(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】バランスの取れた特性を有する音響変換器
(51)【国際特許分類】
H04R 9/00 20060101AFI20240724BHJP
H04R 9/02 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
H04R9/00 C
H04R9/02 102A
(21)【出願番号】P 2022557993
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(86)【国際出願番号】 FI2020050872
(87)【国際公開番号】W WO2021191492
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-10-28
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】520137969
【氏名又は名称】ピーエス オーディオ デザイン オサケユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ソロネン ペトリ
(72)【発明者】
【氏名】カヤヌス ヴェサ
(72)【発明者】
【氏名】ルーッカネン ペッテリ
(72)【発明者】
【氏名】マケラ ミッコ
(72)【発明者】
【氏名】イリ-ランタラ エーロ
【審査官】中嶋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/238204(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0329486(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 9/00
H04R 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を音響周波数の機械的振動に変換するための音響変換器であって、
・上部部品(301)及び下部部品(302)と、
・前記上部部品(301)に配置された第一の永久磁石(303)及び前記下部部品(302)に配置された第二の永久磁石(304)であって、前記第一及び第二の永久磁石(303、304)の同名の磁極が軸線(305)の方向で互いに向き合う、第一の永久磁石(303)及び第二の永久磁石(304)と、
・前記上部部品(301)にある上部カバー(306)、及び前記下部部品(302)にある下部カバー(307)であって、前記上部及び下部カバー(306、307)は磁性材料からなり、一緒になって第一及び第二の永久磁石(303、304)の周りのエンクロージャを規定する、上部カバー(306)及び下部カバー(307)と、
・前記エンクロージャに配置された少なくとも1つのコイル(308)であって、前記コイル(308)を流れる電流の影響下で、前記軸線(305)の方向に動磁力を生じるように構成された少なくとも1つのコイル(308)と、
を備え、
・前記上部カバー(306)及び前記下部カバー(307)のエッジの間の分離ギャップ(309)は
、前記軸線(305)の方向に向けられ、前記下部カバー(307)及び前記上部カバー(306)の前記エッジが異なる位置間で前記軸線(305)の方向に相対移動することができ
、前記上部カバー(306)及び前記下部カバー(307)の前記エッジ
は、前記軸線(305)に垂直な方向で一致する範囲が異な
り、
・前記上部カバー(306)は、U字状断面を有し、前記第一の永久磁石(303)はU字のループの内側に配置され、
・前記下部カバー(307)は、プレート状断面を有し、プレートの外側エッジは前記下部カバー(307)の前記エッジを規定し、
・前記第二の永久磁石(304)は、前記上部カバー(306)の前記U字状断面の内側に面する前記プレートの側にある
ことを特徴とする、
音響変換器。
【請求項2】
電気信号を音響周波数の機械的振動に変換するための音響変換器であって、
・上部部品(301)及び下部部品(302)と、
・前記上部部品(301)に配置された第一の永久磁石(303)及び前記下部部品(302)に配置された第二の永久磁石(304)であって、前記第一及び第二の永久磁石(303、304)の同名の磁極が軸線(305)の方向で互いに向き合う、第一の永久磁石(303)及び第二の永久磁石(304)と、
・前記上部部品(301)にある上部カバー(306)、及び前記下部部品(302)にある下部カバー(307)であって、前記上部及び下部カバー(306、307)は磁性材料からなり、一緒になって第一及び第二の永久磁石(303、304)の周りのエンクロージャを規定する、上部カバー(306)及び下部カバー(307)と、
・前記エンクロージャに配置された少なくとも1つのコイル(308)であって、前記コイル(308)を流れる電流の影響下で、前記軸線(305)の方向に動磁力を生じるように構成された少なくとも1つのコイル(308)と、
を備え、
・前記上部カバー(306)及び前記下部カバー(307)のエッジの間の分離ギャップ(309)は、前記軸線(305)の方向に向けられ、前記下部カバー(307)及び前記上部カバー(306)の前記エッジが異なる位置間で前記軸線(305)の方向に相対移動することができ、前記上部カバー(306)及び前記下部カバー(307)の前記エッジは、前記軸線(305)に垂直な方向で一致する範囲が異なり、
・前記下部カバー(307)は、U字状断面を有し、前記第二の永久磁石(304)はU字のループの内側に配置され、
・前記上部カバー(306)は、プレート状断面を有し、プレートの外側エッジは前記上部カバー(306)の前記エッジを規定し、
・前記第一の永久磁石(304)は、前記下部カバー(306)の前記U字状断面の内側に面する前記プレートの側にある
ことを特徴とする、
音響変換器。
【請求項3】
前記U字状断面において、U字のアームの端部は、内側に突出した延長部(403)を備え、前記延長部(403)の内側先端は、それぞれの前記カバー(306、307)のエッジを規定する、請求項
1又は
2に記載の音響変換器。
【請求項4】
・前記U字状断面を有する前記カバー(306、307)は、それぞれがスカート部分と端部分とを有する第一のカップ部品(601)と第二のカップ部品(602、802)とを備え、
・前記第二のカップ部品(602、802)は、前記第一のカップ部品(601)に対して倒立位置にあり、
・前記第一
のカップ部品(601)の前記スカート部分は、少なくとも部分的に前記第二のカップ部品
(602、802)の前記スカート部
分の内側にあり、
又は、前記第二のカップ部品(602、802)の前記スカート部分は、少なくとも部分的に前記第一のカップ部品(601)の前記スカート部分の内側にあり、
・前記第二のカップ部品(602、802)の前記端部分は開口部を有し、そのエッジは、前記U字状断面を有する前記カバー(306、307)の前記エッジを規定する、
請求項
3に記載の音響変換器。
【請求項5】
・前記第
一のカップ部品(60
1)の前記スカート部分は、前記第一及び第二のカップ部品(601、602)の両方の前記スカート部分の長さの大部分において
前記第二のカップ部品(602)の前記スカート部分の内側にあり、
又は、前記第二のカップ部品(602)の前記スカート部分は、前記第一及び第二のカップ部品(601、602)の両方の前記スカート部分の長さの大部分において前記第一のカップ部品(601)の前記スカート部分の内側にあり、
・前記永久磁石(303)は、前記第一及び第二のカップ部品(601、602)の両方の前記スカート部分の内側にある、
請求項
4に記載の音響変換器。
【請求項6】
・前記第一のカップ部品(601)の前記スカート部分の長さは、前記第二のカップ部品(802)の前記スカート部分の長さよりも長く、
・前記永久磁石(303)は、前記第一のカップ部品(601)の前記スカート部分の内側にあり、
・前記永久磁石(303)と前記第二のカップ部品(802)は、前記第一のカップ部品(601)の前記スカート部分の内側で積層されている、
請求項
4に記載の音響変換器。
【請求項7】
・磁性材料のシート(701)が
、前記永久磁石(303)と前記第一のカップ部品(601)の前記端部分との間に積層されている、請求項
4~
6のいずれか一項に記載の音響変換器。
【請求項8】
・前記U字状断面を有する前記カバー(306、307)は、それぞれがスカート部分及び端部分を有する第一のカップ部品(1001)及び第二のカップ部品(1002)を備え、
・前記第二のカップ部品(1002)は、前記第一のカップ部品(1001)に対して同様に方向づけられた位置にあり、前記第一のカップ部品(1001)の内側にあり、
・前記第二のカップ部品(1002)の前記スカート部分は、前記スカート部分の長手方向の中間レベルにおいて、前記スカート部分の穿孔ゾーン(1101)を備え、
・前記第二のカップ部品(1002)の前記スカート部分は、前記端部分とは反対側のその端に中実ゾーン(1102)を備え、前記中実ゾーン(1102)は、前記U字状断面を有する前記カバー(306、307)の前記エッジを規定する、
請求項
3に記載の音響変換器。
【請求項9】
・前記U字状断面を有する前記カバー(306、307)は、端部分によって一端が閉じられ、他端が開いているスカート部分を有する第一のカップ部品(1201)を備え、
・前記U字状断面を有する前記カバー(306、307)は、外側リム及び内側リムを有するワッシャ部品(1202)を備え、そのうち前記内側リムは、前記スカート部分
の内側寸法より小さい開口部を規定し、
・前記ワッシャ部品(1202)は、前記ワッシャ部品(1202)の前記内側リムが、前記U字状断面を有する前記カバー(306、307)の前記エッジを規定するように、前記第一のカップ部品(1201)と同心に、前記スカート部分
の開口端に取り付けられている、
請求項
1に記載の音響変換器。
【請求項10】
前記軸線に垂直な方向における前記上部及び下部部品(301、302)の相対的な移動に抵抗すると同時に、前記軸線(305)の方向における前記上部及び下部部品(301、302)の相対的な移動を許容するように構成された支持部材(1301、1501)を備える、請求項1~
9のいずれか一項に記載の音響変換器。
【請求項11】
前記支持部材は多枝渦巻バネ(1301)からなり、前記多枝渦巻バネ(1301)の中央部分(1401)が前記上部部品及び下部部品(301、302)の一方に取り付けられ、前記多枝渦巻バネ(1301)の先端(1402)がその他方の部品(301、302)に取り付けられる、請求項
10に記載の音響変換器。
【請求項12】
前記支持部材は、前記上部及び下部部品(301、302)に取り付けられ、前記分離ギャップ(309)を橋渡しするフォイル(1501)を備える、請求項
10に記載の音響変換器。
【請求項13】
前記フォイル(1501)の少なくとも一部は、前記少なくとも1つのコイル(308)に電気信号を伝導するためのフレキシブルプリント回路を構成する、請求項12に記載の音響変換器。
【請求項14】
・第一及び第二の構造部品(401、402)を有する電子装置と、
・少なくとも1つの、請求項1~
13のいずれか一項に記載の音響変換器であって、前記音響変換器の前記上部部品(301)が前記第一の構造部品(401)に取り付けられ、前記音響変換器の前記下部部品(302)が前記電子装置の前記第二の構造部品(402)に取り付けられる、音響変換器と、
・前記電子装置の一部として、前記音響変換器の前記少なくとも1つのコイル(308)に電気信号を供給するように構成された電気回路と、
を備える、音を発生させるための配置。
【請求項15】
前記第一の構造部品(401)は、前記電子装置のディスプレ
イを備える、請求項
14に記載の配置。
【請求項16】
前記第二の構造部品(402)は、前記電子装置の構造支持フレームの一部を備える、請求項
14又は
15に記載の配置。
【請求項17】
・前記音響変換器の前記上部部品(301)は、前記上部部品(301)が前記第一の構造部品(401)に取り付けられるその側に第一の横方向寸法(D1)を有し、
・前記配置は、前記軸線(305)の方向における前記上部部品(301)の動きを前記第一の構造部品(401)に伝達するために、前記上部部品(301)と前記第一の構造部品(401)との間
に非弾性の第一の取付部材(1601)を備え、
・前記第一の取付部材(1601)は、前記第一の横方向寸法(D1)よりも小さい第二の横方向寸法(D2)を有する、
請求項
14~
16のいずれか一項に記載の配置。
【請求項18】
・前記配置は、前記第一の構造部品(401)に対する前記上部部品(301)の傾きに対して安定させるために、前記上部部品(301)と前記第一の構造部品(
401)のそれらの部分との間に、前記第一の取付部
材(1601)によって覆われていな
い弾性な第二の取付部材(1602、1701)を備える、
請求項
17に記載の配置。
【請求項19】
前記第二の取付部材(1602、1701)が弾性変形可能なクッション材料(1602)からなることと、前記第一の構造部品(401)上で前記上部部品(301)の前記第一の横方向寸法(D1)よりもさらに延びるバネ枝(1701)を備えることと、の少なくとも1つである、請求項
18に記載の配置。
【請求項20】
前記上部部品(301)と前記第一の構造部品(401)との間に、前記第一の構造部品(401)の局所的な弾性特性を前記上部部品(301)によってそこに伝達される動きに適合させるための支持シート(1603)を備える、請求項
14~
19のいずれか一項に記載の配置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電気信号を機械的振動に、好ましくは音響周波数に変換する音響変換器の分野に関する。本発明は、特に、電気装置の1つ以上の表面を変換の一部として機能させるために使用できる音響変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、既知の音響変換器を、電子装置に取り付けることなく、そのまま、部分的に切り取った軸方向図で示している。
図2は、
図1において切り取られたのと同じ平面に沿って、同じ既知の音響変換器の断面を示し、電子装置への取り付けが概略的に示されている。この種の音響変換器は、例えば、特許文献1から公知である。
【0003】
図1及び
図2の既知の音響変換器は、水平ギャップ103によって互いに分離された上部部品101及び下部部品102を備える。上部部品は、その上面において、電子装置の第一の構造部品201に取り付けられている。第一の構造部品201は、典型的には、電子装置の可視部品又は少なくともアクセス可能な部品であり、例えば、そのディスプレイパネルである。その上面202は、周囲の空気に対する界面を構成するように、ユーザから可視であるか、又は少なくともアクセス可能である。音響変換器の下部部品102は、その底面で、電子装置の第二の構造部品203に取り付けられている。第二の構造部品203は、例えば、電子装置の構造支持フレームの一部であってもよい。第一の構造部品201と第二の構造部品203との構造的関係は、上部部品101と下部部品102との間の水平ギャップ103を維持するのに役立つ。また、ギャップ103は、上部部品101と下部部品102との間で接着ジョイントを形成し得る弾性、非磁性材料で満たされてもよい。
【0004】
第一の永久磁石104は上部部品101に配置され、第二の永久磁石105は下部部品102に配置される。
図1及び
図2に示す実施形態では、第一の永久磁石104は比較的平坦な円柱の形状を有し、第二の永久磁石105は比較的平坦なリングの形状を有している。第一の永久磁石104と第二の永久磁石105の磁極は、それらの同名の磁極(S極又はN極のいずれか)が互いに向き合うように、反発する構成で配向される。こうして、互いに向かい合った同名の磁極に起因する静磁力は、上部部品101と下部部品102を常に互いから遠ざけるように押し付ける。
【0005】
音響変換器は、上部カバー106と下部カバー107とを備え、その両方はカップ状であり、磁性材料からなる。上部カバー106と下部カバー107の磁気特性は、第一の永久磁石104と第二の永久磁石105の磁力線を集中させて案内し、その結果、吸引静磁力が水平ギャップ103のエッジに現れるようになる。
【0006】
コイル108は、下部部品102の第二の永久磁石105を取り囲んでいる。フラットケーブル109は、電子装置内の他の場所に配置された電子回路(図示せず)からコイル108への導電接続を提供する。コイル108を流れる変化する電流は、上記で説明した静磁場と合計する動的磁場を誘導し、上部部品101を下部部品102に対して垂直方向に移動させる。第一の構造部品201の構造的剛性は第二の構造部品203の構造的剛性よりも弱いので、上部部品101の電磁気的に誘導された垂直移動は第一の構造部品201の振動モードに変換され、これにより、第一の構造部品201は周囲の空気中に可聴音を発する。要するに、音響変換器は、第一の構造部品201を平面ラウドスピーカのように動作させる。
【0007】
図1及び
図2の公知の音響変換器の固有の欠点は、反発静磁力と吸引静磁力の微妙なバランスに関連している。特に、吸引磁力の相対的な強さは、ギャップ103における上部カバー106と下部カバー107とのエッジの間の距離に強く依存する。外力が第一の構造部品201を下方に押すと、例えば、ユーザが不注意にタッチパネルを指先で少し強く押しすぎた場合、ギャップ103が一時的に完全に閉じることがある。これにより、上部部品101及び下部部品102は、増加した吸引磁力の影響下で一緒に折れてしまい、この磁力は非常に強力なこともあり、これが恒久的な状態になって変換器が誤動作するほど強くなる可能性がある。
【0008】
図1及び
図2の公知の音響変換器の第二の欠点は、上部部品及び下部部品の間のギャップが空気だけで構成される場合、別々に組み立てられて電子装置の製造業者に納入できる一体型部品として変換器を製造することが困難なことである。通常、音響変換器の上部部品と下部部品とは納品され、それらを電子装置の第一の構造部品及び第二の構造部品に十分に正確に配置し取り付けることは、装置製造者の責任である。
【0009】
音響変換器を上記のような誤動作を起こしにくくし、必要であれば一体型部品として製造できるような技術的解決策が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
目的とするのは、上述した従来技術の欠点のない音響信号を生成するための音響変換器及び配置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第一の態様によれば、電気信号を音響周波数の機械的振動に変換するための音響変換器が提供される。音響変換器は、上部部品及び下部部品を備える。第一の永久磁石は上部部品に配置され、第二の永久磁石は下部部品に配置される。第一及び第二の永久磁石の同名の磁極が軸線の方向で互いに向き合う。音響変換器は、上部部品に上部カバーを、下部部品に下部カバーを備える。前記上部及び下部カバーは磁性材料からなり、一緒になって第一及び第二の永久磁石の周りのエンクロージャを規定する。少なくとも1つのコイルは、前記エンクロージャ内に配置され、前記コイルを流れる電流の影響下で、前記軸線の方向に動磁力を生じるように構成される。前記上部カバー及び前記下部カバーのエッジの間の分離ギャップは、本質的に前記軸線の方向に向けられ、前記下部カバーと前記上部カバーのエッジが異なる位置間で前記軸線の方向に相対移動することができ、前記位置は、前記上部カバー及び下部カバーの前記エッジが前記軸線に垂直な方向で一致する範囲が異なる。
【0013】
一実施形態によれば、前記上部カバーは、U字状断面を有し、前記第一の永久磁石はU字のループの内側に配置される。前記下部カバーは、プレート状断面を有し、プレートの外側エッジは下部カバーの前記エッジを規定する。前記第二の永久磁石は、上部カバーのU字状断面の内側に面するプレートの側にある。このことは、上部カバーと下部カバーのエッジの間の適切に向けられたギャップを多くの異なる構築アプローチで実現できるという利点を伴う。
【0014】
一実施形態によれば、前記下部カバーは、U字状断面を有し、前記第二の永久磁石はU字のループの内側に配置される。前記上部カバーは、プレート状断面を有し、プレートの外側エッジは上部カバーの前記エッジを規定する。前記第一の永久磁石は、下部カバーのU字状断面の内側に面するプレートの側にある。このことは、上部カバーと下部カバーのエッジの間の適切に向けられたギャップを多くの異なる構築アプローチで実現できるという利点を伴う。
【0015】
一実施形態によれば、前記U字状断面において、U字のアームの端部は、内側に突出した延長部を備える。前記延長部の内側先端は、それぞれのカバーの前記エッジを規定する。このことは、ギャップを横切る磁力線に関する効果をより顕著にすることができるという利点を伴う。
【0016】
一実施形態によれば、前記上部カバー又は下部カバーは、それぞれがスカート部分と端部分とを有する第一のカップ部品と第二のカップ部品とを備える。前記第二のカップ部品は、第一のカップ部品に対して倒立位置にあってもよい。前記第一及び第二のカップ部品の前記スカート部分は、少なくとも部分的に互いの内側にあり、前記第二のカップ部品の端部分は開口部を有し、そのエッジは、それぞれのカバーの前記エッジを規定する。このことは、それぞれのカバーの明確に規定された拡張エッジを、様々な詳細なアプローチで製造できるという利点を伴う。
【0017】
一実施形態によれば、前記第一及び第二のカップ部品の前記スカート部分は、前記第一及び第二のカップ部品の両方のスカート部分の長さの大部分において互いの内側にある。永久磁石は、前記第一及び第二のカップ部品の両方の前記スカート部分の内側にある。このことは、それぞれのカバーについてかなりの総壁厚を得ることができるという利点を伴う。
【0018】
一実施形態によれば、前記第一のカップ部品のスカート部分の長さは、前記第二のカップ部品のスカート部分の長さよりも長い。永久磁石は、前記第一のカップ部品のスカート部分の内側にあり、前記第一の永久磁石と前記第二のカップ部品は、前記第一のカップ部品のスカート部分の内側で積層されている。このことは、第二のカップ部品を取り付ける前に永久磁石を第一のカップ部品に取り付けることができるという利点を伴う。
【0019】
一実施形態によれば、上部部品又は下部部品は、永久磁石と第一のカップ部品の端部分との間に積層された磁性材料のシートを備える。このことは、構造体のそれぞれの部品に磁性材料の厚さが追加されるという利点を伴う。
【0020】
一実施形態によれば、前記上部カバー又は下部カバーは、それぞれがスカート部分及び端部分を有する第一のカップ部品及び第二のカップ部品を備える。前記第二のカップ部品は、前記第一のカップ部品に対して同様に方向づけられた位置にあり、前記第一のカップ部品の内側にあってもよい。前記第二のカップ部品のスカート部分は、前記スカート部分の長手方向の中間レベルにおいて、前記スカート部分の穿孔ゾーンを備えてもよい。前記第二のカップ部品のスカート部分は、端部分とは反対側のその端に中実ゾーンを備え、前記中実ゾーンは、それぞれのカバーの前記エッジを規定する。このことは、第一の永久磁石を追加する前に、それぞれの部品の金属加工を終了できるという利点を伴う。
【0021】
一実施形態によれば、前記上部カバー又は下部カバーは、端部分によって一端が閉じられ、他端が開いているスカート部分を有する第一のカップ部品を備える。それぞれのカバーは、外側リム及び内側リムを有するワッシャ部品を備えてもよく、そのうち前記内側リムは、前記スカート部分の内側寸法より小さい開口部を規定する。前記ワッシャ部品は、ワッシャ部品の内側リムが、それぞれのカバーの前記エッジを規定するように、前記第一のカップ部品と同心に、スカート部分の開口端に取り付けられてもよい。このことは、非常に正確な寸法の上部部品のエッジを作成できるという利点を伴う。
【0022】
一実施形態によれば、音響変換器は、前記軸線に垂直な方向における前記上部及び下部部品の相対的な移動に抵抗すると同時に、前記軸線の方向における前記上部及び下部部品の相対的な移動を許容するように構成された支持部材を備える。このことは、ギャップの寸法を非常に正確に維持できるという利点を伴う。
【0023】
一実施形態によれば、前記支持部材は多枝渦巻バネからなり、前記多枝渦巻バネの中央部分が上部及び下部部品の一方に取り付けられ、前記多枝渦巻バネの先端がその他方の部品に取り付けられる。このことは、支持部材を製造して、音響変換器の構造体の残りの部分に取り付けることが比較的容易であるという利点を伴う。
【0024】
一実施形態によれば、前記支持部材は、前記上部及び下部部品に取り付けられ、前記分離ギャップを橋渡しするフォイルを備える。このことは、非常に薄い支持部材を使用できるので、音響変換器の全体の高さを減らすことができるという利点を伴う。
【0025】
一実施形態によれば、前記フォイルの少なくとも一部は、前記少なくとも1つのコイルに電気信号を伝導するためのフレキシブルプリント回路を構成する。このことは、構造部品を2つの目的に使用でき、音響変換器構築の部品の総数を減らすことができるという利点を伴う。
【0026】
第二の態様によれば、音を発生させるための配置が提供される。この配置は、第一及び第二の構造部品を有する電子装置と、上述したタイプの少なくとも1つの音響変換器とを備える。音響変換器の上部部品が前記第一の構造部品に取り付けられ、音響変換器の下部部品が電子装置の前記第二の構造部品に取り付けられる。電子装置の一部として、電気回路は、音響変換器の前記少なくとも1つのコイルに電気信号を供給するように構成される。
【0027】
一実施形態によれば、前記第一の構造部品は、前記電子装置のディスプレイなど、前記電子装置の可視外表面を備える。このことは、別のラウドスピーカを省略でき、電子装置の別の構造部品が音の発生器として兼用できるという利点を伴う。
【0028】
一実施形態によれば、前記第二の構造部品は、電子装置の構造支持フレームの一部を備える。このことは、音響変換器の下部部品を支持するのに十分な構造的剛性を比較的容易に提供できるという利点を伴う。
【0029】
一実施形態によれば、音響変換器の上部部品は、上部部品が第一の構造部品に取り付けられるその側に第一の横方向寸法を有する。配置は、前記軸線の方向における前記上部部品の動きを前記第一の構造部品に伝達するために、前記上部部品と前記第一の構造部品との間に本質的に非弾性の第一の取付部材を備える。前記第一の取付部材は、前記第一の横方向寸法よりも小さい第二の横方向寸法を有する。このことは、電子装置の第一の構造部品のより小さな部分が剛性を保ったままである必要があるという利点を伴う。
【0030】
一実施形態によれば、前記配置は、前記第一の構造部品に対する前記上部部品の傾きに対して安定させるために、前記上部部品と前記第一の構造部品のそれらの部分との間に、前記第一の取付部品によって覆われていない本質的に弾性な第二の取付部材を備える。このことは、振動を電子装置の第一の構造部品に伝達する能力を弱めることなく、音響変換器の取付を安定させることができるという利点を伴う。
【0031】
一実施形態によれば、前記第二の取付部材は、弾性的に変形可能なクッション材料からなり、及び/又は前記上部部品の前記第一の横方向寸法よりも前記第一の構造部品上でさらに延びるバネ枝を備える。このことは、様々な実装の可能性があり、所望の支持機能を実装するという利点を伴う。
【0032】
一実施形態によれば、配置は、前記上部部品と前記第一の構造部品との間に、第一の構造部品の局所的な弾性特性を上部部品によってそこに伝達される動きに適合させるための支持シートを備える。このことは、第一の構造部品の局所的な弾性特性を、上部部品によってそこに伝達される動きに、よりよく適合させるという利点を伴う。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の更なる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の実施形態を示し、説明とともに本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0034】
【
図5】様々な構造体における垂直移動の関数としての合成静磁力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図3は、一実施形態による音響変換器を部分的に切り取った軸方向図で示している。
図4は、
図3で切り取られた同じ平面に沿った同じ音響変換器の断面を示し、電子装置への取り付けが概略的に示されている。
【0036】
音響変換器は、上部部品301と下部部品302とを備える。ここで、また、この文章の他の全ての部品において、「上部」又は「下部」のような方向に関する用語は、図面との比較を容易にする例示的な名称としてのみ使用される。このような用語は、説明された実施形態の任意の実用的な実装において、対応する部品又は特徴の適用性又は使用を任意の特定の方向に制限するものと解釈されるべきではない。別の重要な一般化は、図面に示される多くの実施形態が回転対称性を示し、丸い円筒の一般的な形態を有するとしても、これは図面を読みやすくするためだけであるということである。丸い円筒形は決して限定的なものではなく、示された構造体のほとんどは、三角形、長方形、六角形、又は他の多角形のような他の形態を有することも十分に可能である。このことは、特に音響変換器の一般的な外形にも、それに伴うカバー部品、永久磁石、コイルの一般的な外形にも適用される。
【0037】
音を発生させるための配置における上部部品301及び下部部品302の一般的な役割は、
図4に概略的に示されている。電子装置は、第一の構造部品401と第二の構造部品402とを備えているものとする。音響変換器の上部部品301は、電子装置の第一の構造部品401に取り付けられ、音響変換器の下部部品302は、第二の構造部品402に取り付けられる。
【0038】
第一の永久磁石303は上部部品301に配置され、第二の永久磁石304は下部部品302に配置される。第一の永久磁石303及び第二の永久磁石304の極性は、図面において斜線ハッチで図式化されている。第一の永久磁石303及び第二の永久磁石304の同名の磁極は、軸線305の方向に互いに向き合い、この軸線は、「上部」及び「下部」の呼称を生じさせる方向も示している。同名の磁極とは、N極又はS極を意味し、第一の永久磁石303のS極が第二の永久磁石304のS極に面するか、あるいは第一の永久磁石303のN極が第二の永久磁石304のN極に面する。その結果、第一の永久磁石303と第二の永久磁石304との間の基本的な静磁気相互作用は、軸線305の方向への反発力である。
【0039】
音響変換器は、上部部品301に上部カバー306を、下部部品302に下部カバー307を備える。上部カバー306及び下部カバー307は磁性材料からなり、その最も重要結果として、上部カバー306及び下部カバー307は第一の永久磁石303及び第二の永久磁石304の磁力線のかなりの割合をその材料内に閉じ込めることができる。上部カバー306及び下部カバー307は、一緒になって、第一の永久磁石303及び第二の永久磁石304の周りのエンクロージャを規定する。
【0040】
少なくとも1つのコイル308は、前記エンクロージャに配置される。本実施形態では、コイル308は、概ねリング状であり、第二の永久磁石304と同一平面上で第二の永久磁石304の周囲に配置されている。換言すれば、軸線305は、コイル308の中心軸をも表している。上部カバー306及び下部カバー307によって形成されるエンクロージャ内にコイルを配置するための他の可能性も存在し、本文で後に詳細に説明する。コイル308は、それを流れる電流の影響下で、軸線305の方向に動磁力を生じさせるように構成されている。音を発生させるための配置において、電子装置は、電気信号(すなわち、様々な形態及び大きさの電流)を音響変換器のコイル308に供給するように構成された電気回路を備える。
【0041】
音響変換器は、上部カバー306と下部カバー307のエッジの間に分離ギャップ309を備える。分離ギャップ309は、軸線305の方向に本質的に向けられている。これが、分離ギャップが構造体の中央縦軸に対して本質的に垂直であった、
図1及び
図2の従来公知の音響変換器と大きく異なる点である。
図4の下部部品の部分拡大図に示すように、分離ギャップ309によって、下部カバー307及び上部カバー306のエッジが異なる位置間で軸線305の方向に相対的な移動することが可能になる。これらの位置は、上部カバー306及び下部カバー307のエッジが軸線305に垂直な方向で一致する範囲が互いに異なる。例えば、
図4の左端の部分拡大図では、上部カバー306及び下部カバー307のエッジは、矢印404で示す範囲で一致しており、中央と右端の部分拡大図では、それぞれ矢印404と405で示す範囲で一致している。
【0042】
図5は、音響変換器の3つの例示的な構造体において、合成静磁力の比較を示す。横軸は変換器の上部部品と下部部品との垂直方向分離を表し、縦軸は合成静磁力が反発するか吸引するかを定性的に示す。合成静磁力は、吸引静磁力成分と反発静磁力成分のベクトル和であり、簡単のために垂直方向のみを考慮する。吸引静磁力成分は、本質的に、磁力線が上部カバー106と下部カバー107の磁性材料に閉じ込められている磁場の部分から生じる。反発静磁力成分は、本質的に、磁力線が音響変換器構造体の中央で互いに向かい合う同名の磁極の間の自由空間を占める磁場の部分から生じる。
【0043】
図5に実線で示すグラフ501は、
図1及び
図2に示され、背景技術で上述した従来から公知の音響変換器に対応する。このような構造では、垂直方向分離のゼロ点(すなわち、水平軸のゼロ点)は、上部カバー106及び下部カバー107のエッジが互いに対して折れるところ、すなわち、ギャップ103が完全に閉じるところである。公称設計点502が存在し、そこで、合成静磁力がゼロとなる。
図5に示すように、公称設計点502とゼロ点との間の全範囲において、グラフ501で表される合成静磁力は引き合っている。これは、既知の構造体における小さな垂直方向分離では、吸引静磁力成分が反発静磁力成分よりも勝ることに起因する。合成吸引静磁力は、垂直距離ゼロで最大となる。これは、上述した既知の構造体の問題点を示している。例えば、不注意なユーザによって引き起こされるような外力が音響変換器の部品を押して、互いに近づきすぎると、電子装置の構造部品によって引き起こされる弾性力がそれらの部品を公称設計点502に持っていこうとしても、公称設計点502に戻ることができないことがある。前記弾性力は、ゼロ(又は他の非常に短い)距離で強い吸引磁力に打ち勝つには、単に弱すぎることがある。
【0044】
図5に破線で示すグラフ503は、
図3及び
図4に示す音響変換器構造体に対応する。この場合、垂直方向分離のゼロ点は、音響変換器の下部部品302が上部部品301の内側に非常に深く入り、第二の永久磁石304又はコイル308のいずれか、あるいは両方が第一の永久磁石303に接触するであろう場所である。グラフ503の公称設計点502はグラフ501のそれと一致するように示されているが、これは例示的比較のためだけであり、公称設計点に対応する垂直方向分離が全ての場合において等しい垂直方向分離で生じるべきであることを意味するものではない。
【0045】
グラフ503は、
図3及び
図4に示した構造体が、公称設計点502でバランスを取ろうとする自発的な傾向を有することを示す。垂直方向分離が小さくなると、反発静磁力成分が優勢となり、上部部品301と下部部品302とを互いにさらに遠ざけ、公称設計点502に向かって、押し出そうとようとする。垂直方向分離が大きくなると、吸引静磁力成分が優勢となり、上部部品301と下部部品302とを互いに近づけ、再び公称設計点502に向かって引き寄せようとする。より大きな垂直方向分離、すなわち、グラフ503が再び水平軸と交差する位置に別のバランス点が存在することもあるが、それは通常、電子装置の構造体がいかなる状況でもそこに到達することを妨げるような大きな距離である。
【0046】
コイルに電流が流れていない状態で、上部部品と下部部品との間の垂直方向分離が公称設計点502又はその近くになるように、音響変換器及びその電子装置への取り付けを設計することが有利である。これは、合成静磁力の絶対値が公称設計点502付近で最も小さくなるため、コイルに電流を流すことで生じる比較的小さな動磁力だけで上部部品と下部部品が相対的に移動する(すなわち、動磁力が大きな静磁力と争う必要がない)ためである。このような相対的な動きが繰り返されることで、音響変換器が電子装置の適切な構造部品に振動モードを呼び起こし、結果として音響信号が放出される。小さな電流で十分であれば、電力消費量が比較的少なくて済むので有利である。同じ理由で、音響変換器がその公称設計点502にあるとき、それらがもたらす静的弾性力の合成静磁力もゼロになるように、電子装置の構造部品を設計することが有利である。
【0047】
上記で指摘したように、吸引静磁力成分は、磁力線が上部カバー106及び下部カバー107の磁性材料に閉じ込められている磁場の部分から本質的に生じる。吸引静磁力成分の相対的な強さは、上部カバー306及び下部カバー307のエッジが一致する範囲に依存する(
図4の矢印404、405、406を参照)。公称設計点502の位置、すなわち、吸引静磁力成分と反発静磁力成分が等しくなるように、上部カバー306と下部カバー307のエッジがちょうど適切に一致する垂直方向分離は、
図3及び
図4に示す原理の各実践的実施に対してシミュレーション及び実験を通して見出すことができる。
【0048】
合成静磁力が決して吸引せず、
図5のグラフ504に従うような別の実施形態を提供することも可能である。この種の実施形態は、例えば、シミュレーション及び/又は実験を通じて、カバーエッジ及びギャップを適宜に寸法設定することによって構築することができる。この種の「常に反発する」実施形態は、
図5のグラフ504によって概略的に示されるように、合成静磁力が距離の関数として比較的ゆっくりしか変化しないという利点を含むことある。電子装置の構造部品によって生じる静的機械力を使用して、構造体を好適にバランスさせ、常に反発する力が音響変換器の上部部品及び下部部品を互いに実際以上に移動させないようにすることができる。
【0049】
図3及び
図4は、実際の実用的な実施に厳密な位置を取ることなく、音響変換器の様々な部分の概略的な特徴付けと見なされるものである。一般に、最も好ましくは、上部カバー306は、U字状(又は、図面に示された向きをとって、逆U字状)断面を有すると言うことができる。第一の永久磁石303は、U字のループの内側に配置される。前記U字状断面において、U字のアームの端部は、内側に突出した延長部403を構成する。これらの延長部403の内側先端は、下部カバーのエッジと一致する範囲が考慮されるときに重要である上部カバー306のそのエッジを規定する。下部カバー307は、プレート状に形成された断面を有し、プレートの外側エッジが下部カバー307の対応するエッジを規定している。第二の永久磁石304は、上部カバー306のU字状断面の内側に面するプレートの側にある。
【0050】
次に、いくつかの可能な、相互に代替的な実用的実施例を、
図6~
図12を参照して説明する。これらは全て、
図3及び
図4に示した軸線305を含む平面に沿った断面である。ここで、図面が円筒形の対称性を示唆しているが、これは要件ではなく、単なる例示に過ぎないことを再度想起してもよい。様々な数の角部を有する多角形のような他の形態も可能である。
【0051】
図6は、上部カバーが第一のカップ部品601と第二のカップ部品602とを備える音響変換器を示す。これらはそれぞれスカート部分と端部分とを有し、それぞれのU字状断面において、U字のアームがスカート部分を表し、U字の底部が端部分を表すようになっている。第二のカップ部品602は、第一のカップ部品601に対して倒立位置にある。
図6では、第二のカップ部品602の断面が実U字であり、第一のカップ部品601の断面が逆Uであるように示している。第一のカップ部品601及び第二のカップ部品602のスカート部分は、その長さの大部分において互いに内側に入っており、正確に言えば、
図6の実施形態では、第二のカップ部品602のスカート部分が第一のカップ部品601のスカート部分の内側に入っている。第二のカップ部品602の端部分は開口部を有し、そのエッジは、概略図である
図3及び
図4を参照して上述した上部カバーのエッジを規定している。
【0052】
図7は、
図6と同様の音響変換器を示すが、上部部品が、第一の永久磁石303と第一のカップ部品601の端部分との間に積層された磁性材料のシート701を備える点で異なる。
【0053】
図8は、第二のカップ部品802のスカート部分が第一のカップ部品601のスカート部分よりも著しく短い音響変換器を示す。結果として、第一のカップ部品601及び第二のカップ部品802のスカート部分は、互いの内側に部分的にしか存在しない。正確には、第二のカップ部品802のスカート部分の全体が、第一のカップ部品601のスカート部分の一部の内側にある。
図9の音響変換器は、
図8のものと同様であるが、
図9では、上部部品が、第一の永久磁石303と第一のカップ部品601の端部分との間に積層された磁性材料のシート701を備える点で異なる。
【0054】
一方で
図6及び
図7の音響変換器と、他方で
図8及び
図9の音響変換器は、第一の永久磁石303と第二のカップ部品602又は802との相対寸法に関して差異がある。
図6及び
図7の実施形態では、第一の永久磁石303は、第一のカップ部品601及び第二のカップ部品602の両方のスカート部分の内側にある。
図8及び
図9の実施形態では、第一のカップ部品601のスカート部分の長さが第二のカップ部品802のスカート部分の長さよりも長く、第一の永久磁石303は、第一のカップ部品601のスカート部分の内側にのみ存在する。その結果、
図8及び
図9の実施形態では、第一の永久磁石303及び第二のカップ部品802は、実際には第一のカップ部品601のスカート部分内に積層される。
【0055】
図6~
図9に示される実施形態は、製造中にそれらの上部部品が組み立てられ得る順序に関して特定の相違点を有する。
図8及び
図9の実施形態では、第一の永久磁石303を第一のカップ部品601に取り付け(場合によっては、その間に磁性材料の追加のシート701を積層して)、その後初めて第二のカップ部品802を追加して、第一及び第二のカップ部品のスカート部分を一緒に取り付けることが比較的容易である。
図6及び
図7の実施形態を同様の順序で組み立てる場合、第一の永久磁石303は、取り付け時に第一のカップ部品601と非常に慎重に位置合わせする必要があり、その後に第二のカップ部品602のスカート部分がその周りをスライドできるようになる。
図6及び
図7の実施形態を組み立てるのにより有利な順序は、最初に第一の永久磁石303を(また場合によっては、磁性材料の追加シート701も)第二のカップ部品602に取り付け、その後初めて、このエンティティを第一のカップ部品601に取り付けることができる。
【0056】
図10及び
図11は、更なる代替的な実施形態による音響変換器を示す。
図10は、組み立てられた構成の音響変換器を示し、
図11は、その部品を互いに部分的に分離して示す。この実施形態においても、上部カバーは、第一のカップ部品1001と第二のカップ部品1002とを備え、そのそれぞれは、スカート部分と端部分とを有する。この実施形態では、第二のカップ部品1002は、第一のカップ部品1001と同様の向きの位置にあり(両方とも断面が逆U字のように見える)、その内側にある。第二のカップ部品1002のスカート部分は、その長手方向の中間レベルでスカート部分の穿孔ゾーン1101を構成している。追加として、スカート部分は、第二のカップ部品1002の端部分と反対側にあるスカート部分のその端部において、中実ゾーン1102を構成する。
【0057】
中実ゾーン1102は、概略図である
図3及び
図4を参照して上述した上部カバーのエッジを規定している。これは、穿孔ゾーン1101がそのような大きな割合の固体材料を除去した結果であり、そうでなければ、第二のカップ部品1002の磁性材料に閉じ込められていた磁力線のかなりの大部分が第一のカップ部品1001のスカート部分を介して穿孔ゾーン1101を通過しなければならない。
【0058】
図10及び
図11に示す実施形態は、第一の永久磁石303を除く磁性材料を成形して、一緒に取り付けることを含む上部カバーの全ての製造段階が、第一の永久磁石303を取り付ける前に、完了することができるという利点を有する。
【0059】
図12は、更なる代替的な実施形態による音響変換器を示す。
図12において、上部カバーは、端部分によって一端(上端)が閉じられ、他端(下端)が開いたスカート部分を有する第一のカップ部品1201を備える。このように、第一のカップ部品1201は、上述した他の実施形態における第一のカップ部品に極めて類似している。しかしながら、
図12の実施形態では、第二のカップ部品は存在しない。その代わりに、上部カバーは、外側リムと内側リムとを有するワッシャ部品1202を備える。内側リムは、第一のカップ部品1201におけるスカート部分の内寸よりも小さい開口部を規定する。ワッシャ部品1202は、第一のカップ部品1201におけるスカート部分の開口端に、第一のカップ部品1201と同心円状に取り付けられている。したがって、ワッシャ部品1202の内側リムも、概略図である
図3及び
図4を参照して上述した上部カバーのエッジを規定する。
【0060】
必要に応じて、
図12に示す実施形態は、第一のカップ部品1201の端部分と第一の永久磁石303との間に磁性材料の追加シートで補強することができる。
図12に示す実施形態は、上部カバーの重要なエッジがワッシャ部品1202によってのみ規定されるので、エッジ厚さ、形状、及び他の特性を、他の多くの実施形態よりも自由に選択できるという追加の利点を含む。
【0061】
図6~
図12に示す実施形態に対して、多数の変形がなされ得る。例えば、
図6~
図9のような実施形態では、スカート部分の内径を逆に選択し、第一のカップ部品のスカート部分が第二のカップ部品のスカート部分の内側に入るようにすることも可能であろう。また、そもそも上部カバーまで2つの別個の部品にする必要はない。第一の永久磁石が利用可能な空間を最大限に埋めることを望む場合でも、まず直線的なスカート部分を有するカップ状の上部カバーを作り、所定の位置に第一の永久磁石を取り付け、その後初めて、スカート部分の自由エッジを内側に曲げて、概略図である
図3及び
図4を参照して上述した上部カバーのエッジを生成することが可能である。
【0062】
図6~
図12の実施形態において、様々なカップ部品は、例えば、磁性金属の薄いシートからスタンピング又はプレス加工によって作ることができる。金属シートが薄いほど、きれいにかつ正確にカップ状にプレスすることが容易である。しかしながら、上部カバー及び下部カバーは、関係する磁界の磁力線を閉じ込める目的を有するので、任意に薄くすることは有利ではない。その理由は、薄い材料層は、厚い材料層よりも磁力線を閉じ込める効果が少ないからである。例えば、
図7と
図9の実施形態では、磁性材料の追加シート701の目的は、材料の厚さを追加し、その結果、上部カバーの最上部分の磁力線を閉じ込める能力を向上させることである。磁性材料の最大総厚を目指すことは、
図6、
図7、
図10、及び
図11のような実施形態も提唱し、そこでは、2つのカップ部品のスカート部分がそれらの両方の長さの大部分にわたって互いに内側にある。一例として、
図6~
図12のような実施形態では、金属シートからスタンピング又はプレスによって作られた磁性材料の任意の単一のピースの壁厚は、その両端を含めて、0.2~1.0mmのオーダーであってもよく、好ましくは0.5~0.75mmの間であってもよい。
【0063】
出発点としての金属シートと、製造方法としてのプレス又はスタンピングだけが可能な選択肢ではない。カップ部品、又は実際には音響変換器の上部部品及び下部部品の任意の機械的構成要素を、例えば、ブランクからのフライス加工、又は3D印刷などの付加製造方法によって製造することも可能である。
【0064】
第一の永久磁石と、第二の永久磁石又はコイルのいずれか(又は、それらが同じレベルにある場合には両方)の最上部との間の垂直方向分離は、
図5の説明において上述した公称設計点において、数百マイクロメートルのオーダー、例えば、400マイクロメートルであってもよい。動作時、すなわち音響周波数での振動が発生したときの上部部品及び下部部品の相対的な垂直移動は、それよりもはるかに小さく、数マイクロメートルのみ、又は最も低い所望の周波数では、数十マイクロメートルのオーダーであってよい。ギャップ309(
図3参照)における上部部品と下部部品のエッジ間の最短距離は、有利には、数十マイクロメートル又は数百マイクロメートルのオーダーであり、例えば、50マイクロメートルと500マイクロメートルの間である。ギャップが小さいことは、吸引静磁力成分を所望の動作方法に効果的に寄与させるという点で有利であるが、達成可能な製造方法の精度によって、目標とする小さなギャップの下限が設定される場合がある。
【0065】
音響変換器の意図された動作に関して、上部部品及び下部部品が垂直方向(軸線305の方向)にかなり自由に相対的に動くことを可能にする一方で、それらが水平方向に動くことを防止することが有利である。有利には、音響変換器は、前記軸線305に垂直な方向における上部部品301及び下部部品302の相対移動に抵抗すると同時に、軸線305の方向における上部部品301及び下部部品302の相対移動を許容するように構成された支持部材を備えてもよい。
【0066】
図13は、音を発生させるための配置を概略的に示す。この配置は、第一の構造部品401及び第二の構造部品402を有する電子装置と、上述した種類の音響変換器とを備える。この例示的な実施形態が音響変換器のいかなる特定の実際の実装にも限定されないことを強調するために、
図4の概略タイプの図式表現を音響変換器のために使用する。音響変換器の上部部品301は、電子装置の第一の構造部品401に取り付けられ、音響変換器の下部部品302は、第二の構造
部品402に取り付けられる。
図13には示されていないが、電子装置は、音響変換器の少なくとも1つのコイルに電気信号を供給するように構成された電気回路からなると仮定される。
【0067】
支持部材1301は、
図13に概略的に示されている。上記で説明したように、支持部材1301は、軸線305に垂直な方向における上部部品301及び下部部品302の相対移動に抵抗すると同時に、軸線305の方向における上部部品301及び下部部品302の相対移動を許容するように構成されている。この実施形態では、支持部材1301は、下部部品302を電子装置の第二の構造部品402に取り付ける配置の一部である。より正確には、この実施形態では、支持部材1301は、下部部品302と第二の構造部品402との間に積層される。
【0068】
図14は、支持部材1301の一例を示す。この実施形態によれば、支持部材1301は、多枝渦巻バネからなる。
図13に示す方法で使用する場合、多枝渦巻バネ1301の中央部分1401は下部部品302に取り付けられ、前記多枝渦巻バネ1301の先端1402は上部部品301に取り付けられる。渦巻バネ1301の枝は、上部部品301及び下部部品302が軸線305に垂直な方向で不要な相対移動をするのを効果的に防止するために、半径方向で非常に剛性を有するものと仮定される。同時に、渦巻バネ1301の枝は、横断方向に非常に延性があるので、軸線305の方向における上部部品301及び下部部品302の相対移動に対してほとんど抵抗を与えない。多枝渦巻バネの代わりに、円形、十字形、又は星形の板バネを支持部材として使用することも可能である。
【0069】
図15は、代替の実施形態を示し、ここでは、支持部材が、上部部品301及び下部部品302に取り付けられ、ギャップ309を橋渡しするフォイル1501からなる。フォイル1501は、フォイル自体に平行な力の下ではほとんど伸びを示さないが、それに垂直な力の下では比較的容易に曲がる可能性があると想定される。少なくとも数学的に正確な意味において、上部部品301及び下部部品302の任意の相対的な垂直変位は、フォイル1501が伸びることも必要とするが、ギャップ309の幅が数百マイクロメートルである得る一方で、必要な垂直変位の大きさは、マイクロメートルのオーダーのこともある。これらの寸法の相対的な大きさは、そのような垂直変位を可能にするためにフォイル1501が示さなければならない伸びの量が極めて小さいことを意味する。
図15は、また、この例示的な実施形態において、第一の構造部品1502及び第二の構造部品1503が、どのようにフォイル1501の下方に配置され得るか(又はフォイル1501の下まで延在する少なくともいくつかの部分を有し得るか)を示す。
【0070】
例示的な一実施形態によれば、フォイル1501の少なくとも一部は、音響変換器内の少なくとも1つのコイル308に電気信号を伝導するためのフレキシブルプリント回路を構成してもよい。そのような場合、フォイル1501の少なくとも一部は、音響変換器からさらに延び、及び/又は
図15に示す構造体の1つ以上の部品は、そのような部品を通して電気信号を伝導するために必要な伝導性ビアを有するであろう。
【0071】
電子装置の構造部品は、音響変換器の上部部品及び下部部品の意図された相対的な垂直移動を不必要に妨げないように形成されなければならない。
図13の実施形態では、これは、第二の構造部品402が隆起部分1302を備えることによって達成され、それに音響変換器を、例えば、接着剤又はテープであり得る取付層1303で取り付けている。また、取付層1303は、超音波溶接のような他の取付形態で構成されてもよい。
【0072】
図13において、先の
図4と同様に、1つの可能性は、第一の構造部品401が、電子装置のディスプレイなど、電子装置の可視外表面を備えることである。第二の構造部品402は、例えば、電子装置の構造支持フレームの一部を備えてもよい。
【0073】
音響変換器は、その上部部品の垂直移動を電子装置の構造部品の振動モードに変換して、音を発生させることを目的としており、全ての場合において、その上部部品は、そのような構造部品に取り付けられている。このような取付がどのように行われるかは、どのように効果的に、どのような主観的な品質レベルで音を発生させることができるかに著しい影響を与える可能性がある。このことは、
図1と
図2にも示され、上記の背景の項で説明した音響変換器の全てに一般的に当てはまる。電子装置の構造部品に誘導される振動モードは、非常に複雑なものである可能性があり、両方の次元で複数の波長を有する多数の二次元モードも含まれる。基本的な傾向として、発生する音の周波数が高いほど、より複雑な発振モードが発生する可能性がある。
【0074】
図1~
図4、
図6~
図13、及び
図15を参照して上述したような実施形態では、上部部品の上面の特徴的な横方向寸法は、15~20ミリメートルのようなものであってもよい。音響変換器が円筒対称である場合、上部部品の上面は円形であるので、その特徴的な横方向寸法はその直径である。上部部品は、カップ部品の端部分、磁性材料の可能な追加シート、及び第一の永久磁石の緊密な積層構成により、比較的剛性を有することもある。その上面全体にわたって電子装置の第一の構造部品への堅固に取り付けられている場合、これは、電子装置の第一の構造部品の対応する部分が、その円形部分が全体として垂直に前後する以外に振動し得るような振動モードの発生を除いて、完全に剛性を保ったままであることを意味する。特定の状況下では、例えば、電子装置のディスプレイ(又は他の第一の構造部品)が小さい場合、これは、次善のオーディオ品質になる可能性がある。
【0075】
上記の欠点がない音を発生させるための配置を提供することが有利であろう。この配置は、第一及び第二の構造部品を有する電子装置と、その上部部品が第一の構造部品に取り付けられ、その下部部品が第二の構造部品に取り付けられた音響変換器とを備える必要がある。電子装置の一部として電子回路を設ける必要があり、電子回路は、電気信号を音響変換器の少なくとも1つのコイルに供給するように構成される。
【0076】
一態様によれば、上記の有利な目的は、
図16に概略的に示す原理に従って達成される。ここで、
図3及び
図4を参照して先に説明した種類の音響変換器が例として使用されるが、
図16に示す原理は、
図1及び
図2を参照して先に説明した種類の音響変換器に使用するためにも適用可能であることに留意されたい。
【0077】
図16の原理において、音響変換器の上部部品301は、それが電子装置の第一の構造部品401に取り付けられるその側に、第一の横方向寸法D1を有する。この配置は、軸線305の方向における前記上部部品301の動きを前記第一の構造部品401に伝えるために、上部部品301と第一の構造部品401との間の本質的に非弾性の第一の取付部材1601を備える。第一の取付部材1601は、第一の横方向寸法D1より小さい第二の横方向寸法D2を有する。
【0078】
第一の取付部材1601は、上部部品301と第一の構造部品401との間に配置された金属製ディスク又は硬質プラスチック製ディスクのような別部品であってよい。あるいは、例えば、上部部品301のカップ状外側部が、その中心に隆起部分が残されるように固体ブランクから機械加工される場合、上部部品301の一体化した部分であってもよい。
【0079】
上部部品301と第一の構造部品401との間に幾分小さい取付部材1601を使用することの効果は、第一の構造部品401の特徴的な横方向寸法D2を有する部分のみが剛性を保つことである。第一の構造部品401の他の全ての部分は、所望の音を発生させるための任意の振動モードに寄与することができる。
【0080】
図16に示す実施形態では、配置は、第一の取付部品1601によって覆われていない上部部品301と第一の構造部品301のそれらの部分の間に本質的に弾性の第二の取付部材1602を備える。第二の取付部材1602は、第一の構造部品401に対する上部部品301の傾きに対して安定させるために設けられる。
図17は代替の実施形態を示し、この実施形態では、同じ目的のために異なる種類の第二の取付部材1701が設けられている。
図16では、第二の支持部品1602は弾性変形可能なクッション材料からなり、
図17では、第二の支持部品1701は、第一の構造部品401上で上部部品301の特徴的な横寸法D1よりもさらに延びるバネ枝を備える。
【0081】
図16及び
図17に示す更なるオプションの特徴は、電子装置の上部部品301と第一の構造部品401との間に配置された支持シート1603である。支持シート1603は、ここでは第一及び第二の取付部材と一緒に使用されて示されているが、それらがない実施形態でも使用され得る(例えば、
図13の支持シート1305を参照)。支持シートの目的は、第一の構造部品401の局所的な弾性特性を、上部部品301によってそこに伝達される動きに適合させることである。特に、第一の取付部材1601が使用される場合、第一の構造部品401が過度の点状荷重の影響を受けやすくなることが起こり得るので、その十分な構造強度を確保するために支持部材1603が使用され得る。
【0082】
図18は、代替の実施形態を示し、ここでは、支持ストラット1801が、音響変換器の中心軸に沿って、その下部部品302を通って上部部品301の上部カバーの内面まで延びている。
【0083】
上述したほとんどの実施形態では、上部カバーは、U字状断面を有するが、既に先に指摘したように、それを「上部」カバーと称するのは、図面に示されている向きを指すだけである。上述した音響変換器のいずれかを上下逆にすることが可能であり、その場合、U字状断面を有するカバーは、「下部」カバーとして考えられることになる。
【0084】
図19は、一実施形態による音響変換器を示す。
図20は、同じ音響変換器を部分分解図で示す。本実施形態による音響変換器は、上部部品301と下部部品302とを備える。第一の永久磁石303は上部部品301に配置され、第二の永久磁石304は下部部品302に配置される。第一の永久磁石303と第二の永久磁石304で同名の磁極は、軸線305の方向において互いに向き合っている。上部部品301には上部カバー306があり、下部部品302には下部カバー307がある。上部カバー306及び下部カバー307は磁性材料からなり、共に第一の永久磁石303及び第二の永久磁石304の周囲にエンクロージャを規定する。コイル308は、このエンクロージャに、ここでは下部部品302に配置される。コイル308は、そこを流れる電流の影響下で、軸線305の方向に動磁力を発生させるように構成されている。
【0085】
上部カバー306と下部カバー307のエッジの間の分離ギャップ309は、本質的に軸線305の方向に向けられる。分離ギャップ309によって、下部カバー307及び上部カバー306のエッジが異なる位置間で軸線305の方向に相対的に移動することが可能になる。特に、このような位置は、上部カバー306及び下部カバー307のエッジが軸線305に垂直な方向で一致する範囲が異なる。
【0086】
図19及び
図20の実施形態では、下部カバー307はU字状断面を有し、第二の永久磁石304はU字のループの内側に配置されている。この非常に単純な実施形態では、U字のアームの端部は、下部カバー307のエッジを規定するような内側先端を有する、いかなる内側に突出した延長部からも構成されてはいない。このような内側に突出した延長部は、上部カバーと下部カバーの可能な相対位置が、カバーのエッジが垂直方向で一致する範囲において異なるという、上記の規定によってさえ必要とされない。ここでは、上部部品301が
図19に示す位置から下方に移動する場合、上部カバー306のエッジのより大きな割合が、ギャップ309を越えて直接下部カバー307の内側に面するように、前記規定が満たされている。これに対応して、
図19の上部部品301が上方に移動する場合、下部カバー307によって形成された「カップ」の外に移動するので、上部カバー306のエッジのより小さな割合が、ギャップ309を越えて直接下部307カバーの内側に面するようにすることができる。
【0087】
同様に、
図3~4、
図6~13、
図15~18に示す実施形態は、上部カバーのU字状断面のアームの端部に内側に突出する延長部を有するが、それらの実施形態では、構造は、
図19及び
図20のU字状下部カバーの構造に類似するように、わずかに単純化することができることに注意されたい。内側に突出した延長部は、音響変換器の特性に対する所望のバランス効果を達成するのに役立つこともあるが、本文で説明した動作原理を実施するためには必要である。
【0088】
逆に、
図19及び
図20の下部カバー307のU字状断面のアームの端部に、内側に突出した延長部を追加することも可能である。一例として、上部カバーのU字状断面に関して、
図6~
図12で以前に紹介した構造的解決策のいずれかを使用することもできる。
【0089】
図19及び
図20に示す1つの追加の特徴は、下部カバー307の中央の開口部1901である。軸線305の周りの中心に配置される同様の開口部は、全ての実施形態において、上部カバー及び下部カバーのいずれにおいても使用されてもよい。このような開口部は、永久磁石の磁力線を最適な方法で導く際に有利な効果を生み出すために使用されてもよい。
【0090】
上部カバーと下部カバーのどちらがU字状断面を有するかに直接依存しない上述した任意の特徴は、
図19及び
図20に示す実施形態においてそのように適用することができる。そのような特徴の例には、支持部材1301及び1501、
図13及び
図16~18に示される取付技術も、また
図19及び
図20の音響変換器の上に(図面に示される方向を基準として)1502として示される構造部品を置くだけなら
図15の取付技術さえも含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0091】
実施形態の興味深い追加分野は、音響変換器として上述した装置を用いて、音を発生させる以外の目的のための振動装置を構築することを含む。第一の例として、振動装置は、振動アラートを生成するために使用することができ、これは、多くの携帯用通信装置が偏心錘(off-center weight)に接続された電気モータを使用する方法に類似している。この目的のために、装置の下部は、上述の実施形態と同様に、電子装置の構造部品に取り付けることができる。上部部品をディスプレイ又は他の構造部品の内側に取り付ける代わりに、装置の上部部品を自由なままにして、1つ以上の適切な機械的共振周波数を達成するために、場合によっては、それにいくつかの追加的な錘を取り付けることができる。
【0092】
他の例として、振動装置は、触れることを伴うユーザインターフェースの一部として、触覚効果を生み出すために使用することができる。人間の触覚は、例えば、実際には比較的高い周波数の振動を伴う適切に設計された短期波形の形でしか、人が触覚フィードバックを受け取るだけであっても、人がキーを押す感覚を得るように、故意に誤解を招く可能性があることが分かっている。この目的のために、電子装置の構造部品への取付は、様々な図面を参照して上述したものと類似し得るが、部品の弾性特性及び電子信号により、触覚効果の最適化のために設計されたコイルに導かれる。
【0093】
技術の進歩に伴い、本発明の基本的な考え方が様々な方法で実施され得ることは、当業者にとって明らかである。したがって、本発明及びその実施形態は、上述した例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で変更することができる。一例として、実施形態では1つのコイルしか説明しなかったとしても、例えば、1つのコイルは説明した実施形態のように第二の永久磁石の周りにあるが、別のコイルが第一の永久磁石の周りにあるように、2つ以上のコイルが存在することもあり得る。さらに、このような配置は、構造体の垂直方向の寸法を小さく保つのに役立つが、コイルが常に永久磁石の周囲にあることは要件ではない。少なくとも1つのコイルは、永久磁石の間の空間に配置することができる。さらに別の方法として、永久磁石の少なくとも1つをリング状にし、そのリングの内側にコイルを配置することも可能である。