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特許7526207少なくとも1つの車両構成部分を含んでいる、車両用のレーダーアンテナ装置および車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】少なくとも1つの車両構成部分を含んでいる、車両用のレーダーアンテナ装置および車両
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/931 20200101AFI20240724BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
G01S13/931
G01S7/03 230
G01S7/03 240
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021571731
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 EP2020064570
(87)【国際公開番号】W WO2020244967
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】102019114876.6
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596107062
【氏名又は名称】フォルクスヴァーゲン アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
【住所又は居所原語表記】Berliner Ring 2, 38440 Wolfsburg, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】591006586
【氏名又は名称】アウディ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ クルツ
(72)【発明者】
【氏名】トアステン バークドナート
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シュヴェンカート
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シェイト
(72)【発明者】
【氏名】ハンジョ リー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】イェルク シェーベル
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン シュヴァルタウ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン プロイスラー
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-147487(JP,A)
【文献】特表2013-504764(JP,A)
【文献】特開2002-237779(JP,A)
【文献】国際公開第2018/122926(WO,A1)
【文献】特表平09-502073(JP,A)
【文献】特開2010-158035(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0093944(US,A1)
【文献】特開2019-009713(JP,A)
【文献】特開2019-009712(JP,A)
【文献】特開2017-181480(JP,A)
【文献】特開2017-129419(JP,A)
【文献】特開2009-036576(JP,A)
【文献】特開2008-224511(JP,A)
【文献】特開2003-344535(JP,A)
【文献】特開2000-156606(JP,A)
【文献】特表2007-518968(JP,A)
【文献】特開2010-216885(JP,A)
【文献】国際公開第2019/012741(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/046353(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/162251(WO,A1)
【文献】米国特許第05847816(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0297515(US,A1)
【文献】特開2002-315131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S7/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(2)用のレーダーアンテナ装置(1)であって、前記レーダーアンテナ装置(1)は、少なくとも1つの車両構成部分(3)を含んでおり、
・レーダービーム(12)の送出および/または受け取りのために構成されている複数のレーダーデバイス(4)を有しており、
・前記レーダーデバイス(4)は、前記車両構成部分(3)の構成部分領域(5)上に配置されている、
レーダーアンテナ装置(1)において、
前記レーダーアンテナ装置(1)は、
・前記レーダーデバイス(4)のうちの複数のレーダーデバイスを含んでいる少なくとも1つのアンテナ行(6)を有しており、前記レーダーデバイス(4)は前記少なくとも1つのアンテナ行(6)に沿って配置されており、直接隣接するレーダーデバイス(4)は互いにそれぞれ第1の距離(8)を有しており、
・前記レーダーデバイス(4)のうちの複数のレーダーデバイスを含んでいるなくとも1つのアンテナ列(7)を有しており、前記レーダーデバイス(4)は前記アンテナ列(7)に沿って配置されており、直接隣接するレーダーデバイス(4)は互いにそれぞれ第2の距離(9)を有しており、
・前記少なくとも1つのアンテナ行(6)と前記少なくとも1つのアンテナ列(7)とは、5度~180度の角度αをなしており、
前記レーダーアンテナ装置(1)は少なくとも1つの光導体(13)を有しており、前記レーダーデバイス(4)は、前記少なくとも1つの光導体(13)を介して前記レーダーアンテナ装置(1)の制御ユニット(15)と接続されており、前記光導体(13)は、前記制御ユニット(15)と前記レーダーデバイス(4)との間で光学的な信号(14)を伝送するように構成され、
前記車両構成部分(3)は、複数の層を有する窓ガラスであり、
前記少なくとも1つの光導体(13)は、少なくとも部分的に前記窓ガラスの層間に配置されている、
ことを特徴とするレーダーアンテナ装置(1)。
【請求項2】
前記角度αが、60度~120度をなしている、請求項1記載のレーダーアンテナ装置(1)。
【請求項3】
前記レーダーデバイス(4)の各前記第1の距離(8)および各前記第2の距離(9)は、所定のレーダー波長λの整数倍であり、前記レーダー波長λは0.011m~0.014mまたは0.0037m~0.0038mの間である、請求項1または2記載のレーダーアンテナ装置(1)。
【請求項4】
前記レーダーデバイス(4)は、前記第1の距離(8)が異なる複数のアンテナ行(6)および前記第2の距離(9)が異なる複数のアンテナ列(7)を有するスパースアレイ配置で配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のレーダーアンテナ装置(1)。
【請求項5】
前記レーダーデバイス(4)は前記窓ガラス内に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のレーダーアンテナ装置(1)。
【請求項6】
前記レーダーデバイス(4)のうちの少なくとも1つのレーダーデバイスの主放射方向が、前記窓ガラスの表面に対してブリュースター角βで配向されている、請求項からまでのいずれか1項記載のレーダーアンテナ装置(1)。
【請求項7】
請求項からまでのいずれか1項記載のレーダーアンテナ装置(1)を較正する方法であって、
・前記複数のレーダーデバイス(4)が、第1のレーダーデバイスおよび第2のレーダーデバイスを含み、
・前記制御ユニット(15)によって、光学的な信号(14)を用いて、前記第1のレーダーデバイスが、所定の部分ビームを前記窓ガラスへ放出するように駆動制御され、
・前記第1のレーダーデバイスによって、前記所定の部分ビームが前記窓ガラスへ送出され、
・前記部分ビームの少なくとも一部が前記窓ガラス内で反射され、前記第2のレーダーデバイスによって受け取られ、
・前記第2のレーダーデバイスによって、光学的な信号(14)が前記制御ユニット(15)に伝送され、
・前記制御ユニット(15)によって、前記第1のレーダーデバイスと前記第2のレーダーデバイスとの間の距離が決定される、
ことを特徴とする、レーダーアンテナ装置(1)を較正する方法。
【請求項8】
請求項1からまでのいずれか1項記載のレーダーアンテナ装置(1)を有している車両(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの車両構成部分を含んでいる、車両用のレーダーアンテナ装置に関する。本発明はまた、レーダーアンテナ装置を備える車両およびレーダーアンテナ装置を較正する方法を包含している。
【0002】
特に車両の自動運転動作時に、または高度な運転支援システムの使用時に、車両の周辺を検出するために、センサによって、レーダー、LiDARまたはカメラを用いて、車両の周辺全体を検出することが必要となる。ここで、すべての静的な対象物および動的な対象物を検出するのには、車両の周りの360度の角度範囲の検出が必要である。ここでは、さらに、方向に加えて、対象物までの距離を決定することも重要である。この場合、いわゆる3次元周辺環境検出と言及される。必要な角度分解能を達成できるようにするために、特にLiDARセンサがこの目的で使用される。LiDARセンサの利点は、LiDARセンサが距離測定と、高い角度分解能とを組み合わせることである。LiDARを用いた、車両の周りの360度の周辺検出で問題となるのは、それぞれ光源と検出器要素とを有する、多数の小さい個別センサが必要になることである。これに代わるものは、より大きいセンサであるが、これはより大きい寸法を有しているため、車両での設置位置の選択が制限されてしまう。この問題は、車両での目立たない設置が望まれる場合には特に重要になる。
【0003】
個々のLiDARセンサの測定データの処理においては、個々のLiDARセンサが自身の測定データを個別に検出および処理しなければならないという問題が生じている。周辺作成のために、処理されたこれらの測定データは、後続のステップにおいて融合されなければならない。個々の測定データの融合の際に、特に、正確なタイムスタンプが、リアルタイム処理において必要とされる。LiDARセンサの使用時の欠点は、その精度と動作性とが現在の視界状況に依存することである。特に霧、雪または暗い光の状況では、精度が低下してしまう。周辺を検出するためにカメラを使用する場合、視界状況に関して、同様の問題が発生する。これとは対照的に、レーダーを用いた周辺検出は、視界状況の影響を受けない。レーダーセンサを用いた周辺検出の欠点は、適切なレーダー配置の提供にある。十分な分解能で角度範囲を検出するためには、十分に広い領域を備えるグループアンテナを提供する必要がある。アンテナアレイとも称されるグループアンテナは、レーダービームの送出および/または受け取りのための多数の個々のセンサを有している。送出されるまたは受け取られるレーダービームの方向は、個々のアンテナによって送出されるまたは受け取られるレーダービームの位相関係の設定または決定によって決定される。レーダーセンサの測定データの評価時には、個々の、受け取られたレーダービーム間の位相差を決定できるようにするために、個々のセンサが互いに同期されなければならないという問題が生じる。既知の従来技術の欠点は、レーダー配置が、10度~4度の方位角での角度分離性を有していることである。通常、仰角での角度分離性はより低いため、自動運転車に必要な精度を得るために、レーダーデータ用のイメージング方法を使用することはできない。これに比べて、LiDARシステムは、0.1度の範囲の角度分離性を有している。
【0004】
従来技術の車両用の既知のレーダーセンサは、約10cm×10cmの寸法を有しており、3次元周辺検出を用いずに、約2度の最大角度分解能を可能にする。これに対して、いわゆるナノレーダーは、5cm×5cmの範囲の寸法を有しており、そのコンパクトな構造様式によって、車両に容易に統合され得る。いわゆる開口合成法を使用して、分解能をさらに上げることができる。LiDARセンサの場合のように、個々のセンサにおける測定データの評価時に、時間的な同期の問題が生じる。測定データの融合の際に、周辺の全体像を作成できるようにするために、複数のタイムスタンプが一致している必要がある。現在の状況では、ナノレーダーの到達範囲は約45mに制限されている。使用される開口合成法は、走行方向に対して垂直にのみ可能である。この方法では、走行方向での、または走行方向とは反対方向での予見は不可能である。さらに、測定後に必要なデータ処理は非常に多くの計算を要する。一般に、多数のセンサが必要であり、レーダー配置は、必要な精度を提供するために寸法を必要とするという問題が生じる。このような寸法は、限られた範囲でしか車両に提供できない。
【0005】
米国特許第5682168号明細書は、隠されている車両アンテナを開示している。ここでは、アンテナ要素をルーフラック上のカバーの下または自動車のフロントグリルの後方に配置することが設定されている。
【0006】
米国特許第6118410号明細書は、車両の窓の下に配置されている車のルーフアンテナシェルフを開示している。窓は、たとえば、多数の高周波アンテナを取り付けるための固定構造物を有しているフロントガラスまたはリアガラスである。窓は、車のルーフアンテナシェルフを越えて車両のルーフまで延在して間隙を形成する細長い領域を有している。この間隙内のアンテナシェルフ上に多数のアンテナが配置されている。
【0007】
米国特許出願公開第2014/0354462号明細書は、フロントガラスの後方に配置されるレーダー機器を開示している。赤外線およびレーダービームがフロントガラスを介して広がるのを阻止するために、フロントガラスが金属層を有することが設定されている。金属層は、レーダー機器によるレーダー信号の送出および検出を可能にするために、開口部を形成している。ここでは、レーダー機器のアンテナはフロントガラスの後方に配置されており、開口部に向けられている。
【0008】
本発明の課題は、より高い精度を有する、車両用のレーダーを用いた周辺検出を可能にすることである。
【0009】
本発明では、少なくとも1つの車両構成部分を含んでいる、車両用のレーダーアンテナ装置が提供される。レーダーアンテナ装置は、レーダービームの送出および/または受け取りのために構成されている複数のレーダーデバイスを有している。これらのレーダーデバイスは、車両構成部分の構成部分領域上に配置されている。レーダーアンテナ装置が、レーダーデバイスのうちの複数のレーダーデバイスを有している、レーダービームの方位角を決定するための少なくとも1つのアンテナ行を有していることが特徴である。レーダーデバイスのうちの複数のレーダーデバイスはアンテナ行に沿って配置されており、直接隣接するレーダーデバイスは互いにそれぞれ水平距離を有している。レーダーアンテナ装置はさらに、レーダービームの仰角を決定するための少なくとも1つのアンテナ列を有している。レーダーデバイスのうちの複数のレーダーデバイスはアンテナ列に沿って配置されており、直接隣接するレーダーデバイスは互いにそれぞれ垂直距離を有している。少なくとも1つのアンテナ行と少なくとも1つのアンテナ列とは、5度~180度の角度をなしている。
【0010】
言い換えると、少なくとも1つの車両構成部分のために設けられているレーダーアンテナ装置が提供される。レーダーアンテナ装置は、少なくとも1つのアンテナ行と少なくとも1つのアンテナ列とによって、車両構成部分の構成部分領域にある平面に、いわゆるアレイを形成するグループアンテナである。少なくとも1つのアンテナ列と少なくとも1つのアンテナ行とは、5度~180度の内角αを形成している。構成部分領域には、複数のレーダーデバイスが配置されている。レーダーデバイスは、レーダービームの受け取りおよび/または送出のために構成されている。複数のレーダーデバイスが、少なくとも1つのアンテナ列および少なくとも1つのアンテナ行内に配置されており、直接隣接するレーダーデバイスは互いにそれぞれ距離を有している。垂直距離と水平距離とは同じであっても、異なっていてもよい。これらの距離は、たとえば、所定のレーダー波長の半分の整数倍であってよい。アンテナ列に配置されたアンテナデバイスが、受け取られたレーダービームの仰角の検出のため、または送出されるレーダービームの仰角の規定のために設けられていることが設定されていてよい。アンテナ行が、レーダービームの方位角の検出のため、または送出されるレーダービームの方位角の規定のために構成されていてよい。本発明によって、車両構成部分の構成部分領域を、レーダーアンテナ装置用の領域として使用できるという利点が生じる。特に、ドアまたは窓などの比較的大きい車両構成部分を、構成部分領域の提供のために使用することが設定されていてよい。これによって、車両の既存の構成部分の領域をレーダーデバイスのために使用することができる。この際に、この領域の提供のために、付加的な要素を車両に配置する必要はない。
【0011】
本発明は、さらなる利点をもたらす、さらなる任意の発展形態を含んでいる。
【0012】
本発明の発展形態では、少なくとも1つのアンテナ行と少なくとも1つのアンテナ列とが60度~120度の角度をなしていることが設定されている。言い換えると、少なくとも1つのアンテナ列と少なくとも1つのアンテナ行とは、60度~120度の角度に広がっている。たとえば、少なくとも1つのアンテナ行と少なくとも1つのアンテナ列とが90度の角度をなしていることが設定されていてよい。
【0013】
本発明の発展形態では、レーダーデバイスの各水平距離および各垂直距離が、所定のレーダー波長の整数倍であることが設定されており、ここでは、レーダー波長は0.011m~0.014mまたは0.0037m~0.0038mの間である。言い換えると、アンテナ列および/またはアンテナ行において直接隣接するレーダーデバイスは、距離として、レーダー波長の半分の波長の倍数を有している。ここでは、波長は、24.05GHz~24.25GHzもしくは21.65GHz~26.65GHzまたは77GHz~81GHzのスペクトルにおいて使用される波長に相応する。これによって、レーダービームの受け取られた各部分ビームの信号の建設的な重ね合わせが可能になるという利点が生じる。
【0014】
本発明の発展形態では、レーダーデバイスがスパースアレイ配置で配置されていることが設定されている。言い換えると、これは、各垂直距離と各水平距離とが同一ではない、完全には占有されていないグループアンテナである。したがって、少なくとも1つのレーダー行および/または少なくとも1つのレーダー列に沿って、個々の位置がレーダーデバイスによって占有されていない。これによって、レーダーデバイスの数、ひいては評価される測定データの量が低減されるという利点が生じる。ここでは、各レーダーアンテナ装置用のレーダービームの遠方界をシミュレートすることによって、分解能を大幅に損なうことなく、レーダーデバイスを省くことができる。スパースアレイ配置は、手薄な、言い換えると、完全には占有されていない、個々の距離がλ/2を超えるレーダーデバイスを備えるアンテナ配置である。言い換えると、直接隣接するレーダーデバイスに対してλ/2の距離を有する個々の位置は、占有されていない。すなわち、レーダーデバイスはその位置には存在していない。
【0015】
本発明の発展形態では、レーダーアンテナ装置が少なくとも1つの光導体を有していることが設定されており、ここでは、レーダーデバイスは、少なくとも1つの光導体を介してレーダーアンテナ装置の制御ユニットと接続されている。光導体は、制御ユニットとレーダーデバイスとの間で光学的な信号を伝送するように構成されている。言い換えると、レーダーデバイスが制御ユニットによって制御されることが設定されており、ここでは、各レーダーデバイスによる部分ビームの送出は、光学的な信号を用いて、制御ユニットによって制御される。光学的な信号を伝送するために、制御ユニットは、少なくとも1つの光導体によって、レーダーデバイスと接続されている。レーダービームの部分ビームがレーダーデバイスのうちの1つによって受け取られると、これはレーダーデバイスによって光学的な信号に変換され、光導体を介して制御ユニットに伝送される。制御ユニットは、部分ビームから、受け取られたレーダービームを再構成するために、光学的な信号を処理することができる。これによって、各レーダーデバイスにおけるレーダービームの各部分ビームの処理が不要になり、ひいてはレーダーデバイスによってタイムスタンプが提供される必要がなくなるという利点が生じる。したがって、測定データの評価を一元的に制御ユニットにおいて行うことができる。したがって、個々のレーダーデバイスを同期させる必要はない。
【0016】
本発明の発展形態では、車両構成部分が車両の窓ガラスであることが設定されている。言い換えると、レーダーアンテナ装置は、車両構成部分として窓ガラスを含んでいる。これによって、レーダーアンテナ装置が比較的大きい表面を備える車両構成部分を有しているという利点が生じる。たとえば、個々のレーダーデバイスが、車両の窓ガラス上に配置されていることが設定されていてよい。レーダーデバイスは、たとえば、車両室内空間に面している、窓ガラスの面に配置されていてよく、たとえば、黒色プリントの領域に配置されていてよい。この場合には、複数のレーダーデバイスが、窓ガラス上に配置可能な光導体によって相互に接続されていてよい。
【0017】
本発明の発展形態では、レーダーデバイスが窓ガラス内に配置されていることが設定されている。言い換えると、レーダーデバイスが窓ガラス内部に配置され、これによってレーダーデバイスが窓ガラスによって少なくとも部分的に包囲されていることが設定されている。たとえば、窓ガラスが、複数の層で構成される多層窓ガラスであることが設定されていてよい。この場合には、レーダーデバイスは、窓ガラスの隣接する層の間に配置されていてよい。これによって、レーダーデバイスが、熱変動によってわずかにしか影響されない特定の位置に固定されているという利点が生じる。
【0018】
本発明の発展形態では、少なくとも1つの光導体が、少なくとも部分的に窓ガラス内に配置されていることが設定されている。言い換えると、少なくとも1つの光導体の少なくとも1つのサブセットが、窓ガラスによって包囲されている。たとえば、光導体として使用されるガラスファイバが、窓ガラスの2つの層の間に配置されていることが設定されていてよい。窓ガラス上または窓ガラス内のレーダーデバイスの接続のために、窓ガラスのくぼみに光導体を充填することも設定されていてよい。
【0019】
本発明の発展形態では、車両構成部分が車両のAピラー、Bピラーおよび/またはCピラーであることが設定されている。言い換えると、レーダーデバイスはAピラー、BピラーまたはCピラーを有している。これによって、レーダーデバイスを運転手には見えない領域に配置することができるという利点が生じる。
【0020】
本発明の発展形態では、車両構成部分が車体の要素であることが設定されている。言い換えると、レーダーアンテナ装置が、車体の構成部分を有していることが設定されている。たとえば、レーダーデバイスが、車両のフロントエプロン、フェンダまたはバンパの上またはその内部に配置されていることが設定されていてよい。これによって、異なる方向を指す車両領域を使用することができるという利点が生じる。したがって、360度の角度を、車両の複数のレーダーアンテナ装置によってカバーすることが可能になる。
【0021】
本発明の発展形態では、レーダーデバイスのうちの少なくとも1つのレーダーデバイスの主放射方向が、窓ガラスの外側表面に対してブリュースター角で配向されていることが設定されている。言い換えると、レーダーデバイスによって送出された部分ビームが、このレーダーデバイスの主放射方向においてブリュースター角で、窓ガラスと空気との間の境界面に入射するように、少なくとも1つのレーダーデバイスが配向されている。これによって、偏光されたレーダービームが窓ガラスから放出され、窓ガラスに入力されるレーダービームの割合が最小限に抑えられるという利点が生じる。
【0022】
本発明はまた、レーダーアンテナ装置を較正する方法を包含している。この方法では、制御ユニットによって、光学的な信号を用いて、レーダーデバイスのうちの第1のレーダーデバイスが、所定の部分ビームを放出するように駆動制御されることが設定されている。所定の部分ビームは、レーダーデバイスのうちの第1のレーダーデバイスによって送出される。部分ビームの少なくとも一部は窓ガラス内で反射され、この結果、窓ガラス内でさらに広がる。窓ガラス内で反射された部分ビームの一部は、レーダーデバイスのうちの第2のレーダーデバイスによって受け取られる。レーダーデバイスのうちの第2のレーダーデバイスによって、光学的な信号が制御ユニットに伝送される。制御ユニットによって、レーダーデバイスのうちの第1のレーダーデバイスとレーダーデバイスのうちの第2のレーダーデバイスとの間の距離が決定される。言い換えると、制御ユニットによって、レーダーデバイスのうちの第1のレーダーデバイスとレーダーデバイスのうちの第2のレーダーデバイスとの相対位置が決定される。これは、制御ユニットが、光学的な信号を用いて、制御ユニットのうちの第1の制御ユニットによって、所定の口径比対立(Kaliberration Streit)を放出させることによって行われる。部分ビームは、レーダーデバイスのうちの第1のレーダーデバイスによって窓ガラスへ放出される。窓ガラスの外側表面で、部分ビームの一部が、窓ガラスから出射する。部分ビームの残りの部分は、外側表面で、窓ガラスへ戻るように反射されてよい。部分ビームの一部は、複数回の反射によって、窓ガラス内を伝播し得る。反射された部分ビームは、レーダーデバイスのうちの第2のレーダーデバイスに入射し、この第2のレーダーデバイスによって検出されてよい。次に、レーダーデバイスのうちの第2のレーダーデバイスが光学的な信号を制御ユニットに送信する。ここで、これによって、たとえば、受け取られた部分ビームの位相位置に基づいて、2つのレーダーデバイス間の距離が決定されてよい。たとえば、レーダーデバイスのうちの複数のレーダーデバイスが、各部分ビームを放出するように、制御ユニットによって駆動制御されることが設定されていてよい。各レーダーデバイスによって送信される光学的な信号の評価を用いて、制御ユニットによって、レーダーアンテナ装置内の個々のレーダーデバイス間の幾何学的関係が決定されてよい。
【0023】
本発明はまた、少なくとも1つのレーダーアンテナ装置を備えた車両を包含している。車両は、たとえば、トラックまたは乗用車であってよい。車両が、たとえばレーダーアンテナ装置のうちの複数のレーダーアンテナ装置を有し得ることが設定されていてよく、この場合には、車両の周りの平面において360度の領域をカバーすることが可能である。
【0024】
本発明にはまた、本発明の車両の発展形態および本発明の方法の発展形態が属している。これらの発展形態は、本発明のレーダーアンテナ装置の発展形態に関連してすでに記載したような特徴を有している。したがって、ここでは、本発明の車両の相応の発展形態および本発明の方法の発展形態は再度説明されない。
【0025】
本発明はまた、記載された実施形態の特徴の組み合わせを包含している。
【0026】
本発明の実施例を以降に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】レーダーアンテナ装置を示す図である。
図2】レーダーアンテナ装置のアンテナ行またはアンテナ列におけるレーダーデバイスの可能な配置を示す図である。
図3】レーダーアンテナ装置の可能な実施形態を示す図である。
図4】レーダーアンテナ装置を備える車両の可能な実施形態を示す図である。
図5】レーダーアンテナ装置を較正する方法の可能なフローを示す図である。
【0028】
以降で説明する実施例は、本発明の有利な実施形態である。実施例では、実施形態の記載されたコンポーネントはそれぞれ、互いに独立して考慮されるべき、本発明の個々の特徴を表しており、これらは互いに独立しても本発明を発展させ、したがって、個別でも、または示されているもの以外の組み合わせにおいても、本発明の構成部分と見なされるべきである。さらに、記載された実施形態は、すでに記載された本発明のさらなる特徴によっても補足可能である。
【0029】
図では、機能が同じ要素にそれぞれ同じ参照記号が付けられている。
【0030】
図の説明
図1は、レーダーアンテナ装置1を示している。レーダーアンテナ装置1は、車両2用に設けられていてよく、少なくとも1つの車両構成部分3を有することができる。レーダーアンテナ装置1は、構成部分3の構成部分領域5上に配置可能な複数のレーダーデバイス4を有することができる。レーダーデバイス4は、少なくとも1つのアンテナ行6および少なくとも1つのアンテナ列7に配置されていてよい。いずれの場合も、直接隣接するレーダーデバイス4は、少なくとも1つのアンテナ行6において互いにそれぞれ水平距離8を有することができ、隣接するレーダーデバイス4は、アンテナ列7において互いにそれぞれ垂直距離9を有することができ、少なくとも1つのアンテナ行6は、レーダービーム12の方位角10を決定するために設けられていてよい。レーダービーム12の仰角11を決定するために、少なくとも1つのアンテナ列7が設けられていてよい。個々のレーダーデバイス4は、光学的な信号14を伝送するために、光導体13を介して制御ユニット15と接続されていてよい。個々のレーダーデバイス4は、レーダービーム12の部分ビーム12aを受け取ると、光学的な信号14を作成し、それを、評価のために制御ユニット15に伝送するように構成されていてよい。制御ユニット15は、たとえば、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラを有することができ、個々の光学的な信号14を受信および評価するように構成されていてよい。制御ユニット15が、光学的な信号14の融合によって、受け取られたレーダービーム12の方位角10および仰角11を決定することが設定されていてよい。レーダービーム12の仰角11が、アンテナ列7に配置されたレーダーデバイス4の光学的な信号の評価によって決定され、方位角10が、アンテナ行6におけるレーダーデバイス4の光学的な信号14の評価によって決定されることが設定されていてよい。起始点が、たとえば、各レーダーデバイス4でのレーダービームの受け取られた各部分ビーム12a間の位相差を介して決定されてよい。制御ユニット15における評価は、個々のレーダーデバイス4における評価を必要としないという利点を有している。これによって、通常、評価される信号に同期タイムスタンプを提供するために必要とされる、個々のレーダーデバイス4間の同期が省かれる。
【0031】
図2は、レーダーアンテナ装置のアンテナ行またはアンテナ列におけるレーダーデバイスの可能な配置を示している。レーダーアンテナ装置1は、たとえば、車両室内空間に面している、窓ガラスの面に配置可能な、レーダーデバイス4のうちの複数のレーダーデバイス4を有することができる。ここでこれらのレーダーデバイス4はそれぞれ、送出されるレーダービーム12の提供および/または受け取りのためのレーダーアンテナ16およびレーダーチップ17を含んでいてよい。レーダーデバイス4は、アンテナ行6もしくはアンテナ列7に沿って所定の位置に配置されていてよく、その結果、これらは、波長λの半分の整数倍である、それぞれの距離8、9を互いに有している。個々のレーダーデバイス4が、いわゆるスパースアレイ配置でアンテナ行6および/またはアンテナ列7に沿って配置されていることが設定されていてよい。これは、個々の位置が占有されていないことを意味しており、したがってこれはレーダーアンテナ装置1の完全に占有されたアレイではない。これによって、レーダーデバイス4の数が減るという利点が生じる。したがって、所定の配置によって、所定の分解能を提供することができ、さらにこの際に、レーダーデバイス4の数を減らすことができる。個々のレーダーデバイス4によって送出された個別ビーム12aを重ね合わせることによって、レーダービーム12は、結果として生じるレーダービームとして提供され得る。したがって、これはグループアンテナである。レーダーデバイス4は、各レーダーチップ17および各レーダーアンテナ16を有することができる。レーダーデバイス4は、窓ガラス上に直接配置されていてよい。レーダーデバイス4によって送出された各個別ビーム12aは、車両構成部分3の材料を貫通し、干渉によって、グループアンテナに特徴的な、レーダービーム12によるローブを、レーダーアンテナ装置1の遠方界において形成する。制御ユニット15によって各個別ビーム12aの位相位置を定めることによって、たとえば、レーダービーム12の仰角11が定められる。入射角θ1がブリュースター角βと一致するように、自身の各個別ビーム12aを車両窓ガラスの境界面に放射するように、レーダーデバイス4のうちの1つまたは複数のレーダーデバイス4が配向されていることが設定されていてよい。この場合、個別ビームの一部は、出射角θ2で、偏光された形態で出射される。残りの部分は、反射角θ3で、窓ガラスに入力されてよい。
【0032】
隣接するレーダーデバイス4間の距離8、9は相違していてよい。たとえば、距離8、9のそれぞれが波長の半分ではなく、波長λの半分の整数倍であることが設定されていてよい。
【0033】
図3は、レーダーアンテナ装置1の可能な実施形態を示している。レーダーデバイス4が、車両構成部分3の内部に配置され得ることが設定されていてよい。レーダーデバイス4は、レーダービーム12の方位角10の決定を規定または検出することができるようにするために、アンテナ行6に配置されていてよい。光学的な信号14を介した制御ユニット15による各レーダーデバイス4の所定の駆動制御によって、所定の方位角10を有する、結果として生じるレーダービーム12を、干渉を介して生成することが設定されていてよい。レーダービームの受け取り時に、各レーダーデバイス4によって、光学的な信号14が制御ユニット15に伝送されてよい。制御ユニット15は、光学的な信号14の位相位置からレーダービーム12の方位角10を計算することができる。たとえば、窓ガラスが多層窓ガラスであることが設定されていてよく、この場合にはレーダーデバイス4および少なくとも1つの光導体13の一部が窓ガラス内に配置され得ることが設定されていてよい。したがって、これらは、たとえば、窓ガラスの2つの層の間に配置されていてよい。これによって、個々のレーダーデバイス4が自身の位置に固定されているという利点が生じる。個々のレーダーデバイス4は、少なくとも1つの光導体13を介して、制御ユニット15と接続されていてよい。この配置は、レーダーデバイス4が保護された位置に配置されているという利点を有している。
【0034】
図4は、レーダーアンテナ装置を備えた車両の可能な実施形態を示している。レーダーアンテナ装置1が、車両2の異なる構成部分5上に配置され得ることが設定されていてよい。たとえば、レーダーアンテナ装置1が、車両のフロントガラス、車両2のリアガラスおよびサイドガラスの上またはその内部に配置され得ることが設定されていてよい。たとえば、ドア、ショックアブソーバまたはABCピラー内に1つのレーダーアンテナ装置1が配置されていることが設定されていてもよい。車両2の種々の車両構成部分5での複数のレーダーアンテナ装置1の使用によって、レーダーアンテナ装置1による360度のカバーが可能になり得るという利点が生じる。
【0035】
したがって、この図は、種々の車両構成部分5に複数のレーダーアンテナ装置1を備えた車両2を示している。レーダーアンテナ装置1はレーダーデバイス4のうちの複数のレーダーデバイス4を有することができ、これらはともになって、車両2の周りの360度の角度範囲を検出することができるレーダーアンテナ装置1を形成することができる。この目的のために、フロントガラス、リアガラスおよび/またはサイドガラスなどの、車両2の窓ガラスでのレーダーデバイス4の配置が設定されていてよい。同様に、レーダーデバイス4が、ショックアブソーバまたはフェンダなどの車体構成部分に配置されていてよい。Aピラー、Bピラー、Cピラーに配置することによって、運転手の視界を制限することのない、車両での配置が可能になる。フロントガラスでの配置は次のようにされていてよい。すなわち、少なくとも1つのアンテナ列7と少なくとも1つのアンテナ行6とが、互いに、たとえば60度~120度の角度を有し、グループアンテナの平面に広がるようにされていてよい。フロントガラスの各エッジに、アンテナ行6またはアンテナ列7が割り当てられており、これによって、フロントガラスの領域がレーダーデバイス4によって画定されていることが設定されていてもよい。レーダービーム12の反射が行われる対象物からの距離が測定される場合、周辺の3次元検出が実現され得る。
【0036】
図5は、レーダーアンテナ装置を較正する方法のフローを示している。レーダーアンテナ装置1のレーダーデバイス4が、車両構成部分5である窓ガラス内に配置され得ることが設定されていてよい。隣接するレーダーデバイス4間の正確な距離8、9を決定できるようにするために、記載される方法が実施されてよい。
【0037】
この方法の第1のステップS1において、制御ユニット15は、レーダーデバイス4のうちの第1のレーダーデバイスによる部分ビーム12aの送出のために、少なくとも1つの光導体を介してレーダーデバイス4のうちの第1のレーダーデバイスに光学的な信号14を送信することができる。
【0038】
ステップS2において、レーダーデバイス4のうちの第1のレーダーデバイスは、光学的な信号14を受信し、部分ビーム12aを窓ガラスへ送出することができる。
【0039】
ステップS3において、部分ビーム12aは、窓ガラスと空気との境界面に入射し、部分的に反射されてよく、その結果、部分ビーム12aの一部は、反射されて、窓ガラスに戻る。反射されて戻された部分ビーム12aは、窓ガラスと空気との間のさらなる境界面に入射し、再び、部分的に反射されて窓ガラスに戻され得る。これによって、部分ビーム12aが窓ガラス内で伝播することが可能になる。
【0040】
ステップS4において、部分ビーム12aは、レーダーデバイス4のうちの第2のレーダーデバイスによって検出されてよい。次に、レーダーデバイスのうちの第2のレーダーデバイスは、少なくとも1つの光導体13を介して光学的な信号14を制御ユニット15に送信することができる。
【0041】
ステップS5において、制御ユニット15は、光学的な信号14を受信し、たとえば、部分ビーム12aの放射のための光学的な信号14の送信と、レーダーデバイス4のうちの第2のレーダーデバイスの光学的な信号の受信との間の時間的な間隔から、または位相差を介して、レーダーデバイス4のうちの第1のレーダーデバイスとレーダーデバイス4のうちの第2のレーダーデバイスとの間の距離8、9を決定することができる。
【0042】
自動運転には、でき得る限り確実な周辺認識が不可欠である。ここでは、周辺は、レーダー、LiDARおよびカメラなどのセンサを使用して検出される。周辺環境の全体的な360度の3D検出が特に重要であるため、すべての静的な対象物および動的な対象物が検出される。特にLiDARは、冗長的で、ロバストな周辺検出において重要な役割を果たす。なぜなら、このタイプのセンサは、周辺検出において距離を正確に測定することができ、分類にも使用可能だからである。しかし、これらのセンサにはコストがかかり、その構築において費用がかかる。特に、360度の3D周辺検出には問題がある。なぜなら、これを保証するために、通常、多くの個々の光源と検出器要素とともに動作する多くの、比較的小さい個別センサが必要である、または大きなセンサが設置されるからである。しかし、依然として、比較的小さいタイプのセンサの空間寸法も、10cm×10cm×10cmの範囲にあり、見えない設置位置はまだ可能ではない。さらに、各センサから個別に収集された測定データは、個々に処理および/または融合されなければならない。ここでは、特に、正確なタイムスタンプがリアルタイム処理にとって重要であり、これは、データ検出および分類をより複雑にする。パッシブセーフティシステムの分野、ならびにレベル4および5の自動運転では、道路利用者を区別することができることは、乗員と道路利用者の両方を保護するために特に重要である。これには、確実な周辺認識が不可欠である。これを保証するために、周辺は3つの空間次元すべてにおいて、可能な限り高い分解能で認識されなければならない。最新のカメラおよびLiDARシステムは、この周辺認識を保証することができるが、その質は、霧、雪または暗闇などの視界不良の状況において影響を受ける、または完全に機能しなくなる。これに対して、レーダーセンサはこれらの制限を受けないが、高解像度の3Dイメージングのために、多数の種々のセンサを備えたアレイ配置で配置されなければならい。さらに、これらは、その送信時間と受信時間とに関して同期されなければならず、これは、技術的には極めて困難である。したがって、個々のレーダーセンサが可能な限り、小さく、シンプルで、柔軟性があり、フォールトトレラントであり、ロバストであり、かつ安価であるのは有利である。この目的のために、レーダーセンサ自体に設置される電子機器の数ができるだけ少なくなければならず、かつデジタルデータ処理は中央制御ユニット内で分散して実行されなければならない。大量生産される従来のレーダーシステムは、10度~4度の方位角での角度分離性を有している。そのうえ、仰角での角度分離性は通常はさらに低いため、レーダーデータ用のイメージング方法を使用することはできない。現在のLiDARシステムの角度分離性は0.1度の範囲にあり、これは、現在のレーダーシステムでは達成不可能である。
【0043】
車に設置されている現在のレーダーセンサの寸法は通常10cm×10cmである。これによって得られる最大角度分解能は約2度であり、2D周辺認識しか可能ではない。現在のレーダーセンサは車両に対して、小さい開口のもとで、過度に大きい空間寸法を有しており、これによって、分解能は過度に低くなる。これでは、自動運転のための十分な周辺認識を行うことはできない。複数のセンサの設置は、それらの時間的な同期を必要とするが、これは技術的に困難であり、かつコストがかかる。ナノレーダーは5cm×5cmの範囲の寸法を有しており、自身のコンパクトな構造様式によって容易に車両内に組み込むことができる。ナノレーダーにも同じ欠点がある。さらに、ナノレーダーの到達範囲は現在約45mに制限されており、これは特に都心部の場面設定では短すぎる。開口合成法(英語で“Synthetic Aperture Radar”、SAR)法によって、分解能をcmの範囲まで上げることができる。SAR法は、進行方向に対して垂直にのみ可能である。この方法では、走行方向での、または走行方向とは反対方向での予見は不可能である。さらに、測定後に必要なデータ処理は非常に多くの計算を要する。
【0044】
センサ内に多数の電子部品を設置することによって、センサの空間寸法とコストとが増加するため、多くのセンサを使用することは不可能である。さらに、センサの時間的な同期は技術的に困難である。アンテナの分散およびその後の中央制御ユニット内での分散デジタルデータ処理によって開口が生じる場合には、損失が数dBになるので、送信信号および受信信号の電気的な伝送には問題がある。
【0045】
さらに、複数の個々のセンサを使用する必要がある。センサの空間寸法が大きいため、車両に隠して設置することはできないので、センサは見える状態のままになる。複数の個々のセンサを使用することによって、個々のセンサの同期のために比較的高いコストが必要になる。データの融合にも費用がかかり、エラーが発生しやすくなる。なぜなら、一元的なデータ検出が行われるのではなく、各個々のセンサが測定データを自身で検出し、転送するからである。その結果、コストが高くなる。
【0046】
レーダーアンテナ装置は、レーダーデバイスとしてフォトニクス統合されたレーダーチップを利用して、大きなレーダーアレイを展開する。
【0047】
レーダーデバイスは、少なくとも部分的に、少なくとも1つの光導体を介して制御ユニットと接続されている。制御ユニットは、中央の光学的な送信ユニットを有しており、これは光学的なレーダードライバ信号を提供し、これを少なくとも1つの光導体に入力するように構成されている。レーダーデバイスは、各光学的な受信ユニットおよびレーダー送信機を有しており、ここで、光学的な受信ユニットは、少なくとも1つの光導体を介して光学的なレーダードライバ信号を受信し、これを電気的なレーダードライバ信号に変換し、これをレーダー送信機の駆動のために提供するように構成されている。レーダーデバイスは、レーダー受信機、混合機および光学的な変調ユニットを有しており、混合機は、レーダー受信機によって受信されたレーダーエコー信号を、電気的なレーダードライバ信号と混合するように構成されており、変調ユニットは、混合された信号を、変調のために、光学的なレーダードライバ信号に載せ、少なくとも1つの光導体に入力するように構成されている。中央ユニットは、さらに、中央の光学的な受信ユニットと評価ユニットとを含んでおり、評価ユニットは、中央の光学的な受信ユニットによって受信された、変調のために載せられた信号を評価し、そこから得られたレーダー情報を出力するように構成されている。
【0048】
本発明の基本的な考え方は、中央ユニットとレーダー送信ユニットもしくはレーダー受信ユニットとの間の信号伝送を光学的に実現することである。このために、レーダードライバ信号が、中央ユニットにおいて光学的に生成され、少なくとも1つのガラスファイバを介して少なくとも1つのレーダー受信ユニットおよび/または少なくとも1つのレーダー送信ユニットに伝送される。次に、レーダー送信ユニットにおいて、光学的なレーダードライバ信号が電気的なレーダードライバ信号に変換され、レーダー送信機の駆動のために使用される。レーダー受信機によって受信されたレーダーエコー信号は、レーダー受信ユニットの混合機において、電気的なレーダードライバ信号と混合される。次に、混合された信号が、変調ユニットによって、変調のために光学的なドライバ信号に載せられ、ガラスファイバに入力され、中央ユニットに送り返される。変調のために載せられた光学的な信号が中央ユニットにおいて受信され、評価ユニットによって評価される。次に、結果が、レーダー情報として提供される。本発明の利点は、レーダーエコー信号の生成および受信のために、光学的な構成部分と電気的な構成部分とがともに統合されることである。レーダードライバ信号の生成は、光学的に、かつ中央ユニットにおいて一元的に行われ、レーダー送信ユニットもしくはレーダー受信ユニットへの伝送も光学的に行われる。この場合には、電気的な伝送とは対照的な、ガラスファイバを介した伝送の際の桁違いに少ない、信号の減衰が利用可能である。減衰が少なくなるので、多数のレーダー送信ユニットとレーダー受信ユニットとにまとめて、レーダードライバ信号を供給することができる。さらに、ガラスファイバは、相応の電気的な線路よりも格段に軽量であり、電磁界などの外部干渉の影響を受けにくくなっている。
【0049】
レーダードライバ信号の一元的な光学的な生成のさらなる利点は、レーダー送信ユニットおよびレーダー受信ユニットを、小さい寸法のコンパクトな構造様式で製造および提供することができることである。これによって、設置スペースとコストとを節約することができる。本発明の解決策では、レーダーシステムの複雑性は中央ユニットに存在し、もはや個々のレーダー送信ユニットもしくは個々のレーダー受信ユニットには存在していない。これによって、個々のレーダー送信ユニットおよびレーダー受信ユニットが容易かつ安価に製造され、欠陥が発生した場合に容易かつ迅速に交換される。
【0050】
レーダーアンテナ装置は、個々のレーダーチップの、フロントガラス、Aピラー、Bピラー、Cピラー、フェンダ、バンパまたは同様の構造物の後方またはその内部での隠された設置を可能にする。フロントガラス内の設置は、フロントガラスが必要な剛性を有しており、振動などによる個別アンテナ要素の相互の位置変化が、バンパと比べて小さいため、有利である。
【0051】
アンテナを備えたレーダーチップは、ここで、フロントガラスの内側(運転手室)に直接固定されてよい、またはレーダーチップは窓ガラス材料内に直接統合されてよい。どちらの場合も、ビームの放出は外部へと行われる。レーダーチップの大面積の配置によって、0.1度以下の角度分離性が得られるように、大きな開口が広げられる。したがって、レーダーデータ用の画像処理アルゴリズムの使用が可能になる。
【0052】
ブリュースター角での放射を目的としたレーダーアンテナの配向によって、窓ガラスと空気との移行部でのTxレーダーチップの反射を最小限に抑えることができる。同じことがRxチャネルに当てはまる。同時に、レーダービームのp偏光成分を抑制することができる。窓ガラスに入力された残りのビームを、たとえば、チップ同士の相対位置を求めることによって、個別チップの較正ために使用することができる。アレイのアンテナは、必ずしも波長の半分の整数倍の距離に配置されている必要はなく(完全に占有されたアレイ)、アンテナの位置の適切な選択の際には、間隙も含み得る。このスパースアレイアプローチによって、ビーム特性はわずかにしか変更されないので、依然として、0.1度までの高い角度分離性を明確に実現することができる。レーダーチップと光学的なキャリア信号との光学的な接触のために、導波体を窓ガラスに直接統合することができる。
【0053】
大きな開口全体を形成する個々のレーダーチップを設置することによって、LiDARに匹敵する分解能が可能になる。スパースアレイ構成によって、分解能を大幅に制限することなく、処理されるデータの量を減らすことができる。レーダーデバイスの寸法が小さいので、レーダーデバイスを、外側または内側から見えないように、隠された位置に配置することができる。窓ガラス内部または窓ガラスの後方での統合は、黒色プリントにおいても可能である。ABCピラーまたはフロントエプロンにおける統合が可能である。制御ユニットにおいて、レーダーデータに画像処理アルゴリズムを直接適用することが可能である。レーダーデバイスを車両の多数の種々の構成部分に配置することによって、LiDARに匹敵する高い分解能で、広い視野をカバーすることが可能になる。窓ガラスでは、さらに、レーダーデバイスを制御ユニットに接続するために、光学的な導波体を窓ガラスに直接統合することができる。レーダーデバイスが窓ガラス内に配置されている場合、個別チップの較正のために、窓ガラスに入力された残りのビームを使用することが可能である。
【0054】
既知の方法と比較して、記載されたレーダーアンテナ装置は、大量生産で利用可能な、成熟し、確立された技術が製造時に使用されるため、安価である。さらに、これは、比較的シンプルな構造を有している。スパースアレイ配置によって、個別センサの数を減らすことが可能になる。窓ガラスに入力されたレーダービーム成分を利用することによって、レーダーアンテナ装置1の較正が容易になる。光学的な結合によって、個々のアンテナユニットの同期が容易になる。画像処理アルゴリズムをレーダーデータに直接適用することが可能である。
【0055】
すべてのレーダーアプリケーション、たとえば製造ロボットの保護においても。
【0056】
この例は全体的に、本発明によって、車両上のレーダーデバイスの配置の可能性がどのように提供されるかを示している。
【符号の説明】
【0057】
1 レーダーアンテナ装置
2 車両
3 車両構成部分
4 レーダーデバイス
5 構成部分領域
6 アンテナ行
7 アンテナ列
8 水平距離
9 垂直距離
10 方位角
11 仰角
12 レーダービーム
12a 個別ビーム
13 光導体
14 光学的な信号
15 制御ユニット
16 レーダーアンテナ
17 レーダーチップ
S1-S5 較正ステップ
α アンテナ行とアンテナ列との間の角度
λ 波長
β ブリュースター角
θ1 入射角
θ2 出射角
θ3 反射角
図1
図2
図3
図4
図5