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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
B60C19/00 B
B60C19/00 J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021109729
(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公開番号】P2023006884
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 信行
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-55452(JP,A)
【文献】特開2020-55453(JP,A)
【文献】特開2004-82775(JP,A)
【文献】特開2012-240680(JP,A)
【文献】特開2019-137150(JP,A)
【文献】特表2021-514891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00-30/72
B60C 1/00-19/12
23/00-23/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のビード部間を1対のサイドウォール部を介して延在する、少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスを有する、タイヤであって、
前記サイドウォール部及び前記ビード部からなるタイヤサイド部における前記カーカスのタイヤ幅方向外側又は内側に埋設され、前記タイヤサイド部におけるタイヤ周方向の少なくとも一部の領域及びタイヤ径方向の少なくとも一部の領域にわたって延在する、導電性部材と、
前記タイヤサイド部に埋設された、少なくとも1個のICチップと、
を備え、
前記少なくとも1個のICチップのうちの少なくとも1個は、前記導電性部材に機械的接続によらずに接触する、接触ICチップとされていることを特徴とする、タイヤ。
【請求項2】
前記導電性部材は、複数本の導電性繊維を互いに接触させて帯状に形成されてなる、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記導電性部材は、前記タイヤサイド部におけるタイヤ周方向の全体にわたって延在している、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
複数の前記接触ICチップを備え、
前記複数の前記接触ICチップのうちの少なくとも2つは、互いにタイヤ周方向において離間した位置に埋設されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記複数の前記接触ICチップのうちの前記少なくとも2つは、互いにタイヤ周方向において中心角として90°以上離間した位置に埋設されている、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
複数の前記接触ICチップを備え、
前記複数の前記接触ICチップのうちの少なくとも2つは、互いにタイヤ径方向において離間した位置に埋設されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記ICチップは、前記サイドウォール部を形成するサイドゴムに埋設されている、請求項1~6の何れか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ICチップは、前記導電性部材を被覆する被覆材に埋設されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タイヤにRFタグ等の通信装置を埋設した構成が、知られている。例えば、特許文献1には、タイヤサイド部内にRFタグが埋設されたタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-539047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、一般に、ICチップとアンテナとがハンダ等で機械的に接続されたRFタグを、そのままタイヤ内に埋設すると、当該接続部での断線等により耐久性が低下するおそれがある。そこで、補強のため、RFタグを予めゴムや樹脂等で被覆して用いることが考えられるが、構造が複雑になり高度な技術が必要となる。
【0005】
そこで、本発明は、簡易な構成で、通信装置の耐久性を向上させることができる、タイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタイヤは、
1対のビード部間を1対のサイドウォール部を介して延在する、少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスを有する、タイヤであって、
前記サイドウォール部及び前記ビード部からなるタイヤサイド部における前記カーカスのタイヤ幅方向外側又は内側に埋設され、前記タイヤサイド部におけるタイヤ周方向の少なくとも一部の領域及びタイヤ径方向の少なくとも一部の領域にわたって延在する、導電性部材と、
前記タイヤサイド部に埋設された、少なくとも1個のICチップと、
を備え、
前記少なくとも1個のICチップのうちの少なくとも1個は、前記導電性部材に機械的接続によらずに接触する、接触ICチップとされていることを特徴とする。
本発明のタイヤによれば、簡易な構成で、通信装置の耐久性を向上させることができる。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、
前記導電性部材は、複数本の導電性繊維を互いに接触させて帯状に形成されてなっていてもよい。
この場合、導電性部材の通信性が高まるとともに、導電性部材をタイヤの内部に埋設しやすくなる。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、
前記導電性部材は、前記タイヤサイド部におけるタイヤ周方向の全体にわたって延在していることが好ましい。
この場合、通信装置の故障に対する信頼性を向上できるとともに、タイヤサイド部への通信装置の埋設による外観不良を抑制できる。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、
複数の前記接触ICチップを備え、
前記複数の前記接触ICチップのうちの少なくとも2つは、互いにタイヤ周方向において離間した位置に埋設されていることが好ましい。
この場合、通信装置の故障に対する信頼性が向上する。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、
前記複数の前記接触ICチップのうちの前記少なくとも2つは、互いにタイヤ周方向において中心角として90°以上離間した位置に埋設されていることが好ましい。
この場合、通信装置の故障に対する信頼性がより向上する。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、
複数の前記接触ICチップを備え、
前記複数の前記接触ICチップのうちの少なくとも2つは、互いにタイヤ径方向において離間した位置に埋設されていることが好ましい。
この場合、通信装置の故障に対する信頼性が向上する。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、
前記ICチップは、前記サイドウォール部を形成するサイドゴムに埋設されていてもよい。
この場合、ICチップを内蔵するタイヤを効率良く製造できる。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、
前記ICチップは、前記導電性部材を被覆する被覆材に埋設されていてもよい。
この場合、ICチップを内蔵するタイヤを効率良く製造できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易な構成で、通信装置の耐久性を向上させることができる、タイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係るタイヤのタイヤサイド部を、タイヤ幅方向外側から見た様子を示す、側面図である。
図2図1のタイヤの一部を、図1のA-A線に沿う断面により一部拡大図とともに示す、タイヤ幅方向断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係るタイヤの一部を、図1のA-A線に沿う断面と同様の断面により示す、タイヤ幅方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るタイヤは、任意の種類の空気入りタイヤに好適に利用でき、例えば、乗用車用空気入りタイヤ、トラック・バス用空気入りタイヤ等に好適に利用できる。
【0017】
以下、本発明に係るタイヤの実施形態について、図面を参照しつつ例示説明する。
各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。一部の図面では、タイヤ幅方向を符号「WD」で示し、タイヤ径方向を符号「RD」で示し、タイヤ周方向を符号「CD」で示している。本明細書において、タイヤ内腔に近い側を「タイヤ内側」といい、タイヤ内腔から遠い側を「タイヤ外側」という。
【0018】
図1図2は、本発明の第1実施形態に係るタイヤ1を説明するための図面である。図1は、本発明の第1実施形態に係るタイヤのタイヤサイド部を、タイヤ幅方向外側から見た様子を示す、側面図である。図2は、図1のタイヤの一部(具体的には、タイヤ赤道面CLに対する一方側の部分)を、図1のA-A線に沿う断面により一部拡大図とともに示す、タイヤ幅方向断面図である。図3は、本発明の第2実施形態に係るタイヤ10の一部を、図1のA-A線に沿う断面と同様の断面により示す、タイヤ幅方向断面図である。
なお、本発明の実施形態のタイヤ1、10は、任意の種類のタイヤとして構成されてよい。
【0019】
以下、特に断りのない限り、各要素の位置関係や寸法等は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態で測定されるものとする。また、タイヤを適用リムに装着し、タイヤに規定内圧を充填し、最大荷重を負荷した状態で、路面と接する接地面のタイヤ幅方向の幅を、タイヤの接地幅といい、当該接地面のタイヤ幅方向の端部を接地端という。
【0020】
本明細書において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指すが、これらの産業規格に記載のないサイズの場合は、空気入りタイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。「適用リム」には、現行サイズに加えて将来的に前述の産業規格に記載されるサイズも含まれる。「将来的に記載されるサイズ」の例として、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズが挙げられ得る。
【0021】
本明細書において、「規定内圧」とは、前述したJATMA YEAR BOOK等の産業規格に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいい、前述した産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。また、本明細書において、「最大荷重」とは、前述した産業規格に記載されている適用サイズのタイヤにおける最大負荷能力に対応する荷重、又は、前述した産業規格に記載のないサイズの場合には、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する荷重を意味する。
【0022】
(第1実施形態)
図2に示すように、本発明の第1実施形態に係るタイヤ1は、トレッド部11と、このトレッド部11のタイヤ幅方向の両端部からタイヤ径方向内側に延びる1対のサイドウォール部12と、各サイドウォール部12のタイヤ径方向内側の端部に設けられた1対のビード部13と、を備えている。トレッド部11は、タイヤ1のうち、1対の接地端どうしの間のタイヤ幅方向部分である。ビード部13は、タイヤ1をリムに装着したときに、タイヤ径方向内側及びタイヤ幅方向外側においてリムに接するように構成される。
タイヤ1は、トレッド部11のタイヤ幅方向の両端部からタイヤ径方向内側に延びる1対のタイヤサイド部14を有する。タイヤサイド部14は、サイドウォール部12及びビード部13からなる。
また、タイヤ1は、1対のビードコア2aと、1対のビードフィラー2bと、カーカス3と、ベルト4と、トレッドゴム5と、サイドゴム6aと、インナーライナー7と、を備えている。上記サイドウォール部12は、少なくともベルト4よりタイヤ径方向内側の部分であって、ビード部13よりタイヤ径方向外側の部分を指す。
【0023】
各ビードコア2aは、それぞれ、対応するビード部13に埋設されている。ビードコア2aは、周囲をゴムにより被覆されている複数のビードワイヤを備えている。但し、ビードコア2aは、1本のビードワイヤからなっていてもよい。ビードワイヤは、金属(例えばスチール)から構成されると好適である。ビードワイヤは、例えば、モノフィラメント又は撚り線からなるものとすることができる。なお、ビードワイヤは、有機繊維やカーボン繊維から構成されてもよい。
【0024】
各ビードフィラー2bは、それぞれ、対応するビードコア2aに対してタイヤ径方向外側に位置する。ビードフィラー2bは、タイヤ径方向外側に向かって先細状に延びている。ビードフィラー2bは、例えばゴム製である。
ビードフィラーは、「スティフナー」と呼ばれることがある。
例えば、タイヤ1がトラック・バス用空気入りタイヤとして構成される場合、図示しないが、ビードフィラー2bは、複数(例えば、2つ)のビードフィラー部から構成されていてもよい。これら複数のビードフィラー部は、例えば、互いに硬さが異なり得る。これら複数のビードフィラー部は、例えば、タイヤ径方向に沿って配列(積層)される。
【0025】
カーカス3は、1対のビードコア2a間に跨っており、1対のサイドウォール部12及びトレッド部11を通って、トロイダル状に延在している。換言すれば、カーカス3は、1対のビード部13間を1対のサイドウォール部12を介して延在している。カーカス3は、少なくとも1枚(図2の例では、1枚)のカーカスプライ3aから構成されている。各カーカスプライ3aは、1本又は複数本のカーカスコードと、カーカスコードを被覆する被覆ゴムと、を含んでいる。カーカスコードは、例えば、モノフィラメント又は撚り線で形成することができる。
カーカスコードは、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどからなる有機繊維から構成されてもよいし、金属(例えばスチール)から構成されてもよい。タイヤ1がトラック・バス用空気入りタイヤとして構成される場合、カーカスコードは、金属(例えばスチール)から構成されると好適である。タイヤ1が乗用車用空気入りタイヤとして構成される場合、カーカスコードは、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどからなる有機繊維から構成されると好適である。
カーカスプライ3aは、1対のビードコア2a間に位置するプライ本体部3Mを備えている。カーカスプライ3aは、さらに、プライ本体部3Mの両端からビードコア2aの廻りでタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返される、プライ折返し部3Tを、備えていてもよい。ただし、カーカスプライ3aは、プライ折返し部3Tを備えていなくてもよい。カーカス3は、ラジアル構造であると好適であるが、バイアス構造でもよい。
【0026】
ベルト4は、カーカス3のクラウン部に対してタイヤ径方向外側に配置されている。ベルト4は、少なくとも1層(図2の例では、2層)のベルト層4aを備えている。各ベルト層4aは、1本又は複数本のベルトコードと、ベルトコードを被覆する被覆ゴムと、を含んでいる。ベルトコードは、例えば、モノフィラメント又は撚り線で形成することができる。ベルトコードは、金属(例えばスチール)から構成されてもよいし、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、アラミドなどからなる有機繊維から構成されてもよい。
【0027】
トレッドゴム5は、トレッド部11において、ベルト4のタイヤ径方向外側に位置している。トレッドゴム5は、トレッド部11のタイヤ径方向外側の面であるトレッド踏面を構成している。トレッド踏面には、トレッドパターンが形成されている。
【0028】
サイドゴム6aは、サイドウォール部12において、カーカス3のタイヤ幅方向外側に位置している。サイドゴム6aは、サイドウォール部12のタイヤ幅方向外側の面を構成している。サイドゴム6aは、トレッドゴム5と一体で形成されている。
【0029】
インナーライナー7は、カーカス3のタイヤ内側に配置され、例えば、カーカス3のタイヤ内側に積層されてもよい。インナーライナー9は、例えば、空気透過性の低いブチル系ゴムで構成される。ブチル系ゴムには、例えばブチルゴム、及びその誘導体であるハロゲン化ブチルゴムが含まれる。インナーライナー9は、ブチル系ゴムに限られず、他のゴム組成物、樹脂、又はエラストマーで構成することができる。
【0030】
本実施形態に係るタイヤ1について、図2ではタイヤ赤道面CLに対する一方側の部分のみを示しているが、後述する導電性部材21及びICチップ22以外のタイヤ1の構成(即ち、タイヤ1のうち、後述する導電性部材21及びICチップ22を除く部分を、タイヤ本体部と称した場合、当該タイヤ本体部の構成)は、タイヤ赤道面CLに対して対称であり、換言すれば、当該タイヤ1の構成は、タイヤ赤道面に対する他方側の部分も、図2に例示した構成と同等である。但し、当該タイヤ1の構成は、タイヤ赤道面CLに対して非対称であってもよい。
また、後述する導電性部材21及びICチップ22以外のタイヤ1の構成は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、上述したものと異なっていてもよい。
【0031】
次に、本実施形態において、サイドウォール部12及びビード部13からなるタイヤサイド部14に埋設される、導電性部材21及びICチップ22について、説明する。
本実施形態において、ICチップ22(より具体的には、少なくとも、後述する接触ICチップ22d)及び導電性部材21は、導電性部材21がアンテナとして機能することにより、共働して、外部との通信を可能とする通信装置20となり得る。換言すれば、一般的なRFタグ(一般に、RFIDタグとも呼ばれる)に見立てると、本実施形態において、いわば、ICチップ22がRFタグのICチップとして、導電性部材21がRFタグのアンテナとして、それぞれ機能することにより、ICチップ22及び導電性部材21は、共働して、通信装置20となり得る。
【0032】
本実施形態において、ICチップ22(より具体的には、少なくとも、後述する接触ICチップ22d)と導電性部材21とで構成される通信装置20は、タイヤ1の外部にある所定外部装置(例えば、リーダ、あるいは、リーダ/ライタ)と無線通信可能である。
通信装置20は、パッシブ型に構成されると好適であるが、アクティブ型に構成されてもよい。
【0033】
本実施形態において、図1及び図2に示すように、導電性部材21が、サイドウォール部12及びビード部13からなるタイヤサイド部14(より正確には、タイヤサイド部14の内部)に、埋設されている。より具体的に、図2に示すように、導電性部材21は、タイヤサイド部14における、カーカス3(より具体的に、カーカスプライ3aのプライ本体部3M)のタイヤ幅方向外側に、埋設されている。本例では、導電性部材21は、サイドウォール部12を形成するサイドゴム6a内(即ち、サイドゴム6aの内部)に埋設されている。
図2の例では、導電性部材21は、タイヤ径方向の少なくとも一部がカーカス3を構成するカーカスプライ3aに接するように、カーカスプライ3aのタイヤ幅方向外側に埋設されている。しかし、本例において、導電性部材21は、その全体がカーカスプライ3a(ひいては、カーカス3)よりもタイヤ幅方向外側に位置していればよく、カーカスプライ3aに接していなくてもよい。
【0034】
本実施形態において、導電性部材21は、所定の幅(図1及び図2では、タイヤ径方向RDにおける幅)を有して長手方向(図1では、タイヤ周方向CD)に延在する、帯状に形成されている。当該所定の幅は、一定であっても、長手方向に沿って変化していてもよい。
導電性部材21は、例えば、複数本の導電性繊維を互いに接触させて帯状に形成したものであってもよい。この場合、例えば、導電性部材21をアンテナとして機能し得る帯状の金属性板状体等で形成した場合に比べて、導電性部材21の通信性が高まるとともに、導電性部材21を柔軟にしやすくタイヤ1の内部に埋設しやすくなる。より具体的に、導電性部材21は、例えば、多数の導電性繊維を延在方向をほぼ揃えて導電性部材21の長手方向として又はランダムに互いに接触させて敷き詰めて帯状に形成したものであってもよい。但し、導電性部材21は、上記の構成に限らず、例えば、アンテナとして機能し得る帯状の金属性板状体等で形成してもよい。導電性繊維としては、例えば、スチール繊維、ステンレス繊維、カーボン繊維、導電性コットン繊維等の導電性有機繊維、等が挙げられる。
なお、導電性部材21を、上記のように帯状体として形成した場合、その幅方向断面(図2と同等の断面)形状は、平板状であっても、若干湾曲した板状であってもよい。
導電性部材21は、その外表面を被覆材23で被覆した状態として、タイヤサイド部14に埋設されてもよい。この場合、導電性部材21の取扱いが容易になり、導電性部材21をタイヤサイド部14の内部に埋設しやすくなる。被覆材23としては、例えば、被覆ゴム、被覆樹脂等が挙げられる。
【0035】
本実施形態において、タイヤサイド部14の内部に埋設された導電性部材21は、タイヤサイド部14における、タイヤ周方向の少なくとも一部の領域及びタイヤ径方向の少なくとも一部の領域にわたって、延在している。換言すれば、導電性部材21は、タイヤ径方向に所定の幅を有して、タイヤ周方向に所定の長さで延在している(図1参照)。
図1に示した例において、導電性部材21は、タイヤサイド部14におけるタイヤ周方向の全周にわたって、延在している。但し、導電性部材21は、タイヤサイド部14におけるタイヤ周方向の全周にわたって延在していなくてもよい。例えば、導電性部材21は、タイヤサイド部14におけるタイヤ周方向の一部の範囲にのみ延在していてもよいし、複数の分割された導電性部材21がタイヤ周方向に沿って断続的に延在していてもよいし、また、それぞれタイヤ周方向の一部の範囲にのみ延在する複数の導電性部材21が、互いに接触しないように任意にタイヤサイド部14内に埋設されていてもよい。しかし、導電性部材21がその一部となる通信装置20の故障に対する信頼性の観点、及び、タイヤサイド部14の外観性の観点からは、導電性部材21は、タイヤサイド部14におけるタイヤ周方向の全周にわたって延在していることが最も好ましい。
【0036】
導電性部材21(複数ある場合は、それぞれの導電性部材21)のタイヤ径方向の幅は、特に限定されないが、タイヤ断面高さの10~40%であることが好ましい。導電性部材21のタイヤ径方向の幅が、タイヤ断面高さの10%以上であれば、ICチップ22をより容易に導電性部材に接触させることができ、40%以下であれば、タイヤ重量の増加を適切に抑えることができる。同様の観点から、導電性部材21のタイヤ径方向の幅は、タイヤ断面高さの20~30%であることがより好ましい。
なお、本実施形態では、導電性部材21のタイヤ径方向の幅は、タイヤ周方向に沿って一定であるが(図1参照)、一定でなくてもよい。
導電性部材21(複数ある場合は、それぞれの導電性部材21)のタイヤ周方向に沿った長さは、特に限定されないが、タイヤ回転軸Oを中心とする中心角θ(図1参照)として90°以上(即ち、タイヤ全周の1/4以上)であることが好ましい。導電性部材21のタイヤ周方向に沿った長さが、中心角θとして90°以上であれば、ICチップ22をより容易に導電性部材に接触させることができる。同様の観点から、導電性部材21のタイヤ周方向に沿った長さは、中心角θとして180°以上であることがより好ましく、270°以上であることがさらに好ましく、前述の通り、図1に示すように360°(即ち、全周)であることが最も好ましい。
【0037】
導電性部材21の、タイヤサイド部14(即ち、ベルト4よりタイヤ径方向内側)におけるタイヤ径方向の埋設位置は、特に限定されないが、導電性部材21の全体が、ビードコア2aよりタイヤ径方向外側、より好ましくは、プライ折返し部3Tのタイヤ径方向外端3eよりタイヤ径方向外側、に埋設されていることが望ましい。
図2に示すように、本例では、導電性部材21は、その全体が、プライ折返し部3Tのタイヤ径方向外端3eよりタイヤ径方向外側で、ほぼタイヤ最大幅位置に跨る位置に埋設されている。
【0038】
本実施形態において、図1及び図2(A部拡大図)に示すように、少なくとも1個(本例では、複数個)のICチップ22が、タイヤサイド部14(より正確には、タイヤサイド部14の内部)に、埋設されている。より具体的に、図2に示すように、少なくとも1個(本例では、複数個)のICチップ22は、タイヤサイド部14における、カーカス3(より具体的に、カーカスプライ3aのプライ本体部3M)のタイヤ幅方向外側に、埋設されている。本例では、図2のA部拡大図で示すように、少なくとも1個(本例では、複数個)のICチップ22は、導電性部材21を被覆する被覆材23内に埋設されている。
図1及び図2(A部拡大図)に示すように、各ICチップ22は、タイヤ周方向及びタイヤ径方向において、導電性部材21とほぼ対応する位置に埋設されていることが、好ましい。
【0039】
本実施形態において、図2のA部拡大図で示すように、少なくとも1個のICチップ22のうちの少なくとも1個(本例では、複数個)は、導電性部材21に機械的接続によらずに接触している。
ここで、本明細書において、ICチップ22が導電性部材21に「機械的接続によらずに接触する(している)」とは、ICチップ22が、導電性部材21に例えばハンダ等で固着等(即ち、機械的に接続)されず(されておらず)、導電性部材21に単に接触する(している)のみであることを指す。以下、本明細書において、機械的接続によらずに接触する(している)ことを、単に「接触する(している)」ともいう。
また、以下、本明細書において、ICチップ22のうち導電性部材21に機械的接続によらずに接触する(又は、接触している)ICチップ22を、「接触ICチップ22c」と称し、ICチップ22のうち導電性部材21に接触しない(又は、接触していない)ICチップ22を、「非接触ICチップ22d」と称する。
本実施形態において、上述の通り、少なくとも1個のICチップ22のうちの少なくとも1個(本例では、複数個)は、導電性部材21に機械的接続によらずに接触する、接触ICチップ22cとされている。
なお、本発明において、「ICチップ22」とは、ICチップ22内に、アンテナとして機能する別個のアンテナ部材を有さないものを指す。
【0040】
ICチップ22は、例えば導電性部材21との接触により、アンテナとしての導電性部材21と電気的に結合されている場合、両者からなる通信装置20の一部として機能し、例えば、導電性部材21で受信する電波により発生する誘電起電力により稼働する。ICチップ22は、例えば、制御部と記憶部とを有する。
記憶部は、任意の情報を記憶してよい。例えば、記憶部は、タイヤ1の識別情報を記憶してもよい。タイヤ1の識別情報は、例えば、タイヤ1の製造メーカー、製造工場、製造年月日等の、各タイヤをタイヤ毎に特定できるタイヤ1の固有の識別情報である。また、記憶部は、タイヤの走行距離、急制動回数、急発信回数、急旋回回数等のタイヤ履歴情報を記憶してもよい。また、例えば、タイヤ内部温度、タイヤ内圧、タイヤ加速度等を検出するセンサがタイヤ内腔に設けられており、記憶部が、これらセンサにより検出された検出情報を記憶してもよい。この場合、ICチップ22と導電性部材21とからなる通信装置20は、アンテナとしての導電性部材21を通じて、センサと無線通信することで、センサの検出情報を取得することができる。
制御部は、例えば、記憶部からの情報の読み出しが可能に構成される。
【0041】
ICチップ22と導電性部材21とで通信装置20が構成される場合、当該通信装置20は、タイヤ1の外部にある所定外部装置(例えば、リーダ、あるいは、リーダ/ライタ)から、電波又は磁界に乗せて送信される情報を、導電性部材21により受信可能に構成される。整流(電波の場合)または共振(磁界の場合)により、通信装置20の導電性部材21に電力が発生し、ICチップ22の記憶部及び制御部が所定の動作を行う。例えば、制御部は、記憶部内の情報を読み出し、電波または磁界に乗せて導電性部材21から、上記所定外部装置に返信(送信)する。上記所定外部装置は、通信装置20からの電波又は磁界を受信する。上記所定外部装置は、受信した情報を取り出すことで、通信装置20のICチップ22の記憶部に記憶されている情報を取得することができる。
なお、複数個のICチップ22が、導電性部材21と電気的に結合され、両者からなる通信装置20の一部として機能する場合、例えば上記所定外部装置に対し同じ情報を送信するように構成される。
【0042】
本実施形態において、図2のA部拡大図に示すように、少なくとも1個(本例では、複数個)のICチップ22は、導電性部材21を被覆する被覆材23内に埋設されており、当該少なくとも1個のICチップ22のうちの少なくとも1個(本例では、複数個)が、導電性部材21と接触している。
この場合、例えば、予め少なくとも1個、好ましくは複数個のICチップ22が埋設された被覆材23で導電性部材21の表面を被覆しておき、当該被覆材23で被覆された導電性部材21を、タイヤサイド部14の内部に埋め込むことにより、少なくとも1個のICチップ22を導電性部材21と接触する接触ICチップ22cとすることができる。
なお、被覆材23で被覆された導電性部材21を、タイヤサイド部14の内部に埋設させる方法としては、例えば、タイヤ1の製造時において、生タイヤ上に当該被覆材23で被覆された導電性部材21を載置し、タイヤ成型用金型の内部に収容して、加硫成型すればよい。
【0043】
本実施形態において、図示はしないが、少なくとも1個(好ましくは、複数個)のICチップ22が、サイドウォール部12を形成するサイドゴム6aに埋設されており、当該少なくとも1個のICチップ22のうちの少なくとも1個(好ましくは、複数個)が、導電性部材21と接触するようにされていてもよい。
この場合、例えば、被覆材23等で被覆されない導電性部材21を、そのまま、少なくとも1個、好ましくは複数個のICチップ22がタイヤ成形時に予め埋設されたサイドゴム6aに隣接して埋め込むことにより、少なくとも1個のICチップ22を導電性部材21と接触する接触ICチップ22cとすることができる。
なお、導電性部材21を、タイヤサイド部14の内部に埋設させる方法としては、例えば、ICチップ22を含む生タイヤ上に当該導電性部材21を載置し、タイヤ成型用金型の内部に収容して、加硫成型すればよい。
【0044】
本実施形態において、図1に例示するように、タイヤ1は、複数の接触ICチップ22cを備え、当該複数の接触ICチップ22cのうちの少なくとも2つは、互いにタイヤ周方向において離間した位置に埋設されている。
また、本実施形態において、図1に例示するように、タイヤ1は、複数の接触ICチップ22cを備え、当該複数の接触ICチップ22cのうちの少なくとも2つは、互いにタイヤ周方向において中心角θとして90°以上離間した位置に埋設されている。
さらに、本実施形態において、図1に例示するように、タイヤ1は、複数の接触ICチップ22cを備え、当該複数の接触ICチップ22cのうちの少なくとも2つは、互いにタイヤ径方向において離間した位置に埋設されている。
より具体的に、図1の例では、タイヤ1は、10個のICチップ22を有している。10個のICチップ22のうち、6個は接触ICチップ22c(22c1~22c6)であり、4個は非接触ICチップ22d(22d1~22d4)である。6個の接触ICチップ22c(22c1~22c6)はすべて、互いにタイヤ周方向において離間した位置に埋設されており、また、例えば、接触ICチップ22c1、22c3及び22c5どうしは、互いにタイヤ周方向において中心角θとして90°以上離間した位置に埋設されている。さらに、例えば、接触ICチップ22c1及び22c5どうしは、互いにタイヤ径方向において離間した位置に埋設されている。
このように、タイヤ1が複数の接触ICチップ22cを備えていることにより、そのうちの少なくとも一部が破損又は故障した場合であっても、他の接触ICチップ22cが機能することにより、接触ICチップ22cと導電性部材21とからなる通信装置20を継続して稼働させやすくなる。また、少なくとも2個の接触ICチップ22cどうしが、互いにタイヤ周方向又はタイヤ径方向において離間した位置、特には、タイヤ周方向において十分離間した位置に埋設されていることにより、当該2個の接触ICチップ22cどうしが、互いにタイヤ周方向又はタイヤ径方向において同一の位置に埋設されている場合に比べ、同一事情による当該2個の接触ICチップ22c両方の破損又は故障の可能性が低くなる。従って、上記のような構成により、接触ICチップ22cと導電性部材21とからなる通信装置20の故障に対する信頼性が向上する。
【0045】
図1に示す例のように、タイヤ1が少なくとも1個の非接触ICチップ22d(図1の例では、非接触ICチップ22d1~22d4)をも備える場合、それらのうちの少なくとも一部は導電性部材21と容量結合していてもよく、また、そのように、それらのうちの少なくとも一部が導電性部材21と容量結合していることが好ましい。この場合、当該導電性部材21と容量結合している非接触ICチップ22dも、通信装置20の一部として機能することができ、通信装置20の故障に対する信頼性がより高まる。
ここで、「容量結合」とは、2つの導電部材が互いに離隔して配置され、両者の間にある静電容量で電気的に結合することをいう。
【0046】
本実施形態において、少なくとも一部の接触ICチップ22cが破損又は故障した際のバックアップのため、タイヤ1内(より具体的には、タイヤサイド部14内)に埋設された接触ICチップ22cの数は、3個以上であることが好ましく、5個以上であることがさらに好ましい。一方で、コスト増加を抑える観点から、タイヤ1内(より具体的には、タイヤサイド部14内)に埋設されるICチップ22の数は、15個以下であることが好ましく、10個以下であることがさらに好ましい。
ここで、本実施形態のタイヤ1を得るために、例えば、ICチップ22を導電性部材21の被覆材23に埋設しておき、又は、ICチップ22をサイドゴム6aに埋設しておく場合、埋設するICチップ22の数を多くすることにより、それほど正確に埋設位置を制御しなくても(換言すれば、ある程度適当に散らして埋設しても)、当該ICチップ22のうち接触ICチップ22cとなる数を増やすことができる。
【0047】
次に、上述した実施形態による主な効果を、必要に応じて再度、以下にまとめて説明する。
まず、本実施形態においては、サイドウォール部12及びビード部13からなるタイヤサイド部14におけるカーカス3のタイヤ幅方向外側に埋設され、タイヤサイド部14におけるタイヤ周方向の少なくとも一部の領域及びタイヤ径方向の少なくとも一部の領域にわたって延在する、導電性部材21と、タイヤサイド部14に埋設された、少なくとも1個のICチップ22と、を備え、当該少なくとも1個のICチップ22のうちの少なくとも1個は、導電性部材21に機械的接続によらずに接触する、接触ICチップ22cとされている。
これにより、ICチップ22とアンテナとを機械的に接続したり、補強のためこれらをまとめて予めゴムや樹脂等で被覆して用いる必要がないため、ICチップ22(より具体的には、接触ICチップ22c等)と導電性部材21とで簡易な構成の通信装置20とすることができる。また、ICチップ22と導電性部材21とは機械的に接続されないので、当該接続部の断線故障等のおそれが減り、通信装置20の耐久性が向上する。即ち、本実施形態によれば、簡易な構成で、通信装置20の耐久性を向上させることができる。
さらに、本実施形態によれば、アンテナとして機能する導電性部材21が、無線通信の障害となり得る金属部材等が一般に多く配設されないタイヤサイド部14に埋設されるので、ICチップ22と導電性部材21とからなる通信装置20を、通信性に優れたものとすることができる。
【0048】
本実施形態において、導電性部材21は、複数本の導電性繊維を互いに接触させて帯状に形成されてなっていてもよい。
この場合、例えば、導電性部材21をアンテナとして機能し得る帯状の金属性板状体等で形成した場合に比べて、導電性部材21の通信性が高まるとともに、導電性部材21を柔軟にしやすくタイヤ1の内部に埋設しやすくなる。
【0049】
本実施形態においては、導電性部材21は、タイヤサイド部14におけるタイヤ周方向の全体にわたって延在している。
この場合、導電性部材21がタイヤサイド部14におけるタイヤ周方向の全体にわたって延在していない場合に比べ、接触ICチップ22cの数を増やすことができるので、いずれか1つの接触ICチップ22cが破損又は故障した場合であっても、他の接触ICチップ22cを、接触ICチップ22cと導電性部材21とからなる通信装置20の一部として継続して機能させることができ、通信装置20の故障に対する信頼性が向上する。また、導電性部材21がタイヤサイド部14におけるタイヤ周方向の全体にわたって延在していない場合に比べ、導電性部材21のタイヤサイド部14への埋設による局所的な膨らみのおそれ等が減り、タイヤ1の外観不良を抑制できる。即ち、本実施形態によれば、通信装置20の故障に対する信頼性を向上できるとともに、タイヤサイド部14への通信装置の埋設による外観不良を抑制できる。
【0050】
本実施形態においては、タイヤ1は、複数の接触ICチップ22cを備え、当該複数の接触ICチップ22cのうちの少なくとも2つは、互いにタイヤ周方向において離間した位置に埋設されている。
また、本実施形態においては、タイヤ1は、複数の接触ICチップ22cを備え、当該複数の接触ICチップ22cのうちの少なくとも2つは、互いにタイヤ周方向において中心角θとして90°以上離間した位置に埋設されている。
さらに、本実施形態においては、タイヤ1は、複数の接触ICチップ22を備え、当該複数の接触ICチップ22cのうちの少なくとも2つは、互いにタイヤ径方向において離間した位置に埋設されている。
これらの場合、前述の通り、少なくとも一部の接触ICチップ22cが破損又は故障した場合であっても、接触ICチップ22cと導電性部材21とからなる通信装置20を継続して稼働させやすくなる。また、少なくとも2個の接触ICチップ22cどうしが、互いにタイヤ周方向又はタイヤ径方向において離間した位置に埋設されていることにより、同一事情による当該2個の接触ICチップ22c両方の破損又は故障の可能性が低くなる。従って、接触ICチップ22cと導電性部材21とからなる通信装置20の故障に対する信頼性が向上する。同様の理由から、少なくとも2個の接触ICチップ22cどうしが、互いにタイヤ周方向において中心角θとして90°以上離間した位置に埋設されていることにより、通信装置20の故障に対する信頼性がより向上する。
【0051】
本実施形態においては、ICチップ22は、導電性部材21を被覆する被覆材23に埋設されている。
この場合、予めICチップ22が埋設された被覆材23で導電性部材21の表面を被覆しておくことにより、導電性部材21の準備時にICチップ22も同時に準備することができ、ひいては、ICチップ22を内蔵するタイヤ1を効率良く製造できる。
【0052】
本実施形態において、ICチップ22は、サイドウォール部12を形成するサイドゴム6aに埋設されていてもよい。
この場合、タイヤ成形時にICチップ22を予めサイドゴム6a(生ゴム)に埋設しておけばよく、ひいては、ICチップ22を内蔵するタイヤ1を効率良く製造できる。
【0053】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るタイヤ10について、図3を参照しつつ説明する。
図3について、図1図2と同様の部材については、図1図2と同じ符号を付してその説明を省略する。
本発明の第2実施形態に係るタイヤ10は、サイドウォール部12におけるカーカス3のタイヤ幅方向内側にサイド補強ゴム6bを有し、導電性部材21及びICチップ22が当該サイド補強ゴム6bに埋設されている点のみ、本発明の第1実施形態に係るタイヤ10と異なり、その他の点は、第1実施形態のタイヤ1と同じである。
【0054】
図3に示すように、本発明の第2実施形態に係るタイヤ10は、サイドウォール部12におけるカーカス3(より具体的に、カーカスプライ3aのプライ本体部3M)よりタイヤ幅方向内側であって、インナーライナー7との間に、ほぼ三日月状のサイド補強ゴム6bを有している。
本実施形態では、導電性部材21及びICチップ22が、当該サイド補強ゴム6bの内部、より具体的に、図3の例ではカーカスプライ3aに隣接する位置に、埋設されている。換言すれば、本実施形態において、導電性部材21(及び、ICチップ22)は、タイヤサイド部14におけるカーカス3のタイヤ幅方向内側に埋設されている。
これにより、例えば、導電性部材21(及び、ICチップ22)が、タイヤサイド部14におけるカーカス3のタイヤ幅方向外側に埋設されている場合に比べ、ICチップ22と導電性部材21とからなる通信装置20が、タイヤ外部の異物等により破損又は故障するおそれが低くなる。
本実施形態のタイヤ10についての、その他の構成及び効果は、上述した第1実施形態のタイヤ1と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係るタイヤは、任意の種類の空気入りタイヤに好適に利用でき、例えば、乗用車用空気入りタイヤ、トラック・バス用空気入りタイヤ等に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0056】
1、10:タイヤ、 11:トレッド部、 12:サイドウォール部、 13:ビード部、 14:タイヤサイド部、 2a:ビードコア、 2b:ビードフィラー、 3:カーカス、 3a:カーカスプライ、 3M:プライ本体部、 3T:プライ折返し部、 3e:プライ折返し部のタイヤ径方向外端、 4:ベルト、 4a:ベルト層、 5:トレッドゴム、 6a:サイドゴム、 6b:サイド補強ゴム、 7:インナーライナー、 20:通信装置、 21:導電性部材、 22:ICチップ、 22c、22c1~22c6:接触ICチップ、 22d、22d1~22d4:非接触ICチップ、 23:導電性部材の被覆材、 CL:タイヤ赤道面、 WD:タイヤ幅方向、 RD:タイヤ径方向、 CD:タイヤ周方向、 O:タイヤ回転軸、 θ:中心角
図1
図2
図3