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特許7526165発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、メタクリル酸メチル系樹脂予備発泡粒子、メタクリル酸メチル系発泡成形体、及び発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、メタクリル酸メチル系樹脂予備発泡粒子、メタクリル酸メチル系発泡成形体、及び発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20240724BHJP
   C08J 9/20 20060101ALI20240724BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
C08J9/16 CEY
C08J9/20
C08F220/18
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021511857
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013276
(87)【国際公開番号】W WO2020203537
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019068365
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019068367
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基理人
(72)【発明者】
【氏名】木口 太郎
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-086804(JP,A)
【文献】特開2015-013423(JP,A)
【文献】特開2001-233986(JP,A)
【文献】特開2006-241256(JP,A)
【文献】特開2005-307075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/16
C08J 9/20
C08F 220/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成単位としてメタクリル酸メチル単位及びアクリル酸エステル単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含む発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子であって、
前記基材樹脂における前記メタクリル酸メチル単位及び前記アクリル酸エステル単位の合計含有量を100重量部とした場合に、前記メタクリル酸メチル単位の含有量は、91重量部以上99重量部以下であり、前記アクリル酸エステル単位の含有量は1重量部以上9重量部以下であり、
前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の(a)平均粒径が0.6~1.0mmであり、かつ(b)粒径の変動係数が20%以下であり、
前記アクリル酸エステル単位がアクリル酸ブチル単位であり、
前記基材樹脂における前記メタクリル酸メチル単位及び前記アクリル酸ブチル単位の合計含有量を100重量部とした場合に、前記メタクリル酸メチル単位の含有量は94重量部以上96重量部以下であり、前記アクリル酸ブチル単位の含有量は4重量部以上6重量部以下であり、
前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を予備発泡し、成形させてなる発泡成形体の融着率が60%以上であり、かつ、前記発泡成形体の表面に存在するセルのうち破泡したものの個数が30個/mm 2 未満であることを特徴とする発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
【請求項2】
前記基材樹脂は、構成単位として、さらに二官能性単量体単位を含み、
前記二官能性単量体単位の含有量は、前記メタクリル酸メチル単位及び前記アクリル酸エステル単位の合計含有量を100重量部とした場合に、0.05重量部以上0.15重量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
【請求項3】
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量が30万以上40万以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を発泡させてなることを特徴とする、メタクリル酸メチル系樹脂予備発泡粒子。
【請求項5】
請求項に記載のメタクリル酸メチル系樹脂予備発泡粒子を型内成形してなることを特徴とする、メタクリル酸メチル系発泡成形体。
【請求項6】
表面から内側200μmまでの範囲の気泡径の平均弦長が40~130μmであることを特徴とする請求項記載のメタクリル酸メチル系発泡成形体。
【請求項7】
請求項又は請求項に記載のメタクリル酸メチル系発泡成形体からなることを特徴とする消失模型。
【請求項8】
発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法であって、
メタクリル酸メチル単量体及びアクリル酸エステル単量体を含む単量体を共重合する共重合工程と、得られた共重合体に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程とを含み、
前記共重合工程において、前記メタクリル酸メチル単量体及び前記アクリル酸エステル単量体の合計配合量を100重量部とした場合に、前記メタクリル酸メチル単量体の配合量は、91重量部以上99重量部以下であり、前記アクリル酸エステル単量体の配合量は1重量部以上9重量部以下であり、
前記共重合工程では、
前記単量体100重量部に対し難水溶性無機塩0.08重量部以上0.20重量部以下を含む水性媒体中に、前記単量体を添加して前記単量体の重合反応を開始し、
重合転化率が35%以上70%以下の時点で、前記単量体100重量部に対して0.08重量部以上0.50重量部以下の難水溶性無機塩を添加し、
前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の平均粒径が0.6~1.0mmであることを特徴とする、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法。
【請求項9】
前記単量体は、二官能性単量体を更に含み、
前記メタクリル酸メチル単量体及び前記アクリル酸エステル単量体の合計配合量を100重量部とした場合に、前記二官能性単量体の配合量は、0.05重量部以上0.15重量部以下であることを特徴とする、請求項に記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法。
【請求項10】
前記アクリル酸エステル単量体は、アクリル酸ブチルであることを特徴とする、
請求項又はに記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、メタクリル酸メチル系樹脂予備発泡粒子、メタクリル酸メチル系発泡性成形体、及び発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属鋳造を行うとき、発泡成形体で作製した模型を鋳造砂に埋没し、当該発泡成形体に対して溶融金属を流し込んで発泡成形体と金属とを置換することで鋳物を鋳造する消失模型鋳造法(フルモールド法)が知られている。フルモールド法では、メタクリル酸メチル重合体の発泡成形体が、鋳造時の残渣低減の観点から、使用されている。また、鋳物用の発泡成形体は大型のブロック成形体から切削加工したものが多く用いられている。
【0003】
メタクリル酸メチル重合体の発泡成形体を製造するための発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子としては、例えば、特許文献1には、メタクリル酸エステルとアクリル酸エステルと多官能性単量体とを用いて、発泡性及び成形性を確保した発泡性アクリル樹脂が開示されている。特許文献2には、メタクリル酸メチルとアクリル酸アルキルエステルとスチレンとを用いた重合体で、高強度な成形体が得られる発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子が開示されている。また、特許文献3には、メタクリル酸エステル系樹脂粒子を収率よく製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2016/047490
【文献】WO2016/140223
【文献】特開2003-261603
【文献】特開2001-233986号公報
【文献】特開2006-241256号公報
【文献】特開2015-183111号公報
【文献】特開2018-135407号公報
【文献】特開1999-269300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術は収率、発泡性及び/又は成形性の観点から、改善の余地がある。
【0006】
以上のような状況に鑑み、本発明の一実施形態の目的は、粒度分布が狭く収率が良好であり、かつ発泡性及び成形性に優れた発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、メタクリル酸メチル系樹脂予備発泡粒子、メタクリル酸メチル系発泡成形体、及び発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は、構成単位としてメタクリル酸メチル単位及びアクリル酸エステル単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含む発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子であって、前記基材樹脂における前記メタクリル酸メチル単位及び前記アクリル酸エステル単位の合計含有量を100重量部とした場合に、前記メタクリル酸メチル単位の含有量は、91重量部以上99重量部以下であり、前記アクリル酸エステル単位の含有量は1重量部以上9重量部以下であり、前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の(a)平均粒径が0.6~1.0mmであり、かつ(b)粒径の変動係数が20%以下である。
【0009】
また、本発明の一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法は、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法であって、メタクリル酸メチル単量体及びアクリル酸エステル単量体を含む単量体を共重合する共重合工程と、得られた共重合体に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程とを含み、前記共重合工程において、前記メタクリル酸メチル単量体及び前記アクリル酸エステル単量体の合計配合量を100重量部とした場合に、前記メタクリル酸メチル単量体の配合量は、91重量部以上99重量部以下であり、前記アクリル酸エステル単量体の配合量は1重量部以上9重量部以下であり、前記共重合工程では、前記単量体100重量部に対し難水溶性無機塩0.08重量部以上0.20重量部以下を含む水性媒体中に、前記単量体を添加して前記単量体の重合反応を開始し、
重合転化率が35%以上70%以下の時点で、基材樹脂100重量部に対して0.08重量部以上0.50重量部以下の難水溶性無機塩を添加し、前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の平均粒径が0.6~1.0mmである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によると、粒度分布が狭く収率が良好であり、かつ発泡性及び成形性に優れた発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を提供できるという効果を奏する。本発明の一実施形態によると、特に、金属鋳造の際に使用する消失模型の使用に適した発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0012】
〔I.第一実施形態〕
〔I-1.本発明の第一実施形態の技術的思想〕
本発明者が鋭意検討した結果、上述した特許文献1~3に記載の技術には、以下に示すような改善の余地があることを見出した。
【0013】
特許文献1及び2に記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は、粒度分布が広く小粒子が多いため、篩時のロス及び/又は予備発泡時のブロッキング発生により収率が十分でなく改善の余地がある。特許文献3には粒度分布が狭いメタクリル酸メチル系樹脂粒子が得られる製造方法が開示されているが、該製造方法で製造したメタクリル酸メチル系樹脂粒子は平均粒径が0.3~0.5mmと平均粒径が小さいため、発泡性及び/又はブロッキング発生の観点から改善の余地がある。
【0014】
発明者らは、(a)メタクリル酸メチル系重合体の大型のブロックの成形は一般に難しく、発泡性メタクリルメチル系樹脂粒子の平均粒径が小さすぎても、大きすぎてもブロック成形体内部の融着が起こりづらいという新たな知見を得、また(b)発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は篩にかけて目的の粒径範囲のみを分取して利用することが一般的であるが、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の粒度分布が広い場合には篩時のロスが多く発生し、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の収率が低下してしまうことに独自に着目した。かかる新規知見及び独自の着眼点に基づき鋭意検討の結果、本発明者は本発明の第一実施形態に係る発明を完成するに至った。
【0015】
〔I-2.発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子〕
本発明の第一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は、構成単位としてメタクリル酸メチル単位及びアクリル酸エステル単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含む発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子であって、前記基材樹脂における前記メタクリル酸メチル単位及び前記アクリル酸エステル単位の合計含有量を100重量部とした場合に、前記メタクリル酸メチル単位の含有量は、91重量部以上99重量部以下であり、前記アクリル酸エステル単位の含有量は1重量部以上9重量部以下であり、前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の(a)平均粒径が0.6~1.0mmであり、かつ(b)粒径の変動係数が20%以下である。
【0016】
本発明の第一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は、上記構成を有するため、粒度分布が狭く収率が良好であり、かつ発泡性及び成形性に優れる、という利点を有する。
【0017】
本発明の第一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子が含む基材樹脂は、構成単位としてメタクリル酸メチル単位及びアクリル酸エステル単位を含む。本明細書において、「メタクリル酸メチル単位」とは、メタクリル酸メチル単量体に由来する構成単位であり、「アクリル酸エステル単位」とは、アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位である。
【0018】
本明細書において、「単量体」の表記は省略する場合がある。故に、本明細書において、例えば、単に「メタクリル酸メチル」および「アクリル酸エステル」と表記した場合は、それぞれ、「メタクリル酸メチル単量体」および「アクリル酸エステル単量体」を意図する。
【0019】
本明細書において、「発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子」を「発泡性樹脂粒子」と称する場合もあり、「メタクリル酸メチル系樹脂予備発泡粒子」を「予備発泡粒子」と称する場合もあり、「メタクリル酸メチル系発泡成形体」を「発泡成形体」と称する場合もある。
【0020】
本発明の第一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子が含む基材樹脂において、メタクリル酸メチル単位及びアクリル酸エステル単位の含有量の比率は、メタクリル酸メチル単位及びアクリル酸エステル単位の合計含有量100重量部に対し、(a)メタクリル酸メチル92重量部以上97重量部以下及びアクリル酸エステル3重量部以上8重量部以下が好ましく、(b)より好ましくはメタクリル酸メチル93重量部以上96重量部以下及びアクリル酸エステル4重量部以上7重量部以下であり、(c)さらに好ましくはメタクリル酸メチル94重量部以上96重量部以下及びアクリル酸エステル4重量部以上6重量部以下であり、(d)よりさらに好ましくはメタクリル酸メチル94.5重量部以上95.0重量部以下及びアクリル酸エステル5.0重量部以上5.5重量部以下である。基材樹脂におけるメタクリル酸メチル単位の含有量の比率が99重量部を超えると、発泡性樹脂粒子が発泡性及び成形性に劣る傾向がある。その結果、当該発泡性樹脂粒子を使用して表面が美麗な発泡成形体を得づらい。基材樹脂におけるアクリル酸エステル単位の含有量の比率が9重量部を超えると、発泡成形体が収縮しやすい傾向にある。
【0021】
本発明の第一実施形態に係るアクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチルなどが挙げられる。アクリル酸エステルとしては、特に、基材樹脂のガラス転移温度低下の効果が大きいアクリル酸ブチルが好ましい。
【0022】
換言すれば、アクリル酸エステル単位が、アクリル酸ブチルに由来するアクリル酸ブチル単位であることが好ましい。当該構成によると、発泡性及び成形性により優れる発泡性樹脂粒子を得ることができる。
【0023】
本発明の第一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子が含む基材樹脂は、燃焼時の残渣低減及び分子量の調整のために、構成単位として更に二官能性単量体単位を含有してもよい。本明細書において、「二官能性単量体単位」とは、二官能性単量体に由来する構成単位である。二官能性単量体としては、例えば、(a)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコールまたは当該エチレングリコールのオリゴマーの、両末端水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化した化合物、(b)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の2価のアルコールの水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化した化合物、(c)ジビニルベンゼン等のアルケニル基を2個有するアリール化合物、等があげられる。二官能性単量体としては、基材樹脂の分子量調整のしやすさから、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートなどのヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0024】
基材樹脂における二官能性単量体単位の含有量は、メタクリル酸メチル単位及びアクリル酸エステル単位の合計含有量100重量部に対して0.05重量部以上0.15重量部以下が好ましく、0.08重量部以上0.13重量部がより好ましい。二官能性単量体単位の含有量が前記範囲内である場合、発泡性及び成形性にも優れる発泡性樹脂粒子を得ることができ、当該発泡性樹脂粒子を用いて鋳造時(燃焼時)の残渣が残りにくい上に強度に優れる発泡成形体を得ることができる。
【0025】
本発明の第一実施形態では、共重合成分として芳香族ビニル化合物を含有していても良い。
【0026】
換言すれば、本発明の第一実施形態において、基材樹脂は、構成単位として更に芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を含有してもよい。
【0027】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、t-ブチルスチレン及びクロルスチレン等が挙げられる。芳香族ビニル化合物の使用は発泡成形体強度を向上させるが、芳香族ビニル化合物の使用量は鋳造時のスス発生の観点からできる限り少ないほうが良い。芳香族ビニル化合物の使用量としては基材樹脂100重量部に対して、2重量部以下であることが好ましく、より好ましくは使用しないことである。
【0028】
換言すれば、芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の含有量は、基材樹脂100重量部に対して、2重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0重量部であることが好ましい。すなわち、基材樹脂は、芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を含有しないことが好ましい。
【0029】
本発明の第一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量が、30万以上40万以下であることが好ましい。前記範囲内である場合、発泡性樹脂粒子を用いて鋳造時(燃焼時)の残渣が残りにくい上に表面性に優れた発泡成形体が得られる。
【0030】
〔I-3.発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法〕
本発明の第一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法は、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法であって、メタクリル酸メチル単量体及びアクリル酸エステル単量体を含む単量体を共重合する共重合工程と、得られた共重合体に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程とを含み、前記共重合工程において、前記メタクリル酸メチル単量体及び前記アクリル酸エステル単量体の合計配合量を100重量部とした場合に、前記メタクリル酸メチル単量体の配合量は、91重量部以上99重量部以下であり、前記アクリル酸エステル単量体の配合量は1重量部以上9重量部以下であり、前記共重合工程では、前記単量体100重量部に対し難水溶性無機塩0.08重量部以上0.20重量部以下を含む水性媒体中に、前記単量体を添加して前記単量体の重合反応を開始し、重合転化率が35%以上70%以下の時点で、単量体100重量部に対して0.08重量部以上0.50重量部以下の難水溶性無機塩を添加し、前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の平均粒径が0.6~1.0mmである。
【0031】
本明細書において、「難水溶性無機塩」とは、25℃の水に対する溶解度が0.1mg/ml以下である無機塩を意図する。
【0032】
本発明の第一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法は、上記構成を有するため、上述した発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を提供できる、という利点を有する。すなわち、本発明の第一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法は、上述した発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を製造するために好適に用いられる。なお、本発明の第一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法における「共重合体」は、上述した発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子が含む「基材樹脂」に相当する。
【0033】
本発明の第一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法は、上記構成を有するため、粒度分布が狭く収率が良好であり、かつ発泡性及び成形性に優れる、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を提供できるという利点を有する。
【0034】
以下、本発明の第一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法に関して説明するが、以下に詳説した事項以外は、適宜、〔I-2.発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子〕の項の記載を援用する。
【0035】
本発明の第一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法が有する共重合工程としては、水性懸濁液中で重合を行う懸濁重合が挙げられる。
【0036】
本発明における「水性懸濁液」とは、攪拌等を用いて、樹脂粒子及び/又は単量体液滴を、水または水溶液中に分散させた状態の液体を指す。水性懸濁液中には水溶性の界面活性剤及び単量体が溶解していても良く、また、水に不溶の分散剤、重合開始剤、連鎖移動剤、架橋剤、気泡調整剤、難燃剤、溶剤、可塑剤等が単量体と共に分散していても良い。
【0037】
本発明の第一実施形態に係る共重合工程において、単量体を添加する水性媒体は、添加する単量体100重量部に対して分散剤としての難水溶性無機塩を0.08重量部以上0.20重量部以下含む。本発明の第一実施形態に係る共重合工程において、単量体を添加する水性媒体は、さらに、難水溶性無機塩以外の分散剤、重合開始剤、連鎖移動剤、架橋剤、気泡調整剤、難燃剤、溶剤、可塑剤等を含んでいてもよい。本発明の第一実施形態に係る共重合工程では、難水溶性無機塩を所定量含む水性媒体中に、単量体とともに、難水溶性無機塩以外の分散剤、重合開始剤、連鎖移動剤、架橋剤、気泡調整剤、難燃剤、溶剤、可塑剤等を添加して、単量体の重合反応を開始してもよい。
【0038】
水性懸濁液中の樹脂(メタクリル酸メチル系樹脂であり、共重合体ともいえる)と水または水溶液との重量比は、得られるメタクリル酸メチル系樹脂/水または水溶液の比として、1.0/0.6~1.0/3.0が好ましい。なお、ここで言及する「水溶液」とは、水と、メタクリル酸メチル系樹脂以外の成分とからなる溶液を意図する。
【0039】
以下、共重合工程で得られる共重合体(基材樹脂)を単に「樹脂粒子」と称する場合もある。
【0040】
本発明の第一実施形態に係る共重合工程では、分散剤としての難水溶性無機塩を含む水性懸濁液(水性媒体に相当する)中に、単量体を添加して単量体の重合反応を開始する。重合反応の開始前(以下、重合初期とも記載する)に使用(添加)できる分散剤としては、例えば、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ハイドロキシアパタイト、カオリンなどの難水溶性無機塩である。また、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子及び/またはα-オレフィンスルホン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダなどのアニオン系界面活性剤を難水溶性無機塩と併用してもよい。
【0041】
重合初期に用いる難水溶性無機塩としては、樹脂粒子及び/又は単量体の液滴の保護力の観点から、第三リン酸カルシウムが好ましい。重合初期の水性懸濁液は、液滴の分散安定性の観点から、難水溶性無機塩である第三リン酸カルシウムとアニオン系界面活性剤であるα-オレフィンスルホン酸ソーダとを含むことが好ましい。
【0042】
重合初期に用いる難水溶性無機塩の使用量は、単量体100重量部に対して0.08重量部以上0.20重量部以下であり、好ましくは0.10重量部以上0.19重量部以下であり、より好ましくは0.12重量部以上0.18重量部以下であり、より好ましくは0.14重量部以上0.16重量部以下である。重合初期に用いる難水溶性無機塩の使用量が単量体100重量部に対して、(a)0.08重量部未満である場合は、得られる発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の平均粒径が大きくなりすぎ、(b)0.20重量部を超える場合は得られる発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の平均粒径が小さくなりすぎる。アニオン系界面活性剤及び/又は水溶性高分子を難水溶性無機塩と併用する場合は、アニオン系界面活性剤及び/又は水溶性高分子の水中濃度としては30ppm以上100ppm以下が好ましい。
【0043】
本発明の第一実施形態に係る共重合工程では、重合転化率が35%以上70%以下の時点で、単量体100重量部に対して0.08重量部以上0.50重量部以下の難水溶性無機塩を水性懸濁液(反応溶液ともいえる)中に添加する。なお、以下より、「重合開始前」(「重合反応の開始前」)に対して、重合開始後を「重合途中」と記載することがある。重合途中に使用する難水溶性無機塩としては、第三リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイトおよびカオリンからなる群から選択される1種以上であることが好ましく、第三リン酸カルシウムであることがより好ましい。当該構成によると、分散剤の添加(追加)以降の樹脂粒子同士の合一を防ぐことができ、目的の粒径の樹脂粒子が得られるという利点を有する。すなわち、本発明の第一実施形態に係る共重合工程では、重合途中に重合転化率が35%以上70%以下の時点で用いる分散剤としては、第三リン酸カルシウムを用いることがより好ましい。
【0044】
重合途中に重合転化率が35%以上70%以下の時点で水性懸濁液中に追加する難水溶性無機塩の使用量は、単量体100重量部に対して0.08重量部以上0.50重量部以下であり、より好ましくは、0.10重量部以上0.50重量部以下であり、より好ましくは0.10重量部以上0.45重量部以下であり、より好ましくは0.10重量部以上0.40重量部以下であり、より好ましくは0.10重量部以上0.35重量部以下であり、より好ましくは0.10重量部以上0.30重量部以下である。重合途中に重合転化率が35%以上70%以下の時点で追加する難水溶性無機塩の使用量が単量体100重量部に対して、(a)0.08重量部未満の場合は得られる発泡性樹脂粒子の平均粒径が大きくなりすぎ、(b)0.50重量部を超える場合は難水溶性無機塩の過剰な使用により生産コストが高くなる。
【0045】
また、重合途中における難水溶性無機塩の水性懸濁液中への追加のタイミングとしては重合転化率35~70%の時点であり、好ましくは重合転化率35~60%の時点であり、より好ましくは重合転化率40%~50%である。難水溶性無機塩を水性懸濁液中へ重合途中且かつ重合転化率が35%未満で追加した場合は平均粒径が小さくなりすぎ、重合転化率70%以降で追加した場合は平均粒径が大きくなりすぎる。
【0046】
本発明の第一実施形態に係る共重合工程では、低温分解型の開始剤を用いて70~90℃で一段階目の重合を行い主要な重合反応を行った後、高温分解型の開始剤を用いて一段階目よりも高温(90~110℃)で二段階目の重合反応を行い、残存モノマーを低減させることが好ましい。
【0047】
重合開始剤としては、一般に熱可塑性重合体の製造に用いられるラジカル発生型重合開始剤を用いることができる。代表的なラジカル発生型重合開始剤としては、例えば、(a)過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、イソプロピル-t-ブチルパーオキシカーボネート、過安息香酸ブチル、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーピバレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-アミルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネートなどの有機過酸化物、および(b)アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物、が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。重合開始剤の使用量は一段階目の重合における使用量と二段階目の重合における使用量とを合計して、例えば単量体100重量部に対して0.1重量部以上0.5重量部以下が好ましい。上記範囲であれば、発泡性に優れた発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子が得られる。
【0048】
二段階目の重合で使用(作用)する高温分解型の開始剤は、一段階目の重合で使用(作用)する低温分解型の開始剤とともに、重合反応の開始前に水性媒体(水性懸濁液)中に添加してもよい。
【0049】
また本発明の第一実施形態に係る共重合工程においては、連鎖移動剤としてメタクリル酸メチル系樹脂の重合に用いられる周知のものを使用するのが好ましい。例えば、(a)アルキルメルカプタン類、チオグリコール酸エステル類等の単官能連鎖移動剤、及び(b)エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ソルビトール等の多価アルコール水酸基をチオグリコール酸または3-メルカプトプロピオン酸でエステル化した多官能性連鎖移動剤、があげられる。連鎖移動剤の使用量は、例えば基材樹脂100重量部に対して0.1重量部以上0.5重量部未満が好ましい。
【0050】
本発明の第一実施形態に係る発泡剤含浸工程で使用される発泡剤としては、(a)例えば、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、ネオペンタン等の炭素数3以上5以下の炭化水素である脂肪族炭化水素類、及び(b)例えば、ジフルオロエタン、テトラフルオロエタン等のオゾン破壊係数がゼロであるハイドロフルオロカーボン類、等の揮発性発泡剤があげられる。これらの発泡剤は2種以上を組み合わせて使用しても何ら差し支えない。また、発泡剤の使用量としては、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子100重量部に対して、好ましくは5重量部以上12重量部以下、さらに好ましくは7重量部以上10重量部以下である。発泡剤の使用量が上述した範囲内である場合、得られる発泡性樹脂粒子を用いて高倍の発泡倍率を有する予備発泡粒子を得ることができ、また、発泡剤含浸工程で樹脂粒子の凝集が生じない、という利点を有する。
【0051】
発泡剤は、樹脂粒子の重合転化率が、80%以上95%以下の時に、発泡剤を樹脂粒子に含浸することが好ましい。発泡剤含浸時の重合転化率が当該範囲内である場合、発泡剤含浸工程で樹脂粒子の凝集が起こり難く、発泡性樹脂粒子が収率良く得られ、かつ、当該発泡性樹脂粒子を発泡させてなる予備発泡粒子を用いて得られる発泡成形体は良好な表面平滑性を有する。
【0052】
換言すれば、発泡剤含浸工程は、重合転化率が80%以上95%以下の時点で実施されるかまたは開始されることが好ましい。
【0053】
発泡剤を樹脂粒子の中に含浸する時(すなわち発泡剤含浸工程)の含浸温度は、95℃以上120℃以下であることが好ましく、更に好ましくは、100℃以上117℃以下である。含浸温度が上述した範囲内である場合、発泡性樹脂粒子の製造に重装備な含浸設備は必要なく、かつ、当該発泡性樹脂粒子を発泡させてなる予備発泡粒子を用いて得られる発泡成形体は良好な表面平滑性を有する。
【0054】
溶剤としては、沸点50℃以上のものが好ましく、例えば、(a)トルエン、へキサン、ヘプタン等のC6以上(炭素数6以上)の脂肪族炭化水素、及び(b)シクロヘキサン、シクロオクタン等のC6以上の脂環族炭化水素、などが挙げられる。沸点50℃以上の溶剤としては、発泡性に優れる発泡性樹脂粒子を得る上で、トルエンおよび/またはシクロヘキサンが好ましい。溶剤の使用量は、単量体100重量部に対して1.5重量部以上3.0重量部以下含まれることが好ましい。溶剤の使用量が当該範囲内である場合、発泡性に優れる発泡性樹脂粒子が得られ、かつ、当該発泡性樹脂粒子を発泡させてなる予備発泡粒子を用いて、寸法安定性の高い発泡成形体が得られる。沸点50℃以上の溶剤成分を水性懸濁液中に添加するタイミングとしては、発泡剤を樹脂粒子へ含浸させる直前に水性懸濁液中に添加するか、または、発泡剤と同時に水性懸濁液中に添加することが好ましい。
【0055】
可塑剤としては、沸点200℃以上の高沸点可塑剤が好ましく、例えば、(a)ステアリン酸トリグリセライド、パルミチン酸トリグリセライド、ラウリン酸トリグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等の脂肪酸グリセライド、(b)ヤシ油、パーム油、パーム核油等の植物油、(c)ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート等の脂肪族エステル、及び(d)流動パラフィン、シクロヘキサン等の有機炭化水素、等があげられる。
【0056】
気泡調整剤としては、例えば、(a)メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等の脂肪族ビスアマイド、および(b)ポリエチレンワックス、等が挙げられる。
【0057】
本発明の第一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の平均粒径は0.6~1.0mmであり、より好ましくは0.7~0.9mmである。当該平均粒径が0.6mm未満であると予備発泡時の発泡性低下及び/又はブロッキング増加をもたらす。当該平均粒径が1.0mmより大きい場合は予備発泡粒子の発泡力が高すぎ、当該予備発泡粒子を用いる成形のときに成形体表面が瞬時に形成されることで成形体内部まで蒸気が入らずに成形体内部の融着悪化をもたらす。
【0058】
本発明の第一実施形態において、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の平均粒径とは、体積基準の平均粒径を意図する。平均粒径は、体積平均粒子径ともいえる。当該平均粒径の測定方法等については、実施例にて詳述する。
【0059】
本発明の第一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の粒径の変動係数は20%以下である。変動係数は低いほど篩時のロスが少なく、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子が収率よく得られる。また、本発明の第一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子において、変動係数は高いほど小粒子の(平均粒径が小さい)発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を多く含み、小粒子はブロッキング発生をもたらす。
【0060】
得られた発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は、一般的な予備発泡方法によって、予備発泡粒子(本明細書中では、発泡粒子又はメタクリル酸メチル系予備発泡粒子とも記載する)とすることができる。具体的には攪拌機を具備した容器内に発泡性樹脂粒子を入れ、水蒸気等の熱源により発泡性樹脂粒子を加熱することで、所望の発泡倍率まで発泡性樹脂粒子を予備発泡し、予備発泡粒子とすることができる。
【0061】
更にメタクリル酸メチル系予備発泡粒子は、一般的な型内成形方法によって成形し、発泡成形体にすることができる。具体的には、閉鎖し得るが密閉しえない金型内にメタクリル酸メチル系予備発泡粒子を充填し、水蒸気によりメタクリル酸メチル系予備発泡粒子を加熱し、かつ融着させることで発泡成形体とする。
【0062】
本発明の第一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を予備発泡し、得られる予備発泡粒子(発泡粒子ともいえる)を成形させてなる発泡成形体の融着率は、60%以上であることが好ましく、当該発泡成形体の融着率が60%以上である場合、発泡成形体を切削するときに切削面から発泡粒子の脱落が起こり難く、鋳造時に欠陥のない最終製品を得やすいという利点を有する。発泡成形体の融着率の測定方法については、実施例にて詳述する。
【0063】
本発明の第一実施形態において、上述した発泡成形体の融着率を評価するときの、発泡成形体について説明する。当該発泡成形体を、本発明の第一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子から得る方法については特に限定されないが、例えば以下の(A1)~(A6)を順に行う方法が挙げられる:(A1)発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を篩い分けして粒子径0.5~1.4mmの発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を分取する;(A2)分取した発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を、加圧式予備発泡機「大開工業製、BHP」を用いて、吹き込み蒸気圧0.12MPa~0.16MPaの条件でかさ倍率65倍へ予備発泡する;(A3)得られたメタクリル酸メチル系予備発泡粒子を常温下で3日放置する;(A4)放置したメタクリル酸メチル系予備発泡粒子を、成形機「ダイセン製、PEONY-205DS」を用いて吹き込み蒸気圧0.05MPaの条件で発泡圧が0.06MPaとなるまで真空吸引加熱による型内成形を行う;(A5)その後、得られる発泡成形体を金型内で1000秒間冷却してから取り出すことにより、長さ2000mm、幅1000mmおよび厚み525mmのブロック状のメタクリル酸メチル系発泡成形体を得る;(A6)得られたメタクリル酸メチル系発泡成形体を常温下で3日放置する。換言すれば、本発明の第一実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を(A1)~(A6)の操作に供して得られた発泡成形体について、当該発泡成形体の融着率が上述した範囲内であることが好ましい。
【0064】
本発明の第一実施形態における発泡成形体は、以下のような構成であってもよい。すなわち、本発明の第一実施形態におけるメタクリル酸メチル系発泡成形体は、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を予備発泡し、得られた発泡性メタクリル酸メチル系予備発泡粒子を成形させてなるメタクリル酸メチル系発泡成形体であって、前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は、構成単位としてメタクリル酸メチル単位及びアクリル酸エステル単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含む発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子であって、前記基材樹脂における前記メタクリル酸メチル単位及び前記アクリル酸エステル単位の合計含有量を100重量部とした場合に、前記メタクリル酸メチル単位の含有量は、91重量部以上99重量部以下であり、前記アクリル酸エステル単位の含有量は1重量部以上9重量部以下であり、前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の(a)平均粒径が0.6~1.0mmであり、かつ(b)粒径の変動係数が20%以下であり、前記メタクリル酸メチル系発泡成形体の融着率が60%以上である。
【0065】
本発明の第一実施形態における発泡成形体は、以下のような構成であってもよい。すなわち、本発明の第一実施形態におけるメタクリル酸メチル系発泡成形体は、(a)構成単位としてメタクリル酸メチル単位及びアクリル酸エステル単位を含む基材樹脂を含み、(b)融着率が60%以上であり、前記基材樹脂における前記メタクリル酸メチル単位及び前記アクリル酸エステル単位の合計含有量を100重量部とした場合に、前記メタクリル酸メチル単位の含有量は、91重量部以上99重量部以下であり、前記アクリル酸エステル単位の含有量は1重量部以上9重量部以下である。
【0066】
本発明の第一実施形態に係るメタクリル酸メチル系予備発泡粒子の発泡成形体は、発泡成形体を鋳造砂に埋没し、そこに溶融金属を流し込んで置換しても、メタクリル酸メチル系樹脂の残渣が残り難いといったことから消失模型として好適に使用できる。
【0067】
〔II.第二実施形態〕
以下、本発明の第二実施形態に関して説明するが、以下に詳説した事項以外は、適宜、〔I.第一実施形態〕の項の記載を援用する。
【0068】
本発明の第二実施形態は、ポリメタクリル酸メチル系発泡性樹脂粒子(発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子)とその予備発泡粒子に関する。本発明の第二実施形態は、さらには、メタクリル酸メチル系発泡粒子の発泡成形体からなる消失模型に関する。
【0069】
発泡性メタクリル酸メチル系発泡樹脂粒子で製造された発泡成形体の用途として、例えば消失模型鋳造法(フルモールド法)における消失模型の用途が挙げられる。フルモールド法とは金属鋳造を行うとき、発泡成形体で作製した模型を鋳造砂に埋没し、そこに溶融金属を流し込んで置換することで鋳物を鋳造する方法である。フルモールド法においてポリスチレン系重合体の発泡成形体では鋳造時に煤が発生して鋳物内の残渣(欠陥)が発生しやすい問題がある。一方、ポリメタクリル酸メチル重合体の発泡成形体が、鋳造時に煤の発生が少なく、鋳造時の残渣低減の観点から、フルモールド法において使用されている。
【0070】
鋳造向けに好適に使用するためにはポリメタクリル酸メチル系発泡性樹脂の発泡性及び成形性が重要となる。ポリメタクリル酸メチル系発泡性樹脂の発泡性及び成形性を改善させる手段として、特許文献4にはメタクリル酸メチル単量体に他の単官能不飽和単量体と多官能性単量体とを共重合する方法、また特許文献5には発泡成形体の気泡径を70μm以上200μm以下とする方法が記載されている。
【0071】
また、成形性に優れた発泡性アクリル系樹脂粒子を得る方法として、特許文献6にメタクリル酸メチル系単量体とアクリル酸エステル系単量体との成分比を調整し、更に多環式飽和炭化水素基を一部導入する方法が記載されている。
【0072】
更に、特許文献7では、メタクリル酸メチル系発泡粒子の粒子内部から表層のセルの平均弦長を均一化することによって、成形時の凹凸を低減させる方法が記載されている。
【0073】
しかしながら、特許文献4及び特許文献5では、溶融時の伸長粘度と剪断粘度とが発泡挙動に対して不適格であり、かつ気泡の保持能力が不十分であるため、発泡性及び成形性に改善の余地がある。また、特許文献6では、発泡性樹脂のガラス転移点が100℃を大きく超えることから、特に、一般的に行われている100℃未満の水蒸気による予備発泡を行う場合には、発泡性に改善の余地がある。また、特許文献7においては成形体の表面性は改善されるものの、表層の破泡が発生しやすいためにブロック成形時に融着性に改善の余地がある。さらに、特許文献8においては、アクリル酸エステルの使用量が多いために、発泡成形体の収縮性に改善の余地がある。
【0074】
特に、発泡成形体を鋳造模型に適用する場合、融着性の悪い発泡成形体を切削すると、融着の悪い部分の粒子が脱落し、欠陥となる虞がある。
【0075】
以上のような状況に鑑み、本発明の第二実施形態の目的は、高倍率の発泡が可能であり、高発泡倍率での成形時の融着性が良好である発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を提供することにある。特に、本発明の第二実施形態の目的の一つは、金属鋳造の際に使用する消失模型の使用に適した発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を提供することにある。
【0076】
本発明者らは、鋭意検討の結果、本発明の第二実施形態に係る発明の完成に至った。
【0077】
本発明の第二実施形態は、本発明の第一実施形態のより好ましい態様である。第二実施形態では、第一実施形態の構成に加えて、(a)アクリル酸エステル単位がアクリル酸ブチル単位であるという構成、(b)基材樹脂におけるメタクリル酸メチル単位及びアクリル酸ブチル単位の合計含有量を100重量部とした場合に、メタクリル酸メチル単位の含有量は94重量部以上96重量部以下であり、アクリル酸ブチル単位の含有量は4重量部以上6重量部以下であるという構成、および(c)発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を予備発泡し、成形させてなる発泡成形体の融着率が60%以上であり、かつ、発泡成形体の表面に存在するセルのうち破泡したものの個数が30個/mm2未満であるという構成、を有する。
【0078】
換言すれば、本発明の第二実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は、構成単位としてメタクリル酸メチル単位及びアクリル酸ブチル単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含む発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子であって、前記基材樹脂における前記メタクリル酸メチル単位及びアクリル酸ブチル単位の合計含有量を100重量部とした場合に、前記メタクリル酸メチル単位の含有量は94重量部以上96重量部以下であり、前記アクリル酸ブチル単位の含有量は4重量部以上6重量部以下であり、前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の(a)平均粒径が0.6~1.0mmであり、かつ(b)粒径の変動係数が20%以下であり、前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を予備発泡し、成形させてなる発泡成形体の融着率が60%以上であり、かつ、前記発泡成形体の表面に存在するセルのうち破泡したものの個数が30個/mm2未満である。
【0079】
本発明の第二実施形態によれば、高倍率の発泡が可能であり、高発泡倍率での成形時の融着性が良好である発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を提供できる。本発明の第二実施形態によれば、特に、金属鋳造の際に使用する消失模型の使用に適した発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を提供できる。
【0080】
本発明の第二実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は、上記構成を有するため、高倍率の発泡が可能であり、かつ高発泡倍率での成形時の融着性に優れる、という利点を有する。
【0081】
本発明の第二実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子が含む基材樹脂は、構成単位としてメタクリル酸メチル単位及びアクリル酸ブチル単位を含む。本明細書において、「アクリル酸ブチル単位」とは、アクリル酸ブチル単量体に由来する構成単位である。
【0082】
本発明の第二実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は、基材樹脂として、メタクリル酸メチル単量体とアクリル酸ブチル単量体とを含むアクリル系単量体の重合体(共重合体)を含む。基材樹脂を構成するアクリル系単量体の合計を100重量部とした場合、メタクリル酸メチル単量体の配合量は94重量部以上96重量部以下であり、アクリル酸ブチル単量体の配合量は4重量部以上6重量部以下である。基材樹脂を構成するアクリル系単量体の合計量を100重量部とした場合に、メタクリル酸メチル単量体成分が96重量部以下である場合、発泡性樹脂粒子が発泡性及び成形性により優れる傾向がある。その結果、当該発泡性樹脂粒子を使用して表面がより美麗な発泡成形体を得やすい。基材樹脂を構成するアクリル系単量体の合計量を100重量部とした場合に、アクリル酸ブチル単量体成分が6重量部以下である場合、発泡成形体が収縮し難い傾向にある。基材樹脂を構成するアクリル系単量体の合計量を100重量部とした場合に、より好ましくはメタクリル酸メチル94.5重量部以上95.0重量部以下及びアクリル酸ブチル5.0重量部以上5.5重量部以下である。
【0083】
本発明の第二実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を予備発泡し、得られる予備発泡粒子(発泡粒子ともいえる)を成形させてなる発泡成形体の融着率は、60%以上である。当該発泡成形体の融着率が60%以上である場合、発泡成形体を切削するときに切削面から発泡粒子の脱落が起こり難く、鋳造時に欠陥のない最終製品を得やすい。当該発泡成形体の融着率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
【0084】
本発明の第二実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を予備発泡し、得られる予備発泡粒子を成形させてなる発泡成形体の表面に存在するセルのうち破泡したセルの個数が30個/mm未満である。当該発泡成形体の表面に存在するセルのうち破泡したセルの個数が30個/mm未満である場合、(a)成形時の発泡力が十分であるため、融着率が低下する虞が無く、(b)さらに、成形後の発泡成形体の寸法収縮及び/又は変形が小さくなりやすい傾向がある。当該発泡成形体の表面に存在するセルのうち破泡したセルの個数は、20個/mm未満であることがより好ましい。
【0085】
なお、本発明の第二実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を予備発泡し、得られる予備発泡粒子を成形させてなる発泡成形体の表面に存在するセルのうち破泡したセルの個数は、当該発泡成形体の表面を走査型電子顕微鏡写真を用いて観察し、穴が開いている部分(セル)の個数を数えることで測定できる。
【0086】
本発明の第二実施形態において、上述した発泡成形体の融着率を評価するときの、発泡成形体について説明する。当該発泡成形体を、本発明の第二実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子から得る方法については特に限定されないが、例えば以下の(B1)~(B6)を順に行う方法が挙げられる:(B1)発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を篩い分けして粒子径0.5~1.4mmの発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を分取する;(B2)分取した発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を、加圧式予備発泡機「大開工業製、BHP」を用いて、吹き込み蒸気圧0.12MPa~0.16MPaの条件でかさ倍率65倍へ予備発泡する;(B3)得られたメタクリル酸メチル系予備発泡粒子を常温下で3日放置する;(B4)放置したメタクリル酸メチル系予備発泡粒子を、成形機「ダイセン製、PEONY-205DS」を用いて吹き込み蒸気圧0.05MPaの条件で発泡圧が0.06MPaとなるまで真空吸引加熱による型内成形を行う;(B5)その後、得られる発泡成形体を金型内で1000秒間冷却してから取り出すことにより、長さ2000mm、幅1000mmおよび厚み525mmのブロック状のメタクリル酸メチル系発泡成形体を得る;(B6)得られたメタクリル酸メチル系発泡成形体を常温下で3日放置する。換言すれば、本発明の第二実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を(B1)~(B6)の操作に供して得られた発泡成形体について、当該発泡成形体の融着率が上述した範囲内であることが好ましい。
【0087】
本発明の第二実施形態において、上述した発泡成形体の表面に存在するセルのうち破泡したセルの個数を評価するときの、発泡成形体について説明する。当該発泡成形体を、本発明の第二実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子から得る方法については特に限定されないが、例えば以下の(C1)~(C5)を順に行う方法が挙げられる:(C1)発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を篩い分けして粒子径0.5~1.4mmの発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を分取する;(C2)分取した発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を、加圧式予備発泡機「大開工業製、BHP」を用いて、吹き込み蒸気圧0.12MPa~0.16MPaの条件でかさ倍率65倍へ予備発泡する;(C3)得られたメタクリル酸メチル系予備発泡粒子を常温下で1日放置する;(C4)放置したメタクリル酸メチル系予備発泡粒子を、成形機「ダイセン製、PEONY-205DS」を用いて吹き込み蒸気圧0.05MPaの条件で型内成形を行い、長さ2000mm、幅1000mmおよび厚み525mmのブロック状のメタクリル酸メチル系発泡成形体を得る;(C5)得られたメタクリル酸メチル系発泡成形体を60℃の乾燥室で2日間乾燥する。換言すれば、本発明の第二実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を(C1)~(C5)の操作に供して得られた発泡成形体について、当該発泡成形体の表面に存在するセルのうち破泡したセルの個数が上述した範囲内であることが好ましい。
【0088】
本発明の第二実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の基材樹脂は、構成単位として、さらに二官能性単量体単位を含むことが好ましい。
【0089】
本発明の第二実施形態では、メタクリル酸メチル単量体とアクリル酸ブチル単量体の合計を100重量部とした場合、燃焼時の残渣低減と分子量の調整のために二官能性単量体を使用することが好ましい。二官能性単量体としては、〔I.第一実施形態〕に記載の二官能性単量体が挙げられる。
【0090】
二官能性単量体は分子量調整のしやすさからヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。本発明の第二実施形態において、二官能性単量体の使用量はメタクリル酸メチル単量体及びアクリル酸ブチル単量体の合計100重量部に対して0.05重量部以上0.15重量部以下が好ましく、0.08重量部以上0.13重量部がより好ましい。二官能性単量体の使用量が前記範囲内である場合、発泡性及び成形性にも優れる発泡性樹脂粒子を得ることができ、当該発泡性樹脂粒子を用いて鋳造時(燃焼時)の残渣が残りにくい上に強度に優れる発泡成形体を得ることができる。
【0091】
本発明の第二実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量が、30万以上40万以下であることが好ましく、より好ましくは33~37万である。前記範囲内である場合、発泡性樹脂粒子を用いて鋳造時(燃焼時)の残渣が残りにくい上に表面性に優れた発泡成形体が得られる。
【0092】
本発明の第二実施形態に係る発泡性樹脂粒子を製造する方法としては水性懸濁液中で重合を行う懸濁重合が挙げられる。
【0093】
本発明の第二実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法の一例としては、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法であって、メタクリル酸メチル単量体及びアクリル酸ブチル単量体を含むアクリル系単量体を共重合する共重合工程と、得られた共重合体に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程とを含み、前記共重合工程において、前記メタクリル酸メチル単量体及び前記アクリル酸ブチル単量体の合計配合量を100重量部とした場合に、前記メタクリル酸メチル単量体の配合量は、94重量部以上96重量部以下であり、前記アクリル酸ブチル単量体の配合量は4重量部以上6重量部以下であり、前記共重合工程では、前記単量体100重量部に対し難水溶性無機塩0.08重量部以上0.20重量部以下を含む水性媒体中に、前記単量体を添加して前記単量体の重合反応を開始し、重合転化率が30%以上70%以下の時点で、前記単量体100重量部に対して0.08重量部以上0.50重量部以下の難水溶性無機塩を添加し、前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の平均粒径が0.6~1.0mmである。なお、本発明の第二実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法における「共重合体」は、上述した第二実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子が含む「基材樹脂」に相当する。
【0094】
共重合工程は、水性懸濁液中でアクリル系単量体を共重合する、懸濁重合で実施されることが好ましい。
【0095】
本発明の第二実施形態における「水性懸濁液」とは、攪拌等を用いて、樹脂粒子および単量体液滴を、水または水溶液中に分散させた状態の液体を指す。水性懸濁液中には水溶性の界面活性剤及び単量体が溶解していても良く、また、水に不溶の分散剤、開始剤、連鎖移動剤、架橋剤、気泡調整剤、難燃剤、溶剤、可塑剤等が単量体と共に分散していても良い。
【0096】
水性懸濁液中の樹脂(メタクリル酸メチル系樹脂であり、共重合体ともいえる)と水との重量比は、得られるメタクリル酸メチル系樹脂/水の比として、1.0/0.6~1.0/3.0が好ましい。
【0097】
以下、共重合工程で得られる共重合体(基材樹脂)を単に「樹脂粒子」と称する場合もある。
【0098】
本発明の第二実施形態における懸濁重合に使用できる分散剤としては、例えば、(a)第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ハイドロキシアパタイト、カオリンなどの難水溶性無機塩、及び(b)ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子などが挙げられる。また、分散剤として難水溶性無機塩を使用する場合には、α-オレフィンスルホン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダなどのアニオン系界面活性剤を難水溶性無機塩と併用することが好ましい。これらの分散剤は必要に応じて重合の途中で追加しても良い。
【0099】
本発明の第二実施形態における懸濁重合において使用する分散剤としては、難水溶性無機塩であることが好ましく、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ハイドロキシアパタイトおよびカオリンからなる群から選択される1種以上であることがより好ましく、第三リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイトおよびカオリンからなる群から選択される1種以上であることがより好ましく、第三リン酸カルシウムであることがさらに好ましい。当該構成によると、樹脂粒子及び/又は単量体の液滴の保護力が高く、樹脂粒子同士の合一を抑制できるという利点を有する。
【0100】
本発明の第二実施形態における懸濁重合では、樹脂粒子同士の衝突を抑制できることから、難水溶性無機塩である第三リン酸カルシウムとアニオン系界面活性剤であるα-オレフィンスルホン酸ソーダとを使用することが好ましい。
【0101】
本発明の第二実施形態において重合途中で分散剤を水性懸濁液中に追加する場合、分散剤としては難水溶性無機塩であることが好ましく、第三リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイトおよびカオリンからなる群から選択される1種以上であることがより好ましく、第三リン酸カルシウムであることがさらに好ましい。当該構成によると、分散剤の添加(追加)以降の樹脂粒子同士の合一を防ぐことができ、目的の粒径の樹脂粒子が得られるという利点を有する。
【0102】
本発明の第二実施形態のように、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を予備発泡し、成形させてなる発泡成形体の融着率が60%以上であり、その発泡成形体の表面に存在するセルのうち破泡したものの個数が30個/mm未満である発泡成形体を得るために、以下のような方法により発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を得ることが重要である。すなわち、基材樹脂100重量部に対して難水溶性無機塩0.08重量部以上0.20重量部以下を含む水性懸濁液(水性媒体に相当する)中に単量体成分を添加して重合を開始し、重合転化率30%以上70%以下でさらに第三リン酸カルシウム0.08重量部以上0.50重量部以下を添加することを含む、方法である。重合開始後の水性懸濁液中への第三リン酸カルシウムの添加は、重合転化率40%以上50%以下で第三リン酸カルシウム0.08重量部以上0.50重量部以下を水性懸濁液中に添加することが発泡性及び成形性のバランスを取りやすい平均粒径を有する発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子が得られやすく、より好ましい。
【0103】
上記方法によって得た発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は、予備発泡した際の予備発泡粒子表面のセル膜が厚くなる傾向にあることから、予備発泡粒子表面の破泡が少なくなる。その結果、当該予備発泡粒子を用いて成形するときに型内での発泡力が高く、融着性の良い発泡成形体を得ることができる。また、一般的に、予備発泡時の発泡機内の温度が高い(例えば、102℃を超える)場合、予備発泡粒子表面のセル膜が薄くなる傾向にある。上記方法によって得られた発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子では、予備発泡時の発泡機内の温度が高い場合であっても、予備発泡粒子表面の破泡を抑制することができる。
【0104】
発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を予備発泡した予備発泡粒子の表面のセル膜の厚みは、0.2μm未満であると破泡しやすいため、0.2μm以上であることが好ましい。上記方法により作成した発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子では、予備発泡粒子表面のセル膜の厚みが0.2μm以上の予備発泡粒子を得ることができる。予備発泡粒子表面のセル膜の厚みは、0.4μm以上であることが特に好ましい。
【0105】
分散剤の使用量は、種類に依存する。難水溶性無機塩の使用量としては水100重量部に対して0.02重量部以上1.0重量部以下が好ましい。アニオン系界面活性剤及び/又は水溶性高分子の使用量としては30ppm以上100ppm以下が好ましい。
【0106】
本発明の第二実施形態に係る懸濁重合は、一段階目の重合を行い主要な重合反応を行った後、一段階目よりも高温で二段階目の重合反応を行い、残存モノマーを低減させることが好ましい。
【0107】
重合開始剤の具体例及び重合開始剤の使用量としては、好ましい態様を含み、〔I.第一実施形態〕に記載の態様を援用できる。
【0108】
また本発明の第二実施形態における重合においては、連鎖移動剤としてメタクリル酸メチル系樹脂の重合に用いられる周知のものを使用するのが好ましい。連鎖移動剤の具体例及び連鎖移動剤の使用量としては、好ましい態様を含み、〔I.第一実施形態〕に記載の態様を援用できる。
【0109】
本発明の第二実施形態に係る発泡剤含浸工程で使用される発泡剤の具体例及び発泡剤の使用量としては、としては、好ましい態様を含み、〔I.第一実施形態〕に記載の態様を援用できる。
【0110】
以下、共重合工程で得られる共重合体(基材樹脂)を単に「樹脂粒子」と称する場合もある。
【0111】
発泡剤は、樹脂粒子の重合転化率が、80%以上95%以下の時に、発泡剤を樹脂粒子に含浸することが好ましい。発泡剤含浸時の重合転化率が当該範囲内である場合、発泡剤含浸工程で樹脂粒子の凝集が起こり難く、発泡性樹脂粒子が収率良く得られ、かつ、当該発泡性樹脂粒子を発泡させてなる予備発泡粒子を用いて得られる発泡成形体は良好な表面平滑性を有する。
【0112】
換言すれば、発泡剤含浸工程は、重合転化率が80%以上95%以下の時点で実施されるかまたは開始されることが好ましい。
【0113】
発泡剤を樹脂粒子の中に含浸する時(すなわち発泡剤含浸工程)の、含浸温度は95℃以上120℃以下であることが好ましく、更に好ましくは、100℃以上117℃以下である。含浸温度が上述した範囲内である場合、発泡性樹脂粒子の製造に重装備な含浸設備は必要なく、かつ、当該発泡性樹脂粒子を発泡させてなる予備発泡粒子を用いて得られる発泡成形体は良好な表面平滑性を有する。
【0114】
本発明の第二実施形態において使用する添加剤としては、目的に応じて溶剤、可塑剤、気泡調整剤等が使用できる。
【0115】
溶剤としては、沸点50℃以上のものが好ましく、例えば、(a)トルエン、へキサン、ヘプタン等のC6(炭素数6)以上の脂肪族炭化水素、及び(b)シクロヘキサン、シクロオクタン等のC6以上の脂環族炭化水素、などが挙げられる。沸点50℃以上の溶剤としては、トルエン、シクロヘキサンが、発泡性に優れる発泡性樹脂粒子を得る上で好ましい。溶剤の使用量は、単量体100重量部に対して1.5重量部以上3.0重量部以下含まれることが好ましい。溶剤の使用量が当該範囲内である場合、発泡性に優れる発泡性樹脂粒子が得られ、かつ、当該発泡性樹脂粒子を発泡させてなる予備発泡粒子を用いて、寸法安定性の高い発泡成形体が得られる。沸点50℃以上の溶剤成分を水性懸濁液中に添加するタイミングとしては、発泡剤を樹脂粒子へ含浸させる直前に水性懸濁液中に添加するか、または、発泡剤と同時に水性懸濁液中に添加することが好ましい。
【0116】
可塑剤としては、好ましい態様を含み、〔I.第一実施形態〕に記載の態様を援用できる。
【0117】
気泡調整剤としては、例えば、(a)メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等の脂肪族ビスアマイド、および(b)ポリエチレンワックス、等が挙げられる。
【0118】
本発明の第二実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の平均粒径は0.6~1.0mmが好ましく、より好ましくは0.7~0.9mmである。当該平均粒径が0.6mm未満であると予備発泡時の発泡性低下及び/又はブロッキング増加をもたらす。当該平均粒径が1.0mmより大きい場合は発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の発泡力が高すぎ、当該発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を発泡してなる予備発泡粒子を用いる成形のときに成形体表面が瞬時に形成されることで成形体内部まで蒸気が入らずに成形体内部の融着悪化をもたらす。
【0119】
本発明の第二実施形態において、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の平均粒径とは、体積基準の平均粒径を意図する。平均粒径は、体積平均粒子径ともいえる。当該平均粒径の測定方法等については、実施例にて詳述する。
【0120】
得られた発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は、一般的な予備発泡方法によって、発泡粒子とすることができる(本明細書ではメタクリル酸メチル系発泡粒子ともいう)。具体的には攪拌機を具備した容器内に発泡性樹脂粒子を入れ、水蒸気等の熱源により発泡性樹脂粒子を加熱することで、所望の発泡倍率まで発泡性樹脂粒子を予備発泡し、予備発泡粒子とすることができる。予備発泡時の水蒸気は吹き込み蒸気圧としては0.08MPa~0.12MPaで設定し、かつ予備発泡機内の温度として100~105℃とすることが好ましい。
【0121】
更にメタクリル酸メチル系予備発泡粒子は、一般的な型内成形方法によって成形し、発泡成形体にすることができる。具体的には、閉鎖し得るが密閉しえない金型内にメタクリル酸メチル系予備発泡粒子を充填し、水蒸気によりメタクリル酸メチル系予備発泡粒子を加熱し、かつ融着させることで発泡成形体とする。型内成形時の水蒸気は吹き込み蒸気圧としては0.05MPa~0.10MPaとすることが好ましい。
【0122】
本発明の第二実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を予備発泡し、成形することで得られる発泡成形体の表面から内側200μmまでの範囲の気泡の平均弦長が、40μm以上130μm以下であることが好ましく、40μm以上100μm以下であることがより好ましく、46μm以上70μm以下であることがより好ましい。上記範囲内である場合、破泡を抑え融着のよい発泡成形体を得ることができる。
【0123】
本発明の第二実施形態において、上述した発泡成形体の表面から内側200μmまでの範囲の気泡の平均弦長を評価するときの、発泡成形体について説明する。当該発泡成形体を、本発明の第二実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子から得る方法については特に限定されないが、例えば以下の(D1)~(D5)を順に行う方法が挙げられる:(D1)発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を篩い分けして粒子径0.5~1.4mmの発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を分取する;(D2)分取した発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を、加圧式予備発泡機「大開工業製、BHP」を用いて、吹き込み蒸気圧0.12MPa~0.16MPaの条件でかさ倍率65倍へ予備発泡する;(D3)得られたメタクリル酸メチル系予備発泡粒子を常温下で1日放置する;(D4)放置したメタクリル酸メチル系予備発泡粒子を、成形機「ダイセン製、PEONY-205DS」を用いて吹き込み蒸気圧0.05MPaの条件で発泡圧が0.06MPaとなるまで真空吸引加熱による型内成形を行う;(D5)その後、金型内で1000秒冷却してから取り出すことにより、長さ2000mm、幅1000mmおよび厚み525mmのブロック状のメタクリル酸メチル系発泡成形体を得る。換言すれば、本発明の第二実施形態に係る発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を(D1)~(D5)の操作に供して得られた発泡成形体について、当該発泡成形体の表面から内側200μmまでの範囲の気泡径の平均弦長が上述した範囲内であることが好ましい。
【0124】
本発明の第二実施形態における発泡成形体は、以下のような構成であってもよい。すなわち、本発明の第二実施形態におけるメタクリル酸メチル系発泡成形体は、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を予備発泡し、得られた発泡性メタクリル酸メチル系予備発泡粒子を成形させてなるメタクリル酸メチル系発泡成形体であって、前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子は、構成単位としてメタクリル酸メチル単位及びアクリル酸ブチル単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含む発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子であって、前記基材樹脂における前記メタクリル酸メチル単位及び前記アクリル酸ブチル単位の合計含有量を100重量部とした場合に、前記メタクリル酸メチル単位の含有量は94重量部以上96重量部以下であり、前記アクリル酸ブチル単位の含有量は4重量部以上6重量部以下であり、前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の(a)平均粒径が0.6~1.0mmであり、かつ(b)粒径の変動係数が20%以下であり、前記メタクリル酸メチル系発泡成形体の融着率が60%以上であり、かつ、前記メタクリル酸メチル系発泡成形体の表面に存在するセルのうち破泡したセルの個数が30個/mm未満である。
【0125】
本発明の第二実施形態における発泡成形体は、以下のような構成であってもよい。すなわち、本発明の第二実施形態におけるメタクリル酸メチル系発泡成形体は、(a)構成単位としてメタクリル酸メチル単位及びアクリル酸ブチル単位を含む基材樹脂を含み、(b)融着率が60%以上であり、(c)表面に存在するセルのうち破泡したセルの個数が30個/mm未満であり、前記基材樹脂における前記メタクリル酸メチル単位及び前記アクリル酸ブチル単位の合計含有量を100重量部とした場合に、前記メタクリル酸メチル単位の含有量は94重量部以上96重量部以下であり、前記アクリル酸ブチル単位の含有量は4重量部以上6重量部以下である。
【0126】
本発明の第二実施形態に係るメタクリル酸メチル系予備発泡粒子の発泡成形体は、メタクリル酸メチル系樹脂自体の天井温度が低いために、発泡成形体を鋳造砂に埋没し、そこに溶融金属を流し込んで置換しても、メタクリル酸メチル系樹脂の残渣が残り難いといったことから消失模型として好適に使用できる。なお、天井温度とは、メタクリル酸メチル系樹脂の分解(メタクリル酸メチル系単量体への解重合)が生じる温度を意図する。
【0127】
本発明の一実施形態は、以下の様な構成であってもよい。
【0128】
〔X1〕構成単位としてメタクリル酸メチル単位及びアクリル酸エステル単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含む発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子であって、前記基材樹脂における前記メタクリル酸メチル単位及び前記アクリル酸エステル単位の合計含有量を100重量部とした場合に、前記メタクリル酸メチル単位の含有量は、91重量部以上99重量部以下であり、前記アクリル酸エステル単位の含有量は1重量部以上9重量部以下であり、前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の(a)平均粒径が0.6~1.0mmであり、かつ(b)粒径の変動係数が20%以下であることを特徴とする発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
【0129】
〔X2〕前記アクリル酸エステル単位がアクリル酸ブチル単位であることを特徴とする〔X1〕に記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
【0130】
〔X3〕前記基材樹脂における前記メタクリル酸メチル単位及び前記アクリル酸ブチル単位の合計含有量を100重量部とした場合に、前記メタクリル酸メチル単位の含有量は94重量部以上96重量部以下であり、前記アクリル酸ブチル単位の含有量は4重量部以上6重量部以下であり、前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を予備発泡し、成形させてなる発泡成形体の融着率が60%以上であり、かつ、前記発泡成形体の表面に存在するセルのうち破泡したものの個数が30個/mm2未満であることを特徴とする、〔X2〕に記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
【0131】
〔X4〕前記基材樹脂は、構成単位として、さらに二官能性単量体単位を含み、前記二官能性単量体単位の含有量は、前記メタクリル酸メチル単位及び前記アクリル酸エステル単位の合計含有量を100重量部とした場合に、0.05重量部以上0.15重量部以下であることを特徴とする〔X1〕~〔X3〕のいずれか1つに記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
【0132】
〔X5〕ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量が30万以上40万以下であることを特徴とする〔X1〕~〔X4〕のいずれか1つに記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
【0133】
〔X6〕〔X1〕~〔X5〕のいずれか1つに記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を発泡させてなることを特徴とする、メタクリル酸メチル系樹脂予備発泡粒子。
【0134】
〔X7〕〔X6〕に記載のメタクリル酸メチル系樹脂予備発泡粒子を型内成形してなることを特徴とする、メタクリル酸メチル系発泡成形体。
【0135】
〔X8〕表面から内側200μmまでの範囲の気泡径の平均弦長が40~130μmであることを特徴とする〔X7〕記載のメタクリル酸メチル系発泡成形体。
【0136】
〔X9〕〔X7〕又は〔X8〕に記載のメタクリル酸メチル系発泡成形体からなることを特徴とする消失模型。
【0137】
〔X10〕発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法であって、メタクリル酸メチル単量体及びアクリル酸エステル単量体を含む単量体を共重合する共重合工程と、得られた共重合体に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程とを含み、前記共重合工程において、前記メタクリル酸メチル単量体及び前記アクリル酸エステル単量体の合計配合量を100重量部とした場合に、前記メタクリル酸メチル単量体の配合量は、91重量部以上99重量部以下であり、前記アクリル酸エステル単量体の配合量は1重量部以上9重量部以下であり、前記共重合工程では、前記単量体100重量部に対し難水溶性無機塩0.08重量部以上0.20重量部以下を含む水性媒体中に、前記単量体を添加して前記単量体の重合反応を開始し、重合転化率が35%以上70%以下の時点で、前記単量体100重量部に対して0.08重量部以上0.50重量部以下の難水溶性無機塩を添加し、前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の平均粒径が0.6~1.0mmであることを特徴とする、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法。
【0138】
〔X11〕前記単量体は、二官能性単量体を更に含み、前記メタクリル酸メチル単量体及び前記アクリル酸エステル単量体の合計配合量を100重量部とした場合に、前記二官能性単量体の配合量は、0.05重量部以上0.15重量部以下であることを特徴とする、〔X10〕に記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法。
【0139】
〔X12〕前記アクリル酸エステル単量体は、アクリル酸ブチルであることを特徴とする、
〔X10〕又は〔X11〕に記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法。
【0140】
本発明の一実施形態は、以下の様な構成であってもよい。
【0141】
〔Y1〕構成単位としてメタクリル酸メチル単位及びアクリル酸エステル単位を含む基材樹脂と、発泡剤とを含む発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子であって、前記基材樹脂における前記メタクリル酸メチル単位及び前記アクリル酸エステル単位の合計含有量を100重量部とした場合に、前記メタクリル酸メチル単位の含有量は、90重量部以上99重量部以下であり、前記アクリル酸エステル単位の含有量は1重量部以上10重量部以下であり、前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の平均粒径が0.6~1.0mmであり、かつ、粒径の変動係数が20%以下であることを特徴とする発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
【0142】
〔Y2〕前記アクリル酸エステル単位がアクリル酸ブチル単位であることを特徴とする〔Y1〕に記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
【0143】
〔Y3〕前記基材樹脂は、構成単位として、さらに二官能性単量体単位を含み、前記二官能性単量体単位の含有量は、前記メタクリル酸メチル単位及び前記アクリル酸エステル単位の合計含有量を100重量部とした場合に、0.05重量部以上0.15重量部以下であることを特徴とする〔Y1〕又は〔Y2〕に記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
【0144】
〔Y4〕〔Y1〕~〔Y3〕のいずれかに記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を発泡させたこと特徴とする、メタクリル酸メチル系樹脂予備発泡粒子。
【0145】
〔Y5〕〔Y4〕に記載のメタクリル酸メチル系樹脂予備発泡粒子を型内成形したことを特徴とする、メタクリル酸メチル系発泡成形体。
【0146】
〔Y6〕メタクリル酸メチル単量体及びアクリル酸エステル単量体を含む単量体を共重合する共重合工程と、得られた共重合体に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程とを含み、前記共重合工程において、前記メタクリル酸メチル単量体及び前記アクリル酸エステル単量体の合計配合量を100重量部とした場合に、前記メタクリル酸メチル単量体の配合量は、90重量部以上99重量部以下であり、前記アクリル酸エステル単量体の配合量は1重量部以上10重量部以下であり、前記共重合工程では、前記単量体100重量部に対し難水溶性無機塩0.08重量部以上0.20重量部以下を含む水性媒体中に、前記単量体及び重合開始剤を添加して前記単量体の重合反応を開始し、重合転化率が35%以上70%以下の時点で、前記単量体100重量部に対して0.08重量部以上0.50重量部以下の第三リン酸カルシウムを添加することを特徴とする、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法。
【0147】
〔Y7〕前記単量体は、二官能性単量体を更に含み、前記メタクリル酸メチル単量体及び前記アクリル酸エステル単量体の合計配合量を100重量部とした場合に、前記二官能性単量体の配合量は、0.05重量部以上0.15重量部以下であることを特徴とする、〔Y6〕に記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法。
【0148】
〔Y8〕前記アクリル酸エステル単量体は、アクリル酸ブチルであることを特徴とする、
〔Y6〕又は〔Y7〕に記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の製造方法。
【0149】
本発明の一実施形態は、以下の様な構成であってもよい。
【0150】
〔Z1〕構成単位としてメタクリル酸メチル単位及びアクリル酸ブチル単位を含む基材樹脂を含む発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子であって、前記基材樹脂における前記メタクリル酸メチル単位及び前記アクリル酸ブチル単位の合計含有量を100重量部とした場合に、前記メタクリル酸メチル単位の含有量は94重量部以上96重量部以下であり、前記アクリル酸ブチル単位の含有量は4重量部以上6重量部以下であり、前記発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を予備発泡し、成形させてなる発泡成形体の融着率が60%以上であり、かつ、前記発泡成形体の表面に存在するセルのうち破泡したものの個数が30個/mm未満であることを特徴とする発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
【0151】
〔Z2〕前記基材樹脂は、構成単位として、さらに二官能性単量体単位を含み、
前記二官能性単量体単位の含有量は、前記基材樹脂における前記メタクリル酸メチル単位及びアクリル酸ブチル単位の合計含有量を100重量部とした場合に、0.05重量部以上0.15重量部以下であることを特徴とする〔Z1〕記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
【0152】
〔Z3〕ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量が30万以上40万以下であることを特徴とする〔Z1〕又は〔Z2〕に記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子。
【0153】
〔Z4〕〔Z1〕~〔Z3〕のいずれかに記載の発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を予備発泡し、成形してなることを特徴とする発泡成形体。
【0154】
〔Z5〕表面から内側200μmまでの範囲の気泡径の平均弦長が40~130μmであることを特徴とする〔Z4〕記載の発泡成形体。
【0155】
〔Z6〕〔Z4〕又は〔Z5〕に記載の発泡成形体からなることを特徴とする消失模型。
【実施例
【0156】
〔実施例A〕
以下に実施例A、及び比較例Aを挙げるが、本発明の第一実施形態はこれらによって限定されるものではない。
【0157】
(発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の収率)
重合によって得られた発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を100重量%とし、篩により粒子径0.5~1.4mmの範囲で分取した発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の重量の割合を収率とした。得られた収率に基づき、以下の基準で収率を評価した。
◎(優れる):95重量%以上
〇(良好):90重量%以上95重量%未満
×(不良):90重量%未満。
【0158】
(発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の重合転化率)
重合中に水性懸濁液のサンプリングを行い、水性懸濁液をろ過し、ろ紙上に残った樹脂成分の重量を計量した(加熱前重量)。次いで、当該樹脂成分に重合禁止剤を加えた後150℃で30分樹脂成分を加熱することで揮発成分を除去した。その後、得られた樹脂成分の重量を計量した(加熱後重量)。下記式を用いて重合転化率を算出した。
重合転化率(%)=加熱後重量/加熱前重量×100。
【0159】
(発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の平均粒径及び変動係数)
画像処理方式ミリトラックJPA粒度分析計を用いて、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の粒径を体積基準で測定した。得られた結果を累積分布で表示し、体積累積50%となる粒径を平均粒径とした。また、該測定により体積基準の標準偏差が得られ、得られた標準偏差を用いて下記式により変動係数を算出した。
変動係数(%)=(体積基準の標準偏差/平均粒径)×100。
【0160】
(発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の発泡性A)
発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を100℃の蒸し器に入れ、5分間加熱することにより、メタクリル酸メチル系予備発泡粒子を得た。得られたメタクリル酸メチル系予備発泡粒子10gを、1000cmのメスシリンダーに入れ、メタクリル酸メチル系予備発泡粒子の体積(cm)を測定した。以下の式で、嵩倍率()を計算した:
嵩倍率()=メタクリル酸メチル系予備発泡粒子の体積(cm)/10g
得られた嵩倍率に基づき、以下の基準で発泡性Aを評価した。
◎(優れる):50倍以上
〇(良好):40倍以上50倍未満
×(不良):40倍未満。
【0161】
(メタクリル酸メチル系予備発泡粒子のブロッキング量)
発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を、加圧式予備発泡機「大開工業製、BHP」を用いて、吹き込み蒸気圧0.12~0.16MPaの条件で嵩倍率65倍となるように予備発泡してメタクリル酸メチル系予備発泡粒子を得、予備発泡時に発生したブロッキング量を計量した。
ブロッキング量(%)=発生したブロッキングの重量/発泡に用いたメタクリル酸メチル系樹脂粒子の重量。
【0162】
ここで、ブロッキングの重量は、以下のように測定した。得られたメタクリル酸メチル系予備発泡粒子の全量を、目の径が10mm程度の網の上に載せ、篩に供する。網上に残ったメタクリル酸メチル系予備発泡粒子の重量をブロッキングの重量とて測定した。
【0163】
得られたブロッキング量に基づき、以下の基準でブロッキング量を評価した。
◎(優れる):発生したブロッキング量が0%であり、ブロッキングが全く発生しなかった。
〇(良好):発生したブロッキング量が0%超、0.05%未満
×(不良):発生したブロッキング量が0.05%以上。
【0164】
(メタクリル酸メチル系発泡成形体の融着性)
発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を篩い分けして粒子径0.5~1.4mmの発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を分取した。
【0165】
分取した発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を、加圧式予備発泡機「大開工業製、BHP」を用いて、吹き込み蒸気圧0.12~0.16MPaの条件でかさ倍率65倍へ予備発泡した。その後、得られた予備発泡粒子を常温下で3日放置して、メタクリル酸メチル系予備発泡粒子を得た。
【0166】
得られたメタクリル酸メチル系予備発泡粒子を、成形機「ダイセン製、PEONY-205DS」を用いて吹き込み蒸気圧0.05MPaで型内成形を行うことで、厚み525mmで長さ2000mm×幅1000mmのブロック状の発泡成形体を得た。得られた発泡成形体を、成形から3日間常温下で放置し、成形3日後に当該発泡成形体を厚み方向に沿って破断した。次いで、破断面を観察し、破断面を構成している全粒子に対する粒子界面以外で破断している粒子の割合を融着率として下記式により算出した。
融着率(%)=破断面のうち粒子界面以外で破断している粒子数/破断面を構成している粒子数×100
得られた融着率(%)に基づき、以下の基準で融着性を評価した。
◎(優れる):粒子界面以外で破断している粒子の割合が80%以上
〇(良好):粒子界面以外で破断している粒子の割合が60%以上80%未満
×(不良):粒子界面以外で破断している粒子の割合が60%未満。
【0167】
(実施例A1)
撹拌機付き6Lオートクレーブに水150重量部、難水溶性無機塩として第三リン酸カルシウム0.15重量部、α-オレフィンスルホン酸ソーダ0.0075重量部、ラウロイルパーオキサイド0.08重量部、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.1重量部、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート0.1重量部及びn-ドデシルメルカプタン0.24重量部を仕込んだ。その後、オートクレーブ内、すなわち難水溶性無機塩を含む水性媒体(水性懸濁液)中に、メタクリル酸メチル95重量部、アクリル酸ブチル5重量部及びトルエン1重量部を仕込み、水性懸濁液の温度を80℃に昇温して重合(共重合工程)を行った。重合開始から1時間45分経った頃に追加で第三リン酸カルシウム0.12重量部を水性懸濁液中に加えた。その時(重合開始から1時間45分経った頃)の重合転化率は43%であった。
【0168】
その後さらに2時間35分経った頃に、シクロヘキサン1.5重量部及びノルマルリッチブタン(ノルマル/イソ=70/30)9部を水性懸濁液中に仕込んだ後、水性懸濁液の温度を101℃に昇温して10時間、重合及び発泡剤の含浸(共重合工程及び発泡剤含浸工程)を行った。その後、水洗懸濁液を冷却し、冷却後、得られた生成物を洗浄、脱水及び乾燥することにより発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を得た。
【0169】
得られた発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を篩い分けして粒子径0.5~1.4mmの発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を採取した。加圧式予備発泡機「大開工業製、BHP」を用いて、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を予備発泡し、倍率65倍の予備発泡粒子を得た。
【0170】
次いで、ダイセンPEONY-205DS成形機を用いて予備発泡粒子を型内成形し、2000×1000×525mmサイズの金型にて発泡成形体を得た。
【0171】
上述の方法に従い、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の収率、発泡性及びブロッキング量、並びに発泡成形体の融着性を評価し、評価結果は表1に示した。
【0172】
(実施例A2)
使用した単量体をメタクリル酸メチル97重量部及びアクリル酸ブチル3重量部に変更した以外は、実施例A1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例A1と同様に評価した。評価結果は表1に示した。
【0173】
(実施例A3)
使用した単量体をメタクリル酸メチル93重量部及びアクリル酸ブチル7重量部に変更した以外は、実施例A1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例A1と同様に評価した。評価結果は表1に示した。
【0174】
(実施例A4)
使用した単量体をメタクリル酸メチル94.5重量部及びアクリル酸メチル5.5重量部に変更した以外は、実施例A1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例A1と同様に評価した。評価結果は表1に示した。
【0175】
(実施例A5)
重合初期に用いる第三リン酸カルシウムを0.165重量部に変更した以外は、実施例A1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例A1と同様に評価した。評価結果は表1に示した。
【0176】
(実施例A6)
重合初期に用いる第三リン酸カルシウムを0.13重量部に変更した以外は、実施例A1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例A1と同様に評価した。評価結果は表1に示した。
【0177】
(実施例A7)
重合途中に水性懸濁液中に加える第三リン酸カルシウムの添加タイミングを水性懸濁液の温度を80℃に昇温して重合開始した後、85分経った頃(重合転化率36%)に変更した以外は、実施例A1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例A1と同様に評価した。評価結果は表1に示した。
【0178】
(実施例A8)
重合途中に水性懸濁液中に加える第三リン酸カルシウムの添加タイミングを水性懸濁液の温度を80℃に昇温して重合開始した後、125分経った頃(重合転化率53%)に変更した以外は、実施例A1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例A1と同様に評価した。評価結果は表1に示した。
【0179】
(比較例A1)
使用した単量体をメタクリル酸メチル100重量部、アクリル酸ブチル0重量部に変更した以外は、実施例A1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例A1と同様に評価した。評価結果は表1に示した。
【0180】
(比較例A2)
使用した単量体をメタクリル酸メチル85重量部、アクリル酸ブチル15重量部に変更した以外は、実施例A1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例A1と同様に評価した。評価結果は表1に示した。
【0181】
(比較例A3)
重合初期に用いる第三リン酸カルシウムを0.22重量部に変更した以外は、実施例A1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例A1と同様に評価した。評価結果は表1に示した。
【0182】
(比較例A4)
重合初期に用いる第三リン酸カルシウムを0.07重量部に変更した以外は、実施例A1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例A1と同様に評価した。評価結果は表1に示した。
【0183】
(比較例A5)
重合途中に水性懸濁液中に加える第三リン酸カルシウムの添加タイミングを水性懸濁液の温度を80℃に昇温して重合開始した後、30分経った頃(重合転化率10%)に変更した以外は、実施例A1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例A1と同様に評価した。評価結果は表1に示した。
【0184】
(比較例A6)
重合途中に水性懸濁液中に第三リン酸カルシウムを加えないことに変更した以外は、実施例A1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例A1と同様に評価した。評価結果は表1に示した。
【0185】
【表1】
〔実施例B〕
以下に実施例、及び比較例を挙げるが、本発明の第二実施形態はこれらによって限定されるものではない。
【0186】
(重量平均分子量測定)
発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子0.02gをテトラヒドロフラン20ccに溶解した。得られた溶液を用いて、GPC(東ソー(株)製HLC-8020、カラム:TSKgel Super HZM-H、カラム温度:40℃、流速:0.35ml/1分間)にて重量平均分子量を測定した。重量平均分子量は標準ポリスチレンの換算値として求めた。
【0187】
(重合転化率の測定)
重合機中のメタクリル酸メチル系樹脂粒子を含む懸濁液をサンプリングし、ろ紙でろ過することにより樹脂成分を取り出した。ろ紙上に残った樹脂成分から一定量(約5g)の樹脂成分を取り出して当該樹脂成分の重量を計量して加熱前重量とした。次いで、当該樹脂成分に重合禁止剤を少量(ピペットで2~3滴)加えた後、150℃で30分樹脂成分を加熱した。その後、再度樹脂成分の重量を計量して加熱後重量とした。下記式を用いて重合転化率を算出した。
【0188】
重合転化率(%)=加熱後重量/加熱前重量×100。
【0189】
(発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の発泡性B)
発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を篩い分けして粒子径0.5~1.4mmの発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を分取した。
【0190】
分取した発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を、加圧式予備発泡機「大開工業製、BHP」を用いて、吹き込み蒸気圧0.12MPa~0.16MPaの条件で予備発泡した。次いで、下記基準に従って発泡性Bを評価した。
◎(優れる):300秒以内にかさ倍率65倍に到達
〇(良好):300秒でかさ倍率55以上65倍未満
×(不良):300秒でかさ倍率55倍に未到達。
【0191】
なお、実施例Bにおける嵩倍率は計量カップにより発泡粒子(予備発泡粒子)を所定量計量し、当該発泡粒子の体積及び重量から、下記式によって計算した。
かさ倍率(倍)=発泡粒子の体積(cc)/発泡粒子の重量(g)。
【0192】
<発泡粒子の製造>
発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を篩い分けして粒子径0.5~1.4mmの発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を分取した。
【0193】
分取した発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を、加圧式予備発泡機「大開工業製、BHP」を用いて、吹き込み蒸気圧0.12MPa~0.16MPaの条件でかさ倍率65倍へ予備発泡した。その後、得られた予備発泡粒子を常温下で1日放置して、メタクリル酸メチル系発泡粒子を得、発泡成形体の製造に用いた。
【0194】
<発泡成形体の製造>
得られたメタクリル酸メチル系予備発泡粒子を成形機「ダイセン製、PEONY-205DS」を用いて吹き込み蒸気圧0.05MPaで型内成形を行うことで、厚み525mmで長さ2000mm×幅1000mmのブロック状の発泡成形体を得た。
【0195】
(発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子の融着率)
上述の<発泡成形体の製造>により得られた発泡成形体を、成形から3日間常温下で放置し、成形3日後の発泡成形体を厚み方向に沿って破断した。次いで、破断面を観察し、破断面を構成している全粒子に対する粒子界面以外で破断している粒子の割合を融着率として下記式により算出した。
【0196】
融着率(%)=破断面のうち粒子界面以外で破断している粒子数/破断面を構成している粒子数×100
得られた融着率(%)に基づき、以下の基準で融着率を評価した。
◎(優れる):粒子界面以外で破断している粒子の割合が80%以上
〇(良好):粒子界面以外で破断している粒子の割合が60%以上80%未満
×(不良):粒子界面以外で破断している粒子の割合が60%未満。
【0197】
(発泡成形体の表面に存在するセルのうち破泡したものの個数)
上述の<発泡成形体の製造>により得られた発泡成形体を60℃の乾燥室で2日間乾燥した後に取り出した。次いで、当該発泡成形体の表面(スキン面)を切り出して、電子顕微鏡(JEOL製、JSM-6060LV)を用い、低圧真空モード(真空度30Pa)、加速電圧:8kV及びスポットサイズ80の条件にて当該表面の観察を行った。顕微鏡の1mm×1mm視野内において表面の膜が破れているセルの個数を測定することにより、発泡成形体の表面の単位面積(mm)内に存在するセルのうち破泡したセルの個数を求めた。
【0198】
(発泡成形体の気泡径の平均弦長)
上述の<発泡成形体の製造>により得られた発泡成形体をカッターナイフで切断した。切断面を投影した写真において、発泡成形体の表面から内側200μmの範囲を拡大し、直線状にある気泡の個数を測定した。下記式により、平均弦長を算出した。
平均弦長(μm)=測定した直線の距離(μm)/気泡の個数
(実施例B1)
撹拌機付き6Lオートクレーブに水150重量部、難水溶性無機塩として第3リン酸カルシウム0.15重量部、α-オレフィンスルホン酸ソーダ0.0075重量部、ラウロイルパーオキサイド0.08重量部、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.1重量部、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート0.1重量部及びn-ドデシルメルカプタン0.24重量部を仕込んだ。その後、オートクレーブ内、すなわち難水溶性無機塩を含む水性媒体(水性懸濁液)中に、メタクリル酸メチル95重量部、アクリル酸ブチル5重量部及びトルエン1重量部を仕込み、水性懸濁液の温度を80℃に昇温して重合(共重合工程)を行った。重合開始から1時間45分経った頃に追加で第3リン酸カルシウム0.12重量部を水性懸濁液中に加えた。その時(重合開始から1時間45分経った頃)の重合転化率は43%であった。
【0199】
その後さらに2時間35分経った頃に、シクロヘキサン1.5重量部及びノルマルリッチブタン(ノルマル/イソ=70/30)9部を水性懸濁液中に仕込んだ後、水性懸濁液の温度を101℃に昇温して10時間、重合及び発泡剤の含浸(共重合工程及び発泡剤含浸工程)を行った。その後、水洗懸濁液を冷却し、冷却後、得られた生成物を洗浄、脱水及び乾燥することにより発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を得た。
【0200】
上述の<発泡粒子の製造>、<発泡成形体の製造>の方法により、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を用いて予備発泡粒子を得、さらに予備発泡粒子を用いて発泡成形体を得た。得られた発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体について各評価を行った。評価結果は表2に示した。
【0201】
(実施例B2)
使用した単量体をメタクリル酸メチル95.5重量部及びアクリル酸ブチル4.5重量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例B1と同様に評価した。評価結果は表2に示した。
【0202】
(実施例B3)
使用した単量体をメタクリル酸メチル94.5重量部及びアクリル酸ブチル5.5重量部に変更した以外は、実施例B1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例B1と同様に評価した。評価結果は表2に示した。
【0203】
(実施例B4)
重合途中に水性懸濁液中に加える第3リン酸カルシウムの添加タイミングを、水性懸濁液の温度を80℃に昇温して重合開始した後、1時間25分経った頃(重合転化率36%)に変更した以外は、実施例B1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例B1と同様に評価した。評価結果は表2に示した。
【0204】
(実施例B5)
重合途中に水性懸濁液中に加える第3リン酸カルシウムの添加タイミングを、水性懸濁液の温度を80℃に昇温して重合開始した後、2時間5分経った頃(重合転化率53%)に変更した以外は、実施例B1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例B1と同様に評価した。評価結果は表2に示した。
【0205】
(比較例B1)
使用した単量体をメタクリル酸メチル100重量部及びアクリル酸ブチル0重量部に変更した以外は、実施例B1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例B1と同様に評価した。評価結果は表2に示した。
【0206】
(比較例B2)
重合初期に用いる第3リン酸カルシウムを0.22重量部に変更した以外は、実施例B1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例B1と同様に評価した。評価結果は表2に示した。
【0207】
(比較例B3)
重合初期に用いる第3リン酸カルシウムを0.07重量部に変更した以外は、実施例B1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例B1と同様に評価した。評価結果は表2に示した。
【0208】
(比較例B4)
重合途中に水性懸濁液中に加える第3リン酸カルシウムの添加タイミングを、水性懸濁液の温度を80℃に昇温して重合開始した後、30分経った頃(重合転化率10%)に変更した以外は、実施例B1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例B1と同様に評価した。評価結果は表2に示した。
【0209】
(比較例B5)
重合途中に水性懸濁液中に第3リン酸カルシウムを加えなかった以外は、実施例B1と同様の操作をし、発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得、実施例B1と同様に評価した。評価結果は表2に示した。
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0210】
本発明の一実施形態によると、粒度分布が狭く収率が良好であり、発泡性および成形性に優れた発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を提供することができる。そのため、本発明の一実施形態は、フルモールド法により金属鋳造を行うときの消失模型として好適に利用できる。