IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

特許7526061遮音カバー及び配管構造、遮音カバーの施工方法
<>
  • 特許-遮音カバー及び配管構造、遮音カバーの施工方法 図1
  • 特許-遮音カバー及び配管構造、遮音カバーの施工方法 図2
  • 特許-遮音カバー及び配管構造、遮音カバーの施工方法 図3
  • 特許-遮音カバー及び配管構造、遮音カバーの施工方法 図4
  • 特許-遮音カバー及び配管構造、遮音カバーの施工方法 図5
  • 特許-遮音カバー及び配管構造、遮音カバーの施工方法 図6
  • 特許-遮音カバー及び配管構造、遮音カバーの施工方法 図7
  • 特許-遮音カバー及び配管構造、遮音カバーの施工方法 図8
  • 特許-遮音カバー及び配管構造、遮音カバーの施工方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】遮音カバー及び配管構造、遮音カバーの施工方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/033 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
F16L55/033
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020157171
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022050961
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】志摩 雅未
(72)【発明者】
【氏名】木村 英治
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-101010(JP,A)
【文献】実開平04-119866(JP,U)
【文献】実開平07-028295(JP,U)
【文献】特開2016-069846(JP,A)
【文献】特開2007-078162(JP,A)
【文献】特開2020-037795(JP,A)
【文献】特開2002-188788(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0009927(US,A1)
【文献】国際公開第2017/135409(WO,A1)
【文献】特開2007-170171(JP,A)
【文献】特開平10-331285(JP,A)
【文献】特開2006-023423(JP,A)
【文献】特開2004-148574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の遮音材と、
前記遮音材に積層され、前記遮音材の長手方向に沿って設けられる吸音材と、
を備え、
前記吸音材は、前記遮音材の短手方向に間隔をあけて設けられる遮音カバーであって、
前記遮音カバーは、配管構成部材に対して、前記遮音材の長手方向に巻き付けられる、
遮音カバー。
【請求項2】
外面に段差部が形成された配管構成部材と、
請求項1に記載の遮音カバーと、
を備え、
前記遮音カバーは、前記段差部の形状に合わせて固定されている、
配管構造。
【請求項3】
外面に段差部が形成された配管構成部材における遮音カバーの施工方法であって、
請求項1に記載の遮音カバーを、前記吸音材が、前記配管構成部材の前記段差部を避けて接するように固定する、
遮音カバーの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮音カバー及び配管構造、遮音カバーの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の排水用として用いられる単管式排水システムにおいて、集合継手や脚部継手が各社から発売されている。これらの施工にあたり、遮音性が求められる現場では、継手及び継手に接続される管の外装に遮音カバーが巻かれている。
例えば、樹脂製の集合継手における熱膨張性の耐火材の外周部を遮音防振シートで覆うとともに、遮音防振シートの上端部がスラブ貫通孔部の上端部よりも上側に突出されるようにする構造が知られている(特許文献1)。
また、狭い空間でも簡単に既設配管のエルボに取り付けられる遮音カバーとして、発泡樹脂シートの吸音材を主体として、エルボに巻き付ける帯状部及び周囲を固定する粘着テープを有したものが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-142003号公報
【文献】特開2011-033055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献は、継手端面、すなわち、継手の接続部について考慮されていない。接続部とは、特に、脚部継手の受け口部や、集合継手の枝管接続部のフランジ形状をいう。
遮音性確保の観点から、継手端面が露出している場合は、遮音カバーやテープを巻くことで露出部をなくす必要がある。
【0005】
近年、鋳鉄製継手に対して、立て管や横枝管として塩ビ(塩化ビニル)製の配管が接続されることが多くなっている。塩ビ製の配管は、鋳鉄製継手及び従来の耐火二層管に比べて肉厚が薄い。そのため、鋳鉄製継手と塩ビ製配管の接続部には段差が発生する。
また、比較的肉厚の薄いプラスチック製の継手を用いても、継手の有する受口部がアダプター口径可変形式の場合は、段差が発生することがある。
【0006】
上述の段差に対して通常の遮音カバー(吸音材+遮音シートから成る積層体)を巻き付けると、遮音カバーは段差部における径の大きい側に接するが、径の小さい側に沿って変形することはない。すなわち、通常の遮音カバーは段差への追従性が悪い。
また、段差が大きいと、遮音カバーに代わってテープを巻き付けた場合であってもテープにシワが発生して巻きにくい。これらのことから、施工性に加え見栄えも悪くなる。
【0007】
更に、上述の各継手は主に建物の床下や天井付近、あるいは地下等に施工される。例えば、集合継手の横枝部は勾配の関係上、床面に限りなく近く設置することが望ましい。そのため、継手端面に遮音処理を行う際の作業スペースが狭く、作業性が悪くなる。
そのため、遮音カバーの取り付けには施工性が求められる。
【0008】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、継手端面に遮音処理を行う際、施工性が良好になる遮音カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る遮音カバーは、帯状の遮音材と、前記遮音材に積層され、前記遮音材の長手方向に沿って設けられる吸音材と、を備え、前記吸音材は、前記遮音材の短手方向に間隔をあけて設けられている。
【0010】
この発明によれば、吸音材が帯状の遮音材の短手方向の両端部に間隔をあけて設けられている。すなわち、遮音カバーの短手方向において、中央部が凹となる段差を有している。
この遮音カバーを、例えば、集合継手と横管との接続部に生じるフランジ部(凸型の段差)に巻き付けたとき、遮音カバーの短手方向の両端部に設けられた吸音材が、横管の軸方向においてフランジ部の両側を挟むように接する。それに加えて、横管の径方向においてフランジ部と遮音カバーが接する部位には吸音材が設けられておらず、遮音材が直接フランジ部に接する。
【0011】
ここで、フランジ部と接する部位に吸音材が設けられていると、遮音カバーをフランジ部に巻き付けたとき、吸音材がフランジ部に沿って変形する。すなわち、遮音カバー全体がフランジ部付近で径方向に膨らんだ形状になる。つまり、凸型の段差部に対する追従性が悪くなる。
そのため、遮音カバーにおけるフランジ部に接する部位(遮音カバーの短手方向の中央部)が凹の形状になっていることで、フランジ部付近で遮音カバーが膨らんだ形状になることを防ぐことができる。すなわち、フランジ部に対する形状の追従性を確保することができる。
これにより、例えば、フランジ部の縁と施工場所の壁との距離が狭く、空間が十分に確保できない場合であっても、遮音カバーを設けることができる。つまり、施工性を良好にすることができる。
【0012】
また、帯状の遮音材と、前記遮音材に積層され、前記遮音材の長手方向に沿って設けられる吸音材と、を備え、前記吸音材は、前記遮音材の短手方向の中央部に設けられていてもよい。
【0013】
この発明によれば、吸音材が帯状の遮音材の短手方向の中央部のみに取り付けられる。すなわち、遮音カバーの短手方向において、中央部が凸となる段差を有している。
この遮音カバーを、例えば、脚部継手と、脚部継手より小径な縦管との接続部に生じる凹型の段差部に巻き付けたとき、遮音カバーの短手方向の中央部に設けられた吸音材が、前述の凹型の段差部に入り込むように接する。それに加えて、遮音カバーと脚部継手の端部及び縦管の端部とが接する部位には吸音材が設けられておらず、遮音材が直接脚部継手の端部及び縦管の端部に接する。
【0014】
ここで、脚部継手の端部及び縦管の端部に接する部位に吸音材が設けられていると、遮音カバーを凹型の段差部に巻き付けたとき、吸音材が脚部継手の端部のみに接し、縦管に沿って吸音材が変形することはない。つまり、脚部継手の径に吸音材の厚さが加わり、遮音カバーが凹部を覆い隠したような形状になる。すなわち、凹型の段差部に対する追従性が悪くなる。
そのため、凹型の段差部に接する部位(遮音カバーの短手方向の中央部)が凸の形状になっていることで、脚部継手の端部に吸音材の厚さが加わった状態になることを防ぐことができる。さらに、効率的に凹部に吸音材を密着させることができる。つまり、凹型の段差部に対する形状の追従性を確保することができる。
これにより、例えば、脚部継手と施工場所の壁との距離が狭く、空間が十分に確保できない場合であっても、遮音カバーを設けることができる。つまり、施工性を良好にすることができる。
【0015】
また、本発明に係る配管構造は、外面に段差部が形成された配管構成部材と、前記遮音カバーと、を備え、前記遮音カバーは、前記段差部の形状に合わせて固定されている。
【0016】
この発明によれば、遮音カバーは段差部の形状に合わせて固定されている。このことによって、吸音材によって遮音カバーの追従性が悪くなることを防ぐことができる。すなわち、空間が狭い施工場所であっても遮音カバーの施工性を良好にしつつ、遮音性を確保することができる。
【0017】
また、遮音カバーは、配管構成部材の段差部周辺のみを覆うことを目的としている。ここで、段差部を含む配管構成部材全体を一つの遮音カバーで覆うとした場合、遮音カバーが大きくなり、更に形状が複雑になることが考えられる。
すなわち、段差部周辺のみを覆うことを目的とした遮音カバーを有することで、小面積化及び形状の簡素化が可能になる。そのため、遮音カバーにかかる費用を削減することができる。
【0018】
また、本発明に係る遮音カバーの施工方法は、前記遮音カバーを、前記吸音材が、前記配管構成部材の前記段差部を避けて接するように固定する。
【0019】
この発明によれば、遮音カバーを、吸音材が、配管構成部材の段差部を避けて接するように固定する。
このことによって、吸音材が段差部を避けて配管構成部材に密着する。これにより、管内を排水が流れたことによって生じる音を吸収することができる。また、吸音材の外側に遮音材が設けられていることで、前述の音が外部に漏れることを抑えることができる。ここで、吸音材が接しない段差部(例えば、フランジ部又は脚部継手端部)は、吸音材が接する部位に対して比較的肉厚になる。そのため、吸音材が接する部位と比べて音が外に伝わりにくい。よって、遮音材によって覆うのみで、遮音性を確保することができる。
すなわち、空間が狭い施工場所であっても遮音カバーの施工性を良好にしつつ、遮音性を確保することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、継手端面に遮音処理を行う際、施工性が良好になる遮音カバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る遮音カバーが施工される配管構造の側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る遮音カバーについて、吸音材が遮音材の短手方向に間隔をあけて設けられている場合の斜視図である。
図3図2に示す遮音カバーの長手方向端部において、遮音材が短手方向の全体に露出している変形例である。
図4】本発明の一実施形態に係る遮音カバーについて、吸音材が遮音材の短手方向の中央部に設けられている場合の斜視図である。
図5図4に示す遮音カバーの長手方向端部において、遮音材が短手方向の全体に露出している変形例である。
図6図2又は図3に示す遮音カバーを、配管構造のフランジ部(凸部)に取り付けた状態を示す例である。
図7図6に示す配管構造のフランジ部(凸部)に、短手方向の全体に吸音材を有する遮音カバーを取り付けた状態を示す図である。
図8図4又は図5に示す遮音カバーを、配管構造の段差部(凹部)に取り付けた状態を示す例である。
図9図8に示す配管構造の段差部(凹部)に、短手方向の全体に吸音材を有する遮音カバーを取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る遮音カバー及び配管構造を説明する。
図1に示すように、配管構造100は、縦管10と、横管20と、連結管30と、集合継手40と、脚部継手50と、第1遮音カバー60と、第2遮音カバー70と、を備えている。配管構造100は、主に建物の排水管として用いられる。例えば、複数階を有する建物の場合、集合継手40が各階ごとに設けられている。
【0023】
配管構造100による排水の流れは下記の通りである。まず、ある階で生じた排水が、横管20によって集合継手40に集約される。また、上層階で発生し、同様に集約された排水が、縦管10を通して前述の集合継手40に集約される。上層階から下層階へ向かうごとにこれを繰り返す。集約された排水は、最終的に最下階の床下に設けられた脚部継手50へ流下する。脚部継手50に流下した排水は、不図示の排水施設に排水される。
【0024】
縦管10は、建物の各階ごとに設けられた複数の集合継手40同士の間を接続する。縦管10は、上層階の集合継手40から流下した排水を、下層階の集合継手40に運搬する。すなわち、縦管10の上流側の端部は、集合継手40の上縦管接続部41に接続される。また、縦管10の下流側の端部は、集合継手40の下縦管接続部43に接続される。
横管20は、建物の各階に設けられた給湯室、風呂、厨房等をはじめとする水道設備の排水部に接続されている。横管20は、各設備から発生した排水を集約し、集合継手40に運搬する。横管20は、集合継手40の横管接続部42に接続される。
【0025】
集合継手40は、各階で生じた排水を集約し、下層階側に接続された縦管10へ流下させる。集合継手40は、上縦管接続部41と、横管接続部42と、下縦管接続部43と、集水室44と、本管部45と、を備える。横管接続部42には、フランジ部Fが設けられている。ここで、横管接続部42は、受け口である。横管接続部42には、横管20が配置される。横管接続部42内には、ゴム輪Rが配置されている。ゴム輪Rは、横管接続部42から外れないよう、カバーCによって覆われている。横管接続部42のうち、ゴム輪Rが配置されている部分が径方向の外側に張り出している。この部分が、フランジ部Fとなっている。
集合継手40は、複数階を有する建物において階ごとに設けられ、各階で生じた排水と、上層階から流下した排水を集約し、下層階側に設けられた縦管10へ流下させる。また、最下階に設けられた集合継手40の下縦管接続部43には、連結管30が接続され、脚部継手50へ排水を流下させる。
集合継手40の材料は、鋳鉄あるいは硬質塩化ビニルが好適に用いられる。なお、本実施形態において、集合継手40は、「耐火プラAD継手HG(積水化学工業株式会社製)」の管径100Aを用いるものとする。すなわち、集合継手40の下縦管接続部43の外径(特に連結管30と接続するもの)は、149mmであるとする。
【0026】
脚部継手50は、建物で発生した排水を、建物外の排水施設へ運搬する。脚部継手50は、上流側接続口51と、曲管部52と、下流側接続口53と、を備える。上述の通り、上流側接続口51は、連結管30に接続される。また、下流側接続口53は、不図示の排水施設に接続されている。
脚部継手50の材料は、鋳鉄あるいは硬質塩化ビニルが好適に用いられる。なお、本実施形態において、脚部継手50は、「最下階合流システム専用掃除口付AD脚部継手スリム直結ショートタイプ(積水化学工業株式会社製)」の管径100A×125Aを用いるものとする。すなわち、集合継手40の下縦管接続部43の外径(特に連結管30と接続するもの)は、149mmであるとする。
【0027】
連結管30は、配管構造100において、最下階に設けられた集合継手40と、最下階の床下に設けられた脚部継手50との間を接続する。すなわち、連結管30の上流側の端部は集合継手40の下縦管接続部43に、下流側の端部は脚部継手50の上流側接続口51に接続される。集合継手40の下縦管接続部43と脚部継手50の上流側接続口51との間には隙間が設けられていて、その隙間から連結管30が外部に露出している。
また、連結管30は、塩化ビニル製のものが好適に用いられる。本実施形態において、連結管30は、呼び径100A(外径114mm)、板厚6.6mmの円柱管とする。
【0028】
第1遮音カバー60は、図6に示すように、主に横管20と集合継手40との接続部(横管接続部42)のフランジ部Fによる凸型の段差の周囲に設けられる。第1遮音カバー60は、横管接続部42において生じる排水音が外部に伝播することを防ぐ。
図2に示すように、第1遮音カバー60は、遮音材61と、吸音材62との積層体である。また、吸音材62は、遮音材61の短手方向に、間隔をあけて設けられている。すなわち、本実施形態において、第1遮音カバー60は、短手方向の中央部に凹型の段差を有している。言い換えれば、第1遮音カバー60における短手方向の中央部は、遮音材61が露出している。
【0029】
第1遮音カバー60は、展開時は帯状の形状を有している。ここで帯状とは、方向性がある矩形状(非正方形状)である。帯状とは、互いに直交する2つの辺のうち、第1方向に延びる辺が、第2方向の延びる辺よりも長い形状である。前記第1方向が長手方向であり、前記第2方向が短手方向である。
また、吸音材62は、遮音材61の長手方向に沿って設けられている。つまり、遮音材61と吸音材62の長手方向の長さは等しい。あるいは、図3に示すように、遮音材61の長手方向の一方の端部のみ吸音材62が積層されておらず、遮音材61が短手方向の全範囲に露出していてもよい。
【0030】
第2遮音カバー70は、図8に示すように、主に集合継手40と、連結管30と、脚部継手50との接続部に生じる凹型の段差31に設けられる。第2遮音カバー70は、段差31において生じる排水音が外部に伝播することを防ぐ。段差31は、集合継手40の下端面と、連結管30の外周面と、脚部継手50の上端面と、によって形成される。段差31は、環状の凹部である。段差31は、連結管30の全周にわたって連続して延びている。
図4に示すように、第2遮音カバー70は、遮音材71と、吸音材72との積層体である。また、吸音材72は、遮音材71の短手方向の中央部に設けられている。すなわち、本実施形態において、第2遮音カバー70は、短手方向の中央部に凸型の段差を有している。言い換えれば、第2遮音カバー70における短手方向の両端は、遮音材71が露出している。
【0031】
第2遮音カバー70は、展開時は帯状の形状を有している。また、吸音材72は、遮音材71の長手方向に沿って設けられている。つまり、遮音材71と吸音材72の長手方向の長さは等しい。あるいは、図5に示すように、遮音材71の長手方向の一方の端部のみ吸音材72が積層されておらず、遮音材71が短手方向の全範囲に露出していてもよい。
【0032】
第1遮音カバー60と第2遮音カバー70との差異は、吸音材62及び吸音材72の短手方向における位置である。つまり、構成部材の材質は、下記の通り同一である。
まず、遮音材61及び遮音材71は、主に軟質塩ビやブチルゴム、ポリオレフィンのシートが好適に用いられる。また、その厚さは、0.8~3mmであることが好ましい。
また、吸音材62及び吸音材72は、主にフェルト、ポリエステル繊維やウレタン発泡体、グラスウールが好適に用いられる。また、その厚さは、5~10mmであることが好ましい。吸音材62及び吸音材72の厚さに対する遮音材61及び遮音材71の厚さの割合は、例えば、8%~60%となっている。
【0033】
上記の部材は、第1遮音カバー60及び第2遮音カバー70の取り付け部位や求められる遮音性によって、適宜選択される。
なお、第1遮音カバー60及び第2遮音カバー70の長手方向の寸法は、施工現場によって適宜決定することができる。例えば、短手方向の寸法のみあらかじめ決定しておけば、長手方向の寸法については、施工現場で任意の長さに切断して用いることができる。また、その際に、長手方向の端部の吸音材62及び吸音材72を削ることで、図3及び図5に示すような状態としてもよい。
【0034】
次に、第1遮音カバー60及び第2遮音カバー70を、配管構造100における外面に段差部が形成された配管構成部材に取り付ける施工方法について、説明する。
図6に示すように、第1遮音カバー60を横管接続部42へ取付ける際は、吸音材62を内側にして、帯状の長手方向を周囲に巻き付ける。このとき、図3のように、遮音材61の端部が短手方向の全範囲に露出しているときは、第1遮音カバー60を巻き付けた後に、遮音材61の端部をもう一方の端部に重ねて固定する。
第1遮音カバー60を巻き付けた後は、結束バンドやテープを周囲に巻き付けて固定する。また、図3のように、遮音材61の端部が短手方向の全範囲に露出しているときは、露出している部位に面ファスナー63を設けて、遮音材61のもう一方の端部の不図示の面ファスナーに貼りつけてもよい。
【0035】
図6に示すように、第1遮音カバー60を横管接続部42へ取り付けると、横管20の軸方向において、吸音材62が横管接続部42の両側を挟むように接する。また、横管接続部42の径方向には吸音材62が設けられておらず、遮音材61が直接横管接続部42に接する。
ここで、図7に示すように、吸音材62が遮音材61の短手方向の全範囲に設けられていると、横管接続部42に取り付けたとき、吸音材62が横管接続部42に沿って変形する。結果として、第1遮音カバー60が横管接続部42の付近で径方向に膨らんだ状態になる。
【0036】
このとき、例えば、図1に示すように、横管接続部42が床スラブSの近くに設けられていると、第1遮音カバー60の施工性が悪くなる。あるいは、スペースが足りずに第1遮音カバー60が施工できなくなる。すなわち、第1遮音カバー60において吸音材62が短手方向に間隔をあけて設けられていることで、図6に示すように、第1遮音カバー60が径方向に膨らむことなく取り付けることができる。また、横管接続部42は、例えば、横管20及び集水室44と比較して径方向の板厚が大きい。そのため、吸音材62が接している部位と比較して排水音が外部に伝わりにくい。そのため、短手方向に凹型の形状を有する第1遮音カバー60によって、横管接続部42を避けて吸音材62を設けることで、施工性を良好にしつつ、遮音性を確保する。
【0037】
図8に示すように、第2遮音カバー70を段差31へ取付ける際は、吸音材72を内側にして、帯状の長手方向を周囲に巻き付ける。このとき、図5のように、遮音材71の端部が短手方向の全範囲に露出しているときは、第2遮音カバー70を巻き付けた後に、遮音材71の端部をもう一方の端部に重ねて固定する。
第2遮音カバー70を巻き付けた後は、結束バンドやテープを周囲に巻き付けて固定する。また、図5のように、遮音材71の端部が短手方向の全範囲に露出しているときは、露出している部位に面ファスナー73を設けて、遮音材71のもう一方の端部の不図示の面ファスナーに貼りつけてもよい。
【0038】
図8に示すように、第2遮音カバー70を段差31へ取り付けると、連結管30の軸方向において、吸音材72が段差31に入り込むように接する。また、集合継手40の端部及び脚部継手50の端部に接する部位には吸音材72が設けられておらず、遮音材71が直接集合継手40の端部及び脚部継手50の端部に接する。
ここで、図9に示すように、吸音材72が遮音材71の短手方向の全範囲に設けられていると、段差31に取り付けたとき、吸音材72が集合継手40の端部及び脚部継手50の端部のみに接し、段差31に沿って吸音材72が変形することはない。結果として、脚部継手50の径に吸音材72の厚さが加わり、第2遮音カバー70が段差31を覆い隠したような状態になる。
【0039】
このとき、例えば、脚部継手50が床下の壁の近くに設けられていると、第2遮音カバー70の施工性が悪くなる。あるいは、スペースが足りずに第2遮音カバー70が施工できなくなる。すなわち、第2遮音カバー70において吸音材72が短手方向の中央部に設けられていることで、図8に示すように、脚部継手50の端部に吸音材72の厚さが加わった状態にならずに、第2遮音カバー70を取付けることができる。また、集合継手40及び脚部継手50は、連結管30と比較して径方向の板厚が大きい。そのため、吸音材72が接している部位と比較して排水音が外部に伝わりにくい。そのため、短手方向に凸型の形状を有する第2遮音カバー70によって、段差31に密着するように吸音材72を設けることで、施工性を良好にしつつ、遮音性を確保する。
【0040】
なお、上述の第1遮音カバー60及び第2遮音カバー70は、取付け部の形状及び用途に応じて適宜選択可能である。あるいは、配管構造100においてどちらか1つのみ用いてもよいし、両方用いてもよい。両方用いる場合は、より多くの範囲を遮音することができるため、より配管構造100全体の遮音性を確保することが期待できる。
さらに、集合継手40を覆う遮音カバーと一体に設けられていてもよい。また、この遮音カバーと別々に設けられた上で、この遮音カバーの上側に積層されていたり、この遮音カバーの下側に積層されていてもよい。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る第1遮音カバー60によれば、吸音材62が帯状の遮音材61の短手方向の両端部に間隔をあけて設けられている。すなわち、第1遮音カバー60の短手方向において、中央部が凹となる段差を有している。
この遮音カバーを、例えば、集合継手40と横管20との接続部に生じるフランジ部F(凸型の段差)に巻き付けたとき、第1遮音カバー60の短手方向の両端部に設けられた吸音材62が、横管20の軸方向においてフランジ部Fの両側を挟むように接する。それに加えて、横管20の径方向においてフランジ部Fと第1遮音カバー60が接する部位には吸音材62が設けられておらず、遮音材61が直接フランジ部Fに接する。
【0042】
ここで、フランジ部Fと接する部位に吸音材62が設けられていると、第1遮音カバー60をフランジ部Fに巻き付けたとき、吸音材62がフランジ部Fに沿って変形する。すなわち、第1遮音カバー60全体がフランジ部F付近で径方向に膨らんだ形状になる。つまり、凸型の段差部に対する追従性が悪くなる。
そのため、第1遮音カバー60におけるフランジ部Fに接する部位(第1遮音カバー60の短手方向の中央部)が凹の形状になっていることで、フランジ部F付近で第1遮音カバー60が膨らんだ形状になることを防ぐことができる。すなわち、フランジ部Fに対する形状の追従性を確保することができる。
これにより、例えば、フランジ部Fの縁と施工場所の壁との距離が狭く、空間が十分に確保できない場合であっても、第1遮音カバー60を設けることができる。つまり、施工性を良好にすることができる。
【0043】
また、本実施形態に係る第2遮音カバー70によれば、吸音材72が帯状の遮音材71の短手方向の中央部のみに取り付けられる。すなわち、第2遮音カバー70の短手方向において、中央部が凸となる段差31を有している。
この第2遮音カバー70を、例えば、脚部継手50と、脚部継手50より小径な縦管10との接続部に生じる凹型の段差31に巻き付けたとき、第2遮音カバー70の短手方向の中央部に設けられた吸音材72が、前述の凹型の段差31に入り込むように接する。それに加えて、第2遮音カバー70と脚部継手50の端部及び縦管10の端部とが接する部位には吸音材72が設けられておらず、遮音材71が直接脚部継手50の端部及び縦管10の端部に接する。
【0044】
ここで、脚部継手50の端部及び縦管10の端部に接する部位に吸音材72が設けられていると、第2遮音カバー70を凹型の段差31に巻き付けたとき、吸音材72が脚部継手50の端部のみに接し、縦管10に沿って吸音材72が変形することはない。つまり、脚部継手50の径に吸音材72の厚さが加わり、第2遮音カバー70が凹部を覆い隠したような形状になる。すなわち、凹型の段差31に対する追従性が悪くなる。
そのため、凹型の段差31に接する部位(第2遮音カバー70の短手方向の中央部)が凸の形状になっていることで、脚部継手50の端部に吸音材72の厚さが加わった状態になることを防ぐことができる。さらに、効率的に凹部に吸音材72を密着させることができる。つまり、凹型の段差31に対する形状の追従性を確保することができる。
これにより、例えば、脚部継手50と施工場所の壁との距離が狭く、空間が十分に確保できない場合であっても、第2遮音カバー70を設けることができる。つまり、施工性を良好にすることができる。
【0045】
また、遮音カバー60、70は段差部(フランジ部F又は段差31)の形状に合わせて固定されている。このことによって、吸音材62、72によって遮音カバー60、70の追従性が悪くなることを防ぐことができる。すなわち、空間が狭い施工場所であっても遮音カバー60、70の施工性を良好にしつつ、遮音性を確保することができる。
【0046】
また、本願に係る遮音カバー60、70は、配管構成部材の段差部周辺のみを覆うことを目的としている。ここで、段差部を含む配管構成部材全体を一つの遮音カバー60、70で覆うとした場合、遮音カバー60、70が大きくなり、更に形状が複雑になることが考えられる。
すなわち、段差部周辺のみを覆うことを目的とした遮音カバー60、70を有することで、小面積化及び形状の簡素化が可能になる。そのため、遮音カバー60、70にかかる費用を削減することができる。
【0047】
また、遮音カバー60、70を、吸音材62、72が、配管構成部材の段差部を避けて接するように固定する。
このことによって、吸音材62、72が段差部を避けて配管構成部材に密着する。これにより、管内を排水が流れたことによって生じる音を吸収することができる。また、吸音材62、72の外側に遮音材61、71が設けられていることで、前述の音が外部に漏れることを抑えることができる。ここで、吸音材62、72が接しない段差部(例えば、フランジ部F又は脚部継手50端部)は、吸音材62、72が接する部位に対して比較的肉厚になる。そのため、吸音材62、72が接する部位と比べて音が外に伝わりにくい。よって、遮音材61、71によって覆うのみで、遮音性を確保することができる。
すなわち、空間が狭い施工場所であっても遮音カバー60、70の施工性を良好にしつつ、遮音性を確保することができる。
【0048】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第1遮音カバー60の短手方向に間隔をあけて設けられている吸音材62は、短手方向の中央部において3個以上設けられていてもよい。あるいは、短手方向の一方の端部のみに、1箇所だけ設けられていてもよい。
また、吸音材72は、第2遮音カバー70における短手方向の両端部において遮音材71が露出していれば、中央部に位置していなくてもよい。
また、吸音材62及び吸音材72は、第1遮音カバー60及び第2遮音カバー70の長手方向において、間隔をあけて設けてもよい。
また、遮音材61及び遮音材71の長手方向の端部に設けられる面ファスナー63及び面ファスナー73は、両面テープを用いてもよい。
【0049】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0050】
60 第1遮音カバー
61 遮音材
62 吸音材
70 第2遮音カバー
71 遮音材
72 吸音材
100 配管構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9