(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】フィルタを備えた血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 60/888 20210101AFI20240724BHJP
A61M 60/139 20210101ALI20240724BHJP
A61M 60/174 20210101ALI20240724BHJP
A61M 60/216 20210101ALI20240724BHJP
A61M 60/237 20210101ALI20240724BHJP
A61M 60/416 20210101ALI20240724BHJP
A61M 60/804 20210101ALI20240724BHJP
A61F 2/01 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
A61M60/888
A61M60/139
A61M60/174
A61M60/216
A61M60/237
A61M60/416
A61M60/804
A61F2/01
(21)【出願番号】P 2022010556
(22)【出願日】2022-01-27
(62)【分割の表示】P 2018549843の分割
【原出願日】2017-03-21
【審査請求日】2022-02-24
(32)【優先日】2016-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジース トルステン
(72)【発明者】
【氏名】アボウロースン ワリード
(72)【発明者】
【氏名】ニックス クリストフ
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02239675(GB,A)
【文献】国際公開第2015/170733(WO,A1)
【文献】特開2010-99215(JP,A)
【文献】特表2006-511256(JP,A)
【文献】特表2013-521100(JP,A)
【文献】特表2004-506490(JP,A)
【文献】特表平06-505416(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0018912(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0208297(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/185043(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/00-60/90
A61F 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管に経皮挿入される血管内血液ポンプ(1)であって、血流入口(3)を備えた近位部分(5)および血流出口(4)を備えた遠位部分(6)を有するポンプセクション(2)と、血液を前記血流入口(3)内へかつ前記血流出口(4)へ向けて流す羽根車と、を含み、
前記血液ポンプ(1)は、前記ポンプセクション(2)の前記近位部分(5)と結合され、前記血液が前記ポンプセクション(2)に入る前に前記血液をろ過するように前記血流入口(3)に対して配置されている、少なくとも1つのフィルタ(
40,50)をさらに含
み、
前記少なくとも1つのフィルタ(40,50)は、約40μmから約120μmの幅を有する複数の孔を含む
、ことを特徴とす
る血管内血液ポンプ。
【請求項2】
請求項
1に記載の血液ポンプであって、前記少なくとも1つのフィルタ(40)は、前記血流入口に形成されている
、ことを特徴とす
る血液ポンプ。
【請求項3】
請求項1に記載の血液ポンプであって、前記少なくとも1つのフィルタ(40)
の前記孔は、前記血流入口を形成す
る、ことを特徴とす
る血液ポンプ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記孔は、長手方向に延び、支柱によって分離された細長いスロットである、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項5】
請求項
1から3のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記少なくとも1つのフィルタ(40)は、前記ポンプセクション(2)と一体的に形成されている
、ことを特徴とす
る血液ポンプ。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記少なくとも1つのフィルタ(40)は、血流入口(3)へのインサートとして設けられる、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項7】
患者の血管に経皮挿入される血管内血液ポンプ(1)と、少なくとも1つのフィルタ(50)と、を含むキットであって、前記血液ポンプ(1)は、血流入口(3)および血流出口(4)を備えたポンプセクション(2)と、血液を前記血流入口(3)内へかつ前記血流出口(4)へ向けて流す羽根車と、を含み、前記フィルタ(50)は、前記血液が前記ポンプセクション(2)に入る前に前記血液をろ過するように前記血流入口(3)に対して配置されるようにサイズ決めおよび成形され
、前記フィルタ(50)の孔は、約40μmから約120μmの幅を有する、ことを特徴とするキット。
【請求項8】
請求項
7に記載のキットであって、前記フィルタ(50)は、前記ポンプセクション(2)の周りに設置されるようにサイズ決めおよび成形されたスリーブとして形成されている
、ことを特徴とす
るキット。
【請求項9】
請求項
7または
8に記載のキットであって、前記フィルタ(50)は、その長
手方向に沿っ
たスリットを
有し、これにより、前記血液ポンプ(1)の中心軸
を横断する方向から前記血液ポンプ(1)
の外側に前記フィルタ(50)を配置できるようになる、ことを特徴とす
るキット。
【請求項10】
請求項7または8に記載のキットであって、前記フィルタ(50)は、周方向に閉じたスリーブである、ことを特徴とするキット。
【請求項11】
請求項7
または8に記載のキットであって、前記ポンプセクション(2)は、凹部または肩部を含み、このため、前記フィルタ(50)は、前記血流入口(3)を覆うように前記凹部内にまたは前記肩部に接して設置され得
る、ことを特徴とす
るキット。
【請求項12】
請求項11に記載のキットであって、前記凹部は、フィルタ(50)をスナップ嵌めで受容するようにサイズ決めおよび成形された周方向凹部(53)である、ことを特徴とするキット。
【請求項13】
請求項11に記載のキットであって、前記フィルタ(50)の外側周辺部と前記ポンプセクション(2)の外側周辺部は、前記フィルタ(50)が前記凹部内にまたは前記肩部に接して設置されたときに、同じ高さになる、ことを特徴とするキット。
【請求項14】
請求項7または8に記載のキットであって、前記フィルタ(50)は、前記ポンプセクションにプレス嵌めされる、またはプレス嵌めされるように構成され、前記フィルタ(50)の内径は、前記ポンプセクション(2)の外径に実質的に対応する、ことを特徴とするキット。
【請求項15】
請求項14に記載のキットであって、前記フィルタ(50)の遠位端部はテーパ状である、ことを特徴とするキット。
【請求項16】
請求項7または8に記載のキットであって、前記フィルタ(50)は金属部材である、ことを特徴とするキット。
【請求項17】
請求項7または8に記載のキットであって、前記フィルタ(50)は弾性材料または形状記憶材料で形成される、ことを特徴とするキット。
【請求項18】
請求項17に記載のキットであって、前記形状記憶材料はニチノールである、ことを特徴とするキット。
【請求項19】
請求項7または8に記載のキットであって、孔のサイズが異なる複数のフィルタ(50)を含む、ことを特徴とするキット。
【請求項20】
請求項7または8に記載のキットであって、前記血液ポンプは、下大静脈(IVC)を通じて患者の心臓(H)の右心室(RV)に挿入されるように構成された、右心室血液ポンプである、ことを特徴とするキット。
【請求項21】
請求項7または8に記載のキットであって、前記ポンプセクション(2)は、前記血流入口(3)が下大静脈(IVC)に配され、前記血流出口(5)が肺動脈(PA)内に配されるように、患者の心臓(H)の右心室(RV)を通って延びるように構成される、ことを特徴とするキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の血管内の血流を支援するための、血液ポンプ、特に患者の血管に経皮挿入される血管内血液ポンプに関する。本発明は特に、大静脈から右心室を通って肺動脈に入る血流を支援するための右心室血液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
血管内血液ポンプは、カテーテルによって大動脈または大静脈などの患者の血管に挿入され、心臓弁に通され、カテーテルポンプとも呼ばれ得る。血液ポンプは、典型的には、血流入口および血流出口を備えたポンプセクションを含む。血流入口から血流出口への血流を引き起こすために、典型的には、羽根車または回転子が、血液を運ぶため回転軸の周りでポンプケース内部に回転可能に支持されている。血液ポンプは、ポンプセクションに隣接して血液ポンプに含まれるモータによって駆動され得るか、または、代わりに、患者の身体の外側にあるモータによって駆動され得、この場合、モータは、カテーテルを通って延びる可撓性駆動シャフトによって羽根車に接続される。
【0003】
右心室血液ポンプは、カテーテルによって、下大静脈または上大静脈を通って患者の心臓の右心室を通って肺動脈に挿入される。典型的には、血液ポンプの血流入口は、右心房、大静脈または右心室の内側に設置され、ポンプセクションは、三尖弁、右心室および肺動脈弁を通って肺動脈内へ延びる。
【0004】
発生した任意の血餅または血栓は大静脈から肺動脈まで運ばれる場合があるが、これは、血栓が最終的に肺循環に行くだけであるので、患者に対して深刻な損害は引き起こさない。より重要なことには、血餅は、血液ポンプを詰まらせる傾向があり、よって、血液ポンプの故障を引き起こす場合があり、これは避けなければならない。不規則なニチノールワイヤのボールなど、大静脈内に設置され得るフィルタが知られている。しかしながら、血液ポンプ療法に付属的にこのようなフィルタを取り扱うことは煩わしい場合があり、例えば、それらの挿入および特に取り外しは、追加のアクセスポイントを必要とすることになる。いかなるアクセスポイントも、出血および感染の高いリスクを伴う。成果のためには、血液ポンプとフィルタとの間の正確な整列が必須であり、また、これはエコーまたはX線による可視化によって確認される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、血餅による詰まりによって生じる装置故障または溶血の増大のリスクが低下した血液ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、独立請求項1の特徴を有する血液ポンプによって本発明に従って達成される。本発明の好適な実施形態およびさらに進化したものが、独立請求項1に従属する請求項において特定される。
【0007】
一実施形態では、血液ポンプは、少なくとも1つのフィルタを含む。フィルタは、ポンプセクションの近位部分と結合または接続されており、血液が血流入口に入る前に血液をろ過するように血流入口に対して配置されている。少なくとも1つのフィルタと血液ポンプとのこの組み合わせは、血餅が血液ポンプに入ったり、ポンプの流入開口部に付着したりすることを防ぐ。これは、血餅による詰まりによって生じる血液ポンプの故障を防ぐことができる。血液ポンプの自由端部は、典型的には遠位端部と呼ばれるが、カテーテルは、近位端部から延びる。よって、この実施形態では、血液は、近位から遠位の方向に流れる。
【0008】
好ましくは、フィルタは、メッシュ構造体、特に規則正しいメッシュ構造体を含む。メッシュ構造体は、支柱によって画定され分離された複数の孔を含み得る。これらの孔は、円形、丸い、細長い、矩形または多角形など、任意のサイズおよび形状を有し得る。規則正しい構造体は、サイズ、形状、もしくは距離などの、等しいかつ/または反復する寸法の構造体を含む。規則正しいメッシュ構造体を提供することで、フィルタに所定のフィルタ特性を与えることが可能となり、例えば、所定のサイズの血餅は、フィルタによって保持され得るが、より小さい血餅はフィルタを通過することができ、このことは、不規則な形状のフィルタと比べて有利となり得る。フィルタの孔は、約20μm~約240μm、好ましくは約40μm~約120μmの平均サイズを有し得る。
【0009】
一実施形態では、フィルタは、圧縮構成から拡張構成へと拡張可能である。特に、フィルタは、血液ポンプの動作中にフィルタが配置される血管の内壁に当接するように、少なくとも半径方向に拡張可能であってよい。フィルタは、例えば導入器シースの内側で、圧縮構成において血管に挿入され得る。拡張すると、フィルタは、血管内壁に当接して血管を閉じ、ろ過されていない血液がフィルタを迂回するのを防ぐことができる。拡張可能装置は、圧縮されるか、または潰され(collapsed)得る場合に、取り外しを容易にすることもできる。
【0010】
フィルタの少なくとも一部、またはフィルタ全体は、形状記憶材料、例えば形状記憶合金、好ましくはニチノールを含み得るか、またはこれで作られ得る。プラスチックの形状記憶材が使用されてもよい。形状記憶材料は、フィルタが拡張特性を示すものである場合に好ましい。フィルタは、圧縮された後、例えば温度の影響を受けて、その拡張構成に戻る。
【0011】
一実施形態では、フィルタは、フィルタがポンプセクションから近位に離間するように、ポンプセクションの近位部分から延びる細長い延長部材に取り付けられる。延長部材は、ポンプセクションの一部、特にその近位部分であってよい。延長部材は、好ましくはカテーテルを含む。特に、延長部材は、カテーテルによって形成され得る。
【0012】
フィルタは、延長部材に固定して取り付けられ得る。代わりに、フィルタは、延長部材の長さに沿って変位可能となるように延長部材に着脱可能に取り付けられ得る。変位可能なフィルタは、例えば下大静脈内で、その位置を調節するために延長部材に沿って動かされてよく、または、延長部材に沿ってフィルタをスライドさせることによって患者から取り出されてよい。よって、フィルタは、例えば詰まっていて掃除または交換しなければならない場合に、血液ポンプを患者から取り出す必要なしに、取り出され得る。
【0013】
一実施形態では、フィルタは、遠位端部および近位端部を有し、フィルタの遠位端部は、延長部材に取り付けられ、近位端部は、血流がフィルタに入るための入口開口部を形成するために、開口端部である。特に、フィルタは、近位端部から遠位端部に向かってテーパー状になってよく、また、円錐形状または漏斗形状を形成し得る。言い換えれば、フィルタの断面寸法は、血流の方向に縮小し得る。フィルタの遠位端部は、延長部材に取り付けられることによって閉じられ得るが、近位端部は、フィルタの入口開口部を形成することができ、血管の内壁に当接することができる。
【0014】
前述したとおり、フィルタは、好ましくは、複数の孔を画定する、メッシュ構造体、特に規則正しいメッシュ構造体を含む。好ましくは、遠位端部にある孔が、近位端部にある孔より小さい断面寸法を有する。これは、フィルタが漏斗形状を有するようにフィルタの遠位端部が延長部材に取り付けられていて近位端部が開口端部を形成する、前述の実施形態では特に有利である。血餅は、フィルタの先端部、すなわち遠位端部にたまるが、フィルタのより近位の領域は、血液が通過するよう依然として開いている。先端部内の血餅は、以下でさらに詳細に説明するように、例えば吸引および/または溶解によって、除去され得る。
【0015】
フィルタは、フィルタの近位端部に連結されかつ近位方向に延びる保持装置を含み得、このため、保持装置が作動すると、フィルタが拡張構成から潰れた構成へと潰れる。一実施形態では、保持装置は、フィルタの開口近位端部に取り付けられた、少なくとも1つのフィラメント、好ましくは、3つ、4つ、5つ、または6つなど複数のフィラメントを含み得、このため、少なくとも1つのフィラメントを引っ張ると、フィルタが潰れる。フィラメントは、フィルタの周辺部の周りで規則的に離間され得る。保持装置を設けることで、フィルタの取り外しを容易にする。例えば、フィルタは、潰れることができ、また、取り外しのため導入器シース内へと後退され得る。
【0016】
一実施形態では、先の実施形態を参照して説明した特徴部に代わる手段として、またはそれに加えて、フィルタの近位端部は、血流入口に対して近位で血液ポンプに取り付けられ得る。特に、フィルタは、血流入口を少なくとも部分的にまたは完全に覆って延びることができる。さらに、フィルタの遠位端部も、フィルタが血流入口を囲むように血流入口に対して遠位で血液ポンプに取り付けられ得る。言い換えれば、血流入口に対して近位で配されるのではなく、フィルタは、血流入口を直接覆うかまたは囲むことができる。先の実施形態に見られるように、フィルタは、メッシュ構造体を含み得、拡張可能であってよく、かつニチノールなどの形状記憶材料を含み得る。この実施形態では、フィルタは、例えばボール形状であってよいか、または最も大きい直径のところで接続された2つの円錐体で形成され得る。当然、他の形状が適切となり得る。
【0017】
一実施形態では、血液ポンプは、連続して配置された少なくとも2つのフィルタを含み得る。フィルタは、特に前述した実施形態のうちのいずれかに従って、同一または別様に設計され得る。例えば、粗いフィルタの後に細かいフィルタが続くものが設けられてよく、すなわち、遠位フィルタのメッシュ構造体が近位フィルタに比べより小さい孔を有する、孔を備えたメッシュ構造体を有するフィルタが設けられ得る。
【0018】
フィルタのうちの少なくとも1つは、血液ポンプに固定して取り付けられ得、フィルタのうちの少なくとも別の1つは、前述したように延長部材の長さに沿って変位可能となるように延長部材に着脱可能に取り付けられ得る。好ましくは、固定して取り付けられたフィルタは、着脱可能に取り付けられたフィルタに対して遠位に配される。あるいは、フィルタそれぞれは、延長部材の長さに沿って変位可能となるように、血液ポンプ、特にカテーテルなどの延長部材に着脱可能に取り付けられ得る。フィルタそれぞれが固定して取り付けられることも可能となり得る。
【0019】
連続して配置されるのではなく、動作中に血流入口につながる異なる血管に独立して設置されるように配置された少なくとも2つのフィルタが、設けられ得る。例えば、血管のうちの1つは患者の下大静脈であり、血管のうちの別の1つは患者の上大静脈である。少なくとも2つのフィルタは、血液ポンプに接続された少なくとも1つの第1のフィルタ、および血液ポンプから離れており、別個のカテーテルに取り付けられ、かつこれと共に挿入され得る少なくとも1つの追加のフィルタとして、設けられ得る。好ましくは、少なくとも1つの追加のフィルタは、上大静脈内に設置されるように配置されている。別の実施形態では、追加のフィルタは、下大静脈内に設置されるように配置され得、血液ポンプに取り付けられたフィルタは、上大静脈内に設置されるように配置される。少なくとも1つの追加のフィルタは、前述のフィルタのうちのいずれかと同じように形成され得る。
【0020】
一実施形態では、血液ポンプは、血圧を測定するための少なくとも1つの圧力センサを含み得る。好ましくは、血液ポンプは、血圧を測定するための少なくとも2つの圧力センサを含み、圧力センサのうちの少なくとも1つは少なくとも1つのフィルタの下流に位置し、圧力センサのうちの少なくとも別の1つは少なくとも1つのフィルタの上流に位置する。これにより、少なくとも1つのフィルタにより生じる圧力差を測定することができ、フィルタが詰まっているかどうか、また取り外したり掃除したりしなければならないかどうかの指標を与える。
【0021】
血液ポンプは、フィルタ、特にフィルタの下流端部分に位置する少なくとも1つの吸引ポートを含み得、少なくとも1つの吸引ポートは、吸引ポートを通じてフィルタから血餅が除去されるのを可能にする。血餅は、所定の間隔で、または必要な場合にのみ、連続して吸引され得、これは例えば前述した圧力センサによって決定され得る。代わりに、または加えて、血液ポンプは、フィルタ内にたまった血餅を溶解するようにフィルタに溶解剤を供給するため、フィルタ、特にフィルタの下流端部分に位置する少なくとも1つの溶解ポートを含み得る。溶解した血餅は、吸引ポートを通じて吸引されるか、または、血餅が十分小さい場合にはフィルタを通過することができる。吸引ポートおよび溶解ポートは、フィルタの掃除を容易にすることができ、フィルタを取り外すことなく血液ポンプの運転時間を増やすのに役立ち得る。
【0022】
一実施形態では、代わりに、または前述した実施形態と組み合わせて、フィルタは、血流入口に形成され得る。さらに代わりに、または加えて、フィルタの孔が血流入口を画定し得る。これは、フィルタの孔が、例えばサイズおよび形状に関して、血流入口を形成するように設計され得、このため、別個のフィルタが必要ないことを意味する。逆に、血流入口がフィルタの孔を形成するように設計されると言うことができる。言い換えれば、フィルタは、血流入口自体によって形成され得、孔は、血餅がポンプセクションに入るのを防ぐのに十分小さい。フィルタは、好ましくはポンプセクションと一体的に形成されるが、1つ以上のインサートとして形成されてもよい。フィルタは、前述したような規則正しいメッシュ構造体、例えば支柱によって分離された細長いスロット様の孔を有し得る。孔は、血餅が血液ポンプに入るのを防ぐのに適した、規則正しいかまたは不規則な、任意の他のサイズおよび形状を有し得ることが認識されるであろう。例えば、孔は、例えば打ち抜きまたはレーザー切断によって、ポンプセクションに直接形成され得る。血流入口によって形成された前記フィルタが、少なくとも1つの追加のフィルタと組み合わせられ得ることが、認識されるであろう。言い換えれば、血液ポンプは、少なくとも2つのフィルタ、特に、血流入口の近位の第1のフィルタと、孔が血流入口を形成する第2のフィルタと、を含み得る。孔は、円形、楕円形、正方形、多角形、または要望通りの別様の形状であってよく、約40μm~約120μmの幅を有し得る。
【0023】
前述したようなフィルタを備えた血液ポンプは、好ましくは血管内ポンプ、すなわちカテーテルポンプである。特に、血液ポンプは、大静脈を通じて、好ましくは下大静脈を通じて、患者の心臓の右心室に挿入されるように構成された、右心室血液ポンプであってよい。好ましくは、少なくとも1つのフィルタのうちの少なくとも1つは、下大静脈内に設置されるようにサイズ決めおよび構成され、ポンプセクションは、血流入口が下大静脈または右心房内に配され、血流出口が肺動脈内に配されるように、患者の心臓の右心室を通って延びるように構成される。フィルタは、血餅が肺循環に入るのを防ぎ、血餅が血液ポンプを詰まらせるのを防ぐ。
【0024】
一実施形態では、血液ポンプには、血液ポンプの血流入口に入る前に血流をろ過するため血流入口に対して配置されるよう、血液ポンプのポンプセクションの近位部分に接続されるように構成されたフィルタが、設けられ得る。フィルタは、好ましくは、規則正しいメッシュ構造体を含む。さらに好ましくは、フィルタは、前述したフィルタのうちのいずれかと同じように形成される。
【0025】
血液ポンプと、血液ポンプに取り付けられ得るフィルタと、を含むキットが提供され得る。前述したように、フィルタは、血液ポンプを患者から取り出すことなく、例えばフィルタを交換するかまたはフィルタを掃除するために、フィルタを取り外すことを可能にするよう、カテーテルの長さに沿って変位可能であってよい。キットは、例えば孔のサイズに関して、複数の異なるフィルタを含み得、このため、適用に応じて、または患者のニーズに応じて、適切なフィルタが選択され得る。このフィルタは、血液ポンプの製造中に血液ポンプ上に設置され得、すなわち、フィルタと血液ポンプとが事前組立され得るか、または、フィルタは、血液ポンプを患者に挿入する直前に血液ポンプ上で押され得る。フィルタは、前述したフィルタのうちのいずれかと同じように形成され得る。
【0026】
一実施形態では、フィルタは、血流入口上に設置され得る、スリーブとして、特に円筒形スリーブまたはシースとして、形成され得る。例えば、フィルタは、血流入口上に設置されるまで、単にカテーテルの長さに沿って前進され得る。フィルタは、ポンプセクション上にプレス嵌めされ得る。フィルタの内径は、ポンプセクションの外径に実質的に対応し得る。フィルタの遠位端部は、挿入を容易にし、フィルタの遠位端部における段を防ぐために、テーパー状であってよい。
【0027】
代わりに、肩部がポンプセクション上に設けられてよく、これは、フィルタがポンプセクション上へ遠位方向に前進された際にフィルタの停止部として役立つ。さらに代わりに、周方向凹部がポンプセクションの周りに設けられ得、その周方向凹部の中に血流入口が配され得る。フィルタはその後、ポンプセクション上を前進されると、凹部内にスナップ嵌めされ得る。フィルタを血液ポンプに追加し、かつフィルタを血液ポンプから取り外すのを容易にするために、フィルタは、その長さに沿ってスリットを入れられて、横から、すなわち血液ポンプの中心軸に対して横方向に、カテーテル上に設置されることを可能にし得る。好ましくは、フィルタは、フィルタがいったんカテーテル上に設置されるとそのスリットが閉じるように、弾性であるか、または形状記憶材料で作られている。フィルタは、血流入口上に設置され得る、金属部材、例えば金属スリーブであってよい。フィルタの孔は、例えば、レーザー切断、打ち抜きなどによって、形成され得る。
【0028】
前述した概要、ならびに以下の好適な実施形態の詳細な説明は、添付図面と合わせて読むと、より良く理解されるであろう。本開示を例示する目的で、図面を参照する。しかしながら、本開示の範囲は、図面に開示する特定の実施形態に制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】血液ポンプが右心室を通って挿入されている、患者の心臓を示す図である。
【
図2】
図1の血液ポンプをさらに詳細に示す図である。
【
図3】
図1の血液ポンプのフィルタを示す図である。
【
図5】
図4の血液ポンプのフィルタを示す図である。
【
図6】2つのフィルタを有する血液ポンプの別の実施形態を示す図である。
【
図7】別の実施形態によるフィルタを概略的に示す図である。
【
図7a】
図7のフィルタのカテーテルの概略断面図を示す図である。
【
図8】別の実施形態によるフィルタを概略的に示す図である。
【
図8a】
図8のフィルタのカテーテルの概略断面図を示す図である。
【
図10】血液ポンプが右心室および追加のフィルタを通って挿入されている、患者の心臓を示す図である。
【
図11a】血液ポンプのさらに別の実施形態を示す図である。
【
図11b】血液ポンプのさらに別の実施形態を示す図である。
【
図12a】血液ポンプ上へのフィルタの組立ステップを示す図である。
【
図12b】血液ポンプ上へのフィルタの組立ステップを示す図である。
【
図12c】血液ポンプ上へのフィルタの組立ステップを示す図である。
【
図13a】フィルタを血液ポンプ上に設置する異なる実施形態を示す図である。
【
図13b】フィルタを血液ポンプ上に設置する異なる実施形態を示す図である。
【
図13c】フィルタを血液ポンプ上に設置する異なる実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1では、患者の心臓Hに挿入された血液ポンプ1が示されている。さらに具体的には、血液ポンプ1は、カテーテル100に接続され、カテーテル100によって、血液ポンプ1は、下大静脈IVCを通じて患者の心臓Hの右心室RVに挿入される。異なるアプローチでは、カテーテルは、上大静脈SVCを通じて挿入され得る。血液ポンプ1は、その動作中、三尖弁TRVおよび肺動脈弁PVを通って設置される。血液ポンプ1は、右心房RA内に設置された血流入口3および肺動脈PA内に設置された血流出口4を有するポンプセクション2を含む。羽根車(図示せず)が、血液を血流入口3内へかつ血流出口4に向けて流し血流出口4から出す(矢印を参照)ように設けられる。フィルタ10が、血液ポンプ1に接続され、さらに具体的にはカテーテル100に取り付けられ、下大静脈IVC内に設置され、下大静脈IVCの内壁に当接する。よって、血流は、血流入口3に入る前にろ過され、血餅は、血液ポンプ1に入ることができない。この実施形態による血液ポンプ1は、右心室血液ポンプとして設計されている。
【0031】
図2を参照すると、
図1に示す血液ポンプ1がさらに詳細に示されている。湾曲したポンプセクション2は、血流入口3を備えた近位部分5および血流出口4を備えた遠位部分6を有する。この実施形態では、カテーテル100は、ポンプセクション2の近位部分5から延びる。ポンプセクション2は、血液ポンプ1が患者の心臓Hから後退して出るのを防ぐのに役立つ、特定の湾曲を有する。血流入口3および血流出口4は、この実施形態では周方向開口部として形成されている。他の形状、サイズ、または位置が、恐らくは適用に応じて、血流入口3および血流出口4に適切となり得ることが認識されるであろう。フィルタ10は、血液が血流入口3に入る前に血液をろ過するように、血流入口3の上流、すなわち血流入口3に対して近位に位置する。さらに具体的には、フィルタ10は、カテーテル100上で、カテーテル100の端部分に、ポンプセクション2に隣接して装着されている。
【0032】
フィルタ10は、
図3にさらに詳細に示されている。フィルタ10は、その遠位端部12がカテーテル100に取り付けられている。したがって、フィルタ10の遠位端部12は、閉じられているとみなすことができる。ブッシュ14、スリーブなどが、遠位端部12をカテーテル100に取り付けるのに使用され得る。フィルタ10は、カテーテル100に固定して取り付けられ得るか、または、例えばフィルタ10の位置の調節を可能にするため、および/もしくはフィルタ10の取り外しを可能にするため、カテーテル100の長さに沿って可動であってよい。フィルタ10の近位端部11は、血液がフィルタ10に入ることができるように、開口している。示された実施形態では、フィルタ10は、近位端部11から遠位端部12までテーパー状であり、円錐形状を有する。フィルタ10が、遠位端部での取り付けおよび開口近位端部を提供する別の適切な形状を有し得ることが、認識されるであろう。
【0033】
フィルタ10は、複数の孔13を画定する規則正しいメッシュ構造体を有する。この実施形態では、孔13は、矩形であり、遠位端部12に向かう方向に狭くなっている。これは、周方向における孔13の数がフィルタ10の長さに沿って一定であるので、フィルタ10の円錐形状によって引き起こされるものである。代わりに、または加えて、メッシュ構造体は、例えば、追加の半径方向および/または軸方向の支柱を追加すること、孔の形状を変えることなどによって、より小さい孔を遠位端部12に向かって提供するように、遠位端部12に向かって変化し得る。
【0034】
フィルタ10は、圧縮構成から拡張構成へと拡張可能である。圧縮構成では、フィルタ10を備えた血液ポンプ1は、導入器シース(図示せず)を通って、患者の心臓Hまで送達され得る。血液ポンプ1が所定の場所に置かれた後、フィルタ10が拡張され得る。これにより、フィルタ10は、
図1に示すような下大静脈IVCなど、血管の内壁に当接することができる。所望の拡張特性を提供するため、フィルタ10は、好ましくは、ニチノールまたは他の適切な形状記憶材料で作られる。
【0035】
図4および
図5は、先の実施形態と実質的に同一であるフィルタ10を備えた血液ポンプ1の別の実施形態を示す。同様の参照符号は、同様の部分を指す。この実施形態では、フィルタ10は、フィルタ10の取り外しを容易にする保持装置を有する。保持装置は、フィルタ10の開口近位端部11に接続された複数のフィラメント16またはバンドを含む。示された実施形態では、フィルタ10の周辺部の周りに等間隔になった4つのフィラメント16が設けられている。より多いかまたはより少ないフィラメントが設けられ得ることが認識されるであろう。フィラメントは、好ましくは、フィルタと一体的に形成される。これらは、カテーテル100(カテーテルは
図5には図示せず)に沿ってスライドすることができるブッシュ15で終わっていてよい。フィルタ10を潰すように操作者によって操作され、特に引っ張られ得る、さらなるフィラメント17、糸、ワイヤなどが設けられる。フィルタ10は次に、導入器シース(図示せず)内に後退され得る。潰れた構成は、初期の圧縮構成と同一であってよいか、または、より大きい直径を提供することができ、このより大きい直径は、それでもなおフィルタ10が取り外されるのを可能にするのに十分に小さい。フィルタの取り外しは、例えば掃除のため、または単に血液ポンプ1が患者から最終的に取り外されるものである場合に必要となり得る。
【0036】
次に
図6を参照すると、先の実施形態と実質的に同様である血液ポンプ1の別の実施形態が示されている。先の実施形態とは対照的に、2つ以上のフィルタが設けられている。特に、カテーテル100上に連続して配置された2つのフィルタ10が設けられる。
図6に示す実施形態では、両方のフィルタ10が、
図4および
図5のフィルタと同じように形成されている。代わりに、両方のフィルタ10は、
図2および
図3のフィルタと同じように形成され得るか、またはフィルタ10は、別様に形成されてもよい。両方のフィルタ10は、カテーテル100に固定して取り付けられ得るか、または両方が可動であってもよい。一実施形態では、フィルタ10のうちの一方のみ、好ましくは近位のフィルタが、可動であるか、またはカテーテルに着脱可能に取り付けられ、もう一方、好ましくは遠位のフィルタが固定される。
【0037】
図7および
図8は、フィルタ10のさらなる実施形態を示す。メッシュ構造体は、明確にする目的で図示しない。
図7に示すフィルタ10は、フィルタ10の遠位端部の近くに吸引ポート51および溶解ポート52を含む。フィルタ10の下流先端部、すなわち遠位端部にたまる血餅は、吸引ポート51を通じて吸引されることによって、除去され得る。代わりに、または加えて、血餅は、溶解ポート52を通じてフィルタ10に供給される溶解剤によって溶解され得る。
図7aの概略断面図に示すように、吸引ポート51および溶解ポート52は、カテーテル100を通って延びるそれぞれの線材に接続され得る。ポート51、52のうちの一方のみが設けられ得ることが認識されるであろう。
【0038】
図8に示すフィルタ10は、2つの圧力センサ53、54を含む。圧力センサ53は、フィルタ10の内側に位置するが、圧力センサ54は、フィルタ10に対して下流、すなわち遠位に位置する。この2つの圧力センサ53、54の配置により、フィルタ10により生じる圧力差を測定することができる。圧力差が所定の閾値を超えた場合、これはフィルタ10の詰まりを示し得る。
図8aの概略断面図に示すように、圧力センサ53、54は、カテーテル100を通って延びるそれぞれの線材に接続され得る。
図7および
図8の実施形態の特徴部が単一の実施形態において組み合わせられ得ることが認識されるであろう。
【0039】
血液ポンプ1の別の実施形態が
図9に示されている。ポンプセクション2に対して近位に配されるテーパー状のフィルタ10ではなく、血流入口3を囲むフィルタ20が設けられている。フィルタ20の近位端部21は、血流入口3に対して近位でポンプセクション2に取り付けられ、フィルタ20の遠位端部22は、血流入口3に対して遠位でポンプセクション2に取り付けられている。特に、フィルタ20は、ケージと同じように形成され得、好ましくはメッシュ構造体を有する。ケージは、好ましくは拡張可能であり、フィルタ10に関して前述したようにニチノールまたは他の形状記憶材料で作られ得る。フィルタ20は、前述したフィルタ10のうちのいずれかの代わりに、またはそれに加えて、設けられ得る。
【0040】
図10を参照すると、フィルタ10を備えた血液ポンプ1と追加のフィルタ30とを含むシステムが示されている。血液ポンプ1は、前述した実施形態のうちのいずれか1つに従って形成され得る。示された血液ポンプ1は
図1の血液ポンプである。追加のフィルタ30は、上大静脈SVCから来る血液をやはりろ過するために設けられる。フィルタ30は、血液ポンプ1について使用される同じ血管アクセスを用いることを可能にする、下大静脈IVCを通って挿入された追加のカテーテル101に取り付けられる。カテーテル101は、フィルタ10を通り過ぎて延びる。あるいは、追加のアクセスが使用され得、カテーテル101は、フィルタ30と共に、上大静脈SVCを通って挿入され得、これは、フィルタ30を所定の場所に確実に保持するのに有利となり得る。当然、後者の場合には、フィルタ30は、反対方向においてカテーテル101に取り付けられる。フィルタ30は、前述したフィルタ10のうちのいずれかと同じように設計される。2つ以上、例えば2つまたは3つの、フィルタ30が、カテーテル101上に設けられ得る。フィルタ30は、血液ポンプ1のフィルタ10と同一であるかまたは異なっていてよい。この配置が逆であってよい、すなわち、血液ポンプ1を備えたカテーテル100が上大静脈SVCを通じて挿入され、追加のフィルタ30が下大静脈IVC内に設置されることが、認識されるであろう。
【0041】
血液ポンプ1のさらに別の実施形態が、
図11aおよび
図11bに示されている。前述した実施形態とは対照的に、この実施形態の血液ポンプ1は、血流入口3に直接一体化されたフィルタ40を有する。フィルタ40は、ポンプセクション2と一体的に形成され、このことは製造しやすい構造をもたらす。フィルタ40を血流入口3へのインサートとして設けることも可能である。フィルタ40の孔は、
図11aに示すように、長手方向に延び、支柱によって分離された、細長いスロットであってよい。しかしながら、
図11bに示すような周方向スロットまたは矩形もしくは円形開口部など、他の形状が孔に適切となり得る。スロットまたは開口部の幅は、血餅がポンプセクション2に入るのを防ぐように選択される。言い換えれば、血流入口3は、フィルタ40の孔によって形成される。フィルタ40を含む血液ポンプが、前述したフィルタ10、20、および30のうちのいずれか1つをさらに含み得ることが認識されるであろう。
【0042】
図12a~
図12cを参照すると、血液ポンプ1およびフィルタ50を含むキットが図示されている。
図12aに示すように、フィルタ50は、血液ポンプ1から離れて設けられてよく、フィルタ50が横方向に、すなわち
図12aの矢印によって示すように横から、カテーテル100上に置かれるのを可能にするため、長手方向スリット51を有し得る。フィルタ50は、フィルタを開いた構成に曲げることを可能にし、いったんカテーテル100上に設置されたらフィルタを閉じるために、ニチノールなどの、弾性材料または形状記憶材料で作られる。フィルタ50はその後、
図12bに図示し、矢印によって示すように、血液ポンプ1のポンプセクション2に向かって遠位方向に前進され得る。
図12cに示すような最終位置では、フィルタ50は、血液ポンプ1の血流入口3を覆って、血餅がポンプセクション2に入るのを防ぎ、これは、詰まりによる血液ポンプの故障を防ぐのに役立つ。再び
図12bを参照すると、フィルタ50がスロットを有さなくてもよいが、カテーテル100の近位端部からポンプセクション2に向かってカテーテル100上へ前進される、周方向に閉じたスリーブであってよいことが、認識されるであろう。例えば、フィルタ50は、カテーテル100上で予め組み立てられ得る。フィルタ50は、前述したように、任意の適切なメッシュ構造体および孔構成を有し得る。
【0043】
フィルタ50は、
図13aに示すようにポンプセクション2上に単にプレス嵌めされ得、フィルタの内径は、ポンプセクション2の外径に実質的に対応するか、またはこれよりわずかに小さい。血液ポンプ1が好ましくは右心室支援装置であるので、血液ポンプ1の増大した直径は、他の適用ほど重大ではない。挿入を容易にするために、フィルタ50は、その遠位端部がテーパー状であってよい。
図13bに示すように、ポンプセクション2は、段または肩部52を有し得る。フィルタ50は、肩部52に当接してよく、肩部52は、フィルタ50の停止部として作用する。好ましくは、フィルタ50の外側周辺部とポンプセクション2とは同じ高さである。あるいは、
図13cに示すように、フィルタ50をスナップ嵌めで受容するようにサイズ決めおよび成形された、周方向凹部53が設けられてもよい。血流入口3は、フィルタ50が凹部53に受容されたときに血流入口3を覆うように、凹部53内に配されている。
【0044】
血液ポンプ1上に組み立てられた別個のフィルタ50を備えたキットが、モジュール式の可撓性システムを提供する。例えば、外科医は、患者のニーズに基づいて、血液ポンプを挿入する直前に適切なフィルタを選択し得る。あるいは、キットは、フィルタがポンプセクション上へと単に押され得るスリーブのように形成されるので、フィルタを備えた血液ポンプを製造する容易な方法を提供する。