(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】塗布装置、液滴吐出検査方法
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20240724BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240724BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240724BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240724BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
B05C11/10
B05D1/26 Z
B05D7/00 K
B05D3/00 D
B05C5/00 101
(21)【出願番号】P 2021148234
(22)【出願日】2021-09-13
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山崎 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】岡部 由孝
(72)【発明者】
【氏名】林 俊宏
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-072664(JP,A)
【文献】特開2010-217643(JP,A)
【文献】特開2010-188263(JP,A)
【文献】特開2013-071292(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0132527(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00 -21/00
B05D 1/00 - 7/26
B41J 2/01,
2/165- 2/20,
2/21 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを備えたインクジェット式の塗布ヘッドから吐出する塗布液で基板に塗布膜を形成する塗布装置であって、
検査用媒体に前記塗布液を吐出する前記塗布ヘッドと、
前記塗布ヘッドから吐出された前記検査用媒体上の前記塗布液の液滴を撮像する液滴撮像部と、
前記液滴撮像部による撮像画像に基づいて液滴の面積を求め、これに基づき前記塗布ヘッドによる前記塗布液の吐出の良否を検査し、前記検査の結果に基づいて、前記ノズルに印加する吐出電圧の制御を行う制御装置と、を有し、
前記液滴撮像部は、前記塗布ヘッドの各ノズルから前記検査用媒体上に吐出された前記塗布液によって形成される液滴吐出領域を覆うカバーと、
前記カバーの上方に、前記カバーと一体化されて設けられ、前記検査
用媒体に対して相対的に移動しながら、前記カバーを介して前記検査用媒体上の前記液滴を撮像可能なカメラと、を有し、
前記カバーは、前記カメラによる前記液滴の撮像を行っている間、常時前記液滴吐出領域のすべてを覆うことができる大きさであることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記カバーは、
第一の辺と、前記第一の辺に直交する第二の辺とを有する矩形状であり、
前記第一の辺と前記第二の辺は、前記液滴吐出領域
におけるそれぞれの辺に沿う方向の長さに対して2倍以上の長さを有することを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記カメラの撮像画像に基づき前記カバーの汚れや曇りの有無を判断することを特徴とする請求項1または2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記液滴撮像部は、所定間隔で、前記検査用媒体の前記液滴吐出領域を除く位置に設けられた汚れ検知用のマークを撮像し、
前記汚れ検知用のマークは、中心から外へ向かうほど色が薄くなる円形のパターンであり、
前記制御装置は、前記液滴撮像部によって撮像された前記汚れ検知用マークの面積が予め定めた面積を下回ったときに、前記カバーに汚れや曇りが生じていると判断することを特徴とする請求項3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記カメラの撮像画像に含まれる前記液滴の外縁部と前記液滴範囲外との境界部分のコントラスト値が予め定めた閾値を下回るときに、前記カバーに汚れや曇りがあると判断することを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記塗布装置は、前記塗布ヘッドを清掃するメンテナンスユニットをさらに備え、
前記メンテナンスユニットにより前記カバーの清掃を実施することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項7】
前記塗布装置は、前記塗布ヘッドを清掃するメンテナンスユニットをさらに備え、
前記制御装置により、前記カバーに汚れや曇りがあると判断されたときに、前記メンテナンスユニットによる前記カバーの清掃を実施することを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項8】
前記制御装置により、予め設定されたタイミングで前記メンテナンスユニットにより前記塗布ヘッドの清掃と前記カバーの清掃を実施する請求項6または7に記載の塗布装置。
【請求項9】
複数のノズルを備えたインクジェット式の塗布ヘッドから吐出する液滴の吐出良否を検査する方法であって、
前記複数のノズルから検査用媒体に塗布液を吐出する工程と、
前記検査用媒体上の前記塗布液の液滴を撮像する工程と、
撮像された前記液滴の画像に基づいて前記液滴の面積を求め、これに基づき前記塗布ヘッドによる前記塗布液の吐出の良否を検査し、前記検査の結果に基づいて、前記ノズルに印加する吐出電圧の制御を行う工程と、を有し、
前記液滴の撮像は、前記検査用媒体上の液滴によって形成される液滴吐出領域をカバーで覆いつつ、前記カバーと一体化されたカメラと、前記検査用媒体とを相対移動させながら、前記カバーを介して前記検査用媒体上の前記液滴を撮像し、
前記カバーは、前記カメラにより前記液滴の撮像を行っている間、常時前記液滴吐出領域のすべてを覆うことができる大きさであることを特徴とする液滴吐出検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、塗布装置、液滴吐出検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機能液を使用して基板に機能性薄膜を塗布する装置として、機能液を液滴にして基板に吐出するインクジェット方式の液滴吐出装置が知られている。液滴吐出装置は、例えば有機EL装置、カラーフィルタ、液晶表示装置、プラズマディスプレイ、電子放出装置等の電気光学装置を製造する際など、広く用いられている。
【0003】
液滴吐出装置では、液滴を吐出するインクジェット方式の塗布ヘッドのノズル毎に吐出される液滴量にばらつきがあったり、液滴が全く吐出されないノズルがあったりすることがある。そこで、塗布ヘッドから基板に機能液の液滴が吐出される前に、液滴吐出の良否が検査される。具体的には、塗布ヘッドから検査用の媒体に液滴を吐出し、これを撮像し、撮像画像を画像処理することで液滴の面積を計測して、塗布ヘッドの吐出ノズルの吐出良否を検査する。このようにして得た吐出ノズルの検査データに基づき、塗布ヘッドのノズルの吐出量を制御し、液滴量のばらつきを抑制した上で最終製品となる基板への機能液の吐出が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ノズルの吐出検査では、カメラの数に限りがあるため、塗布ヘッドから検査用の液滴が吐出された後、カメラがすべての液滴を撮像することができず、撮像すべき領域を複数の領域に区分して、この複数の領域に対しカメラを走査させて順次撮像していく。このように液滴を順次撮像する場合、一方の領域を撮像している間、他方の領域では液滴の乾燥が進んでいってしまう。乾燥が進むと液滴の面積は小さくなっていく。つまり、後から撮像する領域ほど着弾直後の液滴の面積と撮像した時点での液滴の面積との差が大きくなってしまうことになる。
【0006】
本発明の実施形態は、上記のような事情を鑑みてなされたものであり、検査用媒体に吐出された液滴の乾燥を抑制し、液滴検査を適切に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る塗布装置は、複数のノズルを備えたインクジェット式の塗布ヘッドから吐出する塗布液で基板に塗布膜を形成する塗布装置であって、検査用媒体に前記塗布液を吐出する前記塗布ヘッドと、前記塗布ヘッドから吐出された前記検査用媒体上の前記塗布液の液滴を撮像する液滴撮像部と、前記液滴撮像部による撮像画像に基づいて液滴の面積を求め、これに基づき前記塗布ヘッドによる前記塗布液の吐出の良否を検査し、前記検査の結果に基づいて、前記ノズルに印加する吐出電圧の制御を行う制御装置と、を有し、前記液滴撮像部は、前記塗布ヘッドの各ノズルから前記検査用媒体上に吐出された前記塗布液によって形成される液滴吐出領域を覆うカバーと、前記カバーの上方に、前記カバーと一体化されて設けられ、前記検査用媒体に対して相対的に移動しながら、前記カバーを介して前記検査用媒体上の前記液滴を撮像可能なカメラと、を有し、前記カバーは、前記カメラによる前記液滴の撮像を行っている間、常時前記液滴吐出領域のすべてを覆うことができる大きさであることを特徴とする。
【0008】
実施形態に係る液滴吐出検査方法は、複数のノズルを備えたインクジェット式の塗布ヘッドから吐出する液滴の吐出良否を検査する方法であって、前記複数のノズルから検査用媒体に塗布液を吐出する工程と、前記検査用媒体上の前記塗布液の液滴を撮像する工程と、撮像された前記液滴の画像に基づいて前記液滴の面積を求め、これに基づき前記塗布ヘッドによる前記塗布液の吐出の良否を検査し、前記検査の結果に基づいて、前記ノズルに印加する吐出電圧の制御を行う工程と、を有し、前記液滴の撮像は、前記検査用媒体上の液滴によって形成される液滴吐出領域をカバーで覆いつつ、前記カバーと一体化されたカメラと、前記検査用媒体とを相対移動させながら、前記カバーを介して前記検査用媒体上の前記液滴を撮像し、前記カバーは、前記カメラにより前記液滴の撮像を行っている間、常時前記液滴吐出領域のすべてを覆うことができる大きさであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、検査用媒体に吐出された液滴の乾燥を抑制し、液滴検査を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る塗布装置の側面概要図である。
【
図2】第1の実施形態に係る塗布装置の平面概要図である。
【
図3】第1の実施形態に係る塗布装置の正面概要図である。
【
図4】第1の実施形態に係る塗布装置の液滴吐出良否検査時の拡大平面図である。
【
図5】第1の実施形態に係る塗布装置の液滴吐出良否検査時の経時的な説明図である。
【
図6】第2の実施形態に係る塗布装置の側面概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、
図1乃至5を参照して説明する。
【0012】
(全体構成)
図1乃至3に示すように、塗布装置1は、架台2を有し、この架台2上に基板Wを載置する基板ステージ3と、基板ステージ3を跨ぐように設けられた門型のフレーム4と、フレーム4に設けられた、塗布液(ポリイミド溶液)を吐出するインクジェット方式の塗布ヘッド5と、液滴撮像部6とを設けて構成される。
【0013】
基板ステージ3は、架台2上にY軸方向に沿って設置されたY軸移動装置(不図示)に載置され、このY軸移動装置によりY軸方向に沿って移動可能とされる。ここで、Y軸移動装置としては、サーボモータを駆動源とする送りねじ式の移動機構やリニアモータを駆動源とするリニアモータ式の移動機構を用いることができる。
【0014】
塗布ヘッド5は、フレーム4に図示しないX軸移動装置を介して取り付けられ、X軸方向に移動可能となっている。この移動装置も、基板ステージ3のY軸移動装置駆動源と同じく、送りねじ式の移動機構、リニアモータ式の移動機構を用いることができる。
【0015】
(塗布ヘッド)
塗布ヘッド5は、公知のインクジェット方式の塗布ヘッドであり、その下面に複数のノズルが長手方向に沿って二列で配列して形成されている。塗布ヘッド5内には各ノズルに対応してノズルに連通する液室が設けられ、各液室は塗布液が供給される給液流路にそれぞれ接続される。各液室には液室内の容積変化を生じさせるための圧電素子(不図示)が設けられ、圧電素子に駆動電圧を印加することで液室内の容積が変化し、これによって各液室と連通するノズルから塗布液が吐出される。
【0016】
(液滴撮像部)
液滴撮像部6は、X軸方向移動装置7、Z軸移動装置8を介してフレーム4に取り付けられ、
図3における、塗布ヘッド5よりも紙面手前側の塗布ヘッド5と干渉しない位置に設けられる。液滴撮像部6は、
図1、2に示すように、カメラ61とカバー62を有する。カメラ61はカバー62に固定されており、カバー62がフレーム4にX軸移動装置7、Z軸移動装置8を介して設けられる。つまり、カバー62の移動により、カメラ61も一体となって移動する。カメラ61は、公知のカメラであり、ステージ3に載置された基板Wの一部を視野範囲に含むように設けられる。カバー62はカメラ61の下方に、水平方向に延びるように形成された矩形状の板状部材であり、例えば低反射加工(ARコートなど)が施された透明のガラスからなる。カメラ61と一体となったカバー62が、X軸移動装置7、Z軸移動装置8を介してフレーム4に取り付けられていることにより、カメラ61、カバー62がX軸方向、Z軸方向に移動可能となっている。なお、カメラ61は必要に応じて照明を備えていても良い。カバー62は、後述する検査用媒体Kに塗布ヘッド5から液滴が吐出される領域(液滴吐出領域E)を覆うためのものであり、そのX軸方向において、液滴吐出領域EのX軸方向の長さの2倍以上の長さを有し、Y軸方向において、液滴吐出領域EのY軸方向の長さの2倍以上の長さを有しており、カメラ61が検査用媒体Kの撮像を行っている間、常時液滴吐出領域Eのすべてがカバー62で覆われた状態となる大きさを有している。
(制御装置)
塗布装置1は制御装置100を有し、塗布ヘッド5、各移動装置、駆動装置、カメラ61と電気的に接続されており、塗布ヘッド5の塗布液の吐出、各移動装置および駆動装置の駆動、カメラ61の撮像を制御する。さらに、制御装置100は画像処理部、記憶部などを有し、カメラ61により得られた画像データを取り込んで画像処理を行い、これに基づいて塗布ヘッド5による塗布液の吐出の良否を検査することが可能になっている(詳細は後述する)。また、記憶部には、基板Wに対する塗布液の塗布情報(塗布パターンや基板上における塗布パターンの形成位置などの情報)や塗布パターンを描画する際に用いる圧電素子の吐出条件(圧電素子に印加する電圧値、電圧の印加時間などの情報)が記憶されている。
【0017】
このような、塗布装置1においては、基板ステージ3に基板Wが載置されると、制御装置100に記憶された塗布情報および吐出条件に基づいて、塗布ヘッド5、各移動装置、駆動装置が制御され、基板W上に所定のパターンで塗布液が塗布される。
【0018】
また、塗布装置1においては、塗布ヘッド5からの液滴(塗布液)吐出を良好に行うため、定期的に(例えば設定枚数の基板Wに対する塗布液の塗布が完了するたび、あるいは、設定時間が経過するたび)、塗布ヘッド5の液滴吐出の良否が検査される。
(液滴吐出良否検査)
以下、この液滴吐出の良否検査について説明する。
【0019】
基板ステージ3に載置された基板Wに対する塗布液の塗布を実行している間、制御装置100は、塗布を完了した基板Wの枚数をカウントしており、このカウント値が予め設定された枚数に達すると、次に基板ステージ3上に供給される基板Wに対する塗布液の塗布を実行する前に、液滴吐出の良否検査を実施する。なお、この基板枚数のカウントに代え、経過時間をカウントするようにしても良い。
【0020】
まず、作業者は基板ステージ3に、基板Wが存在しないことを確認し、検査用媒体Kを載置する。検査用媒体Kは例えば撥液性を有するガラス基板であり、着弾される液滴に対して、所定の接触角(例えば60~85度)を有するものである。なお、検査用媒体Kは、塗布ヘッド5のすべてのノズルからの吐出された液滴が着弾可能なサイズを有している。制御装置100は、検査用媒体Kと塗布ヘッド5との相対的な位置が液滴吐出良否検査に適する所定位置となるように、検査用媒体Kと塗布ヘッド5の位置を調整する。具体的には、検査用媒体Kが塗布ヘッド5のノズル(不図示)の下に位置するように調整し、検査用媒体Kの表面から塗布ヘッド5のノズルが形成される面までの高さが、基板Wに塗布液を塗布するときの高さと同じ高さ(例えば5mm程度)となるように調整する。
【0021】
検査用媒体Kと塗布ヘッド5の相対的位置が所定位置に位置づけられると、塗布ヘッド5のノズルから検査用媒体Kに予め設定された回数、液滴が吐出される(
図4)。例えば各ノズルの圧電素子に駆動電圧を1回ずつ印加して各ノズルから液滴を1回ずつ吐出する。ノズルは各塗布ヘッド5に数百個設けられており、検査用媒体Kに数百個の液滴が吐出されることになる(
図4には便宜上、10滴吐出された図を示している)予め設定された回数の吐出が完了すると、検査用媒体KはY軸移動装置によりY方向へ移動させられ、全液滴が吐出された領域(液滴吐出領域E)の一部が液滴撮像部6のカメラ61の下にくるように位置調整される(
図5A)。ここで、「全液滴」とは、吐出量を検査するために検査用媒体K上に吐出される液滴すべてのことであり、これ以外のダミー吐出などは含まないものとする。液滴撮像部6は、Z軸移動装置8によって下降される。つまり、検査用媒体Kと液滴撮像部6の相対的な位置が液滴良否検査に適する所定位置となるように、検査用媒体Kと液滴撮像部6の位置を調整する。例えば、検査用媒体Kの表面からカバー62の下面までの距離が5mm以下となるようにカバー62を降下させる。
【0022】
検査用媒体Kと液滴撮像部6の相対的位置が所定位置に位置づけられると、カメラ61はX軸移動装置7により液滴吐出領域Eの液滴を予め設定した順序で順次撮像していく。液滴撮像部6のカバー62は、X軸方向において、液滴吐出領域EのX軸方向の長さの2倍以上の長さを有し、Y軸方向において、液滴吐出領域EのY軸方向の長さの2倍以上の長さを有する。カバー62は、前述のとおりカメラ61と一体保持されているため、カバー62はカメラ61の動きに追従して動く。カバー62のサイズが、前述したとおりX軸方向、Y軸方向ともに、液滴吐出エリアの2倍以上の長さであるため、カメラ61が検査用媒体Kの撮像を行っている間、常時液滴吐出領域Eのすべてがカバー62で覆われた状態となる。
【0023】
ここで、
図5を参照して液滴撮像部6が液滴吐出領域Eの撮像を順次行っていく工程を説明する。
【0024】
まず、液滴撮像部6は液滴吐出領域Eの液滴E1側からカメラ61による撮像を開始する。ここで、カメラ61の撮像視野は、
図5に示すカメラ61の形状と同一であるものとして説明する。
図5(A)に示すようにカメラ61の視野内に、液滴吐出領域Eの上右端部に位置する液滴E1が含まれるように、X軸移動装置7によりカバー62およびカメラ61を移動させる。カメラ61の視野は液滴が3滴分入る大きさなので、カメラ61により、この例においては、液滴E1を含む上から3つ分の液滴を撮像し、この画像を制御装置100へ出力する。
【0025】
次に、液滴撮像部6は、
図5(B)に示すように、X軸移動機構7によりX軸方向に次の3つ分の液滴がカメラ61の視野に収まるように移動する。これによって、移動前に撮像した液滴とは一部異なる液滴がカメラ61の視野に収まることになる。カメラ61は、その視野範囲に、液滴吐出領域Eの下右端部に位置する液滴E2を含む位置に移動した後に、液滴を撮像し、撮像した画像を制御装置100へ出力する。なお、一部の液滴は重複して撮像されることになるが、重複しないようにカメラ61の位置を設定するようにしても良い。なお、重複して撮像されている部分においては制御装置100において算出される面積の対象から外される(面積の算出については後述する)。
【0026】
次に、基板ステージ3を搬送方向A1に移動し、検査用媒体Kを移動させる。これにより、
図5(C)に示すようにカメラ61の視野に液滴吐出領域Eの下左端部に位置する液滴E3が含まれる位置関係となる。このとき液滴撮像部6は
図5(B)と同一位置である。カメラ61は、検査用媒体K移動後に液滴を撮像し、撮像した画像を制御装置100へ出力する。
【0027】
次に、液滴撮像部6は、
図5(D)に示すように、X軸移動機構7によりX軸方向に移動する。これによって、カメラ61の視野に液滴吐出領域Eの上左端部に位置する液滴E4が含まれる位置関係となる。このとき基板ステージ3は移動せず、
図5(C)と同一位置である。カメラ61は、その視野範囲に液滴E4を含む位置に移動した後に、液滴を撮像し、撮像した画像を制御装置100へ出力する。
【0028】
このように、液滴撮像部6と検査用媒体Kの相対的な位置を変更させながら、液滴撮像部6は、液滴E1から液滴E4まで順次、液滴吐出領域Eの液滴すべてを撮像し、これらの撮像画像を制御装置100に出力する。このとき、例えば
図5(A)に示す位置で液滴吐出領域Eの撮像を行う際、液滴E1と最も離れた位置にある液滴E3や、一番最後に撮像されることになる液滴E4は、カメラ61の視野から外れるもののカバー62に覆われている。このため、検査用媒体K上に吐出された液滴から蒸発した溶媒蒸気が拡散することなく液滴の周辺にとどまることになるので、液滴E3が乾燥することにより液滴の面積が変化してしまうことを防ぐことができる。したがって、液滴吐出領域Eに存在するすべての液滴の乾燥を防止しつつ、撮像することができる。
【0029】
制御装置100に取り込まれた撮像画像は、画像処理部によって処理される。制御装置100では、撮像された画像に基づき、塗布ヘッド5の各ノズルにおける吐出量が検査される。具体的には、撮像画像を画像処理部によって画像処理することで、液滴の輪郭を把握して当該液滴の面積を計測し、さらに計測された液滴の面積から液滴量を換算して、ノズルの吐出量を求める。なお、例えば
図5(A)と
図5(B)、
図5(C)と
図5(D)においては、重複して撮像される液滴が存在するので、制御装置100による面積算出の際には、後から撮像された画像に含まれる重複部分は算出対象から外される。
【0030】
その後、検査結果に基づいて、塗布ヘッド5におけるノズルの吐出量を調整する。例えば、予め記憶部に記憶された、求められる吐出量と、実際の各ノズルの吐出量とを比較し、これに基づいて各ノズルに印加する駆動電圧をフィードバック制御する。
【0031】
このように、液滴吐出の良否検査が行われている間に、次に膜を塗布する対象となる基板Wが基板ステージ3に載置する準備がなされる。液滴吐出の良否検査が行われ、各ノズルに印加する駆動電圧のフィードバック制御が終わると、作業者(ロボット等でもよい)は検査用媒体Kを基板ステージ3から取り除き、代わりに基板Wを載置する。基板Wが載置された基板ステージ3と、塗布ヘッド5との相対的な位置がX軸移動装置、Y軸移動装置、Z軸移動装置によって所定位置に調整されると、塗布ヘッド5による基板Wへの機能膜塗布が再開される。
【0032】
このように、第1の実施形態によれば、塗布ヘッドにより検査用媒体Kに液滴が吐出された後、液滴吐出領域Eを覆うカバー62が配置される。そうすると、カバー62により、吐出された後の液滴が空気に触れて乾燥させられるのを防ぐことができる。カバー62はカメラ61と一体となって移動するが、カバー62の大きさが、移動しても常に液滴吐出領域Eを覆うことができる大きさを有しているため、常に液滴の乾燥防止が可能になる。カメラ61は、カバー62を介して検査用媒体K上の液滴を撮像するため、撮像画像における液滴の面積の変化を抑制することができる。したがって、最初に撮像される液滴E1と最後に撮像される液滴E4とで、乾燥による面積差がなくなり、正確に液滴量の換算が可能になるため、液滴吐出良否の検査を好適に行うことができる。また、カメラ61とカバー62が一体となっているため、液滴吐出の良否を検査するときにだけカバー62を取り付けて位置決めを繰り返す作業が不要となり、効率的に検査をすることができる。また、カバー62は低反射ガラスであるため、カメラ61に反射光が到達しにくくなり、液滴の撮像が好適に行えるので、液滴吐出良否の検査を好適に行うことができる。また、カメラ61は常にカバー62と一体となって移動するため、常にカバー62の同じ位置を撮像することになる。カバー62は全体が同じように汚れていくわけではないので、カメラ61がカバー62とは独立して走査し、撮像毎にカバー62の異なる部分を撮像するときと比べて定点的に汚れ検出することができ、適切な異常検出を行うことができる。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について、
図6を参照して説明する。第2の実施形態の塗布装置1は、塗布ヘッド5のメンテナンスユニット9をさらに備えている。
(メンテナンスユニット)
メンテナンスユニット9は、塗布ヘッド5のメンテナンスを行い、塗布ヘッド5の吐出不良を解消するものである。メンテナンスユニット9は基板ステージ3のY軸方向端部に配置され、基板ステージ3と一体となってY軸方向に移動可能となっている。
【0033】
メンテナンスユニット9は、塗布ヘッド5のメンテナンスに伴い、塗布ヘッド5のノズルを払拭するユニットである。メンテナンスユニット9は、ワイパ91を有している。ワイパ91は、吸収性を有する布状の素材からなり、塗布ヘッド5のノズル形成領域の長手方向の長さよりも長く、ノズル全部が払拭可能なように設けられている。ワイパ91は、シャフトSを介して回転可能に設けられており、図示しないストッパによって回転動作を制限することができる。ワイパ91による払拭動作を行うときにはストッパによって回転させないよう固定し、払拭に用いる面を変更したいときにストッパを解除して回転させることができる。
【0034】
ワイパ91が基板ステージ3とともにY軸方向に移動され、その上方に塗布ヘッド5が位置づけられる位置に移動したときに、ワイパ91が塗布ヘッド5のノズルと接触する。このときワイパ91が塗布ヘッド5のノズルに接触しながらY軸方向に移動することにより、ノズル面を払拭する。カバー62のZ軸方向位置は、Z軸移動機構8により、ノズルが形成される面と同じ高さとなるよう調整される。これにより、メンテナンスユニット9のワイパ91は、塗布ヘッド5のノズル形成面を払拭した後に、カバー62の下面を払拭することができる。塗布ヘッド5のノズルは塗布液が付着しており、払拭後のワイパ91には塗布液が多量に付着してしまう。したがって、ワイパ91はノズル形成面を払拭した後、ストッパを解除するとともに図示しない駆動部により自身を回転させて、異なる面がカバー62の下面に接するようにすることが好ましい。ワイパ91は、カバー62の下面に接触しながらY軸方向に移動することにより、カバー62下面を払拭する。
【0035】
ここで、カバー62は、液滴吐出領域Eを覆っている間、液滴吐出領域Eから蒸発する塗布液を受け止めることになる。液滴吐出の良否検査を繰り返し行うにつれ、カバー62の下面側は蒸発した塗布液が付着し、徐々に汚れてきたり、曇ったりする。そこで、塗布ヘッド5のメンテナンスを行うタイミングで、一緒にワイパ91によるメンテナンスを実施する。塗布ヘッド5のメンテナンスタイミングは、ノズルの乾燥による吐出不良などが起こらない範囲を予め実験などによって求め、設定される。
【0036】
あるいは、ワイパ91によるメンテナンスは、塗布ヘッド5のメンテナンスと同時でなく、カバー62のみのメンテナンスとして行っても良い。この場合には、カメラ61によりカバー62を撮像し、カバー62の汚れ具合を検知することにより、カバー62のメンテナンスを行うようにする。例えば、カメラ61は定期的にカバー62を撮像して制御装置100に出力する。制御装置100は、この画像を画像処理して二値化し、汚れを検出する。汚れが検出されたときに、カバー62を下降させ、ワイパ91をY軸方向に移動させることによりカバー62のメンテナンスを行うようにしても良い。このとき、塗布ヘッド5を図示しない退避手段により退避するようにしても良い。なお、カバー62の撮像は、液滴吐出の良否検査を行うときに撮像したものを用いるようにしても良い。なお、この場合には検査用媒体Kに吐出された液滴も画像に含まれることになるが、液滴が存在しない箇所のみを用いて、カバー62の汚れ具合を検出するようにしても良い。
【0037】
あるいは、検査用媒体Kの液滴吐出領域Eを除く位置に汚れ検知用のマークを設けておき、マークを撮像することによりカバー62の汚れを判定するようにしても良い。例えば、外へ向かうほど薄い色で描かれた円形パターンを設ける。定期的にこのマークをカメラ61で撮像することにより、汚れ具合を検出する。カバー62が曇ることによりカメラ61により撮像された撮像画像中のマークの面積が小さくなる。予め定めた面積を下回った場合には、メンテナンスが必要と判断し、カバー62の払拭などのメンテナンスを行う。
【0038】
このように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を有する上、カバー62を清浄に保つことができるので、カメラ61による撮像画像が鮮明になり、より正確に液滴吐出の良否を検査することができるようになる。
<第2の実施形態の変形例>
第2の実施形態においては、カメラ61の撮像画像を画像処理して汚れを検知することにより、カバー62のメンテナンスを行うことを例示したが、これに限らず、液滴吐出の良否を検査する際に液滴撮像部6によって撮像した複数の画像のコントラストの変化から、カバー62の曇りを検知するようにしても良い。具体的には、制御装置100に出力された液滴撮像部6のカメラ61による撮像画像を用いて、この撮像画像に含まれる液滴外縁部と液滴範囲外の境界部分のコントラスト値を測定する。このコントラスト値が予め設定された閾値よりも低い場合に、カバー62に曇りが発生していると判定し、カバー62のメンテナンスを実施する。カバー62のメンテナンスは、先に述べたメンテナンスユニット9のワイパ91による払拭を行う。
【0039】
このように、本変形例によれば、第1の実施形態および第2の実施形態と同様の効果を有する上、液滴吐出の良否検査に用いる撮像画像を用いてカバー62の曇りを判断することができるので、カメラ61による撮像や、撮像画像の画像処理の回数を最低限に抑えることができ、効率的に液滴吐出の良否を検査することができるようになる。
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態においては、カバー62は、板状であることを例示したが、これに限らず、例えば、カメラ61を覆うボックス状のものでも良い。この場合には、ボックスの下面を低反射加工が施された透明のガラスとし、それ以外の面(壁面部分)については黒い板状物とすることができる。壁面部分を黒にすることにより、カメラ61に反射光が入射することを防止でき、より正確に液滴吐出の良否検査を行うことができる。
【0040】
また、上記実施形態においては、液滴撮像部6はX軸方向およびZ軸方向に移動可能に設けられていることを例示したが、これに限らず、例えばY軸方向、回転方向に動くようにしても良い。
【0041】
また、上記実施形態においては、検査用媒体Kを基板ステージ3に載置して液滴吐出良否検査を行うことを例示したが、これに限らず、メンテナンスユニット9の一部分に検査用媒体を載置する部分を設け、塗布ヘッド5およびカバー62のメンテナンス実施後に検査用媒体KをY方向へ移動させて液滴吐出の良否検査を実施するようにしても良い。
【0042】
また、上記実施形態においては、検査用媒体Kは撥液ガラスであることを例示したが、これに限らず、フィルム状のものや、矩形状のものでない別の形(例えば円形状や多角形状)でも良い。あるいは、塗布膜を形成するための基板Wの端部など、最終製品となるときに不要となる箇所を検査用媒体として用いても良い。
【0043】
また、上記実施形態においては、コントラスト値が閾値を下回った場合にカバー62のメンテナンスを実施することを例示したが、これに限らず、得られたコントラスト値に基づき、予め実験により求めていた補正値を用いて液滴の面積を換算するようにしても良い。
【0044】
また、上記実施形態においては、カバー62の汚れや曇りを検知したときに自動的にカバー62をワイパ91で払拭することを例示したが、これに限らず、カバー62の汚れや曇りを検知したことを作業者に知らせるべく、装置内の表示部に警告文を表示したり、ランプを点灯させたり、警告音を鳴らすようにしても良い。これに基づき、カバー62を別の新しいカバーと交換したり、手動でカバー62の清掃を行うようにしても良い。
【0045】
また、上記実施形態においては、メンテナンスユニット9に布状のロールワイパであるワイパ91が設けられていることを例示したが、これに限らず、バキュームワイパやブレード、洗浄液を供給するノズルなど、公知のインクジェット式の塗布ヘッドのメンテナンス部材を併用したり、置き換えたりしても良い。
【0046】
また、上記実施形態において、塗布ヘッド5は一つである場合を例示したが、これに限らず、複数有するようにしても良い。塗布ヘッド5が複数設けられている場合には、液滴検査は一つのヘッド毎に行っても良いし、複数一度に行っても良い。いずれにしても、一度の検査対象となる液滴吐出領域Eを覆うことのできる長さを有するカバー62を備えれば良い。
【0047】
また、上記実施形態において、ワイパ91の長さは、塗布ヘッド5のノズルの形成領域の長手方向の長さよりも長いことを例示したが、これに限らず、ノズルの吐出に供する範囲の長さ、検査用媒体K上の液滴吐出領域Eの長さの中から、最も長い長さと同じ、もしくは長い長さを有していれば良い。
【0048】
なお、上記実施形態においては、カメラ61により撮像された画像に基づき、液滴の面積を計測し、この面積から各ノズルの吐出量を求めることを例示したが、これに限らず、求めた面積とノズルに印加する電圧の補正値の対応表を記憶部に記憶しておき、対応する電圧を印加するようにしても良い。
【0049】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1 塗布装置
5 塗布ヘッド
5a ノズル
K 検査用媒体
W 基板
E 液滴吐出領域
6 液滴撮像部
61 カメラ
62 カバー
100 制御装置
9 メンテナンスユニット
91 ワイパ