(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】反射板付きアンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 19/10 20060101AFI20240724BHJP
H01Q 7/00 20060101ALI20240724BHJP
H01Q 9/16 20060101ALI20240724BHJP
H01Q 21/20 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
H01Q19/10
H01Q7/00
H01Q9/16
H01Q21/20
(21)【出願番号】P 2021144766
(22)【出願日】2021-09-06
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000217653
【氏名又は名称】電気興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】松本 伸史
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-074626(JP,A)
【文献】特開2003-273636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 19/10
H01Q 7/00
H01Q 9/16
H01Q 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射板と、
前記反射板から離間して設置され、給電点を備えた第1の
ループ素子と、
前記給電点に一方の端部が接続され、他方の端部が前記反射板に近づく方向に延在している平衡線路と、
前記平衡線路の前記他方の端部に接続された第2の
ループ素子と
を含んでなり、前記反射板と前記第1の
ループ素子とを結ぶ直線が主軸方向を規定する反射板付きアンテナ。
【請求項2】
前記第1の
ループ素子及び前記第2の
ループ素子は双ループ素子である、請求項1に記載の反射板付きアンテナ。
【請求項3】
前記反射板は、平面形状またはグリッド形状を有している、請求項1または2に記載の反射板付きアンテナ。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の反射板付きアンテナをN面配置し(Nは3以上の整数)、前記
ループ素子の各々が外側に位置するように前記反射板に隣接して設置された、反射板付きアンテナの集合体。
【請求項5】
前記Nは3、4、5または6である、請求項
4に記載の反射板付きアンテナの集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナを合成して構成される無指向性アンテナに使用することができる反射板付きアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、放送用の従来の送信アンテナシステムは双ループアンテナまたはダイポールアンテナを放射素子とした反射板付きアンテナの集合体である。その集合体は、一般に、同一円周上に等間隔で3面以上に配置された、複数の反射板付きアンテナを備える。そのような複数の反射板付きアンテナは、例えば、3面配置した場合には120°間隔で配置され、4面配置した場合には90°間隔で配置される。そして、従来の反射板付きアンテナの集合体は、各面に配置された複数の反射板付きアンテナの合成指向性が無指向性となるように調整されて、多くは鉄塔の頂部に設置されている。
【0003】
図8Aは、鉄塔の頂部に取り付けることができる、従来の反射板付きアンテナの集合体100の一例を示す側面図である。ここで、従来の反射板付きアンテナの集合体100は、ポール部120の円周上に等間隔で4面配置した4つの反射板付きアンテナ110を有している。
図8Bは、
図8Aに示す従来の反射板付きアンテナの集合体100を鉄塔の頂部方向から見た上面図である。
図8Bを参照すると、従来の反射板付きアンテナの集合体100は、ポール部120の円周上に取付半径rとして等間隔(つまり90°間隔)で4面配置した4つの反射板付きアンテナ110を有する。ここで、
図8Bに示されている取付半径rは、ポール部120の中心から各反射板付きアンテナ110の背面(つまり反射板)までの距離を意味する。なお、取付半径rは無指向性となるようにするため、できる限り小さいことが望ましい。
【0004】
図9は、
図8A及び
図8Bに示された従来の反射板付きアンテナの集合体100を構成する反射板付きアンテナ110の構造とその放射指向性とを示す概略図である。ここで、反射板付きアンテナ110は、給電点301を備えた放射素子300と、支柱(図示せず)により(ダイポールアンテナ素子である)放射素子300から所定の距離だけ離間して平行に配置された反射板2とを備える。ここでの所定の距離は、この反射板付きアンテナ110から放射される波長をλとするとλ/4(4分の1波長)とされることが多い。なお、
図9では、放射素子としてダイポール素子について記載したが、双ループ素子でも同様である。
【0005】
図9の反射板付きアンテナ110の放射指向性の概略図を用いて、反射板付きアンテナ110の放射指向性について説明する。ここで、反射板2が無い場合の反射板付きアンテナ110の放射指向性(つまり、放射素子300の放射指向性)300a
1及び300a
2を破線で示す。
図9に示すように、破線で示された放射指向性300a
1及び300a
2は、放射素子300の給電点301に対して互いに対称となっている。そして、反射板2によって生じる、放射素子300の電気影像素子300’による放射指向性を考慮した場合の電気影像素子300’による放射指向性300’a
1及び300’a
2を一点鎖線で示す。
図9に示すように、一点鎖線で示された放射指向性300’a
1及び300’a
2は、電気影像素子300’に対して互いに対称となっている。
【0006】
さらに、
図9に、上記2つの放射指向性を合成した(つまり反射板2の影響を考慮した)反射板付きアンテナ110全体としての放射指向性300S
1及び300S
2を太い破線で示す。ここで、太い破線で示された放射指向性300S
1及び300S
2は、破線で示された放射指向性300a
1及び300a
2と、一点鎖線で示された放射指向性300’a
1及び300’a
2とを合成したものである。このように、太い破線で示された放射指向性300S
1及び300S
2は、放射素子300から前方に向かう放射指向性が支配的であり、放射素子300の給電点301付近を基準とした平坦な位相指向性を有する。ここで、反射板付き放射素子300全体としての放射基準点300S
0を中黒の点で示す。この中黒の点で示された放射基準点300S
0は、放射素子300から反射板2に少し近づいた場所に位置しているのが一般的である。
図10に、反射板2と、反射板2から所定の距離(約4分の1波長)だけ離間して配置された放射素子300として、1波長ループ素子(ループ素子)を給電点に対して上下対称に設置して平衡線で接続した放射素子(双ループ素子)を採用した場合の従来の反射板付きアンテナを示す。ここで、放射素子300は、給電点301を備えた双ループ素子302a
1及び302a
2を含む。
【0007】
次に、
図11を参照して、
図8A及び
図8Bの反射板付きアンテナの集合体100として
図10に示す構造を計算実施モデルに使用し、取付半径rを250mm~500mmまで変えた場合における水平面指向性の計算結果について説明する。ここで、
図11には、取付半径rが300mm、350mm、400mm、450mmの場合における反射板付アンテナの集合体100のそれぞれの水平面指向性(20logE/E
0(dB))を示している。
図1では、取付半径rが450mmの場合に0°(最大)方向と30°(最小)方向とを比較すると、指向性偏差は±30°方向で約-6dBであることがわかる。
【0008】
次に、
図12に、
図8の従来の反射板付きアンテナの集合体100において、取付半径rを250mm~500mmまで変えた場合における指向性偏差の計算結果を破線で示す。
図12を参照すると、従来の反射板付きアンテナの集合体100では、取付半径rを大きくするにしたがって、指向性偏差が大きくなっていることがわかる。
【0009】
ここで、上記の指向性偏差を改善する手法として、例えば、特許文献1に記載されたアンテナが挙げられる。特許文献1では、
図8A及び
図8Bに示す反射板付きアンテナの集合体100の各反射板付きアンテナ110の代わりに、相互に所定の開き角度をもって水平方向に隣接して配置された3以上の放射素子を有するアンテナを採用している。つまり、特許文献1は、(
図8Bに示す取付半径rが大きくなった場合であっても)相互に所定の開き角度をもって水平方向に隣接して配置された3以上の放射素子による合成した電界強度指向性に着目し、反射板付きアンテナ全体としての指向性偏差を改善することを意図している。
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の反射板付きアンテナは、3つの放射素子が水平方向に隣接して配置されていることから、
図8A及び
図8Bの各反射板付きアンテナ110のサイズや重量が大きくなる。そのため、特許文献1に記載の反射板付きアンテナを鉄塔に設置した場合、受風面積が大きくなることから鉄塔への負荷が増加することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、従来の反射板付きアンテナでは、取付半径rが大きくなると指向性偏差が大きくなる。そのような指向性偏差を低減するために、例えば特許文献1に記載されたように、各面に設置されるダイポールアンテナの数を増加して単体の電界強度指向性を改善し4面配置時の指向性偏差を改善しようとすると、ダイポールアンテナの数の増加により反射板幅が増加し受風面積が大きくなるため、アンテナを設置する鉄塔への負荷が増加することになる。その場合、各面の水平面内に設置される放射素子数が増加することにより、取付半径rも比較的に大きくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、取付半径rが大きい場合でも、指向性偏差が良好となる反射板付きアンテナを提供する。
具体的には、本発明は、
反射板と、
前記反射板から離間して設置され、給電点を備えた第1の放射素子と、
前記給電点に一方の端部が接続され、他方の端部が前記反射板に近づく方向に延在している平衡線路と、
前記平衡線路の前記他方の端部に接続された第2の放射素子と
を含んでなり、前記反射板と前記第1の放射素子とを結ぶ直線が主軸方向を規定する反射板付きアンテナを提供する。
ここで、前記第1の放射素子及び前記第2の放射素子は、少なくとも1つのダイポール素子またはループ素子を含む態様や、双ループ素子である態様であることが好ましい。また、前記反射板は、平面形状またはグリッド形状を有していてもよい。
さらに、上記のいずれかの反射板付きアンテナをN面配置し(Nは3以上の整数)、前記放射素子の各々が外側に位置するように前記反射板に隣接して設置された、反射板付きアンテナの集合体を提供する。ここで、前記Nは3、4、5または6である反射板付きアンテナの集合体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、反射板付きアンテナをN面配置した集合体において指向性偏差を改善することができる。また、本発明によれば、従来品と同等の大きさの反射板付きアンテナを提供することができるため、取付半径rを大きくすることなく、アンテナを取り付ける鉄塔への負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本願の実施にかかる反射板付きアンテナの指向性を示す概略図である。
【
図2】Aは、平衡線路を介して互いに接続されたダイポール素子またはループ素子を含む放射素子の概略図である。Bは、平衡線路を介して互いに接続された1波長ループ素子の概略図である。Cは、平衡線路を介して互いに接続された双ループ素子の概略図である。
【
図3】Aは、給電点から反射板方向に延在する平衡線路を介して互いに接続された2つのダイポール素子を放射素子として用いた反射板付きアンテナの概略図である。Bは、給電点から反射板方向に延在する平衡線路を介して互いに接続された1波長ループ素子を放射素子として用いた反射板付きアンテナの概略図である。
【
図4】
図2Cに示す双ループ素子を採用した反射板付きアンテナの概略図である。
【
図5】
図4に示す反射板付きアンテナと、
図10の従来の反射板付きアンテナとについて、位相及び相対電界強度の角度依存性(水平面指向性)を計算したグラフである。
【
図6】
図4に示す反射板付きアンテナを4面配置した集合体において、取付半径rを変更した場合の水平面指向性を示すグラフである。
【
図7】
図4に示す反射板付きアンテナを4面配置した集合体と、
図10に示す従来の反射板付きアンテナを4面配置した集合体とについて、取付半径rを変更した場合における指向性偏差を計算したグラフである。
【
図8】Aは、従来の反射板付きアンテナを90°間隔で4面配置した集合体の側面図である。Bは、Aに示す従来の反射板付きアンテナの集合体の上面図である。
【
図9】従来の反射板付きアンテナの指向性についての概略図である。
【
図10】放射素子として双ループ素子を用いた反射板付きアンテナの例を示す斜視図である。
【
図11】
図10に示す従来の反射板付きアンテナの計算実施モデルにおいて、取付半径rを変更した場合の水平面指向性を計算したグラフである。
【
図12】
図10に示す放射素子を用いた従来の反射板付きアンテナの計算実施モデルにおいて、取付半径rを250mm~500mmまで変更した場合の指向性偏差を計算したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1の本願の実施にかかる反射板付きアンテナ1の放射指向性の概略図を用いて、反射板付き放射素子1の放射指向性について説明する。ここで、反射板2が無い場合の放射素子3の放射指向性(つまり、放射素子3単体での放射指向性)3a
1及び3a
2を破線で示す。
図1に示すように、破線で示された放射指向性3a
1及び3a
2は、下記の手段により、放射素子3の給電点31に対して非対称となっている。そして、
図1の「Rr」で示した後方つまり反射板2に向かう放射指向性3a
2は、
図1の「Fr」で示す前方に向かう放射指向性3a
1よりも強くなるように設定されている。次に、反射板2によって生じる、放射素子3についての電気影像素子3’による放射指向性を考慮する。この場合の電気影像素子3’による放射指向性3’a
1及び3’a
2を一点鎖線で示す。ここで、放射指向性3a
2が放射指向性3a
1よりも高いことと、放射指向性が反射板2に対して対称であることとを考慮すると、反射板2に向かう(
図1の「Fr」で示す前方に向かう)放射指向性3’a
2は、放射指向性3’a
1よりも高くなる。ここで、反射板2と給電点31を結ぶ直線がこの反射板付きアンテナ1の主軸となる。この主軸は、反射板2と放射素子3と直交している。つまり、ここでは、反射板2と放射素子3はおおむね平行に配置されている。また、反射板2は、平板として示しているが、平板または格子状、グリッド状など種々の態様を取りうる。
【0017】
次に、
図1に、上記2つの放射指向性を合成した(つまり反射板2の影響を考慮した)反射板付きアンテナ1全体としての放射指向性3S
1及び3S
2を太い点線で示す。ここで、太い点線で示された放射指向性3S
1及び3S
2は、破線で示された放射指向性3a
1及び3a
2と、一点鎖線で示された放射指向性3’a
1及び3’a
2とを合成したものである。このように、太い点線で示された放射指向性3S
1及び3S
2は、放射素子3から後方(反射板2の方向)への放射指向性が支配的となっている。ここで、反射板付きアンテナ1全体としての放射基準点3S
0を中黒の点で示す。この中黒の点で示された放射基準点3S
0は、太い点線で示された放射指向性3S
1と3S
2との交点付近に位置している。この場合、放射基準点3S
0は、(放射素子3付近ではなく)電気影像素子3’の近くに位置している。つまり、反射板付きアンテナ1によれば、放射基準点3S
0を反射板2よりも後方に配置することができる。
【0018】
次に、
図2Aを参照して、
図1に説明上単に直線で示した放射素子3の具体的な構成を説明する。ここで、放射素子3は、給電点31を備える第1ダイポール素子32と、第1ダイポール素子32に一方の端部が接続され、反射板2の方向(
図1の「Rr」で示す後方)へと上記主軸に沿って延在する平衡線路33と、平衡線路33の他方の端部に接続された第2ダイポール素子34とを含む。ここで、第1ダイポール素子32と第2ダイポール素子34とは互いに平行に配置されている。すなわち、放射素子3は、給電点31を備える第1ダイポール素子32に加えて、第1ダイポール素子32に一方の端部が接続され、反射板2の方向への延在する平衡線路33と、平衡線路33の他方の端部に接続された第2ダイポール素子34とを含む点で、
図10に示す従来の放射素子300とは構成上相違する。
【0019】
次に
図2Bを参照して、ダイポール素子を使用した放射素子3の代わりに、1波長ループ素子(ループ素子)を使用した放射素子3aを説明する。ここで、放射素子3aは、給電点31aを備えるループ素子32aと、ループ素子32aに一方の端部が接続され、反射板2の方向(
図1の「Rr」で示す後方)へと延在する平衡線路33aと、平衡線路33aの他方の端部に接続された別のループ素子34aとを含む。すなわち、放射素子3aは、(平衡線路33aを介して互いに接続された)2つのループ素子32a及び34aを含む点で、放射素子3とは構成上相違する。
【0020】
さらに、
図2Cを参照して、双ループ素子での実施形態例である放射素子3bについて説明する。
図2Cは、(1波長ループ素子(ループ素子)を用いた
図2Bを給電点31aで給電する代わりに)
図2Bの給電点31aとは異なる場所に給電点31bを設置し、
図2Bの1波長ループ素子2つを給電点31bに対して上下対称となる間隔で設置し、給電点31bを介して平衡線で接続した双ループ素子3bの概略図である。ここで、放射素子3bは、給電点31bに接続され、給電点31bに対して互いに上下対称となるように延在する平衡線と、平衡線の端部にそれぞれ接続された第1ループ素子32b
1及び32b
2と、第1ループ素子32b
1及び32b
2に一方の端部がそれぞれ接続され、反射板2の方向(
図1の「後方」)へとそれぞれ延在する平衡線路33b
1及び33b
2と、平衡線路33b
1及び33b
2の他方の端部にそれぞれ接続された第2ループ素子34b
1及び34b
2とを含む。すなわち、放射素子3bは、第1ループ素子32b
1が平衡線路33b
1を介して第2ループ素子34b
1に接続され、第1ループ素子32b
2が平衡線路33b
2を介して第2ループ素子34b
2に接続されている構成を含む点で、放射素子3とは相違する。
【0021】
図3Aに、
図2Aに示す放射素子3を離間して反射板2に設置した反射板付きアンテナ1の概略図を示す。また、
図3Bに、
図2Bに示す放射素子3aを離間して反射板2に設置した反射板付きアンテナ1aの概略図を示す。ここで、反射板2は、金属性平板であってもよいし、設置される鉄塔への負荷を軽減するために格子状(グリッド状)にした金属材料を含んでいてもよい。ここで、反射板2が格子状(グリッド状)にした金属材料を含む場合には、そのような金属材料は放射素子3、3aの長手方向に沿って延在していることが好ましい。反射板付きアンテナ1aの主軸に平行な方向がx軸として示されており、反射板2は主軸に直交して、その平面はy軸及びz軸に平行に広がっている。
なお、本発明の実施例にかかる反射板付きアンテナは、各面に1つの放射素子を配置すればよい。ここで、
図2A及び
図3Aに示される第1ダイポール素子32及び第2ダイポール素子34と、
図2B及び
図3Bに示されるループ素子32a及び第2ループ素子34aと、
図2Cに示される第1ループ素子32b
1及び32b
2と第2ループ素子34b
1及び34b
2とは、いずれも位相差給電素子の一例である。そのような放射素子では、放射素子の形状や反射板の形状(例えば、金属性の平板形状またはグリッド形状)についての制限が比較的に少ないため、放射素子の指向性の幅が広くなる。
【0022】
図4に、反射板2と、反射板2から所定の距離(約4分の1波長)だけ離間して配置された、
図2Cに示される放射素子3bとを含む反射板付きアンテナ1bを4面配置した計算実施モデルを示す。
【0023】
図5に、
図4の反射板付きアンテナ1bの単体と、
図10の従来の反射板付きアンテナ110の単体とについて、位相及び相対電界強度の角度依存性(水平面指向性)をそれぞれ計算した結果を示す。まず、
図5の角度に対する位相変化のグラフを参照する。ここで、角度±60°付近での位相の変化を比較すると、反射板付きアンテナ1bはほぼ一定の位相量となっているのに対し、従来の反射板付きアンテナは上に凸の形状となっている。そのため、反射板付きアンテナ1bは、従来の反射板付きアンテナと比較して、4面配置した集合体において良好な(指向性偏差の小さい)水平面指向性が得られる。次に、
図5の角度に対する相対電界強度の変化のグラフを参照する。角度±60°付近での相対電界強度の変化を比較すると、反射板付きアンテナ1bは、従来の反射板付きアンテナ110と比較して、電界強度に多少の差はあるが、4面合成時の水平面指向性への影響は軽微である。
【0024】
図6を参照して、
図4に示す反射板付きアンテナ1bを4面配置した集合体において、取付半径rを300mm、350mm、400mm、450mmに変更した場合の水平面指向性の計算結果を説明する。
図6に示すように、反射板付きアンテナ1bを4面配置した場合、取付半径rが450mmにおいて約±25°方向にみられる指向性偏差が-4dB程度であることがわかる。かかる指向性偏差は、
図11に示す従来の反射板付きアンテナの指向性偏差である-6dB程度と比較して小さいことがわかる。
【0025】
図7に、
図4に示す反射板付きアンテナ1bを4面配置した集合体と、
図10に示す従来の反射板付きアンテナを4面配置した集合体とについて、取付半径rに対する指向性偏差を計算した結果を示す。(
図7の「実施例」として実線で示される)
図4に示す反射板付きアンテナ1bを4面配置した集合体の指向性偏差は、(
図7の「標準双ループ」として破線で示される)従来の反射板付きアンテナを4面配置した集合体の指向性偏差よりも、取付半径rが250mm~500mmの範囲内では小さいことがわかる。また、
図4に示す反射板付きアンテナ1bを4面配置した集合体の指向性偏差は、取付半径rが400mm付近まで-3dB程度と良好である。
【0026】
ここまでは本発明の実施例にかかる反射板付きアンテナを4面配置した集合体を例として指向性偏差を改善する手法を説明してきた。ここで、反射板付きアンテナを4面配置した集合体の場合には、電界半値幅が90°(=360°÷4)となるように、反射板付きアンテナを設計すればよい。例えば、5面配置した集合体の場合には、電界半値幅を72°(=360°÷5))となるように設計すればよく、6面配置した集合体の場合には、電界半値幅が60°(=360°÷6))となるように設計すればよい。つまり、Nを配置面数として、電界半値幅が360°/Nとなるように設計すればよい。
【0027】
そのため、上記のように電界半値幅が90°や72°や60°となる反射板付きアンテナを多面配置した集合体を設計する場合に、
図3Aに示される第1ダイポール素子32と第2ダイポール素子34との間隔を変更することや、
図3Bに示される第1ループ素子32aと第2ループ素子34aとの間隔を変更することや、
図3Aに示される第2ダイポール素子34の形状を変更すること(例えば、
図3Aの第2ダイポール素子34の長さを変更すること)や、
図3Bに示される第2ループ素子34aの形状を変更すること(例えば、
図3Bの第2ループ素子34aの大きさを変更すること)等により、反射板付きアンテナの電界半値幅を変更することができる。
【0028】
また、本発明の実施例にかかる反射板付きアンテナによれば、各面の水平方向に1つの放射素子を配置すればよいので、例えば、従来の水平方向に隣接して2つの放射素子を備えた6面配置アンテナと比較して安価なシステムを実現することできる。また、本発明の実施例にかかる反射板付きアンテナでは、放射素子が1つで済むので、従来の2つの放射素子を備えた6面配置アンテナと比較して半分以下のスペースで済む。あるいは、そのようにして空いたスペースを利用して別のアンテナシステムを設置することも可能となる。なお、上記の本発明の実施にかかる反射板付きアンテナの有利な点は、従来の5面配置アンテナとの比較においても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
放送用アンテナの一例として本発明について説明してきた。しかしながら、当業者であれば、そのような放送用アンテナに限らず、あらゆる用途のアンテナについて本発明を適用できることについて理解できるであろう。
なお、本願の出願当初の開示事項を維持するために、本願の出願当初の請求項1~6の記載内容を以下に追加する。
(請求項1)
反射板と、
前記反射板から離間して設置され、給電点を備えた第1の放射素子と、
前記給電点に一方の端部が接続され、他方の端部が前記反射板に近づく方向に延在している平衡線路と、
前記平衡線路の前記他方の端部に接続された第2の放射素子と
を含んでなり、前記反射板と前記第1の放射素子とを結ぶ直線が主軸方向を規定する反射板付きアンテナ。
(請求項2)
前記第1の放射素子及び前記第2の放射素子は、少なくとも1つのダイポール素子またはループ素子を含む、請求項1に記載の反射板付きアンテナ。
(請求項3)
前記第1の放射素子及び前記第2の放射素子は双ループ素子である、請求項1に記載の反射板付きアンテナ。
(請求項4)
前記反射板は、平面形状またはグリッド形状を有している、請求項1または2に記載の反射板付きアンテナ。
(請求項5)
請求項1~4のいずれか一項に記載の反射板付きアンテナをN面配置し(Nは3以上の整数)、前記放射素子の各々が外側に位置するように前記反射板に隣接して設置された、反射板付きアンテナの集合体。
(請求項6)
前記Nは3、4、5または6である、請求項5に記載の反射板付きアンテナの集合体。
【符号の説明】
【0030】
1、1a、1b 反射板付きアンテナ
2 反射板
3、3a、3b 放射素子
31、31a、31b、301 給電点
3’、300’ 電気影像素子
32 第1ダイポール素子
32a ループ素子
32b1、32b2 第1ループ素子
33、33a、33b1、33b2 平衡線路
34 第2ダイポール素子
34a、34b1、34b2 第2ループ素子
100 従来の反射板付きアンテナの集合体
110、110b 従来の反射板付きアンテナ
120 ポール部
300 放射素子
302a1、302a2 双ループ素子