(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】治療剤のin vivo送達のためのB細胞およびその投薬量
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20240724BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240724BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240724BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240724BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240724BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240724BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240724BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240724BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240724BHJP
A61K 38/43 20060101ALI20240724BHJP
A61K 38/47 20060101ALI20240724BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240724BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20240724BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20240724BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240724BHJP
【FI】
A61K35/17 ZNA
A61K48/00
A61K31/7088
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/02
A61P37/06
A61K38/02
A61K38/17
A61K38/43
A61K38/47
C12N15/12
C12N15/55
C12N15/54
C12N5/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023072284
(22)【出願日】2023-04-26
(62)【分割の表示】P 2019557872の分割
【原出願日】2018-04-27
【審査請求日】2023-04-26
(32)【優先日】2017-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512176646
【氏名又は名称】イミュソフト コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マシュー レイン ショルツ
(72)【発明者】
【氏名】エリック ジェイ. ハービッグ
(72)【発明者】
【氏名】アール. スコット マカイバー
(72)【発明者】
【氏名】ライアン デ ラート
(72)【発明者】
【氏名】エリック オルソン
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-527051(JP,A)
【文献】Oncotarget,2016年,Vol.7, No.29,pp.46173-46186
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
C12N 5/00- 5/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用タンパク質の相乗的in vivo産生を可能にするように遺伝子改変B細胞をヒト被験体に投与する方法における使用のための、遺伝子改変B細胞を含む組成物であって、前記遺伝子改変B細胞が、前記治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記治療用タンパク質を発現し分泌するように遺伝子操作されており、前記方法が、前記改変B細胞の最適な単回用量を決定するステップであって、前記最適な単回用量が、前記治療用タンパク質の最大in vivo産生を誘導する用量である、ステップと、前記改変B細胞の前記最適な単回用量を減少させて、前記改変B細胞の最適に満たない単回用量を得るステップであって、前記最適に満たない単回用量が、前記最適な単回用量の2分の1未満の用量である
、ステップと、2またはそれよりも多い前記最適に満たない単回用量の前記改変B細胞を前記被験体に投与するステップとを含み、前記改変B細胞によって産生される前記治療用タンパク質の量が所望の量を下回って減少する時に、前記2またはそれよりも多い前記最適に満たない単回用量のそれぞれが個々に投与され、前記最適に満たない単回用量が、所望の量の前記治療用タンパク質が前記被験体において検出されるまで投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記治療用タンパク質が、IDUAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記治療用タンパク質が、FIX、LPLまたはLCATである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記遺伝子改変B細胞が、配列番号1と同一である配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記遺伝子改変B細胞が、配列番号1と少なくとも85%同一である、または配列番号1と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは99%超同一である配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
前記遺伝子改変B細胞が、ヒトIDUAをコードする二機能性トランスポゾンをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
前記二機能性トランスポゾンが、ヒトジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)バリアント酵素をコードする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記DHFRバリアントが、メトトレキセート(MTX)に対して耐性がある、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記最適な単回用量が、3×10
7
個の細胞である、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2017年4月27日に出願された米国仮出願第62/491,151号(この出願は、その全体が参考として本明細書に援用される)への優先権を主張する。
【0002】
配列表に関する陳述
この出願に関連する配列表は、紙でのコピーの代わりにテキストフォーマットで提供され、本明細書に参考として援用される。配列表を含むテキストファイルの名称は、IMCO-006_01WO_ST25.txtである。このテキストファイルは、10KBであり、2018年4月26日に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出された。
【0003】
本開示は、抗原特異的抗体またはタンパク質(例えば、酵素)等、治療剤の長期in vivo送達のためのB細胞の使用に関し、特に、B細胞の単回および多回投薬量の投与に関する。
【背景技術】
【0004】
慢性疾患および障害を処置するための現在の方法は、治療剤の直接的注入(例えば、酵素補充療法)、ウイルスベクターによる遺伝子療法、および幹細胞の養子移入(例えば、造血幹細胞移入)を含む。しかし、これらの方法のそれぞれに不利益がある。組換え治療用タンパク質の注射は、タンパク質の有限の半減期に悩まされ、3種の方法は全て、治療剤による最適に満たない組織浸透をもたらす。組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)およびレンチウイルスベクターの注射による等、治療剤を産生するように内在性組織を変更することは一般に、中央集中した位置から産生される治療剤をもたらす。1か所の位置からの治療剤の産生は、産生組織における局在化された毒性の確率を増加させる。その上、組換えウイルスは、外来のものとしてみなされるため、有害反応を引き起こすことなくウイルスベクターを複数回投与することができる可能性は低く、治療剤の正確な投薬量を達成するために単回の注射機会があることを意味する。ウイルスを使用した細胞への核酸のin vivo導入等の手順に固有の生物学的変動を考慮すれば、単回注射の制約下で所望の投薬量を達成することは非常に心許ないであろう。
【0005】
近年、導入遺伝子の長期in vivo発現のための分化したB細胞組成物の使用は、様々な疾患および障害の処置のための有望な戦略として同定された。しかし、治療剤の送達のための改変B細胞を投与するための方法は、in vivoで薬剤の治療有効レベルを達成するために関しては、未だ記載がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本技術分野において依然として、多くの慢性疾患および障害のための長期処置の必要がある。本開示は、慢性疾患および障害を処置するために、遺伝子改変B細胞組成物を投与および投薬するための方法を提供する。本開示は、詳細な説明に記載されている通り、上述および他の利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、治療剤のin vivo産生のために遺伝子改変B細胞を被験体に投与するための方法であって、2またはそれよりも多い逐次用量の遺伝子改変B細胞を被験体に投与するステップを含む方法を提供する。
【0008】
本発明の一態様は、in vivoで複数の組織に治療剤を送達するための方法であって、2またはそれよりも多い用量の遺伝子改変B細胞を被験体に投与するステップを含む方法を提供する。
【0009】
本発明の一態様は、MPS Iを処置するための方法であって、2またはそれよりも多い逐次用量の、IDUAを産生するように遺伝子改変B細胞を、MPS Iを有する被験体に投与するステップを含む方法を提供する。
【0010】
本発明の一態様は、MPS Iを有する被験体におけるグリコサミノグリカン(GAG)の量を低下させるための方法であって、2またはそれよりも多い逐次用量の、IDUAを産生するように遺伝子改変B細胞を被験体に投与するステップを含む方法を提供する。
【0011】
本発明の一態様は、in vivoで1種または複数の組織に治療剤を送達するための方法であって、1または複数用量の遺伝子改変B細胞を被験体に投与するステップを含み、遺伝子改変B細胞が遊走性である、方法を提供する。
【0012】
本発明の一態様は、治療剤の相乗的in vivo産生を可能にするように遺伝子改変B細胞を被験体に投与する方法であって、治療剤の最大in vivo産生を誘導するための、改変B細胞の最適な単回用量濃度を決定するステップと、改変B細胞の最適な単回用量濃度を減少させて、改変B細胞の最適に満たない単回用量濃度を得るステップと、2またはそれよりも多い用量の最適に満たない単回用量濃度の改変B細胞を被験体に投与するステップとを含む方法を提供する。
【0013】
本発明の一態様は、治療剤を産生するように操作された遺伝子改変B細胞を提供する。一部の実施形態では、治療剤は、IDUAである。一部の実施形態では、治療剤は、FIX、LPLまたはLCATである。
【0014】
本発明の一態様は、治療剤を産生するように操作された遺伝子改変B細胞の集団を含む組成物であって、遺伝子改変B細胞が、最適な遊走能にあるものである、組成物を提供する。一部の実施形態では、治療剤は、IDUAである。一部の実施形態では、治療剤は、FIX、LPLまたはLCATである。
【0015】
本発明の一態様は、治療剤を産生するように操作された遺伝子改変B細胞の集団を含む組成物であって、組成物中の遺伝子改変B細胞が、顕著な量の炎症性サイトカインを産生しない時点で培養物から収集される、組成物を提供する。一部の実施形態では、治療剤は、IDUAである。一部の実施形態では、治療剤は、FIX、LPLまたはLCATである。
【0016】
本発明の一態様は、治療剤のin vivo産生のために遺伝子改変B細胞を被験体に投与する方法であって、最適な単回用量の遺伝子改変B細胞を被験体に投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、治療剤は、IDUAである。一部の実施形態では、治療剤は、FIX、LPLまたはLCATである。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
治療剤のin vivo産生のために遺伝子改変B細胞を被験体に投与する方法であって、
2またはそれよりも多い逐次用量の遺伝子改変B細胞を被験体に投与するステップ
を含む、方法。
(項目2)
投与ステップが、最適に満たない単回用量濃度で2またはそれよりも多い用量の前記遺伝子改変B細胞を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
投与ステップが、3またはそれよりも多い用量の遺伝子改変B細胞を含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記遺伝子改変B細胞が、前記被験体に対して自家である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記遺伝子改変B細胞が、前記被験体に対して同種異系である、項目1に記載の方法。(項目6)
前記被験体が、ヒトである、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記治療剤が、タンパク質、ポリヌクレオチドまたはDNAコード小分子である、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記タンパク質が、酵素、抗体もしくはその抗原結合性断片、融合タンパク質、細胞表面受容体、分泌タンパク質、シグナル伝達分子、抗原性断片、凝固因子、または接着分子である、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記遺伝子改変B細胞が、CD20-、CD38-かつCD138-である、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記遺伝子改変B細胞が、CD20-、CD38+かつCD138+である、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記遺伝子改変B細胞が、CD20-、CD38+かつCD138-である、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記投与ステップが、静脈内、腹腔内、皮下または筋肉内注射を含む、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記投与ステップが、静脈内注射を含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記遺伝子改変B細胞が、前記B細胞において前記治療剤を発現するようにスリーピングビューティートランスポゾンを使用して調製された、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記遺伝子改変B細胞が、前記B細胞において前記治療剤を発現するように組換えウイルスベクターを使用して調製された、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記組換えウイルスベクターが、組換えレトロウイルス、組換えレンチウイルス、組換えアデノウイルスまたは組換えアデノ随伴ウイルスをコードする、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記遺伝子改変B細胞が、前記B細胞のゲノムへの、前記治療剤をコードするポリヌクレオチド配列の標的化組込みによって調製された、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記標的化組込みが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ媒介性遺伝子組込み、CRISPR/CAS9媒介性遺伝子組込み、TALE-ヌクレアーゼ媒介性遺伝子組込みまたはメガヌクレアーゼ媒介性遺伝子組込みを含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記ポリヌクレオチドの前記標的化組込みが、相同組換えにより起こった、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記標的化組込みが、標的DNA部位においてDNA切断を誘導することができるヌクレアーゼのウイルスベクター媒介性送達を含む、項目17に記載の方法。
(項目21)
前記ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CAS9ヌクレアーゼ、TALE-ヌクレアーゼまたはメガヌクレアーゼである、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記遺伝子改変B細胞が、配列番号1と同一である配列を有するポリヌクレオチドを含む、項目1~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記遺伝子改変B細胞が、配列番号1と少なくとも約85%同一である、または配列番号1と少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは99%超同一である配列を有するポリヌクレオチドを含む、項目1~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記遺伝子改変B細胞が、培養後2日目または3日目に操作される、項目1~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記遺伝子改変B細胞が、エレクトロポレーションを含む方法を使用して操作される、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記遺伝子改変B細胞が、操作後の培養における4日目、5日目、6日目または7日目に、被験体への投与のために収集される、項目1~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記遺伝子改変B細胞が、操作後の培養における8日目またはそれよりも後に、被験体への投与のために収集される、項目1~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記遺伝子改変B細胞が、操作後の培養における10日目またはそれよりも前に、被験体への投与のために収集される、項目27に記載の方法。
(項目29)
収集された前記遺伝子改変B細胞が、顕著なレベルの炎症性サイトカインを産生しない、項目1~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記遺伝子改変B細胞が、顕著なレベルの炎症性サイトカインを産生しないことが決定された培養中の時点で収集される、項目1~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記遺伝子改変B細胞が、操作前および後の培養期間全体にわたって、IL-2、IL-4、IL-10、IL-15、IL-31および多量体化CD40リガンドのそれぞれを含む培養系において育成される、項目1~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記多量体化CD40リガンドが、抗his抗体を使用して多量体化された、HISタグ付きCD40リガンドである、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記被験体への前記投与ステップの前に、前記遺伝子改変B細胞を拡大増殖するステップをさらに含む、項目1~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
拡大増殖された遺伝子改変B細胞の最終集団が、高い程度のポリクロナリティーを示す、項目33に記載の方法。
(項目35)
拡大増殖された遺伝子改変B細胞の前記最終集団におけるあらゆる特定のB細胞クローンが、総B細胞集団の0.2%未満を構成する、項目33に記載の方法。
(項目36)
拡大増殖された遺伝子改変B細胞の前記最終集団におけるあらゆる特定のB細胞クローンが、総B細胞集団の0.05%未満を構成する、項目33に記載の方法。
(項目37)
前記遺伝子改変B細胞が、メトトレキセートに対して増強された耐性を有するヒトDHFR遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含む、項目1~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
メトトレキセートに対して増強された耐性を有する前記ヒトDHFR遺伝子が、アミノ酸22におけるロイシンからチロシンへの置換変異、およびアミノ酸31におけるフェニルアラニンからセリンへの置換変異を含有する、項目37に記載の方法。
(項目39)
投与のための収集の前に、前記遺伝子改変B細胞をメトトレキセートで処置するステップを含む、項目1~38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
メトトレキセートによる前記処置が、100nM~300nMの間である、項目39に記載の方法。
(項目41)
メトトレキセートによる前記処置が、200nMである、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記遺伝子改変B細胞が、前記被験体に投与されると、多様な組織へと遊走する、項目1~41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記被験体に投与される遺伝子改変B細胞の前記集団のうち少なくとも1個の遺伝子改変B細胞が、骨髄、腸、筋肉、脾臓、腎臓、心臓、肝臓、肺および脳からなる群より選択される1種または複数の組織へと遊走する、項目1~41のいずれか一項に記載の方法。(項目44)
前記被験体に投与される遺伝子改変B細胞の前記集団のうち少なくとも1個の遺伝子改変B細胞が、前記被験体の骨髄、腸、筋肉、脾臓、腎臓、心臓、肝臓、肺および脳へと遊走する、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記遺伝子改変B細胞によって産生される前記治療剤が、イズロニダーゼ(IDUA)である、項目1~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記被験体への前記遺伝子改変B細胞の前記投与が、前記被験体の多様な組織におけるグリコサミノグリカン(GAG)の低下をもたらす、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記被験体への前記遺伝子改変B細胞の前記投与が、骨髄、腸、筋肉、脾臓、腎臓、心臓、肝臓、肺および脳からなる群より選択される前記被験体の1種または複数の組織におけるGAGの低下をもたらす、項目45に記載の方法。
(項目48)
前記被験体への前記遺伝子改変B細胞の前記投与が、前記被験体の骨髄、腸、筋肉、脾臓、腎臓、心臓、肝臓、肺および脳におけるGAGの低下をもたらす、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記被験体が、ムコ多糖症I型(MPS I)を有する、項目1~48のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記遺伝子改変B細胞の前記投与が、前記被験体のMPS Iを処置する、項目49に記載の方法。
(項目51)
in vivoで複数の組織に治療剤を送達するための方法であって、2またはそれよりも多い用量の遺伝子改変B細胞を被験体に投与するステップを含む、方法。
(項目52)
被験体におけるMPS Iを処置するための方法であって、2またはそれよりも多い逐次用量の、IDUAを産生するように遺伝子改変されたB細胞を、MPS Iを有する前記被験体に投与するステップを含む、方法。
(項目53)
MPS Iを有する被験体におけるグリコサミノグリカン(GAG)の量を低下させるための方法であって、2またはそれよりも多い逐次用量の、IDUAを産生するように遺伝子改変されたB細胞を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
(項目54)
pKT2/EEK-IDUA-DHFR二機能性導入遺伝子を含む改変B細胞。
(項目55)
in vivoで1種または複数の組織に治療剤を送達するための方法であって、1または複数用量の遺伝子改変B細胞を被験体に投与するステップを含み、前記遺伝子改変B細胞が遊走性である、方法。
(項目56)
前記B細胞の少なくとも約20%が、CXCL12を使用した走化性アッセイにおいて遊走する、項目55に記載の方法。
(項目57)
前記B細胞の少なくとも約40%、少なくとも約45%または少なくとも約50%が、CXCL12を使用した走化性アッセイにおいて遊走する、項目55に記載の方法。
(項目58)
前記B細胞の少なくとも約20%が、CXCL13を使用した走化性アッセイにおいて遊走する、項目55~57のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
前記B細胞の少なくとも約40%、少なくとも約45%または少なくとも約50%が、CXCL13を使用した走化性アッセイにおいて遊走する、項目55~58のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
前記B細胞の少なくとも約40%が、CXCL12を使用した走化性アッセイにおいて遊走し、前記B細胞の少なくとも約40%が、CXCL13を使用した走化性アッセイにおいて遊走する、項目55に記載の方法。
(項目61)
前記改変B細胞が、前記治療剤を発現するように遺伝子操作される、項目55~60のいずれか一項に記載の方法。
(項目62)
前記改変B細胞が、前記治療剤を分泌するように遺伝子操作される、項目55~61のいずれか一項に記載の方法。
(項目63)
前記遺伝子改変B細胞が、前記B細胞が操作後約7日間未満にわたり培養下に置かれたときに投与される、項目55に記載の方法。
(項目64)
前記遺伝子改変B細胞が、前記B細胞が4~9日間培養下に置かれたときに投与される、項目55に記載の方法。
(項目65)
前記遺伝子改変B細胞が、前記B細胞が操作後5、6または7日間培養下に置かれた後に投与される、項目55に記載の方法。
(項目66)
前記治療剤が、IDUAである、項目55~65のいずれか一項に記載の方法。
(項目67)
前記治療剤が、FIX、LPLまたはLCATである、項目55~65のいずれか一項に記載の方法。
(項目68)
少なくとも2用量の前記改変B細胞を投与するステップを含む、項目55~67のいずれか一項に記載の方法。
(項目69)
前記投与ステップが、静脈内注射を含む、項目55~68のいずれか一項に記載の方法。
(項目70)
治療剤の相乗的in vivo産生を可能にするように遺伝子改変B細胞を被験体に投与する方法であって、前記治療剤の最大in vivo産生を誘導するための、前記改変B細胞の最適な単回用量濃度を決定するステップと、前記改変B細胞の前記最適な単回用量濃度を減少させて、前記改変B細胞の最適に満たない単回用量濃度を得るステップと、2またはそれよりも多い用量の前記最適に満たない単回用量濃度の前記改変B細胞を前記被験体に投与するステップとを含む、方法。
(項目71)
前記改変B細胞の最適な単回用量濃度が決定されるように、前記改変B細胞の複数の単回投薬量が検査される、項目70に記載の方法。
(項目72)
改変B細胞の単回用量濃度で存在する改変B細胞の前記投薬量の増加が、前記治療剤の産生の線形増加をもたらす、項目71に記載の方法。
(項目73)
最適投薬量が見つかるように、前記改変B細胞の複数の最適に満たない単回用量濃度が検査され、得られた投薬量が、より低い投薬量の場合よりも、線形を超える増加をもたらす、項目70に記載の方法。
(項目74)
前記最適に満たない単回用量濃度が、前記最適な単回用量濃度の用量の2分の1または3分の1である、項目70に記載の方法。
(項目75)
前記最適に満たない単回用量濃度が、前記最適な単回用量濃度の用量の3分の1未満である、項目70に記載の方法。
(項目76)
前記被験体への2またはそれよりも多い用量の前記最適に満たない単回用量濃度の前記改変B細胞の投与によって得られる、前記治療剤の前記相乗的in vivo産生が、B細胞産物の静脈内注射によって得られる、項目70~75のいずれか一項に記載の方法。(項目77)
前記B細胞が、前記治療剤を発現するように操作される、項目70~76のいずれか一項に記載の方法。
(項目78)
前記改変B細胞が、前記治療剤を分泌するように遺伝子操作される、項目77に記載の方法。
(項目79)
前記治療剤が、IDUAである、項目70~78のいずれか一項に記載の方法。
(項目80)
前記治療剤が、FIX、LPLまたはLCATである、項目70~78のいずれか一項に記載の方法。
(項目81)
治療剤を産生するように操作された遺伝子改変B細胞。
(項目82)
前記遺伝子改変B細胞が投与される被験体に対して自家である、項目81に記載の遺伝子改変B細胞。
(項目83)
前記遺伝子改変B細胞が投与される被験体に対して同種異系である、項目81に記載の遺伝子改変B細胞。
(項目84)
前記被験体が、ヒトである、項目82または83に記載の遺伝子改変B細胞。
(項目85)
前記治療剤が、タンパク質、ポリヌクレオチドまたはDNAコード小分子である、項目81に記載の遺伝子改変B細胞。
(項目86)
前記タンパク質が、酵素、抗体もしくはその抗原結合性断片、融合タンパク質、細胞表面受容体、分泌タンパク質、シグナル伝達分子、抗原性断片、凝固因子、または接着分子である、項目85に記載の遺伝子改変B細胞。
(項目87)
前記治療剤が、IDUAである、項目81に記載の遺伝子改変B細胞。
(項目88)
前記治療剤が、FIX、LPLまたはLCATである、項目81に記載の遺伝子改変B細胞。
(項目89)
CD20-、CD38-かつCD138-である、項目81に記載の遺伝子改変B細胞。
(項目90)
CD20-、CD38+かつCD138+である、項目81に記載の遺伝子改変B細胞。
(項目91)
CD20-、CD38+かつCD138-である、項目81に記載の遺伝子改変B細胞。
(項目92)
治療剤を産生するように操作された遺伝子改変B細胞の集団を含む組成物であって、前記遺伝子改変B細胞が最適な遊走能にあるものである、組成物。
(項目93)
前記治療剤が、IDUAである、項目92に記載の組成物。
(項目94)
前記治療剤が、FIX、LPLまたはLCATである、項目92に記載の組成物。
(項目95)
治療剤を産生するように操作された遺伝子改変B細胞の集団を含む組成物であって、前記組成物における前記遺伝子改変B細胞が、顕著な量の炎症性サイトカインを産生しない時点で培養物から収集される、組成物。
(項目96)
前記遺伝子改変B細胞が、前記遺伝子改変B細胞が投与される被験体に対して自家である、項目92~95のいずれか一項に記載の組成物。
(項目97)
前記遺伝子改変B細胞が、前記遺伝子改変B細胞が投与される被験体に対して同種異系である、項目92~95のいずれか一項に記載の組成物。
(項目98)
前記被験体が、ヒトである、項目96~97のいずれか一項に記載の組成物。
(項目99)
前記治療剤が、タンパク質、ポリヌクレオチドまたはDNAコード小分子である、項目92または95に記載の組成物。
(項目100)
前記タンパク質が、酵素、抗体もしくはその抗原結合性断片、融合タンパク質、細胞表面受容体、分泌タンパク質、シグナル伝達分子、抗原性断片、凝固因子、または接着分子である、項目99に記載の組成物。
(項目101)
前記治療剤が、IDUAである、項目92~100のいずれか一項に記載の組成物。
(項目102)
前記治療剤が、FIX、LPLまたはLCATである、項目92~100のいずれか一項に記載の組成物。
(項目103)
前記遺伝子改変B細胞が、CD20-、CD38-かつCD138-である、項目92~102のいずれか一項に記載の組成物。
(項目104)
前記遺伝子改変B細胞が、CD20-、CD38+かつCD138+である、項目92~102のいずれか一項に記載の組成物。
(項目105)
前記遺伝子改変B細胞が、CD20-、CD38+かつCD138-である、項目92~102のいずれか一項に記載の組成物。
(項目106)
前記遺伝子改変B細胞が、前記B細胞において前記治療剤を発現するようにスリーピングビューティートランスポゾンを使用して調製された、項目92~105のいずれか一項に記載の組成物。
(項目107)
前記遺伝子改変B細胞が、前記B細胞において前記治療剤を発現するように組換えウイルスベクターを使用して調製された、項目92~105のいずれか一項に記載の組成物。(項目108)
前記組換えウイルスベクターが、組換えレトロウイルス、組換えレンチウイルス、組換えアデノウイルスまたは組換えアデノ随伴ウイルスをコードする、項目107に記載の組成物。
(項目109)
前記遺伝子改変B細胞が、前記B細胞のゲノムへの、前記治療剤をコードするポリヌクレオチド配列の標的化組込みによって調製された、項目92~105および106~108のいずれか一項に記載の組成物。
(項目110)
前記標的化組込みが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ媒介性遺伝子組込み、CRISPR/CAS9媒介性遺伝子組込み、TALE-ヌクレアーゼ媒介性遺伝子組込みまたはメガヌクレアーゼ媒介性遺伝子組込みを含む、項目109に記載の組成物。
(項目111)
前記ポリヌクレオチドの前記標的化組込みが、相同組換えにより起こった、項目110に記載の組成物。
(項目112)
前記標的化組込みが、標的DNA部位においてDNA切断を誘導することができるヌクレアーゼのウイルスベクター媒介性送達を含む、項目109に記載の組成物。
(項目113)
前記ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CAS9ヌクレアーゼ、TALE-ヌクレアーゼまたはメガヌクレアーゼである、項目112に記載の組成物。
(項目114)
前記遺伝子改変B細胞が、配列番号1と同一である配列を有するポリヌクレオチドを含む、項目92~113のいずれか一項に記載の組成物。
(項目115)
前記遺伝子改変B細胞が、配列番号1と少なくとも約85%同一である、または配列番号1と少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは99%超同一である配列を有するポリヌクレオチドを含む、項目92~113のいずれか一項に記載の組成物。
(項目116)
前記遺伝子改変B細胞が、培養後2日目または3日目に操作される、項目92~115のいずれか一項に記載の組成物。
(項目117)
前記遺伝子改変B細胞が、エレクトロポレーションを含む方法を使用して操作される、項目116に記載の組成物。
(項目118)
前記遺伝子改変B細胞が、操作後の培養における4日目、5日目、6日目または7日目に、被験体への投与のために収集される、項目92~117のいずれか一項に記載の組成物。
(項目119)
前記遺伝子改変B細胞が、操作後の培養における8日目またはそれよりも後に、被験体への投与のために収集される、項目92~117のいずれか一項に記載の組成物。
(項目120)
前記遺伝子改変B細胞が、操作後の培養における10日目またはそれよりも前に、被験体への投与のために収集される、項目92~119のいずれか一項に記載の組成物。
(項目121)
収集された前記遺伝子改変B細胞が、顕著なレベルの炎症性サイトカインを産生しない、項目92~120のいずれか一項に記載の組成物。
(項目122)
前記遺伝子改変B細胞が、顕著なレベルの炎症性サイトカインを産生しないことが決定された培養中の時点で収集される、項目92~121のいずれか一項に記載の組成物。
(項目123)
前記遺伝子改変B細胞が、操作前および後の培養期間全体にわたって、IL-2、IL-4、IL-10、IL-15、IL-31および多量体化CD40リガンドのそれぞれを含む培養系において育成される、項目92~122のいずれか一項に記載の組成物。
(項目124)
前記多量体化CD40リガンドが、抗his抗体を使用して多量体化された、HISタグ付きCD40リガンドである、項目123に記載の組成物。
(項目125)
前記遺伝子改変B細胞が、前記被験体への投与の前に拡大増殖される、項目92~124のいずれか一項に記載の組成物。
(項目126)
拡大増殖された遺伝子改変B細胞の最終集団が、高い程度のポリクロナリティーを示す、項目125に記載の組成物。
(項目127)
拡大増殖された遺伝子改変B細胞の前記最終集団におけるあらゆる特定のB細胞クローンが、総B細胞集団の0.2%未満を構成する、項目126に記載の組成物。
(項目128)
拡大増殖された遺伝子改変B細胞の前記最終集団におけるあらゆる特定のB細胞クローンが、総B細胞集団の0.05%未満を構成する、項目126に記載の組成物。
(項目129)
前記遺伝子改変B細胞が、メトトレキセートに対して増強された耐性を有するヒトDHFR遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含む、項目92~128のいずれか一項に記載の組成物。
(項目130)
メトトレキセートに対して増強された耐性を有する前記ヒトDHFR遺伝子が、アミノ酸22におけるロイシンからチロシンへの置換変異、およびアミノ酸31におけるフェニルアラニンからセリンへの置換変異を含有する、項目129に記載の組成物。
(項目131)
前記遺伝子改変B細胞が、投与のための収集の前にメトトレキセートで処置された、項目92~130のいずれか一項に記載の組成物。
(項目132)
メトトレキセートによる前記処置が、100nM~300nMの間である、項目131に記載の組成物。
(項目133)
メトトレキセートによる前記処置が、200nMである、項目132に記載の組成物。(項目134)
前記組成物に含まれる前記遺伝子改変B細胞が、被験体に投与されると、多様な組織へと遊走する、項目92~133のいずれか一項に記載の組成物。
(項目135)
遺伝子改変B細胞の前記組成物が、被験体に投与されると、前記組成物に含まれる遺伝子改変B細胞の前記集団のうち少なくとも1個の遺伝子改変B細胞が、骨髄、腸、筋肉、脾臓、腎臓、心臓、肝臓、肺および脳からなる群より選択される1種または複数の組織へと遊走する、項目92~133のいずれか一項に記載の組成物。
(項目136)
遺伝子改変B細胞の前記組成物が、被験体に投与されると、前記組成物に含まれる遺伝子改変B細胞の前記集団のうち少なくとも1個の遺伝子改変B細胞が、前記被験体の骨髄、腸、筋肉、脾臓、腎臓、心臓、肝臓、肺および脳へと遊走する、項目135に記載の組成物。
(項目137)
前記遺伝子改変B細胞によって産生される前記治療剤が、イズロニダーゼ(IDUA)である、項目92~136のいずれか一項に記載の組成物。
(項目138)
被験体への前記遺伝子改変B細胞を含む前記組成物の投与が、前記被験体の多様な組織におけるグリコサミノグリカン(GAG)の低下をもたらす、項目137に記載の組成物。
(項目139)
被験体への前記遺伝子改変B細胞を含む前記組成物の投与が、骨髄、腸、筋肉、脾臓、腎臓、心臓、肝臓、肺および脳からなる群より選択される前記被験体の1種または複数の組織におけるGAGの低下をもたらす、項目137に記載の組成物。
(項目140)
被験体への前記遺伝子改変B細胞を含む前記組成物の投与が、前記被験体の骨髄、腸、筋肉、脾臓、腎臓、心臓、肝臓、肺および脳におけるGAGの低下をもたらす、項目137に記載の方法。
(項目141)
ムコ多糖症I型(MPS I)を有する被験体に投与される、項目92~140のいずれか一項に記載の組成物。
(項目142)
前記遺伝子改変B細胞を含む前記組成物の投与が、前記被験体のMPS Iを処置する、項目141に記載の組成物。
(項目143)
前記遺伝子改変B細胞によって産生される前記治療剤が、FIX、LPLおよびLCATから選択される、項目92~136のいずれか一項に記載の組成物。
(項目144)
治療剤のin vivo産生のために遺伝子改変B細胞を被験体に投与する方法であって、最適な単回用量の遺伝子改変B細胞を被験体に投与するステップを含む、方法。
(項目145)
前記被験体が、ヒトである、項目144に記載の方法。
(項目146)
前記最適単回用量が、ヒト等価量の3×107個の改変B細胞/Kgである、項目145に記載の方法。
(項目147)
前記用量が、1.5×109個の遺伝子改変B細胞/Kgである、項目144~146のいずれか一項に記載の方法。
(項目148)
前記最適な単回用量の遺伝子改変B細胞が、最適投薬量の3分の2またはそれに満たない投薬量と比較して、治療薬の注入細胞1個あたりのレベルで線形を超える増加をもたらす、項目144~147のいずれか一項に記載の方法。
(項目149)
前記最適な単回用量の遺伝子改変B細胞が、単回B細胞注入の状況において、細胞1個あたりの、治療薬の最大in vivoレベルをもたらす、項目144~148のいずれか一項に記載の方法。
(項目150)
前記薬剤が、IDUAである、項目144~149のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、ヒトIDUAの転位および発現のための、スリーピングビューティー(Sleeping Beauty)(SB)トランスポゾンおよびトランスポサーゼ構築物/マップの図表である。IDUAは、EEKプロモーターによって調節される(実施例1を参照)。EEKの上流にEF1aプロモーターを取り込む双方向性プロモーターは、反対方向における薬物耐性ヒトL22Y-F31Sジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)の転写を調節する。CMV調節されるSB100xは、SBトランスポサーゼ活性をもたらす。キャッピングされポリアデニル化されたSB100xコードmRNAは、TriLinkから提供される、in vitro転写によって生成された。矢印:転写方向。色の濃い三角形が入った緑色のボックスは、T2 SB逆方向反復/直列反復(IR/DR)配列である。pA、ポリアデニル化シグナル。
図1Aは、構築物設計を示す。
図1Bは、L22Y;F31S変異を有するヒトDHFRを含む、
図1Aに示すpKT2/EEK-IDUA-DHFR構築物のプラスミドマップを示す。
【0018】
【
図2】
図2は、初代ヒトB細胞におけるヒトIDUAのSB媒介性発現を示す。ヒトCD19+初代B細胞は、2日間培養し、次いでLonza 4Dシステムを使用して、トランスポサーゼ供給源としてpKT2/EEK-IDUAおよびpCMV-SB100xをエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後8日目の細胞ライセートをIDUA酵素活性に関してアッセイした。
【0019】
【
図3】
図3は、ラージスケールB細胞拡大増殖(expansion)における、IDUA+細胞のMTX選択的濃縮を示す一連のヒストグラムである。2名の別々のドナー(19009および2764)由来のB細胞は、pKT2/EEK-IDUA-DHFRトランスポゾンをエレクトロポレーションし、2~4日目からMTXあり(下の2枚のヒストグラム)またはなし(上の2枚のヒストグラム)の培地においてインキュベートし、次いで総計7日間さらに拡大増殖させた。各集団由来の細胞を7日目に採取し、ヒトIDUAの細胞内染色とそれに続くフローサイトメトリーにより、%IDUA陽性細胞に関してアッセイした(細胞計数/IDUA)。
【0020】
【
図4】
図4は、IDUA-DHFR転位B細胞を注入されたNSGマウスにおけるイズロニダーゼ発現を示す。NSG IDUA+マウスに、-30および-4日目にCD4+T細胞をi.p.注入し、次いで0日目に、i.p.またはi.v.注射のいずれかにより、MTXにおいて選択された10
7個のpKT2/EEK-IDUA-DHFR B細胞を注入した。対照として、一部のマウスに、i.p.注射により、GFPを発現するB細胞を注入した。示されている時点において、血漿試料をIDUAに関してアッセイした。マウス1~8は、IDUA発現B細胞のi.p.注入を受けた。マウス9、10、12および42は、IDUA発現B細胞のi.v.注入を受けた。マウス43および48は、GFP発現B細胞のi.p.注入を受けた。
【0021】
【
図5】
図5は、MPS Iのマウスモデルを使用した、血漿中に存在するイズロニダーゼ(IDUA)の量を示す。マウスは、凡例の上から下に、CD4+メモリーT細胞の存在下での3×10
6個のIDUAを形質導入されたB細胞(IDUA+B細胞)、CD4+メモリーT細胞の存在下での1×10
7個のIDUA+B細胞、CD4+メモリーT細胞の存在下での3×10
7個のIDUA+B細胞、CD4+メモリーT細胞のみ、または細胞なしを0日目に受け、投与後38日目まで、血清におけるIDUA酵素活性レベルを測定した。
【0022】
【
図6】
図6は、多回用量の、IDUAを形質導入されたB細胞(IDUA+B細胞)による、MPS Iのマウスモデルにおける血漿中に存在するIDUAの量を示す。ヒトB細胞は、正常ドナーのアフェレーシス産物からCD19濃縮し、拡大増殖プロセスにおいてpKT2/EEK-IDUAトランスポゾンプラスSB100xコードmRNAをエレクトロポレーションした。CD4+T細胞は、同じドナーから単離し、IDUA転位B細胞の注入の1週間前に、NSG MPS I動物に腹腔内(i.p)注入した。対照群は、無処置NSG MPS Iマウス(「B細胞なし」)、およびIDUA+B細胞のみをi.v.注入されたNSG MPS Iマウス(すなわち、CD4+T細胞なし)を含んだ。自家CD4+T細胞で前処置されたNSG MPS Iマウスはその後、0、21および42日目に(矢印)、i.v.またはi.p.のいずれかでIDUA+B細胞を注入した。IDUA酵素活性レベルは、56日目まで血清において測定した。N=4。
【0023】
【
図7】
図7は、
図6に記載されている同じNSG MPS Iマウス由来の血漿IgGを示す。N=4。
【0024】
【
図8】
図8は、MPS Iマウス由来の様々な組織におけるIDUA活性を示す。MPS Iマウスに、0、21および42日目に、CD4+T細胞(または対照として細胞なし)の存在下で、3投薬量の1×10
7個のIDUAを産生するように操作されたB細胞(または対照として細胞なし)を与え、第1のB細胞注入後60日目に、示されている臓器におけるIDUA酵素活性レベルを測定した。N=4。
【0025】
【
図9】
図9は、MPS Iマウス由来の様々な組織におけるグリコサミノグリカン(GAG)の量を示す。MPS Iマウスに、0、21および42日目に、0日目におけるCD4+T細胞(または対照として細胞なし)の存在下で、3投薬量の1×10
7個のIDUAを産生するように操作されたB細胞(または対照として細胞なし)を与え、第1のB細胞注入後60日目に、示されている臓器におけるGAGレベルを測定した。その上、赤色の水平バーは、マウスの群のそれぞれの血漿における平均IDUA酵素活性を示す。N=4。
【0026】
【
図10】
図10は、IDUA活性が、2用量の2×10
7個のIDUAを産生するように操作されたB細胞で処置されたMPSI NSGマウス由来の血漿において長期検出可能であることを示す。CD4+T細胞の投与の1週間後に第1の投薬量のB細胞を与え、第2の投薬量のB細胞は、第1のB細胞投薬量の30日後に投与した(IDUA+B細胞)。右側にある色分けされた凡例は、マウス群を示す。X軸は、週での時間を示す。Y軸は、マウス血漿試料において検出されたIDUA酵素活性の量を示す。
【0027】
【
図11】
図11は、
図10のものと同じプロトコールに従って、2用量の2×10
7個のIDUAを産生するように操作されたB細胞で処置されたMPSI NSGマウスにおける複数の組織に存在するIDUA活性の量を示す。右側にある色分けされた凡例は、マウス群および時点を示す。X軸は、調査されている組織を列挙し、Y軸は、検出されたIDUA酵素活性のレベルを列挙する。
【0028】
【
図12】
図12は、
図10および
図11のものと同じプロトコールに従って、2用量の2×10
7個のIDUAを産生するように操作されたB細胞で処置されたMPS I NSGマウス由来の様々な組織におけるグリコサミノグリカン(GAG)の量を示す。B細胞産物による処置は、複数の組織におけるGAGのレベルの長期低下をもたらす。右側にある色分けされた凡例は、GAGを評価した臓器を示す。X軸は、マウス群および細胞投薬量を示す。Y軸は、検出されたGAGの量を示す。
【0029】
【
図13A】
図13は、IDUAを発現するように操作されたB細胞の、2チャンバーTranswellアッセイにおける化学誘引物質に向けた遊走を示す。
図13Aは、化学誘引物質CXCL12に向けた操作されたB細胞の0日目遊走を示す。
図13Bは、操作後の培養における4、5、6、7、8または9日後の、化学誘引物質CXCL12に向けた操作されたB細胞の遊走を示す。
図13Cは、操作後の培養における4、5、6、7、8または9日後の、化学誘引物質CXCL13に向けた操作されたB細胞の遊走を示す。
図13Bおよび
図13Cの両方について、ケモカインなし対照は、4日目の時点でのみ実行されたことに留意されたい。
図13Dは、
図13A~
図13Cにおけるデータの生成に利用したTranswellアッセイの模式図を示す。
【
図13B】
図13は、IDUAを発現するように操作されたB細胞の、2チャンバーTranswellアッセイにおける化学誘引物質に向けた遊走を示す。
図13Aは、化学誘引物質CXCL12に向けた操作されたB細胞の0日目遊走を示す。
図13Bは、操作後の培養における4、5、6、7、8または9日後の、化学誘引物質CXCL12に向けた操作されたB細胞の遊走を示す。
図13Cは、操作後の培養における4、5、6、7、8または9日後の、化学誘引物質CXCL13に向けた操作されたB細胞の遊走を示す。
図13Bおよび
図13Cの両方について、ケモカインなし対照は、4日目の時点でのみ実行されたことに留意されたい。
図13Dは、
図13A~
図13Cにおけるデータの生成に利用したTranswellアッセイの模式図を示す。
【
図13C】
図13は、IDUAを発現するように操作されたB細胞の、2チャンバーTranswellアッセイにおける化学誘引物質に向けた遊走を示す。
図13Aは、化学誘引物質CXCL12に向けた操作されたB細胞の0日目遊走を示す。
図13Bは、操作後の培養における4、5、6、7、8または9日後の、化学誘引物質CXCL12に向けた操作されたB細胞の遊走を示す。
図13Cは、操作後の培養における4、5、6、7、8または9日後の、化学誘引物質CXCL13に向けた操作されたB細胞の遊走を示す。
図13Bおよび
図13Cの両方について、ケモカインなし対照は、4日目の時点でのみ実行されたことに留意されたい。
図13Dは、
図13A~
図13Cにおけるデータの生成に利用したTranswellアッセイの模式図を示す。
【
図13D】
図13は、IDUAを発現するように操作されたB細胞の、2チャンバーTranswellアッセイにおける化学誘引物質に向けた遊走を示す。
図13Aは、化学誘引物質CXCL12に向けた操作されたB細胞の0日目遊走を示す。
図13Bは、操作後の培養における4、5、6、7、8または9日後の、化学誘引物質CXCL12に向けた操作されたB細胞の遊走を示す。
図13Cは、操作後の培養における4、5、6、7、8または9日後の、化学誘引物質CXCL13に向けた操作されたB細胞の遊走を示す。
図13Bおよび
図13Cの両方について、ケモカインなし対照は、4日目の時点でのみ実行されたことに留意されたい。
図13Dは、
図13A~
図13Cにおけるデータの生成に利用したTranswellアッセイの模式図を示す。
【0030】
【
図14】
図14は、IDUAを発現するように操作されたB細胞のクロナリティーのディープシークエンシング解析の概要データを示す。
【0031】
【
図15A】
図15は、IDUAを産生するように操作されたB細胞による炎症性サイトカイン産生のルミネックス(Luminex)解析を示す。
図15Aは、2日目(D2)、7日目(D7)、ならびにIL6(50ng/ml)ありおよびなしの0日目(D0)基本培地における、IL6、IFNアルファおよびIFNガンマ産生を示す。
図15Bは、D2、D7およびD0基本培地における、sFAS、TNFRp75、BAFF、HGFおよびIL5産生を示す。
【
図15B】
図15は、IDUAを産生するように操作されたB細胞による炎症性サイトカイン産生のルミネックス(Luminex)解析を示す。
図15Aは、2日目(D2)、7日目(D7)、ならびにIL6(50ng/ml)ありおよびなしの0日目(D0)基本培地における、IL6、IFNアルファおよびIFNガンマ産生を示す。
図15Bは、D2、D7およびD0基本培地における、sFAS、TNFRp75、BAFF、HGFおよびIL5産生を示す。
【0032】
【
図16A】
図16は、本発明に従って操作されたヒトB細胞における、ヒトLCAT(レシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ)、ヒトLPL(リポタンパク質リパーゼ)およびヒトFIX(凝固第IX因子)の発現を示す。
図16Aは、操作された形質芽球/形質細胞におけるLCAT活性を示す。
図16Bは、操作された形質芽球/形質細胞におけるLPL活性を示す。
図16Cは、操作された初代B細胞における、ELISAによるFIXタンパク質発現を示す。
【
図16B】
図16は、本発明に従って操作されたヒトB細胞における、ヒトLCAT(レシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ)、ヒトLPL(リポタンパク質リパーゼ)およびヒトFIX(凝固第IX因子)の発現を示す。
図16Aは、操作された形質芽球/形質細胞におけるLCAT活性を示す。
図16Bは、操作された形質芽球/形質細胞におけるLPL活性を示す。
図16Cは、操作された初代B細胞における、ELISAによるFIXタンパク質発現を示す。
【
図16C】
図16は、本発明に従って操作されたヒトB細胞における、ヒトLCAT(レシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ)、ヒトLPL(リポタンパク質リパーゼ)およびヒトFIX(凝固第IX因子)の発現を示す。
図16Aは、操作された形質芽球/形質細胞におけるLCAT活性を示す。
図16Bは、操作された形質芽球/形質細胞におけるLPL活性を示す。
図16Cは、操作された初代B細胞における、ELISAによるFIXタンパク質発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施は、それとは反対のことが特に指示されていなければ、当業者の技能範囲内で、分子生物学、組換えDNA技法、タンパク質発現およびタンパク質/ペプチド/炭水化物化学の従来方法を用いることになるであろうが、これらの多くについては、説明目的で後述する。斯かる技法は、文献中で十分に説明されている。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(第3版、2000年);DNA Cloning: A Practical Approach、第I&II巻(D. Glover編);Oligonucleotide Synthesis(N. Gait編、1984年);Oligonucleotide Synthesis: Methods and Applications(P. Herdewijn編、2004年);Nucleic Acid Hybridization(B. HamesおよびS. Higgins編、1985年);Nucleic Acid Hybridization: Modern Applications(BuzdinおよびLukyanov編、2009年);Transcription and Translation(B. HamesおよびS. Higgins編、1984年);Animal Cell Culture(R. Freshney編、1986年);Freshney, R.I.(2005年)Culture of Animal Cells, a Manual of Basic Technique、第5版、Hoboken NJ, John Wiley & Sons;B. Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning(第3版、2010年);Farrell, R.、RNA Methodologies: A Laboratory Guide for Isolation and Characterization(第3版、2005年)を参照されたい。上に記述されている刊行物は、本願の出願日に先立つそれらの開示のために単に提供されている。本明細書におけるいかなる記述も、本発明が、先行発明のために斯かる開示に先行する権利がないことの承認として解釈するべきではない。
【0034】
定義および略語
他に定義されていなければ、本明細書で使用されているあらゆる技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意義を有する。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されている場合、それとは反対のことが指定されていない限り、次の用語は、示されている意義を有する。本明細書に関して、本明細書で定義されている用語の定義が、取り込まれた参考文献においてこの同じ用語に与えられている定義とは異なる場合は常に、本明細書で明確に定義されている定義が、その用語の正確な定義である。
【0035】
単語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、特に注意されていなければ、1つまたは複数を表示する。
【0036】
「約」とは、参照分量(quantity)、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さに対して、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1%ほど変動する分量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さを意味する。用語「約」と併せて使用されている数値の文脈で記述されるいずれかの実施形態では、約という用語が省略され得ることが特に企図される。
【0037】
「組成物」は、活性な薬剤および担体、不活性または活性な、例えば、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含むことができる。特定の実施形態では、組成物は、用いられている投薬量または濃度において、無菌である、エンドトキシンを実質的に含まない、またはレシピエントにとって無毒性である。
【0038】
文脈がそれ以外のことを要求しない限り、本明細書および特許請求の範囲を通じて、単語「を含む(comprise)」、ならびに「を含み(comprises)」および「を含んでいる(comprising)」等のその変化形は、オープンかつ包括的な意味合いで、すなわち、「が挙げられるがこれらに限定されない」として解釈するべきである。
【0039】
「からなる」とは、語句「からなる」の前に来るものが何であれ、「を含みこれらに限定される」を意味する。よって、語句「からなる」は、列挙されている要素が、必要または必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。「から本質的になる」とは、この語句の前に列挙されているいずれかの要素を含むことを意味し、列挙されている要素について本開示に指定されている働きまたは作用に干渉も寄与もしない他の要素に限定される。よって、語句「から本質的になる」は、列挙されている要素が、要求されるまたは強制的であるが、他の要素は、必要に応じたものであり、列挙されている要素の働きまたは作用に影響を与えるか否かに応じて存在しても存在しなくてもよいことを示す。
【0040】
「生物学的活性」または「生物活性」の本明細書を通じた参照は、本明細書で企図されるいずれかの化合物、薬剤、ポリペプチド、コンジュゲート、医薬組成物の投与の結果として、in vitroアッセイにおいてまたは細胞、組織、臓器もしくは生物(例えば、動物または哺乳動物またはヒト)において誘導されるいずれかの応答を指す。生物学的活性は、アゴニスト作用またはアンタゴニスト作用を指すことができる。生物学的活性は、有益な効果となることができる;または生物学的活性は、有益でない、すなわち、毒性となり得る。一部の実施形態では、生物学的活性は、生きている被験体、例えば、ヒト等の哺乳動物における、薬物または医薬組成物が有するプラスまたはマイナスの効果を指すであろう。したがって、用語「生物学的に活性」は、本明細書に記載されている通り、生物学的活性を保有するいずれかの化合物を記載することを意味する。生物学的活性は、当業者にとって現在公知のいずれか適切な手段によって評価することができる。斯かるアッセイは、定性的または定量的となることができる。当業者であれば、異なるポリペプチドの活性を評価するために異なるアッセイを用いることの必要を容易に認めるであろう;平均的な研究者にとって慣例的な課題である。斯かるアッセイは多くの場合、最適化を殆ど要求することなく実験室設定において簡単に実行され、大抵の場合、多くの実験室に共通している様々な技術を使用して、広範囲のポリペプチドの生物学的活性の単純で、信頼でき、かつ再現性がある読み取りを提供する商業的キットを利用できる。斯かるキットが利用できない場合、通常技能を有する研究者であれば、過度の実験法を用いずに、標的ポリペプチドのための組織内の生物活性アッセイを簡単に設計および最適化することができる;その理由として、これが科学的プロセスの慣例的な側面であることが挙げられる。
【0041】
用語「例えば」の参照は、「例えば、次のものが挙げられるがこれらに限定されない」を意味するように意図されるため、その後に続くものが何であれ、特定の実施形態の単なる例であることを理解するべきであるが、決して、限定的な例として解釈するべきではない。他に断りがなければ、「例えば」の使用は、他の実施形態が企図されており、これが本発明によって包含されることを明確に示すように意図される。
【0042】
「実施形態」または「一実施形態」または「ある実施形態」または「一部の実施形態」または「ある特定の実施形態」の本明細書を通じた参照は、実施形態に関連して記載されている特定の特色、構造または特徴が、本発明の少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。よって、本明細書を通じた様々な箇所における語句「一実施形態では」または「ある実施形態では」または「ある特定の実施形態では」の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指す訳ではない。さらに、特定の特色、構造または特徴は、1または複数の実施形態においていずれか適した様式で組み合わせることができる。
【0043】
「増加された」または「増強された」量は典型的に、「統計的に有意な」量であり、本明細書に記載されている量またはレベルの1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40もしくは50倍またはそれよりも多い(例えば、100、500、1000倍)(その間の1より大きいあらゆる整数および小数点、例えば、2.1、2.2、2.3、2.4等を含む)増加を含むことができる。同様に、「減少された」または「低下された」または「より少ない」量は典型的に、「統計的に有意な」量であり、本明細書に記載されている量またはレベルの約1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40もしくは50分の1またはそれよりも少ない(例えば、100、500、1000分の1)(その間の1より大きいあらゆる整数および小数点、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8等を含む)減少を含むことができる。
【0044】
用語「in vitro」、「ex vivo」および「in vivo」は、それらの通常の科学的意義を有するように本明細書で意図される。したがって、例えば、「in vitro」は、例えば、適切な基質、酵素、ドナーおよび必要に応じてバッファー/補因子を使用して試験管内で行われる酵素反応等、単離された細胞構成成分により起こる実験または反応を指すことを意味する。「ex vivo」は、生物から摘出されたまたは生物とは独立して繁殖された機能的な臓器または細胞を使用して実行される実験または反応を指すことを意味する。「in vivo」は、その正常でインタクトな状態で、生きている生物内で起こる実験または反応を指すことを意味する。
【0045】
「哺乳動物」は、ヒトと、実験動物および家庭用ペット(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマおよびウサギ)等の飼育動物、ならびに野生生物その他等の非飼育動物の両方とを含む。
【0046】
「必要に応じた」または「必要に応じて」は、その後に記載される事象または状況が、起こっても起こらなくてもよいこと、また、その記載が、前記事象または状況が起こる場合と起こらない場合とを含むことを意味する。
【0047】
「医薬組成物」は、化合物(例えば、治療上有用なポリペプチド)、および動物、例えば、ヒトへの化合物の送達のために本技術分野で一般に許容される媒体の製剤を指す。斯かる媒体は、したがって、いずれか薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含むことができる。
【0048】
「薬学的に有効な賦形剤」および「薬学的に有効な担体」は、当業者にとって周知であり、それらの調製のための方法もまた、当業者には容易に明らかである。斯かる組成物およびその調製のための方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版(Mack Publishing Company、1995年、本明細書に組み込む)に見出すことができる。
【0049】
用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」および「核酸」は、互換的に使用される。これらは、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドまたはこれらのアナログのいずれかである、いずれかの長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、いずれかの三次元構造を有することができ、公知または未知のいずれかの機能を行うことができる。次に、ポリヌクレオチドの非限定例を挙げる:遺伝子または遺伝子断片のコードまたは非コード領域、連鎖解析から定義される遺伝子座(単数または複数)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝状ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、いずれかの配列の単離されたDNA、いずれかの配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログ等、修飾ヌクレオチドを含むことができる。存在するのであれば、ポリマーのアセンブリの前または後に、ヌクレオチド構造に対する改変を与えることができる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成成分を含むことができる。ポリヌクレオチドは、標識構成成分とのコンジュゲーションによる等、重合後にさらに改変することができる。
【0050】
「被験体」は、本明細書において、本発明の薬剤で処置することができる、疾患もしくは症状を示すまたは疾患もしくは症状を示すリスクがあるいずれかの動物を含む。適した被験体は、実験動物(マウス、ラット、ウサギまたはモルモット等)、家畜および飼育動物またはペット(ネコまたはイヌ等)を含む。非ヒト霊長類および好ましくはヒト患者が含まれる。
【0051】
「実質的に」または「本質的に」は、豊富なまたは相当な量、分量、サイズ;殆ど全体的にまたは完全に;例えば、ある所与の分量の95%またはそれよりも多いことを意味する。
【0052】
「治療剤」は、被験体(例えば、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒト)に治療有効量で投与されると、下に定義される疾患または状態の処置をもたらすことができる、いずれかの化合物を指す。
【0053】
「治療有効量」または「治療有効用量」は、被験体(例えば、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒト)に投与されると、動物における疾患または状態の、下に定義される通りの処置をもたらすのに十分な、本発明の化合物の量を指す。「治療有効量」を構成する本発明の化合物の量は、化合物、状態およびその重症度、投与様式、ならびに処置されるべき動物の年齢に応じて変動するであろうが、当業者が自身の知識および本開示を考慮に入れることによって慣例的に決定することができる。
【0054】
「処置すること」または「処置」は、本明細書において、目的の疾患または状態を有する被験体、好ましくは、ヒトにおける目的の疾患または状態の処置を網羅し、(i)特に、被験体が、状態に対する素因を有するが、当該状態であると未だ診断されていない場合、被験体における疾患もしくは状態が起こることを予防もしくは阻害すること;(ii)疾患もしくは状態を阻害すること、すなわち、その発症を抑止すること;(iii)疾患もしくは状態を軽減すること、すなわち、疾患もしくは状態の退縮を引き起こすこと;または(iv)疾患もしくは状態に起因する症状を軽減することを含む。本明細書において、用語「疾患」、「障害」および「状態」は、互換的に使用することができる、または特定の疾病、傷害または状態は、公知の原因となる病原体を持たない場合がある(病因が未だ解明されていないように)という点で異なる場合があり、したがって、これは、傷害または疾患として未だ認識されていないが、単に望ましくない状態または症候群として認識されており、その場合、症状の特異性がより高いまたは低いセットが臨床医によって同定されている。
【0055】
概要
本発明は、治療剤を産生するための核酸の導入により変更された、自家および/または同種異系B細胞を利用し、改変B細胞を投与する方法に関する。一部の実施形態では、用語「操作B細胞」、「遺伝子操作B細胞」、「改変B細胞」および「遺伝子改変B細胞」は、治療剤を産生するための1種または複数の核酸(例えば、導入遺伝子)(例えば、治療用ポリペプチド等、ポリペプチドの発現を可能にする導入遺伝子)を含むように変更されたB細胞を指すように本明細書で互換的に使用されている。具体的には、改変B細胞は、単回投薬量または多回投薬量として投与することができる。予想外なことに、ある特定のB細胞投薬量が、他の投薬量と比較して、治療剤の予想されるレベルよりも優れたものを産生することが判明した。その上、驚いたことに、多用量レジメンの経過にわたって送達されるB細胞の多回投薬量の使用が、同数の細胞を含有する単回投薬量によって達成されるものよりも優れた治療剤レベルをもたらすことが判明した。その上、驚いたことに、改変B細胞が、化学誘引物質に向けた最適な遊走能のウィンドウ(window)を有することが判明し、その遊走能は、培養におけるある一定期間後に減退し得る。その上、操作B細胞の出発集団はIL6を産生したが、産生レベルは、培養の終わりまでにほぼバックグラウンドレベルまで減退し、検査した大部分の炎症性サイトカインは、操作B細胞によって産生されなかったことが予想外に判明した。さらに、操作B細胞の最終集団において特定のB細胞クローンが、総B細胞集団の約0.2%超を構成することが見出されなかったため、最終的な操作B細胞集団が、有意にポリクローナルであったことが示された。最後に、改変B細胞が、他のモダリティを使用した標的化が困難な肺、心臓および腸等、広範囲の組織に薬物を有効に送達することができることが発見された。
【0056】
したがって、本明細書に記載されている改変B細胞組成物を投与するための方法は、治療剤の長期in vivo送達および発現に有用である。本開示は、全般的に、産物の安全性を確実にしつつ、治療剤を産生する細胞の十分な濃縮および数、ならびにin vivoでの治療剤の十分なレベルを達成するための方法に関する。
【0057】
本明細書において、語句「長期in vivo生存」および「長期生存」は、被験体における投与後10日間またはそれよりも長い、本明細書に記載されている改変B細胞の生存を指す。長期生存は、日、週またはさらには年単位で測定することができる。一実施形態では、改変B細胞の大部分は、投与後10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50日間またはそれよりも長く、in vivoで生存する。一実施形態では、改変B細胞の大部分は、投与後2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52週間またはそれよりも長く、in vivoで生存する。別の実施形態では、改変B細胞は、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30年間またはそれよりも長く、in vivoで生存する。その上、本明細書に記載されている改変B細胞は、10日間またはそれよりも長くin vivoで生存することができるが、改変B細胞の大部分が、投与後1、2、3、4、5、6、7、8、9日間またはそれよりも長くin vivoで生存することが理解される。したがって、本明細書に記載されている改変B細胞が、短期処置(例えば、4日間)および長期処置(例えば、30日間またはそれよりも長い)方法に有用であることが企図される。
【0058】
B細胞
骨髄から離れた後に、B細胞は、抗原提示細胞(APC)として作用し、抗原を内部移行させる。抗原は、受容体媒介性エンドサイトーシスを介してB細胞によって取り入れられ、プロセシングされる。抗原は、抗原ペプチドへとプロセシングされ、MHC II分子上に負荷され、CD4+Tヘルパー細胞に対してB細胞の細胞外表面に提示される。このようなT細胞は、MHC ll/抗原分子に結合し、B細胞の活性化を引き起こす。T細胞による刺激後に、活性化されたB細胞は、より特殊化された細胞へと分化し始める。胚中心B細胞は、長寿命のメモリーB細胞または形質細胞へと分化することができる。さらに、二次免疫刺激は、追加的な形質細胞を生じるメモリーB細胞をもたらすことができる。メモリーまたは非メモリーB細胞のいずれかからの形質細胞の形成に先行して、大量の抗体を産生する形質細胞へと最終的に分化する前駆体形質芽球の形成が行われる(例えば、Trends Immunol.2009年6月;30巻(6号):277~285頁;Nature Reviews、2005年、5巻:231~242頁を参照)。形質芽球は、B細胞よりも多いが、形質細胞よりも少ない抗体を分泌する。これは、急速に分裂し、抗原を内部移行させ、T細胞に対して抗原を提示し続ける。形質芽球は、ケモカイン産生部位(例えば、骨髄内)へと遊走する能力を有し、それによって、長寿命の形質細胞へと分化することができる。最終的に、形質芽球は、形質芽球として数日間残った後に死ぬか、成熟し完全に分化した形質細胞へと変更不能に分化することができる。具体的には、形質細胞生存ニッチを含有する組織(例えば、骨髄内)へとホーミングすることができる形質芽球は、高レベルのタンパク質を数年間分泌し続けることができる、長寿命の形質細胞になるために、常在性形質細胞を置き換えることができる。
【0059】
本明細書に記載されている方法において使用されるB細胞は、汎B細胞、メモリーB細胞、形質芽球および/または形質細胞を含む。一実施形態では、改変B細胞は、メモリーB細胞である。一実施形態では、改変B細胞は、形質芽球である。一実施形態では、改変B細胞は、形質細胞である。
【0060】
終末分化した形質細胞は典型的に、CD19およびCD20等、共通汎B細胞マーカーを発現せず、比較的少ない表面抗原を発現する。形質細胞は、CD38、CD78、CD138およびインターロイキン-6受容体(IL-6R)を発現し、CD45の発現を欠くことから、例えばフローサイトメトリーによってこれらのマーカーを使用して、形質細胞を同定することができる。ナイーブB細胞はCD27-であり、メモリーB細胞はCD27+であり、形質細胞はCD27++であるため、CD27もまた、形質細胞の優れたマーカーである。メモリーB細胞サブセットが、表面IgG、IgMおよびIgDを発現することもできる一方、形質細胞は、細胞表面にこれらのマーカーを発現しない。CD38およびCD138は、形質細胞に高レベルで発現される(Wikipedia、The Free Encyclopedia.「Plasma cell」ページバージョンID:404969441;最新改訂の日付:2010年12月30日、09:54 UTC、2011年1月4日検索を参照;Jourdanら、Blood.2009年12月10日;114巻(25号):5173~81頁;Trends Immunol.2009年6月;30巻(6号):277~285頁;Nature Reviews、2005年、5巻:231~242頁;Nature Med.2010年、16巻:123~129頁;Neuberger, M. S.; Honjo, T.; Alt, Frederick W.(2004年).Molecular biology of B cells. Amsterdam: Elsevier、189~191頁;Bertil Glader; Greer, John G.; John Foerster; Rodgers, George G.; Paraskevas, Frixos(2008年).Wintrobe’s Clinical Hematology、第2巻、Set. Hagerstwon, MD:Lippincott Williams & Wilkins.、347頁;Walport, Mark; Murphy, Kenneth; Janeway, Charles; Travers, Paul J.(2008年).Janeway’s immunobiology. New York: Garland Science、387~388頁;Rawstron AC(2006年5月)「Immunophenotyping of plasma cells」Curr Protoc Cytomも参照)。
【0061】
「静止状態の」は、本明細書において、細胞が活性に増殖していない細胞状態を指す。
【0062】
「活性化された」は、本明細書において、細胞が活性に増殖している、および/または刺激に応答してサイトカインを産生している細胞状態を指す。
【0063】
用語「分化する」および「分化した」は、本明細書において、ある細胞型または状態から別の細胞型または状態への、細胞の表現型の変化を指す。例えば、形質細胞へと移行するメモリーB細胞は、分化している。
【0064】
用語「被験体」は、適応免疫応答を誘発することができる、生きている生物を含むように意図される(例えば、哺乳動物)。被験体の例として、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびこれらのトランスジェニック種が挙げられる。一実施形態では、被験体は、ヒトである。B細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、感染部位由来の組織、脾臓組織および腫瘍を含む、多数の供給源から得ることができる。好ましい実施形態では、B細胞の供給源は、PBMCである。本開示のある特定の実施形態では、本技術分野で利用できるいずれかの数のB細胞株を使用することができる。
【0065】
本明細書に記載されている方法のある特定の実施形態では、B細胞は、FICOLL(商標)(高密度溶液の調製に使用することができる、スクロースおよびエピクロロヒドリンのコポリマー)分離等、当業者に公知のいずれかの数の技法を使用して、被験体から採取された血液の単位から得ることができる。好まれる一実施形態では、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって、個体の循環血由来の細胞が得られる。アフェレーシス産物は典型的に、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球細胞を含むリンパ球、赤血球細胞および血小板を含有する。一実施形態では、アフェレーシスによって採取された細胞を洗浄して、血漿画分を除去し、その後の加工ステップのために適切なバッファーまたは培地中に細胞を置くことができる。本明細書に記載されている方法の一実施形態では、細胞は、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄される。代替の実施形態では、洗浄溶液は、カルシウムを欠き、マグネシウムを欠くことができる、または全てではないにしても多くの二価カチオンを欠くことができる。当業者であれば容易に認めるであろうが、洗浄ステップは、製造業者の指示に従って半自動「フロースルー」遠心分離機(例えば、Cobe 2991細胞プロセッサ)を使用することによる等、当業者にとって公知の方法によって達成することができる。洗浄後に、細胞は、例えばPBS等、種々の生体適合性バッファーに再懸濁することができる。あるいは、アフェレーシス試料の望ましくない構成成分を除去し、細胞を培養培地に直接的に再懸濁することができる。
【0066】
B細胞は、本技術分野で公知の技法を使用して、末梢血または白血球アフェレーシスから単離することができる。例えば、PBMCは、FICOLL(商標)(Sigma-Aldrich、St Louis、MO)を使用して単離することができ、CD19+B細胞は、Rosette四量体複合体システム(StemCell Technologies、Vancouver、Canada)またはMACS(商標)MicroBead Technology(Miltenyi Biotec、San Diego、CA)等、本技術分野で公知の種々の抗体のいずれかを使用した負のまたは正の選択によって精製することができる。ある特定の実施形態では、メモリーB細胞は、Jourdanら(Blood.2009年12月10日;114巻(25号):5173~81頁)によって記載されている通りに単離される。例えば、抗CD2磁気ビーズを使用したCD2+細胞の除去後に、CD19+CD27+メモリーB細胞をFACSによって選別することができる。骨髄形質細胞(BMPC)は、抗CD138磁気マイクロビーズ選別または他の同様の方法および試薬を使用して精製することができる。ヒトB細胞は、例えば、CD19 MicroBead、ヒト(Miltenyi Biotec、San Diego、CA)を使用して単離することができる。ヒトメモリーB細胞は、例えば、メモリーB細胞単離キット、ヒト(Miltenyi Biotec、San Diego、CA)を使用して単離することができる。
【0067】
R&D SystemsのMagCellectヒトB細胞単離キット(Minneapolis、MN)等、他の単離キットが市販されている。ある特定の実施形態では、休止B細胞は、(Defrancoら(1982年)J. Exp. Med.155巻:1523頁)に記載されている通り、不連続パーコール勾配における沈降によって調製することができる。
【0068】
一実施形態では、PBMCは、勾配に基づく精製(例えば、FICOLL(商標))を使用して、血液試料から得られる。別の実施形態では、PBMCは、アフェレーシスに基づく採取から得られる。一実施形態では、B細胞は、汎B細胞を単離することによりPBMCから単離される。単離ステップは、正のおよび/または負の選択を利用することができる。一実施形態では、負の選択は、抗CD3コンジュゲートマイクロビーズを使用したT細胞の枯渇を含み、これにより、T細胞枯渇画分を提供する。さらなる実施形態では、メモリーB細胞は、CD27に対する正の選択によって、汎B細胞またはT細胞枯渇画分から単離される。
【0069】
特定の一実施形態では、メモリーB細胞は、望まれない細胞の枯渇、およびCD27 MicroBeadによるその後の正の選択によって単離される。望まれない細胞、例えば、T細胞、NK細胞、単球、樹状細胞、顆粒球、血小板および赤血球系細胞は、CD2、CD14、CD16、CD36、CD43およびCD235a(グリコホリンA)に対するビオチン化抗体のカクテルならびに抗ビオチンMicroBeadを使用して枯渇させることができる。
【0070】
一実施形態では、スイッチしたメモリーB細胞が得られる。「スイッチしたメモリーB細胞」または「スイッチしたB細胞」は、本明細書において、アイソタイプクラススイッチングを起こしたB細胞を指す。一実施形態では、スイッチしたメモリーB細胞は、IgGに対して正に選択される。別の実施形態では、スイッチしたメモリーB細胞は、IgDおよびIgM発現細胞を枯渇させることにより得られる。スイッチしたメモリーB細胞は、例えば、スイッチしたメモリーB細胞キット、ヒト(Miltenyi Biotec、San Diego、CA)を使用して単離することができる。
【0071】
例えば、特定の一実施形態では、非標的細胞は、ビオチン化CD2、CD14、CD16、CD36、CD43、CD235a(グリコホリンA)、抗IgMおよび抗IgD抗体のカクテルで標識することができる。このような細胞はその後に、抗ビオチンMicroBeadで磁気標識することができる。高度に純粋なスイッチしたメモリーB細胞は、磁気標識された細胞の枯渇によって得ることができる。
【0072】
さらなる実施形態では、例えば、CD27遺伝子(またはメモリーB細胞に特異的であり、ナイーブB細胞において発現されない他の遺伝子)等、メモリーB細胞に特有の遺伝子由来のプロモーター配列が、例えば、メトトレキセートの存在下でメモリーB細胞の正の選択を可能にする変異したジヒドロ葉酸レダクターゼ等、選択可能マーカーの発現の駆動に使用される。別の実施形態では、例えば、CD19遺伝子等、汎B細胞遺伝子由来のプロモーター配列が、例えば、メトトレキセートの存在下でメモリーB細胞の正の選択を可能にする変異したジヒドロ葉酸レダクターゼ等、選択可能マーカーの発現の駆動に使用される。別の実施形態では、T細胞は、CD3を使用して、またはシクロスポリンの添加により枯渇される。別の実施形態では、CD138+細胞は、正の選択によって汎B細胞から単離される。さらに別の実施形態では、CD138+細胞は、正の選択によってPBMCから単離される。別の実施形態では、CD38+細胞は、正の選択によって汎B細胞から単離される。さらに別の実施形態では、CD38+細胞は、正の選択によってPBMCから単離される。一実施形態では、CD27+細胞は、正の選択によってPBMCから単離される。別の実施形態では、メモリーB細胞および/または形質細胞は、本技術分野で利用できるin vitro培養方法を使用して、PBMCから選択的に拡大増殖される。
【0073】
in vitroにおけるB細胞の培養
メモリーB細胞等、B細胞は、B細胞を活性化し、形質細胞もしくは形質芽球またはその両方へと分化させるためのin vitro方法を使用して培養することができる。当業者によって認識されるであろうが、形質細胞は、標準フローサイトメトリー方法を使用して、細胞表面タンパク質発現パターンによって同定することができる。例えば、終末分化した形質細胞は、比較的少ない表面抗原を発現し、CD19およびCD20等、共通汎B細胞マーカーを発現しない。その代わりに、形質細胞は、CD38、CD78、CD138およびIL-6Rの発現、ならびにCD45の発現欠如によって同定することができる。ナイーブB細胞はCD27-であり、メモリーB細胞はCD27+であり、形質細胞はCD27++であるため、CD27を、形質細胞の同定に使用することもできる。形質細胞は、高レベルのCD38およびCD138を発現する。
【0074】
一実施形態では、B細胞は、CD138-メモリーB細胞である。一実施形態では、B細胞は、CD138+形質細胞である。一実施形態では、B細胞は、活性化され、CD138-、CD27+の細胞表面表現型を有する。
【0075】
一実施形態では、B細胞は、CD20-、CD138-メモリーB細胞である。一実施形態では、B細胞は、CD20-、CD138+形質細胞である。一実施形態では、B細胞は、活性化され、CD20-、CD138-、CD27+の細胞表面表現型を有する。
【0076】
一実施形態では、B細胞は、CD20-、CD38-、CD138-メモリーB細胞である。一実施形態では、B細胞は、CD20-、CD38+、CD138+形質細胞である。一実施形態では、B細胞は、活性化され、CD20-、CD38-、CD138-、CD27+の細胞表面表現型を有する。
【0077】
一実施形態では、B細胞は、1種または複数のB細胞活性化因子、例えば、B細胞を活性化および/または分化させることが公知の種々のサイトカイン、増殖因子または細胞株のいずれかと接触される(例えば、Fluckigerら、Blood 1998年、92巻:4509~4520頁;Luoら、Blood 2009年、1 13巻:1422~1431頁を参照)。斯かる因子は、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-34およびIL-35、IFN-γ、IFN-α、IFN-β、IFN-δ、C型ケモカインXCL1およびXCL2、C-C型ケモカイン(現在まで、CCL1~CCL28を含む)およびCXC型ケモカイン(現在まで、CXCL1~CXCL17を含む)、ならびにTNFスーパーファミリーのメンバー(例えば、TNF-α、4-1 BBリガンド、B細胞活性化因子(BLyS)、FASリガンド、sCD40L(sCD40Lの多量体バージョンを含む;例えば、複数のsCD40L分子を一緒にグループ化するための、抗ポリ-ヒスチジンmAbと組み合わせた、ヒスチジンタグ付き可溶性組換えCD40L)、リンホトキシン、OX40L、RANKL、TRAIL)、CpG、ならびに他のtoll様受容体アゴニスト(例えば、CpG)からなる群より選択することができるが、これらに限定されない。
【0078】
B細胞活性化因子は、様々な濃度でin vitro細胞培養物に添加して、所望の成果(例えば、拡大増殖または分化)を達成することができる。一実施形態では、B細胞活性化因子は、培養下のB細胞の拡大増殖において利用される。一実施形態では、B細胞活性化因子は、培養下のB細胞の分化において利用される。別の実施形態では、B細胞活性化因子は、培養下のB細胞の拡大増殖および分化の両方において利用される。一実施形態では、B細胞活性化因子は、拡大増殖および分化のために同じ濃度で提供される。別の実施形態では、B細胞活性化因子は、拡大増殖のために第1の濃度で、また、分化のために第2の濃度で提供される。B細胞活性化因子を、1)B細胞の拡大増殖において利用し、B細胞の分化においては利用しないことができる、2)B細胞の分化において利用し、B細胞の拡大増殖においては利用しないことができる、または3)B細胞の拡大増殖および分化において利用することができることが企図される。
【0079】
例えば、B細胞は、B細胞の拡大増殖のために、CD40L、IL-2、IL-4およびIL-10から選択される1種または複数のB細胞活性化因子と共に培養される。一実施形態では、B細胞は、0.25~5.0μg/ml CD40Lと共に培養される。一実施形態では、CD40Lの濃度は、0.5μg/mlである。一実施形態では、架橋剤(HISタグ付きCD40Lと組み合わせた抗HIS抗体等)が、CD40Lの多量体の作製に使用される。一実施形態では、CD40Lの分子は、タンパク質多量体化ドメイン(例えば、IgGのFc領域またはロイシンジッパードメイン)を使用して、共有結合により連結される、または一体に保持される。一実施形態では、CD40Lは、ビーズにコンジュゲートされる。一実施形態では、CD40Lは、フィーダー細胞から発現される。一実施形態では、B細胞は、1~10ng/ml IL-2と共に培養される。一実施形態では、IL-2の濃度は、5ng/mlである。一実施形態では、B細胞は、1~10ng/ml IL-4と共に培養される。一実施形態では、IL-4の濃度は、2ng/mlである。一実施形態では、B細胞は、10~100ng/ml IL-10と共に培養される。一実施形態では、IL-10の濃度は、40ng/mlである。
【0080】
一実施形態では、B細胞は、B細胞の拡大増殖のために、CD40L、IL-2、IL-4、IL-10、IL-15およびIL-21から選択される1種または複数のB細胞活性化因子と共に培養される。一実施形態では、B細胞は、0.25~5.0μg/ml
CD40Lと共に培養される。一実施形態では、CD40Lの濃度は、0.5μg/mlである。一実施形態では、架橋剤(HISタグ付きCD40Lと組み合わせた抗HIS抗体等)が、CD40Lの多量体の作製に使用される。一実施形態では、CD40Lの分子は、タンパク質多量体化ドメイン(例えば、IgGのFc領域またはロイシンジッパードメイン)を使用して、共有結合により連結される、または一体に保持される。一実施形態では、CD40Lは、ビーズにコンジュゲートされる。一実施形態では、CD40Lは、フィーダー細胞から発現される。一実施形態では、B細胞は、1~10ng/ml IL-2と共に培養される。一実施形態では、IL-2の濃度は、5ng/mlである。一実施形態では、B細胞は、1~10ng/ml IL-4と共に培養される。一実施形態では、IL-4の濃度は、2ng/mlである。一実施形態では、B細胞は、10~100ng/ml IL-10と共に培養される。一実施形態では、IL-10の濃度は、40ng/mlである。一実施形態では、B細胞は、50~150ng/ml IL-15と共に培養される。一実施形態では、IL-15の濃度は、100ng/mlである。一実施形態では、B細胞は、50~150ng/ml IL-21と共に培養される。一実施形態では、IL-21の濃度は、100ng/mlである。特定の実施形態では、B細胞は、B細胞の拡大増殖のために、CD40L、IL-2、IL-4、IL-10、IL-15およびIL-21と共に培養される。
【0081】
例えば、一実施形態では、B細胞は、B細胞の拡大増殖のために、B細胞活性化因子CD40L、IL-2、IL-4、IL-10、IL-15およびIL-21と共に培養され、CD40Lは、架橋剤により架橋されて、CD40Lの多量体を作製する。斯かる培養系は、培養期間全体(例えば、7日間の培養期間)にわたって維持することができ、B細胞は、目的の導入遺伝子(例えば、例えば、IDUA等、外因的ポリペプチド)を発現するようにトランスフェクトまたは他の仕方で操作されている。導入遺伝子は、B細胞に組み込むことができる(例えば、ウイルスまたは非ウイルスベクターにより)。導入遺伝子は、トランスポゾンの使用により、B細胞において発現させることができる。導入遺伝子は、B細胞のゲノムへの導入遺伝子の標的化組込みのために、B細胞において発現させることができる。標的化組込みは、相同組換えによるものとなることができる。相同組換えは、ヌクレアーゼによって誘導された二本鎖切断の際に起こることができる。ヌクレアーゼは、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALE-ヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ(例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼ)となることができる、またはCRISPR/CAS9-ヌクレアーゼ系によるものとなることができる。
【0082】
別の例では、B細胞は、B細胞の分化のために、CD40L、IFN-α、IL-2、IL-6、IL-10、IL-15、IL-21およびP-クラスCpGオリゴデオキシヌクレオチド(p-ODN)から選択される1種または複数のB細胞活性化因子と共に培養される。一実施形態では、B細胞は、25~75ng/ml CD40Lと共に培養される。一実施形態では、CD40Lの濃度は、50ng/mlである。一実施形態では、B細胞は、250~750U/ml IFN-αと共に培養される。一実施形態では、IFN-αの濃度は、500U/mlである。一実施形態では、B細胞は、5~50U/ml IL-2と共に培養される。一実施形態では、IL-2の濃度は、20U/mlである。一実施形態では、B細胞は、25~75ng/ml IL-6と共に培養される。一実施形態では、IL-6の濃度は、50ng/mlである。一実施形態では、B細胞は、10~100ng/ml IL-10と共に培養される。一実施形態では、IL-10の濃度は、50ng/mlである。一実施形態では、B細胞は、1~20ng/ml IL-15と共に培養される。一実施形態では、IL-15の濃度は、10ng/mlである。一実施形態では、B細胞は、10~100ng/ml IL-21と共に培養される。一実施形態では、IL-21の濃度は、50ng/mlである。一実施形態では、B細胞は、1~50μg/ml p-ODNと共に培養される。一実施形態では、p-ODNの濃度は、10μg/mlである。
【0083】
一実施形態では、B細胞は、フィーダー細胞の上で接触または培養される。一実施形態では、フィーダー細胞は、ストロマ細胞株、例えば、マウスストロマ細胞株S17またはMS5である。別の実施形態では、単離されたCD19+細胞は、CD40-リガンド(CD40L、CD154)を発現する線維芽細胞の存在下で、IL-10およびIL-4等、1種または複数のB細胞活性化因子サイトカインと共に培養される。一実施形態では、CD40Lは、組織培養プレートまたはビーズ等の表面に結合された状態で提供される。別の実施形態では、精製されたB細胞は、フィーダー細胞の存在または非存在下で、CD40L、ならびにIL-10、IL-4、IL-7、p-ODN、CpG DNA、IL-2、IL-15、IL6およびIFN-αから選択される1種または複数のサイトカインまたは因子と共に培養される。
【0084】
別の実施形態では、B細胞活性化因子は、B細胞または他のフィーダー細胞へのトランスフェクションによって提供される。この文脈において、B細胞から抗体分泌細胞への分化を促進する1種もしくは複数の因子、および/または抗体産生細胞の長寿命を促進する1種もしくは複数の因子を使用することができる。斯かる因子は、例えば、Blimp-1、TRF4、Bcl-xlもしくはBcl5のような抗アポトーシス因子、またはCD40受容体の構成的に活性な変異体を含む。さらに、TNF受容体関連因子(TRAF)等、下流シグナル伝達分子の発現を促進する因子を、B細胞の活性化/分化において使用することもできる。この点に関して、TNF受容体スーパーファミリーの細胞活性化、細胞生存および抗アポトーシス機能は、大部分は、TRAF1~6によって媒介される(例えば、R.H. Archら、Genes Dev.12巻(1998年)2821~2830頁を参照)。TRAFシグナル伝達の下流エフェクターは、細胞および免疫機能の様々な側面に関与する遺伝子をオンにすることができる、NF-κBおよびAP-1ファミリーにおける転写因子を含む。さらに、NF-κBおよびAP-1の活性化は、抗アポトーシス遺伝子の転写により、アポトーシスからの細胞保護をもたらすことが示された。
【0085】
別の実施形態では、エプスタイン・バーウイルス(EBV)由来のタンパク質が、B細胞の活性化および/または分化のために、または抗体産生細胞の長寿命を促進するために使用される。EBV由来のタンパク質として、EBNA-1、EBNA-2、EBNA-3、LMP-1、LMP-2、EBER、miRNA、EBV-EA、EBV-MA、EBV-VCAおよびEBV-ANが挙げられるがこれらに限定されない。
【0086】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供されている方法を使用したB細胞の活性化因子とB細胞との接触は、とりわけ、細胞増殖(すなわち、拡大増殖)、活性化された成熟B細胞と一貫した表現型へのlgM+細胞表面表現型のモジュレーション、Igの分泌、およびアイソタイプスイッチングをもたらす。CD19+B細胞は、MiniMACS(商標)細胞分離システム(Miltenyi Biotech、Bergisch Gladbach、Germany)等、公知かつ市販の細胞分離キットを使用して単離することができる。ある特定の実施形態では、CD40L線維芽細胞は、本明細書に記載されている方法における使用前に照射される。一実施形態では、B細胞は、IL-3、IL-7、Flt3リガンド、トロンボポエチン、SCF、IL-2、IL-10、G-CSFおよびCpGのうち1種または複数の存在下で培養される。ある特定の実施形態では、本方法は、低レベルの繋留されたCD40Lおよび/またはプレートもしくはビーズに結合されたCD40Lを提供する形質転換ストロマ細胞(例えば、MS5)と併せて、上述の因子のうち1種または複数の存在下でB細胞を培養するステップを含む。
【0087】
上に記述されている通り、B細胞活性化因子は、B細胞の拡大増殖、増殖または分化を誘導する。したがって、B細胞は、上に列挙されている1種または複数のB細胞活性化因子と接触されて、拡大増殖された細胞集団を得る。細胞集団は、トランスフェクションの前に拡大増殖することができる。それに代えてまたはその上、細胞集団は、トランスフェクションの後に拡大増殖することができる。一実施形態では、B細胞集団の拡大増殖は、IL-2、IL-4、IL-10およびCD40Lと共に細胞を培養することを含む(例えば、Neronら、PLoS ONE、2012年、7巻(12号):e51946頁を参照)。一実施形態では、B細胞集団の拡大増殖は、IL-2、IL-10、CpGおよびCD40Lと共に細胞を培養することを含む。一実施形態では、B細胞集団の拡大増殖は、IL-2、IL-4、IL-10、IL-15、IL-21およびCD40Lと共に細胞を培養することを含む。一実施形態では、B細胞集団の拡大増殖は、IL-2、IL-4、IL-10、IL-15、IL-21および多量体化されたCD40Lと共に細胞を培養することを含む。
【0088】
別の実施形態では、B細胞集団の拡大増殖は、B細胞へと導入された導入遺伝子によって誘導および/または増強される。例えば、そのリガンド(例えば、可溶性リガンドまたは細胞表面発現リガンド)と結合した際に細胞シグナル伝達経路(例えば、CD40の下流のシグナル伝達)を誘導する組換え受容体または操作された受容体を含有するB細胞。一実施形態では、B細胞は、CD40導入遺伝子の発現のため、CD40を過剰発現する。別の実施形態では、B細胞は、例えば、組換えにより操作された抗体を含む、操作された受容体を発現する。一実施形態では、操作された受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)と同様であり、scFvおよびB細胞受容体(例えば、CD40)の細胞内シグナル伝達部分の融合タンパク質を含む。
【0089】
一実施形態では、B細胞集団の拡大増殖は、細胞培養物に添加された小分子化合物によって誘導および/または増強される。例えば、CD40に結合しこれを二量体化する化合物を使用して、CD40シグナル伝達経路を誘発することができる。
【0090】
当業者に公知の通り、本方法において種々の培養培地のいずれかを使用することができる(例えば、Current Protocols in Cell Culture、2000~2009年、John Wiley & Sons, Inc.よりを参照)。一実施形態では、本明細書に記載されている方法における使用のための培地として、イスコフ改変ダルベッコ培地(ウシ胎仔または他の適切な血清を含有するまたは含有しない)が挙げられるがこれに限定されない。例示的な培地として、IMDM、RPMI 1640、AIM-V、DMEM、MEM、a-MEM、F-12、X-Vivo 15およびX-Vivo 20も挙げられるがこれらに限定されない。さらなる実施形態では、培地は、界面活性剤、抗体、プラスマネート(plasmanate)または還元剤(例えば、N-アセチル-システイン、2-メルカプトエタノール)、1種または複数の抗生物質、および/またはインスリン、トランスフェリン、亜セレン酸ナトリウムおよびシクロスポリン等の添加物を含むことができる。一部の実施形態では、IL-6、可溶性CD40Lおよび架橋増強物質を使用することもできる。
【0091】
B細胞は、所望の分化および/または活性化を達成するための条件下および十分な期間培養される。ある特定の実施形態では、B細胞は、B細胞の10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはさらには100%が、所望の通りに分化および/または活性化されるような条件下および十分な期間培養される。一実施形態では、B細胞は、活性化され、形質芽球および形質細胞の混合集団へと分化される。当業者によって認識されるであろうが、形質芽球および形質細胞は、CD38、CD78、IL-6R、CD27highおよびCD138のうち1種もしくは複数の発現、および/またはCD19、CD20およびCD45のうち1種もしくは複数の発現の欠如もしくは低下等、本明細書の他の箇所に記載されている通りに標準フローサイトメトリー方法を使用して、細胞表面タンパク質発現パターンによって同定することができる。当業者によって理解されるであろうが、メモリーB細胞は一般に、CD20+、CD19+、CD27+、CD38-であるが、初期形質芽球は、CD20-、CD19+、CD27++、CD38++である。一実施形態では、本明細書に記載されている方法を使用して培養された細胞は、CD20-、CD38+、CD138-である。別の実施形態では、細胞は、CD20-、CD38+、CD138+の表現型を有する。ある特定の実施形態では、細胞は、1~7日間培養される。さらなる実施形態では、細胞は、7、14、21日間またはそれよりも長く培養される。よって、細胞は、適切な条件下で、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29日間またはそれよりも長く培養することができる。細胞は再播種され、本技術分野で公知の技法を使用して、必要に応じて培地およびサプリメントを添加または交換することができる。
【0092】
ある特定の実施形態では、B細胞は、細胞の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%が、分化および活性化されて、Igを産生する、および/または導入遺伝子を発現するような、条件下および十分な期間培養される。
【0093】
B細胞活性化の誘導は、RNAへの3H-ウリジン取り込み(B細胞が分化するにつれて、RNA合成は増加する)等の技法によって、または細胞増殖に伴うDNA合成を測定する3H-チミジン取り込みによって、測定することができる。一実施形態では、インターロイキン-4(IL-4)を、B細胞増殖の増強に適切な濃度(例えば、約10ng/ml)で培養培地に添加することができる。
【0094】
あるいは、B細胞活性化は、免疫グロブリン分泌の関数として測定される。例えば、CD40Lが、IL-4(例えば、10ng/ml)およびIL-5(例えば、5ng/ml)、またはB細胞を活性化する他のサイトカインと共に、休止B細胞に添加される。活性化されたB細胞に典型的な細胞表面マーカーを測定するために、フローサイトメトリーを使用することもできる。例えば、Civin CI, Loken MR、Int’l J. Cell Cloning 987;5巻:1~16頁;Loken, MRら、Flow Cytometry Characterization of Erythroid, Lymphoid and Monomyeloid Lineages in Normal Human Bone Marrow, in Flow Cytometry in Hematology、Laerum OD, Bjerksnes R.編、Academic Press、New York 1992年;31~42頁;およびLeBein TWら(et ai)、Leukemia 1990年;4巻:354~358頁を参照されたい。
【0095】
2、3、4、5、6、7、8、9日間またはそれよりも長くから、一般に、3日間前後等、適切な期間にわたる培養後に、追加的な容量の培養培地を添加することができる。個々の培養物由来の上清を、培養における様々な時点で収集し、Noelleら(1991年)J. Immunol.146巻:1118~1124頁に記載されている通りにIgMおよびIgG1に関して定量化することができる。一実施形態では、培養物は、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ELISPOTまたは本技術分野で公知の他のアッセイを使用して、目的の導入遺伝子の発現に関して収集および測定される。
【0096】
別の実施形態では、ELISAが、抗体アイソタイプ産生、例えば、IgM、または目的の導入遺伝子の産物の測定に使用される。ある特定の実施形態では、捕捉抗体としてヤギ抗ヒトIgG等、市販の抗体を使用して、IgG決定が為され、続いて、ビオチン化ヤギ抗ヒトIg、ストレプトアビジンアルカリホスファターゼおよび基質等、種々の適切な検出試薬のいずれかを使用して検出が為される。
【0097】
ある特定の実施形態では、B細胞は、細胞の数が、培養開始時のB細胞の数の、1、10、25、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000倍またはそれよりも多くなるような、条件下および十分な期間培養される。一実施形態では、細胞の数は、培養開始時のB細胞の数の10~1000倍(その中の連続した整数を含む)である。例えば、拡大増殖されたB細胞集団は、初期単離B細胞集団の少なくとも10倍である。別の実施形態では、拡大増殖されたB細胞集団は、初期単離B細胞集団の少なくとも100倍である。一実施形態では、拡大増殖されたB細胞集団は、初期単離B細胞集団の少なくとも500倍である。
【0098】
B細胞の操作
一実施形態では、遺伝子改変B細胞は、導入遺伝子をトランスフェクトされる。B細胞をトランスフェクトするための例示的な方法は、WO2014/152832およびWO2016/100932に提供されており、これらは両者共に、それらの全体を参照により本明細書に組み込む。B細胞のトランスフェクションは、B細胞へとDNAまたはRNAを導入するための本技術分野で利用できる種々の方法のいずれかを使用して達成することができる。適した技法は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、圧力媒介性トランスフェクションまたは「細胞圧搾(cell squeezing)」(例えば、CellSqueezeマイクロ流体システム、SQZ Biotechnologies)、ナノ粒子媒介性もしくはリポソーム媒介性トランスフェクション、およびレトロウイルスもしくは他のウイルス、例えば、ワクシニアを使用した形質導入を含むことができる。例えば、Grahamら、1973年、Virology 52巻:456頁;Sambrookら、2001年、Molecular Cloning, a Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratories;Davisら、1986年、Basic Methods in Molecular Biology、Elsevier;Chuら、1981年、Gene 13巻:197頁;US5,124,259;US5,297,983;US5,283,185;US5,661,018;US6,878,548;US7,799,555;US8,551,780;およびUS8,633,029を参照されたい。B細胞に適した市販のエレクトロポレーション技法の一例は、Nucleofector(商標)トランスフェクション技術である。
【0099】
トランスフェクションは、上述の1種または複数の活性化および/または分化因子の存在下、単離されたB細胞のin vitro培養の前にまたはその間に行うことができる。例えば、細胞は、in vitro培養の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38または39日目にトランスフェクトされる。一実施形態では、細胞は、in vitro培養の1、2または3日目にトランスフェクトされる。特定の実施形態では、細胞は、2日目にトランスフェクトされる。例えば、細胞は、例えば、プラスミド、トランスポゾン、ミニサークルまたは自己複製RNAの送達のため、in vitro培養の2日目にエレクトロポレーションされる。別の実施形態では、細胞は、in vitro培養の4、5、6または7日目にトランスフェクトされる。特定の実施形態では、細胞は、in vitro培養の6日目にトランスフェクトされる。別の実施形態では、細胞は、in vitro培養の5日目にトランスフェクトされる。
【0100】
一実施形態では、細胞は、活性化の前に、トランスフェクトまたは他の仕方で操作される(例えば、導入遺伝子の標的化組込みにより)。別の実施形態では、細胞は、活性化の間に、トランスフェクトまたは他の仕方で操作される(例えば、導入遺伝子の標的化組込みにより)。一実施形態では、細胞は、活性化の後に、トランスフェクトまたは他の仕方で操作される(例えば、導入遺伝子の標的化組込みにより)。一実施形態では、細胞は、分化の前に、トランスフェクトまたは他の仕方で操作される(例えば、導入遺伝子の標的化組込みにより)。別の実施形態では、細胞は、分化の間に、トランスフェクトまたは他の仕方で操作される(例えば、導入遺伝子の標的化組込みにより)。一実施形態では、細胞は、分化の後に、トランスフェクトまたは他の仕方で操作される(例えば、導入遺伝子の標的化組込みにより)。
【0101】
一実施形態では、非ウイルスベクターが、メモリーB細胞および/または形質細胞へのDNAまたはRNAの送達に使用される。例えば、ウイルス組込み系の必要なしに、メモリーB細胞および/または形質細胞のトランスフェクションを容易にすることができる系は、トランスポゾン(例えば、スリーピングビューティートランスポゾン系)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)、メガヌクレアーゼ、ミニサークル、レプリコン、人工染色体(例えば、細菌人工染色体、哺乳動物人工染色体および酵母人工染色体)、プラスミド、コスミドおよびバクテリオファージを限定することなく含む。
【0102】
一部の実施形態では、斯かる非ウイルス依存性ベクター系は、本技術分野で公知のまたは後述するウイルスベクターにより送達することもできる。例えば、一部の実施形態では、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス)は、1種または複数の非ウイルスベクター(例えば、上述のジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)メガヌクレアーゼのうち1種または複数等)、または標的化組込みを容易にすることができる他のいずれかの酵素/補完的ベクター、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの送達に利用される。したがって、一部の実施形態では、細胞(例えば、メモリーB細胞および/または形質細胞等、B細胞)は、標的化組込み方法により、外因的配列(例えば、IDUA等の治療用ポリペプチドをコードする配列)を発現するように操作することができる。斯かる方法は、本技術分野で公知であり、1種または複数のヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALEN、CRISPR/Cas、メガヌクレアーゼ)を使用して、細胞における内在性遺伝子座を切断するステップと、内在性遺伝子座に組み込まれ、細胞内で発現されるように、導入遺伝子を細胞に投与するステップとを含むことができる。導入遺伝子は、ヌクレアーゼによる切断ポイントにまたはその付近において宿主細胞のDNAに組み込まれるドナー配列に含まれていてよい。
【0103】
外因的配列(例えば、IDUA等の治療用ポリペプチドをコードする配列)の組込みは、組換えにより起こることができる。当業者には明らかであろうが、「組換え」は、非相同末端結合(NHEJ)によるドナー捕捉および相同組換えが挙げられるがこれらに限定されない、2本のポリヌクレオチドの間での遺伝情報の交換のプロセスを指す。組換えは、相同組換えとなることができる。本開示の目的のため、「相同組換え(HR)」は、例えば、相同性指向性修復機構により細胞における二本鎖切断の修復の際に行われる、斯かる交換の特殊化された形態を指す。このプロセスは、ヌクレオチド配列相同性を利用し、それによって、「ドナー」分子(例えば、ドナーポリヌクレオチド配列または斯かる配列を含むドナーベクター)は、「標的」分子(すなわち、二本鎖切断を経験した分子)を修復するための鋳型として、細胞のDNA修復の仕組みによって利用され、これらの手段は、ドナーから標的への遺伝情報の移入を引き起こす。HR指向性組込みの一部の実施形態では、ドナー分子は、ゲノムに対する相同性の少なくとも2個の領域を含有することができる(「相同性アーム」)。一部の実施形態では、相同性アームは、例えば、少なくとも50~100塩基対の長さとなることができる。相同性アームは、標的化組込みが起こるべき、切断部位に隣接するゲノムDNAの領域に対する実質的DNA相同性を有することができる。ドナー分子の相同性アームは、標的ゲノムまたは標的DNA遺伝子座に組み込まれるべきDNAに隣接することができる。染色体の切断と、それに続く鋳型としてプラスミドDNAの相同領域を使用した修復は、相同性アームによって隣接される介在する導入遺伝子のゲノムへの移入をもたらすことができる。例えば、Kollerら(1989年)Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 86巻(22号):8927~8931頁;Thomasら(1986年)Cell 44巻(3号):419~428頁を参照されたい。この種類の相同性指向性標的化組込みの頻度は、標的領域の近傍での二本鎖切断の計画的作製によって最大105倍増加され得る(Hockemeyerら(2009年)Nature Biotech.27巻(9号):851~857頁;Lombardoら(2007年)Nature Biotech.25巻(11号):1298~1306頁;Moehleら(2007年)Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 104巻(9号):3055~3060頁;Rouetら(1994年)Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 91巻(13号):6064~6068頁。
【0104】
導入遺伝子が標的細胞のゲノムに組み込まれ得るような(例えば、HR等、組換えによる)、ゲノム遺伝子座の標的化切断を媒介することができるいずれかのヌクレアーゼは、本開示に従った細胞(例えば、メモリーB細胞または形質芽球)の操作において利用することができる。
【0105】
二本鎖切断(DSB)またはニックは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクタードメインヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ等の部位特異的ヌクレアーゼによって、または特異的切断をガイドするための操作されたcrRNA/tract RNA(シングルガイドRNA)によるCRISPR/Cas9系を使用して作製することができる。例えば、あらゆる目的のためそれらの開示全体を参照により本明細書に組み込む、Burgess(2013年)Nature Reviews Genetics 14巻:80~81頁、Umovら(2010年)Nature 435巻(7042号):646~51頁;米国特許出願公開第20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20050064474号;同第20060188987号;同第20090263900号;同第20090117617号;同第20100047805号;同第20110207221号;同第20110301073号および国際公開WO2007/014275を参照されたい。
【0106】
一部の実施形態では、細胞(例えば、メモリーB細胞または形質芽球)は、ドナー構築物のジンクフィンガーヌクレアーゼ媒介性標的化組込みにより操作される。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、1個または複数のジンクフィンガー、およびヌクレアーゼ酵素を介して配列特異的様式でDNAに結合する「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」(ZFP)(または結合ドメイン)のカップリングによる特異性で、標的ヌクレオチド配列を認識および切断することができる酵素である。ZFNは、ZFP DNA結合ドメインに操作可能に連結されたいずれか適した切断ドメイン(例えば、ヌクレアーゼ酵素)を含んで、標的DNA配列の部位特異的切断を容易にすることができる操作されたZFNを形成することができる(例えば、Kimら(1996年)Proc Natl Acad Sci USA 93巻(3号):1156~1160頁を参照)。例えば、ZFNは、FOK1酵素またはFOK1酵素の部分に連結された標的特異的ZFPを含むことができる。一部の実施形態では、ZFN媒介性標的化組込みアプローチにおいて使用されるZFNは、ZFPにそれぞれ結合されたFOK1酵素のサブユニットをそれぞれ含む2種の別々の分子を利用し、各ZFPは、標的切断部位に隣接するDNA配列に対する特異性を有し、この2種のZFPが、それぞれの標的DNA部位に結合するとき、FOK1酵素サブユニットは、互いに近接させられ、一体に結合し、標的切断部位を切断するヌクレアーゼ活性を活性化する。ZFNは、種々の生物におけるゲノム改変に使用されてきた(例えば、それらの全体を参照により本明細書に組み込む、米国特許出願公開第20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20050064474号;同第20060188987号;同第20060063231号;および国際公開WO07/014,275)。カスタムZFPおよびZFNは、例えば、Sigma Aldrich(St.Louis、MO)から市販されており、斯かるカスタムZFNを使用して、DNAの任意の位置を慣例的に標的化および切断することもできる。
【0107】
一部の実施形態では、細胞(例えば、メモリーB細胞または形質芽球)は、ドナー構築物のCRISPR/Cas(例えば、CRISPR Cas9)ヌクレアーゼ媒介性組込みにより操作される。CRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)/Cas(CRISPR関連)ヌクレアーゼ系は、ゲノム操作に使用され得る細菌系に基づく操作されたヌクレアーゼ系である。これは、多くの細菌および古細菌の適応免疫応答の一部に基づく。ウイルスまたはプラスミドが、細菌に侵入するとき、侵入者のDNAのセグメントは、「免疫」応答によってCRISPR RNA(crRNA)に変換される。次いで、このcrRNAは、部分的相補性の領域を介して、tracrRNAと呼ばれる別の種類のRNAと会合して、「プロトスペーサー」と呼ばれる標的DNAにおけるcrRNAと相同の領域にCas9ヌクレアーゼをガイドする。Cas9は、DNAを切断して、crRNA転写物内に含有される20ヌクレオチドガイド配列によって指定された部位におけるDSBに平滑断端を生成する。Cas9は、部位特異的DNA認識および切断のために、crRNAおよびtracrRNAの両方を要求する。この系は現在、crRNAおよびtracrRNAを1分子(「シングルガイドRNA」)へと組み合わせることができるように操作されており、シングルガイドRNAのcrRNAに相当する部分は、任意の所望の配列を標的化するようCas9ヌクレアーゼをガイドするように操作することができる(Jinekら(2012年)Science 337巻、816~821頁、Jinekら(2013年)eLife 2巻:e00471頁およびDavid Segal(2013年)eLife 2巻:e00563頁を参照)。よって、CRISPR/Cas系は、ゲノムにおける所望の標的にDSBを作製するように操作することができ、DSBの修復は、誤りがちな修復の増加の原因となる修復阻害剤の使用によって影響され得る。
【0108】
一部の実施形態では、CRISPR/Casヌクレアーゼ媒介性組込みは、II型CRISPRを利用する。II型CRISPRは、最もよく特徴付けされた系の1つであり、標的化DNA二本鎖切断を4つの逐次的なステップで実行する。第1に、2種の非コードRNAであるプレcrRNAアレイおよびtracrRNAが、CRISPR遺伝子座から転写される。第2に、tracrRNAは、プレcrRNAの反復領域にハイブリダイズし、プレcrRNAのプロセシングを媒介して、個々のスペーサー配列を含有する成熟crRNAにする。第3に、成熟crRNA:tracrRNA複合体は、標的認識のための追加的な要件である、crRNAにおけるスペーサーおよびプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣の標的DNAにおけるプロトスペーサーの間のワトソン・クリック塩基対形成により、標的DNAへとCas9を方向付ける。第4に、Cas9は、標的DNAの切断を媒介して、プロトスペーサー内に二本鎖切断を作製する。
【0109】
Cas9関連のCRISPR/Cas系は、2種のRNA非コード構成成分:tracrRNA、および同一の直列反復(DR)を散りばめたヌクレアーゼガイド配列(スペーサー)を含有するプレcrRNAアレイを含む。CRISPR/Cas系を使用して、ゲノム操作を達成するために、これらのRNAの両方の機能が存在していなければならない(Congら(2013年)Sciencexpress 1/10.1126/science 1231143を参照)。一部の実施形態では、tracrRNAおよびプレcrRNAは、別々の発現構築物によりまたは別々のRNAとして供給される。他の実施形態では、キメラRNAが構築され、それによると、操作された成熟crRNA(標的特異性を付与)が、tracrRNA(Cas9との相互作用を供給)に融合されて、キメラcr-RNA-tracrRNAハイブリッドを作製する(シングルガイドRNAとも命名される)。(Jinek、前記箇所およびCong、前記箇所を参照)。
【0110】
一部の実施形態では、crRNAおよびtracrRNAの両方を含有するシングルガイドRNAは、任意の所望の配列を標的化するようにCas9ヌクレアーゼをガイドするように操作することができる(例えば、Jinekら(2012年)Science 337巻、816~821頁、Jinekら(2013年)eLife 2巻:e00471頁、David Segal(2013年)eLife 2巻:e00563頁)。よって、CRISPR/Cas系は、ゲノムにおける所望の標的にDSBを作製するように操作することができる。
【0111】
カスタムCRISPR/Cas系は、例えば、Dharmacon(Lafayette、CO)から市販されており、斯かるカスタムシングルガイドRNA配列を使用して、DNAの任意の位置を慣例的に標的化および切断することもできる。組換えのための一本鎖DNA鋳型は、合成することができる(例えば、本技術分野で公知のおよび市販のオリゴヌクレオチド合成方法により)、またはベクター、例えば、AAV等のウイルスベクター中に提供することができる。
【0112】
一部の実施形態では、細胞(例えば、メモリーB細胞または形質芽球)は、ドナー構築物のTALE-ヌクレアーゼ(TALEN)媒介性標的化組込みにより操作される。「TALE DNA結合ドメイン」または「TALE」は、1個または複数のTALE反復ドメイン/単位を含むポリペプチドである。反復ドメインは、その同族標的DNA配列へのTALEの結合に関与する。単一「反復単位」(「反復」とも称される)は典型的に、33~35アミノ酸の長さであり、天然に存在するTALEタンパク質内の他のTALE反復配列と少なくともある程度の配列相同性を示す。TAL-エフェクターは、タンデム反復の核局在化配列、酸性転写活性化ドメインおよび中央集中ドメインを含有することができ、各反復は、このようなタンパク質のDNA結合特異性の鍵となるおよそ34アミノ酸を含有する。(例えば、Schornack S,ら(2006年)J Plant Physiol 163巻(3号):256~272頁)。TALエフェクターは、およそ102bpを含むタンデム反復に見出される配列に依存し、反復は典型的に、互いに91~100%相同である(例えば、Bonasら(1989年)MoI Gen Genet 218巻:127~136頁)。このようなDNA結合反復を操作して、新たな組み合わせおよび数の反復をタンパク質に入れて、新たな配列と相互作用し、非内在性レポーター遺伝子の発現を活性化することができる人工転写因子を作製することができる(例えば、Bonasら(1989年)MoI Gen Genet 218巻:127~136頁)。操作されたTALタンパク質は、FokI切断ハーフドメインに連結させて、標的特異的DNA配列を切断するためのTALエフェクタードメインヌクレアーゼ融合体(TALEN)を得ることができる(例えば、Christianら(2010年)Genetics、epub 10.1534/genetics.110.120717)。
【0113】
カスタムTALENは、例えば、Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA)から市販されており、DNAの任意の位置を慣例的に標的化および切断することもできる。
【0114】
一部の実施形態では、細胞(例えば、メモリーB細胞または形質芽球)は、ドナー構築物のメガヌクレアーゼ媒介性標的化組込みにより操作される。メガヌクレアーゼ(または「ホーミングエンドヌクレアーゼ」)は、12塩基対を超える認識配列において二本鎖DNAに結合しこれを切断するエンドヌクレアーゼである。天然に存在するメガヌクレアーゼは、単量体(例えば、I-SceI)または二量体(例えば、I-CreI)となることができる。天然に存在するメガヌクレアーゼは、15~40塩基対切断部位を認識し、一般的に、4つのファミリー:LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-CystボックスファミリーおよびHNHファミリーへとグループ化される。例示的なホーミングエンドヌクレアーゼは、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevIIおよびI-TevIIIを含む。これらの認識配列は公知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfortら(1997年)Nucleic Acids Res.25巻:3379~3388頁;Dujonら(1989年)Gene 82巻:115~118頁;Perlerら(1994年)Nucleic Acids Res.22巻、1125~1127頁;Jasin(1996年)Trends Genet.12巻:224~228頁;Gimbleら(1996年)J. Mol. Biol.263巻:163~180頁;Argastら(1998年)J. Mol. Biol.280巻:345~353頁およびNew England Biolabsカタログも参照されたい。用語「メガヌクレアーゼ」は、単量体メガヌクレアーゼ、二量体メガヌクレアーゼ、および会合して二量体メガヌクレアーゼを形成する単量体を含む。
【0115】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されている方法および組成物は、操作された(天然に存在しない)ホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)を含むヌクレアーゼを活用する。I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevIIおよびI-TevIII等、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼの認識配列が公知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfortら(1997年)Nucleic Acids Res.25巻:3379~3388頁;Dujonら(1989年)Gene 82巻:115~118頁;Perlerら(1994年)Nucleic Acids Res.22巻、1125~1127頁;Jasin(1996年)Trends Genet.12巻:224~228頁;Gimbleら(1996年)J. Mol. Biol.263巻:163~180頁;Argastら(1998年)J. Mol. Biol.280巻:345~353頁およびNew England Biolabsカタログも参照されたい。加えて、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合特異性は、非天然標的部位に結合するように操作することができる。例えば、Chevalierら(2002年)Molec. Cell 10巻:895~905頁;Epinatら(2003年)Nucleic Acids Res.31巻:2952~2962頁;Ashworthら(2006年)Nature 441巻:656~659頁;Paquesら(2007年)Current Gene Therapy 7巻:49~66頁;米国特許出願公開第20070117128号を参照されたい。ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、ヌクレアーゼ全体としての文脈において(すなわち、ヌクレアーゼが、同族切断ドメインを含むように)変更することができる、または異種切断ドメインに融合することができる。カスタムメガヌクレアーゼは、例えば、New England Biolabs(Ipswich、MA)から市販されており、DNAの任意の位置を慣例的に標的化および切断することもできる。
【0116】
B細胞の操作は、例えば、コードされたヌクレアーゼを含むベクターがB細胞によって取り入れられるような、ヌクレアーゼをコードする1種または複数のベクターによる、B細胞への1種または複数のヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALEN、CRISPR/Cas、メガヌクレアーゼ)の投与を含むことができる。ベクターは、ウイルスベクターとなることができる。
【0117】
一部の実施形態では、ヌクレアーゼは、細胞(例えば、メモリーB細胞または形質細胞)における特異的内在性遺伝子座(例えば、目的のセーフハーバー遺伝子または遺伝子座)を切断し、1種または複数の外因的(ドナー)配列(例えば、導入遺伝子)が投与される(例えば、これらの外因的配列を含む1種または複数のベクター)。ヌクレアーゼは、標的DNAにおける二本鎖切断(DSB)または一本鎖切断(ニック)を誘導することができる。一部の実施形態では、ドナー導入遺伝子の標的化挿入は、細胞のゲノムへの導入遺伝子の組込み部位における、相同性指向性修復(HDR)、非相同性修復機構(例えば、NHEJ媒介性末端捕捉)、またはヌクレオチド(例えば、内在性配列)の挿入および/または欠失により行うことができる。
【0118】
一実施形態では、B細胞をトランスフェクトする方法は、ベクターとB細胞との接触に先立つB細胞のエレクトロポレーションを含む。一実施形態では、細胞は、in vitro培養の1、2、3、4、5、6、7、8または9日目にエレクトロポレーションされる。一実施形態では、細胞は、プラスミドの送達のため、in vitro培養の2日目にエレクトロポレーションされる。一実施形態では、細胞は、in vitro培養の1、2、3、4、5、6、7、8または9日目に、トランスポゾンを使用してトランスフェクトされる。別の実施形態では、細胞は、in vitro培養の1、2、3、4、5、6、7、8または9日目に、ミニサークルを使用してトランスフェクトされる。一実施形態では、スリーピングビューティートランスポゾンのエレクトロポレーションは、in vitro培養の2日目に行われる。
【0119】
一実施形態では、B細胞は、B細胞の少なくとも部分をトランスフェクトするのに十分な条件下、プロモーターに作動可能に連結した目的の核酸を含むベクターと接触される。一実施形態では、B細胞は、B細胞の少なくとも5%をトランスフェクトするのに十分な条件下、プロモーターに作動可能に連結した目的の核酸を含むベクターと接触される。さらなる実施形態では、B細胞は、B細胞の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはさらには100%をトランスフェクトするのに十分な条件下、ベクターと接触される。特定の一実施形態では、本明細書に記載されている通りにin vitroで培養されたB細胞がトランスフェクトされ、この場合、培養されたB細胞は、B細胞の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはさらには100%をトランスフェクトするのに十分な条件下、本明細書に記載されているベクターと接触される。
【0120】
ウイルスベクターを用いて、メモリーB細胞および/または形質細胞を形質導入することができる。ウイルスベクターの例は、アデノウイルスに基づくベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づくベクター、レトロウイルスベクター、レトロウイルスアデノウイルスベクター、ならびにアンプリコンベクターを含む単純ヘルペスウイルス(HSV)、複製欠損HSVおよび弱毒化HSVに由来するベクターを限定することなく含む(例えば、これらそれぞれの全体を参照により本明細書に組み込む、Krisky、Gene Ther.5巻:1517~30頁、1998年;Pfeifer、Annu. Rev. Genomics Hum. Genet.2巻:177~211頁、2001年を参照)。
【0121】
一実施形態では、細胞は、in vitro培養の1、2、3、4、5、6、7、8または9日目に、ウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)により形質導入される。特定の実施形態では、細胞は、in vitro培養の5日目に、ウイルスベクターにより形質導入される。一実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスである。一実施形態では、細胞は、in vitro培養の1日目に、麻疹ウイルスシュードタイプ化レンチウイルスにより形質導入される。
【0122】
一実施形態では、B細胞は、本技術分野における種々の公知技法のいずれかを使用して、レトロウイルスベクターにより形質導入される(例えば、Science、1996年4月12日、272巻:263~267頁;Blood 2007年、99巻:2342~2350頁;Blood 2009年、1 13巻:1422~1431頁;Blood 2009年10月8日;1 14巻(15号):3173~80頁;Blood.2003年;101巻(6号):2167~2174頁;Current Protocols in Molecular BiologyまたはCurrent Protocols in Immunology、John Wiley & Sons、New York、N.Y.(2009年)を参照)。B細胞のウイルス形質導入に関する追加的な記載は、これらそれぞれの全体を参照により本明細書に組み込む、WO2011/085247およびWO2014/152832に見出すことができる。
【0123】
例えば、ドナー由来のPBMC、BまたはTリンパ球、およびB-CLL等の他のB細胞がん細胞を単離し、IMDM培地もしくはRPMI 1640(GibcoBRL Invitrogen、Auckland、New Zealand)、または本明細書に記載されている他の適した培地において、無血清で、または血清(例えば、5~10%FCS、ヒトAB血清および血清代替物)およびペニシリン/ストレプトマイシン、および/またはトランスフェリンおよび/またはインスリン等の他の適したサプリメントを補充して培養することができる。一実施形態では、細胞は、48ウェルプレートにおける1×105個の細胞で播種され、濃縮されたベクターは、慣例的な方法論を使用した当業者によって慣例的に最適化され得る様々な用量で添加される。一実施形態では、B細胞は、10%AB血清、5%FCS、50ng/ml rhSCF、10ng/ml rhlL-15および5ng/ml rhlL-2を補充したRPMIにおいてMS5細胞単層に移入され、培地は必要に応じて定期的に新しくする。当業者によって認識されるであろうが、他の適した培地およびサプリメントを所望の通りに使用することができる。
【0124】
ある特定の実施形態は、レトロウイルスベクター、またはレトロウイルスに由来するベクターの使用に関する。「レトロウイルス」は、動物細胞に感染することができ、感染初期段階で逆転写酵素を利用して、自身のRNAゲノムからDNAコピーを生成し、次いでこれが典型的に宿主ゲノムに組み込まれる、エンベロープ型RNAウイルスである。レトロウイルスベクターの例として、モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)由来ベクター、造血前駆体細胞およびその分化した後代等の標的細胞における長期安定的発現をもたらすマウス幹細胞ウイルスに基づくレトロウイルスベクター(例えば、Hawleyら、PNAS USA 93巻:10297~10302頁、1996年;Kellerら、Blood 92巻:877~887頁、1998年を参照)、ハイブリッドベクター(例えば、Choiら、Stem Cells 19巻:236~246頁、2001年を参照)、ならびにレンチウイルスベクター等の複合レトロウイルス由来ベクターが挙げられる。
【0125】
一実施形態では、B細胞は、B細胞の少なくとも部分を形質導入するのに十分な条件下、プロモーターに作動可能に連結した目的の核酸を含むレトロウイルスベクターと接触される。一実施形態では、B細胞は、B細胞の少なくとも2%を形質導入するのに十分な条件下、プロモーターに作動可能に連結した目的の核酸を含むレトロウイルスベクターと接触される。さらなる実施形態では、B細胞は、休止B細胞の少なくとも2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはさらには100%を形質導入するのに十分な条件下、ベクターと接触される。特定の一実施形態では、本明細書に記載されている通りにin vitroで培養された、分化および活性化されたB細胞が形質導入され、この場合、培養された分化/活性化されたB細胞は、分化および活性化されたB細胞の少なくとも2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはさらには100%を形質導入するのに十分な条件下、本明細書に記載されているベクターと接触される。
【0126】
ある特定の実施形態では、形質導入の前に、細胞は、当業者に公知で慣例的に最適化される適切な濃度のStaphylococcus Aureus Cowan(SAC;Calbiochem、San Diego、CA)および/またはIL-2で予め刺激される。当業者に公知で本明細書に記載されている通り、他のB細胞活性化因子(例えば、PMA)を使用することができる。
【0127】
上に記す通り、ある特定の実施形態は、レンチウイルスベクターを用いる。用語「レンチウイルス」は、分裂および非分裂細胞の両方に感染することができる、複合レトロウイルスの属を指す。レンチウイルスの例として、HIV(ヒト免疫不全ウイルス;HIV 1型およびHIV 2型を含む)、ビスナ・マエディ、ヤギ関節炎・脳炎ウイルス、ウマ感染性貧血ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。レンチウイルスベクターは、これらのレンチウイルスのうちいずれか1種または複数に由来することができる(例えば、これらそれぞれの全体を参照により本明細書に組み込む、Evansら、Hum Gene Ther.10巻:1479~1489頁、1999年;Caseら、PNAS USA 96巻:2988~2993頁、1999年;Uchidaら、PNAS USA 95巻:1 1939~1 1944頁、1998年;Miyoshiら、Science 283巻:682~686頁、1999年;Suttonら、J Virol 72巻:5781~5788頁、1998年;およびFrechaら、Blood.1 12巻:4843~52頁、2008年を参照)。
【0128】
休止TおよびB細胞を、HIVアクセサリータンパク質(vif、vpr、vpuおよびnef)の大部分を保有するVSVGコートLVによって形質導入することができることが記録された(例えば、Frechaら、2010年、Mol. Therapy 18巻:1748頁を参照)。ある特定の実施形態では、レトロウイルスベクターは、HIVゲノムまたはSIVゲノム等、レンチウイルスゲノム由来のある特定の最小配列を含む。レンチウイルスのゲノムは典型的に、5’末端反復配列(LTR)領域、gag遺伝子、pol遺伝子、env遺伝子、アクセサリー遺伝子(例えば、nef、vif、vpr、vpu、tat、rev)および3’LTR領域へと組織化される。ウイルスLTRは、U3、R(反復)およびU5と称される3つの領域へと分けられる。U3領域は、エンハンサーおよびプロモーターエレメントを含有し、U5領域は、ポリアデニル化シグナルを含有し、R領域は、U3およびU5領域を分離する。R領域の転写された配列は、ウイルスRNAの5’および3’末端の両方に現れる(例えば、これらそれぞれの全体を参照により本明細書に組み込む、「RNA Viruses: A Practical Approach」(Alan J. Cann編、Oxford University Press、2000年);O Narayan、J. Gen. Virology.70巻:1617~1639頁、1989年;Fieldsら、Fundamental Virology Raven Press.、1990年;Miyoshiら、J Virol.72巻:8150~7頁、1998年;および米国特許第6,013,516号を参照)。レンチウイルスベクターは、レンチウイルスゲノムのこれらのエレメントのうちいずれか1種もしくは複数を含んで、所望の通りにベクターの活性を調節することができる、またはこれらのエレメントのうち1種または複数に欠失、挿入、置換もしくは変異を含有して、例えば、レンチウイルス複製の病理学的効果を低下させる、もしくは単一ラウンドの感染にレンチウイルスベクターを限定することができる。
【0129】
典型的に、最小レトロウイルスベクターは、ある特定の5’LTRおよび3’LTR配列、1種または複数の目的の遺伝子(標的細胞において発現されるべき)、1種または複数のプロモーター、ならびにRNAのパッケージングのためのシス作用性配列を含む。本明細書に記載され、本技術分野で公知の通り、他の調節配列が含まれていてもよい。ウイルスベクターは典型的に、真核細胞(例えば、293-HEK)等のパッケージング細胞株にトランスフェクトされ得るプラスミドにクローニングされ、また、典型的に、細菌におけるプラスミドの複製に有用な配列を含む。
【0130】
ある特定の実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルス等、レトロウイルスの5’および/または3’LTR由来の配列を含む。LTR配列は、いずれかの種由来のいずれかのレンチウイルス由来のLTR配列となることができる。例えば、LTR配列は、HIV、SIV、FIVまたはBIV由来のLTR配列となることができる。好ましくは、LTR配列は、HIV LTR配列である。
【0131】
ある特定の実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスの5’LTR由来のRおよびU5配列、ならびにレンチウイルス由来の不活性化されたまたは「自己不活性化型」3’LTRを含む。「自己不活性化型3’LTR」は、LTR配列が下流遺伝子の発現を駆動するのを防止する変異、置換または欠失を含有する3’末端反復配列(LTR)である。3’LTR由来のU3領域のコピーは、組み込まれたプロウイルスにおける両方のLTRの生成のための鋳型として作用する。よって、不活性化型欠失または変異を有する3’LTRが、プロウイルスの5’LTRとして組み込む場合、5’LTRからの転写は不可能である。このことは、ウイルスエンハンサー/プロモーターおよびいずれかの内部エンハンサー/プロモーターの間の競合を排除する。自己不活性化型3’LTRは、例えば、これらそれぞれの全体を参照により本明細書に組み込む、Zuffereyら、J Virol.72巻:9873~9880頁、1998年;Miyoshiら、J Virol.72巻:8150~8157頁、1998年;およびIwakumaら、J Virology 261巻:120~132頁、1999年に記載されている。自己不活性化型3’LTRは、本技術分野で公知のいずれかの方法によって生成することができる。ある特定の実施形態では、3’LTRのU3エレメントは、そのエンハンサー配列、好ましくは、TATAボックス、Splおよび/またはNF-カッパーB部位に欠失を有する。自己不活性化型3’LTRの結果として、宿主細胞ゲノムに組み込まれたプロウイルスは、不活性化された5’LTRを含むであろう。
【0132】
本明細書に提供されているベクターは典型的に、1個または複数の標的細胞において望ましく発現されるタンパク質(またはsiRNA等、他の分子)をコードする遺伝子を含む。ウイルスベクターにおいて、目的の遺伝子は、好ましくは、5’LTRおよび3’LTR配列の間に位置する。さらに、目的の遺伝子は、好ましくは、他の遺伝的エレメント、例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー等、転写調節配列と機能的関係性にあって、一度標的細胞に遺伝子が取り込まれると、特定の様式で目的の遺伝子の発現を調節する。ある特定の実施形態では、有用な転写調節配列は、時間的および空間的の両方で、活性に関して高度に調節される配列である。
【0133】
ある特定の実施形態では、1種または複数の追加的な遺伝子は、安全対策として取り込んで、主に、ヒト患者内等、不均一集団内のトランスフェクトされた標的細胞の選択的死滅を可能にすることができる。例示的な一実施形態では、選択された遺伝子は、チミジンキナーゼ遺伝子(TK)であり、その発現は、標的細胞を、薬物ガンシクロビルの作用に対して感受性にする。さらなる実施形態では、自殺遺伝子は、二量体化薬によって活性化されるカスパーゼ9自殺遺伝子である(例えば、Teyら、Biology of Blood and Marrow Transplantation 13巻:913~924頁、2007年を参照)。
【0134】
ある特定の実施形態では、マーカータンパク質をコードする遺伝子は、ウイルスまたは非ウイルスベクターにおける一次遺伝子の前または後に配置して、所望のタンパク質を発現している細胞の同定および/または選択を可能にすることができる。ある特定の実施形態は、目的の一次遺伝子と共に、緑色蛍光タンパク質(GFP)または赤色蛍光タンパク質(RFP)等、蛍光マーカータンパク質を取り込む。1種または複数の追加的なレポーター遺伝子が含まれる場合、レポーター遺伝子および/または他のいずれかの目的の遺伝子から目的の一次遺伝子を分離する、IRES配列または2Aエレメントも含まれていてよい。
【0135】
ある特定の実施形態は、1種または複数の選択可能マーカーをコードする遺伝子を用いることができる。例として、選択的培養培地において育成されている形質転換された宿主細胞の生存または成長に必要な因子をコードする薬物耐性のための遺伝子等、真核細胞または原核細胞において有効な選択可能マーカーを挙げることができる。例示的な選択遺伝子は、抗生物質または他の毒素、例えば、G418、ハイグロマイシンB、ピューロマイシン、ゼオシン(zeocin)、ウアバイン、ブラストサイジン、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートもしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与するか、栄養要求性欠損を補完するか、または補給するタンパク質をコードし、これらは別々のプラスミドに存在し、ウイルスベクターとのコトランスフェクションによって導入することができる。一実施形態では、遺伝子は、メトトレキセート耐性を付与する変異体ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードする。ある特定の他の実施形態は、トランスフェクトされた細胞のタグ付けおよび検出または精製に使用することができる1種または複数の細胞表面受容体(例えば、低親和性神経成長因子受容体(LNGFR))、または形質導入タグ系として有用な他の斯かる受容体をコードする遺伝子を用いることができる。例えば、Lauerら、Cancer Gene Ther.2000年3月;7巻(3号):430~7頁を参照されたい。
【0136】
レトロウイルスベクター等、ある特定のウイルスベクターは、1種または複数の異種プロモーター、エンハンサー、またはその両方を用いる。ある特定の実施形態では、レトロウイルスまたはレンチウイルス5’LTR由来のU3配列は、ウイルス構築物におけるプロモーターまたはエンハンサー配列と置き換えることができる。ある特定の実施形態は、ウイルスベクターの5’LTRおよび3’LTR配列の間に位置し、目的の遺伝子に作動可能に連結した、「内部」プロモーター/エンハンサーを用いる。
【0137】
「機能的関係性」および「作動可能に連結された」は、プロモーターおよび/またはエンハンサーが、適切な調節分子と接触されると、遺伝子の発現が影響されることになるように、遺伝子が、プロモーターおよび/またはエンハンサーに関して正確な位置および配向性にあることを限定することなく意味する。パッケージング細胞株におけるウイルスRNAゲノムの発現を調節する(例えば、増加させる、減少させる)、感染した標的細胞における選択された目的の遺伝子の発現を調節する、またはその両方を行う、いかなるエンハンサー/プロモーターの組み合わせも使用することもできる。
【0138】
プロモーターは、ポリメラーゼ結合および転写が起こることを可能にするDNA配列によって形成される発現制御エレメントである。プロモーターは、選択された目的の遺伝子の開始コドンの上流(5’)に位置し(典型的に、約100~1000bp以内)、それが作動可能に連結されたコードポリヌクレオチド配列の転写および翻訳を制御する、非翻訳配列である。プロモーターは、誘導性または構成的となることができる。誘導性プロモーターは、その制御下で、温度変化等、培養条件の何らかの変化に応答して、DNAからの増加したレベルの転写を開始する。プロモーターは、一方向性または双方向性となることができる。双方向性プロモーターを使用して、2種の遺伝子、例えば、目的の遺伝子および選択マーカーを同時発現させることができる。あるいは、同じベクターにおいて反対の配向性で、異なる遺伝子の発現をそれぞれ制御する2個のプロモーターを含む双方向性プロモーター構成を利用することができる。
【0139】
ポリヌクレオチドコード配列にプロモーターを作動可能に連結するための方法と同様に、種々のプロモーターが本技術分野で公知である。ネイティブプロモーター配列および多くの異種プロモーターの両方を使用して、選択された目的の遺伝子の発現を方向付けることができる。ある特定の実施形態は、一般に、ネイティブプロモーターと比較して、所望のタンパク質のより優れた転写およびより高い収量を可能にすることから、異種プロモーターを用いる。
【0140】
ある特定の実施形態は、異種ウイルスプロモーターを用いることができる。斯かるプロモーターの例として、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよびサルウイルス40(SV40)等、ウイルスのゲノムから得られるプロモーターが挙げられる。ある特定の実施形態は、アクチンプロモーター、免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーター、または目的の遺伝子のネイティブ配列に関連したプロモーター等、異種哺乳動物プロモーターを用いることができる。典型的に、プロモーターは、活性化されたBリンパ球、形質B細胞、メモリーB細胞または他のリンパ球標的細胞等、標的細胞と適合性である。
【0141】
ある特定の実施形態は、RNAポリメラーゼIIおよびIIIプロモーターのうち1種または複数を用いることができる。RNAポリメラーゼIIIプロモーターの適した選択は、例えば、その全体を参照により本明細書に組み込む、PauleおよびWhite.、Nucleic Acids Research.、28巻、1283~1298頁、2000年に見出すことができる。RNAポリメラーゼIIおよびIIIプロモーターは、その下流RNAコード配列を転写するようにそれぞれRNAポリメラーゼIIまたはIIIを方向付けることができる、いずれかの合成または操作されたDNA断片も含む。さらに、ウイルスベクターの一部として使用されるRNAポリメラーゼIIまたはIII(Pol IIまたはIII)プロモーター(単数または複数)は、誘導性となることができる。いずれか適した誘導性Pol IIまたはIIIプロモーターを、本明細書に記載されている方法と共に使用することができる。例示的なPol IIまたはIIIプロモーターは、これらそれぞれの全体を参照により本明細書に組み込む、OhkawaおよびTaira、Human Gene Therapy、11巻、577~585頁、2000年;ならびにMeissnerら、Nucleic Acids Research、29巻、1672~1682頁、2001年に提供されている、テトラサイクリン応答性プロモーターを含む。
【0142】
使用することができる構成的プロモーターの非限定例として、ユビキチンのプロモーター、CMVプロモーター(例えば、Karasuyamaら、J. Exp. Med.169巻:13頁、1989年を参照)、β-アクチン(例えば、Gunningら、PNAS USA 84巻:4831~4835頁、1987年を参照)、伸長因子-1アルファ(EF-1アルファ)プロモーター、CAGプロモーターおよびpgkプロモーター(例えば、これらのそれぞれを参照により本明細書に組み込む、Adraら、Gene
60巻:65~74頁、1987年);Singer-Samら、Gene 32巻:409~417頁、1984年;およびDobsonら、Nucleic Acids Res.10巻:2635~2637頁、1982年を参照)が挙げられる。組織特異的プロモーターの非限定例として、lckプロモーター(例えば、Garvinら、Mol. Cell Biol.8巻:3058~3064頁、1988年;およびTakaderaら、Mol. Cell Biol.9巻:2173~2180頁、1989年を参照)、ミオゲニンプロモーター(Yeeら、Genes and Development 7巻:1277~1289頁、1993年)およびthylプロモーター(例えば、Gundersenら、Gene 1 13巻:207~214頁、1992年を参照)が挙げられる。
【0143】
プロモーターの追加的な例として、Bリンパ球において機能的である、ユビキチン-Cプロモーター、ヒトμ重鎖プロモーターまたはIg重鎖プロモーター(例えば、MH)、およびヒトκ軽鎖プロモーターまたはIg軽鎖プロモーター(例えば、EEK)が挙げられる。MHプロモーターは、マトリクス会合領域が隣接するiEμエンハンサーが先行する、ヒトμ重鎖プロモーターを含有し、EEKプロモーターは、イントロンエンハンサー(iEκ)、マトリクス会合性領域および3’エンハンサー(3Eκ)が先行する、κ軽鎖プロモーターを含有する(例えば、Luoら、Blood.1 13巻:1422~1431頁、2009年および米国特許出願公開第2010/0203630号を参照)。したがって、ある特定の実施形態は、これらのプロモーターまたはエンハンサーエレメントのうち1種または複数を用いることができる。
【0144】
一実施形態では、ある1つのプロモーターは、選択可能マーカーの発現を駆動し、第2のプロモーターは、目的の遺伝子の発現を駆動する。例えば、一実施形態では、EF-1アルファプロモーターは、選択マーカー(例えば、DHFR)の産生を駆動し、ミニチュアCAGプロモーター(例えば、Fanら、Human Gene Therapy 10巻:2273~2285頁、1999年を参照)は、目的の遺伝子(例えば、IDUA)の発現を駆動する。
【0145】
上に記す通り、ある特定の実施形態は、内部エンハンサー等、エンハンサーエレメントを用いて、目的の遺伝子の発現を増加させる。エンハンサーは、その転写を増加させるようにプロモーターに作用する、通常約10~300bpの長さのDNAのシス作用性エレメントである。エンハンサー配列は、□□□エンハンサー、□□□イントロンエンハンサーおよび3’□□エンハンサー等、哺乳動物遺伝子(例えば、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、インスリン)に由来することができる。複製起点の後側におけるSV40エンハンサー(bp 100~270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後側におけるポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーを含む、真核生物ウイルス由来のエンハンサーも含まれる。エンハンサーは、抗原特異的ポリヌクレオチド配列に対する位置5’または3’においてベクターへとスプライスすることができるが、好ましくは、プロモーターから5’の部位に位置する。当業者であれば、所望の発現パターンに基づき適切なエンハンサーを選択するであろう。
【0146】
ある特定の実施形態では、プロモーターは、遺伝子の誘導性発現を可能にするように選択される。テトラサイクリン応答性系およびlacオペレーター・リプレッサー系を含む、誘導性発現のための多数の系が、本技術分野で公知である。プロモーターの組み合わせを使用して、目的の遺伝子の所望の発現を得ることができることも企図される。当業者であれば、目的の生物および/または標的細胞における遺伝子の所望の発現パターンに基づきプロモーターを選択することができるであろう。
【0147】
ある特定のウイルスベクターは、ウイルス粒子へのゲノムウイルスRNAの取り込みを促進するためのシス作用性パッケージング配列を含有する。例として、psi-配列が挙げられる。斯かるシス作用性配列は、本技術分野で公知である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されているウイルスベクターは、2種またはそれよりも多い遺伝子を発現することができ、これは、例えば、配列内リボソーム進入配列(internal ribosomal entry sequence)(IRES)エレメント(参照により本明細書に組み込む米国特許第4,937,190号)もしくは2Aエレメントまたはその両方等、同時発現を容易にするエレメントを取り込むことにより、第1の遺伝子を越えて別々の遺伝子のそれぞれに作動可能に連結した内部プロモーターを取り込むことにより達成することができる。単に説明として、単一のベクターが、所望の特異性を有する免疫グロブリン分子の各鎖をコードする配列を含む場合、IRESまたは2Aエレメントを使用することができる。例えば、第1のコード領域(重鎖または軽鎖のいずれかをコード)は、プロモーターからすぐ下流に位置することができ、第2のコード領域(他方の鎖をコード)は、第1のコード領域から下流に位置することができ、IRESまたは2Aエレメントは、第1および第2のコード領域の間に、好ましくは、第2のコード領域に直接先行して位置する。他の実施形態では、IRESまたは2Aエレメントは、レポーター遺伝子、選択可能マーカー、または免疫機能を増強する遺伝子等、無関係の遺伝子の同時発現に使用される。使用することができるIRES配列の例は、脳脊髄炎ウイルス(EMCV)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV)、ヒトライノウイルス(HRV)、コクサッキーウイルス(CSV)、ポリオウイルス(POLIO)、A型肝炎ウイルス(HAV)、C型肝炎ウイルス(HCV)およびペスチウイルス(例えば、豚コレラウイルス(HOCV)およびウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV))のIRESエレメントを限定することなく含む(例えば、これらそれぞれの全体を参照により本明細書に組み込む、Leら、Virus Genes 12巻:135~147頁、1996年;およびLeら、Nuc. Acids Res.25巻:362~369頁、1997年を参照)。2Aエレメントの一例として、口蹄疫ウイルス由来のF2A配列が挙げられる。
【0148】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供されているベクターは、所望の結果を達成するための追加的な遺伝的エレメントも含有する。例えば、ある特定のウイルスベクターは、HIV-1 flapシグナル等、標的細胞におけるウイルスゲノムの核侵入を容易にするシグナルを含むことができる。さらに別の例として、ある特定のウイルスベクターは、tRNAアンバーサプレッサー配列等、標的細胞におけるプロウイルス組込み部位の特徴付けを容易にするエレメントを含むことができる。ある特定のウイルスベクターは、目的の遺伝子の発現を増強するように設計された1種または複数の遺伝的エレメントを含有することができる。例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス応答性エレメント(WRE)を構築物中に配置することができる(例えば、これらそれぞれの全体を参照により本明細書に組み込む、Zuffereyら、J. Virol.74巻:3668~3681頁、1999年;およびDeglonら、Hum. Gene Ther.11巻:179~190頁、2000年を参照)。別の例として、ニワトリβ-グロビンインスレーターが、構築物中に含まれていてもよい。このエレメントは、メチル化およびヘテロクロマチン化効果による標的細胞における組み込まれたDNAのサイレンシングの確率を低下させることが示されてきた。加えて、インスレーターは、染色体上の組込み部位における周囲のDNA由来のプラスのまたはマイナスの位置的効果から内部エンハンサー、プロモーターおよび外因的遺伝子を遮蔽することができる。ある特定の実施形態は、これらの遺伝的エレメントのそれぞれを用いる。別の実施形態では、本明細書に提供されているウイルスベクターは、発現を増加させるための遍在性クロマチンオープニングエレメント(UCOE)を含有することもできる(例えば、Zhang Fら、Molecular Therapy:The journal of the American Society of Gene Therapy 2010年9月;18巻(9号):1640~9頁を参照)。
【0149】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供されているウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、レンチウイルス)は、主に、選択された細胞型を標的化するために、1種または複数の選択されたウイルス糖タンパク質またはエンベロープタンパク質により「シュードタイプ化」されている。シュードタイプ化は、一般に、細胞表面ウイルス粒子上への1種または複数の異種ウイルス糖タンパク質の取り込みを指し、これは多くの場合、ウイルス粒子を、その通常の標的細胞とは異なる選択された細胞に感染させることができる。「異種」エレメントは、ウイルスベクターのRNAゲノムが由来するウイルス以外のウイルスに由来する。典型的に、ウイルスベクターの糖タンパク質コード領域は、それ自身の糖タンパク質の発現を防止するための欠失による等、遺伝的に変更されている。単に説明として、HIV由来レンチウイルスベクター由来のエンベロープ糖タンパク質gp41および/またはgp120は典型的に、異種ウイルス糖タンパク質によるシュードタイプ化の前に欠失されている。
【0150】
ある特定の実施形態では、ウイルスベクターは、Bリンパ球を標的化する異種ウイルス糖タンパク質によりシュードタイプ化される。ある特定の実施形態では、ウイルス糖タンパク質は、休止または静止状態Bリンパ球の選択的感染または形質導入を可能にする。ある特定の実施形態では、ウイルス糖タンパク質は、Bリンパ球形質細胞、形質芽球および活性化されたB細胞の選択的感染を可能にする。ある特定の実施形態では、ウイルス糖タンパク質は、静止状態Bリンパ球、形質芽球、形質細胞および活性化されたB細胞の感染または形質導入を可能にする。ある特定の実施形態では、ウイルス糖タンパク質は、B細胞慢性リンパ球白血病細胞の感染を可能にする。一実施形態では、ウイルスベクターは、VSV-Gによりシュードタイプ化される。別の実施形態では、異種ウイルス糖タンパク質は、Edmonton麻疹ウイルス等の麻疹ウイルスの糖タンパク質に由来する。ある特定の実施形態は、麻疹ウイルス糖タンパク質ヘマグルチニン(H)、融合タンパク質(F)またはその両方をシュードタイプ化する(例えば、これらそれぞれの全体を参照により本明細書に組み込む、Frechaら、Blood.1 12巻:4843~52頁、2008年;およびFrechaら、Blood.1 14巻:3173~80頁、2009年を参照)。一実施形態では、ウイルスベクターは、テナガザル白血病ウイルス(GALV)によりシュードタイプ化される。一実施形態では、ウイルスベクターは、ネコ内在性レトロウイルス(RD114)によりシュードタイプ化される。一実施形態では、ウイルスベクターは、ヒヒ内在性レトロウイルス(BaEV)によりシュードタイプ化される。一実施形態では、ウイルスベクターは、マウス白血病ウイルス(MLV)によりシュードタイプ化される。一実施形態では、ウイルスベクターは、テナガザル白血病ウイルス(GALV)によりシュードタイプ化される。さらなる実施形態では、ウイルスベクターは、特定の細胞型へとベクターを標的化するように機能する1個または複数の可変領域(例えば、重鎖および軽鎖可変領域)等、埋伏された抗体結合ドメインを含む。
【0151】
ウイルスベクターの生成は、例えば、Sambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press、N.Y.(1989年))、Coffinら(Retroviruses. Cold Spring Harbor Laboratory Press、N.Y.(1997年))および「RNA Viruses: A Practical Approach」(Alan J. Cann編、Oxford University Press(2000年))に記載されている通り、制限エンドヌクレアーゼ消化、ライゲーション、形質転換、プラスミド精製、PCR増幅およびDNA配列決定の標準技法を限定することなく含む、本技術分野で公知のいずれか適した遺伝子操作技法を使用して達成することができる。
【0152】
本技術分野で公知のいずれか種々の方法を使用して、そのゲノムがウイルスベクターのRNAコピーを含む、適したレトロウイルス粒子を産生することができる。一方法として、ウイルスベクターは、所望の標的細胞特異性で、ウイルス粒子へのウイルスベクターに基づき、ウイルスゲノムRNAをパッケージするパッケージング細胞株に導入することができる。パッケージング細胞株は典型的に、トランスで、構造gagタンパク質、酵素polタンパク質およびエンベロープ糖タンパク質を含む、ウイルス粒子へのウイルスゲノムRNAのパッケージングおよび標的細胞の感染に要求されるウイルスタンパク質をもたらす。
【0153】
ある特定の実施形態では、パッケージング細胞株は、ある特定の必要なまたは所望のウイルスタンパク質(例えば、gag、pol)を安定に発現する(例えば、参照により本明細書に組み込む、米国特許第6,218,181号を参照)。ある特定の実施形態では、パッケージング細胞株は、本明細書に記載されている麻疹ウイルス糖タンパク質配列を含む、必要なまたは所望のウイルスタンパク質(例えば、gag、pol、糖タンパク質)のある特定のものをコードするプラスミドを一過性にトランスフェクトされる。例示的な一実施形態では、パッケージング細胞株は、gagおよびpol配列を安定に発現し、次いでこの細胞株は、ウイルスベクターをコードするプラスミドおよび糖タンパク質をコードするプラスミドをトランスフェクトされる。所望のプラスミドの導入後に、ウイルス粒子は、採取され、超遠心分離による等、それに見合うように加工されて、ウイルス粒子の濃縮ストックを達成する。例示的なパッケージング細胞株は、293(ATCC CCL X)、HeLa(ATCC CCL 2)、D17(ATCC CCL 183)、MDCK(ATCC CCL 34)、BHK(ATCC CCL-10)およびCf2Th(ATCC CRL 1430)細胞株を含む。
【0154】
治療剤
本明細書において、「目的の遺伝子」または「遺伝子」または「目的の核酸」は、標的トランスフェクト細胞において発現されるべき導入遺伝子を指す。用語「遺伝子」を使用することができるが、この用語は、ゲノムDNAに見出される遺伝子であることを含意するものではなく、用語「核酸」と互換的に使用される。一般に、目的の核酸は、治療剤のコードに適した核酸を提供し、cDNAまたはDNAを含むことができ、イントロンを含んでも含まなくてもよいが、一般に、イントロンを含まない。他の箇所に記されている通り、目的の核酸は、標的細胞において目的のタンパク質を有効に発現させるための発現制御配列に作動可能に連結される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されているベクターは、1種または複数の目的の遺伝子を含むことができ、例えば、本明細書に記載されている内部プロモーターを使用して組織化され得る免疫グロブリンの重鎖および軽鎖等、2、3、4もしくは5種またはそれよりも多い目的の遺伝子を含むことができる。
【0155】
「ポリヌクレオチド」または「核酸」の言及は、本明細書において、mRNA、RNA、cRNA、cDNAまたはDNAを指定する。この用語は典型的に、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチド、またはどちらかの型のヌクレオチドの改変された形態である、少なくとも10塩基の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。この用語は、DNAおよびRNAの一本および二本鎖形態を含む。目的の核酸または遺伝子は、目的のタンパク質をコードするいずれかの核酸となることができる。
【0156】
本明細書に記載されている遺伝子改変B細胞によって送達されるべき治療剤は、タンパク質となることができる。本明細書に記載されている使用のための目的のタンパク質は、所望の活性をもたらすいずれかのタンパク質を含む。この点に関して、目的のタンパク質として、抗体またはその抗原結合性断片、細胞表面受容体、サイトカイン(リンホカイン、インターロイキン、インターフェロンまたはケモカイン)等の分泌タンパク質、TGF-ベータおよび線維芽細胞増殖因子等の他の分泌シグナル伝達分子、タンパク質の抗原性断片、DNAコード小分子(例えば、Nature Chemical Biology
5巻、647~654頁(2009年)を参照)、酵素、凝固因子、ならびに接着分子が挙げられるがこれらに限定されない。一実施形態では、核酸は、抗体またはその抗原結合性断片をコードする。例示的な抗原結合性断片は、ドメイン抗体、sFv、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvを含む。一実施形態では、核酸は、切断可能リンカーを含む融合タンパク質として目的のタンパク質をコードする。例えば、抗体重鎖および軽鎖は、自己切断可能リンカーペプチド、例えば、F2Aと共に発現させることができる。
【0157】
一実施形態では、核酸によってコードされる抗体は、HIV中和抗体、b12の少なくとも抗原結合ドメインを含む(例えば、J Virol 2003年、77巻:5863~5876頁;J Virol.1994年8月;68巻(8号):4821~8頁;Proc Natl Acad Sci U S A.1992年、89巻:9339~9343頁を参照;例示的な配列は、b12軽鎖(AAB26306.1 Gl 299737)および重鎖(AAB26315.1 Gl 299746)に関してGenBank受託番号に提示されている)。さらなる実施形態では、目的の核酸によってコードされる抗体は、Fuzeon(商標)(T-20/エンフビルチド/ペンタフシド(pentafuside)/DP-178)を含む。DP-178は、HIVにおけるgp41由来のアミノ酸配列であり、その標的細胞と融合するHIVの能力に干渉する。Fuzeonは、当業者に公知の方法を使用して、合成によって産生することができる(例えば、2001年、J. Virol.75巻:3038~3042頁を参照;当該論文に記載されている方法が、治療用量のDP-178ペプチドの分泌をもたらした可能性は非常に低いことに留意されたい)。
【0158】
特定の一実施形態では、目的の核酸は、免疫学的に活性なタンパク質をコードする。ある特定の実施形態では、目的の核酸は、B細胞、T細胞または他の免疫細胞の表面におけるタンパク質の提示を介して免疫ワクチン様反応を誘導する、タンパク質またはその生物学的活性断片(例えば、抗原性断片)をコードする。ある特定の実施形態では、目的のタンパク質は、例えば、細胞分裂の促進、異なるB系列への分化の促進、細胞の不活性化もしくは死滅が挙げられるがこれらに限定されない、B細胞の調節に影響を与える、または他の導入されたDNAエレメントの産生もしくは活性を調節する。インターロイキンは、当業者に公知であり、現在のところ、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL27のp28サブユニットの分泌形態、IL-28、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-34およびIL-35を含む。インターフェロンは、IFN-γ、IFN-α、IFN-βおよびIFN-οを含む。本明細書における使用に企図されるケモカインは、C型ケモカインXCL1およびXCL2、C-C型ケモカイン(現在まで、CCL1~CCL28を含む)およびCXC型ケモカイン(現在まで、CXCL1~CXCL17を含む)を含む。目的の遺伝子として、TNFスーパーファミリーのメンバーも企図される(例えば、TNF-a、4-1 BBリガンド、B細胞活性化因子、FASリガンド、リンホトキシン、OX40L RANKLおよびTRAIL)。
【0159】
ある特定の実施形態では、目的のタンパク質は、免疫学的寛容を誘導する。この点に関して、目的のタンパク質は、IgG-抗原融合タンパク質を含むことができる(例えば、Cellular Immunology 235巻(1号)2005年、12~20頁を参照)。ある特定の実施形態では、目的のタンパク質の発現は、TGF-β、IL-10およびLPS等の因子による細胞の刺激を伴うことができる。ある特定の実施形態では、寛容を誘導するIL-10または転写因子等の因子は、培養B細胞により発現される。
【0160】
さらなる実施形態では、目的の遺伝子(複数可)は、B細胞から抗体分泌細胞への分化を促進する1種もしくは複数の因子および/または抗体産生細胞の長寿命を促進する1種もしくは複数の因子をコードする。斯かる因子は、例えば、Blimp-1、Xbp1、IRF4、Zbtb20、TRF4、Bcl-xl、Bcl-2、Mcl-1またはBcl5のような抗アポトーシス因子、およびCD40受容体の構成的に活性な変異体を含む。さらに別の目的の遺伝子は、TNF受容体関連因子(TRAF)等、下流シグナル伝達分子の発現を促進する因子をコードする。この点に関して、TNF受容体スーパーファミリーの細胞活性化、細胞生存および抗アポトーシス機能は、大部分は、TRAF1~6によって媒介される(例えば、R.H. Archら、Genes Dev.12巻(1998年)2821~2830頁を参照)。TRAFシグナル伝達の下流エフェクターは、細胞および免疫機能の様々な側面に関与する遺伝子をオンにすることができる、NF-KBおよびAP-1ファミリーにおける転写因子を含む。さらに、NF-κβおよびAP-1の活性化は、抗アポトーシス遺伝子の転写を介して、アポトーシスからの細胞保護をもたらすことが示されてきた。追加的な実施形態では、IL-10、IL-35、TGF-ベータまたはFc-融合タンパク質等、コードされる因子は、免疫寛容の誘導に関連する。
【0161】
追加的な実施形態では、目的の核酸(複数可)は、1種または複数のエプスタイン・バーウイルス(EBV)由来のタンパク質をコードする。EBV由来のタンパク質として、EBNA-1、EBNA-2、EBNA-3、LMP-1、LMP-2、EBER、EBV-EA、EBV-MA、EBV-VCAおよびEBV-ANが挙げられるがこれらに限定されない。特定の一実施形態では、目的の核酸は、抗体またはその抗原結合性断片をコードする。この点に関して、抗体は、天然抗体またはカスタムの組換えにより操作された抗体となることができる。抗体またはその部分を含む融合タンパク質は、本明細書に記載されているベクターによってコードされることが特に企図される。
【0162】
一実施形態では、本開示に係る抗体またはその断片は、m36抗HIV抗体(例えば、Proc Natl Acad Sci U S A.2008年11月4日;105巻(44号):17121~6頁を参照)等の抗HIV抗体のアミノ酸配列、またはm36等の抗HIV抗体のアミノ酸配列と少なくとも60%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸分子を有する。特に、m36L2CD4Fc等、m36またはその誘導体を含む融合タンパク質が特に企図される(例えば、Antiviral Research、88巻、1号、2010年10月、107~115頁を参照)。一実施形態では、抗HIV抗体は、広く中和するモノクローナル抗体VRC01である(例えば、Wuら、Science、2010年、329巻(5993号):856861頁およびLiら、J Virol、2011年、85巻(17号):8954~8967頁を参照)。
【0163】
さらなる実施形態では、本開示の導入遺伝子によってコードされる抗体は、自己抗原に結合する。ある特定の実施形態では、自己抗原は、この点に関して、多発性硬化症または1型糖尿病の発症に関連し、MBP、アルファB-クリスタリン、S100ベータ、プロテオリピドタンパク質(PLP)、HSP105、水疱性類天疱瘡(BP)抗原1の上皮アイソフォーム(BPAG1-e)、脂質、ならびにミエリン希突起膠細胞糖タンパク質(MOG)-アルファおよびMOG-ベータアイソフォーム、または種々の島細胞自己抗原のいずれか(例えば、シアロ糖脂質、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、インスリン、インスリン受容体、38kD、ウシ血清アルブミン、グルコーストランスポーター、hsp 65、カルボキシペプチダーゼH、52kD、ICA12/ICA512、150kDおよびRIN極性)を含むがこれらに限定されない。これらの自己抗原に対する抗体は、本技術分野で公知であり、慣例的な技法を使用して、配列決定し、組換えにより作製することができる(例えば、J. Clin. Invest.107巻(5号):555~564頁(2001年)を参照)。
【0164】
さらなる実施形態では、抗体は、がん関連抗原に結合する。がん関連抗原は、種々の腫瘍タンパク質に由来することができる。本開示において有用な説明のための腫瘍タンパク質として、p53、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A10、MAGE-A12、BAGE、DAM-6、-10、GAGE-1、-2、-8、GAGE-3、-4、-5、-6、-7B、NA88-A、NY-ESO-1、MART-1、MC1 R、Gp100、PSA、PSM、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、ART-4、CAMEL、CEA、Cyp-B、Her2/neu(例えば、抗体は、Her2特異的mAb、ハーセプチン(R)に由来することができる)、hTERT、hTRT、iCE、MUC1、MUC2、PRAME、P15、RU1、RU2、SART-1、SART-3、WT1、AFP、□-カテニン/m、カスパーゼ-8/m、CEA、CDK-4/m、ELF2M、GnT-V、G250、HSP70-2M、HST-2、KIAA0205、MUM-1、MUM-2、MUM-3、ミオシン/m、RAGE、SART-2、TRP-2/INT2、707-AP、アネキシンII、CDC27/m、TPI/mbcr-abl、ETV6/AML、LDLR/FUT、Pml/RARaおよびTEL/AML1のうちいずれか1種または複数が挙げられるがこれらに限定されない。上述および他の腫瘍タンパク質は、当業者にとって公知である。
【0165】
さらなる実施形態では、目的の核酸は、阻害活性、がん細胞において細胞死を誘導する能力、またはがん細胞増殖を減速もしくは阻害する能力等が挙げられるがこれらに限定されない、特定の機能属性を有するペプチドまたは他の結合ドメインをコードする。この点に関して、一実施形態では、目的の核酸によってコードされるペプチドまたは結合ドメインは、上述のがん関連抗原、CD4、HIV gp120または他のウイルスタンパク質、ICAM-3、DC-SIGN等、本明細書に記載されている標的タンパク質のいずれかに結合することができる(例えば、米国特許第7,301,010号を参照)。ある特定の実施形態では、ペプチドは、病原性および非病原性細菌ならびに緑色植物に由来することができる。説明のためのペプチドは、米国特許第7084105号、同第7301010号、同第7338766号、同第7381701号、同第7491394号、同第7511117号、同第7556810号に開示されている。一実施形態では、目的の核酸は、p53ユビキチン化のペプチド阻害剤である、アズリン-p28(NSC745104)をコードする(例えば、Cancer Chemother Pharmacol 2010年、DOI、10.1007/S00280-010-1518-3;米国特許第7,084,105号を参照)。さらなる実施形態では、目的の核酸は、食欲を誘導し、がん患者の処置に使用することができる、グレリンとして公知の因子をコードする(例えば、Obes Facts.2010年、3巻:285~92頁;FASEB J.18巻(3号):439~56頁を参照)。別の実施形態では、目的の核酸は、アンジオポエチン1および2に結合し、これを阻害する、結合ペプチドをコードする(例えば、AMG386を参照;がんの処置に使用される抗体(ペプチボディ)のFc断片)。ある特定の実施形態では、腫瘍抗原は、がんを有する個体から直接的に同定することができる。この点に関して、スクリーニングは、種々の公知技術を使用して実行することができる。例えば、一実施形態では、腫瘍生検が、患者から採取され、RNAが、腫瘍細胞から単離され、遺伝子チップ(例えば、Affymetrix、Santa Clara、CA製)を使用してスクリーニングされ、腫瘍抗原が同定される。腫瘍標的抗原が同定されたら、本技術分野で公知の技法を使用して、これをクローニング、発現および精製することができる。
【0166】
特定の一実施形態では、目的の核酸は、酵素をコードする。一実施形態では、目的の核酸は、リソソーム蓄積障害を処置するための酵素をコードする。一実施形態では、目的の核酸は、ムコ多糖症I型(MPS I)の処置または予防のために、イズロニダーゼ(IDUA)をコードする。一実施形態では、目的の核酸は、ムコ多糖症II型(MPS II)の処置または予防のために、イデュルスルファーゼをコードする。一実施形態では、目的の核酸は、ムコ多糖症VI型(MPS VI)の処置または予防のために、ガルスルファーゼをコードする。一実施形態では、目的の核酸は、ムコ多糖症IVA型(MPS IVA)の処置または予防のために、エロスルファーゼアルファをコードする。一実施形態では、目的の核酸は、ファブリー病の処置または予防のために、アガルシダーゼベータをコードする。一実施形態では、目的の核酸は、ファブリー病の処置または予防のために、アガルシダーゼアルファをコードする。一実施形態では、目的の核酸は、アルファ-1-アンチトリプシン欠損の処置または予防のために、アルファ-1-アンチトリプシンをコードする。一実施形態では、目的の核酸は、ムコ多糖症IIIB型(MPS IIIB)の処置または予防のために、アルファ-N-アセチルグルコサミニダーゼをコードする。別の実施形態では、目的の核酸は、血友病の処置または予防のために、第VII因子をコードする。一実施形態では、目的の核酸は、例えば、LCAT欠損および粥状動脈硬化の処置または予防に有用な、レシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)をコードする。別の実施形態では、目的の核酸は、例えば、粥状動脈硬化等、心血管疾患および障害の処置または予防のために、アポリポタンパク質A-1 Milano(ApoA-1 Milano)をコードする。一実施形態では、目的の核酸は、LPL欠損の処置または予防のために、リポタンパク質リパーゼ(LPL)をコードする。別の実施形態では、目的の核酸は、複数のHIV-1株(例えば、b12)に結合し、これを中和する、広く中和する抗体(bNAb)またはその融合タンパク質をコードする。さらに別の実施形態では、目的の核酸は、フェニルケトン尿症(PKU)の処置または予防のために、フェニルアラニンヒドロキシラーゼをコードする。
【0167】
「抗体」は、本明細書において、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の両方;霊長類化(primatized)(例えば、ヒト化);マウス;マウス-ヒト;マウス-霊長類;ならびにキメラを含み;インタクトな分子、その断片(scFv、Fv、Fd、Fab、Fab’およびF(ab)’2断片等)、またはインタクトな分子および/または断片の多量体もしくは凝集体となることができ;天然で生じ得る、または例えば、免疫化、合成もしくは遺伝子操作によって産生することができ;「抗体断片」は、本明細書において、抗原に結合し、一部の実施形態では、例えば、ガラクトース残基の取り込みによって、クリアランスおよび摂取を容易にする構造的特色を示すように誘導体化することができる、抗体に由来するまたはこれに関係する断片を指す。これは、例えば、F(ab)、F(ab)’2、scFv、軽鎖可変領域(VL)、重鎖可変領域(VH)、およびこれらの組み合わせを含む。供給源は、ヒト、ラクダ科動物(ラクダ、ヒトコブラクダまたはラマ由来;Hamers-Castermanら(1993年)Nature、363巻:446頁およびNguyenら(1998年)J. Mol. Biol.、275巻:413頁)、サメ(Rouxら(1998年)Proc. Nat’l. Acad. Sci.(USA)95巻:1 1804頁)、魚類(Nguyenら(2002年)Immunogenetics、54巻:39頁)、齧歯類、鳥類、ヒツジを含む、様々な種由来の抗体遺伝子配列(ファージライブラリー等において、抗体、sFv、scFvまたはFabとしてフォーマットすることができる)、ランダムペプチドライブラリーをコードする配列、またはフィブリノゲンドメイン(例えば、Weiselら(1985年)Science 230巻:1388頁を参照)、クニッツドメイン(例えば、米国特許第6,423,498号を参照)、リポカリンドメイン(例えば、WO2006/095164を参照)、V様ドメイン(例えば、米国特許出願公開第2007/0065431号を参照)、C型レクチンドメイン(ZelenskyおよびGready(2005年)FEBS J.272巻:6179頁)、等々(例えば、PCT特許出願公開番号WO2007/098934;WO2006/072620を参照)等、代替的な非抗体足場のループ領域におけるアミノ酸の操作された多様性をコードする配列、その他を含む。
【0168】
抗体技術を指すものとして当業者によって理解される用語はそれぞれ、本明細書に明確な定義がなければ、本技術分野において得られた意義を与えられている。例えば、用語「VL」および「VH」は、それぞれ抗体軽鎖および重鎖に由来する可変結合領域を指す。可変結合領域は、「相補性決定領域」(CDR)および「フレームワーク領域」(FR)として公知の、別々の十分に定義された小領域で構成されている。用語「CL」および「CH」は、「免疫グロブリン定常領域」、すなわち、それぞれ抗体軽鎖または重鎖に由来する定常領域を指し、後者領域は、領域が由来した抗体アイソタイプ(IgA、IgD、IgE、IgG、IgM)に応じて、Cm、CH2、CH3およびCH4定常領域ドメインへとさらに分けることができると理解されている。定常領域ドメインの部分は、ADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)、CDC(補体依存性細胞傷害)および補体結合等の免疫グロブリンのエフェクター機能、Fc受容体への結合、Fc領域を欠くポリペプチドと比べてより優れたin vivo半減期、プロテインA結合、ならびにおそらくさらには胎盤移行(placental transfer)(Caponら(1989年)Nature、337巻:525頁を参照)を担うドメインを含有するFc領域(「結晶化可能断片」領域)を構成する。さらに、Fc領域を含有するポリペプチドは、ポリペプチドの二量体化または多量体化を可能にする。
【0169】
免疫グロブリンのドメイン構造は、抗原結合ドメインおよびエフェクター機能を付与するドメインを免疫グロブリンクラスおよびサブクラスの間で交換することができるという点で操作に適している。例えば、アミノ酸変化(例えば、欠失、挿入、置換)は、グリコシル化および/またはフコシル化部位の数または位置の変化等、免疫グロブリンの翻訳後プロセスを変更することができる。グリコシル化によりADCCを増強するための方法は、本技術分野で公知であり、本明細書における使用に企図されている。例えば、グリコシル化を増強する酵素を抗体と同時発現させることができる。一実施形態では、MGAT3は、抗体を産生する細胞において過剰発現されて、抗体のグリコシル化およびそのADCC機能を増強する。一実施形態では、例えば、siRNAによるFut8の阻害は、抗体のグリコシル化およびADCCを増強する。
【0170】
免疫グロブリン構造および機能は、例えば、Harlowら編、Antibodies: A Laboratory Manual、第14章(Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor、1988年)に概説されている。組換え抗体技術のあらゆる側面に関する広範な紹介と共に詳細な情報は、教科書、Recombinant Antibodies(John Wiley & Sons、NY、1999年)に見出すことができる。詳細な抗体操作実験室プロトコールの包括的コレクションは、R. KontermannおよびS. Dubel編、The Antibody Engineering Lab Manual(Springer Verlag, Heidelberg/New York、2000年)に見出すことができる。さらに別の関連プロトコールは、John Wiley & Sons, Inc.、Boston、MAから出版されたCurrent Protocols in Immunology(2009年8月)においても利用できる。酵素の産生およびタンパク質操作(例えば、IDUA)のための方法もまた、本技術分野で公知であり、本明細書における使用に企図されている。
【0171】
よって、本開示は、B細胞を遺伝子改変するための本開示の治療剤(例えば、目的のタンパク質)をコードするポリヌクレオチド(単離されたまたは精製されたまたは純粋なポリヌクレオチド)、斯かるポリヌクレオチドを含むベクター(クローニングベクターおよび発現ベクターを含む)、および本開示に係るポリヌクレオチドまたはベクターで形質転換またはトランスフェクトされた細胞(例えば、宿主細胞)を提供する。ある特定の実施形態では、本開示の目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)が企図される。目的のタンパク質をコードする発現カセットも、本明細書において企図されている。
【0172】
本開示はまた、本開示のポリヌクレオチドを含むベクターに関し、特に、組換え発現構築物に関する。一実施形態では、本開示は、本開示のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを、斯かるタンパク質コード配列の転写、翻訳およびプロセシングを引き起こすまたは容易にする他のポリヌクレオチド配列と共に含むベクターを企図する。原核生物および真核生物宿主による使用に適切なクローニングおよび発現ベクターは、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor、NY(1989年)に記載されている。例示的なクローニング/発現ベクターは、その中に含有されているポリヌクレオチドの増幅、移入および/または発現に適した、本技術分野で公知のプラスミド、ファージミド、ファスミド(phasmid)、コスミド、ウイルス、人工染色体またはいずれかの核酸ビヒクルに基づくことができる、クローニングベクター、シャトルベクターおよび発現構築物を含む。
【0173】
本明細書において、ウイルスベクターに関して他のことが記載されていない限り、「ベクター」は、それに連結された別の核酸を輸送することができる核酸分子を意味する。例示的なベクターは、プラスミド、ミニサークル、トランスポゾン(例えば、スリーピングビューティートランスポゾン)、酵母人工染色体、自己複製RNAおよびウイルスゲノムを含む。ある特定のベクターは、宿主細胞において自律的に複製することができる一方、他のベクターは、宿主細胞のゲノムに組み込み、これにより、宿主ゲノムと共に複製されることができる。加えて、ある特定のベクターは、本明細書において、発現制御配列に操作可能に連結された核酸配列を含有する(したがって、発現制御配列は、このような配列の発現を方向付けることができる)、「組換え発現ベクター」(または単純に、「発現ベクター」)と称される。ある特定の実施形態では、発現構築物は、プラスミドベクターに由来する。説明のための構築物は、アンピシリン耐性遺伝子、ポリアデニル化シグナルおよびT7プロモーター部位をコードする核酸配列を有する、改変pNASSベクター(Clontech、Palo Alto、CA);CHEF1プロモーターを有するpDEF38およびpNEF38(CMC ICOS Biologies,Inc.);ならびにCMVプロモーターを有するpD18(Lonza)を含む。他の適した哺乳動物発現ベクターが周知である(例えば、Ausubelら、1995年;Sambrookら、上記参照を参照;例えば、Invitrogen、San Diego、CA;Novagen、Madison、Wl;Pharmacia、Piscataway、NJのカタログも参照されたい)。
【0174】
融合タンパク質の増強された産生レベルの促進に適した調節制御下でジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)コード配列を含む、有用な構築物を調製することができ、そのようなレベルは、適切な選択薬剤(例えば、メトトレキセート)の適用後の遺伝子増幅に起因する。一実施形態では、転位に成功したB細胞を濃縮するための、メトトレキセート(MTX)におけるインキュベーションと組み合わせた、薬物耐性DHFRと共に治療用遺伝子(例えば、IDUA)をコードする二機能性トランスポゾンの使用は、より強力な産物を生成する。
【0175】
一般に、組換え発現ベクターは、上述の通り、宿主細胞の形質転換を可能にする複製起点および選択可能マーカー、ならびに下流構造配列の転写を方向付けるための高度に発現される遺伝子に由来するプロモーターを含むであろう。本開示に係るポリヌクレオチドと作動可能に連結されたベクターは、クローニングまたは発現構築物を生じる。例示的なクローニング/発現構築物は、本開示のポリヌクレオチドに作動可能に連結した、少なくとも1個の発現制御エレメント、例えば、プロモーターを含有する。エンハンサー、因子特異的結合部位、ターミネーターおよびリボソーム結合部位等、追加的な発現制御エレメントも、本開示に係るベクターおよびクローニング/発現構築物において企図されている。本開示に係るポリヌクレオチドの異種構造配列は、翻訳開始および終止配列と適切な位相でアセンブルされる。よって、例えば、本明細書に提供されているコード核酸は、宿主細胞において斯かるタンパク質を発現するための組換え発現構築物として、種々の発現ベクター構築物(例えば、ミニサークル)のいずれか1種に含まれていてよい。
【0176】
適切なDNA配列(複数可)は、例えば、種々の手順によってベクターに挿入することができる。一般に、DNA配列は、本技術分野で公知の手順によって適切な制限エンドヌクレアーゼ切断部位(複数可)に挿入される。DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼその他が関与する酵素反応のための、クローニング、DNA単離、増幅および精製のための標準技法、ならびに様々な分離技法が企図されている。多数の標準技法が、例えば、Ausubelら(Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publ. Assoc. Inc. & John Wiley & Sons, Inc.、Boston, MA、1993年);Sambrookら(Molecular Cloning、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Plainview、NY、1989年);Maniatisら(Molecular Cloning、Cold
Spring Harbor Laboratory、Plainview、NY、1982年);Glover(編)(DNA Cloning第IおよびII巻、IRL Press、Oxford、UK、1985年);HamesおよびHiggins(編)(Nucleic Acid Hybridization、IRL Press、Oxford、UK、1985年);他に記載されている。
【0177】
発現ベクターにおけるDNA配列は、mRNA合成を方向付けるための少なくとも1個の適切な発現制御配列(例えば、構成的プロモーターまたは調節型プロモーター)に操作可能に連結される。斯かる発現制御配列の代表例として、上述の通り、真核細胞またはそのウイルスのプロモーターが挙げられる。プロモーター領域は、CAT(クロラムフェニコールトランスフェラーゼ)ベクター、カナマイシンベクター、または選択可能マーカーを有する他のベクターを使用して、任意の所望の遺伝子から選択することができる。真核生物プロモーターは、CMV最初期、HSVチミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルス由来のLTR、ならびにマウスメタロチオネイン-lを含む。適切なベクターおよびプロモーターの選択は、十分に当業者の技能水準内にあり、本開示に係るタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結した少なくとも1個のプロモーターまたは調節型プロモーターを含むある特定の特に好まれる組換え発現構築物の調製は、本明細書に記載されている。
【0178】
例えば、一実施形態では、ベクターは、
図1bに示す構造を有するプラスミドとなることができる。一実施形態では、プラスミドは、配列番号1の配列を含むことができる。一実施形態では、プラスミドは、配列番号1の配列からなることができる。一実施形態では、プラスミドは、配列番号1と少なくとも約60%同一である配列を含むまたはこれからなることができる。一実施形態では、プラスミドは、配列番号1と少なくとも約85%同一である、または配列番号1と少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは99%超同一である配列を含むまたはこれからなることができる。
【0179】
本開示のポリヌクレオチドのバリアントも企図されている。バリアントポリヌクレオチドは、本明細書に記載されている定義された配列のポリヌクレオチドの1種と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、好ましくは、95%、96%、97%、98%、99%もしくは99.9%同一である、または約65~68℃における0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウムもしくは約42℃における0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウムおよび50%ホルムアミドのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、定義された配列の当該ポリヌクレオチドの1種とハイブリダイズする。ポリヌクレオチドバリアントは、本明細書に記載されている機能性を有する結合ドメインまたはその融合タンパク質をコードする能力を保持する。
【0180】
用語「ストリンジェント」は、本技術分野で一般的にストリンジェントとして理解されている条件を指すように使用されている。ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは主に、温度、イオン強度、およびホルムアミド等の変性剤の濃度によって決定される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄のためのストリンジェントな条件の例は、約65~68℃における0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、または約42℃における0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウムおよび50%ホルムアミドである(Sambrookら(et ai)、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.、1989年を参照)。よりストリンジェントな条件(より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミドまたは他の変性剤等)を使用することもできる;しかし、ハイブリダイゼーションの速度が影響されるであろう。デオキシオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションが関係する場合、追加的な例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、37℃(14塩基オリゴヌクレオチドのため)、48℃(17塩基オリゴヌクレオチドのため)、55℃(20塩基オリゴヌクレオチドのため)および60℃(23塩基オリゴヌクレオチドのため)での、6×SSC、0.05%ピロリン酸ナトリウムにおける洗浄を含む。
【0181】
本開示のさらなる態様は、本開示のポリヌクレオチドまたはベクター/発現構築物のいずれかで形質転換もしくはトランスフェクトされたまたは他の仕方でこれを含有する、宿主細胞を提供する。本開示のポリヌクレオチドまたはクローニング/発現構築物は、形質転換、トランスフェクションおよび形質導入を含む、本技術分野で公知のいずれかの方法を使用して、適した細胞に導入される。宿主細胞は、例えば、ex vivo遺伝子療法を含むex vivo細胞療法を受ける被験体の細胞を含む。本開示に係るポリヌクレオチド、ベクターまたはタンパク質を有する場合の本開示の態様として企図されている真核生物宿主細胞は、被験体自身の細胞(例えば、ヒト患者自身の細胞)に加えて、VERO細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(発現される多価結合分子のグリコシル化パターンを改変することができる改変CHO細胞を含む、米国特許出願公開第2003/0115614号を参照)、COS細胞(COS-7等)、W138、BHK、HepG2、3T3、RIN、MDCK、A549、PC12、K562、HEK293細胞、HepG2細胞、N細胞、3T3細胞、Spodoptera frugiperda細胞(例えば、Sf9細胞)、Saccharomyces cerevisiae細胞、ならびに本開示に係るタンパク質またはペプチドの発現および必要に応じて単離において有用であることが本技術分野で公知の他のいずれかの真核細胞を含む。Escherichia coli、Bacillus subtilis、Salmonella typhimurium、Streptomyces、または本開示に係るタンパク質またはペプチドの発現および必要に応じて単離に適することが本技術分野で公知のいずれかの原核細胞を含む原核細胞も企図されている。原核細胞からのタンパク質またはペプチドの単離において、特に、封入体からタンパク質を抽出するための本技術分野で公知の技法を使用することができることが企図されている。適切な宿主の選択は、本明細書における教示から、当業者の技能範囲内にある。本開示の融合タンパク質をグリコシル化する宿主細胞が企図されている。
【0182】
用語「組換え宿主細胞」(または単純に「宿主細胞」)は、組換え発現ベクターを含有する細胞を指す。斯かる用語が、特定の対象細胞のみならず、斯かる細胞の後代も指すように意図されることを理解されたい。ある特定の改変が、変異または環境的影響のいずれかにより後継世代において起こり得るため、斯かる後代は、実際には、親細胞と同一でない場合があるが、依然として、本明細書における用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。組換え宿主細胞は、プロモーターの活性化、形質転換体の選択または特定の遺伝子の増幅に適切であるように改変された従来の栄養培地において培養することができる。温度、pHその他等、発現に選択された特定の宿主細胞のための培養条件は、当業者には容易に明らかとなるであろう。様々な哺乳動物細胞培養系を用いて、組換えタンパク質を発現させることもできる。哺乳動物発現系の例として、Gluzman(1981年)Cell 23巻:175頁によって記載されているサル腎臓線維芽細胞のCOS-7株、ならびに適合性ベクターを発現することができる他の細胞株、例えば、C127、3T3、CHO、HeLaおよびBHK細胞株が挙げられる。哺乳動物発現ベクターは、複製起点、適したプロモーターおよび必要に応じてエンハンサーを、また、いずれか必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナーおよびアクセプター部位、転写終止配列、ならびに5’隣接非転写配列、例えば、多価結合タンパク質発現構築物の調製を考慮して本明細書に記載されているものも含むであろう。SV40スプライスおよびポリアデニル化部位に由来するDNA配列を使用して、要求される非転写遺伝的エレメントを提供することができる。宿主細胞への構築物の導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクションまたはエレクトロポレーションを含む、当業者には馴染みがあるであろう種々の方法によってもたらすことができる(Davisら(1986年)Basic Methods in Molecular Biology)。
【0183】
細胞および組成物
一実施形態では、本明細書に記載されている改変B細胞は、in vitroで活性化/分化され、本明細書に記載されている治療剤を発現するようにトランスフェクトされた。一実施形態では、本明細書に記載されている改変B細胞は、in vitroで活性化/分化され、本明細書に記載されている治療剤を発現するように操作された(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN、メガヌクレアーゼまたはCRISPR/CAS9媒介性導入遺伝子組込み等、標的化導入遺伝子組込みアプローチを使用して)。一実施形態では、組成物は、形質B細胞へと分化しており、トランスフェクトまたは他の仕方で操作されており、1種または複数の目的のタンパク質を発現する、B細胞を含む。本開示のトランスフェクトまたは他の仕方で操作され活性化されたB細胞集団等、標的細胞集団は、単独で、または希釈剤および/またはサイトカインもしくは細胞集団等の他の構成成分と組み合わせた医薬組成物として投与することができる。
【0184】
一実施形態では、1種または複数の目的のタンパク質を発現するように操作された改変B細胞は、in vitroでの活性化/分化後に、改変B細胞が特定の化学誘引物質に対して最適な遊走能を有する時点で、培養物から収集される。一部の実施形態では、最適な遊走能は、B細胞培養の7日目、8日目または9日目となることができる。一部の実施形態では、最適な遊走能は、トランスフェクションまたは操作後のB細胞培養の5日目、6日目または7日目となることができる。一部の実施形態では、最適な遊走能は、トランスフェクションもしくは操作後のB細胞培養の8日目、またはトランスフェクションもしくは操作後の培養における8日目よりも後となることができる(例えば、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20日目にまたは20日目よりも後に)。一部の実施形態では、最適な遊走能は、B細胞培養の10日目より前となることができる。一部の実施形態では、最適な遊走能は、トランスフェクションまたは操作後のB細胞培養の8日目より前となることができる。一部の実施形態では、最適な遊走能は、B細胞培養の6日目または7日目となることができる。一部の実施形態では、最適な遊走能は、トランスフェクションまたは操作後のB細胞培養の4日目または5日目となることができる。一部の実施形態では、最適な遊走能は、B細胞培養の9日目より前となることができる。一部の実施形態では、最適な遊走能は、トランスフェクションまたは操作後のB細胞培養の7日目より前となることができる。一部の実施形態では、最適な遊走能は、CXCL12への改変B細胞ホーミングに最適である。一部の実施形態では、最適な遊走能は、改変B細胞の1回または複数の投与を受けている被験体の骨髄への改変B細胞ホーミングに最適である。一部の実施形態では、B細胞は、培養における約7日目~約9日目に、CXCL12および/または被験体の骨髄への最適な遊走能で、被験体への投与のために収集される。一部の実施形態では、B細胞は、トランスフェクションまたは操作後の培養における約5日目~約7日目に、CXCL12および/または被験体の骨髄への最適な遊走能で、被験体への投与のために収集される。一部の実施形態では、B細胞は、培養における約10日目より前に、CXCL12および/または被験体の骨髄への最適な遊走能で、被験体への投与のために収集される。一部の実施形態では、B細胞は、トランスフェクションまたは操作後の培養における約8日目より前に、CXCL12および/または被験体の骨髄への最適な遊走能で、被験体への投与のために収集される。一部の実施形態では、最適な遊走能は、CXCL13への改変B細胞ホーミングに最適である。一部の実施形態では、最適な遊走能は、改変B細胞の1回または複数の投与を受けている被験体における炎症部位への改変B細胞ホーミングに最適である。一部の実施形態では、B細胞は、培養における約6日目または約7日目に、CXCL13および/または被験体における炎症部位への最適な遊走能で、被験体への投与のために収集される。一部の実施形態では、B細胞は、トランスフェクションまたは操作後の培養における約4日目または約5日目に、CXCL13および/または被験体における炎症部位への最適な遊走能で、被験体への投与のために収集される。一部の実施形態では、B細胞は、培養における約10日目より前に、CXCL13および/または炎症部位への最適な遊走能で、被験体への投与のために収集される。一部の実施形態では、B細胞は、トランスフェクションまたは操作後の培養における約8日目より前に、CXCL13および/または炎症部位への最適な遊走能で、被験体への投与のために収集される。
【0185】
一部の実施形態では、最適な遊走能は、CXCL12およびCXCL13の両方への改変B細胞ホーミングに最適である。一部の実施形態では、B細胞は、B細胞培養の7日目に、CXCL12およびCXCL13の両方へのホーミングに最適な遊走能で、収集される。一部の実施形態では、B細胞は、トランスフェクションまたは操作後のB細胞培養の5日目に、CXCL12およびCXCL13の両方へのホーミングに最適な遊走能で、収集される。
【0186】
一部の実施形態では、B細胞の少なくとも約20%が、走化性アッセイにおいて、特定の化学誘引物質へと遊走するときに、操作されたB細胞が収集される。例えばであって、例に限定されるべきではないが、B細胞の少なくとも約20%が、走化性アッセイにおいて、CXCL12へと遊走するときに、操作されたB細胞(例えば、IDUAを産生する)を収集することができる。または、別の非限定例では、B細胞の少なくとも約20%が、走化性アッセイにおいて、CXCL13へと遊走するときに、操作されたB細胞(例えば、IDUAを産生する)を収集することができる。さらに、B細胞の少なくとも約30%が、走化性アッセイにおいて、特定の化学誘引物質(例えば、CXCL12またはCXCL13)へと遊走するときに、またはB細胞の少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%もしくは少なくとも約70%が、走化性アッセイにおいて、特定の化学誘引物質(例えば、CXCL12またはCXCL13)へと遊走するときに、操作されたB細胞(例えば、IDUAを産生する)を収集することができる。さらに、B細胞の70%超が、走化性アッセイにおいて遊走するときに、操作されたB細胞(例えば、IDUAを産生する)を収集することができる。斯かる走化性アッセイは、本技術分野で公知であり、本明細書に記載されている(例えば、本明細書の実施例6を参照)。
【0187】
簡潔に説明すると、本開示の細胞組成物は、トランスフェクトされており、本明細書に記載されている治療剤を発現している、分化および活性化されたB細胞集団を、1種または複数の薬学的にまたは生理学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて含むことができる。斯かる組成物は、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水、乳酸リンゲル溶液その他等のバッファー;グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトール等の炭水化物;タンパク質;ポリペプチド、またはグリシン等のアミノ酸;抗酸化剤;EDTAまたはグルタチオン等のキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および保存料を含むことができる。本開示の組成物は、好ましくは、静脈内または皮下投与のために製剤化される。
【0188】
一実施形態では、細胞組成物は、投与の前に純度に関して評価される。別の実施形態では、細胞組成物は、治療剤産生の頑強性に関して検査される。一実施形態では、細胞組成物は、無菌性に関して検査される。別の実施形態では、細胞組成物は、レシピエント被験体に適合することを確認するためにスクリーニングされる。
【0189】
一実施形態では、操作されたB細胞集団は、被験体への投与の前に、ポリクロナリティーに関して評価される。最終細胞産物のポリクロナリティーを確実にすることは、重要な安全性パラメータである。具体的には、優勢なクローンの出現は、in vivo腫瘍発生または自己免疫性疾患に潜在的に寄与するものとして考慮される。ポリクロナリティーは、本技術分野で公知のまたは本明細書に記載されているいずれかの手段によって評価することができる。例えば、一部の実施形態では、ポリクロナリティーは、操作されたB細胞集団において発現されるB細胞受容体の配列決定(例えば、ディープシークエンシング)によって評価される。B細胞受容体は、B細胞発生において変化を起こして、B細胞の間で特有のものとなるため、本方法は、どの程度の数の細胞が同じB細胞受容体配列を共有するか(これらがクローナルであることを意味する)を定量化することを可能にする。よって、一部の実施形態では、同じB細胞受容体配列を発現する操作されたB細胞集団におけるB細胞が多くなるにつれて、集団のクロナリティーが高くなり、したがって、被験体への投与に対する集団の安全性が低くなる。逆に、一部の実施形態では、同じB細胞受容体配列を発現する操作されたB細胞集団におけるB細胞が少なくなるにつれて、集団のクロナリティーは低くなり(すなわち、ポリクロナリティーが高くなり)、よって、被験体への投与に対する集団の安全性が高くなる。
【0190】
一部の実施形態では、操作されたB細胞は、十分にポリクローナルであることが決定された後に、被験体に投与される。例えば、最終集団における特定のB細胞クローンが、総B細胞集団の約0.2%超を構成しないことが決定された後に、操作されたB細胞を被験体に投与することができる。最終集団における特定のB細胞クローンが、総B細胞集団の約0.1%超、または総B細胞集団の約0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%もしくは約0.04%超を構成しないことが決定された後に、操作されたB細胞を被験体に投与することができる。特定の実施形態では、最終集団における特定のB細胞クローンが、総B細胞集団の約0.03%超を構成しないことが決定された後に、操作されたB細胞(例えば、IDUAを産生する)が被験体に投与される。
【0191】
一実施形態では、細胞組成物は、4℃で貯蔵および/または発送される。別の実施形態では、細胞組成物は、貯蔵および/または発送のために凍結される。細胞組成物は、例えば、-20℃または-80℃で凍結することができる。一実施形態では、細胞組成物を凍結するステップは、液体窒素を含む。一実施形態では、細胞組成物は、速度制御フリーザーを使用して凍結される。したがって、本明細書に記載されている方法は、解凍ステップをさらに含むことができる。
【0192】
使用方法
本発明の一態様は、治療剤の長期in vivo送達に関する。特定の実施形態では、改変B細胞が、慢性疾患および障害を処置および/または予防する方法において使用される。
【0193】
本明細書に記載されている改変B細胞は、処置または予防されるべき疾患または障害に適切な様式で投与することができる。投与の分量および頻度は、患者の状態、ならびに患者の疾患の種類および重症度等の因子によって決定されるであろうが、適切な投薬量は、臨床治験によって決定することができる。
【0194】
一実施形態では、単回用量の改変B細胞が、被験体に投与される。一実施形態では、2またはそれよりも多い用量の改変B細胞が、被験体に逐次投与される。一実施形態では、3用量の改変B細胞が、被験体に逐次投与される。一実施形態では、ある用量の改変B細胞が、被験体に毎週、隔週、毎月、隔月、年四回、半年毎に、毎年または隔年投与される。一実施形態では、改変B細胞によって産生される治療剤の量が減少する場合、第2のまたはその後の用量の改変B細胞が、被験体に投与される。
【0195】
一実施形態では、所望の量(例えば、有効量)の治療剤が被験体において検出されるまで、ある用量の改変B細胞が、ある特定の頻度(例えば、毎週、隔週、毎月、隔月または年四回)で被験体に投与される。一実施形態では、治療剤の量は、被験体においてモニターされる。一実施形態では、改変B細胞によって産生される治療剤の量が、所望の量を下回って減少する場合、その後の用量の改変B細胞が、被験体に投与される。一実施形態では、所望の量は、所望の効果を産生する範囲である。例えば、MPS Iを有する個体におけるグリコサミノグリカン(GAG)の量を低下させるための方法において、IDUAの所望の量が、IDUAの非存在下でのGAGのレベルと比較して、ある特定の組織におけるGAGのレベルを減少させる量である。
【0196】
「有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍阻害有効量」または「治療量」が示されている場合、投与されるべき本開示の組成物の正確な量は、医師によって、年齢、体重、腫瘍サイズ、感染または転移の程度、および患者(被験体)の状態の個体差を考慮しつつ決定することができる。B細胞組成物は、適切な投薬量(複数可)で複数回投与することもできる。細胞は、免疫療法において一般的に公知の注入技法を使用することにより投与することができる(例えば、Rosenbergら、New Eng. J. of Med.319巻:1676頁、1988年を参照)。
【0197】
特定の患者に最適な投薬量および処置レジメンは、疾患の徴候に関して患者をモニターし、それに従って処置を調整することにより、医学技術分野の当業者によって決定することができる。処置は、生物学的試料(例えば、体液または組織試料)における治療剤(例えば、目的の遺伝子またはタンパク質)のレベルの測定後に調整することもでき、処置有効性の評価に使用することもでき、処置は、それに従って、増加または減少するように調整することができる。典型的には、関係する養子免疫療法研究において、抗原特異的T細胞は、およそ2×109~2×1011個の細胞が患者に投与される(例えば、米国特許第5,057,423号を参照)。
【0198】
本開示の一部の態様では、多用量レジメンのための改変B細胞の最適な投薬量は、被験体のためのB細胞の最適な単回用量濃度を先ず決定し、最適な単回用量濃度に存在するB細胞の数を減少させて、改変B細胞の最適に満たない単回用量濃度をもたらし、改変B細胞の最適に満たない単回用量濃度の2またはそれよりも多い投薬量をこの被験体に投与することにより決定することができる。一部の態様では、改変B細胞の最適に満たない単回用量濃度の2、3またはそれよりも多い投薬量が、被験体に投与される。一部の態様では、被験体への改変B細胞の最適に満たない単回用量濃度の2、3またはそれよりも多い投薬量の投与は、改変B細胞が発現するように操作される治療用ポリペプチドの相乗的in
vivo産生をもたらす。一部の態様では、最適に満たない単回用量濃度は、最適な単回用量濃度の1/2、または3、4、5、6、7、8、9、10分の1または10分の1未満を含む。一部の態様では、治療用ポリペプチドは、IDUAである。一部の態様では、治療用ポリペプチドは、ヒト凝固第X因子(FIX)である。一部の態様では、治療用ポリペプチドは、ヒトレシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)である。一部の態様では、治療用ポリペプチドは、ヒトリポタンパク質リパーゼ(LPL)である。
【0199】
本開示の一部の態様では、106個/キログラム(患者あたり106~1011個)の範囲内の、より少ない数の本開示のトランスフェクトされたB細胞を投与することができる。ある特定の実施形態では、B細胞は、1×104、5×104、1×105、5×105、1×106、5×106、1×107、5×107、1×108、5×108、5×109、1×1010、5×1010、1×1011、5×1011または1×1012個の細胞が被験体に投与される。B細胞組成物は、これらの範囲内の投薬量で複数回投与することができる。細胞は、治療法を受ける患者に対して自家または異種(例えば、同種異系)であってよい。所望に応じて、処置は、免疫応答の誘導および注入されたB細胞の生着を増強するために、本明細書に記載されているマイトジェン(例えば、PHA)またはリンホカイン、サイトカイン、および/またはケモカイン(例えば、GM-CSF、IL-4、IL-6、IL-13、IL-21、Flt3-L、RANTES、MIP1α、BAFF等)の投与を含むこともできる。
【0200】
対象組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、経口摂取、輸注、植え込みまたは移植によるものを含む、いずれか簡便な様式で実行することができる。本明細書に記載されている組成物は、皮下に、皮内に、腫瘍内に、結節内に(intranodally)、髄内に、髄腔内に、筋肉内に、静脈内(i.v.)注射により、または腹腔内に、患者に投与することができる。本明細書に記載されている組成物は、神経系へと直接的に、患者に投与することができる。一実施形態では、本開示のB細胞組成物は、皮内または皮下注射によって患者に投与される。別の実施形態では、本明細書に記載されているB細胞組成物は、好ましくは、i.v.注射によって投与される。B細胞の組成物は、腫瘍、リンパ節、骨髄または感染部位へと直接的に注射することができる。
【0201】
さらに別の実施形態では、医薬組成物は、制御放出系において送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる(Langer、1990年、Science 249巻:1527~1533頁;Sefton、1987年、CRC Crit. Ref. Biomed. Eng.14巻:201頁;Buchwaldら、1980年;Surgery 88巻:507頁;Saudekら、1989年、N. Engl. J. Med.321巻:574頁を参照)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる(Medical Applications of Controlled Release、1974年、LangerおよびWise(編)、CRC Pres.、Boca Raton、Fla.;Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance、1984年、SmolenおよびBall(編)、Wiley、New York;RangerおよびPeppas、1983年;J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem.23巻:61頁を参照;Levyら、1985年、Science 228巻:190頁;Duringら、1989年、Ann. Neurol.25巻:351頁;Howardら、1989年、J. Neurosurg.71巻:105頁も参照されたい)。さらに別の実施形態では、制御放出系は、治療標的に近接して配置することができ、これにより、全身性用量の一部のみを要求する(例えば、Medical Applications of Controlled Release、1984年、LangerおよびWise(編)、CRC Pres.、Boca Raton、Fla.、第2巻、115~138頁を参照)。
【0202】
本開示のB細胞組成物は、いずれかの数のマトリクスを使用して投与することもできる。マトリクスは、組織工学の文脈内で長年利用されてきた(例えば、Principles of Tissue Engineering(Lanza、LangerおよびChick(編))、1997年を参照)。本開示は、B細胞を支持および維持するための人工リンパ系臓器として作用するという新規文脈内で斯かるマトリクスを利用する。したがって、本開示は、組織工学における有用性を実証したマトリクス組成物および製剤を利用することができる。したがって、本開示の組成物、デバイスおよび方法において使用することができるマトリクスの種類は、実質的に無制限であり、生物学的および合成マトリクスの両方を含むことができる。特定の一例では、米国特許第5,980,889号;同第5,913,998号;同第5,902,745号;同第5,843,069号;同第5,787,900号;または同第5,626,561号によって表記されている組成物およびデバイスが利用される。マトリクスは、哺乳動物宿主に投与される場合、生体適合性であることに一般的に関連する特色を含む。マトリクスは、天然および/または合成材料から形成され得る。マトリクスは、インプラント等、動物の身体内に永続的な構造もしくは取り外し可能な構造を残すことが望ましい場合、非生分解性となることができる;または生分解性となることができる。マトリクスは、スポンジ、インプラント、チューブ、テルファ(telfa)パッド、繊維、中空繊維、凍結乾燥された構成成分、ゲル、粉末、多孔性組成物またはナノ粒子の形態を取ることができる。加えて、マトリクスは、徐放の播種細胞または産生サイトカインまたは他の活性薬剤を可能にするように設計することができる。ある特定の実施形態では、本開示のマトリクスは、可撓性かつ弾性であり、無機塩、水性の流体、および酸素を含む溶解したガス状作用物質等の物質に対して透過性である半固体足場として記載することができる。
【0203】
マトリクスは、本明細書において、生体適合性物質の一例として使用されている。しかし、本開示は、マトリクスに限定されず、よって、マトリクス(単数または複数)という用語が現れる場合は常に、このような用語は、細胞の保持または細胞の横断を可能にし、生体適合性であり、物質それ自体が半透膜であるようにこの物質を通って直接的にまたは特定の半透性物質と併せて使用されて、巨大分子の横断を許すことができるデバイスおよび他の物質を含むものと解読されるべきである。
【0204】
本開示のある特定の実施形態では、本明細書に記載されている方法または本技術分野で公知の他の方法を使用してトランスフェクトおよび活性化されたB細胞は、抗ウイルス剤等の薬剤、化学療法、照射、シクロスポリン、ビスルフィン(bisulfin)、ボルテゾミブ、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノール酸塩およびFK506等の免疫抑制剤、抗体、またはキャンパス、抗CD3抗体または他の抗体療法等の他の免疫除去剤(immunoablative agent)、サイトキシン(cytoxin)、フルダラビン(fludaribine)、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、ならびに照射による処置が挙げられるがこれらに限定されない、いずれかの数の関連する処置モダリティと併せて(例えば、その前に、それと同時にまたはその後に)患者に投与される。これらの薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼカルシニューリン(シクロスポリンおよびFK506)、プロテアソーム(ボルテゾミブ)のいずれかを阻害する、または増殖因子誘導性シグナル伝達に重要なp70S6キナーゼを阻害する(ラパマイシン)(Liuら、Cell 66巻:807~815頁、1991年;Hendersonら、Immun.73巻:316~321頁、1991年;Biererら、Curr. Opin.
Immun.5巻:763~773頁、1993年;Isoniemi(上記参照))。さらなる実施形態では、本開示の細胞組成物は、骨髄移植、フルダラビン、外照射療法(XRT)、シクロホスファミド等の化学療法剤、またはOKT3もしくはキャンパス等の抗体のいずれかを使用したT細胞除去療法と併せて(例えば、その前に、それと同時にまたはその後に)患者に投与される。一実施形態では、本開示の細胞組成物は、CD20と反応する薬剤、例えば、Rituxan(登録商標)等、B細胞除去療法の後に投与される。一実施形態では、本開示の細胞組成物は、ボルテゾミブ等の薬剤を使用したB細胞除去療法の後に投与される。例えば、一実施形態では、被験体は、高用量化学療法による標準処置に続いて、末梢血幹細胞移植を受けることができる。ある特定の実施形態では、移植後に、被験体は、本開示の拡大増殖された免疫細胞の注入を受ける。追加的な実施形態では、拡大増殖された細胞は、外科手術の前または後に投与される。
【0205】
患者に投与されるべき上述の処置の投薬量は、処置されている状態および処置のレシピエントの正確な性質と共に変動するであろう。ヒト投与のための投薬量のスケーリングは、本技術分野で許容される実施に従って行うことができる。
【0206】
改変B細胞は、様々な感染性疾患、がん、変性疾患および免疫学的障害の処置または予防において使用することができる。
【0207】
本明細書に記載されている改変B細胞を含む組成物は、ウイルス、細菌、寄生生物および真菌等、感染性生物に起因する種々の感染性疾患のいずれかの処置において使用することができる。感染性生物は、ウイルス(例えば、RNAウイルス、DNAウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A、BおよびC型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒトパピローマウイルス(HPV))、寄生生物(例えば、Plasmodium属の種、Leishmania属の種、Schistosoma属の種、Trypanosoma属の種等、原生動物および後生動物病原体)、細菌(例えば、Mycobacterium属、特に、M.tuberculosis、Salmonella属、Streptococci属、E.coli、Staphylococci属)、真菌(例えば、Candida属の種、Aspergillus属の種)、Pneumocystis cariniiおよびプリオン(公知プリオンは、動物に感染して、ヒツジおよびヤギの神経系の伝染性変性疾患であるスクレイピー、ならびにウシ海綿状脳症(BSE)または「狂牛病」およびネコのネコ海綿状脳症を引き起こす。ヒトが罹ることが公知の4種のプリオン病は、(1)クールー病、(2)クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、(3)ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病(GSS)および(4)致死性家族性不眠症(FFI)である)を含むことができる。本明細書において、「プリオン」は、使用されているいずれかの動物、特に、ヒトおよび飼い慣らされた家畜において上述の疾患または他の疾患の全てまたはいずれかを引き起こすあらゆる形態のプリオンを含む。説明のための感染性疾患として、トキソプラズマ症、ヒストプラズマ症、CMV、EBV、コクシジオイデス症(coccidiomycosis)、結核症、HIVその他が挙げられるがこれらに限定されない。
【0208】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されている改変B細胞組成物は、種々のがんの予防または処置に使用することもできる。この点に関して、ある特定の実施形態では、トランスフェクトされたB細胞を含む組成物は、メラノーマ、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、白血病、形質細胞腫、肉腫、神経膠腫、胸腺腫、乳がん、前立腺がん、結腸直腸がん、腎臓がん、腎細胞癌、子宮がん、膵がん、食道がん、脳がん、肺がん、卵巣がん、子宮頸部がん、精巣がん、胃がん、食道がん、多発性骨髄腫、ヘパトーム、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)および慢性リンパ球性白血病(CLL)または他のがんの予防または処置に有用である。
【0209】
一実施形態では、改変B細胞は、後天性免疫不全症候群(AIDS)、無ガンマグロブリン血症、低ガンマグロブリン血症、他の免疫不全、免疫抑制および重症複合免疫不全疾患(SCID)等、免疫学的障害の処置において使用することもできる。
【0210】
一実施形態では、本明細書に記載されている改変B細胞は、関節リウマチ、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、アジソン病、セリアック病、慢性疲労症候群、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、線維筋痛症、全身性エリテマトーデス、乾癬、シェーグレン症候群、甲状腺機能亢進症/グレーブス病、甲状腺機能低下症/橋本病、インスリン依存性糖尿病(1型)、重症筋無力症、子宮内膜症、強皮症、悪性貧血、グッドパスチャー症候群、ウェゲナー病、糸球体腎炎、再生不良性貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、骨髄異形成症候群、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、エヴァンス症候群、第VIII因子阻害剤症候群、全身性血管炎、皮膚筋炎、多発性筋炎およびリウマチ熱等が挙げられるがこれらに限定されない、自己免疫性疾患の処置において使用することもできる。よって、一実施形態では、本明細書における方法は、疾患を処置するための方法であって、治療有効量の本明細書に記載されている改変B細胞を含む組成物を、それを必要とする被験体または患者に投与し、これにより、疾患を処置するステップを含む方法を含む。
【0211】
一実施形態では、本明細書に記載されている改変B細胞は、MPS I、MPS II、MPS III、MP IV、MPS V、MPS VI、MPS VII、リソソーム蓄積障害、ニーマン・ピック病(A、BおよびC型)、ゴーシェ病(I、IIおよびIII型)、テイ・サックス病およびポンペ障害等が挙げられるがこれらに限定されない、酵素欠損疾患および障害の処置において使用することもできる。
【0212】
一実施形態は、個体におけるMPS Iを処置するための方法であって、IDUAを発現するように遺伝子改変されたB細胞(IDUA+B細胞)を、MPS Iを有するまたはこれを有すると疑われる被験体に投与するステップを含む方法を提供する。一実施形態では、単回の最大有効用量のIDUA+B細胞が、被験体に投与される。別の実施形態では、2またはそれよりも多い用量のIDUA+B細胞が、被験体に投与され、これにより、生着されるIDUA+B細胞の量を最大化する。一部の実施形態では、被験体に投与される2またはそれよりも多い用量のIDUA+B細胞は、単回の最大有効用量のIDUA+B細胞よりも少ないIDUA+B細胞を含む。一部の実施形態では、2またはそれよりも多い用量のIDUA+B細胞が、最大有効単回用量のIDUA+B細胞を下回るIDUA+B細胞の投薬量で被験体に投与される場合、その結果としてのIDUA産生の相乗的増加が起こる。一実施形態では、被験体へのIDUA+B細胞の投与は、健康な対照被験体に見られる正常レベルのIDUAをもたらす。一実施形態では、被験体へのIDUA+B細胞の投与は、被験体における正常レベルを超えるIDUAをもたらす。一実施形態では、被験体へのIDUA+B細胞の投与は、正常レベルまで、被験体におけるGAGのレベルを低下させる。一実施形態では、被験体へのIDUA+B細胞の投与は、被験体におけるGAGの正常レベル未満まで、被験体におけるGAGのレベルを低下させる。
【実施例】
【0213】
(実施例1)
IDUA発現B細胞の産生
ヒトIDUAの転位および発現のためのスリーピングビューティートランスポゾンおよびトランスポサーゼ構築物を生成した。B細胞におけるIDUA遺伝子組込みおよび発現を達成するためにアセンブルされたトランスポゾンを
図1に示す。本発明者らは、B細胞における高レベル発現を達成するために、ヒト免疫グロブリン遺伝子由来のプロモーターおよびエンハンサーエレメントからなるEEKプロモーター、ならびに以前に記載された他の調節エレメントを使用した。IDUA転位および発現に関して検査するために、2名の別々のドナーからヒトB細胞を単離し、培養において拡大増殖し、2日目に、pKT2/EEK-IDUAプラスpCMV-SB100xをエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション8日後に調製された細胞ライセートは、約60nmol/時間/mg
IDUA活性を含有しており、これは、野生型細胞に見出されるIDUAのレベルの約50倍であり、拡大増殖されたヒトB細胞における高レベルIDUA発現を達成するためのSBトランスポゾン系の有効性を実証する(
図2)。
【0214】
IDUA発現細胞を濃縮するために、本発明者らは、また、葉酸塩アンタゴニストメトトレキセート(MTX:(McIvor RS.、1996年、Bone Marrow
Transplantation 18巻:S50~54頁))に対して耐性である新規バリアント酵素(L22Y、F31S)をコードするように合成されたヒトジヒドロ葉酸レダクターゼと共にヒトIDUAをコードする、二機能性トランスポゾン(pKT2/EEK-IDUA-DHFR、
図1)を生成した。この構築物のプラスミドマップを
図1Bに示し、その配列を配列番号1として提示する。
【0215】
本発明者らは、また、透過処理および細胞内染色に続くフローサイトメトリーによって高レベルのIDUAを発現する細胞を同定するための、市販の抗ヒトIDUA抗体を使用した技法を確立した。pKT2/EEK-IDUA-DHFRと同様のGFP-DHFRトランスポゾンを使用して、本発明者らは先ず、細胞の拡大増殖の2~4日目の間にいくつかの異なる濃度のMTXでインキュベートすることにより、転位したB細胞の選択的増生のための条件を確立した。本発明者らは、200nMが、GFPレポーター導入遺伝子を発現するB細胞の選択的増生(selective outgrowth)に最も有効な条件をもたらしたことを見出した(表1)。次いで、本発明者らは、pKT2/EEK-IDUA-DHFR+pCMV-SB100xエレクトロポレーション細胞の拡大増殖にこれらの条件を適用し、7日目に細胞内染色によって%IDUA+細胞に関して評価した。10~12%の頻度のIDUA+細胞が、転位細胞集団において観察されたが、この頻度は、MTX選択を適用することにより、25%またはそれを超えるまで増加した(
図3)。
【表1】
【0216】
NOD-SCIDにおいて戻し交配したMPS Iマウス系統を使用して、初期in vivo研究を開始したが、この系統への注入1週間後のB細胞維持に関する証拠はなかった。この問題は、実施例2に後述するNSG-MPS Iマウスを生成するIL-2受容体ガンマ-Cノックアウトアレルにおいて交配することにより最終的に解決されたが、その一方で、本発明者らは、IDUA+NSGマウスにおけるMTX選択IDUA+B細胞(
図3に示す)の養子移入に関して検査した。自家末梢血細胞をCD4+に関して濃縮し、-30および-4日目に腹腔内(i.p.)注入して、0日目にi.p.または静脈内のいずれかで注射されたpKT2/EEK-IDUA-DHFR転位B細胞に関する支持を提供した。本発明者らは、i.p.およびi.v.の両方でIDUA発現B細胞を投与した動物において、野生型レベルから野生型の200倍にわたる血漿IDUAの範囲を観察した(
図4)。本発明者らは、また、血漿における極めて高レベルのヒト免疫グロブリン(平均1~4mg/mL)を観察した - ヒトB細胞養子移入成功の強力な証拠である。IDUA欠損動物において実行されなかったが、にもかかわらず、本実験の結果は、NSGマウスへの高度に強力なIDUA+B細胞集団の導入後に達成することができるヒトIDUAのレベルの例を提供する。
【0217】
(実施例2)
MPS IマウスにおけるIDUAのin vivo産生
投与される改変B細胞の数および産生される治療剤の量の間の関係性が、線形であるか決定するために、ムコ多糖症I型(MPS I)のマウスモデルを、イズロニダーゼ(IDUA)を発現するように遺伝子改変された同種異系B細胞と共に使用した。
【0218】
NSG(NOD-SCIDガンマ-C欠損)マウスを、NOD-SCID IDUA欠損マウスと交配して、同じ系統におけるガンマ-CおよびIDUA欠損アレルを採取し、本明細書において「MPS Iマウス」とも称される、NSG MPS Iマウスを生成した。十分なNSG MPS Iマウスが生成されたら、これらの動物に、-7日目に3×10
6個のCD4+T細胞をi.p.注入し、次いで0日目に3×10
6、1×10
7または3×10
7個のpKT2/EEK-IDUA転位B細胞(細胞内染色によりおよそ10%IDUA+)をi.v.注入した。MPS Iマウスに、CD4+メモリーT細胞(または対照として細胞なし)の存在下で、単回用量の、IDUAを産生するように操作されたB細胞(または対照として細胞なし)を与え、その内容全体を参照により本明細書に組み込む、Hopwood JJら、Clin Chim Acta.1979年3月1日;92巻(2号):257~65頁によって以前に報告されたIDUA酵素アッセイプロトコールを使用して、38日目まで血清におけるIDUA酵素活性レベルを測定した(
図5)。マウスは、B細胞の長期生存に要求される因子を欠くため、同様に、B細胞生存を促進するために、マウスにCD4+Tメモリー細胞を腹腔内投与した。
【0219】
予想外なことに、これらの結果は、細胞数および血清IDUAレベルの間の関係性が、ある特定の細胞用量において線形でないことを実証した。理論に制約されることを望まないが、この知見は、異なる細胞濃度で異なる生存成果を産生する、in vivoで互いに相互作用するB細胞によるものである可能性がある。よって、これらの結果は、必要な最小数の細胞を投与しつつ、治療剤の十分な産生を達成する理想的な用量が存在することを示す。この概念は、
図5に説明されており、それによると、3×10
7個の細胞用量は、1×10
7個の細胞用量と比較して、血漿におけるIDUA活性レベルの3倍を超える増加をもたらした。
【0220】
(実施例3)
MPS Iマウスにおける多回用量のIDUA産生B細胞
B細胞の投薬量が、in vivoで産生される治療剤の量を達成するか決定するために、MPS Iマウスに、一連の3用量のIDUA産生B細胞を与えた。
【0221】
MPS Iマウスに、0日目に、CD4+メモリーT細胞(または対照として細胞なし)の存在下で、一連の3用量の、1×10
7個のIDUAを産生するように操作されたB細胞(または対照として細胞なし)を与え、56日目まで血清におけるIDUA酵素活性レベルを測定した(
図6)。具体的には、MPS Iマウスに、-7日目に3×10
6個のCD4+T細胞をi.p.注入し、次いで0日目に10
7個のpKT2/EEK-IDUA転位B細胞(細胞内染色によりおよそ10%IDUA+)をi.p.またはi.v.のいずれかで注入した。動物に、第1の注射後21および42日目に、同じ投与経路によって10
7個のpKT2/EEK-IDUA転位B細胞の追加的な注入を与えた。
【0222】
この手順を使用して、本発明者らは、野生型レベルの血漿IDUA(約1nmol/時間/ml)が、B細胞処置動物の大部分において達成されること、また、これが、CD4+T細胞の事前の投与を要求することを見出した(
図6)。本発明者らは、B細胞養子移入の証拠として、血漿におけるヒトIgGが、200μg/mL~最大1mg/mLに及んだことを見出した(
図7)。
【0223】
これらの結果は、いくつかの用量の経過にわたる同数の改変B細胞の投与が、単回用量での改変B細胞の全ての投与によって達成されるものよりも大きい究極レベルの治療剤をもたらすことを実証する。
図6から分かる通り、1×10
7個のB細胞の第1の用量の後のIDUAの初期レベルは、第3の用量の後に達成されるものと比較して低かったが、これは予想外に、第1の用量の後に観察されるIDUAの血清レベルの3倍を大幅に上回るIDUAの血清レベルをもたらした。この現象は、
図5における1×10
7個の細胞/マウスデータを、各用量が1×10
7個であるため
図6におけるデータと比較することによって観察することもできる。
図5において、静脈内投与される1×10
7個の細胞の単回投薬量が、D38によって減退レベルのIDUAをもたらしたことが示される一方、
図6において、静脈内投与される3用量の1×10
7個の細胞に起因するIDUAのレベルが、大幅に増加することならびに同様に、同じ時点で1×10
7個の単回投薬量レベルおよび3×10
7個の単回投薬量レベルの3倍を大幅に超えることの両方を続ける発現レベルをもたらしたことが明らかである。予想外なことに、複数の投薬量にわたるこの相乗作用は、操作されたB細胞を静脈内送達されたこれらのマウス群のみに観察されており、操作されたB細胞を腹腔内注射により受けたマウスには観察されなかった。
【0224】
多回用量が、同数の細胞の単回投薬量から予想されるものを超える治療剤のレベルをもたらしたことを示すことに加えて、多回投薬量が、より大きいレベルの治療剤をもたらしたことの単なる概念は、有利かつ予想外である。機構的には、分化したB細胞が、有限のレベルの生存ニッチを占有し、新たな分化細胞が作製されると、これが、古い細胞の一部を置き換えることが考えられる。したがって、その後の用量のB細胞が、治療剤の血清レベルの付随する増加をもたらさないことが予想され得る。しかし、本発明者らは、これが事実ではなく、追加的なB細胞注入が、それが作製する治療剤のより大きい定常状態血漿レベルをもたらすことを示した。この現象は、要求される細胞投薬量を最小化しつつ、in vivoでの治療薬の適正な投薬量を達成するのに有用である。
【0225】
具体的には、患者は、ある投薬量を投与され、次いで、薬物の血漿レベルを測定することができる。レベルが、所望のものよりも低い場合、細胞の追加的な投薬量を投与することができる。大部分の注射された生物製剤の平均半減期を考慮すると、これらの知見は確かに、生物製剤の直接的注入に適用不能である。さらに、これらの結果は、ウイルスに基づく薬物送達等の他の方法を使用して達成可能となる可能性が低く、これはまた、ベクターに対する免疫応答を誘発し、これにより、さらなる用量の投与の将来的な試みの有効性を低下/邪魔し得る。
【0226】
したがって、本明細書に開示されている治療剤を送達するための方法は、1回よりも多い用量の改変B細胞を投与する能力、およびこれに起因する投薬量の積み重ねを含む、先行技術の方法を上回る利点を提供する。
【0227】
(実施例4)
複数の組織へのB細胞に基づく送達
治療剤の直接的注入、ウイルスベクターによる送達、および造血幹細胞移入は全て、複数の組織への治療剤の送達に成功できていない。改変B細胞を使用して、in vivoで治療剤を種々の組織に送達することができるか決定するために、MPS Iマウスに、先の実施例に記載されている通り、一連の3用量のIDUA産生B細胞を与えた。
【0228】
先の実施例に記載されているプロトコールに従って、MPS Iマウスに、CD4+T細胞(または対照として細胞なし)の存在下で、3用量の1×10
7個のIDUAを産生するように操作されたB細胞(または対照として細胞なし)を含む投薬量レジメンを与えた。第1のB細胞注入後60日目に、動物を安楽死させ、組織を収集し、肝臓、肺、脾臓、腎臓、腸、筋肉、脳、心臓、腹膜灌流および骨髄におけるIDUA酵素活性レベルを測定した(
図8)。
【0229】
フローサイトメトリーは、ヒトTおよびIDUA発現B細胞を注入された動物の脾臓およびリンパ節における20%~35%のヒトCD45+および2%~10%のCD19+細胞を示した。末梢組織およびさらには脳において回復されるIDUA活性によって観察される、実質的な代謝性相互補正(cross-correction)が存在した(
図8)。
【0230】
IDUAは、GAGを分解し、存在するGAGの量は、MPS Iマウスの組織における等、IDUAの非存在下で増加する。したがって、当該組織においてIDUAがGAGを分解しているか決定するために、60日目に脳、肺、肝臓、心臓、腎臓、筋肉、脾臓および腸におけるグリコサミノグリカン(GAG)も測定した(
図9)。IDUAによる代謝性相互補正の結果として、組織グリコサミノグリカンは、CD4+T細胞も注入されたB細胞処置動物において有意に低下した(
図9)。
【0231】
これらの結果は、改変B細胞によるIDUAの送達が、組織への治療剤の増強された送達と、当該組織における治療剤の活性の両方を可能にすることを実証した。
図8は、IDUAを産生するB細胞の注入に起因する、組織におけるIDUA酵素活性レベルを示す。
図9は、これら同じマウスにおけるGAGレベルを示す。GAGは、MPS Iマウス組織に集積し、IDUAの酵素活性によって崩壊される、毒性細胞産物である。両方の図において観察することができるように、IDUA産生およびGAG低下が、肺、脾臓、肝臓、心臓および腸を含む複数の組織において有効に起こった。留意するべきことに、IDUAの注入は、心臓、脾臓および肝臓等の組織における疾患症状発現に適切に取り組むとは考えられない。これらの結果は、初めて、MPS Iの代謝性補正に対するIDUA発現ヒトB細胞の有効性を実証した。したがって、このデータは、遺伝子改変B細胞による酵素のin vivo送達が、身体の様々な臓器の処置を増強する傾向を仮定することを支持する。
【0232】
(実施例5)
B細胞に基づく治療薬送達の長期有効性
治療薬のB細胞に基づく送達が、長期タンパク質産生をもたらすか決定するために、本発明者らは、IDUA産生B細胞を受けたMPS I NSGマウスの血漿および組織における長期IDUA活性を解析した。
【0233】
以前に記載された通りに、IDUAを過剰発現するB細胞を調製した。NSG MPS I動物に、B細胞注入の1週間前に、3e6個のCD4+メモリーT細胞を腹腔内注入した。次に、この動物に、0および30日目に、2e7個のIDUA発現B細胞を注入した。
【0234】
本発明者らは先ず、先の実施例に記載されている通りに、IDUA産生B細胞を受けたMPSI NSGマウス由来の血漿におけるIDUA酵素活性を解析した。この期間にわたり、対照として、無処置MPSI NSGマウスも解析した。2週間前後毎に、6.5ヶ月間、これらの動物から血液を収集し、以前に記載された通りに、IDUA酵素活性に関してアッセイした。
【0235】
図10に示す通り、血漿IDUA活性は、操作されたB細胞を受けるマウスにおいて強く誘導されており、ピーク血漿応答は、注入後5週間前後で起こり、IDUA活性は、注入6.5ヶ月後の屠殺時まで、これらの動物においてより高いままであった。
【0236】
さらに、B細胞産物による長期処置はまた、操作されたB細胞の注入後3、6および6.5ヶ月目に、解析した複数の組織におけるIDUAのレベル増加の延長をもたらし(
図11)、上の実施例4において観察されたIDUAの増強された組織送達が、単なる一過性ではなく、長期持続することを示す。
【0237】
さらに、B細胞の第1の注入の3ヶ月、6ヶ月および6.5ヶ月後に、動物を安楽死させ、実施例4に記載されている通り、組織からの抽出物をGAGレベルに関してアッセイしたところ、複数の組織においてGAGのレベルの長期低下が観察された(
図12)。GAG低下の陽性対照として、NSG-IDUA
+/-マウス(IDUAに関してヘテロ接合性であり、表現型的に正常である)をアッセイした。GAG低下の陰性対照として、MPSI NSGマウスの一群は、細胞を受けなかった。
【0238】
よって、これらのデータは、改変B細胞による治療剤の送達が、血漿のみならず、IDUAの注入では典型的に処置不能な、心臓、脾臓および肝臓等の組織においても、in vivoでの酵素活性レベルの延長された増強を可能にすることを示す。
【0239】
(実施例6)
操作されたB細胞の遊走能の最適化
形質細胞が長期生存するためには、前駆体細胞(すなわち、形質芽球)が、骨髄等の位置に見出される長期形質細胞生存ニッチへと遊走する能力を有する必要があることが一般に受け入れられる。対照的に、形質細胞は、分化を完了すると、その遊走能力を下方調節することが一般に受け入れられる。したがって、形質芽球の注入集団から形質細胞の集団の生成を意図する場合、細胞が頑強な遊走能を有することが重要と思われる。具体的には、CXCL12に向けた遊走が、骨髄への形質細胞前駆体の遊走に重要である。その上、CXCL13等のケモカインは、炎症部位および脾臓等の組織への遊走に重要となり得る。
【0240】
培養条件が、遊走性B細胞を生成するか決定するために、また、治療用タンパク質を発現するように操作されたB細胞の遊走能が、操作されたB細胞が、操作後だが被験体への投与のために収集される前に培養下で残存する時間量に依存するか決定するために、本発明者らは、以前に記載された通りにIDUAを過剰発現するB細胞を調製し、その遊走能の解析の前に4~9日間、操作されたB細胞を培養下に維持した。
【0241】
チャンバーが接続された2チャンバー型培養容器(例えば、Transwell(登録商標)プレート)を使用してアッセイを行った。一方のチャンバーに、操作されたB細胞を播種し、他方のチャンバーは、B細胞を骨髄に引き寄せる化学誘引物質であるCXCL12を、またはB細胞を炎症部位および脾臓等の組織に引き寄せる化学誘引物質であるCXCL13を100ng/mLで負荷した。B細胞を3時間遊走させた後に、第2のウェルからB細胞を採取し、計数した。各アッセイにおいて、化学誘引物質(CXCL12またはCXCL13)が第2のチャンバーに添加されなかった陰性対照を使用した。CXCL12に関して、アッセイの模式図を
図13Dに提示する。同じアッセイをCXCL13に使用した。
【0242】
被験群は、操作されたB細胞の遊走能を大幅に増強することを本発明者らが以前に示した(その全体を参照により本明細書に組み込む、PCT/US2015/066908を参照)培養系に曝露されたB細胞であった。本明細書に記載されている実験の全てに利用されている(他に記述がなければ)この培養系は、CD40L(多量体化のためにHISタグ付けされている)、CD40L架橋剤(CD40Lの多量体化を誘導する抗HIS抗体)、IL-2、IL-4、IL-10、IL-15およびIL-21を含む。操作後、Transwell解析の前に、B細胞を適切な日数培養した。
【0243】
驚いたことに、本発明者らは、本発明者らの培養条件下で操作されたB細胞が、7~9日間前後(培養において、または操作後5~7日間)でピークになる、CXCL12への最適な遊走潜在力、および6~7日間前後(培養において、または操作後4~5日間前後)でピークになるCXCL13への最適な遊走潜在力を有することを観察した(
図13A~
図13C)。これらのデータは、一部の実例では、このウィンドウ内で、操作されたB細胞を収集し被験体に投与して、最適な遊走潜在力を確実にし、標的組織への最適な遊走を誘導することが有益となり得ることを示唆する。
【0244】
(実施例7)
IDUAを発現するように操作された最終B細胞のクロナリティー評価
最終細胞産物のポリクロナリティーを確実にすることは、重要な安全性パラメータである。具体的には、優勢なクローンの出現は、in vivo腫瘍発生または自己免疫性疾患に潜在的に寄与するものとして考慮される。B細胞最終産物において評価するために、細胞を、以前に記載された通りに培養において育成し(実施例6に提示されている培養条件を参照)、実施例1に記載されている方法を使用して、IDUAを発現するように操作し、培養7日目に収集し、冷凍保存した。DNAを抽出し、B細胞受容体のハイスループットディープシークエンシングに付した。B細胞受容体は、B細胞発生において変化を起こして、B細胞の間で特有のものとなるため、本方法は、どの程度の数の細胞が同じB細胞受容体配列を共有するか(これらがクローナルであることを意味する)を定量化することを可能にする。
【0245】
ディープシークエンシングの結果を
図14および下の表2に示す。248,000個を超える鋳型分子を解析したところ、241,000個前後の特有の再配列が観察され、0.03%のクロナリティーの最大頻度(すなわち、任意の特異的B細胞クローンの蔓延)を表す。
【表2】
【0246】
本実験は、最終B細胞産物が、高度にポリクローナルであり、単一クローンは、細胞集団の相当な部分を占めないことを実証する。具体的には、配列決定の結果は、単一クローンが、最終集団の0.03%超を占めないことを実証する。よって、最終的な操作されたB細胞は、治療目的のために十分にポリクローナルであることが予想され、いずれか特定のクローンを豊富に含有するとは思われない。培養条件、ゲノム改変、および外来性因子の存在(例えば、培養培地に存在するウシ胎仔血清)が、クロナリティーの出現を生じ得ることは真実味があるため、本発明者らは、単一クローンが有意な頻度を達成しなかったという点において、この結果を予想外と考慮する。
【0247】
(実施例8)
操作されたB細胞の炎症性潜在力
【0248】
多くの治療薬と同様に、本発明は、免疫系を刺激する潜在力を有し、有効性を低下または排除し得る有害な副作用および/または中和抗体をもたらす可能性がある。斯かる有害な免疫反応を誘発し得るかに関する有用な予測因子の1つは、最終的な操作されたB細胞産物が、炎症性サイトカインを産生するか否かである。よって、本発明者らは、培養の終わりに、B細胞産物(上述の実施例に従ってIDUAを産生するように操作されたB細胞)が、様々な炎症性サイトカインのいずれかを産生するかについて測定した。
【0249】
B細胞を、以前に記載された通りに培養において7日間培養し(実施例6に提示されている培養条件を参照)、実施例1に記載されている方法を使用して、IDUAを発現するように操作し、培養7日目に収集し、冷凍保存した。培養中の複数時点において、培地試料を採取し、ルミネックスデバイスを使用して、サイトカインのパネルに関してアッセイした。具体的には、次の因子の存在についてアッセイした:IL6、IFNアルファ、IFNガンマ、sFAS、TNFRp75、BAFF、HGF、IL5、IL2Rアルファ、TNFアルファ、IL1ra、TNFRp55、VEGF、IL1アルファ、sIL6R。培地製剤は、これらの因子を含有し得るFBSを含有するため、陰性対照としてB細胞なしの培地を使用した。IL6の場合、陽性対照として役立てるために、B細胞なしの培地に組換えタンパク質(一部の事例では)を添加した。
【0250】
驚いたことに、大抵の場合、B細胞培養の終わりまでに、調べた因子は、検出不能であった、または培地のみ対照よりも上昇しなかった(
図15Aおよび
図15B)。操作された細胞が、培養および操作プロセスにおいて有意な刺激を起こす免疫細胞であることを考慮すると、この結果は予想外であった。これの例外は、IL6およびsFAS(
図15A、左から1番目の群および
図15B、左から1番目の群)であった。培養の際に増加することが見出された唯一の因子は、sFASであった。IL6の場合、培養2日目に上昇したレベルが検出されたが、7日目までに、IL6のレベルは、培地単独で見られるレベルに非常に近かった。
【0251】
全体的に見て、これらの結果は、培養の終わりに、B細胞産物が、顕著なレベルの検査した炎症性サイトカインを産生していないことを説明する。本発明者らが、B細胞に多数の刺激性サイトカインを提供していることを考慮すると、最終産物が、顕著なレベルのこれらのサイトカインを産生しないことは予期されなかった。最も予想外なことに、本発明者らは、時間と共に、B細胞が、そのIL6産生をバックグラウンドレベル付近まで低下させたことを見出した。IL6が、強力な免疫刺激性シグナルであることが公知であるという点において、この結果は、臨床実行にとって非常に適切である。全体的に見て、本発明者らは、これらの結果が、最終B細胞産物が、全体として免疫系の有意な刺激を回避する潜在力の観点から、in vivoで安全であると予想されることを反映すると考える。
【0252】
(実施例9)
ヒトLCATまたはFIXを発現するB細胞の産生
ヒトLCAT、ヒトLPLおよびヒトFIXの転位および発現のためのスリーピングビューティートランスポゾンおよびトランスポサーゼ構築物を、実施例1に記載されている通りに生成し、培養2日目に初代メモリーB細胞をエレクトロポレーションによってトランスフェクトした。LCATおよびLPLのために、エレクトロポレーション2日後に(培養4日目、「D4」)、また、エレクトロポレーション6日後にも(培養8日目、「D8」)培地を採取し、発現を解析した。
【0253】
トランスフェクトB細胞におけるLCATの発現は、蛍光に基づくLCAT酵素活性アッセイ(後述する方法を参照)を使用して確認した。トランスフェクト細胞から採取された培地は、D4およびD8の両方で強いLCAT活性を有した一方、培地のみ対照において有意な活性は観察されなかった(
図16A)。
【0254】
トランスフェクトB細胞におけるLPLの発現は、蛍光に基づくLPL酵素活性アッセイ(後述する方法を参照)を使用して確認した。トランスフェクト細胞から採取された培地は、D4およびD8の両方で強いLPL活性を有した一方、培地のみ対照において有意な活性は観察されなかった(
図16B)。
【0255】
レシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)およびリポタンパク質リパーゼ(LPL)の検出のため、B細胞を培養し(実施例6に提示されている培養条件を参照)、培養2日目に、LCATまたはLPLのいずれかをコードするトランスポゾンと共にトランスポサーゼの供給源をコードする構築物(SB100x、実施例1および
図1を参照)をエレクトロポレーションした(実施例1と同様に)。培養4日目および8日目に培地試料を採取し、蛍光定量的酵素アッセイを使用して、LCATおよびLPLの存在に関してアッセイした。具体的には、4-メチルウンベリフェリルパルミテート基質(4-MUP)を使用し、340、390および460nmの波長における蛍光の増加を測定することにより、LCATおよびLPLによる基質の切断を検出した。100mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)を含有する反応バッファーを調製し、37℃に置いた。2mgの4-MUPを16mgのTriton X-100と混合することにより、4-MUPを希釈した。4-MUPおよび反応バッファーを組み合わせ、2ul活性化因子化合物(例えば、p-ニトロフェニルブチレート)と共に、96ウェルプレートのウェルに総容量150ulを添加した。B細胞培養培地の系列希釈を調製し、次に、50ulの希釈物を混合物に添加し、37℃でインキュベートした。蛍光測定は、培養培地添加の直後に始め、30分間の全持続時間にわたり毎分採取した。
【0256】
トランスフェクトB細胞におけるFIXの発現は、ELISAによって確認した。より具体的には、B細胞の細胞ライセートを調製し、製造業者の推奨プロトコールに従って市販のELISAキット(FIX-EIA、Enzyme Research Laboratories、South Bend、IN)を使用したELISAにより検出した。エレクトロポレーション2日後に培地を採取したところ、培地は、およそ15ng/mlの濃度のFIXタンパク質を含有した一方、陰性対照細胞(GPFをトランスフェクトされたB細胞)においてFIXタンパク質は検出されなかった(
図16C)。
【0257】
よって、これらのデータは、本明細書に開示されている方法においてB細胞を使用して、広範囲のポリペプチドを発現させ、被験体に送達することができることを実証する。
【0258】
上述の様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。本明細書で参照されているおよび/または出願データシートに列挙されている米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物は全て、それらの全体を参照により本明細書に組み込む。さらに別の実施形態を提供するために様々な特許、出願および刊行物の概念を用いることが必要であれば、実施形態の態様を改変することができる。
【0259】
上述の詳細な説明を踏まえて、実施形態に上述および他の変化を為すことができる。一般に、次の特許請求の範囲において、使用されている用語は、特許請求の範囲を明細書および特許請求の範囲に開示されている特異的な実施形態に限定するものと解釈するべきではないが、斯かる特許請求の範囲が権利を有する均等の全範囲と共にあらゆる可能な実施形態を含むものと解釈するべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
【配列表】