(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】光検出および測距システムにおいて光学的クロストークを軽減するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/487 20060101AFI20240724BHJP
G01S 7/497 20060101ALI20240724BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20240724BHJP
【FI】
G01S7/487
G01S7/497
G01S17/931
(21)【出願番号】P 2021534118
(86)(22)【出願日】2019-08-13
(86)【国際出願番号】 US2019046412
(87)【国際公開番号】W WO2020086142
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-08-10
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518183103
【氏名又は名称】ベロダイン ライダー ユーエスエー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【氏名又は名称】朴 志恩
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【氏名又は名称】今井 千裕
(72)【発明者】
【氏名】アヴラス、レオン、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】バーセス、エリック、ナサニエル
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-255371(JP,A)
【文献】特開2016-053552(JP,A)
【文献】特開2013-113670(JP,A)
【文献】特開2016-206042(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0223674(US,A1)
【文献】国際公開第2017/149370(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
G01S 3/80 - 3/86
G01S 5/18 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LIDARシステムによるレーザー照射の抑制を含む受動状態を前記LIDARシステムで開始することと;
前記受動状態の間、他のLIDARシステムからの1つ以上のリターンを含む受動リターンを前記LIDARシステムで受信することと;
前記LIDARシステムからの別のレーザー照射を含む主動状態を前記LIDARシステムで開始することと;
前記主動状態の間、前記LIDARシステムの前記レーザー照射により生じたリターン信号と前記他のLIDARシステムからの前記1つ以上のリターンとを含む主動リターンを、前記LIDARシステムで受信することと;
前記受動リターンと前記主動リターンのピークを前記LIDARシステムで比較することと;
前記受動リターンに含まれる前記他のLIDARシステムからの前記1つ以上のリターンを、前記LIDARシステムで、前記主動リターンから除去し、クロストークを低減することとを備える;
方法。
【請求項2】
コンピュータが、自動車の2つのLIDARシステムを位相ロッキングして、それらのレーザーを互いとは異なる方向に照射させることにより、クロストークを低減する;
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2つのLIDARシステムの照射方向で分離角度が大きくなると、前記2つのLIDARシステムについてクロストークの低減が大きくなる;
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記位相ロッキングは前記クロストークを50%以上低減する;
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記LIDARシステムと他の自動車の他のLIDARシステムとが、前記LIDARシステムと前記他のLIDARシステムの視野角閾値より小さな視野角で互いに直接レーザーを照射している間、前記LIDARシステムにより、前記他のLIDARシステムからのリターン信号の受信を無視することを含む;
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記視野角閾値は±15°である;
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
FOV干渉減少が、受動/主動干渉減少および位相ロッキング干渉減少と独立して実行される;
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記LIDARシステムと他のLIDARシステムとが、前記LIDARシステムと前記他のLIDARシステムの視野角閾値より小さな視野角で互いにレーザーを直接照射している間、前記LIDARシステムの前記レーザーの照射を抑制することをさらに含む;
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記LIDARシステムと他のLIDARシステムとの発振器周波数の違いに基づき、前記主動リターンから干渉ピークを除去することをさらに含む;
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記LIDARシステムと他のLIDARシステムとの速度の違いに基づき、前記主動リターンから干渉ピークを除去することをさらに含む;
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ノッチフィルターモードで動作し、前記ノッチフィルターモードでは、前記LIDARシステムは時々受動リターンをサンプルし、干渉パターンで受信した受動リターンと同じ半径上のリターンの選択的ノッチフィルターを作り、次の主動捕捉からアーチファクトを除去することをさらに含む;
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
コンシューマベースのプロセスモードで動作し、前記コンシューマベースのプロセスモードでは、前記LIDARシステムは、各照射サイクルについて主動リターンと共に受動リターンを、交互にサンプルすることをさらに含む;
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
LIDARシステムの受動状態と主動状態を管理するように作動するコントローラであって、前記受動状態では、前記LIDARシステムは他のLIDARシステムからの1つ以上のリターン信号を受信し、前記主動状態では、前記LIDARシステムはレーザービームを送信し前記LIDARシステムの前記レーザービームと前記他のLIDARシステムからの1つ以上のリターン信号を受信する、コントローラと;
前記受動状態で、前記他のLIDARシステムからの前記1つ以上のリターン信号から干渉信号を含む受動リターンを生成するように作動する受動検出器と;
前記主動状態で、前記LIDARシステムの前記送信されたレーザービームと前記干渉信号に基づ
くリターン信号を含む主動リターンを生成するように作動する主動検出器であって、
前記受動リターンと前記主動リターンのピークを比較し、前記受動リターンに含まれる前記他のLIDARシステムからの前記1つ以上のリターンを前記主動リターンから除去することによりクロストークを低減する、主動検出器とを備える;
システム。
【請求項14】
前記受動検出器は、ピーク検出器に接続された受信機を備える;
請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記主動検出器は、ピーク検出器に接続された受信機を備え、前記ピーク検出器は順に干渉キャンセルに接続される;
請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本特許出願は、米国特許出願番号第16/112,273号、発明の名称「光検出および測距システムにおいて光学的クロストークを軽減するシステムおよび方法」、出願日2018年8月24日からの優先権を主張し、その出願の主題は、全体に亘って本書に参照して組み込む。
【0002】
[技術分野]
本開示は、概してマルチリターン光信号の検出向上のためのシステムおよび方法に関し、より詳しくは、光検出および測距(LIDAR)システムにおける光学的クロストークの軽減に関するものである。
【背景技術】
【0003】
LIDARシステムは、光のパルスを用いて、通常は、飛行時間(TOF)、すなわち対象物に光が送信され、反射で戻ってくる時間に基づいて、距離を計測する。このような計測の集積でLIDARシステムは、2次元または3次元でその周囲のものを特定することができる。LIDARシステムは、カメラや他のレーダーシステムに加え、自動運転車のセンサシステムの1つとして使用される。
【0004】
モバイル・パルス・スキャンニングLIDARシステムは、自動走行が可能なインテリジェント自動車の基本的な部品である。自動運転自動車の障害物検出機能では、非常に低い失敗率が要求される。障害物を検出し避け、周囲の状況の中を安全にナビゲートするためにスキャンニングLIDARシステムを備えた自動運転自動車の数が増加すると、相互干渉と光学的クロストークの可能性が重要な問題となり得る。簡単な言葉で、光学的クロストークは、LIDARシステムが他のLIDARシステムから送信されたレーザービームを検出し処理したときに生じ得る。複数LIDARシステムを有して構成される自動運転自動車では、相互作用の機会は顕著に増大するであろう。各LIDARシステムで他のレーザーパルスを受信することは、目標のゴーストや信号ーノイズ比の低減などの問題につながり得る。
【0005】
従って、必要とされるのは、複数のLIDARシステムでの光学的ストロークを軽減するシステムおよび方法である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明の実施の形態を参照し、実施例を添付図に示す。これらの図は、限定ではなく例示を意図するものである。本発明は一般にこれらの実施形態と関連させて説明されているが、本発明の範囲は、これらの特定の実施形態に限定することを意図するものではないことを理解されたい。図中の物はノンスケールである。
【0007】
【
図1】
図1は、本書の実施の形態による光検出および測距システムの動作を示す。
【0008】
【
図2】
図2は、本書の実施の形態による回転ミラー付き光検出および測距システムの動作を示す。
【0009】
【
図3A】
図3Aは、本書の実施の形態による回転ミラー付きLIDARシステムを示す。
【0010】
【
図3B】
図3Bは、本書の実施の形態によるローターとシャフトを備えるローター・シャフト構造の回転電子機器付きLIDARシステムを示す。
【0011】
【
図3C】
図3Cは、本発明の実施の形態による複数源を有するクロストークモデルを示す。
【0012】
【
図4】
図4Aと
図4Bは、本書の実施の形態による、それぞれ複数LIDARシステムを有する2台の自動車の実施の形態400を示す。
【0013】
【
図5A】
図5Aは、本書の実施の形態による、2つのLIDARシステムの発振器周波数と速さの違いによる干渉パターンのグラフ的説明図である。
【0014】
【
図5B】
図5Bは、本書の実施の形態による、2つのLIDARシステムのタイミングパターンを示す。
【0015】
【
図5C】
図5Cは、本書の実施の形態による、センサAとセンサBでの観測レーザー信号を示す。
【0016】
【
図6A】
図6Aは、本書の実施の形態による、受動状態と主動状態間で周期するLIDARシステムのレーザー照射のタイミングパターンを示す。
【0017】
【
図6B】
図6Bは、本書の実施の形態による、受動リターンと主動リターンのグラフ的説明図である。
【0018】
【
図7】
図7A、7B、7Cは、本書の実施の形態による、コントローラ、受動検出器および主動検出器のブロック図を示す。
【0019】
【
図8A】
図8Aは、本書の実施の形態による、LIDARシステムにおけるクロストークを低減する方法のフローチャートである。
【0020】
【
図8B】
図8Bは、本書の実施の形態による、受動状態および主動状態に基づくLIDARシステムにおけるクロストークを低減する方法のフローチャートである。
【0021】
【
図9】
図9は、本書の実施の形態に従う、計算装置/情報処理システムの単純化したブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の記載では、説明目的で、本発明を理解してもらうために具体的詳細が示されている。しかしながら、当業者には、このような詳細なしでも本発明を実施できることが明らかであろう。さらに、当業者は、以下に説明される本発明の実施形態が、プロセス、装置、システム、デバイス、またはタンジブルコンピュータ読み取り可能媒体上での方法のような様々な方法で実施することができることを認識するであろう。
【0023】
図に示されているコンポーネントまたはモジュールは、本発明の例示的な実施形態の説明であり、本発明が不明瞭とならないようにすることを意図している。また、この説明全体を通じて、コンポーネントは、サブユニットを含むことができる別個の機能ユニットとして記述することができるが、当業者は、様々なコンポーネントまたはその一部を別個のコンポーネントに分割することができ、または、単一のシステムまたはコンポーネント内に統合することも含めて、統合することができることを認識することを理解すべきである。本明細書で論じられる機能または動作を、コンポーネントとして実施できることに留意すべきである。コンポーネントは、ソフトウェア、ハードウェア、またはそれらの組み合わせとして実装できる。
【0024】
さらに、図中のコンポーネントまたはシステム間の接続は、直接接続に限定することを意図しない。むしろ、これらのコンポーネント間のデータは、中間コンポーネントによって修正、再フォーマット、または他の変更をされることがある。また、接続を追加または減少させて使用されることがある。「結合された」、「接続された」、または「通信可能に結合された」という用語は、直接接続、1つまたは複数の中間装置を介した間接接続、および無線接続を含むと理解されることにも留意すべきである。
【0025】
本明細書における「1つの実施の形態」、「好ましい実施の形態」、または「実施の形態」との表現は、実施の形態に関連して説明される特定の特徴、構造、特性、または機能が、本発明の少なくとも1つの実施の形態に含まれることを意味し、複数の実施の形態が含まれることもある。また、本明細書の様々な場所におけるこれらの表現は、必ずしもすべて同じ実施の形態または複数の実施の形態を意味するのではない。
【0026】
本明細書の様々な場所での特定の用語の使用は、説明のためのものであり、限定するためであると解釈すべきではない。サービス、機能、またはリソースは、単一のサービス、機能、またはリソースに限定されず、これらの用語の使用は、分散または集約されることもある関連するサービス、機能、またはリソースのグループを意味することがある。
【0027】
「含む」、「含まれる」、「備える」、および「備えている」という用語は非限定用語であり、列挙していると理解されるべきであり、言及される項目は例示であり、それに続くものは、例示であって、列挙された項目に限定されることを意味しない。本書で使用されている見出しは、整理を目的としたものに過ぎず、説明の範囲または特許請求の範囲を限定するものではない。この本明細書に記載した各参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0028】
さらに、当業者は、(1)あるステップは、任意に実行されてもよいこと、(2)ステップは、ここに記載された特定の順序に限定されないこと、(3)あるステップは異なる順序で実行できること、(4)あるステップを同時に実行できること、を認識すべきである。
【0029】
[A.光検出および測距システム]
LIDARシステムなどの光検出および測距システムは、光のパルスを用いて、光のパルスの飛行時間(TOF)に基づいて対象物との距離を計測する。光検出および測距システムの光源から放射された光のパルスは、遠位の対象物と相互作用する。光の一部は、対象物から反射され、光検出および測距システムの検出器へ戻る。光のパルスの放射と戻った光のパルスの検出の間で費やされた時間に基づき、対象物との距離が推測される。いくつかの実施の形態では、光のパルスは、レーザー放射器で生成されてもよい。光のパルスは、レンズまたはレンズ組立体で焦点を合わせてもよい。光のパルスは、レーザーから異なった距離の複数の対象物に当たり、複数のリターン信号が光検出および測距システムの検出器で受信されてもよい。複数のリターン信号は、周囲の状況のより多くの情報を提供し、マッピングまたは復元を改善する。各リターンを関連する時間遅れ情報と共に詳細に識別するには、専用の検出器が必要になるかも知れない。
【0030】
したがって、LIDARシステムなどの光検出および測距システムは、そのシステムを取り囲む周囲の状況の形状や輪郭を計測するツールとなる。LIDARシステムは、自動運転ナビゲーションと表面の航空マッピングとを含む多くのアプリケーションに適用できる。LIDARシステムは、システムが動作する周囲内の対象物で反射される光のパルスを放射する。各パルスが放射されてから受信されるまで進む時間を計測し(すなわち、飛行時間「TOF」)、対象物とLIDARシステム間の距離を特定する。この技術は、光物理学と光学に基づく。
【0031】
LIDARシステムでは、光は、速く照射するレーザーから放射されてもよい。レーザー光は、媒体中を進んで、建物、木の枝、乗り物のような周囲の物体の点で反射される。反射された光エネルギは、LIDAR受信機(検出器)に戻り、そこで、記録され周囲の状況をマッピングするのに用いられる。
【0032】
図1は、本書の実施の形態による光検出および測距システムの動作100を示す。本書の実施の形態による光検出測距コンポーネント102とデータ分析および解釈109が含まれる。光検出測距コンポーネント102は、放射された光信号110を送信する送信機104と、検出器を備える受信機106と、システムコントロールとデータ収集108とを備える。放射された光信号110は、媒体中を進展し、対象物112で反射する。リターン光信号114は媒体中を進展し、受信機106で受信される。システムコントロールとデータ収集108は、送信機104による光放射をコントロールし、データ収集は、受信機106で検出したリターン光信号114を記録してもよい。データ分析および解釈109は、システムコントロールとデータ収集108から接続116を介してアウトプットを受け取り、データ分析機能を実行してもよい。接続116は、無線または非接触通信方法で実行されてもよい。送信機104と受信機106は、光学的レンズと鏡(不図示)を含んでもよい。送信機104は、特定のシーケンスの複数のパルスを有するレーザービームを放射してもよい。いくつかの実施の形態では、光検出測距コンポーネント102およびデータ分析および解釈109は、LIDARシステムを備える。
【0033】
図2は、本書の実施の形態による、マルチリターン光信号、(1)リターン信号203と(2)リターン信号205、を含む光検出および測距システム202の動作200を図示する。光検出および測距システム202は、LIDARシステムであってよい。レーザービームの発散のために、単一のレーザー照射は、複数の対象物に当たり複数のリターンを生ずる。光検出および測距システム202は、複数のリターンを分析し、最も強いリターン、最後のリターンあるいはその両方について報告してもよい。
図2によれば、光検出および測距システム202は、近くの壁204と遠くの壁208の方向にレーザーを放射する。図示のように、ビームの多くは、エリア206で近くの壁204に当たり、リターン信号203を生じ、ビームの別の部分は、エリア210で遠くの壁208に当たりリターン信号205を生ずる。リターン信号203は、リターン信号205に比べ、短かめのTOFで、強い受信信号強度を有する。光検出および測距システム202は、2つの対象物間の距離が最小距離よりも大きいときだけ、両方のリターンを記録してもよい。単一および複数リターンのLIDARシステムの何れにおいても、リターン信号が送信された光信号と精確に関連付けられ、精確なTOFが算定されることが重要である。
【0034】
LIDARシステムのいくつかの実施の形態では、距離データを2-D(すなわち一平面)点群法で捕捉してもよい。これらのLIDARシステムは、産業用アプリケーションで頻繁に用いられ、測量、マッピング、自動運転ナビゲーション、その他の用途でもしばしば用いられてもよい。これらの装置のいくつかの実施の形態では、あるタイプの移動ミラーと組み合わされた単一のレーザー放射器と検出器のペアに頼り、少なくとも1面のスキャンを行う。このミラーは、ダイオードから放射された光を反射するだけではなく、検出器からのリターン光をも反射する。このアプリケーションでの回転ミラーの使用は、システム設計と製造の両方を簡単にしつつ、90°-180°-360°の方位角を可能にする手段となりうる。
【0035】
図3Aは、本書の実施の形態による回転ミラー付きのLIDARシステム300を示す。LIDARシステム300は、回転ミラーと組み合わされた単一のレーザー放射器/検出器を用いて、一平面を効果的にスキャンする。このようなシステムにより行われる距離計測は、効果的に2次元(すなわち、平面的)であり、捕捉された距離点は、2-D(すなわち、一平面)点群として描画される。実施の形態によっては、限定はしないが、回転ミラーは、例えば1分間に数千回転というような超高速で回転する。回転ミラーはまた、スピニングミラーとも称される。
【0036】
LIDARシステム300はレーザー電子機器302を備え、レーザー電子機器302は、単一光放射器と光検出器とを備える。放射されたレーザー信号301は固定ミラー304に向けられ、固定ミラー304は放射されたレーザー信号301を回転ミラー306へと反射する。回転ミラー306が「回転」すると、放射されたレーザー信号301は、その進展経路の対象物308で反射される。反射された信号303は、回転ミラー306と固定ミラー304を経て、レーザー電子機器302の検出器に結合される。
【0037】
図3Bは、本書の実施の形態による、ローター351とシャフト361を備えるローター・シャフト構造の電子機器付きLIDARシステム350を示す。ローター351は円筒形状をしており、ローター351の中央に円筒形の穴を備える。シャフト361は、円筒形の穴の内部に位置する。図示のように、ローター351はシャフト361周りに回転する。これらの部品は、LIDARシステムに含まれてもよい。ローター351はローターコンポネント352を備え、シャフト361はシャフトコンポネント366を備えてもよい。ローターコンポネント352には頂部PCBが含まれ、シャフトコンポネント366には底部PCBが含まれる。実施の形態によっては、ローターコンポネント352は
図1の光検出測距コンポーネント102を備えてもよく、シャフトコンポネント366は、
図1のデータ分析および解釈109を備えてもよい。
【0038】
接続354を介してローターコンポネント352に結合されるのは、リング356とリング358である。リング356とリング358はローター351の内面に配置された円形バンドであり、空隙コンデンサの1つの側に電極板機能を提供する。接続364を介してシャフトコンポネント366に接続されるのは、リング360とリング362である。リング360とリング362はシャフト361の外面に配置された円形バンドであり、空隙コンデンサの他の側に電極板機能を提供する。コンデンサC1が、リング356とリング360の間の空間をベースに作り出されてもよい。もう一つのコンデンサC2が、リング358とリング362の間の空間をベースに作り出されてもよい。前記のコンデンサのキャパシタンスは、ある程度、空隙368により決まってもよい。
【0039】
リング356とリング360はコンデンサC1の電極板コンポーネントであり、リング358とリング362はコンデンサC2の電極板コンポーネントである。リング356とリング358の鉛直ギャップ370は、鉛直ギャップ370の値が2つのコンデンサの間の相互作用のレベルを特定するので、コンデンサC1とコンデンサC2の容量性リンクの性能に影響するかもしれない。当業者は、ローター351とシャフト361がそれぞれ、N個の容量性リンクをサポートするN個のリングを備えてもよいことを理解できよう。
【0040】
前述のように、飛行時間またはTOFは、LIDARシステムが周囲の状況をマッピングし、目標対象物を検出するのに用いられる実行可能で確立された技術を提供する方法である。同時に、レーザーが照射されると、LIDARシステム内のファームウェアは、受信したデータを分析し、測定してもよい。LIDARシステム内の光学受光レンズは、周囲から戻る光量子の断片を集める望遠鏡のように動作する。システムでレーザーが多く使われれば、周囲の状況についてのより多くの情報が集められる。単一レーザーのLIDARシステムは、多レーザーのシステムと比較すると、より少ない量子しか回収できず、よって少ない情報しか得られないから、不利であろう。LIDARシステムのいくつかの実施の形態は、限定はしないが、8、16、32および64のレーザーで実施されてきた。また、いくつかのLIDARの実施の形態では、限定はしないが、0.3°という厳しい間隔のレーザービームで30°~40°の鉛直方向での視野角(FOV)を有し、1秒間で5~20回転の回転速度を有してもよい。
【0041】
回転ミラー機能もまた、MEMSなどの半導体技術で実施されてもよい。
【0042】
[B.LIDARシステムで光学的クロストークを軽減する方法]
自動運転でのLIDARシステムの成長に伴い、光学的クロストークまたは単にクロストークが重要な問題となってきた。クロストークはまた、相互干渉とも呼ばれる。
図3Cは、本発明の実施の形態による、複数源を有するクロストーク・モデル380を示す。図示のように、4台の自動車、自動車A、自動車B、自動車Cおよび自動車Dがハイウェイにある。実線は、自動車Aで生成され、自動車Bで反射されたレーザー信号を示す。破線は、自動車Aと逆方向を向いている自動車Cからの見通し内クロストーク(LOS-C)を示す。点線は、自動車Aと同方向を向いている自動車Dからの反射クロストーク(R-C)を示す。クロストーク・モデル380には、同じ自動車に一緒に設置された2つのLIDARシステム間のクロストークは示されない。
【0043】
図4Aと
図4Bは、本書の実施の形態による複数LIDARシステムをそれぞれ備える2台の自動車を示す。
図4Aでは、車内402は、5つのLIDARシステムL1、L2、L3、L4およびL5を備える。L1、L2、L3、L4およびL5の丸から出ている矢印は、レーザー照射の方向を示す。車内402に近くには車間404があり、同じく5つのLIDARシステムを備える。クロストーク・モデル380で示されるように、車内402と車間404とには多くの形のクロストークを生ずるであろう。ここで説明するように、クロストークを最少化するには多くの方法がある。それらの方法には、限定はしないが、LIDARシステム間のレーザー照射位相ロック(PV)、LIDARシステムの発振器間の差分分析、2台の自動車間の速度差分析、2つのLIDARシステム間のある視野角(FOV)でのリターン信号の無視、および、受動/主動受信比較が含まれる。
【0044】
[1.位相ロック(PL)]
位相ロック(PV)法または位相ロッキングにつき、
図4Aおよび
図4Bに関連して説明する。位相ロッキングは自動車にあるコンピュータによりコントロールされる。指示によりコンピュータは、互いに異なる方向のLIDARシステムのレーザー照射を方向付けまたは再調整し、車内干渉を軽減する。すなわち、車内402で、可能な限り最大に、LIDARシステムL1、L2、L3、L4およびL5の照射を互いに離れるように向けて、内部干渉を低減する。さもなければ、レーザービームは互いに跳ね返るであろう。内部LIDARシステムが回転すると、LIDARシステムを特定のエンコード位置に向けるのが好ましい。
図4Aおよび
図4Bによると、車内402の5つのレーザーシステムの内4つはそれぞれ異なった方向に向けられている。車内402では、L1、L2、L3およびL4は、90°または180°の分離角度で異なった方向に照射するように向けられている。位相ロッキングは、他の分離角度で実行されてもよい。2つのLIDARシステムの照射方向の分離角度が大きくなると、その2つのLIDARシステムのクロストークの低減が上昇する。すなわち、分離角度が大きくなると、内部クロストークのより大きな低減という結果になるであろう。この方法は、L1、L2、L3およびL4間の内部クロストークを大幅に低減できる。L5はL4と同じ方向に向けられているが、L4とL5は車内402で物理的に分離されており、L4とL5間のクロストークは減少されている。位相ロッキングの目的は、レーザー照射の分離角度が維持されるように、車内402の5つのLIDARシステムを位相ロックに回転させることである。位相ロッキングは、内部クロストークを50~60%減少させるであろう。
【0045】
車間404のLIDARシステムは、LIDARシステムL6、L7、L8、L9およびL10がLIDARシステムL1、L2、L3、L4およびL5と同期しないまたは位相ロックにないので、車内402のLIDARシステムと位相ロッキングを実行出来るかもしれないし、出来ないかも知れない。
【0046】
[2.視野角(FOV)]
例えば車内402と車間404のように、異なった自動車のLIDARシステム間のクロストークは、特定の視野角(FOV)を有するリターン信号を管理することにより低減できる。その方法は、異なる自動車の2つのLIDARシステムが互いに向けてレーザービームを照射し、互いに閾値より小さな視野角を有するときには、受信を無視すること、または、レーザーを送信しないことをベースとしてもよい。ある実施の形態では、2つのLIDARシステムそれぞれが特定の視野角または角度範囲、すなわち閾値内の他のLIDARシステムにレーザーを照射しているときは、互いに受信した信号を無視する。別の実施の形態では、受信したレーザー信号が特定の視野角内であると感知されたときは、送信しないか、レーザー照射を中止または抑える。例えば、
図4Aと
図4Bを参照すると、L4とL6は、視野角FOV1およびFOV2内で互いに向い合っている。FOV1とFOV2は、互いに特定の視野角または視野角の閾値より小さい。この状態が決まると、L4および/またはL6は、他のLIDARシステムからのレーザー信号の受信を無視する、すなわち処理しない。この方法は、L4および/またはL6の相互間のクロストークを低減できる。あるいは、L4が、L6の視野角FOV2が視野角の閾値より小さいことを感知したとき、L4はレーザーの送信を中止する、または逆も同様にする。実施の形態によっては、視野角の閾値は、±15°であってもよい。この視野角法は、本書で説明する他の方法とは別に実行することもできる。例えば、FOV干渉減少は、受動/主動干渉減少および位相ロッキング干渉減少とは独立して実行できる。
【0047】
[3.発振器周波数の差]
LIDARシステムの発振器周波数の差とLIDARシステムの速度の差に関する観察は、クロストークをさらに低減する。発振器は、限定はしないが、水晶発振器でよい。発振器は、GPS、セラー(cellar)または、Wi-Fiなどの外部の時間源と同期をしてもしなくてもよい。
【0048】
図4Aは、車間404のLIDARシステムそれぞれの発振器周波数と比較した車内402のLIDARシステムそれぞれの発振器周波数の差を図示する。例えば、分析は、L1の発振器周波数とL9等との比較を含む。車内402と車間404のそれぞれのLIDARシステムを適切に調整すると、これらのLIDARシステムの同期が行え、クロストークを低減する
位相ロック法の実行が可能になる。この調整は、例えば、L10を観測するL5とその発振器周波数をL10の水晶周波数に合わせることに基づいてもよい。L5とL10の間には、形式の一致はなくてもよい。
【0049】
発振器周波数の差の分析には、第1のLIDARシステムに対する第2のLIDARシステムのレーザー照射のタイミングを観測することを含んでもよい。第1のLIDARシステムと第2のLIDARシステムが同時刻に照射するとき、第1のLIDARシステムと第2のLIDARシステムは、インシデントイベントで特定の「点滅」率であるとみなされる。経時的に、第1のLIDARシステムは、第2のLIDARシステムからのより速い「点滅」率を観測し、それは第2のLIDARシステムが第1のLIDARシステムとは違った発振器周波数を有することを示唆する。第1のLIDARシステムと第2のLIDARシステムの間には、発振器周波数に関する一致もネゴシエーションもない。これらの観測に基づいて、第1のLIDARシステムは、「点滅」率の事実に基づいて、干渉を改善できる。点滅率については、
図5Cに関連してさらに説明する。
【0050】
第2のLIDARシステムの発振器周波数は、第1のLIDARシステムには未知である。目的は、未知の発振器スピードの差に基づいて、干渉パターンを「見る」ことである。
【0051】
図5Aは、本書の実施の形態による2つのLIDARシステムの発振器周波数の差または速度の差による干渉パターン500のグラフの図示である。干渉パターン500は、干渉の動きまたは干渉クラスターを図示する。干渉パターン500の態様によっては、以下を含む:センサに接近・離間するように見える干渉クラスター。干渉クラスターは、センサの中心からの円弧(等しい半径)を形成してもよい。干渉クラスターの方位角や多くのパターンは回転RPMにより変化する。
【0052】
発振器周波数の差は、2つのセンサの発振器周波数のx-yマッピングによって分析して、干渉パターン500を生成してもよい。
図5Aは、干渉クラスターが、f
CLK_A対f
CLK_Bに基づき、1つのセンサから離れて他のセンサに向かって動くことを示す。干渉クラスターの速度は、Δf=f
CLK_A-f
CLK_Bに比例してもよい。Δf=0であると、干渉クラスターは静止したままである。ある条件では、干渉クラスターパターン502は、f
CLK_Aとf
CLK_Bの間に差があることを示す。他の条件では、Δf=0のとき、干渉円弧504が形成され、干渉パターン500では静止している。Δf≠0であると、干渉円弧504は、点線506で示されるように内外へ動く。この点については、
図5Bを参照して、さらに説明する。干渉パターン500は、適切な調整をしてクロストークを低減するのに有益であろう。
【0053】
図5Bは、本書の実施の形態によるによるセンサAとセンサBを備える2つのLIDARシステムのタイミングパターン510を示す。センサAはクロック周波数f
CLK_Aを有し、センサBはクロック周波数f
CLK_Bを有する。このタイミングパターンは、タイムスロット1-Nでのタイミングパターンのフレームを示す。実施の形態によっては、各フレームに関連するのは、レーザー位置照射時間(LPOS)であり、そのフレームに隣接する縦線で示される。
【0054】
また
図5Bに示されるのは、(1)センサBのタイミングチャートでリターンとして見えるセンサAのレーザー照射(517)と、(2)センサAのタイミングチャートでリターンとして見えるセンサBのレーザー照射(518)である。タイミングの差、すなわち発振器周波数の差は、センサAとセンサBの間にクロストークを生じ得る。
【0055】
図5Cは、本開示の実施の形態によるセンサAとセンサBでの観測レーザー信号を示す。センサAでは、信号511と信号512がセンサAの既知の信号である。観測によれば、信号513は、センサBからのクロストーク信号である。信号511、信号512および信号513の点滅速度は、センサAの既知の信号パターンと一致していない。同様に、センサBでは、信号514と信号516がセンサBの既知の信号である。観測によれば、信号515は、センサAからのクロストーク信号である。信号514、信号515および信号516の点滅速度は、センサBの既知の信号パターンと一致していない。これらの観測から、センサAは信号513を信号パターンから削除し、センサBは信号515を信号パターンから削除してもよい。
【0056】
例えとして、センサAとセンサBは灯台である。センサAに位置するとき、センサBからの点滅が観測される。この観測から、センサAではなく、センサBから見える点滅は、無視してもよい。
【0057】
[4.速度の差]
PV法を用いるクロストークの低減の改善のための追加の検討は、車内402のLIDARシステムのそれぞれと車間のLIDARシステムのそれぞれとの間の速度の差の分析を含んでもよい。
図4Aと
図4Bによれば、車内402と車間404は、それぞれV1の速度とV2の速度を有する。これらの速度の差は、車内402と車間404のクロストークの一因となり得る。車内402と車間404間の動きを反映するV1とV2の差は、干渉パターン520の変化を生ずる。V1とV2の差に基づく適切な調整がクロストークを低減し得る。
【0058】
[5.受動状態と主動状態]
受動状態と主動状態を用いるクロストークの低減方法は、1)LIDARシステムがリターンを受信するがレーザーを照射しない受動状態と2)LIDARシステムがリターンを受信しレーザーを照射する主動状態との信号リターンを比較するという原理に基づく。主動リターンでは、LIDARシステムは正常動作の間、正常なリターンを受信する。LIDARシステムは照射をして、リターンはその後すぐに捕捉される。受動リターンでは、LIDARシステムは、LIDARシステムによるレーザー刺激無しで、LPOSサイクルのリターンを捕捉する。受動状態で捕捉するリターンは、他の光源からである。このような光源は、他のLIDARシステムであってもよい。よって、受動リターンでは、LIDARシステムにより干渉が受信される。主動リターンでは、干渉とLIDARシステムのレーザー照射に基づく「真の」リターン信号が受信される。主動リターンでは、受動リターンと主動リターンの比較に基づき干渉は除去できる。効果的には、受動状態の間、モールド(mold)が決められ、LIDARシステムはモールドを用いて主動状態で受信した干渉を除去することができる。主動状態の期間は、主動サイクルとも呼ばれる。受動状態の期間は、受動サイクルとも呼ばれる。
【0059】
図6Aは、本書の実施の形態による受動状態と主動状態の間で繰り返すLIDARシステムのレーザー照射のタイミングパターン600を示す。受動状態(またはサイクル)にあるときは、LIDARシステムによるレーザー照射は抑制される。主動状態(またはサイクル)にあるときは、LIDARシステムによるレーザー照射は「主動(アクティブ)」である。このことは、受動サイクルが主動サイクルのレーザ-出力設定に影響しないように、レーザー出力コントロールのフィードバックを抑制することを含む。タイミングパターン600によれば、レーザー出力は、主動サイクルに対して計算され調整されるだけである。
【0060】
図6Bは、本書の実施の形態による受動および主動リターン620のグラフ的図示である。受動リターンは、受動LPOS622によって示される。受動LPOS622は、受動リターンピーク623の第1のLIDARシステムによる検出、すなわち、第2のLIDARシステムからのリターンを示す。主動リターンは、主動LPOS624によって示され、LPOSはレーザー位置照射時間である。主動LPOS624は、第1のLIDARシステムからのレーザー照射625、第1のLIDARシステムのレーザー照射625に基づく真の主動リターンを626、および第2のLIDARシステムからの受動リターンピーク623に基づいた主動リターンピーク627の除去(アーチファクト)を示す。
【0061】
一実施の形態では、ノッチフィルター工程で、第1のLIDARシステムは受動リターンを時々サンプルする。第1のLIDARシステムは、ファームウェアで選択的ノッチフィルターを実行され、受信した受動リターンまたは検出した受動リターンと同じ半径にあるリターンにフィルターを掛けてもよい。アーチファクトは、次の主動での捕捉から除去されてもよい。ノッチフィルター工程は、次の干渉リターン、すなわち、次の干渉クラスターパルスを検出し予測するはずである。
【0062】
別の実施の形態では、コンシューマベースのプロセス(consumer based process)工程で、LIDARシステムは別法としてリターンをサンプルし、各照射サイクルで主動のものと伝える。すなわち、LIDARシステムは、受動状態の実行と主動状態の実行のサイクルを繰り返し、クロストークをさらに低減する。受動リターンは、干渉クラスターが主動リターンの捕捉のどこで出現するかを示唆してもよい。コンシューマベースのプロセスは、選定された主動リターンを認識し、フィルターを掛け、追跡し、および、無視してもよい。コンシューマは、コンシューマシステムハンドリングプロセスを参照する。
【0063】
いくつかの前述した実施の形態では、干渉、例えば受動リターンピーク623は、受動サイクルの間に検知され、主動サイクルの間に除去、例えば、受信されたリターン信号である主動LPOS624から除去されてもよい。いくつかの他の実施の形態では、干渉は、以下の形態で説明するように、主動リターンから直接削除されてもよい。
【0064】
取得:
データが収集されると、LIDARシステムは、リターンから直接、干渉を選択的に除去してもよい。
【0065】
取得後あるいは記憶後:
多くのリターンを収集し、位置と共にデータを記憶する。例えば、リターン1はx1で、リターン2はx2で、x1はy1であり、x1とy1が関連するならx2が選択できる。
【0066】
リターン後:
返送において、x1またはx2が与えられており、x1とy1が関連するならx2を除去できる。この場合、x2のデータは失われる。
【0067】
他の実施の形態は、内部システム間でランダムで変化するタイムスロット変更を利用してもよい。このランダム変更は、固まった干渉クラスターの外観を作り出し、後処理での関連性を分裂させ減少させる。
【0068】
[C.光学的クロストークを軽減するLIDARシステム]
図7A、7Bおよび7Cは、それぞれ本書の実施の形態によるコントローラ702、受動検出器720および主動検出器730のブロック
図700を示す。コントローラ702は、結合タイマー710に接続される主動状態704と受動状態706の作動をコントロールする。主動状態704と受動状態706の出力は干渉フィルター708に結合され、干渉フィルター708は次に他のLIDARシステム作動用の出力を生成する。
【0069】
受動検出器720は、受信機Rx721とピーク検出器722を備える。受信機Rx721は受動リターン723を受信し、処理した後に受信機Rx721の出力をピーク検出器722に結合する。ピーク検出器722は、検出された受動リターン724を生成し、受動リターン724は干渉信号とピークを含む。検出された受動リターン724の例は、
図6の受動LPOS622である。
【0070】
主動検出器730は、受信機Rx731、ピーク検出器732、干渉キャンセル736、マルチプレクサ738、干渉キャンセル740、および送信機Tx734を備える。受信機Rx731への入力は、受信した受動リターン733と送信されたレーザービーム735を含み、送信されたレーザービーム735は送信機Tx734からの出力で、送信機Tx734はLIDARレーザー照射を備える。動作でのあるモードでは、受信機Rx731の出力はピーク検出器732に結合され、ピーク検出器732は次に干渉キャンセル736に結合され、干渉キャンセル736は次に出力である検出された主動リターン737をマルチプレクサ738を介して生成する。受信した受動リターン733からの干渉は、検出された主動リターン737で除去される。検出された主動リターン737の例は、受信した受動リターン733からの主動LPOS624の干渉である。あるいは、受信機Rx731の出力は干渉キャンセル740に結合されてもよい。干渉キャンセル740は、テンプレートと動的割り付けを含む。干渉キャンセル740の出力は、マルチプレクサ738を介して検出された主動リターン737を生成する。
【0071】
主動検出器730は、主動状態において主動リターンを生成するように動作可能で、主動リターンは、LIDARシステムの送信されたレーザービーム735に基づくリターン信号と干渉信号を備える。干渉信号は、後に除去される。
【0072】
2つ以上のLIDARシステムを備える自動車は、コンピュータを備えて、2つ以上のLIDARシステムに指示を送りその動作を調整する。一例では、限定はしないが、位相ロッキングを実行する内部LIDARシステムの調整は、コンピュータにより管理される。
【0073】
[D.LIDARシステムで光学的クロストークを軽減する方法]
図8Aは、本書の実施の形態によるLIDARシステムで光学的クロストークを軽減する方法のフローチャート800を示す。方法は、以下の工程を備える。
【0074】
位相ロック:
同じ自動車に置かれたLIDARシステムの異なる方向のレーザー照射の方向を位相ロッキングする。方向の違いが大きくなると、内部クロストークの減少度合いが大きくなる。例として、限定はしないが、異なる方向は90°または180°である。位相ロッキングが自動車上または離れた場所のコンピュータでコントロールされる。それゆえ、コンピュータは自動車の2つ以上のLIDARシステムを位相ロッキングすることにより車内クロストークを低減し、レーザーを互いに分かれた異なる方向に照射するようにする。別れた角度を大きくすると、クロストークの減少も大きくなる(工程802)。
【0075】
視野角:
視野角クロストーク減少は、2つのLIDARシステムのレーザーが互いに向いており、視野角閾値よりも小さな視野角(FOV)を有しているときに、リターンを無視することの結果である。あるいは、2つのLIDARシステムのレーザーが互いに向いており、±15°のFOVを有しているときに、レーザー照射を止める。一実施の形態では、視野角閾値は±15°である(工程804)。
【0076】
発振器周波数の差:
主動リターンにおけるクロストークの減少は、2つのLIDARシステム間の発振器周波数の差が観測されたときに、結果として生ずる。差は、干渉パターンで観測される。減少は、干渉パターン観測に基づく干渉ピークを選択的に除去することに基づく(工程806)。
【0077】
速度の差:
主動リターンにおけるクロストークの減少は、2つのLIDARシステム間の速度の差が観測されたときに、結果として生ずる。差は、干渉パターンで観測される。減少は、干渉パターン観測に基づく干渉ピークを選択的に除去することに基づく(工程808)。
【0078】
受動/主動状態:
受動状態でLIDARシステムを動作させる。ここで受動状態においてはLIDARシステムは、他の光源、例えば他のLIDARシステムからのリターン信号を受信しつつ、レーザー信号を送信しない。次に主動状態のLIDARシステムを動作させる。ここで主動状態においてはLIDARシステムは、レーザー照射をし、そのLIDARシステムのレーザ照射に基づくリターンおよび例えば他の光源からリターンを備えるリターン信号を受信する。受動リターンを主動リターンと比較して、主動リターンの干渉成分を特定する。主動リターンから、比較に基づき干渉成分を有する他のLIDARシステムからの1つ以上のリターンを除去する(工程810)。
【0079】
図8Bは、本書の実施の形態による受動および主動状態に基づくLIDARシステムにおけるクロストークを低減する方法のフローチャート820を示す。方法は、以下の工程を備える。
【0080】
LIDARシステムでレーザー照射を含まない受動状態を開始する(工程822)。
【0081】
他の光源からの信号(干渉)を含む受動リターンを受信する(工程824)。
【0082】
LIDARシステムでレーザー照射を含む主動状態を開始する(工程826)。
【0083】
そのLIDARシステムのレーザー照射に基づくリターン信号と他の光源からの信号を含む主動リターンを受信する(工程828)。
【0084】
受動リターンと主動リターンを比較する(工程830)。
【0085】
主動リターンから干渉を削除する(工程830)。
【0086】
コンシューマベースのプロセスモードで、受動状態と主動状態の実行サイクルを繰り返し、さらにクロストークを低減する。ノッチフィルターで、主動リターンを実行する前にときどき受動リターンをサンプルする(工程832)。
【0087】
まとめとして、車内LIDARシステムと車間LIDARシステムを備えるLIDARネットワークのためのネットワークでのクロストークを低減する方法は、車内LIDARシステムを位相ロッキングすること、車間LIDARシステムのペアの視野角減少を実行すること、各LIDARシステムの一連の受動状態と主動状態を実行することを備える。
【0088】
車内LIDARシステムを位相ロッキングすることは、車内LIDARシステムのそれぞれのレーザーを他の車内LIDARシステムから違う方向に照射するように向けることを含む。すなわち、コンピュータが自動車の2つのLIDARシステムを位相ロッキングし、レーザーを互いに異なる方向に照射することにより、車内クロストークを低減する。一対の車間LIDARシステムがレーザービームを視野角閾値で互いに向けて照射しているときには、一対の車間LIDARシステムは互いにそれぞれのリターン信号を無視する。
【0089】
車内LIDARシステムと車間LIDARシステムのそれぞれについて、1)それぞれのLIDARシステムが受動状態の間、他の光源からの1つ以上のリターンを含む受動リターンを受信する。受動状態は、LIDARシステムによるレーザー照射の抑制を含む。2)それぞれのLIDARシステムが主動状態の間、それぞれのLIDARシステムのレーザ照射により生ずるリターンと他の光源からの1つ以上のリターンとを含む主動リターンを受信する。3)それぞれのLIDARシステムで、受動リターンと主動リターンを比較する。4)それぞれのLIDARシステムで、主動リターンから受動リターンに含まれる他の光源からの1つ以上のリターンを削除し、クロストークを低減する。
【0090】
[E.結果]
これらの新しい試みおよび結果は、説明のために提供されるもので、特定の実施の形態を用いて特定の条件下で行われたもので、したがって、新しい試みも結果も本特許書類の開示の範囲を限定するために用いてはならないことを留意しなければならない。
【0091】
新しい試みからの観察は以下のことを示唆する。コンシューマベースのプロセスモードでは、実施は複雑さは低めのレベルであり、実施するのは比較的分かりやすいように思える。コンシューマベースのプロセスモードは、有益な受動データを提供するために多くの主動LPOS捕捉を無駄にしなければならない。また、コンシューマベースのプロセスモードは、干渉クラスターを目立たなくし得る。
【0092】
ノッチフィルターモードでは、干渉クラスター追跡がLPOSからの結果としてLPOSを生ずる。このことは、LIDARシステムが、ADCからの初期段階で干渉をフィルター除去できるということである。複数の干渉クラスターも追跡できる。あるいは、LIDARシステムは、干渉クラスターと重なる有益なリターンを除去するかも知れない。ノッチフィルターモードは、干渉クラスターを目立たなくするかも知れない。また、ノッチフィルターモードは、LPOSのサンプルに亘って干渉クラスターの動きを追跡し予想する必要があるかも知れない。
【0093】
[E.システムの実施の形態]
実施の形態では、本書での態様は、情報システム/コンピュータシステムに向けられ、または、それらで実行されるかもしれない。本開示の目的としてコンピュータシステムは、ビジネス、科学、制御または他の目的のための、情報、知能またはデータを、コンピュータで演算する、計算する、決定する、階級分けする、処理する、送信する、受信する、回収する、創出する、ルートを決める、切り替える、記憶する、表示する、通信する、明示する、検出する、記録する、再生する、操作する、または利用することができる手段または手段の集積を含む。例えば、コンピュータシステムは、パーソナルコンピュータ(例えば、ラップトップ)、タブレット型コンピュータ、ファブレット、携帯端末(PDA)、スマートフォン、スマートウォッチ、スマートパッケージ、サーバー(例えば、ブレードサーバーやラックサーバー)、ネットワーク記憶装置、または、他の適切な装置でよく、大きさ、形、性能、機能、および、価格の点で異なっていてもよい。コンピュータシステムは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、中央処理装置(CPU)やハードウェア/ソフトウェアコントロールロジックなどの1つ以上の処理資源、ROMおよび/または他のタイプのメモリを含んでもよい。コンピュータシステムの追加コンポーネントには、1つ以上のディスクドライブ、キーボード、マウス、タッチスクリーンなどの種々の入出力(I/O)装置に加え外部装置と通信する1つ以上のネットワークポート、および/または、ビデオディスプレイを含んでもよい。コンピュータシステムはまた、種々のハードウェアコンポーネント間の通信を送信可能な1つ以上のバスを含んでもよい。
【0094】
図9は、本開示の実施の形態による計算装置/情報処理システム(またはコンピュータシステム)の簡易化したブロック図を示す。システム900に示される機能は、情報処理システムの種々の実施の形態をサポートするために作動することが理解されよう。しかし、情報処理システムは異なって構成され、また、他のコンポーネントを含んでもよい。
【0095】
図9は、本開示の実施の形態による計算装置/情報処理システム(またはコンピュータシステム)の簡易化したブロック図を示す。システム900に示される機能は、情報処理システムの種々の実施の形態をサポートするために作動することが理解されよう。しかし、情報処理システムは異なって構成され、また、他のコンポーネントを含んでもよい。
【0096】
図9に示されるように、システム900は、演算資源を提供しコンピュータをコントロールする1つ以上の中央処理装置(CPU)901を含む。CPU901は、マイクロポロセッサ等と共に実装され、1つ以上のグラフィカル処理装置(GPU)917および/または数値計算のための浮動小数点プロセッサも含んでもよい。システム900は、システムメモリ902も含んでもよく、システムメモリ902は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)あるいは両方の形でよい。
【0097】
図9に示されるように、いくつかのコントローラと周辺装置もまた提供される。入力コントローラ903は、キーボード、マウス、タッチペンなどの種々の入力装置904を代表する。また、無線コントローラ905があってもよく、無線装置906と通信する。システム900は、1つ以上の記憶装置908とインターフェース接続する記憶コントローラ907を含んでもよく、記憶装置908は、フラッシュメモリまたはオペレーティングシステム、ユーティリティ、およびアプリケーションの命令のプログラムを記憶するのに用いられる光媒体を含み、アプリケーションは、本発明の種々の態様を実行するプログラムの実施形態を含む。記憶装置908はまた、本発明に従って、処理されたデータや処理されるデータを記憶するのに用いられる。システム900は、表示装置911とインターフェース接続する表示コントローラ909を含んでもよい。コンピュータシステム900は、自動車システム913とインターフェース接続する自動車信号コントローラ912を含んでもよい。通信コントローラ914は、1つ以上の通信装置915とインターフェース接続し、通信装置915はシステム900を、自動車ネットワーク、インターネット、クラウド資源(例えば、イーサーネットクラウド、ファイバーチャネル・オーバー・イーサネット(FCoE)/データセンターブリッジング(DCB)クラウド等)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、ストレージエリアネットワーク(SAN)を含む種々のネットワークのいずれかを通じて、または、赤外線信号を含む適切な電磁搬送波を通じて、遠隔装置と接続できるようにする。
【0098】
図示のシステムでは、すべての主なシステムコンポーネントは、バス916に接続し、バス916は1つ以上の物理バスを代表する。しかし、種々のシステムコンポーネントは、互いに物理的近接しても、しなくてもよい。例えば、入力データおよび/または出力データは、1つの物理的場所から他の場所へ遠隔送信されてもよい。さらに、本発明の種々の態様を実行するプログラムは、ネットワークを通じて遠隔場所(例えば、サーバー)からアクセスされてもよい。そのようなデータおよび/またはプログラムは、種々の機械可読媒体を通じて伝達され、機械可読媒体には、限定はしないが、ハードディスク、フロッピーディスク、磁気テープなどの磁気媒体;CD-ROMやホログラフィック装置などの光媒体;特定用途向け集積回路(ASICs)、プログラム可能論理回路(PLDs)、フラッシュメモリ装置、ROMおよびRAM装置であるハードウェア装置を含む。
【0099】
本発明の実施形態は、1つ以上のプロセッサまたは処理ユニット用の命令で、1つ以上の非一時的なコンピュータ可読媒体でエンコードされ、工程が実行されるようにしてもよい。1つ以上の非一時的なコンピュータ可読媒体は、揮発性メモリと不揮発性メモリを含むことを理解する必要がある。代替の実行が可能であり、ハードウェア実装またはソフトウェア/ハードウェア実装を含むことを、理解しなければならない。ハードウェア実装機能は、ASIC(s)、プログラム可能アレイ、デジタル信号処理回路等を用いて実現される。したがって、特許請求の範囲での用語「手段」は、ソフトウェア実装とハードウェア実装の両方を含むことを意図している。同様に、本書で用いられる用語「コンピュータ可読媒体(単数および複数)」は、そこで具体化する命令のプログラムを有するソフトウェアおよび/またはハードウェア、あるいは、その組み合わせを含む。これらの実装の代替を記憶に留め、図および付随する説明は、当業者が必要な処理を実行するための、プログラムコード(すなわちソフトウェア)を記述し、および/または、回路(すなわちハードウェア)を製造するのに必要な機能的情報を提供するものであると、当然に理解される。
【0100】
本発明の実施の形態は、さらに、種々のコンピュータで実行される動作を実行するためのコンピュータコードを有する、非一時的な有形コンピュータ可読媒体でのコンピュータ製品に関連する。その媒体とコンピュータコードは、本発明の目的で特別に設計され作られたもの、あるいは、当業者に知られ、または入手可能なものであってもよい。有形コンピュータ可読媒体の例は、限定はしないが、ハードディスク、フロッピーディスク、磁気テープなどの磁気媒体;CD-ROMやホログラフィック装置などの光媒体;特定用途向け集積回路(ASICs)、プログラム可能論理回路(PLDs)、フラッシュメモリ装置、ROMおよびRAM装置などのプログラムコードを記憶する、または、記憶し実行するように特別になされたハードウェア装置を含む。コンピュータコードの例には、コンパイラーで作られるような機械コードと、インタープリターを用いてコンピュータで実行される、上級レベルコードを含むファイルとを含む。本発明の実施の形態は、その全体がまたは一部が、処理装置で実行されるプログラムモジュールである機械実行可能命令として、実装されてもよい。プログラムモジュールの例は、ライブラリ、ルーティン、オブジェクト、コンポーネント、データ構造を含む。分散型コンピュータ環境では、プログラムモジュールは、ローカル、リモートあるいはその両方の設定に物理的に置かれてもよい。
【0101】
当業者であれば、コンピューティングシステムまたはプログラミング言語は本発明の実施に重要でないことを理解するであろう。当業者であれば、上述のいくつかの要素を物理的におよび/または機能的にサブモジュールに分離することができ、または一緒に組み合わせることができることも理解するであろう。
【0102】
前述の例および実施形態は例示であり、本開示の範囲を限定するものではないことが当業者には分かるであろう。明細書を読み、図面を検討することで、当業者には明らかな、すべての変形、増強、均等物、組み合わせ、および改良は、本開示の真の思想および範囲内に含まれることを意図している。また、すべての請求項の構成要素は、複数の依存関係、構成、および組み合わせを有することを含めて、異なる構成とすることができることにも留意すべきである。