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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】発光時計部品を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/04 20060101AFI20240724BHJP
   G04B 19/06 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
G04B19/04 B
G04B19/06 F
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022130901
(22)【出願日】2022-08-19
(65)【公開番号】P2023067748
(43)【公開日】2023-05-16
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】21205701.2
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ソフィ・ナーポリ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・フランソワ
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-161621(JP,A)
【文献】特開2018-59933(JP,A)
【文献】特開2020-122147(JP,A)
【文献】特表2007-517125(JP,A)
【文献】特表2020-533096(JP,A)
【文献】特表2019-506496(JP,A)
【文献】国際公開第2016/080256(WO,A1)
【文献】特開2010-185722(JP,A)
【文献】実開平6-56795(JP,U)
【文献】特開2019-207225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯物品用の発光時計部品を製造するための方法であって、
10重量%~40重量%の量のリン光顔料、1重量%~4重量%の量の昼光蛍光顔料および最大量10重量%の可塑剤の予備混合物を生成するステップと、
ポリマー基材を前記予備混合物と混合し、得た混合物に1回目の押出加工を行って、均質なポリマー混合物を得るステップと、
ポリマー混合物に2回目の押出加工を行って、既定の厚さの細片を形成するステップと、
細片を切断して、所望の発光時計部品を得るステップと
を含み、
形成される前記発光時計部品は針である、方法。
【請求項2】
ポリマー基材は熱可塑性ポリマー基材であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ポリマー基材は近紫外線スペクトルの波長および可視スペクトルの波長において透明であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
熱可塑性ポリマー基材はポリカーボネート、PMMAから選択される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
押し出された細片は周辺温度で冷却される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
第1の押出しは二軸スクリュー押出機を介して実施される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
第2の押出しは単軸スクリュー押出機を介して実施される、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光時計部品を製造するための方法に関連する。本発明はまた、製造方法から得られるような時計部品に関する。
【背景技術】
【0002】
光ルミネセンス材料の使用は市場でかなり広範囲におよび、これは様々な用途、例えば、針またはインデックスなどのためのものである。
【0003】
リン光技術は、様々な装飾方法を介して、針、文字盤および他の部品を照らし出すために時計学の分野に一般的に使用されている。
【0004】
蛍光技術はまた、時計を装飾するため、およびこれを複数の色で装飾するため、蛍光顔料を使用したパッド印刷またはスプレーコーティングを介して内部構成部品の装飾のためにも使用されている。
【0005】
他方では、文字盤および針は普通金属材料で作製され、次いで、複数の最終加工ステップ後、リン光インクまたは蛍光インクのいずれかで装飾される。
【0006】
この設計は複数の弱点を有する
-発光性能の制限:リン光インクおよび蛍光インクの厚さは、現在の装飾方法では100ミクロン周辺に限定される;
-装飾方法の複雑化:不透明な装飾を有し、性能を最大限にするためには、リン光装飾の前に白色のアンダーコートが時には必要となる;
-完全に不透明の部品は設計を限定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記に記載されている弱点の影響を受けない発光時計部品を製造するための方法である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、携帯物品用の発光時計部品を製造するための方法であって、
-10重量%~40重量%の量のリン光顔料、1重量%~4重量%の量の蛍光顔料および最大量10重量%の可塑剤の予備混合物を生成するステップと、
-ポリマー基材を前記予備混合物と混合し、得た混合物に1回目の押出加工を行って、均質なポリマー混合物を得るステップと、
-ポリマー混合物に2回目の押出加工を行って、少なくとも厚さ0.3mmの細片を形成するステップと、
-細片を切断して、所望の発光時計部品を得るステップと
を含む方法に関する。
【0009】
本発明の他の有利な変化形によると、
-ポリマー基材は熱可塑性ポリマー基材である;
-ポリマー基材は、近紫外線スペクトルの波長および可視スペクトルの波長で透明である;
-熱可塑性ポリマー基材はポリカーボネート、PMMAなどから選択される;
-押し出された細片は周辺温度で冷却される;
-第1の押出しは、二軸スクリュー押出機を介して実施される;
-第2の押出しは、単軸スクリュー押出機を介して実施される;
-第2の押出しの間に得られた細片は、2つの部分に分かれた細片の形態であり、上部と呼ばれる第1の部分は第1の押出しの終わりに得られた発光混合物により形成され、下部と呼ばれる第2の部分は白色のポリマー材料により作製された細片で形成される。
【0010】
本発明はまた、このような方法から得られる発光時計部品に関する。
【0011】
本発明はまた、少なくとも1つのこのような時計部品を含む時計に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、携帯物品用の発光時計部品を製造するための方法、ならびに得られた発光時計部品に関する。
【0013】
発光性とは、部品が光ルミネセンス、蛍光、リン光、またはそれらの組合せであることを意味する。
【0014】
リン光とは、光を吸収し、それをより長い波長で再発光できるという特性を有する元素を意味する。光励起が停止しても、発光はしばらくの間持続する。インクは光ルミネセンス特性をインクに付与する少なくとも1種のフォトルミネッセンス剤を含有する。好ましくは、発光剤は蛍光剤である。有利には、蛍光剤は無機蛍光体およびオルガノランタニド複合体から選択される。別の代替法によると、蛍光剤はまた有機蛍光体から選択されてもよい。有機蛍光体は、例えば、フルオレセイン、ユウロピウム1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオエート-1,10-フェナントロリン、ドープしたガドリニウムオキシスルフィド、ドープしたアルミン酸マグネシウムおよびアルミン酸バリウム、ドープしたアルミン酸リチウム、ドープしたモリブデン酸ストロンチウムである。
【0015】
蛍光とは、光を吸収し、それをより長い波長で再発光できるという特性を有する元素を意味する。光励起が停止すると発光は停止する。
【0016】
本発明による製造方法の様々なステップがここで記載される。
【0017】
第1のステップの間、予備混合物は、リン光性能に対していかなる妥協もせずに、十分に顕著な日光色が得られるよう、10重量%~40重量%の量のリン光顔料、可塑剤、および4重量%の量の蛍光顔料で作製される。発光粒子の量は、装飾された時計部品を際立たせ、暗闇の中でそれが簡単におよび直ちに目視可能となり得る位十分であるように選択される。可塑剤は10重量%までの最大量で存在することで、その後ポリマー基材の可鍛性を調節し、よって操作および機械加工の間壊れにくくする。この予備混合は、顔料をコーティングすることを可能にし、本方法の残りの部分において、これらの侵食を防止し、ポリマー基材へのこれらの組込みを促進する。ポリエチレン、パラフィン、またはポリジメトキシシランが一般的に可塑剤として使用されている。
【0018】
昼光蛍光顔料は、1重量%~4重量%の量が加えられ、これらの蛍光顔料は有色なので、これにより日中に目視可能な色を改変することが可能となる。これらの昼光蛍光顔料は昼光色を有し、これは日中光の当たる所で中性色であるが、紫外光により励起する紫外光蛍光顔料とは対照的である。昼光蛍光顔料はまた、エネルギー変換を介してリン光作用の強化および改変を可能にする。例えば、薄青色リン光顔料が使用され、ピンク色の蛍光顔料が加えられた場合、最終の夜の発光色はピンクがかった色/紫色となる。したがって、作製された混合物に従い、日中に目視可能な蛍光色を夜間に目視可能なリン光色と対応させることが可能である。
【0019】
後に続くステップの間、混合物を、予備混合物およびポリマー基材を用いて作製し、次いで予備混合物の第1の押出しにより均質な混合物を得、発光粒子をポリマー基材内に分配し、よって時計部品の視覚的表現と発光顔料の性能の両方に有害な粒子のクラスターを防止する。よって基材ポリマーは、可塑剤および顔料に基づく予備混合物と混合されて、鎖間に滑りをもたらすことを可能にする。
【0020】
使用されるポリマー基材は、熱可塑性ポリマー、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、メチルメタクリレートアクリロニトリルブタジエンスチレン(MABS)、グリコール化ポリエチレンテレフタレート(PETg)などであってよい。有利には、使用されるポリマー基材は、近紫外線スペクトルの波長と可視スペクトルの波長の両方で透明であり、これによって顔料による光のより良い吸収が可能となる。
【0021】
好ましくは、押出しは、顔料の均質な混合物および良好な分散液を得るために、二軸スクリュー押出機を介して実施される。この第1の押出しの終わりに、材料は一般的に粒剤の形態で出力され、よって、本方法の残りの部分に対する輸送および貯蔵を促進させることが可能となる。
【0022】
第1の押出しの間に得られた材料はその後、少なくとも0.3mmの厚さのカレンダー加工した細片を生成するためのダイを備えた単軸スクリュー押出機で再押し出される。厚さは、明らかに、最後に得ることが望まれる時計部品に応じて変動させることもできる。厚さ0.3mm未満では、部品はあまりに壊れやすく、機械的に強くないことが発明者らにより指摘されている。例えば、0.15mmの針は柔軟性がありすぎ、不均質な機械的性能を有し、針が針自体の重量を支えられない。よって、良好な性能および良好な強度を保証するためには、最低限0.3mmの厚さが望ましい。
【0023】
本発明の1つの変化形に従い、第2の押出しの間に得られたプロファイルは、2つの部分に分かれた細片の形態であり、上部と呼ばれる第1の部分は第1の押出しの終わりに得られた混合物により形成され、下部と呼ばれる第2の部分は白色のポリマー材料により作製された細片で形成される。このような配置は、発光材料で作製されたコーティングの下に反射コーティングを得ることを可能にし、よってより良い性能を得ることを可能にする。
【0024】
厚さの上限はない。部品の厚さを直接生成すること、および部品を切断すること(平坦な場合)が可能である。より厚い細片を押し出し、切断後、部品を機械加工して、これらの厚さを補正することも可能である。例えば、針に対して、針の最上部を最も大きくし、底部をより薄く切断することができる。コストの理由から、ダイは、針の最も長い断面に適合させて、そのプロファイルを押し出すことができる。
【0025】
化合物が再押し出されると、細片は、例えば、所望の発光時計部品を得るために、スタンピングまたはレーザー切断を介して切断される。
【0026】
最後に、任意選択の最終ステップは、部品の発光部分のみが目視可能となるように、得られた時計部品をプリンティングまたはエッチングすることにより装飾することにある。
【0027】
本発明によると、このような方法は、発光文字盤または針を得ることを可能にする。
【実施例
【0028】
最大量10重量%の可塑剤を、10重量%~40重量%の量の光ルミネセンス顔料(粒径D50:15~20μm)と混合することにより予備混合物を作製し、その後蛍光顔料を1重量%~4重量%の量で加える。可塑剤は、材料の強固性を改善し、リン光顔料-マトリックス相互作用を最適化することを可能にする。
【0029】
その後ポリマー基材を予備混合物と混合する。
【0030】
混合物を、第1の二軸スクリュー押出しを介してホモジナイズする。
【0031】
その後化合物の第2の押出しを実施して、少なくとも0.3mmの厚さの細片を形成する。
【0032】
細片を周辺温度で冷却する。
【0033】
細片が形成され、冷却されたら、レーザーまたはスタンピングを介してこれを切断して、所望の時計を得る。