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特許7526110基板収納容器、ロードポート及び弁開閉治具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】基板収納容器、ロードポート及び弁開閉治具
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20240724BHJP
   F16K 15/18 20060101ALI20240724BHJP
   F16K 24/06 20060101ALI20240724BHJP
   F16K 24/04 20060101ALI20240724BHJP
   B65D 85/30 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
H01L21/68 T
F16K15/18 Z
F16K24/06 D
F16K24/04 V
B65D85/30 500
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021009070
(22)【出願日】2021-01-22
(65)【公開番号】P2022112997
(43)【公開日】2022-08-03
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 康大
(72)【発明者】
【氏名】石川 隆純
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-046292(JP,A)
【文献】特開2007-317909(JP,A)
【文献】特開平06-235473(JP,A)
【文献】特開2008-298276(JP,A)
【文献】特開平10-292878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
F16K 15/18
F16K 24/06
F16K 24/04
B65D 85/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収納可能な容器本体と、
前記容器本体の開口を閉止する蓋体と、
前記容器本体に装着され、前記容器本体に対する気体の流通を制御するバルブ体と、を備える基板収納容器であって、
前記バルブ体は、弁孔を閉止する弁棒を有し、
前記弁棒は、表面に露出しないように内部に磁力源が配置されており、弾性力により弁閉方向に付勢されるとともに、気体圧力及び前記容器本体外部からの磁力の付加により弁開方向に付勢される、
ことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
前記バルブ体は、前記容器本体から気体を流出させる排気用であり、
前記弁棒は、磁力の吸引力により弁開方向に付勢される、
ことを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項3】
前記バルブ体は、前記容器本体に気体を流入させる給気用であり、
前記弁棒は、磁力の反発力により弁開方向に付勢される、
ことを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項4】
前記バルブ体は、気体を濾過するフィルタを有する、
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の基板収納容器。
【請求項5】
基板収納容器を載置する載置台と、
前記基板収納容器に対向する開口窓を開閉するポートドアと、
前記基板収納容器に装着されたバルブ体に接続され、気体を流通可能であるとともに、昇降移動可能なノズルと、を備えるロードポートであって、
前記ノズルは、前記バルブ体に接触し、かつ、磁力源を覆う緩衝部材を有し、
前記ノズルが前記バルブ体に接続された際、前記バルブ体の弁棒に気体圧力及び磁力を付加することで弁開方向に付勢する、
ことを特徴とするロードポート。
【請求項6】
気体を流通可能なノズルを備える請求項5に記載のロードポート用の弁開閉治具であって、
前記ノズルに装着可能に形成されるとともに、磁力を発生させる磁力源を含む、
ことを特徴とする弁開閉治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体の流通を制御するバルブ体を備えた基板収納容器、ロードポート及び弁開閉治具に関する。
【背景技術】
【0002】
基板を収納する基板収納容器は、例えば、特許文献1及び特許文献2にみられるように、容器本体と、容器本体の開口を閉止する蓋体と、容器本体に対する気体の流通を制御するバルブ体40A,50Aを備えている。このバルブ体40A,50Aは、チェックバルブ機能を有するもので、弁孔441を開閉する弁棒442Aと弁棒442Aを付勢する弾性部材444とを有している(図6及び図7参照)。
【0003】
基板収納容器は、基板を気密状態で収納するために、給気用のノズル150から給気用のバルブ体50Aを介してパージ気体を供給し、排気用のバルブ体40Aから容器内部の気体を排出することで、排出された気体の流量や圧力や湿度などを計測して、内部状態を管理している。
【0004】
また、基板収納容器は、高温処理された基板を気密状態で収納すると、基板が除冷されるに従って、内部が負圧になることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-066330号公報
【文献】特開2004-179449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような構造の従来のバルブ体40A,50Aでは、弾性力と気体の圧力のみに依存して開閉するようになっているため、内部が負圧又は正圧の所定値に到達しないと、弁開状態にならないことがあり、また、圧力が所定値に到達しても、内部湿度や弁閉時間などによって、弁孔441と弁棒442Aとの貼り付きや弁棒442Aの姿勢異常が発生し、弁開状態にならないことがあった。
【0007】
そこで、本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、気体の流通を制御するバルブ体の弁開動作の確実性を向上させる基板収納容器、ロードポート及び弁開閉治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る1つの態様は、基板を収納可能な容器本体と、前記容器本体の開口を閉止する蓋体と、前記容器本体に装着され、前記容器本体に対する気体の流通を制御するバルブ体と、を備える基板収納容器であって、前記バルブ体は、弁孔を閉止する弁棒を有し、前記弁棒は、弾性力により弁閉方向に付勢されるとともに、磁力の付加により弁開方向に付勢されるものである。
(2)上記(1)の態様において、前記バルブ体は、気体を流出させる排気用であり、前記弁棒は、磁力の吸引力により弁開方向に付勢されてもよい。
(3)上記(1)の態様において、前記バルブ体は、気体を流入させる給気用であり、前記弁棒は、磁力の反発力により、弁開方向に付勢されてもよい。
(4)上記(1)から(3)までのいずれか1つの態様において、前記バルブ体は、気体を濾過するフィルタを有してもよい。
(5)本発明に係る別の1つの態様は、基板収納容器を載置する載置台と、前記基板収納容器に対向する開口窓を開閉するポートドアと、前記基板収納容器に装着されたバルブ体に接続され、気体を流通可能なノズルと、を備えるロードポートであって、前記ノズルは、前記バルブ体に接続された際、前記バルブ体の弁棒に磁力を付加することで弁開方向に付勢するものである。
(6)本発明に係る更に別の1つの態様は、気体を流通可能なノズルを備える上記(5)のロードポート用の弁開閉治具であって、前記ノズルに装着可能に形成されるとともに、磁力を発生させる磁力源を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、気体の流通を制御するバルブ体の弁開動作の確実性を向上させる基板収納容器、ロードポート及び弁開閉治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本発明に係る実施形態の基板収納容器がロードポートに載置された状態を示す概略断面図である。
図1B】本発明に係る実施形態の基板収納容器の蓋体がロードポートで取り外された状態を示す概略断面図である。
図2A】ロードポートの載置台を示す概略正面図である。
図2B】ロードポートの載置台を示す概略上面図である。
図3A】排気用のバルブ体を示す断面図である。
図3B】排気用のバルブ体の弁開状態を示す断面図である。
図4A】給気用のバルブ体を示す断面図である。
図4B】給気用のバルブ体の弁開状態を示す断面図である。
図5A】弁開閉治具を示す上面図である。
図5B】弁開閉治具を示す断面図である。
図6】従来の排気用のバルブ体を示す断面図である。
図7】従来の給気用のバルブ体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本明細書の実施形態においては、全体を通じて、同一の部材には同一の符号を付している。
【0012】
本発明に係る実施形態の基板収納容器1を説明する前に、基板収納容器1が載置されるロードポート100について説明する。
図1Aは、本発明に係る実施形態の基板収納容器1がロードポート100に載置された状態を示す概略断面図であり、図1Bは、本発明に係る実施形態の基板収納容器1の蓋体20がロードポート100で取り外された状態を示す概略断面図である。図2は、ロードポート100の載置台110を示すもので、図2Aは概略正面図であり、図2Bは概略上面図である。
【0013】
ロードポート100は、図1A及び図1Bに示すように、クリーンルーム内に設置された半導体製造装置の側壁に隣接して設置されているものであり、半導体製造装置の装置内外間で基板を搬入出するように構成されている。
【0014】
ロードポート100は、基板収納容器1を載置する載置台110と、載置台110に載置された基板収納容器1に対向する開口窓120と、この開口窓120を開閉するポートドア130とを備えている。
【0015】
載置台110は、図2A及び図2Bに示すように、基板収納容器1を載置台110上で位置決めする位置決め機構111を有している。位置決め機構111は、基板収納容器1の容器本体10の底面又は底面に装着されたボトムプレートに形成された3か所の位置決め凹部13に係合(接触)することで基板収納容器1を開口窓120に対して所定位置に位置決めするものである(図1A及び図1B参照)。
【0016】
また、載置台110は、基板収納容器1の排気用のバルブ体40及び給気用のバルブ体50に接続される排気用のノズル140及び給気用のノズル150も有しているが、詳細は、後述するバルブ体40,50とともに説明する。
【0017】
図1A及び図1Bに戻って、ポートドア130は、揺動手段(図示なし)により開口窓120を開閉(開放及び閉鎖)可能にするものである。このポートドア130は、開口窓120を開放する際、基板収納容器1の蓋体20の施錠機構(図示なし)を解除し、容器本体10から蓋体20を取り外す蓋体開閉機構131を有している。なお、蓋体開閉機構131は、容器本体10に蓋体20を取り付ける際には、逆に施錠機構を施錠して、蓋体20を容器本体10に固定する。
【0018】
ただし、開口窓120には、ポートドア130が容器本体10から蓋体20を取り外して開口窓120を開放したときに、ポートドア130に代わって、開口窓120を高速で閉鎖するシャッタ160を必要に応じて備えていてもよい。
【0019】
そして、ポートドア130を介して半導体装置側には、基板を搬送する搬送ロボット300が設置されており、蓋体20が取り外された容器本体10内に搬送アーム310が進入し、基板の搬入及び搬出を行うようになっている。なお、基板の搬入出工程は、従来どおりであるから、ロードポート100及び搬送ロボット300の具体的な動作の説明は省略する。
【0020】
つぎに、本発明に係る実施形態の基板収納容器1について説明する。
本実施形態の基板収納容器1は、基板を収納する容器本体10と、容器本体10の開口を閉止する蓋体20と、容器本体10と蓋体20との間に設けられる環状のパッキン(図示なし)と、を備えている(図1A及び図1B参照)。
【0021】
容器本体10は、箱状体であり、開口が正面に形成されたフロントオープン型である。容器本体10の開口は、外側に広がるように段差をつけて屈曲形成され、その段差部の面が、パッキンが接触するシール面として、開口の正面の内周縁に形成されている。なお、容器本体10は、300mm径や450mm径の基板の挿入操作を行い易いことから、フロントオープン型が好ましい。
【0022】
容器本体10の内部の左右両側には、支持体(図示なし)が配置されている。支持体は、基板の載置及び位置決めをする機能を有している。支持体には、複数の溝が高さ方向に形成され、いわゆる溝ティースを構成している。そして、基板は、同じ高さの左右2か所の溝ティースに載置されている。支持体の材料は、容器本体10と同様のものであってもよいが、洗浄性や摺動性を高めるために、異なる材料が用いられてもよい。
【0023】
基板は、この支持体に支持されて容器本体10に収納されることになる。なお、基板の一例としては、シリコンウェーハが挙げられるが特に限定されず、例えば、石英ウェーハ、ガリウムヒ素ウェーハなどであってもよい。
【0024】
容器本体10の天井中央部には、ロボティックフランジ(図示なし)が着脱自在に設けられている。清浄な状態で基板を気密収納した基板収納容器1は、工場内の別の搬送ロボットで、ロボティックフランジを把持されて、基板を加工する工程ごとの加工装置に搬送される。
【0025】
また、容器本体10の両側部の外面中央部には、作業者に握持されるマニュアルハンドル(図示なし)がそれぞれ着脱自在に装着されている。
【0026】
そして、容器本体10の内部の底面には、給気部と排気部とが設けられており、容器本体10の外部の底面には、これら給気部及び排気部に連通するバルブ体40,50が取り付けられている。バルブ体40,50は、蓋体20によって閉止された基板収納容器1の内部に、給気部から窒素ガスなどの不活性気体やドライエアを供給し、必要に応じて排気部から排出することで、基板収納容器1の内部の気体を置換したり、低湿度の気密状態を維持したり、基板上の不純物質を吹き飛ばしたりして、基板収納容器1の内部の清浄性を保つようになっている。なお、排気部から排気する場合は、気体を給気部から給気するだけでなく、排気部を負圧(真空)発生装置に接続し、強制的に排気部から気体を排出することもある。
【0027】
さらに、排気部から排気された気体を検知することで、基板収納容器1の内部が導入された気体で置換されたか確認することができる。なお、給気部及び排気部は、基板を底面へ投影した位置から外れた位置にあるのが好ましいが、給気部及び排気部の数量や位置は特に限定されず、容器本体10の底面の四隅部などに位置してもよい。
【0028】
一方、蓋体20は、容器本体10の開口の正面に取り付けられる、略矩形状のものである。蓋体20は、図示しない施錠機構を有しており、容器本体10に形成された係止穴(図示なし)に係止爪が嵌入することで施錠されるようになっている。また、蓋体20は、中央部に基板の前部周縁を水平に保持する弾性のフロントリテーナ(図示なし)が着脱自在に装着又は一体形成されている。
【0029】
このフロントリテーナは、支持体の溝ティース及び基板保持部などと同様に、ウェーハが直接接触する部位であるため、洗浄性や摺動性が良好な材料が用いられている。
【0030】
そして、蓋体20には、パッキンを取り付ける取付溝(図示なし)が形成されている。この取付溝は、例えば、蓋体20の外周面や容器本体10側の面に、断面視で略U字状で環状に形成されている。
【0031】
これらの容器本体10及び蓋体20の材料としては、例えば、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマーなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。この熱可塑性樹脂は、導電性カーボン、導電繊維、金属繊維、導電性高分子などからなる導電剤、各種の帯電防止剤、紫外線吸収剤などが更に適宜添加されてもよい。
【0032】
一方、パッキンは、蓋体20の正面形状(及び容器本体10の開口の形状)に対応した環状のものであり、本実施形態では、矩形枠状のものである。ただし、環状のパッキンは、蓋体20への取り付け前の状態で、円環(リング)状であってもよい。
【0033】
パッキンは、容器本体10のシール面と蓋体20との間に配置され、蓋体20を容器本体10に取り付けた際に、容器本体10のシール面に密着して基板収納容器1の気密性を確保し、基板収納容器1への外部からの塵埃、湿気などの侵入を低減させるとともに、内部から外部への気体の漏れを低減させるものである。
【0034】
パッキンの材料としては、ポリエステル系のエラストマー、ポリオレフィン系のエラストマー、フッ素系のエラストマー、ウレタン系のエラストマーなどからなる熱可塑性のエラストマー、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーン系のゴムなどの弾性材を用いることができる。これらの材料には、導電性や帯電防止性を付与する観点から、炭素繊維、金属繊維、金属酸化物、各種の帯電防止剤などが適宜添加されてもよい。
【0035】
ここで、まず、排気用のバルブ体40について説明し、その後に給気用のバルブ体50について説明する。
図3Aは、排気用のバルブ体40を示す断面図であり、図3Bは、排気用のバルブ体40の弁開状態を示す断面図である。図4Aは、給気用のバルブ体50を示す断面図であり、図4Bは、給気用のバルブ体50の弁開状態を示す断面図である。
【0036】
バルブ体40は、容器本体10に対する気体の流通を制御するもので、容器本体10に取り付けられた際に、図示されない気体流通路を介して排気部と連通している。
【0037】
バルブ体40は、図3Bに示すように、容器本体10のリブ11によって形成された貫通孔12に下方から嵌められる固定筒41と、貫通孔12にシール部材45を介して上方から嵌入されて、固定筒41に螺合により着脱自在に組み合わされる保持筒42と、を有している。
【0038】
固定筒41は、容器本体10の内部側が開口した有底円筒状に形成されているとともに、固定筒41の内周面には、保持筒42を取り付けるための取り付け用の螺子溝412が螺刻形成されている。また、固定筒41の外周面には、半径外方向に延びるリング状のフランジ413が周設されており、リブ11の開口周縁部に接触するようになっている。
【0039】
さらに、固定筒41は、底面部中心に気体流通用の通気口411が形成されている。また、固定筒41の底部には、通気口411の周縁から立ち上がって、保持筒42に向かって延びた第1筒部410も形成されている。
【0040】
一方、保持筒42は、容器本体10の外部側が開口した有底円筒状に形成されているとともに、保持筒42の外周面には、半径外方向に延びるリング状のフランジ423が周設されており、貫通孔12の開口周縁に接触している。さらに、保持筒42の外周面には、固定筒41を取り付けるための螺子溝422が螺刻形成され、この螺子溝422が固定筒41の螺子溝412と螺合される。ただし、固定筒41及び保持筒42は、螺合でなく、圧入や係止などの他の方法で互いに取り付けられてもよい。
【0041】
また、保持筒42は、容器本体10(底面)の内部側に、気体流通用の複数の通気口を区画する区画リブが格子状又は放射状に配設されていて、この区画リブの裏面には、後述するフィルタ46を収納する収納空間が形成されている。
【0042】
なお、保持筒42は、外周面にシール部材45が装着されており、保持筒42と貫通孔12の内周面との間から、容器本体10の内部に侵入する外気や洗浄液を遮断し、また、容器本体10の内部から漏れる気体を遮断することができる。
【0043】
さらに、バルブ体40は、保持筒42の内周壁にシール部材47を介して取り付けられ、保持筒42との間にフィルタ46を保持する中蓋筒43も有している。
【0044】
この中蓋筒43は、容器本体10の外部側が開口した有底円筒状に形成されているとともに、天面部にフランジ433が容器本体10の内部側に向かって突出して形成されている。このフランジ433と保持筒42との間にフィルタ46が挟持されるようになっている。
【0045】
また、中蓋筒43の外周面には突起が形成されており、保持筒42の内周面側に形成された係止溝と係止することで、中蓋筒43は、保持筒42に連結され取り付けられている。
【0046】
さらに、中蓋筒43は、天面部中心に気体流通用の通気口431が形成されている。また、中蓋筒43の天面部には、通気口431の周縁から立ち上がって、固定筒41に向かって延びた第2筒部430も形成されている。なお、本実施形態では、第1筒部410の外径及び内径は、第2筒部430の外径及び内径と等しい直径で形成されている。
【0047】
上述した固定筒41、保持筒42及び中蓋筒43は、例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマーなどの熱可塑性樹脂を材料として成形されている。
【0048】
ここで、排気用のバルブ体40は、本実施形態では、第1筒部410と第2筒部430との間に挟持される弁本体440を有している。この弁本体440は、弁棒442が移動することで、容器本体10に対する気体の流通を制御するもので、容器本体10の内部への気体の給気は不能にするが、容器本体10から外部への気体の排気は可能にする、一方向チェックバルブとしての機能を有している。
【0049】
弁本体440は、略円筒状のものであり、一端側(本実施形態のバルブ体40では下端側)から中間付近に向かって円錐状の弁座及び弁孔441が形成され、また、弁孔441から他端側に向かって略円錐状に広がる空間が形成されている。
【0050】
弁棒442は、弁座に着座して弁孔441を閉止可能なように、先端部がキノコ状に形成され、後端部側が棒状に形成されている。また、弁棒442は、磁力の反発力又は吸引力によって、弁棒442を弁開方向に付勢することが可能な磁力源443が埋設されている。この磁力源443としては、例えば、永久磁石又は電磁石が挙げられるが、磁力の吸引力によって、弁棒442を弁開方向に付勢する場合は、磁界中に曝されることで磁化される強磁性体(例えば、鉄)であってもよい。
【0051】
なお、この磁力源443は、弁棒442の空洞に、例えば後端部側から挿入され、例えば、先端部側がN極に、後端部側がS極となるように配置され、その後、挿入開口を樹脂で封止することで、外部に金属材料が露出しないようになっている。
【0052】
弾性部材444は、弁棒442を弁閉方向に付勢することが可能なもので、樹脂製のコイルスプリングを用いることができるが、弾力性を有する合成樹脂の発泡体、各種ゴムや熱可塑性エラストマーからなる支柱部材を用いることもできる。なお、基板収納容器1(の収納する基板)の用途によっては、弾性部材444にSUSなどの金属スプリングを用いることができるが、その場合でも、表面を樹脂コーティングしておくことが望ましい。このように、金属性の部材を表面に露出させないようにすることで、金属腐食性の残留物質が存在しても、金属腐食の問題を回避することができる。
【0053】
この弾性部材444は、弁棒442の先端部が弁座に着座するように弁本体440に挿入した後、弁棒442の後端部側から装着され、弁棒442にストッパ445を取り付けることで固定されている。なお、ストッパ445の取付手段は、例えば、嵌合、接着、溶着などでもよく、あるいは、弁棒442の後端部に雄ネジを刻設するとともに、ストッパ445に雌ネジを刻設し、これらのネジ込み量を変更することで、弾性部材444の弾性力を調節可能な構造としてもよい。
【0054】
フィルタ46は、供給又は排出される気体を濾過するものであり、四フッ化エチレン、ポリエステル繊維、フッ素樹脂などからなる多孔質膜、ガラス繊維などからなる分子濾過フィルタ、活性炭繊維などの濾材に化学吸着剤を担持させたケミカルフィルタなどから選択される。
【0055】
このようなフィルタ46は、保持筒42と中蓋筒43との間に、1枚又は複数枚挟持されて保持されている。なお、複数枚のフィルタ46を用いる場合は、同種類のものであってもよいが、性質の異なるものを組み合わせた方が、パーティクル以外に、有機物の汚染なども防止することができるため、より好ましい。例えば、フィルタ46は、容器本体10を洗浄する際に、水や洗浄液などの液体が滞留しないように、液体の通過を抑制する機能も奏するため、フィルタ46に疎水性又は親水性の材料を用いて、液体の透過を更に抑制してもよい。
【0056】
なお、シール部材45,47には、例えば、フッ素ゴム、NBRゴム、ウレタンゴム、EPDMゴム、シリコーンゴムなどの材料から形成されたOリングなどが用いられている。
【0057】
一方、給気用のバルブ体50は、容器本体10に対する気体の流通を制御するもので、容器本体10に取り付けられた際に、図示されない気体流通路を介して給気部と連通している。そして、給気用のバルブ体50では、図4Bに示すように、弁棒442を含む弁本体440がバルブ体40のものに対して上下逆方向で固定されており、容器本体10から外部への気体の排気は不能にするが、容器本体10の内部への気体の給気は可能にする、一方向チェックバルブとしての機能を同様に有している。
【0058】
このように、バルブ体40,50は、弁本体440の取付方向を変更するだけで、簡単に気体の流通方向を逆方向にできる。つまり、給気用又は排気用を入れ替えることができる。
【0059】
ここで、図2A及び図2Bに戻って、ロードポート100の載置台110について再び説明する。
載置台110は、排気用のノズル140及び給気用のノズル150を有している。
【0060】
このノズル140,150は、図3B及び図4Bに示すように、円筒状のノズルサポート143,153内で昇降移動可能なノズル管141,151を含んでいる。ノズル管141,151は、パイプ状であり、中心空洞を気体が流通できるようになっており、その末端は、それぞれ気体の給気源及び排気源(吸引源又は真空源、あるいは大気開放)につながっている。
【0061】
一方、ノズル管141,151の上端には、緩衝部材142,152が通常設けられている。緩衝部材142,152は、ノズル140,150がバルブ体40,50に接続された際の衝撃や上昇位置のズレを吸収するために、クッション性を有するフッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーン系のゴムなどの弾性材で略円環状に形成されている。
【0062】
つづいて、これらのノズル140,150に装着される弁開閉治具200について説明する。
図5Aは、弁開閉治具200を示す上面図であり、図5Bは、弁開閉治具200を示す断面図である。
【0063】
弁開閉治具200は、磁力源210と、緩衝部材220と、リング部材230と、を備えている。
【0064】
磁力源210は、バルブ体40,50の弁棒442に磁力を作用させ、互いの磁力を反発又は吸引させることによって、弁棒442を弁閉方向に付勢する弾性部材444の弾性力を上回って、弁棒442を弁開方向に付勢することが可能な磁力(磁界)を発生させるものである。このような磁力源210は、例えば、永久磁石又は電磁石が略円環状に配置されて構成されている。
【0065】
また、磁力源210は、例えば、上面側がS極に、下面側がN極となるように配置されており、弾性部材444の弾性力よりも十分大きな磁力が弁棒442の磁力源443に作用するようなものが採用されている。なお、磁力源210に電磁石を用いる場合は、ノズル140,150の上昇時に連動して、磁力を発生し、下降時には消磁するように電磁石の駆動電源を制御するとよい。
【0066】
緩衝部材220は、磁力源210を覆うことで、バルブ体40,50に直接接触するものである。この緩衝部材220は、ノズル140,150(のノズル管141,151)の上昇移動による衝撃や上昇位置のズレを吸収するために、クッション性を有するフッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーン系のゴムなどの弾性材で略円環状に形成されている。このような円環状に形成された磁力源210及び緩衝部材220は、中心側をノズル140,150(のノズル管141,151)から供給又は排出される気体が通過可能になっている。
【0067】
リング部材230は、略円筒状のものであり、内周面には中心に向かって突出するように、フランジ231が形成されている。フランジ231は、ノズル140,150(のノズルサポート143,153)に嵌合して装着された際の抜け落ち止めとして機能するとともに、ノズル140,150(のノズル管141,151)の下降時に、磁力源210及び緩衝部材220が追従して下降することを防ぐストッパとして機能するものである。なお、緩衝部材220の上端面は、リング部材230の上端面よりも上方に位置している。
【0068】
ところで、この弁開閉治具200は、既存のロードポート100に対して適用可能にするため、弁開閉治具200をノズル140,150に着脱可能に装着できるように構成されたが、ロードポート100の製造時に、あらかじめノズル140,150に一体化しておくことも可能であり、この場合、緩衝部材142,152を省略してもよい。
【0069】
最後に、バルブ体40,50の弁開閉動作について説明する。
【0070】
図3Aにおいて、バルブ体40の通気口431側に陽圧が加わらないと、弾性部材444の弾性力により付勢された弁棒442が弁孔441を閉じて、内部及び外部のいずれの側に対しても気体の流通を遮断している。また、図4Aにおいて、バルブ体50の通気口411側に陽圧が加わらないと、弾性部材444の弾性力により付勢された弁棒442が弁孔441を閉じて、内部及び外部のいずれの側に対しても気体の流通を遮断している。
【0071】
例えば、バルブ体40の通気口431側(あるいは、バルブ体50の通気口411側)に所定値以上の陽圧が加わり、弾性部材444の弾性力を超えると、通常は、弁棒442が弁孔441を開くように移動する。しかしながら、何らかの異常により、弁棒442が移動しないことがあるため、本実施形態の基板収納容器1では、外部からの磁力によって、弁棒442を強制的に弁開方向に移動させることができるようになっている。
【0072】
図3B及び図4Bに示すように、ロードポート100のノズル140,150がバルブ体40,50に接近して接続されると、バルブ体40では、磁力源443及びノズル140の磁力源210の対向する極性がN極とS極であるため、磁力が引き合って、弁棒442が弁開方向に付勢されて、弁座と弁棒442との間に隙間Gを形成し、弁孔441が開くようになる。
【0073】
なお、バルブ体40の磁力源443に強磁性体を用いた場合は、ノズル140の磁力源210に磁化されて、磁力源443がN極となり、上記と同様に、磁力が引き合って、弁孔441が開くようになる。なお、バルブ体40の磁力源443として強磁性体を用いる場合には、ノズル140の磁力源210の極性はN極又はS極のいずれであってもよい。
【0074】
一方、バルブ体50では、磁力源443及びノズル150の磁力源210の対向する極性がS極とS極であるため、磁力が反発して、弁棒442が弁開方向に付勢されて、弁座と弁棒442との間に隙間Gを形成し、弁孔441が開くようになる。
【0075】
以上説明したとおり、本発明に係る実施形態の基板収納容器1は、基板を収納可能な容器本体10と、容器本体10の開口を閉止する蓋体20と、容器本体10に装着され、容器本体10に対する気体の流通を制御するバルブ体40,50と、を備えるものであって、バルブ体40,50は、弁孔441を閉止する弁棒442を有し、弁棒442は、弾性力により弁閉方向に付勢されるとともに、磁力の付加により弁開方向に付勢されるものである。
【0076】
このように、弾性部材444の弾性力により弁棒442を弁閉方向に付勢されるバルブ体40,50では、一方側の圧力が他方側に比較して高くなり、弁閉方向に付勢する弾性力を超えた場合でも、バルブ体40,50が弁開状態にならないことがあるが、これにより、気体の圧力だけでなく、外部から磁力を付加することで、弁棒442を弁開方向に付勢するため、気体の流通を制御するバルブ体40,50の弁開動作の確実性を向上させることができる。
【0077】
実施形態のバルブ体40は、気体を流出させる排気用であり、弁棒442は、磁力の吸引力により弁開方向に付勢される。これにより、外部の磁力源210に対向するように、弁棒442が付加される磁力の極性N(又はS)と反対の極性S(又はN)の磁力源443を含むことで、あるいは、弁棒442が強磁性体を含むことで、磁力の吸引力によって、バルブ体40を弁開させることができる。
【0078】
実施形態のバルブ体50は、気体を流入させる給気用であり、弁棒442は、磁力の反発力により弁開方向に付勢される。これにより、外部の磁力源210に対向するように、弁棒442が付加される磁力の極性N(又はS)と同一の極性N(又はS)の磁力源443を含むことで、磁力の反発力によって、バルブ体50を弁開させることができる。
【0079】
実施形態のバルブ体40,50は、気体を濾過するフィルタ46を有する。これにより、バルブ体40,50を流通する気体を濾過することができる。
【0080】
実施形態のロードポート100は、基板収納容器1を載置する載置台110と、基板収納容器1に対向する開口窓120を開閉するポートドア130と、基板収納容器1に装着されたバルブ体40,50に接続され、気体を流通可能なノズル140,150と、を備えるものであって、ノズル140,150は、バルブ体40,50に接続された際、バルブ体40,50の弁棒442に磁力を付加することで弁開方向に付勢する。これにより、磁力の付加により弁開方向に付勢される弁棒442を有するバルブ体40,50が装着された基板収納容器1を載置するロードポート100において、バルブ体40,50の弁開動作の確実性を向上させることができる。
【0081】
実施形態の弁開閉治具200は、気体を流通可能なノズル140,150を備えるロードポート100用のものであって、ノズル140,150に装着可能に形成されるとともに、磁力を発生させる磁力源210を含む。これにより、既存のロードポート100においても、磁力の付加により弁開方向に付勢される弁棒442を有するバルブ体40,50の弁開動作の確実性を向上させることができる。
【0082】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0083】
(変形例)
上記実施形態では、基板収納容器1のバルブ体40,50は、それぞれ1個ずつ備えられていたが、それぞれ2個ずつ備えられていてもよく、バルブ体40が1個で、バルブ体50が3個であってもよく、またその位置も、容器本体10における蓋体20(開口)側でなく、背面側であってもよい。そして、ロードポート100のノズル140,150の個数は、バルブ体40,50の個数と位置に対応して、同じかそれ以上であってもよい。
【0084】
上記実施形態において、例えば、容器本体10の内部の後方(奥側)に、リアリテーナ(図示なし)を配置してもよい。リアリテーナは、蓋体20が閉止された場合に、後述するフロントリテーナと対となって、基板を保持することができる。あるいは、支持体が、溝ティースの奥側に、例えば、「く」字状や直線状の基板保持部を有することで、フロントリテーナと基板保持部とで基板を保持するようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 基板収納容器
10 容器本体、11 リブ、12 貫通孔、13 位置決め凹部
20 蓋体
40,50 バルブ体
41 固定筒、410 第1筒部、411 通気口、412 螺子溝、413 フランジ
42 保持筒、422 螺子溝、423 フランジ
43 中蓋筒、430 第2筒部、431 通気口、433 フランジ
440 弁本体、441 弁孔、442 弁棒、443 磁力源、444 弾性部材、445 ストッパ
45 シール部材(Oリング)
46 フィルタ
47 シール部材(Oリング)
100 ロードポート
110 載置台、111 位置決め機構
120 開口窓、
130 ポートドア、131 蓋体開閉機構
140,150 ノズル、141,151 ノズル管、142,152 緩衝部材、143,153 ノズルサポート
160 シャッタ
200 弁開閉治具
210 磁力源、220 緩衝部材、230 リング部材、231 フランジ
300 搬送ロボット、310 搬送アーム
40A,50A バルブ体、442A 弁棒
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7