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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】接合構造および接合構造の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
E04B1/58 505N
E04B1/58 505A
E04B1/58 508N
E04B1/58 508A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023199910
(22)【出願日】2023-11-27
【審査請求日】2023-11-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100229091
【弁理士】
【氏名又は名称】山路 英洋
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】高谷 真次
(72)【発明者】
【氏名】宮野鼻 一裕
(72)【発明者】
【氏名】久田 昌典
(72)【発明者】
【氏名】皆川 宥子
(72)【発明者】
【氏名】姚 至謙
(72)【発明者】
【氏名】久保田 淳
(72)【発明者】
【氏名】林 智之
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-123628(JP,A)
【文献】特開2023-122370(JP,A)
【文献】特開2022-160200(JP,A)
【文献】特開2019-100057(JP,A)
【文献】特許第7394256(JP,B1)
【文献】特開2020-111930(JP,A)
【文献】特開2020-193473(JP,A)
【文献】特開2020-101020(JP,A)
【文献】特開2015-218464(JP,A)
【文献】特開2014-029092(JP,A)
【文献】特開2024-008637(JP,A)
【文献】特開2024-024391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート部分を有する接合部を介して柱とその両側の梁を接合した接合構造であって、
前記梁は、前記接合部の側面に設けられる端部梁と、前記端部梁に連続する中間梁とを有し、
前記中間梁は、木質材を用いた梁状のプレキャスト部材であり、材軸方向の端部から前記接合部側に一端が突出する、プレストレスの導入されない水平鉄筋が設けられ、
前記水平鉄筋の他端は前記中間梁内部に埋設され、
前記端部梁は、現場打ちのコンクリートによるコンクリート部分を有し、
水平方向の接合鉄筋が、前記接合部とその両側の前記端部梁のコンクリート部分に跨るように埋設され、
前記柱の両側の前記梁の前記水平鉄筋と前記接合鉄筋の部が前記接合部の両側の前記端部梁のコンクリート部分内で継手によりそれぞれ接続されたことを特徴とする接合構造。
【請求項2】
前記水平鉄筋の他端が前記中間梁の材軸方向の孔に挿入され、前記孔に充填材が充填されたことを特徴とする請求項1記載の接合構造。
【請求項3】
前記柱が外郭木材の内側にコンクリートを充填した合成構造を有することを特徴とする請求項1記載の接合構造。
【請求項4】
前記柱が木造の部材であることを特徴とする請求項1記載の接合構造。
【請求項5】
前記接合部が、外郭木材の内側にコンクリートを充填した合成構造を有することを特徴とする請求項1記載の接合構造。
【請求項6】
前記端部梁が、外郭木材の内側にコンクリートを充填した合成構造を有することを特徴とする請求項1記載の接合構造。
【請求項7】
コンクリート部分を有する接合部を介して柱とその両側の梁を接合した接合構造であって、
前記梁は、前記接合部の側面に設けられる端部梁と、前記端部梁に連続する中間梁とを有し、
前記中間梁は、木質材を用いた梁状のプレキャスト部材であり、材軸方向の端部から前記接合部側に一端が突出する、プレストレスの導入されない水平鉄筋が設けられ、
前記水平鉄筋の他端は前記中間梁内部に埋設され、
前記端部梁は、現場打ちのコンクリートによるコンクリート部分を有し、
水平方向の接合鉄筋が、前記接合部とその両側の前記端部梁のコンクリート部分に跨るように埋設され、
前記柱の両側の前記梁の前記水平鉄筋と前記接合鉄筋の両端部が、前記接合部の両側の前記端部梁のコンクリート部分内で継手によりそれぞれ接続された接合構造を構築する際、
前記中間梁の施工箇所に、前記中間梁を上から落とし込んで設置した後、前記接合鉄筋と前記水平鉄筋の端部同士を前記継手によって接続し、
その後、前記端部梁のコンクリートを打設することを特徴とする接合構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱と梁の接合構造および接合構造の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柱と梁を木部材とした木造ラーメン架構における木部材同士の接合時には、GIR(Glued In Rod)など、一方の木部材から突出する鋼材を他方の木部材の材軸方向の孔に挿入することが多く行われている。当該孔に接着材等の充填材を充填することで、木部材同士を接合することができる(例えば、特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-8273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、梁部材に前記の工法を用いると、建設現場で長尺の木部材を材軸方向に移動させ、その孔に鋼材を挿入する必要が生じ、施工面で難がある。また一般的に柱と梁の繊維方向は直交するため、柱と梁の接合部に前記の工法を適用すると、GIR等の鋼材がいずれかの部材の繊維直交方向に挿入されることになり、強度上の課題となる。
【0005】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、施工が容易で、強度にも優れた架構を実現できる接合構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の発明は、コンクリート部分を有する接合部を介して柱とその両側の梁を接合した接合構造であって、前記梁は、前記接合部の側面に設けられる端部梁と、前記端部梁に連続する中間梁とを有し、前記中間梁は、木質材を用いた梁状のプレキャスト部材であり、材軸方向の端部から前記接合部側に一端が突出する、プレストレスの導入されない水平鉄筋が設けられ、前記水平鉄筋の他端は前記中間梁内部に埋設され、前記端部梁は、現場打ちのコンクリートによるコンクリート部分を有し、水平方向の接合鉄筋が、前記接合部とその両側の前記端部梁のコンクリート部分に跨るように埋設され、前記柱の両側の前記梁の前記水平鉄筋と前記接合鉄筋の部が前記接合部の両側の前記端部梁のコンクリート部分内で継手によりそれぞれ接続されたことを特徴とする接合構造である。
前記水平鉄筋の他端は例えば前記中間梁の材軸方向の孔に挿入され、前記孔に充填材が充填される。
【0007】
本発明では、梁を端部梁と中間梁に分割し、環境面や意匠面で優れた木質材を中間梁に用いつつ、柱梁の接合部や端部梁には鉄筋コンクリートを用いることで、強度に優れた架構を実現できる。また中間梁に関しては、予め工場等で製作されたプレキャスト部材(中間梁)を上から落とし込んで設置し、接合部の接合鉄筋と中間梁の水平鉄筋とを継手によって接続出来るため、中間梁を前記のように材軸方向に移動させる必要が無く、施工性が向上する。また接合部に鉄筋コンクリートが用いられることで、前記のように鉄筋が木部材の繊維直交方向に挿入される問題を回避することもできる。
【0008】
さらに、継手は端部梁の位置に配置することで、配筋が密となる接合部での鉄筋同士の接続を避けつつ、架構が曲げ降伏する位置を梁中央側に移動させるヒンジリロケーションを実現できる。これにより、接合構造の性能を向上させて架構全体の耐力を向上させることができる。
【0009】
前記柱は例えば鉄筋コンクリート造の部材である。あるいは、外郭木材の内側にコンクリートを充填した合成構造を有してもよく、木造の部材であってもよい。
柱は鉄筋コンクリート造、木造、コンクリートと外郭木材の合成構造とすることができ、柱をどのような構造とするかは、強度や耐火性、環境面や意匠面を考慮して決定することができる。
【0010】
前記接合部が、外郭木材の内側にコンクリートを充填した合成構造を有することも望ましい。また前記端部梁が、外郭木材の内側にコンクリートを充填した合成構造を有することも望ましい。
これにより、コンクリートによって部材の強度を維持しつつ、木を現しとすることで、木造本来の美しさを接合部や端部梁において表現することができる。また内部を鉄筋コンクリートとすることで、外郭木材に耐火被覆等が不要となり、施工手間やコストを軽減できる。
【0011】
第2の発明は、コンクリート部分を有する接合部を介して柱とその両側の梁を接合した接合構造であって、前記梁は、前記接合部の側面に設けられる端部梁と、前記端部梁に連続する中間梁とを有し、前記中間梁は、木質材を用いた梁状のプレキャスト部材であり、材軸方向の端部から前記接合部側に一端が突出する、プレストレスの導入されない水平鉄筋が設けられ、前記水平鉄筋の他端は前記中間梁内部に埋設され、前記端部梁は、現場打ちのコンクリートによるコンクリート部分を有し、水平方向の接合鉄筋が、前記接合部とその両側の前記端部梁のコンクリート部分に跨るように埋設され、前記柱の両側の前記梁の前記水平鉄筋と前記接合鉄筋の両端部が、前記接合部の両側の前記端部梁のコンクリート部分内で継手によりそれぞれ接続された接合構造を構築する際、前記中間梁の施工箇所に、前記中間梁を上から落とし込んで設置した後、前記接合鉄筋と前記水平鉄筋の端部同士を前記継手によって接続し、その後、前記端部梁のコンクリートを打設することを特徴とする接合構造の構築方法である。
第2の発明は、第1の発明の接合構造の構築方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、施工が容易で、強度にも優れた架構を実現できる接合構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】接合構造1を示す図。
図2】接合構造1の構築方法を示す図。
図3】接合部3a、端部梁41aを示す図。
図4】接合部3と柱2を一体のプレキャスト部材とする例。
図5】梁4をダブルビームとする例。
図6】接合構造1aを示す図。
図7】接合部3、3aと柱2aを一体のプレキャスト部材とする例。
図8】中間梁42aを示す図。
図9】接合構造1bを示す図。
図10】接合構造1bの構築方法を示す図。
図11】柱2bと接合部3aの外郭木材32を一体のプレキャスト部材とする例。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
(1.接合構造1)
図1(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態に係る接合構造1を示す図である。図1(a)は接合構造1を正面から見た図であり、図1(b)は図1(a)の線A-Aによる水平方向の断面である。
【0016】
本実施形態の接合構造1は、接合部(パネルゾーン)3において柱2と梁4を接合するものである。
【0017】
柱2は鉄筋コンクリート造の部材であり、接合部3の上下に配置され、その材軸方向と直交する断面(以下、単に断面という)は矩形状である。ただし、柱2の断面形状はこれに限定されず、その他の多角形あるいは円形でもよい。柱2の内部には鉛直方向の鉄筋21(主筋)が埋設され、鉄筋21の下端部は、柱2の下端部に埋設されたスリーブ24の上部に挿入される。
【0018】
接合部3は鉄筋コンクリート造の部材である。本実施形態では接合部3の水平断面が柱2の断面に対応し、接合部3が柱2の断面の範囲内に配置される。また接合部3の左右の側面には端部梁41が設けられる。端部梁41は鉄筋コンクリート造の部材である。
【0019】
接合部3の下方の柱2の鉄筋21の上部は、当該柱2から上方に突出し、接合部3を上下に貫通して接合部3からさらに上方に突出する。この突出部分は、接合部3の上方の柱2のスリーブ24の下部に挿入される。スリーブ24内にモルタル等の充填材(不図示)が充填されることで、接合部3の上方の柱2が接合部3に接合される。
【0020】
梁4は接合部3の左右の側方に設けられる部材であり、前記の端部梁41と中間梁42から構成される。中間梁42は、端部梁41に連続するように配置される。図示は省略するが、本実施形態では梁4の上に鉄筋コンクリート造のスラブが設けられ、中間梁42は当該スラブとの合成梁架構とすることもできる。
【0021】
中間梁42は木造の部材であり、その全体を木質材により形成した梁状のプレキャスト部材である。木質材としては集成材などを用いることができるが、これに限らない。特に図示しないが、中間梁42の両側面と底面には難燃層が設けられ、中間梁42の耐火性能が確保される。中間梁42の頂面は上記のコンクリートスラブに接するため難燃層は不要であるが、架構によっては中間梁42の頂面に難燃層を設けることもある。難燃層は木質材に難燃薬剤を含浸したものとするが、これに限定されず、その他の耐火性能を有する部材としてもよい。また場合によっては中間梁42の両側面や底面の難燃層を省略することも可能である。
【0022】
中間梁42の材軸方向の端部には、水平鉄筋43の一部が埋設される。例えば、中間梁42の上記端部に形成した材軸方向の孔(不図示)に水平鉄筋43の一部を挿入し、当該孔にモルタル等の充填材を充填する。これにより、水平鉄筋43の一部を中間梁42の上記端部に埋設、固定することができる。水平鉄筋43の残りの部分は当該端部から接合部3側に突出する。
【0023】
本実施形態では、接合部3と端部梁41のコンクリート部分に跨るように水平方向の接合鉄筋31が埋設されており、水平鉄筋43の接合部3側の端部と、接合鉄筋31の端部とが、端部梁41のコンクリート部分内で継手44によって接続される。継手44としては、例えば機械式継手を用いることができる。
【0024】
(2.接合構造1の構築方法)
接合構造1を構築する際は、まず図2(a)に示すように、接合部3の下方の柱2を設ける。本実施形態では柱2をプレキャスト部材とし、工場等で製作した柱2を現場まで運搬し、施工箇所に建て込んで設置する。ただし、柱2は現場打ちのコンクリートによるものとしてもよく、この場合は施工箇所に鉄筋21等の配筋を行って型枠を組み立て、コンクリートを型枠内に打設することで柱2を形成する。
【0025】
その後、図2(b)に示すように、接合部3の接合鉄筋31等の配筋を行うとともに、工場等で製作した中間梁42を現場まで運搬し、矢印で示すように施工箇所に上から落とし込み、仮設支保工(不図示)等で支持して図2(c)に示すように設置する。そして、接合鉄筋31と水平鉄筋43の端部同士を継手44により接続する。
【0026】
その後、接合部3と端部梁41に対応する位置に型枠(不図示)を設置し、その内部に現場打ちのコンクリートを打設することで図2(d)に示すように接合部3と端部梁41を形成する。なお、柱2を現場打ちのコンクリートによるものとする場合は、接合部3の下方の柱2および接合部3と端部梁41のコンクリートを一度に打設してもよい。
【0027】
この後、図2(d)の矢印に示すように接合部3の上方から柱2を落とし込み、当該柱2のスリーブ24の下部に、接合部3から突出する鉄筋21の突出部分を挿入する。スリーブ24内にモルタル等の充填材を充填することで、図1に示す接合構造1が構築される。なお、接合部3の上方の柱2も、前記と同様、現場打ちのコンクリートにより形成することが可能である。この場合、柱2のスリーブ24は省略することもできる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によれば、梁4を端部梁41と中間梁42に分割し、環境面や意匠面で優れた木質材を中間梁42に用いつつ、接合部3や端部梁41には鉄筋コンクリートを用いることで、強度に優れた架構を実現できる。例えば端部梁41については、鉄筋コンクリートの靭性能を発揮できるようにしたことで、地震時の繰り返し荷重などに対して曲げ降伏先行型の靭性に富んだ架構を実現できる。
【0029】
また中間梁42に関しては、予め工場等で製作したプレキャスト部材(中間梁42)を上から落とし込んで設置し、接合部3の接合鉄筋31と中間梁42の水平鉄筋43とを継手44によって接続出来るため、中間梁42の施工時に中間梁42を材軸方向に移動させる必要が無く、施工性が向上する。また接合部3が鉄筋コンクリート造とされていることで、前記のように鉄筋が木部材の繊維直交方向に挿入される問題を回避することもできる。
【0030】
さらに、継手44は端部梁41の位置に配置することで、配筋が密となる接合部3での鉄筋同士の接続を避けつつ、架構が曲げ降伏する位置を梁中央側に移動させるヒンジリロケーションを実現できる。これにより、接合構造1の性能を向上させて架構全体の耐力を向上させることができる。
【0031】
しかしながら、本発明は上記の実施形態に限定されない。例えば図3(a)に図1(b)と同様の断面で示すように、端部梁41aを外郭木材411とコンクリート412の合成構造としてもよい。
【0032】
外郭木材411は端部梁41aの両側面および底面を覆うように配置される板状の木質材であり、その内側にコンクリート412が充填される。施工時には、接合部3と端部梁41aの形成工程(図2(d)参照)において、端部梁41aの部分で外郭木材411を型枠として配置し、その内側にコンクリート412を打設すればよい。
【0033】
外郭木材411は、端部梁41aのせん断補強材や、コンクリート412の打設時の型枠として機能し、内部の鉄筋コンクリートの耐火性能に寄与する燃え代としての役割も果たす。また、コンクリート412によって部材の強度を維持しつつ、木を現しとすることで、木造本来の美しさを表現することもできる。
【0034】
外郭木材411には集成材、CLT、BP材などを用いることができる。外郭木材411の材料や厚さは、せん断補強材として機能するだけの面内耐力を有し、且つコンクリート412の打設時の面外圧力にも抵抗でき、また燃え代として耐火性能に寄与するように決定する。外郭木材411の内部を鉄筋コンクリート造とすることで、(未燃焼状態における)外郭木材411の耐火性能は特に必要で無く、耐火被覆等が不要となるため、施工手間やコストを軽減できる。
【0035】
また図3(b)に示すように、接合部3aを外郭木材32とコンクリート33の合成構造としてもよい。外郭木材32としては集成材、CLT、BP材などの木質材が用いられ、これが端部梁41との境界部を除く接合部3aの全側面を覆うように配置される。施工時には、接合部3aと端部梁41の形成工程(図2(d)参照)において、接合部3aの部分で外郭木材32を型枠として配置し、その内側にコンクリート33を充填すればよい。外郭木材32は前記の外郭木材411と同様の機能、役割を有する。
【0036】
その他、図3(c)に示すように、接合部3aと端部梁41aの双方を外郭木材32、411とコンクリート33、412の合成構造としてもよい。
【0037】
また、図1および図3で説明したいずれのケースでも、接合部3、3aをその下方の柱2と一体化してプレキャスト部材とすることが可能である。図4はその一例であり、鉄筋コンクリート造の接合部3とその下方の柱2を一体のプレキャスト部材とすることで、柱2と接合部3を一括設置できるようにしている。この場合、現場でのコンクリート打設は端部梁41、41aの位置のみで行われる。
【0038】
また図5図1(b)と同様の断面で示すように、梁4をダブルビームとし、接合部3の側方に、一対の梁4を梁幅方向に間隔を空けて配置してもよい。これにより、梁4の断面を小さくでき、梁4に要するコストを軽減できる。梁幅方向は、梁4の材軸方向と平面視で直交する方向であり、図5の上下方向に対応する。
【0039】
また本実施形態では柱2が接合部3の上下に設けられるが、接合部3の上または下のみに柱2が設けられる場合もある。また本実施形態では梁4が接合部3の左右に設けられるが、接合部3の左または右のみに梁4が設けられる場合もある。さらに、梁4は接合部3の左右方向(図1(b)の左右方向に対応する)に設けられるだけで無く、平面視で左右方向と直交する前後方向(図1(b)の上下方向に対応する)に設けられる場合もあり、この場合も、同様の構成を有する梁4を接合部3の前または後ろ、あるいはその双方に設けることができる。
【0040】
また本実施形態では柱2を鉄筋コンクリート造としており、強度や耐火性の面で優れているが、柱2はこれに限らない。以下、柱2を異なる構造とする例を第2、第3の実施形態として説明する。第2、第3の実施形態は第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、同様の構成については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。また第1の実施形態も含め、各実施形態で説明する構成は必要に応じて組み合わせることが可能である。
【0041】
[第2の実施形態]
図6(a)、(b)は、本発明の第2の実施形態に係る接合構造1aを示す図である。図6(a)は接合構造1aを正面から見た図であり、図6(b)は図6(a)の線B-Bによる水平方向の断面を示す図である。
【0042】
本実施形態の接合構造1aは、柱2aを外郭木材22とコンクリート23による合成構造とした点で第1の実施形態と異なる。
【0043】
外郭木材22は板状の木質材であり、柱2aの全ての側面を覆うように配置される。コンクリート23は外郭木材22の内側に充填される。第1の実施形態と同様、コンクリート23の内部には鉛直方向の鉄筋21が埋設され、その下端部が、コンクリート23の下端部に埋設されたスリーブ24の上部に挿入される。
【0044】
外郭木材22には集成材、CLT、BP材などを用いることができる。外郭木材22は、前記の外郭木材411と同様、柱2aのせん断補強材や、コンクリート23の打設時の型枠として機能し、内部の鉄筋コンクリートの耐火性能に寄与する燃え代としての役割も果たす。また、コンクリート23によって部材の強度を維持しつつ、木を現しとすることで、木造本来の美しさを表現することもできる。
【0045】
接合構造1aの構築方法は、基本的には第1の実施形態と同様であり、本実施形態でも第1の実施形態と同様の効果が得られる。なお本実施形態では柱2aをプレキャスト部材とするが、柱2aの施工箇所で鉄筋21等の配筋や外郭木材22の組み立て、コンクリート23の打設等を行うことで、柱2aを現場で構築してもよい。
【0046】
また、コンクリート23の内部に、上記の鉄筋21の他、鉄筋21を平面視で取り囲むようにせん断補強用のフープ筋を設けることもできる。さらに、工場等で外郭木材22の内側にコンクリート23を打設して柱2aを製作する際には、平面視で対向する位置にある外郭木材22同士をセパレータ(不図示)によって連結し、コンクリート23から外郭木材22に加わる面外圧力に抵抗させるが、このセパレータをせん断補強材として用いることもできる。
【0047】
また外郭木材22の内面に、当該内面からコンクリート23内に突出するコネクタ(不図示)などのせん断応力伝達機構を設けることで、外郭木材22とコンクリート23の一体性を高めることもできる。
【0048】
本実施形態でも、図3(a)~(c)で説明したように、接合部3と端部梁41のいずれか一方または双方を外郭木材とコンクリートの合成構造とできる。また図6の接合構造1aも含め、いずれのケースでも、接合部3、3aをその下方の柱2aと一体化してプレキャスト部材とすることが可能である。図7(a)は鉄筋コンクリート造の接合部3と柱2aを一体のプレキャスト部材としたものであり、図7(b)は、合成構造を有する接合部3aを柱2aと一体のプレキャスト部材としたものである。
【0049】
また図8に断面を示すように、中間梁42aを、柱2aと同様、外郭木材421とコンクリート422の合成構造を有する梁状のプレキャスト部材としてもよい。外郭木材421は板状の木質材であり、中間梁42aの両側面および底面を覆うように配置され、その内側にコンクリート422が充填される。外郭木材421としては集成材、CLT、BP材などが用いられ、前記の外郭木材411と同様の機能と役割を有する。
【0050】
[第3の実施形態]
図9は、本発明の第3の実施形態に係る接合構造1bを示す図であり、接合構造1bを正面から見たものである。本実施形態の接合構造1bは、柱2bを木造の部材とし、その全体を木質材によるものとした点で第1の実施形態と異なる。
【0051】
木質材としては集成材などを用いることができるが、これに限らない。特に図示しないが、柱2bの全ての側面には難燃層が設けられ、柱2bの耐火性能が確保される。難燃層は木質材に難燃薬剤を含浸したものとするが、これに限定されず、その他の耐火性能を有する部材としてもよい。また場合によっては難燃層を省略することも可能である。
【0052】
柱2bの上端部には鉛直方向の鉄筋25の一部が埋設される。例えば、柱2bの上端部に形成した材軸方向の孔(不図示)に鉄筋25の一部を挿入し、当該孔にモルタル等の充填材を充填する。これにより、鉄筋25の一部を柱2bの上端部に埋設、固定することができる。鉄筋25の残りの部分は柱2bから上方に突出し、接合部3を上下に貫通して接合部3からさらに上方に突出する。
【0053】
一方、柱2bの下端部には、柱2bの接合用の孔26が設けられる。接合部3から突出する鉄筋25の突出部分を接合部3の上方の柱2bの孔26に挿入し、孔26内にモルタル等の充填材(不図示)を充填することで、接合部3の上方の柱2bが接合部3に接合される。
【0054】
接合構造1bの構築方法も、基本的には第1の実施形態と同様であり、接合部3の上方に柱2bを設ける際は、図10に示すように当該柱2bを上から落とし込む。上記したように、柱2bの孔26に接合部3から上方に突出する鉄筋25の突出部分を挿入し、孔26内に充填材を充填することにより、接合部3の上方に柱2bが接合される。
【0055】
本実施形態でも、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また柱2bとして木質材を積極的に使用し、環境面や意匠面に優れた架構を提供できる。
【0056】
なお、本実施形態でも、図3(a)~(c)で説明したように、接合部3と端部梁41のいずれか一方または双方を木質材とコンクリートの合成構造とできる。また図9の接合構造1bも含め、いずれのケースでも、接合部3、3aをその下方の柱2bと一体化してプレキャスト部材とすることが可能である。合成構造を有する接合部3aに関しては、図11に示すように、柱2bと接合部3aの外郭木材32のみを一体のプレキャスト部材とし、接合部3aの接合鉄筋31とコンクリート33は現場で施工するようにしてもよい。これは第2の実施形態の柱2aに関しても同様である。
【0057】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0058】
1、1a、1b:接合構造
2、2a、2b:柱
3、3a:接合部
4:梁
21、25:鉄筋
22、32、411、421:外郭木材
23、33、412、422:コンクリート
24:スリーブ
26:孔
31:接合鉄筋
41、41a:端部梁
42、42a:中間梁
43:水平鉄筋
44:継手
【要約】
【課題】施工が容易で、強度にも優れた架構を実現できる接合構造等を提供する。
【解決手段】接合構造1は、コンクリート部分を有する接合部3を介して柱2と梁4を接合するものである。梁4は、接合部3の側面に設けられる端部梁41と、端部梁41に連続する中間梁42とを有する。中間梁42は、木質材を用いた梁状のプレキャスト部材であり、材軸方向の端部から接合部3側に突出する水平鉄筋43が設けられる。端部梁41は、現場打ちのコンクリートによるコンクリート部分を有し、水平方向の接合鉄筋31が、接合部3と端部梁41のコンクリート部分に跨るように埋設され、水平鉄筋43と接合鉄筋31の端部同士が、端部梁41のコンクリート部分内で継手44により接続される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11