(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】電気機械のためのロータ、電気機械、および電気機械を動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20240724BHJP
【FI】
H02K1/276
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022115336
(22)【出願日】2022-07-20
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】10 2021 118 832.6
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ノエル マーター
(72)【発明者】
【氏名】ドルド スタンコヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ゼガー ボンティンク
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-207690(JP,A)
【文献】特開昭51-050408(JP,A)
【文献】特開2001-204146(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0079832(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/17
1/27-1/2798
15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械(200)のためのロータ(220)であって、前記電気機械(200)は、ステータ(210)と、前記電気機械(200)のロータシャフト(228)の周りで、前記ステータ(210)に対して回転可能なロータ(220)とを有し、当該ロータ(220)は、以下の特徴、すなわち、
当該ロータ(220)は、複数の永久磁石(222)を有し、
当該ロータ(220)は、第1の透磁率を有する第1の材料から形成されている第1のロータ区分(224)を有し、前記第1のロータ区分(224)は、前記ロータ(220)のうちの、前記電気機械(200)の動作準備ができた状態で前記ステータ(210)に向いている少なくとも1つの部分区分を有し、前記永久磁石(222)は、少なくとも部分的に前記第1のロータ区分(224)内に配置されており、
当該ロータ(220)は、前記第1の透磁率よりも小さい第2の透磁率を有する第2の材料から形成されている第2のロータ区分(226)を有し、前記第2のロータ区分(226)は、前記ロータ(220)のうちの、前記電気機械(200)の動作準備ができた状態で前記ステータ(210)とは反対側を向いている部分区分を有し、前記第2のロータ区分(226)は、半径方向外側に延びる複数の凸部を有しており、各永久磁石(222)の少なくとも一部分が、複数の前記凸部の間に挟まれるように配置されており、
前記第2のロータ区分(226)の複数の前記凸部は、
前記複数の永久磁石(222)および前記第1のロータ区分(224)から、前記ロータ(220)の半径方向内側の領域に進入する磁力線の数を削減
し、前記ステータ(210)と前記ロータ(220)との間の空隙および前記ロータ(220)へ入来する磁束の数を増加させるように配置されている、
という特徴を有する、ロータ(220)。
【請求項2】
前記第2のロータ区分(226)は、反磁性または常磁性の材料から形成されている、
請求項1記載のロータ(220)。
【請求項3】
前記第2のロータ区分(226)は、アルミニウムから形成されている、
請求項1記載のロータ(220)。
【請求項4】
前記第1のロータ区分(224)は、鋼および/または鉄から形成されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載のロータ(220)。
【請求項5】
前記第1のロータ区分(224)は、前記永久磁石(222)同士の間に延在している、
請求項1から3までのいずれか1項記載のロータ(220)。
【請求項6】
前記永久磁石(222)は、スポーク形の構成で配置されており、
前記永久磁石(222)の長手延在軸線は、前記ロータ(220)に対して半径方向に方向付けされている、
請求項1から3までのいずれか1項記載のロータ(220)。
【請求項7】
前記ロータ(220)は、前記ステータ(210)によって少なくとも部分的に包囲された状態で回転可能であるように構成されており、
前記第1のロータ区分(224)は、前記ロータ(220)の半径方向外側の部分区分を有し、
前記第2のロータ区分(226)は、前記ロータ(220)の半径方向内側の部分区分を有する、
請求項1から3までのいずれか1項記載のロータ(220)。
【請求項8】
電気機械(200)であって、
当該電気機械(200)は、以下の特徴を有し、すなわち、
ステータ(210)と、
請求項1から3までのいずれか1項記載のロータ(220)と
を有し、前記ロータ(220)は、前記ステータ(210)に対して回転可能である
という特徴を有する、電気機械(200)。
【請求項9】
請求項8記載の電気機械(200)を動作させるための方法(500)であって、
当該方法(500)は、
前記ステータ(210)に対する前記ロータ(220)の回転運動を引き起こすために、前記ステータ(210)の少なくとも1つの電気コイルに電流を印加するステップ(510)
を有する、方法(500)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械のためのロータと、電気機械と、電気機械を動作させるための方法とに関する。
【0002】
インナーロータとして構成された電気機械のためのロータの従来の設計は、例えば、ロータ積層板の内側の部分を飽和状態で動作させることを試みる。したがって、そのような従来のロータの内部に、とりわけ小型の鉄製ブリッジを構築することができる。このようなブリッジは、例えば、積層薄板が飽和させられるように非常に薄くなっており、すなわち、これらの領域の透磁率を空気の値に近づけることができる。その他の従来の設計は、例えば、同じ分極を有する領域にのみブリッジを設けることができる。しかしながら、この場合、構造的な安定性を保証するためには、磁石の上に小型の鉄製の領域を組み込むことが特に必要になる場合がある。
【0003】
このような背景に鑑みて、本発明の課題は、電気機械のための改善されたロータと、改善された電気機械と、電気機械を動作させるための改善された方法とを提供することである。
【0004】
上記の課題は、それぞれの主請求項に記載の、電気機械のためのロータと、電気機械と、電気機械を動作させるための方法とによって解決される。
【0005】
各実施形態によれば、とりわけ、永久磁石を有する電気モータのためのロータ内に内部の磁束バリアを設けることができ、磁束の集中を利用することができる。この場合には、例えば、ロータの半径方向内側の領域を、低透磁率を有する材料から形成することができる。しかしながら、例えば、磁石の間および磁石の上の領域において、積層鋼板を材料として使用することができる。この場合、永久磁石を、少なくとも部分的に積層鋼板に埋め込むことができる。
【0006】
有利には、各実施形態によれば、とりわけ永久磁石を有する電気モータの場合、磁石の効率的な利用を実現するために、本明細書に提示されるロータ構造により、空隙に向けての磁束の集中を引き起こすことができる。したがって、磁石のうちの、ステータとは反対側を向いている部分で、すなわち、インナーロータの場合にはロータシャフトの近くで、相異なる磁極の磁力線が接続されるということを阻止することができる。とりわけ、このロータ区分の透磁率を、例えば鉄と比較して、空隙内の空気の透磁率に近づけることができる。したがって、とりわけ、磁束の最大割合をロータから離れさせることができ、ひいては、トルクを生成するために寄与させることも実現することができる。したがって、磁石の体積を、トルクを生成するために最大限に利用することができる。
【0007】
換言すれば、磁石によって生成された磁束のほとんど全てを、空隙とステータ積層板とに追いやることができる。その利点は、同じ量の磁性材料を用いてより大きいモータトルクを実現することができること、または所定のトルクを供給すべきモータのために必要とされる永久磁石の材料の体積が少なくなること、ひいては、モータまたは電気機械のより低コストの設計を実現することができることにある。すなわち、磁束を、電気機械の空隙およびステータに向けて追いやることができる。これにより、ロータとステータとの間の相互作用の改善と、ひいてはトルクの改善とをもたらすことができる。
【0008】
電気機械のためのロータであって、電気機械は、ステータと、ステータに対して回転可能なロータとを有し、当該ロータは、以下の特徴を有し、すなわち、
当該ロータは、複数の永久磁石を有し、
当該ロータは、第1の透磁率を有する第1の材料から形成されている第1のロータ区分を有し、第1のロータ区分は、ロータのうちの、電気機械の動作準備ができた状態でステータに向いている少なくとも1つの部分区分を有し、永久磁石は、少なくとも部分的に第1のロータ区分内に配置されており、
当該ロータは、第1の透磁率よりも小さい第2の透磁率を有する第2の材料から形成されている第2のロータ区分を有し、第2のロータ区分は、ロータのうちの、電気機械の動作準備ができた状態でステータとは反対側を向いている部分区分を有する
という特徴を有する。
【0009】
電気機械を、電気モータと呼ぶことができる。ステータは、永久磁石と相互作用するための少なくとも1つの電気コイルを有することができる。ロータとステータとの間には、空隙を配置することができる。
【0010】
一実施形態によれば、第2のロータ区分を、反磁性および/または常磁性の材料、とりわけアルミニウムから形成することができる。そのような実施形態は、磁束を、空隙およびステータに特に効果的に向けることができるという利点を提供する。さらに、ロータの第2のロータ区分内の鉄よりも小さい質量密度を有するアルミニウムのような反磁性および/または常磁性の材料を使用することによって、ロータの慣性を低減することができる。これにより、モータの始動速度を低減することもできる。
【0011】
第1のロータ区分を、鋼から、追加的または代替的に鉄から形成することもできる。とりわけ、第1のロータ区分は、積層鋼板、薄板スタック、および追加的または代替的に鉄製ブリッジを有することができる。そのような実施形態は、第1のロータ区分内の磁束を、空隙およびステータに向けて集中させることができるという利点を提供する。
【0012】
さらに、第1のロータ区分は、永久磁石同士の間に延在することができる。したがって、永久磁石を、少なくとも部分的に第1のロータ区分内に埋め込むことができる。そのような実施形態は、電気機械の動作中に磁気飽和を達成することができるという利点を提供する。
【0013】
とりわけ、永久磁石は、スポーク形の構成で配置可能である。この場合、永久磁石の長手延在軸線は、ロータに対して半径方向に方向付け可能である。そのような実施形態は、大きい公称トルクを達成可能にするために、磁石の緊密な配置、ひいては多数の磁極対を実現することができるという利点を提供する。
【0014】
一実施形態によれば、ロータは、ステータによって少なくとも部分的に包囲された状態で回転可能であるように構成可能である。この場合、第1のロータ区分は、ロータの半径方向外側の部分区分を有することができる。第2のロータ区分は、ロータの半径方向内側の部分区分を有することができる。電気機械は、この場合、インナーロータとして構成可能である。このような実施形態は、駆動技術において頻繁に利用される機械種類のために使用可能となるという利点を提供する。
【0015】
電気機械は、以下の特徴を有し、すなわち、
ステータと、
本明細書で説明されるロータの一実施形態と
を有し、ロータは、ステータに対して回転可能である
という特徴を有する。
【0016】
電気機械は、インナーロータまたはアウターロータとして構成可能である。電気機械に関連して、本明細書で説明されるロータの一実施形態は、有利には、永久磁石の磁束をステータに向けるために利用可能または使用可能である。
【0017】
本明細書で説明される電気機械の一実施形態を動作させるための方法は、
ステータに対するロータの回転運動を引き起こすために、ステータの少なくとも1つの電気コイルに電流を印加するステップ
を有する。
【0018】
本明細書に提示されるアプローチの各実施例について、図面を参照しながら以下の記載においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】電気機械の断面図に基づいた、電気機械の磁界の概略図である。
【
図3】電気機械の断面図に基づいた、電気機械の一実施例の磁界の概略図である。
【
図4】電気機械の一実施例についての概略的なトルク・角度位置の線図である。
【
図5】電気機械を動作させるための方法の一実施例のフローチャートである。
【0020】
図1は、電気機械100の断面図に基づいた、電気機械100の磁界の概略図を示す。電気機械100は、ステータ110およびロータ120を含む。
図1の図面には、電気機械100の部分区分のみが図示されている。
【0021】
図2は、電気機械200の一実施例の概略図を示す。電気機械200は、とりわけ概略断面図で図示されている。電気機械200は、ステータ210およびロータ220を含む。ロータ220は、ステータ210に対して回転可能であり、より正確に言えば回転可能に配置または支承されている。ロータ220は、複数の永久磁石222と、第1のロータ区分224と、第2のロータ区分226とを含む。ロータ220のうち、さらにロータシャフト228が図示されている。ステータ210とロータ220との間には、間隙または空隙が配置されている。
【0022】
ロータ220は、第1のロータ区分224と、第2のロータ区分226とに分割されている。第1のロータ区分224は、第1の透磁率を有する第1の材料から形成されている。第1のロータ区分224は、ロータ220のうちの、ステータ210に向いている少なくとも1つの部分区分を有する。永久磁石222は、少なくとも部分的に第1のロータ区分224内に配置されているか、または埋め込まれている。第2のロータ区分226は、第1のロータ区分224の第1の材料の第1の透磁率よりも小さい第2の透磁率を有する第2の材料から形成されている。第2のロータ区分226は、ロータ220のうちの、ステータ210とは反対側を向いている部分区分を有する。
【0023】
図2に示されている実施例によれば、電気機械200は、インナーロータ型の電気モータとして構成されている。この場合には、ロータ220は、ステータ210によって少なくとも部分的に包囲された状態で回転可能であるように構成されている。第1のロータ区分224は、ロータ220の半径方向外側の部分区分を有し、第2のロータ区分226は、ロータ220の半径方向内側の部分区分を有する。さらに、
図2に示されている実施例によれば、永久磁石222は、スポーク形の構成で配置されている。この場合、永久磁石222の長手延在軸線は、ロータ220に対して半径方向に方向付けされている。とりわけ、第1のロータ区分224は、永久磁石222同士の間に延在している。第2のロータ区分226は、例えば、反磁性および/または常磁性の材料、とりわけアルミニウムから形成されている。第1のロータ区分224は、とりわけ鋼および/または鉄から形成されている。
【0024】
したがって、換言すれば、
図2は、永久磁石222を有するロータ220を有する電気機械の、放射方向における概略断面図を示す。第1のロータ区分224は、例えば積層鉄板を含み、第2のロータ区分226は、低透磁率を有する反磁性および/または常磁性の材料として、例えばアルミニウムを含む。
【0025】
図3は、電気機械200の断面図に基づいた、電気機械200の一実施例の磁界の概略図を示す。
図3の図面には、電気機械200の部分区分が図示されている。この場合、電気機械は、前述の図面のうちの1つ、より正確に言えば
図2~
図3のうちの1つからの電気機械に対応または類似している。
図3の図面には、電気機械200のうちの、ステータ210およびロータ220のみが明示的に示されている。
【0026】
換言すれば、
図3は、一実施例による電気機械200または電気モータの一設計の磁界を示す。ここでも、電気モータは、インナーロータとして構成されている。ロータ220の半径方向内側の部分は、例えばアルミニウムによって形成されている。とりわけ、
図1と比較して、半径方向内側の領域に進入する磁力線の数が削減または最小化されていることと、空隙およびステータ210に入来する磁束の量が増加または最大化されていることとが見て取れる。
【0027】
図4は、電気機械の一実施例についての概略的なトルク・角度位置の線
図400を示す。この場合、電気機械は、前述の図面のうちの1つ、より正確に言えば
図2~
図3のうちの1つからの電気機械に対応または類似している。横軸には、電気機械のロータの角度位置または回転角度φが、度[°]の単位でプロットされており、縦軸には、電気機械のトルクMが、ニュートンメートル[Nm]の単位でプロットされている。トルクMは、例えば、電気モータとして構成されている電気機械の平均出力トルクである。線
図400には、従来の電気機械についての比較グラフとしての第1のグラフ401と、電気機械の一実施例についての第2のグラフ402とがプロットされている。
【0028】
より正確に言えば、
図4は、例えば
図1の電気機械のような従来の電気機械のトルクMと、
図2および/または
図3の電気機械のような一実施例による電気機械のトルクMとの比較を示す。電気機械の本実施例のトルクMまたは平均出力トルクが、従来の電気機械によって生成されるトルクよりも大きいことが見て取れる。したがって、第1のグラフ401は、第2のグラフ402と横軸との間に配置されている。例えば、電気機械の本実施例の平均出力トルクを、従来の電気機械によって生成されるトルクよりも約7.5%大きくすることができる。
【0029】
図5は、電気機械を動作させるための方法500の一実施例のフローチャートを示す。この場合、電気機械は、前述の図面のうちの1つ、より正確に言えば
図2~
図3のうちの1つからの電気機械に対応または類似している。したがって、電気機械は、ステータおよびロータを含み、ロータは、ステータに対して回転可能である。ロータは、この場合、本明細書で説明される一実施例に従って構築されている。動作させるための方法500は、ステータに対するロータの回転運動を引き起こすために、ステータの少なくとも1つの電気コイルに電流を印加するステップ510を含む。電気機械は、この場合、電気モータに関する当分野で慣習的な制御手法によって動作可能である。
【符号の説明】
【0030】
100 電気機械
110 ステータ
120 ロータ
200 電気機械
210 ステータ
220 ロータ
222 永久磁石
224 第1のロータ区分
226 第2のロータ区分
228 ロータシャフト
400 トルク・角度位置の線図
401 第1のグラフ
402 第2のグラフ
M トルク
φ 角度位置または回転角度
500 電気機械を動作させるための方法
510 印加するステップ