(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】リチウム化合物粉末、ニッケル系正極活物質、酸化リチウムの製造方法、ニッケル系正極活物質の製造方法、およびこれを利用した二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20240724BHJP
C01D 15/02 20060101ALI20240724BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
H01M4/525
C01D15/02
C01G53/00 A
(21)【出願番号】P 2021524256
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(86)【国際出願番号】 KR2019013381
(87)【国際公開番号】W WO2020096212
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-05-07
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】10-2018-0134866
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(74)【代理人】
【識別番号】100134382
【氏名又は名称】加藤 澄恵
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ジェ ミュン
(72)【発明者】
【氏名】アン、 ジュン-キュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、 サン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、 ヘオク
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】山本 章裕
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-061037(JP,A)
【文献】米国特許第03321277(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62, 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径(D50)が5μm以下であるLi
2O 1次粒子;および
前記1次粒子からなる2次粒子からな
り、
前記2次粒子の平均粒径(D50)は、10~100μmである、リチウム化合物粉末。
【請求項2】
前記2次粒子は、球形である、請求項1に記載のリチウム化合物粉末。
【請求項3】
前記2次粒子の平均粒径(D50)は、10~30μmである、請求項
1に記載のリチウム化合物粉末。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のリチウム化合物粉末から製造される正極活物質であって、 全体重量100重量%に対して残留リチウム化合物が2.5重量%以下であ
り、
前記正極活物質は、Li
2
NiO
2
であり、Dminが5μm以上である、ニッケル系正極活物質。
【請求項5】
過酸化水素(H
2O
2)および水酸化リチウム(LiOH)を反応させて過酸化リチウム(Li
2O
2)を得る段階;および
前記過酸化リチウムを熱処理して酸化リチウム(Li
2O)を得る段階を含み、
前記過酸化水素(H
2O
2)および水酸化リチウム(LiOH)を反応させて過酸化リチウム(Li
2O
2)を得る段階で、
前記過酸化水素に対する水酸化リチウム内のリチウムのモル比率(Li/H
2O
2)は、1.9~2.4であ
り、
前記過酸化水素(H
2
O
2
)および水酸化リチウム(LiOH)を反応させて過酸化リチウム(Li
2
O
2
)を得る段階で、
反応温度は、40~60℃であり、
反応時間は、10分~90分である、酸化リチウムの製造方法。
【請求項6】
前記過酸化水素(H
2O
2)および水酸化リチウム(LiOH)を反応させて過酸化リチウム(Li
2O
2)を得る段階で、
過酸化水素(H
2O
2)および水酸化リチウム(LiOH)の反応は、500rpm以上の攪拌を伴う、請求項
5に記載の酸化リチウムの製造方法。
【請求項7】
前記過酸化リチウムを熱処理して酸化リチウム(Li
2O)を得る段階は、
不活性雰囲気下で400~600℃で行われる、請求項
5または6に記載の酸化リチウムの製造方法。
【請求項8】
過酸化水素(H
2O
2)および水酸化リチウム(LiOH)を反応させて過酸化リチウム(Li
2O
2)を得る段階;
前記過酸化リチウムを熱処理して酸化リチウム(Li
2O)を得る段階;および
前記酸化リチウムおよびニッケル原料物質を焼成してニッケル系正極活物質を得る段階を含み、
前記過酸化水素(H
2O
2)および水酸化リチウム(LiOH)を反応させて過酸化リチウム(Li
2O
2)を得る段階で、
前記過酸化水素に対する水酸化リチウム内のリチウムのモル比率(Li/H
2O
2)は、1.9~2.4であり、
前記過酸化水素(H
2
O
2
)および水酸化リチウム(LiOH)を反応させて過酸化リチウム(Li
2
O
2
)を得る段階で、
反応温度は、40~60℃であり、
反応時間は、10分~90分である、ニッケル系正極活物質の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法によって製造されるニッケル系正極活物質を含む正極;
負極活物質を含む負極;および
前記正極と前記負極との間に位置する電解質
を含む、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム化合物、ニッケル系正極活物質、酸化リチウムの製造方法、ニッケル系正極活物質の製造方法、およびこれを利用した二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、エネルギー密度が高いため同一体積で比較するとNi/Cd電池より1.5~2倍の高いエネルギー密度を有するようになり、携帯電話、ノートパソコン、電気自動車などの電源装置として普及されている。携帯製品としてこれらの性能は、主要部品である二次電池によって決められるため、高性能電池に対する必要性が台頭している。電池性能として、高効率特性、高温での安定性、寿命特性、さらに充放電特性などが要求される。
特に、セルが並列に連結されるほど、過放電はリチウム二次電池で重要な要素として挙げられる。
【0003】
現在、多くの市場では正極としてリチウム金属酸化物と、負極として炭素を基盤としたリチウム二次電池が使用されているが、一般にリチウム金属酸化物を基盤とした正極材の寿命効率は炭素を基盤とした負極材の効率より高い。
このような環境で過放電が多いほど負極で多様な副反応が生じるようになり、結果として、並列セルの短絡を招くことがある。このような問題を解決するための方法として、負極の効率を上げたり正極の効率を負極に合わせる方法があるが、負極の効率を上げるためには多くの障害要素が存在している。そのために、正極の効率を負極に合わせるための正極添加剤として斜方晶系Immm構造のリチウムニッケル酸化物(Li2NiO2)が代表的な正極添加剤として研究されている。
【0004】
しかし、リチウムニッケル酸化物の前駆体である酸化リチウムは、価格が高価であるという短所がある。これを解決するために水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウムなどを前駆体として代替して利用したリチウムニッケル酸化物の製造工程が研究されてきたが、高温での焼結および製造時に利用されるルツボとの反応による加工性低下によって生産の困難がある実情である。
【0005】
具体的に、過リチウム遷移金属酸化物は、原料物質遷移金属酸化物MOx(NiO、CoO、FeO、MnOなど)と、反応当量あるいは反応当量以上の酸化リチウム(Li2O)とを混合して熱処理する方法で合成されている。
過リチウム遷移金属酸化物の合成時に混合された遷移金属酸化物と酸化リチウム(Li2O)とが完全に反応されなければ、過リチウム遷移金属酸化物の電気化学反応での不可逆容量、可逆容量、可逆効率の減少、および正極電池寿命短縮の問題が発生するようになる。
また、電池製造工程で液状電極スラリーの凝固現象によるスラリー詰まり、および電極コーティング不良の問題も発生することがある。
【0006】
電池を構成した後は、電解液分解反応でガス発生、電池スウェリングで電池寿命減少および爆発、さらに電池高温安定性低下などの問題が発生することがある。
【0007】
不完全な反応で合成された過リチウム遷移金属酸化物は、検出方法が容易でないだけでなく、これを再焼結しても完全な反応がなされないという問題があり、酸化リチウム(Li2O)を追加する場合に過量のリチウムが供給されて前述の問題が大きくなることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、過リチウム遷移金属酸化物の粒度および形状は、遷移金属酸化物の物性で決定されるため、遷移金属酸化物の物性を変えることは制限されるようになる。
そのため、過リチウム遷移金属酸化物の不完全な反応を改善するために酸化リチウム(Li2O)の遷移金属酸化物との混合性と反応性を改善する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態では、遷移金属酸化物との混合度を改善するために酸化リチウムの形状を球形に調節することができる。
【0010】
混合過程で遷移金属酸化物の表面への吸着が容易になるように酸化リチウムを5μm以下の小さい1次粒子から構成する。微細な粒子から構成された酸化リチウムは、比表面積が大きくて反応性が高くなる。より具体的に、1μm以下の粒子から構成することができる。
【0011】
微細な1次粒子は、簡単に浮遊して工程作業性が落ち、物質損失が大きいだけでなく、静電気力により酸化リチウム粉末同士がかたまって混合性が低くなり得る。したがって、微細な1次粒子がかたまって遷移金属酸化物と類似するサイズの2次粒子から構成されることが好ましい。
【0012】
2次粒子形態の酸化リチウムは、遷移金属酸化物と混合中に粉砕されて遷移金属酸化物表面に均一に分布することができるようになる。
酸化リチウム内に含まれている不純物は、酸化リチウムと共融反応(eutectic reaction)を起こして酸化リチウムの溶解温度を低くして究極的には酸化リチウムの反応性を高める特性があり、許容された範囲内では一部の肯定的な効果があり得る。
【0013】
以下、このような改善された酸化リチウムについて具体的に説明する。
本発明の一実施形態では、平均粒径(D50)が5μm以下であるLi2O 1次粒子;および前記1次粒子からなる2次粒子;を含むリチウム化合物を提供する。前記リチウム化合物は、酸化リチウムであり得る。1次粒子および2次粒子の目的および効果に対する説明は前述したとおりである。
【0014】
前記2次粒子は、球形であり得る。現在市販される酸化リチウムは、球形でなく、多様な形態の粒子組成物である。均一な球形の形態から遷移金属酸化物との反応性改善を達成することができる。
【0015】
より具体的に、前記2次粒子の平均粒径(D50)は、10~100μmであり得る。または、前記2次粒子の平均粒径(D50)は、10~30μmであり得る。これは選択される遷移金属酸化物のサイズに応じて調節され得る。
【0016】
本発明の他の一実施形態では、平均粒径(D50)が5μm以下であるLi2O 1次粒子および前記1次粒子からなる2次粒子を含むリチウム化合物;およびニッケル原料物質;から起因したニッケル系正極活物質を提供する。
【0017】
前記正極活物質は、Li2NiO2であり、Dminが5μm以上であり得る。
前記正極活物質は、全体重量100重量%に対して残留リチウム化合物が2.5重量%以下であり得る。これは前述のようにリチウム原料物質の特性から起因したものである。2次粒子形態の酸化リチウムの改善された反応性により残留リチウム特性が改善され得る。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態による酸化リチウムの製造方法の概略的なフローチャートである。
具体的に、水酸化リチウム原料の湿式反応と低酸素雰囲気の高温分解反応の2段階で製造される。
【0019】
1段階:2LiOH-xH2O+H2O2→Li2O2+yH2O、xは0以上の整数
2段階:Li2O2→Li2O+1/2O2(g)
【0020】
概略的な各段階の合成方法は、次のとおりである。それぞれの過程で大気中の水分とCO2による汚染を防止し、物質変換を促進するために不活性雰囲気を維持することが好ましい。
【0021】
「水酸化リチウム一水和物あるいは水酸化リチウムを含むリチウム原料と過酸化水素の水混合段階」
水酸化リチウムと過酸化水素水の理論上反応比は2:1であるが、反応収率向上のために比率を調整することができる。これに対する説明は後述する。
【0022】
原料物質は、水酸化リチウム一水和物(LiOH-H2O)、水酸化リチウム無水和物(LiOH)あるいは水酸化リチウム多水和物(LiOH-xH2O)が使用可能である。反応収率向上のためには、水酸化リチウム無水和物を使用することが好ましい。
【0023】
過酸化水素は、水溶液(H2O2-zH2O、zは0以上の整数)で使用可能である。反応収率向上のためには、純粋な過酸化水素を使用することがよいが、保管および安全上の理由で35%濃度の水溶液を使用することが好ましい。
【0024】
「過リチウム酸化物析出および形状調節段階」
反応器の形態、内部バッフルおよびインペラの形態および寸法(dimension)、インペラ回転数、反応器温度などを調節して生成されるLi2O2中間物質の粒度および形状を調節することができる。インペラ回転数が増加することによって、粒子の平均サイズは減少し、球形粒子が形成される。
【0025】
反応器温度が高いほど、粒子の平均サイズは大きくなり、形状は球形から不定形に変化することができる。
反応時間は、原料投入後1分以上であれば可能であり、30~60分程度が適している。
反応器の温度は、必ずしも調節する必要はないが、反応率を調節するためには30~60℃範囲内で調節することが好ましい。
【0026】
「製造されたスラリー析出物の回収および乾燥」
製造されたスラリーを沈降させたり、フィルターを通過したり、遠心分離などの方法で溶液と固形分を分離可能である。回収された溶液は、過量のリチウムが溶解された水酸化リチウム水溶液で、リチウム化合物製造に使用可能である。回収されたLi2O2固形分は、真空乾燥を通じて表面吸着水を乾燥することができる。
【0027】
「低酸素雰囲気中で熱処理」
回収された固形分はLi2O2で、不活性雰囲気あるいは真空雰囲気下の高温でLi2Oに変換する。変換温度は、300℃以上で可能であり、400℃~600℃が好ましい。
【0028】
「Li2O粉末の回収および包装」
大気中変性を防止するために窒素充填および真空包装が好ましい。
特に大気中の水分とCO2と同時に接触時、水酸化リチウムおよび炭酸リチウムに変成される危険がある。
【0029】
以下、具体的に本発明の一実施形態による製造方法を説明する。
本発明の他の一実施形態では、過酸化水素(H2O2)および水酸化リチウム(LiOH)を反応させて過酸化リチウム(Li2O2)を得る段階;および前記過酸化リチウムを熱処理して酸化リチウム(Li2O)を得る段階を含み、前記過酸化水素(H2O2)および水酸化リチウム(LiOH)を反応させて過酸化リチウム(Li2O2)を得る段階で、前記過酸化水素に対する水酸化リチウム内のリチウムのモル比率(Li/H2O2)は、1.9~2.4である酸化リチウムの製造方法を提供する。
【0030】
前記過酸化水素(H2O2)および水酸化リチウム(LiOH)を反応させて過酸化リチウム(Li2O2)を得る段階で、反応温度は40~60℃であり得る。
【0031】
前記過酸化水素(H2O2)および水酸化リチウム(LiOH)を反応させて過酸化リチウム(Li2O2)を得る段階で、過酸化水素(H2O2)および水酸化リチウム(LiOH)の反応は、500rpm以上の攪拌を伴い得る。
【0032】
前記過酸化リチウムを熱処理して酸化リチウム(Li2O)を得る段階は、不活性雰囲気下で400~600℃で行われ得る。
前記モル比率、反応温度、攪拌などの条件については、後述する実施例および実験例でその範囲の意味を具体的に説明する。
【0033】
本発明のまた他の一実施形態では、過酸化水素(H2O2)および水酸化リチウム(LiOH)を反応させて過酸化リチウム(Li2O2)を得る段階;過酸化リチウムを熱処理して酸化リチウム(Li2O)を得る段階;および前記酸化リチウムおよびニッケル原料物質を焼成してニッケル系正極活物質を得る段階を含み、前記過酸化水素(H2O2)および水酸化リチウム(LiOH)を反応させて過酸化リチウム(Li2O2)を得る段階で、前記過酸化水素に対する水酸化リチウム内のリチウムのモル比率(Li/H2O2)は、1.9~2.4であるニッケル系正極活物質の製造方法を提供する。
【0034】
本発明のまた他の一実施形態では、平均粒径(D50)が5μm以下であるLi2O 1次粒子および前記1次粒子からなる2次粒子を含むリチウム化合物;およびニッケル原料物質;から起因したニッケル系正極活物質を含む正極;負極活物質を含む負極;および前記正極と前記負極との間に位置する電解質を含む二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0035】
既存のLi2Oに比べてニッケル系リチウム酸化物合成過程で変換率が増加して電気化学容量増加、残留リチウム含有量減少、物質効率増加効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施形態による酸化リチウムの製造方法の概略的なフローチャートである。
【
図2】実験2の結果による粒子形状のSEM写真である。
【
図4】本発明の実施例に使用した共沈反応器の概略図である。
【
図6】Li
2O製造のために設計したルツボの概略図である。
【
図8】焼結後に合成されたLNOのSEM写真である。
【
図9】実験6で製造されたコインセルの充放電曲線である。
【
図10】市販するLi
2OのSEM写真(左)および本実施例によるLi
2OのSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものであり、本発明はこれによって制限されず、後述する特許請求の範囲の範疇のみによって定義される。
【0038】
(1.Li/H2O2比率、温度実験)
「実験方法」
LH粉末およびH2O2投入後に攪拌反応を始め、反応時間は60分であった。
真空濾過装置でLi2O2粉末を回収した。回収された粉末は、130℃真空オーブンに3時間乾燥した。粉末は、XRD測定後、Rietveld refinement法で定量分析を実施した(Panalytic社のhighscore plusプログラム使用)。
【0039】
Li2O2獲得収率=(Li2O2獲得量)/(投入されたLi原料が100%変換された時のLi2O2獲得量)、温度は設定温度で、実測温度は2~3℃低くてもよい。
下記表1は、合成された粉末であるLi2O2の純度に対する結果である。
【0040】
【0041】
下記表2は、合成された乾燥粉末の重量である。理論上100%変換された時のLi2O2獲得量と比較が必要な値である。作られた粉末は100%Li2O2ではないため、単純に重量が大きくてもよいのではない。
【0042】
【0043】
上記表1と表2の結果から、Li2O2獲得収率を計算することができ、その結果は下記表3のとおりである。具体的に、表1の結果と表2の結果を掛けた後、表2の理論Li2O2量で割った表3を得た。
【0044】
【0045】
低い温度ではLHが析出されてLi2O2に変換されないため、Li2O2純度が減少することが示された。高い温度ではH2O2が分解されてLi2O2純度が減少することが示された。
Li/H2O2比率が低ければ、H2O2内に溶解損失が高くてLi2O2生成収率が低くなると予想される。Li/H2O2比率が高ければ、LHが析出されてLi2O2純度が減少すると予想される。
これから導出された最適の比率は、下記表4のとおりである。
【0046】
【0047】
(2.反応時間実験)
60℃で下記表5のように多様な範囲の反応時間を制御してLi2O2を析出させた。具体的な方法は前述した実験1と同様である。
【0048】
【0049】
図2は、実験2の結果による粒子形状のSEM写真である。
60℃では10分以内の短時間に反応が完了したことが分かる。60分待機後に純度が減少した。待機時間が長くなればLi
2O
2純度が減少するようになる。これは過酸化水素分解によるLiOHが増加するためであると予想される。粒度形状の差は殆どなかった。
下記表6は、実験2の結論である。
【0050】
【0051】
(3.反応器rpm影響実験)
反応器rpmによる形状変化を観察した。rpmに関係なしに98%以上純度のLi
2O
2が合成された。
図3は、実験3の粒子SEM写真である。
500rpm以上で形状変化はなかった。150rpmでは粒度が不均一であることを確認できる。
rpmは500以上に制御すれば目的とする効果を得ることができると予想される。
【0052】
(4.共沈反応器利用合成実験)
図4は、本発明の実施例に使用した共沈反応器の概略図である。
より具体的に、二次電池正極前駆体合成に使用される共沈反応器を利用してLi
2O
2を合成した。反応器とインペラの形状は
図4のとおりである。
反応時間を短縮するために過酸化水素水注入方法を異にした。
定量投入を基本とするが、反応時間短縮のために過酸化水素水を手動で投入後、定量ポンプで投入して反応させた。
その結果は下記表7のとおりである。
【0053】
【0054】
図5は、実験4による粒子のSEM写真である。
共沈反応器を利用した結果、粒子の球形度が増加することが分かる。
また、rpmが高いほど2次粒子のD50が小さくなることが分かる(a、b、c比較)。
H
2O
2を定量で徐々に投入する場合、粒子が大きくなることが分かる(dとe比較)。
反応速度とrpm調整で粒子サイズを調節することができると予想される。
【0055】
(5.酸化リチウムの製造)
実験4で合成されたLi2O2を窒素雰囲気中で420℃で3時間熱処理してLi2Oに変換した。変換された成分は下記表8のとおりである。
【0056】
【0057】
粒度および形状はLi
2O
2によって影響を受けることが分かる。
追加的に
図6のようなルツボを製造して熱処理をした。
10gのLi
2O
2を内部に装入後、30分間真空ポンプで内部空気を除去後、N
2を流しながら熱処理を始めた。熱処理完了後、粉末を窒素雰囲気で排出冷却して回収した。
熱処理時に窒素の流量は分当たり1~5Lに多様であり、流量による差はなかった。
下記表9は、熱処理結果である。
【0058】
【0059】
前記表9のように400℃以上温度で60分以上熱処理時にLi2Oに完全変換が可能である。
【0060】
(6.LNO合成および電池データ分析)
NiO 20gと製造されたLi
2O 8.85gを小型ミキサーを使用して5分間混合した。この時に使用したLi
2Oは表8のサンプルcである。
混合された粉末を窒素雰囲気中で700℃で12時間露出させてLi
2NiO
2を合成した。合成された粉末は28.86gであった。
図7は、混合後のSEM写真であり、
図8は、焼結後に合成されたLNOのSEM写真である。
製造されたLi
2NiO
2を使用してCR2032コインセルを製造し、その電気化学特性を評価した。電極は、14mm厚さのアルミニウム薄板上に活物質層を50~80μm厚さにコーティングした。
電極スラリーは、Li
2NiO
2:デンカブラック(D.B.):PvdF=85:10:5wt%で混合し、製造された電極は真空乾燥後に加圧プレシングし、最終的なコーティング層の厚さは40~60μmであった。電解液は、EC:EMC=1:2溶媒にLiPF
6塩が1M濃度に溶解された有機溶液である。
製造されたコインセルは、4.25~3.0V区間で0.1C-rate、1%条件のCCCVモードで充放電した。コインセル3個の充放電曲線は、
図9および表10のとおりである。
【0061】
【0062】
図10は、市販するLi
2OのSEM写真(左)および本実施例によるLi
2OのSEM写真である。
実施例による粒子が2次粒子であることが確実に区分されることが分かる。
下記表11、12、および13は、前記
図10の2個のLi
2O粒子を利用して前述のようにLNOを焼成した結果物に対する評価資料である。
実施例によるLNOが全ての側面で特性が改善されたことが分かる。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
下記表14は、前記
図10の2個のLi
2Oを利用して前述のようにLNOを焼成後、これを利用したコインセルを製造後に評価した結果である。
実施例の電池データが相当改善されたことを確認できる。
【0067】
【0068】
本発明は、前記実施例に限定されるのではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能であり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更せずに他の具体的な形態で実施可能であることを理解できるはずである。したがって、以上で記述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないことに理解しなければならない。