(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】コンピュータシステム及びクリーナの設定方法
(51)【国際特許分類】
F04D 29/28 20060101AFI20240724BHJP
A47L 9/00 20060101ALI20240724BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
F04D29/28 P
A47L9/00 H
H02K7/14 A
(21)【出願番号】P 2020193471
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩上 潤一
(72)【発明者】
【氏名】河合 勇太
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-304172(JP,A)
【文献】特表2018-525566(JP,A)
【文献】特開2019-218926(JP,A)
【文献】特開2005-291149(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0265285(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16、
17/00-19/02、
21/00-25/16、
29/00-35/00
A47L 9/00
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータにより回転軸を中心に回転する
複数の羽根を有するファンと、
前記ファンの前方側に配置される吸込口を有するカバーと、
前記吸込口に配置され前記回転軸の径方向に延伸
し前記回転軸の周方向に複数配置されるリブと、を備え
るクリーナにおいて、
前記ファンの回転により発生する騒音の周波数f
NZが20,000Hz以上になるように、前記羽根の枚数Z、前記リブの本数V、及び1分間当たりの前記ファンの回転数N
を決定するコンピュータシステムであって、
前記枚数Zと、前記本数Vと、整数kと、次数nとを、[m=n×Z+k×V]に代入して、整数mの絶対値が1以下になる前記枚数Zと前記本数Vと前記整数kと前記次数nとの組み合わせを決定する第1処理と、
前記回転数Nを決定する第2処理と、
前記第1処理により決定された組み合わせにより算出された整数mと、前記第1処理において決定された整数kと、前記第1処理において決定された本数Vと、前記第2処理において決定された回転数Nとを、[f
NZ
=(m-k×V)×N/60]に代入して、周波数f
NZ
が20,000Hz以上になるまで、整数m、整数k、及び本数Vを固定した状態で、回転数Nを変更する第3処理と、を実行する、
コンピュータシステム。
【請求項2】
前記枚数Zは、2以上20以下から選択され、
前記本数Vは、1以上50以下から選択され、
前記回転数Nは、1,000以上40,000以下から選択され、
整数kは、-10以上10以下から選択され、
次数nは、1以上10以下から選択されることを特徴とする、
請求項
1に記載の
コンピュータシステム。
【請求項3】
前記枚数Zは、11枚であり、
前記本数Vは、14本であり、
前記回転数Nは、22,000以上40,000以下であり、
整数kは、-4であり、
次数nは、5であることを特徴とする、
請求項
2に記載の
コンピュータシステム。
【請求項4】
モータと、
前記モータにより回転軸を中心に回転する複数の羽根を有するファンと、
前記ファンの前方側に配置される吸込口を有するカバーと、
前記吸込口に配置され前記回転軸の径方向に延伸し前記回転軸の周方向に複数配置されるリブと、を備えるクリーナ
において、
前記ファンの回転により発生する騒音の周波数f
NZが20,000Hz以上になるように、前記羽根の枚数Z、前記リブの本数V、及び1分間当たりの前記ファンの回転数N
を決定するクリーナの設定方法であって、
前記枚数Zと、前記本数Vと、整数kと、次数nとを、[m=n×Z+k×V]に代入して、整数mの絶対値が1以下になる前記枚数Zと前記本数Vと前記整数kと前記次数nとの組み合わせを決定する第1処理と、
前記回転数Nを決定する第2処理と、
前記第1処理により決定された組み合わせにより算出された整数mと、前記第1処理において決定された整数kと、前記第1処理において決定された本数Vと、前記第2処理において決定された回転数Nとを、[f
NZ
=(m-k×V)×N/60]に代入して、周波数f
NZ
が20,000Hz以上になるまで、整数m、整数k、及び本数Vを固定した状態で、回転数Nを変更する第3処理と、を含む、
クリーナの設定方法。
【請求項5】
前記枚数Zを、2以上20以下から決定し、
前記本数Vを、1以上50以下から決定し、
前記回転数Nを、1,000以上40,000以下から決定し、
整数kを、-10以上10以下から決定し、
次数nを、1以上10以下から決定することを特徴とする、
請求項
4に記載のクリーナの設定方法。
【請求項6】
前記枚数Zを、11枚に決定し、
前記本数Vを、14本に決定し、
前記回転数Nを、22,000以上40,000以下から決定し、
整数kを、-4に決定し、
次数nを、5に決定することを特徴とする、
請求項5に記載のクリーナの設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンピュータシステム及びクリーナの設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーナに係る技術分野において、特許文献1に開示されているような吸入ユニットを備えるクリーナが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クリーナから騒音が発生すると、クリーナの使用者及び周囲の者に不快感を与える。
【0005】
本開示は、クリーナから発生する騒音を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、モータと、モータにより回転軸を中心に回転するファンと、ファンの前方側に配置される吸込口を有するカバーと、吸込口に配置され回転軸の径方向に延伸するリブと、を備え、ファンは、複数の羽根を有し、リブは、回転軸の周方向に複数配置され、ファンの回転により発生する騒音の周波数fNZが20,000Hz以上になるように、羽根の枚数Z、リブの本数V、及び1分間当たりのファンの回転数Nが定められることを特徴とする、クリーナが提供される。但し、fNZ=(m-k×V)×N/60、m=n×Z+k×V、n:次数、m:整数、k:整数、である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、クリーナから発生する騒音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るクリーナを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るクリーナを示す側面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るクリーナを示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る連結パイプ部を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る左ハウジング、吸音部材、及びコントローラを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る右ハウジング、吸音部材、及びコントローラを示す斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る左ハウジング、吸音部材、及びコントローラを示す側面図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る左ハウジング及び吸音部材のそれぞれを示す斜視図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る左ハウジング及び吸音部材のそれぞれを示す側面図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る吸引ユニットを示す前方からの斜視図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る吸引ユニットを示す後方からの斜視図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る吸引ユニットを前方から見た図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る吸引ユニットを示す前方からの分解斜視図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係るモータ及びファンを示す斜視図である。
【
図15】
図15は、実施形態に係る吸引ユニットにおける空気の流れを説明するための模式図である。
【
図16】
図16は、実施形態に係るリブ及び羽根を模式的に示す図である。
【
図17】
図17は、実施形態に係るリブ及び羽根を模式的に示す図である。
【
図18】
図18は、実施形態に係るリブ及び羽根を模式的に示す図である。
【
図19】
図19は、実施形態に係る特性マッハ数の一例を示す図である。
【
図20】
図20は、実施形態に係る騒音の周波数の算出方法を説明するための図である。
【
図21】
図21は、実施形態に係るコンピュータシステムを示すブロック図である。
【
図22】
図22は、実施形態に係る吸込ユニットの設定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
実施形態においては、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、及び「下」の用語を用いて各部の位置関係について説明する。これらの用語は、クリーナ1の中心を基準とした相対位置又は方向を示す。
【0011】
クリーナ1は、モータ14を有する。モータ14のロータは、回転軸AXを中心に回転する。実施形態においては、回転軸AXの放射方向を適宜、径方向、と称する。回転軸AXを周回する方向を適宜、周方向又は回転方向、と称する。回転軸AXと平行な方向を適宜、軸方向、と称する。
【0012】
径方向において、回転軸AXに近い位置又は接近する方向を適宜、径方向内側、と称し、回転軸AXから遠い位置又は離隔する方向を適宜、径方向外側、と称する。周方向の一方側の位置又は一方側の方向を適宜、周方向一方側、と称し、周方向の他方側の位置又は他方側の方向を適宜、周方向他方側、と称する。軸方向の一方側の位置又は一方側の方向を適宜、軸方向一方側、と称し、軸方向の他方側の位置又は他方側の方向を適宜、軸方向他方側、と称する。
【0013】
実施形態において、回転軸AXは、前後方向に延伸する。軸方向一方側は、前方側である。軸方向他方側は、後方側である。
【0014】
[クリーナの概要]
図1は、実施形態に係るクリーナ1を示す斜視図である。
図2は、実施形態に係るクリーナ1を示す側面図である。
図3は、実施形態に係るクリーナ1を示す断面図である。
【0015】
クリーナ1は、ハウジング2と、吸引ユニット3と、フィルタ支持部材4と、吸音部材5と、バッテリ装着部6と、コントローラ7と、インタフェース装置8とを備える。
【0016】
ハウジング2は、クリーナ1の使用者に握られるハンドル9を有する。クリーナ1は、ハンドル9を使用者に握られた状態でクリーニング作業を実施可能なハンディクリーナである。
【0017】
ハウジング2は、吸引ユニット3、フィルタ支持部材4、吸音部材5、及びコントローラ7のそれぞれを収容する。ハウジング2は、吸気口10及び排気口11を有する。吸気口10は、ハウジング2の前端部に設けられる。排気口11は、ハウジング2の後部の左部及び右部のそれぞれに設けられる。吸気口10は、ハウジング2の外部空間と内部空間とを接続する。排気口11は、ハウジング2の内部空間と外部空間とを接続する。
【0018】
吸引ユニット3は、吸気口10に吸引力を発生させる。吸引ユニット3は、モータアセンブリ12と、カバー13とを有する。モータアセンブリ12は、モータ14と、ファン15と、モータケース16と、制御基板17とを有する。モータ14は、ファン15を回転させる回転力を発生する。ファン15は、モータ14が発生する回転力により回転する。モータケース16は、モータ14及びファン15を収容する。制御基板17は、モータ14を制御する制御信号を出力する。制御基板17は、例えば電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)を有する。カバー13は、モータアセンブリ12の周囲に配置される。カバー13は、モータアセンブリ12を収容する。
【0019】
モータ14が駆動しファン15が回転することにより、吸気口10に吸引力が発生する。ハウジング2の外部空間の空気は、吸気口10を介してハウジング2の内部空間に流入する。ハウジング2の内部空間の空気は、排気口11を介してハウジング2の外部空間に流出する。
【0020】
フィルタ支持部材4は、フィルタ18を支持する。フィルタ支持部材4は、複数の線状部材により構成される。フィルタ18は、吸気口10を介してハウジング2の内部空間に流入した空気から塵埃を捕集する。フィルタ18は、フィルタ支持部材4の周囲に配置される。フィルタ支持部材4及びフィルタ18は、ハウジング2の内部空間において、吸気口10と吸引ユニット3との間に配置される。
【0021】
吸音部材5は、ハウジング2の内部空間において、排気口11に対向するように配置される。吸音部材5は、連続気泡の多孔質部材である。吸音部材5は、空気を伝播する音を吸収して、騒音の発生を抑制する。クリーナ1が発生する騒音として、空気の流通により発生する風切音、及びファン15の回転により発生するNZ音が例示される。
【0022】
バッテリ装着部6は、ハウジング2の後部の下部に配置される。バッテリ装着部6にバッテリパック19が装着される。バッテリパック19は、バッテリ装着部6に着脱可能である。
【0023】
バッテリパック19は、クリーナ1の電源として機能する。バッテリパック19は、バッテリ装着部6に装着された状態で、クリーナ1に電力を供給する。モータ14は、バッテリパック19から供給される電力により駆動する。コントローラ7は、バッテリパック19から供給される電力により作動する。バッテリパック19は、種々の電気機器の電源として使用可能な汎用バッテリである。バッテリパック19は、電動工具の電源として使用可能である。バッテリパック19は、電動工具以外の電気機器の電源として使用可能である。バッテリパック19は、実施形態に係るクリーナ1とは別のクリーナの電源として使用可能である。バッテリパック19は、リチウムイオンバッテリを含む。バッテリパック19は、充電可能な充電式バッテリである。バッテリ装着部6は、電動工具のバッテリ装着部と同等の構造を有する。
【0024】
クリーナ1の使用者は、バッテリ装着部6にバッテリパック19を装着する作業及びバッテリ装着部6からバッテリパック19を外す作業を実施することができる。バッテリ装着部6は、ガイド部材と、本体端子とを有する。バッテリパック19は、バッテリ端子を有する。バッテリ装着部6のガイド部材は、バッテリパック19をガイドする。バッテリ装着部6の本体端子は、バッテリパック19のバッテリ端子と接続される。使用者は、バッテリパック19を後方側からバッテリ装着部6に挿入することにより、バッテリパック19をバッテリ装着部6に装着することができる。バッテリパック19は、ガイド部材にガイドされながらバッテリ装着部6に挿入される。バッテリパック19がバッテリ装着部6に装着されることにより、バッテリパック19のバッテリ端子とバッテリ装着部6の本体端子とが電気的に接続される。バッテリパック19は、固定解除ボタンを有する。クリーナ1の使用者は、バッテリパック19の固定解除ボタンを操作して、バッテリパック19を後方側に移動することにより、バッテリ装着部6からバッテリパック19を外すことができる。
【0025】
コントローラ7は、クリーナ1に搭載されている電子機器を制御する。コントローラ7は、制御基板17を介してモータ14を制御する。コントローラ7は、バッテリパック19からモータ14に供給される駆動電流を制御する。コントローラ7と制御基板17とは、ケーブル(不図示)を介して接続される。ケーブルとして、バッテリパック19からモータ14に電力を供給するための電源線、及び制御基板17に制御信号を供給するための信号線が例示される。コントローラ7は、複数の電子部品が実装された基板を含む。基板に実装される電子部品として、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ、ROM(Read Only Memory)又はストレージのような不揮発性メモリ、RAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリ、及び抵抗が例示される。
【0026】
インタフェース装置8は、ハンドル9に設けられる。インタフェース装置8は、駆動ボタン81、モード切換ボタン82、及び表示部83を含む。駆動ボタン81及びモード切換ボタン82は、使用者に操作される。使用者は、ハンドル9を握った状態で、駆動ボタン81及びモード切換ボタン82を操作することができる。
【0027】
モータ14が停止しているときに駆動ボタン81が操作されると、モータ14の駆動が開始される。モータ14が駆動すると、ファン15が回転する。ファン15が回転することにより、吸気口10において吸込力が発生する。吸気口10において吸込力が発生することにより、ハウジング2の外部空間の空気は、塵埃とともに吸気口10に吸い込まれる。吸気口10から吸い込まれた空気は、ハウジング2の内部空間に流入する。ハウジング2の内部空間に流入した空気は、フィルタ18を通過する。フィルタ18は、空気に含まれる塵埃を捕集する。フィルタ18を通過した空気は、吸引ユニット3を通過した後、排気口11からハウジング2の外部空間に排出される。モータ14が駆動しているときにモード切換ボタン82が操作されると、モータ14の回転数が4段階で調整される。モータ14が駆動しているときにモード切換ボタン82が1回操作されると、モータ14の回転数は第1の回転数から第2の回転数に変更される。モード切換ボタン82が更に1回操作されると、モータ14の回転数は第2の回転数から第3の回転数に変更される。モード切換ボタン82が更に1回操作されると、モータ14の回転数は第3の回転数から第4の回転数に変更される。モード切換ボタン82が更に1回操作されると、モータ14の回転数は第1の回転数に戻る。モータ14の回転数が変更されることにより、吸気口10における吸引力が変更される。モータ14が駆動しているときに駆動ボタン81が操作されると、モータ14が停止する。
【0028】
表示部83は、4つの発光部を有する。発光部として、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が例示される。モータ14が第1の回転数で駆動しているとき、1つの発光部が点灯する。モータ14が第2の回転数で駆動しているとき、2つの発光部が点灯する。モータ14が第3の回転数で駆動しているとき、3つの発光部が点灯する。モータ14が第4の回転数で駆動しているとき、4つの発光部が点灯する。モータ14が停止しているとき、4つの発光部が消灯する。
【0029】
[ハウジング]
ハウジング2は、前ハウジング21と、後ハウジング22とを含む。前ハウジング21は、開口211を有する。開口211は、前ハウジング21の後部に設けられる。後ハウジング22の前部は、前ハウジング21の開口211に挿入される。後ハウジング22の前部が開口211に挿入されることによって、前ハウジング21と後ハウジング22とが接続される。前ハウジング21と後ハウジング22とは、着脱可能である。
【0030】
前ハウジング21は、連結パイプ部212を有する。連結パイプ部212は、前ハウジング21の前部に配置される。吸気口10は、連結パイプ部212の前端部に設けられる。フィルタ支持部材4及びフィルタ18は、前ハウジング21の内部空間に配置される。
【0031】
後ハウジング22は、ハンドル9を有する。バッテリ装着部6は、後ハウジング22の下部に配置される。後ハウジング22は、左ハウジング22Lと、右ハウジング22Rとを含む。左ハウジング22Lは、右ハウジング22Rよりも左方に配置される。左ハウジング22Lと右ハウジング22Rとは、複数のねじ22Sにより固定される。排気口11は、左ハウジング22L及び右ハウジング22Rのそれぞれに設けられる。吸引ユニット3、吸音部材5、及びコントローラ7は、後ハウジング22の内部空間に配置される。
【0032】
図4は、実施形態に係る連結パイプ部212を示す図である。
図4は、
図1においてハウジング2をA方向から見た図に相当する。
【0033】
図3及び
図4に示すように、連結パイプ部212は、連結パイプ部212の流路に面する内面213を有する。内面213は、回転軸AXを囲むように配置される。内面213は、回転軸AXと実質的に平行である。
【0034】
連結パイプ部212は、凹部214を有する。凹部214は、連結パイプ部212の上部の前端部から後方側に凹むように形成される。凹部214の内面は、第1面214Aと、第2面214Bと、第3面214Cと、第4面214Dとを含む。
【0035】
第1面214A、第2面214B、及び第3面214Cのそれぞれは、回転軸AXと実質的に平行である。第4面214Dは、回転軸AXに平行な軸と実質的に直交する。第1面214Aは、下方側を向く。第2面214Bは、左方側を向く。第3面214Cは、右方側を向く。第4面214Dは、前方側を向く。第2面214Bの上端部は、第1面214Aの右端部に接続される。第3面214Cの上端部は、第1面214Aの左端部に接続される。第4面214Dの上端部は、第1面214Aの後端部に接続される。第2面214Bの下端部、第3面214Cの下端部、及び第4面214Dの下端部のそれぞれは、内面213に接続される。第2面214Bの下端部と内面213との間に角部が形成される。第3面214Cの下端部と内面213との間に角部が形成される。第4面214Dの下端部と内面213との間に角部が形成される。
【0036】
吸込パイプ(不図示)の基端部が吸気口10に挿入される。吸込パイプは、連結パイプ部212に着脱可能である。連結パイプ部212は、吸込パイプを固定するロック部215を有する。ロック部215は、連結パイプ部212と吸込パイプとを固定する。
【0037】
ロック部215の少なくとも一部は、第1面214Aに設けられた開口216に配置される。ロック部215は、フック部217を有する。フック部217は、連結パイプ部212の流路に面する。フック部217は、連結パイプ部212の流路に向かって突出する。ロック部215は、フック部217が第1面214Aから突出する状態と突出しない状態とに変化するように、連結パイプ部212に回動可能に支持される。連結パイプ部212とロック部215との間にばね(不図示)が配置される。ばねは、フック部217が第1面214Aから突出するように、ロック部215に弾性力を与える。吸込パイプの一部に凹部が設けられる。フック部217が吸込パイプの凹部に掛けられることにより、連結パイプ部212と吸込パイプとが固定される。ロック部215による固定が解除されることにより、吸込パイプは、連結パイプ部212から外れることができる。
【0038】
フック部217は、第4面214Dよりも前方側に配置される。フック部217が第1面214Aから突出した状態において、第4面214Dとフック部217とは対向する。
【0039】
吸気口10が塞がれた場合、ファン15の構造によってはサージングが発生する可能性がある。サージングとは、吸気口10の少なくとも一部が塞がれて吸気口10を流通する空気の流量が減少することにより異音が発生する現象をいう。上述のように、ロック部215の少なくとも一部は、連結パイプ部212に設けられた開口216に配置される。これにより、連結パイプ部212とロック部215の後部との間に第1の間隙が形成される。また、連結パイプ部212とフック部217の後部との間に第2の間隙が形成される。そのため、吸気口10が塞がれても、空気は、第1の間隙を介して連結パイプ部212とロック部215との間に流入し、第2の間隙を介して連結パイプ部212の流路に流入することができる。これにより、サージングの発生が抑制される。なお、連結パイプ部212に吸込みパイプが挿入され、フック部217に固定されると、第2の間隙が塞がれる。これにより、第2の間隙から空気が漏れないので、吸引力が適正に発生する。
【0040】
[吸音部材]
図5は、実施形態に係る左ハウジング22L、吸音部材5、及びコントローラ7を示す斜視図である。
図6は、実施形態に係る右ハウジング22R、吸音部材5、及びコントローラ7を示す斜視図である。
図7は、実施形態に係る左ハウジング22L、吸音部材5、及びコントローラ7を示す側面図である。
図8は、実施形態に係る左ハウジング22L及び吸音部材5のそれぞれを示す斜視図である。
図9は、実施形態に係る左ハウジング22L及び吸音部材5のそれぞれを示す側面図である。
【0041】
吸音部材5は、後ハウジング22の内部空間に2つ配置される。一方の吸音部材5は、後ハウジング22の内部空間において、左ハウジング22Lの排気口11に面するように配置される。他方の吸音部材5は、後ハウジング22の内部空間において、右ハウジング22Rの排気口11に面するように配置される。
【0042】
吸音部材5は、第1表面51と、第1表面51の反対方向を向く第2表面52と、第1表面51の周縁部と第2表面52の周縁部とを繋ぐ外周面53とを有する。吸音部材5の外形は、ブロック状である。
【0043】
吸音部材5は、連続気泡の多孔質部材である。吸音部材5は、多数の微小な気泡を有する。連続気泡とは、相互に繋がる複数の気泡をいう。連続気泡の多孔質部材として、軟質ウレタンスポンジ、グラウスール、ロックウール、及びフェルトの少なくとも一つが例示される。
【0044】
また、吸音部材5は、第1表面51と第2表面52とを貫通する流通孔54と、第1表面51と第2表面52とを貫通する支持孔55とを有する。流通孔54は、複数設けられる。複数の流通孔54は、実質的に平行である。支持孔55は、1つ設けられる。
【0045】
流通孔54の一端の開口及び他端の開口のそれぞれは、実質的に真円形である。流通孔54の内径は、1つの気泡の大きさよりも大きい。
【0046】
支持孔55の一端の開口及び他端の開口のそれぞれは、実質的に長円形である。支持孔55の開口の短手方向の寸法は、流通孔54の開口の寸法(直径)よりも小さい。
【0047】
排気口11は、細長いスリット状である。複数の排気口11は、排気口11の短手方向に一定の間隔で設けられる。
【0048】
吸音部材5は、流通孔54の一端の開口の少なくとも一部が排気口11に重複し、流通孔54の他端の開口が後ハウジングの内部空間に面するように、後ハウジング22の内部空間に配置される。
【0049】
後ハウジング22は、吸音部材5の第1表面51に対向する支持部221と、吸音部材5の外周面53に対向する支持部222と、支持孔55に挿入される支持部223とを有する。支持部221は、左ハウジング22L及び右ハウジング22Rのそれぞれに設けられる。支持部222は、左ハウジング22L及び右ハウジング22Rのそれぞれに設けられる。支持部223は、左ハウジング22L及び右ハウジング22Rのそれぞれに設けられる。左ハウジング22Lの支持部221、支持部222、及び支持部223のそれぞれは、左ハウジング22Lの内面から右方側に突出する。右ハウジング22Rの支持部221、支持部222、及び支持部223のそれぞれは、右ハウジング22Rの内面から左方側に突出する。
【0050】
支持部221は、複数の排気口11を囲むように配置される周壁部221Aと、隣り合う排気口11の間に配置されるリブ部221Bとを含む。周壁部221Aの形状と第1表面51の外形とは、実質的に等しい。周壁部221Aは、第1表面51の周縁部と接触する。リブ部221Bは、複数設けられる。リブ部221Bは、第1表面51と接触する。
【0051】
支持部222は、排気口11よりも前方側に配置される前側支持部222Aと、排気口11よりも上方側に配置される上側支持部222Bと、排気口11よりも下方側に配置される下側支持部222Cとを含む。
【0052】
前側支持部222Aは、2つ設けられる。前側支持部222Aは、外周面53の前部に接触する。上側支持部222Bは、外周面53の上部に接触する。下側支持部222Cは、外周面53の下部に接触する。下側支持部222Cは、ねじ22Sの少なくとも一部が配置されるねじボス部として機能する。
【0053】
支持部223は、1つのリブ部221Bから突出するように設けられる。支持部223は、支持孔55に挿入される。
【0054】
後ハウジング22は、コントローラ7を支持するコントローラ支持部224を有する。コントローラ7は、コントローラ支持部224に支持された状態で、吸音部材5の後方側に配置される。コントローラ7は、コントローラ支持部224に支持された状態で、外周面53の後部と対向するように配置される。
【0055】
ハウジング2の内部空間において吸音部材5が排気口11に面するように配置されるので、騒音の発生が抑制される。また、吸音部材5は、流通孔54を有する。ハウジング2の内部空間から外部空間に排出される空気は、流通孔54を通過する。吸音部材5に流通孔54が設けられることにより、空気は、ハウジング2の内部空間から外部空間に円滑に排出される。流通孔54を有する吸音部材5により、排気抵抗の増加が抑制されつつ、騒音の発生が抑制される。空気が円滑に流れるので、クリーナ1の吸込力の低下が抑制される。
【0056】
流通孔54は、吸音部材5に複数設けられる。これにより、空気は、吸音部材5の流通孔54を円滑に流れる。また、流通孔54が複数設けられることにより、吸音部材5の表面積が大きくなる。したがって、吸音部材5の吸音効果が向上される。
【0057】
複数の流通孔54は、実質的に平行である。これにより、空気は流通孔54を円滑に流れることができる。
【0058】
吸音部材5は、流通孔54の一端の開口の少なくとも一部が排気口11に面し、流通孔54の他端の開口がハウジング2の内部空間の中央に面するように配置される。これにより、流通孔54の他端の開口から流通孔54に流入した空気は、流通孔54の一端の開口から排出された後、排気口11を介してハウジング2の外部空間に円滑に排出される。
【0059】
排気口11は、細長いスリット状である。これにより、ハウジング2の外部空間の異物が、排気口11を介してハウジング2の内部空間に侵入することが抑制される。流通孔54の一端の開口の内径は、排気口11の短手方向の寸法よりも大きい。これにより、流通孔54を流通し、流通孔54の一端の開口から流出した空気は、排気口11を介してハウジング2の外部空間に円滑に排出される。
【0060】
排気口11は、排気口11の短手方向に複数設けられる。これにより、空気は、複数の排気口11を介して円滑に排出される。流通孔54の一端の開口の内径は、排気口11の短手方向における排気口11の間隔よりも大きい。これにより、流通孔54の一端の開口と排気口11の少なくとも一部とは重複する。すなわち、流通孔54の一端の開口が排気口11の間のハウジング2の内面で塞がれることが抑制される。したがって、流通孔54を流通し、流通孔54の一端の開口から流出した空気は、排気口11を介してハウジング2の外部空間に円滑に排出される。
【0061】
流通孔54は、排気口11の短手方向及び長手方向のそれぞれに複数設けられる。これにより、ハウジング2の内部空間の空気は、複数の流通孔54のそれぞれを流通した後、排気口11を介してハウジング2の外部空間に円滑に排出される。
【0062】
吸音部材5は、ハウジング2の内面から突出する支持部223に支持される。支持部223は、支持孔55に配置される。支持孔55に支持部223が挿入されるだけで、吸音部材5は、ハウジング2に簡単に装着される。したがって、吸音部材5をハウジング2に装着するときの作業性の低下が抑制される。また、吸音部材5をハウジング2から外すときの作業性の低下が抑制される。
【0063】
支持部223の先端にフック部が配置される。支持部223が支持孔55に挿入された状態で、支持部223のフック部が吸音部材5の第2表面52に引っ掛けられてもよい。これにより、吸音部材5は、支持部223を介してハウジング2に安定して装着される。
【0064】
[吸引ユニット]
図10は、実施形態に係る吸引ユニット3を示す前方からの斜視図である。
図11は、実施形態に係る吸引ユニット3を示す後方からの斜視図である。
図12は、実施形態に係る吸引ユニット3を前方から見た図である。
図13は、実施形態に係る吸引ユニット3を示す前方からの分解斜視図である。
図14は、実施形態に係るモータ14及びファン15を示す斜視図である。吸引ユニット3は、モータアセンブリ12と、カバー13と、弾性部材60とを有する。
【0065】
<モータアセンブリ>
モータアセンブリ12は、モータ14と、ファン15と、モータケース16と、制御基板17とを有する。
【0066】
モータ14は、ファン15を回転させる回転力を発生する。モータ14は、インナロータ型である。モータ14は、回転軸AXを中心に回転するロータシャフト141を有する。ファン15は、ロータシャフト141の前部に固定される。
【0067】
ファン15は、モータ14よりも前方側に配置される。ファン15は、モータ14が発生する回転力により回転軸AXを中心に回転する。ファン15は、遠心ファンである。
図14に示すように、ファン15は、吸込口151を有する前板152と、前板152よりも後方に配置される後板153と、前板152と後板153との間に配置される羽根154とを有する。
【0068】
複数の羽根154は、回転軸AXの周囲に複数配置される。複数の羽根154の形状は、同一である。周方向、径方向、及び軸方向のそれぞれにおける複数の羽根154の寸法は、同一である。複数の羽根154は、周方向に等間隔で配置される。
【0069】
隣り合う羽根154の間に吹出口155が設けられる。ファン15が回転すると、ファン15よりも前方側の空気が吸込口151に吸引される。吸込口151に吸引された空気は、羽根154の間を通過した後、吹出口155から径方向外側に排出される。
【0070】
モータケース16は、モータ14及びファン15を収容する。モータケース16は、筒部23と、ファンカバー部24と、支持部25と、脚部26とを有する。
【0071】
筒部23は、回転軸AXを囲むように配置される。ファンカバー部24は、ファン15よりも前方側に配置される。ファンカバー部24は、筒部23の前端部に配置される。支持部25は、モータ14及び制御基板17を支持する。脚部26は、支持部25に固定される。脚部26は、2つ設けられる。脚部26は、筒部23の外面よりも径方向外側に配置される。
【0072】
モータケース16は、吸気口27及び排気口28を有する。吸気口27は、モータケース16の前方側の端部に設けられる。排気口28は、吸気口27よりも後方側に設けられる。実施形態において、吸気口27は、ファンカバー部24の中央部に設けられる。排気口28は、筒部23の後端部と支持部25の外面との間に設けられる。ファン15からの空気は、排気口28を介してモータケース16よりも後方側に排出される。
【0073】
制御基板17は、モータ14を制御する制御信号を出力する。制御基板17は、支持部25よりも後方側に配置される。制御基板17は、支持部25の後部と対向するように配置される。制御基板17は、支持部25に支持される。制御基板17は、2つの脚部26の間に配置される。
【0074】
<カバー>
カバー13は、モータアセンブリ12の周囲に配置される。カバー13は、モータアセンブリ12を収容する。カバー13は、ハウジング2に固定される。
【0075】
カバー13は、第1カバー31と、第2カバー32とを含む。第2カバー32の少なくとも一部は、第1カバー31よりも後方側に配置される。第1カバー31と第2カバー32とは接続される。第2カバー32は、第1カバー31に着脱可能である。第1カバー31と第2カバー32とにより、モータアセンブリ12が配置されるカバー13の内部空間が形成される。
【0076】
第1カバー31は、筒部33と、前板部34と、吸込口35と、整流部36と、突起部37と、突起部38とを有する。
【0077】
筒部33は、実質的に円筒状である。筒部33は、回転軸AXを囲むように配置される。筒部33は、外面及び内面を有する。筒部33の外面は、径方向外側を向く。筒部33の内面は、径方向内側を向く。
【0078】
前板部34は、筒部33の前端部に接続される。前板部34の外形は、実質的に円形状である。前板部34は、前面及び後面を有する。前板部34の前面は、前方側を向く。前板部34の後面は、後方側を向く。
【0079】
吸込口35は、前板部34の中央部に設けられる。吸込口35は、前板部34の前面と後面とを繋ぐ貫通孔を含む。
【0080】
前板部34の前面に、リング部341と、リング部342と、複数のリブ部343と、複数のリブ部344とが設けられる。リング部341、リング部342、リブ部343、及びリブ部344のそれぞれは、前板部34の前面から前方に突出する。リング部341は、吸込口35を囲むように配置される。リング部342は、リング部341を囲むように配置される。リブ部343は、径方向に延伸する。リブ部343は、径方向においてリング部341とリング部342との間に配置される。リブ部343は、リング部341及びリング部342のそれぞれに接続される。リブ部343は、周方向に間隔をあけて複数配置される。リブ部344は、径方向に延伸する。リブ部344は、リング部342よりも径方向外側に配置される。リブ部344は、リング部342に接続される。リブ部344は、周方向に間隔をあけて複数配置される。リング部341の前端部は、リブ部343の前端部及びリブ部344の前端部よりも前方側に配置される。リング部342の前端部は、リブ部343の前端部及びリブ部344の前端部よりも前方側に配置される。
【0081】
整流部36は、吸込口35に配置される。整流部36は、吸込口35に吸い込まれる空気をガイドする。整流部36は、内側リング361と、外側リング362と、複数のリブ363とを有する。
【0082】
内側リング361の前端部、外側リング362の前端部、及びリブ363の前端部は、前板部34の前面よりも前方側に配置される。内側リング361は、吸込口35の中央部に配置される。外側リング362は、内側リング361を囲むように配置される。外側リング362は、吸込口35の外形を規定する。実施形態において、吸込口35の外形は、円形である。
【0083】
リブ363は、径方向に延伸する。周方向における複数のリブ363の寸法は、同一である。径方向における複数のリブ363の寸法は、同一である。複数のリブ363は、周方向に等間隔で配置される。径方向において、リブ363は、内側リング361と外側リング362との間に配置される。リブ363は、内側リング361及び外側リング362のそれぞれに接続される。リブ363の径方向内側の端部は、内側リング361に接続される。リブ363の径方向外側の端部は、外側リング362に接続される。
【0084】
外側リング362は、前板部34に固定される。内側リング361は、リブ363を介して外側リング362に固定される。
【0085】
実施形態において、吸込口35は、内側リング361の内側に規定される第1吸込口351と、隣り合うリブ363の間に規定される第2吸込口352とを含む。第1吸込口351の外形は、円形である。回転軸AXは、第1吸込口351を通る。第2吸込口352は、周方向に複数設けられる。1つの第2吸込口352の外形は、実質的に三角形である。空気は、第1吸込口351及び第2吸込口352のそれぞれを流通することができる。
【0086】
外側リング362は、軸方向において第1寸法の第1部分362Aと、第1寸法よりも大きい第2寸法の第2部分362Bとを有する。第1部分362Aの前端部は、第2部分362Bの前端部よりも後方側に配置される。第1部分362Aは、周方向に間隔をあけて複数設けられる。実施形態において、第1部分362Aは、周方向に3つ設けられる。第2部分362Bは、周方向において隣り合う第1部分362Aの間に配置される。第2部分362Bは、周方向に3つ設けられる。
【0087】
第2部分362Bの前端部は、第1部分362Aの前端部よりも前方側に配置される。軸方向において、第2部分362Bの前端部の位置と内側リング361の前端部の位置とは、実質的に等しい。第1部分362Aの前端部と第2部分362Bの前端部との間に段差が設けられる。
【0088】
リブ363は、第1部分362Aに接続される第1リブ363Aと、第2部分362Bに接続される第2リブ363Bとを含む。軸方向において、第1部分362Aの前端部の位置と、第1リブ363Aの径方向外側の端部の前端部の位置とは、実質的に等しい。軸方向において、第2部分362Bの前端部の位置と、第2リブ363Bの径方向外側の端部の前端部の位置とは、実質的に等しい。すなわち、第1リブ363Aの径方向外側の端部は、第1部分362Aよりも前方側に突出しない。第2リブ363Bの径方向外側の端部は、第2部分362Bよりも前方側に突出しない。第1リブ363Aの前端部の少なくとも一部は、第2リブ363Bの前端部よりも後方側に配置される。
【0089】
突起部37は、筒部33の外面に設けられる。突起部37は、筒部33の外面から径方向外側に突出する。突起部37は、周方向に間隔をあけて4つ設けられる。突起部37は、軸方向に2つ設けられる。すなわち、突起部37は、筒部33の外面に8つ設けられる。
【0090】
突起部38は、筒部33の外面に設けられる。突起部38は、筒部33の外面から径方向外側に突出する。突起部38は、筒部33の外面の上部に1つ設けられる。
【0091】
前板部34に複数のねじ用開口39が設けられる。実施形態において、ねじ用開口39は、4つ設けられる。
【0092】
筒部33と、前板部34と、整流部36と、突起部37と、突起部38とは、一体である。第1カバー31は、インサート成形により形成される。第1カバー31の基材は、合成樹脂である。合成樹脂として、ポリプロピレン樹脂が例示される。基材を覆う被覆材は、エラストマーである。エラストマーとして、合成ゴムが例示される。
【0093】
実施形態において、筒部33の外面、リング部341、リング部342、リブ部343、リブ部344、突起部37、及び突起部38は、エラストマー製である。筒部33の内面、及び整流部36は、合成樹脂製である。
【0094】
図3に示すように、後ハウジング22は、カバー13よりも前方側に配置されるリング部225を有する。リング部225は、後ハウジング22の内面に固定される。リング部225の後面は、リング部341の前面及びリング部342の前面と接触する。リング部225の後面と、リング部341の前面及びリング部342の前面とが接触することにより、カバー13とハウジング2とが位置決めされる。
【0095】
突起部37は、後ハウジング22の内面に接触する。突起部37が後ハウジング22の内面に接触することにより、カバー13とハウジング2とが位置決めされる。
【0096】
突起部38は、後ハウジング22の内面に接触する。突起部38が後ハウジング22の内面の少なくとも一部に接触することにより、カバー13とハウジング2とが位置決めされる。
【0097】
後ハウジング22に接触するリング部341、リング部342、突起部37、及び突起部38のそれぞれは、弾性変形する。これにより、吸引ユニット3で発生した振動がハウジング2に伝達されることが抑制される。
【0098】
第2カバー32は、筒部41と、後板部42と、開口43と、ねじ孔45を有するねじボス44と、ピン46を支持する支持部47と、突起部48と、突起部49と、ガイド部70とを有する。
【0099】
筒部41は、実質的に円筒状である。筒部41は、回転軸AXを囲むように配置される。筒部41は、外面及び内面を有する。筒部41の外面は、径方向外側を向く。筒部41の内面は、径方向内側を向く。実施形態において、筒部41の後部の内径は、後方に向かって小さくなる。
【0100】
後板部42は、筒部41の後端部に接続される。後板部42の外形は、実質的に円形状である。後板部42は、前面及び後面を有する。後板部42の前面は、前方側を向く。後板部42の後面は、後方側を向く。
【0101】
開口43は、後板部42の一部に設けられる。開口43は、後板部42の前面と後面とを繋ぐ貫通孔を含む。
【0102】
ねじボス44は、第2カバー32の前部に複数設けられる。実施形態において、ねじボス44は、4つ設けられる。複数のねじボス44のそれぞれにねじ孔45が設けられる。
【0103】
支持部47は、ピン46を支持する。ピン46は、ゴム製である。支持部47は、筒部41の内面に設けられた凹部を含む。支持部47は、周方向に間隔をあけて4つ設けられる。ピン46は、4つの支持部47のそれぞれに支持される。4つのピン46は、モータケース16の筒部23の外面に接触する。4つのピン46により、第2カバー32とモータケース16とが位置決めされる。
【0104】
突起部48は、後板部42の後面の上部から後方に突出する。突起部48は、2つ設けられる。2つの突起部48は、左右方向に配置される。
図3に示すように、突起部48は、吸音部材5に接触する。左方側の突起部48は、左ハウジング22Lの排気口11に配置される吸音部材5を支持する。右方側の突起部48は、右ハウジング22Rの排気口11に配置される吸音部材5を支持する。
【0105】
突起部49は、後板部42の後面の下部から後方に突出する。突起部49は、2つ設けられる。2つの突起部49は、左右方向に配置される。
図3に示すように、突起部49は、吸音部材5に接触する。左方側の突起部49は、左ハウジング22Lの排気口11に配置される吸音部材5を支持する。右方側の突起部49は、右ハウジング22Rの排気口11に配置される吸音部材5を支持する。
【0106】
ガイド部70は、筒部41の外面に固定される。ガイド部70は、筒部41の外面から径方向外側に突出する。実施形態において、ガイド部70は、第1ガイド部71と、第2ガイド部72と、第3ガイド部73とを含む。実施形態において、第1ガイド部71は、2つ設けられる。第2ガイド部72は、2つ設けられる。第3ガイド部73は、2つ設けられる。2つの第1ガイド部71は、径方向において対向する位置に配置される。2つの第2ガイド部72は、径方向において対向する位置に配置される。2つの第3ガイド部73は、径方向において対向する位置に配置される。第1のねじボス44及び第2のねじボス44は、一方の第1ガイド部71に設けられる。第3のねじボス44及び第4のねじボス44は、他方の第1ガイド部71に設けられる。ねじボス44は、第1ガイド部71から前方に突出するように設けられる。
【0107】
実施形態において、筒部41と、後板部42と、ねじボス44と、支持部47と、突起部48と、突起部49と、ガイド部70とは、一体である。第2カバー32は、合成樹脂により形成される。第2カバー32を形成する合成樹脂として、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂が例示される。
【0108】
弾性部材60は、カバー13とモータケース16の少なくとも一部との間に配置される。弾性部材60は、モータ14又はファン15で発生した振動がカバー13に伝達されることを抑制する。
【0109】
実施形態において、弾性部材60は、第1弾性部材61と第2弾性部材62とを含む。第1弾性部材61の少なくとも一部は、モータケース16よりも前方側に配置される。第2弾性部材62の少なくとも一部は、モータケース16よりも後方側に配置される。
【0110】
第1弾性部材61は、モータ14又はファン15で発生した振動が第1カバー31に伝達されることを抑制する。第1弾性部材61は、モータケース16のファンカバー部24の表面と第1カバー31の前板部34の後面との間に配置される。第1カバー31の前板部34の後面は、モータケース16のファンカバー部24の表面の少なくとも一部と対向する。第1カバー31の前板部34は、ファンカバー部24よりも前方側に設けられる吸込口35を有する。第1弾性部材61は、吸込口35を囲むリング状である。第1弾性部材61は、前板部34の後面に接続される。
【0111】
第1弾性部材61は、第1カバー31と一体成型される。第1弾性部材61は、第1カバー31の一部とみなされてもよい。上述のように、第1カバー31がインサート成形により形成される場合、第1弾性部材61は、第1カバー31の基材を覆う被覆材(エラストマー)により形成されてもよい。
【0112】
第2弾性部材62は、モータ14又はファン15で発生した振動が第2カバー32に伝達されることを抑制する。第2弾性部材62は、モータケース16と第2カバー32の後板部42との間に配置される。第2カバー32は、モータケース16よりも後方側に設けられる開口43を有する。第2弾性部材62は、開口43を塞いだ状態で、モータケース16の少なくとも一部に接続される。実施形態において、第2弾性部材62は、モータケース16の脚部26に接続される。
【0113】
第2弾性部材62は、第1接続部63と、第2接続部64と、閉鎖部65と、パイプ部66とを有する。第1接続部63は、一方の脚部26に固定される。第2接続部64は、他方の脚部26に固定される。閉鎖部65は、第1接続部63と第2接続部64との間に配置される。閉鎖部65は、開口43の内側に配置される。パイプ部66は、閉鎖部65の後面から後方に突出する。パイプ部66に支持孔67が設けられる。
【0114】
[吸引ユニットの組立方法]
吸引ユニット3を組み立てる場合、モータケース16の脚部26に第2弾性部材62が接続される。制御基板17に接続されているケーブル(不図示)は、第2弾性部材62の支持孔67に配置される。第2弾性部材62は、支持孔67にケーブルが配置された状態で、モータケース16の脚部26に接続される。第2弾性部材62の第1接続部63が一方の脚部26に掛けられ、第2弾性部材62の第2接続部64が他方の脚部26に掛けられることによって、第2弾性部材62は、モータケース16に接続される。
【0115】
2つの脚部26は、筒部23の外面よりも径方向外側に突出する。したがって、径方向において第2弾性部材62の寸法が筒部23の寸法よりも大きくても、第2弾性部材62は、脚部26によりモータケース16に適正に接続される。
【0116】
第2弾性部材62は、閉鎖部65と制御基板17とが対向するように、モータケース16に接続される。第1接続部63及び第2接続部64のそれぞれは、制御基板17よりも径方向外側に配置される。
【0117】
モータケース16と第2弾性部材62とが接続された後、モータケース16及び第2弾性部材62と第2カバー32とが接続される。モータケース16及び第2弾性部材62は、第2カバー32の前方の開口から、第2カバー32の内側に挿入される。モータケース16及び第2弾性部材62は、第2弾性部材62の閉鎖部65が第2カバー32の開口43を塞ぐように、第2カバー32の内側に挿入される。ピン46は、第2カバー32の内側に挿入されたモータケース16の筒部23の外面に接触する。モータケース16は、ピン46により位置決めされる。制御基板17に接続されているケーブルの少なくとも一部は、支持孔67の後端部から後方側に延伸する。
【0118】
モータアセンブリ12及び第2弾性部材62と第2カバー32とが接続された後、第1カバー31と第2カバー32とが接続される。第1カバー31の筒部33の内径は、第2カバー32の筒部41の外径よりも大きい。第1カバー31と第2カバー32とは、筒部33の内面と筒部41の外面の少なくとも一部とが対向するように接続される。筒部41の外面にガイド部70が設けられる。第1カバー31と第2カバー32とは、筒部33の内側にガイド部70が配置されるように接続される。ガイド部70は、筒部33の内面と筒部41の外面との間に配置される。
【0119】
第1カバー31は、ねじ用開口39を有する。第2カバー32は、ねじ孔45を有する。第1カバー31と第2カバー32とは、4つのねじ90により固定される。ねじ90は、第1カバー31の前方側からねじ用開口39に挿入された後、ねじ孔45に挿入され、ねじ孔45と結合される。これにより、第1カバー31と第2カバー32とがねじ90により固定される。
【0120】
[動作]
次に、実施形態に係るクリーナ1の動作について説明する。モータ14が停止している状態で、使用者により駆動ボタン81が操作されると、モータ14の駆動が開始される。モータ14は、バッテリパック19から供給される電力によって駆動する。モータ14が駆動することにより、ファン15が回転する。ファン15が回転することにより、吸気口10に吸込力が発生する。吸気口10に吸込力が発生することにより、ハウジング2の外部空間の空気が、吸気口10から吸い込まれ、前ハウジング21の内部空間に流入する。
【0121】
前ハウジング21の内部空間に流入した空気に含まれる塵埃は、フィルタ18に捕集される。フィルタ18を通過した空気は、吸引ユニット3の吸込口35に吸い込まれる。
【0122】
図15は、実施形態に係る吸引ユニット3における空気の流れを説明するための模式図である。ファン15の回転により吸込口35に吸い込まれた空気は、吸気口27からモータケース16の内部空間に流入する。ファン15からの空気は、排気口28を介してモータケース16よりも後方側に排出される。
【0123】
モータケース16の排気口28から後方側に排出された空気は、第2カバー32の後板部42の前面に当たった後、モータケース16の筒部23の外面と筒部41の内面との間を前方側に流れる。モータケース16の筒部23の外面と筒部41の内面との間を前方側に流れた空気は、第1カバー31の前板部34の後面に当たった後、筒部41の外面の前方側の端部から、筒部41の外面側に流入する。
【0124】
筒部41の外面側に流入した空気は、ガイド部70により周方向にガイドされる。空気は、ガイド部70により規定される流路74を周方向に流れる。流路74を流れた空気は、ガイド部70により規定される流出口75から第2カバー32よりも後方側に流出する。流出口75から流出した空気は、排気口11を介してハウジング2の外部空間に排出される。
【0125】
空気がガイド部70により第2カバー32の外面において周方向にガイドされることにより、ハウジング2の内部空間において空気が流れる距離が長くなる。空気が流れる距離が長くなることにより、騒音の発生が抑制される。
【0126】
[リブとファンとの関係]
上述のように、吸引ユニット3は、モータ14と、モータ14により回転軸AXを中心に回転するファン15と、ファン15の前方側に配置されるカバー13の吸込口35と、吸込口35に配置され回転軸AXの径方向に延伸するリブ363とを備える。ファン15は、複数の羽根154を有する。リブ363は、周方向に複数配置される。
【0127】
複数の羽根154の形状は、同一である。周方向、径方向、及び軸方向のそれぞれにおける複数の羽根154の寸法は、同一である。複数の羽根154は、周方向に等間隔で配置される。
【0128】
周方向における複数のリブ363の寸法は、同一である。径方向における複数のリブ363の寸法は、同一である。複数のリブ363は、周方向に等間隔で配置される。
【0129】
リブ363の後方側でファン15が回転すると、NZ音と呼ばれる騒音が発生する可能性がある。ファン15の回転により羽根154がリブ363の後方側を通過するとき、リブ363と羽根154との間の空気が圧縮され、リブ363と羽根154との間の圧力が上昇する。騒音は、リブ363と羽根154との間の圧力上昇に起因する。
【0130】
図16、
図17、及び
図18のそれぞれは、実施形態に係るリブ363及び羽根154を模式的に示す図である。
【0131】
図16に示すように、羽根154の枚数Zが1枚であり、リブ363の本数Vが1本である場合、ファン15が1回転したときのリブ363と羽根154との間の圧力上昇の回数は1回である。1分間当たりのファン15の回転数Nが60rpmである場合、1分間における圧力上昇の回数は60回である。したがって、騒音の周波数f
NZは、1Hzである。
【0132】
図17に示すように、羽根154の枚数Zが3枚であり、リブ363の本数Vが1本である場合、ファン15が1回転したときのリブ363と羽根154との間の圧力上昇の回数は3回である。1分間当たりのファン15の回転数Nが60rpmである場合、1分間における圧力上昇の回数は180回である。したがって、騒音の周波数f
NZは、3Hzである。
【0133】
図18に示すように、羽根154の枚数Zが3枚であり、リブ363の本数Vが2本である場合、ファン15が1回転したときのリブ363と羽根154との間の圧力上昇の回数は6回である。1分間当たりのファン15の回転数Nが60rpmである場合、1分間における圧力上昇の回数は360回である。したがって、騒音の周波数f
NZは、6Hzである。
【0134】
本実施形態においては、ファン15の回転により発生する騒音の周波数fNZが20,000Hz以上になるように、羽根154の枚数Z、リブ363の本数V、及び1分間当たりのファン15の回転数Nが定められる。
【0135】
人間の可聴帯域は、15Hz以上20,000Hz未満と言われている。そのため、ファン15の回転により騒音が発生しても、騒音の周波数fNZが20,000Hz以上であれば、人間は騒音を聴き取ることができない。すなわち、騒音の周波数fNZが20,000Hz以上であれば、人間に対する騒音が抑制される。
【0136】
騒音の周波数fNZは、以下の(1)式で表される。
【0137】
fNZ=(m-k×V)×N/60 …(1)
但し、m:整数、k:整数、V:リブ363の本数、N:1分間当たりのファン15の回転数[rpm]、である。
【0138】
また、(1)式の整数mは、以下の(2)式で表される。
【0139】
m=n×Z+k×V …(2)
但し、n:次数(自然数)、Z:羽根154の枚数である。
【0140】
整数mは、クリーナ1(ファン15及びリブ363)からの距離に対する騒音の減衰率に係る値である。整数mの絶対値|m|が小さいほど、クリーナ1から発生した騒音が減衰せずに遠くまで到達することを意味する。
【0141】
騒音源であるクリーナ1(ファン15及びリブ363)との距離をΔx、クリーナ1で発生した騒音値をΔdB、特性マッハ数をMc、羽根154の先端部のマッハ数をMm、ダクト半径をRとした場合、以下の(3)式で示す公式が成立する。
【0142】
ΔdB/Δx=-8.69×|m|×(Mc2-Mm2)1/2/R …(3)
【0143】
(3)式は、絶対値|m|が小さいほど、クリーナ1との距離Δxが長くても騒音値ΔdBが減衰し難いことを意味する。すなわち、絶対値|m|が小さいほど、クリーナ1との距離が長い位置においても、クリーナ1から発生した騒音が減衰せずに到達することを意味する。
【0144】
実施形態においては、整数mが-1以上+1以下(|m|≦1)において周波数fNZが20,000Hz以上になるように、羽根154の枚数Z、リブ363の本数V、及びファン15の回転数Nが定められる。クリーナ1の騒音値ΔdBが減衰し難く、騒音が遠くまで到達する条件においても、騒音の周波数fNZが20,000Hz以上であれば、人間に対する騒音が抑制される。
【0145】
なお、特性マッハ数Mcは、整数mとハブ比σとに基づいて決定される。ハブ比σは、ハブ径とダクト径との比(ハブ径/ダクト径)である。ダクトが無い自由空間においては、ハブ比σはゼロになる。
【0146】
図19は、実施形態に係る特性マッハ数Mcの一例を示す図である。
図19に示すように、特性マッハ数Mcは、整数mとハブ比σとに基づいて決定される。
【0147】
なお、羽根154の直径をD[m]、音速をa0とした場合、羽根154の先端部のマッハ数Mmは、以下の(4)式で表される。
【0148】
Mm=(π×D×N)/(60×a0) …(4)
【0149】
図20は、実施形態に係る騒音の周波数f
NZの算出方法を説明するための図である。
【0150】
図20に示す例において、最初に、羽根154の枚数Z、リブ363の本数V、ファン15の回転数N、整数k、及び次数nのそれぞれが任意の値に定められる。枚数Z、本数V、回転数N、整数k、及び次数nのそれぞれが任意の値に定められた後、(2)式に基づいて整数mが算出される。(2)式に基づいて整数mが算出された後、(1)式に基づいて周波数f
NZが算出される。
【0151】
図20は、枚数Zが3枚に定められ、本数Vが5本に定められ、回転数Nが600rpmに定められ、整数kが
図20に示す値のそれぞれに定められ、次数nが1に定められたときの整数kと整数mと周波数f
NZとの関係を示す。
【0152】
整数kが
図20に示す値に定められた後、(2)式に基づいて整数mが算出される。例えば、整数kが-5であるとき、[m=1×3+(-5)×5]より、整数mは-22になる。整数kが-4であるとき、[m=1×3+(-4)×5]より、整数mは-17になる。
【0153】
整数k及び整数mが定められた後、(1)式に基づいて周波数fNZが算出される。例えば、整数kが-5であり整数mが-22であるとき、[fNZ=(-22-(-5)×5)×600/60]より、周波数fNZは30Hzになる。整数kが-4であり整数mが-17であるとき、[fNZ=(-17-(-4)×5)×600/60]より、周波数fNZは30Hzになる。
【0154】
図20に示すように、枚数Z、本数V、回転数N、及び次数nが任意の値に定められることにより、整数k及び整数mが変化しても、周波数f
NZは一定の値(30Hz)になる。
【0155】
図20に示す例において、整数mが-2のとき、絶対値|m|が最小値になる。したがって、
図20に示す例においては、整数mが-2のとき、クリーナ1との距離Δxが長くても騒音値ΔdBが減衰し難いことを意味する。
【0156】
実施形態においては、整数mが-1以上+1以下(|m|≦1)において周波数fNZが20,000Hz以上になるように、枚数Z、本数V、回転数N、整数k、及び次数nが定められる。これにより、騒音値ΔdBが減衰し難い条件においても、騒音の周波数fNZが20,000Hz以上であれば、人間に対する騒音が抑制される。
【0157】
なお、実施形態においては、枚数Zは、2以上20以下から選択される。本数Vは、1以上50以下から選択される。回転数Nは、1,000以上40,000以下から選択される。整数kは、-10以上+10以下から選択される。次数nは、1以上10以下から選択される。枚数Zが選択される数値の範囲、本数Vが選択される数値の範囲、回転数Nが選択される数値の範囲、整数kが選択される数値の範囲、及び次数nが選択される数値の範囲のそれぞれが限定されることにより、周波数fNZの算出負荷が軽減される。
【0158】
[吸込ユニットの設定方法]
次に、吸引ユニット3の設定方法について説明する。吸引ユニット3の設定は、周波数fNZが20,000Hz以上になるように、羽根154の枚数Z、リブ363の本数V、及び1分間当たりのファン15の回転数Nを定めることを含む。吸引ユニット3の設定は、コンピュータシステムによって実行される。
【0159】
図21は、実施形態に係るコンピュータシステム1000を示すブロック図である。コンピュータシステム1000は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ1001と、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリ1002と、ストレージ1003と、入出力回路を含むインタフェース1004とを有する。プロセッサ1001は、コンピュータプログラムをストレージ1003から読み出してメインメモリ1002に展開し、コンピュータプログラムに従って、吸引ユニット3の設定を実行する。なお、コンピュータプログラムは、ネットワークを介してコンピュータシステム1000に配信されてもよい。
【0160】
騒音の周波数fNZが20,000Hz以上になるように吸引ユニット3を設定する場合、コンピュータシステム1000は、最初に、枚数Z、本数V、整数k、及び次数nのそれぞれを任意の値に定める。枚数Z、本数V、整数k、及び次数nのそれぞれを任意の値に定めた後、コンピュータシステム1000は、(2)式に基づいて、整数mの絶対値|m|を算出する。コンピュータシステム1000は、整数mが-1以上+1以下になるように、すなわち、|m|≦1になるように、枚数Z、本数V、整数k、及び次数nのそれぞれの値を定める。
【0161】
|m|≦1の条件を満足する整数m、枚数Z、本数V、整数k、及び次数nのそれぞれの値を定めた後、コンピュータシステム1000は、|m|≦1の条件を満足する整数m、本数V、及び整数kと、(1)式とに基づいて、周波数fNZが20,000Hz以上になるように、回転数Nを定める。
【0162】
図22は、実施形態に係る吸引ユニット3の設定方法を示すフローチャートである。
【0163】
コンピュータシステム1000は、羽根154の枚数Zを決定する。枚数Zは、自然数である。コンピュータシステム1000は、2以上20以下の数値の範囲の中から、枚数Zを決定する(ステップS1)。
【0164】
コンピュータシステム1000は、リブ363の本数Vを決定する。本数Vは、自然数である。コンピュータシステム1000は、1以上50以下の数値の範囲の中から、本数Vを決定する(ステップS2)。
【0165】
コンピュータシステム1000は、整数kを決定する。コンピュータシステム1000は、-10以上10以下の数値の範囲の中から、整数kを決定する(ステップS3)。
【0166】
コンピュータシステム1000は、次数nを決定する。次数nは、自然数である。コンピュータシステム1000は、1以上10以下の数値の範囲の中から、次数nを決定する(ステップS4)。
【0167】
なお、ステップS1の処理とステップS2の処理とステップS3の処理とステップS4の処理との順番は、任意である。また、ステップS1の処理とステップS2の処理とステップS3の処理とステップS4の処理との少なくとも2つの処理が並行して実行されてもよい。
【0168】
コンピュータシステム1000は、ステップS1で決定した枚数Z、ステップS2で決定した本数V、ステップS3で決定した整数k、及びステップS4で決定した次数nと、(2)式とに基づいて、整数mを算出する。すなわち、コンピュータシステム1000は、ステップS1で決定した枚数Z、ステップS2で決定した本数V、ステップS3で決定した整数k、及びステップS4で決定した次数nのそれぞれを(2)式に代入して、整数mを算出する(ステップS5)。
【0169】
コンピュータシステム1000は、ステップS5で算出した整数mの絶対値|m|が1以下か否かを判定する(ステップS6)。
【0170】
ステップS5において、絶対値|m|が1以下ではないと判定した場合(ステップS6:No)、コンピュータシステム1000は、枚数Z、本数V、整数k、及び次数nの少なくとも一つを変更する。コンピュータシステム1000は、(2)式に基づいて算出される整数mの絶対値|m|が1以下になるまで、枚数Zと本数Vと整数kと次数nとの組み合わせを変更する。
【0171】
ステップS5において、絶対値|m|が1以下であると判定した場合(ステップS6:Yes)、コンピュータシステム1000は、ファン15の回転数Nを決定する。回転数Nは、自然数である。コンピュータシステム1000は、1,000以上40,000以下の数値の範囲の中から、回転数Nを決定する(ステップS7)。
【0172】
コンピュータシステム1000は、ステップS5で決定した整数m、ステップS3で決定した整数k、ステップS2で決定した本数V、及びステップS7で決定した回転数Nと、(1)式とに基づいて、周波数fNZを算出する。すなわち、コンピュータシステム1000は、ステップS5で決定した整数m、ステップS3で決定した整数k、ステップS2で決定した本数V、及びステップS7で決定した回転数Nのそれぞれを(1)式に代入して、周波数fNZを算出する(ステップS8)。
【0173】
コンピュータシステム1000は、ステップS8で算出した周波数fNZが20,000Hz以上か否かを判定する(ステップS9)。
【0174】
ステップS9において、周波数fNZが20,000Hz以上ではないと判定した場合(ステップS9:No)、コンピュータシステム1000は、回転数Nを変更する。コンピュータシステム1000は、(1)式に基づいて算出される周波数fNZが20,000Hz以上になるまで、ステップS5で決定した整数m、ステップS3で決定した整数k、及びステップS2で決定した本数Vを固定した状態で、回転数Nを変更する。
【0175】
ステップS9において、周波数fNZが20,000Hz以上であると判定した場合(ステップS9:Yes)、コンピュータシステム1000は、吸引ユニット3の設定を終了する。
【0176】
以上のように、実施形態においては、(2)式に基づいて、整数mが-1以上+1以下になるように、枚数Z、本数V、整数k、及び次数nのそれぞれが定められる(ステップS1からステップS6)。整数mが-1以上+1以下になる枚数Z、本数V、整数k、及び次数nのそれぞれが決定された後、(1)式に基づいて、周波数fNZが20,000Hz以上になるように、回転数Nが定められる(ステップS7からステップS9)。
【0177】
一例として、枚数Zが11本に決定され、本数Vが14本に決定され、整数kが-4に決定され、次数nが5に決定される。これらの数値を(2)式に代入すると、整数mは-1になる。回転数Nが2,2000rpmに決定される。これらの数値を(1)式に代入すると、周波数fNZは約20,167Hzになる。なお、回転数Nが40,000rpmに決定された場合、周波数fNZは約36,666Hzになる。したがって、枚数Zが11本に決定され、本数Vが14本に決定され、整数kが-4に決定され、次数nが5に決定された場合、回転数Nが2,2000以上40,000以下に設定されることにより、周波数fNZは20,000Hz以上になる。
【0178】
[効果]
以上説明したように、実施形態によれば、リブ363の後方側においてファン15が回転する場合において、ファン15の回転により発生する騒音の周波数fNZが20,000Hz以上になるように、羽根154の枚数Z、リブ363の本数V、及び1分間当たりのファン15の回転数Nが定められる。人間の可聴帯域は、15Hz以上20,000Hz未満と言われている。そのため、ファン15の回転により騒音が発生しても、騒音の周波数fNZが20,000Hz以上であれば、人間は騒音を聴き取ることができない。すなわち、騒音の周波数fNZが20,000Hz以上であれば、人間に対する騒音が抑制される。したがって、クリーナ1から発生する騒音が抑制される。
【0179】
周波数fNZは、(1)式により算出される。整数mは、(2)式により算出される。整数m(=n×Z+k×V)は、(3)式に示した公式を構成する。整数mは、ファン15及びリブ363からの距離Δxに対する騒音値ΔdBの減衰率に係る値である。整数mの絶対値|m|が小さいほど、クリーナ1から発生した騒音が減衰せずに遠くまで到達することを意味する。すなわち、絶対値|m|が小さいことは、クリーナ1の騒音値ΔdBが減衰し難いことを意味する。絶対値|m|が1以下である場合、クリーナ1の騒音値ΔdBが減衰し難い。整数mが-1以上+1以下(|m|≦1)において周波数fNZが20,000Hz以上になるように、羽根154の枚数Z、リブ363の本数V、及びファン15の回転数Nが定められる。クリーナ1の騒音値ΔdBが減衰し難い条件においても、騒音の周波数fNZが20,000Hz以上であれば、人間に対するクリーナ1の騒音が抑制される。
【0180】
図22のステップS1からステップS6を参照して説明したように、整数mが-1以上+1以下になるように、(2)式に基づいて、枚数Z、本数V、整数k、及び次数nのそれぞれが定められる。
【0181】
整数mが-1以上+1以下になるように、枚数Z、本数V、整数k、及び次数nのそれぞれが定められた後、
図22のステップS7からステップS9を参照して説明したように、周波数f
NZが20,000Hz以上になるように、(1)式に基づいて、回転数Nが定められる。
【0182】
ステップS1においては、枚数Zは、2以上20以下の自然数から選択される。ステップS2においては、本数Vは、1以上50以下の自然数から選択される。ステップS3においては、整数kは、-10以上10以下から選択される。ステップS4においては、次数nは、1以上10以下の自然数から選択される。ステップS7においては、回転数Nは、1,000以上40,000以下の自然数から選択される。枚数Zが選択される数値の範囲、本数Vが選択される数値の範囲、整数kが選択される数値の範囲、次数nが選択される数値の範囲、及び回転数Nが選択される数値の範囲のそれぞれが限定されることにより、コンピュータシステム1000による周波数fNZの算出負荷が軽減される。
【0183】
実施形態において、枚数Zは、11枚であり、本数Vは、14本であり、整数kは、-4であり、次数nは、5である。回転数Nは、2,2000以上40,000以下に設定される。
【0184】
吸込口35の中央部に内側リング361が配置される。これにより、内側リング361の内側に第1吸込口351が形成される。リブ363の径方向内側の端部は、内側リング361に接続される。これにより、複数のリブ363は、内側リング361を介して接続される。また、隣り合うリブ363の間に第2吸込口352が形成される。
【0185】
内側リング361を囲むように外側リング362が配置される。外側リング362は、吸込口35(第2吸込口352)の外形を規定する。リブ363の径方向外側の端部は、外側リング362に接続される。これにより、リブ363は、内側リング361及び外側リング362のそれぞれに支持される。
【0186】
外側リング362は、軸方向において第1寸法の第1部分362Aと、第1寸法よりも大きい第2寸法の第2部分362Bとを有する。第1部分362Aは、周方向に間隔をあけて複数設けられる。第2部分362Bは、周方向において隣り合う第1部分362Aの間に設けられる。外側リング362の前端部に段差が設けられる。これにより、吸込口35に吸い込まれる空気の流れが整えられ、騒音が抑制される。
【0187】
リブ363は、第1部分362Aに接続される第1リブ363Aと、第2部分362Bに接続される第2リブ363Bとを含む。第1リブ363Aの前端部の少なくとも一部は、第2部分362Bの前端部よりも後方側に配置される。これにより、吸込口35に吸い込まれる空気の流れが整えられ、騒音が抑制される。
【0188】
[その他の実施形態]
上述の実施形態において、第2カバー32と第2弾性部材62とが一体成型されてもよい。
【0189】
上述の実施形態においては、吸引ユニット3がハンディクリーナに設けられることとした。吸引ユニット3は、キャスターを備えるクリーナに設けられてもよい。
【符号の説明】
【0190】
1…クリーナ、2…ハウジング、3…吸引ユニット、4…フィルタ支持部材、5…吸音部材、6…バッテリ装着部、7…コントローラ、8…インタフェース装置、9…ハンドル、10…吸気口、11…排気口、12…モータアセンブリ、13…カバー、14…モータ、15…ファン、16…モータケース、17…制御基板、18…フィルタ、19…バッテリパック、21…前ハウジング、22…後ハウジング、22L…左ハウジング、22R…右ハウジング、22S…ねじ、23…筒部、24…ファンカバー部、25…支持部、26…脚部、27…吸気口、28…排気口、31…第1カバー、32…第2カバー、33…筒部、34…前板部、35…吸込口、36…整流部、37…突起部、38…突起部、39…ねじ用開口、41…筒部、42…後板部、43…開口、44…ねじボス、45…ねじ孔、46…ピン、47…支持部、48…突起部、49…突起部、51…第1表面、52…第2表面、53…外周面、54…流通孔、55…支持孔、60…弾性部材、61…第1弾性部材、62…第2弾性部材、63…第1接続部、64…第2接続部、65…閉鎖部、66…パイプ部、67…支持孔、70…ガイド部、71…第1ガイド部、72…第2ガイド部、73…第3ガイド部、74…流路、75…流出口、81…駆動ボタン、82…モード切換ボタン、83…表示部、90…ねじ、141…ロータシャフト、151…吸込口、152…前板、153…後板、154…羽根、155…吹出口、211…開口、212…連結パイプ部、213…内面、214…凹部、214A…第1面、214B…第2面、214C…第3面、214D…第4面、215…ロック部、216…開口、217…フック部、221…支持部、221A…周壁部、221B…リブ部、222…支持部、222A…前側支持部、222B…上側支持部、222C…下側支持部、223…支持部、224…コントローラ支持部、225…リング部、341…リング部、342…リング部、343…リブ部、344…リブ部、351…第1吸込口、352…第2吸込口、361…内側リング、362…外側リング、362A…第1部分、362B…第2部分、363…リブ、363A…第1リブ、363B…第2リブ、1000…コンピュータシステム、1001…プロセッサ、1002…メインメモリ、1003…ストレージ、1004…インタフェース、AX…回転軸。