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▶ ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイスの特許一覧

特許7526233ケースと、取り外し可能なブレスレットと、及びブレスレットをケースに固定するシステムとを備える着用可能な物
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  • 特許-ケースと、取り外し可能なブレスレットと、及びブレスレットをケースに固定するシステムとを備える着用可能な物 図1
  • 特許-ケースと、取り外し可能なブレスレットと、及びブレスレットをケースに固定するシステムとを備える着用可能な物 図2
  • 特許-ケースと、取り外し可能なブレスレットと、及びブレスレットをケースに固定するシステムとを備える着用可能な物 図2a
  • 特許-ケースと、取り外し可能なブレスレットと、及びブレスレットをケースに固定するシステムとを備える着用可能な物 図3
  • 特許-ケースと、取り外し可能なブレスレットと、及びブレスレットをケースに固定するシステムとを備える着用可能な物 図4
  • 特許-ケースと、取り外し可能なブレスレットと、及びブレスレットをケースに固定するシステムとを備える着用可能な物 図5
  • 特許-ケースと、取り外し可能なブレスレットと、及びブレスレットをケースに固定するシステムとを備える着用可能な物 図6a
  • 特許-ケースと、取り外し可能なブレスレットと、及びブレスレットをケースに固定するシステムとを備える着用可能な物 図6b
  • 特許-ケースと、取り外し可能なブレスレットと、及びブレスレットをケースに固定するシステムとを備える着用可能な物 図6c
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】ケースと、取り外し可能なブレスレットと、及びブレスレットをケースに固定するシステムとを備える着用可能な物
(51)【国際特許分類】
   A44C 5/14 20060101AFI20240724BHJP
   G04B 37/16 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
A44C5/14 G
G04B37/16 Z
A44C5/14 Z
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022134702
(22)【出願日】2022-08-26
(65)【公開番号】P2023091724
(43)【公開日】2023-06-30
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】21216076.6
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】ドーハン・シュリヒティヒ
(72)【発明者】
【氏名】ロジェ・ウィルマン
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0125178(US,A1)
【文献】特開2000-253913(JP,A)
【文献】実開平6-82590(JP,U)
【文献】登録実用新案第3203984(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0323315(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106539207(CN,A)
【文献】米国特許第9357817(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 5/14
G04B 37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミドル部(21)があるケース(20)と、ブレスレット(30)と、及び前記ブレスレット(30)の各端を前記ミドル部(21)に取り外し可能に固定するための固定システム(100)とを備える着用可能な物(10)であって、
前記ミドル部(21)には、摺動空間を形成するように構成している2つの縦方向空洞(110a、110b)があり、
前記ブレスレット(30)の各端には、前記縦方向空洞(110a、110b)の1つに対して相補的な形のフック用ヘッド(31a、31b)があり、
前記フック用ヘッド(31a、31b)は、滑ることによって前記縦方向空洞(110a、110b)の1つと連係して前記固定システム(100)を形成するように構成しており、
前記着用可能な物(10)において、
前記固定システム(100)は、前記フック用ヘッド(31a、31b)の軸方向の運動を前記縦方向空洞(110a、110b)内にロックするための弾性収容手段(210、211、212、213)を備え、
前記弾性収容手段(210、211、212、213)には、高剛性のロック用突起(210)があり、
前記ロック用突起(210)は、前記縦方向空洞(110a、110b)それぞれの内壁にあり、
前記ロック用突起(210)は、前記フック用ヘッド(31a、31b)の弾性部分(231)の近傍にある2つの障害体(211、212)と連係し、
前記障害体(211、212)は、前記ロック用突起(210)を受け前記ロック用突起(210)をロックするロック手段を形成するように構成している障害体間空間(213)を形成し、
前記弾性収容手段(210、211、212、213)は、前記ブレスレット(30)が挿入されている間に前記フック用ヘッド(31a、31b)の前記弾性部分(231)を弾性変形させるように構成しており、
これによって、前記障害体(211、212)を越えて前記ロック用突起(210)が通過することを可能にし、前記ロック用突起(210)を前記障害体間空間(213)内にロックして、前記弾性部分(231)の弾性戻しによって前記フック用ヘッド(31a、31b)の軸方向の運動をロックし、
前記弾性収容手段(210、211、212、213)は、前記縦方向空洞(110a、110b)の底部(112)の方向に、前記フック用ヘッド(31a、31b)の前記弾性部分(231)を弾性変形させるように構成し、
前記フック用ヘッド(31a、31b)の前記弾性部分(231)は、前記フック用ヘッド(31a、31b)の端に形成された空欠部(232)によって形成される厚みが薄い領域にあり、前記フック用ヘッド(31a、31b)には、前記ロック用突起(210)を受けるように構成している溝(220)があり、
前記2つの障害体(211、212)が前記溝(220)内に配置される
ことを特徴とする着用可能な物(10)。
【請求項2】
前記溝(220)は、前記フック用ヘッド(31a、31b)の底面に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の着用可能な物(10)。
【請求項3】
前記フック用ヘッド(31a、31b)の前記弾性部分(231)の近傍に配置される前記2つの障害体(211、212)は、他の部分よりも厚みが厚い部分がある傾斜材料体の形であり、
前記傾斜材料体の前記厚い部分どうしが、前記障害体間空間(213)を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の着用可能な物(10)。
【請求項4】
傾斜材料体の形である前記2つの障害体(211、212)には、前記縦方向空洞(110a、110b)内における前記フック用ヘッド(31a、31b)の摺動方向の方を向いている傾斜面がある
ことを特徴とする請求項3に記載の着用可能な物(10)。
【請求項5】
前記弾性収容手段(210、211、212、213)は、可逆的であるように構成しており、前記弾性収容手段を形成する要素の1つを損傷せずに、前記フック用ヘッド(31a、31b)の軸方向の位置を解放することを可能にする
ことを特徴とする請求項1に記載の着用可能な物(10)。
【請求項6】
前記ブレスレット(30)には、2つのストランド(30a、30b)があり、
各ストランドには、そのストランドの端を形成するフック用ヘッド(31a、31b)があり、
前記フック用ヘッド(31a、31b)は、前記ブレスレット(30)の前記ストランド(30a、30b)と材料が一体的となっている
ことを特徴とする請求項1に記載の着用可能な物(10)。
【請求項7】
前記フック用ヘッド(31a、31b)は、ポリマー材料によって作られる
ことを特徴とする請求項1に記載の着用可能な物(10)。
【請求項8】
前記フック用ヘッド(31a、31b)は、熱可塑性材料によって作られる
ことを特徴とする請求項1に記載の着用可能な物(10)。
【請求項9】
前記フック用ヘッド(31a、31b)は、熱可塑性エラストマーによって作られる
ことを特徴とする請求項1に記載の着用可能な物(10)。
【請求項10】
前記ケース(20)の前記ミドル部(21)は、熱可塑性材料によって作られる
ことを特徴とする請求項1に記載の着用可能な物(10)。
【請求項11】
前記ケース(20)の前記ミドル部(21)は、ポリアミド11によって作られる
ことを特徴とする請求項1に記載の着用可能な物(10)。
【請求項12】
前記固定システム(100)は、前記縦方向空洞(110a、110b)の第1の端と第2の端のいずれを介しても前記ブレスレット(30)の取り付けができるように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載の着用可能な物(10)。
【請求項13】
前記縦方向空洞(110a、110b)は、6時の位置及び12時の位置にある前記ミドル部(21)の2つの円の区画にわたって延在している
ことを特徴とする請求項1に記載の着用可能な物(10)。
【請求項14】
腕時計である
ことを特徴とする請求項1に記載の着用可能な物(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースと、及び前記ケースに接続されるブレスレットとを備える、ユーザーの手首に着用するように意図された着用可能な物に関する。本発明は、特に、工具を使用せずにブレスレットの取り付けと取り外しを可能にするような、着用可能な物のケースにブレスレットを取り外し可能に固定する固定デバイスに関する。
【0002】
本発明は、特に、腕時計ケースと、この腕時計ケースに接続されたブレスレットとを備える腕時計であって、この接続が前記腕時計ケースに前記ブレスレットを取り外し可能に固定する固定デバイスを介して行われるものに関する。
【背景技術】
【0003】
ブレスレットを腕時計ケースに固定するための固定デバイスは、一般的に、組み付けに必要な様々な部品の数と、これらの部品の複雑さと製造の難しさの両方の点で、非常に複雑である。
【0004】
特に、ブレスレットの各ストランドの端と腕時計ケースをが組み付けるためには、それらが特別な形に加工されている必要がある。また、これらの様々な要素の取り付けには、かなりの時間がかかり、コストがかかる。
【0005】
通常の固定デバイスは、腕時計ケースのミドル部のリムに配置される2つのホーン又はその他の付属要素の存在に基づいており、ブレスレットストランドの端に横断方向の棒が挿入され、この横断方向の棒の両端が、各ホーンに形成された穴に挿入される。
【0006】
このようにブレスレットが腕時計ケースに固定されている場合、ブレスレットを交換できるようにするためには、特定の工具を用いる必要がある。この結果、ユーザーは、摩耗や審美的な理由のためにブレスレットを交換することを望む場合、一般的には、この交換作業を専門家に依頼する必要がある。したがって、この作業には時間がかかり、コストが発生する。
【0007】
工業的な観点から考えると、ミドル部のリムにある付属要素として機能するホーンやその他の要素によって、腕時計ケースの製造中又は仕上げ中の多くの操作の自動化が妨げられている。したがって、ホーンやその他の付加的な要素の損傷を避けるために、一部の操作を手動で行う必要がある。
【0008】
ブレスレットの交換を容易にするような固定デバイスが知られている。しかし、このような固定デバイスは、一般的に、製造が複雑であり、ブレスレットを確実にロックするために、ブレスレットストランドと腕時計ケースの間に、ばね、細長材のような部品を配置する必要がある。
【0009】
また、ブレスレットの交換を単純にする固定デバイスは、腕時計ケース及び/又はブレスレットの大幅な変更を必要とし、このことによって、これらの要素の製造が複雑になり、製造コストが増えてしまう。
【0010】
この結果、上記の既知の制約の少なくとも1つを解決するために、腕時計ケースにブレスレットを取り外し可能に固定する固定デバイス、より一般的には、着用可能な物にブレスレットを取り外し可能に固定する固定デバイス、を改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これに関連して、本発明は、設計が単純で低コストであり、ブレスレットと着用可能な物のケースの間に配置する部品を必要とせず、弾性連結とロックが確実であるような、着用可能な物のケースにブレスレットを取り外し可能に固定する固定デバイスを提供することを目的とする。したがって、本発明は、ブレスレットをケースにおける適切な位置に収容しロックするための付加的な部品を必要としない「一体的(モノブロック的)」な手法を提供することができる。
【0012】
本発明は、さらに、工具を使用せずにブレスレットをケースに容易に取り付けたり取り外したりできる固定デバイスを提供することを目的とする。したがって、ユーザーは、専門家を必要とせずに、摩耗した場合や美的特徴を変えたい場合に、ブレスレットを容易に交換することができる。
【0013】
また、本発明は、さらに、ブレスレットとケースを伝統的な手段によって完全に自動化することができ、固定デバイスの手動の修正操作を必要としないような、部品の容易な製造を可能にする固定デバイスを提供することを目的とする。
【0014】
本発明に係る固定デバイスのおかげで、ブレスレットを取り付けるためのホーンや付加的な要素がミドル部にないケースを提供することができ、これによって、対称的で容易に自動化できるようなケースを得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このために、本発明は、ミドル部があるケースと、ブレスレットと、及び前記ブレスレットの各端を前記ミドル部に取り外し可能に固定するための固定システムとを備える着用可能な物に関する。前記ミドル部には、摺動空間を形成するように構成している2つの縦方向空洞があり、前記ブレスレットの各端には、前記縦方向空洞の1つに対して相補的な形のフック用ヘッドがあり、前記フック用ヘッドは、滑ることによって前記縦方向空洞の1つと連係して前記固定システムを形成するように構成している。前記着用可能な物において、前記固定システムは、前記フック用ヘッドの軸方向の運動を前記縦方向空洞内にロックするための弾性収容手段を備え、前記弾性収容手段には、高剛性のロック用突起があり、前記ロック用突起は、前記縦方向空洞それぞれの内壁にあり、前記ロック用突起は、前記フック用ヘッドの弾性部分の近傍にある2つの障害体と連係し、前記障害体は、前記ロック用突起を受け前記ロック用突起をロックするロック手段を形成するように構成している障害体間空間を形成し、前記弾性収容手段は、前記ブレスレットが挿入されている間に前記フック用ヘッドの前記弾性部分を弾性変形させるように構成しており、これによって、前記障害体を越えて前記ロック用突起が通過することを可能にし、前記ロック用突起を前記障害体間空間内にロックして、前記弾性部分の弾性戻しによって前記フック用ヘッドの軸方向の運動をロックする。
【0016】
前段落に記載した特徴に加えて、本発明に係る着用可能な物は、単独で、又は技術的に可能な組み合わせにしたがって、以下の付加的な特徴の1つ又は複数を有することができる。
- 前記弾性収容手段は、前記縦方向空洞の底部の方向に、前記フック用ヘッドの前記弾性部分を弾性変形させるように構成している。
- 前記フック用ヘッドの前記弾性部分は、前記フック用ヘッドの端に形成された空欠部によって形成される厚みが薄い領域にある。
- 前記フック用ヘッドには、前記ロック用突起を受けるように構成している溝があり、前記2つの障害体が前記溝内に配置される。
- 前記溝は、前記フック用ヘッドの底面に形成される。
- 前記フック用ヘッドの前記弾性部分の近傍に配置される前記2つの障害体は、他の部分よりも厚みが厚い部分がある傾斜材料体の形であり、前記傾斜材料体の前記厚い部分どうしが、前記障害体間空間を形成する。
- 傾斜材料体の形である前記2つの障害体には、前記縦方向空洞内における前記フック用ヘッドの摺動方向の方を向いている傾斜面がある。
- 前記弾性収容手段は、可逆的であるように構成しており、前記弾性収容手段を形成する要素の1つを損傷せずに、前記フック用ヘッドの軸方向の位置を解放することを可能にする。
- 前記ブレスレットには、2つのストランドがあり、各ストランドには、そのストランドの端を形成するフック用ヘッドがあり、前記フック用ヘッドは、前記ブレスレットの前記ストランドと材料が一体的となっている。
- 前記フック用ヘッドは、ポリマー材料、好ましくは熱可塑性材料、によって作られる。
- 前記フック用ヘッドは、熱可塑性エラストマーによって作られる。
- 前記ケースの前記ミドル部は、熱可塑性材料、好ましくはポリアミド11、によって作られる。
- 前記固定システムは、前記縦方向空洞の第1の端と第2の端のいずれを介しても前記ブレスレットの取り付けができるように構成している。
- 前記縦方向空洞は、6時の位置及び12時の位置にある前記ミドル部の2つの円の区画にわたって延在している。
【0017】
好ましくは、前記着用可能な物は、腕時計である。
【0018】
図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の目的、利点及び特徴が一層明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る着用可能な物についての実施例の第1の斜視図を示している。
図2図2は、本発明に係る着用可能な物についての実施例の第2の斜視図を示しており、ブレスレットストランドがミドル部に取り付けられていない。
図2a図2aは、図2の一部の拡大図であり、縦方向空洞が形成されたミドル部を詳細に示している。
図3】ケースのyz平面における着用可能な物の断面図を示しており、縦方向空洞と、その縦方向空洞内にロックされたフック用ヘッドの断面を示すことができている。
図4図4及び5は、フック用ヘッドの部分におけるブレスレットストランドを詳細に示している。図4は、ストランドの上面を詳細に示している斜視図である。
図5】ストランドの底面を詳細に示している斜視図である。
図6図6a~6cは、本発明に係る着用可能な物のミドル部にブレスレットを取り付ける様々な段階を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
すべての図において、別途言及していないかぎり、共通の要素には同じ参照番号を割り当てている。
【0021】
図1は、本発明に係る着用可能な物10についての実施例の第1の斜視図を示している。ここで、この着用可能な物10は、ユーザーの手首に着用するように意図された腕時計のような、計時器の形態である。また、着用可能な物10は、手首などに着用されるブレスレットを用いて着用されるように意図された、歩数計、心拍数モニター又は他の着用可能な物であることができる。
【0022】
図2は、本発明に係る着用可能な物10についての実施例の第2の斜視図を示しており、ブレスレットストランドがミドル部に取り付けられていない。
【0023】
図2aは、図2の一部の拡大図であり、縦方向空洞が形成されたミドル部を詳細に示している。
【0024】
着用可能な物10には、ケース20があり、このケース20は、計時器用ムーブメント(簡明性のために図示せず)などを受けるように意図されている。計時器用ムーブメントは、現在時刻のような情報を表示する手段を担持し駆動する。
【0025】
ケース20には、ミドル部21があり、このミドル部21は、底側にて裏部23によって、また、上側にて風防22によって、閉じられる。ケース20は、さらに、ミドル部21に取り付けられ風防22を担持することができるベゼル(図示せず)を備えることができ、このベゼルは、随意的に、回転するものであることができる。
【0026】
ケース20は、主平面Pを形成し、この主平面Pは、例えば図1において、横方向の軸xと縦方向の軸yを含んでいることがわかる。軸zは、主平面Pに対して垂直に延びており、ケース20の厚みの軸を形成する。主平面Pは、好ましくは、計時器用ムーブメントにあるプレートの平坦な部分と平行である。
【0027】
図示している実施例において、横方向の軸xは、3時-9時の軸と平行であり、縦方向の軸yは、6-12時の軸と平行である。
【0028】
例として示したケース20は、概して環状の形である。しかし、ケース20は、本発明の文脈から逸脱することなく、他の既知の形態であることができる。
【0029】
着用可能な物10は、さらに、フレキシブルであり取り外し可能なブレスレット30を備え、このブレスレット30の2つの端が、固定システム100を介して、ケース20のミドル部21に取り外し可能に連結されるように意図されている。固定システム100は、工具を使用せずに、ブレスレット30をケース20に固定し、ブレスレット30を適切な位置にロックし、ブレスレット30を容易に交換することを可能にする。
【0030】
固定システム100のおかげで、ブレスレット30の弾性収容を可逆的に行うことができる。このことは、ケース20のブレスレット30を分解する際に少なくとも1つの要素を破壊ないし損傷してしまう、いわゆる不可逆的な弾性収容システムとは対照的である。
【0031】
ブレスレット30として、閉じデバイス(図示せず)によって互いに接続される2つのストランド30a、30bの形態のものを示している。閉じデバイスは、ブレスレット30の2つのストランド30a、30bをユーザーの手首のまわりに取り付ける機能を行う、クラスプ、展開式ループ又は任意の他の要素である。
【0032】
別の実施形態において、ブレスレット30は、単一のストランドを備えるものである。
【0033】
ミドル部21には、2つの縦方向空洞110a、110bがあり、これらの2つの縦方向空洞110a、110bは、ブレスレット30の各ストランド30a、30bの端、具体的には、ブレスレット30の各ストランド30a、30bの端を形成するフック用ヘッド31a、31b、を受けるように構成している。図2aの拡大図において、第1の縦方向空洞110aを詳細に示している。
【0034】
縦方向空洞110a、110bは、ミドル部21に形成され、好ましいことに、ブレスレットを固定するために現在当然のように用いられている固定用ホーンの代わりに用いることができる。縦方向空洞110a、110bは、ブレスレット30のストランド30a、30bのフック用ヘッド31a、31bと連係して、ブレスレット30の固定システム100を形成する。
【0035】
このように、本発明に係るケース20のミドル部21には、ブレスレット30を固定するための付加的な要素がないことが観察される。このために、ケース20の製造を完全に自動化された形態で行うことができる。
【0036】
縦方向空洞110a、110bは、互いに反対側にある2つの固定用部分において形成され、これらの固定用部分は、表盤(図示せず)の両側に位置し、好ましくは、6時と12時の位置にある。
【0037】
縦方向空洞110a、110bは、6時と12時の位置にある、ミドル部21における2つの円の区画にわたって形成される。
【0038】
縦方向空洞110a、110bは、ケース20の横方向の軸xと平行な摺動軸X-Xを形成する縦方向の軸に沿った摺動空間を形成する。
【0039】
縦方向空洞110a、110bは、ブレスレット30の取り付けと取り外しの際に、ブレスレット30のストランド30a、30bのフック用ヘッド31a、31bを受け、摺動軸X-Xに沿って並進運動するようにフック用ヘッド31a、31bをガイドするように構成している。
【0040】
したがって、ストランド30a、30bは、フック用ヘッド31a、31bをミドル部21の縦方向空洞110a、110b内にて滑らせることによって、ミドル部21に取り付けられる。
【0041】
縦方向空洞110a、110bは貫通しており、すなわち、縦方向空洞110a、110bは第1の端と第2の端において開いている。これによって、縦方向空洞110a、110bの第1の端及び第2の端の両方を介して、すなわち、リュウズ(3時の位置)側の端を介してもリュウズの反対(9時の位置)側の端を介しても、滑らせることによって、ブレスレット30を挿入したり取り外したりすることが可能となる。
【0042】
ストランド30a、30bのフック用ヘッド31a、31bは、縦方向空洞110a、110bに対して相補的な形であり、この形は、縦方向空洞110a、110bに嵌まり、縦方向空洞110a、110b内において摺動軸X-Xに沿ってまっすぐに滑ることによって連係するように構成している。
【0043】
図3は、yz平面における腕時計10の断面図を示しており、縦方向空洞110a、110bの断面と、縦方向空洞110a、110b内にてロックされたフック用ヘッド31a、31bの断面を示すことができている。
【0044】
したがって、縦方向空洞110a、110bは、実質的にフックを行う形の断面となっている。好ましいことに、縦方向空洞110a、110bには、縦方向空洞110a、110bの縦方向の軸に対応する摺動軸X-Xに沿った並進運動を除いてブレスレットの運動をロックするための対応起伏部分がある。
【0045】
このような形のおかげで、好ましいことに、滑ることによって縦方向空洞110a、110b内におけるストランド30a、30bが並進運動をすることができ、かつ、他の自由度については、ストランド30a、30bの材料厚みよりも厚い付加的な材料厚みがフック用ヘッド31a、31bの端にあることによってロックする。
【0046】
当然、他の実施形態も考えられる。例えば、縦方向空洞110a、110b及び相補的なフック用ヘッドの断面は、円形、L字形、T字形、C字形などであることができる。
【0047】
固定システム100は、さらに、ミドル部21の縦方向空洞110a、110b内における各ストランド30a、30bの軸方向の運動を固定しロックするための弾性収容手段を備え、これによって、各ストランド30a、30bの位置をいわゆるロック位置にロックする。
【0048】
弾性収容手段は、クリップすること/クリップを外すことによって、ミドル部21においてストランド30a、30bのフック用ヘッド31a、31bの可逆的弾性収容を行うように構成している弾性収容手段である。
【0049】
弾性収容手段は、ロック用突起210を備え、これは、特に図2に示しているように、例えば、ブロムスタッド又はフィンガーである。ロック用突起210は、高剛性であり、各縦方向空洞110a、110bにおいて、摺動軸X-Xを中心にセンタリングされている。
【0050】
好ましいことに、ロック用突起210は、ミドル部21と材料が一体的となっている。
【0051】
ロック用突起210は、ストランド30a、30bのフック用ヘッド31a、31bの底面にある溝220と連係するように構成している。ブレスレット30を取り付けしている間に、ロック用突起210が溝220内に入り込む。溝220は、ロック用突起210を受けるように構成している。
【0052】
例として示している実施例において、溝220は、フック用ヘッド31a、31bの底面に形成されている。しかし、本発明の文脈から逸脱することなく、フックの形を反転させることなどによってヘッドの断面の形を変えることによって、そして、溝と連係するようにロック用突起210の位置を変えることによって、フック用ヘッドの上面に溝を形成することも可能である。
【0053】
図4及び5は、ブレスレット30のストランド30a、30bのフック用ヘッド31a、31bにおける部分を詳細に示している。図4は、ストランド30a、30bの上面を詳細に示している斜視図であり、図5は、ストランド30a、30bの底面を詳細に示している斜視図である。
【0054】
ブレスレットストランドの底面という用語は、ユーザーの皮膚と少なくとも部分的に接触するように意図された面を意味し、この底面の反対側の面が、ストランドの上面と考えられることは明らかである。
【0055】
溝220は、底部221及び2つの側面222、223によって形成される。
【0056】
第1の側面222は、実質的に平坦であり、第2の側面223は、ミドル部21の環状の形と連係するように曲がっている。
【0057】
第1の側面222は、フック用ヘッド31a、31bの端側面230から特定の距離離れて位置しており実質的に平行な方向を向いている。
【0058】
溝220には、2つの障害体211、212があり、これらの2つの障害体211、212は、縦方向空洞110a、110b内にストランド30a、30bが嵌まっているときに、ロック用突起210が障害体211、212を通過することによって発生する応力の下で、ロック用突起210と連係して、フック用ヘッド31a、31bの弾性部分231を弾性変形させるように構成している。
【0059】
好ましいことに、障害体211、212は、フック用ヘッド31a、31bの弾性部分231の近傍に配置され、この弾性部分231は、ロック用突起210が障害体211、212を通過するときに変形するように意図された部分である。
【0060】
好ましいことに、障害体211、212は、傾斜材料体である。しかし、他の形も考えられる。
【0061】
傾斜材料体211、212は、第1の側面222から突き出るように構成している。
【0062】
これらの傾斜材料体211、212は、最も厚い部分どうしが溝220の中央領域の方を向くように構成している。したがって、2つの傾斜材料体211、212のうちの最も厚い箇所どうしが向き合う。
【0063】
2つの傾斜材料体211、212の間に、障害体間空間213が形成される。この障害体間空間213は、傾斜材料体211、212のうちの最も厚い部分の間に形成され、ロック用突起210を受け、縦方向空洞110a、110b内におけるストランド30a、30bの軸方向の運動をロックするロック手段を形成するように意図されている。
【0064】
ロック用突起210は、障害体間空間213と連係して、ブレスレット30の弾性収容手段を形成し、ロック用突起210が障害体間空間213内に位置しているときに、弾性部分231の弾性戻しによって、フック用ヘッド31a、31bの軸方向の運動をロックする。
【0065】
各傾斜材料体211、212の傾斜面は、溝220の縦方向の軸に沿って延在している。この傾斜面は、曲がっていることができ、また、平坦であることができる。好ましいことに、各傾斜材料体の傾斜面は、ブレスレット30を各縦方向空洞110a、110bに挿入する際の取り付け開始時において、ロックの近傍における取り付けに必要な力を増加させるように曲がっている。
【0066】
フック用ヘッド31a、31bの弾性部分231は、フック用ヘッド31a、31bの端にある厚みが薄い領域にあり、これによって、弾性収容手段が前記弾性部分231を、実質的にケース20の縦方向の軸に沿ってケース20の方に、又は縦方向空洞110、110bの底部112の方に、材料を押すことによって、弾性変形させる。
【0067】
フック用ヘッド31a、31bの弾性部分231は、フック用ヘッド31a、31bの端側面230にある。
【0068】
端側面230には、傾斜材料体211、212に少なくとも部分的に対向して配置される中央空欠部232が形成されている。
【0069】
中央空欠部232のおかげで、フック用ヘッド31a、31bの端、したがって、弾性部分231の端、において厚みが薄い領域を形成することができる。
【0070】
ストランド30a、30bが滑っているときに、ロック用突起210は、そのロック用突起210と傾斜材料体211、212との連係によってフック用ヘッド31a、31bの端部分に徐々に応力を与えて、空欠部がある中央部分231の弾性変形を発生させる。この弾性変形のおかげで、傾斜材料体211、212を越えてロック用突起210を通すこと、そして、障害体間空間213内にロック用突起210を収容することができる。
【0071】
ブレスレット30の各ストランド30a、30bのフック用ヘッド31a、31bは、ケース20のミドル部21よりもフレキシブルな材料によって作られ、これによって、ブレスレット30を取り付けているときに弾性部分231が変形することができる。
【0072】
好ましいことに、少なくともブレスレット30のフック用ヘッド31a、31bは、ポリマー材料、例えば、熱可塑性材料、によって作られる。
【0073】
好ましいことに、フック用ヘッド31a、31bは、TPV(ThermoPlastic Vulcanizate:熱可塑性加硫物)、TPU(thermoplastic polyurethane:熱可塑性ポリウレタン)、TPE(thermoplastic elastomer:熱可塑性エラストマー)又はTPO(thermoplastic polyolefin:熱可塑性ポリオレフィン)のタイプの熱可塑性エラストマーによって作られる。例として、フック用ヘッド31a、31bをOpti-Flex(商標)によって作ることができる。
【0074】
例として、ブレスレット30のフック用ヘッド31a、31bは、ブレスレット30の残りのストランド30a、30bと同じ材料によって作ることができ、また、異なる材料によって作ることができる。
【0075】
例として、ミドル部21は、金属性材料又はポリマーによって作られる。例として、ミドル部21は、熱可塑性材料によって作られる。例として、ミドル部21は、ポリウンデカンアミド又はナイロン11としても知られているポリアミド11によって作ることができる。
【0076】
ミドル部21は、好ましくは、一体的なミドル部である。しかし、いくつかの別々に製造された部品を組み付けたミドル部を作ることも考えられる。
【0077】
好ましいことに、ポリマー製のミドル部は、射出成形によって作られる一体的なミドル部である。
【0078】
ケース20のミドル部21へのブレスレット30の取り付けは、以下のように行う。図6a~6cに、様々な取り付けの段階を示している。
【0079】
図6aに示している第1の段階において、各ストランド30a、30bをミドル部21の縦方向空洞110a、110b内に挿入する。
【0080】
縦方向空洞110a、110b及び傾斜材料体211、212には対称性があり、ブレスレット30は、縦方向空洞110a、110bの第1の端と第2の端のいずれを介しても、すなわち、リュウズ側に位置する端又は反対側の端を介して、取り付けることができる。
【0081】
そして、各ストランド30a、30bを、縦方向空洞110a、110bの摺動軸X-Xに沿って、例えば、選択された取り付け方向にて、また、例えば、図6aに示している方向にて、縦方向空洞110a、110b内にて滑らせる。ストランド30a、30bを挿入するときに、ロック用突起210を溝220内に入れる。ロック用突起210には、溝220の第1の側面222に対して、接触する又は少なくとも対向する、接触面215がある。そして、このロック用突起210の接触面215は、さらに、傾斜材料体211、212の傾斜面と連係し、ストランド30a、30bを縦方向空洞110a、110b内にさらに入れるときに、傾斜材料体211、212の傾斜面上を滑る。
【0082】
図6bに、この段階について詳細に示している。
【0083】
ロック用突起210は、傾斜面211、212の傾斜面上を滑ることによって、そして、ユーザーが与える挿入応力の下で、フック用ヘッド31a、31bの領域の弾性変形が達成されるまで、フック用ヘッド31a、31bの端、より詳細には空欠部がある中央部分231、に徐々に応力を与える。
【0084】
空欠部がある中央部分231と、縦方向空洞110a、110bの底部112との間に形成される遊びのおかげで、材料が弾性変形することができ、これによって、図6cに示しているように、傾斜材料体211、212を通過させてロック用突起210を障害体間空間213内に配置することができる。
【0085】
ロック用突起210が障害体間空間213に入ると、ブレスレット30がケース20内の適切な位置にロックされ、ロック用突起210が傾斜材料体211、212の横方向の壁に対向して横方向にロックされる。
【0086】
ユーザーは、ブレスレット30を解放して分解するために、ストランド30a、30bの端をケース20に押し付けて、フック用ヘッド31a、31bの端、具体的には傾斜材料体間の空間213が位置している中央領域、を弾性変形させて、傾斜材料体211、212の傾斜面をロック用突起210の接触面215へと動かして、ロック用突起210を傾斜材料体間の空間213から解放する。
【0087】
ロック用突起210が障害体間空間213内に閉じ込められなくなると、摺動軸X-Xに沿った並進運動の力を与えて、第1の端又は第2の端を介して滑らせることによって、ストランド30a、30bを縦方向空洞110a、110b内から取り外すことができる。
【0088】
本発明に係るケース及びケースにブレスレットを固定するための固定システムのおかげで、ケースに固定用ホーンがなくケース全体に対称性があることによって、ケースを作る方法を非常に容易にすることができる。したがって、ケースとブレスレットの製造を自動化することができる。したがって、このようなアセンブリーとこのような着用可能な物の製造コストを減らすことができる。これは、特に、ケースに対する修正操作がなく、また、ブレスレットをケースに固定するための棒体のような付加的な要素を用いないためである。
【0089】
本発明に係る固定システムのおかげで、棒体、弾性クリップのようなブレスレットとミドル部の間の付加的な又は挿入される部品の使用、又はブレスレットの固定及び/又は取り外しに用いる工具(専用のものか日常的に使われるものであるかにかかわらず)を用いる必要性を回避することができる。
【0090】
また、本発明に係る固定システムのおかげで、ブレスレットの交換を単純化することができ、これによって、単純な手順で、工具を使用せず、ブレスレットを取り外しているときに固定システムの要素の1つを損傷せずに、摩耗した際にブレスレットを容易に新しいものに交換したり、美的特徴を変えたりすることができる。
【0091】
本発明について、ケース及びブレスレットストランドの端の特定の実施形態を用いて説明した。しかし、他の実施形態、そして、説明した実施形態から派生するものも考えられることは明らかである。
【符号の説明】
【0092】
10 着用可能な物
20 ケース
21 ミドル部
30 ブレスレット
30a、30b ストランド
31a、31b フック用ヘッド
100 固定システム
110a、110b 縦方向空洞
112 底部
210 ロック用突起
210、211、212、213 弾性収容手段
211、212 障害体
213 障害体間空間
220 溝
231 弾性部分
232 空欠部
図1
図2
図2a
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c