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特許7526289変速機、変速機の制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】変速機、変速機の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20240724BHJP
   F16H 61/662 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H61/662
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022575109
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2021043395
(87)【国際公開番号】W WO2022153688
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2021003958
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 裕二
(72)【発明者】
【氏名】河住 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 仁寿
(72)【発明者】
【氏名】高橋 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮石 広宣
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-020055(JP,A)
【文献】特開平07-019304(JP,A)
【文献】特開2012-154434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00-61/12
F16H 61/662
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマリプーリと、
セカンダリプーリと、
前記プライマリプーリ及び前記セカンダリプーリに巻き掛けられた伝達部材と、
油を供給するオイルポンプと、
前記オイルポンプから供給された油を、前記プライマリプーリに供給されるプライマリプーリ圧及び前記セカンダリプーリに供給されるセカンダリプーリ圧の元圧であるライン圧に調圧する油圧制御回路と、
前記ライン圧を検出するライン圧検出部と、
前記油圧制御回路を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記プライマリプーリ圧の目標値及び前記セカンダリプーリ圧の目標値のうちの高い方を目標プーリ圧として選択し、油温によって可変する前記ライン圧検出部の検出ばらつきが含まれる目標差圧を油温によって可変に設定し、前記ライン圧の目標値である目標ライン圧を、前記目標プーリ圧及び前記目標差圧の合計圧となるように設定し、検出された前記ライン圧が前記目標ライン圧に調圧されるように前記油圧制御回路を制御する、
変速機。
【請求項2】
請求項1に記載の変速機であって、
前記コントローラは、前記検出ばらつきが大きい第1油温領域では、前記検出ばらつきが前記第1油温領域よりも小さい第2油温領域よりも前記目標差圧を大きく設定する、
変速機。
【請求項3】
請求項2に記載の変速機であって、
前記コントローラは、前記第1油温領域である低油温領域及び高油温領域では、前記検出ばらつきが小さく、かつ、前記低油温領域と前記高油温領域との間に位置する前記第2油温領域としての中間油温領域よりも前記目標差圧を大きく設定する、
変速機。
【請求項4】
プライマリプーリと、セカンダリプーリと、前記プライマリプーリ及び前記セカンダリプーリに巻き掛けられた伝達部材と、油を供給するオイルポンプと、前記オイルポンプから供給された油を、前記プライマリプーリに供給されるプライマリプーリ圧及び前記セカンダリプーリに供給されるセカンダリプーリ圧の元圧であるライン圧に調圧する油圧制御回路と、を備える変速機の制御方法であって、
前記ライン圧を検出するライン圧検出ステップと、
前記プライマリプーリ圧の目標値及び前記セカンダリプーリ圧の目標値のうちの高い方を目標プーリ圧として選択し、油温によって可変するライン圧検出部の検出ばらつきが含まれる目標差圧を油温によって可変に設定し、前記ライン圧の目標値である目標ライン圧を、前記目標プーリ圧及び前記目標差圧の合計圧となるように設定し、検出された前記ライン圧が前記目標ライン圧に調圧されるように前記油圧制御回路を制御する制御ステップと、を含む、
変速機の制御方法。
【請求項5】
プライマリプーリと、セカンダリプーリと、前記プライマリプーリ及び前記セカンダリプーリに巻き掛けられた伝達部材と、油を供給するオイルポンプと、前記オイルポンプから供給された油を、前記プライマリプーリに供給されるプライマリプーリ圧及び前記セカンダリプーリに供給されるセカンダリプーリ圧の元圧であるライン圧に調圧する油圧制御回路と、を備える変速機を制御するコンピュータが実行可能なプログラムであって、
前記ライン圧を検出するライン圧検出手順と、
前記プライマリプーリ圧の目標値及び前記セカンダリプーリ圧の目標値のうちの高い方を目標プーリ圧として選択し、油温によって可変するライン圧検出部の検出ばらつきが含まれる目標差圧を油温によって可変に設定し、前記ライン圧の目標値である目標ライン圧を、前記目標プーリ圧及び前記目標差圧の合計圧となるように設定し、検出された前記ライン圧が前記目標ライン圧に調圧されるように前記油圧制御回路を制御する制御手順と、をコンピュータに実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変速機、変速機の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ライン圧センサを設けることで油圧ばらつきを抑制し、ライン圧の過剰分を低減させる変速機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-097811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ライン圧を検出するライン圧センサの検出精度が低いため、ライン圧の過剰分の低減を十分に図ることができない。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、ライン圧の過剰分をより低減させることができる変速機、変速機の制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、プライマリプーリと、セカンダリプーリと、前記プライマリプーリ及び前記セカンダリプーリに巻き掛けられた伝達部材と、油を供給するオイルポンプと、前記オイルポンプから供給された油を、前記プライマリプーリに供給されるプライマリプーリ圧及び前記セカンダリプーリに供給されるセカンダリプーリ圧の元圧であるライン圧に調圧する油圧制御回路と、前記ライン圧を検出するライン圧検出部と、前記油圧制御回路を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記プライマリプーリ圧の目標値及び前記セカンダリプーリ圧の目標値のうちの高い方を目標プーリ圧として選択し、目標差圧を油温によって可変に設定し、前記ライン圧の目標値である目標ライン圧を、前記目標プーリ圧及び前記目標差圧の合計圧となるように設定し、検出された前記ライン圧が前記目標ライン圧に調圧されるように前記油圧制御回路を制御する変速機が提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、プライマリプーリと、セカンダリプーリと、前記プライマリプーリ及び前記セカンダリプーリに巻き掛けられた伝達部材と、油を供給するオイルポンプと、前記オイルポンプから供給された油を、前記プライマリプーリに供給されるプライマリプーリ圧及び前記セカンダリプーリに供給されるセカンダリプーリ圧の元圧であるライン圧に調圧する油圧制御回路と、を備える変速の制御方法であって、前記ライン圧を検出するライン圧検出ステップと、前記プライマリプーリ圧の目標値及び前記セカンダリプーリ圧の目標値のうちの高い方を目標プーリ圧として選択し、目標差圧を油温によって可変に設定し、前記ライン圧の目標値である目標ライン圧を、前記目標プーリ圧及び前記目標差圧の合計圧となるように設定し、検出された前記ライン圧が前記目標ライン圧に調圧されるように前記油圧制御回路を制御する制御ステップと、を含む変速機の制御方法が提供される。
【0008】
本発明のその他の態様によれば、プライマリプーリと、セカンダリプーリと、前記プライマリプーリ及び前記セカンダリプーリに巻き掛けられた伝達部材と、油を供給するオイルポンプと、前記オイルポンプから供給された油を、前記プライマリプーリに供給されるプライマリプーリ圧及び前記セカンダリプーリに供給されるセカンダリプーリ圧の元圧であるライン圧に調圧する油圧制御回路と、を備える変速機を制御するコンピュータが実行可能なプログラムであって、前記ライン圧を検出するライン圧検出手順と、前記プライマリプーリ圧の目標値及び前記セカンダリプーリ圧の目標値のうちの高い方を目標プーリ圧として選択し、目標差圧を油温によって可変に設定し、前記ライン圧の目標値である目標ライン圧を、前記目標プーリ圧及び前記目標差圧の合計圧となるように設定し、検出された前記ライン圧が前記目標ライン圧に調圧されるように前記油圧制御回路を制御する制御手順と、をコンピュータに実行させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
これらの態様によれば、ライン圧の過剰分をより低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、車両の概略構成図である。
図2図2は、油圧制御回路の概略構成図である。
図3図3は、変速機コントローラ及び変速機コントローラに接続される主要構成を示す構成ブロック図である。
図4図4は、油圧制御回路の制御処理を示すフローチャートである。
図5図5は、目標プーリ圧を設定するためのテーブルである。
図6図6は、目標差圧を説明するための説明図である。
図7図7は、目標差圧を設定するためのテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態(以下、本実施形態という)について説明する。
【0012】
(変速機の構成)
まず、図1を参照しながら本実施形態に係る変速機TMについて説明する。
【0013】
図1は車両の概略構成図である。
【0014】
図1に示すように、車両はエンジンENGとトルクコンバータTCと前後進切替機構SWMとバリエータVAとを備える。車両では作動機械としての変速機TMがトルクコンバータTCと前後進切替機構SWMとバリエータVAとを有するベルト無段変速機とされる。
【0015】
エンジンENGは車両の駆動源を構成する。エンジンENGの動力はトルクコンバータTC、前後進切替機構SWM、バリエータVAを介して駆動輪DWへと伝達される。換言すれば、トルクコンバータTC、前後進切替機構SWM、バリエータVAは、エンジンENGと駆動輪DWとを結ぶ動力伝達経路に設けられる。
【0016】
トルクコンバータTCは、流体を介して動力を伝達する。トルクコンバータTCでは、ロックアップクラッチLUを締結することで、動力伝達効率が高められる。
【0017】
前後進切替機構SWMは、エンジンENGとバリエータVAとを結ぶ動力伝達経路に設けられる。前後進切替機構SWMは、入力される回転の回転方向を切り替えることで車両の前後進を切り替える。前後進切替機構SWMは、前進レンジ選択の際に係合される前進クラッチFWD/Cと、リバースレンジ選択の際に係合される後進ブレーキREV/Bとを備える。前進クラッチFWD/C及び後進ブレーキREV/Bを解放すると、変速機TMがニュートラル状態、つまり動力遮断状態になる。
【0018】
バリエータVAは、プライマリプーリPRIと、セカンダリプーリSECと、プライマリプーリPRI及びセカンダリプーリSECに巻き掛けられた伝達部材としてのベルトBLTとを有するベルト無段変速機構を構成する。プライマリプーリPRIにはプライマリプーリPRIの油圧であるプライマリプーリ圧Ppriが、セカンダリプーリSECにはセカンダリプーリSECの油圧であるセカンダリプーリ圧Psecが、後述する油圧制御回路1からそれぞれ供給される。
【0019】
変速機TMは、メカニカルオイルポンプMPと電動オイルポンプEPと電動モータMとをさらに有して構成される。
【0020】
メカニカルオイルポンプMPは油圧制御回路1に油を圧送(供給)する。メカニカルオイルポンプMPと油圧制御回路1とを連通する流路には、逆止弁25が設けられる。メカニカルオイルポンプMPは、エンジンENGの動力により駆動される。
【0021】
電動オイルポンプEPは、メカニカルオイルポンプMPとともに、或いは単独で油圧制御回路1に油を圧送(供給)する。電動オイルポンプEPと油圧制御回路1とを連通する流路には、逆止弁26が設けられる。電動オイルポンプEPは、メカニカルオイルポンプMPに対して補助的に設けられる。電動モータMは電動オイルポンプEPを駆動する。電動オイルポンプEPは電動モータMを有して構成されると把握されてもよい。
【0022】
変速機TMは、油圧制御回路1と変速機コントローラ2とをさらに有して構成される。油圧制御回路1は複数の流路、複数の油圧制御弁で構成され、メカニカルオイルポンプMPや電動オイルポンプEPから供給される油を調圧して変速機TMの各部位に供給する。
【0023】
変速機コントローラ2は変速機TMを制御するためのコントローラであり、各種センサ(具体的には、プライマリプーリ圧検出センサ27、セカンダリプーリ圧検出センサ28、ライン圧検出センサ29及び油温検出センサ30を含む。/図2及び図3参照)等から出力される信号に基づいて油圧制御回路1や電動オイルポンプEPを駆動する電動モータMを制御する。本実施形態では、変速機コントローラ2は、コンピュータとしてのCPUにより構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、複数のマイクロコンピュータにより構成されてもよい。なお、変速機コントローラ2の詳細については後述する。
【0024】
油圧制御回路1は、変速機コントローラ2からの指令に基づいて、ロックアップクラッチLU、前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B、プライマリプーリPRI、セカンダリプーリSEC等の油圧制御を行う。
【0025】
(油圧制御回路の構成)
次に、図2を参照しながら油圧制御回路1について説明する。
【0026】
図2は油圧制御回路1の概略構成図である。
【0027】
図2に示すように、油圧制御回路1はプレッシャレギュレータバルブ11と、プライマリレギュレータバルブ12と、セカンダリレギュレータバルブ13と、クラッチレギュレータバルブ14と、トルコンレギュレータバルブ15と、ロックアップレギュレータバルブ16と、第1パイロットバルブ17と、ライン圧ソレノイドバルブ18と、プライマリソレノイドバルブ19と、セカンダリソレノイドバルブ20と、クラッチ圧ソレノイドバルブ21と、第2パイロットバルブ22と、ロックアップソレノイドバルブ23と、第3パイロットバルブ24とを有する。
【0028】
プレッシャレギュレータバルブ11は、メカニカルオイルポンプMP及び電動オイルポンプEPのうち少なくともいずれかのオイルポンプの吐出油をライン圧PLに調圧する。なお、ライン圧PLは、後述するプーリ圧の元圧である。ライン圧PLを指し示す破線は油路ではなく油圧を指し示すことを意味する。プレッシャレギュレータバルブ11は、オイルポンプ吐出油の一部をドレンしながら調圧を行う。ライン圧PLに調圧された油はプライマリレギュレータバルブ12とセカンダリレギュレータバルブ13と第1パイロットバルブ17とに供給される。
【0029】
プライマリレギュレータバルブ12とセカンダリレギュレータバルブ13とはプーリ圧制御弁であり、ライン圧PLに調圧された油をプーリ圧に調圧することによりプーリ圧を制御する。プーリ圧は、プライマリレギュレータバルブ12の場合はプライマリプーリ圧Ppriとされ、セカンダリレギュレータバルブ13の場合はセカンダリプーリ圧Psecとされる。
【0030】
クラッチレギュレータバルブ14にはプレッシャレギュレータバルブ11からドレンされた油が供給される。クラッチレギュレータバルブ14はプレッシャレギュレータバルブ11からドレンされた油をクラッチ圧に調圧する。クラッチ圧に調圧された油は前進クラッチFWD/C及び後進ブレーキREV/Bのいずれかに選択的に供給される。クラッチレギュレータバルブ14は油の一部をドレンしながら調圧を行う。
【0031】
トルコンレギュレータバルブ15にはクラッチレギュレータバルブ14からドレンされた油が供給される。トルコンレギュレータバルブ15はプレッシャレギュレータバルブ11からドレンされた油をトルクコンバータTCのコンバータ圧に調圧する。トルコンレギュレータバルブ15は油の一部をドレンしながら調圧を行い、ドレンされた油は変速機TMの潤滑系に供給される。コンバータ圧に調圧された油はトルクコンバータTCとロックアップレギュレータバルブ16とに供給される。
【0032】
ロックアップレギュレータバルブ16はコンバータ圧に調圧された油をロックアップ圧に調圧する。ロックアップクラッチLUはコンバータ圧とロックアップ圧との差圧であるロックアップ差圧によりロックアップ制御される。ロックアップ圧に調圧された油はロックアップクラッチLUに供給される。
【0033】
プレッシャレギュレータバルブ11はライン圧ソレノイドバルブ18が生成する信号圧に基づいて調圧を行う。プライマリレギュレータバルブ12及びプライマリソレノイドバルブ19、セカンダリレギュレータバルブ13及びセカンダリソレノイドバルブ20、クラッチレギュレータバルブ14及びクラッチ圧ソレノイドバルブ21、ロックアップレギュレータバルブ16及びロックアップソレノイドバルブ23についても同様である。
【0034】
ライン圧ソレノイドバルブ18、プライマリソレノイドバルブ19、セカンダリソレノイドバルブ20、クラッチ圧ソレノイドバルブ21それぞれには、第1のパイロット圧P1が元圧として導入される。第1のパイロット圧P1は第1パイロットバルブ17によりライン圧PLを元圧として生成される。第1のパイロット圧P1は第2パイロットバルブ22にも導入される。
【0035】
第2パイロットバルブ22は、第1のパイロット圧P1を元圧として第2のパイロット圧P2を生成する。第2のパイロット圧P2はライン圧PLの設定範囲下限以上に設定される。第2のパイロット圧P2はロックアップクラッチLUの制御性を考慮して予め設定される。第2のパイロット圧P2はロックアップソレノイドバルブ23と第3パイロットバルブ24とに導入される。
【0036】
ロックアップソレノイドバルブ23は、第2のパイロット圧P2を元圧としてロックアップ信号圧を生成する。ロックアップ信号圧はトルクコンバータTCのロックアップクラッチLUのロックアップ圧を制御するためにロックアップソレノイドバルブ23が生成する信号圧である。
【0037】
第3パイロットバルブ24は、第2のパイロット圧P2を元圧として第3のパイロット圧P3を生成する。第3のパイロット圧P3はライン圧PLの設定範囲下限より低く設定される。第3のパイロット圧P3はプライマリレギュレータバルブ12及びセカンダリレギュレータバルブ13のダンピング性を考慮して予め設定される。第3のパイロット圧P3はプライマリレギュレータバルブ12とセカンダリレギュレータバルブ13とにダンピング圧として導入される。
【0038】
ダンピング圧として導入される第3のパイロット圧P3は、プライマリ信号圧と対向するようにプライマリレギュレータバルブ12に導入される。プライマリ信号圧はプライマリプーリ圧Ppriを制御するためにプライマリソレノイドバルブ19が生成する信号圧である。
【0039】
同様に、ダンピング圧として導入される第3のパイロット圧P3は、セカンダリ信号圧と対向するようにセカンダリレギュレータバルブ13に導入される。セカンダリ信号圧はセカンダリプーリ圧Psecを制御するためにセカンダリソレノイドバルブ20が生成する信号圧である。
【0040】
また、油圧制御回路1には、プライマリプーリPRIのプライマリプーリ圧Ppriを検出するプライマリプーリ圧検出部としてのプライマリプーリ圧検出センサ27と、セカンダリプーリSECのセカンダリプーリ圧Psecを検出するセカンダリプーリ圧検出部としてのセカンダリプーリ圧検出センサ28と、ライン圧PLを検出するライン圧検出部としてのライン圧検出センサ29と、メカニカルオイルポンプMP又は電動オイルポンプEPから供給された油の油温Tを検出する油温検出部としての油温検出センサ30とが設けられる。
【0041】
(変速機コントローラの構成)
次に、図3を参照しながら変速機コントローラ2について説明する。
【0042】
図3は変速機コントローラ2及び変速機コントローラ2に接続される主要構成を示す構成ブロック図である。
【0043】
図3に示すように、変速機コントローラ2は、互いに電気的に接続される入力インタフェース31、出力インタフェース32、記憶装置33、電動モータ制御装置34及び油圧制御回路制御装置35(以下、単に回路制御装置35という)及びを備える。
【0044】
入力インタフェース31には、プライマリプーリPRIに供給されるプライマリプーリ圧Ppriを検出するプライマリプーリ圧検出センサ27からの出力信号と、セカンダリプーリSECに供給されるセカンダリプーリ圧Psecを検出するセカンダリプーリ圧検出センサ28からの出力信号と、ライン圧PLを検出するライン圧検出センサ29からの出力信号と、メカニカルオイルポンプMP又は電動オイルポンプEPから供給された油の油温Tを検出する油温検出センサ30からの出力信号とが入力される。
【0045】
電動モータ制御装置34の処理により生成されたモータ制御指令及び回路制御装置35の処理により生成された回路制御指令は、出力インタフェース32を介してそれぞれ電動モータM及び油圧制御回路1に出力される。
【0046】
記憶装置33は、各種センサ(プライマリプーリ圧検出センサ27、セカンダリプーリ圧検出センサ28、ライン圧検出センサ29及び油温検出センサ30)からの出力信号に含まれるパラメータを一時的に記憶するためのメモリである。また、記憶装置33は、後述するプーリ圧設定用テーブル及び目標差圧設定用テーブルを記憶している。
【0047】
さらに、記憶装置33は、電動モータ制御装置34及び回路制御装置35において実行される処理プログラム及びアルゴリズムプログラムを記憶している。本実施形態では、記憶装置33は、変速機コントローラ2に内蔵されているが、これに限定されるものではなく、例えば、変速機コントローラ2とは別体に設けられてもよい。
【0048】
電動モータ制御装置34は、各種センサ等から出力される出力信号に基づいてモータ制御指令を生成し、生成したモータ制御指令を出力インタフェース32を介して電動モータMに出力する。
【0049】
回路制御装置35は、各種センサ等から出力される出力信号に基づいて回路制御指令を生成し、生成した回路制御指令を出力インタフェース32を介して油圧制御回路1に出力する。
【0050】
また、回路制御装置35は、目標プーリ圧設定部としての目標プーリ圧設定モジュール351、目標プーリ圧選択部としての目標プーリ圧選択モジュール352、目標差圧設定部としての目標差圧設定モジュール353、目標ライン圧設定部としての目標ライン圧設定モジュール354及び回路制御指令生成部としての回路制御指令生成モジュール355を有する。なお、目標プーリ圧設定モジュール351、目標プーリ圧選択モジュール352、目標差圧設定モジュール353、目標ライン圧設定モジュール354及び回路制御指令生成モジュール355の詳細については、油圧制御回路1の制御処理において後述する。
【0051】
(油圧制御回路の制御処理)
次に、図4から図7を参照しながら油圧制御回路1の制御処理(変速機TMの制御処理)について説明する。
【0052】
図4は油圧制御回路1の制御処理を示すフローチャートである。図5は目標プーリ圧を設定するためのテーブルである。図6は目標差圧ΔPを説明するための説明図である。図7は目標差圧ΔPを設定するためのものであって油温領域による目標差圧ΔPの変化を示すテーブルである。
【0053】
図4に示すように、まず、ステップS1において、各種センサは、各種パラメータを検出する。具体的には、プライマリプーリ圧検出センサ27、セカンダリプーリ圧検出センサ28、ライン圧検出センサ29及び油温検出センサ30は、それぞれプライマリプーリ圧Ppri、セカンダリプーリ圧Psec、ライン圧PL及び油の油温Tを検出する。
【0054】
そして、プライマリプーリ圧検出センサ27、セカンダリプーリ圧検出センサ28、ライン圧検出センサ29及び油温検出センサ30は、検出したプライマリプーリ圧Ppri、セカンダリプーリ圧Psec、ライン圧PL及び油温Tを変速機コントローラ2の入力インタフェース31に出力する。そして、入力インタフェース31は、油温Tを目標差圧設定モジュール353に出力するとともに、プライマリプーリ圧Ppri、セカンダリプーリ圧Psec及びライン圧PLを回路制御指令生成モジュール355に出力し、ステップS2に進む。
【0055】
次に、ステップS2において、回路制御装置35の目標プーリ圧設定モジュール351は、変速機TMの変速比に基づいてプライマリプーリ圧Ppriの目標値である目標プライマリプーリ圧tPpriと、セカンダリプーリ圧Psecの目標値である目標セカンダリプーリ圧tPsecとを設定する。
【0056】
具体的には、ステップS2において、目標プーリ圧設定モジュール351は、変速機TMの変速比と記憶装置33に記憶されたプーリ圧設定用テーブル(図5参照)とに基づいて、目標プライマリプーリ圧tPpriと目標セカンダリプーリ圧tPsecとを設定する。そして、目標プーリ圧設定モジュール351は、設定した目標プライマリプーリ圧tPpriと目標セカンダリプーリ圧tPsecとを目標プーリ圧選択モジュール352及び回路制御指令生成モジュール355に出力し、ステップS3に進む。
【0057】
次に、ステップS3において、目標プーリ圧選択モジュール352は、目標プーリ圧設定モジュール351から出力された目標プライマリプーリ圧tPpri及び目標セカンダリプーリ圧tPsecのうちの高い方を目標プーリ圧tPPとして選択する。そして、目標プーリ圧選択モジュール352は、選択した目標プーリ圧tPPを目標ライン圧設定モジュール354に出力し、ステップS4に進む。
【0058】
次に、ステップS4において、目標差圧設定モジュール353は、目標差圧ΔPを入力インタフェース31から出力された油温Tによって可変に設定する。これにより、後述する目標ライン圧tPLの設定に用いられる目標差圧ΔPは、油温Tによって可変に設定されるため、目標差圧ΔPが固定値である場合に比べ、目標差圧ΔPによる目標ライン圧tPLの過剰分をより低減させることができる。そして、目標差圧設定モジュール353は、設定した目標差圧ΔPを目標ライン圧設定モジュール354に出力し、ステップS5に進む。
【0059】
ここでは、図6に示すように、目標差圧ΔPは、目標プーリ圧tPPと目標ライン圧tPLとの目標差圧であり、プーリ圧検出センサ(具体的には、プライマリプーリ圧検出センサ27又はセカンダリプーリ圧検出センサ28)の検出ばらつき分、油振を抑制する必要目標差圧及びライン圧検出センサ29の検出ばらつき分から構成される。特にライン圧検出センサ29の検出ばらつき分は、目標ライン圧tPLの設定に大きく影響する。
【0060】
発明者は、ライン圧検出センサ29の検出ばらつき(すなわち、検出精度)が油の油温Tによって変化することを発見した。
【0061】
そこで、ステップS4において、目標差圧設定モジュール353は、油温Tと記憶装置33に記憶された目標差圧設定用テーブル(図7参照)とに基づいて、目標差圧ΔPを油温領域によって異なるように設定する。これにより、目標ライン圧tPLの設定に用いられる目標差圧ΔPは、油温領域によって可変に設定されるため、目標差圧ΔPが固定値である場合に比べ、目標差圧ΔPによる目標ライン圧tPLの過剰分をより低減させることができる。
【0062】
具体的には、ステップS4において、目標差圧設定モジュール353は、油温Tに対するライン圧検出センサ29の検出ばらつきが大きい第1油温領域では、ライン圧検出センサ29の検出ばらつきが第1油温領域よりも小さい第2油温領域よりも目標差圧ΔPを大きく設定する。これにより、異なる油温領域によるライン圧検出センサ29の検出ばらつきの変化に合わせて目標差圧ΔPを適切に設定することができるため、目標差圧ΔPによる目標ライン圧tPLの過剰分をより低減させることができる。
【0063】
より具体的には、ステップS4において、目標差圧設定モジュール353は、第1油温領域である低油温領域LT(図7参照)及び高油温領域HT(図7参照)では、ライン圧検出センサ29の検出ばらつきが小さく、かつ、低油温領域LTと高油温領域HTとの間に位置する第2油温領域としての中間油温領域CT(図7参照)よりも目標差圧ΔPを大きく設定する。
【0064】
これにより、ライン圧検出センサ29の検出ばらつきが大きい低油温領域LT及び高油温領域HTでは目標差圧ΔPを大きく設定するとともに、ライン圧検出センサ29の検出ばらつきが小さい中間油温領域CTでは目標差圧ΔPを小さく設定することで、異なる油温領域によるライン圧検出センサ29の検出ばらつきの変化に合わせて目標差圧ΔPを適切に設定することができるため、目標差圧ΔPによる目標ライン圧tPLの過剰分をより低減させることができる。
【0065】
さらに、図7に示すように、ステップS4において、目標差圧設定モジュール353は、ライン圧検出センサ29の検出ばらつきが一定となる油温領域(例えば、中間油温領域CT)では、目標差圧ΔPを一定に設定する。
【0066】
一方、図7に示すように、ステップS4において、目標差圧設定モジュール353は、ライン圧検出センサ29の検出ばらつきが変化する油温領域(例えば、低油温領域LTの中間油温領域CTに隣接する隣接低油温領域LT1又は高油温領域HTの中間油温領域CTに隣接する隣接高油温領域HT1)では、目標差圧ΔPを異なる油温Tによって異なるように設定する。そして、目標差圧ΔPの精度をより向上させる観点から、目標差圧設定モジュール353は、ライン圧検出センサ29の検出ばらつきが大きくなるに従って目標差圧ΔPを大きく設定することが好ましい。
【0067】
図7に示すように、油温領域によって設定される目標差圧ΔPの変化については、目標ライン圧tPLが2.0Mpa以上の高圧である場合であっても、又は目標ライン圧tPLが1.5Mpa以下の低圧である場合であっても、同じ傾向が見られる。すなわち、低油温領域LT及び高油温領域HTでは目標差圧ΔPが比較的大きく、低油温領域LTと高油温領域HTとの間に位置する中間油温領域CTでは目標差圧ΔPが比較的小さい。このため、燃費が比較的良い中間油温領域CTでは、目標差圧ΔPを効果的に低減させることができる。
【0068】
次に、ステップS5において、目標ライン圧設定モジュール354は、目標プーリ圧選択モジュール352から出力された目標プーリ圧tPPと、目標差圧設定モジュール353から出力された目標差圧ΔPとに基づいて、ライン圧PLの目標値である目標ライン圧tPLを設定する。
【0069】
具体的には、ステップS5において、目標ライン圧設定モジュール354は、目標ライン圧tPLを目標プーリ圧tPPと目標差圧ΔPとの合計圧となるように設定する。そして、目標ライン圧設定モジュール354は、設定した目標ライン圧tPLを回路制御指令生成モジュール355に出力し、ステップS6に進む。
【0070】
次に、ステップS6において、変速機コントローラ2は、検出されたプライマリプーリ圧Ppri、セカンダリプーリ圧Psec及びライン圧PLがそれぞれ目標プライマリプーリ圧tPpri、目標セカンダリプーリ圧tPsec及び目標ライン圧tPLに調圧されるように油圧制御回路1を制御する。
【0071】
具体的には、ステップS6において、回路制御指令生成モジュール355は、入力インタフェース31から出力されたプライマリプーリ圧Ppri、セカンダリプーリ圧Psec及びライン圧PLと、目標プーリ圧設定モジュール351から出力された目標プライマリプーリ圧tPpri及び目標セカンダリプーリ圧tPsecと、目標ライン圧設定モジュール354から出力された目標ライン圧tPLとに基づいて、油圧制御回路1を制御するための回路制御指令を生成する。
【0072】
より具体的には、ステップS6において、回路制御指令生成モジュール355は、プライマリプーリ圧Ppri、セカンダリプーリ圧Psec及びライン圧PLがそれぞれ目標プライマリプーリ圧tPpri、目標セカンダリプーリ圧tPsec及び目標ライン圧tPLに調圧されるように回路制御指令を生成する。そして、回路制御指令生成モジュール355は、生成した回路制御指令を出力インタフェース32を介して油圧制御回路1に出力する。
【0073】
そして、油圧制御回路1は、回路制御指令生成モジュール355から出力された回路制御指令に基づいて、プライマリプーリ圧Ppri、セカンダリプーリ圧Psec及びライン圧PLがそれぞれ目標プライマリプーリ圧tPpri、目標セカンダリプーリ圧tPsec及び目標ライン圧tPLに調圧されるように制御され、ステップS1に戻る。
【0074】
(作用効果)
次に、本実施形態の主な作用効果について説明する。
【0075】
(1)本実施形態に係る変速機TMは、プライマリプーリPRIと、セカンダリプーリSECと、プライマリプーリPRI及びセカンダリプーリSECに巻き掛けられたベルトBLT(伝達部材)と、油を供給するメカニカルオイルポンプMP又は電動オイルポンプEP(オイルポンプ)と、メカニカルオイルポンプMP又は電動オイルポンプEP(オイルポンプ)から供給された油を、プライマリプーリPRIに供給されるプライマリプーリ圧Ppri及びセカンダリプーリSECに供給されるセカンダリプーリ圧Psecの元圧であるライン圧PLに調圧する油圧制御回路1と、ライン圧PLを検出するライン圧検出センサ29(ライン圧検出部)と、油圧制御回路1を制御する変速機コントローラ2(コントローラ)と、を備え、変速機コントローラ2(コントローラ)は、プライマリプーリ圧Ppriの目標値及びセカンダリプーリ圧Psecの目標値のうちの高い方を目標プーリ圧tPPとして選択し、目標差圧ΔPを油温Tによって可変に設定し、ライン圧PLの目標値である目標ライン圧tPLを、目標プーリ圧tPP及び目標差圧ΔPの合計圧となるように設定し、検出されたライン圧PLが目標ライン圧tPLに調圧されるように油圧制御回路1を制御する。
【0076】
(4)本実施形態に係る変速機TMの制御方法は、プライマリプーリPRIと、セカンダリプーリSECと、プライマリプーリPRI及びセカンダリプーリSECに巻き掛けられたベルトBLT(伝達部材)と、油を供給するメカニカルオイルポンプMP又は電動オイルポンプEP(オイルポンプ)と、メカニカルオイルポンプMP又は電動オイルポンプEP(オイルポンプ)から供給された油を、プライマリプーリPRIに供給されるプライマリプーリ圧Ppri及びセカンダリプーリSECに供給されるセカンダリプーリ圧Psecの元圧であるライン圧PLに調圧する油圧制御回路1と、を備える変速機TMの制御方法であって、ライン圧PLを検出するライン圧検出ステップと、プライマリプーリ圧Ppriの目標値及びセカンダリプーリ圧Psecの目標値のうちの高い方を目標プーリ圧tPPとして選択し、目標差圧ΔPを油温Tによって可変に設定し、ライン圧PLの目標値である目標ライン圧tPLを、目標プーリ圧tPP及び目標差圧ΔPの合計圧となるように設定する設定ステップと、検出されたライン圧PLが目標ライン圧tPLに調圧されるように油圧制御回路1を制御する制御ステップと、を含む。
【0077】
(5)実施形態に係るプログラムは、プライマリプーリPRIと、セカンダリプーリSECと、プライマリプーリPRI及びセカンダリプーリSECに巻き掛けられたベルトBLT(伝達部材)と、油を供給するメカニカルオイルポンプMP又は電動オイルポンプEP(オイルポンプ)と、メカニカルオイルポンプMP又は電動オイルポンプEP(オイルポンプ)から供給された油を、プライマリプーリPRIに供給されるプライマリプーリ圧Ppri及びセカンダリプーリSECに供給されるセカンダリプーリ圧Psecの元圧であるライン圧PLに調圧する油圧制御回路1と、を備える変速機TMを制御するCPU(コンピュータ)が実行可能なプログラムであって、ライン圧PLを検出するライン圧検出ステップと、プライマリプーリ圧Ppriの目標値及びセカンダリプーリ圧Psecの目標値のうちの高い方を目標プーリ圧tPPとして選択し、目標差圧ΔPを油温Tによって可変に設定し、ライン圧PLの目標値である目標ライン圧tPLを、目標プーリ圧tPP及び目標差圧ΔPの合計圧となるように設定する設定手順と、検出されたライン圧PLが目標ライン圧tPLに調圧されるように油圧制御回路1を制御する制御手順と、をCPU(コンピュータ)に実行させる。
【0078】
これらの構成によれば、目標ライン圧tPLの設定に用いられる目標差圧ΔPは、油温Tによって可変に設定されるため、目標差圧ΔPが固定値である場合に比べ、目標差圧ΔPによる目標ライン圧tPLの過剰分をより低減させることができる。この結果、メカニカルオイルポンプMP又は電動オイルポンプEPの駆動トルクを低減させることができる。
【0079】
(2)本実施形態に係る変速機TMでは、変速機コントローラ2(コントローラ)は、油温Tに対するライン圧検出センサ29(ライン圧検出部)の検出ばらつきが大きい第1油温領域では、検出ばらつきが第1油温領域よりも小さい第2油温領域よりも目標差圧ΔPを大きく設定する。
【0080】
この構成によれば、異なる油温領域によるライン圧検出センサ29の検出ばらつきの変化に合わせて目標差圧ΔPを適切に設定することができるため、目標差圧ΔPによる目標ライン圧tPLの過剰分をより低減させることができる。
【0081】
(3)本実施形態に係る変速機TMでは、変速機コントローラ2(コントローラ)は、前記第1油温領域である低油温領域LT及び高油温領域HTでは、検出ばらつきが小さく、かつ、低油温領域LTと高油温領域HTとの間に位置する第2油温領域としての中間油温領域CTよりも目標差圧ΔPを大きく設定する。
【0082】
この構成によれば、ライン圧検出センサ29の検出ばらつきが大きい低油温領域LT及び高油温領域HTでは目標差圧ΔPを大きく設定するとともに、ライン圧検出センサ29の検出ばらつきが小さい中間油温領域CTでは目標差圧ΔPを小さく設定することで、異なる油温領域によるライン圧検出センサ29の検出ばらつきの変化に合わせて目標差圧ΔPを適切に設定することができるため、目標差圧ΔPによる目標ライン圧tPLの過剰分をより低減させることができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0084】
1 油圧制御回路
2 変速機コントローラ(コントローラ)
29 ライン圧検出センサ(ライン圧検出部)
30 油温検出センサ
35 回路制御装置
EP メカニカルオイルポンプ(オイルポンプ)
MP 電動オイルポンプ(オイルポンプ)
TM 変速機(ベルト無段変速機)
PRI プライマリプーリ
SEC セカンダリプーリ
BLT ベルト(伝達部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7