(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】反芻動物における窒素利用を改善するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A23K 40/35 20160101AFI20240724BHJP
A23K 50/10 20160101ALI20240724BHJP
【FI】
A23K40/35
A23K50/10
(21)【出願番号】P 2020517980
(86)(22)【出願日】2018-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2018076234
(87)【国際公開番号】W WO2019063678
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-08-03
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-22
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ホイスナー
(72)【発明者】
【氏名】フランク フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ゲオアク ボアヒャース
(72)【発明者】
【氏名】ウルリケ コトケ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ コープラー
(72)【発明者】
【氏名】コーネリア ボアクマン
(72)【発明者】
【氏名】カーステン ポアトナー
【合議体】
【審判長】居島 一仁
【審判官】▲高▼橋 祐介
【審判官】北川 創
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-524543(JP,A)
【文献】国際公開第2017/125140(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 40/35
A23K 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)尿素
である、非タンパク質窒素化合物と、
ii)前記非タンパク質窒素化合物を取り囲む被覆とを含
み、
前記被覆が、前記非タンパク質窒素化合物を直接取り囲む第1の層と、前記第1の層を取り囲む第2の層とからなり、
前記第1の層が、前記第1の層の重量に基づいて、60重量%±10%~
85重量%±10%の
水添パーム油と、
15重量%±10%~40重量%±10%の
ステアリン酸とを含み、第2の層が、前記第2の層の重量に基づいて、
75重量%±10%~
97重量%-10%の
水添パーム油と、
3重量%±10%~
25重量%±10%の
ステアリン酸とを含
み、
前記第1の層は、前記第2の層より多量の被覆混合物を有し、
前記第1の層は、前記第2の層より多量のステアリン酸を含む、反芻動物に給餌するための組成物であって、
前記組成物中の第1の層の量が6~15重量%であり、
前記組成物中の第2の層の量が1~6重量%である、
組成物。
【請求項2】
請求項
1記載の組成物を含む、反芻動物に給餌するための、飼料、飼料材料、プレミックスまたは飼料添加剤。
【請求項3】
請求項
1記載の組成物の製造方法であって、
a)非タンパク質窒素化合物を含有するかまたは非タンパク質窒素化合物からなる粒子を、ドラムコータに提供する工程と、
b)
飽和脂肪および
脂肪酸を含む混合物を、ドラムコータの外側のリザーバに提供する工程と、
c)前記工程a)の粒子を、前記工程b)の混合物の融点の下限より20℃低い温度から前記工程b)の混合物の融点の上限の範囲の温度に加熱する工程と、
d)前記工程b)の混合物を、その融点の上限の温度からその融点の上限より20℃高い温度の範囲の温度に加熱する工程と、
e)前記工程d)の前記加熱された混合物を、回転しているドラムコータ中の前記工程c)の粒子上に適用する工程と、
f)前記工程e)で得られた粒子層の温度を、前記工程b)の混合物の融点の下限より20℃低い温度から前記工程b)の混合物の融点の下限の範囲の温度で維持する工程と、
g)前記工程f)で得られた組成物を冷却するかまたは前記工程f)で得られた組成物を冷却させる工程とを含み、
前記工程c)~f)またはc)~g)
の1回目の実行により前記第1の層を形成し、1回目の実行における前記工程f)またはg)から得られた組成物について
前記工程c)~f)またはc)~g)の2回目の実行により前記第2の層を形成する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反芻動物における飼料摂取、繊維消化率、乳生産および/または体成長を向上させるため、窒素排泄を減少させるため、反芻胃pH安定性を改善するためかつ/または反芻動物、特に、消化率の低い牧草地、例えば、乾燥気候、高温気候、低温気候等により特徴付けられるような過酷な気候および/もしくは遠隔地で保持される反芻動物におけるアンモニア毒性を低減させもしくは予防するのに特に適した、反芻動物のための飼料および飼料添加剤の分野である。
【0002】
反芻動物由来製品、例えば、肉製品、例えば、肉牛、羊、子羊等および乳製品、例えば、牛乳、チーズ、バター等は、西洋の食事の大部分を構成し、これらの製品に対する需要は着実に増している。反芻動物の健康および成長を促進することができるだけでなく、反芻動物由来製品の品質および/または量の改善にもつながり得る飼料および/または飼料添加剤を開発するために、かなりの研究開発努力が払われてきた。反芻動物の成長、羊毛および乳生産は、多くの場合、植物性タンパク質の形態で提供される窒素の利用可能性により直接決まる。したがって、補足的なタンパク質は、多くの場合、反芻動物の成長、羊毛および乳生産を促進するのに考慮されるかまたは使用される。しかしながら、反芻動物は、食餌性タンパク質またはアミノ酸自体を必要としない。タンパク質でも、アミノ酸でもない化合物から得ることができるかまたは得られる窒素から反芻動物微生物により反芻動物中で、タンパク質を合成することもできるためである。したがって、このような化合物、例えば、尿素は、非タンパク質窒素(NPN)化合物とも呼ばれる。農業従事者にとっての直接的な利益は、価格節約である。NPN化合物は、食餌性タンパク質より安価であるためである。したがって、NPN化合物は、反芻動物の成長、羊毛および/または乳生産を促進するための食事性タンパク質の代替としてまたはそれに加えて、ますます使用されている。
【0003】
しかしながら、飼料または飼料添加剤を含むNPN化合物の使用は、特に、有効量のNPN化合物が与えられる場合、通常、アンモニア毒性を伴う。この理由は、反芻動物により消化されると、NPN化合物、例えば、尿素がとりわけ、こぶ胃微生物によりアンモニアに急速に変換されるためである。有効量のNPN化合物の投与により、これは、反芻胃中のNPN源からのアンモニアの突然のピークの放出をもたらす。アンモニアがNPN化合物から放出される速度は、こぶ胃微生物がこのようにして放出されたアンモニアをアミノ酸に変換することができる変換速度より速い。こぶ胃微生物により利用されない過剰のアンモニアは、最終的には反芻動物に対して毒性である高レベルで血流中に入る。典型的には、アンモニア毒性は、末梢血過剰が100mLの血液当たりに約1mgのアンモニアである場合に生じる。アンモニア毒性の症状は、筋攣縮、運動失調、唾液分泌過多、テタニー、膨満および呼吸障害を含む。
【0004】
NPN化合物の投与を伴う欠点、特に、アンモニア毒性を改善するために、かなりの努力が払われてきた。例えば、反芻胃中のNPN源からのアンモニアの遅延放出を可能にするNPN化合物を含む組成物が開発されてきた。反芻胃におけるアンモニアの遅延放出は、反芻胃におけるアンモニアの突然のピークを弱めることを意図している。これは、典型的には、直ちに放出されるNPN化合物を含む飼料または飼料添加剤の摂取の直後に生じる。アンモニアの遅延放出は、反芻胃において起こることが意図されるが、同反芻胃では、微生物は、それを利用してタンパク質を生成することができる。反芻胃中のNPN源からのアンモニアの遅延放出は、典型的には、いわゆる制御放出剤または被覆でNPN化合物を部分的または完全に被覆しまたはカプセル化することにより達成される。制御放出剤は、経時的に反芻胃中でのNPN源からのアンモニアの放出速度を遅延させまたは遅らせる能力を特徴とする。具体的には、放出制御剤により、単位時間当たりのNPN化合物からの特定量のアンモニアの放出が可能となる。それにより、NPN化合物に由来するアンモニアは、反芻胃中で一度に大量には放出されない。反芻胃中でのNPN化合物からのアンモニアの放出速度を経時的に遅延させまたは遅らせるために設計された種々のルーメンバイパス剤が、長年にわたって開発されてきた。
【0005】
英国特許第1493425号明細書には、反芻動物用の尿素含有飼料原料が開示されている。この場合、尿素は、反芻胃内での尿素からのアンモニアの放出速度を遅らせるために、硬化させた獣脂および/または硬化させた海洋脂肪で被覆されている。しかしながら、この特許の飼料原料中の被覆尿素の反芻胃保護には、依然として改善の余地が残っている。
【0006】
米国特許出願公開第2007/151480号明細書には、水添および/または部分水添重合植物油を含む材料が開示されている。同植物油は、バインダー、例えば、ホットメルト接着剤、木材複合材料用バインダー、試料ブロック用バインダー、農産物用バインダー、アスファルトバインダーもしくはパーソナルケア製品用バインダーまたは被覆、例えば、農産物用被覆、包装被覆、食用被覆およびコンクリート離型被覆のいずれかである。言及されている1つの用途は、飼料または飼料添加剤、例えば、NPN化合物のための被覆としての使用である。しかしながら、このような被覆物質は、非常に一般的な方法で記載されており、腸内での吸収はもちろんのこと、ルーメンバイパスを実証した特定の組成物は何ら開示されていない。具体的には、仮説的な例が、ホットメルト接着剤配合物、耐湿性厚紙被覆、キャンドル組成物、動物飼料ブロックおよび微粒子微量ミネラル飼料ならびにパーソナルケア製品のみに関連している。
【0007】
さらに、国際公開第2017/125140号には、反芻動物による摂取に適したルーメンバイパスNPN組成物が開示されている。国際公開第2017/125140号の技術的教示では、被覆尿素含有製品のルーメンバイパスに焦点が当てられている。この課題の解決のために、前記文献には、非タンパク質窒素化合物と、非タンパク質窒素化合物のルーメンバイパスを可能にするルーメンバイパス剤とを含む組成物が教示されており、このルーメンバイパス剤は、非タンパク質窒素化合物を取り囲む被覆であり、前記被覆は、少なくとも90%の飽和脂肪を含む。しかしながら、国際公開第2017/125140号の組成物からの非タンパク質窒素化合物の反芻胃後放出速度には、依然として改善の余地が残っている。
【0008】
米国特許出願公開第2010/0272852号明細書および同第2012/0093974号明細書にはそれぞれ、硫酸リジンの粒状コアと、このコアを取り囲む被覆材料の少なくとも1つの層とを有し、被覆材料が植物油および改質剤を含む、反芻動物飼料組成物が開示されている。この飼料組成物は、50~60重量%の硫酸リジン、36~50重量%の水素化植物油および2~4重量%の改質剤、例えば、脂肪酸、例えば、ステアリン酸またはオレイン酸、未水添パーム油、レシチンまたはレシチンと脂肪酸との混合物を含む。本発明の比較例では、米国特許出願公開第2010/0272852号明細書および同第2012/0093974号明細書の技術的教示に従った被覆が、非タンパク質窒素化合物である尿素の許容可能な反芻胃後放出速度を提供しないことを示すことが示された。
【0009】
したがって、大量の反芻胃放出NPNを可能にする、飼料添加剤を含むNPNが依然として必要とされている。したがって、本発明の目的は、改善されたNPNルーメンバイパス組成物を提供することである。好ましくは、このようなNPNルーメンバイパス組成物は、先行技術のNPNルーメンバイパス組成物と比較して、改善された反芻胃後消化性を有する。
【0010】
本発明によれば、この課題は、非タンパク質窒素化合物を、飽和脂肪および脂肪酸を含む被覆混合物(この被覆混合物がそれぞれ被覆の総重量に基づいて、60重量%±10%~85重量%±10%の前記飽和脂肪、例えば、水添脂肪と、15重量%±10%~40重量%±10%の前記脂肪酸とを含む)で被覆することにより解決される。
【0011】
この被覆を有するNPN含有組成物は、高いルーメンバイパス分率を与える、すなわち、NPNの大部分が分解されることなく反芻胃を通過することができるだけでなく、NPNの高い消化性を与える、すなわち、大部分のNPNの反芻胃後放出、すなわち、反芻動物の腹腔内および腸内での放出が可能となることが見出された。結果として、本発明に係る被覆組成物は、大部分の非タンパク質窒素化合物が反芻胃後に放出されることを提供する。これにより、反芻動物の成長ならびに乳および羊毛生産の促進がもたらされる。
【0012】
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本発明に係る特定の被覆の高い反芻胃後消化性は、水添脂肪と比較して、腸管の媒体中での脂肪酸のより高い溶解度によると考えられる。さらに、本発明に係る被覆中の脂肪酸の付加的な存在は、反芻胃における分解から保護される非タンパク質窒素化合物の大部分に影響を及ぼさない。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、このさらなる効果は、反芻胃の酸性媒体中での付加的な脂肪酸の低い溶解度によると考えられる。
【0013】
被覆の総重量に基づいて、それぞれ、60重量%±10%~85重量%±10%の飽和脂肪および15重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸を含む被覆を有する製品は、ルーメンバイパスおよび高い反芻胃後消化性の両方を提供することができることが見出された。このような製品により、300g/kg超の尿素の反芻胃後放出がもたらされる。これは、139g/kg超の窒素の反芻胃後放出に等しい。
【0014】
したがって、本発明の一態様は、
i)非タンパク質窒素化合物と、
ii)非タンパク質窒素化合物を取り囲む被覆とを含み、
前記被覆は、飽和脂肪と脂肪酸とを含む混合物の1つ以上の層を含み、前記被覆は、被覆の総重量に基づいて、それぞれ、60重量%±10%~85重量%±10%の飽和脂肪、例えば、水添脂肪と、15重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含む、反芻動物に給餌するための組成物である。
【0015】
好ましくは、本発明に係る組成物の被覆は、65重量%±10%~85重量%±10%の飽和脂肪、例えば、水添脂肪と、15重量%±10%~35重量%±10%の脂肪酸とを含み、この被覆は、60重量%±10%~80重量%±10%の飽和脂肪、例えば、水添脂肪と、20重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含み、この被覆は、65重量%±10%~80重量%±10%の飽和脂肪、例えば、水添脂肪と、35重量%±10%~20重量%±10%の脂肪酸とを含み、この被覆は、70重量%±10%~80重量%±10%の飽和脂肪、例えば、水添脂肪と、20重量%±10%~30重量%±10%の脂肪酸とを含みまたはこの組成物は、75重量%±10%~80重量%±10%の飽和脂肪、例えば、水添脂肪と、25重量%±10%~20重量%±10%の脂肪酸とを含む。
【0016】
本発明の文脈において、「脂肪」という用語は、脂肪酸とアルコールであるグリセロールとから形成されるエステル(グリセリドとしても公知)を指すのに使用される。典型的には、脂肪は、トリグリセリド、すなわち、3つの脂肪酸とグリセロールとから形成されるエステルであり、グリセロールの3つ全てのアルコール基がエステル化される。また、本発明の文脈において、脂肪という用語、特に、飽和脂肪、水添脂肪、飽和植物油および水添植物油という用語は、モノグリセリドおよび/またはジグリセリドも含み、グリセロールの1つまたは2つのアルコール基のみがエステル化される。その組成に関して、脂肪という用語は、当業者に公知であるように、本発明の文脈において使用され、したがって、いずれの場合にも、5%未満、好ましくは、3%以下の遊離脂肪酸、すなわち、エステルの一部ではない脂肪酸を含有する市販の脂肪を指す(この文脈において、Fats and Fatty OiIs, Chapter 6.2 Deacidification, page 32, in Ullmann‘s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, Weinheim, 2015が参照される)。
【0017】
本発明の文脈において、飽和脂肪、例えば、水添脂肪という用語は、脂肪酸鎖が主に単結合を有する脂肪を指すのに使用される。また、飽和脂肪という用語は、水添脂肪も含む。水添脂肪では、脂肪中に以前から存在していたかまたは存在していた可能性のある二重結合の全てまたは大部分が、水素と反応して単結合が形成されている。それらは、水添と呼ばれる。第2の結合が破壊され、結合の各半分が、水素原子に結合している(水素結合により飽和している)ためである。ほとんどの動物性脂肪は、飽和脂肪である。植物および魚類の脂肪は、一般には、不飽和である。このような不飽和脂肪は、部分的または完全に水添されて、それらを水添脂肪に変換することができ、本発明において、これも、飽和脂肪と考えられる。水添植物油は、典型的には、異なる鎖長を有する飽和脂肪酸の混合物のトリグリセリドを含有する。加えて、水添植物油は、モノグリセリドまたはジグリセリドを含有することもできる。さらに、飽和脂肪という用語は、異なる脂肪の混合物、例えば、不飽和脂肪と飽和脂肪の混合物の分留により得られるような飽和脂肪も含む。
【0018】
本発明の文脈において、脂肪酸という用語は、当業者に公知のように使用され、飽和または不飽和のいずれかで、長鎖脂肪族C4~C28脂肪族鎖を有するカルボン酸を指す。前記脂肪酸は、分岐または非分岐であることができるが、好ましくは、非分岐である。
【0019】
本発明の文脈において、非タンパク質窒素、NPN、非タンパク質窒素化合物またはNPN化合物という用語は、タンパク質、ペプチド、アミノ酸またはそれらの混合物ではなく、動物の腸内微生物叢に生物利用可能な窒素を提供する、任意の窒素種を指すのに使用される。動物に対するNPNの例は、尿素である。尿素は、消化中に動物にアンモニア、すなわち、NH3またはアンモニウムイオン、すなわちNH4
+を提供する。このため、放出されたアンモニアまたはアンモニウムイオンは、こぶ胃微生物によりアミノ酸に変換することができる。非タンパク質窒素化合物の他の例は、ビウレット、メチレン尿素、ホルムアミド、アセトアミド、プロピオンアミド、ブチルアミド、ジシアノアミド、エチレン尿素、イソブタノール尿素、ラクトシル尿素、尿酸、リン酸尿素およびアンモニウム塩である。アンモニウム塩の例は、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、クエン酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、フマル酸アンモニウム、乳酸アンモニウム、マレイン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウム、コハク酸アンモニウムおよび硫酸アンモニウムである。
【0020】
本発明の文脈において、重量または重量パーセントもしくは重量%の表示に関する±10%という用語は、明示的に言及された値より10%下から明示的に言及された値より10%上までの全ての重量値を指すのに使用される。この場合、重量の前記示された値は、整数および実数値により表現することができる全ての値を含む。例えば、60重量%±10%という用語は、54重量%~66重量%の全ての整数値および実数値、特に、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65および66重量%を含む。85重量%±10%という用語は、76.5重量%~93.5重量%の全ての整数値および実数値、特に、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92および93重量%を含む。同様に、15重量%±10%という用語は、13.5重量%~16.5重量%の全ての整数値および実数値、特に、14、15および16重量%を含む。40重量%という用語は、36重量%~44重量%の全ての整数値および実数値、特に、36、37、38、39、40、41、42、43および44重量%を含む。例えば、80重量%±10%という用語は、72~88重量%の全ての整数値および実数値、特に、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87および88重量%を含む。20重量%±10%という用語は、18重量%~22重量%の全ての整数値および実数値、特に、18、19、20、21および22重量%を含む。75重量%±10%という用語は、67.5重量%~82.5重量%の全ての整数および実数値、特に、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81および82重量%を含む。25重量%±10%という用語は、22.5重量%~27.5重量%の全ての整数値および実数値、特に、23、24、25、26および27重量%を含む。70重量%±10%という用語は、63重量%~77重量%の全ての整数および実数値、特に、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76および77重量%を含む。30重量%±10%という用語は、27重量%~33重量%の全ての整数および実数値、特に、27、28、29、30、31、32および33重量%を含む。65重量%±10%という用語は、58.5重量%~71.5重量%の全ての整数値および実数値、特に、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70および71重量%を含む。35重量%±10%という用語は、31.5重量%~38.5重量%の全ての整数値および実数値、特に、32、33、34、35、36、37および38重量%を含む。また、重量または重量パーセントの任意の表示は、明示的に言及された値からの(わずかな)逸脱も示す。ただし、同逸脱は、本発明と実質的に同じ効果を依然としてもたらし、これもまた、本発明により包含される。これは、水添脂肪に関して特に関連する。一般的には、水添脂肪である脂肪が天然、合成または分留植物油のいずれであるかに関係なく、様々な品質および組成を有する天然産物であるためである。
【0021】
原則として、本発明は、本発明に係る被覆に含まれる飽和脂肪の数に関していかなる制限も受けない。したがって、前記被覆は、1種以上の飽和脂肪を含むことができる。
【0022】
本発明の文脈において、反芻胃保護製品または反芻胃保護組成物という用語は、反芻胃(rumen)における、例えば、こぶ胃微生物(ruminal microbes)による分解から保護される非タンパク質窒素化合物の割合を指すのに使用される。脂肪は、反芻胃では分解されないため、いわゆる、McDougall法が、前記割合を決定するのに適した方法であると考えられる。
【0023】
McDougall法は、3工程のイン・ビトロ試験であり、反芻胃消化管の3つの異なる区画:反芻胃、皺胃および小腸におけるNPNの放出速度をシミュレーションする。この目的のために、試験は、3工程のインキュベーション手順で行われる:第1の工程において、反芻胃の温度およびpH条件が、McDougallバッファーの使用によりシミュレーションされ、第2の工程において、皺胃の条件が、塩酸およびペプシンの使用によりシミュレーションされ、第3の工程において、小腸の条件が、パンクレアチンおよび8のpHを調節するのに適したバッファーの使用によりシミュレーションされる。新鮮な酵素を連続的に産生する反芻動物含有微生物株の区画とは対照的に、イン・ビトロ試験の3つの工程それぞれにおける媒体は、微生物株を何ら含有せず、特に言及された酵素のみを最初に添加された量で含有する。イン・ビトロ試験は、下記手順に従って実施することができる。それぞれの比率が同じのままであれば、明示的に言及されたものとは異なる量の物質を使用することができる。
【0024】
McDougallバッファーの製造のために、下記物質を10リットルのボトルに秤量する。
【0025】
- NaHCO3 98g(1.17mol)
- Na2HPO4・2H2O 46.3g(0.26mol)
- NaCl 4.7g(0.08mol)
- KCl 5.7g(0.08mol)
- CaCl2・2H2O 0.4g(2.7mmol)
- MgCl2・6H2O 0.6g(3.0mmol)。
【0026】
250mLのMcDougallバッファー溶液を、1000mLのSchottフラスコに充填する。5gの試験物質、すなわち、特定の非タンパク質窒素化合物、例えば、尿素を含む本発明に係る組成物を添加し、フラスコを実験室振とう機(Innova 40、New Brunswick Scientific)中において、39℃で100回転/分で振とうする。6時間後、フラスコ内容物を、注意深くろ別し、50mLの冷水で洗浄し、少量のペプシンを含有する250mLの濃塩酸(pH2)を含有する第2のフラスコに直接移す。39℃で2時間インキュベーションした後、生成物を、再度注意深くろ別し、50mLの環境水で洗浄し、続けて、14.4mgのトリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、56.2mgのNaCl、231mgのホスファチジルコリン、60mgのTriton-X-100、240mgのタウロコール酸Na、300mgのCaCl2×2H2Oおよび120mgのパンクレアチン(≧8 USPリパーゼ単位/mg)を含有する新鮮に製造された溶液を含有する第3のフラスコに移す。24時間振とうした後、生成物をろ別し、再度冷水で洗浄し、40℃で一晩乾燥させる。工程1および3それぞれの後の残留生成物を秤量し、重量減少を、NPNの減少とみなす。代替的にまたは付加的に、測光法、例えば、UV/VisによりNPNの減少を測定することも可能である。
【0027】
反芻胃NPN放出割合の計算を、下記式により行う。
【0028】
反芻胃NPN放出割合=((NPNの初期量[g]-McDougall法の第1の工程後のNPNの残留量[g])/(NPNの初期量[g]))×100%
例:NPNの初期量=5.0g
第1の工程後のNPNの残留量=4.2g
反芻胃NPN放出割合[%]=((5.0g-4.2g)/(5.0g))×100%=16%。
【0029】
反芻胃保護(RP)NPN割合を、下記式を使用して得る。
【0030】
RP(NPN)[%]=100%-反芻胃NPN放出割合[%]
例:反芻胃放出割合=16%
RP(NPN)[%]=100%-16%=84%。
【0031】
本発明の文脈において、消化性という用語は、反すう後に放出されるため、皺胃および小腸において分解に供される非タンパク質窒素化合物の割合を指すのに使用される。これは、例えば、McDougall法において、非タンパク質窒素化合物の完全な量と分解されていない非タンパク質窒素化合物の割合との間の差として容易に計算することができる。
【0032】
本発明の文脈において、総消化性NPN割合[%]という用語は、McDougall法の全ての工程において消化に供されるNPNの初期量[g]のパーセンテージを指すのに使用される。これは、下記式で計算することができる。
【0033】
総消化性NPN割合[%]=((NPNの初期量[g]-McDougall法の第3の工程後のNPNの残留量[g])/(NPNの初期量[g]))×100%
例:NPNの初期量=5.0g
第3の工程後のNPNの残留量=0.5g
総消化性NPN割合[%]=((5.0g-0.5g)/(5.0g))×100%=90%
この総消化性NPN割合[g/kg]を、下記等式を使用することにより計算することができる。
【0034】
総消化性NPN割合[g/kg]=総消化性NPN割合[%]×生成物中のNPNの重量割合[g/kg]。
【0035】
本発明の文脈において、反芻胃後放出(PRR)NPNという用語は、反芻動物の皺胃および小腸において試験組成物から放出されたNPNの割合(g/kg)を指すのに使用される。したがって、反芻胃後放出NPNという用語は、試験組成物から反芻胃後放出NPNの割合(g/kg)である。これは、下記式に従って計算することができる。
【0036】
PRR(NPN)[g/kg]=総消化性NPN割合[g/kg]-(1000-RP(NPN[g/kg]))または
PRR(NPN)[g/kg]=総消化性NPN割合[g/kg]-反芻胃放出NPN割合[g/kg]。
【0037】
総消化性NPN割合[g/kg]は、NPNの初期量[g/kg]とMcDougall法の工程3後のNPNの残留量[g/kg]との間の差を指すのに使用される。反芻胃保護(RP)NPN[g/kg]という用語は、McDougall法の工程1の後のNPNの残留量である。反芻胃放出されたNPN割合[g/kg]は、McDougall法の工程1において放出されたNPNの量である。
【0038】
本発明の文脈において、反芻胃後放出窒素割合という用語は、反芻胃後放出非タンパク質窒素の割合(g/kg)を指すのに使用される。反芻胃後放出NPNという用語とは対照的に、反芻胃後放出窒素割合という用語は、特定のNPNに限定されず、一般的には、全ての種類の窒素源を指す。
【0039】
実験から、組成物が、65重量%±10%~85重量%±10%の飽和脂肪と、15重量%±10%~35重量%±10%の脂肪酸とを含む被覆を有する場合、反芻胃保護NPN割合および総消化性NPN割合ならびに反芻胃後放出NPNおよび反芻胃後放出窒素割合について非常に良好な収率が得られることが示された。このような組成物により、800g/kg超の極めて高い収率の反芻胃後放出尿素を得ることが可能となる。
【0040】
本発明に係る組成物の一実施形態では、被覆は、65重量%±10%~85重量%±10%の飽和脂肪と、15重量%±10%~35重量%±10%の脂肪酸とを含む。
【0041】
本発明に係る被覆により、高い反芻胃保護NPN割合が生じる。また同様に、本発明に係る被覆により、高い総消化性NPN割ももたらされるため、反芻胃後放出窒素についても高い収率がもたらされる。これにより、製品の総重量に基づいて、被覆材料の含有量が比較的低い被覆製品を提供することが可能となる。結果として、本発明に係る被覆により、非タンパク質窒素化合物の非常に高く充填された製品を提供することが可能となる。例えば、組成物の総重量に基づいて、5重量%±10%~25重量%±10%の被覆含量を有する製品を提供可能である。このような製品は、高い反芻胃保護NPN割合および高い総消化性NPN割合を与えるだけでなく、NPN化合物のより高い充填のために、この製品により、反芻胃後放出窒素についての向上した収率も与えられる。
【0042】
一実施形態では、本発明に係る組成物は、組成物の総重量に基づいて、5重量%±10%~25重量%±10%の被覆を含む。
【0043】
好ましくは、本発明に係る組成物は、組成物の総重量に基づいて、10重量%±10%~25重量%±10%の被覆、組成物の総重量に基づいて、10重量%±10%~23重量%±10%の被覆、組成物の総重量に基づいて、10重量%±10%~20重量%±10%の被覆、組成物の総重量に基づいて、10重量%±10%~15重量%±10%の被覆、組成物の総重量に基づいて、12重量%±10%~23重量%±10%の被覆、組成物の総重量に基づいて、12重量%±10%~20重量%±10%の被覆または組成物の総重量に基づいて、15重量%±10%~20重量%±10%の被覆を含む。特に、本発明に係る組成物は、組成物の総重量に基づいて、10重量%±10%、11重量%±10%、12重量%±10%、13重量%±10%、14重量%±10%、15重量%±10%、16重量%±10%、17重量%±10%、18重量%±10%、19重量%±10%、20重量%±10%、21重量%±10%、22重量%±10%または23重量%±10%の被覆を含む。
【0044】
好ましい実施形態では、本発明に係る組成物は、組成物の総重量に基づいて、10重量%±10%~20重量%±10%の被覆を含む。
【0045】
また、飽和脂肪、例えば、水添脂肪の特定の選択は、大量の腸内放出NPNの所望の効果を達成するのに貴重な貢献をする場合がある。適切な飽和脂肪、例えば、水添脂肪の選択的選択により、高い反芻胃保護NPN割合の達成に貢献すると考えられる、完全な被覆を有する生成物がもたらされることが見出された。さらに、可能な限り広い融点またはすなわち、可能な限り広い溶融範囲を有する飽和脂肪、例えば、水添脂肪の使用により、特に、高い反芻胃保護NPN割合を与えるNPN含有生成物の製造が可能となると考えられる。特に、可能な限り広い溶融範囲を有する被覆材料の使用により、NPN含有コアの周りの保護被覆層における欠陥、例えば、クラック、破壊もしくは他の傷を何ら有さないかまたは少なくとも非常に少ない数のこのような欠陥しか有さない組成物の製造が可能となり得る。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、この効果は、広い溶融範囲を有する被覆材料中の異なる融点の成分に基づくことができ、溶融被覆材料の高融点画分は、溶融被覆材料の低融点画分より速く固化すると考えられる。このため、まだ液体または(高度に)粘性の画分により、NPN化合物の製造中に被覆中の欠陥が充填されまたは封止されることができると考えられる。本発明の組成物の製造に適していることができる広い融解範囲を有する物質は、例えば、天然の脂肪または油の部分的または完全に水添された脂肪または油である。この天然の脂肪または油は、異なる飽和度を有する異なる鎖長の飽和、モノ不飽和またはポリ不飽和脂肪酸から構成される。これらは、グリセロールでエステル化されるか、または異なる添加剤、例えば、リン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロール等を含有する。本明細書で教示された被覆のさらなる利点は、本発明に係る組成物に栄養価を付加することである。
【0046】
植物油は、種々の脂肪、中でも、飽和脂肪、モノ不飽和脂肪およびポリ不飽和脂肪の混合物を含有する。例えば、パーム油は、約46%の飽和脂肪、46%のモノ不飽和脂肪および8%のポリ不飽和脂肪を含む。ダイズ油は、約14%の飽和脂肪、24%のモノ不飽和脂肪および62%のポリ不飽和脂肪を含有する。また、さらなる植物油は、異なる脂肪酸、すなわち、異なる鎖長を有する脂肪酸の各種のグリセリドも含有する。例えば、パーム油は、約41%~約46%のパルミチン酸のグリセリド、約37%~約42%のオレイン酸のグリセリド、約8%~約10%のリノール酸のグリセリド、約4%~約7%のステアリン酸のグリセリドおよび約2%以下の他の脂肪酸のグリセリドを含有する。ダイズ油は、約17%~約31%のオレイン酸のグリセリド、約48%~約59%のリノール酸のグリセリド、約2%~約11%のリノレン酸のグリセリドならびに他の脂肪酸のグリセリド、例えば、約2%~約11%のパルミチン酸のグリセリドおよび/または2%~7%のステアリン酸のグリセリドを含有する。本発明の文脈において可能な飽和脂肪または油は、例えば、水添植物油、例えば、パーム油、ダイズ油、ナタネ油、ヒマワリ油もしくはヒマシ油または水添動物脂肪、例えば、牛脂である。本発明の文脈におけるさらなる被覆材料は、天然ワックス、例えば、ミツロウミツバチワックスである。ただし、被覆材料としての水添植物油の使用により、高い反芻胃保護NPN割合を有するNPN含有組成物が提供されることが見出された。
【0047】
本発明に係る組成物の一実施形態では、飽和脂肪は、水添植物油を含むかまたは水添植物油からなる。
【0048】
原則として、本発明に係る組成物は、飽和脂肪、例えば、水添植物油の数に関していかなる制限も受けない。したがって、飽和脂肪は、2種以上の水添脂肪、例えば、水添植物油、例えば、2種、3種またはそれ以上の水添植物油の混合物であることもできる。適切な水添植物油は、水添パーム油、水添ナタネ油および水添ダイズ油を含む。
【0049】
さらに、飽和脂肪が水添脂肪であり、前記水添脂肪が水添パーム油、水添ダイズ油および/または水添ナタネ油である本発明に係る製品により、特に大量の腸放出窒素割合が生じることが見出された。これに関して、これらの製品は、非常に滑らかで、欠陥のない均一な外観を有する被覆を有するように見えることも見出された。これは、水添パーム油、水添ダイズ油および水添ナタネ油に含まれる異なる飽和脂肪酸との種々のグリセリドの広範囲の融点による場合があると考えられる。
【0050】
本発明に係る組成物の一実施形態では、飽和脂肪は、水添パーム油、水添ダイズ油および/または水添ナタネ油を含むか、または水添パーム油、水添ダイズ油および/または水添ナタネ油からなる。
【0051】
特に好ましい水添植物油は、水添パーム油および/または水添ナタネ油である。
【0052】
本発明に係る組成物は、脂肪酸の数に関していかなる制限も受けない。したがって、脂肪酸は、2種以上の脂肪酸の混合物であることもできる。またさらに、本発明に係る製品は、1種以上の脂肪酸の鎖長に関してもいかなる制限も受けない。水添植物油、例えば、パーム油、水添ダイズ油および/またはナタネ油中で最も一般的な脂肪酸は、C14~C22カルボン酸である。
【0053】
本発明に係る組成物の一実施形態では、脂肪酸は、C14~C22カルボン酸を含むかまたはC14~C22カルボン酸からなる。
【0054】
さらに、本発明に係る製品の被覆中における水添植物油のグリセリドの一部である種々の脂肪酸の鎖長と類似またはさらに同一である鎖長を有する脂肪酸が、被覆の品質に利点を有することが見出された。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、これは、水添植物油のグリセリドの一部である種々の脂肪酸の鎖長と類似またはさらに同一である鎖長を有する脂肪酸の良好な混和性による場合があると考えられる。このため、それらは、本発明に係る製品の被覆の滑らかな表面および均一な外観に貢献すると考えられる均質な混合物を与えることができる。特に好ましい水添植物油は、パーム油および/またはダイズ油である。これらの水添植物油中で最も一般的な脂肪酸は、C16~C20カルボン酸である。
【0055】
適切なC16~C20カルボン酸の例は、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸およびベヘン酸である。
【0056】
好ましくは、脂肪酸は、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸および/またはベヘン酸を含むか、またはパルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸および/またはベヘン酸からなる。
【0057】
本発明によれば、本発明に係る製品の被覆に含まれる飽和脂肪は、水添脂肪、例えば、水添植物油であることができる。したがって、脂肪と脂肪酸との混合をさらに促進するために、被覆中の脂肪酸も水添または飽和されることが好ましい。
【0058】
本発明に係る組成物の一実施形態では、脂肪酸は、飽和脂肪酸を含むかまたは飽和脂肪酸からなる。
【0059】
水添植物油のグリセリド中に存在する脂肪酸は、水添パーム油および/またはナタネ油と非常によく混和性であると考えられており、パルミチン酸、オレイン酸および/またはステアリン酸である。場合により、これらの脂肪酸は、水添植物油との混和性を変化させない限り、例えば、アルキル基により置換されていることができる。
【0060】
本発明に係る組成物の一実施形態では、脂肪酸は、場合により置換されているパルミチン酸、オレイン酸および/またはステアリン酸を含むか、または場合により置換されているパルミチン酸、オレイン酸および/またはステアリン酸からなる。
【0061】
好ましい実施形態では、脂肪酸は、ステアリン酸である。
【0062】
本発明に係る製品における被覆は、層の数に関していかなる制限も受けない。製品の製造中に被覆に形成される欠陥、例えば、クラックおよび細孔を防止しまたは隠すために、本明細書で教示されたように、被覆の2つ以上、例えば、2つ、3つまたは複数の層を適用するのが好ましい。加えて、それらのさらなる取り扱いの間の本発明に係る製品への機械的衝撃により、外層における微小亀裂またはクラックがもたらされる場合がある。しかしながら、2つ以上の層の重複により、反芻胃における本発明に係る製品の滞留の間のNPNの潜在的な漏れを回避することができる。このため、本発明に係る製品の被覆中に2つ以上の層が存在することも、反芻胃保護NPN割合の高い収率に貢献することができる。好ましくは、被覆の2つ以上の層はそれぞれ、2つ以上の層を含む被覆自体が本発明に係る該量の飽和脂肪、例えば、水添脂肪および脂肪酸を含む限り、異なる組成を有する。これにより、反芻胃および腸管における異なる条件に関して、被覆の外層および内層を最適化することが可能となり得る。
【0063】
本発明に係る組成物の一実施形態では、被覆は、少なくとも2つの層を含み、層の各層は、異なる組成の被覆混合物を有する。
【0064】
非タンパク質窒素化合物を取り囲む被覆の第1の層または最も内側の層が第1の層または任意の他の追加の層、すなわち、先行層または後続層を取り囲む第2の層または任意のさらなる層より多量の脂肪酸を含む、被覆を有する製品により、反芻胃保護NPN割合および総消化性NPN割合ならびに反芻胃後放出尿素またはNPNの両方において非常に高い収率が提供されることが見出された。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、この効果は、異なる反芻胃、すなわち、反芻胃の内側または反芻胃後、すなわち、反芻胃の後の脂肪酸の溶解度によると考えられる。脂肪酸の溶解度は、反芻胃の酸性媒体より反芻胃後のアルカリ性媒体において高いと考えられる。
【0065】
したがって、本発明に係る組成物の一実施形態では、非タンパク質窒素化合物を取り囲む被覆の第1の層は、第1の層または任意の追加の層、例えば、先行層または後続層を取り囲む被覆の第2の層または任意のさらなる層より多量の脂肪酸を有する。
【0066】
本発明の文脈において、被覆の第1の層という用語は、非タンパク質窒素化合物を直接取り囲むため、最も内側の層を表す層を指すのに使用される。したがって、被覆の第2の層という用語は、第1の層を取り囲む層を指すのに使用される。被覆の任意のさらなる層という用語は、前記第2の層または任意の他の追加の層、すなわち、先行層または後続層を取り囲む層を指すのに使用される。
【0067】
具体的には、第1の層または最も内側の層が前記層の重量に基づいて、60重量%±10%~90重量%±10%の飽和脂肪と、10重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含み、第2の層または任意のさらなる層が前記層の重量に基づいて、60重量%±10%~99重量%±10%の飽和脂肪と、1重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含む、2つ以上の層を有する本発明に係る組成物により、反芻胃保護NPN割合および総消化性NPN割合ならびに反芻胃後放出NPNの両方において非常に高い収率が提供されることが見出された。前述のような被覆を有する組成物により、400g/kg超の尿素の反芻胃後放出がもたらされる。これは、185g/kg超の窒素の反芻胃後放出に等しい。
【0068】
本発明に係る組成物の一実施形態では、第1の層は、第1の層の重量に基づいて、60重量%±10%~90重量%±10%の飽和脂肪と、10重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含み、第2の層または任意のさらなる層は、第2の層の重量に基づいて、60重量%±10%~99重量%-10%の飽和脂肪と、1重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含む。
【0069】
好ましくは、本発明に係る組成物は、組成物の総重量に基づいて、4~15重量%または5~15重量%の第1の層を含み、第1の層の重量に基づいて、60重量%±10%~90重量%±10%の飽和脂肪と、10重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含み、組成物の総重量に基づいて、1~10重量%または1~6重量%の第2の層を含み、第2の層の重量に基づいて、60重量%±10%~99重量%-10%の飽和脂肪と、1重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含む。
【0070】
第1の層または最も内側の層が第1の層の重量に基づいて、60重量%±10%~70重量%±10%の飽和脂肪と、30重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含み、第2の層が第2の層の重量に基づいて、75重量%±10%~90重量%±10%の飽和脂肪と、10重量%±10%~25重量%±10%の脂肪酸とを含む、2つ以上の層を有する本発明に係る組成物について、さらなる改善が達成される。前述のような被覆を有する組成物により、700g/kg超の尿素の反芻胃後放出がもたらされる。これは、300g/kg超の窒素の反芻胃後放出に等しい。
【0071】
本発明に係る組成物のさらなる実施形態では、第1の層は、第1の層の重量に基づいて、60重量%±10%~70重量%±10%の飽和脂肪と、30重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含み、第2の層は、第2の層の重量に基づいて、75重量%±10%~90重量%±10%の飽和脂肪と、10重量%±10%~25重量%±10%の脂肪酸とを含む。
【0072】
好ましくは、本発明に係る組成物は、組成物の総重量に基づいて、4~10重量%または5~10重量%の第1の層(ここで、第1の層の重量に基づいて、60重量%±10%~70重量%±10%の飽和脂肪と、30重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含む)と、組成物の総重量に基づいて、1~6重量%または1~5重量%の第2の層(ここで、第2の層の重量に基づいて、75重量%±10%~90重量%±10%の飽和脂肪と、10重量%±10%~25重量%±10%の脂肪酸とを含む)とを含む。
【0073】
本発明に係る組成物のさらに別の実施形態では、非タンパク質窒素化合物を取り囲む第1の層は、第1の層または任意の追加の層、例えば、先行層または後続層を取り囲む第2の層または任意のさらなる層より多量の被覆混合物を有する。
【0074】
本発明の理解によれば、非タンパク質窒素(NPN)化合物は、タンパク質、ペプチド、アミノ酸またはそれらの混合物ではなく、動物の腸内微生物叢に生体利用可能な窒素を提供する、任意の窒素種である。可能な限り多くの窒素原子を有する低分子化合物が、動物に何ら有害な影響も及ぼさない限り、好ましいNPN化合物である。
【0075】
一実施形態では、本発明に係る組成物のNPNは、尿素および/またはその塩、尿素および/またはその塩の誘導体、アンモニウム(NH4
+)塩、ビウレット、ホルムアミド、アセトアミド、プロピオンアミド、ブチルアミドおよびジシアノアミドからなる群から選択される1種以上の化合物である。
【0076】
尿素の適切な誘導体は、エチレン尿素、イソブタノール尿素、ラクトシル尿素および尿酸である。尿素の適切な塩は、例えば、リン酸尿素である。
【0077】
NPN化合物は、本発明に係る製品中の混合物またはコアの一部として、実質的に純粋な化合物または純粋な化合物のいずれかとして存在することができる。NPN化合物が、実質的に純粋な化合物または純粋な化合物として存在しない場合、NPN含有コアまたは混合物は、可能な限り多くのNPN化合物、特に、少なくとも90重量%のNPN化合物、例えば、尿素を含有するのが好ましい。好ましくは、NPN含有コアまたは混合物は、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99またはさらに100重量%のNPN化合物を含む。最も単純な場合、本発明に係る生成物を提供するために被覆される粒子は、NPN化合物自体、例えば、尿素である。前記NPN化合物は、顆粒もしくはプリル、すなわち、NPN化合物、例えば、尿素の球状粒子の形態で使用することができまたはさらに、1種以上の賦形剤、例えば、結合剤、不活性成分および顆粒化またはプリル化NPN化合物、例えば、尿素のペレットの配合を共に促進する流動制御物質を含むマトリックス化合物を含むことができる。ついで、このようにして提供された顆粒化またはプリル化NPN化合物を、本明細書に教示された被覆で被覆して、本発明に係る製品を得ることができる。好ましくは、NPN化合物を含むコアまたは混合物は、プリル化NPN化合物である。
【0078】
本発明に係る特定の被覆混合物に加えて、非タンパク質窒素化合物の選択も、反芻胃後に放出される非タンパク質窒素割合に影響を及ぼす場合がある。したがって、前記化合物の総重量に基づいて、可能な限り多くの窒素原子を含有する非タンパク質窒素化合物を選択するのが有益である。化学式C=O(-NH2)2を有する尿素が、特に好ましい非タンパク質窒素化合物である。この低分子化合物は、2個の窒素原子を含有するため、かなり高窒素濃度を有するためである。また、アンモニウム塩は、特に好ましい非タンパク質窒素化合物である。それらは、かなり高窒素密度のためである。
【0079】
したがって、一実施形態では、本発明に係る組成物のNPNは、尿素および/またはアンモニウム塩である。
【0080】
好ましいアンモニウム塩は、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、クエン酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、フマル酸アンモニウム、乳酸アンモニウム、マレイン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウム、コハク酸アンモニウムおよび硫酸アンモニウムを含む。
【0081】
NPN化合物またはその少なくとも90重量%を含む粒子上に適用される被覆層の数に応じて、本明細書で教示されたNPN含有顆粒またはプリルの粒径は、最終製品の所与または所望の粒径を得るために変化し得ることが理解される。本発明に係る組成物のサイズは、摂取時に反芻動物により逆流されまたは嘔吐されるようなものであるのが好ましい。
【0082】
本発明に係る組成物の好ましい平均粒径は、約1mm~約6mm、約1.2mm~約5mm、約1.2mm~約4mm、約1.4mm~約3mm、約1.2mm~約2.8mm、約1.4mm~約2.6mm、約1.6mm~約2.4mm、約1.8mm~約2.2mmの範囲または約2mmの範囲内にある。
【0083】
本発明に係る組成物は、摂取時の反芻動物による逆流または嘔吐の機会を減少させるために、少なくとも2mmの平均粒子サイズを有するのが特に好ましい。
【0084】
本発明に係る製品を製造する場合、本明細書で教示された被覆に1種以上の追加成分を添加するのが有利であることができる。このような成分の代表的な非限定的な例は、レシチン、ワックス(例えば、カルナウバワックス、ミツロウ、天然ワックス、合成ワックス、パラフィンワックスなど)、脂肪酸エステル、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物、リン酸水素カルシウム二水和物、ピロリン酸二水素カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム水和物、リン酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マンガン、酸化亜鉛、炭酸水素ナトリウムおよび酸化第二鉄ならびにそれらの混合物等を含む。1種以上のこのような成分の添加は、NPNの反芻胃保護割合ならびに/またはNPN化合物および/もしくはその誘導体の、皺胃および下腸(lower intestine)における放出および/もしくは消化および/もしくは分解をさらに向上させるのに有益であることができる。当業者であれば、この目的を達成するために、適切な成分をどのように選択するかを知っている。好ましくは、1種以上の追加成分が、本発明に係る組成物の被覆上に単に散布されるかまたは言い換えれば、本発明に係る組成物の被覆は、好ましくは、1種以上の追加成分で覆われる。追加成分により、全ての関連する態様に関して、特に、尿素の反芻胃後放出速度に関して、本発明に係る組成物のさらなる改善をもたらすことができる。特に、2層被覆を有する本発明に係る組成物は、追加成分で被覆されることにより利益を得ることができることが見出された。好ましくは、2層被覆を有する本発明に係る組成物は、炭酸カルシウムで被覆される。追加成分の量は、組成物の総重量の0.1重量%~2重量%、好ましくは、0.5重量%~1.5重量%の範囲にある。
【0085】
代替的には、本発明に係る製品を製造する場合、他の成分、例えば、結合物質(例えば、セルロース誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ビニル誘導体、例えば、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドン、アラビアゴム、グアーゴム、ポリアクリル酸ナトリウム等)、充填物質(例えば、デンプン、タンパク質、結晶性セルロース等)、不活性成分(例えば、シリカおよびシリケート化合物)、ペレットの形成を助ける流動性制御物質(小麦粉、ビートパルプ等)、保存剤(プロピオン酸またはその塩、ソルビン酸またはその塩、安息香酸またはその塩、デヒドロ酢酸またはその塩、パラヒドロキシ安息香酸エステル、イマザリル、チアベンダゾール、オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールナトリウム、ジフェニルおよび他の化合物ならびにこれらの混合物)、抗菌剤ならびに他の化合物から選択される1種以上の成分を添加することも有利である場合がある。当業者は、これらの目的を達成するのに有用であり、本発明に係る製品の製造に適合する技術および化合物に精通している。
【0086】
本明細書で教示された組成物にさらなる飼料成分(例えば、栄養成分、獣医学剤または医薬品等)または他の成分を添加することにより、本発明に係る製品の栄養価および/または治療価値をさらに高めることも有利であることができる。
【0087】
例えば、穀物製品、植物製品、動物製品、タンパク質(例えば、乾燥血液または肉粉、肉および骨粉、綿実粉、ダイズ粉、ナタネ粉、ヒマワリ種子粉、カノーラ粉、サフラワー粉、脱水アルファルファ、トウモロコシグルテン粉、ダイズタンパク質濃縮物、ジャガイモタンパク質、乾燥および滅菌された動物および家禽肥料、魚粉、魚および家禽タンパク質分離物、カニタンパク質濃縮物、加水分解タンパク質、フェザーミール、家禽副産物粉、液体または粉末卵、乳清、卵アルブミン、カゼイン、フィッシュソルブル、セルクリーム(cell cream)、ビール残渣等の供給源から得られるようなタンパク質成分)、ミネラル塩、ビタミン(例えば、チアミンHCl、リボフラビン、ピリドキシンHCl、ナイアシン、イノシトール、塩化コリン、パントテン酸カルシウム、ビオチン、葉酸、アスコルビン酸、ビタミンB12、p-アミノ安息香酸、ビタミンAアセテート、ビタミンK、ビタミンD、ビタミンE等)、糖類および複雑な炭水化物(例えば、水溶性および水不溶性単糖類、二糖類および多糖類)、獣医学的化合物(例えば、プロマジン塩酸塩、クロロメドニエート、アセテート、クロロテトラサイクリン、スルファメタジン、モネンシン、ナトリウムモネンシン、ポロキサリン、オキシテトラサイクリン、BOVATEC等)、酸化防止剤(例えば、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、第三級ブチルヒドロキノン、トコフェロール、プロピルガレートおよびエトキシキン)、微量元素成分(例えば、コバルト、銅、マンガン、鉄、亜鉛、スズ、ニッケル、クロム、モリブデン、ヨウ素、塩素、ケイ素、バナジウム、セレン、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムおよびカリウム等の化合物)ならびに他の化合物または成分から選択される1種以上の成分を、本発明に係る製品に添加することができる。
【0088】
当業者は、反芻動物飼料、飼料材料、プレミックス、飼料添加剤および飼料サプリメントの栄養的および/もしくは治療的または医薬的価値を高めるのに適した方法および成分に精通しており、本発明に係る製品の栄養的および/もしくは治療的または医薬的価値を高める方法を知っている。
【0089】
加えてまたは代替として、本発明に係る製品を、反芻動物に給餌するための飼料、飼料材料またはプレミックスと組み合わせることも可能である。本発明の文脈において、プレミックスまたは栄養プレミックスという用語は、当業者に公知であるように使用され、1種以上の成分、例えば、ビタミン、微量ミネラル、薬剤、飼料サプリメントおよび希釈剤を含む混合物を指す。プレミックスの使用は、自身の穀物を使用する農家が自身の飼料を配合することができ、自身の動物が推奨されるレベルのミネラルおよびビタミンを確実に得られるという利点を有する。
【0090】
したがって、本発明の別の目的は、本発明に係る組成物を含む、反芻動物に給餌するための飼料、飼料材料、飼料添加剤またはプレミックスである。
【0091】
好ましくは、プレミックスは、さらに、ビタミン、微量ミネラル、飼料サプリメント、希釈剤および/または薬剤、例えば、抗生物質、プロバイオティクスおよび/またはプレバイオティクスを含む。
【0092】
原則として、本明細書で教示された被覆のNPNの周囲またはNPN含有コア、混合物または粒子の周囲への適用は、当技術分野において公知の任意の適切な方法に従って行うことができる。ただし、NPN化合物に被覆を提供する最良の方法は、ドラム被覆であることが見出された。
【0093】
可能な限り広い融点、言い換えれば、可能な限り広い溶融範囲を有するルーメンバイパス剤または被覆材料の使用は、NPN含有コアの周囲の保護被覆層における欠陥、例えば、クラック、破壊もしくは他の傷を何ら有さないかまたは少なくとも非常に少ない数のこのような欠陥しか有さない組成物の製造が可能となり得るため、有利であることが見出された。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、この効果は、広い溶融範囲を有する被覆材料中の成分の異なる融点に基づくと考えられる。溶融被覆材料の高融点画分は、溶融被覆材料の低融点画分より速く固化することができる。このため、溶融被覆材料の低融点画分は、NPN含有粒子に適用された後、特定の期間、依然として流動性であるかまたは少なくとも粘性であると考えられる。したがって、クラック、破壊または破損により被覆層に起こり得る損傷は、被覆プロセスの間に、被覆材料の依然として液体の低融点画分により直ちに充填され、閉鎖されることができる。以下、この効果は、封止または自己修復とも呼ばれる。
【0094】
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、被覆層中の欠陥の前述の自己修復、すなわち、クラック、破壊または破損による被覆層中の損傷の充填および閉鎖を達成するために、粒子の移動層中の粒子上に存在する、ルーメンバイパス剤または被覆材料の依然として液体または(高度に)粘性の画分は、好ましくは、粒子の直接接触を介して、1つの粒子から他の粒子に直接移動すると考えられる。粒子の直接接触は、例えば、回転ドラムコータで起こるような、粒子層中の粒子の連続移動により達成することができる。回転ドラムコータにおいて、粒子は、連続的に移動し、結果として、粒子は、常に、多くの他の粒子と直接的または少なくとも密接に接触する。結果として、粒子、例えば、尿素プリルの表面上に局所的に生じる場合がある、過剰量の被覆混合物または被覆材料の液体または(高度に)粘性の画分が、粒子間の強力な接触およびこの接触により引き起こされる、1つの粒子から、その表面上により少ない被覆を有する別の粒子への接着力により移動することができる。この移動、粒子相互間の直接接触および粒子の永久的な移動により、被覆層における欠陥の閉鎖および封止がもたらされると考えられる。さらに、粒子の永久的な回転により、粒子、例えば、尿素プリル上の被覆の表面上の不規則性が除去され、液体または(高度に)粘性の被覆材料による前記被覆における孔の充填および安定した閉鎖がもたらされると考えられる。
【0095】
本明細書で使用する場合、「ドラム被覆」という用語は、「ドラム混合」とは対照的に、被覆される粒子が移動または回転ドラムに充填される、混合技術を指す。したがって、「ドラム混合」とは対照的に、ドラム自体により、被覆材料、すなわち、ルーメンバイパス剤で被覆される粒子の混合が提供される。
【0096】
本明細書で使用する場合、「ドラム混合」という用語は、被覆される粒子が固定された、すなわち、移動していないまたは回転していないドラムに充填され、ドラムの内部に、被覆材料、すなわち、ルーメンバイパス剤で被覆される粒子の混合を達成する、移動混合装置、例えば、回転ブレードが備わっている、混合技法を指す。
【0097】
本明細書で教示された組成物の製造のためにドラム被覆を使用することのさらなる利点は、溶融被覆材料の供給流および任意の冷却ガスの連続的な調節により、供給熱量および排出熱量を制御することによって、粒子層の有効温度を可能な限り正確に調節することが可能となることである。温度レベルは、添加される溶融被覆材料の質量流を増加させることによりまたは限定的には、供給される冷却ガスの温度を向上させることにより上昇させることができる。温度レベルは、添加される溶融被覆材料の質量流を減少させることによりまたは冷却ガスの温度を低下させることにより低下させることができる。また、粒子層の有効温度は、特に、被覆法の開始時のNPN、例えば、尿素プリルの予備加熱温度によっても決まる。また、被覆プロセスにおける温度の非常に効率的な制御により、特に、広い溶融範囲を有する被覆材料が使用される場合に、粒子の被覆表面の自己修復も支持される場合がある。ドラム被覆における効率的な温度により、最初に高い融点を有する被覆材料の成分が特に固化し、ついで、より低い融点を有する被覆材料の成分が段階的に固化することが可能となると考えられる。被覆材料の低融点画分は、高融点画分がちょうど固化した時点では、依然として液体または(高度に)粘性であると考えられ、したがって、前記低融点画分により、本明細書で教示された組成物の被覆層の破断部および孔を充填し、封止することができる。
【0098】
したがって、本発明の別の態様は、
a)非タンパク質窒素化合物を含有するかまたはこれからなる粒子を、ドラムコータに提供する工程と、
b)混合物の総重量に基づいて、それぞれ、60重量%±10%~85重量%±10%の飽和脂肪および15重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸を含む混合物を、ドラムコータの外側のリザーバに提供する工程と、
c)工程a)の粒子を、工程b)の混合物の融点の下限より20℃低い温度から工程b)の混合物の融点の上限の範囲の温度に加熱する工程と、
d)工程b)の混合物を、その融点の上限からその融点の上限より20℃高い温度の範囲の温度に加熱する工程と、
e)工程d)の加熱された混合物を、回転しているドラムコータ中の工程c)の粒子上に適用する工程と、
f)工程e)で得られた粒子層の温度を、工程b)の混合物の融点の下限より20℃低い温度から工程b)の混合物の融点の下限の範囲の温度で維持する工程と、
g)工程f)で得られた組成物を冷却するかまたは工程f)で得られた組成物を冷却させる工程とを含み、
製造する組成物が、少なくとも2つ以上の層を有する場合、工程c)~f)またはc)~g)を、工程f)またはg)から得られた組成物について繰り返す、本発明に係る組成物の製造方法である。
【0099】
本発明に係る方法の工程e)において、加熱された混合物を、好ましくは、ドロップランスにより粒子上に適用する。これは、加熱された混合物を粒子層の中央に定期的に適用することができ、さらに、粒子層全体にわたる加熱された混合物の非常に均質な分布をかなり素早く達成することが可能となるという利点を有する。
【0100】
工程c)、d)およびf)における特定の温度を、温度を測定するための任意の適切な手段、例えば、温度計または熱画像カメラにより測定することができる。温度計または熱画像カメラにより温度を測定するために、温度計または熱画像カメラを、工程a)およびc)の粒子層、工程b)およびd)の混合物ならびに工程d)の混合物が適用される工程e)およびf)の粒子層に向けることができる。いずれの場合にも、温度計または熱画像カメラを、ドロップランスを介して導入される被覆混合物からの温度の影響を最小限にするかまたは回避するために、適切に、例えば、ドロップランスから十分遠くに配置することができる。
【0101】
本発明の文脈において、融点の下限という用語は、混合物、すなわち、被覆混合物が溶融し始める温度、すなわち、軟化し始める温度を指すのに使用される。融点の上限という用語は、本発明の文脈において、混合物、すなわち、被覆混合物が完全に溶融する温度を指すのに使用される。混合物、すなわち、被覆混合物の融点の下限および融点の上限は、混合物、すなわち、被覆混合物の融解範囲を規定する。
【0102】
被覆混合物の固有の融点は、被覆混合物の個々の組成、具体的には、1種以上の個々の飽和脂肪、例えば、水添脂肪の選択およびその量ならびに1種以上の個々の脂肪酸およびその量により決まる。融点、すなわち、融点の下限および上限の決定は、当業者の日常的な技能の範囲内である。例えば、融点、すなわち、融点の下限および上限の決定は、1gの微粉化された被覆混合物を、融点装置、例えば、Kofler(Wagner & Munz)による融点装置に適用することにより行うことができる。公知の融点を有する参照材料を、指標として使用することができる。融点の下限は、混合物、すなわち、被覆混合物が溶融し始める、すなわち、軟化し始める温度として決定される。融点の上限は、混合物、すなわち、被覆混合物が完全に溶融する温度として決定される。
【0103】
以下の表1に、本発明に係るいくつかの被覆混合物および本発明に係るものではない被覆混合物の組成ならびにそれらの対応する融点の下限および上限をまとめる。
【0104】
【表1】
表1:被覆組成およびそれらの対応する融点の下限および上限
(HRO=水添ナタネ油、HPO=水添パーム油、SA=ステアリン酸)。
【0105】
本発明に係る製造方法の実施形態では、工程b)および/またはd)の混合物は、混合物の総重量に基づいて、それぞれ、65重量%±10%~85重量%±10%の飽和脂肪と、15重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含む。
【0106】
一実施形態では、本発明に係る製造方法の工程b)および/または工程d)における混合物の量は、製造される組成物の総重量の5重量%±10%~30重量%±10%、10%重量±10%~30重量%±10%、15重量%±10%~30重量%±10%または20重量%±10%~30重量%±10%の範囲にある。例えば、工程b)および/または工程d)の混合物の量が、製造される組成物の総重量の5重量%±10%~30重量%±10%の範囲にある場合、工程b)および/または工程d)の混合物に対する被覆される粒子の重量比は、70:30~95:5である。例えば、工程b)および/または工程d)の混合物の量が、製造される組成物の総重量の10重量%±10%~30重量%±10%の範囲にある場合、工程b)および/または工程d)の混合物に対する被覆される粒子の重量比は、70:30~90:10である。例えば、工程b)および/または工程d)の混合物の量が、製造される組成物の総重量の15重量%±10%~30重量%±10%の範囲にある場合、工程b)および/または工程d)の混合物に対する被覆される粒子の重量比は、70:30~85:15である。例えば、工程b)および/または工程d)の混合物の量が、製造される組成物の総重量の20重量%±10%~30重量%±10%の範囲にある場合、工程b)および/または工程d)の混合物に対する被覆される粒子の重量比は、70:30~80:20である。
【0107】
原則として、本発明に係る製造方法は、工程b)および/またはd)の混合物に含まれる飽和脂肪の数に関していかなる制限も受けない。したがって、前記混合物は、1種以上の飽和脂肪を含むことができる。同様に、本発明に係る製造方法は、工程b)および/またはd)の混合物に含まれる脂肪酸の数に関していかなる制限も受けない。したがって、前記混合物は、1種以上の脂肪酸を含むことができる。
【0108】
好ましくは、飽和脂肪は、水添脂肪を含むかまたは水添脂肪からなる。
【0109】
本発明に係る製造方法の実施形態では、飽和脂肪は、水添植物油を含むかまたは水添植物油からなる。
【0110】
本発明に係る製造方法の好ましい実施形態では、飽和脂肪は、水添パーム油、水添ダイズ油および/または水添ナタネ油を含むかまたは水添パーム油、水添ダイズ油および/または水添ナタネ油からなる。
【0111】
本発明に係る製造方法のさらなる実施の形態では、脂肪酸は、C14~C22カルボン酸、好ましくは、C16~C20カルボン酸を含むか、またはC14~C22カルボン酸、好ましくは、C16~C20カルボン酸からなる。好ましくは、脂肪酸は、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸および/またはベヘン酸を含むか、またはパルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸および/またはベヘン酸からなる。特に、脂肪酸は、場合により置換されているパルミチン酸、オレイン酸および/またはステアリン酸を含むか、または場合により置換されているパルミチン酸、オレイン酸および/またはステアリン酸からなる。
【0112】
本発明に係る製造方法のさらなる実施形態では、脂肪酸は、飽和脂肪酸を含むかまたは飽和脂肪酸からなる。
【0113】
好ましくは、脂肪酸は、ステアリン酸である。
【0114】
本発明に係る製造方法の一実施形態では、製造される組成物は、少なくとも2つの層を有する。すなわち、前記製造方法の工程c)~f)またはc)~g)を、工程f)またはg)から得られる生成物について繰り返す。
【0115】
本発明に係る製造方法の好ましい実施形態では、粒子を取り囲む第1の層を製造するための工程b)および/またはd)の混合物は、(すなわち、工程c)~f)またはc)~g)の1回目の実行における)第1の層または任意の追加の層、例えば、先行層または後続層を取り囲む(すなわち、工程c)~f)またはc)~g)の2回目の実行または任意のさらなる実行における)第2の層または任意のさらなる層より多い。
【0116】
本発明に係る製造方法の好ましい実施形態では、(すなわち、工程c)~f)またはc)~g)の1回目の実行における)粒子を取り囲む第1の層を製造するための混合物は、製造される第1の層の重量に基づいて、60重量%±10%~90重量%±10%の飽和脂肪と、10重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含み、(すなわち、工程c)~f)またはc)~g)の2回目または任意のさらなる実行における)第2の層または任意のさらなる層を製造するための混合物は、製造される第2の層の重量に基づいて、60重量%±10%~99重量%-10%の飽和脂肪と、1重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含む。
【0117】
好ましくは、第1の層の重量に基づいて、60重量%±10%~90重量%±10%の飽和脂肪と、10重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含む第1の層のための混合物の量は、製造される組成物に基づいて、4~15重量%または5~15重量%の範囲にある。第2の層または任意のさらなる層の重量に基づいて、60重量%±10%~99重量%-10%の飽和脂肪と、1重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含む第2の層または任意のさらなる層のための混合物の量は、製造される組成物に基づいて、1~10重量%または1~6重量%の範囲にある。
【0118】
本発明に係る製造方法のさらに好ましい実施形態では、(すなわち、工程c)~f)またはc)~g)の1回目の実行における)粒子を取り囲む第1の層を製造するための混合物は、製造される第1の層の重量に基づいて、60重量%±10%~70重量%±10%の飽和脂肪と、30重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含み、(すなわち、工程c)~f)またはc)~g)の2回目または任意のさらなる実行における)第2の層または任意のさらなる層を製造するための混合物は、製造される第2の層の重量に基づいて、75重量%±10%~90重量%-10%の飽和脂肪と、10重量%±10%~25重量%±10%の脂肪酸とを含む。
【0119】
好ましくは、第1の層の重量に基づいて、60重量%±10%~70重量%±10%の飽和脂肪と、30重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含む第1の層のための混合物の量は、製造される組成物に基づいて、4~10重量%または5~10重量%の範囲にある。第2の層または任意のさらなる層の重量に基づいて、75重量%±10%~90重量%-10%の飽和脂肪と、10重量%±10%~25重量%±10%の脂肪酸とを含む第2の層または任意のさらなる層のための混合物の量は、製造される組成物に基づいて、1~6重量%または1~5重量%の範囲にある。
【0120】
本発明に係る製造方法のさらに別の実施形態では、工程c)~f)またはc)~g)の1回目の実行における混合物の量は、工程c)~f)またはc)~g)の2回目または任意のさらなる実行におけるより多い。
【0121】
本発明に係る製造方法のさらなる実施形態では、非タンパク質窒素化合物は、尿素および/またはその塩、尿素および/またはその塩の誘導体、アンモニウム(NH4
+)塩、ビウレット、ホルムアミド、アセトアミド、プロピオンアミド、ブチルアミド、およびジシアノアミドからなる群から選択される1種以上の化合物である。
【0122】
さらに、NPN化合物の改善された反芻胃保護割合およびその改善された消化性をもたらすことを可能にする、本明細書で教示された組成物を、反芻動物に投与することにより、上記された特徴を有さないNPN含有組成物(例えば、非保護または非被覆尿素および/または遅延、持続反芻胃放出NPN組成物)により投与された反芻動物と比較して、1)飼料摂取の増加または改善、2)繊維消化性の向上または改善、3)体成長の向上または改善、4)乳生産の増加または改善、5)尿中の窒素排泄の減少、6)反芻胃pH安定性の改善および7)前記反芻動物におけるアンモニア毒性の予防または低下を含む、各種有利な効果がもたらされることが見出された。
【0123】
いかなる理論にも拘束されるものではないが、上記言及された利点は、反芻動物が体系的に窒素を反芻胃に再循環させる内因性または本来の能力と併せて、本明細書で教示されたNPN含有組成物によりもたらされる、皺胃および消化系の後続部分中でのアンモニア放出およびアンモニアの吸収のパターンの結果として達成されると考えられる。
【0124】
反芻胃から反芻動物の消化管下部への物質の放出は、反芻胃-細網と皺胃との間の消化物および液体の通過速度のため、非常に遅い対数パターンに従う。したがって、反芻胃内容物の少量の画分は、毎時反芻胃を離れ、反芻胃にもたらされる任意の反芻胃抵抗性化合物の反芻胃後供給をゆっくりと減少させる。
【0125】
本明細書で教示されたNPN含有組成物の場合、その効果は、反芻動物の血流への小さいが安定したNPN供給であり、反芻動物の身体により効率的に取り扱うことができる。NPNの一部は、窒素循環により反芻胃に再び入ることができる。ここで、窒素は、こぶ胃微生物によりタンパク質産生に利用される。結果として、実質的なアンモニアNPNピークは、反芻胃中にも、血液中にも経時的に生じないため、窒素利用の効力を向上させ(すなわち、反芻胃中の微生物は、タンパク質を産生するために供給される実質的に全ての窒素を使用する)かつ窒素排泄を減少させる(すなわち、これは、窒素利用および消化性の向上の指標として役立つ)。
【0126】
反芻動物は、反芻胃に窒素を体系的に再循環させる本来の能力を有するため、少量の窒素の定常流は、本明細書で教示されたNPN含有組成物での1回の給餌イベントの結果として、1日中(すなわち、24時間の期間)、常に、1時間当たりに反芻胃に到達する。このようにして、反芻胃中の微生物は、NPNの過負荷にさらされることなく、リアルタイムで実質的に全ての窒素をより多くのアミノ酸に変換することができる(すなわち、実質的に全てのNPNが、窒素の実質的な排泄または血流への窒素の溢出なしに、経時的に微生物により利用されることを意味する)。その結果、NPNは、より効率的に使用され、NPNの減少がより少ない。
【0127】
全体として、これは、反芻動物、特に、窒素が炭水化物消化を制限する食餌を与えられる反芻動物、例えば、厳しい環境条件下に保持されるかまたは栄養品質の低い草に曝露されるかもしくは給餌される反芻動物の発酵機能を増強しまたは改善する。次に、反芻胃における繊維消化性および食物摂取が増加し、反芻胃におけるpH安定性が促進され、尿中の窒素排泄が減少し(すなわち、窒素利用効率が向上することを意味する)、タンパク質産生が向上する。このタンパク質は、乳産生、羊毛産生、体成長および他の生物学的プロセスのために反芻動物に直接利用可能である。
【0128】
また、本発明に係るNPN含有組成物は、伝統的なNPN組成物(例えば、反芻胃における即時放出NPN組成物または遅延および/もしくは持続放出を有するNPN組成物)で観察されるものと比較して、反芻胃におけるアンモニアのピークの発生を大幅に最小限にするかまたはさらに引き起こさないことも見出された。したがって、NPN毒性、例えば、尿素毒性は、より良好に予防される。これらの効果(例えば、ピークなし、毒性なし)のために、伝統的なNPN組成物により通常与えられる量、すなわち、飼料の総乾燥重量の1%以下またはそれを超えない量と比較して、より多くのNPN(すなわち、飼料の総乾燥重量の1%超、例えば、飼料の総乾燥重量の1%~10%)を、毒性を引き起こすことなく、飼料に含めることができる。したがって、反芻動物の食餌にNPN化合物(例えば、尿素)を含有させる閾値が向上することは、反芻動物の栄養において有利であると同時に、真のタンパク質源の使用の減少により、より持続可能な乳、羊毛および/または肉の生産が可能となる。
【0129】
したがって、本発明のさらなる態様は、反芻動物における非タンパク質窒素化合物からの窒素利用を改善するための方法であって、前記反芻動物に、
i)非タンパク質窒素化合物と、
ii)非タンパク質窒素化合物を取り囲む被覆とを含む、本明細書で教示された組成物を投与することを含み、
前記被覆は、飽和脂肪と脂肪酸とを含む被覆混合物の1つ以上の層を含み、前記被覆は、被覆の総重量に基づいて、それぞれ、60重量%±10%~85重量%±10%の飽和脂肪と、15重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含む、方法である。
【0130】
適切な実施形態では、このような方法は、1)反芻動物における体成長を向上させること;2)反芻動物における飼料摂取を増加させること;3)反芻動物における窒素排泄を減少させること;4)反芻動物における反芻胃のpH安定性を改善すること;5)反芻動物におけるアンモニア毒性を減少させもしくは予防すること;6)反芻動物における繊維消化性を向上させること;7)泌乳反芻動物における乳生産を増加させること;8)反芻動物における乾燥物質利用を改善すること;9)反芻動物における消化性タンパク質の収率および品質を改善すること;10)反芻動物に給餌すること;および/または11)食餌の窒素割合を濃縮することにより反芻動物の食餌中に飼料空間を作り出すことのためである。
【0131】
本発明に係る方法のさらなる実施形態では、反芻動物に投与される組成物の被覆は、65重量%±10%~85重量%±10%の飽和脂肪と、15重量%±10%~35重量%±10%の脂肪酸とを含む。
【0132】
本発明に係る方法の別の実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、5重量%±10%~25重量%±10%の被覆を含む。
【0133】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、10重量%±10%~20重量%±10%の被覆を含む。
【0134】
本発明に係る方法の一実施形態では、飽和脂肪は、水添脂肪を含むかまたは水添脂肪からなる。
【0135】
本発明に係る方法の別の実施形態では、飽和脂肪は、水添植物油を含むかまたは水添植物油からなる。
【0136】
本発明に係る方法の好ましい一実施形態では、水添脂肪は、水添パーム油および/または水添パーム油を含むか、または水添パーム油および/または水添パーム油からなる。
【0137】
本発明に係る方法の別の好ましい実施形態では、投与される組成物の脂肪酸は、C14~C22カルボン酸である。
【0138】
本発明に係る方法の別の好ましい実施形態では、投与される組成物の脂肪酸は、C16~C20カルボン酸である。
【0139】
本発明に係る方法のさらに好ましい実施形態では、投与される組成物の脂肪酸は、モノカルボン酸および/またはジカルボン酸である。
【0140】
本発明に係る方法のさらに別の好ましい実施形態では、投与される組成物の脂肪酸は、飽和および/または不飽和脂肪酸である。
【0141】
本発明に係る方法のさらに好ましい実施形態では、投与された組成物の脂肪酸は、場合により置換されているパルミチン酸および/またはステアリン酸である。
【0142】
本発明に係る方法の一実施形態では、投与される組成物の非タンパク質窒素化合物は、尿素および/またはその塩、尿素および/またはその塩の誘導体、アンモニウム(NH4
+)塩、ビウレット、ホルムアミド、アセトアミド、プロピオンアミド、ブチルアミドおよびジシアノアミドからなる群から選択される1種以上の化合物である。
【0143】
本発明に係る方法のさらなる実施形態では、投与される組成物の被覆は、少なくとも2つの層を含み、各層は、異なる組成の被覆混合物を有する。
【0144】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、非タンパク質窒素化合物を取り囲む投与される組成物の第1の層は、第1の層または任意の追加の層、例えば、先行層または後続層を取り囲む第2の層または任意のさらなる層より多量の被覆混合物を有する。
【0145】
本発明に係る方法の別の実施形態では、第1の層は、第1の層の重量に基づいて、60重量%±10%~90重量%±10%の飽和脂肪と、10重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸を含み、第2の層は、第2の層の重量に基づいて、60重量%±10%~99重量%-10%の飽和脂肪と、1重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含む。
【0146】
本発明に係る方法のさらに別の実施形態では、第1の層は、第1の層の重量に基づいて、60重量%±10%~70重量%±10%の飽和脂肪と、30重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含み、第2の層は、第2の層の重量に基づいて、飽和脂肪の75~90重量%の飽和脂肪と、10重量%±10%~25重量%±10%の脂肪酸とを含む。
【0147】
さらなる態様では、本発明は、1)反芻動物における体成長を向上させ;2)反芻動物における飼料摂取を増加させ;3)反芻動物における窒素排泄を減少させ;4)反芻動物における反芻胃のpH安定性を改善し;5)反芻動物におけるアンモニア毒性を減少させまたは予防し;6)反芻動物における繊維消化性を向上させ;7)泌乳反芻動物における乳生産を増加させ;8)反芻動物における乾燥物質利用を改善し;9)反芻動物における消化性タンパク質の収率および品質を改善し;かつ/または10)食餌の窒素割合を濃縮することにより反芻動物の食餌に飼料空間を作り出すための方法であって、前記反芻動物に本明細書で教示された組成物を投与することを含む、方法に関する。
【0148】
本開示は、反芻動物に給餌するための方法であって、前記反芻動物に本明細書で教示された組成物を投与することを含み、さらに、植物タンパク質の一部を本明細書で教示された組成物で置き換える工程を含む、方法も教示する。
【0149】
本明細書で教示されたNPN組成物を使用して食餌の窒素割合を濃縮することにより、食餌中に乾燥物質空間を作り出すことができ、これを使用して、飼料または他の重要な飼料成分の食餌レベルを向上させることができる。
【0150】
本発明の文脈において、体細胞成長という用語は、体長および/または体重に関して反芻動物の体の成長を指すために使用される。また、体成長という用語は、例えば、一定期間、例えば、13週間にわたるウシ試験における、サイズの正の変化、すなわち、体長および/または体重の増加を指すと理解される。体成長は、発育または成熟の段階としてまたは成体期に起こり得る。体成長は、本明細書で教示された組成物、すなわち、非タンパク質窒素化合物、例えば、尿素と、前記非タンパク質窒素化合物を取り囲む被覆とを含む反芻動物に給餌するための本体による処置の前後での反芻動物の体重を記録することにより決定することができる。具体的には、体成長は、下記式に示すように、前記組成物を反芻動物に投与する前に測定された体重を、前記組成物を投与した後に測定された体重から差し引くことにより決定される。
【0151】
体成長=(本明細書で教示される組成物による処置の終了後の体重)-(本明細書で教示される組成物による処置の開始前の体重)。
【0152】
例えば、本発明に係る組成物による処置に応答した体重の増加は、体成長の向上を示し、一方、体重の減少または無変化は、それぞれ、体成長の減少または無変化を示す。
【0153】
さらに、本明細書で教示されたルーメンバイパスNPN組成物により、反芻動物における消化性タンパク質の収率および品質が改善され、低品質タンパク質を置き換えるのに適しており、繊維消化性および乾燥物質利用が改善され、食餌の窒素割合を濃縮することにより飼料空間が作り出され(すなわち、高密度タンパク質源が、食餌中に乾燥物質空間を作り出すために、本明細書で教示されたNPN組成物により置き換えることができ、この追加の乾燥物質空間は、飼料または他の重要な飼料成分の食餌レベルを向上させるのに使用することができる)、配合コストが低下する。
【0154】
本発明に係る方法の実施形態では、組成物は、1日当たりに約30g~約1kgの範囲の量で、前記反芻動物に投与される。
【0155】
本発明に係る方法の一実施形態では、組成物は、3日に1回、好ましくは、2日に1回、より好ましくは、1日に1回、前記反芻動物に投与される。
【0156】
本発明に係る方法の別の実施形態では、反芻動物は、ウシ、ヒツジおよびヤギからなる群より選択される。
【0157】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、反芻動物は、ウシ、好ましくは、肉牛および/または乳牛である。
【0158】
本明細書で使用されまたは教示されたように、増加する、減少するまたは改善するという用語は、アウトカムを顕著に向上させまたは顕著に減少させまたは顕著に改善する能力を指す。一般的には、パラメータは、対照における対応する値よりそれぞれ、少なくとも5%、例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%高いもしくは低いかまたは改善される場合に、増加しもしくは減少しまたは改善される。本発明の文脈において、対照は、本明細書で教示されたNPN組成物を摂取しなかった反芻動物であることができる。代替的にまたは付加的に、対照は、非被覆NPN化合物を摂取したまたは反芻胃徐放性NPN組成物、例えば、Optigen(登録商標)を、好ましくは、同量摂取した反芻動物であることができる。本明細書で教示されたパラメータのいずれかが増加しもしくは減少しまたは改善されたか否かを比較する場合、試験反芻動物および対照は、好ましくは、同じ属および/または種である。
【0159】
本発明は、下記項目によりさらに例証される。
【0160】
1. i)非タンパク質窒素化合物と、
ii)非タンパク質窒素化合物を取り囲む被覆とを含み、
前記被覆は、飽和脂肪と脂肪酸とを含む混合物の1つ以上の層を含み、前記被覆は、被覆の総重量に基づいて、それぞれ、60重量%±10%~85重量%±10%の飽和脂肪と、15重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含む、
反芻動物に給餌するための組成物。
【0161】
2. 被覆が、65重量%±10%~85重量%±10%の飽和脂肪と、15重量%~35重量%の脂肪酸とを含む、項1記載の組成物。
【0162】
3. 組成物が、組成物の総重量に基づいて、5重量%±10%~25重量%±10%の被覆を含む、項1または2記載の組成物。
【0163】
4. 組成物が、組成物の総重量に基づいて、10重量%±10%~20重量%±10%の被覆を含む、項1から3までのいずれか1項記載の組成物。
【0164】
5. 飽和脂肪が、水添脂肪である、項1から4までのいずれか1項記載の組成物。
【0165】
6. 飽和脂肪が、水添パーム油、水添ダイズ油および/または水添ナタネ油を含むか、または水添パーム油、水添ダイズ油および/または水添ナタネ油からなる、項1から5までのいずれか1項記載の組成物。
【0166】
7. 脂肪酸が、C14~C22カルボン酸を含むかまたはC14~C22カルボン酸からなる、項1から6までのいずれか1項記載の組成物。
【0167】
8. 脂肪酸が、飽和脂肪酸を含むかまたは飽和脂肪酸からなる、項1から7までのいずれか1項記載の組成物。
【0168】
9. 脂肪酸が、場合により置換されているパルミチン酸、オレイン酸および/またはステアリン酸を含むか、または場合により置換されているパルミチン酸、オレイン酸および/またはステアリン酸からなる、項1から8までのいずれか1項記載の組成物。
【0169】
10. 被覆が、少なくとも2つの層を含み、各層が、異なる組成の被覆混合物を有する、項1から9までのいずれか1項記載の組成物。
【0170】
11. 非タンパク質窒素化合物を取り囲む第1の層が、第1の層または任意の追加の層、例えば、先行層または後続層を取り囲む第2の層または任意のさらなる層より多量の被覆混合物を有する、項10記載の組成物。
【0171】
12. 第1の層が、第1の層の重量に基づいて、60重量%±10%~90重量%±10%の飽和脂肪と、10重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含み、第2の層が、第2の層の重量に基づいて、60重量%±10%~99重量%-10%の飽和脂肪と、1重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含む、項10または11記載の組成物。
【0172】
13. 第1の層が、第1の層の重量に基づいて、60重量%±10%~70重量%±10%の飽和脂肪と、30重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含み、第2の層が、第2の層の重量に基づいて、75重量%±10%~90重量%±10%の飽和脂肪と、10重量%±10%~25重量%±10%の脂肪酸とを含む、項10または11記載の組成物。
【0173】
14. 非タンパク質窒素化合物が、尿素および/またはその塩、尿素および/またはその塩の誘導体、アンモニア(NH4
+)塩、ビウレット、ホルムアミド、アセトアミド、プロピオンアミド、ブチルアミドおよびジシアノアミドからなる群から選択される1種以上の化合物である、項1から13までのいずれか1項記載の組成物。
【0174】
15. 項1から14までのいずれか1項記載の組成物を含む、反芻動物に給餌するための、飼料、飼料材料、プレミックスまたは飼料添加剤。
【0175】
16. a)非タンパク質窒素化合物を含有するかまたはこれからなる粒子を、ドラムコータに提供する工程と、
b)被覆の総重量に基づいて、それぞれ、60重量%±10%~85重量%±10%の飽和脂肪および15重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸を含む混合物を、ドラムコータの外側のリザーバに提供する工程と、
c)工程a)の粒子を、工程b)の混合物の融点の下限より20℃低い温度から工程b)の混合物の融点の上限の範囲の温度に加熱する工程と、
d)工程b)の混合物を、その融点の上限からその融点の上限より20℃高い温度の範囲の温度に加熱する工程と、
e)工程d)の加熱された混合物を、回転しているドラムコータ中の工程c)の粒子上に適用する工程と、
f)工程e)で得られた粒子層の温度を、工程b)の混合物の融点の下限より20℃低い温度から工程b)の混合物の融点の下限の範囲の温度で維持する工程と、
g)工程f)で得られた組成物を冷却するかまたは工程f)で得られた組成物を冷却させる工程とを含み、
製造される組成物が、少なくとも2つ以上の層を有する場合、工程c)~f)またはc)~g)を、工程f)またはg)から得られた組成物について繰り返す、
項1から14までのいずれか1項記載の組成物の製造方法。
【0176】
17. 反芻動物における非タンパク質窒素化合物からの窒素利用を改善するための方法であって、前記反芻動物に、
i)非タンパク質窒素化合物と、
ii)非タンパク質窒素化合物を取り囲む被覆とを含む組成物を投与することを含み、
前記被覆は、飽和脂肪と脂肪酸とを含む被覆混合物の1つ以上の層を含み、前記被覆は、被覆の総重量に基づいて、それぞれ、60重量%±10%~85重量%±10%の飽和脂肪と、15重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含む、
方法。
【0177】
18. 飽和脂肪が、水添脂肪を含むかまたは水添脂肪からなる、項17記載の方法。
【0178】
19. 水添脂肪が、水添植物油を含むかまたは水添植物油からなる、項18記載の方法。
【0179】
20. 水添脂肪が、水添パーム油、水添ダイズ油および/または水添ナタネ油を含むか、または水添パーム油、水添ダイズ油および/または水添ナタネ油からなる、項18または19記載の方法。
【0180】
21. 脂肪酸が、C14~C22カルボン酸、好ましくは、C16~C20カルボン酸を含むか、またはC14~C22カルボン酸、好ましくは、C16~C20カルボン酸からなる、項16から20までのいずれか1項記載の方法。
【0181】
22. 脂肪酸が、飽和脂肪酸を含むかまたは飽和脂肪酸からなる、項16から21までのいずれか1項記載の方法。
【0182】
23. 脂肪酸が、場合により置換されているパルミチン酸、オレイン酸および/またはステアリン酸を含むか、または場合により置換されているパルミチン酸、オレイン酸および/またはステアリン酸からなる、項16から22までのいずれか1項記載の方法。
【0183】
24. 被覆が、少なくとも2つの層を含み、前記層が、異なる組成の被覆混合物を有する、項16から23までのいずれか1項記載の方法。
【0184】
25. 非タンパク質窒素化合物を取り囲む第1の層が、第1の層または任意の先行層を取り囲む第2の層または任意のさらなる層より多量の被覆混合物を有する、項24記載の方法。
【0185】
26. 第1の層が、第1の層の重量に基づいて、60重量%±10%~90重量%±10%の飽和脂肪と、10重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含み、第2の層が、第2の層の重量に基づいて、60重量%±10%~99重量%-10%の飽和脂肪と、1重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含む、項24または25記載の方法。
【0186】
27. 第1の層が、第1の層の重量に基づいて、60重量%±10%~70重量%±10%の飽和脂肪と、30重量%±10%~40重量%±10%の脂肪酸とを含み、第2の層が、第2の層の重量に基づいて、75重量%±10%~90重量%±10%の飽和脂肪と、10重量%±10%~25重量%±10%の脂肪酸とを含む、項24または25記載の方法。
【0187】
28. 非タンパク質窒素化合物が、尿素および/またはその塩、尿素および/またはその塩の誘導体、アンモニア(NH4
+)塩、ビウレット、ホルムアミド、アセトアミド、プロピオンアミド、ブチルアミドおよびジシアノアミドからなる群から選択される1種以上の化合物である、項17から27までのいずれか1項記載の方法。
【0188】
29. 項1から14または17から28までのいずれか1項記載の組成物が、反芻動物に給餌するための、動物飼料、飼料材料、プレミックスまたは飼料添加物に含まれる、項17から25までのいずれか1項記載の方法。
【0189】
30. 反芻動物における体成長を向上させるための方法であって、
項1から14または17から28までのいずれか1項記載の組成物を、前記反芻動物に投与することを含む、
方法。
【0190】
31. 反芻動物における飼料摂取量を増加させるための方法であって、
項1から14または17から28までのいずれか1項記載の組成物を、前記反芻動物に投与することを含む、
方法。
【0191】
32. 反芻動物における窒素排泄を減少させるための方法であって、
項1から14または17から28までのいずれか1項記載の組成物を、前記反芻動物に投与することを含む、
方法。
【0192】
33. 反芻動物における反芻胃pH安定性を改善するための方法であって、
項1から14または17から28までのいずれか1項記載の組成物を、前記反芻動物に投与することを含む、
方法。
【0193】
34. 反芻動物におけるアンモニア毒性を低減しまたは予防するための方法であって、
項1から14または17から28までのいずれか1項記載の組成物を、前記反芻動物に投与することを含む、
方法。
【0194】
35. 反芻動物に給餌するための方法であって、
項1から14または17から28までのいずれか1項記載の組成物を、前記反芻動物に投与することを含み、
さらに、植物性タンパク質の一部を、項1から14または17から28までのいずれか1項記載の組成物で置き換える工程を含む、
方法。
【0195】
36. 反芻動物における繊維の消化性を向上させるための方法であって、
項1から14または17から28までのいずれか1項記載の組成物を、前記反芻動物に投与することを含む、
方法。
【0196】
37. 泌乳反芻動物の乳生産を増加させるための方法であって、
項1から14または17から28までのいずれか1項記載の組成物を、前記反芻動物に投与することを含む、
方法。
【0197】
38. 反芻動物における乾燥物質利用を改善するための方法であって、
項1から14または17から28までのいずれか1項記載の組成物を、前記反芻動物に投与することを含む、
方法。
【0198】
39. 反芻動物における消化性タンパク質の収率および品質を改善するための方法であって、
項1から14または17から28までのいずれか1項記載の組成物を、前記反芻動物に投与することを含む、
方法。
【0199】
40. 項1から14または17から28までのいずれか1項記載の組成物を使用して、食餌の窒素画分を濃縮して、食餌中に乾燥物質空間を作り出すことにより、反芻動物の食餌中に食餌空間を作り出し、それを使用して、飼料または他の重要な食餌成分の食餌レベルを向上させることができる、
方法。
【0200】
41. 組成物を、1日当たりに約30g~約1kgの範囲の量で、前記反芻動物に投与する、項17から40までのいずれか1項記載の方法。
【0201】
42. 組成物を、前記反芻動物に、3日に1回、好ましくは、2日に1回、より好ましくは、1日1回投与する、項17から41までのいずれか1項記載の方法。
【0202】
43. 反芻動物が、ウシ、ヒツジおよびヤギからなる群から選択される、項17から42までのいずれか1項記載の方法。
【0203】
44. 反芻動物が、ウシ、好ましくは、肉牛および/または乳牛である、項17から43までのいずれか1項記載の方法。
【0204】
実施例
I.ドラムコータ中において被覆NPN組成物を製造するための一般的な手順
尿素含有組成物を、溶融飽和脂肪、例えば、水添植物油もしくは溶融脂肪または水添植物油と脂肪酸との溶融混合物を尿素プリル層に添加するためのドロップランスを備えたドラムコータを使用して製造した。このドラムコータの直径は、約350mmであり、幅は、約190mmであった。使用された層の幅は、約120mmであり、尿素プリルを所望の温度に加熱するために、粒子層に熱風を吹き込む流入領域(流入領域)の幅は、約100mmであった。
【0205】
ドラムコータに、400gのプリル化尿素(粒径1.8~2.4mm)を充填した。ドラムコータの内部を、尿素プリルの床がより溶融温度の下限より20℃低い温度と溶融水添植物油もしくは溶融脂肪または水添植物油と脂肪酸との溶融混合物の溶融温度の下限との間の温度を有するまで、熱風で加熱した。水添植物油もしくは脂肪または水添植物油と脂肪酸との混合物を、ドラムコータの外側にあり、ヒーターを備えた二重壁容器に入れ、ついで、溶融させ、その溶融温度の上限とその溶融温度の上限より20℃高い温度との間の温度に加熱した。溶融水添植物油もしくは溶融脂肪または水添植物油と脂肪酸との溶融混合物を、二重壁容器から電気加熱パイプを通してドロップランスにポンプ輸送した。溶融水添植物油もしくは溶融脂肪または水添植物油と脂肪酸との溶融混合物を、ドロップランスから、32メートル/分の撹拌機の半径方向速度で、約12分間の期間にわたって、プリル化尿素層上に滴下した。溶融水添植物油もしくは溶融脂肪または水添植物油と脂肪酸との溶融混合物の添加中に、プリル化尿素層の温度を、水添植物油もしくは脂肪または水添植物油と脂肪酸との混合物の溶融温度の下限より20℃低い温度と同下限との間の温度で維持した。プリル化尿素層の温度を、プリル化尿素層の中心に向けられた熱画像カメラにより測定した。被覆の間、粒子層は粘着性であり、被覆層は、経時的にゆっくり形成された。水添植物油もしくは溶融脂肪または水添植物油と脂肪酸との溶融混合物の添加後に、このようにして得られた被覆粒子層を、ゆっくり冷却した。得られた生成物は、ダストがなく、表面に亀裂または孔がなかった。したがって、この生成物は滑らかに見え、光沢のある表面を有していた。また、この生成物は、同等のサイズの粒子からなり、それらは、いかなる凝集体またはより大きな粒子も含まなかった。
【0206】
II.被覆NPN含有組成物の製造
被覆NPN含有組成物の製造のための一般的な手順に従って、本発明に係る多数の実施例を製造した。
【0207】
表2に、1L-01~1L-12と示される、本発明に従ってそれぞれ製造された1層生成物の個々の組成をまとめる。
【0208】
また、表2に、比較例C-1L-01~C-1L-08の生成物の個々の組成をまとめる。比較例C-1L-01~C-1L-02の生成物は、国際公開第2017/125140号の技術教示に係る生成物である。比較例C-1L-01~C-1L-02の生成物は、米国特許出願公開第2012/0093974号明細書および同第2010/0272852号明細書に係る生成物である。
【0209】
表4に、2L-01~2L-20と示される、本発明に従ってそれぞれ製造された2層生成物およびC-2L-01~C-2L-03と示される、本発明によらない2層比較生成物の個々の組成をまとめる。
【0210】
III.生成物の試験
本発明に係る実施例1L-01~1L-12および2L-01~2L-20の生成物ならびに本発明によらない比較例C-1L-01~C-1L-08およびC-2L-01~C-2L-03の生成物を、反芻動物消化をシミュレーションするため、特に、反芻動物消化管の3つの異なる区画である反芻胃、皺胃および小腸における尿素の放出速度をシミュレーションするために、イン・ビトロ試験に供した。この目的で、試験を、3工程インキュベーション手順で行った。第1の工程では、反芻胃中の条件を、McDougallバッファーの使用によりシミュレーションした。第2の工程では、皺胃中の条件を、塩酸およびペプシンの使用によりシミュレーションした。第3の工程では、小腸中の条件を、パンクレアチンおよびpH8に調整するのに適したバッファーの使用によりシミュレーションした。イン・ビトロ試験を、下記手順に従って行った。
【0211】
McDougallバッファーの製造のために、下記物質を、10リットルのボトルに秤量した。
【0212】
- NaHCO3 98g(1.17mol)
- Na2HPO4・2H2O 46.3g(0.26mol)
- NaCl 4.7g(0.08mol)
- KCl 5.7g(0.08mol)
- CaCl2・2H2O 0.4g(2.7mmol)
- MgCl2・6H2O 0.6g(3.0mmol)。
【0213】
250mLのMcDougallバッファー溶液を、1000mLのSchottフラスコに充填した。5gの試験物質、すなわち、上記言及された化合物のいずれかを添加し、フラスコを実験室振とう機(Innova 40、New Brunswick Scientific)中において、39℃で100回転/分で振とうした。6時間後、フラスコ内容物を、注意深くろ別し、50mLの冷水で洗浄し、少量のペプシンを含有する250mLの濃塩酸(pH2)を含有する第2のフラスコに直接移した。39℃で2時間インキュベーションした後、生成物を、再度注意深くろ別し、50mLの冷水で洗浄し、続けて、14.4mgのトリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、56.2mgのNaCl、231mgのホスファチジルコリン、60mgのTriton-X-100、240mgのタウロコール酸Na、300mgのCaCl2×2H2Oおよび120mgのパンクレアチン(≧8 USPリパーゼ単位/mg)を含有する新鮮に製造された溶液を含有する第3のフラスコに移した。24時間振とうした後、生成物をろ別し、再度冷水で洗浄し、40℃で一晩乾燥させた。工程1および3それぞれの後の残留生成物を秤量し、重量減少を、尿素の減少とみなした。反芻胃尿素放出割合の計算を、下記式により行った。
【0214】
反芻胃尿素放出割合=((尿素の初期量[g]-McDougall法の第1の工程後の尿素の残留量[g])/(尿素の初期量[g]))×100%
例:尿素の初期量=5.0g
第1の工程後の尿素の残留量=4.2g
反芻胃尿素放出割合[%]=((5.0g-4.2g)/5.0g)×100%=16%。
【0215】
反芻胃保護(RP)尿素割合を、下記式を使用して得る。
【0216】
RP(尿素)[%]=100%-反芻胃尿素放出割合[%]
例:反芻胃尿素放出割合=16%
RP(尿素)[%]=100%-16%=84%。
【0217】
総消化性NPN割合[%]という用語は、McDougall法の全ての工程において消化に供されるNPNの初期量[g]の割合を指すのに使用される。これは、下記式で計算することができる。
【0218】
総消化性NPN割合[%]=((NPNの初期量[g]-McDougall法の第3の工程後のNPNの残留量[g])/(NPNの初期量[g]))×100%
例:NPNの初期量=5.0g
第3の工程後のNPNの残留量=0.5g
総消化性NPN割合[%]=((5.0g-0.5g)/(5.0g))×100%=90%
総消化性NPN割合[g/kg]を、下記等式を使用することにより計算することができる。
【0219】
総消化性NPN割合[g/kg]=総消化性NPN割合[%]×生成物中のNPNの重量割合[g/kg]。
【0220】
反芻胃後放出(PRR)NPNという用語は、反芻動物の皺胃および小腸において試験組成物から放出されたNPNの割合(g/kg)を指すのに使用される。したがって、反芻胃後放出尿素という用語は、試験組成物から反芻胃後放出されたNPNの割合(g/kg)である。これは、下記式に従って計算することができる。
【0221】
PRR(NPN)[g/kg]=総消化性NPN割合[g/kg]-(1000-RP(NPN[g/kg]))または
PRR(NPN)[g/kg]=総消化性NPN割合[g/kg]-反芻胃放出NPN割合[g/kg]。
【0222】
総消化性NPN割合[g/kg]は、NPNの初期量[g/kg]とMcDougall法の第3の工程後のNPNの残留量[g/kg]との間の差である。RP(NPN)[g/kg]は、McDougall法の第1の工程の後のNPNの残留量[g/kg]である。反芻胃放出NPN割合[g/kg]は、McDougall法の第1の工程において放出されたNPNの量である。
【0223】
全ての可能性のある非タンパク質窒素化合物についての結果を一般化するために、反芻胃後放出尿素PR(尿素)について得られた値を、下記式を使用して反芻胃後放出窒素PRR(N)に変換した。
【0224】
PRR(N)[g/kg]=PR(尿素[g/kg])×28/60
表3に、T-1L-01~T-1L-12と示される、本発明に係る実施例1L-01~1L-12の1層生成物についての試験結果およびCT-C-1L-01~CT-C-1L-08と示される、本発明によらない比較例C-1L-01~C-1L-08の生成物についての試験結果をまとめる。表5に、T-2L-01~T-2L-20と示される、本発明に係る実施例2L-01~2L-20の2層生成物についての試験結果およびCT-C-2L-01~CT-C-2L-03と示される、本発明によらない比較例C-2L-01~C-2L-03の生成物についての試験結果をまとめる。
【0225】
IV.議論
実施例1L-01~1L-12および2L-01~2L-20の生成物により、高い反芻胃保護尿素割合および高い有用な総消化性尿素割合が提供された。これにより、反芻動物に、大量の反芻胃後放出尿素および窒素を提供することが可能となる。このため、本発明に係る組成物により、反芻動物における非タンパク質窒素化合物からの窒素利用を改善するという所望の効果がもたらされる。
【0226】
比較として、比較例C-1L-01~C-1L-08およびC-2L-01~C-2L-03の生成物では、低い総消化性尿素割合のみが提供された。したがって、これらの生成物では、反芻動物に、大量の反芻胃後放出尿素および窒素を提供することができなかった。結果として、比較例C-1L-01~C-1L-08およびC-2L-01~C-2L-03の生成物では、反芻動物における非タンパク質窒素化合物からの窒素利用を改善するという所望の効果がもたらされなかった。
【0227】
【0228】
【0229】
【0230】