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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】磁気センサ、位置検出装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/09 20060101AFI20240724BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20240724BHJP
   G01D 5/14 20060101ALI20240724BHJP
   H10N 50/20 20230101ALI20240724BHJP
   H10N 59/00 20230101ALI20240724BHJP
【FI】
G01R33/09
G01R33/02 W
G01R33/02 V
G01D5/14 E
H10N50/20
H10N59/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023081423
(22)【出願日】2023-05-17
(62)【分割の表示】P 2021020553の分割
【原出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2023109884
(43)【公開日】2023-08-08
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 尚史
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特許第7284201(JP,B2)
【文献】特開2019-174196(JP,A)
【文献】特表2018-503803(JP,A)
【文献】特開2013-210335(JP,A)
【文献】特開2020-030155(JP,A)
【文献】特開2015-129697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/00-33/26
G01D 5/14
H10N 50/20
H10N 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って入力される入力磁界を受けて、前記第1方向に直交する第2方向に沿って出力磁界を出力する磁界変換部と、
前記出力磁界が印加され得る位置に設けられている磁界検出部と、
前記第2方向に沿った外部磁界を遮蔽する磁気シールドと
を備え、
前記第1方向に沿って見たときに、前記磁界変換部は、前記第1方向及び前記第2方向の双方に直交する第3方向における長さが前記第2方向における長さよりも長い形状を有し、
前記第1方向に沿って見たときに、前記磁気シールドは、前記磁界変換部及び前記磁界検出部と重なる位置に設けられており、
前記磁界検出部は、第1磁界検出部及び第2磁界検出部を含む第1ブリッジ回路と、第3磁界検出部及び第4磁界検出部を含む第2ブリッジ回路とが並列に接続されたホイートストンブリッジ回路により構成され、
前記第1~第4磁界検出部のそれぞれは、第1磁気抵抗部及び第2磁気抵抗部を含み、
前記第1~第4磁界検出部のそれぞれに含まれる前記第1磁気抵抗部及び前記第2磁気抵抗部は、互いに磁化方向の異なる磁化固定層を含む磁気抵抗効果素子を有し、
前記第1磁気抵抗部に含まれる前記磁気抵抗効果素子の前記磁化固定層の磁化方向と、前記第2磁気抵抗部に含まれる前記磁気抵抗効果素子の前記磁化固定層の磁化方向とは、前記第2方向に対して10°以下の角度で傾いており、前記外部磁界の一部の磁界成分によって生じる、前記第1磁気抵抗部の前記磁気抵抗効果素子の抵抗値の変動と前記第2磁気抵抗部の前記磁気抵抗効果素子の抵抗値の変動とを相殺可能な程度に異なることを特徴とする磁気センサ。
【請求項2】
前記第1~第4磁界検出部のそれぞれに含まれる前記第1磁気抵抗部及び前記第2磁気抵抗部は、並列接続されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記第1~第4磁界検出部のそれぞれに含まれる前記第1磁気抵抗部及び前記第2磁気抵抗部は、直列接続されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記ホイートストンブリッジ回路は、電源ポート、グランドポート、第1出力ポート及び第2出力ポートを含み、
前記第1磁界検出部は、前記電源ポートと前記第1出力ポートとの間に設けられ、
前記第2磁界検出部は、前記第1出力ポートと前記グランドポートとの間に設けられ、
前記第3磁界検出部は、前記電源ポートと前記第2出力ポートとの間に設けられ、
前記第4磁界検出部は、前記第2出力ポートと前記グランドポートとの間に設けられ、
前記第1磁界検出部、前記第2磁界検出部、前記第3磁界検出部及び前記第4磁界検出部のうちの2つの磁界検出部に含まれる前記第1磁気抵抗部及び前記第2磁気抵抗部は、並列接続されており、他の2つの磁界検出部に含まれる前記第1磁気抵抗部及び前記第2磁気抵抗部は、直列接続されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記第1~第4磁界検出部のそれぞれに含まれる前記第1磁気抵抗部及び前記第2磁気抵抗部は、それぞれ複数の前記磁気抵抗効果素子を含み、
前記第1磁気抵抗部に含まれる前記磁気抵抗効果素子の数と、前記第2磁気抵抗部に含まれる前記磁気抵抗効果素子の数とが同一であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項6】
前記第1~第4磁界検出部のそれぞれに含まれる前記第1磁気抵抗部及び前記第2磁気抵抗部は、それぞれ複数の前記磁気抵抗効果素子を含み、
前記第1磁気抵抗部に含まれる前記磁気抵抗効果素子の数は、前記第2磁気抵抗部に含まれる前記磁気抵抗効果素子の数よりも多いことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項7】
前記第1磁気抵抗部に含まれる前記磁気抵抗効果素子の数と、前記第2磁気抵抗部に含まれる前記磁気抵抗効果素子の数との比が、2:1~4:1であることを特徴とする請求項6に記載の磁気センサ。
【請求項8】
前記第1方向に沿って見たときに、前記磁気シールドは、前記第3方向における最大長さが前記第2方向における最大長さよりも長い形状を有することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項9】
複数の前記磁界変換部が、前記第2方向に沿って並列していることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項10】
前記磁気シールドは、第1磁気シールドと第2磁気シールドとを含み、
前記磁界変換部及び前記磁界検出部は、前記第1方向における前記第1磁気シールドと前記第2磁気シールドとの間に設けられていることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項11】
前記磁気シールドは、前記磁界変換部及び前記磁界検出部の前記第1方向に沿った一方側又は他方側に位置することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項12】
前記第1~第4磁界検出部のそれぞれに含まれる前記第1磁気抵抗部及び前記第2磁気抵抗部は、前記第1方向に沿って見たときに、前記磁界変換部の短手方向の中心を通る軸線であって、前記磁界変換部の長手方向に沿った前記軸線を中心とする線対称の位置に設けられている請求項1~11のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項13】
前記磁気抵抗効果素子は、TMR素子又はGMR素子であることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の磁気センサ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の磁気センサと、
前記入力磁界を発生する磁界発生部と、
前記磁気センサが設けられている基板と
を備え、
前記磁界発生部は、前記基板に対して前記第2方向及び前記第3方向の少なくとも一方向に沿って相対的に移動可能に前記基板に支持されていることを特徴とする位置検出装置。
【請求項15】
請求項14に記載の位置検出装置を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサ、位置検出装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の用途において、物理量(例えば、移動体の回転移動や直線的移動による位置や移動量(変化量)等)を検出するための物理量検出装置(位置検出装置)が用いられている。この物理量検出装置としては、外部磁場の変化を検出可能な磁気センサと、磁気センサに対する相対的な位置を変化させ得る磁界発生部(例えば磁石)とを備えるものが知られており、外部磁場の変化に応じたセンサ信号が磁気センサから出力される。
【0003】
磁気センサとしては、被検出磁界を検出する磁気センサ素子が基板上に設けられているものが知られており、かかる磁気センサ素子としては、外部磁場の変化に応じて抵抗が変化する磁気抵抗効果素子(GMR素子、TMR素子等)等が用いられている。
【0004】
上記磁気抵抗効果素子は、外部磁場に応じて磁化方向を変化させ得る自由層と、磁化方向が固定されている磁化固定層と、自由層及び磁化固定層の間に介在する非磁性層とを少なくとも有する積層構造により構成される。このような構造を有する磁気抵抗効果素子においては、自由層の磁化方向と磁化固定層の磁化方向との角度により当該磁気抵抗効果素子の抵抗値が定まる。そして、外部磁場に応じて自由層の磁化方向が変化し、それによる自由層及び磁化固定層の磁化方向の角度が変化することで、磁気抵抗効果素子の抵抗値が変化する。この抵抗値の変化により、外部磁場の変化に応じたセンサ信号が出力される。基板上に設けられている磁気抵抗効果素子は、基板の面に平行な方向の磁界に対して感度を有するように構成される場合が多い。
【0005】
一方で、磁気センサにおいては、基板上に設けられている磁気抵抗効果素子によって、基板の面に垂直な方向の磁界を検出するような要求もある(特許文献1参照)。上記磁気センサは、磁石の位置を検出するために用いられ得る。この磁気センサにおいては、磁石が発生する磁界の成分のうち、基板面に対する垂直方向の磁界成分を磁気抵抗効果素子に印加させるために軟磁性体が設けられている。この軟磁性体は、磁石が発生する垂直磁界成分を、磁気抵抗効果素子が感度を有する基板面に平行な方向の磁界成分に変換する。この変換された磁界成分が磁気抵抗効果素子に印加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-129697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記磁気センサにおいて、磁石が発生する磁界の成分には、上記垂直磁界成分と、基板面に平行な方向の水平磁界成分とが含まれる。この水平磁界成分が磁気抵抗効果素子に印加されてしまうと、磁気センサによる検出精度を低下させてしまうおそれがある。この課題を解決するために、水平磁界成分を遮蔽するための磁気シールドを設けることが考えられる。
【0008】
しかしながら、上記磁気シールドは、水平磁界成分を完全には遮蔽することができず、一部の水平磁界成分は透過してしまうため、透過する水平磁界成分が、磁気センサから出力される信号に影響を及ぼしてしまう。具体的には、磁気シールドを透過する水平磁界成分が磁気センサに印加されることで、磁気センサからの出力のオフセットや中点電位の変動が起こり、磁気センサによる検出精度を低下させてしまうおそれがある。
【0009】
上記課題に鑑みて、本発明は、中点電位の変動を抑制し、検出精度を向上させてなる磁気センサ、位置検出装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、第1方向に沿って入力される入力磁界を受けて、前記第1方向に直交する第2方向に沿って出力磁界を出力する磁界変換部と、前記出力磁界が印加され得る位置に設けられている磁界検出部と、前記第2方向に沿った外部磁界を遮蔽する磁気シールドとを備え、前記第1方向に沿って見たときに、前記磁界変換部は、前記第1方向及び前記第2方向の双方に直交する第3方向における長さが前記第2方向における長さよりも長い形状を有し、前記第1方向に沿って見たときに、前記磁気シールドは、前記磁界変換部及び前記磁界検出部と重なる位置に設けられており、前記磁界検出部は、第1磁界検出部及び第2磁界検出部を含む第1ブリッジ回路と、第3磁界検出部及び第4磁界検出部を含む第2ブリッジ回路とが並列に接続されたホイートストンブリッジ回路により構成され、前記第1~第4磁界検出部のそれぞれは、第1磁気抵抗部及び第2磁気抵抗部を含み、前記第1~第4磁界検出部のそれぞれに含まれる前記第1磁気抵抗部及び前記第2磁気抵抗部は、互いに磁化方向の異なる磁化固定層を含む磁気抵抗効果素子を有し、前記第1磁気抵抗部に含まれる前記磁気抵抗効果素子の前記磁化固定層の磁化方向と、前記第2磁気抵抗部に含まれる前記磁気抵抗効果素子の前記磁化固定層の磁化方向とは、前記第2方向に対して10°以下の角度で傾いており、前記外部磁界の一部の磁界成分によって生じる、前記第1磁気抵抗部の前記磁気抵抗効果素子の抵抗値の変動と前記第2磁気抵抗部の前記磁気抵抗効果素子の抵抗値の変動とを相殺可能な程度に異なることを特徴とする磁気センサを提供する。
【0011】
上記磁気センサにおいて、前記第1~第4磁界検出部のそれぞれに含まれる前記第1磁気抵抗部及び第2磁気抵抗部は、並列接続されていてもよいし、直列接続されていてもよい。
【0012】
上記磁気センサにおいて、前記ホイートストンブリッジ回路は、電源ポート、グランドポート、第1出力ポート及び第2出力ポートを含み、前記第1磁界検出部は、前記電源ポートと前記第1出力ポートとの間に設けられ、前記第2磁界検出部は、前記第1出力ポートと前記グランドポートとの間に設けられ、前記第3磁界検出部は、前記電源ポートと前記第2出力ポートとの間に設けられ、前記第4磁界検出部は、前記第2出力ポートと前記グランドポートとの間に設けられ、前記第1磁界検出部、前記第2磁界検出部、前記第3磁界検出部及び前記第4磁界検出部のうちの2つの磁界検出部に含まれる前記第1磁気抵抗部及び前記第2磁気抵抗部は、並列接続されており、他の2つの磁界検出部に含まれる前記第1磁気抵抗部及び前記第2磁気抵抗部は、直列接続されていてもよい。
【0013】
前記第1~第4磁界検出部のそれぞれに含まれる前記第1磁気抵抗部及び前記第2磁気抵抗部は、それぞれ複数の前記磁気抵抗効果素子を含み、前記第1磁気抵抗部に含まれる前記磁気抵抗効果素子の数と、前記第2磁気抵抗部に含まれる前記磁気抵抗効果素子の数とが同一であってもよいし、前記第1磁気抵抗部に含まれる前記磁気抵抗効果素子の数は、前記第2磁気抵抗部に含まれる前記磁気抵抗効果素子の数よりも多くてもよい。前記第1磁気抵抗部に含まれる前記磁気抵抗効果素子の数と、前記第2磁気抵抗部に含まれる前記磁気抵抗効果素子の数との比を、2:1~4:1とすることができる。
【0014】
記第1方向に沿って見たときに、前記磁気シールドは、前記第3方向における最大長さが前記第2方向における最大長さよりも長い形状を有していてもよい。複数の前記磁界変換部が、前記第2方向に沿って並列していてもよい。前記磁気シールドは、第1磁気シールドと第2磁気シールドとを含み、前記磁界変換部及び前記磁界検出部は、前記第1方向における前記第1磁気シールドと前記第2磁気シールドとの間に設けられていてもよい。前記磁気シールドは、前記磁界変換部及び前記磁界検出部の前記第1方向に沿った一方側又は他方側に位置していてもよい。前記第1~第4磁界検出部のそれぞれに含まれる前記第1磁気抵抗部及び前記第2磁気抵抗部は、前記第1方向に沿って見たときに、前記磁界変換部の短手方向の中心を通る軸線であって、前記磁界変換部の長手方向に沿った前記軸線を中心とする線対称の位置に設けられていてもよい。前記磁気抵抗効果素子は、TMR素子又はGMR素子であればよい。
【0015】
本発明は、上記磁気センサと、前記入力磁界を発生する磁界発生部と、前記磁気センサが設けられている基板とを備え、前記磁界発生部は、前記基板に対して前記第2方向及び前記第3方向の少なくとも一方向に沿って相対的に移動可能に前記基板に支持されていることを特徴とする位置検出装置を提供する。
本発明は、上記位置検出装置を備えることを特徴とする電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、中点電位の変動を抑制し、検出精度を向上させてなる磁気センサ、位置検出装置及び電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る磁気センサ装置を含むカメラモジュールの概略構成を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すカメラモジュールの内部構造を模式的に示す概略図である。
図3図3は、図1に示すカメラモジュールの駆動装置を示す斜視図である。
図4図4は、図3に示す駆動装置の複数のコイルを示す斜視図である。
図5A図5Aは、図3に示す駆動装置の要部を示す断面図である。
図5B図5Bは、図3に示す駆動装置の要部を示す断面図である。
図6図6は、本発明の一実施形態における磁気センサ装置の要部を示す斜視図である。
図7図7は、本発明の一実施形態における磁気センサの概略構成を示す斜視図である。
図8A図8Aは、本発明の一実施形態における磁気センサの概略構成を示す平面図である。
図8B図8Bは、本発明の一実施形態における磁気センサの概略構成を示す平面図である。
図8C図8Cは、本発明の一実施形態における磁気センサの概略構成を示す平面図である。
図8D図8Dは、本発明の一実施形態における磁気センサの概略構成を示す平面図である。
図9図9は、本発明の一実施形態における磁気センサの概略構成を示す側面図である。
図10図10は、本発明の一実施形態における磁気センサの概略構成を示す側面図である。
図11図11は、本発明の一実施形態における磁気抵抗効果素子の概略構成を示す斜視図である。
図12図12は、本発明の一実施形態における磁界検出部の概略構成を示す斜視図である。
図13A図13Aは、本発明の一実施形態における磁界検出部の回路構成を示す回路図である。
図13B図13Bは、本発明の一実施形態における磁界検出部の回路構成を示す回路図である。
図13C図13Cは、本発明の一実施形態における磁界検出部の回路構成を示す回路図である。
図13D図13Dは、本発明の一実施形態における磁界検出部の回路構成を示す回路図である。
図14A図14Aは、本発明の一実施形態における磁気抵抗効果素子の自由層及び磁化固定層のイニシャル状態における磁化方向を説明するための説明図である。
図14B図14Bは、本発明の一実施形態における磁気抵抗効果素子の自由層及び磁化固定層のイニシャル状態における磁化方向を説明するための説明図である。
図14C図14Cは、本発明の一実施形態における磁気抵抗効果素子の自由層及び磁化固定層のイニシャル状態における磁化方向を説明するための説明図である。
図14D図14Dは、本発明の一実施形態における磁気抵抗効果素子の自由層及び磁化固定層のイニシャル状態における磁化方向を説明するための説明図である。
図15A図15Aは、本発明の一実施形態における磁気抵抗効果素子に第2磁界成分が印加されたときの自由層及び磁化固定層の磁化方向を説明するための説明図である。
図15B図15Bは、本発明の一実施形態における磁気抵抗効果素子に第2磁界成分が印加されたときの自由層及び磁化固定層の磁化方向を説明するための説明図である。
図15C図15Cは、本発明の一実施形態における磁気抵抗効果素子に第2磁界成分が印加されたときの自由層及び磁化固定層の磁化方向を説明するための説明図である。
図15D図15Dは、本発明の一実施形態における磁気抵抗効果素子に第2磁界成分が印加されたときの自由層及び磁化固定層の磁化方向を説明するための説明図である。
図16A図16Aは、本発明の一実施形態における磁気抵抗効果素子に第2磁界成分及びバイアス磁界成分が印加されたときの自由層及び磁化固定層の磁化方向を説明するための説明図である。
図16B図16Bは、本発明の一実施形態における磁気抵抗効果素子に第2磁界成分及びバイアス磁界成分が印加されたときの自由層及び磁化固定層の磁化方向を説明するための説明図である。
図16C図16Cは、本発明の一実施形態における磁気抵抗効果素子に第2磁界成分及びバイアス磁界成分が印加されたときの自由層及び磁化固定層の磁化方向を説明するための説明図である。
図16D図16Dは、本発明の一実施形態における磁気抵抗効果素子に第2磁界成分及びバイアス磁界成分が印加されたときの自由層及び磁化固定層の磁化方向を説明するための説明図である。
図17A図17Aは、試験例1において求めた差動出力を示すグラフである。
図17B図17Bは、試験例1において求めた出力電位を示すグラフである。
図18A図18Aは、試験例2において求めた差動出力を示すグラフである。
図18B図18Bは、試験例2において求めた出力電位を示すグラフである。
図19A図19Aは、試験例3において求めた差動出力を示すグラフである。
図19B図19Bは、試験例3において求めた出力電位を示すグラフである。
図20A図20Aは、試験例4において求めた差動出力を示すグラフである。
図20B図20Bは、試験例4において求めた出力電位を示すグラフである。
図21A図21Aは、試験例5において求めたSample 1の磁気センサの感度を示すグラフである。
図21B図21Bは、試験例5において求めたSample 2の磁気センサの感度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、本実施形態における磁気センサ装置において、必要に応じ、いくつかの図面中、「X方向、Y方向及びZ方向」を規定している。ここで、X方向及びY方向は、本実施形態における基板104の第1面104A及び第2面104B(図2参照)と実質的に平行な平面内における互いに直交する方向であり、Z方向は、基板104の厚さ方向(基板104の第1面104A及び第2面104Bに直交する方向)である。
【0019】
本実施形態におけるカメラモジュール100は、例えば、光学式手振れ補正機構とオートフォーカス機構とを備えるスマートフォン用のカメラの一部を構成するものであり、CMOS等を用いたイメージセンサ200と組み合わせて用いられる(図1及び図2参照)。
【0020】
カメラモジュール100は、駆動装置と、レンズ102と、筐体103と、基板104とを備える(図1及び図2参照)。駆動装置は、レンズ102を移動させる機能を有する。駆動装置は、本実施形態における磁気センサ装置を含む。筐体103は、駆動装置を保護する機能を有する。基板104は、第1面104A及びそれに対向する第2面104Bを有する。
【0021】
レンズ102は、その光軸方向をZ方向に平行とするような姿勢で、基板104の第1面104Aの上方に配置されている。基板104は、レンズ102を通過した光を通過させる開口部(図示を省略)を有する。カメラモジュール100は、レンズ102及び基板104の開口部を通過した光をイメージセンサ200に入射させるように、イメージセンサ200に対して位置合わせされている。
【0022】
駆動装置は、第1保持部材105と、第2保持部材106と、複数の第1ワイヤ107と、複数の第2ワイヤ108とを備える(図2参照)。第2保持部材106は、レンズ102を保持するものであり、例えば、その内部にレンズ102を装着可能な筒状の形状を有していればよい。
【0023】
第2保持部材106は、第1保持部材105に対して一方向、具体的にはレンズ102の光軸方向(Z方向)に平行な方向に位置変更可能に設けられている。本実施形態において、第1保持部材105は、その内部にレンズ102と第2保持部材106とを収容可能な箱状の形状を有する。複数の第2ワイヤ108は、第1保持部材105と第2保持部材106とを接続し、第2保持部材106が第1保持部材105に対してZ方向に沿って相対的に移動可能なように、第2保持部材106を支持している。
【0024】
第1保持部材105は、基板104の第1面104Aの上方において、基板104に対してX方向及びY方向の少なくとも一方向に位置変更可能に設けられている。複数の第1ワイヤ107は、基板104と第1保持部材105とを接続し、第1保持部材105が基板104に対してX方向及びY方向の少なくとも一方向に沿って相対的に移動可能なように、第1保持部材105を支持している。基板104に対する第1保持部材105の相対的な位置が変化すると、基板104に対する第2保持部材106の相対的な位置も変化する。
【0025】
駆動装置は、複数の磁石(第1~第8磁石21~28)及び複数のコイル(第1~第6コイル31~36)を備える(図1及び図3参照)。第1磁石21及び第2磁石22は、Y方向に沿ってレンズ102をそれらの間に挟むようにして配置されている。第3磁石23及び第4磁石24は、X方向に沿ってレンズ102をそれらの間に挟むようにして配置されている。第5~第8磁石25~28は、それぞれ、第1~第4磁石21~24の上方(+Z方向)に配置されている。第1~第8磁石21~28は、第1保持部材105に固定されている。
【0026】
第1磁石21、第2磁石22、第5磁石25及び第6磁石26は、それぞれ長手方向をX方向に向けた直方体形状を有している。第3磁石23、第4磁石24、第7磁石27及び第8磁石28は、それぞれ長手方向をY方向に向けた直方体形状を有している(図1及び図3参照)。第1磁石21の磁化方向H(図6参照)及び第6磁石26の磁化方向は+Y方向であり、第2磁石22及び第5磁石25の磁化方向は-Y方向である。第3磁石23及び第8磁石28の磁化方向は+X方向であり、第4磁石24及び第7磁石27の磁化方向は-X方向である。
【0027】
第1コイル31は、第1磁石21と基板104との間に配置され、第2コイル32は、第2磁石22と基板104との間に配置されている(図2参照)。第3コイル33は、第3磁石23と基板104との間に配置され、第4コイル34は、第4磁石24と基板104との間に配置されている。第5コイル35は、第1磁石21及び第5磁石25とレンズ102との間に配置され、第6コイル36は、第2磁石22及び第6磁石26とレンズ102との間に配置されている。第1~第4コイル31~34は、基板104の第1面104Aに固定され、第5コイル35及び第6コイル36は、第2保持部材106に固定されている。
【0028】
第1コイル31には、主に第1磁石21から発生される磁界が印加され、第2コイル32には、主に第2磁石22から発生される磁界が印加され、第3コイル33には、主に第3磁石23から発生される磁界が印加され、第4コイル34には、主に第4磁石24から発生される磁界が印加される。
【0029】
第5コイル35は、第1磁石21に沿ってX方向に延びる第1導体部351と、第5磁石25に沿ってX方向に延びる第2導体部352と、第1導体部351及び第2導体部352の一端部同士及び他端部同士をZ方向に接続する2つの第3導体部353とを含む(図4参照)。第6コイル36は、第2磁石22に沿ってX方向に延びる第1導体部361と、第6磁石26に沿ってX方向に延びる第2導体部362と、第1導体部361及び第2導体部362の一端部同士及び他端部同士をZ方向に接続する2つの第3導体部363とを含む(図4参照)。
【0030】
第5コイル35の第1導体部351には、主に第1磁石21から発生される磁界の+Y方向の成分が印加される。第5コイルの第2導体部352には、主に第5磁石25から発生される磁界の-Y方向の成分が印加される。第6コイル36の第1導体部361には、主に第2磁石22から発生される磁界の-Y方向の成分が印加される。第6コイル36の第2導体部362には、主に第6磁石26から発生される磁界の+Y方向の成分が印加される。
【0031】
駆動装置は、第1コイル31及び第2コイル32のいずれか一方の内側において基板104に固定された磁気センサ10と、第3コイル33及び第4コイル34のいずれか一方の内側において基板104に固定された磁気センサ10とを備える。本実施形態において、2つの磁気センサ10は、それぞれ第1コイル31の内側及び第4コイル34の内側に配置されている(図5A図5B参照)。この2つの磁気センサ10は、手振れの影響を低減するためにレンズ102の位置を変化させるためのセンサ信号を出力する。
【0032】
第1コイル31の内側に配置されている磁気センサ10は、第1磁石21から発生される磁界を検出し、第1磁石21の位置に対応したセンサ信号を出力する。第4コイル34の内側に配置されている磁気センサ10は、第4磁石24から発生される磁界を検出し、第4磁石24の位置に対応したセンサ信号を出力する。各磁気センサ10の構成については、後述する。
【0033】
駆動装置は、磁石41と、磁気センサ42とを備える(図1及び図3参照)。磁気センサ42は、自動的に焦点合わせを行う際にレンズ102の位置を検出するために用いられる。磁気センサ42は、第1磁石21の端面21Aと第4磁石24の端面24Aとの近傍において基板104の第1面104Aに固定されている。磁気センサ42は、例えば、ホール素子、AMR素子、GMR素子、TMR素子等の磁気抵抗効果素子等を含んでいればよい。
【0034】
磁石41は、磁気センサ42の上方において、第2保持部材106に固定されており、直方体形状を有している。第1保持部材105に対する第2保持部材106の相対的な位置がZ方向に平行な方向に変化すると、第1保持部材105に対する磁石41の相対的な位置もZ方向に平行な方向に変化する。
【0035】
ここで、駆動装置の動作について説明する。
駆動装置は、光学式手振れ補正機構及びオートフォーカス機構の一部を構成する。駆動装置、光学式手振れ補正機構及びオートフォーカス機構は、カメラモジュール100の外部の制御部(図示を省略)によって制御される。
【0036】
光学式手振れ補正機構は、例えば、カメラモジュール100の外部のジャイロセンサ等によって、手振れを検出できるように構成されている。光学式手振れ補正機構が手振れを検出すると、制御部は、手振れの態様に応じて基板104に対するレンズ102の相対的な位置が変化するように、駆動装置を制御する。これにより、レンズ102の絶対的な位置を安定させて、手振れの影響を低減することができる。なお、基板104に対するレンズ102の相対的な位置は、手振れの態様に応じて、X方向及びY方向に変化する。
【0037】
オートフォーカス機構は、例えば、イメージセンサ200又はオートフォーカスセンサ等によって、被写体に焦点が合った状態を検出できるように構成されている。制御部は、被写体に焦点が合った状態になるように、駆動装置によって、基板104に対するレンズ102の相対的な位置をZ方向に変化させる。これにより、自動的に被写体に対する焦点合わせを行うことができる。
【0038】
光学式手振れ補正機構に関連する駆動装置の動作について説明する。
制御部によって第1コイル31及び第2コイル32に電流が印加されると、第1磁石21及び第2磁石22から発生される磁界と第1コイル31及び第2コイル32から発生される磁界との相互作用によって、第1磁石21及び第2磁石22が固定されている第1保持部材105は、Y方向に移動する。その結果、レンズ102もY方向に移動する。また、制御部によって第3コイル33及び第4コイル34に電流が印加されると、第3磁石23及び第4磁石24から発生される磁界と第3コイル33及び第4コイル34から発生される磁界との相互作用によって、第3磁石23及び第4磁石24が固定されている第1保持部材105は、X方向に移動する。その結果、レンズ102もX方向に移動する。制御部は、2つの磁気センサ10によって検出される第1磁石21及び第4磁石24の位置に対応する信号に基づいて、レンズ102の位置を検出する。
【0039】
オートフォーカス機構に関連する駆動装置の動作について説明する。
基板104に対するレンズ102の相対的な位置をZ方向に移動させる場合、制御部は、第1導体部351では+X方向に電流が流れるように、第2導体部352では-X方向に電流が流れるように、第5コイル35に電流を印加し、第1導体部361では-X方向に電流が流れるように、第2導体部362では+X方向に電流が流れるように、第6コイル36に電流を印加する。これらの電流と第1磁石21、第2磁石22、第5磁石25及び第6磁石26から発生される磁界とによって、第5コイル35の第1導体部351及び第2導体部352と第6コイル36の第1導体部361及び第2導体部362とに、Z方向のローレンツ力が作用する。これにより、第5コイル35及び第6コイル36が固定されている第2保持部材106は、Z方向に移動する。その結果、レンズ102もZ方向に移動する。なお、基板104に対するレンズ102の相対的な位置を-Z方向に移動させる場合には、制御部は、第5コイル35及び第6コイル36に、上述したZ方向にレンズ102を移動させる場合と逆方向の電流を印加させればよい。
【0040】
基板104に対するレンズ102の相対的な位置がZ方向に変化すると、磁気センサ42に対する磁石41の相対的な位置もZ方向に変化する。磁気センサ42は、少なくとも磁石41が発生する磁界を検出し、磁石41の位置に対応する信号を生成する。制御部は、磁気センサ42によって生成される信号に基づいて、レンズ102の位置を検出する。
【0041】
続いて、本実施形態における磁気センサ装置の概略構成について説明する。
本実施形態における磁気センサ装置は、第1コイル31の内側に配置されている磁気センサ10と、磁界発生部としての第1磁石21とを備える。また、本実施形態における磁気センサ装置は、第2コイル32の内側に配置されている磁気センサ10と、磁界発生部としての第2磁石22とを備える。以下、第1コイル31の内側に配置されている磁気センサ10と第1磁石21とを備える磁気センサ装置を例に挙げて説明するが、下記の説明は、第2コイル32の内側に配置されている磁気センサ10と第2磁石22とを備える磁気センサ装置にも当て嵌まることは言うまでもない。
【0042】
磁気センサ装置において、磁気センサ10と、第1磁石21とは、第1磁石21が発生する磁界の一部である部分磁界が磁気センサ10に印加され得るように構成されている。第1磁石21から発生する部分磁界は、例えば、第1方向としてのZ方向に平行な第1磁界成分H1(図6参照)と、第2方向としてのY方向に平行な磁界成分とを含む。本実施形態において、第1磁石21の磁化方向HはY方向に平行であるため、後述するように、第1磁石21から発生する部分磁界に含まれるY方向に平行な磁界成分の一部がバイアス磁界成分Hbとして磁気センサ10に印加され得る(図6参照)。
【0043】
上述したように、磁気センサ10は、基板104に固定されており、第1磁石21は、第1保持部材105に固定されている。基板104に対する第1保持部材105の位置がY方向に変化すると、磁気センサ10に対する第1磁石21の相対的な位置もY方向に変化する。磁気センサ10からの出力は、Y方向における、磁気センサ10に対する第1磁石21の相対的な位置に対応する。
【0044】
磁気センサ10と第1磁石21とは、それらの相対的な位置がY方向に変化すると、第1磁界成分H1が変化するように構成されている。本実施形態においては、第1保持部材105がY方向に移動して、磁気センサ10と第1磁石21との相対的な位置が変化すると、第1磁界成分H1が変化する。
【0045】
本実施形態における磁気センサ10は、第1磁石21から発生するZ方向の磁界成分(第1磁界成分H1)が入力磁界として入力され、その第1磁界成分H1をY方向の磁界成分(第2磁界成分H2)に変換して出力する磁界変換部11と、この磁界変換部11から出力される出力磁界としての第2磁界成分H2が印加され得る位置に設けられている磁界検出部12と、第1磁石21から発生する部分磁界に含まれるY方向の磁界成分が外部磁界として磁界検出部12に印加されるのを遮るための磁気シールド13とを備える(図7図10参照)。
【0046】
磁界変換部11は、軟磁性体により構成される複数のヨーク111を含む。本実施形態において、磁界変換部11が複数のヨーク111を含む態様を例に挙げているが、これに限定されるものではなく、磁界変換部11は1つのヨーク111を含んでいてもよい。複数のヨーク111は、第3方向としてのX方向の長さがY方向の長さよりも長い形状であって、例えばZ方向に沿って見たときに長方形状を有している。複数のヨーク111は、Z方向に沿って見たときに、各ヨーク111の長手方向がX方向に平行となるように設けられていてもよく、Y方向に沿って並ぶように設けられていてもよい。本実施形態において、複数のヨーク111の形状、長手方向の長さ及び短手方向の長さは、互いに同一であるが、これらのうちの少なくとも一つが異なっていてもよい。また、各ヨーク111は、X方向において連続しているが、X方向において複数(例えば2つ)に分割されていてもよい。なお、Z方向に沿って見たときの各ヨーク111の形状としての長方形状は一例であって、この態様に限定されるものではない。例えば、Z方向に沿って見たときの各ヨーク111の形状は、4つの角が89~91°の四角形であってもよいし、4つの角が丸められた長方形であってもよい。
【0047】
磁界検出部12は、入力磁界としての第1磁界成分H1が磁界変換部11(ヨーク111)にて変換されて出力される第2磁界成分H2(図15A図15D参照)が印加されることで、第1磁界成分H1の変化に応じた信号を出力する。
磁界検出部12は、第1磁界検出部R1、第2磁界検出部R2、第3磁界検出部R3及び第4磁界検出部R4を含む。第1磁界検出部R1、第2磁界検出部R2、第3磁界検出部R3及び第4磁界検出部R4は、それぞれ、第1磁気抵抗部R11~R41及び第2磁気抵抗部R12~R42を含む。第1磁気抵抗部R11~R41及び第2磁気抵抗部R12~R42のそれぞれは、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子120を含んでいればよいが、複数の磁気抵抗効果素子120を直列に接続してなる素子列を含んでいてもよい。図8A図8Dに示す例において、第1磁気抵抗部R11~R41及び第2磁気抵抗部R12~R42のそれぞれは、8個の磁気抵抗効果素子120を直列に接続してなる素子列を含む。本実施形態においては、第1磁気抵抗部R11~R41に含まれる磁気抵抗効果素子120の数と、第2磁気抵抗部R12~R42に含まれる磁気抵抗効果素子120の数とが同一である態様(図8A図8D参照)に限定されるものではない。第1磁気抵抗部R11~R41に含まれる磁気抵抗効果素子120の数と、第2磁気抵抗部R12~R42に含まれる磁気抵抗効果素子120の数とは異なっていてもよい。この場合において、第1磁気抵抗部R11~R41に含まれる磁気抵抗効果素子120の数と、第2磁気抵抗部R12~R42に含まれる磁気抵抗効果素子120の数との比(個数比)は、例えば、2:1~10:1又は1:2~1:10程度であればよく、2:1~4:1又は1:2~1:4程度であればよい。第1磁気抵抗部R11~R41に含まれる磁気抵抗効果素子120の数と、第2磁気抵抗部R12~R42に含まれる磁気抵抗効果素子120の数とが同一であると、磁気センサ10に+Y方向のバイアス磁場Hbが印加されても、-Y方向のバイアス磁場Hbが印加されても、磁気センサ装置から安定的な出力を得ることができる。一方で、それらの数が異なると、磁気センサ10に印加されるバイアス磁場Hbの方向によっては磁気センサ装置の感度が低下してしまうが、当該個数比が上記範囲であることで、磁気センサ10に一方向(例えば+Y方向又は-Y方向)のバイアス磁場Hbのみが印加されることで、個数比が1:1(同一)である場合よりも磁気センサ装置の感度を良好にすることができる。
【0048】
磁界検出部12は、直列に接続された第1磁気抵抗部及び第2磁気抵抗部を含んでいてもよいし、並列に接続された第1磁気抵抗部及び第2磁気抵抗部を含んでいてもよい。例えば、第1磁界検出部R1、第2磁界検出部R2、第3磁界検出部R3及び第4磁界検出部R4のそれぞれが、直列に接続された第1磁気抵抗部R11~R41及び第2磁気抵抗部R12~R42を含んでいてもよいし(図8A図13A参照)、並列に接続された第1磁気抵抗部R11~R41及び第2磁気抵抗部R12~R42を含んでいてもよい(図8B図13B参照)。
【0049】
また、磁界検出部12は、直列に接続された第1磁気抵抗部及び第2磁気抵抗部と、並列に接続された第1磁気抵抗部及び第2磁気抵抗部とを含んでいてもよい。具体的には、第1磁界検出部R1、第2磁界検出部R2、第3磁界検出部R3及び第4磁界検出部R4のうちの2つの磁界検出部のそれぞれが、直列に接続された第1磁気抵抗部及び第2磁気抵抗部を含み、他の2つの磁界検出部のそれぞれが、並列に接続された第1磁気抵抗部及び第2磁気抵抗部を含んでいてもよい。例えば、第1磁界検出部R1及び第3磁界検出部R3のそれぞれが直列に接続された第1磁気抵抗部R11,R31及び第2磁気抵抗部R12,R32を含み、第2磁界検出部R2及び第4磁界検出部R4のそれぞれが並列に接続された第1磁気抵抗部R21,R41及び第2磁気抵抗部R22,R42を含んでいてもよい(図8C図13C参照)。さらに、第1磁界検出部R1及び第2磁界検出部R2のそれぞれが並列に接続された第1磁気抵抗部R11,R21及び第2磁気抵抗部R12,R22を含み、第3磁界検出部R3及び第4磁界検出部R4のそれぞれが直列に接続された第1磁気抵抗部R31,R41及び第2磁気抵抗部R32,R42を含んでいてもよい(図8D図13D参照)。なお、図示を省略するが、第1磁界検出部R1及び第3磁界検出部R3のそれぞれが並列に接続された第1磁気抵抗部R11,R31及び第2磁気抵抗部R12,R32を含み、第2磁界検出部R2及び第4磁界検出部R4のそれぞれが直列に接続された第1磁気抵抗部R21,R41及び第2磁気抵抗部R22,R42を含んでいてもよいし、第1磁界検出部R1及び第2磁界検出部R2のそれぞれが直列に接続された第1磁気抵抗部R11,R21及び第2磁気抵抗部R12,R22を含み、第3磁界検出部R3及び第4磁界検出部R4のそれぞれが並列に接続された第1磁気抵抗部R31,R41及び第2磁気抵抗部R32,R42を含んでいてもよい。
【0050】
本実施形態における磁気抵抗効果素子120としては、例えば、TMR素子、GMR素子等のMR素子を用いることができる。磁気抵抗効果素子120は、順に積層された反強磁性層124、磁化固定層123、非磁性層122及び自由層121を含むMR積層体125を有する(図11参照)。反強磁性層124は、反強磁性材料により構成され、磁化固定層123との間で交換結合を生じさせることで、磁化固定層123の磁化の方向を固定する役割を果たす。また、磁化固定層123を、強磁性層/非磁性中間層/強磁性層の積層フェリ構造とし、両強磁性層を反強磁性的に結合させてなる、いわゆるセルフピン止め型の固定層(Synthetic Ferri Pinned層,SFP層)とすることで、反強磁性層124が省略されていてもよい。
【0051】
磁気抵抗効果素子120の磁化固定層123の磁化方向は、Y方向に沿った方向であって、第1磁気抵抗部R11~R41に含まれる磁気抵抗効果素子120の磁化固定層123の磁化方向と、第2磁気抵抗部R12~R42に含まれる磁気抵抗効果素子120の磁化固定層123の磁化方向とは、互いに反平行である。例えば、第1磁気抵抗部R11~R41に含まれる磁気抵抗効果素子120の磁化固定層123の磁化方向が+Y方向であって、第2磁気抵抗部R12~R42に含まれる磁気抵抗効果素子120の磁化固定層123の磁化方向が-Y方向であればよい。
【0052】
TMR素子においては、非磁性層122はトンネルバリア層である。GMR素子においては、非磁性層122は非磁性導電層である。TMR素子、GMR素子において、自由層121の磁化の方向が磁化固定層123の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°(互いの磁化方向が平行)のときに抵抗値が最小となり、180°(互いの磁化方向が反平行)のときに抵抗値が最大となる。
【0053】
磁気抵抗効果素子120は、Z方向に沿って見たときに略長方形状の複数のMR積層体125が上部リード電極126及び下部リード電極127を介して直列に接続されてなるものであってもよい(図12参照)。なお、図12に示すMR積層体125には、その積層方向(+Z方向、-Z方向)に電流が流れるが、本実施形態における磁気抵抗効果素子120は、MR積層体125の面内方向(例えば+X方向又は-X方向)に電流が流れるCIP(Current In Plane)タイプの素子であってもよい。上部リード電極126及び下部リード電極127は、例えば、Cu、Al、Au、Ta、Ti等のうちの1種の導電材料又は2種以上の導電材料の複合膜により構成される。なお、略長方形状とは、Z方向に沿って見たときに、X方向における長さがY方向における長さよりも長い長方形状の他、X方向の長さがY方向における長さよりも長く、4つの角が89~91°の四角形状や、X方向における長さがY方向における長さよりも長く、4つの角が丸められた角丸四角形状等も含むことを意味する。本実施形態において、Z方向に沿って見たときのMR積層体125の形状は、略長方形状に限定されるものではなく、例えば、楕円形状、長円形状等であってもよい。この場合においても、Z方向に沿って見たときに、楕円形状、長円形状等の長径がX方向であり、短径がY方向であればよい。
【0054】
複数の下部リード電極127は、例えば略長方形状を有しており、複数のMR積層体125の電気的な直列方向において隣接する2つの下部リード電極127の間に所定の隙間を有するように、かつ複数のMR積層体125を直列に接続するように配置され、隣接する2つのMR積層体125同士を電気的に接続する。下部リード電極127の長手方向の両端近傍のそれぞれに、MR積層体125が設けられている。すなわち、複数の下部リード電極127上には、それぞれ、2つのMR積層体125が設けられている。
【0055】
複数の上部リード電極126は、複数のMR積層体125上に設けられている。各上部リード電極126は、例えば細長い略長方形状を有する。上部リード電極126は、複数のMR積層体125の電気的な直列方向において隣接する2つの上部リード電極126の間に所定の隙間を有するように、かつ複数のMR積層体125を直列に接続するように配置され、隣接する2つのMR積層体125同士を電気的に接続する。なお、自由層121と下部リード電極127又は上部リード電極126との間にはキャップ層(保護層)が設けられていてもよい。
【0056】
Z方向に沿って見たときに、第1磁界検出部R1及び第4磁界検出部R4のそれぞれにおいて、第1磁気抵抗部R11,R41に含まれる複数の磁気抵抗効果素子120は、Y方向において各磁気抵抗効果素子120に最近接の磁界変換部11(ヨーク111)の+Y側に配置されており、第2磁気抵抗部R12,R42に含まれる複数の磁気抵抗効果素子120は、Y方向において各磁気抵抗効果素子120に最近接の磁界変換部11(ヨーク111)の-Y側に配置されている(図8A図8D参照)。また、第2磁界検出部R2及び第3磁界検出部R3のそれぞれにおいて、第1磁気抵抗部R21,R31に含まれる複数の磁気抵抗効果素子120は、Y方向において各磁気抵抗効果素子120に最近接の磁界変換部11(ヨーク111)の-Y側に配置されており、第2磁気抵抗部R22,R32に含まれる複数の磁気抵抗効果素子120は、Y方向において各磁気抵抗効果素子120に最近接の磁界変換部11(ヨーク111)の+Y側に配置されている(図8A図8D参照)。複数の磁気抵抗効果素子120は、磁界変換部11(ヨーク111)の短手方向の中心を通る軸線(磁界変換部11(ヨーク111)の長手方向に延びる軸線)を中心とする線対称の位置に配置されている(図8A図8D参照)。なお、図8A図8Dに示す態様に限定されず、少なくとも1つの磁界変換部11(ヨーク111)の上記軸線と当該磁界変換部11(ヨーク111)の+Y側に配置されている磁気抵抗効果素子120との間の長さ(Y方向における長さ)と、その磁界変換部11(ヨーク111)の上記軸線と当該磁界変換部11(ヨーク111)の-Y側に配置されている磁気抵抗効果素子120との間の長さ(Y方向における長さ)とは、互いに実質的に同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。当該2つの長さが互いに実質的に同一であるとは、2つの長さの比が1:0.95~1:1.05程度であることを意味する。また、複数の磁気抵抗効果素子120は、少なくとも1つの磁界変換部11(ヨーク111)の上記軸線を中心として線対称の位置に配置されていなくてもよい。
【0057】
磁気シールド13は、Z方向に沿って見たときに、磁界変換部11及び磁界検出部12を間に挟むようにして位置する第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132を含む(図9図12参照)。すなわち、磁気シールド13は、Z方向に沿って見たときに磁界変換部11及び磁界検出部12に重なっている。なお、本実施形態における磁気センサ装置が有する効果を奏する限りにおいて、磁気シールド13は、Z方向に沿って見たときに、磁界変換部11及び磁界検出部12の一部に重なっていてもよいし、磁界変換部11及び磁界検出部12の全部に重なっていてもよい。Z方向に沿って見たときに、第1磁気シールド131は、磁界変換部11及び磁界検出部12よりも+Z方向(上方)に位置し、第2磁気シールド132は、磁界変換部11及び磁界検出部12よりも-Z方向(下方)に位置する。第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132は、Z方向に沿って見たときに、いずれもY方向における最大長さがX方向における最大長さよりも短い形状を有していればよく、例えば、長方形状、4つの角の角度が89~91°の四角形状、4つの角が丸められた角丸長方形状、長方形の4つの角が面取りされた形状(八角形状)、楕円状を含む長円状、長方形の対向する2つの短辺を円弧状にした形状、台形、平行四辺形、菱形等の形状を有していればよい。なお、第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132を含む磁気シールド13が、例えば、4つの角の角度が89~91°の四角形状、台形、菱形等の四角形状を有する場合において、2組の対向する2辺のうちの少なくとも1組の対向する2辺が平行であってもよいし、2組の対向する2辺がいずれも非平行であってもよい。
【0058】
磁気シールド13は、例えば、軟磁性材料によって構成されていればよい。軟磁性材料としては、例えば、NiFe等が挙げられる。磁気シールド13がNiFeにより構成される場合、磁気シールド13の熱応力を低減するため、磁気シールド13は、Niの割合が35~60質量%の組成のNiFeにより構成されるのが好ましい。このような組成のNiFeであれば、熱膨張係数を小さくすることができる。磁気シールド13の磁気特性も考慮すると、磁気シールド13は、Niの割合が40~60質量%の組成のNiFeにより構成されるのが好ましい。磁気シールド13に求められる性能の一つとして、最大磁束吸収量が大きいことが挙げられる。磁気シールド13の最大磁束吸収量は、磁気シールド13の飽和磁化と厚み(Z方向における寸法)との積に実質的に比例する。磁気シールド13の性能を確保するために、磁気シールド13の飽和磁化と厚みとの積、すなわち単位面積当たりの磁気モーメントは、0.6emu/cm以上であるのが好ましい。
【0059】
なお、本実施形態において、磁気シールド13は、Z方向に沿って見たときに、磁界変換部11及び磁界検出部12の一方側である上方(+Z側)に位置する第1磁気シールド131と、磁界変換部11及び磁界検出部12の他方側である下方(-Z側)に位置する第2磁気シールド132とを含むが、磁気シールド13の機能が奏される限りにおいて、第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132のいずれか一方が省略されていてもよい。また、第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132の少なくとも一方は、Y方向において複数の磁気シールドが並列した態様であってもよい。Y方向において複数の磁気シールドが並列していることで、磁界変換部11及び磁界検出部12の設置可能面積を相対的に大きくすることができる。また、Y方向において並列する磁気シールドの間隔(Y方向における間隔)が相対的に狭いと磁気シールドが飽和しやすくなる傾向を示すが、当該間隔を相対的に広げることで、当該磁気シールドが飽和しやすくなることを抑制することができる。さらに、第1磁気シールド131及び第2磁気シールド132の少なくとも一方は、X方向又はZ方向において複数の磁気シールドが並列した態様であってもよい。
【0060】
本実施形態における磁界検出部12の回路構成は、4つの磁界検出部(第1~第4磁界検出部R1~R4)をブリッジ接続してなるホイートストンブリッジ回路Cであればよい(図13A図13D参照)。例えば、磁界検出部12を構成するホイートストンブリッジ回路Cは、第1磁界検出部R1及び第2磁界検出部R2を含む第1ブリッジ回路C1と第3磁界検出部R3及び第4磁界検出部R4を含む第2ブリッジ回路C2とを並列に接続してなるものであればよい。
【0061】
磁界検出部12を構成するホイートストンブリッジ回路Cは、電源ポートVと、グランドポートGと、第1出力ポートE1と、第2出力ポートE2と、電源ポートV及び第1出力ポートE1の間に設けられている第1磁界検出部R1と、第1出力ポートE1及びグランドポートGの間に設けられている第2磁界検出部R2と、電源ポートV及び第2出力ポートE2の間に設けられている第3磁界検出部R3と、第2出力ポートE2及びグランドポートGの間に設けられている第4磁界検出部R4とを含む。電源ポートVには、定電流源が接続されることで所定の大きさの電源電圧(定電流)が印加され、グランドポートGはグランドに接続される。電源ポートVに印加される定電流は、図示しないドライバICにより所定の電流値に制御されている。
【0062】
本実施形態において、第1~第4磁界検出部R1~R4の第1磁気抵抗部R11~R41に含まれるMR積層体125における磁化固定層123の磁化方向(図14A図16Dに示される実線の矢印)は、互いに同一の方向(+Y方向)に固定されている(図14A図16D参照)。一方、第1~第4磁界検出部R1~R4の第2磁気抵抗部R12~R42に含まれるMR積層体125における磁化固定層123の磁化方向(図14A図16Dに示される実線の矢印)は、互いに同一の方向(-Y方向)に固定されている(図14A図16D参照)。なお、すべてのMR積層体125における磁化固定層123の磁化方向が互いに実質的にY方向に沿って固定されていればよく、この場合において、第1磁気抵抗部R11~R41に含まれる各MR積層体125における磁化固定層123の磁化方向は、+Y方向に対して10°以内の角度で傾斜していればよく、第2磁気抵抗部R21~R42に含まれる各MR積層体125における磁化固定層123の磁化方向は、-Y方向に対して10°以内の角度で傾斜していればよい。すべてのMR積層体125は、Z方向に沿って見たときに、X方向に長い形状(例えば略長方形状、楕円形状、長円形状等)を有している。そのため、各MR積層体125における自由層121は、磁化容易軸方向がX方向となる形状異方性を有している。その結果、イニシャル状態(磁界変換部11(ヨーク111)から出力される第2磁界成分H2が印加されていない状態)におけるすべてのMR積層体125における自由層121の磁化方向(図14A図14Dに示される破線の矢印)は、互いに同一であって、磁化固定層123の磁化方向に対する直交方向(+X方向)である(図14A図14D参照)。磁化固定層123及び自由層121の磁化方向が上記方向であることで、第2磁界成分H2に応じた第1~第4磁界検出部R1~R4の抵抗値変化に伴い第1出力ポートE1及び第2出力ポートE2の電位差が変化し、その電位差の変化としての信号が出力される。
【0063】
本実施形態における磁気センサ装置において、第1磁石21から発生する磁界の一部である部分磁界のうちのZ方向に平行な第1磁界成分H1が磁界変換部11に入力されると、当該磁界変換部11よってY方向に平行な第2磁界成分H2に変換されて出力される。第1磁界検出部R1及び第4磁界検出部R4のそれぞれの第1磁気抵抗部R11,R41に含まれる磁気抵抗効果素子120には+Y方向の第2磁界成分H2が印加され、第2磁気抵抗部R12,R42に含まれる磁気抵抗効果素子120には-Y方向の第2磁界成分H2が印加され、それに応じて各自由層121の磁化方向が変化する(図15A図15D参照)。一方、第2磁界検出部R2及び第3磁界検出部R3のそれぞれの第1磁気抵抗部R21,R31に含まれる磁気抵抗効果素子120には-Y方向の第2磁界成分H2が印加され、第2磁気抵抗部R22,R32に含まれる磁気抵抗効果素子120には+Y方向の第2磁界成分H2が印加され、それに応じて各自由層121の磁化方向が変化する(図15A図15D参照)。これにより、第1磁界検出部R1及び第4磁界検出部R4のそれぞれの第1磁気抵抗部R11,R41及び第2磁気抵抗部R12,R42における自由層121と磁化固定層123との互いの磁化のなす角度θ11,θ12,θ41,θ42は90°未満となる(図15A図15D参照)。一方、第2磁界検出部R2及び第3磁界検出部R3のそれぞれの第1磁気抵抗部R21,R31及び第2磁気抵抗部R22,R32における自由層121と磁化固定層123との互いの磁化のなす角度θ21,θ22,θ31,θ32は90°を超える(図15A図15D参照)。なお、図15A図15Dにおいて、破線の矢印は第2磁界成分H2の印加により方向が変化した自由層121の磁化を表し、白抜き破線の矢印はイニシャル状態における自由層121の磁化方向を表している。
【0064】
上述したように、第1磁石21から発生する磁界の一部である部分磁界には、Y方向に平行な磁界成分が含まれる。このY方向の磁界成分のほとんどは、磁気シールド13により吸収されるが、当該磁界成分のすべてが磁気シールド13に完全に吸収されるわけではなく、一部がバイアス磁界成分Hbとして磁気抵抗効果素子120に印加され、自由層121の磁化方向を変化させてしまう(図16A図16D参照)。なお、図16A図16Dにおいて、破線の矢印は第2磁界成分H2及びバイアス磁界成分Hbの印加により方向が変化した自由層121の磁化を表し、白抜き破線の矢印はイニシャル状態における自由層121の磁化方向を表している。これにより、第1~第4磁界検出部R1~R4のそれぞれの第1磁気抵抗部R11~R41及び第2磁気抵抗部R12~R42における自由層121と磁化固定層123の互いの磁化のなす角度θ11’,θ21’,θ31’,θ41’,θ12’,θ22’,θ32’,θ42’ (図16A図16D参照)は、バイアス磁界成分Hbが印加されないときに示すはずの角度θ11,θ21,θ31,θ41,θ12,θ22,θ32,θ42(図15A図15D参照)よりも小さくなる。その結果、第1出力ポートE1及び第2出力ポートE2のそれぞれの出力が変動してしまう。
【0065】
しかしながら、本実施形態においては、第1~第4磁界検出部R1~R4に含まれるすべての磁気抵抗効果素子120の磁化固定層123の磁化がY方向に沿って固定され、かつすべての磁気抵抗効果素子120の自由層121のイニシャル状態における磁化が同一方向であるため、バイアス磁界成分Hbが磁気抵抗効果素子120に印加されたときに、第1出力ポートE1の出力の変動量と第2出力ポートE2の出力の変動量とが実質的に同一となる。バイアス磁界成分Hbに起因して第1出力ポートE1の出力の変動量と第2出力ポートE2の出力の変動量とが異なると、磁気センサ装置からの出力がオフセットしてしまうおそれがあるが、本実施形態においては、磁気センサ装置からの出力のオフセットが生じるのを抑制することができる。また、本実施形態においては、イニシャル状態における自由層121の磁化方向が、バイアス磁界成分Hbに直交しているため、磁気センサ装置の感度が低下するのを抑制することができる。さらに、本実施形態においては、第1~第4磁界検出部R1~R4のそれぞれが、+Y方向に磁化が固定された磁化固定層123を有する磁気抵抗効果素子120を含む第1磁気抵抗部R11~R41と、-Y方向に磁化が固定された磁化固定層123を有する磁気抵抗効果素子120を含む第2磁気抵抗部R12~R42とを有することで、バイアス磁場Hbによって生じる第1磁気抵抗部R11~R41における抵抗変動及び第2磁気抵抗部R12~R42における抵抗変動を相殺することができるため、磁気センサ装置の中点電位が変動するのを抑制することができる。特に、電源ポートVに定電流が印加されている場合には、第1~第4磁界検出部R1~R4のそれぞれに含まれる第1磁気抵抗部R11~R41と第2磁気抵抗部R12~R42とが並列に接続されていると(図8B図13B参照)、磁気センサ装置の中点電位変動の抑制効果が顕著に優れる。なお、本実施形態において、中点電位とは、磁気センサ10にて検知すべき磁場(第2磁場H2)がゼロのときにおける磁気センサ10を構成するホイートストンブリッジ回路Cの第1出力ポートE1の出力及び第2出力ポートE2の出力のグランドGからの電位を意味する。
【0066】
Z方向に沿って見たときに、X方向を長手方向とする形状を有する磁気抵抗効果素子120において磁化固定層123の磁化方向がY方向に固定されている場合、Y方向のバイアス磁場Hbが磁気抵抗効果素子120に印加されたときに自由層121の磁化方向が変動する。このとき、磁気抵抗効果素子120の抵抗R120(Ω)は下記式(1)により表される。
【0067】
【数1】

上記式(1)において、G120は「磁気抵抗効果素子120のコンダクタンス(Ω-1)」を表し、ΔG120は「磁気抵抗効果素子120のコンダクタンスの変化振幅(Ω-1)」を表し、δθは「自由層121の磁化の角度変位量(deg)」を表す。
【0068】
上記式(1)からも明らかなように、Y方向のバイアス磁場Hbの影響による自由層121の磁化方向の変動によって、第2磁場成分H2の印加による磁気抵抗効果素子120の抵抗変化、すなわち磁気センサ装置からの出力が理想的な正弦波からずれてしまう。すなわち、Y方向のバイアス磁場Hbが、中点電位の変動を引き起こす結果となる。
【0069】
図8A及び図13Aに示すように、第1~第4磁界検出部R1~R4の第1磁気抵抗部R11~R41と第2磁気抵抗部R12~R42とが直列に接続されていると、第1~第4磁界検出部R1~R4の各抵抗Rは、第1磁気抵抗部R11~R41に含まれる磁気抵抗効果素子120の抵抗R(Ω)と第2磁気抵抗部R12~R42に含まれる磁気抵抗効果素子120の抵抗R(Ω)とから下記式(2)で表される。
R=R+R ・・・(2)
【0070】
第1磁気抵抗部R11~R41に含まれる磁気抵抗効果素子120の磁化固定層123の磁化方向と第2磁気抵抗部R12~R42に含まれる磁気抵抗効果素子120の磁化固定層123の磁化方向とが互いに反平行であることで、Y方向のバイアス磁場Hbによる自由層の磁化方向の変動が磁気センサ装置からの出力に及ぼす影響を、第1~第4磁界検出部R1~R4のそれぞれにおいて全体として相殺可能であり、中点電位の変動を抑制可能であるものの、上記式(2)からも明らかなように、Y方向のバイアス磁場Hbによりわずかに中点電位の変動を引き起こすおそれがある。
【0071】
一方、図8B及び図13Bに示すように、第1~第4磁界検出部R1~R4の第1磁気抵抗部R11~R41と第2磁気抵抗部R12~R42とが並列に接続されていると、第1~第4磁界検出部R1~R4の各抵抗Rは、第1磁気抵抗部R11~R41に含まれる磁気抵抗効果素子120の抵抗R(Ω)と第2磁気抵抗部R12~R42に含まれる磁気抵抗効果素子120の抵抗R(Ω)とから下記式(3)で表される。
R=(1/R+1/R)-1 ・・・(3)
【0072】
第1磁気抵抗部R11~R41に含まれる磁気抵抗効果素子120の磁化固定層123の磁化方向と第2磁気抵抗部R12~R42に含まれる磁気抵抗効果素子120の磁化固定層123の磁化方向とが互いに反平行であることで、Y方向のバイアス磁場Hbによる自由層の磁化方向の変動が磁気センサ装置からの出力に及ぼす影響を、第1~第4磁界検出部R1~R4のそれぞれにおいて全体として相殺可能であり、上記式(3)からも明らかなように、Y方向のバイアス磁場Hbによる中点電位の変動を、理論的には完全に抑制することができる。
【0073】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0074】
上記実施形態において、磁気センサ装置を備えるアプリケーションとしてレンズモジュールを例に挙げて説明したが、この態様に限定されるものではない。本実施形態における磁気センサ装置は、XY平面内における位置変化やZ方向における位置変化をZ方向の磁場の変化から検知する用途に用いることができ、当該磁気センサ装置を備えるアプリケーションとしては、例えば、ロボットの関節機構等に用いられるアクチュエータ、ノートパソコンの開閉検知機構、ジョイスティック、ブラシレスモータ、磁気エンコーダ等の電子機器等が挙げられる。
【実施例
【0075】
以下、実施例等を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0076】
〔試験例1〕
図8A図9図10及び図13Aに示す構成を有する磁気センサ10(Sample 1)を用い、磁場強度10mTのバイアス磁場Hbが磁気センサ10に印加されている条件で、磁気センサ10に印加される第2磁界成分H2の磁場強度の範囲を-10mT~10mTとしたときにおける第1出力ポートE1の出力(VOUT,V1)及び第2出力ポートE2の出力(VOUT,V2)、並びに差動出力(dVOUT,V1-V2)をシミュレーションにより求めた。同様にして、バイアス磁場Hbが磁気センサ10に印加されていない条件での第1出力ポートE1の出力(VOUT,V1’)及び第2出力ポートE2の出力(VOUT,V2’)及び差動出力(dVOUT,V1’-V2’)もシミュレーションにより求めた。結果を図17A及び図17Bに示す。なお、第1~第4磁界検出部R1~R4に含まれる各磁気抵抗効果素子120の自由層121の異方性磁界を25mTとした。
【0077】
〔試験例2〕
図8B図9図10及び図13Bに示す構成を有する磁気センサ10(Sample 2)を用いた以外は、試験例1と同様にして第1出力ポートE1の出力(VOUT,V1)、第2出力ポートE2の出力(VOUT,V2)及び差動出力(dVOUT,V1-V2)、並びに第1出力ポートE1の出力(VOUT,V1’)、第2出力ポートE2の出力(VOUT,V2’)及び差動出力(dVOUT,V1’-V2’)をシミュレーションにより求めた。結果を図18A及び図18Bに示す。
【0078】
〔試験例3〕
図8C図9図10及び図13Cに示す構成を有する磁気センサ10(Sample 3)を用いた以外は、試験例1と同様にして第1出力ポートE1の出力(VOUT,V1)、第2出力ポートE2の出力(VOUT,V2)及び差動出力(dVOUT,V1-V2)、並びに第1出力ポートE1の出力(VOUT,V1’)、第2出力ポートE2の出力(VOUT,V2’)及び差動出力(dVOUT,V1’-V2’)をシミュレーションにより求めた。結果を図19A及び図19Bに示す。
【0079】
〔試験例4〕
図8D図9図10及び図13Dに示す構成を有する磁気センサ10(Sample 4)を用いた以外は、試験例1と同様にして第1出力ポートE1の出力(VOUT,V1)、第2出力ポートE2の出力(VOUT,V2)及び差動出力(dVOUT,V1-V2)、並びに第1出力ポートE1の出力(VOUT,V1’)、第2出力ポートE2の出力(VOUT,V2’)及び差動出力(dVOUT,V1’-V2’)をシミュレーションにより求めた。結果を図20A及び図20Bに示す。
【0080】
図17A図18A図19A及び図20Aに示すグラフにおける縦軸の差動出力(dVOUT)の値、並びに図17B図18B図19B及び図20Bに示すグラフにおける縦軸の出力(VOUT)の値は、いずれも規格化された値である。
図17A図18A図19A及び図20Aに示す結果から、Sample 1~4の磁気センサ10においては、バイアス磁場Hbが印加された場合においても感度が変動しにくく、かつオフセットが起こりにくいことが確認された。
【0081】
また、図17B図18B図19B及び図20Bに示す結果から明らかなように、Sample 1~4の磁気センサ10においては、バイアス磁場Hbが印加された場合における中点電位の変動量(mV)が、バイアス磁場Hbが印加されていない場合における中点電位(mV)に対する2%以下程度であり、中点電位が変動し難いことが確認された。特に、第1~第4磁界検出部R1~R4のすべてにおいて第1磁気抵抗部R11~R41と第2磁気抵抗部R12~R42とが並列に接続されている磁気センサ10(Sample 2)、第2磁界検出部R2及び第4磁界検出部R4において第1磁気抵抗部R21,R41と第2磁気抵抗部R22,R42とが並列に接続されている磁気センサ10(Sample 3)においては、中点電位変動抑制効果に極めて優れることが確認された。
【0082】
〔試験例5〕
上記Sample 1及びSample 2において、第1~第4磁界検出部R1~R4のそれぞれの第1磁気抵抗部R11~R41に含まれる磁気抵抗効果素子120の数と、第2磁気抵抗部R12~R42に含まれる磁気抵抗効果素子120の数との比(個数比NR)を1:1,2:1,4:1,10:1とし、バイアス磁場Hbの磁場強度の範囲を-10mT~10mTとし、試験例1と同様にして第1出力ポートE1の出力(V1)、第2出力ポートE2の出力(V2)及び差動出力(V1-V2)をシミュレーションにより求め、磁気センサ装置の感度(S)を求めた。結果を図21A及び図21Bに示す。なお、図21A及び図21Bにおいて、磁気センサ装置の感度(S)の値は、バイアス磁場Hbの磁場強度が0mTのときの感度を「1」として規格化された値である。
【0083】
図21A及び図21Bに示すように、Sample 1においては、第1磁気抵抗部R11~R41に含まれる磁気抵抗効果素子120の数と第2磁気抵抗部R12~R42に含まれる磁気抵抗効果素子120の数とが異なっていることで、磁気センサ10に印加されるバイアス磁場Hbが常に一方向(例えば+Y方向)になるようにすることで、磁気センサ装置の感度の変動をより抑制可能であることが確認された。したがって、常に一方向のバイアス磁場Hbが印加されるように磁気センサ装置を組み込むことで、バイアス磁場Hbによる感度変動抑制効果に極めて優れた磁気センサ装置とすることができる。一方で、第1磁気抵抗部R11~R41に含まれる磁気抵抗効果素子120の数と第2磁気抵抗部R12~R42に含まれる磁気抵抗効果素子120の数とが同一である場合には、磁気センサ10に印加されるバイアス磁場Hbの方向が一方向(例えば+Y方向)である場合、他方向(例えば-Y方向)である場合のいずれにおいても、感度の変動の軌跡が変わらない。そのため、電子機器等において、磁気センサ装置の組み込まれる位置によっては双方向(例えば+Y方向及び-Y方向)のバイアス磁場Hbが磁気センサ10に印加され得るが、そのような場合であっても磁気センサ装置の感度を安定させることができる。
【符号の説明】
【0084】
10…磁気センサ
11…磁界変換部
111…ヨーク
12…磁界検出部
120…磁気抵抗効果素子
13…磁気シールド
131…第1磁気シールド
132…第2磁気シールド
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図15C
図15D
図16A
図16B
図16C
図16D
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図21A
図21B