(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】既設管更生用帯状部材
(51)【国際特許分類】
B29C 63/32 20060101AFI20240724BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20240724BHJP
F16L 9/16 20060101ALI20240724BHJP
F16L 55/165 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L1/00 J
F16L9/16
F16L55/165
(21)【出願番号】P 2021046414
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】北山 康
(72)【発明者】
【氏名】山崎 政浩
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 武司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 陸太
(72)【発明者】
【氏名】上田 一貴
(72)【発明者】
【氏名】宮武 優太
(72)【発明者】
【氏名】垣根 伸次
【審査官】浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-161859(JP,A)
【文献】特開2002-264216(JP,A)
【文献】特開2020-143710(JP,A)
【文献】特開2019-181789(JP,A)
【文献】特開2005-161765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/32
F16L 1/00
F16L 9/16
F16L 55/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管の内周にライニングされる螺旋管状の更生管を構成する合成樹脂からなる既設管更生用の帯状部材であって、
前記更生管の内周側の管壁部を構成する底板部と、
前記底板部に対して幅方向の一端側へ延び出て他端側が引っ込み、前記更生管の外周側の管壁部を構成する蓋板部と、
当該帯状部材の幅方向の一端部に設けられた第1嵌合部と、
当該帯状部材の幅方向の他端部に設けられ、前記更生管においては前記第1嵌合部と凹凸嵌合される第2嵌合部と、
前記底板部と前記蓋板部とを連ねる1つ又は前記幅方向に間隔を置いて配置された複数の縦板部と、
を備え、前記第1嵌合部が、前記蓋板部の幅方向の一端部によって外周側から覆われているか、又は前記蓋板部の幅方向の一端部の内周側面に設けられて
おり、
前記底板部における前記幅方向の他端部には、前記蓋板部と底板部の間の高さの段違い部が設けられており、前記更生管においては前記蓋板部の幅方向の一端部が前記段違い部に被さることを特徴とする帯状部材。
【請求項2】
前記蓋板部が、複数の縦板部に連続して跨っていることを特徴とする請求項1に記載の帯状部材。
【請求項3】
前記段違い部に前記第2嵌合部が設けられていることを特徴とする請求項
1又は2に記載の帯状部材。
【請求項4】
前記底板部及び蓋板部の各々の幅方向の一端部に前記第1嵌合部が設けられ、かつ前記蓋板部の第1嵌合部が、前記底板部の第1嵌合部より前記幅方向の一端側にずれて配置されており、
前記底板部における前記段違い部よりも幅方向の他端側へ延び出た部分と前記段違い部との各々に、前記第2嵌合部が設けられていることを特徴とする請求項
1~3の何れか1項に記載の帯状部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老朽化した既設管を更生するための帯状部材に関し、特に既設管の内周にライニングされる螺旋管状の更生管を構成する合成樹脂製の帯状部材に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水管などの既設管の内周に更生管をライニングして、既設管を更生する工法が知られている。更生管は、例えば合成樹脂製の帯状部材によって構成されている(例えば特許文献1~6等参照)。
【0003】
この種の帯状部材は、平坦な帯板部と、雌雄の嵌合部と、補強リブを含む。雌嵌合部は、内周側へ開口する嵌合溝を有して帯板部の幅方向の一端部から外周側へ隆起されている。雄嵌合部は、帯板部の幅方向の他端部から外周側へ突出する嵌合凸部を有している。ここで、内周側とは、更生管となったとき、径方向内側を向く側を言う。外周側とは、更生管に製管されたとき、径方向外側を向く側を言う。
【0004】
帯板部の幅方向の中間部には、補強リブが外周側へ突出するように設けられている。一般に、補強リブはI字又はT字断面に形成されている。複数の補強リブが帯状部材の幅方向に間隔を置いて並んで配置されている(特許文献1~3等参照)。
特許文献4の補強リブは、U字状の断面形状に形成され、その内部に充填材が詰められている。特許文献5の帯状部材には、四角形や円形の中空断面形状をなす単一の補強凸部が形成されている。特許文献6の帯状部材は、H字状の断面形状をなす単一の補強凸部が形成されている。
【0005】
かかる帯状部材が、製管機によって螺旋状に巻回されるとともに、製管機の一対のピンチローラによって挟み付けられて、隣接する雌雄の嵌合部の嵌合溝及び嵌合凸部どうしが嵌合される。これによって、帯状部材から螺旋管状の更生管が形成される(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開WO2016/175243(
図3、
図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前掲特許文献などに開示された従来の既設管更生用の帯状部材は、雌雄の嵌合部及び補強リブが外周側へ突出されているために、該帯状部材からなる更生管の外周面には、複数条の螺旋状の凹凸が形成される。このため、既設管と更生管の間への裏込めを省略した場合、更生管の外周の凹部分に地下水や土砂が入り込んで、陥没が起きることも考えられる。また、既設管の曲線部(カーブ部)の内まわり側と外まわり側との周長差などによって、管軸方向に引張力や圧縮力が作用した場合、帯状部材の嵌合部どうしの嵌合による螺旋状の継ぎ目部分に隙間や段差が出来、そこに地下水や土砂が入り込んで、陥没が起きることも考えられる。
一方、帯状部材を凹凸の無い単純な平板形状とすると、螺旋管を製管する際、製管機による嵌合の位置合わせが容易でなく、かつ曲げ変形させるのが容易でなく、製管に支障を来たす。
本発明は、かかる事情に鑑み、更生管の製管に支障を来たさないようにしながら、製管された更生管の外周面をなるべく平滑にして、地表の陥没を抑制することを主目的とする。また、更生管の管軸方向に引張力や圧縮力が作用した場合でも、帯状部材の嵌合部どうしの嵌合による螺旋状の継ぎ目部分に隙間や段差が出来るのを防止することを第2目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、既設管の内周にライニングされる螺旋管状の更生管を構成する合成樹脂からなる既設管更生用の帯状部材であって、
前記更生管の内周側の管壁部を構成する底板部と、
前記底板部に対して幅方向の一端側へ延び出て他端側が引っ込み、前記更生管の外周側の管壁部を構成する蓋板部と、
当該帯状部材の幅方向の一端部に設けられた第1嵌合部と、
当該帯状部材の幅方向の他端部に設けられ、前記更生管においては前記第1嵌合部と凹凸嵌合される第2嵌合部と、
前記底板部と前記蓋板部とを連ねる1つ又は前記幅方向に間隔を置いて配置された複数の縦板部と、
を備え、前記第1嵌合部が、前記蓋板部の幅方向の一端部によって外周側から覆われているか、又は前記蓋板部の幅方向の一端部の内周側面に設けられていることを特徴とする。
【0009】
当該帯状部材から更生管を製管する際は、製管機(特許文献1~3等参照)を用いて、帯状部材を螺旋状に巻回するとともに、互いに隣接する第1嵌合部と第2嵌合部とを凹凸嵌合させる。このとき、例えば製管機のピンチローラのフィンが帯状部材の蓋板部の端縁や第2嵌合部の側面に宛がわれるようにすることによって、帯状部材の外周部が平坦な蓋板部で構成されていても、製管機に対して帯状部材を幅方向に位置決めでき、第1、第2嵌合部どうしを正確に位置合わせして嵌合できる。また、単純な厚肉平板形状の帯状部材と比べて曲げ変形が容易である。したがって、製管に支障を来さないようにできる。
当該帯状部材からなる更生管においては、外周面の少なくとも一部が蓋板部によって構成されることによって、更生管の外周の凹部分の容積を小さくできる。特に、第1、第2嵌合部が蓋板部によって覆われることで、嵌合位置における更生管の外周が平滑になる。したがって、既設管と更生管の間への裏込めを省略した裏込めレス工法においても、更生管の外周の凹部分への地下水や土砂の流入量を低減でき、地表の陥没を抑制することができる。この結果、前記主目的を達成できる。
特に、第1嵌合部を蓋板部の幅方向の一端部に設けた場合には、既設管の曲線部(カーブ部)の内まわり側と外まわり側との周長差などによって、管軸方向に引張力や圧縮力が作用した場合でも、更生管の外周面における帯状部材の螺旋状の継ぎ目部分に隙間や段差が形成されるのを防止できる。したがって、そのような隙間や段差に地下水や土砂が入り込んで、陥没が起きるのを防止できる。この結果、前記第2の目的を達成できる。
また、第1嵌合部を底板部の幅方向の一端部に設けた場合には、更生管の内周面における帯状部材の螺旋状の継ぎ目部分に隙間や段差が形成されるのを防止でき、更生管の内周面の平滑度を確保して、更生管内を流れる流体の流通抵抗を低減できる。
さらに、当該帯状部材によれば、複数の中空部を有することによって、剛性が高まり、断面変形が抑制される。
【0010】
前記蓋板部が、複数の縦板部に連続して跨っていることが好ましい。
これによって、更生管の外周面の大半を平滑面にでき、陥没を一層抑制できる。
前記底板部の幅方向の前記他端部が、前記蓋板部より延び出ており、前記蓋板部が、前記底板部における前記他端部を除く部分の80%以上を外周側から覆っていることが好ましい。
蓋板部は、帯状部材の厚み方向に沿う設計高さの±10%以内の高さに配置されていることが好ましい。蓋板部が、設計高さ以上の高さに配置され、弾性的に底板部側へ押されるようになっていてもよい。これによって、既設管の内周面に老朽化による凹部が形成されていた場合でも、既設管と更生管との間の間隙をなるべく小さくできる。
第1嵌合部又は縦板部が、蓋板部より外周側へ突出されていてもよい。
【0011】
前記底板部における前記幅方向の他端部には、前記蓋板部と底板部の間の高さの段違い部が設けられており、前記更生管においては前記蓋板部の幅方向の一端部が前記段違い部に被さることが好ましい。
当該帯状部材の製管時には、製管機のピンチローラのフィンを段違い部に宛がうことによって、帯状部材の幅方向の位置決めを行なうことができる。
更生管においては、蓋板部の前記一端部を段違い部によって支持できる。
【0012】
前記段違い部に前記第2嵌合部が設けられていることが好ましい。
これによって、当該帯状部材からなる更生管においては、螺旋状に巻かれた帯状部材における蓋板部の第1嵌合部が、段違い部の第2嵌合部と嵌合されるようにできる。これによって、既設管の曲線部(カーブ部)の内まわり側と外まわり側との周長差などによって、管軸方向に引張力や圧縮力が作用した場合でも、更生管の外周面における帯状部材の螺旋状の継ぎ目部分に隙間や段差が形成されるのを確実に防止できる。したがって、そのような隙間や段差に地下水や土砂が入り込んで、陥没が起きるのを確実に防止できる。
【0013】
前記底板部及び蓋板部の各々の幅方向の一端部に前記第1嵌合部が設けられ、かつ前記蓋板部の第1嵌合部が、前記底板部の第1嵌合部より前記幅方向の一端側にずれて配置されており、
前記底板部における前記段違い部よりも幅方向の他端側へ延び出た部分と前記段違い部との各々に、前記第2嵌合部が設けられていることが好ましい。
これによって、当該帯状部材からなる更生管においては、螺旋状に巻かれた帯状部材における底板部の一周違いに隣接する第1嵌合部と第2嵌合部どうしが嵌合され、かつ蓋板部の第1嵌合部と段違い部の第2嵌合部どうしが嵌合される。要するに、更生管の内周側の底板部と外周側の蓋板部とが二重に嵌合される。したがって、既設管の曲線部(カーブ部)の内まわり側と外まわり側との周長差などによって、更生管の管軸方向に引張力や圧縮力が作用した場合でも、更生管の内周面及び外周面における螺旋状の継ぎ目部分に段差や間隙が形成されるのを確実に防止できる。更生管の内周面に段差や間隙が形成されるのを防止することによって、更生管の内周面の平滑度を確保でき、更生管内を通る流体が受ける流通抵抗を低減できる。更生管の外周面に段差や間隙が形成されるのを防止することによって、地表の陥没を確実に抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る既設管更生用帯状部材によれば、更生管の製管に支障を来たさないようにしながら、製管された更生管の外周面をなるべく平滑にして、地表の陥没を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る帯状部材からなる更生管によって更生された既設管の断面図である。
【
図2】
図2は、前記帯状部材の長手方向と直交する断面図である。
【
図3】
図3は、製管時における製管機のピンチローラと帯状部材の係合状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係る帯状部材の長手方向と直交する断面図である。
【
図6】
図6は、前記第2実施形態に係る帯状部材からなる更生管によって更生された既設管の一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(
図1~
図4)>
図1に示すように、老朽化した既設管1の内周に螺旋管状の更生管9がライニングされている。これによって、既設管1が更生されている。既設管1は、例えば地中に埋設された下水管である。2つの人孔4の間の下水管ごとに更生管9が施工されている。
なお、更生対象の既設管1は、下水管に限らず、上水道管、農業用水管、水力発電用導水管、ガス管、トンネル等であってもよい。
【0017】
好ましくは、更生管9は、既設管1の強度を借りることなく当該更生管9だけで所要の強度を担う自立管である。既設管1の内周と更生管9との間には、両者を構造上一体化させる裏込め材が充填されていない。更生管9は、裏込めレス工法によって施工されている。好ましくは、更生管9は、全周にわたって、既設管1の内周面に張り付けられており、更生管9の外周面と既設管1の内周面との間には隙間がほとんど形成されていない。
なお、人孔4と接続される管口部においては、既設管1の内周と更生管9の外周との間に止水材(図示省略)が設けられることが好ましい。
【0018】
更生管9は、既設管更生用帯状部材10(プロファイル)によって構成されている。帯状部材10が、螺旋状に巻回されて螺旋管状の更生管9となる。帯状部材10の材質は、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂である。帯状部材10は、合成樹脂の押出成形によって形成されている。帯状部材10は、更生管9が自立管となるべき剛性を有している。
【0019】
図2に示すように、帯状部材10は、底板部11と、蓋板部12と、嵌合部13,14と、複数の縦板部15を備え、
図2の紙面と直交する方向へ延びている。帯状部材10の長手方向と直交する断面は一定形状に形成されている。つまりは、帯状部材10の長手方向のどの位置でも同一の断面形状である。
【0020】
底板部11は、更生管9の内周側の管壁部9a(
図1)を構成するものであり、一定の厚みの平坦な帯板状に形成されている。蓋板部12は、更生管9の外周側の管壁部9b(
図1)を構成するものであり、一定の厚みの平坦な帯板状に形成されている。蓋板部12の厚みは、底板部11の厚みと好ましくは同程度である。蓋板部12と底板部11とが、帯状部材10の厚み方向(
図2において上下)に離れて対向している。かつ、蓋板部12は、底板部11に対して幅方向の一端側(
図2において左側)へずれて、他端側(
図2において右側)が引っ込んでいる。つまり、蓋板部12の幅方向の一端部12fは、底板部11よりも一端側(
図2において左側)へ延び出ている。底板部11の幅方向の他端部11eは、蓋板部12よりも他端側(
図2において右側)へ延び出ている。蓋板部12は、底板部11における前記他端部11eを除く部分の幅方向の好ましくは80%以上を外周側(
図2において上側)から覆っており、より好ましくは、当該実施形態のように、底板部11における前記他端部11eを除く部分の全体(100%)を外周側(
図2において上側)から覆っている。
【0021】
図2に示すように、底板部11と蓋板部12との間には、複数の縦板部15が設けられている。これら縦板部15は、帯状部材10の幅方向に間隔を置いて配置されている。各縦板部15は、帯状部材10の厚み方向に立設されている。縦板部15によって底板部11と蓋板部12とが連ねられている。
【0022】
底板部11及び蓋板部12と、幅方向に隣接する縦板部15とによって、中空部19が画成されている。
【0023】
蓋板部12が、複数の縦板部15に連続して跨っている。蓋板部12の幅方向の一端部12fは、一端側(
図2において左側)の縦板部15Aよりも延び出ている。蓋板部12の幅方向の他端部(
図2において右端部)は、他端側の縦板部15Bの外周側の端部(
図2において上端部)と交差している。
【0024】
底板部11における、蓋板部12よりも他端側(
図2において右側)へ延び出た部分11e(幅方向の他端部)には、蓋板部12と底板部11の間の高さの段違い部18が形成されている。段違い部18は、段違い棚部18aと、段違い縦板部18bを含む。段違い棚部18aは、蓋板部12及び底板部11と平行をなして、帯状部材10の厚み方向の中間の高さに配置されている。段違い棚部18aの幅方向の一端部(
図2において左端部)が、縦板部15Bに連なっている。
【0025】
段違い縦板部18bは、帯状部材10の厚み方向に立設されて、段違い棚部18aの幅方向の他端部(
図2において右端部)と底板部11とを連ねている。縦板部15Bと段違い部18とによって、段違い中空部19Dが形成されている。
【0026】
図2に示すように、帯状部材10の幅方向の一端部(
図2において左端部)には、2つの第1嵌合部13,16が設けられている。これら第1嵌合部13,16は、帯状部材10の厚み方向(
図2において上下)及び幅方向(
図2において左右)に互いにずれて配置されている。帯状部材10の幅方向の他端部(
図2において右端部)には、2つの第2嵌合部14,17が設けられている。これら第2嵌合部14,17は、帯状部材10の厚み方向及び幅方向に互いにずれて配置されている。
【0027】
詳しくは、底板部11の幅方向の一端部(
図2において左端部)に第1嵌合部13が設けられている。第1嵌合部13は、底板部11から幅方向の一端側(
図2において左方)へ張り出すとともに、底板部11から外周側(
図1において上方)へ隆起されている。第1嵌合部13は、2条(複数)の嵌合溝13b及び嵌合凸部13dを交互に有する凹凸断面形状に形成されている。嵌合溝13bは内周側(
図2において下側)へ開口されている。嵌合凸部13dは内周側(
図2において下側)へ突出されている。
【0028】
第1嵌合部13よりも外周側(
図2において上側)に離れて蓋板部12が配置されている。蓋板部12の幅方向の一端部12fが、底板部11ひいては第1嵌合部13よりも延び出て、第1嵌合部13を外周側(
図2において上側)から覆っている。
【0029】
蓋板部12の幅方向の一端部12fの内周側面(
図2において下側面)に、もう1つの第1嵌合部16が設けられている。蓋板部12の第1嵌合部16は、底板部11の第1嵌合部13より幅方向の一端側(
図2において左側)にずれて配置されている。第1嵌合部16は、第1嵌合部13と同様に、2条(複数)の嵌合溝16b及び嵌合凸部16dを交互に有する凹凸断面形状に形成されている。嵌合溝16bは内周側(
図2において下側)へ開口され、嵌合凸部16dは内周側(
図2において下側)へ突出されている。
【0030】
底板部11の幅方向の他端部11eは、段違い部18よりも他端側(
図2において右側)へ延び出ており、該延び出た部分11fの外周側面(
図2において上側面)に第2嵌合部14が設けられている。第2嵌合部14は、2条(複数)の嵌合凸部14b及び嵌合溝14dを交互に有し、第1嵌合部13と相補をなす凸凹断面形状に形成されている。各嵌合凸部14bは外周側(
図2において上側)へ突出され、嵌合溝14dは外周側(
図2において上側)へ開口されている。
【0031】
さらに、段違い部18における段違い棚部18aの外周側面(
図2において上側面)に、もう1つの第2嵌合部17が設けられている。第2嵌合部17は、第2嵌合部14と同様に、2条(複数)の嵌合凸部17b及び嵌合溝17dを交互に有し、第1嵌合部16と相補をなす凸凹断面形状に形成されている。各嵌合凸部17bは外周側(
図2において上側)へ突出され、嵌合溝17dは外周側(
図2において上側)へ開口されている。
【0032】
図1及び
図4に示すように、帯状部材10からなる更生管9においては、螺旋状に巻回された帯状部材10における蓋板部12と底板部11の幅方向の端部12f,11eどうしが管厚方向(管径方向)に重なっている。詳しくは、蓋板部12の幅方向の一端部12fが、一周違いに隣接する底板部11の幅方向の他端部11eの外周側(
図4において上側)に被さっている。さらに、蓋板部12の幅方向の一端部12fは、段違い部18に外周側から被さって支持されている。ひいては、蓋板部12の幅方向の一端部12fは、第2嵌合部14,17を外周側から覆っている。
【0033】
そして、嵌合部13,14どうし及び嵌合部16,17どうしが凹凸嵌合されている。すなわち、内周側(
図4において下側)の嵌合部13,14における、嵌合溝13bに嵌合凸部14bが嵌合され、嵌合凸部13dが嵌合溝14dに嵌合されている。外周側(
図4において上側)の嵌合部16,17においては、嵌合溝16bに嵌合凸部17bが嵌合され、嵌合凸部16dが嵌合溝17dに嵌合されている。これによって、帯状部材10の内周側部と外周側部が二重に嵌合され、嵌合強度が高く確保されている。
【0034】
さらに、底板部11の幅方向の両端部の一周ずれた部分どうしが突き当てられて、螺旋状の内周側継ぎ目9cが形成されるとともに、蓋板部12の幅方向の両端部の一周ずれた部分どうしが突き当てられて、螺旋状の外周側継ぎ目9dが形成されている。継ぎ目9cは、更生管9の内周面に現れている。継ぎ目9dは、更生管9の外周面に現れている。継ぎ目9c,9dには、止水材(図示省略)が設けられていてもよい。
【0035】
図1及び
図3に示すように、帯状部材10から更生管9を製管する際は、製管機(特許文献1~3参照)を用いて、帯状部材10を螺旋状に巻回するとともに、一周違いに隣接する蓋板部12と底板部11の幅方向の端部12f,11eどうしを重ね合わせ、互いに対向する嵌合部13,14どうし、及び嵌合部16,17どうしを嵌合させる。このとき、製管機の一対のピンチローラ31,32で帯状部材10を挟み込んで駆動力を付与する。かつ、ピンチローラ31,32のうち、蓋板部12と対向するアウターピンチローラ31の複数のフィン33を蓋板部12や段違い部18の端面などに宛がう。これによって、帯状部材10の外周部が平坦な蓋板部12で構成されていても、製管機に対して帯状部材10を幅方向に位置決めでき、嵌合部13,14どうし及び嵌合部16,17どうしを正確に位置合わせして嵌合できる。また、帯状部材10は、単純な厚肉平板形状の帯状部材と比べて曲げ変形が容易である。この結果、製管を容易に行なうことができる。
【0036】
好ましくは、更生管9を既設管1の全周にわたって張り付けるように製管する。張り付ける方法として、例えば、特許文献2に記載のように、更生管9を拡径方向に捩じって、嵌合部13,14どうし及び嵌合部16,17どうしを巻き方向に沿って滑らす拡張(エキスパンド)製管を行ってもよく、特許文献3の製管機により帯状部材10の弾性を利用して張り付け製管してもよい。特許文献1の製管機を用いて、該製管機にブレーキをかけながら帯状部材10を過供給して拡径製管してもよい。これによって、既設管1の内周面と更生管9の外周面との間に隙間がほとんど形成されないようにできる。したがって、既設管1と更生管9との間への裏込め材を省略した裏込めレス工法を採用できる。
【0037】
このようにして製管された更生管9においては、外周側の管壁部9aが平滑な蓋板部12によって構成される。これによって、更生管9の外周に凹部分が形成されるのを防止できる。特に、嵌合部13,14どうし及び嵌合部16,17どうしによる嵌合構造が蓋板部12によって外周側から覆われることで、更生管9の外周面における少なくとも継ぎ目9dの周辺部分が平滑になる。したがって、既設管1と更生管9の間に裏込め材が充填されていなくても、更生管9の外周の凹部分への地下水や土砂の流入を防止でき、地表の陥没を防止することができる。
【0038】
詳細な図示は省略するが、既設管1がカーブする部分においては、内まわり側と外まわり側との周長差などによって、更生管9の管軸方向に引張力や圧縮力が作用する。その場合でも、特に外周側の蓋板部12の第1嵌合部16と段違い部18の第2嵌合部17とがしっかりと嵌合されることによって、更生管9の外周側継ぎ目9dに前記引張力や圧縮力に起因する隙間や段差が形成されるのを防止することができる。したがって、そのような隙間や段差に地下水や土砂が入り込んで陥没が起きるのを防止できる。
また、内周側の底板部11の嵌合部13,14どうしがしっかりと嵌合されることによって、更生管9の内周側継ぎ目9cに隙間や段差が形成されるのを防止できる。したがって、更生管9の内周面の平滑度を確保して、更生管内を流れる流体の流通抵抗を低減できる。
さらに、帯状部材10ひいては更生管9によれば、複数の中空部19を有することによって剛性が高まり、断面変形が抑制されて、自立強度が確保されている。
【0039】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を適宜省略する。
<第2実施形態(
図5~
図6)>
図5に示すように、第2実施形態の帯状部材10Bにおいては、底板部11の第1嵌合部13及び第2嵌合部14(
図1)が省略されている。嵌合部としては、蓋板部12の幅方向の一端部12fの第1嵌合部16と、段違い部18の第2嵌合部17だけが設けられている。すなわち、外周側の嵌合部16,17だけが設けられている。
【0040】
図6に示すように、帯状部材10Bからなる更生管9においては、螺旋状に巻回された帯状部材10Bにおける隣接する嵌合部16,17どうしが嵌合されている。これによって、更生管9の管軸方向に引張力や圧縮力が作用する場合でも、更生管9の外周側継ぎ目9dに隙間や段差が形成されるのを防止することができ、そのような隙間や段差に地下水や土砂が入り込んで陥没が起きるのを防止できる。
【0041】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、帯状部材が、第1嵌合部として内周側の第1嵌合部13だけを有し、かつ第2嵌合部として内周側の第2嵌合部14だけを有していてもよい。
第1嵌合部が外周側へ開口する凹状であり、第2嵌合部が内周側へ突出する凸状であってもよい。
第1嵌合部が内周側へ突出する凸状であり、第2嵌合部が外周側へ開口する凹状であってもよい。
蓋板部は、少なくとも底板部11より幅方向の一端側の部分12f、ないしは第1嵌合部13,16に被さる部分を有していればよく、必ずしも底板部11における幅方向の他端部11eを除く部分の全体を覆っている必要は無い。
底板部11と蓋板部12を連ねる縦板部15は、少なくとも1つあればよい。縦板部15が第1嵌合部13の頂部と蓋板部12との間に設けられていてもよく、底板部11と蓋板部12とが第1嵌合部13及び縦板部15を介して連なっていてもよい。
【0042】
幅方向の中間の縦板部15が近接する2つの縦板部分を有し、これら縦板部分どうしの間に蓋板部の外周面に開口する凹溝が形成され、該凹溝によって蓋板部が分割されていてもよい。この場合、製管の際、製管機のピンチローラ31のフィン33を前記凹溝に挿し入れることで、製管機に対して帯状部材を幅方向に位置決めでき、嵌合部13,14どうし及び嵌合部16,17どうしを確実に嵌合させることができる。この場合、蓋板部における幅方向の一端部を除いた底板部と対向する部分の総幅は、好ましくは凹溝の総幅より大きく、より好ましくは凹溝の総幅より十分に大きく、例えば凹溝の総幅の数倍以上である。
前記凹溝には充填材が充填されていることが好ましい。これによって、凹溝が空隙にならないようにでき、凹溝内への地下水や土砂の流入を防止して、陥没を抑制できる。前記充填材は、帯状部材の押出成形時にそれと併行して充填されることが好ましい。
前記充填材は、エラストマー、ゴムなどの弾性圧縮性を有していることが好ましい。これによって、製管の際に充填材を圧縮させながらフィン33を凹溝に挿し入れることができる。
蓋板部12が、幅方向に複数の蓋板部分に分割され、各蓋板部分が縦板部15を介して底板部11と連なり、隣接する蓋板部分の対向端部どうし間には中空部19に連なるスリットが形成されていてもよい。この場合、前記スリットには充填材を設けることで、地下水や土砂の流入を防止することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、例えば老朽化した下水道管などの既設埋設管の更生技術に適用できる。
【符号の説明】
【0044】
3 製管機
31 アウターピンチローラ
32 インナーピンチローラ
33 フィン
9a 内周側の管壁部
9b 外周側の管壁部
9c 内周側継ぎ目
9d 外周側継ぎ目
10,10B 帯状部材
11 底板部
11e 幅方向の他端部(蓋板部より他端側へ延び出た部分)
11f 段違い部より他端側へ延び出た部分
12 蓋板部
12f 幅方向の一端部
13 第1嵌合部
13b 嵌合溝
13d 嵌合凸部
14 第2嵌合部
14b 嵌合凸部
14d 嵌合溝
15 縦板部
15A 一端側の縦板部
15B 他端側の縦板部
16 第1嵌合部
16b 嵌合溝
16d 嵌合凸部
17 第2嵌合部
17b 嵌合凸部
17d 嵌合溝
18 段違い部
18a 段違い棚部
18b 段違い縦板部
19 中空部
19D 段違い中空部