IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーロン インダストリーズ インクの特許一覧

特許7526267感光性積層体、感光性積層体の製造方法、および回路基板の製造方法
<>
  • 特許-感光性積層体、感光性積層体の製造方法、および回路基板の製造方法 図1
  • 特許-感光性積層体、感光性積層体の製造方法、および回路基板の製造方法 図2
  • 特許-感光性積層体、感光性積層体の製造方法、および回路基板の製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】感光性積層体、感光性積層体の製造方法、および回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20240724BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20240724BHJP
   G03F 7/033 20060101ALI20240724BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20240724BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
G03F7/004 512
G03F7/027 502
G03F7/004 501
G03F7/033
H05K3/06 J
H05K3/18 D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022538875
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-01
(86)【国際出願番号】 KR2020017155
(87)【国際公開番号】W WO2021137444
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2019-0179860
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0099130
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0125243
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】ソク サンフン
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-155978(JP,A)
【文献】特開2006-106287(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0285808(US,A1)
【文献】特開2007-327979(JP,A)
【文献】特開2007-128015(JP,A)
【文献】特開2019-144479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
H05K 3/06
H05K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材;および3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を含む光重合性化合物とアルカリ現像性バインダー樹脂とを含む感光性樹脂層;を含み、
前記感光性樹脂層内に1μm未満の直径を有する気泡が5個/mm以下存在し、
前記感光性樹脂層は、1μm~5μmの直径を有する気泡を含まず、
前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物は、下記の化学式1の化合物を含み、
前記光重合性化合物は、単官能(メタ)アクリレート化合物及び二官能(メタ)アクリレート化合物をさらに含み、
前記光重合性化合物は、前記単官能(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を110重量部以上500重量部以下で含み、
前記光重合性化合物は、前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して前記二官能(メタ)アクリレート化合物500重量部以上1000重量部以下で含む、感光性積層体
【化7】
前記化学式1において、
は水素、または炭素数1~10のアルキルであり、
は炭素数1~10のアルキレンであり、
は炭素数1~20の中心グループを含むpが官能基であり、
n2は1~20の整数であり、
pは前記R に置換される官能基数であり、3~10の整数である
【請求項2】
前記支持基材と前記感光性樹脂層との間の界面の反対面から前記感光性樹脂層の全体厚さの50%以内に、1μm未満の直径を有する気泡が3個/mm以下存在する、請求項1に記載の感光性積層体。
【請求項3】
前記支持基材の厚さは、1μm~100μmであり、
前記感光性樹脂層の厚さは、1μm~100μmである、請求項1に記載の感光性積層体。
【請求項4】
前記感光性樹脂層は、紫外線露光およびアルカリ現像後、0.3μm~4μmの断面直径を有する欠陥(Defect)が3個/mm以下存在する、請求項1に記載の感光性積層体。
【請求項5】
前記単官能(メタ)アクリレート化合物は、炭素数1~10のアルキレンオキシド基を含む(メタ)アクリレートを含む、請求項に記載の感光性積層体。
【請求項6】
前記光重合性化合物は、炭素数1~10のアルキレンオキシド基を含む(メタ)アクリレートを含む単官能(メタ)アクリレート化合物;および炭素数1~20の中心グループに炭素数1~10のアルキレンオキシド基および(メタ)アクリレート官能基がそれぞれ3個以上結合した構造を有する3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物;を含む、請求項に記載の感光性積層体。
【請求項7】
前記アルカリ現像性バインダー樹脂は、20,000g/mol~300,000g/molの重量平均分子量および20℃以上150℃以下のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の感光性積層体。
【請求項8】
前記アルカリ現像性バインダー樹脂は、100mgKOH/g以上300mgKOH/gの酸価を有する、請求項1に記載の感光性積層体。
【請求項9】
請求項1に記載の感光性積層体を用いる、回路基板の製造方法。
【請求項10】
115℃以上の沸点を有する高沸点溶媒および100℃以下の沸点を有する低沸点溶媒を含む混合溶媒;3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を含む光重合性化合物;アルカリ現像性バインダー樹脂;および光開始剤;を含む樹脂組成物を支持基材上に塗布および乾燥する段階を含み、
前記混合溶媒は、前記115℃以上の沸点を有する高沸点:前記100℃以下の沸点を有する低沸点溶媒を1:3~1:15の重量比で含み、
前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物は、下記の化学式1の化合物を含み、
前記光重合性化合物は、単官能(メタ)アクリレート化合物及び二官能(メタ)アクリレート化合物をさらに含み、
前記光重合性化合物は、前記単官能(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を110重量部以上500重量部以下で含み、
前記光重合性化合物は、前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して前記二官能(メタ)アクリレート化合物500重量部以上1000重量部以下で含む、感光性積層体の製造方法
【化7】
前記化学式1において、
は水素、または炭素数1~10のアルキルであり、
は炭素数1~10のアルキレンであり、
は炭素数1~20の中心グループを含むpが官能基であり、
n2は1~20の整数であり、
pは前記R に置換される官能基数であり、3~10の整数である
【請求項11】
前記115℃以上の沸点を有する高沸点溶媒は、ブタノール、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ガンマブチロラクトン、ブチルカルビトール、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルアセテート、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、メチル3-メトキシプロピオネート、エチル3-エトキシプロピオネート、プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノンおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)からなる群より選択された1種以上の有機溶媒を含む、請求項10に記載の感光性積層体の製造方法。
【請求項12】
前記100℃以下の沸点を有する低沸点溶媒は、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフランおよびイソプロピルアルコールからなる群より選択された1種以上の有機溶媒を含む、請求項10に記載の感光性積層体の製造方法。
【請求項13】
前記単官能(メタ)アクリレート化合物は、炭素数1~10のアルキレンオキシド基を含む(メタ)アクリレートを含む、請求項10に記載の感光性積層体の製造方法。
【請求項14】
前記光重合性化合物は、炭素数1~10のアルキレンオキシド基を含む(メタ)アクリレートを含む単官能(メタ)アクリレート化合物;および炭素数1~20の中心グループに炭素数1~10のアルキレンオキシド基および(メタ)アクリレート官能基がそれぞれ3個以上結合した構造を有する3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物;を含む、請求項10に記載の感光性積層体の製造方法。
【請求項15】
前記アルカリ現像性バインダー樹脂は、20,000g/mol~300,000g/molの重量平均分子量および20℃以上150℃以下のガラス転移温度を有する、請求項10に記載の感光性積層体の製造方法。
【請求項16】
前記アルカリ現像性バインダー樹脂は、100mgKOH/g以上300mgKOH/gの酸価を有する、請求項10に記載の感光性積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性積層体、感光性積層体の製造方法、および回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂組成物は、印刷回路基板(Printed Circuit Board;PCB)やリードフレーム(Lead Frame)に使用されているドライフィルムフォトレジスト(Dry Film Photoresist、DFR)、液状フォトレジスト(Liquid Photoresist Ink)などの形態で使用されている。
最近、半導体素子の軽薄短小化傾向や多段パッケージングに伴って回路基板の高密度化が要求されており、超高圧水銀灯やレーザダイレクト(Laser Direct)露光などが適用される工程や、支持フィルムと感光性樹脂層とを含む感光性積層体を用いた回路基板の製造工程なども幅広く使用されている。
これによって、より高い信頼性を確保しながらも高い密度および感度を実現し、より微細な配線の形成を可能にする方法および工程の開発に対する要求がなされ続けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許公開第2006-106287号公報(公開日:2006.04.20.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、微細な配線の形成において欠損を低減することができ、現像時、高い信頼性を確保して高密度の回路形成が可能な感光性積層体を提供する。
また、本発明は、前記感光性積層体の製造方法を提供する。
さらに、本発明は、前記感光性積層体を用いる回路基板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、支持基材;および前記支持基材上に形成された感光性樹脂層を含み、前記感光性樹脂層内に1μm未満の直径を有する気泡が5個/mm以下存在する、感光性積層体が提供される。
また、本明細書では、前記感光性積層体を用いる、回路基板の製造方法が提供される。
さらに、本明細書では、前記感光性積層体の製造方法が提供される。
以下、発明の具体的な実施形態による感光性積層体、感光性積層体の製造方法、および回路基板の製造方法についてより詳細に説明する。
本明細書において、重量平均分子量は、GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られた分析装置と示差屈折検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを用いることができ、通常適用される温度条件、溶媒、flow rateを適用することができる。
前記測定条件の具体例として、アルカリ現像性バインダー樹脂は、1.0(w/w)% in THF(固形分基準約0.5(w/w)%)の濃度となるようにテトラヒドロフランに溶解させて、0.45μm Pore SizeのSyringe Filterを用いてろ過後、GPCに20μlを注入し、GPCの移動相はテトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran、THF)を使用し、1.0mL/分の流速で流入し、カラムはAgilent PLgel 5μm Guard(7.5×50mm)1個とAgilent PLgel 5μm Mixed D(7.5×300mm)2個とを直列に連結し、検出器としてはAgilent 1260 Infinity II System、RI Detectorを用いて40℃で測定した。
これを、テトラヒドロフランに0.1(w/w)%の濃度で以下の多様な分子量を有するポリスチレンを溶解させたポリスチレン標準品試料(STD A、B、C、D)を0.45μm Pore SizeのSyringe Filterでろ過後、GPCに注入して形成された検定曲線を用いてアルカリ現像性バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)の値を求めた。
STD A(Mp):791,000/27,810/945
STD B(Mp):282,000/10,700/580
STD C(Mp):126,000/4,430/370
STD D(Mp):51,200/1,920/162
本明細書において、「(光)硬化物」または「(光)硬化」したというのは、化学構造中に硬化または架橋可能な不飽和基を有する構成成分が全部硬化、架橋または重合された場合のみならず、その一部が硬化、架橋または重合された場合まで包括することができる。
発明の一実施形態によれば、支持基材;および3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を含む光重合性化合物とアルカリ現像性バインダー樹脂とを含む感光性樹脂層;を含み、前記感光性樹脂層内に1μm未満の直径を有する気泡が5個/mm以下存在する、感光性積層体が提供される。
本発明者らは、1μm未満の直径を有する気泡が5個/mm以下存在する感光性樹脂層を含む感光性積層体を新たに開発し、このような感光性積層体を用いると、回路基板の製造過程で露光に対する高い感度を実現することができ、現像時、信頼性が高くなり、高い信頼性を確保しながらも高い密度および感度を実現し、より微細な配線の形成を可能にするという点を、実験を通して確認して、発明を完成した。
本発明者らは、製造工程において多様な理由から発生しうる微細気泡または微細副産物の痕跡などを除去するための研究開発を継続して進行させ、後述する感光性積層体の製造方法で詳述するように、115℃以上の沸点を有する高沸点溶媒および100℃以下の沸点を有する低沸点溶媒を含む混合溶媒を、アルカリ現像性バインダー樹脂、光重合性化合物および光開始剤と共に含む樹脂組成物を用いて感光性樹脂層を形成することによって、前記感光性樹脂層内に1μm未満の直径を有する気泡が5個/mm以下、または3個/mm以下存在するようにした。
また、前記感光性積層体の製造方法において、前記115℃以上の沸点を有する高沸点溶媒および100℃以下の沸点を有する低沸点溶媒を含む混合溶媒を用いること以外にも、乾燥速度および/または乾燥温度の調整により前記感光性樹脂層内に形成される微細気泡の量を大きく低減したり、実質的に存在しないようにしたりすることができる。
一方、前記感光性樹脂層内に1μm未満の直径を有する気泡が5個/mm以下、または3個/mm以下存在することができるが、特に、前記支持基材と前記感光性樹脂層との間の界面の反対面、または感光性樹脂層が外部面側に1μm未満の直径を有する気泡が微量に存在したり、実質的に存在しないことがある。
より具体的には、前記支持基材と前記感光性樹脂層との間の界面の反対面から前記感光性樹脂層の全体厚さの50%以内に、1μm未満の直径を有する気泡が3個/mm以下存在することがある。
前記支持基材と前記感光性樹脂層との間の界面の反対面、または感光性樹脂層が外部面側に1μm未満の直径を有する気泡が微量に存在したり、実質的に存在しないことによって、現像時、信頼性が高まって高密度の回路形成が可能であり、微細な配線の形成において欠損を低減することができ、これによって、前記感光性積層体を用いる場合、露光に対する高い感度を実現することができ、高密度の印刷回路基板の製造歩留まりを向上させることができる。
【0006】
また、前記感光性積層体は、上述した1μm未満の直径を有する気泡を極微量含んだり、実質的に含まないだけでなく、1μm以上5μm以下の直径を有する気泡を含まなくなる。
このように、前記感光性樹脂層内に1μm未満の直径を有する気泡が微量に存在する前記感光性積層体を用いて回路基板を製造する時、高い信頼性を確保しながらも高い密度および感度を実現し、より微細な配線の形成を行うことができる。
より具体的には、前記感光性樹脂層を紫外線で露光し、アルカリ溶液で現像しても全体領域にわたって欠陥(Defect)が発生しなかったり、発生しても極微量発生することがあり、特に、感光性樹脂層の上面には欠陥(Defect)が実質的に存在せず、現像後、感光性樹脂層の下面や内側に微細な大きさの欠陥(Defect)が極微量に存在することがある。
具体的には、前記感光性樹脂層を紫外線で露光し、アルカリ溶液で現像した後、0.3μm~4μm、または0.5μm以上3μm以下の断面直径を有する欠陥(Defect)が3個/mm以下、または1個/mm以下と観察され、実質的に存在しないことがある。前記欠陥の断面直径は、前記感光性樹脂層上の一方向への断面で定義される前記欠陥の直径のうち最も大きい直径と定義することができる。
前記露光および現像の条件が大きく限定されるものではない。例えば、前記露光は、前記感光性積層体に対して照射する光線の波長が340nm~420nmの範囲でStouffer Graphic Arts Equipment社の41段ステップtabletを用いて測定した残存ステップ段数が15段になるエネルギー量で1分~60分間行うことができる。また、前記現像は、0.1~3.0wt%の濃度を有するNaCOなどのアルカリ水溶液でスプレー噴射方式などの方法により行うことができる。
また、前記感光性積層体を用いると、より低いエネルギーを使用しながらもより高い密度および感度を実現することができる。より具体的には、前記感光性積層体に対して照射する光線の波長が340nm~420nmの範囲でStouffer Graphic Arts Equipment社の41段ステップtabletを用いて測定した残存ステップ段数が15段になるエネルギー量が300mJ/cm以下、または100mJ/cm以下であってもよいし、現像後、解像度が15μm以下、または10μm以下で実現できる。
前記感光性積層体において前記支持基材および前記感光性樹脂層の厚さは大きく限定されないが、具体例として、前記支持基材の厚さは、1μm~100μm、または5μm~50μmであってもよく、前記感光性樹脂層の厚さは、1μm~100μm、または5μm~50μmであってもよい。
一方、前記感光性積層体の特徴や前記感光性樹脂層内に1μm未満の直径を有する気泡が5個/mm以下存在する構成上の特徴は、上述した製造方法に起因するものであってもよいし、前記感光性樹脂層の特徴によるものであってもよい。
【0007】
具体的には、前記感光性樹脂層は、アルカリ現像性バインダー樹脂を含むことができる。前記アルカリ現像性バインダーは、分子内にカルボキシル基を少なくとも1個以上含み、現像過程でアルカリと反応することができる。
前記アルカリ現像性バインダーの具体例が限定されるものではないが、下記の化学式4で表される繰り返し単位、下記の化学式5で表される繰り返し単位、および下記の化学式6で表される繰り返し単位からなる群より選択された1種以上の繰り返し単位を含む重合体であるか、共重合体であってもよい。
【化1】

前記化学式4において、Rは、水素、または炭素数1~10のアルキルであり、
【化2】

前記化学式5において、Rは、水素、または炭素数1~10のアルキルであり、Rは、炭素数1~10のアルキルであり、
【化3】
前記化学式6において、Arは、炭素数6~20のアリールである。
前記化学式4~6において、RおよびRは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素、または炭素数1~10のアルキルであり、Rは、炭素数1~10のアルキルであり、Arは、炭素数6~20のアリールである。
【0008】
は、炭素数1~10のアルキルであり、前記炭素数1~10のアルキルの具体例としては、メチルが挙げられる。Arは、炭素数6~20のアリールであり、前記炭素数6~20のアリールの具体例としては、フェニルが挙げられる。
前記化学式4で表される繰り返し単位は、下記の化学式4-1で表される単量体に由来する繰り返し単位であってもよい。
【化4】

前記化学式4-1において、Rは、水素、または炭素数1~10のアルキルである。前記化学式4-1において、Rに関する内容は、前記化学式4で上述した内容と同じである。前記化学式4-1で表される単量体の具体例として、アクリル酸(Acrylic acid、AA)、メタクリル酸(Methacrylic acid、MAA)が挙げられる。
前記化学式5で表される繰り返し単位は、下記の化学式5-1で表される単量体に由来する繰り返し単位であってもよい。
【化5】
前記化学式5-1において、Rは、水素、または炭素数1~10のアルキルであり、Rは、炭素数1~10のアルキルである。前記化学式3-1において、RおよびRに関する内容は、前記化学式3で上述した内容と同じである。前記化学式3-1で表される単量体の具体例として、メチルメタクリレート(Methylmethacrylate、MMA)、ブチルアクリレート(Butyl acrylate、BA)が挙げられる。
前記化学式6で表される繰り返し単位は、下記の化学式6-1で表される単量体に由来する繰り返し単位であってもよい。
【化6】
前記化学式6-1において、Arは、炭素数6~20のアリールである。前記化学式6-1において、Arに関する内容は、前記化学式4で上述した内容と同じである。前記化学式6-1で表される単量体の具体例として、スチレン(Styrene、SM)が挙げられる。
【0009】
一方、前記アルカリ現像性バインダー樹脂は、前記感光性樹脂層の基材の役割を果たすことができ、これによって最小限の分子量を有しなければならず、例えば、20,000g/mol~300,000g/mol、または30,000g/mol~150,000g/molの重量平均分子量を有することができる。
また、前記アルカリ現像性バインダー樹脂は、一定水準以上の耐熱性を有しなければならないが、これによって、20℃以上150℃以下のガラス転移温度を有することができる。
さらに、前記アルカリ現像性バインダー樹脂は、前記感光性樹脂層の現像性などを考慮して、100mgKOH/g以上300mgKOH/gの酸価を有することができる。
一方、前記アルカリ現像性バインダー樹脂は、異なる種類または異なる特性を有する2以上のアルカリ現像性バインダーを含むことができる。具体的には、前記アルカリ現像性バインダー樹脂は、第1アルカリ現像性バインダー樹脂および第2アルカリ現像性バインダー樹脂を含むことができる。
前記第1アルカリ現像性バインダー樹脂および第2アルカリ現像性バインダー樹脂は、重量平均分子量が30000g/mol以上150000g/mol以下であり、ガラス転移温度は20℃以上150℃以下であってもよく、それぞれ異なる重量平均分子量、ガラス転移温度、または酸価を有することができる。
例えば、前記第1アルカリ現像性バインダー樹脂は、酸価が140mgKOH/g以上160mgKOH/g以下であってもよい。また、前記第2アルカリ現像性バインダー樹脂は、酸価が160mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であってもよい。
【0010】
また、前記第1アルカリ現像性バインダー樹脂と第2アルカリ現像性バインダー樹脂のガラス転移温度比率が1:1.5以上1:5以下、1:1.5以上1:3以下、1:1.5以上1:2以下、1:1.5以上1:1.8以下、1:1.5以上1:75以下、または1:1.6以上1:7以下であってもよい。
また、前記第1アルカリ現像性バインダー樹脂と第2アルカリ現像性バインダー樹脂の酸価比率が1:1.01以上1:1.5以下、1:1.1以上1:1.5以下、1:1.25以上1:1.5以下、または1:1.4以上1:1.5以下であってもよい。
一方、前記感光性樹脂層は、アルカリ現像性バインダー樹脂と、(メタ)アクリレート単量体またはオリゴマーを含む光重合性化合物との間の架橋共重合体を含んでもよい。
前記(メタ)アクリレート単量体またはオリゴマーを含む光重合性化合物は、前記感光性樹脂層の機械的強度などを高める架橋剤の役割や現像液に対する耐性を高め、硬化膜の柔軟性を付与する役割を果たすことができる。
前記感光性樹脂層の具体的な用途や特性によって、前記(メタ)アクリレート単量体またはオリゴマーを含む光重合性化合物の含有量を調節することができ、例えば、前記アルカリ現像性バインダー樹脂100重量部に対して(メタ)アクリレート単量体またはオリゴマーを含む光重合性化合物1~80重量部を含むことができる。
前記光重合性化合物は、単官能または多官能の(メタ)アクリレート単量体またはオリゴマーであってもよい。前記光重合性化合物は、通常知られた単官能または多官能(メタ)アクリレート単量体またはオリゴマーを使用することができるが、前記感光性樹脂層が上述した特性を満たすために、前記光重合性化合物は3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を含むことができる。
すなわち、前記実施形態の感光性積層体は、後述する製造方法で説明するように沸点を異にする2種以上の溶媒を混合して使用し、使用する光重合性化合物の選択によって、感光性樹脂層内部に微細気泡が微量に存在したり、実質的に存在しないことがある。
具体的には、前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物は、炭素数1~20の中心グループに炭素数1~10のアルキレンオキシド基および(メタ)アクリレート官能基が、それぞれ3個以上結合した構造を有することができる。
【0011】
このような3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物の構造によって、前記感光性樹脂層内に1μm以下の直径を有する気泡が微量に存在することがあり、これによって微細な配線の形成において欠損を低減することができ、現像時、高い信頼性を確保して高密度の回路形成が可能な感光性積層体が提供される。
より具体的には、前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物は、下記の化学式1の化合物を含んでもよい。
【化7】

前記化学式1において、Rは水素、または炭素数1~10のアルキルであり、Rは炭素数1~10のアルキレンであり、Rは炭素数1~20の中心グループを含むpが官能基であり、n2は1~20の整数であり、pは前記Rに置換される官能基数であり、3~10の整数である。
前記化学式1の化合物のより具体例としては、下記の化学式1-1の化合物が挙げられる。
【化8】
前記化学式1-1において、
’は炭素数1~10の3価の官能基であり、
~Rはそれぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレンであり、
10~R12はそれぞれ独立して、水素、または炭素数1~10のアルキルであり、
n3~n5はそれぞれ独立して、1~3の整数である。
一方、前記光重合性化合物は、単官能(メタ)アクリレート化合物または二官能(メタ)アクリレート化合物をさらに含むことができる。
前記単官能(メタ)アクリレート化合物は、炭素数1~10のアルキレンオキシド基を含む(メタ)アクリレートを含むことができる。
【0012】
具体的には、前記単官能(メタ)アクリレート化合物は、下記の化学式2で表される単官能(メタ)アクリレート化合物を含むことができる。
【化9】
前記化学式2において、Rは水素、または炭素数1~10のアルキルであり、Rは炭素数1~10のアルキレンであり、Rは炭素数1~10のアルキルであり、n1は1~20の整数である。
前記光重合性化合物は、上述した単官能(メタ)アクリレート化合物および3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を共に含むことができる。具体的には、前記光重合性化合物は、前記炭素数1~10のアルキレンオキシド基を含む(メタ)アクリレートを含む単官能(メタ)アクリレート化合物;および炭素数1~20の中心グループに炭素数1~10のアルキレンオキシド基および(メタ)アクリレート官能基がそれぞれ3個以上結合した構造を有する3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物;を含むことができる。
前記感光性樹脂層および感光性積層体の特性などを考慮して、前記光重合性化合物に含まれる単官能(メタ)アクリレート化合物および3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物の含有量を調節することができる。
例えば、前記光重合性化合物は、前記単官能(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を110重量部以上500重量部以下で含むことができる。
また、前記光重合性化合物は、前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して前記二官能(メタ)アクリレート化合物500重量部以上1000重量部以下で含むことができる。
【0013】
一方、前記光重合性化合物は、単官能(メタ)アクリレート化合物および3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物以外にも、これらと重複しない単官能または多官能(メタ)アクリレート化合物をさらに含むことができる。この時、使用可能な単官能または多官能(メタ)アクリレート化合物としては、前記化学式1の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物と前記化学式2の単官能(メタ)アクリレート化合物は除く。
さらに使用可能な光重合性化合物の例は特に限定されるものではないが、エチレングリコールジメタクリレート(ethylene glycol dimethacrylate)、ジエチレングリコールジメタクリレート(diethylene glycol dimethacrylate)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(tetraethylene glycol dimethacrylate)、プロピレングリコールジメタクリレート(propylene glycol dimethacrylate)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート(polypropylene glycol dimethacrylate)、ブチレングリコールジメタクリレート(butylene glycol dimethacrylate)、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(neopentyl glycol dimethacrylate)、1,6-ヘキサングリコールジメタクリレート(1,6-hexane glycol dimethacrylate)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(trimethyolpropane trimethacrylate)、トリメチロールプロパントリアクリレート(trimethyolpropane triacrylate)、グリセリンジメタクリレート(glycerin dimethacrylate)、ペンタエリスリトールジメタクリレート(pentaerythritol dimethacrylate)、ペンタエリスリトールトリメタクリレート(pentaerythritol trimethacrylate)、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート(dipentaerythritol pentamethacrylate)、2,2-ビス(4-メタクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン(2,2-bis(4-methacryloxydiethoxyphenyl)propane)、2,2-ビス(4-メタクリルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(2,2-bis(4-methacryloxypolyethoxyphenyl)propane)、2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルメタクリレート(2-hydroxy-3-methacryloyloxypropyl methacrylate)、エチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート(ethylene glycol diglycidyl ether dimethacrylate)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート(diethylene glycol diglycidyl ether dimethacrylate)、フタル酸ジグリシジルエステルジメタクリレート(phthalic acid diglycidyl ester dimethacrylate)、グリセリンポリグリシジルエーテルポリメタクリレート(glycerin polyglycidyl ether polymethacrylate)およびウレタン基を含む多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
一方、前記支持基材は、前記感光性積層体の支持体の役割を果たすことができ、粘着力を有する感光性樹脂層の露光時の取扱を容易に行うことができる。
【0014】
前記基材フィルムは、各種プラスチックフィルムが使用可能であり、例えば、アクリル系フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリノルボルネン(PNB)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、およびポリカーボネート(PC)フィルムからなる群より選択された1種以上のプラスチックフィルムを含むことができる。
一方、前記感光性積層体は、前記感光性樹脂層を中心に支持基材と対向するように形成される保護フィルムをさらに含んでもよい。前記保護フィルムは、取扱時にレジストの損傷を防止し、埃のような異物から感光性樹脂層を保護する保護蓋の役割を果たすものであって、感光性樹脂層の基材フィルムが形成されない裏面に積層される。
前記保護フィルムは、感光性樹脂層を外部から保護する役割を果たすものであって、ドライフィルムフォトレジストを後工程に適用する時は容易に離脱しかつ、保管および流通する時には離型されないように、適当な離型性と粘着性を必要とする。
前記保護フィルムは、各種プラスチックフィルムが使用可能であり、例えば、アクリル系フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリノルボルネン(PNB)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、およびポリカーボネート(PC)フィルムからなる群より選択された1種以上のプラスチックフィルムを含むことができる。前記保護フィルムの厚さが大きく限定されるものではないが、例えば、0.01μm~100μmの範囲内で自由に調節可能である。
【0015】
発明のさらに他の実施形態によれば、115℃以上の沸点を有する高沸点溶媒および100℃以下の沸点を有する低沸点溶媒を含む混合溶媒;3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を含む光重合性化合物;アルカリ現像性バインダー樹脂;および光開始剤;を含む樹脂組成物を支持基材上に塗布および乾燥する段階を含み、前記混合溶媒は、前記115℃以上の沸点を有する高沸点:前記100℃以下の沸点を有する低沸点溶媒を1:2~1:18の重量比で含む、感光性積層体の製造方法が提供される。
前記製造方法により前記一実施形態で上述した感光性積層体が提供される。上述のように、前記感光性積層体は、支持基材;および3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を含む光重合性化合物とアルカリ現像性バインダー樹脂とを含む感光性樹脂層;を含む。前記感光性樹脂層内に1μm未満の直径を有する気泡が5個/mm以下存在することがある。
前記感光性樹脂層の形成過程において、感光性樹脂組成物の溶液製造過程や前記組成物の溶液乾燥工程中に発生する気泡などの理由から1μm未満の直径が感光性樹脂層内に形成されうるが、前記感光性積層体の製造方法では、115℃以上の沸点を有する高沸点溶媒および100℃以下の沸点を有する低沸点溶媒を含む混合溶媒を用いることによって、感光性樹脂組成物の溶液の蒸発する時間を遅らせて気泡が樹脂層に閉じ込められないようにすることができ、これによって、前記感光性樹脂層内に1μm未満の直径を有する気泡が5個/mm以下存在することがある。
より具体的には、前記感光性樹脂層内に1μm未満の直径を有する気泡が5個/mm以下、または3個/mm以下存在することがある。
また、前記支持基材と前記感光性樹脂層との間の界面の反対面から前記感光性樹脂層の全体厚さの50%以内に、1μm未満の直径を有する気泡が3個/mm以下存在することがある。
前記支持基材と前記感光性樹脂層との間の界面の反対面、または感光性樹脂層が外部面側に1μm未満の直径を有する気泡が微量に存在したり、実質的に存在しないことによって、現像時、信頼性が高まって高密度の回路形成が可能であり、微細な配線の形成において欠損を低減することができ、これによって、前記感光性積層体を用いる場合、露光に対する高い感度を実現することができ、高密度の印刷回路基板の製造歩留まりを向上させることができる。
【0016】
上述のように、前記115℃以上の沸点を有する高沸点溶媒は、感光性樹脂組成物の液状成分が蒸発する時間を遅らせて気泡が樹脂層に閉じ込められないようにする役割を果たすことができる。これによって、前記感光性樹脂層内に1μm未満の直径を有する気泡が5個/mm以下存在することがある。
前記混合溶媒は、前記115℃以上の沸点を有する高沸点溶媒を一定以上の含有量で含むことができ、例えば、前記混合溶媒100重量部に対して、前記115℃以上の沸点を有する高沸点の含有量が3重量部以上、または5重量部以上、または3~50重量部、または5~40重量部であってもよい。
前記115℃以上の沸点を有する高沸点溶媒に、共に前記100℃以下の沸点を有する低沸点溶媒を用いることによって、前記感光性樹脂組成物の溶解力を高めることができる。
前記混合溶媒は、前記115℃以上の沸点を有する高沸点溶媒に対して、前記100℃以下の沸点を有する低沸点溶媒をより高い含有量で含むことができる。
より具体的には、前記混合溶媒は、前記115℃以上の沸点を有する高沸点溶媒:前記100℃以下の沸点を有する低沸点溶媒を1:2~1:18の重量比 、または1:3~1:15の重量比で含むことができる。前記115℃以上の沸点を有する高沸点溶媒:前記100℃以下の沸点を有する低沸点溶媒を上述した含有量で含むことによって、感光性樹脂組成物の溶解力を大きくすることができる。
前記115℃以上の沸点を有する高沸点溶媒の例としては、ブタノール、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ガンマブチロラクトン、ブチルカルビトール、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルアセテート、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、メチル3-メトキシプロピオネート、エチル3-エトキシプロピオネート、プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)およびこれらの1以上の混合溶媒が挙げられる。
【0017】
前記100℃以下の沸点を有する低沸点溶媒の例としては、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、イソプロピルアルコールおよびこれらの1以上の混合溶媒が挙げられる。
前記115℃以上の沸点を有する高沸点溶媒および100℃以下の沸点を有する低沸点溶媒を含む混合溶媒;アルカリ現像性バインダー樹脂;および光開始剤;を含む樹脂組成物は、具体的な用途や適用分野などを考慮して固形分含有量を調節することができ、例えば、前記樹脂組成物は、前記混合溶媒10~99重量%を含むことができる。
一方、前記樹脂組成物を支持基材上に塗布および乾燥する段階で使用可能な方法や装置が大きく限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの通常の基材フィルム上に、通常のコーティング方法を利用して前記樹脂組成物をコーティングさせた後、乾燥させてドライフィルムに製造することができる。
前記樹脂組成物をコーティングする方法は特に制限されず、例えば、コーティングバーなどの方法が利用可能である。
前記感光性積層体の製造方法において、前記115℃以上の沸点を有する高沸点溶媒および100℃以下の沸点を有する低沸点溶媒を含む混合溶媒を使用すること以外にも、乾燥速度および/または乾燥温度の調整により前記感光性樹脂層内に形成される微細気泡の量を大きく低減したり、実質的に存在しないようにしたりすることができる。
より具体的には、前記コーティングされた樹脂組成物を乾燥させる段階は、熱風オーブン、ホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などの加熱手段によって実施可能であり、50℃~100℃の温度、または60℃~90℃の温度、70℃~85℃の温度で行うことができる。
【0018】
前記乾燥が行われる時間は、前記乾燥温度に応じて異なり、例えば、30秒~20分であってもよく、より具体的には1分~10分、または3分~7分であってもよい。
前記樹脂組成物に含まれるアルカリ現像性バインダー樹脂に関する内容は、前記一実施形態の感光性積層体で上述した内容を含む。
前記アルカリ現像性バインダー樹脂は、20,000g/mol~300,000g/mol、または30,000g/mol~150,000g/molの重量平均分子量および20℃以上150℃以下のガラス転移温度を有することができる。
前記アルカリ現像性バインダー樹脂は、100mgKOH/g以上300mgKOH/gの酸価を有することができる。
前記樹脂組成物は、アルカリ現像性バインダー樹脂と共に、(メタ)アクリレート単量体またはオリゴマーを含む光重合性化合物をさらに含むことができる。
前記樹脂組成物は、前記アルカリ現像性バインダー樹脂100重量部に対して、(メタ)アクリレート単量体またはオリゴマーを含む光重合性化合物1~80重量部を含むことができる。
前記光重合性化合物に関する内容は、前記一実施形態の感光性積層体で上述した内容を含む。
前記光重合性化合物は、単官能または多官能(メタ)アクリレート単量体またはオリゴマーであってもよい。前記光重合性化合物は、通常知られた単官能または多官能(メタ)アクリレート単量体またはオリゴマーを使用することができるが、前記感光性樹脂層が上述した特性を満たすために、前記前記光重合性化合物は、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を含むことができる。
【0019】
前記実施形態の感光性積層体の製造方法では、沸点を異にする2種以上の溶媒を混合して使用し、使用する光重合性化合物の選択によって、微細気泡が微量に存在したり、実質的に存在しない感光性樹脂層を形成したりすることができる。
具体的には、前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物は、炭素数1~20の中心グループに炭素数1~10のアルキレンオキシド基および(メタ)アクリレート官能基が、それぞれ3個以上結合した構造を有することができる。
このような3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物の構造によって、前記感光性樹脂層内に1μm以下の直径を有する気泡が微量に存在することがあり、これによって微細な配線の形成において欠損を低減することができ、現像時、高い信頼性を確保して高密度の回路形成が可能な感光性積層体が提供される。
より具体的には、前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物は、下記の化学式1の化合物を含んでもよい。
【化7】

前記化学式1において、Rは水素、または炭素数1~10のアルキルであり、Rは炭素数1~10のアルキレンであり、Rは炭素数1~20の中心グループを含むpが官能基であり、n2は1~20の整数であり、pは前記Rに置換される官能基数であり、3~10の整数である。
【0020】
前記化学式1の化合物のより具体例としては、下記の化学式1-1の化合物が挙げられる。
【化8】

前記化学式1-1において、
’は炭素数1~10の3価の官能基であり、R~Rはそれぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレンであり、R10~R12はそれぞれ独立して、水素、または炭素数1~10のアルキルであり、n3~n5はそれぞれ独立して、1~3の整数である。
一方、前記光重合性化合物は、単官能(メタ)アクリレート化合物または二官能(メタ)アクリレート化合物をさらに含むことができる。
【0021】
前記単官能(メタ)アクリレート化合物は、炭素数1~10のアルキレンオキシド基を含む(メタ)アクリレートを含むことができる。
具体的には、前記単官能(メタ)アクリレート化合物は、下記の化学式2で表される単官能(メタ)アクリレート化合物を含むことができる。
【化9】

前記化学式2において、Rは水素、または炭素数1~10のアルキルであり、Rは炭素数1~10のアルキレンであり、Rは炭素数1~10のアルキルであり、n1は1~20の整数である。
前記光重合性化合物は、上述した単官能(メタ)アクリレート化合物および3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を共に含むことができる。具体的には、前記光重合性化合物は、前記炭素数1~10のアルキレンオキシド基を含む(メタ)アクリレートを含む単官能(メタ)アクリレート化合物;および炭素数1~20の中心グループに炭素数1~10のアルキレンオキシド基および(メタ)アクリレート官能基がそれぞれ3個以上結合した構造を有する3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物;を含むことができる。
【0022】
前記感光性樹脂層および感光性積層体の特性などを考慮して、前記光重合性化合物に含まれる単官能(メタ)アクリレート化合物および3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物の含有量を調節することができる。
例えば、前記光重合性化合物は、前記単官能(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を110重量部以上500重量部以下で含むことができる。
また、前記光重合性化合物は、前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して前記二官能(メタ)アクリレート化合物500重量部以上1000重量部以下で含むことができる。
前記光開始剤は、UVおよびその他のradiationにより光重合性モノマーの連鎖反応を開始させる物質であって、前記樹脂組成物および前記感光性積層体の感光性樹脂層の硬化に重要な役割を果たす。
前記光開始剤に使用可能な化合物としては、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノンなどのアントラキノン誘導体;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾフェノン、フェナントレンキノン、4,4’-ビス-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾイン誘導体が挙げられる。
【0023】
その他にも、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’-5,5’-テトラフェニルビスイミダゾール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-[4-モルホリノフェニル]ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、1-[4-(2-ヒドロキシメトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、1-(4-イソプロピルフェニル)2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-ベンゾイル-4’-メチルジメチルスルフィド、4-ジメチルアミノ安息香酸、メチル4-ジメチルアミノベンゾエート、エチル4-ジメチルアミノベンゾエート、ブチル4-ジメチルアミノベンゾエート、2-エチルヘキシル4-ジメチルアミノベンゾエート、2-イソアミル4-ジメチルアミノベンゾエート、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンジルケトンジメチルアセタール、ベンジルケトンβ-メトキシジエチルアセタール、1-フェニル-1,2-プロピルジオキシム-o,o’-(2-カルボニル)エトキシエーテル、メチルo-ベンゾイルベンゾエート、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、メトキシベンゾイン、エトキシベンゾイン、イソプロポキシベンゾイン、n-ブトキシベンゾイン、イソブトキシベンゾイン、tert-ブトキシベンゾイン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、α,α-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、ペンチル4-ジメチルアミノベンゾエートの中から選択された化合物を光開始剤として使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
前記光開始剤の含有量は、固形分を基準として、前記樹脂組成物の総重量に対して0.1~20重量%または1重量%以上10重量%以下で含まれる。前記光開始剤の含有量が上記の範囲内にある場合、十分な感度を得ることができる。
前記光開始剤の含有量が低すぎる場合、光効率が低くて露光量が多く入らなければならないため、生産効率性が極めて低下しうる。前記光開始剤の含有量が高すぎる場合、フィルムが壊れやすい(brittle)というデメリットと現像液汚染性が高まって短絡などの不良をもたらすことがある。
また、前記樹脂組成物は、必要に応じて、その他の添加剤をさらに含むことができる。その他の添加剤としては、可塑剤として、フタル酸エステル形態であるジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジアリルフタレート;グリコールエステル形態であるトリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジアセテート;酸アミド形態であるp-トルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、n-ブチルベンゼンスルホンアミド;トリフェニルホスフェートなどを使用することができる。
前記樹脂組成物の取扱性を向上させるために、ロイコ染料や着色物質を入れてもよい。前記ロイコ染料としては、トリス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)メタン、トリス(4-ジメチルアミノ-2メチルフェニル)メタン、フルオラン染料などが挙げられる。その中でも、ロイコクリスタルバイオレットを用いた場合、コントラストが良好で好ましい。ロイコ染料を含有する場合の含有量は、感光性樹脂組成物中に0.1重量%以上10重量%以下であってもよい。コントラストの発現という観点から0.1重量%以上が好ましく、保存安定性を維持するという観点からは10重量%以下が好ましい。
着色物質としては、例えば、トルエンスルホン酸1水和物、フクシン、フタロシアニングリーン、オーラミン塩基、パラマゼンタ、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン、ダイヤモンドグリーン、ベーシックブルー20などが挙げられる。前記着色物質を含有する場合の添加量は、感光性樹脂組成物中に0.001重量%以上1重量%以下であってもよい。0.001重量%以上の含有量では、取扱性の向上という効果があり、1重量%以下の含有量では、保存安定性を維持するという効果がある。
【0025】
それ以外にも、その他の添加剤としては、熱重合防止剤、染料、変色剤(discoloring agent)、密着力促進剤などをさらに含むことができる。
一方、発明のさらに他の実施形態によれば、前記一実施形態の感光性積層体を用いる、回路基板の製造方法が提供される。
前記一実施形態の感光性積層体は、銅張積層板(Copper Clad Laminates)上に積層される用途に使用できる。
回路基板または印刷回路基板(Printed Circuit Board、PCB)の製造過程の一例としては、PCBの原板素材である銅張積層板をラミネーションするために、先に前処理工程を経る。前処理工程は、外層工程ではドリリング、デバリング(deburing)、整面などの順であり、内層工程では整面または酸洗を経る。整面工程ではbristle brushおよびjet pumice工程が主に用いられ、酸洗はsoft etchingおよび硫酸酸洗を経ることができる。
前処理工程を経た銅張積層板に回路を形成させるためには、一般に銅張積層板の銅層上に前記感光性積層体またはドライフィルムフォトレジスト(以下、DFRという)をラミネーションすることができる。この工程では、ラミネータを用いてDFRの保護フィルムを剥がしながらDFRのフォトレジスト層を銅表面上にラミネーションさせる。一般に、ラミネーション速度0.5~3.5m/min、温度100~130℃、ローラ圧力加熱ロール圧力10~90psiで進行させることができる。
【0026】
ラミネーション工程を経た印刷回路基板は、基板の安定化のために15分以上放置した後、所望の回路パターンが形成されたフォトマスクを用いてDFRのフォトレジストに対して露光を進行させることができる。この過程でフォトマスクに紫外線を照射すると、紫外線が照射されたフォトレジストは、照射された部位で含有された光開始剤によって重合が開始される。まず、初期にはフォトレジスト内の酸素が消耗し、次に、活性化されたモノマーが重合されて架橋反応が起こり、その後、多量のモノマーが消耗しながら重合反応が進行し、未露光部位は架橋反応が進行しない状態で存在することがある。
次に、フォトレジストの未露光部分を除去する現像工程を進行させるが、アルカリ現像性DFRの場合、現像液として、0.8~1.2wt%の炭酸カリウムおよび炭酸ナトリウム水溶液を使用することができる。この工程で、未露光部分のフォトレジストは、現像液内で結合剤高分子のカルボン酸と現像液のケン化反応により洗い流され、硬化したフォトレジストは銅表面上に残留することができる。
次に、内層および外層工程により異なる工程を経て回路が形成される。内層工程では腐食と剥離工程により基板上に回路が形成され、外層工程ではメッキおよびテンティング工程を経た後、エッチングとソルダ剥離を進行させ、所定の回路を形成させることができる。
前記露光には、通常知られた光源、より具体的には、超高圧水銀灯やレーザダイレクト(Laser Direct)露光装置などを用いてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、微細な配線の形成において欠損を低減することができ、現像時、信頼性が高まって高密度の回路形成が可能な感光性積層体と、前記感光性積層体の製造方法と、前記感光性積層体を用いる回路基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】偏光顕微鏡を用いて実施例1の感光性樹脂層の表面および断面を電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM、10,000倍)で確認した写真である。
図2】偏光顕微鏡を用いて比較例2の感光性樹脂層の表面および断面を電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM、12,000倍)で確認した写真である。
図3】比較例2の感光性樹脂層を紫外線露光およびアルカリ現像して形成された欠陥(Defect)を電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM、3000倍)で確認した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
<製造例:アルカリ現像性バインダー樹脂の製造>
製造例1
4口丸底フラスコにメカニカルスターラー(mechanical stirrer)と還流装置を装着した後、窒素でフラスコ内部をパージした。前記窒素でパージされたフラスコにメチルエチルケトン(Methyl Ethyl Ketone、MEK)170gおよびメタノール(Methanol、MeOH)12.5gを投入した後、アゾビスイソブチロニトリル(azobisisobutyronitrile、AIBN)2.25gを投入して完全に溶解させた。そこに、単量体としてメタクリル酸(Methacrylic acid、MAA)60g、ベンジルメタクリル酸(Benzyl methacylrate、BzMA)100g、メチルメタクリレート(Methyl methacrylate、MMA)15g、およびスチレン(Styrene、SM)75gの単量体混合物を投入し、80℃まで昇温した後、6時間重合してアルカリ現像性バインダー樹脂2(重量平均分子量40,000g/mol、ガラス転移温度102℃、固形分含有量50重量%、酸価156mgKOH/g)を製造した。
アルカリ現像性バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定
前記製造例1および製造例2で製造されたアルカリ現像性バインダー樹脂は、1.0(w/w)% in THF(固形分基準約0.5(w/w)%)の濃度となるようにテトラヒドロフランに溶解させ、0.45μm Pore SizeのSyringe Filterを用いてろ過後、GPCに20μlを注入した。GPCの移動相はテトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran、THF)を使用し、1.0mL/分の流速で流入し、分析は40℃で行った。カラムはAgilent PLgel 5μm Guard(7.5×50mm)1個とAgilent PLgel 5μm Mixed D(7.5×300mm)2個とを直列に連結した。検出器としてはAgilent 1260 Infinity II System、RI Detectorを用いて40℃で測定した。
これを、テトラヒドロフランに0.1(w/w)%の濃度で以下のように多様な分子量を有するポリスチレンを溶解させたポリスチレン標準品試料(STD A、B、C、D)を0.45μm Pore SizeのSyringe Filterでろ過後、GPCに注入して形成された検定曲線を用いてアルカリ現像性バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)の値を求めた。
STD A(Mp):791,000/27,810/945
STD B(Mp):282,000/10,700/580
STD C(Mp):126,000/4,430/370
STD D(Mp):51,200/1,920/162
【0030】
<実施例および比較例:感光性樹脂組成物およびドライフィルムフォトレジストの製造>
下記表1に記載の組成により、光開始剤を有機溶媒に溶かした後、光重合性化合物とアルカリ現像性バインダー樹脂を添加して、メカニカルスターラーを用いて約1時間程度混合して感光性樹脂組成物を製造した。
上記で得られた感光性樹脂組成物を16μmのPETフィルム上にコーティングバー(bar)を用いてコーティングさせた。コーティングされた感光性樹脂組成物層は熱風オーブンを用いて乾燥させるが、この時、乾燥温度は80℃であり、乾燥時間は5分であり、乾燥後の感光性樹脂層の厚さは25μmであった。
乾燥が完了した感光性樹脂組成物層上に保護フィルム(ポリエチレン)を用いてラミネーションして感光性積層体(ドライフィルムフォトレジスト)を製造した。
【表1】
【0031】
[比較例2:感光性樹脂組成物およびドライフィルムフォトレジストの製造]
前記特許文献1(特許公開第2006-106287号公報)の明細書の識別符号[0088]および[0093]に基づいて、特許文献1の実施例4を再現する実験を行った。
1.感光性樹脂組成物の製造
特許文献1の実施例4の記載事項に基づいて、本明細書の製造例1で得られた「アルカリ現像性バインダー樹脂」300重量部に対して、下記の成分をメカニカルスターラーを用いて約1時間程度混合して感光性樹脂組成物を製造した。
<感光性樹脂組成物の成分>
(1)2,2-ビス(4-(メタクリルオキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン100重量部
(2)EO、PO変性ウレタンジメタクリレート50重量部
(3)ポリプロピレングリコールジアクリレート(プロピレングリコール鎖の数:7)50質量部
(4)光重合開始剤:ベンゾフェノン25質量部、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体1.0質量部およびジエチルアミノベンゾフェノン1.0質量部
(5)光発色剤5.0質量部
(6)染料0.15質量部
(7)混合溶媒:アセトン(沸点56℃)477質量部、トルエン(沸点110℃)26.5質量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点146.4℃)26.5質量部[100℃以下の沸点を有する低沸点溶媒:115℃以上の沸点を有する高沸点溶媒の重量比=19:1]
【0032】
2.ドライフィルムフォトレジストの製造
上記で得られた感光性樹脂組成物を25μmのPETフィルム上にコーティングバー(bar)を用いてコーティングさせた。コーティングされた感光性樹脂組成物層は熱風オーブンを用いて乾燥させるが、この時、乾燥温度は80℃であり、乾燥時間は5分であり、乾燥後の感光性樹脂層の厚さは25μmであった。
<実験例>
前記実施例および比較例で製造されたドライフィルムフォトレジストに対して、下記の方法で物性を測定し、その結果を表2に示した。
1.露光量(単位:mJ/cm)の測定
前記実施例および比較例で製造されたドライフィルムフォトレジストを、ブラシ(Brush)研磨処理された1.6mmの厚さの銅張積層板にラミネーションした。この時、前記ラミネーションは、HAKUTO MACH 610iを用いて、基板予熱ロール温度120℃、ラミネータロール温度115℃、ロール圧力4.0kgf/cmおよびロール速度2.0min/mを適用した。
銅張積層板にラミネーションしたドライフィルムフォトレジストを、ORC社のFDi-3を用いて、Stouffer Graphic Arts Equipment社の41段ステップtabletを用いて残存ステップ段数が15段になる露光量で405nmの波長の紫外線を照射した後、15分間放置した。その後、NaCO 1.0wt%水溶液でスプレー噴射方式の現像条件で現像を実施した。この時、定めた残存ステップ段数が15段になるエネルギー量を測定した。
2.1:1の解像度(単位:μm)の測定
前記実施例および比較例で製造されたドライフィルムフォトレジストを、ブラシ(Brush)研磨処理された1.6mmの厚さの銅張積層板にラミネーションした。この時、前記ラミネーションは、HAKUTO MACH 610iを用いて、基板予熱ロール温度120℃、ラミネータロール温度115℃、ロール圧力4.0kgf/cmおよびロール速度2.0min/mを適用した。
前記積層体に現像後、回路ライン(line)の幅と回路ラインとの間の空間(space)間隔が1:1となるように、4~20μmまで0.5μmの間隔で形成されているdataを用いて、ORC社のFDi-3により、Stouffer Graphic Arts Equipment社の41段ステップtabletを用いて残存ステップ段数が15段になる露光量で405nmの波長の紫外線を照射した後、15分間放置した。その後、NaCO 1.0wt%水溶液でスプレー噴射方式の現像条件で現像を実施した。
その後、ZEISS AXIOPHOT Microscopeを用いて、回路ラインと非回路ラインとの間の空間を1:1として測定した値で解像度を決定した。
【0033】
3.気泡(単位:個数/mm)の確認
前記実施例および比較例で製造されたドライフィルムフォトレジストに対して、PETフィルムとPEフィルムを除去した後、偏光顕微鏡を用いて感光性樹脂層(単位面積(1mm*1mm))内に存在する1μm未満の直径を有する気泡の個数(個数/mm)を確認した。
【0034】
4.露光/現像後の欠陥Defect(単位:個数/mm)の確認
前記実施例および比較例で製造されたドライフィルムフォトレジストを、ブラシ(Brush)研磨処理された1.6mmの厚さの銅張積層板にラミネーションした。この時、前記ラミネーションは、HAKUTO MACH 610iを用いて、基板予熱ロール温度120℃、ラミネータロール温度115℃、ロール圧力4.0kgf/cmおよびロール速度2.0min/mを適用した。
前記積層体に現像後、回路ライン(line)の幅と回路ラインとの間の空間(space)間隔が14μm:14μmとなるように、ORC社のFDi-3により、Stouffer Graphic Arts Equipment社の41段ステップtabletを用いて残存ステップ段数が15段になる露光量で405nmの波長の紫外線を照射した後、15分間放置した。その後、NaCO 1.0wt%水溶液でスプレー噴射方式の現像条件で現像を実施した。
前記現像された前記実施例および比較例で製造されたドライフィルムフォトレジストそれぞれに対して、電子顕微鏡を用いて単位面積(1mm*1mm)内にレジストの上面および下面を観察して、0.5μm以上3μm以下の欠陥(Defect)が存在する個数(個数/mm)を確認し、実施例および比較例それぞれで得られた感光性樹脂層の表面および断面を電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM、Hitachi社製、拡大倍率3000倍)を用いて観察した。
【表2】
【0035】
前記表2および図1から確認されるように、実施例の感光性積層体の感光性樹脂層内には1μm未満の直径を有する気泡が1個/mm以下存在し、また、1μm以上5μm以下の直径を有する巨大な気泡も存在しないことが確認された。
また、前記実施例の感光性樹脂層は、紫外線で露光し、アルカリ溶液で現像した後にも、前記0.5μm以上3μm以下の直径を有する欠陥(Defect)が実質的に発生しなかったり、または1個/mm以下発生することが確認された。
前記実施例の感光性樹脂層内に1μm未満の直径を有する気泡が微量に存在することによって、前記感光性積層体を用いて回路基板を製造する時、微細な配線の形成において欠損を低減することができ、高い信頼性を確保しながらも高い密度および感度を実現し、より微細な配線を形成できることも観察された。
これに対し、比較例1の感光性樹脂積層体では、実施例と同等水準のエネルギーを用いても実施例水準の解像度の実現が難しいことが確認され、特に、比較例2の感光性樹脂積層体では、350mJ/cmに達するエネルギーを用いても実施例水準の解像度の実現が難しいことが確認された。
さらに、比較例1および比較例2のドライフィルムフォトレジストにおいては、「1μm未満直径の気泡」が15個/mm以上発生し、図3から確認されるように、感光性樹脂層を露光し、アルカリ溶液で現像した後、0.5μm以上3μm以下の直径を有する欠陥(Defect)が複数個(8個/mm以上)現れることが確認された。
図1
図2
図3