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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】延焼防止装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 2/06 20060101AFI20240724BHJP
   A62C 3/02 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
A62C2/06 509
A62C3/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023208422
(22)【出願日】2023-12-11
(62)【分割の表示】P 2023138067の分割
【原出願日】2023-08-28
【審査請求日】2023-12-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522316250
【氏名又は名称】児玉 隆晃
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児玉 隆晃
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2360326(KR,B1)
【文献】中国実用新案第212466887(CN,U)
【文献】韓国登録特許第10-2402661(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第115054845(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-2373274(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0021208(US,A1)
【文献】登録実用新案第3018374(JP,U)
【文献】特開2021-115045(JP,A)
【文献】特開2023-088690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/06
A62C 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口部を有する直方体形状の筐体と、
前記筐体の短手方向の中央部に配置されて長手方向に沿って延びる仕切り板と、
前記筐体内に折り畳み状態で格納され不燃性シートと、
前記不燃性シート接続された第1支持棒および2支持棒と、
前記第1支持棒と前記第2支持棒を前記筐体の長手方向の一端側に設定された支点を中心に揺動回転させる駆動装置と、
を備え、
前記第1支持棒と前記2支持棒が接続された前記不燃性シートは、前記仕切り板を挟んで2組配置されており、
前記駆動装置は、前記第1支持棒を略垂直な起立姿勢となる角度まで揺動回転させると共に、前記第2支持棒を少なくとも鉛直線を超える角度まで揺動回転させ、
2組の前記不燃性シートは、前記駆動装置による前記第1支持棒と前記第2支持棒の揺動回転に伴って、前記筐体の内部から外部に引き出されて起立姿勢に保持される、
ことを特徴とする延焼防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の延焼防止装置において、
前記筐体は、前記開口部を開閉可能な上面板を備えており、
前記駆動装置は、前記2組の不燃性シートを起立姿勢に駆動する途中で前記上面板を閉塞位置から開放位置へ押し上げるように構成されている、
ことを特徴とする延焼防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災の延焼を防止する延焼防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物が密集している住宅密集地や倉庫等で火災が発生すると、火災が他の箇所に燃え広がるおそれがあり、特に、大地震に付随して発生する火災の場合、消防放水車の到着が困難になることが予測されるため、火災の延焼を防止する手段を備えていることが有効となる。
【0003】
この種の従来技術として、例えば特許文献1には、建物と建物との間の地上または地中に建物の幅方向に沿って設置されたボックスと、不使用時には折り畳まれてボックス内に収納され、使用時にはボックスから突出して略垂直に立設され、建物と建物との間に隔壁を構成する不燃材料からなる延焼防止壁と、を備えた延焼防止装置が開示されている。
【0004】
そして、この特許文献1に記載の延焼防止装置によれば、通常時は収縮または折り畳みによってコンパクトに格納され、邪魔にならず、火災の発生時には迅速に建物と建物との間に延焼防止用の隔壁を構成することができ、また軒下に設置した場合には火災が部屋の内部に侵入するのを防止したり、燃焼している近隣の建物からの輻射熱が建物の表面に到達するのを防ぎ、結果として着火することを防止できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3018374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の延焼防止装置では、ボックス内に収納された延焼防止壁を圧縮エアーによって上方へ突出させることで、延焼防止壁が隣接する建物と建物との間に略垂直な姿勢で立設されるようになっているため、火炎の遮断範囲に相当する長さの延焼防止壁をボックス内に収納する必要があり、延焼防止装置が大型化してしまうという課題がある。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、その目的は、小型化に好適で利便性の高い延焼防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、上面に開口部を有する直方体形状の筐体と、前記筐体の短手方向の中央部に配置されて長手方向に沿って延びる仕切り板と、前記筐体内に折り畳み状態で格納され不燃性シートと、前記不燃性シート接続された第1支持棒および2支持棒と、前記第1支持棒と前記第2支持棒を前記筐体の長手方向の一端側に設定された支点を中心に揺動回転させる駆動装置と、を備え、前記第1支持棒と前記2支持棒が接続された前記不燃性シートは、前記仕切り板を挟んで2組配置されており、前記駆動装置は、前記第1支持棒を略垂直な起立姿勢となる角度まで揺動回転させると共に、前記第2支持棒を少なくとも鉛直線を超える角度まで揺動回転させ、2組の前記不燃性シートは、前記駆動装置による前記第1支持棒と前記第2支持棒の揺動回転に伴って、前記筐体の内部から外部に引き出されて起立姿勢に保持される、ことを特徴とする延焼防止装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小型化に好適で利便性の高い延焼防止装置を提供することがきる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る延焼防止装置の外観を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る延焼防止装置の内部構造を示す断面図である。
図3】実施形態に係る延焼防止装置の内部構造を示す平面図である。
図4】実施形態に係る延焼防止装置に備えられる回転体の斜視図である。
図5】実施形態に係る延焼防止装置に備えられる回転体の断面図である。
図6】実施形態に係る延焼防止装に備えられる駆動装置の動作説明図である。
図7】実施形態に係る延焼防止装置の使用状態を示す説明図である。
図8】変形例に係る回転体の斜視図である。
図9】変形例に係る回転体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は実施形態に係る延焼防止装置の外観を示す斜視図、図2は延焼防止装置の内部構造を示す断面図、図3は延焼防止装置の内部構造を示す平面図、図4は延焼防止装置に備えられる回転体の斜視図、図5は実施形態に係る延焼防止装置に備えられる回転体の断面図、図6は実施形態に係る延焼防止装に備えられる駆動装置の動作説明図、図7は延焼防止装置の使用状態を示す説明図である。
【0013】
図1~5に示すように、実施形態に係る延焼防止装置100は、装置の外殻を形成する直方体形状の筐体1と、筐体1の内部に回転可能に軸支された回転体2と、回転体2に固定されて周面から外方へ突出する第1支持棒3と、回転体2の軸回りに回動可能に設けられた第2支持棒4と、第1支持棒3および第2支持棒4に接続された不燃性シート5と、待機位置から作動位置まで移動可能な押圧体6と、押圧体6を駆動する駆動装置(駆動手段)7と、を備えて構成されている。なお、以下の説明では、X軸、Y軸、及びZ軸をそれぞれ図1~3の通り定義し、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ筐体1の長手方向、短手方向、高さ方向に相当する。
【0014】
筐体1は上面に開口部を有しており、この開口部は一対の上面板8によって開閉可能となっている。これら上面板8は、筐体1の幅方向(Y軸方向)に沿う両側壁1aの上端にそれぞれヒンジ結合されており、押圧体6に設けられた後述する動作部によって開放動作される。なお、図1中には模式的に示されているが、一対の上面板8は互いの先端部を重ね合わせた状態で開口部を蓋閉するように配置されている。これにより、筐体1が屋外に設置された場合であっても、雨水や塵埃が両上面板8の接合部分から筐体1内に侵入しないようになっている。
【0015】
筐体1は前面側にも開口部を有しており、この開口部は前面板9によって開閉可能となっている。前面板9は筐体1の底面側にヒンジ結合されており、回転体2に形成された作動突起2bによって開放動作される。さらに、筐体1の底面側には複数の搬送ローラ10が設けられており、これら搬送ローラ10を用いることで、延焼防止装置100を使用位置へ容易に移動可能となっている。
【0016】
図4図5に示すように、回転体2は、筐体1の長手方向(X軸方向)の前方側に回転可能に配置されており、円柱状の外観を呈している。この回転体2には第1支持棒3と第2支持棒4がそれぞれ2本ずつ配設されており、回転体2の回転軸2aはY軸方向に沿って延びている。なお、図示省略されているが、回転体2の端面と筐体1の内側面との間にストッパが介設されており、このストッパによって回転体2の回転範囲が規制されるようになっている。
【0017】
2本の第1支持棒3は、それぞれ回転体2の両端部に立設されている。これら第1支持棒3は、回転体2に固定されて回転軸2aと直交する方向へ突出している。また、回転体2の両端部にスリット状の切欠き部2cが形成されており、第1支持棒3の固定端と切欠き部2cの一端部は周方向のほぼ同じ位置に設定されている。これら切欠き部2cは、第2支持棒4が回動する通路として機能するものであり、第1支持棒3の側方から周方向に沿って180度以上(例えば250度)の範囲に亘って延びている。
【0018】
2本の第2支持棒4は、それぞれ第1支持棒3の外側に配置されている。これら第2支持棒4は、回転軸2aの軸回りを回転する回動部4aを有し、この回動部4aから切欠き部2bを挿通して回転体2の外方へ突出している。
【0019】
不燃性シート5は、例えばガラスクロスをPVC等の樹脂材料でラミネートした不燃性素材からなる可撓性のシート部材である。不燃性シート5は略半円形状に形成されており(図7参照)、この不燃性シート5の中央部は第1支持棒3に固定されている。また、不燃性シート5の底辺の一端部側は第2支持棒4に固定されており、不燃性シート5の底辺の他端部側は筐体1の内部に固定されている。そして、延焼防止装置100の不使用時において、第1支持棒3と第2支持棒4はX軸方向に沿ってほぼ平行に倒れた姿勢で筐体1内に保持されており、これら第1支持棒3と第2支持棒4に接続された不燃性シート5はコンパクトに折り畳まれた状態で筐体1の内部に格納されている。
【0020】
また、筐体1の内部上方にX軸方向に沿って延びる細長形状の仕切板11が架設されており、この仕切板11を挟んだY軸方向の両側2か所に第1支持棒3と第2支持棒4を一組とする対がそれぞれ設置されている。したがって、各組の第1支持棒3と第2支持棒4に接続された2枚の不燃性シート5が、筐体1内の仕切板11を挟んだ両側に格納されている。なお、図3において、仕切板11は2点鎖線で示されている。
【0021】
押圧体6は、第1支持棒3と第2支持棒4を起立動作させる部材であり、駆動装置7のよって筐体1内を待機位置から作動位置まで移動可能となっている。この駆動装置7は、押圧体6の移動を案内するガイドシャフト12と、押圧体6に駆動力を付与する圧縮コイルばね13と、圧縮コイルばね13の駆動力に抗して押圧体6を待機位置に保持する係止部材14と、係止部材14を操作して圧縮コイルばね13の駆動力を押圧体6に付与する操作部材15とを備えており、ガイドシャフト12は筐体1の内部下方にX軸方向に沿って設置されている。
【0022】
押圧体6は、ガイドシャフト12の軸線方向に沿って移動可能であると共に、回転体2の回転軸2aと平行な軸回りに回転可能となっている。ガイドシャフト12を挟んで対向する筐体1の内側面には傾斜ガイド16が設けられており、これら傾斜ガイド16に押圧体6のY軸方向に沿った両側部が当接している。これにより押圧体6は、傾斜ガイド16に沿って先端側を上向きに回転させながら待機位置から作動位置へと移動する。
【0023】
図3に示すように、押圧体6は、第1支持棒3を回動させる第1駆動部6aと、第2支持棒4を回動させる第2駆動部6bとを有しており、これら第1駆動部6aと第2駆動部6bはV字状または半円状の係合溝を有している。第2駆動部6bは第1駆動部6aよりも前方へ突出しており、押圧体6が待機位置から作動位置へ移動する際に、第2駆動部6bに係合する第2支持棒4は第1駆動部6aに係合する第1支持棒3よりも先行して回動する。また、押圧体6の上面には動作部である一対の起立片17が設けられており、押圧体6が待機位置に保持されているとき、これら起立片17は上面板8の裏面に非接触の状態で対向している。そして、押圧体6が待機位置から作動位置へ向かう移動途中で、押圧体6の上昇に伴って起立片17が上面板8の裏面に当接することにより、上面板8が閉塞位置から開放位置へ押し上げられる。
【0024】
圧縮コイルばね13は、ガイドシャフト12に巻回されて押圧体6に当接しており、待機位置にある押圧体6からの圧縮荷重を受けて弾性エネルギーを蓄力するようになっている。係止部材14は、押圧体6を待機位置にロック/解除するものであり、ワイヤ等を介して操作部材15に連結されている。操作部材15は、筐体1の後面に露出した状態で設けられており、係止部材14による押圧体6のロック動作を解除するスイッチとして機能するものである。
【0025】
次に、実施形態に係る延焼防止装置100の使用方法を主に図6図7に基づいて説明する。
【0026】
延焼防止装置100の非使用状態において、押圧体6は係止部材14によって図6の実線で示す待機位置に保持(ロック)されており、圧縮コイルばね13は押圧体6からの圧縮荷重を受けて弾性エネルギーを蓄力している。また、第1支持棒3と第2支持棒4は筐体1内に略水平な姿勢で倒れており、不燃性シート5は折り畳まれた状態で筐体1の内部に格納されている。また、筐体1の内部は一対の上面板8によって覆われており、これら上面板8は互いの先端部を重ね合わせて配置されている。したがって、筐体1が屋外に設置された場合であっても、雨水や塵埃が両上面板8の接合部分から筐体1内に侵入しないようになっている。
【0027】
ここで、筐体1内に収納されている第1支持棒3と第2支持棒4の長さや不燃性シート5の大きさは、延焼防止装置100の使用場所等に応じて適宜設定される。例えば、実施形態に係る延焼防止装置100が2階建住宅に対して使用される場合、2階建住宅の平均的な高さは約6mであるため、第1支持棒3と第2支持棒4の長さを共に6mとし、半円形状の底辺を12mとした不燃性シート5が用いられている。
【0028】
隣接する建物の一方に火災が発生した場合、まず、延焼防止装置100を火災現場である建物と建物の間に設置する。その際、延焼防止装置100が火災現場から離れた場所に保管されていても、筐体1の底面に搬送ローラ10が付設されているため、延焼防止装置100を目的とする位置へと容易に移動することができる。
【0029】
このようにして延焼防止装置100を建物と建物の間に設置した後、筐体1の後面に露出する操作部材15を手動または足踏操作して、係止部材14による押圧体6のロック動作を解除する。その結果、圧縮コイルばね13の蓄力により、押圧体6がガイドシャフト12に案内されて待機位置から作動位置に向かって勢い良く移動する。
【0030】
図6の2点鎖線で示すように、ロック解除された押圧体6は、傾斜ガイド16に沿って先端側を徐々に上向きにしながら矢印P1方向へ移動する。これにより、第1支持棒3が押圧体6の第1駆動部6aに押されて回動し、それに伴って回転体2が回転軸2aを中心に矢印P2方向へ回転する。また、第1支持棒3に先行して第2支持棒4が押圧体6の第2駆動部6bに押されて回動し、この第2支持棒4は回動部4aを中心に回転体2の切欠き部2c内を矢印P2方向へ回動する。なお、第2支持棒4は、第2駆動部6bに押されて鉛直線を超える位置まで回動すると、その後は自重によって矢印P2方向へ自動的に回転する。
【0031】
図7に示すように、押圧体6が移動方向の末端の作動位置まで移動すると、第1支持棒3は起立姿勢(垂直な姿勢)とる角度まで回動し、この時点で回転体2の回転は不図示のストッパによって停止される。また、第2支持棒4は自重によって切欠き部2c内を回動しており、その先端を地面に当接させた位置で停止している。そして、これら第1支持棒3と第2支持棒4の回転に伴って、不燃性シート5が筐体1から引き出されて半円形状に開かれる。これにより、筐体1から引き出された不燃性シート5が建物と建物の間に延在することになり、この不燃性シート5は、第1支持棒3および第2支持棒4の長さの約2倍長さの底辺を有する半円形状の形態で開かれるため、一方の建物に発生した火災の火炎が他方の建物に向かうことを防止できる。
【0032】
なお、押圧体6が待機位置から作動位置へ向かう移動途中で、筐体1の上面を覆う上面板8が押圧体6に設けられた起立片17によって開放位置へと押し上げられるため、第1支持棒3と第2支持棒4は上面板8に妨げられることなく回動することができる。また、筐体1の前面を覆う前面板9が回転体2に形成された作動突起2bによって解放されるため、第2支持棒4は前面板9に妨げられることなく回動することができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係る延焼防止装置100によれば、以下のような作用効果を奏することができる。
【0034】
上面に開口部を有する筐体1と、筐体1の内部に回転可能に軸支された回転体2と、回転体2に固定されて周面から外方へ突出する第1支持棒3と、回転体2の回転軸回りに回動可能に設けられた第2支持棒4と、第1支持棒3および第2支持棒4に接続された不燃性シート5と、待機位置から作動位置まで移動可能な押圧体6と、押圧体6を駆動する駆動装置(駆動手段)7とを備え、第1支持棒3は、作動位置まで移動した押圧体6によって略垂直な起立姿勢に回動され、第2支持棒4は、作動位置まで移動した押圧体6によって少なくとも鉛直線を超える角度まで回動されるため、筐体1内にコンパクトに収納された不燃性シート5を、第1支持棒3と第2支持棒4の回動に伴って筐体1から引き出して大きく広げることができ、小型化に好適で利便性の高い延焼防止装置100を実現することができる。
【0035】
また、回転体2に周方向に延びるスリット状の切欠き部2cが形成されており、第2支持棒4が回転体2の内部に回動部4aを有すると共に、この回動部4aから切欠き部2cを挿通して回転体2の外方へ突出しているため、第1支持棒3と第2支持棒4が回転体2に一体的に配設され、構造の簡略化と組立作業性の向上を図ることができる。ただし、回動部4aに切欠き部2cを形成せずに、第2支持棒4を回転体2の外部側方に配置するようにしても良い。
【0036】
また、押圧体6が、第1支持棒3を回動させる第1駆動部6aと、第2支持棒4を回動させる第2駆動部6bとを有しており、第2駆動部6bが第1支持棒3よりも第2支持棒4を先行して回動させるように構成されているため、第1支持棒3が起立姿勢になる前に第2支持棒4を鉛直線となる角度まで回転させ、鉛直線を超えた第2支持棒4を自重によって解放位置まで自動的に回転させることができる。
【0037】
また、筐体1は上面の開口部を開閉可能な上面板8を備えており、押圧体6が待機位置から作動位置へ向かう移動途中で、押圧体6に設けた起立片(動作部)17によって上面板8が開放動作するように構成されているため、延焼防止装置100の保管時は、雨水や塵埃の筐体1内への侵入を上面板8によって防止することができ、延焼防止装置100の使用時は、第1支持棒3と第2支持棒4の妨げとならないように上面板8を開放することができる。なお、筐体1の上面の開口部を一枚の上面板8によって覆うようにしても良い。また、上面板8を開放動作する動作部は、押圧体6の代わりに回転体2に設けることも可能である。
【0038】
また、略半円形状に形成した不燃性シート5の中央部を第1支持棒3に固定すると共に底辺の一端部を第2支持棒4に固定し、このような不燃性シート5を第1支持棒3と第2支持棒4の回動に伴って筐体1から引き出すことにより、火災現場における建物と建物の間に半円形状に広げられた不燃性シート5を設置することができるため、火災の延焼を広範囲に亘って防止することができる。
【0039】
また、筐体1の内部に回転体2の回転軸2aと直交方向(X軸方向)に沿って延びる仕切板11が設置されており、第1支持棒3と第2支持棒4を一組とする対が仕切板11を挟んで対向する両側2か所に配置されているため、延焼防止装置100の使用時に、二列に並んだ不燃性シート5が筐体1から引き出される形態となり、これら二重の不燃性シート5によって延焼防止効果を高めることができる。また、筐体1から引き出された二列の不燃性シート5の間に仕切板11が架設されているため、仕切板11を走行通路として利用することができる。
【0040】
また、筐体1に底面から突出する複数の搬送ローラ10が設けられているため、延焼防止装置100が火災現場から離れた場所に保管されていた場合でも、搬送ローラ10を用いて使用位置へ容易に移動することができる。
【0041】
また、駆動手段である駆動装置7が、押圧体6の移動を案内するガイドシャフト12と、押圧体6に駆動力を付与する圧縮コイルばね13と、圧縮コイルばね13の駆動力に抗して押圧体6を待機位置に保持する係止部材14と、係止部材14をロック解除して圧縮コイルばね13の駆動力を押圧体6に付与する操作部材15と、を備えて構成されているため、地震発生時に電力が停止した状況下にあっても、操作部材15を手動または足踏操作すれば、係止部材14のロック動作が解除されて延焼防止装置100を使用することができる。
【0042】
また、火災が発生して延焼防止装置100を使用した後は、押圧体6を圧縮コイルばね13のばね力に抗して待機位置に戻してロックすると共に、不燃性シート5を第1支持棒3および第2支持棒4と一緒に筐体1内に格納すれば、延焼防止装置100を繰り返し使用することができる。
【0043】
また、押圧体6がガイドシャフト12の軸線方向に沿って移動可能であると共に、回転体2の回転軸2aと平行な軸回りに回転可能となっており、ガイドシャフト12を挟んで対向する筐体1の内側面に、待機位置から作動位置に向かう押圧体6を斜め上向きに案内する傾斜ガイド傾斜ガイド16が設けられているため、第1支持棒3および第2支持棒4をスムーズに回動させることができる。
【0044】
次に、延焼防止装置100に備えられる回転体2の変形例について説明する。図8は変形例に係る回転体2の斜視図、図9は変形例に係る回転体2の断面図である。
【0045】
図8図9に示すように、変形例に係る回転体2では、第1支持棒3の固定端と切欠き部2cの一端部が周方向に位置ずれしており、切欠き部2cの一端部は第1支持棒3に対して回転方向P2の上流位置まで延びている。これにより、第1支持棒3はほぼ水平な姿勢で筐体1内に保持され、第2支持棒4は水平面に対して下向きに傾いた姿勢で筐体1内に保持されることになる。
【0046】
このように構成された変形例にあっては、押圧体6が傾斜ガイド16に沿って斜め上方に移動すると、押圧体6は第2支持棒4を押し上げてから第1支持棒3を押し上げるため、第2支持棒4を第1支持棒3に先行して回動させることができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0048】
例えば、押圧体6の駆動手段として、圧縮コイルばね13を駆動源とする駆動装置7の代わりに、モータや圧縮ガスを駆動源とする駆動装置を用いることも可能である。また、押圧体6に駆動力を付与するばね部材として、圧縮コイルばね13の代わりに、板ばねやトーションばねを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 筐体
2 回転体
2a 回転軸
2b 作動突起
2c 切欠き部
3 第1支持棒
4 第2支持棒
4a 回動部
5 不燃性シート
6 押圧体
6a 第1駆動部
6b 第2駆動部
7 駆動装置(駆動手段)
8 上面板
9 前面板
10 搬送ローラ
11 仕切板
12 ガイドシャフト
13 圧縮コイルばね(ばね部材)
14 係止部材
15 操作部材
16 傾斜ガイド
17 起立片(動作部)
100 延焼防止装置
【要約】
【課題】小型化に好適で利便性の高い延焼防止装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る延焼防止装置100は、上面に開口部を有する筐体1と、筐体1の内部に回転可能に軸支された回転体2と、回転体2に固定されて周面から外方へ突出する第1支持棒3と、回転体2の回転軸回りに回動可能に設けられた第2支持棒4と、第1支持棒3および第2支持棒4に接続された不燃性シート5と、待機位置から作動位置まで移動可能な押圧体6と、押圧体6を駆動する駆動装置(駆動手段)7とを備え、第1支持棒3は、作動位置まで移動した押圧体6によって略垂直な起立姿勢に回動され、第2支持棒4は、作動位置まで移動した押圧体6によって少なくとも鉛直線を超える角度まで回動される。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9