(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】保護コーティングおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/22 20060101AFI20240724BHJP
C23C 16/50 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
C23C16/22
C23C16/50
(21)【出願番号】P 2022575845
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(86)【国際出願番号】 CN2021095010
(87)【国際公開番号】W WO2021249156
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】202010519596.1
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010520210.9
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522241907
【氏名又は名称】江蘇菲沃泰納米科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU FAVORED NANOTECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.182 East Loop, Yuqi Industry Park, Huishan District, Wuxi, Jiangsu 214000, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100224605
【氏名又は名称】畠中 省伍
(72)【発明者】
【氏名】宗 堅
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/093041(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107686986(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107523809(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110158060(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/22
C23C 16/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材をプラズマに接触させることにより、前記基材の表面にプラズマ重合蒸着により形成される第1のコーティングを含み、前記プラズマはモノマーA及びモノマーBのプラズマを含み、モノマーAは、式(I)のシリコン構造単位と、及び式(II)又は式(III)のアミノ基構造単位の少なくとも1つとを同時に含み、モノマーBはカルボキシル末端基構造単位を含
み、
前記モノマーBの構造は式(V)に示されることを特徴とする、保護コーティング。
(ここで、R
5
、R
6
及びR
7
はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1
~C
10
のヒドロカルビル基又はC
1
~C
10
のハロゲン原子置換ヒドロカルビル基から選択され、Yは結合手、C
1
~C
10
のヒドロカルビレン基又はC
1
~C
10
のハロゲン原子置換ヒドロカルビレン基である。)
【請求項2】
前記モノマーAの構造式は(IV)に示されることを特徴とする、請求項1に記載の保護コーティング。
(ここで、Xは結合手、酸素原子又はカルボニル基であり、R
1はC
1~C
10のヒドロカルビレン基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換ヒドロカルビレン基であり、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1~C
10のヒドロカルビル基、C
1~C
10のハロゲン原子置換ヒドロカルビル基、C
1~C
10のヒドロカルビルオキシ基、C
1~C
10のハロゲン原子置換ヒドロカルビルオキシ基、C
1~C
10のヒドロカルビノイルオキシ基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換ヒドロカルビノイルオキシ基から選択される。)
【請求項3】
Xは結合手であり、R
1はC
1~C
10のアルキレン基であり、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立してC
1~C
10のヒドロカルビルオキシ基であることを特徴とする、請求項2に記載の保護コーティング。
【請求項4】
R
1はエチレン基、プロピレン基又はブチレン基であり、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立してメトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基であることを特徴とする、請求項3に記載の保護コーティング。
【請求項5】
前記R
5、R
6及びR
7はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基から選択され、Yは結合手であることを特徴とする、請求項
1に記載の保護コーティング。
【請求項6】
前記R
5及びR
6は水素原子であり、R
7は水素原子又はメチル基であることを特徴とする、請求項
5に記載の保護コーティング。
【請求項7】
前記基材は電子部品又は電気部品又は金属であることを特徴とする、請求項1に記載の保護コーティング。
【請求項8】
アミノ基構造単位に基づくモノマーAとカルボキシル末端基構造単位に基づくモノマーBとのモル比は10:0.1~1:10であることを特徴とする、請求項1に記載の保護コーティング。
【請求項9】
アミノ基構造単位に基づくモノマーAとカルボキシル末端基構造単位に基づくモノマーBとのモル比は10:0.5~1:5であることを特徴とする、請求項1に記載の保護コーティング。
【請求項10】
前記プラズマはモノマーCのプラズマをさらに含み、モノマーCはフルオロハイドロカーボン、フルオロアクリレート又はフルオロシランの一つまたは複数から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の保護コーティング。
【請求項11】
モノマーA及びモノマーBの合計とモノマーCとのモル比は1:20~20:1であることを特徴とする、請求項
10に記載の保護コーティング。
【請求項12】
モノマーA及びモノマーBの合計とモノマーCとのモル比は1:5~5:1であることを特徴とする、請求項
11に記載の保護コーティング。
【請求項13】
前記保護コーティングは、第1のコーティング上にある第2のコーティングをさらに含み、前記第2のコーティングは、一つまたは複数のプラズマ重合コーティングを含み、前記第2のコーティングの各層のモノマーはそれぞれ独立して、フルオロハイドロカーボン、フルオロアクリレート又はフルオロシランの一つまたは複数から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の保護コーティング。
【請求項14】
前記第2のコーティングは2つ以上のプラズマ重合コーティングを含み、外側のプラズマ重合コーティングのモノマーのフッ素原子含有量は、内側のプラズマ重合コーティングのモノマーのフッ素原子含有量よりも高いことを特徴とする、請求項
13に記載の保護コーティング。
【請求項15】
前記フルオロハイドロカーボンは、フルオロアルカン、フルオロアルケン又はフルオロアルキンの一つまたは複数から選択されることを特徴とする、請求項
10又は
13に記載の保護コーティング。
【請求項16】
前記フルオロアクリレートの構造は式(VI)に示されることを特徴とする、請求項
10又は
13に記載の保護コーティング。
(ここで、R
8、R
9及びR
10はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1~C
10のヒドロカルビル基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換ヒドロカルビル基から選択され、xは0~2の整数であり、yは1~20の整数である。)
【請求項17】
R
8、R
9及びR
10はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基から選択されることを特徴とする、請求項
16に記載の保護コーティング。
【請求項18】
前記保護コーティングの厚さは1nm~1000nmの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の保護コーティング。
【請求項19】
基材を提供すること;
モノマーAおよびモノマーBを含むモノマーを気化してプラズマ反応器に導入し、プラズマ放電し、前記基材の表面にプラズマ重合により第1のコーティングを形成すること;
を含むことを特徴とする、請求項1~
18のいずれか1項に記載の保護コーティングの製造方法。
【請求項20】
モノマーAとモノマーBを気化する前に混合処理することを特徴とする、請求項
19に記載の保護コーティングの製造方法。
【請求項21】
前記プラズマはパルスプラズマであり、前記パルスプラズマは、パルス電力が2W~500W、パルス周波数が10HZ~50kHz、パルスデューティー比が0.1%~80%、プラズマ放電時間が100s~20000sであるパルス高周波電圧放電を印加することにより生成されることを特徴とする、請求項
19に記載の保護コーティングの製造方法。
【請求項22】
表面の少なくとも一部は、請求項1~
18のいずれか1項に記載の保護コーティングを有することを特徴とする、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本願は、2021年5月21日に提出された国際出願番号PCT/CN2021/095010の国内段階の出願であり、本出願は2020年6月9日に中国特許庁に提出された出願番号202010519596.1、発明の名称「保護コーティングおよびその製造方法」である、及び2020年6月9日に中国特許庁に提出された出願番号202010520210.9、発明の名称「保護コーティングおよびその製造方法」である中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全内容を援用により本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、プラズマ化学分野に属し、具体的には、プラズマ重合保護コーティングおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
有機ポリマーコーティングは、様々な材料の表面を効果的に保護することができ、例えば、電子及び電気部品、金属などは、水蒸気、液体の侵食下で腐食、短絡などの現象を極めて引き起こしやすく、ポリマー保護コーティングは、液体の侵食をブロックすることができ、それにより湿気又は水中での電子製品、金属製品などの安定性と信頼性を向上させる。現在、基材の表面にポリマー保護コーティングを作製するための気相成長法は主流の方法となり、この方法は経済的で適用可能であり、操作しやすいなどの特徴があり、特にプラズマ化学気相成長は、プラズマを利用して反応性モノマーガスを活性化し、基材の表面に堆積させる。この方法は、様々な基材に適しており、成長されたポリマー保護コーティングは均一になり、コーティング作製温度が低く、コーティング厚さが薄く、応力が小さく、基材の表面へのダメージがほとんどなく、基材性能への影響がほとんどない。プラズマ作製ポリマー保護コーティングでは、通常、フッ素化合物をモノマーとして基材の表面にフロロカーボン系樹脂保護コーティングを作製するが、このフロロカーボン系樹脂保護コーティングについて、基材への結合力が悪いという問題があり、保護コーティングの表面が外力によりこすられると、摩耗しやすく、保護効果の作用が失われるため、保護コーティングを基材の表面にしっかりと付着するように、どのように保護コーティングと基材との結合力を高めるか、保護コーティングの耐摩耗性を高めるかは、保護コーティングの最適化と改善の重要な方向の一つである。
【発明の概要】
【0004】
保護コーティングと基材との間の結合力が悪く、耐摩耗性が悪いという問題を解決するために、本発明の特定の実施形態は、保護コーティングおよびその製造方法を提供し、具体的なスキームは次の通りである。
【0005】
基材をプラズマに接触させることにより前記基材の表面にプラズマ重合蒸着により形成される第1のコーティングを含み、前記プラズマはモノマーA及びモノマーBのプラズマを含み、モノマーAは、式(I)のシリコン構造単位、及び式(II)又は式(III)のアミノ基構造単位の少なくとも1つを同時に含み、モノマーBはカルボキシル末端基構造単位を含む、保護コーティング。
【0006】
任意選択的に、前記モノマーAの構造は式(IV)に示され、
(ここで、Xは結合手、酸素原子又はカルボニル基であり、R
1はC
1~C
10のヒドロカルビレン基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換ヒドロカルビレン基であり、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1~C
10のヒドロカルビル基、C
1~C
10のハロゲン原子置換ヒドロカルビル基、C
1~C
10のヒドロカルビルオキシ基、C
1~C
10のハロゲン原子置換ヒドロカルビルオキシ基、C
1~C
10のヒドロカルビノイルオキシ基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換ヒドロカルビノイルオキシ基から選択される。)
【0007】
任意選択的に、Xは結合手であり、R1はC1~C10のアルキレン基であり、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してC1~C10のヒドロカルビルオキシ基である。
【0008】
任意選択的に、R1はエチレン基、プロピレン基又はブチレン基であり、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してメトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基である。
【0009】
任意選択的に、前記モノマーBの構造は式(V)に示され、
(ここで、R
5、R
6及びR
7はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C
1~C
10のヒドロカルビル基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換ヒドロカルビル基から選択され、Yは結合手、C
1~C
10のヒドロカルビレン基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換ヒドロカルビレン基である。)
【0010】
任意選択的に、前記R5、R6及びR7はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基から選択され、Yは結合手である。
【0011】
任意選択的に、前記R5及びR6は水素原子であり、R7は水素原子又はメチル基である。
【0012】
任意選択的に、前記基材は電子部品又は電気部品又は金属である。
【0013】
任意選択的に、アミノ基構造単位に基づくモノマーAとカルボキシル末端基構造単位に基づくモノマーBとのモル比は10:0.1~1:10である。
【0014】
任意選択的に、アミノ基構造単位に基づくモノマーAとカルボキシル末端基構造単位に基づくモノマーBとのモル比は10:0.5~1:5である。
【0015】
任意選択的に、前記プラズマはモノマーCのプラズマをさらに含み、モノマーCはフルオロハイドロカーボン、フルオロアクリレート又はフルオロシランの一つまたは複数から選択される。
【0016】
任意選択的に、モノマーA及びモノマーBの合計とモノマーCとのモル比は1:20~20:1である。
【0017】
任意選択的に、モノマーA及びモノマーBの合計とモノマーCとのモル比は1:5~5:1である。
【0018】
任意選択的に、前記保護コーティングは、第1のコーティング上にある第2のコーティングをさらに含み、前記第2のコーティングは、一つまたは複数のプラズマ重合コーティングを含み、前記第2のコーティングの各層のモノマーはそれぞれ独立して、フルオロハイドロカーボン、フルオロアクリレート又はフルオロシランの一つまたは複数から選択される。
【0019】
任意選択的に、前記第2のコーティングは、2つ以上のプラズマ重合コーティングを含み、外側のプラズマ重合コーティングのモノマーのフッ素原子含有量は、内側のプラズマ重合コーティングのモノマーのフッ素原子含有量よりも高い。
【0020】
任意選択的に、前記フルオロハイドロカーボンは、フルオロアルカン、フルオロアルケン、フルオロアルキンの一つまたは複数から選択される。
【0021】
任意選択的に、前記フルオロアクリレートの構造は式(VI)に示され、
(ここで、R
8、R
9及びR
10はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1~C
10のヒドロカルビル基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換ヒドロカルビル基から選択され、xは0~2の整数、yは1~20の整数である。)
【0022】
任意選択的に、R8、R9及びR10はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基から選択される。
【0023】
任意選択的に、前記保護コーティングの厚さは1nm~1000nmの範囲である。
【0024】
上記保護コーティングの製造方法であって、前記製造方法は:
基材を提供すること;
モノマーA、モノマーBを含むモノマーを気化してプラズマ反応器に導入し、プラズマ放電し、前記基材の表面にプラズマ重合により第1のコーティングを形成すること、を含む。
【0025】
任意選択的に、モノマーAとモノマーBを気化する前に混合処理する。
【0026】
任意選択的に、モノマーA及びモノマーBのプラズマ重合により形成された第1のコーティング上にプラズマ重合により第2のコーティングを形成することををさらに含む。
【0027】
任意選択的に、前記プラズマはパルスプラズマである。
【0028】
任意選択的に、前記パルスプラズマは、パルス電力が2W~500W、パルス周波数が10Hz~50kHz、パルスデューティー比が0.1%~80%、プラズマ放電時間が100s~20000sであるパルス高周波電圧放電を印加することにより生成される。
【0029】
表面の少なくとも一部は、上記のいずれかの保護コーティングを有するデバイス。
【0030】
本発明の特定の実施形態の保護コーティングは、基材にしっかりと結合し、優れた耐摩耗性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の特定の実施形態の保護コーティングであって、前記保護コーティングは、基材をプラズマに接触させることにより前記基材の表面にプラズマ重合蒸着により形成される第1のコーティングを含み、前記プラズマはモノマーA及びモノマーBのプラズマを含み、モノマーAは、式(I)のシリコン構造単位、及び式(II)又は式(III)のアミノ基構造単位の少なくとも1つを同時に含み、モノマーBはカルボキシル末端基構造単位を含む
【0032】
本発明の特定の実施形態の保護コーティングは、式(I)のシリコン構造単位を含む同時に式(II)の第2級アミン構造単位又は式(III)の第3級アミン構造単位を含むモノマーAと、カルボキシル末端基構造を含むモノマーBとが基材の表面にプラズマ重合コーティングを行うことにより製造され、得られた保護コーティングは基材にしっかりと結合し、優れた耐摩耗性を有する。
【0033】
本発明の特定の実施形態の保護コーティングは、前記モノマーAの構造が式(IV)に示される。
ここで、Xは結合手、酸素原子又はカルボニル基であり、R
1はC
1~C
10のヒドロカルビレン基、C
1~C
10のハロゲン原子置換ヒドロカルビレン基であり、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1~C
10のヒドロカルビル基、C
1~C
10のハロゲン原子置換ヒドロカルビル基、C
1~C
10のヒドロカルビルオキシ基、C
1~C
10のハロゲン原子置換ヒドロカルビルオキシ基、C
1~C
10のヒドロカルビノイルオキシ基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換ヒドロカルビノイルオキシ基から選択される。本発明のいくつかの具体的な実施形態では、前記ヒドロカルビレン基は、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などの飽和のアルキレン基であり、本発明の他の具体的な実施形態では、前記ヒドロカルビレン基は、不飽和のアルケニレン基、アルキニレン基又はアリーレン基である。本発明のいくつかの具体的な実施形態では、前記ヒドロカルビル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの飽和のアルキル基である、本発明の他の具体的な実施形態では、前記ヒドロカルビル基は、不飽和のアルケニル基、アルキニル基又はアリール基である。本発明のいくつかの具体的な実施形態では、前記ヒドロカルビルオキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などの飽和のアルコキシ基であり、本発明の他の具体的な実施形態では、前記ヒドロカルビルオキシ基は、不飽和のアルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基又はアリールオキシ基である。本発明のいくつかの具体的な実施形態では、前記ヒドロカルビノイルオキシ基は、例えば、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基などの飽和のアルカノイルオキシ基であり、本発明の他の具体的な実施形態では、前記ヒドロカルビノイルオキシ基は、不飽和のアルケノイルオキシ基、アルキノイルオキシ基又はアロイルオキシ基である。本発明のいくつかの具体的な実施形態では、Xは結合手であり、R
1はC
1~C
10のアルキレン基、特にエチレン基、プロピレン基又はブチレン基であり、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立してC
1~C
10のヒドロカルビルオキシ基、特にメトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基である。
【0034】
本発明の特定の実施形態の保護コーティングでは、前記モノマーBの構造は式(V)に示される。
ここで、R
5、R
6及びR
7はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1~C
10のヒドロカルビル基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換ヒドロカルビル基から選択され、Yは結合手、C
1~C
10のヒドロカルビレン基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換ヒドロカルビレン基である。本発明のいくつかの具体的な実施形態では、前記ヒドロカルビレン基は、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などの飽和のアルキレン基であり、本発明の他の具体的な実施形態では、前記ヒドロカルビレン基は、不飽和のアルケニレン基、アルキニレン基又はアリーレン基である。本発明のいくつかの具体的な実施形態では、前記ヒドロカルビル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの飽和のアルキル基であり、本発明の他の具体的な実施形態では、前記ヒドロカルビル基は、不飽和のアルケニル基、アルキニル基又はアリール基である。本発明のいくつかの具体的な実施形態では、前記R
5、R
6及びR
7はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基から選択され、特に前記R
5、R
6は水素原子、R
7は水素原子又はメチル基、Yは結合手である。
【0035】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングは、いくつかの具体的な実施形態では、前記基材は、携帯電話、オーディオ機器、ポータブルコンピューター、プリント回路基板(PCB)、プリント回路基板アレイ(PCBA)、トランジスタ、抵抗器又は半導体チップなどの電子部品又は電気部品であり、他の具体的な実施形態では、前記基材は、他の様々なプラスチック、織物、ガラス又は金属などの基材である。いくつかの具体的な実施形態では、前記基材は、表面予備処理又は前処理を受けた基材を含み、前記予備処理又は前処理は、例えば熱、酸素又はプラズマの表面洗浄処理、及び表面の他のコーティング処理などを含む。
【0036】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングでは、アミノ基構造単位に基づくモノマーAとカルボキシル末端基構造単位に基づくモノマーBとのモル比は10:0.1~1:10であり、さらに、アミノ基構造単位に基づくモノマーAとカルボキシル末端基構造単位に基づくモノマーBとのモル比は10:0.5~1:5であり、具体的には、例えば、アミノ基構造単位に基づくモノマーAとカルボキシル末端基構造単位に基づくモノマーBとのモル比は、10:0.5、10:1、10:2、10:3、10:4、10:5、10:10、5:10などであり、前記アミノ基構造単位に基づくモノマーA及びカルボキシル末端基構造単位に基づくモノマーBとは、モノマーAのモル量をモノマーAに含まれる式(II)及び式(III)のアミノ基構造単位のモル量で算出し、モノマーBのモル量をモノマーBに含まれるカルボキシル末端基構造単位のモル量で算出することをいう。
【0037】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングは、いくつかの具体的な実施形態では、前記保護コーティングは、基材をモノマーA及びモノマーBのプラズマに接触させることにより前記基材の表面にプラズマ重合により形成される第1のコーティングであり、他の具体的な実施形態では、前記保護コーティングは、基材がモノマーA、モノマーB及び他のモノマーと接触するプラズマであってもよく、例えば、いくつかの具体的な実施形態では、前記プラズマは、モノマーCのプラズマをさらに含み、モノマーCはフルオロハイドロカーボン、フルオロアクリレート又はフルオロシランの一つまたは複数から選択される。式(I)のシリコン構造単位を含む同時に式(II)の第2級アミン構造単位又は式(III)の第3級アミン構造単位を含むモノマーA、カルボキシル末端基構造を含むモノマーB及びフルオロカーボンモノマーCが基材の表面にプラズマ重合コーティングを行うことにより、モノマーAは活性官能基の第2級アミン又は第3級アミン構造単位のシリコン含有構造単位を有する、及びモノマーBは活性官能基のカルボキシル末端基構造単位を有する相乗効果により、モノマーA、モノマーB及びモノマーCは、基材と強固に結合する三次元の網目状の耐摩耗性に優れたプラズマ重合コーティングを形成することができる。
【0038】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングは、前記フルオロハイドロカーボンの具体例として、例えば、フルオロアルカン、フルオロアルケン、フルオロアルキンの一つまたは複数が挙げられ、前記フルオロアルカンは、テトラフルオロメタン、ヘキサフルオロエタン、オクタフルオロプロパン又はデカフルオロブタンなどであり、前記フルオロアルケンは、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、オクタフルオロブテン、デカフルオロペンテン又は1H,1H,2H-パーフルオロ-1ドデセンなどであり、前記フルオロアルキンは、ジフルオロアセチレン、テトラフルオロプロピン又はヘキサフルオロブチンなどである。
【0039】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングは、いくつかの具体的な実施形態では、特に適切なモノマーCは、以下の式(VI)で表されるフルオロアクリレートであり、
式(VI)中、R
8、R
9及びR
10はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C
1~C
10のヒドロカルビル基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換ヒドロカルビル基から選択され、xは0、1又は2の整数であり、yは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20である。本発明のいくつかの具体的な実施形態では、前記ヒドロカルビル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの飽和のアルキル基であり、本発明の他の具体的な実施形態では、前記ヒドロカルビル基は、不飽和のアルケニル基、アルキニル基又はアリール基である。本発明のいくつかの具体的な実施形態では、R
8、R
9及びR
10はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基から選択される。
【0040】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングは、いくつかの具体的な実施形態では、モノマーA及びモノマーBの合計とモノマーCとのモル比は1:20~20:1であり、特に、保護性能と耐摩耗性の両方を考慮すると、モノマーA及びモノマーBの合計とモノマーCとのモル比は1:5~5:1であり、さらには1:0.5~1:3.5である。
【0041】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングは、第1のコーティング上にある第2のコーティングをさらに含み、前記第2のコーティングは一つまたは複数のプラズマ重合コーティングを含み、前記第2のコーティングの各層のモノマーはそれぞれ独立して、フルオロハイドロカーボン、フルオロアクリレート又はフルオロシランの一つまたは複数から選択される。いくつかの具体的な実施形態では、前記保護コーティングは、モノマーA及びモノマーBのプラズマ重合により形成される第1のコーティング上に形成される2層、3層又は4層などの2つ以上のプラズマ重合第2のコーティングをさらに含み、前記2つ以上のプラズマ重合第2のコーティングの各コーティングモノマーはそれぞれ独立して、フルオロハイドロカーボン、フルオロアクリレート又はフルオロシランの一つまたは複数から選択され、外側のプラズマ重合コーティングのモノマーのフッ素原子含有量は、内側のプラズマ重合コーティングのモノマーのフッ素原子含有量よりも高く、前記フッ素原子含有量とは、モノマー全体における全原子数に占めるフッ素原子数の割合を指し、これは、しっかりと結合された耐摩耗性の疎水性保護コーティングの形成をより助長し、具体的には、例えば、モノマーA及びモノマーBのプラズマ重合により形成される第1のコーティング上に、2-(パーフルオロプロピル)エチルアクリレートのプラズマ重合コーティング及び2-パーフロロオクチルアクリレートのプラズマ重合第2のコーティングを順に形成する。本発明の具体的な実施形態では、前記フルオロハイドロカーボン、フルオロアクリレート又はフルオロシランの具体的な説明は上記の通りである。
【0042】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングでは、前記保護コーティングはプラズマ重合により形成され、コーティングの厚さはナノスケールであり、いくつかの具体的な実施形態では、前記保護コーティングの厚さは1nm~1000nmである。
【0043】
本発明の具体的な実施形態は、モノマーA、モノマーBを含むモノマーを気化してプラズマ反応器に導入し、プラズマ放電し、前記基材の表面にプラズマ重合により第1のコーティングを形成する、上記保護コーティングの製造方法をさらに提供する。
【0044】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングの製造方法は、いくつかの具体的な実施形態では、前記モノマーは、フルオロハイドロカーボン、フルオロアクリレート又はフルオロシランの一つまたは複数から選択されるモノマーCをさらに含む。いくつかの具体的な実施形態では、前記モノマーA、モノマーB及びモノマーCはそれぞれ気化されてからプラズマ反応器に導入され;いくつかの具体的な実施形態では、モノマーAとモノマーBを気化する前に混合処理し、これは、モノマーAとモノマーBのアミノ基とカルボキシ基との反応をより助長し、それにより形成される保護コーティングは、より良い保護性能を有する。
【0045】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングの製造方法は、いくつかの具体的な実施形態では、前記製造方法は、モノマーA及びモノマーBのプラズマ重合により形成される第1のコーティング上にプラズマ重合により第2のコーティングを形成することをさらに含み、前記第2のコーティングは一つまたは複数のプラズマ重合コーティングを含み、前記第2のコーティングの各層のモノマーはそれぞれ独立して、フルオロハイドロカーボン、フルオロアクリレート又はフルオロシランの一つまたは複数から選択される。
【0046】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングの製造方法は、前記モノマーA、モノマーB、モノマーC、フルオロハイドロカーボン、フルオロアクリレート又はフルオロシラン及び基材などの関連する説明は上記の通りである。
【0047】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングの製造方法は、いくつかの具体的な実施形態では、前記プラズマ重合は連続プラズマを採用し、いくつかの具体的な実施形態では、より良い耐摩耗性を得るために、前記プラズマ重合はパルスプラズマを採用し、いくつかの具体的な実施形態では、次のパルスプラズマ重合プロセスが使用され、基材を反応チャンバ内に置き、チャンバ内を1ミリトール~100トールまで真空引きし、加熱により、反応に関与するモノマーを気体の形でチャンバ内に導入し、不活性ガスのヘリウムガスを導入し、電源を入れ、プラズマを発生させることにより、基材の表面に化学気相成長が発生する。チャンバ内の温度は20℃~60℃に制御され、モノマー気化温度は70℃~150℃であり、真空条件下で気化が発生し、体積流量は10~1000μL/min、特に100~200μL/minであり、プラズマ放電モードは無線周波数パルス放電であり、電力は2W~500W、特に50W~200Wであり、パルス周波数は10Hz~50kHz、特に50Hz~500Hzであり、パルスデューティー比は0.1%~80%、特に0.1%~1%であり、プラズマ放電時間は100s~20000s、特に500s~5000sである。本発明のいくつかの具体的な実施形態では、プラズマ放電モードは、無線周波数放電、マイクロ波放電、中間周波数放電又は電気火花放電などを採用することができる。
【0048】
本発明の具体的な実施形態は、デバイスをさらに提供し、前記デバイスの表面の少なくとも一部は上記のいずれかの保護コーティングを有し、いくつかの具体的な実施形態では、前記デバイスの表面の一部又は全部には、上記の保護コーティングのみが堆積され、いくつかの具体的な実施形態では、前記デバイスの表面の一部又は全部には、上記の保護コーティングに加えて、他のコーティングが堆積される。
【0049】
以下、具体的な実施例により本発明をさらに説明する。
実施例1-1
スキーム1
【0050】
回路基板1、回路基板2及び回路基板3の3枚の回路基板をプラズマチャンバーに置き、チャンバ内を5ミリトールまで連続的に真空引きし、ヘリウムガスを流し、流量は40sccmであり、パルス放電プラズマをオンにし、電力180W、パルスデューティー比15%、パルス周波数500Hzとし、モノマー3-アミノプロピルトリメトキシシランとメタクリル酸をモル比10:1で混合した後、85℃の温度で気化した後、チャンバ内に導入してプラズマ化学気相重合成長を行い、モノマー流量は150μL/minであり、反応時間1800s後に停止した;次に、モノマー2-(パーフルオロプロピル)エチルアクリレートを導入し、気化温度90℃、パルス放電電力を33Wに変更し、パルスデューティー比15%、パルス周波数500Hz、モノマー流量180μL/minとし、反応時間3600s後に停止した;次に、モノマー2-パーフロロオクチルエチルアクリレートを導入し、気化温度80℃、電力180W、デューティー比0.3%、パルス周波数50Hz、モノマー流量110μL/minとし、反応時間1000sで停止した。放電終了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻し、チャンバを開放して回路基板を取り出した。
スキーム2:
【0051】
回路基板1’、回路基板2’及び回路基板3’の3枚の回路基板をプラズマチャンバ内に置き、チャンバ内を5ミリトールまで連続的に真空引きし、ヘリウムガスを流し、流量は40sccmであり、パルス放電プラズマをオンにし、モノマー2-(パーフルオロプロピル)エチルアクリレートを導入し、気化温度90℃、電力33W、パルスデューティー比15%、パルス周波数500Hz、モノマー流量180μL/minとし、反応時間3600s後に停止した;次に、モノマー2-パーフロロオクチルエチルアクリレートを導入し、気化温度80℃、電力180W、デューティー比0.3%、パルス周波数50Hz、モノマー流量110μL/minとし、反応時間1000s後に停止した。放電終了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻し、チャンバを開放して回路基板を取り出した。
【0052】
スキーム1とスキーム2の回路基板を、耐摩耗試験機で耐摩耗性試験を行い、摩擦材は無塵布であり、荷重100g、回転速度50r/min、摩擦回数50回とした。摩擦後に水浸し検証を行い、水浸し検証過程は次の通りである。1、電源は回路基板に5V電圧を供給した;2、回路基板を水に浸した;3、コンピュータで電流を検出した;4、故障時間(電流>0.6mA)を記録するか、又は測定時間が13minに達した。
【0053】
【0054】
このことから、摩擦後、スキーム1の回路基板は水中で12min以下通電すると電流が検出されないが、スキーム2の回路基板は水中に置くとより大きな電流が発生することが分かり、スキーム1のコーティングはスキーム2のコーティングよりも優れた耐摩耗性を有することを示している。
実施例1-2
スキーム1:
【0055】
1枚のアルミニウム合金板をプラズマチャンバ内に置き、チャンバ内を5ミリトールまで連続的に真空引きし、ヘリウムガスを流し、流量は40sccmであり、パルス放電プラズマをオンにし、電力200W、パルスデューティー比25%、パルス周波数700Hzとし、実モノマー3-アミノプロピルトリメトキシシランとメタクリル酸をモル比3:1で混合し、気化温度85℃で気化した後、チャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、モノマー流量180μL/min、反応時間1800s後に停止した;次に、モノマー2-(パーフロロオクチル)エチルアクリレートを導入し、気化温度80℃、電力180W、デューティー比0.3%、パルス周波数50Hz、モノマー流量110μL/minとし、反応時間3600s後に停止した。放電終了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻し、チャンバを開放してアルミニウム合金板を取り出した。
スキーム2:
【0056】
1枚のアルミニウム合金板をプラズマチャンバ内に置き、チャンバ内を5ミリトールまで連続的に真空引きし、ヘリウムガスを流し、流量は40sccmであり、パルス放電プラズマをオンにし、モノマー2-(パーフロロオクチル)エチルアクリレートを導入し、気化温度80℃、電力180W、パルスデューティー比0.3%、パルス周波数50Hz、モノマー流量110μL/minとし、反応時間5400s後に停止した。放電終了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻し、チャンバを開放してアルミニウム合金板を取り出した。
【0057】
このスキーム1とスキーム2のアルミニウム合金サンプルに対して耐摩耗性試験を行い、摩擦材はスチールウール、荷重1kg、回転速度60r/minとし、水滴角度が100°未満になるまで500回ごとに水滴角度を記録した。
【0058】
【0059】
このことから、スキーム1のアルミニウム合金板は3000回摩擦して回転する場合、水滴の接触角は依然として100°であるが、スキーム2のアルミニウム合金板は1000回摩擦して回転する場合、水滴の接触角は100°未満になることが分かり、スキーム1のコーティングはより優れた耐摩耗性を有することを示している。
実施例1-3
スキーム1:
【0060】
1枚の携帯電話の画面をプラズマチャンバ内に置き、チャンバ内を5ミリトールまで連続的に真空引きし、ヘリウムガスを流し、流量は40sccmであり、パルス放電プラズマをオンにし、電力180W、パルスデューティー比10%、パルス周波数300Hzとし、モノマー3-アミノプロピルトリメトキシシランとメタクリル酸をモル比1:1で混合し、気化温度85℃で気化した後、チャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、モノマー流量180μL/min、反応時間1800s後に停止した;次に、モノマー(2H-パーフルオロブチル)-2-アクリレートを導入し、気化温度85℃、電力180W、デューティー比0.3%、パルス周波数50Hz、モノマー流量110μL/min、反応時間3600Sとした。放電終了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻し、チャンバを開放して携帯電話の画面を取り出した。
スキーム2:
【0061】
1枚の携帯電話の画面をプラズマチャンバ内に置き、チャンバ内を5ミリトールまで連続的に真空引きし、ヘリウムガスを流し、流量は40sccmであり、パルス放電プラズマをオンにし、電力180W、パルスデューティー比0.3%、パルス周波数50Hzとした;モノマー(2H-パーフルオロブチル)-2-アクリレートを気化温度85℃で気化した後、チャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、モノマー流量180μL/min、反応時間5400sとした。放電終了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻し、チャンバを開放して携帯電話の画面を取り出した。
【0062】
この携帯電話の画面サンプルに対して耐摩耗性試験を行い、摩擦材は無塵布、荷重500g、回転速度60r/minとし、水滴角度が100°未満になるまで500回ごとに水滴角度を記録した。
【0063】
【0064】
このことから、スキーム1の携帯電話の画面は2000回摩擦して回転した後、水滴の接触角は依然として100°であるが、スキーム2の携帯電話の画面は1000回摩擦して回転すると、水滴の接触角は100°未満になることが分かり、スキーム1のコーティングはより優れた耐摩耗性を有することを示している。
実施例1-4
【0065】
携帯電話保護ケースをプラズマチャンバ内に置き、その他の条件は実施例1-3と同じとした。
【0066】
この携帯電話保護ケースサンプルに対して耐摩耗性試験を行い、摩擦材は消しゴム、荷重500g、回転速度60r/minとし、水滴角度が100°未満になるまで500回ごとに水滴角度を記録した。
【0067】
【0068】
このことから、スキーム1の携帯電話保護ケースは2000回摩擦して回転した後、水滴の接触角は依然として101°であるが、スキーム2の携帯電話保護ケースは1500回摩擦して回転すると、水滴の接触角は100°未満になることが分かり、スキーム1のコーティングはより優れた耐摩耗性を有することを示している。
実施例2-1
スキーム1:
【0069】
回路基板1、2及び3をプラズマチャンバ内に置き、チャンバ内を8ミリトールまで真空引きし、ヘリウムガスを流し、流量は40sccmであり、プラズマ放電をオンにし、電源電力200W、パルスデューティー比25%、パルス周波数500Hzとし、3-アミノプロピルトリメトキシシランとメタクリル酸を混合した後、2-パーフロロオクチルエチルアクリレートとそれぞれ気化してプラズマチャンバ内に導入し、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、メタクリル酸及び2-パーフロロオクチルエチルアクリレートのモル比は10:1:33、流量220μL/min、コーティング時間7200sとした。コーティング完了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻した。回路基板サンプルを取り出した。
スキーム2:
【0070】
回路基板1’、2’及び3’をプラズマチャンバ内に置き、チャンバ内を8ミリトールまで真空引きし、ヘリウムガスを流し、流量は40sccmであり、プラズマ放電をオンにし、電源電力200W、パルスデューティー比25%、パルス周波数500Hzとし、モノマー2-パーフロロオクチルエチルアクリレートを導入して気化してプラズマチャンバ内に導入し、流量220μL/min、コーティング時間7200sとした。コーティング完了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻した。回路基板サンプルを取り出した。
【0071】
スキーム1とスキーム2の回路基板に対して耐摩耗試験機で耐摩耗性試験を行い、摩擦材は無塵布、荷重100g、回転速度50r/min、摩擦回数50回とした。摩擦後に水浸し検証を行い、水浸し検証過程は次の通りである。1、電源は回路基板に電圧を供給した;2、回路基板を水に浸した;3、コンピュータで電流を検出した;4、故障時間(電流>0.6mA)を記録するか、又は測定時間が13minに達した。
【0072】
【0073】
このことから、摩擦後のスキーム1の回路基板の水中通電故障時間はスキーム2のそれよりもはるかに長いことが分かり、スキーム1のコーティングはスキーム2のコーティングよりも優れた耐摩耗性を有することを示している。
実施例2-2
スキーム1:
【0074】
フレキシブル基板のサンプルをプラズマチャンバ内に置き、チャンバ内を5ミリトールまで真空引きし、ヘリウムガスを流し、流量は40sccmであり、プラズマ放電をオンにし、電源電力25W、パルスデューティー比35%、パルス周波数700Hzとし、3-アミノプロピルトリメトキシシランとメタクリル酸を混合した後、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクタノールアクリレートとそれぞれ気化してプラズマチャンバ内に導入し、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、メタクリル酸及び1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクタノールアクリレートのモル比は10:2:20であり、流量220μL/min、コーティング時間4300sとした。コーティング完了後、圧縮空気を導入してチャンバ内を常圧に戻し、フレキシブル基板のサンプルを取り出した。
スキーム2:
【0075】
フレキシブル基板のサンプルをプラズマチャンバ内に置き、チャンバ内を5ミリトールまで真空引きし、ヘリウムガスを流し、流量は40sccmであり、プラズマ放電をオンにし、電源電力25W、パルスデューティー比35%、パルス周波数700Hzとし、モノマー1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクタノールアクリレートを気化してプラズマチャンバ内に導入し、流量220μL/min、コーティング時間4300sとした。コーティング完了後、圧縮空気を導入してチャンバ内を常圧に戻し、フレキシブル基板のサンプルを取り出した。
【0076】
スキーム1とスキーム2のフレキシブル基板のサンプルを同様の方法で100回折り曲げ、スキーム1では、サンプル表面の膜層に明らかな変化はなく、折り曲げていない部分の表面と一致した;スキーム2では、サンプルの表面に膜層剥離現象があった。
実施例2-3
スキーム1:
【0077】
FPC(フレキシブル回路基板)サンプル1、2及び3をプラズマチャンバ内に置き、チャンバ内を6ミリトールまで真空引きし、ヘリウムガスを流し、流量は45sccmであり、プラズマ放電をオンにし、電源電力180W、パルスデューティー比35%、パルス周波数300Hzとし、3-アミノプロピルトリメトキシシランとメタクリル酸を混合した後、2-パーフロロオクチルエチルアクリレートとそれぞれ気化してプラズマチャンバ内に導入し、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、メタクリル酸及び2-パーフロロオクチルエチルアクリレートのモル比は10:2:36であり、流量200μL/min、コーティング時間7200sとした。コーティング完了後、圧縮空気を導入してチャンバ内を常圧に戻し、FPCサンプルを取り出した。
スキーム2:
【0078】
FPCサンプル1’、2’及び3’をプラズマチャンバ内に置き、チャンバ内を6ミリトールまで真空引きし、ヘリウムガスを流し、流量は45sccmであり、プラズマ放電をオンにし、電源電力180W、パルスデューティー比35%、パルス周波数300Hzとし、モノマー2-パーフロロオクチルエチルアクリレートを気化した後にプラズマチャンバ内に導入し、流量200μL/min、コーティング時間7200sとした。コーティング完了後、圧縮空気を導入してチャンバ内を常圧に戻し、FPCサンプルを取り出した。
【0079】
スキーム1とスキーム2のFPCサンプルを同様の方法で10回折り曲げた後に水浸し試験を行い、水浸し試験方法は実施例2-1と同じであり、試験条件は:故障時間(電流は20μAを超える)を記録するか、又は測定時間が30minに達した。
【0080】
【0081】
このことから、複数回折り曲げた後、スキーム1のFPCサンプルは水中で30min通電した後に電流が20μAに達しなかったのに対し、スキーム2のFPCサンプルは水中で15min以内通電し、電流が20μAに達することが分かり、スキーム1のコーティングはスキーム2のコーティングよりも優れた耐折り曲げ性を有することを示している。
実施例2-4
スキーム1:
【0082】
TYPE-Cのオスヘッドとメスヘッド1、2及び3をプラズマチャンバ内に置き、チャンバ内を8ミリトールまで真空引きし、ヘリウムガスを流し、流量は40sccmであり、プラズマ放電をオンにし、電源電力200W、パルスデューティー比25%、パルス周波数50Hzとし、3-アミノプロピルトリメトキシシランとアクリル酸を混合した後、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクタノールアクリレートとそれぞれ気化してプラズマチャンバ内に導入し、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、アクリル酸及び1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクタノールアクリレートのモル比は10:2:36であり、流量220μL/min、コーティング時間2000sとした。コーティング完了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻した。TYPE-Cのオスヘッドとメスヘッドのサンプルを取り出した。
スキーム2:
【0083】
TYPE-Cのオスヘッドとメスヘッド1’、2’和3’をプラズマチャンバ内に置き、チャンバ内を8ミリトールまで真空引きし、ヘリウムガスを流し、流量は40sccmであり、プラズマ放電をオンにし、電源電力200W、パルスデューティー比25%、パルス周波数50Hzとし、モノマー1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクタノールアクリレートを気化してプラズマチャンバ内に導入し、流量220μL/min、コーティング時間2000sとした。コーティング完了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻した。TYPE-Cのオスヘッドとメスヘッドのサンプルを取り出した。
【0084】
試験条件:
スキーム1とスキーム2のTYPE-Cのオスヘッドとメスヘッドを挿脱回数50回の挿脱実験を行い、挿脱実験完了後、通電試験を行った。故障時間(電流大于0.1A)を記録するか、又は測定時間が1時間に達したら試験を停止する。
【0085】
【0086】
このことから、摩擦後、スキーム1のTYPE-Cのオスヘッドとメスヘッドは水中で1h通電した後に電流が0.1Aに達しないのに対し、スキーム2のTYPE-Cのオスヘッドとメスヘッドは水中で48min以内通電し、電流が0.1Aに達することが分かり、スキーム1のコーティングはスキーム2のコーティングよりも優れた耐摩耗性を有すること示している。
実施例2-5
スキーム1:
【0087】
回路基板1、2及び3をプラズマチャンバ内に置き、チャンバ内を8ミリトールまで真空引きし、ヘリウムガスを流し、流量は40sccmであり、プラズマ放電をオンにし、電源電力200W、パルスデューティー比15%、パルス周波数500Hzとし、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、メタクリル酸、2-(パーフルオロブチル)エチルアクリレートをそれぞれ気化してプラズマチャンバ内に導入し、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、メタクリル酸及び2-(パーフルオロブチル)エチルアクリレートのモル比は1:1:2であり、流量220μL/min、コーティング時間7200sとした。コーティング完了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻した。回路基板サンプルを取り出した。
スキーム2:
【0088】
回路基板1’、2’及び3’をプラズマチャンバ内に置き、チャンバ内を8ミリトールまで真空引きし、ヘリウムガスを流し、流量は40sccmであり、プラズマ放電をオンにし、電源電力200W、パルスデューティー比15%、パルス周波数500Hzとし、モノマー2-(パーフルオロブチル)エチルアクリレートを導入して気化してプラズマチャンバ内に導入し、流量220μL/min、コーティング時間7200sとした。コーティング完了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻した。回路基板サンプルを取り出した。
【0089】
スキーム1とスキーム2の回路基板に対して耐摩耗試験機で耐摩耗性試験を行い、摩擦材は無塵布であり、荷重100g、回転速度50r/min、摩擦回数50回とした。摩擦後に水浸し検証を行い、水浸し検証過程は次の通りである。1、電源は回路基板に電圧を供給した;2、回路基板を水に浸した;3、コンピュータで電流を検出した;4、故障時間(電流>0.6mA)を記録するか、又は測定時間が13minに達した。
【0090】
【0091】
このことから、摩擦後、スキーム1の回路基板の水中通電故障時間はスキーム2のそれよりもはるかに長いことが分かり、スキーム1のコーティングはスキーム2のコーティングよりも優れた耐摩耗性を有することを示している。
【0092】
本発明は以上のように開示されたが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の思想および範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができる。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって定義された範囲に基づくべきである。