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特許7526241チョコレート菓子、チョコレート菓子の製造方法、及びチョコレート菓子に含まれる種実類の種子の香ばしさの向上方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】チョコレート菓子、チョコレート菓子の製造方法、及びチョコレート菓子に含まれる種実類の種子の香ばしさの向上方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/48 20060101AFI20240724BHJP
   A23G 1/54 20060101ALI20240724BHJP
   A23L 25/00 20160101ALI20240724BHJP
【FI】
A23G1/48
A23G1/54
A23L25/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022175214
(22)【出願日】2022-11-01
(65)【公開番号】P2024066024
(43)【公開日】2024-05-15
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390019987
【氏名又は名称】亀田製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100120857
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 英明
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-29149(JP,A)
【文献】特開2002-171910(JP,A)
【文献】国際公開第2020/165743(WO,A1)
【文献】特開2020-202765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00-1/56
A23L 25/00-25/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョコレート菓子であって、
前記チョコレート菓子が、チョコレートによって被覆された種実類の種子、又は、チョコレート及び種実類の種子の混合物であり、
前記チョコレートが、シソ科植物成分を含み、
前記シソ科植物成分が、シソ科植物の葉若しくは茎、及び/又はその抽出物からなり、
前記シソ科植物が、サボリー、タイム、オレガノ、ヒソップ、及びマジョラムからなる群から選択される1以上であり、
前記シソ科植物成分の質量比(乾燥質量基準)が、前記チョコレートに対して、1.0×10-8以上2.0×10-3以下であり、
前記種実類の種子が、ピーナッツ、マカダミアナッツ、ピスタチオ、及びアーモンドからなる群から選択される1以上である、
チョコレート菓子。
【請求項2】
チョコレート菓子の製造方法であって、
チョコレートによって種実類の種子を被覆する工程、又は、チョコレートと種実類の種子とを混合する工程を含み、
前記チョコレートが、シソ科植物成分を含み、
前記シソ科植物成分が、シソ科植物の葉若しくは茎、及び/又はその抽出物からなり、
前記シソ科植物が、サボリー、タイム、オレガノ、ヒソップ及びマジョラムからなる群から選択される1以上であり、
前記シソ科植物成分の質量比(乾燥質量基準)が、前記チョコレートに対して、1.0×10-8以上2.0×10-3以下であり、
前記種実類の種子が、ピーナッツ、マカダミアナッツ、ピスタチオ、及びアーモンドからなる群から選択される1以上である、
チョコレート菓子の製造方法。
【請求項3】
チョコレート菓子に含まれる種実類の種子の香ばしさの向上方法であって、
チョコレートによって種実類の種子を被覆する工程、又は、チョコレートと種実類の種子とを混合する工程を含み、
前記チョコレートが、シソ科植物成分を含み、
前記シソ科植物成分が、シソ科植物の葉若しくは茎、及び/又はその抽出物からなり、
前記シソ科植物が、サボリー、タイム、オレガノ、ヒソップ及びマジョラムからなる群から選択される1以上であり、
前記シソ科植物成分の質量比(乾燥質量基準)が、前記チョコレートに対して、1.0×10-8以上2.0×10-3以下であり、
前記種実類の種子が、ピーナッツ、マカダミアナッツ、ピスタチオ、及びアーモンドからなる群から選択される1以上である、
向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョコレート菓子、チョコレート菓子の製造方法、及びチョコレート菓子に含まれる種実類の種子の香ばしさの向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種実類の種子は、幅広く使用される食材の1つであり、香ばしさ等の独特の風味を有することが知られる。
また、その風味を増強するための調味剤が各種提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-202765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らは、種実類の種子について、特にチョコレートと組み合わせた場合に、香ばしさが弱まりやすいことを見出した。
【0005】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、チョコレート菓子に含まれる種実類の種子の香ばしさを向上させることができる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、チョコレートに、特定のシソ科植物成分を所定量配合することで上記課題を解決できる点を見出し、本発明を完成させた。具体的に、本発明は以下を提供する。
【0007】
(1) チョコレート菓子であって、
前記チョコレート菓子が、チョコレートによって被覆された種実類の種子、又は、チョコレート及び種実類の種子の混合物であり、
前記チョコレートが、シソ科植物成分を含み、
前記シソ科植物成分が、シソ科植物の葉若しくは茎、及び/又はその抽出物からなり、
前記シソ科植物が、サボリー、タイム、オレガノ、ヒソップ、及びマジョラムからなる群から選択される1以上であり、
前記シソ科植物成分の質量比(乾燥質量基準)が、前記チョコレートに対して、1.0×10-8以上2.0×10-3以下であり、
前記種実類の種子が、ピーナッツ、マカダミアナッツ、ピスタチオ、及びアーモンドからなる群から選択される1以上である、
チョコレート菓子。
【0008】
(2) チョコレート菓子の製造方法であって、
チョコレートによって種実類の種子を被覆する工程、又は、チョコレートと種実類の種子とを混合する工程を含み、
前記チョコレートが、シソ科植物成分を含み、
前記シソ科植物成分が、シソ科植物の葉若しくは茎、及び/又はその抽出物からなり、
前記シソ科植物が、サボリー、タイム、オレガノ、ヒソップ及びマジョラムからなる群から選択される1以上であり、
前記シソ科植物成分の質量比(乾燥質量基準)が、前記チョコレートに対して、1.0×10-8以上2.0×10-3以下であり、
前記種実類の種子が、ピーナッツ、マカダミアナッツ、ピスタチオ、及びアーモンドからなる群から選択される1以上である、
チョコレート菓子の製造方法。
【0009】
(3) チョコレート菓子に含まれる種実類の種子の香ばしさの向上方法であって、
チョコレートによって種実類の種子を被覆する工程、又は、チョコレートと種実類の種子とを混合する工程を含み、
前記チョコレートが、シソ科植物成分を含み、
前記シソ科植物成分が、シソ科植物の葉若しくは茎、及び/又はその抽出物からなり、
前記シソ科植物が、サボリー、タイム、オレガノ、ヒソップ及びマジョラムからなる群から選択される1以上であり、
前記シソ科植物成分の質量比(乾燥質量基準)が、前記チョコレートに対して、1.0×10-8以上2.0×10-3以下であり、
前記種実類の種子が、ピーナッツ、マカダミアナッツ、ピスタチオ、及びアーモンドからなる群から選択される1以上である、
向上方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、チョコレート菓子に含まれる種実類の種子の香ばしさを向上させることができる技術が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明はこれに特に限定されない。
【0012】
<チョコレート菓子>
本発明のチョコレート菓子は、以下の要件を全て満たす。
・チョコレート菓子が、チョコレートによって被覆された種実類の種子、又は、チョコレート及び種実類の種子の混合物である。
・チョコレートが、シソ科植物成分を含む。
・シソ科植物成分が、シソ科植物の葉若しくは茎、及び/又はその抽出物からなる。
・シソ科植物が、サボリー、タイム、オレガノ、ヒソップ、及びマジョラムからなる群から選択される1以上である。
・シソ科植物成分の質量比(乾燥質量基準)が、チョコレートに対して、1.0×10-8以上2.0×10-3以下である。
・種実類の種子が、ピーナッツ、マカダミアナッツ、ピスタチオ、及びアーモンドからなる群から選択される1以上である。
【0013】
本発明は、チョコレートに対し、特定のシソ科植物成分を所定量配合する点に主要な技術的特徴がある。
本発明者らが検討した結果、このようなシソ科植物成分を配合することで、意外にも、チョコレートと組み合わせた場合であっても種実類の種子の香ばしさが弱まらず、増強され得ることを見出した。
その理由は定かではないが、シソ科植物成分が、チョコレートの存在下で、種実類の種子と似た後味を形成することによるものと推察される。
【0014】
本発明において、「種実類の種子の香ばしさ」とは、各種実類の種子に特有の風味の1つであり、焦げたもののような香りや後味を包含する。
種実類の種子の香ばしさの有無や程度は、実施例に示した官能評価によって特定できる。
【0015】
以下、本発明のチョコレート菓子の構成について詳述する。
【0016】
(1)チョコレート菓子
本発明における「チョコレート菓子」とは、チョコレート及び種実類の種子を材料とする菓子であり、チョコレートによって被覆された種実類の種子、又は、チョコレート及び種実類の種子の混合物の形態である。
なお、本発明におけるチョコレート菓子は、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)で規定されたチョコレート菓子を満たすものも、満たさないものもいずれも包含し得る。
【0017】
(1-1)チョコレートによって被覆された種実類の種子
本発明において「チョコレートによって被覆された種実類の種子」とは、種実類の種子の表面の一部又は全体がチョコレートによって覆われたものである。
【0018】
本発明の好ましい態様は、種実類の種子の表面全体がチョコレートに被覆された態様(例えば、種実類の種子がアーモンドの場合アーモンドチョコと呼ばれる。)を包含する。このような態様であっても、本発明によれば、チョコレート菓子を摂食した際に、種実類の種子の香ばしさが充分に感じられる。
【0019】
チョコレートは、種実類の種子の表面に直接的に被覆されていてもよく、種実類の種子の表面にコーティングされた衣等の表面に間接的に被覆されていてもよい。
【0020】
チョコレートの被覆量は、適宜調整することができ、特に限定されない。
チョコレートの被覆量の下限値は、シソ科植物成分による効果を奏しやすいという観点から、種実類の種子の総質量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
チョコレートの被覆量の上限値は、種実類の種子の香ばしさを奏しやすいという観点から、種実類の種子の総質量に対して、好ましくは1500質量%以下、より好ましくは1000質量%以下である。
なお上記の値(質量%)は、シソ科植物成分を含むチョコレートの総質量を種実類の種子の総質量で割り、100を掛けた値(シソ科植物成分を含むチョコレートの総質量×100/種実類の種子の総質量)を意味する。
【0021】
(1-2)チョコレート及び種実類の種子の混合物
本発明において、「チョコレート及び種実類の種子の混合物」とは、チョコレート塊に、1又は複数の種実類の種子が含まれたものである。
【0022】
チョコレート及び種実類の種子の混合物においては、チョコレートと、種実類の種子の表面の一部又は全体とが接触する。
ただし、チョコレートは、種実類の種子の表面に直接的に接触していてもよく、種実類の種子の表面にコーティングされた衣等の表面を介して間接的に接触していてもよい。
【0023】
チョコレート及び種実類の種子の混合物には、チョコレート及び種実類の種子以外の材料が含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。
【0024】
チョコレート及び種実類の種子の混合比は、適宜調整することができ、特に限定されない。
チョコレート及び種実類の種子の混合比(チョコレート:種実類の種子の総量(質量比))は、好ましくは100:30~100:1500、より好ましくは100:50~100:1000である。
【0025】
(2)種実類の種子
種実類の種子は、ピーナッツ、マカダミアナッツ、ピスタチオ、及びアーモンドからなる群から選択される1以上である。種実類の種子は、1種単独でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。
【0026】
本発明における種実類の産地や品種は特に限定されない。
【0027】
本発明において「種実類の種子」とは、種実類の殻を除いた食用部を意味し、通常、胚、子葉等を含む。
種実類の種子には、渋皮(薄皮)等が付着していてもよく、付着していなくてもよい。
【0028】
種実類の種子は、加工されていないもの(生の種子)であってもよく、加工されたものであってもよい。
種実類の種子の加工方法としては、粉砕、フライ、焙煎(ロースト)、調味(塩等による)、コーティング(小麦粉、寒梅粉等の衣による)等が挙げられる。
加工方法は、1種単独でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。
また、種実類の種子の加工のタイミングは特に限定されず、加工方法の種類等に応じて適宜選択できる。
【0029】
種実類の種子は、必要に応じて殺菌処理(50~100℃での低温殺菌処理等)を行ってもよい。
【0030】
本発明において「ピーナッツ」とは、落花生(学名:Arachis hypogaea)の種子を意味する。
【0031】
本発明において「マカダミアナッツ」とは、マカダミア(学名:Macadamia integrifolia、又はMacadamia tetraphylla)の種子を意味する。
【0032】
本発明において「ピスタチオ」とは、ピスタチオ(学名:Pistacia vera)の種子を意味する。
【0033】
本発明において「アーモンド」とは、アーモンド(学名:Prunus dulcis (Mill.) D.A.Webb)の種子を意味する。
【0034】
(3)チョコレート
本発明において「チョコレート」とは、チョコレートとして分類される任意の材料を包含する。
【0035】
本発明における「チョコレート」は、例えば、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)で定義される「チョコレート類」を包含する。ただし、本発明におけるチョコレートは、該「チョコレート類」に限定されない。
【0036】
本発明におけるチョコレートとしては、ミルクチョコレート、ダークチョコレート、スイートチョコレート、ホワイトチョコレート等が挙げられる。
これらのうち、本発明の効果が奏されやすいという観点から、ミルクチョコレートが好ましい。
【0037】
本発明における好ましいチョコレートとしては、本発明の効果が奏されやすいという観点から、カカオ分が7%以上45%以下であるものが挙げられる。
なお、「カカオ分」とは、カカオ豆に由来するカカオニブ、カカオマス、ココアバター、ココアケーキ、及びココアパウダー(香料その他のものを含まないもの)の合計値から水分を除いた値を意味する。
【0038】
(4)シソ科植物成分
チョコレートには、シソ科植物成分が含まれる。
シソ科植物成分は、シソ科植物の葉若しくは茎、及び/又はその抽出物からなる。
また、シソ科植物は、サボリー、タイム、オレガノ、ヒソップ、及びマジョラムからなる群から選択される1以上である。シソ科植物は、1種単独でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。
【0039】
(4-1)シソ科植物の葉又は茎
本発明において「シソ科植物の葉」及び「シソ科植物の茎」の形態は特に限定されず、採取された葉や茎をそのまま使用してもよく、それらの乾燥物や破砕物(粉末等)であってもよい。
【0040】
「シソ科植物の葉」及び「シソ科植物の茎」は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
「シソ科植物の葉」及び「シソ科植物の茎」は市販品を使用してもよい。このような市販品として、「サボリーパウダー」、「オレガノパウダー」(それぞれ、エスビー食品株式会社製)等が挙げられる。
【0042】
(4-2)シソ科植物の葉又は茎の抽出物
シソ科植物の葉又は茎の抽出物は、シソ科植物の葉又は茎から、任意の抽出方法(水蒸気蒸留、溶媒抽出、圧搾、超臨界抽出等)によって得られる。
【0043】
抽出条件は、香辛料の抽出物(エキス)の製造において使用される方法を採用できる。
例えば、抽出方法が水蒸気蒸留である場合、シソ化植物の全草(好ましくは葉部)を水蒸気蒸留装置に仕込み、水蒸気蒸留を行った後、得られた抽出液を静置し、分離した製油部を抽出物として使用できる。
【0044】
(4-3)シソ科植物
シソ科植物成分の由来となるシソ科植物は、サボリー、タイム、オレガノ、ヒソップ、又はマジョラムである。
【0045】
「サボリー(Savory)」(学名:Satureja hortensis、又はS.montana)は、料理用ハーブ等として知られる。
【0046】
「タイム(Thyme)」(学名:Thymus(vulgaris))は、料理用ハーブ等として知られる。
【0047】
「オレガノ(Oregano)」(学名:Origanum vulgare)は、料理用ハーブ等として知られる。
【0048】
「ヒソップ(Hyssop)」(学名:Hyssopus officinalis L.)は、料理用ハーブ等として知られる。
【0049】
「マジョラム(Marjoram)」(学名:Origanum majorana)は、料理用ハーブ等として知られる。
【0050】
(4-4)シソ科植物成分を含むチョコレート
溶融状態のチョコレートに、シソ科植物成分を添加し、撹拌等をすることで、シソ科植物成分を含むチョコレートが得られる。
【0051】
チョコレートにおけるシソ科植物成分の質量比は、チョコレートに対して、1.0×10-8以上2.0×10-3以下である。
なお、上記質量比は、シソ科植物成分の乾燥質量と、チョコレートの総質量に基づく値(シソ科植物成分の乾燥質量/チョコレートの総質量)である。
シソ科植物成分を複数種類用いる場合は、その総量が上記範囲内にあればよい。
【0052】
シソ科植物成分の質量比の下限値は、チョコレートに対して、1.0×10-8以上、好ましくは1.0×10-7以上、より好ましくは5.0×10-7以上である。
【0053】
シソ科植物成分の質量比の上限値は、チョコレートに対して、2.0×10-3以下、好ましくは1.0×10-3以下、より好ましくは5.0×10-4以下である。
【0054】
溶融状態のチョコレートに、シソ科植物成分を添加する際に、シソ科植物成分の分散性を高める観点から、シソ科植物成分の希釈物を用いてもよい。
シソ科植物成分の希釈物としては、例えば、シソ科植物成分と、油脂(中鎖脂肪酸油等)や乳化剤等との混合物が挙げられる。
希釈物におけるシソ科植物成分の希釈倍率は、好ましくは10以上100以下である。
【0055】
(5)その他の成分
本発明の食品組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記成分に加え、菓子に添加され得る任意の成分が配合されていてもよく、配合されていなくともよい。
【0056】
その他の成分としては、食塩、糖類、食用油脂、シーズニング、乳製品、乳化剤、香料等が挙げられる。これらの成分の種類や配合量は、得ようとする効果等に応じて適宜調整できる。
【0057】
<チョコレート菓子の製造方法>
本発明は、本発明のチョコレート菓子の製造方法も包含する。
チョコレート菓子の構成等は、上述と同様である。
【0058】
チョコレート菓子の製造方法の詳細は特に限定されず、チョコレート菓子の形態等に応じた任意の方法や条件を採用できる。
【0059】
得られたチョコレート菓子は、そのまま流通させてもよく、容器等に封入して保存してもよい。
【0060】
(1)チョコレートによって被覆された種実類の種子の製造方法
チョコレート菓子が、チョコレートによって被覆された種実類の種子である場合、チョコレート菓子の製造方法は、チョコレートによって種実類の種子を被覆する工程を含む。
【0061】
チョコレートによって被覆された種実類の種子は、例えば、以下の工程によって得られる。
(1-1)種実類の種子、及びシソ科植物成分を含むチョコレートをそれぞれ準備する。
(1-2)種実類の種子の表面に、溶融状態のチョコレートを噴霧する。
(1-3)噴霧後、冷却によってチョコレートを固化させ、チョコレート菓子を得る。
【0062】
(2)チョコレート及び種実類の種子の混合物の製造方法
チョコレート菓子が、チョコレート及び種実類の種子の混合物である場合、チョコレート菓子の製造方法は、チョコレートと種実類の種子とを混合する工程を含む。
【0063】
チョコレート及び種実類の種子の混合物は、例えば、以下の工程によって得られる。
(2-1)種実類の種子、及びシソ科植物成分を含むチョコレートをそれぞれ準備する。
(2-2)溶融状態のチョコレートの中に、種実類の種子をそのまま、又は種実類の種子の破砕物等を加え、混合する。
(2-3)混合後、冷却によってチョコレートを固化させ、チョコレート菓子を得る。
【0064】
<種実類の種子の香ばしさの向上方法>
本発明は、チョコレート菓子に含まれる種実類の種子の香ばしさの向上方法も包含する。
チョコレート菓子の構成等は、上述と同様である。
【0065】
本発明においては、所定のシソ科植物成分を特定量含むチョコレートを使用することで、チョコレート菓子に含まれる種実類の種子の香ばしさが充分に感じられるようになる。
【実施例
【0066】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
<チョコレート菓子の作製-1>
以下の方法に基づき、チョコレート菓子を作製した。
なお、本例で作製したチョコレート菓子は、「チョコレートによって被覆された種実類の種子」に相当する。
【0068】
(1)種実類の種子の準備
本例では、種実類の種子として、市販のピーナッツ、マカダミアナッツ、ピスタチオ、アーモンド、クルミ、ヘーゼルナッツを準備した。
【0069】
(2)シソ科植物成分の準備
本例では、シソ科植物成分として、シソ科植物(サボリー、タイム、オレガノ、ヒソップ、又はマジョラム)の抽出物を用いた。
シソ科植物の抽出物は、各シソ科植物の葉若しくは茎を乾燥及び粉砕した後、水蒸気蒸留による抽出から得られたものを使用した。
【0070】
(3)チョコレートの準備
市販のチョコレート(カカオ分:20~30%)を、50~70℃で加温し融解させた。
次いで、シソ科植物成分を表1~3中の「シソ科植物成分」に示す割合で添加した。
チョコレートは、加温し続けて溶融状態を保ち、以下の試験に供した。
【0071】
(4)チョコレート菓子の製造
種実類の種子の表面全体に対し、溶融状態のチョコレートを噴霧することで少量ずつ纏わせ、チョコレートによって種実類の種子を被覆した。
チョコレートの被覆量は、種実類の種子の使用総量:チョコレートの使用総量(質量比)=100:150に設定した。
チョコレートによって被覆された種実類の種子を15℃で24時間冷却し、チョコレート菓子を得た。
【0072】
<チョコレート菓子の評価-1>
上記で得られたチョコレート菓子について、以下の方法に基づき、官能評価を行った。
その結果を表1~3中の「評価」に示す。
【0073】
(1)評価方法
3名の評価パネルに、各チョコレート菓子を喫食させ、下記の基準で評価させた。
各結果に関するパネル間での審議に基づき、最終評価結果を提示させた。
【0074】
(2)評価基準
A:種実類の種子の香ばしさが極めて強い。
B:種実類の種子の香ばしさが強い。
C:種実類の種子の香ばしさがやや強い。
D:種実類の種子の香ばしさが弱い。
E:種実類の種子の香ばしさがない。
【0075】
<チョコレート菓子の作製-2>
以下の方法に基づき、チョコレート菓子を作製した。
なお、本例で作製したチョコレート菓子は、「チョコレート及び種実類の種子の混合物」に相当する。
【0076】
(1)種実類の種子の準備
本例では、種実類の種子として、市販のピーナッツを準備した。
【0077】
(2)シソ科植物成分の準備
本例では、シソ科植物成分として、シソ科植物(サボリー、オレガノ)の粉砕物を用いた。
シソ科植物の粉砕物は、市販のサボリー粉砕物(パウダー)、及びオレガノ粉砕物(パウダー)(それぞれ、エスビー食品株式会社製)を使用した。
【0078】
(3)チョコレートの準備
市販のチョコレート(カカオ分:20~30%)を、50~70℃で加温し融解させた。
次いで、シソ科植物成分を表4中の「シソ科植物成分」に示す割合で添加した。
チョコレートは、加温し続けて溶融状態を保ち、以下の試験に供した。
【0079】
(4)チョコレート菓子の製造
溶融状態のチョコレートに、粗く砕いた種実類の種子を加え、混合した。得られた混合物を、一口大ずつアルミホイルカップに分けた。
チョコレートの混合量は、種実類の種子の使用総量:チョコレートの使用総量(質量比)=100:200に設定した。
チョコレート及び種実類の種子の混合物を15℃で24時間冷却し、チョコレート菓子を得た。
【0080】
<チョコレート菓子の評価-2>
上記で得られたチョコレート菓子について、<チョコレート菓子の評価-1>と同様の方法で、官能評価を行った。
その結果を表4中の「評価」に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
実施例の各結果のとおり、本発明の要件を全て満たすチョコレート菓子は、該菓子に含まれる種実類の種子の香ばしさが優れていた。
この結果は、シソ科植物成分の形態(抽出物、破砕物等)を問わずに得られた。
【0086】
他方で、本発明の要件のうち、特にシソ科植物成分の質量比の要件を満たさない場合、種実類の種子の香ばしさが顕著に低かった。
【0087】
また、本発明の要件を満たすチョコレートを用いた場合であっても、種実類の種子がクルミや、ヘーゼルナッツである場合は効果が認められなかった。