(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】チタンニオブ複合酸化物並びにこれを用いた電極及びリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
C01G 33/00 20060101AFI20240724BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240724BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20240724BHJP
【FI】
C01G33/00 A
H01M4/36 C
H01M4/485
(21)【出願番号】P 2021535527
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048641
(87)【国際公開番号】W WO2021132542
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-06-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2019236372
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 健司
(72)【発明者】
【氏名】安田 雅文
(72)【発明者】
【氏名】奥村 博
(72)【発明者】
【氏名】廣野 良幸
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】増山 淳子
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-169399(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104529477(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G33/00
H01M4/36,4/485
JDREAM III
STN
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属元素を0.05原子%以上0.30原子%より少なく含み、
Al、Y、La、Ce、Pr及びSmの少なくとも1つの元素を含み、
Ti、Nb、及びOの各元素を含み、
残部が不純物であって、
Ti及びNbの総原子%に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子%の比が、0.002以上
0.025以下であ
り、
回折角2θが26.2°~26.4°の範囲のピークの強度に対する回折角2θが27.2°~27.6°の範囲のピークの強度の比が8.7%以下、回折角2θが26.2°~26.4°の範囲のピークの強度に対する回折角2θが24.8°~25.1°の範囲のピークの強度の比が9.9%以下であり、
チタンニオブ複合酸化物の一次粒子の短軸長に対する長軸長の比で表されるアスペクト比を体積基準の対数正規分布で表した場合、前記アスペクト比が3を超える前記一次粒子の割合が11体積%以下であり、
チタンニオブ複合酸化物の一次粒子の長軸長を体積基準の対数正規分布で表した場合、前記長軸長が3μmを超える前記一次粒子の割合が5体積%以下であるリチウムイオン二次電池の電極活物質用チタンニオブ複合酸化物。
【請求項2】
Ti及びNbの総原子%に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子%の比が、0.024より小さい、請求項1に記載のチタンニオブ複合酸化物。
【請求項3】
Ti及びNbの総原子%に対するYの総原子%の比が、0.001以上0.011以下である、請求項2に記載のチタンニオブ複合酸化物。
【請求項4】
アルカリ金属元素を0.05原子%以上0.30原子%より少なく含み、
Al、Y、La、Ce、Pr及びSmの少なくとも1つの元素を含み、
Ti及びNbの総原子%に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子%の比が、0.002以上
0.025以下であり、
回折角2θが26.2°~26.4°の範囲のピークの強度に対する回折角2θが27.2°~27.6°の範囲のピークの強度の比が8.7%以下、回折角2θが26.2°~26.4°の範囲のピークの強度に対する回折角2θが24.8°~25.1°の範囲のピークの強度の比が9.9%以下であり、
チタンニオブ複合酸化物の一次粒子の短軸長に対する長軸長の比で表されるアスペクト比を体積基準の対数正規分布で表した場合、前記アスペクト比が3を超える前記一次粒子の割合が11体積%以下であ
り、
チタンニオブ複合酸化物の一次粒子の長軸長を体積基準の対数正規分布で表した場合、前記長軸長が3μmを超える前記一次粒子の割合が5体積%以下であるリチウムイオン二次電池の電極活物質用チタンニオブ複合酸化物。
【請求項5】
前記チタンニオブ複合酸化物の表面の一部が炭素材料で被覆されている、請求項1~
4のいずれか一項に記載のチタンニオブ複合酸化物。
【請求項6】
電極活物質を備え、
前記電極活物質の少なくとも一部が請求項1~
5のいずれか一項に記載のチタンニオブ複合酸化物である、電極。
【請求項7】
正極及び負極を備え、
前記正極又は前記負極のいずれか一方が請求項
6に記載の電極である、リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタンニオブ複合酸化物に関するものであり、さらにはチタンニオブ複合酸化物を電極活物質として用いた電極、及び、この電極を正極又は負極に用いたリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
チタンニオブ複合酸化物は、電気容量が高く、サイクル容量維持率が優れるため、リチウムイオン二次電池用活物質としての使用が期待されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-287496号公報
【文献】特開2014-225474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば固相反応法によりチタンニオブ複合酸化物を合成する際、焼成温度が低く反応が不十分であれば、目的とする生成物であるTiNb2O7以外にTiO2やTi2Nb10O29が混在してしまう。チタンニオブ複合酸化物に含まれるTiO2やTi2Nb10O29は、チタンニオブ複合酸化物の充放電性能の低下を引き起こす。
【0005】
一方、TiO2やTi2Nb10O29の混在を抑制するために焼成温度を高くして反応を十分にすると、結晶粒(一次粒子)が成長する。結晶粒の成長は、チタンニオブ複合酸化物を電極活物質として用いたリチウムイオン二次電池のレート特性の低下等を引き起こす。
【0006】
そこで、焼成温度が低くても十分な反応が得られるように、チタンニオブ複合酸化物にアルカリ金属元素を添加して反応性を向上させることが考えられる(例えば特許文献2参照)。しかしながら、単にアルカリ金属元素を添加するだけでは、結晶粒が繊維状に成長し、チタンニオブ複合酸化物を電極活物質として用いた電極の活物質充填密度が低下するなどの悪影響を及ぼす。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑み、TiO2やTi2Nb10O29の混在及び結晶粒の繊維状成長が抑制されているチタンニオブ複合酸化物並びにこれを用いた電極及びリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明の第1局面に係るチタンニオブ複合酸化物は、アルカリ金属元素を0.05原子%以上0.30原子%より少なく含み、Al、Y、La、Ce、Pr及びSmの少なくとも1つの元素を含み、Ti、Nb、及びOの各元素を含み、残部が不純物であって、Ti及びNbの総原子%に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子%の比が、0.002以上である構成(第1の構成)である。
【0010】
また、上記第1の構成のチタンニオブ複合酸化物において、Ti及びNbの総原子%に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子%の比が、0.024より小さい構成(第2の構成)であることが好ましい。
【0011】
上記第2の構成のチタンニオブ複合酸化物において、Ti及びNbの総原子%に対するYの総原子%の比が、0.001以上0.011以下である構成(第3の構成)であることが好ましい。
【0012】
上記目的を達成すべく、本発明の第2局面に係るチタンニオブ複合酸化物は、アルカリ金属元素を0.05原子%以上0.30原子%より少なく含み、Al、Y、La、Ce、Pr及びSmの少なくとも1つの元素を含み、Ti及びNbの総原子%に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子%の比が、0.002以上であり、チタンニオブ複合酸化物の一次粒子の短軸長に対する長軸長の比で表されるアスペクト比を体積基準の対数正規分布で表した場合、前記アスペクト比が3を超える前記一次粒子の割合が11体積%以下である構成(第4の構成)である。
【0013】
上記目的を達成すべく、本発明の第3局面に係るチタンニオブ複合酸化物は、アルカリ金属元素を0.05原子%以上0.30原子%より少なく含み、Al、Y、La、Ce、Pr及びSmの少なくとも1つの元素を含み、Ti及びNbの総原子%に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子%の比が、0.002以上であり、チタンニオブ複合酸化物の一次粒子の長軸長を体積基準の対数正規分布で表した場合、前記長軸長が3μmを超える前記一次粒子の割合が5体積%以下である構成(第5の構成)である。
【0014】
また、上記第1~第5いずれかの構成のチタンニオブ複合酸化物において、前記チタンニオブ複合酸化物の表面の一部が炭素材料で被覆されている構成(第6の構成)であることが好ましい。
【0015】
上記目的を達成すべく、本発明に係る電極は、電極活物質を備え、前記電極活物質の少なくとも一部が上記第1~第6いずれかの構成のチタンニオブ複合酸化物である構成(第7の構成)である。
【0016】
上記目的を達成すべく、本発明に係るリチウムイオン二次電池は、正極及び負極を備え、前記正極又は前記負極のいずれか一方が上記第7の構成の電極である構成(第8の構成)である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、TiO2やTi2Nb10O29の混在及び結晶粒の繊維状成長が抑制されているチタンニオブ複合酸化物並びにこれを用いた電極及びリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】実施例1~
11、参考例1、実施例13及び比較例1~3のチタンニオブ複合酸化物の分析結果
【
図1B】実施例14~19のチタンニオブ複合酸化物の分析結果
【
図1C】実施例20~21のチタンニオブ複合酸化物の分析結果
【
図1D】実施例22~24のチタンニオブ複合酸化物の分析結果
【
図1E】実施例25~27のチタンニオブ複合酸化物の分析結果
【
図1F】実施例28~30のチタンニオブ複合酸化物の分析結果
【
図2】実施例3のチタンニオブ複合酸化物のSEM画像
【
図3】比較例1のチタンニオブ複合酸化物のSEM画像
【
図4】実施例3のチタンニオブ複合酸化物に関する長軸長(L)の体積基準対数正規分布
【
図5】比較例1のチタンニオブ複合酸化物に関する長軸長(L)の体積基準対数正規分布
【
図6】実施例3のチタンニオブ複合酸化物に関するアスペクト比(L/D)の体積基準対数正規分布
【
図7】比較例1のチタンニオブ複合酸化物に関するアスペクト比(L/D)の体積基準対数正規分布
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明に係るチタンニオブ複合酸化物の実施の形態について説明する。
【0020】
<概要>
本発明に係るチタンニオブ複合酸化物は、アルカリ金属元素を0.30原子%より少なく含み、Al、Y、La、Ce、Pr及びSmの少なくとも1つの元素を含み、Ti及びNbの総原子%に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子%の比が、0.001以上である。
【0021】
本発明に係るチタンニオブ複合酸化物では、アルカリ金属元素が含有されているので、TiO2やTi2Nb10O29の混在が抑制されている。尚、アルカリ金属元素が0.30原子%を超えて含有されている場合は、結晶粒の繊維状成長が過剰になり、以下に述べるAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの少なくとも1つの元素の置換によっても結晶粒の繊維状成長を十分に抑制することができなくなる。
【0022】
本発明に係るチタンニオブ複合酸化物では、Al、Y、La、Ce、Pr及びSmの少なくとも1つの元素を含み、Ti及びNbの総原子%に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子%の比が、0.001以上である。これにより、チタンニオブ複合酸化物におけるTi席の一部及びNb席の一部がAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの少なくとも1つの元素で置換されると推定され、そのような置換によって結晶粒の繊維状成長が抑制されていると考えられる。
【0023】
しかしながら、Ti及びNbの総原子%に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子%の比が0.025以上になると、Al、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子%がTi席の一部及びNb席の一部の置換限度を超えると推定され、その影響によりアルカリ金属元素による反応促進効果を阻害させる可能性がある。したがって、Ti及びNbの総原子%に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子%の比は0.025より小さいことが望ましい。
【0024】
<製造方法例>
本発明に係るチタンニオブ複合酸化物は、例えば固相反応法によって合成することができる。以下、固相反応法による本発明に係るチタンニオブ複合酸化物の合成方法の一例について説明する。
【0025】
本実施形態に係るチタンニオブ複合酸化物は、混合工程及び焼成工程を含む固相反応法により合成(製造)される。
【0026】
混合工程では、チタン原料(例えば酸化チタン又は加熱により酸化チタンを生成するチタン化合物等)と、ニオブ原料(例えば酸化ニオブ又は加熱により酸化ニオブを生成するニオブ化合物等)と、アルカリ金属原料(例えばアルカリ金属炭酸塩等)と、アルミニウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、及びサマリウムの少なくとも1つの元素の原料(例えばアルミナ、イットリア、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化サマリウム等)と、をそれぞれが所望の含有量になるよう計量し均一に粉砕混合する。
【0027】
なお、アルカリ金属を不純物として含有しているニオブ原料を用いてもよい。同様に、アルカリ金属を不純物として含有しているチタン原料を用いてもよい。なお、上述した不純物のみで必要なアルカリ金属が賄える場合は、アルカリ金属原料を加えないようにすればよい。一方、上述した不純物のみでは必要なアルカリ金属が不足する場合は、不純物の量を考慮してアルカリ金属原料の量を決定すればよい。
【0028】
混合工程では、ボールミル、振動ミル、ビーズミル等の粉砕混合装置を用いるとよい。粉砕混合装置を用いる際に混合物が粉砕混合装置に付着することを防止するために、上述した原料にアルコール(例えばエタノール等)を助剤として添加してもよい。
【0029】
上述した助剤に溶解可能なアルミニウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、及びサマリウムの少なくとも1つの元素の原料(例えばハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化イットリウム、ハロゲン化ランタン、ハロゲン化セリウム、ハロゲン化プラセオジム、ハロゲン化サマリウム等)を用いてもよい。なお、上述した助剤に溶解可能なアルミニウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、及びサマリウムの少なくとも1つの元素の原料は、上述した助剤に溶解不可能なアルミニウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、及びサマリウムの少なくとも1つの元素の原料とともに用いられてもよい。
【0030】
焼成工程では、混合工程で得られた混合物を適切な温度域に適切な時間保持して大気中で焼成する。これにより、一次粒子が焼結しているチタンニオブ複合酸化物を得ることができる。
【0031】
上述した適切な温度域及び上述した適切な時間は、良質な結晶が得られ、尚且つ、結晶粒が過剰に成長しない値である。上述した適切な温度域としては、1000℃~1300℃が好ましく、より好ましくは1100℃~1200℃である。また、上述した適切な時間としては、1時間~24時間が好ましく、より好ましくは2時間~6時間である。なお、大気以外の雰囲気(例えば、窒素雰囲気)で混合物を焼成してもよい。
【0032】
以下では、本発明の実施例について更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。すなわち、下記で説明する各種の処理方法や造粒方法など、公知の一般的な技術を適用することが可能な部分については、下記の実施例に何ら限定されることなく、その内容を適宜変更することが可能であることは言うまでもない。
【実施例】
【0033】
<実施例1>
酸化チタン(TiO2)粉末100.0g、酸化ニオブ(Nb2O5)粉末355.3g、炭酸カリウム(K2CO3)粉末0.6g、及びアルミナ(Al2O3)粉末2.5gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0034】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0035】
<実施例2>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末349.2g、炭酸カリウム粉末0.9g、及びアルミナ粉末1.5gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0036】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0037】
<実施例3>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末359.7g、炭酸カリウム粉末1.4g、及びアルミナ粉末2.4gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0038】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0039】
<実施例4>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末348.2g、炭酸カリウム粉末1.4gに、塩化アルミ(AlCl3)粉末7.6gを溶解させたエタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0040】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0041】
<実施例5>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末352.6g、炭酸カリウム粉末1.6g、及びアルミナ粉末2.7gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0042】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0043】
<実施例6>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末353.9g、炭酸カリウム粉末2.4g、炭酸ナトリウム(Na2CO3)粉末0.2g、及びアルミナ粉末2.8gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0044】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0045】
<実施例7>
不純物としてカリウム(K)を含有している酸化チタン粉末100.3g、酸化ニオブ粉末340.3g、及びイットリア(Y2O3)粉末1.3gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0046】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0047】
<実施例8>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末341.7g、炭酸カリウム粉末0.8g、アルミナ粉末0.1g、及びイットリア粉末1.3gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0048】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0049】
<実施例9>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末338.1g、炭酸カリウム粉末1.3g、アルミナ粉末0.1g、及びイットリア粉末1.2gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0050】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0051】
<実施例10>
酸化チタン粉末100.0g、不純物としてカリウム及びナトリウム(Na)を含有している酸化ニオブ粉末343.8g、アルミナ粉末0.1g、及びイットリア粉末0.5gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0052】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0053】
<実施例11>
酸化チタン粉末100.0g、不純物としてカリウム及びナトリウムを含有している酸化ニオブ粉末367.7g、アルミナ粉末0.1g、及びイットリア粉末5.0gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0054】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0055】
<参考例1>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末341.4g、炭酸カリウム粉末0.5g、及びアルミナ粉末0.1gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0056】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0057】
<実施例13>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末350.5g、炭酸カリウム粉末1.5g、及びアルミナ粉末4.8gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0058】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0059】
<実施例14>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末346.9g、炭酸カリウム粉末0.8g、アルミナ粉末0.1g、及び酸化ランタン(La2O3)粉末1.2gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0060】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0061】
<実施例15>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末344.4g、炭酸カリウム粉末1.4g、アルミナ粉末0.1g、及び酸化ランタン粉末3.6gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0062】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0063】
<実施例16>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末348.3g、炭酸カリウム粉末1.8g、及び酸化ランタン粉末7.9gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0064】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0065】
<実施例17>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末347.8g、炭酸カリウム粉末2.1g、及び酸化ランタン粉末8.0gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0066】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0067】
<実施例18>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末339.5g、炭酸カリウム粉末1.1g、アルミナ粉末0.1g、炭酸ナトリウム粉末0.1g、及び酸化ランタン粉末12.0gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0068】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0069】
<実施例19>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末347.0g、炭酸カリウム粉末1.1g、アルミナ粉末0.1g、及び酸化ランタン粉末15.0gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0070】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0071】
<実施例20>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末345.6g、炭酸カリウム粉末0.8g、炭酸ナトリウム粉末0.2g、イットリア粉末1.9g、及び酸化ランタン粉末2.5gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0072】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0073】
<実施例21>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末349.6g、炭酸カリウム粉末2.7g、アルミナ粉末0.5g、イットリア粉末1.6g、及び酸化ランタン粉末2.5gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0074】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0075】
<実施例22>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末339.3g、炭酸カリウム粉末1.6g、アルミナ粉末0.1g、及び酸化セリウム(CeO2)粉末2.0gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0076】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0077】
<実施例23>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末349.7g、炭酸カリウム粉末2.0g、アルミナ粉末0.1g、及び酸化セリウム粉末3.3gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0078】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0079】
<実施例24>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末344.1g、炭酸カリウム粉末1.0g、アルミナ粉末0.1g、炭酸ナトリウム粉末0.2g、及び酸化セリウム粉末0.9gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0080】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0081】
<実施例25>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末343.7g、炭酸カリウム粉末2.1g、及び酸化プラセオジム(Pr2O3)粉末0.5gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0082】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0083】
<実施例26>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末343.3g、炭酸カリウム粉末1.1g、炭酸ナトリウム粉末0.3g、アルミナ粉末0.1g、及び酸化プラセオジム粉末1.9gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0084】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0085】
<実施例27>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末342.6g、炭酸カリウム粉末0.9g、炭酸ナトリウム粉末0.3g、アルミナ粉末0.1g、及び酸化プラセオジム粉末0.3gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0086】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0087】
<実施例28>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末347.0g、炭酸カリウム粉末1.0g、及び酸化サマリウム(Sm2O3)粉末2.1gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0088】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0089】
<実施例29>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末352.0g、炭酸カリウム粉末1.2g、アルミナ粉末0.1g、及び酸化サマリウム粉末4.1gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0090】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0091】
<実施例30>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末346.8g、炭酸カリウム粉末2.0g、及び酸化サマリウム粉末10.9gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0092】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0093】
<比較例1>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末344.4g、炭酸カリウム粉末1.5g、及びアルミナ粉末0.1gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0094】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0095】
<比較例2>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末342.4g、炭酸カリウム粉末2.9g、及びアルミナ粉末5.3gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0096】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0097】
<比較例3>
酸化チタン粉末100.0g、酸化ニオブ粉末332.4g、炭酸カリウム粉末2.7g、アルミナ粉末0.4g、及びイットリア粉末4.3gに、エタノールを助剤として加え、振動ミルにより粉砕混合した。
【0098】
得られた混合物をアルミナるつぼに入れ、電気炉中で焼成処理(処理温度:1100℃,処理時間:2時間)して、チタンニオブ複合酸化物を得た。
【0099】
<分析装置>
実施例1~11、参考例1、実施例13~30及び比較例1~3のチタンニオブ複合酸化物の分析に使用した分析装置は、下記の通りである。
X線回折装置:株式会社リガク、Ultima4、Cu-Kα線による測定
蛍光X線分析装置:株式会社リガク、ZSX PrimusIII+
走査型電子顕微鏡:日本電子株式会社、JSM-6510
【0100】
<分析結果>
実施例1~13及び比較例1~3のチタンニオブ複合酸化物の分析結果を
図1Aに示す。実施例14~19のチタンニオブ複合酸化物の分析結果を
図1Bに示す。実施例20~21のチタンニオブ複合酸化物の分析結果を
図1Cに示す。実施例22~24のチタンニオブ複合酸化物の分析結果を
図1Dに示す。実施例25~27のチタンニオブ複合酸化物の分析結果を
図1Eに示す。実施例28~30のチタンニオブ複合酸化物の分析結果を
図1Fに示す。なお、
図1A~
図1F中の「0.000」は、小数第4位を四捨五入にして得られた数値であるため、完全な零を意味しているのではない。また、実施例7、実施例11、及び実施例14~実施例30では100個の測定中にLが3μm以上の一次粒子は零であったが、母集団で長軸長(L)が3μm以上の一次粒子は完全に零と断言することはできず、正規分布から長軸長(L)が3μm以上の一次粒子は確率的に零に近いと言えるに過ぎない。すなわち、
図1A~
図1F中の「0.0%」は、完全な零を意味しているのではない。
【0101】
各チタンニオブ複合酸化物のTi、Nb、K、Na、総アルカリ金属、Al、Y、La、Ce、Pr、Smの原子%は、蛍光X線分析装置の分析結果から求めた。各チタンニオブ複合酸化物の各原子%比であるAl/(Ti+Nb)、Y/(Ti+Nb)、La/(Ti+Nb)、Ce/(Ti+Nb)、Pr/(Ti+Nb)、Sm/(Ti+Nb)、(Al+Y+La+Ce+Pr+Sm)/(Ti+Nb)は、上述した原子%から求めた。
【0102】
各チタンニオブ複合酸化物の一次粒子の形状は、走査型電子顕微鏡による観察結果から求めた。チタンニオブ複合酸化物のSEM画像の例を
図2及び
図3に示す。
図2は実施例3のチタンニオブ複合酸化物のSEM画像であり、
図3は比較例1のチタンニオブ複合酸化物のSEM画像である。
【0103】
各チタンニオブ複合酸化物のSEM画像(倍率2万倍)を横方向にスキャンさせ、横方向に平行な1本の線上に位置する一次粒子の長軸長(L)と短軸長(D)を各チタンニオブ複合酸化物について順次100個測定した。なお、測定の際には、一次粒子の大きさに応じて倍率を最大4万倍まで変更し、一次粒子の向きに応じて試料台の角度を変更した。
【0104】
一次粒子の形状を円柱状とみなして、長軸長(L)及び短軸長(D)を測定した各一次粒子の体積を求めた。すなわち、長軸長(L)を円柱の高さとみなし、短軸長(D)を円柱の直径とみなした。
【0105】
そして、一次粒子の個数ではなく一次粒子の体積を基準として、100個の一次粒子の測定値から母集団(チタンニオブ複合酸化物全体)の長軸長(L)の分布を推定した。チタンニオブ複合酸化物に関する長軸長(L)の体積基準対数正規分布の推定結果の例を
図4及び
図5に示す。
図4は実施例3のチタンニオブ複合酸化物に関する長軸長(L)の体積基準対数正規分布であり、
図5は比較例1のチタンニオブ複合酸化物に関する長軸長(L)の体積基準対数正規分布である。
図1A~
図1Fでは、長軸長(L)が3μm以上である一次粒子の体積基準での割合を記載している。
【0106】
また、一次粒子の個数ではなく一次粒子の体積を基準として、100個の一次粒子の測定値から母集団(チタンニオブ複合酸化物全体)のアスペクト比(L/D)の分布を推定した。チタンニオブ複合酸化物に関するアスペクト比(L/D)の体積基準対数正規分布の例を
図6及び
図7に示す。
図6は実施例3のチタンニオブ複合酸化物に関するアスペクト比(L/D)の体積基準対数正規分布であり、
図7は比較例1のチタンニオブ複合酸化物に関するアスペクト比(L/D)の体積基準対数正規分布である。
図1A~
図1Fでは、アスペクト比(L/D)が3以上である一次粒子の体積基準での割合を記載している。
【0107】
上述した分析方法では、一次粒子の形状を円柱状とみなしたが、一次粒子の形状を底面が正方形である四角柱状とみなしても同じ推定結果が得られる。
【0108】
図1A~
図1Fでは、実施例1~
11、参考例1、実施例13~30及び比較例1~3の各チタンニオブ複合酸化物のX線回折スペクトルにおいて、回折角2θが26.2°~26.4°の範囲、24.8°~25.1°の範囲、27.2°~27.6°の範囲それぞれでピークが有れば、それらのピークの強度(相対値)を記載している。回折角2θが26.2°~26.4°の範囲のピークは、目的とする生成物であるTiNb
2O
7の結晶に起因するピークである。回折角2θが24.8°~25.1°の範囲のピークは、Ti
2Nb
10O
29の結晶に起因するピークである。回折角2θが27.2°~27.6°の範囲のピークは、ルチル型のTiO
2の結晶に起因するピークである。
【0109】
また、
図1A~
図1Fでは、回折角2θが26.2°~26.4°の範囲のピークの強度に対する回折角2θが24.8°~25.1°の範囲のピークの強度の比、及び、回折角2θが26.2°~26.4°の範囲のピークの強度に対する回折角2θが27.2°~27.6°の範囲のピークの強度の比を百分率で記載している。
【0110】
また、
図1A~
図1Fでは、回折角2θが26.2°~26.4°の範囲のピークの半値幅も記載している。回折角2θが26.2°~26.4°の範囲のピークの半値幅が小さいほど、目的とする生成物であるTiNb
2O
7の結晶が良質である。
【0111】
実施例1~11、参考例1、実施例13~30の各チタンニオブ複合酸化物では、アスペクト比(L/D)が3以上である一次粒子の体積基準での割合が11体積%以下、より厳密には10.8体積%以下である。一方、比較例1~3の各チタンニオブ複合酸化物では、アスペクト比(L/D)が3以上である一次粒子の体積基準での割合が16体積%以上、より厳密には16.7%以上である。つまり、実施例1~30の各チタンニオブ複合酸化物は、比較例1~3の各チタンニオブ複合酸化物と比較して、一次粒子の繊維状粒成長が抑制されている。
【0112】
実施例1~11、参考例1、実施例13~30の各チタンニオブ複合酸化物は、アルカリ金属元素を0.30原子%より少なく含み、Al、Y、La、Ce、Pr及びSmの少なくとも1つの元素を含み、Ti及びNbの総原子%に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子%の比が0.001以上であるという構成であるのに対し、比較例1~3の各チタンニオブ複合酸化物はそのような構成ではない。なお、アルカリ金属元素は0.05原子%以上0.28原子%以下であることが好ましい。
【0113】
比較例1のチタンニオブ複合酸化物は、Ti及びNbの総原子%に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子%の比が小さ過ぎるため、一次粒子の繊維状粒成長を十分に抑制できておらず、その結果として実施例1~11、参考例1、実施例13~30の各チタンニオブ複合酸化物よりも一次粒子のアスペクト比(L/D)が大きくなる傾向を特性として有すると考えられる。比較例2及び比較例3の各チタンニオブ複合酸化物は、アルカリ金属元素の含有量が多過ぎるため、一次粒子の繊維状粒成長を十分に抑制できておらず、その結果として実施例1~11、参考例1、実施例13~30の各チタンニオブ複合酸化物よりも一次粒子のアスペクト比(L/D)が大きくなる傾向を特性として有すると考えられる。
【0114】
実施例1~11,13~30の各チタンニオブ複合酸化物では、長軸長(L)が3μm以上である一次粒子の体積基準での割合が5体積%以下、より厳密には4.0体積%以下である。一方、参考例1のチタンニオブ複合酸化物では、長軸長(L)が3μm以上である一次粒子の体積基準での割合が10体積%以上、より厳密には10.8体積%以上である。つまり、実施例1~11,13~30の各チタンニオブ複合酸化物は、参考例1のチタンニオブ複合酸化物と比較して、一次粒子の成長が抑制されている。
【0115】
実施例1~11,13~30の各チタンニオブ複合酸化物は、Ti及びNbの総原子%に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子%の比が0.002以上であるという構成であるのに対し、参考例1のチタンニオブ複合酸化物はそのような構成ではない。
【0116】
実施例1~11,13~30の各チタンニオブ複合酸化物は、参考例1のチタンニオブ複合酸化物よりもTi及びNbの総原子%に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子%の比が大きいため、実施例12のチタンニオブ複合酸化物よりも一次粒子の成長を抑制でき、その結果として実施例12のチタンニオブ複合酸化物よりも一次粒子の長軸長(L)が小さくなる傾向を特性として有すると考えられる。
【0117】
実施例1~11、14~17、20~30の各チタンニオブ複合酸化物では、回折角2θが26.2°~26.4°の範囲のピークの強度に対する回折角2θが27.2°~27.6°の範囲のピークの強度の比が7%以下、より厳密には6.8%以下である。一方、実施例13、18、19の各チタンニオブ複合酸化物では、回折角2θが26.2°~26.4°の範囲のピークの強度に対する回折角2θが27.2°~27.6°の範囲のピークの強度の比が8%以上、より厳密には8.5%以上である。つまり、実施例1~11、14~17、20~30の各チタンニオブ複合酸化物は、実施例13、18、19の各チタンニオブ複合酸化物と比較して、TiO2の混在が抑制されている。
【0118】
実施例1~11、14~17、20~30の各チタンニオブ複合酸化物は、Ti及びNbの総原子%に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子%の比が0.020より小さいという構成であるのに対し、実施例13、18、19の各チタンニオブ複合酸化物はそのような構成ではない。なお、Ti及びNbの総原子%に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子%の比は0.020より小さい、より厳密には0.018以下であることが好ましい。
【0119】
実施例1~11、14~17、20~30の各チタンニオブ複合酸化物は、実施例13、18、19の各チタンニオブ複合酸化物とは異なり、Ti及びNbの総原子%に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子%の比が大き過ぎないため、実施例13、18、19の各チタンニオブ複合酸化物よりもTiO2の混在を抑制できると考えられる。
【0120】
実施例7~11の各チタンニオブ複合酸化物は、Ti及びNbの総原子%に対するYの総原子%の比が0.001以上0.011以下という構成であるのに対し、実施例13のチタンニオブ複合酸化物はそのような構成ではない。
【0121】
実施例7~11の各チタンニオブ複合酸化物は、Yの含有量が多過ぎず、Ti及びNbの総原子%に対するYの総原子%の比が適切な範囲内であるため、Alの含有量が多過ぎる実施例13のチタンニオブ複合酸化物よりもTiO2の混在を抑制できると考えられる。
【0122】
<リチウムイオン二次電池への応用>
例えば、活物質として実施例1~11、参考例1、実施例13~30いずれかのチタンニオブ複合酸化物を用いて電極を作製すればよい。具体例としては、まず、ポリフッ化ビニリデン10重量部をN-メチル-2-ピロリドンに溶解させ、次に導電助剤として導電性カーボンを10重量部、実施例1~13いずれかのチタンニオブ複合酸化物100重量部を加え、自転公転攪拌機にて混錬することにより塗料を作成すればよい。そして、この塗料をアルミ箔上に塗布し、その後120℃で真空乾燥しプレスした後、円形状に打ち抜けばよい。
【0123】
上記で作製した電極を用い、例えば
図8に示す2032型コインセル1を組み立てればよい。
図8に示す2032型コインセル1は、リチウムイオン二次電池の一例である。2032型コインセル1は、上ケース6aと下ケース6bとの間に、電極2、対極3、非水電解質4、及びセパレータ5を挟み込み、上ケース6aと下ケース6bの周囲をガスケット7で封止して作製される。
【0124】
対極3には例えば金属リチウム箔を用いればよい。非水電解質4には例えばエチレンカーボネート:ジメチルカーボネート1:1v/v%にLiPF6を1mol/L溶解したものを用いればよい。セパレータ5には例えばポリプロピレン多孔膜を用いればよい。
【0125】
なお、電極活物質の少なくとも一部が本発明に係るチタンニオブ複合酸化物である電極は、リチウムイオン二次電池の正極として用いてもよく、リチウムイオン二次電池の負極として用いてもよい。
【0126】
<その他>
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって示されるものであって、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0127】
例えば、上述した実施例では、チタンニオブ複合酸化物に含まれるアルカリ金属元素は、K、Naであったが、Li等の他のアルカリ金属元素であってもよい。Li等の他のアルカリ金属元素は、K及びNaを含有していないチタンニオブ複合酸化物に含まれていてもよく、Kとともにチタンニオブ複合酸化物に含まれていてもよく、Naとともにチタンニオブ複合酸化物に含まれていてもよい。また、実施例18と実施例19とを比較すると、アルカリ金属元素が1種類である構成とアルカリ金属元素が2種類である構成とにおいて、アルカリ金属元素の含有量に大差がなく、Ti及びNbの総原子%に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子%の比に大差がなければ、TiO2やTi2Nb10O29の混在及び結晶粒の成長を抑制する効果が同程度であると考えられる。このことから、例えば実施例1~11、参考例1、実施例13~30それぞれに対して、アルカリ金属元素の含有量を略変化させず、Ti及びNbの総原子%に対するAl、Y、La、Ce、Pr及びSmの総原子%の比を変化させず、アルカリ金属元素の種類数を変化させた場合、実施例1~30それぞれと比較して、TiO2やTi2Nb10O29の混在及び結晶粒の成長を抑制する効果が同程度であると考えられる。
【0128】
例えば、上述した実施例では、チタンニオブ複合酸化物の表面の一部が炭素材料で被覆されていなかったが、チタンニオブ複合酸化物の表面の一部が炭素材料で被覆されていてもよい。
【0129】
ここで、表面の一部が炭素材料で被覆されているチタンニオブ複合酸化物の製造方法例について説明する。例えば、ポリビニルアルコール(PVA)が13重量%となるように、実施例1~11、参考例1、実施例13~30いずれかのチタンニオブ複合酸化物にPVA水溶液を加えた後、ボールミルを用いて粉砕、混合を行った後、スプレードライヤーにて乾燥させる。その後、得られた乾燥品を窒素雰囲気下で熱処理(処理温度:800℃,処理時間:4時間)する。これにより、表面の一部が炭素材料で被覆されているチタンニオブ複合酸化物を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明に係るチタンニオブ複合酸化物は、例えば、リチウムイオン二次電池の電極に用いられる電極活物質として利用することが可能である。
【符号の説明】
【0131】
1 2032型コインセル
2 電極
3 対極
4 非水電解質
5 セパレータ
6a 上ケース
6b 下ケース
7 ガスケット