(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】歯科対象物に自然色および光学的深さを与える方法
(51)【国際特許分類】
A61C 13/08 20060101AFI20240724BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20240724BHJP
A61C 13/083 20060101ALI20240724BHJP
A61C 5/77 20170101ALI20240724BHJP
【FI】
A61C13/08 A
A61C19/04 J
A61C13/083
A61C5/77
(21)【出願番号】P 2021555583
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 NL2020050165
(87)【国際公開番号】W WO2020185086
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-01-11
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】521420071
【氏名又は名称】オーラルコル アセッツ ホールディング ビー. ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ダン、ホン-フ
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-090223(JP,A)
【文献】特開2014-161440(JP,A)
【文献】特開2012-166030(JP,A)
【文献】特開昭64-052450(JP,A)
【文献】国際公開第2015/082300(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/08
A61C 19/04
A61C 13/083
A61C 5/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科対象物
を製造する方法であって、
前記歯科対象物は、近辺の
もしくは隣の歯科対象物または参照歯科対象物と実質的に同じ色および光学的特性を持ち、
-過去の歯科対象物または近辺の
、隣の
もしくは選ばれた自然歯または参照歯科対象物に基づいて、患者に特有の歯科対象物のフレームワークを与えるステップと、
-1つ以上の近辺の
、隣の
もしくは選ばれた自然歯または参照歯科対象物の対象物カラー画像または3Dカラー対象物スキャンを取得し、前記対象物カラー画像または前記3Dカラー対象物スキャンのデジタル画素をコンピュータデバイスにアップロードするステップと、
-アップロードされた前記対象物カラー画像または前記3Dカラー対象物スキャンのデジタル画素を、画像サイズおよび/または解像度に関して較正および調整するステップと、
-前記対象物カラー画像または前記3Dカラー対象物スキャンに基づいて、コンピュータデバイス内で目標対象物カラー画像を定義するステップと、
-前記フレームワークに与えられるエナメル材料を選択し、前記エナメル材料の厚さプロファイルを決定するステップと、
-エナメル層の厚さ全体にわたって測定した色測定値同士の関係を表す公式を用いて、前記デジタル画素の位置において与えられる前記エナメル材料の厚さプロファイルに関し、前記目標対象物カラー画像のデジタル画素をコンピュータデバイス内で補正するステップと、前記目標対象物カラー画像の補正されたデジタル画素のプリントカラー画像を与えるステップと、
-前記補正されたデジタル画素を含むプリントカラー画像を、プリント層として前記フレームワーク上にプリントするステップと、
-前記エナメル材料を、所定の厚さプロファイルで前記フレームワーク上に与えるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記対象物カラー画像、前記3Dカラー対象物スキャン、前記目標対象物カラー画像および前記プリントカラー画像内に含まれるデジタル画素に関し、色空間CSが使われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象物カラー画像、前記3Dカラー対象物スキャン、前記目標対象物カラー画像および前記プリントカラー画像内に含まれるデジタル画素に関し、前記色空間CSとしてCIELAB色空間が選ばれ、
各デジタル画素(P)の色は、(L*)、(a*)、(b*)によって表され、
(L*)は明度を示す値であり、(a*)は色の青―黄の成分を示す値であり、(b*)は色の緑―赤の成分を示す値であり、
(xP)はデジタル画素(P)におけるエナメル材料の厚さであり、
前記目標対象物カラー画像のデジタル画素(P)の(L*)、(a*)、(b*)の値を補正するステップは、
-色の範囲が(L*)、(a*)、(b*)で下部に存在し得る色の上に厚さの値の範囲(x)で与えられるエナメル材料の(L*)、(a*)、(b*)の測定値から多項回帰を用いて導出される(L*)、(a*)、(b*)エナメル補正値を計算するための公式、すなわちエナメル補正公式を決定するステップと、
-前記エナメル補正公式を用いて、各エナメルの厚さ(xP)に関し、前記目標対象物カラー画像の各デジタル画素(P)の(L*)、(a*)、(b*)エナメル補正値を計算するステップと、前記目標対象物カラー画像のデジタル画素(P)の(L*)、(a*)、(b*)エナメル補正値によりエナメル補正されたプリントカラー画像を与えるステップと、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(yP)は、デジタル画素(P)におけるフレームワークの材料の厚さであり、
前記目標対象物カラー画像のデジタル画素(P)の(L*)、(a*)、(b*)の値を補正するステップは、
-色の範囲が(L*)、(a*)、(b*)のダイ材料およびメゾストラクチャーの色の上に厚さの値の範囲が(x)で与えられるフレームワーク材料の(L*)、(a*)、(b*)の測定値から多項回帰を用いて導出される(L*)、(a*)、(b*)フレームワーク補正値を計算するための公式、すなわちフレームワーク補正公式を決定するステップと、
-前記フレームワーク補正公式を用いて、各フレームワークの厚さ(yP)に関し、前記エナメル補正されたプリントカラー画像の各デジタル画素(P)の(L*)、(a*)、(b*)フレームワーク補正値および(L*)、(a*)、(b*)エナメル補正値を計算するステップと、前記目標対象物カラー画像のデジタル画素(P)の(L*)、(a*)、(b*)フレームワーク補正値および(L*)、(a*)、(b*)エナメル補正値によりフレームワーク補正およびエナメル補正されたプリントカラー画像を与えるステップと、
を含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
(L*)、(a*)、(b*)フレームワーク補正値および(L*)、(a*)、(b*)エナメル補正値を計算するステップは、
-写真、3Dカラースキャンまたは画像評価を用いて、残根
、プレパレーション
、ナチュラルダイ
またはメゾストラクチャーの(L*)、(a*)、(b*)値を決定するステップと、
-前記残根
、プレパレーション
、ナチュラルダイ
またはメゾストラクチャーの(L*)、(a*)、(b*)値により、フレームワーク補正公式を用いて、各フレームワークの厚さ(yP)に関し、前記エナメル補正されたプリントカラー画像の各デジタル画素(P)の(L*)、(a*)、(b*)フレームワーク補正値および(L*)、(a*)、(b*)エナメル補正値を計算するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
エナメル材料の厚さプロファイルに関し、目標対象物カラー画像のデジタル画素をコンピュータデバイス内で補正するステップは、
表示媒体上に、前記目標対象物カラー画像および/もしくはプリントカラー画像および/もしくはエナメル材料で覆われたプリントカラー画像の、2Dならびに/または3Dシミュレーションを与えるステップを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科対象物に自然色および光学的深さを与える方法に関する。ここで歯科対象物は、近辺の/隣の歯科対象物および参照歯科対象物と実質的に同じ色および光学的特性を持つ。
【背景技術】
【0002】
より具体的には、本発明に係る方法は、コンピュータ支援設計およびコンピュータ支援製造(CAD/CAM)による交換歯の色および外観を、ヒトの口腔内の自然歯および/または口腔組織と比べ、改善することを目的とする。現在、高度に美的な交換歯科対象物の製造は、歯科技工室における、高度に専門化・熟練された非常に多くの手作業を必要とする。高品質かつ美的な交換歯科対象物を継続的に製造するためには、高いレベルの芸術的才能と経験が歯科技工に求められる。現時点では、機械製造による歯科対象物の美的品質は、熟練した歯科技工士によるものには遠く及ばない。さらに歯科医およびその患者は、歯科対象物をより早くより安価に入手することを常に求める。
【0003】
多くのの交換歯科対象物の製造過程では、先ず、選択された材料、交換される歯または隣の歯の形状や色に基づくフレームワークが与えられる。通常このフレームワークは、セラミック材料、金属合金または合成樹脂材料から作られ、交換歯科対象物の次の層の基礎として機能する。
【0004】
米国特許第8、945、665号には、交換歯科対象物の製造コストを下げ、歯科技工士の作業時間や負担を軽減する目的で、患者の残った(隣の)歯の画像に基づくデカールを印刷する方法が開示されている。絵または写真を用いて芸術家が、自然歯の色および光学的特性を模写する画像の複数の組を作成する。歯科医および/または患者は、チャート/カタログから理想的な特徴を持つ模写画像を選ぶ。その後、芸術家の画像がコンピュータソフトウェアに転送され、デカールまたはステッカーが印刷される。歯科技工士が、歯科医および/または患者が選んだ模写画像に合致するデカールを選び、選んだデカールを象牙質色の(合成樹脂の)フレームワークに貼り付けることにより、交換歯科対象物を作成する。その後、エナメル色の合成樹脂の層が、デカールが貼られたフレームワークの上に与えられる。選択的に、第2の外部デカールが、エナメル色の樹脂の上に配置される。さらに選択的に、グレーズ層が与えられる。この方法は、芸術家を必要とするという欠点があり、患者の自然歯に基づく複数の画像の組をカタログに与える必要がある。さらに、デカールにプリントされた色は事前に計算できない。このため、エナメルを与えた後では、この方法で得られる色および外観には一貫性がなく、満足な交換歯科対象物となるまで再三の試行錯誤が必要である。さらに歯科技工士および/または歯科医は、患者の選択した模写画像を基に適切なデカールを選ぶ必要がある。従って米国特許第8、945、665号に開示された方法は、依然として高度に専門化・熟練した歯科技工士および熟練した芸術家を必要とする。
【0005】
国際特許出願JP2009/061541号は、デジタルカメラなどの比色分析手段を用いて交換歯科対象物の隣の自然歯を分析することにより、歯科対象物を着色する方法を開示する。比色分析手段は、隣の歯の全体的な単一色を決定する。これにはグラデーションがかけられてもよい。3次元プリンティング手段が、決定された色を(選択的にはグラデーションをかけて)歯科対象物または人工補綴物の上にプリントする。色は互いにオーバーラップしてもよい。色と人工補綴物との重ね合わせの状態が(コンピュータの)スクリーンに表示され、着色の結果が評価される。この試験が繰り返され、決定された歯の色に基づいて3次元物体のプリント手段が起動され、(繰り返し)プリントされる。この方法は、自然歯に関し、すべての自然色の詳細を平均化する単一色を決定する。これは、自然歯の大半の詳細が再現されないことを意味する。さらに再び、隣の歯の着色のよい写しを得るためには、歯科技工士による複数の試験を実行する必要がある。この方法では、自然歯に存在するエナメル質の下の色を得ることができない。
【0006】
国際公開第2015/082081号は、スキャンデータを用いて、交換歯科対象物のフレームワークまたはキャリア箔に色を与えプリントする方法を開示する。着色されたフレームワークまたはフォイル箔の上のエナメル層の、フレームワーク対する影響は補正されない。このため、交換歯科対象物の色および色表現は、近辺の/隣の自然歯の色と似ていない。
【0007】
国際公開第2015/070469号は、ミリングやデジタル制御されたアディティブプロセス(例えば、歯科対象物の高精細な3次元モデルのキャプチャによるデジタルペインティング)等の、デジタル制御された還元プロセスの組み合わせを備えた交換歯科用品の製造方法を開示する。しかしながら、ペインティングやプリンティングなどのアディティブプロセス、あるいはそれに続くエナメル付与では、歯科対象物の色に対するエナメル層の影響が考慮されない。従って正しい色を得るためには、手作業による修正や試行錯誤が必要である。本明細書で用いる「歯科対象物」という用語は、国際公開第2015/070469号の段落[0025]で与えられた定義に基づく。「歯科対象物」という用語は、歯科医学における対象を広く指す。この用語は、歯列(より具体的には、個々の歯、四分弧、全弧、弧の対などのヒトの歯列である。これらは分離していても様々な形で咬合していてもよい)、軟組織、骨その他の支持構造または周辺構造といった口腔内構造を含んでもよい。口腔内構造は、上記の口内自然構造および以下で説明する口内に存在する人工構造の両方を指す。人工対象物(または歯科対象物)は、復元物(これは一般に、既存歯の構造または機能を復元するための要素、例えば歯冠、ブリッジ、ベニア、インレー、アンレー、アマルガム、コンポジット、コーピング等の様々な構造を含むと理解されてよい)や、永久的な復元物の製造中に使われる一時的な復元物を含んでもよい。歯科対象物はまた、歯列に置き換わる取り外し可能なまたは永久的な構造を持った人工補綴物(例えば、総義歯、部分床義歯、インプラント、有床義歯など)を含んでもよい。歯科対象物はまた、歯列矯正器具や歯列を一時的または永久的に修正する器具(例えば、取り外し可能な歯列矯正器具、外科用ステント、歯ぎしり防止具、いびきガード、間接的ブラケット配置器具等)を含んでもよい。歯科対象物はまた、歯列に長期間取り付けられるハードウェア(例えば、インプラントフィクスチャー、インプラントアバットメント、歯列矯正用ブラケットその他の歯列矯正具など)を含んでもよい。歯科対象物はまた、歯科模型(全体または部分)、ろう形成、インベストメントモールドといった歯科用品のための中間生成物、あるいはトレー、ベース、ダイといった復元や人工補綴物の生成に使われる要素を含んでもよい。歯科対象物はまた、自然歯科対象物(歯、骨などの口腔内構造)と、人工歯科対象物(復元物、人工補綴物、器具、ハードウェア、上記の歯科用品のための中間生成物など)とに分類することができる。歯科対象物は、口腔内、口腔外またはそれらの組み合わせで生成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、既知の方法およびシステムの欠点を克服し、歯科技工士による煩雑な試行錯誤を必要とすることなく、歯科対象物にふさわしい色を決定・付与するプロセスを簡略化する方法を与えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る方法は、
-過去の歯科対象物または近辺の/隣の/選ばれた自然歯または参照歯科対象物に基づいて、患者に特有の歯科対象物のフレームワークを与えるステップと、
-1つ以上の近辺の/隣の/選ばれた自然歯または参照歯科対象物の対象物カラー画像または3Dカラー対象物スキャンを取得し、前記対象物カラー画像または前記3Dカラー対象物スキャンのデジタル画素をコンピュータデバイスにアップロードするステップと、
-アップロードされた前記対象物カラー画像または前記3Dカラー対象物スキャンのデジタル画素を、画像サイズおよび/または解像度に関して較正および調整するステップと、
-前記対象物カラー画像または前記3Dカラー対象物スキャンに基づいて、コンピュータデバイス内で目標対象物カラー画像を定義するステップと、
-前記フレームワークに与えられるエナメル材料を選択し、前記エナメル材料の厚さプロファイルを決定するステップと、
-エナメル層の厚さ全体にわたって測定した色測定値同士の関係を表す公式を用いて、前記デジタル要素の位置において与えられる前記エナメル材料の厚さプロファイルに関し、前記目標対象物カラー画像のデジタル画素をコンピュータデバイス内で補正するステップと、前記目標対象物カラー画像の補正されたデジタル画素のプリントカラー画像を与えるステップと、
-前記補正されたデジタル画素を含むプリントカラー画像を、プリント層として前記フレームワーク上にプリントするステップと、
-前記エナメル材料を、所定の厚さプロファイルで前記フレームワーク上に与えるステップと、を含む。
【0010】
エナメル層の光学的特性および色の特性に関して、目標対象物カラー画像を補正することにより、熟練した歯科技工士による試行錯誤を必要とすることなく、適切なプリンタ装置を用いて交換歯科対象物のフレームワークの上にプリントするのに適したプリントカラー画像を計算することができる。
【0011】
この方法の別の利点は、熟練した技士による手作業の場合複数の異なる色を必要とするのとは逆に、エナメル材料を単一の単色材料で作れるところにある。この方法によれば、単色のエナメル層の下に色を適用することにより、異なる光学的ニュアンスおよび特光学的性を実現することができる。これにより、自然歯を良好に模擬することができる。なぜなら、天然のエナメル材料もまた比較的単色だからである。エナメル層については、手動の場合も3Dプリンタ等による機械製造の場合も、異なる層に複数の材料を与えることに比べ、単色のエナメル材料を与えることは遥かに容易である。例えば手動でエナメル材料を与える場合、技士は形状だけに専念すればよく、色を気にする必要がない。これにより、作業時間、コストおよび経験が削減される。これと同じ原理は、歯肉、義眼、義肢などの他の組織を製造する場合にも当てはまる。こうしたケースでは、エナメル層は、必要な光学的深さを与える半透明層として機能する。エナメル材料を機械製造する場合は、3Dプリンタやインジェクション技術を用いてカラープリント層の上にエナメル材料を直接与えることもできるし、マシンミル、3Dプリントあるいはセラミックプレスされたエナメル層をカラープリントされたフレームワークの上に間接的に与える/接着することもできる。必要であれば、エナメル層は、前処理されてもよく、オーバーカントゥアの場合は付与後に最終処理されてもよく、テクスチャや光沢が与えられてもよい。「プリントカラー画像をプリント層としてフレームワーク上にプリントする」「エナメル材料をフレームワーク上に与える」という用語は、代替的に「プリントカラー画像プリント層としてエナメル層の内部にプリントする」という意味も含む。
【0012】
好ましくは、対象物カラー画像、3Dカラー対象物スキャン、目標対象物カラー画像およびプリントカラー画像内に含まれるデジタル画素に関し、色空間が使われる。有利には、本発明に係る方法に含まれるすべての画素に関し、1つの色空間が使われる。これにより、コンピュータデバイスで必要な計算および/または補正が簡略化される。しかしながら、デジタル画像を異なる色空間の間で変換するための画像処理を実行する変換式およびソフトウェアが入手できるので、使われるカラー画像ごとに異なる色空間が使われてもよい。
【0013】
特に、前記対象物カラー画像、前記3Dカラー対象物スキャン、前記目標対象物カラー画像および前記プリントカラー画像内に含まれるデジタル画素に関し、前記色空間CSとしてCIELAB色空間が選ばれてよい。このとき、
各デジタル画素(P)の色は、(L*)、(a*)、(b*)によって表され、
(L*)は明度を示す値であり、(a*)は色の青―黄の成分を示す値であり、(b*)は色の緑―赤の成分を示す値であり、
(xP)はデジタル画素(P)におけるエナメル材料の厚さであり、
前記目標対象物カラー画像のデジタル画素(P)の(L*)、(a*)、(b*)の値を補正するステップは、
-色の範囲が(L*)、(a*)、(b*)で下部に存在し得る色の上に厚さの値の範囲(x)で与えられるエナメル材料の(L*)、(a*)、(b*)の測定値から多項回帰を用いて導出される(L*)、(a*)、(b*)エナメル補正値を計算するための公式、すなわちエナメル補正公式を決定するステップと、
-前記エナメル補正公式を用いて、各エナメルの厚さ(xP)に関し、前記目標対象物カラー画像の各デジタル画素(P)の(L*)、(a*)、(b*)エナメル補正値を計算するステップと、前記目標対象物カラー画像のデジタル画素(P)の(L*)、(a*)、(b*)エナメル補正値によりエナメル補正されたプリントカラー画像を与えるステップと、
を含む。
【0014】
与えられるエナメル層の観測値に基づいて、多項回帰公式を決定し使用することにより、人間による評価、比較または経験を必要とすることなく、フレームワーク上にプリントするのに適した、エナメル補正されたプリントカラー画像を迅速かつ簡単に得ることができる。エナメル補正されたプリントカラー画像を得るための代替的な方法は、人工知能/機械学習を用いる。
【0015】
好ましくは、(yP)は、デジタル画素(P)におけるフレームワークの材料の厚さであり、
前記目標対象物カラー画像のデジタル画素(P)の(L*)、(a*)、(b*)の値を補正するステップは、
-色の範囲が(L*)、(a*)、(b*)のダイ材料およびメゾストラクチャーの色の上に厚さの値の範囲が(x)で与えられるフレームワーク材料の(L*)、(a*)、(b*)の測定値から多項回帰を用いて導出される(L*)、(a*)、(b*)フレームワーク補正値を計算するための公式、すなわちフレームワーク補正公式を決定するステップと、
-前記フレームワーク補正公式を用いて、各フレームワークの厚さ(yP)に関し、前記エナメル補正されたプリントカラー画像の各デジタル画素(P)の(L*)、(a*)、(b*)フレームワーク補正値および(L*)、(a*)、(b*)エナメル補正値を計算するステップと、前記目標対象物カラー画像のデジタル画素(P)の(L*)、(a*)、(b*)フレームワーク補正値および(L*)、(a*)、(b*)エナメル補正値によりフレームワーク補正およびエナメル補正されたプリントカラー画像を与えるステップと、
を含む。
【0016】
使われるフレームワーク材料の光学的特性の測定値に基づいて、フレームワーク補正公式を使うことにより、エナメル補正されたプリントカラー画像もまた、フレームワークの(L*)、(a*)、(b*)値に関し、簡単に補正することができる。こうしたフレームワークの(L*)、(a*)、(b*)値は、下部に存在する残根/プレパレーション/ナチュラルダイ/メゾストラクチャーの色の影響で厚さが変化するフレームワーク材料の色特性および光学的特性の結果である。
【0017】
好ましくは、(L*)、(a*)、(b*)フレームワーク補正値および(L*)、(a*)、(b*)エナメル補正値を計算するステップは、
-写真、3Dカラースキャンまたは画像評価を用いて、残根/プレパレーション/ナチュラルダイ/メゾストラクチャーの(L*)、(a*)、(b*)値を決定するステップと、
-前記残根/プレパレーション/ナチュラルダイ/メゾストラクチャーの(L*)、(a*)、(b*)値により、前記フレームワーク補正公式を用いて、各フレームワークの厚さ(yP)に関し、前記エナメル補正されたプリントカラー画像の各デジタル画素(P)の(L*)、(a*)、(b*)フレームワーク補正値および(L*)、(a*)、(b*)エナメル補正値を計算するステップと、
をさらに含む。
【0018】
残根/プレパレーション/ナチュラルダイ/メゾストラクチャーの(L*)、(a*)、(b*)値が既知の場合は、フレームワーク補正公式を用いて、エナメル補正されたプリントカラー画像の各デジタル画素(P)に関し、(L*)、(a*)、(b*)エナメル補正値のさらなる補正を簡単に実行することができる。これにより、目標歯科対象物の色との一層正確なマッチングが得られる。
【0019】
好ましくは、エナメル材料の厚さプロファイルに関し、目標対象物カラー画像のデジタル画素をコンピュータデバイス内で補正するステップは、表示媒体上に、前記目標対象物カラー画像および/もしくはプリントカラー画像および/もしくはエナメル材料で覆われたプリントカラー画像の、2Dならびに/または3Dシミュレーションを与えるステップを含む。歯科対象物をデザインするときに3D顔スキャンが使われると、通常、歯は硬く白い歯として見える。2D顔写真または3D顔スキャンに、仮想的なエナメル層で覆われたプリントカラー画像の2Dおよび/または3Dシミュレーションを適用すると、歯科対象物を作成する前に、コンピュータスクリーンなどの表示媒体上に、光学的深さと現実的な色を備えた本物に近い歯のシミュレーション画像を表示させることができる。従って、表示媒体上の歯科対象物のデザインは、その後のプリント過程で使用される目標対象物カラー画像および/またはプリントカラー画像を実際に含む。これはCADソフトウェアシステムにとって非常に有益なシミュレーションである。これにより、患者および歯科医に対して、最終結果のための非常に現実的なプレビューをその場で与えることができる。
【0020】
以上の特徴および利点ならびに以下の詳細な説明は包括的なものではない。実施例、明細書の説明、請求項を読んだ当業者にとっては、多くの追加的な特徴および利点があることは明らかだろう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る方法の第1の例。
【0022】
交換歯科対象物(例えば交換切歯)を必要とする患者は、歯科医を訪問し、診察と必要な治療を受けるだろう。歯科医は、患者の口腔内の既存歯およびその隣接歯の状態に応じて、交換歯を準備するだろう。歯科医はその後、歯科技工士に患者の記録および(デジタル化された)印象を与えるだろう。この簡単な例では、最初に交換歯に基づくフレームワークが作られる。この交換歯科対象物のフレームワークには白色が与えられる。この白色は、CIELAB色空間ではL=85、a=0、b=0であってよい。代替的に、フレームワークには、目的とする色に部分的に近い色が与えられてもよい。これにより、追加的な色調整と色特性が、色補正が必要な部分だけに与えられるだろう。フレームワークはまた、白色または不透明な材料が与えられてもよい。これにより、プレパレーションおよび/またはメゾストラクチャーの変色を防止し、「キャンバス」として機能するのに十分な明度を得ることができる。フレームワークについては、その材料および交換歯の形状が、写真および/または3Dスキャンおよび/または元の歯のサイズ、あるいは近辺の/隣の/選ばれた歯、または参照歯科対象物から導出されてよく、フレームワーク自体は3Dプリントされてもよいし、その他の既知の手段で製造されてもよい。本明細書で使われる「参照歯科対象物」という用語は、患者の口腔外にある歯科対象物のことを広く指す。患者の1つ以上の歯の形状および/または色を注意深く複製および再生することに代えて、患者が外部の「参照歯科対象物」を交換歯の出発点として選ぶこともできる。明確かつ目に見える(外観的に目立つ)交換歯を希望する場合は、患者は、カタログまたはコレクションから参照歯科対象物を選ぶことができ、あるいは、参照歯科対象物のイメージデータベースから色、(色の)イメージまたはパターンを選ぶこともできる。参照歯科対象物の形状および色は、別々に選ばれデザインされてもよい。
【0023】
患者が明確でもなく目に見えるものでもない交換歯を希望する場合は、交換歯の色および形状は、患者の口腔内の隣の歯および口腔組織に合致するものでなければならない。従って、目標とする交換歯として隣の歯の写真が撮られる。隣の歯の3Dスキャンを使うことも可能であるし、交換歯の外観目標となる色を選ぶことも可能である。対象物カラー画像が、口腔内で隣の歯と比較した交換歯の最終外観となる。この対象物カラー画像が白色のフレームワーク上にプリントされると、フレームワークは隣の歯のコピーのように見えるだろう。しかしながら、自然歯に見られる光学的深さを与えるために、対象物カラー画像のプリント層とともにエナメル材料がフレームワーク上に与えられると、歯科対象物の最終外観は隣の歯と異なるものとなる。これは、エナメル材料の光学的特性に起因する。
【0024】
デジタル画像化とは、対象の画像特性をデジタル的にエンコードしたものを生成することをいう。デジタル画像化は、こうした画像の処理、圧縮、記録、プリントおよび表示を含むとされる。デジタル画像化またはコンピュータグラフィックスでは、ピクセルまたは(デジタル的な)画素が、ラスタ画像における物理的な点、あるいはアドレス可能な表示媒体のすべての点におけるアドレス可能な最小要素である。ラスタ画像またはビットマップ画像は、一般にピクセルの矩形グリッドを表すドットマトリックスデータ構造であり、モニタ、紙その他の表示媒体によって表示される。ラスタ画像は、様々なフォーマットでイメージファイル(例えばJPEGファイル)に記録される。ピクセルの定義は、文脈に依存する。例えば、ページに「プリントされたピクセル」、電気信号で伝達されるピクセル、デジタル値で表現されるピクセル、表示媒体(装置)上のピクセル、デジタルカメラ(光センサ素子)のピクセルなどがあり得る。画像または映像をデジタル的に表現するためには、別の構造(例えばベクター画像)が使われることもある。ソフトウェアを用いて、ラスタ画像をベクター化する(すなわち、ラスタ画像をベクター画像に変換する)ことができ、ベクター画像をラスタ化する(ピクセルに変換する)こともできる。各ピクセルは、元画像の標本である。各ピクセルの強度は可変である。CIELAB、RGB、CMYK等のカラー画像化システムでは、ピクセルの色は典型的に、3個または4個の成分の強度(値)、例えば、赤、緑、青、シアン、マゼンダ、黄、黒などで表される。カメラまたはスキャナセンサの文脈では、ピクセルは、複数成分表現における単一のスカラー要素のこと、または空間位置に関する成分強度の組のことをいう。しばしばドット毎インチ(dpi)およびピクセル毎インチ(ppi)の単位が交互的に使われる。しかしこれは別の意味を持つこともあり、特にプリンタデバイスではdpiはプリンタのドット(例えばインクの液滴)の密度のことをいう(以下を参照。https://en.wikipedia.org/wiki/Digital_imaging https://en.wikipedia.org/wiki/Pixel および https://en.wikipedia.org/wiki/Raster_graphics)。以下「デジタル画素P」という用語は、デジタル画像のピクセル、ピクセルの集合のサブセットまたはベクター画像データのことをいう。
【0025】
以下「色空間」(または「色モデル」)という用語は、(デジタル)カラー画像化システムで使われ、好ましくは、既知のまたはよく使われる色空間(例えば、自然色システム(NCS)、アドビRGB(登録商標)およびsRGB、CIELABまたはCIEXYZ色空間)のリストから選択される(https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_color_spaces_and_their_uses)。以下「画像サイズおよび解像度の較正および調整」という用語は、本発明に係る方法に使われるデジタル画像(例えば、対象物カラー画像、3Dカラー対象物スキャン、目標物カラー画像、プリントカラー画像など)における「デジタル画素」に必要なすべての調整/補正を広く指す。対象物カラー画像または3Dカラー対象物スキャンの画像サイズおよび解像度の調整は、不要な情報(例えば、歯肉、唇、使用せずプリントしない歯)の除去を含んでもよい。しばしば、自然歯のサイズおよび位置の違いに起因して、対象物カラー画像または3Dカラー対象物スキャンは反射され変形される必要がある。さらにデジタル画素の数は、所望のプリント解像度に応じて調整されてもよい。選択的に、望ましくない(または望ましい)変色、傷、斑点といったアーティファクトが、除去および/または付加されてもよい。代替的に、測定された色に基づいて新しい歯の画像を配置することもできるし、好みに応じて特性を調整することもできる。デジタル画像の調整は、カメラプロファイル、ホワイトバランス等の調整を含む。なぜなら、カメラ/レンズ/フラッシュの組み合わせは必然的に色を変色させて記録するので、カメラプロファイル/ルックアップテーブル(LUTs)を用いてこれを標準化/調整する必要があるからである。(自然)歯または参照歯科対象物の上での(フラッシュ)光の反射を除去するために、対象物カラー画像または3Dカラー対象物スキャンを取得するときに、しばしば偏光フィルタが使われる。しかしながら、偏光フィルタを使うと、サングラスを使った場合に比べて色ずれが生じることがある。こうした偏光フィルタによる色ずれは、プロファイル/LUTsおよび/または調整曲線を用いて補正する必要がある。
【0026】
対象物カラー画像または3Dカラー対象物スキャンは、デジタル画素を含むデジタルデータとしてコンピュータデバイスにアップロードされ、必要であれば選択的に色調整される。必要であればコンピュータデバイスにおいて、画像またはスキャンの画像サイズおよび解像度が、フレームワーク上へのプリントで使用されるプリンタに必要なフォーマットに合わせて調整される。この画像またはデータファイルは、プリンタに必要なデジタル画素を含む目標対象物カラー画像である。次のステップで、プリント層を含むフレームワークの上に与えられるエナメル材料の厚さプロファイルが決定される。このエナメル層は、フレームワーク全体で単一の厚さであってもよいが、フレームワーク上で変化する自然の厚さを持つとさらによい結果が得られる。エナメル層の厚さは通常、首の付け根における約0.3mmから、切歯端における約1mmまで変化する。エナメルの厚さはまた、直交方向(すなわち、口腔内での水平方向)に変化してもよい。プリンタを用いてフレームワーク上にプリントされるデジタル画素Pごとにエナメルの厚さxが決定され、コンピュータデバイスにアップロードされる。コンピュータデバイスにおける次のステップで、目標対象物カラー画像のデジタル画素の各々が、当該デジタル画素Pの上に与えられるエナメル材料の厚さxPを用いて補正される。この補正は、物理特性(すなわち、エナメル材料の下の層に関する色空間CSでの成分強度(値を用いて表されることもある);エナメル材料の厚さxP;外側エナメル材料に関する色空間CSでの成分強度)の間の関係を表す公式を用いて実行または計算される。色空間CS内では、目標対象物カラー画像のデジタル画素の成分強度は、外側エナメル材料で覆われたプリントされたフレームワークの成分強度にほぼ合致する。厚さxPも目標対象物カラー画像の各デジタル画素Pに関して既知なので、プリントカラー画像のデジタル画素の成分強度を計算することができる。典型的には、コンピューティングにおいて、こうした公式は1つ以上の変数上で実行される計算を表す。公式はしばしば、コンピュータ命令の形で、暗示的に与えられる。
【0027】
本明細書で用いる「公式」という用語は、計算および/または補正を行うときに適切に使用される、変数や(測定された)物量などの間のすべてのタイプの関係を広く指す。この関係を定義するために、別の既知の方法(例えば、ニューラルネットワーク、機械学習といった(自己学習型)人工知能)が使われてもよい。
【0028】
本発明に係る方法の望ましい実施の形態では、補正は、エナメル補正公式を用いて行われる。特にエナメル補正公式は、下部に存在し得る参照色の範囲で与えられる、選択されたエナメル材料の厚さの値の範囲を持つサンプルの色測定から導かれる。このエナメル補正公式には、他人から見られる交換歯の目標対象物カラー画像の色と、厚さが変化するエナメル層の下にプリントされる画像の色との間に得られる直接的な関係が存在する。エナメル補正公式を用いることにより、目標対象物カラー画像の各デジタル画素Pは、当該デジタル画素を覆うエナメルの厚さxPの影響を用いて補正される。この補正により、それぞれ補正されたデジタル画素の組が得られる。これらはともに、プリンタによりフレームワーク上に印刷されるプリントカラー画像を形成する。より複雑な形状(例えば総義歯)の上にプリントする場合は、3軸より多い軸を使うことができる。これによりプリントヘッドは、複数のアングルから対象をプリントすることができる。フレームワークのプリント層上に所定の厚さプロファイルでエナメル材料を与えた後またはプリントした後は、交換歯科対象物の外観は、目標対象物に極めて近いものとなる。これは、歯科医および/または歯科技工士の長時間の試行錯誤を必要としない。選択的に、エナメル層の外面上に、マイクロ表面構造が与えられてもよい。こうしたマイクロ表面構造は、インクジェットシステムにより印刷されてもよく、手動または機械により圧延されてもよい。
【0029】
好ましくは、画像、計算およびプリントには、CIELAB色空間が使われる。代替的に、RGB、CMYKなどのシステムが使われてもよい。CIELAB色空間を使うことで、エナメル補正公式は、コンピュータデバイスのために決定される。エナメルの厚さの値の範囲が与えられた上で、下部に存在し得る参照色の範囲で標本が測定される。そして、各測定のL*a*b値が多項回帰ルーティンにフィットされ、最もよくフィットするときの適用係数が決定される。目標対象物カラー画像の各デジタル画素Pに対してエナメル補正公式を適用することにより、エナメル補正されたプリントカラー画像の適切なエナメルの厚さxPにおけるデジタル画素に関し、対応するCIELABエナメル補正値を計算することができる。
【0030】
第2の例。
【0031】
第1の例では、フレームワークには、白い不透明色が与えられた。これは他の色と干渉せず、プリント層およびエナメル材料の光学的特性とも干渉しない。しかしながら、フレームワークはしばしば半透明である、すなわち完全に不透明でないことがある。この場合、フレームワークの完全な白色表面は得られない。交換歯科対象物を口腔内に固定するために、異なるタイプの固定システムがある。これらはそれぞれ、固定されるフレームワークおよび交換歯科対象物に対し、特有の構造および着色(脱色)を与える。残根、ナチュラルダイまたはプレパレーションは、自然歯の残存物であり、交換歯科対象物を固定するための基礎となる。この残根の色は、新たな歯科対象物を通して見ることができる。従って、望ましくない翳りを消すためには、こうした下部に存在する色を考慮する必要がある。インプラント(これは実際の人工歯根である)の場合はしばしば、いわゆるアバットメント(または別のタイプのメゾストラクチャー)がインプラントにねじ込まれる。このアバットメントは、機能的には残根/プレパレーションと同じであり、やはり歯科対象物を固定するための基礎として機能する。従ってこうしたアバットメントは、残根/プレパレーションと全く同様に、交換歯科対象物の最終的な外観に影響する。なぜなら、アバットメントの色は、交換歯科対象物を通して部分的に見えるからである。
【0032】
交換歯科対象物を対象物のフレームワークを固定するために、歯科医によって残根/プレパレーション/ナチュラルダイ/メゾストラクチャーが用意されると、この残根/プレパレーション/ナチュラルダイ/メゾストラクチャーはしばしば脱色される。これはフレームワークを通して見え、プリントカラー画像層と干渉するだろう。その結果、交換歯科対象物とのマッチングが悪化する。従って、厚さの範囲がyのフレームワークが与えられたL*a*bダイ材料色の範囲に関して、L*a*b値を測定することにより、L*a*bフレームワーク補正値を計算するための公式が決定される。これらの測定値から、多項回帰を用いて、フレームワーク補正公式が導かれる。これにより、残根/プレパレーション/ナチュラルダイ/メゾストラクチャーの色に関し、残根/プレパレーション/ナチュラルダイ/メゾストラクチャー上に固定されたフレームワークのL*a*b値と、厚さyと、フレームワーク材料の特性との関係が与えられる。このフレームワーク補正公式を用いて、エナメル補正されたプリントカラー画像の各デジタル画素Pに関するエナメル補正値を、残根/プレパレーション/ナチュラルダイ/メゾストラクチャーおよびフレームワークの光学的特性および色の影響に関して、さらに補正することができる。デジタル画素PのL*a*bフレームワーク補正値およびエナメル補正値はともに、フレームワーク補正およびエナメル補正されたプリントカラー画像を形成する。このようなプリントカラー画像は、プリンタを用いてフレームワーク上にプリントされるのに好適である。
【0033】
本発明に係る方法の望ましい実施の形態では、L*a*b残根/プレパレーション/ナチュラルダイ/メゾストラクチャー値は、写真、3Dカラースキャン、参照対象物との比較、画像評価などを用いて決定される。各フレームワークの厚さyPに関してエナメル補正されたプリントカラー画像の各デジタル画素Pに関するL*a*bフレームワーク補正値およびエナメル補正値は、L*a*b残根/プレパレーション/ナチュラルダイ/メゾストラクチャー値を用いて、フレームワーク補正公式により計算される。この実施の形態では、正しいプリント層を効率的に計算し、交換歯科対象物との非常によいマッチングを与えるのに、残根および隣の歯の写真のみを必要とする。