2~20nm、より好ましくは3~10nmである。
【0079】
酸化物層の層構成は特に制限されない。酸化物層は、1層からなる単層であってもよいし、同一又は異なる組成を有する複数の層であってもよい。
【0080】
<1-5.製造方法>
本発明の加飾繊維シートの製造方法は、特に制限されない。一例として、繊維基材の表面に色調調整層として半金属元素含有層を形成する工程を含む方法により得ることができる。金属層を含む場合は、例えば、繊維基材の表面に金属層を形成した後、金属層上に色調調整層を形成することにより、本発明の加飾繊維シートを製造することができる。
【0081】
特に限定されないが、前記付着は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、パルスレーザーデポジション法等により行うことができる。これらの中でも、膜厚制御性の観点から、スパッタリング法が好ましい。
【0082】
スパッタリング法としては、特に限定されないが、例えば、直流マグネトロンスパッタ、高周波マグネトロンスパッタ及びイオンビームスパッタ等が挙げられる。また、スパッタ装置は、バッチ方式であってもロール・ツー・ロール方式であってもよい。
【0083】
2.用途
本発明の加飾繊維シートは、メタリック感を有するものであるので、独特の意匠性を有する繊維材料として、各種分野において利用することができる。
【0084】
本発明の加飾繊維シートは、具体的には、例えばコート、ジャケット、ズボン、スカート、スポーツウェア、ワイシャツ、ニットシャツ、ブラウス、セーター、カーディガン、ナイトウエア、肌着、サポーター、靴下、タイツ、帽子、スカーフ、マフラー、襟巻き、手袋、服の裏地、服の芯地、服の中綿、作業着、ユニフォーム、学童用制服等の衣料、カーテン、布団地、布団綿、枕カバー、シーツ、マット、カーペット、タオル、ハンカチ、マスク、フィルター、装飾布/生地、壁布、壁紙、フロア外張り等の繊維製品に利用することができる。
【0085】
また、別の具体例として、本発明の加飾繊維シート、並びに樹脂を含有する、複合材料(本明細書において、「本発明の複合材料」と示すこともある。)として利用することも可能である。
【0086】
本発明の複合材料は、本発明の加飾繊維シートと樹脂を含有する限りにおいて、特に制限されない。好ましくは、本発明の複合材料は、本発明の繊維材料が母材である樹脂中に含有されてなる、繊維強化プラスチックである。
【0087】
樹脂としては、特に制限されず、種々様々な樹脂を採用することができる。なお、樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂(例えば、ナイロン)、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルイミドやポリエーテルサルホン、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
【0088】
本発明の複合材料は、常法にしたがって製造することができ、自動車(特に、自動車の内外装)、航空機、スポーツ関連製品(ゴルフシャフト、テニスラケット、バドミントンラケット、釣り竿、スキー板、スノーボード、バット、アーチェリー、自転車、ボート、カヌー、ヨット、ウィンドサーフィン等)、医療器具、建築部材、電気機器(パソコン等の筐体、スピーカーコーン)等を製造するための構造材料等、様々な用途において活用することができる。
【実施例
【0089】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0090】
(1)繊維シートの製造
(実施例1)
繊維基材として、Masuda社製「シルファイン・ナイロンタフタ TM3001」(ナイロン繊維(30デニール)、平織)を用いた。
【0091】
凸部がストライプ上に配置された凹凸ローラーを180℃に加熱して、線圧150kg/cm、加工速度は5m/minにて繊維基材をエンボス加工した。繊維基材の表面には線幅が35μm、平均周期が400nmの凹み線を有していた。
【0092】
エンボス加工した繊維基材をスパッタリング装置内に設置し、5.0×10-4Pa以下となるまで真空排気した。続いて、アルゴンガスを導入して、高周波スパッタリング法により、繊維基材の表面上に金属層としてTi層(平均厚み36nm)を形成し、繊維基材、金属層の順に積層されてなる積層体を得た。更に繊維基材と金属層との積層体を真空装置内に設置し、5.0×10-4Pa以下となるまで真空排気した。続いて、アルゴンガスを導入して、高周波スパッタリング法により、金属層の繊維基材と反対側の表面上に、色調調整層としてSi層(平均厚み26nm)を形成して加飾繊維シートを得た。
【0093】
(比較例1)
エンボス加工をしていない繊維基材を用いること以外は、実施例1と同様にして、加飾繊維シートを得た。
【0094】
(実施例2~4、14~15及び比較例2~3)
凹凸ローラーの凸部形状を変更し、繊維基材の凹み線の線幅を変える以外は、実施例1と同様にして加飾繊維シートを得た。
【0095】
(実施例5~7)
繊維基材の凹み線の線幅を80μmとし、平均周期を変える以外は、実施例1と同様にして加飾繊維シートを得た。
【0096】
(実施例8)
金属層を形成しないこと以外は、実施例3と同様にして加飾繊維シートを得た。
【0097】
(実施例9~10)
凹凸ローラーの凸部間隔を変更し、繊維基材の凹み線の平均周期を変える以外は、実施例5と同様にして加飾繊維シートを得た。
【0098】
(実施例11)
繊維基材の表面に線幅が50μm、平均周期が400nmの微細な凹み線を形成した2cm幅の領域Aと、凹み線の方向が90°異なるように同じ線幅、平均周期の2cm幅の凹み線を有する領域Bが隣接するストライプ模様の繊維基材を用いた。それ以外は、実施例2と同様にして加飾繊維シートを得た。
【0099】
(実施例12)
領域Bの線幅と平均周期を変える以外は、実施例11と同様にして加飾繊維シートを得た。
【0100】
(実施例13)
領域AとBのなす角を変える以外は、実施例11と同様にして加飾繊維シートを得た。
【0101】
(実施例16)
凹凸ローラーの凸部を1つのみとし、繊維基材の凹み線を1本のみとする以外は、実施例1と同様にして加飾繊維シートを得た。
【0102】
(比較例4)
金属層と半金属層を形成しないこと以外は、実施例3と同様にした。
【0103】
(2)測定及び評価
(2-1)線幅
凹み線の幅は、デジタルマイクロスコープ観察により求めた。具体的には、デジタルマイクロスコープ(ライカマイクロシステムズ社製デジタルマイクロスコープ DVM6)にて観察および計測した。倍率は300倍とし、凹み線の幅手方向における二つの端部の距離を任意の5箇所にて計測し、その平均値を凹み線の幅とした。
【0104】
(2-2)平均周期
凹み線の平均周期は、デジタルマイクロスコープ観察により求めた。具体的には、デジタルマイクロスコープ(ライカマイクロシステムズ社製デジタルマイクロスコープ DVM6)にて観察および計測した。倍率は300倍とし、隣接する2本以上の凹み線の距離を計測した。より具体的には、基準とする凹み線を基準線とし、その片端における任意の計測開始点を基準点とした。基準点から基準線の幅手方向に伸ばした直線上で、隣接する凹み線において基準点と同じ側の片端までの距離を計測した。基準点は任意の5箇所の位置にて計測し、その平均値を凹み線の平均周期とした。
【0105】
(2-3)柄鮮明度
柄鮮明度の評価は、白色灯にてサンプルを照らし、サンプル面に対して45°の方向から目視で評価した。また、実施例11~12はサンプルを面方向に回転させて、柄の変化度合いについても評価した。評価者は10人とし、以下の基準にて判定した。
【0106】
<柄鮮明度判定基準>
◎:10人/10人が模様が鮮明であると判定した。
○:7~9人/10人が模様が鮮明であると判定した。
△:5~6人/10人が模様が鮮明であると判定した。
×:0~4人/10人が模様の鮮明であると判定した。
【0107】
<柄変化度合い判定基準>
◎:見る方向により強調される領域が異なり、さらに光沢感も異なる。
〇:見る方向により強調される領域が異なる。
【0108】
結果を表1~3に示す。なお実施例16は線状の模様が視認できた。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】