IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッドの特許一覧

特許7526305ファッション物品の電子デバイスに電流を供給するように構成しているテキスタイル部品
<>
  • 特許-ファッション物品の電子デバイスに電流を供給するように構成しているテキスタイル部品 図1
  • 特許-ファッション物品の電子デバイスに電流を供給するように構成しているテキスタイル部品 図2
  • 特許-ファッション物品の電子デバイスに電流を供給するように構成しているテキスタイル部品 図3
  • 特許-ファッション物品の電子デバイスに電流を供給するように構成しているテキスタイル部品 図4
  • 特許-ファッション物品の電子デバイスに電流を供給するように構成しているテキスタイル部品 図5
  • 特許-ファッション物品の電子デバイスに電流を供給するように構成しているテキスタイル部品 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】ファッション物品の電子デバイスに電流を供給するように構成しているテキスタイル部品
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/30 20230101AFI20240724BHJP
   A44C 5/00 20060101ALI20240724BHJP
   G04B 37/16 20060101ALI20240724BHJP
   G04C 10/00 20060101ALI20240724BHJP
   G04G 19/00 20060101ALI20240724BHJP
   H01G 9/20 20060101ALI20240724BHJP
   H10N 30/857 20230101ALI20240724BHJP
【FI】
H10N30/30
A44C5/00 502A
G04B37/16 Z
G04C10/00 C
G04G19/00 Y
H01G9/20 111D
H01G9/20 111E
H01G9/20 113B
H01G9/20 115A
H01G9/20 115B
H01G9/20 203A
H01G9/20 315
H10N30/857
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023031596
(22)【出願日】2023-03-02
(65)【公開番号】P2023171237
(43)【公開日】2023-12-01
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】22174689.4
(32)【優先日】2022-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ナタリー・マリナキス
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ジョルノ
【審査官】小池 秀介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-016936(JP,A)
【文献】国際公開第2016/080182(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/30
G04G 19/00
G04C 10/00
G04B 37/16
A44C 5/00
H01G 9/20
H10N 30/857
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重なり合った少なくとも2つのテキスタイル層を含むテキスタイル部品(10)であって、
前記テキスタイル層はそれぞれ、繊維を含み、
前記テキスタイル層は、
機械的応力によって電流を生成するように構成している、内側生成層(12)である、少なくとも1つのエネルギー生成層(12)と、
電子デバイスに電流を供給するためのエネルギー蓄積層(13)とによって形成されており、
前記エネルギー蓄積層(13)は、前記内側生成層(12)に電気的に接続され、これによって、電流出力を蓄積するように構成しており、
前記テキスタイル部品(10)は、さらに、ボール(125)を含む励起繊維(124)を少なくとも1つ含み、
前記ボール(125)は、前記励起繊維(124)の本体(126)と一体的にされ、
前記励起繊維(124)は、前記内側生成層(12)とともに織られる
ことを特徴とするテキスタイル部品(10)。
【請求項2】
前記テキスタイル部品(10)は、光放射によって電流を生成するように構成している外側生成層(11)を含み、
前記外側生成層(11)は、前記内側生成層(12)上に重なり合い、
前記内側生成層(12)は、前記エネルギー蓄積層(13)上に重なり合い、
前記外側生成層(11)と内側生成層(12)は、前記エネルギー蓄積層(13)に電気的に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載のテキスタイル部品(10)。
【請求項3】
前記外側生成層(11)は、色素増感太陽電池セル(110)を形成する繊維のアレーと、導電性繊維(116)とを含み、
前記太陽電池セル形成繊維(110)が前記導電性繊維(116)とともに織られる
ことを特徴とする請求項2に記載のテキスタイル部品(10)。
【請求項4】
前記内側生成層(12)は、導電性繊維(123)とともに織られた活性アセンブリー(120)を含む摩擦電気的ナノジェネレーターのアレーによって形成される
ことを特徴とする請求項2に記載のテキスタイル部品(10)。
【請求項5】
前記エネルギー蓄積層は、電池(130)によって形成される繊維のアレーによって構成しており、
前記電池(130)はそれぞれ、ワイヤカソード(131)とワイヤアノード(132)を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のテキスタイル部品(10)。
【請求項6】
請求項1に記載のテキスタイル部品(10)を含み、
さらに、前記エネルギー蓄積層(13)によって電流が与えられるように構成している電子デバイスを含む
ことを特徴とするファッション物品。
【請求項7】
前記エネルギー蓄積層(13)は、前記電子デバイスに電流を供給するための誘導結合システムを含む
ことを特徴とする請求項6に記載のファッション物品
【請求項8】
少なくとも1つの請求項1に記載のテキスタイル部品(10)によって形成されるブレスレットと、
時器用ムーブメントに電流を供給するように前記エネルギー蓄積層(13)が接続された電子式又は電気機械式の前記計時器用ムーブメントとを含む
ことを特徴とする携行型時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、携行型電子機器の分野、特に、ファッション物品の分野に関する。
【0002】
特に、本発明は、電流を生成(発電)し、電力を蓄積し、ファッション物品の電子デバイスにパワー供給するように構成しているテキスタイル部品に関する。
【0003】
本明細書にて、本発明に係るファッション物品について、細長材、特に、ユーザーの手首に着用するように意図されたブレスレットのストランド、の形態である、好ましい用途の1つを通して説明する。
【背景技術】
【0004】
携行型電子機器には、電池やセルのような電気エネルギー源によって電気エネルギーが与えられる。
【0005】
電子機器の中でも、眼鏡、ヘッドフォン、ブレスレット、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)のような電子デバイスを含むファッション物品は、再充電可能な電池を備えることが多い。このような電池の利点として、一次電池とは異なり、放電されても交換する必要がないことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、再充電可能な電池には、充電されている間には、その電池を搭載する携行型電子機器を動かすことができなくなってしまうという課題があり、この動かすことができなくなる時間の長さは多岐にわたる。
【0007】
本発明は、特に、この課題を克服するための手法を提供する。
【0008】
一般的には、本発明は、ファッション物品の電子デバイスに電流を供給するために、電気エネルギーを発生させて蓄積するための手法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このために、本発明は、互いに重なり合った少なくとも2つのテキスタイル層を含むテキスタイル部品に関し、前記テキスタイル層はそれぞれ、繊維を含み、前記テキスタイル層は、機械的応力によって電流を生成するように構成している、「内側生成層」である、少なくとも1つのエネルギー生成層と、電子デバイスに電流を供給するためのエネルギー蓄積層とによって形成されており、前記エネルギー蓄積層は、前記生成層に電気的に接続され、電流出力を蓄積するように構成している。
【0010】
好ましいことに、前記テキスタイル部品は、さらに、ボールを含む励起繊維を少なくとも1つ含み、前記ボールは、前記励起繊維の本体と一体的にされ、前記励起繊維は、前記内側生成層とともに織られる。本明細書中の用語「一体的」は、自由度の有無にかかわらずにボールと本体の間の接続を定義するものである。
【0011】
いくつかの特定の実施形態において、本発明には、さらに、単独で又は技術的に可能な任意の組み合わせに従って採用される以下の特徴のうちの一又は複数がある。
【0012】
いくつかの特定の実施形態において、前記テキスタイル部品は、光放射によって電流を生成するように構成している外側生成層を含み、前記外側生成層は、前記内側生成層上に重なり合い、前記内側生成層は、前記エネルギー蓄積層上に重なり合い、前記外側生成層と内側生成層は、前記エネルギー蓄積層に電気的に接続される。
【0013】
いくつかの特定の実施形態において、前記外側生成層は、色素増感太陽電池セルを形成する繊維のアレーと、導電性繊維とを含み、前記太陽電池セル形成繊維が前記導電性繊維とともに織られる。
【0014】
いくつかの特定の実施形態において、前記内側生成層は、導電性繊維とともに織られた活性アセンブリーを含む摩擦電気的ナノジェネレーターのアレーによって形成される。
【0015】
いくつかの特定の実施形態において、前記エネルギー蓄積層は、電池によって形成される繊維のアレーによって構成しており、前記電池はそれぞれ、ワイヤカソードとワイヤアノードを含む。
【0016】
別の態様によると、本発明は、テキスタイル部品と、前記エネルギー蓄積層によって電流が与えられるように構成している電子デバイスとを含むファッション物品に関する。
【0017】
いくつかの特定の実施形態において、前記エネルギー蓄積層は、前記電子デバイスに電流を供給するための誘導結合システムを含む。
【0018】
別の態様によると、本発明は、少なくとも1つの前記テキスタイル部品によって形成されるブレスレットと、前記計時器用ムーブメントに電流を供給するように前記エネルギー蓄積層が接続された電子式又は電気機械式の計時器用ムーブメントとを含む携行型時計に関する。
【0019】
添付の図面を参照しながら下記の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の好ましい実施例に係るテキスタイル部品の断面図を模式的に示している。
図2図1のテキスタイル部品の分解図を模式的に示している。
図3】本発明の一実施例に係る、図1のテキスタイル部品の外側生成層の斜視図を模式的に示している。
図4図3の外側生成層の断面図を模式的に示している。
図5】本発明の1つの実施例における図1のテキスタイル部品の内側生成層の斜視図を模式的に示している。
図6】本発明の1つの実施例における図1のテキスタイル部品のエネルギー蓄積層の繊維の斜視図を模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面において、縮尺は一定ではない。
【0022】
図1は、本発明に係るテキスタイル部品10の概略断面図を示している。このテキスタイル部品10は、電流が供給されるように意図された電子デバイスを含むファッション物品(図には示していない)の一部を形成するように意図されている。
【0023】
テキスタイル部品10は、互いに重ね合わされる少なくとも2つのテキスタイル層を含み、これらのテキスタイル層はそれぞれ、繊維からなる。用語「繊維」は、本明細書において、糸状であって、フレキシブルな要素、すなわち、曲げやすい要素、として定義される。
【0024】
特に、これらの層は、少なくとも、光放射又は受ける機械的応力によって電流を生成するように構成している電気エネルギー生成層11、12と、生成層11、12に電気的に接続され、生成層11、12が生成した電気エネルギーを蓄積するように構成しているエネルギー蓄積層13とによって形成される。
【0025】
本発明の好ましい実施例において、テキスタイル部品10は、光放射によって電流を生成するように構成している外側生成層11と、受ける機械的応力によって電流を生成するように構成している内側生成層12である、2つの生成層11及び12を含む。
【0026】
本明細書における相対的な用語「外側」と「内側」は、テキスタイル部品10を用いるときの外側環境に対する層の位置を意味しており、外側生成層11が内側生成層12上に重なり合う。
【0027】
図1及び2に示しているように、内側生成層12は、エネルギー蓄積層13上に重なり合う。好ましいことに、外側生成層11と内側生成層12は、前記エネルギー蓄積層13に電気的に接続され、外側生成層11と内側生成層12が出力する電流を前記エネルギー蓄積層13に供給するようにされる。
【0028】
エネルギー蓄積層13は、ファッション物品の電子デバイスに、その動作のための電流を供給するように構成している。エネルギー蓄積層13は、エネルギーを電子デバイスに無線で伝送するための誘導結合システムを含むことができ、又は専用の繊維によって接続することができる。
【0029】
好ましくは、外側生成層11は、略語「DSSC(dye-sensitised solar cell)」によっても当業者に知られている、色素増感太陽電池セル110を形成する繊維のアレーを含む。太陽電池セル110は、図3及び4に詳細に示しており、図4において矢印で表した光放射を受けるように意図されている。
【0030】
図2及び4に示しているように、太陽電池セル110を形成する外側生成層11の各繊維は、本発明の好ましい実施例において、ポリマー糸111を含み、このポリマー糸111は、好ましくはポリブチレンテレフタレートによって作られ、銅の薄層112で被覆され、例えば、厚みが0.2~0.3mmである。銅の薄層112は、マンガン層113で被覆されており、このマンガン層113は、例えばN719のようなルテニウムポリピリジル錯体の中から選択される、発色団で増感された、酸化亜鉛のような半導体層114で被覆されている。銅層112と半導体層114は、太陽電池セル110のアノードを形成するように意図されている。半導体層114は、例えばヨウ化銅によって作られた、正孔輸送層115で被覆される。
【0031】
外側生成層11は、さらに、カソードを形成する導電性繊維116を含み、特に図2~4に示しているように、太陽電池セル110を構成している繊維が前記導電性繊維116とともに織られる。前記導電性繊維は、好ましくは銅又はアルミニウムによって作られ、又は一般的には、任意の適切な導電性材料によって作られる。
【0032】
外側生成層11は、太陽電池セル110を構成している繊維が直列に配置され、これによって、太陽電池セル110が発生させる電圧を大きくするように構成していることができる。代わりに、外側生成層11は、太陽電池セル110を構成している繊維が並列に配置され、これによって、太陽電池セル110による電流出力を大きくするように構成していることができる。
【0033】
本発明の他の実施例において、太陽電池セル110は、多接合集光器太陽電池セルタイプの、「有機太陽電池セル(OPVC:Organic Photovoltaic Cell)」としても当業者に知られている、有機太陽電池セルタイプのものであることができる。
【0034】
本発明の好ましい実施例において、図5に示しているように、内側生成層12は、「TENG(triboelectric nanogenerator)」としても知られている摩擦電気的ナノジェネレーターのアレーを含む。
【0035】
特に、複数の摩擦電気的ナノジェネレーターは、「PTFE」という頭文字でも当業者に知られている、ポリテトラフルオロエチレンの2つの葉状体121によって構成しているブレードの形態の活性アセンブリー120を含み、これらの葉状体121は、互いに重なり合い、これらの葉状体121の間に導電性葉状体122がある。摩擦電気的ナノジェネレーターは、さらに、図2及び5に示しているように、導電性繊維123を含み、この導電性繊維123が活性アセンブリー120とともに織られる。PTFE葉状体121は、内側生成層12の電極を構成している。
【0036】
葉状体122は、好ましくは、銅によって作られ、一般的には任意の適切な導電性材料によって作ることができる。
【0037】
活性アセンブリー120は、導電性繊維123に対して動くことができる。PTFEの葉状体121を導電性繊維123に対してこすりつけると、電流出力が発生する。
【0038】
好ましいことに、導電性葉状体122には、電流出力を大きくするために、ポリテトラフルオロエチレン葉状体121に対して少なくとも1つの移動度がある。
【0039】
例えば、内側生成層12は、約20個の活性アセンブリー120を含むことができる。また、PTFE葉状体121と導電性葉状体122は、厚み数十μm、例えば厚み約30μm、であることができ、導電性繊維123の直径も同様である。
【0040】
本発明の他の実施例において、活性アセンブリー120は、断面が環状であるチューブ状であり、PTFEチューブ内に収容されたチューブ状の銅コアによって形成することができる。
【0041】
テキスタイル部品10に、それを変形させる傾向のある機械的応力、例えば、曲げ、ねじれ、圧縮又は引張応力、が与えられると、銅とPTFEの間の電子親和性の差異が電荷移動を発生させ、これによって、導電性繊維123は正にチャージされ、PTFE葉状体121は負にチャージされる。テキスタイル部品10の機械的応力が与えられなくなると、機械的変形が発生させる導電性繊維123とPTFE葉状体121の間の電荷分離のおかげで、PTFE葉状体121から導電性繊維123へと電子が流れる。
【0042】
好ましいことに、内側生成層12は、外側生成層11とエネルギー蓄積層13の間に配置されるために、より大きな機械的応力を受け、したがって、電流出力が比較的大きい。特に、内側生成層12には、テキスタイル部品10が変形したときに、外側生成層11とエネルギー蓄積層13の両方によって摩擦が発生する。
【0043】
好ましいことに、テキスタイル部品10のエネルギー効率をさらに高めるために、それぞれが前記繊維の本体126に対して運動可能なボール125を含む励起繊維124が、内側生成層12とともに織られる。
【0044】
代わりに、励起繊維124のボール125を、本体126に対する自由度がいずれもないように、固定することもできる。
【0045】
励起繊維124は、内側生成層12上の応力を大きくするように構成している。
【0046】
図2に模式的に示しているように、ボール125を本体126内に配置することができ、したがって、この本体126は、中空のチューブ状となる。
【0047】
また、内側生成層12は、熱電特性があるコンポーネントのアレーを含み、熱電発電器を形成する。
【0048】
本発明の別の実施例において、内側生成層12についても、圧電特性があるコンポーネントのアレーを含むことができる。
【0049】
外側生成層11と内側生成層12との組み合わせのおかげで、特にテキスタイル部品10が携行型時計のブレスレットのストランドを形成し電子デバイスが携行型時計の電子式又は電気機械式ムーブメントであるような本発明の用途において、テキスタイル部品10のエネルギー出力を、電子デバイスにパワー供給するために必要な電流に対して、比較的大きくすることができる。
【0050】
また、テキスタイル部品10は、複数の内側生成層12を含むことができる。特に、本発明の別の好ましい実施例では、それぞれが摩擦電気的ナノジェネレーターのアレーを含む2つの内側生成層12を互いに重ね合わせて、テキスタイル部品10の電流出力を大きくすることができる。
【0051】
本発明の一実施例において、エネルギー蓄積層13は、電池130によって形成される繊維のアレーを含み、各電池130は、カーボンナノチューブがリン酸鉄リチウム粉末と組み合わさったワイヤカソード131と、カーボンナノチューブがチタン酸リチウム粉末と組み合わさったワイヤアノード132とを含む。図6に示しているように、アノード132とカソード131は、それぞれねじれており、繊維の本体を形成する熱収縮性シース133内のゲル化された電解質中にて一緒に被覆される。アノード132とカソード131は、隔離要素134によって互いに分離されている。
【0052】
本発明の別の実施例において、カソード131とアノード132はそれぞれ、多壁カーボンナノチューブ基材上にて、チタン酸リチウム粉末とリチウムマンガン粉末によって形成されることができる。例として、カソード131の直径は約130μmであり、アノード132の直径は約70μmである。
【0053】
エネルギー蓄積層13は、約10個の電池130を含むことができる。このような数の電池は、携行型時計の電子式又は電気機械式ムーブメントにパワー供給するために、電気エネルギーを蓄積し放出するために特に適している。
【0054】
エネルギー蓄積層13は、外側生成層11と内側生成層12のそれぞれに電気的に接続され、これによって、電流がチャージされる。また、エネルギー蓄積層13は、電子デバイスに電気的に接続され、これによって、放電によってその電子デバイスに電流を供給することができる。
【0055】
好ましいことに、電池130によって形成される繊維は、互いに、かつ/又は内側生成層12とともに、織られ又は編まれる。
【0056】
本発明の好ましい実施例において、テキスタイル部品10は、厚みが、数mm、例えば2mm、であることができる。テキスタイル部品10は、構造繊維を含むことができ、これは、例えば、ポリマーによって作られ、外側生成層11と内側生成層12及びエネルギー蓄積層13とともに織られて、これらの層を互いに一体的にする。
【0057】
本発明の有利な用途において、テキスタイル部品10が一部となるように意図されているファッション物品は、電流が供給されるように意図された電子式又は電気機械式ムーブメントを含む携行型時計である。
【0058】
この携行型時計は、少なくとも1つのテキスタイル部品10によって形成されるブレスレットを含み、計時器用ムーブメントは、エネルギー蓄積層13に接続されて、動作するために電流が与えられる。特に、例として、ブレスレットは、それぞれがテキスタイル部品10によって形成される2つのストランドを含み、これらのストランドはそれぞれ、ムーブメントに接続される。
【0059】
本発明の一実施例において、各ストランドは、その近位端、すなわち、ストランドが携行型時計ケースに固定されるときに介在するように意図されている端、においてコネクターを含み、これらのコネクターは、エネルギー蓄積層13に接続される。これを補う態様において、携行型時計は、ケースを含み、このケースの縁部上にてケースコネクターが突き出ており、このケースコネクターは、各ストランドのコネクターに対向して、それらのストランドがそれぞれ前記ケースコネクターに対して不動となるように構成するように意図されている。
【0060】
したがって、携行型時計がユーザーによって着用されているときには、外側生成層11は、外側環境の最も近くに位置する層であり、エネルギー蓄積層13は、ユーザーの最も近くに位置する層である。
【0061】
本発明について、携行型時計によって形成されるファッション物品への本発明の適用に関連して説明した。しかし、当然、本発明は、この用途に限定されるものではなく、好ましいことに、電子デバイスを含む任意の他のファッション物品とともに用いることができる。
【0062】
なお、概して、上述した実装例及び実施形態は、例として説明しており、それらに限定されず、他の代替的な実装例及び実施形態も考えられる。
【符号の説明】
【0063】
10 テキスタイル部品
11 外側生成層
12 内側生成層
13 エネルギー蓄積層
110 色素増感太陽電池セル
116 導電性繊維
120 活性アセンブリー
123 導電性繊維
124 励起繊維
125 ボール
126 本体
130 電池
131 ワイヤカソード
132 ワイヤアノード
図1
図2
図3
図4
図5
図6