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  • 特許-床上の断熱補強構造とその施工方法 図1
  • 特許-床上の断熱補強構造とその施工方法 図2
  • 特許-床上の断熱補強構造とその施工方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】床上の断熱補強構造とその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20240724BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20240724BHJP
   E04F 15/18 20060101ALI20240724BHJP
   E04F 15/12 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
E04B1/76 500B
E04B1/80 100E
E04F15/18 D
E04F15/12 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020186996
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076574
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100213746
【弁理士】
【氏名又は名称】川成 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100221752
【弁理士】
【氏名又は名称】古川 雅与
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅之
(72)【発明者】
【氏名】山本 正顕
(72)【発明者】
【氏名】田中 康介
(72)【発明者】
【氏名】法身 祐治
(72)【発明者】
【氏名】西村 欣英
(72)【発明者】
【氏名】田中 成樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 郁夫
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-167739(JP,A)
【文献】特開2019-108718(JP,A)
【文献】特開2020-094450(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0144772(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁より内側かつ床スラブより上側に壁断熱材が設けられる建築構造物における床上の断熱補強構造であって、
前記壁断熱材の直下かつ前記床スラブの上面に設けられる断熱補助材と、
前記床スラブの上面の一部に、その外側端面が前記断熱補助材の内側面に当接する状態で敷設される床断熱材と、
前記床スラブ及び前記床断熱材の上面に、その外側端面が前記断熱補助材の内側面に当接する状態で敷設されるセルフレベリング材と
を具備していることを特徴とする床上の断熱補強構造。
【請求項2】
外壁より内側かつ床スラブより上側に壁断熱材が設けてある建築構造物における床上の断熱補強構造の施工方法であって、
前記壁断熱材が設けられる位置の直下かつ前記床スラブの上面に断熱補助材を設ける工程と、
前記床スラブの上面の一部に、その外側端面が前記断熱補助材の内側面に当接する状態で床断熱材を敷設する工程と、
前記床スラブ及び前記床断熱材の上面に、その外側端面が前記断熱補助材の内側面に当接する状態でセルフレベリング材を敷設する工程と、
を具備していることを特徴とする床上の断熱補強構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造物(例えば、集合住宅)における床上の断熱補強構造とその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、断熱性は建築構造物にとって省エネルギーの観点から重要な要素であり、これまでは「次世代省エネルギー基準」(平成11年基準)に基づいて評価が行われていた。ところが実際には、建築構造物の外皮の断熱性能だけで評価し、設備の性能等も含めた建築構造物全体の一体的な評価がなされていなかった。そのため、建築構造物全体の省エネルギー性能を客観的に比較しにくいこともあり、評価の仕方が見直されてきた。
【0003】
そこで、平成27年4月1日より「改正省エネルギー基準」(平成25年基準)が施工された。これにより、省エネルギー性能としては高レベルの断熱等性能等級4及び1~5地域において、さらに建築構造物の『床上への断熱補強』が義務化された。このため、従来の断熱補強構造及びその施工方法の延長線上での対応では、断熱性能の不具合や、工程及び労務への圧迫が懸念される。
【0004】
従来の床上への断熱補構造としては床部(床パネル)の下面に発泡ウレタン性の断熱材を敷設し、床下からの冷気を防ぐ構造(例えば特許文献1参照。)が採用されていた。より詳細には、図3に示すとおり、フローリングの下面に床の断熱材が敷設されていた。さらに、外壁の内側には壁の断熱材が設けられており、床下のみならず外壁からの冷気を防ぐ構造が採用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-12767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の床上の断熱補強構造では、壁の断熱材と床の断熱材との間にセルフレベリング材が介在しているため、断熱効果に問題があった。すなわち、断熱材が連続していない部分が熱橋となり断熱性能を低下させるため、「改正省エネルギー基準」を満たさない恐れがある。
【0007】
また、集合住宅においては、外壁、床及び内壁の施工手順が重要となっている。それぞれの施工担当が決まっており、効率的に施工しなければ工期が遅延したり無駄な工数が発生したりするからである。
【0008】
そこで、本発明の第1の目的は、建築構造物の床上の断熱構造に生じる熱橋を改善し、断熱性能の向上を図る床上の断熱補強構造とその施工方法を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、施工手順の変更や追加をせずに上記熱橋問題を解消する床上の断熱補強構造とその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明による床上の断熱補強構造の特徴は、床面に敷設する断熱材と外壁の内側に設ける断熱材との間に断熱補助材を設けることにある。
【0010】
すなわち、本発明は、外壁より内側かつ床スラブより上側に壁断熱材が設けられる建築構造物における床上の断熱補強構造であって、上記壁断熱材の直下かつ上記床スラブの上面に設けられる断熱補助材と、上記床スラブの上面の一部に、その外側端面が上記断熱補助材の内側面に当接する状態で敷設される床断熱材と、上記床スラブ及び上記床断熱材の上面に、その外側端面が上記断熱補助材の内側面に当接する状態で敷設されるセルフレベリング材とを具備していることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、外壁より内側かつ床スラブより上側に壁断熱材が設けてある建築構造物における床上の断熱補強構造の施工方法であって、上記壁断熱材が設けられる位置の直下かつ上記床スラブの上面に断熱補助材を設ける工程と、上記床スラブの上面の一部に、その外側端面が上記断熱補助材の内側面に当接する状態で床断熱材を敷設する工程と、上記床スラブ及び上記床断熱材の上面に、その外側端面が上記断熱補助材の内側面に当接する状態でセルフレベリング材を敷設する工程とを具備していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明による床上の断熱補強構造は、壁断熱材の直下かつ床スラブの上面に断熱補助材を設けることにより、壁断熱材、断熱補助材及び床断熱材が連続して構成されるため、熱橋が生じることなく断熱性能の向上を図ることができる。
【0013】
また、本発明による床上の断熱補強構造の施工方法では、断熱補助材を設ける工程の直後に床断熱材を設ける工程に進むことにより、これらの作業を同一の施工担当者が略同時に行うことができるため、新たに別の施工担当者が行う手間が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態における断熱補強構造の模式図である。
図2】本発明の一実施形態における断熱補強構造の施工方法の模式図である。
図3】従来の断熱補強構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1~2を参照しつつ、本発明の一実施形態における断熱補強構造及びその施工方法を説明する。図1では、集合住宅の所定の居室に断熱補強構造を施した状態の一部の端面を示している。図2では、図1に示す断熱補強構造を施工順に示している。
なお、発明の構成を強調するため、説明上直接関係のない部位は破線にて描写している。
【0016】
さて、図1に示すように本発明は、外壁1より内側かつ床スラブ2より上側に壁断熱材3が設けられる集合住宅における床上の断熱補強構造であって、この壁断熱材の直下かつこの床スラブの上面に設けられる断熱補助材4と、この床スラブの上面の一部に、その外側端面がこの断熱補助材の内側面に当接する状態で敷設される床断熱材5と、この床スラブ及びこの床断熱材の上面に、その外側端面がこの断熱補助材の内側面に当接する状態で敷設されるセルフレベリング材6とを具備している。
【0017】
次に、上述した断熱補強構造を構成する各部材について、図1を参照しつつ説明する。
【0018】
外壁1は、例えば外側から、タイル等の仕上げ材と、ALC(Autoclaved Lightweight Concrete)とを具備し、所定のアングル材で下部が他の外壁や梁Hに固定されるものでもよい。
【0019】
床スラブ2は、例えばコンクリート製で、外側の端部が外壁や梁Hに固定されるものでもよい。
【0020】
壁断熱材3は、例えば発泡ウレタン製で、外壁1より内側に位置し、その外側端面がこの外壁の内側面に当接してもよい。
【0021】
壁下地及び壁材7は、例えば外側から、木下地と、せっこうボード等の板材とを具備しているものでよい。
なお、外壁1、床スラブ2、壁断熱材3及び壁下地及び壁材7は、上述したものに限定されず、適宜素材や構成を変更してもよい。
【0022】
断熱補助材4は、断熱性、耐水性及び防振性を有するものでよく、例えば「ミラブロック(商標登録)」でもよい。断熱補助材4の形状は、矩形状のものでよく、その厚さ(上面の位置)は敷設した状態のセルフレベリング材6の上面より高いものが好ましい。
なお、断熱補助材4の長さ及び幅に限定はない。
【0023】
床断熱材5は、断熱性を有する低ホルムアルデヒド素材でよく、例えば「ゼットロン(商標登録)」でもよい。床断熱材5の形状は、シート状のものでよい。
なお、床断熱材5の長さ及び幅に限定はない。
【0024】
セルフレベリング材6は、床断熱材5の上面から床スラブ2の上面まで被覆できる流動性を有するものでよい。
【0025】
次に、本発明の一実施形態における床上の断熱補強構造の施工方法について、図2を参照しつつ説明する。
【0026】
まず、図2(A)に示すとおり、梁H、外壁1及び床スラブ2が構築されていることを前提とする。
【0027】
次に、図2(B)に示すとおり、断熱補助材4を、壁断熱材3が設けられる予定の位置の直下かつ床スラブ1の上面に、その外側端面が外壁1又はこの外壁を固定するアングル材の内側面に当接する状態で設ける。さらに、床断熱材5を、床スラブ1の上面の一部に、その外側端面が断熱補助材4の内側面に当接する状態で連続的に敷設する。この手順により、床断熱材5の敷設と略同時に断熱補助材4を設置できるため、新たな手間は発生しない。
【0028】
次に、図2(C)に示すとおり、壁断熱材3を、断熱補助材4の上面にその下端面が、外壁1の内側面にその外側端面が、それぞれ当接する状態で設ける。さらに、セルフレベリング材6を、床断熱材5及び床スラブ1の上面を覆うように、その外側端面が断熱補助材4の内側面に当接する状態で連続的に敷設する。この状態において、断熱補助材4の上面は、セルフレベリング材6の上面より高い位置となってもよい。この手順により、壁断熱材3から断熱補助材4を介して床断熱材5まで複数の分裂した断熱機能を有する素材が連続した構造を実現することができる。また、セルフレベリング材6で床断熱材5を上面から覆うため、この床断熱材を確実に固定することができる。
【0029】
そして、図2(D)に示すとおり、壁下地及び壁材7を、セルフレベリング材6の上面に、その外側端面側が壁断熱材3の内側面に当接又は近接する状態で設ける。さらに、フローリングFを、セルフレベリング材6の上面に、その外側端面が壁下地及び壁材7の内側面に当接又は近接する状態で連続的に敷設してもよい。
なお、壁下地及び壁材7とフローリングFとの間には巾木Bを挿入してもよい。
【0030】
このように、本発明の一実施形態における床上の断熱補強構造は、壁断熱材1の直下かつ床スラブ2の上面に断熱補助材4を設けることにより、この壁断熱材、断熱補助材及び床スラブが連続して構成されるため、熱橋が生じることなく断熱性能の向上を図ることができる。
【0031】
また、本発明の一実施形態における床上の断熱補強構造の施工方法では、断熱補助材4を設ける工程の直後に床断熱材5を設ける工程に進むことにより、これらの作業を同一の施工担当者が略同時に行うことができるため、新たに別の施工担当者が行う手間が発生しない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明における床上の断熱補強構造は、集合住宅のみならず、個別住宅、企業の建築物及び医療施設や介護施設等に関する産業に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 外壁
2 床スラブ
3 壁断熱材
4 断熱補助材
5 床断熱材
6 セルフレベリング材
図1
図2
図3