(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】換気制御システム
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20240724BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20240724BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20240724BHJP
F24F 11/89 20180101ALI20240724BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F11/46
F24F11/74
F24F11/89
(21)【出願番号】P 2020126131
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】小林 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】篠島 隆司
(72)【発明者】
【氏名】天雲 伸一
(72)【発明者】
【氏名】有田 博
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-067939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 11/46
F24F 11/74
F24F 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
換気対象空間における滞在者の状態を判定する滞在者状態判定手段と、前記滞在者状態判定手段の判定結果に基づいて前記換気対象空間を換気する換気装置の換気量を制御する換気量制御手段と、を備えた換気制御システムであって、
前記換気対象空間における滞在者間の密接度を示す滞在者間密接度を判定する密接度判定手段を、前記滞在者状態判定手段として備え、
前記換気量制御手段が、前記密接度判定手段で判定された前記滞在者間密接度の増加に伴って前記換気装置の換気量を増加させ、
前記密接度判定手段が、前記滞在者間密接度が高い状態である高密接度状態であるか当該高密接度状態ではない低密接度状態であるかを判定し、
前記換気量制御手段が、前記密接度判定手段で前記低密接度状態であると判定されている間は前記換気装置の換気量を所定の低密接度換気量に設定する低密接度換気制御を実行し、前記密接度判定手段で前記高密接度状態であると判定されている間は前記換気装置の換気量を前記低密接度換気量よりも多い所定の高密接度換気量に設定する高密接度換気制御を実行し、
前記密接度判定手段とは別に、前記換気対象空間における滞在者の密集度を示す滞在者密集度を判定する密集度判定手段を、前記滞在者状態判定手段として備え、
前記換気量制御手段が、前記低密接度換気制御
を実行して前記換気装置の換気量を前記低密接度換気量に設定するにあたり、
当該低密接度換気量を前記密集度判定手段で判定された前記滞在者密集度に応じ
て決定す
る換気制御システム。
【請求項2】
前記高密接度換気量は、前記換気装置の最大換気能力に対応する換気量とされている請求項1に記載の換気制御システム。
【請求項3】
前記密接度判定手段が、前記滞在者間密接度が低い状態が所定の設定時間継続した場合に前記低密接度状態であると判定し、前記滞在者間密接度が高い状態が所定の設定時間継続した場合に前記高密接度状態であると判定する請求項
1又は2に記載の換気制御システム。
【請求項4】
前記換気対象空間における滞在者間の距離を示す滞在者間距離を測定可能な測定手段を備え、
前記密接度判定手段が、前記測定手段で測定された滞在者間距離に基づいて前記滞在者間密接度を判定し、
前記換気対象空間における滞在者の人数を示す滞在者人数を測定可能な滞在者人数測定手段を備え、
前記密集度判定手段が、前記滞在者人数測定手段で測定された滞在者の人数に基づいて前記滞在者密集度を判定する請求項1~3の何れか1項に記載の換気制御システム。
【請求項5】
前記密接度判定手段で判定された滞在者間密接度に関する滞在者間密接度情報と、前記密集度判定手段で判定された滞在者密集度に関する滞在者密集度情報と、を前記換気対象空間における滞在者に対して通知する通知手段を備えた請求項1~4の何れか1項に記載の換気制御システム。
【請求項6】
前記通知手段が、前記換気対象空間における照明装置の点灯状態の変化により前記滞在者間密接度情報を通知する請求項
5に記載の換気制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気対象空間における滞在者の状態を判定する滞在者状態判定手段と、前記滞在者状態判定手段の判定結果に基づいて前記換気対象空間を換気する換気装置の換気量を制御する換気量制御手段と、を備えた換気制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の換気制御システムとして、換気対象空間全体の滞在者の人数を滞在者の状態として判定し、その判定結果に基づいて換気対象空間を換気する換気装置の換気量を制御するものが知られている(例えば特許文献1を参照)。かかる従来のシステムは、換気対象空間(店舗内)に設置された複数の焦電形赤外線センサの判定結果に基づいて、換気対象空間における滞在者の密集度を示す換気対象空間全体の滞在者の人数を判定し、その換気対象空間全体の滞在者の人数の増加に伴って換気装置(給気ファン及び排気ファン)の換気量を増加させる。このことで、換気対象空間全体の空気質環境が良好なものに維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のシステムは、上述のように換気対象空間における滞在者の密集度(例えば、換気対象空間全体の滞在者の人数)の増加に伴って、当該換気対象空間を換気する換気装置の換気量を増加させるものではあるものの、換気対象空間における滞在者の密集度以外の滞在者の状態に応じて換気量を増加させるものではない。
【0005】
しかしながら、換気対象空間における滞在者の密集度が変化しない場合であっても、それ以外の滞在者の状態によっては、例えば局所的に空気質環境が悪化して滞在者間での感染症の拡大リスクが増加する場合が考えられる。
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、換気対象空間における滞在者の状態に基づいて換気対象空間を換気する換気装置の換気量を制御する換気制御システムにおいて、省エネルギー性の向上を図りながら、換気対象空間における空気質環境の悪化を抑制することができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、換気対象空間における滞在者の状態を判定する滞在者状態判定手段と、前記滞在者状態判定手段の判定結果に基づいて前記換気対象空間を換気する換気装置の換気量を制御する換気量制御手段と、を備えた換気制御システムであって、
前記換気対象空間における滞在者間の密接度を示す滞在者間密接度を判定する密接度判定手段を、前記滞在者状態判定手段として備え、
前記換気量制御手段が、前記密接度判定手段で判定された前記滞在者間密接度の増加に伴って前記換気装置の換気量を増加させ、
前記密接度判定手段が、前記滞在者間密接度が高い状態である高密接度状態であるか当該高密接度状態ではない低密接度状態であるかを判定し、
前記換気量制御手段が、前記密接度判定手段で前記低密接度状態であると判定されている間は前記換気装置の換気量を所定の低密接度換気量に設定する低密接度換気制御を実行し、前記密接度判定手段で前記高密接度状態であると判定されている間は前記換気装置の換気量を前記低密接度換気量よりも多い所定の高密接度換気量に設定する高密接度換気制御を実行し、
前記密接度判定手段とは別に、前記換気対象空間における滞在者の密集度を示す滞在者密集度を判定する密集度判定手段を、前記滞在者状態判定手段として備え、
前記換気量制御手段が、前記低密接度換気制御を実行して前記換気装置の換気量を前記低密接度換気量に設定するにあたり、当該低密接度換気量を前記密集度判定手段で判定された前記滞在者密集度に応じて決定する点にある。
【0007】
本構成によれば、例えば換気対象空間における滞在者の密集度が変化しない場合であっても、換気対象空間における滞在者間密接度の増加に伴って換気装置の換気量が増加される。よって、換気対象空間において、滞在者間密接度が高く、その滞在者間での局所的な空気質環境の悪化により例えば当該滞在者間での感染症の拡大リスクの増加が懸念される場合には、換気装置により多くの量の換気が行われるので、その局所的な空気質環境の悪化を抑制することができる。一方、換気対象空間において、滞在者間密接度が低く、その滞在者間での局所的な空気質環境の悪化が懸念されない場合には、換気装置の換気量が削減されるので、省エネルギー性の向上を図ることができる。
従って、本発明により、換気対象空間における滞在者の状態に基づいて換気対象空間を換気する換気装置の換気量を制御する換気制御システムにおいて、省エネルギー性の向上を図りながら、換気対象空間における空気質環境の悪化を抑制することができる技術を提供することができる。
更に、本構成によれば、換気対象空間において高密接度状態であると判定されている間は、上記高密接度換気制御が実行されて換気装置の換気量が高密接度換気量に設定される。このことで、高密接度状態であることに起因する換気対象空間での局所的な空気質環境の悪化を適切に抑制することができる。また、換気対象空間において高密接度状態ではない低密接度状態であると判定されている間は、上記低密接度換気制御が実行されて換気装置の換気量が高密接度換気量よりも少ない低密接度換気量に設定される。このことで、局所的な空気質環境の悪化を回避し得る範囲内で換気装置の換気量の無用な増加を抑制して適切に省エネルギー性を向上させることができる。
更に、本構成によれば、換気対象空間において低密接度状態であると判定されている間には、低密接度換気制御が実行されることで、換気装置の換気量が、換気対象空間における滞在者の人数等の密集度を示す滞在者密集度に応じて決定した低密接度換気量に設定される。このことで、換気対象空間における滞在者密集度の増加に伴って換気装置の換気量を増加させて、換気対象空間全体の空気質環境を良好なものに維持することができる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記高密接度換気量は、前記換気装置の最大換気能力に対応する換気量とされている点にある。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記密接度判定手段が、前記滞在者間密接度が低い状態が所定の設定時間継続した場合に前記低密接度状態であると判定し、前記滞在者間密接度が高い状態が所定の設定時間継続した場合に前記高密接度状態であると判定する点にある。
【0011】
本構成によれば、密接度判定手段で一旦低密接度状態であると判定された場合には、滞在者間密接度が一時的に高い状態となった場合でも、低密接度状態であるとの判定を継続させることができる。一方、密接度判定手段で一旦高密接度状態であると判定された場合には、滞在者間密接度が一時的に低い状態となった場合でも、高密接度状態であるとの判定を継続させることができる。よって、高密接度換気制御と低密接度換気制御との切り替えに伴う換気装置の換気量の頻繁な変化を抑制して、それに起因する快適性の悪化を防止することができる。
また、高密接度状態において例えば滞在者の意思等によらず偶然に滞在者間密接度が一時的に低下した場合であっても、換気装置の換気量は増加側に維持されることになるので、換気対象空間における局所的な空気質環境の悪化を確実に回避することができる。
【0014】
本発明の第4特徴構成は、前記換気対象空間における滞在者間の距離を示す滞在者間距離を測定可能な測定手段を備え、
前記密接度判定手段が、前記測定手段で測定された滞在者間距離に基づいて前記滞在者間密接度を判定し、
前記換気対象空間における滞在者の人数を示す滞在者人数を測定可能な滞在者人数測定手段を備え、
前記密集度判定手段が、前記滞在者人数測定手段で測定された滞在者の人数に基づいて前記滞在者密集度を判定する点にある。
【0015】
本構成によれば、画像型人感センサなどの測定手段を備えることで、換気対象空間における滞在者間距離を簡単に測定することができる。そして、滞在者間距離が小さいほど滞在者間密接度は高い状態であると判断できることから、密接度判定手段において、測定手段で測定された換気対象空間における滞在者間距離に基づいて滞在者間密接度を正確に判定することができる。
【0016】
本発明の第5特徴構成は、前記密接度判定手段で判定された滞在者間密接度に関する滞在者間密接度情報と、前記密集度判定手段で判定された滞在者密集度に関する滞在者密集度情報と、を前記換気対象空間における滞在者に対して通知する通知手段を備えた点にある。
【0017】
本構成によれば、少なくとも換気対象空間に滞在する滞在者に対して、密接度判定手段で判定された滞在者間密接度に関する滞在者間密接度情報が通知されるので、高密接度状態の要因となっている滞在者に対して、滞在者間距離を十分にとって滞在者間密接度を低下させるように促すことができる。このことにより、滞在者間での局所的な空気質環境の悪化を回避することができる。
【0018】
本発明の第6特徴構成は、前記通知手段が、前記換気対象空間における照明装置の点灯状態の変化により前記滞在者間密接度情報を通知する点にある。
【0019】
本構成によれば、通知手段は、換気対象空間における照明装置の点灯状態を変化させる形態で、当該換気対象空間に滞在する滞在者に対して、滞在者間密接度情報を含む各種情報を正確かつ簡単に通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態の換気制御システムが適用された空調システムの概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態として、本発明に係る換気制御システムを空調システムに適用した例を図面に基づいて説明する。
図1に示す空調システム(以下、「本空調システム」とよぶ。)は、換気装置7と、空調装置13と、それらの運転を制御する制御装置30とを備えて構成されている。
換気装置7は、外気OAを換気対象空間1に取り込みながら換気対象空間1の空気を排気EAとして屋外へ排出するものとして構成されている。
一方、空調装置13は、換気装置7により取り込まれた外気OAと室内から取り込んだ還気RAとに対して冷却又は加熱等の温調を行って当該温調後の給気SAを換気対象空間1に供給するものとして構成されている。
【0022】
本実施形態において、換気対象空間1は、一の換気装置7が換気対象とする空間を示しており、他の換気対象空間に対して壁で仕切られた室内を換気対象空間1とすることが一般的ではあるが、同一の室内において複数の換気装置7で換気を行う場合には、それら換気装置7毎に室内を区画して換気対象空間1とする場合もある。
【0023】
換気対象空間1の天井面4には、制御装置30により点灯状態を制御可能な複数の照明装置28が分散配置されている。また、天井面4は通気可能に構成されており、その上方には天井空間5が形成されている。
一方、換気対象空間1の床面2には、複数の床面吹出口2aが分散配置されており、その下方には床下空間3が形成されている。
【0024】
換気装置7は、外気導入ファン10と排気ファン20とを有する。外気導入ファン10は、屋外から外気OAを取り込んで空調装置13を介して換気対象空間1に供給するものとして構成されている。一方、排気ファン20は、換気対象空間1の室内空気を排気EAとして天井空間5に設けられた排気口24から排気ダクト23に取り込んで屋外へ排出するものとして構成されている。
【0025】
外気導入ファン10による外気OAの導入量を調整可能な風量制御弁11と、排気ファン20による排気EAの排気量を調整可能な風量制御弁21とが設けられている。制御装置30は、これら風量制御弁11,21の作動を制御して、外気OAの導入量と排気EAの排気量とを調整することで、換気装置7による換気対象空間1に対する換気量を所望の目標換気量に設定することができる。尚、換気装置7の換気量の設定は、外気導入ファン10や排気ファン20の送風量制御等の別の方法によっても行うことができる。
【0026】
空調装置13は、天井空間5に設置されており、温調コイル15と給気ファン14とを有して構成されている。空調装置13は、外気導入ファン10から供給された外気OAと、天井空間5に設けられた還気口17から還気RAとして取り込まれた換気対象空間1の室内空気とを合流させる。そして、温調コイル15は、その外気OAと還気RAとの合流後の空気を冷水又は温水等の熱媒体との熱交換により冷却又は加熱するものとして構成されている。給気ファン14は、温調コイル15で冷却又は加熱等の温調後の空気を給気SAとして給気ダクト18に送出するものとして構成されている。
給気ファン14により給気ダクト18に送出された給気SAは、床下空間3に設けられた給気口19から当該床下空間3に供給された後に床面2に分散配置された複数の床面吹出口2aを通じて換気対象空間1に吹き出されることになる。
【0027】
更に、本空調システムは、省エネルギー性の向上を図りながら、換気対象空間1における空気質環境の悪化を抑制するための構成を採用している。以下、その詳細構成について説明する。
【0028】
天井面4には、換気対象空間1を撮像し、当該撮像して得た画像を解析することにより、当該換気対象空間1における滞在者Pの配置状態を検知可能な画像型人感センサ26が設けられている。
画像型人感センサ26は、換気対象空間1における滞在者P間の距離を示す滞在者間距離D(「ソーシャルディスタンス」や「フィジカルディスタンス」といわれる場合がある。)を測定可能な測定手段として機能し、更には、換気対象空間1における滞在者Pの人数を示す滞在者人数を測定可能な滞在者人数測定手段として機能する。この画像型人感センサ26で測定された滞在者間距離Dや滞在者人数は、制御装置30に入力される。
制御装置30は、詳細については後述するが、上記画像型人感センサ26の検知結果を用いて換気対象空間1における滞在者Pの状態を判定する滞在者状態判定手段である密接度判定手段31及び密集度判定手段32として機能し、更には、換気量制御手段33及び通知手段34として機能する。
【0029】
〔密接度判定処理〕
密接度判定手段31は、画像型人感センサ26で測定された滞在者間距離Dに基づいて換気対象空間1における滞在者P間の密接度を示す滞在者間密接度を判定する密接度判定処理を実行する。以下、密接度判定手段31により実行される密接度判定処理の詳細について、
図2に基づいて説明を加える。
【0030】
図2に示すように、密接度判定処理では、滞在者間密接度が高い状態である高密接度状態であるか否かを判定するための高密接度状態判定工程(ステップ#10~ステップ#13)と、当該高密接度状態ではない低密接度状態であるかを判定するための低密接度状態判定工程(ステップ#15~ステップ#18)とが、順次繰り返して実行される。
【0031】
高密接度状態判定工程では、タイマーで計測される継続時間Tが0にリセットされた上で(ステップ#10)、画像型人感センサ26で測定された滞在者間距離Dのうちの最小値である最小滞在者間距離Dminが所定の高密接度判定用設定距離Da(例えば2m)以下であるか否かの判定(ステップ#11)が行われる。この判定(ステップ#11)は、継続時間Tが所定の高密接度判定用設定時間Taに達する(ステップ#12のYes)まで、又は、最小滞在者間距離Dminが高密接度判定用設定距離Da以下ではなくなる(ステップ#11のNo)まで、繰り返し実行される。
そして、最小滞在者間距離Dminが高密接度判定用設定距離Da以下に維持された状態での継続時間Tが高密接度判定用設定時間Taに達したとき(ステップ#12のYes)には、高密接度状態であると判定(ステップ#13)される。
【0032】
高密接度状態であると判定(ステップ#13)されたとき、又は、継続時間Tが高密接度判定用設定時間Taに達するまで(ステップ#12のNo)に最小滞在者間距離Dminが高密接度判定用設定距離Da以下ではなくなったとき(ステップ#11のNo)には、次の低密接度状態判定工程(ステップ#15~ステップ#18)が実行される。
【0033】
低密接度状態判定工程では、タイマーで計測される継続時間Tが0にリセットされた上で(ステップ#15)、画像型人感センサ26で測定された滞在者間距離Dのうちの最小値である最小滞在者間距離Dminが所定の低密接度判定用設定距離Db(例えば2m)超であるか否かの判定(ステップ#16)が行われる。この判定(ステップ#16)は、継続時間Tが所定の低密接度判定用設定時間Tbに達する(ステップ#17のYes)まで、又は、最小滞在者間距離Dminが低密接度判定用設定距離Db超ではなくなる(ステップ#16のNo)まで、繰り返し実行される。
そして、最小滞在者間距離Dminが低密接度判定用設定距離Db超に維持された状態での継続時間Tが低密接度判定用設定時間Tbに達したとき(ステップ#17のYes)には、低密接度状態であると判定(ステップ#18)される。
【0034】
低密接度状態であると判定(ステップ#18)されたとき、又は、継続時間Tが低密接度判定用設定時間Tbに達するまで(ステップ#17のNo)に最小滞在者間距離Dminが低密接度判定用設定距離Db超ではなくなったとき(ステップ#16のNo)には、次の高密接度状態判定工程(ステップ#10~ステップ#13)が実行される。
【0035】
即ち、上述のような密接度判定処理では、滞在者間密接度が高い状態(ステップ#11のYes)が所定の高密接度判定用設定時間Ta継続した場合(ステップ#12のYes)には、高密接度状態であると判定(ステップ#13)される。一方、滞在者間密接度が低い状態(ステップ#16のYes)が所定の低密接度判定用設定時間Tb継続した場合(ステップ#17のYes)には、低密接度状態であると判定(ステップ#18)される。
よって、一旦高密接度状態であると判定(ステップ#13)された場合には、滞在者間密接度が一時的に低い状態となった場合でも、高密接度状態であるとの判定が、低密接度判定用設定時間Tbが経過するまでの間継続されることになる。また、一旦低密接度状態であると判定(ステップ#18)された場合には、滞在者間密接度が一時的に高い状態となった場合でも、高密接度状態であるとの判定が、高密接度判定用設定時間Taが経過するまでの間継続されることになる。
【0036】
尚、上記高密接度判定用設定距離Daと上記低密接度判定用設定距離Dbとは、同じ値であってもよいが、異なる値とすることができる。例えば、高密接度判定用設定距離Daを低密接度判定用設定距離Dbよりも小さい値とすることで、高密接度状態と低密接度状態との切替点となる最小滞在者間距離にヒステリシスを設けることができる。このことで、最小滞在者間距離Dminが高密接度判定用設定距離Da以下ではなくなった(ステップ#11のNo)直後に低密接度判定用設定距離Db超となる(ステップ#16のYes)ことを回避すると共に、最小滞在者間距離Dminが低密接度判定用設定距離Db超ではなくなった(ステップ#16のNo)直後に高密接度判定用設定距離Da以下となる(ステップ#11のYes)こと回避して、後述する高密接度換気制御と低密接度換気制御との切り替えに伴う換気装置7の換気量の頻繁な変化を抑制することができる。
また、上記高密接度判定用設定時間Taと上記低密接度判定用設定時間Tbとについても、同じ値であってもよいが、異なる値とすることができる。例えば、高密接度判定用設定時間Taを低密接度判定用設定時間Tbよりも小さい値とすることで、高密接度状態の判定を低密接度状態の判定よりも迅速に行うように構成することができる。
【0037】
〔密集度判定処理〕
密集度判定手段32は、画像型人感センサ26で測定された滞在者Pの人数に基づいて換気対象空間1における滞在者Pの密集度を示す滞在者密集度を判定する密集度判定処理を実行する。
この密集度判定処理では、図示は省略するが、滞在者人数そのものやその滞在者人数を換気対象空間1の床面積や容積で除した値が滞在者密集度として認識され、その滞在者密集度が所定の密集度よりも高い状態である高密集度状態であるか否かが判定される。
【0038】
〔換気量制御・通知制御〕
換気量制御手段33は、換気対象空間1における滞在者Pの状態を判定する滞在者状態判定手段として設けられた密接度判定手段31や密集度判定手段32の判定結果に基づいて換気対象空間1を換気する換気装置7の換気量を制御する換気制御を実行する。同時に、通知手段34は、密接度判定手段31で判定された滞在者間密接度に関する滞在者間密接度情報を換気対象空間1における滞在者Pに対して通知する通知制御を実行する。以下、これら換気制御及び通知制御を含む制御フローの詳細について、
図3に基づいて説明を加える。
【0039】
図3に示す制御フローの換気制御では、換気量制御手段33により、密接度判定手段31で高密接度状態であると判定(ステップ#20のYes)されている間は、所定の高密接度換気制御が実行(ステップ#21)される。また、密接度判定手段31で低密接度状態であると判定(ステップ#23のYes)されている間は、所定の低密接度換気制御が実行(ステップ#25)される。
【0040】
上記高密接度換気制御(ステップ#21)では、換気装置7の目標換気量Vが、後述する低密接度換気量Vaよりも多い所定の高密接度換気量Vmaxに設定される。
一方、上記低密接度換気制御(ステップ#25)では、換気装置7の目標換気量Vが、上記高密接度換気量Vmaxよりも少ない所定の低密接度換気量Vaに設定される。
【0041】
即ち、このような高密接度換気制御(ステップ#21)及び低密接度換気制御(ステップ#25)が実行されることで、密接度判定手段31で判定された滞在者間密接度の増加に伴って換気装置7の目標換気量Vが増加されることになる。
この構成により、密集度判定手段32で判定された換気対象空間1の滞在者Pの人数に相当する滞在者密集度が変化しない場合であっても、密接度判定手段31で判定された換気対象空間1における滞在者間密接度の増加に伴って、換気装置7の目標換気量Vが低密接度換気量Vaから高密接度換気量Vmaxへ増加される。よって、換気対象空間1において、密接度判定手段31で高密接度状態と判定されて滞在者P間での局所的な空気質環境の悪化により例えば当該滞在者P間での感染症の拡大リスクの増加が懸念される場合には、換気装置7の目標換気量Vの増加により多くの量の換気が行われて、その局所的な空気質環境の悪化が抑制される。一方、換気対象空間1において、密接度判定手段31で低密接度状態と判定されて滞在者P間での局所的な空気質環境の悪化が懸念されない場合には、換気装置7の目標換気量Vが高密接度換気量Vmaxから低密接度換気量Vaに低下されて換気動力が削減され、省エネルギー性が向上される。
【0042】
前述したように、密接度判定処理(
図2を参照)では、一旦高密接度状態であると判定(
図2のステップ#13)された場合や、一旦低密接度状態であると判定(
図2のステップ#18)された場合において、滞在者間密接度が一時的に低い状態や高い状態に変化した場合でも高密接度状態又は低密接度状態の判定が継続される。
よって、この換気制御(
図3を参照)において、高密接度換気制御(
図3のステップ#21)と低密接度換気制御(
図3のステップ#25)との切り替えに伴う換気装置7の目標換気量Vの頻繁な変化が抑制され、それに起因する換気対象空間1の快適性の悪化が防止される。
更に、高密接度状態であると判定(
図3のステップ#20のYes)された場合において、例えば滞在者Pの意思等によらず偶然に滞在者間密接度が一時的に低下した場合であっても、換気装置7の目標換気量Vは増加側の高密接度換気量Vmaxに維持される。このことで、換気対象空間1における局所的な空気質環境の悪化が確実に回避される。
【0043】
図3に示す制御フローの換気制御では、高密接度換気制御(ステップ#21)において換気装置7の目標換気量Vとされる高密接度換気量Vmaxは、風量制御弁11,21を全開とした状態での換気装置7の最大換気能力に対応する換気量とされている。尚、高密接度換気制御(ステップ#21)で換気装置7の目標換気量Vとされる高密接度換気量Vmaxは、換気装置7の最大換気能力に対応する目標換気量Vに限るものではなく、低密接度換気制御(ステップ#25)で換気装置7の目標換気量Vとされる低密接度換気量Vaよりも多い目標換気量Vであればよい。
【0044】
一方、低密接度換気制御(ステップ#25)において換気装置7の目標換気量Vとされる低密接度換気量Vaは、換気対象空間1の必要換気量に応じて決定された一定の換気量とすることができるが、本実施形態では、密集度判定手段32で判定された換気対象空間1の滞在者Pの人数に相当する滞在者密集度の増加に伴って換気装置7の目標換気量Vを増加させる形態で、密集度判定手段32で判定された滞在者密集度に応じて低密接度換気量Vaが決定される。この構成により、換気対象空間1における滞在者密集度の増加に伴って換気装置7の目標換気量Vを増加させて、換気対象空間1全体の空気質環境を良好なものに維持することができる。
【0045】
図3に示す制御フローの通知制御では、通知手段34により、密接度判定手段31で高密接度状態であると判定(ステップ#20のYes)されている間は、照明装置28を点滅させる形態で、換気対象空間1に滞在する滞在者Pに対して滞在者間密接度情報として高密接度状態であることが通知される(ステップ#22)。また、密接度判定手段31で低密接度状態であると判定(ステップ#23のYes)されている間は、照明装置28の点滅を終了する形態で、高密接度状態であるとの通知が終了される(ステップ#24)。この構成により、高密接度状態の要因となっている滞在者Pらに対して、滞在者間距離Dを十分にとって滞在者間密接度を低下させるように注意喚起が行われることになる。
【0046】
この通知制御では、図示は省略するが、通知手段34により、滞在者間密接度情報の通知に加えて、密集度判定手段32で滞在者Pの人数に基づいて判定された滞在者密集度に関する滞在者密集度情報を通知することができる。滞在者密集度が高い高密集度状態と判定された場合には、例えば高密接度状態であるときと同様に照明装置28を点滅させる形態で、換気対象空間1に滞在する滞在者Pに対して高密集度状態であることを通知できる。尚、照明装置28の点滅方法については、高密接状態と判定されたときと高密集度状態のときとで同じものとすることができるが、異なるものとすれば滞在者Pに対して正確に現状態を認識させることができる。
また、本実施形態において、通知手段34により点灯状態を変更する照明装置28については、通常は換気対象空間1を照らすために設置されたものを利用しているが、密接度及び密集度に関する情報の通知専用に設けられたものであってもよい。更に、密接度及び密集度に関する情報の滞在者Pへの通知方法については、照明装置28の点灯状態の変更によるもの以外に、音声案内やディスプレイ表示等により行うこともできる。また、このような通知制御は適宜省略又は改変しても構わない。
【0047】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0048】
(1)上記実施形態では、密接度判定処理において換気対象空間1における最小滞在者間距離Dminが高密接度判定用設定距離Da以下になるか否かにより高密接度状態であるか否かを判定し、高密接度状態であると判定したときに換気制御において換気装置7の目標換気量Vを増加側の高密接度換気量Vmaxに設定するように構成したが、密接度判定処理において換気対象空間1における最小滞在者間距離Dminが小さいほど高くなる例えば最小滞在者間距離Dminの逆数などを滞在者間密接度の指標値として求め、換気制御において滞在者間密接度の指標値が高くなるほど換気装置7の目標換気量Vを漸次増加させるように構成することもできる。
【0049】
(2)上記実施形態では、密接度判定処理において、密接度判定手段31が、滞在者間距離Dに基づいて滞在者間密接度を判定したが、滞在者間密接度は換気対象空間1における滞在者P間の密接度を示すものであればよく、例えば滞在者間距離Dに代えて、換気対象空間1を区画する複数の単位区画毎の滞在者Pの人数に基づいて滞在者間密接度を判定しても構わない。
【符号の説明】
【0050】
1 換気対象空間
7 換気装置
26 画像型人感センサ(測定手段)
28 照明装置
31 密接度判定手段
32 密集度判定手段
33 換気量制御手段
34 通知手段
D 滞在者間距離
Da 高密接度判定用設定距離
Db 低密接度判定用設定距離
OA 外気
P 滞在者
RA 還気
SA 給気
T 継続時間
Ta 高密接度判定用設定時間
Tb 低密接度判定用設定時間
Va 低密接度換気量
Vmax 高密接度換気量